説明

VCMドライバと磁気ディスク制御装置

【課題】シーク動作の短縮化を図ったVCMドライバ及び磁気ディスク制御装置を提供する。
【解決手段】磁気ヘッドから読み出された位置情報と、コントローラからの位置指令情報とに対応して電流制御信号を形成する。VCMドライバは、上記制御信電流信号に従って上記磁気ヘッドの位置制御を行う。上記VCMドライバは、電流電圧変換部と駆動回路部と帰還回路とを有する。上記電流電圧変換部は、上記電流制御信号に対応した駆動電圧を形成する。駆動回路部は、上記電流電圧変換部で形成された駆動電圧を受けて、PWM動作により上記ボイスコイルモータの駆動電流を形成する。上記帰還回路は、上記駆動回路部の出力オフセット分を上記駆動電圧に負帰還させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VCMドライバと磁気ディスク制御装置に関し、例えば、ハードディスクメモリ装置に用いられるものに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク駆動装置では高速アクセスの観点からトラック間を跨いで移動するシーク時間を短縮する方向にある。この結果、VCM(Voice Coil Motor)の駆動電流は増加してシーク動作時の発熱が問題になっている。この発熱問題を解決する為、位置決め制御の精度が要求されない代わりに電力消費が大きくなるシーク期間のみPWM(パルス幅変調)駆動によって消費電力を下げ、高精度制御が要求され、上記PWM駆動によるノイズの影響が無視できないリード・ライト時はリニア駆動に切り替えるようにしたPWM・リニア併用方式が、例えば特開2002−184137公報、特開2002−358742公報により提案されている。
【特許文献1】特開2002−184137公報
【特許文献2】特開2002−358742公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図12には、この発明に先立って検討された前記PWM・リニア併用方式の磁気ディスク制御装置のブロック図が示されている。マイクロコンピュータを含むようなコントローラCNTは、位置指令情報と磁気ヘッド及び信号処理ICにより取り出された位置情報とから駆動電流指令CODEを形成する。この駆動電流指令CODEは、デジタル/アナログ変換回路DACによりアナログ信号DACOUTに変換される。制御アンプAMP2は、上記アナログ信号DACOUTを基に抵抗Rx ,Cx 及びCx2の時定数回路で設定されたスルーレートを持つ駆動電圧Vcnt を形成する。基準電圧VREF1,VREF2は、回路の動作基準電圧である。上記駆動電圧Vcnt は、利得1のバッファAMP3を通して第1駆動回路部DRV1の入力端子に伝えられる。上記バッファAMP3の出力信号は、位相反転させるバッファAMP4を通して第2駆動回路部DRV2の入力端子に伝えられる。
【0004】
上記第1駆動回路部DRV1と第2駆動回路部DRV2は、それぞれPWM変調回路と縦列形態の2つのアンプを有する。三角波発生回路TRAGと、上記第1駆動回路部DRV1と第2駆動回路部DRV2に含まれるPWM変調回路とは、PWM動作のときのそれぞれPWM駆動電圧を形成する。上記駆動回路部DRV1,DRV2の縦列形態の2つのアンプは、リニア動作のときには入力側アンプの出力信号がそのまま出力側アンプに伝えられる。PWM動作のときには、モード信号MODEによりスイッチが切り替えられて上記PWM駆動電圧が出力側アンプに伝えられる。上記駆動回路部DRV1とDRV2は、出力端子VCMPとVCMNに接続されたボイスコイルモータVCMを駆動する。このボイスコイルモータの駆動電流Ivcm は、抵抗Rs により電圧信号に変換される。この電圧信号は、センスアンプAMP1により増幅されて、上記制御アンプAM2の帰還信号とされる。これにより、駆動電圧Vcnt は上記アナログ信号DACOUTに比例した駆動電流をボイスコイルモータVCMに流すようにする。
【0005】
上記駆動回路部DRV1とDRV2は、差動動作(相補動作)し、制御アンプAMP2の駆動電圧Vcnt からボイスコイルモータVCMの両端電圧VCMP−VCMNまでの伝達利得が2×GLIN となる。ここで、GLIN は駆動回路部(入力側アンプ+出力側アンプ)DRV1,DRV2におけるリニア動作時の電圧利得である。PWM動作では、駆動電圧Vcnt に対し線形なPWM変調回路でパルス信号に変換し出力側アンプに入力する。PWM変調回路のゲインをGPWM (1/Va)、出力側アンプのゲインをGO とすると、ボイスコイルモータVCMの両端VCMP−VCMNには、Vcnt ×GPWM ×GO で決まる電圧が印加される。例えば、三角波発生回路TRAGの振幅をVa 、PWM変調回路のゲインをGPWM (1/Va)、出力側アンプのゲイン(GO)をVpsとすると、Vcnt からVCMP−VCMNまでの伝達利得は、2×1/Va×Vpsとなる。この時、出力側アンプのゲインGO は、線形とみなしており、GPWM ×GO =GLIN となるように設定している。出力側アンプは、PWM動作・リニア動作の両モードに対応しており、内部切替スイッチでモード切り替えし、リニアモードではAB級パワーアンプ、PWMモードではD級パワーアンプとして動作する。
【0006】
リニアモード時の出力側アンプはAB級アンプの構成をとっており、不感帯は生じずに線形な電圧アンプとして動作する。一方、PWM駆動時の出力側アンプは、貫通電流を防止する為のデッド(Dead)時間がある為、必然的に不感帯が生じる。この為、上記のようにGPWM ×GO =GLIN と設定していても、電流誤差回路(AMP2)からの電流指示値Vcnt に対し、PWMモードとリニアモード間で出力オフセットが生じ、これがPWM/リニアの切り替え時に電流変動を生じさせる要因となっている事が判った。
【0007】
つまり、図13のタイミング図に示すように、PWM駆動時は貫通電流を防止するためのデッド時間tDEADが設けられる。図13の参考回路に示したように端子VCMPからVCMNへ電流を流している例を示している。この時、駆動回路部DRV1の出力MOSFETM1と駆動回路部DRV2の出力MOSFETM4がオン状態となり、駆動回路部DRV1の出力MOSFETM2と駆動回路部DRV2の出力MOSFETM3はオフ状態であり、整流用として動作する。端子VCMPがロウレベルからハイレベルに変化するとき、整流側のMOSFETM2がオフしてからデッド時間tDEADの後に上記MOSFETM1をオン状態にする。ここで、上記デッド時間tDEADの遅れ時間が生じる。同様に、VCMNがハイレベルからロウレベルに変化するときでは、整流側のMOSFETM3をオフ状態にしてからデッド時間tDEADの後に上記MOSFETM4をオン状態にする。ここでもデッド時間tDEADの遅れ時間が生じる。
【0008】
このように、PWMの1周期間Tpwm に、2×tDEADの遅れ時間が生じる事になるので、入力DUTYからボイスコイルモータVCMの両端VCMP−VCMNまでの伝達特性は、DUTY×Vps−2×tDEAD×fpwm ×Vpsとなる。fpwm はPWM周波数であり、Vpsは出力側アンプの電源電圧である。更に、Duty=Vcnt /Va (Va は三角波発生回路TRAGの出力振幅)なので、ボイスコイルモータVCMの両端VCMP−VCMNに印加される出力電圧をVOUT とすると、
VOUT =Vcnt×2/Va ×Vps−2×tDEAD×fpwm ×Vps
=Vcnt ×{(2/Va )−2×tDEAD×fpwm }×Vpsとなる。
【0009】
以上より、PWMモードとリニアモードとの駆動電圧Vcnt から出力電圧VOUT (VCMP−VCMN)までの伝達特性は、図14に示すようになる。図14の特性図に示すように、リニアモードとPWMモードの間には、±2×tDEAD×fpwm ×Vps×Va のようなオフセットVoff が生じる事となる。上記のようなオフセットVoff が生じると、図15のPWM/リニア切替波形図に示したように、同じ電流Ivcm をボイスコイルモータVCMに流す場合、リニアモードとPWMモードでは、前記図14に示した駆動回路部でのオフセットに相当する電圧だけ過渡的な電流変動が生じてしまうものとなる。この電流変動期間はヘッドの位置を正しく制御できなくなるために、シーク動作時間をt1のように余分に長くしてしまうという問題を引き起こす。
【0010】
この発明の目的は、シーク動作の短縮化を図ったVCMドライバ及び磁気ディスク制御装置を提供することにある。この発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願における実施例の1つは下記の通りである。磁気ヘッドから読み出された位置情報と、コントローラからの位置指令情報とに対応して電流制御信号を形成する。VCMドライバは、上記制御信電流信号に従って上記磁気ヘッドの位置制御を行う。上記VCMドライバは、電流電圧変換部と駆動回路部と帰還回路とを有する。上記電流電圧変換部は、上記電流制御信号に対応した駆動電圧を形成する。駆動回路部は、上記電流電圧変換部で形成された駆動電圧を受けて、PWM動作により上記ボイスコイルモータの駆動電流を形成する。上記帰還回路は、上記駆動回路部の出力オフセット分を上記駆動電圧に負帰還させる。
【発明の効果】
【0012】
PWM動作特有の出力オフセットを帰還回路により低減させることによりシーク動作の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1には、この発明に係るPWM・リニア併用方式の磁気ディスク制御装置のブロック図が示されている。前記図12と同様にマイクロコンピュータを含むようなコントローラCNTは、位置指令情報と図示しない磁気ヘッド及び信号処理ICにより取り出された位置情報とから駆動電流指令CODEを形成する。この駆動電流指令CODEは、デジタル/アナログ変換回路DACによりアナログ信号DACOUTに変換される。制御アンプAMP2は、上記アナログ信号DACOUTを基に抵抗Rx ,Cx 及びCx2の時定数回路で設定されたスルーレートを持つ駆動電圧Vcnt を形成する。基準電圧VREF1,VREF2は、回路の動作基準電圧である。上記駆動電圧Vcnt は、差動アンプAMP3で構成される利得1のバッファを通して第1駆動回路部DRV1の入力端子に伝えられる。上記差動アンプAMP3の出力信号は、差動アンプAMP4で構成されたバッファで位相反転させて第2駆動回路部DRV2の入力端子に伝えられる。
【0014】
上記第1駆動回路部DRV1と第2駆動回路部DRV2は、それぞれPWM変調回路と縦列形態の2つのアンプを有する。三角波発生回路TRAGと、上記第1駆動回路部DRV1と第2駆動回路部DRV2に含まれるPWM変調回路とは、PWM動作のときのそれぞれPWM駆動電圧を形成する。上記駆動回路部DRV1,DRV2の縦列形態の2つのアンプは、リニア動作のときには入力側アンプの出力信号がそのまま出力側アンプに伝えられる。PWM動作のときには、モード信号MODEによりスイッチが切り替えられて上記PWM駆動電圧が出力側アンプに伝えられる。上記駆動回路部DRV1とDRV2は、出力端子VCMPとVCMNに接続されたボイスコイルモータVCMを駆動する。このボイスコイルモータの駆動電流Ivcm は、抵抗Rs により電圧信号に変換される。この電圧信号は、センスアンプAMP1により増幅されて、上記制御アンプAM2の帰還信号とされる。これにより、駆動電圧Vcnt は上記アナログ信号DACOUTに比例した駆動電流をボイスコイルモータVCMに流すようにする。
【0015】
この実施例では、PWM動作時におけるオフセット補償のために差動アンプAMP5で構成されたオフセット検出回路と帰還回路FBCが設けられる。上記差動アンプAMP5は、上記第1駆動回路部DRV1の出力端子VCMPと第2駆動回路部DRV2の出力端子VCMNの電圧を入力として、その差分をオフセット電圧として検知する。つまり、差動アンプAMP5の両入力端子(+,−)に、抵抗R6を介して上記出力端子VCMP,VCMNの電圧が供給される。上記差動アンプAMP5の入力端子+と基準電圧VREF1との間には、抵抗R7が設けられる。上記差動アンプAMP5の入力端子−と出力端子との間には、抵抗R7が設けられる。リニア動作時とPWM動作時で、電流制御ループ系の応答性を同じにするため、差動アンプAMP5のゲインKs は、1/Ks=Kpwm =Klin とする。つまり、差動アンプAMP5において、Ks =R7/R6とすることで、PWMモードとリニアモードでVcnt が変動しなくなり、モード切り替え時のVCM電流変動が生じなくなる。
【0016】
上記差動アンプAMP5の出力電圧は、帰還回路FBCを通して上記差動アンプAMP3の帰還端子に帰還される。差動アンプAMP3は、上記PWM動作のときには上記制御アンプAMP2で形成された駆動電圧Vcnt に上記オフセット電圧を負帰還して、それを相殺させるような駆動電圧Vcnt2を形成して第1駆動回路部DRV1の入力に伝える。また、上記駆動電圧Vcnt2を差動アンプAMP4により反転されて第2駆動回路部DRV2の入力に伝えられる。リニア動作のときには、帰還回路FBCのスイッチSWがオン状態にされ、上記差動増幅回路AMP3はボルテージフォロワ回路として動作して駆動電圧Vcnt をそのまま駆動電圧Vcnt2として第1駆動回路部DRV1の入力端子に伝える。この駆動電圧Vcnt2は、差動アンプAMP4を通して反転して第2駆動回路部DRV2の入力端子に伝えられる。
【0017】
コントローラCNTは、モード切り替え信号MODEやPWM周波数信号fpwm を形成し、上記駆動回路部DRV1,DRV2や上記帰還回路FBCを制御して、位置決め制御中に両モードの切り替えを高速且つ滑らかに行う。PWM動作からリニア動作への切り替え時の電流変動が低減する事で、低発熱や低消費電力化に有利なPWM動作をより広い電流範囲に適用できるようになる。
【0018】
図2には、図1における本発明に関連する主要回路の回路図が示されている。図2においては、差動アンプAMP4は、利得1で反転するインバータ(−1)として示されている。上記駆動回路部DRV1とDRV2は、その利得Kpwm として示されている。
【0019】
図3には、図2の等価回路図が示されている。上記差動アンプAMP5は、両出力電圧Vo =2×Va ×Kpwm を検出し、利得Ks(=R7/R6)で増幅して帰還させる。差動アンプAMP3は、増幅部A(s) と、帰還部Rfb/(Rfb+Zc)及びZc/( Rfb+Zc)とで表されている。
【0020】
図4には、図3の等価回路を更に簡略化した等価回路図が示されている。同図において、β1(s)=sCfb・Rfb/(1+sCfb・Rfb) であり、β2(s)=1/(1+sCfb・Rfb) である。PWM動作時における駆動電圧Vcnt から両出力電圧Vo までの伝達特性H(s) は、
H(s) =[2 Kpwm/β1(s)]/[1+2 Kpwm/β1(s)×Ks Rfb β2(s)]
=[1/Ks]× [1+ sCfbRfb]/[1+sCfbRfb] ×[1/(2 Ks Kpwm)] となる。
【0021】
上記帰還動作において駆動電圧Vcnt が変動しないためにリニア動作時と同じ応答性にする必要がある。PWMキャリア成分のノイズをフィルタし、更に最大限の歪み低減化を実現するように、負帰還の積分時定数を選択すると共に、リニア動作とPWM動作で、Vcnt からVCM出力(両出力電圧Vo)までのゲインを同一にし、モード切り替え時に、駆動電圧Vcnt が変動しないようにする事が重要である。すなわち、図5の特性図に示すように、1/Ksを2×Kpwm=Klin にして、f1=f2とする。f1=1/2πCfbRfbであり、f2= 1/2πCfbRfb(1/2/Ks/Kpwm)である。
【0022】
図6には、この発明に係る磁気ディスク制御装置の一実施例のブロック図が示されている。図6は、前記図1の第1駆動回路部DRV1,DRV2のより詳細な回路構成が示されている。三角波発生回路TRAGと、PWM変調回路PWMG1とPWMG2とは、PWM動作のときの駆動電圧PWMP,PWMNを形成する。上記駆動回路部DRV1,DRV2は、縦列形態の2つのアンプからなり、リニア動作のときには入力側アンプの出力信号がスイッチS1,S2を通して出力側アンプに伝えられる。PWM動作のときには、モード信号MODEによりスイッチS1,S2が切り替えられて上記PWM駆動電圧PWMP,PWMNが出力側アンプに伝えられる。このようにして、駆動回路部DRV1,DRV2はリニア動作とPWM動作との切り替えが行われる。同図においては、前記差動アンプAMP5と帰還回路FBCは、回路CT1、CT2として示されている。
【0023】
図7には、この発明に係る磁気ディスク制御装置の他の一実施例のブロック図が示されている。この実施例の帰還回路FBCは、上記第1駆動回路部DRV1の出力端子VCMPと第2駆動回路部DRV2の出力端子VCMNの電圧がそれぞれ差動アンプAMP51,AMP52に負帰還させる。つまり、基準電圧VREF2に対する出力端子VCMP,VCMNをオフセット電圧として上記差動アンプAMP51,AMP52に帰還させて、駆動電圧V1,V2を形成する。同図では、省略されているが、前記差動アンプAMP3のように、差動アンプAMP51,AMP52の出力端子と帰還端子(−)との間には、スイッチが設けられており、リニア動作のときにはオン状態にされる。これにより、差動アンプAMP51,AMP52はリニア動作のときにはボルテージフォロワ回路として動作する。
【0024】
図8には、この発明に係る磁気ディスク制御装置の更に他の一実施例のブロック図が示されている。この実施例の帰還回路FBCは、上記第1駆動回路部DRV1に対してのみ設けられる。つまり、上記第1駆動回路部DRV1の出力端子VCMPの電圧が差動アンプAMP5に負帰還させる。つまり、基準電圧VREF3に対する出力端子VCMPをオフセット電圧として上記差動アンプAMP5に帰還させて、駆動電圧V1を形成する。同図では、省略されているが、前記差動アンプAMP3のように、差動アンプAMP5の出力端子と帰還端子(−)との間には、スイッチが設けられており、リニア動作のときにはオン状態にされる。これにより、差動アンプAMP5はリニア動作のときにはボルテージフォロワ回路として動作する。この構成でも、オフセット電圧Voff をほぼ半減させることができるからシーク動作の短縮化を図ることができる。
【0025】
前記実施例のVCMドライバでは、PWM動作とリニア動作との駆動電圧Vcnt から出力電圧Vo (VCMP−VCMN)までの伝達特性は、図9に示すようになる。図9の特性図に示すように、リニア動作(リニアモード)とPWM動作(PWMモード)間には、前記図14に示したような±2×tDEAD×fpwm ×Vps×Va のようなオフセットVoff が負帰還動作により補償される。理想的には前記のようにPWMキャリア成分のノイズをフィルタし、更に最大限の歪み低減化を実現するように、負帰還の積分時定数を選択すると共にリニア動作とPWM動作で、Vcnt からVCM出力(両出力電圧Vo)までのゲインを同一にすれば、同じ特性になる。これができないとしても大幅に低減されたオフセット電圧Voff'にすることができる。上記のように低減されたオフセットVoff'のもとでは、図10のPWM/リニア切替波形図に示したように、同じ電流Ivcm をボイスコイルモータVCMに流す場合、リニア動作とPWM動作では、前記図9に示した駆動回路部での微小なオフセットVoff'しか生じないから電流変動を小さいものとなる。この電流変動期間t2が小さくなることにより、シーク動作時間の短縮化を図ることができる。
【0026】
図11には、この発明が適用される磁気ディスク装置の一実施例の概略構成図が示されている。ハードディスク記憶装置(HDD)は、スピンドルモータによって高速回転しているディスク上にヘッドよりデータを書き込み、読み出す。記憶位置(ヘッドの位置)を可変するヘッドアクチュエータであるVCM(Voice Coil Motor)を用い、ディスク上に予め記憶されたサーボ情報を信号処理ICで読み出し、マイコンを含むコントローラによって上記VCMを駆動する電流指令を発行し、それをDAC(デジタル/アナログ変換回路)を含むモータ駆動回路部(DRV1,DRV2)によって上記VCMを駆動する帰還制御が行われる。この発明の適用によってトラックを跨がったメモリアクセスの高速化を図ることができる。同図のモータ駆動回路は、特に制限されないが、前記図1のVCMドライバ及びDACを含んで1つの半導体基板上に形成される。
【0027】
以上本発明者によってなされた発明を、前記実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、駆動回路部DRV1,DRV2を構成する入力側アンプ、出力側アンプ及びそれに付加される切り替え回路の具体的構成は種々の実施形態を採ることができる。また、PWM動作のときに両出力電圧、又は一方の出力電圧を負帰還させて駆動電圧を形成する回路は、種々の形態を採ることができる。例えば、前記理想的には前記のようにPWMキャリア成分のノイズをフィルタし、更に最大限の歪み低減化を実現するように負帰還の積分時定数を選択してリニア動作と同等の特性をPWM動作で実現するようにして、駆動回路部DRV1,DRV2は、PWM動作のみによって動作させるようにするものであってもよい。このようにすれば、回路の簡素化と低消費電力化を図ることができる。この発明は、HDD等のようなVCMドライバ及び磁気ディスク制御装置広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に係るPWM・リニア併用方式の磁気ディスク制御装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1における本発明に関連する主要回路を示す回路図である。
【図3】図2の等価回路図である。
【図4】図3の等価回路を更に簡略化した等価回路図である。
【図5】帰還回路を説明するための特性図である。
【図6】この発明に係る磁気ディスク制御装置の一実施例を示すブロック図である。
【図7】この発明に係る磁気ディスク制御装置の他の一実施例を示すブロック図である。
【図8】この発明に係る磁気ディスク制御装置の更に他の一実施例を示すブロック図である。
【図9】この発明に係るVCMドライバの伝達特性図である。
【図10】この発明に係るVCMドライバの一例を示すPWM/リニア切替波形図である。
【図11】この発明が適用される磁気ディスク装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図12】この発明に先立って検討されたPWM・リニア併用方式の磁気ディスク制御装置のブロック図である。
【図13】図12でのPWM駆動を説明するためのタイミング図である。
【図14】図13に対応した特性図である。
【図15】図14に対応したPWM/リニア切替波形図である。
【符号の説明】
【0029】
DRV1,DRV2…駆動回路部、FBC…帰還回路、PWMG1,PWMG2…PWM変調回路、AMP1…センスアンプ、AMP2…制御アンプ、AMP3〜AMP52…差動アンプ、DAC…デジタル/アナログ変換回路、TRAG…三角波発生回路、R1〜R13…抵抗、Rfb…帰還抵抗、Cfb…帰還キャパシタ、SW,S1,S2…スイッチ、VCM…ボイスコイルモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドから読み出された位置情報と、コントローラからの位置指令情報とに対応して形成された電流制御信号により上記磁気ヘッドの位置制御を行うボイスコイルモータの駆動電流を形成するVCMドライバであって、
上記電流制御信号に対応した駆動電圧を形成する電流電圧変換部と、
上記電流電圧変換部で形成された駆動電圧を受けて、PWM動作により上記ボイスコイルモータの駆動電流を形成する駆動回路部と、
上記駆動回路部の出力オフセット分を上記駆動電圧に負帰還させる帰還回路とを有するVCMドライバ。
【請求項2】
請求項1において、
上記駆動回路部は、
上記PWM動作とリニア動作とがモード信号により切り替えられるものであり、
上記動作モード信号に対応して上記磁気ヘッドが隣接するトラックを順次に走査するトラッキング動作のときにリニア動作を行い、上記磁気ヘッドがトラックを跨いで移動するシーク動作のときにPWM動作を行うVCMドライバ。
【請求項3】
請求項2において、
上記VCMドライバは、
上記ボイスコイルモータの両端に流れる電流に対応した電圧信号をセンスするセンスアンプを更に備え、
上記電流電圧変換部は、
上記センスアンプの出力信号を帰還信号として上記電流制御信号と誤差比較を行う制御アンプと、
上記制御アンプ出力を積分して上記駆動電圧を形成すると共に帰還ループ全体を安定に保つ位相補償手段とを有し、
上記駆動回路部は、
PWM駆動手段とリニア駆動手段とを有する出力アンプと、
上記モード信号に対応して上記PWM駆動手段とリニア駆動手段とに替える選択回路とを有し、
上記モード信号により選択回路がリニア駆動手段を選択した場合は、上記駆動電圧を上記出力アンプにそのまま伝達し、
上記モード信号により選択回路がPWM駆動手段を選択した場合は、上記駆動電圧に対応したPWM信号を上記出力アンプに伝達し、
上記帰還回路は、上記モード信号により上記選択回路がPWM駆動手段を選択した場合のときに上記出力オフセット分を上記駆動電圧に負帰還させるVCMドライバ。
【請求項4】
請求項3において、
上記駆動回路部は、
入力端子と帰還端子とを有し、上記入力端子に上記駆動電圧を受ける第1差動増幅回路と、
上記第1差動増幅回路の出力信号を位相反転させる第2差動増幅回路とを有し、
上記第1差動増幅回路は、上記リニア動作のときには上記帰還端子に自身の出力信号を帰還させてボルテージフォロワ動作を行い、
上記第1差動増幅回路は、上記PWM動作のときには上記帰還端子に上記帰還回路を通した帰還信号が供給されて負帰還動作を行い、
上記帰還回路は、上記ボイスコイルモータの両端電圧の差分を検知し、上記第1差動増幅回路の帰還端子に帰還させるVCMドライバ。
【請求項5】
請求項3において、
上記駆動回路部は、
上記駆動電圧に対応した出力電圧を形成する第1回路と
上記駆動電圧を位相反転させた出力電圧を形成する第2回路と、
上記第1回路の出力信号を受ける第1差動増幅回路又は上記第2回路の出力信号を受ける第2差動増幅回路とのいずれか少なくとも1つを有し、
上記リニア動作のときには上記第1又は第2差動回路の帰還端子に自身の出力信号を帰還させてボルテージフォロワ動作を行わせ、
上記PWM動作のときには第1又は第2差動回路の帰還端子に上記帰還回路を通した帰還信号を供給して負帰還動作を行わせ、
上記帰還回路は、上記ボイスコイルモータの少なくとも一方における端子電圧と所定の基準電圧との差分をそれに対応した上記駆動電圧を形成する第1又は第2差動増幅回路の帰還端子に帰還させるVCMドライバ。
【請求項6】
磁気ヘッドから読み出された位置情報と、コントローラからの位置指令情報とに対応して形成された電流制御信号によりボイスコイルモータの駆動電流を形成するVCMドライバを備え、
上記VCMドライバは、
上記電流制御信号に対応した駆動電圧を形成する電流電圧変換部と、
上記電流電圧変換部で形成された駆動電圧を受けて、PWM動作により上記ボイスコイルモータの駆動電流を形成する駆動回路部と、
上記駆動回路部の出力オフセット分を上記駆動電圧に負帰還させる帰還回路とを有する磁気ディスク制御装置
【請求項7】
請求項6において、
上記駆動回路部は、
上記PWM動作とリニア動作とがモード信号により切り替えられるものであり、
上記動作モード信号に対応して上記磁気ヘッドが隣接するトラックを順次に走査するトラッキング動作のときにリニア動作を行い、上記磁気ヘッドがトラックを跨いで移動するシーク動作のときにPWM動作を行う磁気ディスク制御装置。
【請求項8】
請求項7において、
上記VCMドライバは、
上記ボイスコイルモータの両端に流れる電流に対応した電圧信号をセンスするセンスアンプを更に備え、
上記電流電圧変換部は、
上記センスアンプの出力信号を帰還信号として上記電流制御信号と誤差比較を行う制御アンプと、
上記制御アンプ出力を積分して上記駆動電圧を形成すると共に帰還ループ全体を安定に保つ位相補償手段とを有し、
上記駆動回路部は、
PWM駆動手段とリニア駆動手段とを有する出力アンプと、
上記モード信号に対応して上記PWM駆動手段とリニア駆動手段とに替える選択回路とを有し、
上記モード信号により選択回路がリニア駆動手段を選択した場合は、上記駆動電圧を上記出力アンプにそのまま伝達し、
上記モード信号により選択回路がPWM駆動手段を選択した場合は、上記駆動電圧に対応したPWM信号を上記出力アンプに伝達し、
上記帰還回路は、上記モード信号により上記選択回路がPWM駆動手段を選択した場合のときに上記出力オフセット分を上記駆動電圧に負帰還させる磁気ディスク制御装置。
【請求項9】
請求項8において、
上記駆動回路部は、
入力端子と帰還端子とを有し、上記入力端子に上記駆動電圧を受ける第1差動増幅回路と、
上記第1差動増幅回路の出力信号を位相反転させる第2差動増幅回路とを有し、
上記第1差動増幅回路は、上記リニア動作のときには上記帰還端子に自身の出力信号を帰還させてボルテージフォロワ動作を行い、
上記第1差動増幅回路は、上記PWM動作のときには上記帰還端子に上記帰還回路を通した帰還信号が供給されて負帰還動作を行い、
上記帰還回路は、上記ボイスコイルモータの両端電圧の差分を検知し、上記第1差動増幅回路の帰還端子に帰還させる磁気ディスク制御装置。
【請求項10】
請求項6において、
上記出力アンプは、上記ボイスコイルモータの第1端子と第2端子に第1出力端子及び第2出力端子がそれぞれ接続され、第1入力端子と第2入力端子に互いに逆相の駆動信号が入力された第1回路及び第2回路を有し、
上記第1回路は、
上記第1入力端子の入力電圧を受ける第1アンプと、
上記ボイスコイルモータの第1端子に駆動信号を出力する第2アンプと、
上記第1入力端子の入力電圧に対応して第1PWM信号を形成する第1PWM変調回路と、
第1信号切り替え部とを有し、
上記第2回路は、
上記第2入力端子の入力電圧を受ける第3アンプと、
上記ボイスコイルモータの第2端子に駆動信号を出力する第4アンプと、
上記第2入力端子の入力電圧に対応して第2PWM信号を形成する第2PWM変調回路と、
第2信号切り替え部とを有し、
上記第1信号切り替え部は、上記PWM動作のときには上記第1PWM変調回路で形成された第1PWM信号を上記第2アンプの入力端子に伝え、上記リニア動作のときには上記第1アンプの出力信号を上記第2アンプの入力端子に伝え
上記第2信号切り替え部は、上記PWM動作のときには上記第2PWM変調回路で形成された第2PWM信号を上記第3アンプの入力端子に伝え、上記リニア動作のときには上記第3アンプの出力信号を上記第4アンプの入力端子に伝える磁気ディスク制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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