説明

UV光によるレンズの度を変えるための開始剤およびUV吸収剤

光開始剤および光吸収剤の新規なブレンドが開示される。組成物で使用される吸収剤および開始剤のタイプおよび量を適切に選択することにより、光誘発反応が起こる条件を制御することができる。特定の実施形態では、UV開始剤および光吸収剤のブレンドは、UV始動重合反応が起きる条件を制御するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年6月10日に出願された米国出願11/149,837の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、光重合反応が起こる条件を制御する方法に関する。また、本発明は、光吸収化合物と光開始剤との新規なブレンドに関し、それは光開始剤が光重合反応を誘発する条件の選択を可能にする。
発明の背景
【背景技術】
【0003】
光重合反応は、光重合性組成物を硬化させて加工品を作製するために広く使用されている。光重合反応の1つの最近の適用は、光学要素内に分散された光重合性変性組成物の使用により、光学的性質を変えることができる光学要素の開発である。
【0004】
しかしながら、光重合反応が起こる条件を制御する必要性が存在する。例えば、上記した光学要素の1実施形態では、眼内レンズは患者へ最初に挿入され、次に、手術後に調節されて患者のレンズ度の要求を達成する。創傷治癒が完了した後、この手術後の補正を行うのが好ましい。これにより、外科医は不正確な測定によるレンズの度の算出におけるどんな誤差も、または創傷治癒の過程により生じるかもしれないレンズ位置の変化を考慮に入れることができる。
【0005】
創傷治癒の過程は、最大、数週間かかるかもしれないが、その間、変性組成物の光重合反応を回避する必要がある。これは、患者が光重合反応を引き起こすであろう潜在的光源から患者の目を保護することを必要とする。これは、手術後の正常な日常業務を再開する患者の能力を著しく制限する。
【0006】
したがって、光重合反応が予め定められた条件において生じる条件を制御することが望ましい。
【0007】
これまでの記載は、以下の発明の詳細な記述が一層よく理解されるように本発明の特徴および技術的な利点をやや広く概説した。本発明の請求項の主題を形成する、追加の特徴および発明の利点は、以下に記述されるであろう。開示された概念および特定実施形態は、本発明と同じ目的を実行するための他の構成を修飾または設計する根拠として容易に利用され得ることは、当業者は理解すべきである。そのような等価な構成は、申請された請求項で記載された本発明の精神および範囲から逸脱するものではないことを、当業者はまた認識すべきである。本発明の特徴と考えられる新規な特徴は、その構成および操作方法の両方に関して、さらに目的と利点と共に添付図面と関連して考察すれば、以下の記載から一層よく理解されるであろう。しかしながら、各図面は実例および記述のみの目的で提供され、本発明の範囲を定義するものとしては意図されていないことを特に理解すべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、刺激誘因重合化反応が起こる条件を制御する方法に関する。具体的には、その方法は、刺激吸収化合物および刺激開始化合物のブレンドの使用を含み、そこでは化合物の2つの割合は、重合化反応の開始が所望の条件に達するまで遅らせるような割合である。
【0009】
好ましい実施形態では、光吸収化合物は、光開始剤と共に使用されて、光開始剤の作用が光吸収化合物の吸光度に達するポイントまで遅らせる。特に好ましい実施形態では、吸収化合物はUV吸収剤であり、および開始剤はUV開始剤である。
発明の詳細な説明
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光吸収剤および光開始剤をモノマーまたはマクロマーと共にポリマーマトリックスにブレンドすることによる、光重合反応が起こる条件を制御する方法に関する。光吸収剤および光開始剤の性質および相対的比率のバランスを取ることによって、光重合が起こる条件を制御することが可能である。
【0011】
光吸収剤および光開始剤の新規なブレンドもまた提供される。光吸収剤および光開始剤を所望の割合で組み合わせる場合、光始動の光重合反応を制御する新規な組成物が作られる。これらの新規なブレンドを使用して、重合化をもたらすのに必要な光のしきい値強度および波長を制御することが可能である。また、同様に、重合化を引き起こすのに必要である露光時間も決定することができる。
【0012】
ブレンド中で使用される光吸収剤の組成物は、光開始剤を誘発して重合化反応を開始するスペクトルと同一部分の光を吸収すべきである。例えば、光開始剤が、紫外線に感受性の場合には、光吸収剤成分は紫外線を吸収できるべきである。光開始剤が、赤外線に感受性の場合には、光開始剤は赤外線を吸収しなければならない。光阻害剤もまた、光吸収剤の代わりに、あるいは光吸収剤に加えて使用されてもよい。例えば、紫外線(UV)光の場合には、ヒンダードアミン類、ヒドロキノン類、メトキシフェノール類などの光阻害剤が使用されてもよい。本発明実施の際に使用される光吸収剤はまた、1つまたはそれ以上の吸収剤のブレンドを含んでもよい。例えば、UV吸収剤の場合には、UV吸収剤は、異なる波長で光を吸収する複数のUV吸収剤のブレンドを含んでもよい。
【0013】
代表的なUV吸収剤としては、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類などが挙げられる。好ましい実施形態では、光吸収剤は紫外線(UV)吸収剤である。UV吸収剤のうち1つの特に有用なクラスは、式:
【化1】

のベンゾトリアゾール類である。
【0014】
上記式中、Xは独立して、H、好ましくは1から8個の炭素原子を有する、1価の炭化水素基および1価の置換炭化水素基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、好ましくは1から6個の炭素原子を有する、アルコキシ基および置換アルコキシ基およびハロゲン基から成る群から選択され;各Rは、独立して、H、好ましくは1から8個の炭素原子、より好ましくは1から4個の炭素原子を有する、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基から成る群から選択され、水酸基、アミノ基およびカルボキシル基のいずれかまたは複数を含み、nは1から4の整数であり、およびmは1から3の整数である。好ましくは、XおよびRの少なくとも1つは、水素以外である。Rは、ビニル、アリル、アルケニル、置換アルケニル、アルケノキシ、置換アルケノキシ、アクリルオキシアルキル、置換アクリルオキシ、アクリレート、メタアクリレートおよびシリコンから成る群から選択される。
【0015】
有用な1価の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基などが挙げられる。有用なアルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキソキシを含む。有用なアルキル基の例としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチルなどを含む。特に有用なハロゲンは、塩素である。
【0016】
本明細書で言及される置換基としては、酸素、窒素、炭素、水素、ハロゲン、硫黄、リンなどの元素およびそれらの混合物もしくは組み合わせを含む1つまたはそれ以上の置換基で置換された上記で説明した基(および本明細書で言及される他の基)が例示される。有用なアミン基は、−NHおよび1つまたは両方のHが、1価の炭化水素基、1価の置換炭化水素基などから選択される基で置換される基を含む。
【0017】
複数のXのうち1つ以下はH以外であり、Rのうち1つ以下はH以外であるのが好ましい。すなわち、すべてあるいは複数のXのうちの1つ以外のすべてが、Hであり、およびすべてあるいはRのうちの1つ以外のすべてがHであることが好ましい。そのような「最小限に」置換されたベンゾトリアゾール部位は、比較的簡単に製造され、顕著な紫外線吸収の特性を提供する。
【0018】
紫外線吸収剤の代わりに、紫外線阻害剤もまた使用されてもよい。本発明の実施の際に使用されるUV阻害剤は、ヒンダードアミン類、ヒドロキノン類、メトキシフェノン類などを含む。これらの化合物は、上記したUV吸収剤の代わりに用いられてもよい。
【0019】
UV吸収化合物のうち特に有用なクラスは、以下の式または構造を有する化合物から選択される:
【化2】

【0020】
式中、Xが塩素であり、およびRがtert−ブチルであり、およびRがビニル基であるのが最も好ましい。
【0021】
有用なベンゾトリアゾール類の例は、式:
【化3】

の2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)−4−エテニルフェノール、式:
【化4】

の2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(3”−ジメチルビニルシリルプロポキシ)フェニル]−5−メトキシベンゾトリアゾール、および式:
【化5】

を有する2−(2’−ヒドロキシ−3’−アリル−5’−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを含む。
【0022】
本発明の実施の際に有用なUV吸収剤の別のクラスは、式:
【化6】

を有する4−アリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン
【0023】
および式:
【化7】

を有する4,4’−ジアリルオキシ−2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノンを含むが、これらに限定されない。
【0024】
好ましいUV吸収化合物は、300nmから400nmの範囲のUV光を強力に吸収し、約400nmより長波長では減少した吸収を示す。
【0025】
UV吸収剤の量は、所望の光吸収度を与えるのに必要な量であり、例えば、使用する特定のUV吸収剤、使用する光開始剤、UV吸収剤が使用される元素組成、重合すべきマクロマー、および元素の厚み、例えば光路に依存する。吸収についてのベール(Beer)の法則により、Aが吸光度、εが吸光係数、bが厚みまたは光路、およびcが吸収剤濃度のとき、A=εbcである。吸収剤の必要な量は、光路長または厚さに反比例する。400nmのUV光は、付随光の10から15%未満、390nmでは3%未満であることが、しばしば望まれる。
【0026】
UV吸収剤と同様に、本発明の実施に役立つ好ましいUV開始剤は、UV感受性のUV開始剤である。特に好ましいUV開始剤は、式:
【化8】

を有するx−アルキル/ベンゾインである。
【0027】
式中、Rは、H,アルキル基、アリール基、置換アルキル基、または置換アリール基であり、およびRは、H,アルキル基、アリール基、置換アルキル基、または置換アリール基であり;RおよびRは、フェニルまたはフェニルアリルまたはアリルオキシである。RとRの基の具体例としては、メチル、フェニルトリフルオロプロピル、エチルおよびシアノプロピルが挙げられる。RおよびRの基からのフェニル置換基としては、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、アルカリール、シアノアルキル、ハロアルキルおよびN,N−ジアルキルアミノが挙げられる。本発明の実施に際して有用な光開始剤は、Irgacure819、Irgacure184、Irgacure369およびIrgacure651を含み、これらは全てCiba Specialty Chemicals Inc.から入手できる。光学要素におけるように透明性が必要な場合は、Irgacure651が好ましい。
【0028】
また、本発明の実施に際して有用な光開始剤は、短鎖ポリマー骨格またはセグメントに結合している1つまたはそれ以上のUV開始剤を有する。この光開始剤は、式:
【化9】

を有する。
【0029】
式中、AおよびAは、同一または異なって、UV開始剤であり、およびBは2から28のモノマー部分から成る短鎖ポリマーセグメントである。上記の式は、本発明を実施する際には、UV開始剤がポリマー鎖の末端で結合していることを示唆しているが、開始剤は鎖に沿った任意の点で結合することができる。新規な開始剤を光学要素として使用しようとする場合には、そのポリマー骨格は、光学要素に使用されるものと同じ一般的なタイプのポリマーである。例えば、光学要素がシリコンポリマーから作られる場合、開始剤と結合する短鎖ポリマーもまた、シリコンポリマーになるであろう。同様に、光学要素がポリアクリレート系である場合は、短いポリマー鎖はポリアクリレートであるべきである。
【0030】
本発明の1実施形態では、光開始剤は、ポリシロキサン架橋に結合している1つまたはそれ以上のUV開始剤を含み、式:
【化10】

を有する。
【0031】
式中、RからR11は、独立して、水素、アルキル(1級、2級、3級、環状)、アリールまたはヘテロアリール部分であり、nは2から28の整数であり、および式中、RからR11の少なくとも1つの部分は、UV開始剤である。好ましい実施形態では、RからR11は、C−C10アルキルまたはフェニルであり、メチルが最も好ましいが、少なくとも1つは水素でなければならない。1つの特に有用なシリコン結合光開始剤は、式:
【化11】

(式中、R,RおよびRは、上記で定義した通りであり、aおよびbは、1から24の整数であり、aおよびbは?24である。
【0032】
光開始剤は、一般に、上記で好ましく記載されたx−アルキル/ベンゾインを有するUV感受性光開始剤である。架橋UV開始剤の合成は、US4,477,326に記載されている。
【0033】
架橋された2官能性光開始剤の使用に加えて、UV吸収剤は、短鎖のポリマー架橋によって結合された1つまたはそれ以上UV吸収剤から成るものであってもよい。光吸収剤は
【化12】

を有する。
【0034】
式中、EおよびEは、UV吸収剤であり、およびDは、2から28のモノマー部分を有するポリマー鎖である。上記の式は、本発明の実施では、UV吸収剤がポリマー鎖の末端へ結合されることを示唆しているが、吸収剤は、ポリマー鎖に沿ったどの時点でも結合することができる。さらに、UV吸収剤が1つを超えるアリル基またはアリルオキシ基を含んでいる場合、UV吸収剤は1つを超えるポリマー架橋に結合されてもよい。例えば、4,4’−ジアリルオキシなどの2つのアリル構造、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノンを有するUV吸収剤は2つのポリマー架橋に結合してもよい。開始剤の場合と同様に、ポリマー架橋は、基本組成物で使用される材料と、同じでないにしても相容性であるべきである。
【0035】
好ましい実施形態では、UV吸収剤は、式:
【化13】

を有する。
【0036】
式中、R12からR16は、少なくともR12からR16の1つがUV吸収剤であり、pが1から26の整数であることを除き、上記で定義した通りである。本発明レンズの実用に際して有用な1つのシリコン結合光吸収剤は、以下の構造を有する:
【化14】

【0037】
式中、aおよびbは、1から24の整数であり、bは?24である。
【0038】
本発明の実施に際して有用な別のUV吸収剤の構造は、式:
【化15】

を有するシロキサン骨格に結合しているベンゾフェノンである。
【0039】
式中、aおよびbは、1から24の整数であり、bは?24である。
【0040】
ジアリルベンゼンフェノンの場合、UV吸収剤は、2つのシロキサン化合物などの2つのポリマー架橋に結合することができる。
【0041】
UV吸収剤および開始剤の相対量は、特定の適用に対する吸光度の所望の程度に依存して変わるであろう。一般に、UV吸収剤に対する光開始剤の比率は、約1:1から約25:1、好ましくは6:1から25:1の範囲となろう。一般に、光開始剤およびUV吸収剤の相対量は、式:
【数1】

を用いて算出することができる。
【0042】
式中、Tは透過率.であり、Aは吸光度であり、εはUV吸収剤の吸光係数であり、bは、光路長であり、およびcはUV吸収剤の濃度である。ε、b、およびcは、光開始剤に関するものであることを除き、上記で定義した通りである。実際上、実際の吸光度は、使用量が一般に計算量の少なくとも1.5倍であると予測された値よりも一般に少ないことが知見された。
【0043】
吸収剤および開始剤の量もまた、最終組成物の百分率により表記することができる。この基準を使用すると、存在する吸収剤の量は、0.025重量%から2重量%、好ましくは0.05から1.0重量%の範囲である。存在する開始剤の量は、0.05から0.5重量%の範囲である。使用される吸収剤および開始剤の実際の各量は、吸収剤および開始剤の性質に依存することが、当業者には理解されるであろう。
【0044】
開始剤および吸収剤は、重合または架橋すべきポリマー、モノマーまたはマクロマーと結合する。1実施形態では、光開始剤は、マクロマーと結合する。他の実施形態では、光開始剤は、混合物中に遊離して残存する。
【0045】
本発明の実施に有用なモノマーおよびマクロマーは、光重合性官能基を含む。代表的な光重合性官能基は、アクリレート、アリルオキシ、シンナモイル、メタクリレート、スチルベニルおよびビニル、好ましくはアクリレートおよびメタクリレートから成る基を含む。
【0046】
本発明の実施に使用される好ましいマクロマーは、末端が光重合性の基によって末端封鎖されているポリシロキサンまたはポリアクリレートマクロマーである。
【0047】
柔軟で折り曲げ可能な眼内レンズ(IOL)に対する優先性から、MC(変性組成物)モノマーの特に好ましいクラスは、光重合性基を含む末端シロキサン部分によって末端封鎖されたポリシロキサン類である。そのようなモノマーの実例は、
【化16】

で代表される。
【0048】
式中、Yはシロキサン単位の任意の数から形成された、モノマー、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよいシロキサンであり、XおよびXは同一または異なって、それぞれ独立して、光重合性基を含む末端シロキサン部分である。Yの実例としては、
【化17】

を含む。
【0049】
式中、mおよびnは独立して、それぞれ整数である。
【0050】
17、R18、R19およびR20は、それぞれ独立して、水素、アルキル(1級、2級、3級、環状)、アリール、またはヘテロアリールである。好ましい実施形態では、R17、R18、R19およびR20は、C−C10アルキルまたはフェニルである。比較的高いアリール含量を有するMCモノマーは、本発明レンズの屈折率により大きな変化をもたらすことが分かったので、R17、R18、R19およびR20の少なくとも1つは、アリール、特にフェニルであることが一般に好ましい。より好ましい実施形態では、R17、R18、R19は、同一であり、メチル、エチルまたはプロピルであり、およびR20はフェニルである。
【0051】
XおよびX(またはMCポリマーがどのように記述されるかに依存するXおよびX)の実例はそれぞれ次のとおりである
【化18】

【0052】
式中、R21およびR22は、それぞれ独立して水素、アルキル、アリール、またはヘテロアリ−ルであり;およびZは光重合性基である。
【0053】
好ましい実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、CおよびC10アルキルまたはフェニルであり、Zはアクリレート、アリルオキシ、シンナモイル、メタクリレート、スチルベニル、およびビニルから成る群から選択される部分を含む光重合性基である。より好ましい実施形態では、R21およびR22は、メチル、エチル、またはプロピルであり、Zはアクリレートまたはメタクリレート部分を含む光重合性基である。
【0054】
特に好ましい実施形態では、MCモノマーは、以下の式である。
【化19】

【0055】
式中、XおよびXは同一であり、R17、R18、R19、およびR20は、先に定義した通りであり、mおよびnは整数である。そのようなMCモノマーの例示としては、ビニルジメチルシラン基で末端封鎖されたジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマー;メタクリルオキシプロピルジメチルシラン基で末端封鎖されたジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサンコポリマー;およびメタクリルオキシプロピルジメチルシラン基で末端封鎖されたジメチルシロキサンなどが挙げられる。適切な方法はどれも使用されてもよいが、トリフルオロメタンスルホン酸の存在下、環状シロキサン類のうちの1つの開環反応が、本発明のMCモノマーの1クラスを作るのに特に効率的な方法であることが判明した。簡潔に言えば、その方法は、環状シロキサンを、式:
【化20】

の化合物にトリフルオロメタンスルホン酸の存在下、接触させることから成る。
【0056】
式中、R23、R24およびZは、先に定義された通りである。環状シロキサンは、環状シロキサンモノマー、ホモポリマーまたはコポリマーであってよい。または、1つより多い環状シロキサンを使用してもよい。例えば、環状ジメチルシロキサン四量体および環状メチル−フェニルシロキサン三量体を、ビスメタクリルオキシプロピルテトラメチルジシロキサンと、トリフルオロメタンスルホン酸の存在下、接触させて、特に好ましいMCモノマーである、メタクリルオキシプロピルジメチルシラン基で末端封鎖されたジメチルシロキサンメチル−フェニルシロキサンコポリマーを形成する。
【0057】
本発明の実施に際して有用なマクロマーは、一般に500から30,000、好ましくは700から1000の間の分子量(Mn)を有する。
【0058】
1実施形態では、UV吸収剤、光開始剤および光重合性変性組成物は、光学要素内に分散される。該要素が十分な強度のUV光源に露光された場合、UV光はUV吸収剤の吸光度容量を超えて光開始剤を刺激する。光開始剤は、今度は、変性組成物の重合を誘発する。変性組成物の重合は、要素の光学的性質の変化を引き起こす。UV源が除かれた場合、または強度がUV吸収剤の吸光度容量以下に落ちる場合、重合反応は終了して光学的性質のさらなる変化を防止する。
【0059】
好ましい実施形態では、眼内レンズ(「IOL」)は、その中に分散された変性組成物を有する一次ポリマーマトリクスから製造される。変性組成物は、光誘発重合反応が可能である。また、IOLは、上記したUV吸収剤およびUV開始剤の混合物を含む。その後、IOLは患者へ挿入される。創傷治癒が完了した後、レンズの光屈折率は、次いでレンズの少なくとも1部分を、十分な時間および強度で紫外線に露光し、UV開始剤が変性組成物の重合を引き起こさせることにより調節される。変性組成物の光重合化は、次には、IOLの光学的性質の変化を引き起こす。
【0060】
本発明のUV吸収剤/開始剤のブレンドは、光の調節可能な光学要素に特に役立つが、それらは、特定の波長における強度または光量の規定されたレベルが満足されるまで、光開始剤の反応を遅らせることが望ましい任意の組成物中で使用することができる。
【0061】
この1例は、UV硬化性組成物である。一般に、これらの組成物は環境照明に露光されないように注意を払わなければならない。それというのも、硬化光(太陽のUV光は約6.0ミリワット/cm)の低い強度においてでさえ、光開始剤誘発の硬化反応が起こるからである。十分なUV吸収剤を加えることによって、その反応は、UV光強度が6.0ミリワット/cmを超えるまで遅らすことができる。
【実施例】
【0062】
次の実施例は、例示として提示され、本発明の範囲を制限することを決して意図するものではない。
【0063】
(実施例1)
下記の表1に示されるように、一連のシロキサンのスラブが製造された。対照実験では、パートAはシリコンポリマーMED6820から成るものであった。パートBは、MED6820を触媒Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体と混合することにより製造された。パートAおよびパートBは、別々に脱気して空気をすべて除き、次いで一緒に混合した。その後、混合物を脱気し、1mmの厚さの金型に入れ、カーバー(Carver)プレス中、最大約1000psiの圧力および約37℃の温度で24から48時間保持された。
【0064】
実験スラブは、変性組成物、UV吸収剤およびUV開始剤のブレンドを最初に製造し、次いでパートAに添加した以外は、同じ方法で製造された。成分の割合は、表1に載せた。変性組成物(表1中、CalAddとして識別される)は、700から1000g mole−1の分子量の、メタクリレートで末端封鎖されたジメチルシロキサンジフェニルシロキサンコポリマーであった。
【0065】
下記の表では、使用された開始剤は、次の化合物、すなわちCiba Specialty Chemicals Inc.によって製造された市場で入手可能なUV開始剤であるIrgacure651;式;
【化21】

(式中、nは2から28の範囲である)を有する2重のベンゾイン構造のブレンドである開始剤B−pdms−B、およびn=2のみ以外は上記式と同じ構造であるB−L4−Bから一般になるものであった。
【0066】
これらの開始剤は、光学要素のように透明性が必須である適用に対して好まれる。透明性が必須ではない他の適用では、Irgacure369のような他の開始剤の使用が認容される。再度、重要なのは、波長の所望範囲で誘発され、眼科の適用目的のために規定された安全性限界を超えた強度を必要としない開始剤を使用することである。
【0067】
下記の表で記述された実験では、使用された紫外線吸収化合物は、市販されている吸収剤のUVAMである。UVAMの使用は好ましいけれども、他の紫外線吸収化合物も使用することができる。
【0068】
表1で報告された実験では、ポリマースラブは上記したように製造された。次いで、スラブ切片を取り、365nmで30から120分間、1平方センチメートル当たり0.01から8ミリワットの範囲の強度で露光した。切片を通るUV光の透過率および吸光度は、紫外可視分光光度計および示差走査光熱量分析計でそれぞれ測定され、10%透過率における波長(λ)およびΔH(重合発熱量)として報告された。

【表1】

【0069】
(実施例2)
シロキサンのスラブの別のシリーズが、下記の表2に示されるように製造された。スラブは、2つのUV吸収剤を表2に記載した処方条件で使用した以外は、上記のように製造された。吸収剤は、UVAM(2−5クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−z−イル)−6−[(1,1−ジメチル)−4−エチル]フェノールおよびジヒドロキシベンゾフェノンであった。使用された光開始剤は上記したBL4Bであった。スラブは、上記した方法で評価し、その結果は表2に報告した。
【表2】

【0070】
(実施例3)
シロキサン架橋ベンゾインは、次の方法により製造された。マグネティックスターラーを備えた20mL褐色ガラス瓶中に、アリルベンゾイン2.500g、テトラメチルジビニルジシロキサン(GelestからのSID4613.0)0.376gを秤量した。ガラス瓶はゴム製セプタムを備えたねじ蓋で密閉し、5から7分間アルゴンでパージした。その後、ガラス瓶は70℃の油浴中に浸漬し、内容物をマグネティックスターラーを用いて攪拌した。この攪拌溶液に、トルエン3mLを加えた。混合物を、攪拌しながら70℃で15から17分間加熱した。攪拌混合物に、HPtClのTHF50μLを加えた。ゴム製セプタムの蓋を通常のねじ蓋に取り替えた。ガラス瓶の内容物は70℃で24時間撹拌した。混合物の一部を取り出し、ヘキサン:酢酸エチル(95:5&97:3)を使用してシリカゲルTLCを行い、反応の完結を評価した。反応の進行は完了したように見えたが、反応はさらに18から24時間行った。反応は44時間までに終結させた。
【0071】
(実施例4)
フラッシュカラムクロマトグラフィが、実施例3の生成物の精製のために実施された。長さ25インチ、直径1インチの、ガラス製カラム(500mL保持容量)を精製のために使用した。乾燥シリカゲル(600mLのビーカー中、190mLの量)を移しカラムの17インチの高さまで充填した。500mL(485+15mL)のヘキサン:酢酸エチル(97:3比率)が、カラムにシリカゲルを充填するために使用された。充填されたシリカゲルの高さは、今度は13.6インチに達した。実施例3の反応混合物の内容物は、さらにトルエン3mLを使用して、充填されたシリカゲル上に負荷された。500mL(485+15mL)、次いで200mL(194+6mL)のヘキサン:酢酸エチル(97:3比率)が、純粋な生成物の溶出のために使用された。精製過程では、13×100mmの採取管で66のフラクションが集められた。ヘキサン:酢酸エチル(97:3、その後、95:5の比率)を用いたシリカゲルTLCをフラクション毎に行った。TLC分析によれば、フラッシュクロマトグラフィーの過程で分離された4つの主要フラクションがあった。1から18のフラクションは一緒にしてフラクションIとし、19から25のフラクションは一緒にしてフラクションIIとし、26から35のフラクションは一緒にしてフラクションIIIとし、そして36から66のフラクションは一緒にしてフラクションIVとした。これらの4つのフラクションのうち、フラクションIIだけが純粋な化合物であり、それは溶媒をRotavapで蒸発させて分離され、次いで18時間真空乾燥された。集めたフラククションIIの合計量は0.949gであり、それは35.4%の全収率に相当する。UV可視分光光度計による特性は、フラクションIIについて測定され、また、構造を確認する同じ濃度で基礎となるベンゾインアルキルに比べて、約2倍の吸光度を有していた。
【0072】
(実施例5)
別のシロキサンベンゾイン誘導体は、次の方法に従って製造された。マグネティックスターラーを備えた20mL褐色ガラス瓶中に、ベンゾインアルキル0.212g、テトラビニルジメトキシジシロキサン(GelestからのSIT7896.0)0.376gを秤量した。ガラス瓶はゴム製セプタムを備えたねじ蓋で密閉し、5から7分間アルゴンでパージした。その後、ガラス瓶は、70℃の油浴中に浸漬し、内容物をマグネティックスターラーを用いて攪拌した。この攪拌溶液に、トルエン3mLを加えた。混合物を、攪拌しながら、70℃で15から17分間加熱した。この攪拌混合物に、THF中HPtClの50μLを加えた。ゴム製セプタムの蓋を通常のねじ蓋に取り替えた。ガラス瓶の内容物は70℃でさらに24時間撹拌した。混合物の一部を取り出し、ヘキサン:酢酸エチル(95:5 & 97:3)を使用してシリカゲルTLCを行い、反応の完結を評価した。反応の進行は完了したように見えたが、反応はさらに18から24時間行った。反応は44時間までに終結させた。この場合、生成物はシロキサン架橋に結合している4量体のベンゾインアルキルであった。
【0073】
(実施例6)
フラッシュカラムクロマトグラフィが、実施例6の生成物の精製のために実施された。長さ25インチ、直径1インチの、ガラス製カラム(500mL保持容量)を精製のために使用した。乾燥シリカゲル(600mLのビーカー中、190mLの量)を移しカラムの17インチの高さまで充填した。500mL(485+15mL)のヘキサン:酢酸エチル(97:3比率)が、カラムにシリカゲルを充填するために使用された。充填されたシリカゲルの高さは、今度は13.2インチに達した。実施例5の反応混合物の内容物は、さらにトルエン3mLを使用して、充填されたシリカゲル上に負荷された。500mL(485+15mL)のヘキサン:酢酸エチル(97:3比率)、250mL(237.5+12.5mL)および100mL(95+5mL)のヘキサン:酢酸エチル(95:5比率)をカラムに順次、加え純粋な生成物を溶出した。精製過程において、13×100mmの採取管で71のフラクションが集められた。ヘキサン:酢酸エチル(97:3、その後95:5の比率)を用いたシリカゲルTLCをフラクション毎に行った。TLC分析により、フラッシュクロマトグラフィーの過程で分離された5つの主要フラクションがあった。1から6のフラクションは一緒にしてフラクションIとし、7から9のフラクションは一緒にしてフラクションIIとし、10から15のフラクションは一緒にしてフラクションIIIとし、16から33のフラクションは一緒にしてフラクションIVとし、そして34から71のフラクションは一緒にしてフラクションVとした。これらの5つのフラクションのうち、フラクションIIは、2官能性化合物であり、フラクションIIIは、3官能性化合物であり、およびフラクションIVは、純粋な4官能性化合物であった。この純粋な化合物(フラクションV)は、溶媒をRotavapで蒸発させて分離され、次いで18時間真空乾燥された。集めたフラククションVの合計量は0.950gであり、それは40.5%の全収率に相当する。UV可視分光光度計による特性は、フラクションVについて測定され、構造を確認する同じ濃度においてBL−Hと比較して、約4倍の吸光度を有していた。
【0074】
本発明およびその効果を詳細に記載したが、各種の変更、置換および改変が、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく成し得ると理解されるべきである。さらに、本願の範囲は、本明細書に記載した製法、機器、製造、組成物、手段、方法、および工程の特定の実施形態に限定しようとするものではない。当業者が本発明の開示から容易に認識するように、本明細書に記載の対応する実施形態と実質的に同じ機能を発揮し、あるいは同じ結果を達成する既存のまたは将来開発されるであろう製法、機器、製造、組成物、手段、方法、または工程は、本発明によって利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、かかる製法、機器、製造、組成物、手段、方法、または工程をその範囲内に包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収剤および光開始剤のブレンドであって、該光吸収剤は、2から28のモノマー単位を有する少なくとも1つのポリマー架橋に結合している1つまたはそれ以上のUV吸収剤を含み、および該光開始剤は、2から28のモノマー単位を有する少なくとも1つのポリマー架橋に結合している1つまたはそれ以上のUV開始剤を含む該ブレンド。
【請求項2】
UV吸収剤が、式:
【化1】

(式中、Xは独立して、H、好ましくは1から8個の炭素原子を有する、1価の炭化水素基および1価の置換炭化水素基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、好ましくは1から6個の炭素原子を有する、アルコキシ基および置換アルコキシ基、およびハロゲン基から成る群から選択され;各Rは独立して、H、好ましくは1から8個の炭素原子、より好ましくは1から4個の炭素原子を有する、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基から成る群から選択され、水酸基、アミノ基およびカルボキシル基のいずれか、またはそれらの複数基を含み、Rは、アルケニル、置換アルケニル、アルケノキシ、置換アルケノキシ、アクリルオキシアルキルおよび置換アクリルオキシアルキルから成る群から選択され;nは1から4の整数であり、およびmは1から3の整数である)を有し;およびUV開始剤が、式:
【化2】

(式中、RおよびRは、H,アルキル基、アリール基、置換アルキル基、または置換アリール基であり、Rは、フェニルまたは置換フェニルであり、およびRはアリル基またはアリルオキシ基を含む)を有するUV開始剤から選択される、請求項1記載のブレンド。
【請求項3】
ポリマーセグメントが、式:
【化3】

(式中、RからR10は、独立して、アルキル部分、アリール部分およびヘテロアルキル部分から成る群から選択され、pは2から28の整数である)を有するポリシロキサンである、請求項1記載のブレンド。
【請求項4】
シリコン結合光吸収剤およびシリコン結合光開始剤のブレンドであって、該シリコン結合光開始剤が、式:
【化4】

[式中、R12からR16のうち、少なくとも1つは、式:
【化5】

(式中、Rは、H,アルキル基、アリール基、置換アルキル基、または置換アリール基であり、およびRは、H,アルキル基、アリール基、置換アルキル基、または置換アリール基である。Rは、フェニルまたは置換フェニルであり、およびRはアリル基またはアリルオキシ基を含む)を有するUV光開始剤であり、式中、RおよびR10は、独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアルキルから成る群から選択され、およびpは、2から28の整数である]を有し、および該シリコン結合光吸収剤が、式:
【化6】

[式中、R12からR16のうち、少なくとも1つは、式:
【化7】

(式中、Xは独立して、H、好ましくは1から8個の炭素原子を有する、1価の炭化水素基および1価の置換炭化水素基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、好ましくは1から6個の炭素原子を有するアルコキシ基および置換アルコキシ基およびハロゲン基から成る群から選択され;各Rは、独立して、H、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基から成る群から選択され、およびRは、ビニル、アリル、アルケニル、置換アルケニル、アルケノキシ、置換アルケノキシ、アクリルオキシアルキル、置換アクリルオキシ、アクリレート、メタアクリレートおよびシリコンから成る群から選択され、nは1から4の整数であり、およびmは1から3の整数である)を有するUV光吸収剤である]を有する。
【請求項5】
UV光吸収剤がベンゾフェノンである、請求項1記載のブレンド。
【請求項6】
ベンゾフェノンが、構造:
【化8】

を有する、請求項5記載のブレンド。
【請求項7】
ベンゾフェノンが、式:
【化9】

を有する、請求項5記載のブレンド。
【請求項8】
UV光吸収剤が、ベンゾトリアゾールである、請求項4記載のブレンド。
【請求項9】
UV光吸収剤が、式:
【化10】

を有する、請求項8記載のブレンド。
【請求項10】
UV光吸収剤が、式:
【化11】

を有する、請求項8記載のブレンド。
【請求項11】
UV光開始剤が、アリルベンゾインである、請求項4記載のブレンド。


【公表番号】特表2009−501242(P2009−501242A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515758(P2008−515758)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/021059
【国際公開番号】WO2006/135572
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(503113027)カルホーン ビジョン インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】