説明

VCAM−1に特異的に結合するヒト単一クローン抗体及びそれを含む炎症性疾患または癌の治療用組成物

本発明は、VCAM−1に特異的に結合するヒト単一クローン抗体及びそれを含む炎症性疾患または癌の治療用組成物に関するものであって、本発明によるヒト単一クローン抗体などは、ヒト内皮細胞またはマウス内皮細胞で発現されたVCAM−1に対して強い親和力を示し、VCAM−1を発現する活性化された内皮細胞に白血球が付着することを効果的に阻害するのみならず、低い免疫原性を示すので、喘息、鼻炎、関節炎、多発性硬化症、大腸疾患、動脈硬化、心筋梗塞及び移植拒絶のような炎症性疾患または癌の治療に有用に使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VCAM−1に特異的に結合するヒト単一クローン抗体及びそれを含む炎症性疾患または癌の治療用組成物に関するものである。より詳細には、ヒト血管細胞付着分子−1(VCAM−1)に対して強い特異性と、結合親和度(affinity)を示し、VCAM−1を発現する活性化された内皮細胞と白血球との間の相互作用を効果的に阻害するのみならず、低い免疫原性を示すVCAM−1に特異的に結合するヒト単一クローン抗体及びそれを含む炎症性疾患または癌の治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
白血球などの免疫細胞は、血流から組職に移動する時、活性化された内皮細胞を通過して免疫反応を起こすようになり、このような白血球の内皮細胞への付着と組職への移動には、インテグリン、セレクチン、ICAM(intracellular adhesion molecule)、VCAM(vascular cell adhesion molecule)などの多くの細胞付着分子(Cell-adhesion molecules,CAM)が関与する。 細胞付着分子は、機能的に白血球と内皮細胞との間の相互作用に関与するセレクチン類と、内皮細胞に対する白血球の付着に関与するインテグリン類と、免疫グロブリンなどに分けられる。これらの細胞付着分子などは、免疫反応、炎症だけでなく、血液の凝固など多くの生理反応に主要な役割を果たしている。
【0003】
VCAM−1は、好中球を除いた大部分の白血球の表面に発現されるインテグリン(VLA−4)と相互作用する血管内皮細胞付着分子である。VCAM−1は、炎症信号によって活性化された内皮細胞上で高度に誘導されて白血球の血管内皮細胞への付着と、以後に白血球の損傷部位への内皮間(transedothelial)移動に関与する。
【0004】
炎症と癌においてVCAM−1の役割とVCAM−1−VLA−4の相互作用に対する多くの報告(publication)にもかかわらず、VCAM−1を中和させる抗体の開発は活発に研究されていない。最近、マウスVCAM−1に対する単一クローン抗体であるM/K−2.7が開発され、コラーゲン誘導された関節炎マウスモデルにおける関節炎を減少させる効果を示したが、これは、マウスのみに特異的に結合するので、臨床適用に困難さがある。
【0005】
また、VCAM−1は、IgG様ドメイン7個から構成され、その相手リガンドであるインテグリン(α4β1またはα4β7)と結合する際は、実質的にドメイン1とドメイン4が主に関与する(1995, PNAS,92:p5714; 1995,The journal of immunology,155: p3135など)。従って、(開発抗体)がVCAM−1抗原とリガンドとの間の相互作用を阻害するためには、ドメイン1またはドメイン4に対する強い結合力を有しなければならないだろう。このような観点から、前臨床及び臨床の研究のために、マウスとヒトVCAM−1との間に特異的交差反応性を示し、VCAM−1抗原とインテグリンとの相互作用を効果的に阻害しながら、免疫原性の危険性を最小化することができる十分且つ安全なヒト単一クローン抗体の開発が至急に要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明者らは、マウスとヒトVCAM−1との間に特異的交差反応性を示し、VCAM−1抗原とインテグリンとの相互作用を効果的に阻害し、免疫原性の危険性を最小化することができるヒト単一クローン抗体を開発するために鋭意努力した。本発明者らは、ヒト抗体ライブラリーからヒト由来重鎖および軽鎖ドメインを含むヒト及びマウスVCAM−1に特異的な新規なヒト単一クローン抗体を製作し、VCAM−1抗原のドメイン1−2またはドメイン3−4に結合してU397前単核球白血球と活性化された内皮細胞との間の相互作用を抑制する強い活性を確認して本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの目的は、ヒト由来重鎖(heavy chain V)及び軽鎖(light chain V)ドメインを含むヒト血管細胞付着分子−1(VCAM−1)に特異的に結合して活性化された内皮細胞と白血球との相互作用を阻害するヒト単一クローン抗体を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、VCAM−1に特異的に結合するヒト単一クローン抗体を含む炎症性疾患または癌の診断用組成物を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、VCAM−1に特異的に結合するヒト単一クローン抗体と炎症性疾患または癌が疑われる個体の生物学的試料のVCAM−1との抗原−抗体反応を検出する段階を含む、炎症性疾患または癌の診断のための情報の提供方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、VCAM−1で媒介された内皮細胞に対する白血球付着を阻害するヒト単一クローン抗体を用いて炎症性疾患または癌の治療用組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、個体に本発明による治療用組成物を投与することによって、炎症性疾患または癌を治療する方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、本発明による単一クローン抗体を用いてVCAM−1媒介された内皮細胞への白血球の付着を阻害させる方法を提供することである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるヒト単一クローン抗体は、ヒトまたはマウス内皮細胞に発現されたVCAM−1に対して強い親和力を示し、VCAM−1を発現する活性化された内皮細胞への白血球の付着を効果的に阻害するのみならず、低い免疫原性を示すヒト由来重鎖及び軽鎖ドメインを有するので、喘息、鼻炎、関節炎、多発性硬化症、大腸疾患、動脈硬化、心筋梗塞及び移植拒絶のような炎症性疾患または癌の治療に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、ヒトVCAM−1−D1−D4とマウスVCAM−1抗原を用いて行ったパニングの結果を示したものである。
【図2】図2は、本発明による3種のヒト単一クローン抗体などの可変領域アミノ酸配列を示したものである。
【図3】図3は、酵素結合免疫吸着測定法(Enzyme-linked immuno-sorbent assay:ELISA)によってヒトVCAM−1ドメインに応じて抗原特異的な抗VCAM−1ヒト単一クローン抗体などの抗原に対する親和度を示すものであって、VD2は、組換えヒトVCAM−1ドメインD1−D2/Fcキメラ、VD4は、組換えヒトVCAM−1ドメインD1−D4/Fcキメラ、VD7は、組換えヒトVCAM−1ドメインD1−D7/Fcキメラを示したものである。
【図4】図4は、抗VCAM−1ヒト単一クローン抗体などの、精製されたヒト組換えVCAM−1抗原とヒト白血球細胞との間の付着に対する阻害能を分析した結果であって、抗体で処理しない群に対比して蛍光強さの減少によって阻害能を決定した。
【図5】図5は、抗VCAM−1ヒト単一クローン抗体などのTNF−α(Tumor necrosis factor-α)によって活性化されたヒト内皮細胞とヒト白血球細胞との間の付着に対する阻害能を分析した結果であって、抗体で処理しない群に対比して蛍光強さの減少によって阻害能を決定した。
【図6】図6は、抗VCAM−1ヒト単一クローン抗体などのRhoA(Ras homolog gene family、member A)活性阻害能分析結果を示したものである。
【図7】図7は、抗VCAM−1ヒト単一クローン抗体などによるROS(Reactive oxygen species)活性阻害能分析結果を示したものである。
【図8】図8は、オボアルブミンによって誘導されたマウス喘息動物モデルで気管支肺胞洗浄液への炎症細胞の浸潤に対する抗VCAM−1抗体の阻害能分析結果である(正常群対比##、p<0.01;###、p<0.001、喘息誘発群対比*、p<0.05;**、p<0.01)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前記の目的を達成するための一つの態様として、本発明は、ヒト血管細胞付着分子−1(VCAM−1)に特異的に結合して白血球と活性化された内皮細胞との間の相互作用を阻害するヒト単一クローン抗体を提供する。
【0016】
本願で使用される用語“抗体”は、免疫学的に特定抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を意味し、多クローン抗体及び単一クローン抗体の両方を含む。また、前記用語は、キメラ性抗体(例えば、ヒト化マウス(murine)抗体)及び異種結合抗体(例えば、両特異性抗体)のような遺伝子変形された形態を含む。
【0017】
また、用語“抗体”は、抗原結合能力を持つ断片(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv及びrIgG)を含む、抗体の抗原結合形態を含む。また、前記用語は、組換え単一鎖Fv断片(scFv)を示す。また、用語“抗体”は、二価(bivalent)または両特異性分子、ジアボディー(diabodies)、トリアボディー(triabodies)、およびテトラボディー(tetrabodies)を含む。二価及び両特異性分子は、例えば、Kostelnyら(1992,J.Immunol.,148:15467)、Pack及びPluckthun(1992,Biochemistry,31:1579)、Hollingerら(1993,Supra)、Gruberら(1994,J.Immunol.,5368)、Zhuら(1997,Protein Sci.,6:781)、Huら(1996,Cancer Res.,56:3055)、Adamsら(1993,Cancer Res.,53:4026)及びMcCartneyら(1995,Protein Eng.、8:301)に記述されている。
【0018】
また、本願で使用される用語“単一クローン抗体”は、実質的に同一の抗体集団から収得した抗体分子を指称し、このような単一クローン抗体は、特定エピトープに対して単一結合特異性及び親和度を示す。
【0019】
典型的に、免疫グロブリンは、重鎖及び軽鎖を持つ。それぞれの重鎖及び軽鎖は不変領域及び可変領域(前記部位は、“ドメイン”としても知られている)を含む。軽鎖及び重鎖の可変領域は、“相補性決定領域”(complementarity-determining region)、または‘CDR’と呼ばれる3つの多変異領域及び4つの“フレームワーク”領域を含む。前記CDRは、主に抗原のエピトープに結合する役割を果たす。それぞれの鎖のCDRは、典型的にN−末端から始めて順次にCDR1、CDR2、CDR3と呼ばれ、また、典型的に特定CDRが位置している鎖によって識別される。
【0020】
また、本願で使用される用語“ヒト化抗体”は、ヒト免疫グロブリンから由来する分子であって、相補性決定領域、及びフレームワーク領域を含んだ抗体を構成するすべてのアミノ酸配列全体がヒトの免疫グロブリンから構成されていることを意味する。ヒト化抗体は、通常的にヒトの疾病治療に使用するための少なくとも3つ以上の潜在的な長所を有している。第一に、それはヒト免疫体系とより良好に相互作用し、例えば、補体−依存性細胞傷害性(CDC)または抗体−依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)によって目的細胞をより効率的に標的を破壊することができる。第二に、ヒト免疫体系は、前記抗体を外来のものとして認識しない。第三に、ヒト循環系内の半減期が天然発生抗体と類似して、より少ない量をより少ない頻度で投与することができる。従って、本発明によるヒト単一クローン抗体などは、ヒト内皮細胞に発現されたVCAM−1に対して強い親和力を示し、VCAM−1を発現する活性化された内皮細胞に対する白血球の付着を効果的に阻害する。それのみならず、重鎖及び軽鎖ドメインのすべてがヒト由来であるから低い免疫原性を示すので、本発明によるヒト単一クローン抗体は、喘息、鼻炎、関節炎、多発性硬化症、大腸疾患、動脈硬化、心筋梗塞及び移植拒絶のような炎症性疾患または癌の治療に使用され得る。
【0021】
本願で使用される用語“白血球と活性化された内皮細胞との間の相互作用の阻害”は、本発明のヒト単一クローン抗体が活性化された内皮細胞で発現するVCAM−1に特異的に結合して、白血球上で発現されるVLA−4(very late antigen-4)及びα4β1インテグリンと内皮細胞で発現されるVCAM−1との相互作用を阻害させる、または内皮細胞間の間隙形成を阻害するすべての機作を意味する。このような相互作用の阻害は、これに制限されないが、その例として、活性化された内皮細胞に対する白血球の付着阻害またはROS(Reactive oxygen species)及びRhoA(Ras homolog gene family、member A)の活性減少による内皮細胞間の間隙形成の阻害によって行われることができる。内皮細胞に白血球のような免疫細胞が結合すると、内皮細胞の信号経路で細胞内部のRhoAとROSが活性化されて細胞を連結している分子などの堅固な連結を緩める信号伝達を誘発するようになる。以後に、内皮細胞間の間隙が拡張されて穴(hole)が生成される。その穴を介して免疫細胞が通過し、炎症部位に移動する。しかし、本発明の抗体は、内皮細胞の信号経路のうち、ROSとRhoAの活性を減少させて内皮細胞間の間隙形成が阻害されて穴が生成されないようにする。結果的に、免疫細胞が炎症部位に移動されることを阻んで白血球と活性化された内皮細胞との間の相互作用を阻害することができる。
【0022】
本発明の一実施態様によれば、本発明のヒト単一クローン抗体4Bは、0.1μg以上でヒトVCAM−1抗原に対する白血球の付着に対して80%の阻害を示し、本発明のヒト単一クローン抗体7C及び7Hは、10μgでヒトVCAM−1抗原に対する白血球の付着に対して90%以上の阻害を示すことを確認した(図4)。また、ヒト内皮細胞に対する白血球の付着に対して、本発明のヒト単一クローン抗体4Bは、0.1〜10.0μgで50〜60%の阻害を示し、本発明のヒト単一クローン抗体7C及び7Hは、10μgで50〜60%以上の阻害を示すことを確認した(図5)。前記の結果は、本発明の抗体が白血球の活性化された内皮細胞への付着を効果的に阻害することを確認した。また、ヒト単一クローン抗体4Bが約80%のRhoA阻害を示し、ヒト単一クローン抗体7Hが約30%のRhoA阻害することを確認し(図6)、ヒト単一クローン抗体4Bが約65%のROS阻害を示し、ヒト単一クローン抗体7Hが約25%のROS阻害することを確認し(図7)、本発明の抗体がRhoA及びROSの活性を効果的に減少させて内皮細胞間の間隙形成を阻害することを確認した。このような結果は、抗体の白血球と活性化された内皮細胞との間の相互作用の阻害効果が炎症性疾患または癌のようなVCAM−1関連疾患に対する診断及び治療方法に適用され得ることを示唆する。
【0023】
好ましい一実施態様として、本発明のヒト単一クローン抗体は、配列番号2で記載された重鎖CDR1;配列番号3で記載された重鎖CDR2;及び配列番号4で記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号14で記載された軽鎖CDR1;配列番号15で記載された軽鎖CDR2;及び配列番号16で記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。より好ましくは、本発明のヒト単一クローン抗体は、配列番号1で記載された重鎖アミノ酸配列及び配列番号13で記載された軽鎖アミノ酸配列を含み得る。本発明の一実施態様によれば、配列番号1で記載された重鎖アミノ酸配列及び配列番号13で記載された軽鎖アミノ酸配列を含むヒト単一クローン抗体を4Bと命名した。
【0024】
好ましい一実施態様として、前記ヒト単一クローン抗体は、ヒトVCAM−1に対する親和度を提供するが、ヒト単一クローン抗体のヒトVCAM−1抗原に対する結合/解離定数(K値)は、1×10−11M〜9×10−9Mであり得る。これは、ビアコア(BIACORE)分析を用いて各抗体などのヒトVCAM−1抗原に対する結合/解離定数(K値)を決定することによって求めることができる。本発明の一実施態様によれば、ヒト単一クローン抗体4Bは、ヒトVCAM−1抗原に対して約1nM水準の強い親和度を持つことを確認し(表1)、これは、本発明の抗体がVCAM−1に強い特異的親和度を持つことを示唆することであって、従って、本発明の抗体は、VCAM−1に対する抗原認識を要求する任意の適用で使用され得る。
【0025】
好ましい一実施態様として、本発明の前記ヒト単一クローン抗体は、ヒトVCAM−1だけでなく、マウス血管細胞付着分子−1(VCAM−1)に特異的に結合しながら白血球と活性化された内皮細胞との間の相互作用を阻害するヒト単一クローン抗体であり得る。このような単一クローン抗体は、ヒト及びマウスVCAM−1に同時に結合可能であり、すなわち、交差反応性を有するので、マウスでの前臨床研究に有用な利点がある。
【0026】
前記ヒト及びマウス血管細胞付着分子−1(VCAM−1)に特異的に結合するヒト単一クローン抗体は、配列番号6で記載された重鎖CDR1;配列番号7で記載された重鎖CDR2;及び配列番号8で記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号18で記載された軽鎖CDR1;配列番号19で記載された軽鎖CDR2;及び配列番号20で記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。より好ましくは、前記ヒト単一クローン抗体は、配列番号5で記載された重鎖アミノ酸配列及び配列番号17で記載された軽鎖アミノ酸配列を含む。本発明の一実施態様によれば、配列番号5で記載された重鎖アミノ酸配列及び配列番号17で記載された軽鎖アミノ酸配列を含むヒト単一クローン抗体を7Cと命名した。
【0027】
また、前記ヒト及びマウス血管細胞付着分子−1(VCAM−1)に特異的に結合するヒト単一クローン抗体は、配列番号10で記載された重鎖CDR1;配列番号11で記載された重鎖CDR2;及び配列番号12で記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号22で記載された軽鎖CDR1;配列番号23で記載された軽鎖CDR2;及び配列番号24で記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。より好ましくは、前記ヒト単一クローン抗体は、配列番号9で記載された重鎖アミノ酸配列と配列番号21で記載された軽鎖アミノ酸配列を含む。本発明の一実施態様によれば、配列番号9で記載された重鎖アミノ酸配列と配列番号21で記載された軽鎖アミノ酸配列を含むヒト単一クローン抗体を7Hと命名した。
【0028】
好ましい一実施態様として、前記ヒト単一クローン抗体などは、ヒトVCAM−1に対する親和度を提供するが、ヒト単一クローン抗体のヒト及びマウスVCAM−1抗原に対する結合/解離定数(K値)は、1×10−10M〜9×10−8Mであり得る。これは、ビアコア分析を用いて各抗体などのヒトVCAM−1に対する結合/解離定数(K値)を決定することによって求めることができる。本発明の一実施態様によれば、ヒト単一クローン抗体7C及び7Hは、ヒト及びマウスVCAM−1抗原に対して約5〜100nM水準の高い親和度を持つことを確認し(表1)、これは、本発明の抗体がヒト及びマウスVCAM−1に強い特異的親和度を持つことを示唆することであって、本発明の抗体は、VCAM−1に対する抗原認識を要求する任意の適用で有用であり得る。すなわち、本発明のヒト単一クローン抗体は、ヒトVCAM−1またはヒト及びマウスVCAM−1に強い特異的親和度を持つから、活性化された内皮細胞に対する白血球の付着を効果的に阻害させるので、炎症性障害または癌のようなVCAM−1関連疾患に対する効果的な診断及び治療方法を提供することができる。
【0029】
また一つの態様として、本発明は、ヒトまたはヒト及びマウスVCAM−1に特異的に結合するヒト単一クローン抗体の製造方法に関するものである。
【0030】
本発明の単一クローン抗体は、公知の単一クローン抗体製造技術で容易に製造され得る。例えば、単一クローン抗体を製造する方法は、免疫された動物から得たBリンパ球を使用してハイブリドーマを製造することによって行われることができるとか(Koeher and Milstein,1976,Nature,256:495)、ファージディスプレイ(phage display)技術を用いることによって行われることができるが、これに制限されるのではない。
【0031】
ファージディスプレイを用いた抗体ライブラリーは、ハイブリドーマを製作せず、直ぐBリンパ球から得られた抗体遺伝子を有したファージ表面に抗体を発現させる方法である。ファージディスプレイ技術を用いると、B−細胞不滅化によって単一クローン抗体を生成するのに係わる多くの困難さが克服され得る。一般的にファージディスプレイは、1)ファージの外皮タンパク質pIII(または、pIV)N−末端に該当する遺伝子部位にランダム配列のオリゴヌクレオチドを挿入する段階;2)天然型の外皮タンパク質と前記ランダム配列のオリゴヌクレオチドによってコーディングされるポリペプチドの融合タンパク質を発現させる段階;3)前記オリゴヌクレオチドによってコーディングされたポリペプチドと結合し得る受容体物質で処理する段階;4)受容体に結合されたペプチド−ファージ粒子などを低いpHや結合競争力のある分子を用いて溶出させる段階;5)パニングによって溶出されたファージを宿主細胞内で増幅させる段階;6)所望の量のファージを得るために前記方法を繰り返す段階;及び7)パニングによって選別されたファージクローンなどのDNA配列から活性があるペプチドの配列を決定する段階から構成される。
【0032】
好ましい一実施態様として、本発明の単一クローン抗体の製造方法は、ファージディスプレイによって行われることができる。当業者は、公知のファージディスプレイ技術、例えば、Barbasら(METHODS:A Companion to Methods in Enzymology 2: 119,1991及びJ.Virol.2001 Jul;75(14):6692-9)及びWinterら(Ann.Rev.Immunol.12:433,1994)の論文などに公知された方法を参考して前記本発明の製造方法の各段階を容易に行うことができる。抗体ライブラリーを構築するために使用され得るファージは、例えば、フィラメント性ファージであって、fd、M13、f1、If1、Ike、Zj/Z、Ff、×f、Pf1またはPf3ファージがあるが、これに制限されるのではない。また、前記フィラメント性ファージの表面上に異種遺伝子の発現のために使用され得るベクターには、例えば、fUSE5、fAFF1、fd−CAT1またはfdtetDOGなどのファージベクター、またはpHEN1、pComb3、pComb8またはpSEXなどのファージミドベクターがあるが、これに制限されるのではない。
【0033】
また、組換えファージの成功的な再感染のために要求される天然型外皮タンパク質を提供するために使用され得るヘルパーファージは、M13K07またはVSCM13によって増幅されることができるが、これに制限されるのではない。
【0034】
本発明の一実施態様によれば、組換え技術で収得したVCAM−1の分子量及び純度を確認した後、単一クローン抗体の製造に用いた。ヒト及びマウスVCAM−1に対する特異的なヒト抗体をファージディスプレイ技術によってヒト由来scFv(single-chain variable fragment)で収得し、単一ファージクローンでスクリーニングすることによって、ヒト、またはヒト及びマウスVCAM−1のすべてに特異的な22種の単一クローンファージを収得した。前記の単一クローンファージは下記のように収得した。第1に、前記VCAM−1を多様性を有したヒト純粋scFvライブラリー細胞からのライブラリーファージと反応させた後、VCAM−1抗原に強く結合する単一クローンをパニングしてスクリーニングした(表1及び図2)。前記選別された単一クローンなどをフィンガープリンティングで確認した後、それぞれの配列を分析して抗体のVHとVLのCDR部位を確認した。前記抗体と生殖系抗体群の類似性をNCBIのIgBLASTプログラム(//www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を用いて確認した。その結果、VCAM−1に特異的な22種のファージ抗体を得た。
【0035】
また、本発明の一実施態様によれば、前記選別された22種のヒト抗体ファージの重鎖及び軽鎖またはその免疫学的活性を有した断片を暗号化するポリヌクレオチドを含む発現ベクターを製作した。前記発現ベクターの製作時には、前記ヒト抗体の軽鎖及び重鎖またはその断片を生産しようとする宿主細胞の種類に応じてプローモーター、ターミネーター、エンハンサーなどのような発現調節要素、及び膜標的化または分泌のための配列などを適切に選択し、目的に応じて様々に組み合わせして使用することができる。
【0036】
本発明の発現ベクターには、プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクター及びウイルスベクターなどが含まれるが、これらに制限されない。適切な発現ベクターは、プローモーター、オペレーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーのような発現調節要素だけでなく、膜標的化または分泌のためのシグナル配列またはリーダー配列を含み、目的に応じて様々な形態で製造され得る。
【0037】
また、本発明の一実施態様によれば、本発明はヒト抗体と結合するヒトVCAM−1抗原の結合ドメインの位置を確認する方法を提供することができる。VCAM−1は、7個のIgG様ドメインから構成されており、実質的にドメイン1と4がその相手リガンドであるインテグリン(α4β1またはα4β7)との結合に関与すると知られている。本発明の一実施態様によれば、ヒトVCAM−1抗原をドメイン別(D1−D2、D1−D4、D1−D7)で発現精製した後、ELISAを行って22種抗体などの抗原結合部位を分析した。その結果、抗体ごとに抗原結合部位が様々であり、それらのうち、ドメインD1−D2に結合する抗体4B、7H、及びドメインD3−D4に結合する7Cを確保することができた(図3)。
【0038】
また、本発明では、白血球と活性化された内皮細胞間の相互作用がVCAM−1によって媒介されるから、ヒト白血球(U937細胞)と組換えヒトVCAM−1またはヒトTNF−αで刺激させたヒト内皮細胞(HUVEC)との間の相互作用に対する前期抗体の阻害能を分析することができる。本発明の一実施態様によれば、ヒトVCAM−1−固定された固体支持体または、HUVEC単層プレートに前記の抗体などを様々な濃度で処理した。抗体が蛍光ラベリングされたU937細胞と抗原の結合を阻害することができるかどうかを確認するために、蛍光強度を測定した。その結果、前記抗体3種のいずれも阻害能を示した。特に、ヒトVCAM−1抗原に対して、最も強い親和度を示す4B抗体は、低い抗体濃度でも強い阻害能を示すことを確認することができる(図4及び図5)。
【0039】
このような本発明の単一クローン抗体は、ヒトまたはマウスのような様々な細胞類型で発現されるVCAM−1と強い親和性を持つから、VCAM−1に対する抗原認識を使用する任意の適用で使用され得る。特に、単一クローン抗体は、活性化された内皮細胞に対する白血球の結合を強力に阻害させる。従って、本発明は、炎症性疾患などのようなVCAM−1関連疾患に対する効果的な診断及び治療方法を提供することができる。
【0040】
従って、本発明のヒト、またはヒト及びマウスのVCAM−1と特異的に結合するヒト単一クローン抗体は、単独でまたは通常の薬剤学的に許容される担体と共にVCAM−1関連疾患に対する診断及び治療用薬剤学的組成物の形態で使用可能である。
【0041】
また、本発明の単一クローン抗体は、様々な目的のために他の抗体、生物学的活性を有する製剤または物質と共に使用され得る。例えば、本発明の単一クローン抗体は、内皮細胞のVCAM−1発現によって特徴付ける疾患などの治療において4B9または他の抗VCAM−1抗体と共に使用され得る。また、本発明の単一クローン抗体は、炎症反応において示される別の内皮細胞受容体(例えば、ELAM1及びICAM1など)を認識する抗体などと併用して使用され得るだけでなく、公知の炎症性疾患治療薬物と併用して使用され得る。
【0042】
また一つの態様として、本発明は、前記ヒト単一クローン抗体を含む炎症性疾患または癌の診断用組成物を提供する。
【0043】
すなわち、ヒト、またはヒト及びマウスVCAM−1に特異的に結合する単一クローン抗体を含む診断用組成物を使用して、VCAM−1の発現と関連された疾患またはVCAM−1媒介される疾患、例えば、炎症性疾患または癌を診断することができる。
【0044】
本願で使用される用語、“炎症性疾患”は、VCAM−1と関連された炎症性疾患は制限なく含まれることができるが、その例として、喘息、鼻炎、関節炎、多発性硬化症、大腸疾患、動脈硬化、心筋梗塞または移植拒絶を意味する。
【0045】
本発明の炎症性疾患または癌の診断用組成物は、薬学的に許容可能な担体を更に含むことができ、担体と共に製剤化され得る。本願で使用される用語、“薬学的に許容可能な担体”とは、有効成分の生物学的活性及び特性を阻害しない担体または希釈剤をいう。液状溶液に製剤化される組成物において許容される薬剤学的担体としては、滅菌されて生体に適したものでなければならない。例えば、薬学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち、1つ成分以上を混合して使用することができる。必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び滑沢剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤型、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤で製剤化することができる。
【0046】
また一つの態様として、本発明は、前記単一クローン抗体及び炎症性疾患または癌が疑われる個体の生物学的試料のVCAM−1を抗原−抗体反応を介して検出する段階を含む、炎症性疾患または癌の診断のための情報の提供方法を提供する。すなわち、本発明の組換えヒト単一クローン抗体を生物学的試料と反応させ、抗原−抗体複合体形成を検出することによってVCAM−1タンパク質を検出することができる。結果的に、これを介して炎症性疾患または癌の診断のための情報を提供することができる。
【0047】
本願で使用される用語“個体”とは、犬、猫、豚、ヤギ、ウサギ、ハムスター、サル、モルモット(guinea pigs)、ラット、マウス、トカゲ、ヘビ、ヒツジ、牛、魚及び鳥を制限なく含み、任意の動物(例えば、ヒト)を意味する。
【0048】
本願で使用される用語“生物学的試料”とは、組職、細胞、全血、血清、血漿、組職剖検試料(脳、皮膚、リンパ節、脊髓など)、細胞培養上澄液、破裂した真核細胞及び細菌発現系などが挙げられるが、これらに制限されるのではない。これらの生物学的試料を操作するとか操作しない状態で本発明の単一クローン抗体と反応させてVCAM−1タンパク質の存在、炎症性疾患または癌の有無を確認することができる。
【0049】
本願で使用される用語“抗原−抗体複合体”とは、試料中のVCAM−1タンパク質抗原とこれを認識する本発明による単一クローン抗体の結合物を意味する。このような抗原−抗体複合体の形成は、比色法、電気化学法、蛍光法、発光法、粒子計数法、目視測定法及び閃光計数法からなる群から選択される任意の方法で検出することができる。しかし、必ずしもこれらにのみ制限されなく、様々な応用と適用が可能である。
【0050】
本発明では、抗原−抗体複合体を検出するためのものとして、様々な標識体を使用することができる。具体的な例としては、酵素、蛍光物、リガンド、発光物、微小粒子、放射性同位元素からなる群から選択されることができ、必ずしもこれらにのみ限定されるのではない。
【0051】
標識として使用される物質の適切な例として、酵素としてはアセチルコリンエステラーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ラクタマーゼなどを含み、蛍光物としてはフルオレセイン、Eu3+、Eu3+キレートまたはクリプテートなどを含み、リガンドとしてはビオチン誘導体などを含み、発光物としてはアクリジニウムエステル、イソルミノール誘導体などを含み、微小粒子としてはコロイド金、着色されたラテックスなどを含み、放射性同位元素としては57Co、H、125I、125I−ボルトンハンター試薬などを含む。
【0052】
好ましくは、抗原−抗体複合体を酵素免疫吸着法(ELISA)を用いて検出することができる。酵素免疫吸着法には、支持体に付着された抗原を認識する標識された抗体を用いる直接的ELISA、支持体に付着した抗原を含む抗原−抗体複合体の捕獲抗体を認識する標識された2次抗体を用いる間接的ELISA、支持体に付着した抗原−抗体複合体で抗原を認識する標識された他の抗体を用いる直接的サンドイッチELISA、及び支持体に付着した抗原−抗体複合体で抗原を認識する抗体と反応させた後、この抗体を認識するまた他の標識された2次抗体を用いる間接的サンドイッチELISA方法を含む。前記単一クローン抗体は、検出標識を持つことができ、検出標識を持たない場合は、本発明の単一クローン抗体を捕獲することができ、検出標識を持つ他の抗体を処理して抗原−抗体複合体で検出することができる。
【0053】
また一つの態様として、本発明は、前記ヒト単一クローン抗体を含む炎症性疾患または癌の治療用組成物、及び前記治療用組成物を個体に投与する段階を含む、炎症性疾患または癌の治療方法を提供する。
【0054】
本発明の炎症性疾患または癌の治療用組成物は、薬学的に許容可能な担体を更に含むことができ、担体と共に製剤化され得る。使用され得る担体は、前記で説明したことと同様である。
【0055】
この時、前記炎症性疾患は、喘息、鼻炎、関節炎、多発性硬化症、大腸疾患、動脈硬化、心筋梗塞及び移植拒絶からなる群から選択され得るが、これらに制限されるのではない。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、本発明によるヒト単一クローン抗体が生体内抗炎症効果を有するかどうかを検証するためにマウス喘息に対する効能実験を実施した。前記の抗VCAM−1ヒト抗体を投与した後、全体炎症細胞数が、特に、リンパ球と好酸球、大食細胞が有意に減少した。つまり、前記抗体の喘息炎症細胞の流入における抑制効能は、現在、喘息治療剤として使用されているアミノフィリンと類似することを確認することができる(図8)。
【0057】
本発明のヒト単一クローン抗体を含む治療用組成物は、薬学的に有効な量で単一または多重投与され得る。この時、組成物は、液剤、散剤、エアロゾル、カプセル剤、腸溶性錠剤またはカプセル剤または坐剤の形態で投与することができる。投与経路は、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与などを含むが、これらに制限されない。しかし、経口投与の時、ペプチドは消化されるから、経口用組成物の活性成分は、コーティングするとか胃での分解から保護されるように剤型化されるべきである。また、製薬組成物は、活性成分が標的細胞へ移動できる任意の装置によって投与され得る。
【0058】
本発明の単一クローン抗体を含む組成物は、薬剤学的に有効な量で投与する。“薬剤学的に有効な量”とは、医学的治療または予防に適用可能な合理的な受恵/危険の比率で疾患を治療または予防するのに十分な量を意味し、有効用量水準は、疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康、性別;患者の薬物に対する敏感度;投与時間、投与経路及び排出比率;治療期間;または、本発明の組成物と配合または同時に使用される薬物を含む要素、またはその他の医学分野によく知られた要素に応じて決定することができる。また、本発明の単一クローン抗体を含む組成物は、個別治療剤として投与するとか他の治療剤と併用して投与されることができ、従来の治療剤とは順次または同時に投与され得る。
【0059】
本発明の薬剤学的組成物を薬学的に有効な量で投与する場合、VCAM−1と強い親和性を有した本発明の単一クローン抗体が内皮細胞に発現されたVCAM−1に特異的に結合することによってVCAM−1を中和させる。結局、本発明の単一クローン抗体は、前記内皮細胞に対する白血球の付着を阻害することによってVCAM−1関連疾患を治療することができる。好ましいVCAM−1関連疾患は、炎症性疾患または癌であり、より好ましく前記炎症性疾患は、関節炎、鼻炎、多発性硬化症、大腸疾患、喘息、動脈硬化、心筋梗塞または移植拒絶である。
【0060】
また一つの態様として、本発明は、本発明によるヒト単一クローン抗体を使用してVCAM−1媒介された内皮細胞への白血球の付着を阻害させる方法を提供する。つまり、VCAM−1は、炎症及び免疫拒否において活性化された白血球上で発現されるVLA−4及びα4β1インテグリンと結合して内皮細胞と単核球及びT細胞を含む白血球の間の相互作用を促進する重要な役割を果たす。本発明による単一クローン抗体は、VCAM−1に特異的に結合して内皮細胞への白血球の付着を阻害させ得る。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するものだけであり、本発明の内容が下記実施例に限定されるのではない。
【0062】
実施例1:ヒト及びマウスVCAM−1抗原の確保
<1−1>ヒトVCAM−1のクローニング
韓国生命工学研究院ヒト遺伝体機能研究事業団のKUGI(Korean UniGene Information)からヒトVCAM−1遺伝子を含有しているプラスミド(hMU012650)(Kugi # IRAU-75-G02)の分譲を受けた。前記プラスミドを鋳型DNAにし、前記VCAM−1のD1−D2ドメインとD1−D4ドメインのみを発現させるために、VCAM−1のD1−D2ドメインの場合、正方向プライマー(5’−CAGGGGGCCGTGGGGGCCTTTAAAATCGAGACCACCCC−3’、配列番号25)及び逆方向プライマー(5’−TAGCGGCCGACGCGGCCAATTGCAATTCTTTTACAGCCTG−3’、配列番号26)を使用し、VCAM−1のD1−D4の場合、正方向プライマー(5’−CAGGGGGCCGTGGGGGCCTTTAAAATCGAGACCACCCC−3’、配列番号27)と逆方向プライマー(5’−TAGCGGCCGACGCGGCCAAGAGCTCCACCTGGATTCCCT−3’、配列番号28)を使用して各遺伝子を増幅させた。sfiIで処理した後、リガーゼを用いてpYK602−FcベクターとpYK602−His onlyベクター(KRIBBで製造したベクター)にそれぞれ遺伝子をクローニングした。PCR条件は、全体反応液が50μlである時、鋳型は、100ngを94℃で2分間反応させた後、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分30秒(D1−D4)、45秒(D1−D2)で30サイクル、72℃で10分間反応させてPCR産物を得た。合わせて、前記クローニングされたpYK602−FC−VCAM−1−D1−D2、pYK602−His−VCAM−1−D1−D2、pYK602−FC−VCAM−1−D1−D4及びpYK602−His−VCAM−1−D1−D4ベクターなどの塩基配列を確認した。
【0063】
<1−2>VCAM−1タンパク質の発現及び精製
hVCAM−1に高い親和度を有する抗体のうちからmVCAM−1とも交差反応性を有している抗体を選別するために、様々なタンパク質を準備した。そのうち、分子全体を含むhVCAM−Fc−キメラ(R&D system,cat#: 862-VC)とmVCAM−1−Fcキメラ(R&D systems,Cat#: 643-VM)は、商業的に購買し、各VCAM−1ドメインの断片の精製及び切断は、次のように行った。
【0064】
先ず、150mmディッシュ10枚に5×10の293E細胞をまいた後、翌日に前記クローニングされたpYK602−VCAM−1−D1−D2ベクターとpYK602−VCAM−1−D1−D4ベクターをそれぞれ20μgずつPEI(23966: Polysciences,Inc,USA)で処理して形質転換した。翌日、培地を無血清DMEMに置換した後、一日おきに上澄液を得て10%SDS−PAGEゲルで電気泳動した後、ウェスタンブロッティングで発現量を確認した。
【0065】
hVCAM−1−D1−D2−FcとhVCAM−1−D1−D4−Fcの発現が確認された上澄液を収集した後、0.22μmのトップフィルター(Millipore,Cat#: SCGP T05 RE)を使用してフィルタリングして十分なタンパク質量を得た。タンパク質を使用前に精製し、精製過程は、次の通りである。先ず、エコノ−カラム(Bio-Rad Cat.No 737-1006,1×5cm)をPBSで洗浄した後、プロテインA(Amersham Cat.No.17-1279-30)500μlをパッキングした。パッキングする間にPBS(pH7.4)を10ml程度流してビーズを洗浄し、結合バッファーである20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)を30ml程度流した。その後、得られた上澄液をぜん動ポンプ(Peri-staltic pump)(Bio-Rad Cat.No.731-8142)を用いて0.5ml/分の流速で流した。カラムに結合させた後、PBSで2ml/分の流速で1時間程度洗浄した後、溶出するようにした。0.1Mグリシン−HCl(pH2.5)の500μlで溶出し、1/10体積の1Mトリス−HCl(pH9.0)を入れて中和させた。6個の溶出分画のうち、#1〜#2分画で大部分のタンパク質が溶出された。この2つの分画は、10Kの透析膜に入れて4LのPBSで一晩(o/n)透析した。前記のすべての過程は、4℃冷蔵室で行った。定量した後、生成物を分割して−70℃に保管した。精製した後、生成物を10%SDS−PAGEゲルで確認した。hVCAM−1−D1−D2−FcとhVCAM−1−D1−D4−Fcは、それぞれ2.8mgと800μgの量で収得した。hVCAM−1−D1−D2−hisとhVCAM−1−D1−D4−hisは、発現が確認された上澄液を収集した後、0.22μmのトップフィルター(Millipore,Cat#: SCGP T05 RE)を使用してフィルターリングした後、LabScale TFFシステム(Millipore,Cat#: XX42LSS11)のペリコンXLメンブレン(Millipore,8K,cat #: PXB0 08A 50)を用いて1/10体積に濃縮した。濃縮物に10倍体積のIMAC緩衝溶液(300mM KCl,50mM KHPO,5mM イミダゾール,pH8.0)を入れてIMAC緩衝溶液に置き換えた。Bio-RadのProfiniaTMタンパク質精製システムのBio-Scle Mini profinity IMAC cartridge(cat#:732-4610)を使用して1ml/分の速度で製造社のマニュアルに明示されたとおりに精製した。前記溶離液をメンブレイン(10K,132574:SPECTRAPOR,USA)を使用して4℃で4LのPBS溶液に4時間以上緩衝溶液を透析し、再び、予冷しておいた4LのPBS溶液に入れて一晩透析した。一晩透析した後、結果物を電子管(e-tube)に移し、ブラッドフォード方法でタンパク質濃度を測定した。結果的に、400μgのhVCAM−1−D1−D4−hisタンパク質を得て、10%SDS−PAGEゲルで確認した。
【0066】
実施例2:ライブラリーファージの製造
多様性を持ったヒトscFv(single-chain variable fragment)ライブラリー細胞2.7×1010を2×YTCM[Tryptone(CONDA,1612.00)17g、イースト抽出物(CONDA,1702.00)10g、NaCl(Sigma,S7653-5Kg)5g、クロラムフェニコール(Sigma,C0857)]34μg/ml、2%グルコース(Sigma,G5400)及び5mMのMgCl(Sigma,M2393)を含む培地(3L)で37℃で2〜3時間培養した(OD600=0.5〜0.7)。以後、ヘルパーファージを感染させて2×YTCMK[2×YTCM、カナマイシン(Sigma,K1876)70μg/ml、1mMのIPTG(ELPISBIO,IPTG025)]培地で30℃で16時間培養した。培養した細胞を遠心分離(4500rpm、15分、4℃)した後、上澄液を得て4%PEG(Fluka,81253)6000と3%NaCl(Sigma,S7653)を添加した溶液に溶解した後、氷で1時間反応させた。反応物を再び遠心分離(8000rpm、20分、4℃)した。ペレットにPBSを添加して溶解した後、遠心分離(12000rpm、10分、4℃)した。結果として、ライブラリーファージを含む上澄液を得て新しいチューブに入れて4℃で保管した。
【0067】
実施例3:ファージディスプレイを介したパニング
7個のIgG様ドメインから構成されたVCAM−1がそのリガンドであるアルファ4ベータ1インテグリン(α4β1インテグリン)と結合する時、ドメイン1とドメイン4が結合部位として機能をすると知られている。従って、VCAM−1全体分子だけでなく、ヒトVCAM−1−D1−D4(hVCAM-1-D1-D4)を用いてパニングを行った。本実施例では、hVCAM−1−D1−D4に対するパニング方法と結果を記載した。
【0068】
<3−1>hVCAM−1−D1−D4に対するパニング
4mlのコーティング緩衝溶液[coating buffer;NaCO(Sigma,S7795)1.59g、NaHCO(Sigma,S8875)2.93g、NaN(Sigma,S2002)、0.2g]を使用してImmunosorbチューブ(Nunc 470319)をhVACM1−D1−D−His抗原30μgで4℃で16時間程度回転機でコーティングした。以後、抗原を室温で2時間PBSに溶解して脱脂乳[(BD, 232100)−1XPBS中4%]を使用して免疫チューブでブロッキングした。免疫チューブに前記で製造したライブラリーファージ2mlを添加して室温で2時間反応させた。免疫チューブをPBST(0.05%)で5回、PBSで2回洗浄した。洗浄後、抗原特異的scFv−ファージを100mM TEA(Sigma,T-0886)で溶離した。溶出されたファージなどを大膓菌(XL1-Blue,stratagene,200249)に感染させて増幅した。1次パニングで増幅されたファージをPBSTで13回、PBSで23回洗浄し(2次:13回、3次:23回)、洗浄回数が増加したことの他に、前記記載されたものと同一の方法で2次及び3次パニングを行った。これらの3次多クローンファージ抗体のファージ抗体でマウスVCAM−1に交差反応性を有した抗体をスクリーンするために、mVCAM−1−Hisを抗原として4次パニングを行った。その結果、mVCAM−1−Hisに結合されたファージ抗体数の増加は起きなかった。しかし、hVCAM−1−D1−4に対する結合力を持ったファージ抗体でmVCAM−1−His抗原に対して4次パニングをしたものであるので、結果として、ファージ抗体が交差反応性を持ったことが分かった。また、これらの4次パニングのファージ抗体でmVCAM−1−Hisに対して5次パニングした。その結果、mVCAM−1−His抗原に対するファージのコロニータイターが10倍以上増幅された(表1及び図1)。
【0069】
【表1】

【0070】
<3−2>hVCAM−1−D1−D4とmVCAM−1に対するパニング結果確認
1次から5次までパニングして凍らせておいた細胞貯蔵物を5mlの2×YTCM、2%グルコース、5mMのMgClを含んだ培地にOD600=0.1になるように溶解した。次に、細胞を37℃で2〜3時間(OD600=0.5〜0.7)培養してM1ヘルパーファージを感染させた。以後、細胞を2×YTCMK、5mMのMgCl、1mMのIPTGを含む培地で30℃で16時間培養した。培養細胞を遠心分離した後(4500rpm、15分、4℃)、上澄液(1次〜3次パニングポリscFv−ファージ)を新しいチューブに移した。96ウェル免疫プレート(NUNC 439454)にVCAM−1抗原を(100ng/ウェル)4℃で16時間程度コーティング緩衝溶液で処理してコーティングした後、PBSに溶解した脱脂乳(4%)を使用してブロッキングした。各ウェルごとにPBS−tween20(0.05%)0.2mlで洗浄した。1次〜3次パニングポリscFV−ファージを各ウェルに100μlずつ入れて室温で2時間反応させた。各ウェルをPBS−tween20(0.05%)0.2mlで4回洗浄した。2次抗体である抗−M13−HRP(Amersham 27-9421-01)を1:2000に希釈して室温で1時間反応させた。PBS−tween20(0.05%)0.2mlで洗浄した後、OPD錠剤(Sigmap 8787-TAB)をPC緩衝溶液[CO(Sigma,C0706)5.1g、NaHPO(Sigma,S7907)7.3g]に加えて基質溶液を作って各ウェルに100μl/ウェルずつ入れて10分間発色させた。OD490を分光光度計(Spectrometer,MolecularDevice,米国)で測定した。ポリファージELISAの結果、4次パニングからのファージ抗体群でhVCAM−1−D1−D4に対する結合能が飽和状態に至り、mVCAM−1に対する結合能は、5次パニングからのファージ抗体で飽和状態であることを確認した。また、hVCAM−1−D1−D4とmVCAM−1−Hisに対して、対照群と比較の時、高い親和力の交差反応性を示した(図1)。
【0071】
<3−3>単一クローン抗体選別
前記強い結合能を有する多クローン抗体から得られたコロニーを(全体hVCAM−1抗原を使用した3次パニングと、hVCAM−1−D1−D4抗原を使用した4、5パニング)2×YTCM、2%グルコース、5mMのMgClを補充した培地を1ml/ウェルで含んだ96ディープウェルプレート(Bioneer,90030)で37℃で16時間培養した。OD600が0.1に至るまで細胞を培養した。96ディープウェルプレートに盛られた2×YTCM、2%グルコース、5mMのMgClを補充した培地に100〜200μlの培養溶液を接種した後、37℃でOD600値が0.5〜0.7になるように2〜3時間培養した。細胞をM1ヘルパーファージで(MOI=1:20)感染させた後、感染された細胞を2×YTCMK、5mMのMgCl、1mMのIPTGを補充した培地で30℃で16時間培養した。培養した細胞を遠心分離(4500rpm、15分、4℃)した後、上澄液を取って4%PEG6000と3%NaClを添加した。完全に溶解した後、氷で1時間反応させた。反応物を遠心分離(8000rpm、20分、4℃)した後、ペレットをPBSに溶解した。再び遠心分離(12000rpm、10分、4℃)して上澄液を取り、それよりパニング単一クローンscFV−ファージを得た。ファージを新しいチューブに移して4℃で保管した。
【0072】
以後、96ウェル免疫プレートをhVCAM−1−Fcキメラ(R&Dシステム)(100ng/ウェル)で4℃で16時間コーティングした後、PBSに溶解した脱脂乳(4%)でブロッキングした。96−ウェル免疫プレートの各ウェルをPBS−tween20(0.05%)0.2mlを使用して洗浄した。3次パニング単一クローンscFv−ファージ(各100scFv−ファージ)を各ウェルに100μlずつ入れて室温で2時間反応させた。各ウェルをPBS−tween20(0.05%)0.2mlで4回洗浄した。2次抗体である抗−M13−HRPを1:2000で希釈して室温で1時間反応させた。その後、プレートをPBS−tween20(0.05%)0.2mlで洗浄した後に発色させた。OD490を測定した。
【0073】
その結果、様々なVCAM−1抗原に対して68個の単一クローンなどの結合能を比較し、これらの種類をフィンガープリンティングと配列分析で確認した。最終的に22種の互いに異なるファージ抗体を選別した。
【0074】
実施例4:全IgG形態へのクローニング
hVCAM−1に対する単一クローンファージ抗体などをファージからIgG全体ベクターに転換するために、単一クローンDNA1μlと10pmole/μlの4B PCRのための重鎖正方向プライマー(TTGGTGGCCACAGCGGCCGATGTCCACTCGCAGATGCAGCTGGTGCAGTC、配列番号29)と重鎖逆方向プライマー(GAGGAGGCTAGCTGAGGAGACGGTGA、配列番号30)、7C PCRのための重鎖正方向プライマー(TTGGTGGCCACAGCGGCCGATGTCCACTCGCAGGTGCAGCTGGTGGAGTC、配列番号31)と重鎖逆方向プライマー(配列番号30)及び7H PCRのための重鎖正方向プライマー(配列番号29)と重鎖逆方向プライマー(配列番号30)、10Xバッファー5μl、10mMのdNTPmix1μl、pfu DNA重合酵素(Solgent、2.5U/μl)0.5μl、蒸留水でコロニーPCR(iCycler iQ、 BIO-RAD)を行って重鎖を得た。また、4B PCRのための軽鎖正方向プライマー(TTGGTGGCCACAGCGGCCGATGTCCACTCGCAGCCTGTGCTGACTCAGCC、配列番号32)と軽鎖逆方向プライマー(GAGGAGAGATCTTTAGGACGGTGACCTTGGTCCC、配列番号33)、7C PCRのための軽鎖正方向プライマー(TTGGTGGCCACAGCGGCCGATGTCCACTCGCAGCCTGTGCTGACTCAATC、配列番号34)と軽鎖逆方向プライマー(GAGGAGAGATCTTTAGGACGGTCAGCTTGGTCCC、配列番号35)、7H PCRのための軽鎖正方向プライマー(TTGGTGGCCACAGCGGCCGATGTCCACTCGGACATCCAGATGACCCAGTCTCC、配列番号36)と軽鎖逆方向プライマー(GAGGAGAGATCTTTTGATCTCCACTTTGGT、配列番号37)を使用して同様の方法でコロニーPCRを行って軽鎖を得た。PCRは、次の条件下で行った;94℃で1分間、55℃で1分、72℃で1分を30回繰り返し。
【0075】
PCRの結果収得した重鎖遺伝子をDNA−ゲル溶離キットで(Qiagen、ND)溶離した後、pNATAB Hベクター1μl(10ng)、重鎖(100〜200ng)15μl、10Xバッファー2μl、リガーゼ(1U/μl)1μl、蒸留水と混合して前記のベクターとの結合のために室温で1〜2時間放置した。前記ベクターに適格細胞(XL1−blue)を加えて氷に30分間放置した後、42℃で90秒間熱ショックを加えて形質転換した。混合物を再び、氷に5分間放置した後、LB培地1mlを注入した。1時間37℃で培養した後、細胞をLBAmp固体培地に塗抹した後、37℃で16時間培養した。収得した単一コロニーをLBAmp液体培地5mlに接種して37℃で16時間培養した。前記培養液からDNA−prep.キット(Nuclogen)を用いてDNAを抽出した。また、軽鎖DNAは、pNATAB Lベクターを使用して前記と同一の方法で抽出した。前記収得したDNAの配列分析をCMV−proFプライマー(AAA TGG GCG GTA GGC GTG、配列番号38)を用いて行った(Solgent, Korea)。その結果、VCAM−1に対する22個のクローンから転換した全体IgGの重鎖と軽鎖の配列は、ファージ抗体の配列と一致することを確認した。
【0076】
実施例5:抗体の一過性遺伝子発現
前記クローニングされた全体IgG重鎖DNAと軽鎖DNAから抗体遺伝子の一過性遺伝子発現を行った。
【0077】
一過性遺伝子発現のための宿主細胞としてCHO(Chinese Hamster Ovary)−S細胞を使用してリポフェクタミン2000(Cat no.11668-019,Invitrogen)とDNA(1:1)でOpti−MEMI(GIBCO 31985,Invitrogrn)混合した溶液で形質転換を誘導した。一過性発現を最大化させるために重鎖DNAと軽鎖DNAを1:1の比率で使用した。形質転換のために、RPMI1640培地(GIBCO 22400,Invitrogen)を使用し、細胞は、2×10細胞/mlの濃度で使用した。混合溶液を20分間反応させた後、形質転換用培地と1:9の比率で混合し、これをCO5%、37℃の振盪培養器で110rpmで4時間培養させた。以後、8mMグルタミン(GIBCO 25030,L-Glutamine 200mM,100X,Invitrogen)とHTS(GIBCO,HT Supplement,Cat no.11067-030,Invitrogen)が含まれたCD−CHO培地(GIBCO 10743、 Invitrogen)を形質転換された培地と同一の体積で添加した。フラスコは、CO8%、37℃の振盪培養器に100rpmで4日間培養した。このように培養された試料は、8、000gで15分間遠心分離して細胞残物を除去した後、上澄液は、0.22μmの濾過器(Corning)で濾過して抗体分離精製のための培養液を準備した。
【0078】
実施例6:抗体の分離と精製
前記実施例5で準備された上澄液を平衡化緩衝液(50mMトリス−HCl(pH7.4)、100mMのNaCl)で平衡化させた組換えプロテインAセファロースカラム(ハイトラップrプロテインA FF、5mL、GEヘルスケア)に通過させた。カラムに結合された抗体を0.1Mナトリウム−クエン酸塩(pH3.0)、100mMのNaCl溶液で溶出させた後、1Mトリス−HCl(pH9.0)で中和させてPBS(phosphate buffered saline,pH 7.4,Welgene)緩衝液で透析させた。精製された抗体をビス−トリス4−12%濃度勾配SDS−ポリアクリルアミドゲル(NuPAGE gel,Invitrogen)上で還元条件で電気泳動した。その結果、約55kDaの重鎖と約25kDaの軽鎖を確認した。
【0079】
実施例7:抗体の抗原親和度分析
<7−1>抗原ドメインとの親和度分析
前記実施例6で分離精製された抗体をそれぞれ4B、7C及び7Hと命名した。それぞれ配列番号1である重鎖と配列番号13である軽鎖(4B)、配列番号5である重鎖と配列番号17である軽鎖(7C)及び配列番号9である重鎖と配列番号21である軽鎖(7H)を含むことを確認した。このように分離した抗体の抗原親和度分析を下記のように行った。
【0080】
7個のドメインから構成されたVCAM−1で抗VCAM−1抗体結合領域の位置をELISAで確認した。組換えヒトVCAM−1ドメイン1〜2/Fcキメラ(以下、‘VD2’という、A&R therapeutics)、VCAM−1ドメイン1〜4/Fcキメラ(以下、‘VD4’という、A&R therapeutics)、VCAM−1ドメイン1〜7/Fcキメラ(以下、‘VD7’という、R&D、 862-VC)をそれぞれ2g/mlの濃度でマイクロプレートの各ウェルに4℃で一晩コーティングした。PBSを使用して前記プレートを1回洗浄した後、3%BSA(bovine serum albumin)が添加されたPBSを使用して2時間37℃でブロッキングし、抗体を含んでいる細胞培養液(1:50)で2時間37℃で培養した。0.05%のTween20を含むPBSを使用してプレートを4回洗浄した後、組換えヒトVCAM−1抗原に結合した抗VCAM−1抗体の量を抗−Fab単一クローン抗体西洋ワサビペルオキシダーゼが結合化(conjugated)された抗−F(ab’)2抗体で検出した。プレートをTMB基質溶液(3,3,5,5−テトラメチルベンジジン)と室温で約5分間反応させ、1N(ノーマル)硫酸溶液で反応を止めた後、450nmで光学密度を測定した。
【0081】
図3に示されたように、4Bと7Hは、VCAM−1ドメインの1〜2のみ有するVD2に強い結合能を持つ一方、7Cは、VD2に対する結合能は殆ど無く、VD4とVD7に結合能を有することと示された。つまり、4Bと7Hは、VCAM−1の7個のドメインのうち、1〜2ドメインに結合し、7Cは、3〜4ドメインに結合する。
【0082】
<7−2>ビアコアを用いた親和度分析
ヒト及びマウスVCAM−1抗原に対する抗VCAM−1抗体4B、7C及び7Hの結合親和度を確認するために各抗原をリガンドとして、センサチップ(Sensor chip CM5,BIACORE,BR-1003-99)に固定化させた後、ヒト抗体を各濃度別に希釈してビアコア機器を用いて固定化されたリガンドに流して抗原−抗体間の結合及び解離反応を誘導することによって、該当抗原−抗体間結合相互作用を示す結合/解離定数K値を確認した。これに対する実験結果を図1に示した(参考文献:Thomas Hofer, Wisit Tangkeangsirisin, Michael G. Kennedy, Rose G. Mage, Stephen J. Raiker, Karthik Venkatesh, Hakjoo Lee, Roman J. Giger, Christoph Rader Chimeric rabbit/human Fab and IgG specific for members of the Nogo-66 receptor family selected for species cross-reactivity with an improved phage display vector Journal of Immunological Methods 318 (2007) 75.87; Paula Gomes a, David Andreu Direct kinetic assay of interactions between small peptides and immobilized antibodies using a surface plasmon resonance biosensor Journal of Immunological Methods 259, 2002.217-230, and Kikuchi Y, Uno S, Nanami M, Yoshimura Y, Iida S, Fukushima N, Tsuchiya M. Determination of concentration and binding affinity of antibody fragments by use of surface plasmon resonance. Journal of Bioscience and Bioengineering Vol. 100, No. 3, 311-317, 2005)。
【0083】
ビアコア分析は、1)センサチップとリガンドの間のカップリング条件を確認する緩衝液選別段階(Pre-concentration)、2)リガンドをセンサチップに固定化させる段階、3)固定化されたリガンドに分析物質を結合させる段階の3段階から構成される。
【0084】
1)緩衝液選別段階
本試験は、通常、該当実験用として使用されるビアコア用センサチップCM5(Sensor chip CM5,BIACORE,BR-1003-99)を使用し、リガンドをチップに固定化させる前に、チップ表面に対するリガンドの静電気的相互作用をカップリング緩衝液として使用する酢酸ナトリウム溶液のpH4.0〜5.5での変化を介して決定した。
【0085】
2)リガンド固定化段階
センサチップCM5にリガンドを固定化させるために、先ず、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)とN−エチル−N’−(ジメチルアミノプロピル)(EDC)(Amine Coupling Kit,BR-1000-50)の混合物でチップを活性化させてアミノ基に対する高い反応性のNHS−エステル活性化チップ表面を準備する。固定化させようとする1mg/ml濃度のリガンドを各4.0〜5.5のpH範囲で変化する酢酸ナトリウム溶液97μlを用いて3/100の比率で希釈した後、流速を10μl/分にして約3分間注入した(陰性対照群としてランニングバッファーであるHBS−EP緩衝液(BIACORE AB, スウェーデン)を用いて同様に希釈したリガンドを使用した)。リガンドを予め設定した数値であるターゲットRU(resonance unit)で固定化するために、ターゲットRUに至るまで自動に順次注入を行った。リガンドが固定化チップを不活性化させるために、1Mエタノールアミン(Amine Coupling Kit、 BR-1000-50)を流速10μl/分で約3分間注入した。最終リガンドの固定化数値(RU)は、エタノールアミン注入前と後のRU値の差を提供する固定化レポートで最終確認した。
【0086】
3)固定化されたリガンドを用いて分析物質を結合させる段階
該当の試験は、非特異的結合を除去するために、ビアコア機器で提供されるフローセル2−フローセル1方法を選択した。この時、フローセル2には、リガンドとして組換えVCAM1/Fc抗原を固定化させ、フローセル1には、BSA(Bovine Serum Albumin)を固定化させた。以後、分析物として抗VCAM−1抗体である4B、7C及び7Hのぞれぞれを同時にフローセル1、2に流した。フローセル2のセンソグラムRUからフローセル1のセンソグラムRUを自動的に差し引いた。以後、流速を30μl/分にして約3分間分析試料を注入させた後、120秒間解離を誘導させた。このような過程を介して該当抗原と抗体との間の結合/解離曲線を得ることができ、以後、BIAevaluationプログラム(BIACORE AB,スウェーデン)を介して下記表2のように結合/解離定数K値を算出した。
【0087】
【表2】

【0088】
前記表2は、ヒト及びマウスVCAM−1抗原に特異的な抗VCAM−1ヒト単一クローン抗体などの抗原に対する結合能または親和度を示すものであって、タンパク質親和度分析機器であるビアコア(BIACORE,BIACORE AB,スウェーデン)を用いて生物学的に異なる種であるヒトとマウス抗原に対する種特異的抗原−抗体親和度を確認した。該当抗原−抗体間の親和度定数であるK値は、1:1結合モードで計算された。
【0089】
その結果、ヒト抗原に対して4B、7C及び7Hのいずれも優れた結合力を有することを確認し、このうち、4B抗体の場合、約1nM水準の優れた結合力を有することを確認した。また、4Bを除いた7C及び7H抗体の場合、マウス抗原に対しても約10〜100nM水準の結合能を有することを確認することができた。
【0090】
実施例8:抗体による白血球細胞付着阻害効果
<8−1>ヒトVCAM−1抗原と白血球間の付着に対する阻害効果
96−ウェルプレート(Maxisorp,Nunc)のそれぞれのウェルを組換えヒトVCAM−1(10μg/ml,Cat.No.: 809-VR-200,R&D systems)100μlで1時間コーティングした後、ヒト抗体4B、7C及び7Hをそれぞれ0.01、0.1、1.0及び10.0μgずつVCAM−1がコーティングされたウェルに添加して1時間抗原に結合するようにした。この時、陽性対照群として、1.0及び10.0μgの4B2マウス抗−ヒトVCAM−1単一クローン抗体(Cat.No.: BBA5,R&D)を、陰性対照群として、抗体処理せずに抗原のみを使用した。抗体が抗原に結合する間にヒト白血球細胞であるU937(Cat.No.:CRL-1593.2,ATCC)を5μMのBCECF−AM(Cat.No.:216254,Calbiochem)で蛍光染色させた。その次の過程でU937細胞表面にあるFc受容体を不活性化させるために、100%ヒト血清(Cat.No.:H4522,Sigma)で処理した。蛍光染色とFc受容体の不活性化過程を経た白血球細胞を1%ウシ胎児血清が含まれたRPMI1640(Cat.No,:22400-089,Invitrogen)培地に1.0×10細胞/mlになるように浮遊させた。準備されたU937細胞を抗原と抗体が処理されたプレートに各ウェルに100μlずつ入れてアルミホイルで光を遮断した。プレートを37℃、5%CO静止培養器で15分間培養させた後、1%ウシ胎児血清が含まれたRPMI1640培地をウェルにいっぱいになるまで入れ、シールテープで堅固に封じた。プレートを覆したまま200×重力で5分間遠心分離した。プレートを覆したままシールテープを除去した。培地及び接着しないU937細胞を完全に除去した後、細胞溶解緩衝液(50mMトリス−HCl(pH8.5)、0.1%SDS)をウェル当り150μlずつ入れて15分間付着されているU937細胞を溶解した。その後、プレートを蛍光分析機(GeminiX,Molecular Device)に挿入し、吸収波長485nm/放出波長530nmで蛍光強度を測定した。(各実験の条件当り)3回繰り返し(triplicate)から出た平均値を算出し、抗体で処理しない群に比べて蛍光強度がどのくらい減少したかを計算して阻害能程度を分析した。分析の結果、4Bは、0.1μg以上で80%以上の阻害能を示した。7Cと7Hは、低い量(0.01〜1.0μg)では、阻害効果が微弱であったが、10μgで処理すると、90%以上の阻害能を示した(図4)。
【0091】
<8−2>ヒト内皮細胞と白血球細胞間の付着に対する阻害効果
96−ウェルプレート(Microtest tissue culture 96-well plate,BD-Falcon)の各ウェルにヒト内皮細胞であるHUVEC、2×10細胞数を播き、約3日間EGM−2培地(Lonza)で製造社の指示に従って培養した。細胞単層を顕微鏡で確認し、20ng/mlの濃度のヒトTNF−αで24時間刺激させた。以後に、TNF−αを除去するために、EGM−2培地200μlで各ウェルを2回洗浄した後、ヒト抗体4B、7C及び7Hをそれぞれ0.01、0.1、1.0及び10.0μgずつHUVEC単層が播かれたウェルに添加して1時間抗原−抗体結合を誘導した。この時、陽性対照群として、1.0及び10.0μgの4B2マウス抗−ヒトVCAM−1単一クローン抗体(Cat.No.:BBA5,R&D)とマウス抗−α4インテグリン抗体を、陰性対照群としては、抗体処理をせずに抗原のみを使用した。抗体が抗原に結合する間にヒト白血球細胞であるU937(Cat.No.:CRL-1593.2,ATCC)を5μMのBCECF−AM(Cat.No.:216254,Calbiochem)で蛍光染色をさせた。その次の過程でU937細胞表面にあるFc受容体を不活性化させるために100%ヒト血清(Cat.No.:H4522,Sigma)で処理した。蛍光染色とFc受容体不活性化過程を経たU937細胞を1%ウシ胎児血清が含まれたRPMI1640(Cat.No.:22400-089,Invitrogen)培地に1.0×10細胞/mlになるように浮遊させた。準備されたU937細胞を抗体が結合されたHUVECの各ウェルに100μlずつ入れてアルミホイルで光を遮断した。プレートを37℃、5%CO静止培養器で10分間付着させた後、覆したまま培地及び付着しなかった細胞を除去した。各ウェルを1%ウシ胎児血清が含まれたRPMI1640培地で満たし、シールテープで堅固に封じた。プレートを覆したまま400×重力で5分間遠心分離した。遠心分離したプレートを覆したままシールテープを除去した。培地及び付着しないU937細胞を完全に除去した後、細胞溶解緩衝液(50mMのトリス−HCl(pH8.5)、0.1%SDS)をウェル当り150μlずつ入れて15分間付着されているU937細胞を溶解した。その後、プレートを蛍光分析機(GeminiX,Molecular Device)に挿入し、吸収波長485nm/放出波長530nmで蛍光強度を測定した。(各実験の条件当り)3回繰り返して出た平均値を算出し、抗体で処理しない群に比べて蛍光強度がどのくらい減少したかを計算して阻害能程度を分析した。分析の結果、4Bは、0.1μg〜10.0μgで約50〜60%の阻害能を示した。7Cと7Hは、低い量(0.01〜1.0μg)では、阻害効果が微弱であったが、10μgで処理すると、50〜60%以上の阻害能を示した(図5)。このような結果は、前記実施例<8−1>のVCAM−1抗原と白血球細胞付着に対する阻害効果の分析結果と類似する様相を示した。
【0092】
実施例9:RhoA(Ras homolog gene family,member A)及びROS(Reactive oxygen species)活性に対する抗体の阻害効果
<9−1>RhoA(Ras homolog gene family,member A)活性に対する阻害効果
HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)2×10細胞を6−ウェルプレートに接種し、約3日間培養して各ウェルにコンフルエントに培養した。培養液に存在する血清を除去するために、EBM−2培地(Cat.No.:CC-3156,Lonza)でプレートを1回洗浄し、ヒトTNF−αを20ng/mlの濃度で0.25%のウシ胎児血清が含まれたEBM−2培地に希釈して入れた後、一晩(約14〜16時間)培養して細胞を刺激させた。培養液を除去し、抗VCAM−1抗体と対照抗体を10μg/mlの濃度で入れた後、30分間37℃で反応させた。細胞表面のVCAM−1を交差結合させるのに使用される抗VCAM−1抗体(Cat.No.:BBA5,BD)を10μg/mlの濃度で添加した後、30分間37℃で反応させた。HRPが複合化(conjugated)された抗−マウス抗体(Cat.No.:A9917,Sigma)を1:100の比率で添加して15分間37℃で反応させた。反応が終わった直ちに氷の上にプレートを載せて培地を除去し、冷たいPBSで1回洗浄した。プレートから残余PBSを完全に除去した後、RhoA活性化キット(Cat.No.:BK124,Cytoskeleton)に含まれた細胞溶解緩衝液を各ウェルに100μlずつ入れ、細胞を溶解して回収した。以後の過程は、キットのマニュアル通りに実験を行い、3回繰り返した。
【0093】
その結果、細胞表面に発現されたVCAM−1を交差結合させることによって誘導されたRhoA活性は、4B抗体によって約80%、7H抗体によって約30%阻害される効果を確認することができた(図6)。
【0094】
<9−2>ROS(Reactive oxygen species)活性に対する阻害効果
HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)2×10細胞を6−ウェルプレートに接種し、約3日間培養して各ウェルにコンフルエントに培養した。培養液に存在する血清を除去するために、EBM−2培地(Cat.No.:CC-3156,Lonza)でプレートを1回洗浄し、ヒトTNF−αを20ng/mlの濃度で0.25%のウシ胎児血清が含まれたEBM−2培地に希釈して入れた後、一晩(約14〜16時間)培養して細胞を刺激させた。培養液を除去してEBM−2培地で2回洗浄した後、抗VCAM−1抗体と対照抗体を10μg/mlの濃度で入れた後、30分間37℃で反応させた。各ウェルをEBM−2培地で2回洗浄し、細胞表面のVCAM−1を交差結合させるのに使用される抗VCAM−1抗体(Cat.No.:BBA5,BD)を10μg/mlの濃度で入れて30分間37℃で反応させた。各ウェルをEBM−2培地で2回洗浄し、HRPが複合化(conjugated)された抗−マウス抗体(Cat.No.:A9917,Sigma)を1:100の比率で入れた後、37℃で30分間反応させた。各ウェルをEBM−2培地で2回洗浄した。培地を完全に除去した後、EBM−2培地で希釈した10μMDCF(2’,7’-dichlorofluorescein diacetate)を150μlずつ各ウェルに処理した。以後、蛍光値(測定波長495nm〜527nm)を10分おきで3時間観察し、3時間目に測定された値で抗体の効能を評価した。実験は、3回繰り返した。
【0095】
その結果、細胞表面に発現されたVCAM−1を交差結合させることによって誘導されたROS活性は、4B抗体によって約65%、7H抗体によって約25%阻害される効果を確認することができた(図7)。
【0096】
前記のような結果は、本発明による抗体がRhoA活性及びROS活性を有意的に阻害させることができることを示唆し、即ち、免疫細胞が内皮細胞に結合する時、内皮細胞の信号伝達によって内皮細胞の間隙が拡張されて穴が生じ、その穴を介して免疫細胞が通過するようになり、炎症部位に移動するようになる。しかし、本発明による抗体が前記内皮細胞信号経路でROSとRhoAを有意的に抑制して穴を形成しないように内皮細胞間の間隙生成を抑制する。結果的に、炎症部位への免疫細胞の移動を阻止する。
【0097】
実施例10:薬動学(Pharmacokinetics)分析
本実施例では、本発明者らによって以前に出願された抗VCAM−1キメラ単一クローン抗体(大韓民国特許出願第10−2007−0053526号、“VCAM−1特異的単一クローン抗体”)と本発明によるヒト単一クローン抗体の体内半減期を比較することによって薬動学的分析を行った。つまり、BALB/cマウス7週齢(メス、オリエント)に抗VCAM−1キメラ単一クローン抗体とヒト抗体である4Bと7Cのそれぞれを500μgずつ腹腔内投与した。投与直前及び30分、1、2、4、8、12、24、36、48、60、72及び96時間が経った後、マウスの尾静脈から採血した。ELISA方法で血漿内IgGの濃度と半減期(血中最高濃度の1/2に減少するのに要求される時間)を測定した後、その結果を下記表3に示した。
【0098】
【表3】

【0099】
前記表3を参考すると、4Bと7Cの生体内半減期は、それぞれ約89時間で抗VCAM−1キメラ単一クローン抗体の半減期に比べて約3倍以上増加したことを確認することができる。
【0100】
実施例11:マウス喘息効能の実験
<11−1>喘息動物モデルの確立
マウスVCAM−1抗原に特異的なヒト抗体7C及び7Hの生体内効能を確認するために、喘息動物モデルを確立した。6週齢のメスBALB/cマウス(オリエント)に0、2及び7日目にオボアルブミン(Sigma,A5503)75μgとアジュバント(adjuvant)である明礬(alum)(ピアース、 77161)2mgを混合して腹腔内投与した。14日目から20日目まで一週間2%オボアルブミンで30分ずつネブライザー(オムロン)を使用して局所感作することによって喘息を誘導した(参考文献:S. J. Park, W. H. Shin, J. W. Seo, et al. Anthocyanins inhibit airway inflammation and hyperresponsiveness in a murine asthma model. Food and Chemical Toxicology 45 (2007) 1459-1467)。抗体は、0.2mg/マウス(8mg/kg)、0.05mg/マウス(2mg/kg)の用量で14日目に1回腹腔内投与した。対照薬物として、アミノフィリン(デウォン製薬)を14日目から20日目まで毎日10mg/kgの用量で腹腔内投与して治療効能を比較した。21日目に炎症の解剖学的様相を分析した。
【0101】
<11−2>喘息動物モデルにおける抗体の効能
最後のオボアルブミン感作が終わった後、24時間目にマウスをエーテル(純正)で麻酔し、解剖テーブルに固定した。胸部を切開して気管を露出させ、結紮してカテーテルを挿入した。PBSを1ml及び0.8mlずつそれぞれ注入して気管支肺胞洗浄を行った。収得した気管支肺胞洗浄液を4℃、2、000rpmで5分間遠心分離した。細胞にPBSを入れて浮遊させて細胞数を測定した。2万個の細胞を2、000rpmで3分間サイトスピン(Thermo scientific)を行ってスライドに塗抹し、デフクイック(Diff Quik)染色を行った。デフクイック染色(Sysmex,38721)は、スライドを溶液Iで15秒、溶液IIで60秒、溶液IIIで40秒間順に漬け、流れる水道水でスライドを濯いて行った。スライドを空気中で一晩乾かした後、マウント溶液(Fluka,44581)で固定した。光学顕微鏡(100倍)で200個以上の炎症細胞を観察して好酸球、大食細胞、好中球、リンパ球に分類して比較した(参考文献:D. Y. Kim, S. Y. Ryu, J. E. Lim, et al. Anti-inflammatory mechanism of simvastatin in mouse allergic asthma model. European Journal of Pharmacology 557 (2007) 76-86)。
【0102】
比較結果、前記の抗VCAM−1ヒト抗体を0.2mg/マウスの用量で投与した場合、全体炎症細胞数が有意に減少した。7Hを0.05mg/マウス及び0.2mg/マウスで処理した群で、特に、リンパ球と好酸球の数が減少したことを確認することができた。7Cを0.05mg/マウス及び0.2mg/マウスの用量で1回投与した場合、全体炎症細胞数が減少し、特に、大食細胞と好酸球の数が有意に減少した。つまり、2つの抗体の喘息で炎症細胞流入に対する抑制効能は、現在、喘息治療に使用されているアミノフィリンと類似することとして示された(図8)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト血管細胞付着分子−1(VCAM−1)に特異的に結合しながら白血球と活性化された内皮細胞との間の相互作用を阻害する、ヒト単一クローン抗体。
【請求項2】
前記ヒト単一クローン抗体は、更にマウス血管細胞付着分子−1(VCAM−1)に特異的に結合する、請求項1に記載のヒト単一クローン抗体。
【請求項3】
前記ヒト単一クローン抗体は、配列番号2で記載された重鎖CDR1;配列番号3で記載された重鎖CDR2;及び配列番号4で記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号14で記載された軽鎖CDR1;配列番号15で記載された軽鎖CDR2;及び配列番号16で記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、を含む、請求項1に記載のヒト単一クローン抗体。
【請求項4】
前記ヒト単一クローン抗体は、配列番号1で記載された重鎖アミノ酸配列及び配列番号13で記載された軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項3に記載のヒト単一クローン抗体。
【請求項5】
前記ヒト単一クローン抗体のヒトVCAM−1抗原に対する結合/解離定数(K値)が1×10−11M乃至9×10−9Mである、請求項3に記載のヒト単一クローン抗体。
【請求項6】
前記ヒト単一クローン抗体は、配列番号6で記載された重鎖CDR1;配列番号7で記載された重鎖CDR2;及び配列番号8で記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号18で記載された軽鎖CDR1;配列番号19で記載された軽鎖CDR2;及び配列番号20で記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、を含む、請求項2に記載のヒト単一クローン抗体。
【請求項7】
前記ヒト単一クローン抗体は、配列番号5で記載された重鎖アミノ酸配列及び配列番号17で記載された軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項6に記載のヒト単一クローン抗体。
【請求項8】
前記ヒト単一クローン抗体のヒト及びマウスVCAM−1抗原に対する結合/解離定数(K値)が1×10−10M乃至9×10−8Mである、請求項6に記載のヒト単一クローン抗体。
【請求項9】
前記ヒト単一クローン抗体は、配列番号10で記載された重鎖CDR1;配列番号11で記載された重鎖CDR2;及び配列番号12で記載された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号22で記載された軽鎖CDR1;配列番号23で記載された軽鎖CDR2;及び配列番号24で記載された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、を含む、請求項2に記載のヒト単一クローン抗体。
【請求項10】
前記ヒト単一クローン抗体は、配列番号9で記載された重鎖アミノ酸配列及び配列番号21で記載された軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項9に記載のヒト単一クローン抗体。
【請求項11】
前記ヒト単一クローン抗体のヒト及びマウスVCAM−1抗原に対する結合/解離定数(K値)が1×10−10M乃至9×10−8Mである、請求項9に記載のヒト単一クローン抗体。
【請求項12】
前記白血球と活性化された内皮細胞との間の相互作用の阻害は、活性化された内皮細胞に対する白血球付着の阻害またはROS(Reactive oxygen species)及びRhoA(Ras homolog gene family,member A)の活性減少による内皮細胞間の間隙形成の阻害によって行われる、請求項1に記載のヒト単一クローン抗体。
【請求項13】
請求項1〜12のうち、いずれか1項に記載のヒト単一クローン抗体を含む喘息、鼻炎、関節炎、多発性硬化症、大腸疾患、動脈硬化、心筋梗塞及び移植拒絶からなる群から選択された1種以上の、炎症性疾患または癌の診断用組成物。
【請求項14】
請求項1〜12のうち、いずれか1項に記載のヒト単一クローン抗体及び炎症性疾患または癌が疑われる個体の生物学的試料のVCAM−1を抗原−抗体反応を介して検出する段階を含む、炎症性疾患または癌の診断のための情報の提供方法。
【請求項15】
請求項1〜12のうち、いずれか1項に記載のヒト単一クローン抗体を含む喘息、鼻炎、関節炎、多発性硬化症、大腸疾患、動脈硬化、心筋梗塞及び移植拒絶からなる群から選択された1種以上の、炎症性疾患または癌の治療用組成物。
【請求項16】
個体に請求項15に記載の治療用組成物を投与する段階を含む喘息、鼻炎、関節炎、多発性硬化症、大腸疾患、動脈硬化、心筋梗塞及び移植拒絶からなる群から選択された1種以上の炎症性疾患または癌の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−522046(P2012−522046A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503331(P2012−503331)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001988
【国際公開番号】WO2010/114312
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(501242664)ハンファ ケミカル コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】