説明

UV硬化型オーバーコート組成物を用いた画像光沢制御方法

【課題】画像耐久性を提供するだけでなく、画像の光沢制御をも可能にする、デジタル分野にも適用可能なUV硬化型オーバーコート組成物を用いた画像の光沢を制御する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1種のゲル化剤と、少なくとも1種の硬化性モノマーと、少なくとも1種の硬化性ワックスと、必要に応じて少なくとも1種の光開始剤と、を含み、紫外線照射によって硬化するオーバーコート組成物を基材に付与する工程と、前記オーバーコート組成物の付与後、紫外線照射により前記オーバーコート組成物を硬化させる前に、付与された前記オーバーコート組成物を35℃以上の温度に加熱する工程と、前記加熱後、前記オーバーコート組成物に紫外線を照射して、前記オーバーコート組成物を実質的に硬化させる工程と、を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV硬化型オーバーコート組成物を用いた画像光沢制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカラープリンタ(digital color production printer)が印刷市場に進出し続ける中、そのようなプリンタにより形成された画像の耐久性およびドキュメントオフセット性の向上を課題とした研究が続けられている。画像耐久性およびドキュメントオフセット性を改善するための典型的な試みとして、オーバーコートまたはオーバープリントワニスを塗布することが挙げられる。
【0003】
オーバーコート組成物は、画像耐久性およびドキュメントオフセット性の他に、画像の光沢にも影響を及ぼしうる。オーバーコート組成物はしばしば、例えば画像の光沢を所望のものから変化させる(通常、画像の見た目をよりマットにする)などの悪影響を与えることがある。
【0004】
従って、画像耐久性を提供するだけでなく、画像の光沢制御をも可能にする、デジタル分野にも適用可能なUV硬化型オーバーコートが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開第2007/0120921号公報
【特許文献2】米国特許公開第2007/0120924号公報
【特許文献3】米国特許第7,276,614号
【特許文献4】米国特許第7,279,587号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、UV硬化型オーバーコート組成物を用いて画像の光沢を制御する方法が開示される。当該オーバーコート組成物は、少なくとも1種のゲル化剤、少なくとも1種の硬化性モノマー、少なくとも1種の硬化性ワックス、および必要に応じて少なくとも1種の光開始剤を含む。画像の光沢は、基材にオーバーコート組成物を付与した後、かつUV照射によりオーバーコート組成物を硬化させる前に、オーバーコート組成物を加熱することで制御されるか、あるいは加熱に(1)基材に付与する前のオーバーコート組成物中の少なくとも1種の硬化性ワックスの量の設定・調節、および/または(2)基材上に付与されるオーバーコート組成物の量の設定・調節を組み合わせることで制御される。こうすることにより、最終画像に所望の光沢を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本オーバーコート組成物は、放射線硬化型、特にUV硬化型の組成物であり、少なくとも1種のゲル化剤、少なくとも1種の硬化性モノマー、少なくとも1種の硬化性ワックス、および必要に応じて少なくとも1種の光開始剤を含有する。オーバーコート組成物は、着色剤を実質的に含まないか、全く含まないことが望ましい。
【0008】
オーバーコート組成物は、約50〜約120℃、例えば約70〜約90℃の温度で付与され得る。付与時の温度におけるオーバーコート組成物の粘度は、約5〜約16cPs、例えば約8〜13cPsであり得る。本明細書に記載した粘度の値は、円錐平板型粘度計を使用して剪断速度1s-1で得られたものである。したがって、オーバーコート組成物は、インクジェット方式などの付与デジタル手法でオーバーコート組成物が付与されるデバイスでの使用にも十分適している。
【0009】
少なくとも1種のゲル化剤は、少なくとも、所望の温度範囲内でオーバーコート組成物の粘度を上昇させる機能を果たす。例えば、ゲル化剤は、ゲル化剤のゲル化点より低い温度、例えばオーバーコート組成物が付与される温度より低い温度では、オーバーコート組成物中で固体様のゲルを形成する。固体様のときのオーバーコート組成物の粘度は、例えば約103〜約107cPs、例えば約103.5〜約106.5cpsである。ゲル相は通常、固体様相と液相とが共存しており、固体様相は液相の全体にわたって3次元網目構造を形成し、液相が流出するのを巨視的レベルで防いでいる。オーバーコート組成物は、温度をそのゲル化点を挟んで上下に変化させると、ゲル状態と液体状態との間で熱可逆性の転移を示す。ゲルの形成は、水素結合、芳香族間相互作用、イオン結合、配位結合、ロンドン分散相互作用等のゲル化剤分子間の物理的な非共有結合性相互作用による。よって、上記のゲル再形成サイクルは何度も繰り返すことができる。
【0010】
オーバーコート組成物がゲル状態であるときの温度は、例えば約70℃未満、例えば約65℃未満である。ゲル状のオーバーコート組成物は、約65〜約100℃、例えば約70〜約90℃の温度で液化し得る。付与時の温度における液体状態からゲル状態へと冷却される際、オーバーコート組成物の粘度は大きく上昇する。粘度の上昇は、少なくとも3桁台であり、例えば少なくとも4桁台である。一度溶融した(例えば75℃を超える吐出温度において)材料は、ゲル化点に到達するまでは低い粘度、例えば10cPs以下の状態を保つ。ゲル化点に達すると、粘度は急速に、例えば105cPs以上にまで上昇する。一度ゲル化すると、材料は約70℃を超える温度に再び達するまで高い粘度を維持し、約70℃を超えると粘度は再び約10cPs以下になる。
【0011】
放射線硬化型オーバーコート組成物に好適に用いられるゲル化剤としては、硬化性アミド、硬化性ポリアミド−エポキシアクリレート成分、およびポリアミド成分などの硬化性ゲル化剤、硬化性エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂などの硬化性複合ゲル化剤、ならびにこれらの混合物等などが挙げられる。オーバーコート組成物中にゲル化剤を含有させると、冷却により粘度が急速に上昇するため、オーバーコート組成物を基材(画像が形成されていてもよい)に過剰に基材に浸透させることなくコーティングすることが可能となる。紙等の多孔性基材に液体が過剰に浸透すると、基材透明度が望ましくない程度に低下してしまう。また、硬化性ゲル化剤は、オーバーコート組成物中の少なくとも1種のモノマーの硬化に関与してもよい。また、ゲル化剤を含有させることにより粘度が上昇すると、フリーラジカル重合阻害剤である酸素のオーバーコート中への拡散を減少させることができる。
【0012】
オーバーコート組成物に好適に用いられるゲル化剤は、シリコーンオイルが表面に付与された基材に用いた場合のオーバーコート組成物の濡れ性を高めるために、両親媒性であってもよい。両親媒性とは、分子が極性部分および非極性部分の両方を有することを意味する。例えば、ゲル化剤は、長い非極性の炭化水素鎖部分と、極性のアミド結合部分とを有してもよい。
【0013】
好適なアミド系ゲル化剤としては、米国特許第7,276,614号および同第7,279,587号に記載されているものが挙げられる。
【0014】
アミド系ゲル化剤は、米国特許第7,279,587号に記載の次式で表される化合物であってもよい。
【0015】
【化1】

【0016】
上記式中(ここで挙げられている範囲は全て例示であり、これらの範囲外の値も使用することができる)、R1は、
(i)炭素数約1〜約12のアルキレン基(ここで、アルキレン基は2価の脂肪族基またはアルキル基であり、直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環式、非環式、置換、および未置換のアルキレン基を含み、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がアルキレン基中に存在してもしなくてもよい)、
(ii)炭素数約1〜約15のアリーレン基(ここで、アリーレン基は2価の芳香族基またはアリール基であり、置換および未置換のアリーレン基を含み、アリーレン基中にヘテロ原子が存在してもしなくてもよい)、
(iii)炭素数約6〜約32のアリールアルキレン基(ここで、アリールアルキレン基は2価のアリールアルキル基であり、置換および未置換のアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分は直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環式、または非環式であってよく、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分にヘテロ原子が存在してもしなくてもよい)、または
(iv)炭素数約5〜約32のアルキルアリーレン基(ここで、アルキルアリーレン基は2価のアルキルアリール基であり、置換および未置換のアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分は直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環式、または非環式であってよく、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれにもヘテロ原子が存在してもしなくてもよい)であって、置換されたアルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、およびアルキルアリーレン基の置換基は(これらに限定されるものではないが)、ハロゲン原子、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アゾ基、ウレタン基、尿素基、これらの組合せ等であってよく、2つ以上の置換基が結合して環を形成してもよい。
2およびR2’はそれぞれ互いに独立して、
(i)炭素数約1〜約54のアルキレン基、
(ii)炭素数約5〜約15のアリーレン基、
(iii)炭素数約6〜約32のアリールアルキレン基、または
(iv)炭素数約6〜約32のアルキルアリーレン基であって、
置換されたアルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、およびアルキルアリーレン基における置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、ホスフィン基、ホスホニウム基、リン酸基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、ウレタン基、尿素基、これらの組合せ等であってよく、2つ以上の置換基が結合して環を形成してもよい。
3およびR3’はそれぞれ互いに独立して、
(a)光開始基(photoinitiating group)、例えば次式で表される、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパ−1−オンに由来する基、
【0017】
【化2】

次式で表される、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンに由来する基、
【0018】
【化3】

【0019】
次式で表される、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパ−1−オンに由来する基、
【0020】
【化4】

【0021】
次式で表される、N,N−ジメチルエタノールアミンまたはN,N−ジメチルエチレンジアミンに由来する基、または
【0022】
【化5】

【0023】
(b)以下の(i)〜(iv)のいずれかの基:
(i)炭素数約2〜約100のアルキル基(直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環式、非環式、置換、および未置換のアルキル基を含み、アルキル基中にヘテロ原子が存在してもしなくてもよい)、
(ii)フェニル等の炭素数約5〜約100のアリール基(置換および未置換のアリール基を含み、アリール基中にヘテロ原子が存在してもしなくてもよい)、
(iii)ベンジル等の、炭素数約5〜約100のアリールアルキル基(置換および未置換のアリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環式、または非環式であってもよく、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれにもヘテロ原子が存在してもしなくてもよい)、
(iv)トリル等の、炭素数約5〜約100のアルキルアリール基(置換および未置換のアルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環式、または非環式であってもよく、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のいずれにもヘテロ原子が存在してもしなくてもよい。)
【0024】
ここで、置換されたアルキル基、アリールアルキル基、およびアルキルアリール基の置換基は、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、リン酸基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの組合せ等であってよく、2つ以上の置換基が結合して環を形成してもよい。
【0025】
XおよびX’は、それぞれ互いに独立して酸素原子、または式−NR4−で表される基であり、ここでR4は、以下の(i)〜(v)のいずれであってもよい。
(i)水素原子
(ii)直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環式、非環式、置換、および未置換のアルキル基を含む、炭素数約5〜約100のアルキル基であって、アルキル基中にヘテロ原子が存在してもしなくてもよい、アルキル基
(iii)置換および未置換のアリール基を含む、炭素数約5〜約100のアリール基であって、アリール基中にヘテロ原子が存在してもしなくてもよい、アリール基、
(iv)置換および未置換のアリールアルキル基を含む、炭素数約5〜約100のアリールアルキル基であって、アリールアルキル基のアルキル部分が直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環式、または非環式であってもよく、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在してもしなくてもよい、アリールアルキル基
(v)置換および未置換のアルキルアリール基を含む、炭素数約5〜約100のアルキルアリール基であって、アルキルアリール基のアルキル部分が直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環式、または非環式であってもよく、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のいずれにもヘテロ原子が存在してもしなくてもよい、アルキルアリール基
【0026】
ここで、置換されたアルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基の置換基は、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、硫酸基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、リン酸基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの組合せ等であってよく、2つ以上の置換基が結合して環を形成していてもよい。
【0027】
上記の具体的な好ましい置換基およびゲル化剤については米国特許第7,279,587号および同第7,276,614号に更に記載されているので、本明細書ではこれ以上詳述しない。
【0028】
ある実施形態では、ゲル化剤は、下記(I)、(II)および(III)の混合物を含む。
【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
式中、−C3456+a−は、不飽和基および環式基を含んでいてもよい分岐アルキレン基を表し、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数である。
【0033】
ある実施形態では、ゲル化剤は、例えば硬化性エポキシ樹脂およびポリアミド樹脂を含む複合ゲル化剤であってもよい。好適な複合ゲル化剤は、本件と同一の出願人による米国特許出願公開第2007/0120921号に記載されている。
【0034】
複合ゲル化剤中のエポキシ樹脂成分は、如何なる好適なエポキシ基含有材料であってもよい。ある実施形態では、エポキシ基含有成分としては、ポリフェノールベースのエポキシ樹脂またはポリオールベースのエポキシ樹脂のいずれかのジグリシジルエーテル、またはその混合物が挙げられる。好適なエポキシ樹脂の重量平均分子量の範囲は約200〜約800、例えば約300〜約700である。市販されているエポキシ樹脂としては、例えばダウケミカル社(Dow Chemical Corp.)のビスフェノールAをベースにしたエポキシ樹脂(例えばDER383)、またはダウケミカル社のジプロピレングリコールをベースにした樹脂(例えばDER736)が挙げられる。エポキシ樹脂成分は、不飽和カルボン酸またはその他の不飽和試薬を用いた化学反応により、アクリレートまたは(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリルエーテル等で官能化されてもよい。
【0035】
エポキシ−ポリアミド複合ゲル化剤のポリアミド成分としては、如何なる好適なポリアミド材料を使用してもよい。ある実施形態では、ポリアミドは、重合化脂肪酸に由来するポリアミド樹脂、またはポリエステル−ポリアミドやポリエーテル−ポリアミドといったポリアミドのコポリマーである。ゲル化剤の形成には、1種または2種以上のポリアミド樹脂を用いてもよい。市販されているポリアミド樹脂としては、例えばコグニス社(Cognis Corporation、以前のヘンケル社(Henkel Corp.))のVERSAMIDシリーズのポリアミド、具体的にはVERSAMID335、VERSAMID338、VERSAMID795、およびVERSAMID963が挙げられ、これらは全て分子量およびアミン価が低い。また、アリゾナケミカル社(Arizona Chemical Company)のSYLVAGEL(登録商標)ポリアミド樹脂は、次の一般式で表されるポリアルキレンオキシジアミンポリアミドである。
【0036】
【化9】

【0037】
式中、R1は炭素数が少なくとも17のアルキル基であり、R2はポリアルキレンオキシドを含み、R3はC−6炭素環基を含み、nは少なくとも1の整数である。
【0038】
ゲル化剤はまた、例えば本件と同一の出願人による米国特許出願公開第2007/0120924号に開示されているような硬化性ポリアミド−エポキシアクリレート成分およびポリアミド成分を含んでいてもよい。硬化性ポリアミド−エポキシアクリレートの硬化性は、そこに含まれる少なくとも1つの官能基による。アクリレート基等の官能基は、フリーラジカル開始により硬化可能であり、硬化されたインクビヒクルへのゲル化剤の化学結合を可能にする。市販のポリアミド−エポキシアクリレートとしては、コグニス社のPHOTOMER(登録商標)RM370が挙げられる。
【0039】
オーバーコート組成物は、ゲル化剤を任意の好適な量、例えばオーバーコート組成物の約1〜約50重量%にあたる量で含んでいてもよい。ある実施形態では、ゲル化剤はオーバーコート組成物の約2〜約20重量%、例えばオーバーコート組成物の約3〜約10重量%にあたる量で含まれ得るが、この範囲外の量であってもよい。
【0040】
オーバーコート組成物に含まれる少なくとも1種の硬化性モノマーの例としては、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えばサートマー社のSR−9003)、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、イソデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートメチルエーテルモノアクリレート、イソデシルメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0041】
ここで「硬化性モノマー」という用語には硬化性オリゴマーも含まれ、硬化性オリゴマーもオーバーコート組成物に使用することができる。オーバーコート組成物中に使用することのできる好適な放射線硬化性オリゴマーの例としては、粘度が約50〜約10,000cPsと低いものが挙げられる。そのようなオリゴマーの例としては、ペンシルベニア州エクセターのサートマー社(Sartomer Company,Inc.)から市販されているCN549、CN131、CN131B、CN2285、CN3100、CN3105、CN132、CN133、CN132、ジョージア州スミルナのサイテックインダストリーズ社(Cytec Industries Inc.)から市販されているEbecryl140、Ebecryl1140、Ebecryl40、Ebecryl3200、Ebecryl3201、Ebecryl3212、オハイオ州シンシナティのコグニス社から市販されているPHOTOMER3660、PHOTOMER5006F、PHOTOMER5429、PHOTOMER5429F、ニュージャージー州フローハムパーク(Florham Park)のBASF社(BASF Corporation)から市販されているLAROMER PO33F、LAROMER PO43F、LAROMER PO94F、LAROMER UO35D、LAROMER PA9039V、LAROMER PO9026V、LAROMER8996、LAROMER8765、LAROMER8986等が挙げられる。
【0042】
ある実施形態では、硬化性モノマーは、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば、サートマー社のSR−9003)とジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、サートマー社のSR399LV)との両方を含む。ペンタアクリレートを含有させることは、ジアクリレートと比べて、機能性、すなわち反応性をより高める点で有利である。しかし、オーバーコート組成物中のペンタアクリレートの量が多過ぎると、付与時の温度でのオーバーコート組成物の粘度に悪影響を与えることがあるため、制限する必要がある。したがって、ペンタアクリレートの量は組成物の10重量%以下、例えば組成物の0.5〜5重量%とする。
【0043】
ある実施形態では、硬化性モノマーは、例えばオーバーコート組成物の約20〜約95重量%、例えばオーバーコート組成物の約30〜約85重量%、またはオーバーコート組成物の約40〜約80重量%にあたる量で含まれる。
【0044】
オーバーコート組成物は、UV硬化等の硬化を開始させるための少なくとも1種の光開始剤を必要に応じて更に含んでよい。光開始剤は硬化によって黄色を実質的に生じないものが望ましいが、紫外線等の放射線を吸収して配合物中の硬化性成分の硬化を開始させるのであればどのような光開始剤を用いてもよい。
【0045】
アクリレート含有組成物との併用に適したフリーラジカル光開始剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、およびアシルホスフィン系光開始剤が挙げられ、例えばチバ社(Ciba)からIRGACUREおよびDAROCURの商標名で市販されているものがある。好適な光開始剤の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF社製のLUCIRIN TPOとして入手可能);2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(BASF社製のLUCIRIN TPO−Lとして入手可能);ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド(チバ社製のIRGACURE819として入手可能)およびその他のアシルホスフィン;2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(チバ社製のIRGACURE907として入手可能)および1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパ−1−オン(チバ社製のIRGACURE2959として入手可能);2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパ−1−オン(チバ社製のIRGACURE127として入手可能);チタノセン;イソプロピルチオキサントン(ITX);1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン;ベンゾフェノン; 2,4,6−トリメチルベンゾフェノン;4−メチルベンゾフェノン;ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル;オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン);2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン;ベンジル−ジメチルケタール;およびこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
アミン系相乗剤、すなわち光開始剤に水素原子を与えることにより重合を開始するラジカル種を形成する共開始剤(アミン系相乗剤は配合物中に溶解した酸素も消費し得る。酸素はフリーラジカル重合化を阻害するので、酸素が消費されると重合化の速度が速まる)、例えばエチル−4−ジメチルアミノベンゾエートおよび2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート等が含まれてもよい。
【0047】
ある実施形態では、光開始剤パッケージには、少なくとも1種のアルファ−ヒドロキシケトン光開始剤と、少なくとも1種のホスフィノイル系光開始剤とが含まれてもよい。アルファ−ヒドロキシケトン光開始剤の一例はIRGACURE127であり、ホスフィノイル系光開始剤の一例はIRGACURE819である。これらはどちらもニューヨーク州タリタウンのチバガイギー社(Ciba−Geigy Corp.)から入手可能である。アルファ−ヒドロキシケトン光開始剤とホスフィノイル系光開始剤の比率は、例えば約90:10〜約10:90、例えば約80:20〜約20:80、または約70:30〜約30:70であってよい。
【0048】
オーバーコート組成物に含まれる光開始剤の総量は、例えばオーバーコート組成物の約0〜約15重量%、例えば約0.5〜約10重量%であってよい。ある実施形態では、例えばeビーム照射を硬化エネルギー源として使用する場合には、組成物に光開始剤が含まれなくてもよい。
【0049】
オーバーコート組成物には少なくとも1種の硬化性ワックスも含まれる。硬化性ワックスは、後述するように、オーバーコート組成物で被覆された画像の光沢を制御するために使用される。ワックスは室温、具体的には25℃において固体である。したがって、ワックスを含めることにより、オーバーコート組成物が付与時の温度から冷却される際のオーバーコート組成物の粘度上昇を促進することができる。したがって、ワックスは、オーバーコート組成物の基材への滲みをゲル化剤が防止するのを補助することにもなり得る。
【0050】
硬化性ワックスは、その他の成分と混和性でありかつ硬化性モノマーと重合してポリマーを形成するものであれば、如何なるワックス成分であってもよい。ワックスという用語には、例えば、一般的にワックスと呼ばれる種々の天然材料、改質された天然材料、合成材料のいずれも含まれる。
【0051】
硬化性ワックスの好適な例としては、硬化性基を含むか、あるいは硬化性基で官能化されたワックスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。硬化性基としては、例えばアクリレート、メタクリレート、アルケン、アリルエーテル、エポキシド、オキセタン等が挙げられる。これらのワックスは、カルボン酸基やヒドロキシル基等の変換可能な官能基を有するワックスを反応させることにより合成することができる。本明細書に記載の硬化性ワックスは、本明細書に開示されているモノマーとともに硬化させることができる。
【0052】
硬化性基で官能化することのできるヒドロキシル末端化ポリエチレンワックスの好適な例としては、例えば、CH3−(CH2n−CH2OHの構造を有する炭素鎖(ここで、鎖長nは、異なる鎖長が混合しており、平均鎖長は約16〜約50であり得る)と、同様の平均鎖長を有する直鎖低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。このようなワックスの好適な例としては、例えばUNILIN(登録商標)シリーズの材料、例えばそれぞれ約375、460、550、および700g/molに等しいMnを有する、UNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550、およびUNILIN700が挙げられる。これらのワックスは全てベーカーペトロライト社(Baker‐Petrolite)から市販されている。2,2−ジアルキル−1−エタノールであるゲルベ(Guerbet)アルコールも好適な化合物である。ゲルベアルコールの例としては、炭素数約16〜約36のものが挙げられ、その多くはニュージャージー州ニューアークのジャルケムインダストリーズ社(Jarchem Industries Inc.)から市販されている。PRIPOL(登録商標)2033(デラウェア州ニューカッスルのユニケマ社(Uniqema)から入手可能な下記式で表されるアイソマー、ならびに不飽和および環式基を含んでいてもよいその他の分岐アイソマーを含むC−36ダイマージオール混合物)も使用することができる。この種のC36ダイマージオールについての更なる情報は、例えばKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.8,4thEd.(1992)、223〜237頁の“Dimer Acids”に開示されている。
【0053】
【化10】

【0054】
これらのアルコールは、UV硬化性部位を有するカルボン酸と反応して反応性エステルを形成することができる。そのような酸の例としては、シグマアルドリッチ社(Sigma−Aldrich Co.)から利用可能なアクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。
【0055】
硬化性基で官能化することができるカルボン酸末端化ポリエチレンワックスの好適な例としては、CH3−(CH2n−COOHの構造を有する炭素鎖(ここで、鎖長nは、異なる鎖長の混合であり、平均鎖長は約16〜約50である)と、同様の平均鎖長を有する直鎖低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。そのようなワックスの好適な例としては、それぞれ約390、475、565、および720g/molに等しいMnを有する、UNICID(登録商標)350、UNICID(登録商標)425、UNICID(登録商標)550、およびUNICID(登録商標)700が挙げられるが、これらに限定されるものではない。その他の好適なワックスとしてはCH3−(CH2n−COOHの構造を有するものがあり、例えばn=14のヘキサデカン酸すなわちパルミチン酸、n=15のヘプタデカン酸すなわちマルガリン酸またはダツリン酸、n=16のオクタデカン酸すなわちステアリン酸、n=18のエイコサン酸すなわちアラキジン酸、n=20のドコサン酸すなわちベヘン酸、n=22のテトラコサン酸すなわちリグノセリン酸、n=24のヘキサコサン酸すなわちセロチン酸、n=25のヘプタコサン酸すなわちカルボセリック酸、n=26のオクタコサン酸すなわちモンタン酸、n=28のトリアコンタン酸すなわちメリシン酸、n=30のドトリアコンタン酸すなわちラッセル酸、n=31のトリトリアコンタン酸すなわちセロメリシン酸またはプシリン酸、n=32のテトラトリアコンタン酸すなわちゲダ酸、n=33のペンタトリアコンタン酸すなわちセロプラスチン酸である。2,2−ジアルキルエタン酸であるゲルベ酸も好適な化合物である。ゲルベ酸の例としては、炭素数16〜36のものが含まれ、その多くはニュージャージー州ニューアークのジャルケムインダストリーズ社から市販されている。PRIPOL(登録商標)1009(デラウェア州ニューカッスルのユニケマ社から入手可能な下記式で表されるアイソマー、ならびに不飽和および環式基を含んでいてもよいその他の分岐アイソマーを含むC36−ダイマー酸混合物)も使用することができる。この種のC36ダイマー酸についての更なる情報は、例えばKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.8,4thEd.(1992)、223〜237頁の“Dimer Acids”に開示されている。)
【0056】
【化11】

【0057】
これらのカルボン酸は、UV硬化性部位を有するアルコールと反応させて反応性エステルを形成することができる。そのようなアルコールの例としては、シグマアルドリッチ社の2−アリルオキシエタノール、サートマー社のSR495B(下記式)、
【0058】
【化12】

【0059】
ならびにサートマー社のCD572(下記式でR=H、n=10)およびSR604(下記式でR=Me(メチル)、n=4)が挙げられる。
【0060】
【化13】

【0061】
硬化性ワックスは、例えばオーバーコート組成物の約0.1〜約30重量%にあたる量で含まれてもよい。含まれる硬化性ワックスの量は、オーバーコート組成物によって画像に付与される光沢に影響するため、オーバーコート組成物により付与されるべき所望のベース光沢に基づいて設定・調節され得る。このベース光沢は、後述するように、付与されたオーバーコート組成物に熱を付与することで調節され得る。
【0062】
オーバーコート組成物は、必要に応じて酸化防止剤安定化剤を含有してもよい。酸化防止剤は、酸化から画像を保護するとともにインク調製プロセス中の加熱部分においてインク成分を酸化から保護する。好適な酸化防止剤安定化剤の具体例としては、コネティカット州ミドルベリのクロンプトン社(Crompton Corporation)から市販されているNAUGARD(商標)524、NAUGARD(商標)635、NAUGARD(商標)A、NAUGARD(商標)I−403、およびNAUGARD(商標)959;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)から市販されているIRGANOX(商標)1010およびIRGASTAB UV10;スイス、チューリヒのラーンAG社(Rahn AG)から市販されているGENORAD16およびGENORAD40;等が挙げられる。
【0063】
オーバーコート組成物は、更に必要に応じて、従来より使用される添加剤を、それらの機能を利用するために含んでもよい。そのような添加剤としては、例えば消泡剤、界面活性剤、スリップ剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
【0064】
オーバーコート組成物は、実質的に無色である。「実質的に無色」とは、硬化後のオーバーコート組成物が実質的にまたは完全に透明(transparent)または清澄(clear)であることを意味する。そのために、組成物は顔料、染料、またはその混合物等の着色剤を実質的に含まなくてもよい。本明細書に記載のオーバーコート組成物は、硬化しても黄色を呈さず、実質的にまたは完全に透明または清澄のままであり、すなわちL***値またはk、c、m、yのいずれにおいても測定可能な差がほとんどまたは全く観察されない。「実質的に黄色を呈さない」または「実質的にまたは完全に透明または清澄」とは、硬化の際の色または色相の変化が約15%未満、例えば約10%未満、または約5%未満、例えば約0%であるオーバーコート組成物を指す。
【0065】
ある実施形態では、本明細書に記載のオーバーコート組成物の調製は、硬化性モノマー、硬化性ワックス、およびゲル化剤を約75〜約120℃、例えば約80〜約110℃、または約75〜約100℃の温度で均質になるまで、例えば約0.1〜約3時間混合することで行われ得る。混合物が均質になった後に光開始剤を添加してもよく、硬化性モノマー、硬化性ワックス、ゲル化剤、および光開始剤を直に混合してもよい。
【0066】
オーバーコート組成物は、基材上に直接付与してもよく、かつ/または基材上に予め形成された画像上に直接付与してもよい。この点に関して、オーバーコート組成物は、(1)付与基材上に形成された少なくとも1つの印刷画像の部分(全体より小さい)または全体;(2)基材の1以上の部分、および基材の印刷可能な全部分より小さい部分(印刷可能な部分とは、印刷デバイスにより画像を形成することができる基材の部分である);あるいは(3)基材の印刷可能部分の全部分または実質的に全部分、に付与され得る。基材または基材上の画像の全部分より小さい部分にオーバーコート組成物が付与される場合、1つの最終画像に異なる光沢特性をもたせることができる。
【0067】
オーバーコート組成物を画像、画像の一部、基材、および/または基材の一部にコーティングするとき、種々の解像度レベルで付与することができる。例えば、網点プリント(print halftone dot)の解像度、画像の明瞭な(distinct)部分の解像度、または、基材の非画像形成領域上に組成物の一部が重なる場合を考慮して、画像の明瞭部分より少し低い解像度で付与してもよい。組成物の付与量は、通常は一滴あたり約5〜約50ピコリットルである。組成物は、画像形成の任意の段階において、少なくとも1つのパスで画像上に付与することができ、例えば、これに限定されるものではないが、圧電または音響インクジェット印刷法等のドロップオンデマンド型インクジェット印刷を初めとする任意の公知のインクジェット印刷技術を用いて行うことができる。組成物の付与は、画像形成に使用されるのと同じ情報を用いて1つのデジタルファイルだけで画像およびオーバーコート組成物が形成されるように付与制御することができる。したがって、オーバーコート組成物は完全にデジタルであってもよい。
【0068】
付与後は通常、オーバーコートは組成物のゲル化点よりも下の温度まで冷却される。これにより、オーバーコート組成物は基材に急速に固定される。オーバーコート組成物により付与される画像光沢を制御するために、付与されかつ望ましくはゲル化したオーバーコート組成物は熱処理に付される。例えば、オーバーコート組成物は少なくとも35℃、例えば約40〜約110℃、または約40〜約80℃の温度下に置かれる。この熱処理は、オーバーコート組成物をUV硬化させる前に実施しなければならない。熱処理により、オーバーコート組成物は再フロー(reflow)し、例えばオーバーコート組成物が短時間で再溶融し、その後再び固化する。再フローのためにオーバーコート組成物をわざわざゲル化点の下まで冷却する必要はなく、組成物の粘度が加熱による再フローが可能な程度であればよい。この手法により、オーバーコート組成物により付与される光沢を、組成物のベース光沢を超えて上昇させることができることを見出した。光沢の上昇は、例えば約1〜約30光沢単位、例えば約2〜約25光沢単位、または約5〜約20光沢単位分であり得る(光沢単位はBYKガードナー光沢計を用いて75°で測定される)。
【0069】
加熱は、オーバーコート組成物の付与後かつ紫外線照射前に、上記の再フローが得られるのに十分な時間、例えば約0.01〜約10秒または約0.1〜約1秒行われ得る。
【0070】
オーバーコート組成物の加熱は、如何なる好適な熱源を用いて行ってもよい。ある実施形態では、加熱は赤外線照射ランプを用いて行われ得る。オーバーコート組成物に適用される温度は、赤外線照射ランプの出力レベルを制御することで制御することができ、出力レベルが高くなるほど、オーバーコート組成物は高い温度に曝される。別の実施形態では、加熱は対流式オーブン等の対流式加熱装置を用いて行われてもよい。加熱装置は、プロセス方向でUV硬化ランプの直前に位置することが望ましい。
【0071】
付与したオーバーコート組成物を熱処理した後、組成物をUV照射(硬化エネルギー)に曝して組成物を硬化する。紫外線などの好適な硬化エネルギーUV源に曝されると、光開始剤がこのエネルギーを吸収して、ゲル様のオーバーコート組成物を硬化した保護オーバーコートに変換する反応を開始する。好適な硬化エネルギー源に曝されると、オーバーコート組成物の粘度は更に上昇し、オーバーコート組成物は硬化して固体状になる。組成物中のモノマーおよびワックス、ならびに必要に応じて含まれてもよいゲル化剤に含まれる官能基は、光開始剤がUV光に暴露されることで重合し、ポリマーネットワークを形成する。このポリマーネットワークは、印刷画像に、例えば耐久性、熱安定性、光安定性、耐スクラッチ性、および防汚性を付与する。
【0072】
組成物の放射線硬化性成分の架橋を開始するために用いられるエネルギー源は、化学線、例えば紫外領域の波長を有する放射線であってもよい。なぜならそのようなエネルギーは架橋の開始および速度の制御に優れているからである。好適な化学放射線源としては、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、レーザー、発光ダイオード、日光等が含まれる。
【0073】
紫外線照射は、特に中圧水銀ランプと、UV光下にある例えば約20〜約70m/mimの高速コンベアとを用いて、波長約200〜約500で約1秒未満の間行われ得る。ある実施形態では、高速コンベアの速度は、波長約200〜約450nmのUV光下で約15〜約35m/mimである。UV光源の発光スペクトルは通常、UV開始剤の吸収スペクトルと重複する。所望により使用してもよい硬化用機器としては、UV光を焦点に集めるか分散させる反射体、およびUV光源からの熱を取り除く冷却システムが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
オーバーコート組成物による光沢を熱処理で制御する方法に加え、組成物中の硬化性ワックスの量を調整することによって光沢を制御することができる。例えば、オーバーコート組成物中の硬化性ワックスの量を変更することによってオーバーコート組成物のベース光沢を調整することができる。その後、前述したように、熱処理によってオーバーコート組成物により付与される光沢をベース光沢を超える程度に調節してもよい。
【0075】
ベース光沢の調整において、オーバーコート組成物に含まれる硬化性ワックスの量が5重量%以下である場合、付与されたオーバーコート組成物付与はその下の画像または基材の光沢が増すように作用し得る(画像をより光沢があるように見せる)が、オーバーコート組成物に更に多くの硬化性ワックスが含まれると、オーバーコートされた画像の光沢が低下するように作用する(当初の光沢上昇および/または下の画像もしくは基材と比べて、画像の光沢を低く、すなわちよりマットに見せる)。
【0076】
そこで、硬化性ワックスのこのような特性を、画像の光沢制御の補助に利用することができる。例えば、最初にオーバーコート組成物のベース光沢を決定し、決定したベース光沢に基づいて、オーバーコート組成物中に含まれる少なくとも1種の硬化性ワックスの量を調整し、少なくとも1種の硬化性ワックスが上記の調整した量で含まれるようにオーバーコート組成物を調製する。次いで、オーバーコート組成物は基材上に付与され得る。例えば、紙等の基材上に先に形成された画像または画像の一部に付与するか、基材または基材の一部に直接付与する。
【0077】
ある実施形態では、オーバーコート組成物に含める少なくとも1種の硬化性ワックスの量の調整は、ルックアップテーブルに、所望のベース光沢を当てはめることで達成することができ、このルックアップテーブルには、オーバーコートされる画像の色(所定の色)のエントリと、オーバーコート組成物中に少なくとも1種の硬化性ワックスを種々の量で含むオーバーコート組成物により得られる光沢のエントリとが含まれる。ルックアップテーブルは、調整した付与量でオーバーコート組成物が種々の異なる色に付与する光沢を事前に評価することで作成することができる。
【0078】
各種のルックアップテーブルのための情報はデータベースに含まれていてもよく、そこからコンピュータ等の計算機器によって、所望のベース光沢を得るために必要な硬化性ワックスの推定量を引き出すことができ、引き出された値を用いて、オーバーコート組成物中に含まれる硬化性ワックスの量を調整することができる。これは、ルックアップテーブル中に、所定の色または硬化性ワックスの量と正確に一致するエントリがない場合に有用である。
【0079】
基材および/または基材上に予め形成されている画像に付与されるオーバーコート組成物の量も、最終画像の光沢に影響を与え得る。一般に、オーバーコート組成物の使用量が多いほど、最終画像の光沢度は低くなる。そこで、この情報も最終画像の光沢制御に利用することができる。例えば、種々のオーバーコート組成物の厚みに対するベース光沢度がルックアップテーブルに含まれていると、特定のベース光沢を得るためにどれだけのオーバーコート組成物を付与すればよいかについての情報を得ることができる。このようなルックアップテーブルは、種々の異なる色および種々の異なるコーティング量によって付与される光沢についてオーバーコート組成物を事前に評価することで作成することができる。前述のように、ルックアップテーブルのデータベースおよび計算機器を用いることによっても、付与すべきオーバーコート組成物の量を決定することができる。
【0080】
使用する基材は、プリントの最終用途に応じて、任意の適当な基材であってよい。基材の例としては、普通紙、コート紙、プラスチック、高分子膜、加工セルロース、木、コピー用基材(xerographic substrate)、セラミックス、繊維、金属、および箔、ならびにこれらの混合物が含まれ、これらは必要に応じて添加剤でコーティングされていてもよい。
【0081】
トナーベースの画像をコーティングするときには、溶融トナーベースのプリントが最初に得られ、その後、オーバーコート組成物を含むインクジェットプリンタに付される。トナーベースのプリントは、如何なる好適な従来のゼログラフィー技術またはその派生技術で作成されてもよい。
【0082】
同様に、インクベースの画像をコーティングするときには、インクベースの画像が最初に作成され、その後、オーバーコート組成物を含むインクジェットプリンタに付される。インクベースの画像をインクジェットプリンタで形成する場合、オーバーコート組成物を収容する別のインクジェットプリンタにインクベースの画像を供してもよいし、オーバーコート組成物とインクジェットインクを同じインクジェットプリンタに収容し、それにより、インクジェットインク画像が形成された後に基材および/または画像上にオーバーコート組成物を無色透明の液体としてコーティングしてもよい。インクベースの画像、特にインクジェットプリンタを用いて作成された画像をオーバーコート組成物でコーティングする場合、画像は如何なる好適な従来のプロセスまたはその派生プロセスで調製されてもよい。
【0083】
以下の実施例では、特に記載のない限り、部および百分率は重量を基準にする。
【実施例】
【0084】
表1に記載されている成分および量を含有するオーバーコート組成物の全成分を一緒に90℃で1時間かけて混合した。次いで、オーバーコート組成物を、K校正機(K−Proofer)を用いてゼロックス社製デジタルカラーグロス(Digital Color Gloss)に付与した(グラビアコーティング)。付与の後、かつライトハンマー6UV光による硬化の前に、プリントを3つの異なる温度に曝し、サーモラベル感熱テープ(ペーパー・サーモメーター社(Paper Thermometer Co.)製)を用いてそのときのプリントの温度を測定した。硬化後の光沢は、BYK社製ガードナー光沢計を用いて75°で測定した。結果を以下の表2に要約する。
【0085】
【表1】

【0086】
IRランプを用いて3つの互いに異なるプリントを熱処理した。各サンプルを、約10m/minの速度で動いているコンベアに乗せ、IRランプ、UV硬化ランプの下を順に通過させた。
【0087】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の光沢を制御する方法であって、
少なくとも1種のゲル化剤と、少なくとも1種の硬化性モノマーと、少なくとも1種の硬化性ワックスと、必要に応じて少なくとも1種の光開始剤と、を含み、紫外線照射によって硬化するオーバーコート組成物を基材に付与する工程と、
前記オーバーコート組成物の付与後、紫外線照射により前記オーバーコート組成物を硬化させる前に、付与された前記オーバーコート組成物を35℃以上の温度に加熱する工程と、
前記加熱後、前記オーバーコート組成物に紫外線を照射して、前記オーバーコート組成物を実質的に硬化させる工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
画像の光沢を制御する方法であって、
画像の所望の光沢を決定する工程と、
少なくとも1種のゲル化剤と、少なくとも1種の硬化性モノマーと、少なくとも1種の硬化性ワックスと、必要に応じて少なくとも1種の光開始剤と、を含み、紫外線照射によって硬化するオーバーコート組成物を提供する工程と、
前記オーバーコート組成物を基材に付与する工程と、
前記オーバーコート組成物の付与後、紫外線照射により前記オーバーコート組成物を硬化する前に、付与された前記オーバーコート組成物を35℃以上の温度に加熱する工程と、
前記加熱後、前記オーバーコート組成物に紫外線を照射して、前記オーバーコート組成物を実質的に硬化させる工程と、
を含み、
前記所望の光沢が、付与される前記オーバーコート組成物の厚さの制御および/または前記オーバーコート組成物に付与される熱の制御により達成される、方法。

【公開番号】特開2010−106275(P2010−106275A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248907(P2009−248907)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】