説明

VII因子ポリペプチドおよびイプシロン―アミノカプロン酸を含む薬学的組成物

本発明は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸を含む薬学的組成物、並びに出血の発症を治療するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、VII因子関連ポリペプチドおよびイプシロン―アミノカプロン酸(epsilon−aminocapronic acid)を含む薬学的組成物に関する。また、本発明は、出血の発症を被っている被検者を治療する又は防止するための薬物(medicament)の製造のための、VII因子関連ポリペプチドおよびイプシロン―アミノカプロン酸の組み合わせの使用に関する。また、本発明は、非血友病の出血の発症を治療するための薬物の製造のための、イプシロン―アミノカプロン酸と組み合わせた、VII因子の使用に関する。また、本発明は、治療の方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
止血(Haemostasis)は、血管壁に対する傷害後に循環血液に暴露された組織因子(TF)と、総FVIIタンパク質質量の約1%に対応する量で循環中に存在するFVIIaとの間の複合体の形成によって開始される。この複合体は、TFを有する細胞にアンカーされ、細胞表面においてFXをFXaに、およびFIXをFIXaに活性化する。FXaは、プロトロンビンをトロンビンに活性化し、これがFVIII、FV、FXI、およびFXIIIを活性化する。さらに、この止血における初期段階で形成される限られた量のトロンビンは、血小板をも活性化する。血小板に対するトロンビンの作用に続き、これらは形を変えて、それらの表面に電荷をもったリン脂質を露出する。この活性化された血小板の表面は、さらなるFX活性化および完全なトロンビン生成のための鋳型を形成する。活性化された血小板表面において、活性化された血小板の表面上に形成されたFIXa−FVIIla複合体を経て、さらなるFXの活性化が生じ、次いでFXaは、依然として表面上でプロトロンビンをトロンビンに転換する。次いで、トロンビンは、フィブリノーゲンを、不溶性であり、かつ初期の血小板栓(platelet plug)を安定化するフィブリンに転換する。このプロセスにより、TFを発現または暴露する部位に区画化、すなわち局在化させ、これにより凝固系が全身的に活性化するリスクを最小にしている。栓を形成する不溶性のフィブリンは、FXIIIで触媒されるフィブリン線維の架橋によってさらに安定化される。
【0003】
FVIIaは主に単鎖酵素前駆体として血漿中に存在し、これがFXaによって、その2本鎖の活性型のFVIIaに切断される。組換え活性型VIIa因子(rFVIIa)は、前止血性(pro−haemostatic)の薬剤として開発されている。rFVIIaの投与は、迅速で高度に有効な前止血応答(pro−haemostatic response)を、出血を伴う血友病被験者(該被験者は、抗体形成により凝固因子製品で治療することができない)において提供する。また、VII因子を欠損する出血被験者、または正常な凝固系を有するが、過剰の出血を受けている被験者は、FVIIaでうまく治療することができる。これらの研究において、好ましくないrFVIIaの副作用(特に血栓塞栓症の発生)には、遭遇しなかった。
【0004】
余分な(Extra)外因的に投与されたFVIIaは、活性化された血小板表面におけるトロンビンの形成を増大する。これは、FIXまたはFVIIIを欠き、それゆえ完全なトロンビン形成のための最も強力な経路を欠いている血友病被検者において生じる。また、血小板数の低下または機能に欠陥がある血小板の存在下では、余分なFVIIaが、トロンビン形成を増大する。
【0005】
組換えヒトFVIIaの商業的な標品は、NovoSeven(登録商標)(Novo Nordisk A/S, Denmark)として販売されている。NovoSeven(登録商標)は、血友病AおよびBの患者における出血の発症の治療のために指定されている。NovoSeven(登録商標)は、有効かつ信頼できる出血の発症の治療のための、市場において入手可能な唯一の組換えFVIIaである。
【0006】
イプシロン―アミノカプロン酸(ε−aminocaproic acid;ε―アミノカプロン酸、EACA)およびそのアナログ、イプシロン―アミノカプロン酸(TA)(UKでの商品名は「シクロカプロン」である)は、アミノ酸リジンの誘導体である。これらの薬物の双方は、プラスミンのタンパク質分解活性とプラスミノーゲンからプラスミンへのプラスミノゲンアクチベータによる転換とを阻害する。プラスミンは、フィブリノーゲンおよび凝固に関与する一連の他のタンパク質を切断する。イプシロン―アミノカプロン酸は、e―アミノカプロン酸(e−aminocaproic acid)よりも6〜10倍強力である。
【0007】
イプシロン―アミノカプロン酸は、通常は錠剤形態で提供され、典型的な用量は3または4グラム(分離の用量において)/日・成人である。胃腸障害(Gastrointestinal upset)(吐き気、嘔吐および下痢)は副作用として稀に生じるが、これらの徴候は通常は用量を減らせば解決する。それは静脈注射によっても提供し得るが、急速な注射は目眩(dizziness)および低血圧を生じる可能性があるので緩徐に注入しなければならない。また、シロップ製剤は小児科で使用できる:このシロップには500mgのイプシロン―アミノカプロン酸(各々5mlにおいて)、小児のための常用量(usual dose)は25mg/kg(一日に3回まで)である。前記薬物は、歯の出現に関連した口腔の出血を制御する特定の使用に対するものであってもよい。前記薬物は腎臓により排出されるので、腎臓に障害がある場合には毒性の蓄積をさけるために用量を減らさなければならない。
【0008】
手術または重大な外傷に付随して過度に出血し、輸血の必要がある被検者では、いかなる出血も受けていない人々よりも多くの合併症を発症することが周知である。しかし、また、ヒトの血液または血液製剤の投与を必要とする中等度の出血(凝固欠陥の治療のための血小板、白血球、血漿に由来する濃縮物、その他)では、ヒト・ウイルス(肝炎、HIV、パルボウイルス、およびその他の現在未知のウイルス)を伝達するリスクに関連した合併症を引き起こすかもしれない。大量の輸血を必要とする大量の出血は、肺および腎機能の障害を含む多臓器不全の発症を引き起こすかもしれない。一旦被検者がこれらの深刻な合併症を発病すると、多くのサイトカインおよび炎症反応に関与するイベントのカスケードが開始され、どのような治療も極めて困難となり、残念なことにうまくいかないことが多い。したがって、手術における、並びに主要な組織損傷の治療における主な目標は、出血を避けること、または最小にすることである。このような出血を避けるため、または最小にするために、線維素溶解酵素によって容易に溶解されない安定な、および堅固な止血栓(haemostatic plugs)の形成を確実にすることが重要である。さらに、このような栓または血餅の迅速かつ効率的な形成を確実にすることは、重要である。
【0009】
今日、外傷被害者および手術に付随して出血している被験者を含む、出血の発症を受けている被験者は、いくらかのFVIIaの注射または輸液によって治療されることが多く、FVIIaの短い半減期(2.5時間)のため、特定のレベルの止血能を維持するために二回以上の投与が必要とされる。より迅速な出血の阻止は、このような被検者に対して重要な利益となろう。そうなれば、出血を止めて、止血し続けるために必要な投与数が減少するであろう。
【0010】
欧州特許第225,160号(Novo Nordisk)は、凝固因子の欠陥または凝固因子阻害剤によって引き起こされるものではない出血障害の治療のための、FVIIa組成物および方法に関する。
【0011】
欧州特許第82,182号(Baxter Travenol Lab.)は、被検者において、血液凝固因子の欠陥に、または血液凝固因子に対する阻害剤の効果に対抗する際に使用するためのVIIa因子の組成物に関する。
【0012】
国際特許公開番号WO93/06855(Novo Nordisk)は、FVIIaの局所適用に関する。
【0013】
Hirawat等(Blood (16 Nov 2000), 96 (11, part 2), p. 84)は、FVIIaおよびイプシロン―カプロン酸(capronic acid)のFVII欠損患者への投与に関する。
【0014】
Ciavarella等(Haemostasis 1996: 150−154)は、タイプIII フォンウィルブランド病の2患者の治療における組換え型VIIa因子(NovoSeven)の投与およびフォンウィルブランド因子に対する阻害剤の投与に関する。
【0015】
当該技術分野において、出血の発症が;手術、外傷、または組織損傷のその他の形態;多回輸血された被検者における凝固障害を含む凝固障害の誘導;肝機能の減少(「肝疾患」)を含む、先天性または後天性の凝固または出血の障害;血小板機能の欠陥または血小板数の減少;凝固に必須の「化合物(compound)」(たとえば、血小板またはフォンビルブラント因子タンパク質)の欠乏または異常;線維素溶解の増大;抗凝固療法または血栓溶解療法;或いは幹細胞移植;による被験者を含む、出血の発症を受けている被検者の治療を改善する必要性がなお存在する。
【0016】
当該技術分野において、改善された、信頼のおける、かつ広く適用できる、凝固を増強するか、安定な止血栓の形成を確実にするもしくは増強するか、または治療される被検者のための便宜を増強するか、または被験者、特にトロンビン生成が損なわれている被験者における完全な止血を達成する方法が依然として必要とされている。また、出血の阻止(bleeding arrest)に対する時間が短縮された方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0017】
本発明の1つの目的は、出血の発症および凝固障害の治療または予防において有効に使用することができる組成物を提供することである。
【0018】
本発明の第2の目的は、出血の発症の治療もしくは予防に、または凝血原として、有効に使用することができる単一の単位剤形の組成物を提供することである。本発明のもう一つの目的は、相乗効果を示す組成物、治療方法、またはキットを提供することである。
【0019】
本発明さらなる目的は、凝固系の全身的な高レベルの活性化などの、実質的な副作用を示さない組成物、治療方法、またはキットを提供することである。
【0020】
本発明のその他の目的は、本明細書を読むことによって明らかとなるであろう。
【0021】
第1の側面において、本発明は、VII因子関連ポリペプチドおよびイプシロン―アミノカプロン酸を含む薬学的組成物を提供する。
【0022】
第2の側面において、本発明は、被検者の出血の発症を治療するための薬物の製造のための、イプシロン―アミノカプロン酸と組み合わせたVII因子関連ポリペプチドの使用を提供する。
【0023】
その異なる態様において、薬物は、完全な止血を得るために必要な時間を減少するため、止血を維持するために必要な時間を減少するため、凝固時間を減少するため、血餅溶解時間(clot lysis time)を延長するため、および血餅強度(clot strength)を増大するためのものである。
【0024】
異なる態様において、薬物は、手術、外傷、または組織損傷のその他の形態;多回輸血された被検者における凝固障害を含む凝固障害;肝機能の減少(「肝疾患」)を含む、先天性または後天性の凝固または出血の障害;血小板機能の欠陥または血小板数の減少;必須凝固「化合物」(たとえば、血小板またはフォンビルブラント因子タンパク質)の欠乏または異常;線維素溶解の増大;抗凝固療法または血栓溶解療法;または幹細胞移植;による出血の発症を受けている被検者を治療するためのものである。一連の態様において、出血は、脳、内耳領域、目、肝臓、肺、腫瘍組織、消化管などの器官において生じ;一連のもう一つの態様において、これは、出血性胃炎およびおびただしい子宮出血におけるものなどの、びまん性出血(diffuse bleeding)である。一連のもう一つの態様において、出血の発症は、急性の関節出血(haemarthroses)(関節の出血)、慢性血友病の関節症、血腫(たとえば筋肉、後腹膜(retroperitoneal)、舌下、および咽頭後方(retropharyngeal)のもの)、その他の組織における出血、血尿(腎尿管(renal tract)からの出血)、大脳出血、手術(たとえば、肝切除)、抜歯、および胃腸出血(たとえば、UGIの出血)を有する被験者における手術または外傷と関連した出血である。1つの態様において、薬物は、被検者における、外傷、または手術、または血小板の数もしくは活性の低下による出血の発症を治療するためのものである。
【0025】
さらなる側面において、本発明は、被検者における出血の発症を治療するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に出血を治療するために有効である方法を提供する。
【0026】
さらなる側面において、本発明は、被検者における凝固時間を減少するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に凝固時間を減少するために有効である方法を提供する。
【0027】
さらなる側面において、本発明は、被検者における止血を増強するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に止血を増強するために有効である方法を提供する。
【0028】
さらなる側面において、本発明は、被検者における血餅溶解時間を延長するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に血餅溶解時間を延長するために有効である方法を提供する。
【0029】
さらなる側面において、本発明は、被検者における血餅強度を増大するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に血餅強度を増大するために有効である方法を提供する。
【0030】
更なる側面において、本発明は、非血友病被験者における出血の発症を治療するための薬物の製造のための、イプシロン―アミノカプロン酸と組み合わせたVII因子の使用を提供する。
【0031】
その異なる態様において、薬物は、完全な止血を得るために必要な時間を減少するため、止血を維持するために必要な時間を減少するため、凝固時間を減少するため、血餅溶解時間(clot lysis time)を延長するため、および血餅強度(clot strength)を増大するためのものである。
【0032】
異なる態様において、薬物は、手術、外傷、または組織損傷のその他の形態;多回輸血された被検者における凝固障害を含む凝固障害;血小板機能の欠陥または血小板数の減少;線維素溶解の増大;抗凝固療法または血栓溶解療法;幹細胞移植;による出血の発症を受けている非血友病被検者を治療するためのものである。一連の態様において、出血は、脳、内耳領域、目、肝臓、肺、腫瘍組織、消化管などの器官において生じ;一連のもう一つの態様において、これは、出血性胃炎およびおびただしい子宮出血におけるものなどの、びまん性出血(diffuse bleeding)である。一態様において、薬物は、凝固障害または血小板の数もしくは活性の低下による出血の発症を治療するためのものであり;もう一つにおいて、出血の発症は、抗凝血薬療法によるものである。
【0033】
1つの側面において、本発明は、非血友病被検者における出血の発症を治療するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子の標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に出血を治療するために有効である方法を提供する。
【0034】
1つの側面において、本発明は、非血友病被検者における凝固時間を減少するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子の標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に凝固時間を減少するために有効である方法を提供する。
【0035】
1つの側面において、本発明は、非血友病被検者における止血を増強するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子の標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に止血を増強するために有効である方法を提供する。
【0036】
1つの側面において、本発明は、非血友病被検者における血餅溶解時間を延長するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子の標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に血餅溶解時間を延長するために有効である方法を提供する。
【0037】
1つの側面において、本発明は、非血友病被検者における血餅強度を増大するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子の標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に血餅強度をするために有効である方法を提供する。
【0038】
1つの側面において、本発明は、非血友病の出血の発症のための治療剤を含むキットであって、
(a)VII因子の有効な量、およびイプシロン―アミノカプロン酸の有効な量、および薬剤的に許容されるキャリアの単一の単位剤形;並びに、
(b)前記単一の単位剤形を含むための容器手段、を含むキットを提供する。
【0039】
本方法の1つの一連の態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、単一の単位剤形で投与される。
【0040】
もう一つの一連の態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品を含む第1の単位剤形およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む第2の単位剤形の形態で投与される。その一連の態様において、第1の単位剤形および前記第2の単位剤形は、15分を超えて時間を離して投与されない。
【0041】
さらなる側面において、本発明は、出血の発症のための治療剤を含むキットであって、
(a)VII因子関連ポリペプチドの有効な量、およびイプシロン―アミノカプロン酸の有効な量、および薬剤的に許容されるキャリアの単一の単位剤形;並びに、
(a)前記単一の単位剤形を含むための容器手段、を含むキットを提供する。
【0042】
本発明の1つの一連の態様において、VII因子関連ポリペプチドは、VII因子アミノ酸配列変異体である。1つの態様において、VII因子関連ポリペプチドの活性と天然のヒトVIIa因子(野生型FVIIa)の活性との間の比は、本明細書に記載されたとおりの「インビトロ加水分解アッセイ法」で試験したときに、少なくとも約1.25である。
【0043】
1つの態様においてVII因子は、ヒトVII因子である。1つの態様において、前記VII因子は、ウシ、ブタ、イヌ、ウマ、マウスまたはサケのVII因子である。もう一つの態様において、前記VII因子は、組換えによって作製される。もう1つの態様において、前記VII因子は、血漿に由来する。好ましい態様において、前記VII因子は、組換えヒト因子VIIである。本発明の1つの一連の態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドは、その活性型である。本発明の1つの好ましい態様において、前記VII因子は、組換えヒトVIIa因子である。
【0044】
1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、約100:1および約1:100(w/w VII因子:イプシロン―アミノカプロン酸)の間の質量比で存在する。
【0045】
1つの態様において、VII因子関連ポリペプチドは、野生型VII因子と比較して、20アミノ酸以下が、置換され、欠失され、または挿入されたアミノ酸配列変異体である(すなわち、米国特許第4,784,950に開示されたアミノ酸配列を有するポリペプチド)。もう一つの態様において、VII因子変異体は、15アミノ酸以下が置換され、欠失され、または挿入され;その他の態様において、VII因子変異体は、野生型のVII因子と比較して8、6、5、または3アミノ酸など、10アミノ酸以下が置換され、欠失され、または挿入されている。1つの態様において、VII因子変異体は、以下の一覧から選択される:L305V−FVlla、L305V/M306D/D309S−FVlla、L305I−FVlla、L305T−FVlla、F374P−FVlla、V158T/M298Q−FVlla、V158D/E296V/M298Q−FVlla、K337A−FVlla、M298Q−FVlla、V158D/M298Q−FVlla、L305V/K337A−FVlla、V158D/E296V/M298Q/L305V−FVlla、V158D/E296V/M298Q/K337A−FVlla、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A−FVlla、K157A−FVII、E296V−FVII、E296V/M298Q−FVII、V158D/E296V−FVII、V158D/M298K−FVII、およびS336G−FVII。
【0046】
さらなる態様において、VII因子関連ポリペプチドは、天然のヒト凝固VIIa因子と比較して、組織因子非依存的な活性が増大されている。もう1つの態様において、増大された活性は、基質特異性の変化を伴わない。本発明のもう1つの態様において、組織因子に対するVII因子関連ポリペプチドの結合は損なわれず、VII因子関連ポリペプチドは組織因子に結合したときに、少なくとも野生型のVIIa因子の活性を有する。
【0047】
1つの態様において、哺乳類の血液において凝固時間が減少される。もう1つの態様において、哺乳類の血液において止血が増強される。もう1つの態様において、哺乳類の血液において血餅溶解時間が延長される。もう1つの態様において、哺乳類の血液において血餅強度が増大される。1つの態様において、哺乳類の血液は、ヒト血液である。もう1つの態様において、哺乳類の血液は、正常なヒト血液であり;1つの態様において、血液は、トロンビン生成が損なわれている被検者からの血液である。1つの態様において、血液は、1つまたは複数の凝固因子の欠損を有する被検者からの血液であり;もう1つの態様において、血液は、1つまたは複数の凝固因子に対する阻害剤を有する被検者からの血液であり;1つの態様において、血液は、フィブリノーゲンの濃度が低下された被検者からのものである。1つの一連の態様において、血液は、血漿(plasma)である。
【0048】
本発明の1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、組成物に含まれる唯一の止血性薬剤である。もう1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸ポリペプチドは、組成物に含まれる唯一の活性な止血性薬剤である。もう1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、被検者に投与される唯一の凝固因子である。本発明の1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、患者に投与される唯一の活性薬剤である。1つの態様において、組成物は、実質的にトロンビンまたはプロトロンビンを含まない;もう1つの態様において、組成物は、実質的にFXを含まない;もう1つの態様において、組成物は、実質的にFXaを含まない。
【0049】
もう1つの態様において、薬学的組成物は、静脈内投与、好ましくは注射または注入、特に注射のために処方される。1つの態様において、組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤またはキャリアを含む。
【0050】
本発明の1つの態様において、組成物は単一の単位剤形であり、該単一の単位剤形は両方の化合物を含む。本発明の1つの態様において、組成物は、第1の単位剤形としてVII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品を、および第2の単位剤形としてイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含み、かつ前記第1および第2の単位剤形を含むための容器手段を含むパーツのキットの形態である。1つの態様において、組成物またはキットは、適用できるものとして(as applicable)、組成物または分離した成分のそれぞれを投与するための説明書をさらに含む。
【0051】
本発明の1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、単一剤形で投与される。本発明の1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品を含む第1の単位剤形およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む第2の単位剤形の形態で投与される。
【0052】
本発明の1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、同時に投与される。もう1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、逐次に投与される。1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、15分、好ましくは10分、より好ましくは5分、より好ましくは2分を超えて時間を離して投与されない。1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、15分を超える、好ましくは2時間まで、より好ましくは1〜2時間、より好ましくは1時間まで、より好ましくは30分〜1時間、より好ましくは30分まで、より好ましくは15〜30分まで時間を離して投与される。
【0053】
1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの量は、約0.05mg/日〜約500mg/日量(70kgの被験者)である。
1つの態様において、イプシロン―アミノカプロン酸の量は、約0.05mg〜約6000mg/日、例えば、約1mg〜約5000mg/日、または、例えば、約5mg〜5000mg/日(70−kg 被験者)の範囲である。
【0054】
1つの態様において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、約100:1および約1:100(w/w VII因子:イプシロン―アミノカプロン酸)の間の質量比で存在する。
【0055】
本発明の1つの態様において、薬学的組成物は、単一の単位剤形であり、かつ本質的にVII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品、並びにイプシロン―アミノカプロン酸の標品、並びに薬学的に許容されるキャリア、安定剤、界面活性剤、中性塩、抗酸化剤、保存剤、およびプロテアーゼ阻害剤のリストから選択される1つまたは複数の成分からなる。
【0056】
本発明のもう1つの態様において、薬学的組成物は、本質的にVII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品並びに薬学的に許容されるキャリア、安定剤、界面活性剤、中性塩、抗酸化剤、保存剤、およびプロテアーゼ阻害剤のリストから選択される1つまたは複数の成分からなる第1の単位剤形と、本質的にイプシロン―アミノカプロン酸の標品並びに薬学的に許容されるキャリア、安定剤、界面活性剤、中性塩、抗酸化剤、保存剤、およびプロテアーゼ阻害剤のリストから選択される1つまたは複数の成分からなる第2の単位剤形と、を有するパーツのキットの形態である。
【0057】
さらなる態様において、被検者はヒトであり;もう1つの態様において、被検者は、トロンビン生成が損なわれており;1つの態様において、被検者は、フィブリノーゲンの血漿濃度が低下しており(たとえば、多回輸血された被検者);1つの態様において、被検者は、VIII因子またはFIXの血漿濃度が低下している;1つの態様において、被検者は、凝固障害を有する;1つの態様において、被検者は、血小板の計数もしくは活性の低下を有する。
【0058】
もう一つの側面において、本発明は、唯一の凝固タンパク質としてVII因子で被検者を治療したときと比較して、VII因子応答性症候群をわずらっている被検者における止血を増強する方法に関し、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に止血を増強するために有効な方法である。
【0059】
もう一つの側面において、本発明は、被検者のトロンビン形成を増強するための方法に関し、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共にトロンビン形成を増強するために有効な方法である。
【0060】
もう一つの側面において、本発明は、唯一の凝固タンパク質としてVII因子で被検者を治療したときと比較して、VII因子応答性症候群をわずらっている被検者におけるトロンビン形成を増強する方法に関し、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共にトロンビン形成を増強するために有効な方法である。
【0061】
もう一つの側面において、本発明は、唯一の凝固因子タンパク質としてVII因子を被検者に投与したときに必要な投与数と比較して、非血友病の出血の発症をわずらっている被検者における止血を達成するために必要な凝固因子タンパク質の投与数を減少するための方法に関し、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子の標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に凝固因子タンパク質の投与数を減少するために有効な方法である。
【0062】
もう一つの側面において、本発明は、唯一の凝固因子タンパク質としてVII因子を被検者に投与したときに必要な投与数と比較して、VII因子応答性症候群をわずらっている被検者における止血を達成するために必要な凝固因子タンパク質の投与数を減少するための方法に関し、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に凝固因子タンパク質の投与数を減少するために有効な方法である。
【0063】
もう一つの側面において、本発明は、VII因子応答性症候群をわずらっている被検者における出血を治療する方法に関し、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に出血の治療に有効な方法である。
【0064】
もう1つの側面において、本発明は、非血友病の出血の発症を患っている被検者における止血を増強および維持する方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子の標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に出血を治療することに有効である方法に関する。
【0065】
もう一つの側面において、本発明は、VII因子応答性症候群をわずらっている被検者における止血を増強および維持する方法に関し、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に出血の治療に有効な方法である。
【0066】
1つの態様において、VII因子は、ヒト組換えVIIa因子(rFVIIa)である。もう一つの態様において、rFVIIaは、Novo Seven(登録商標)(Novo Nordisk A/S、Bagsvaerd、Denmark)である。
【0067】
もう一つの側面において、本発明は、哺乳類の血漿においてフィブリン血餅形成を増強するための薬物の製造のための、イプシロン―アミノカプロン酸と組み合わせたVII因子またはVII因子関連ポリペプチドの使用に関する。
【0068】
もう一つの側面において、本発明は、被検者におけるフィブリン血餅形成を増強する方法に関し、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に出血の治療に有効な方法である。
【発明の詳細な記載】
【0069】
手術または重大な外傷に関連して過度に出血し、輸血の必要がある被検者では、いかなる出血も経験していない人々よりも多くの合併症を発病する。しかし、彼らが人血または血液製剤(凝固欠陥の治療のための血小板、白血球、血漿に由来する濃縮物、その他)の投与を必要とする場合は、これによりヒト・ウイルス(例えば、肝炎、HIV、パルボウイルス、または他の現在未知のウイルス)並びに非ウイルス病原を伝達するリスクがあるので、中等度の出血でも合併症を引き起こすかもしれない。大量の輸血を必要とする大量の出血は、肺および腎機能の障害を含む多臓器不全の発症を引き起こすかもしれない。一旦被検者がこれらの深刻な合併症を発病すると、多くのサイトカインおよび炎症反応に関与するイベントのカスケードが開始され、どのような治療も極めて困難となり、残念なことにうまくいかないことが多い。大部分の血液の損失を経験している患者は、臨床的に不安定になる。このような患者は、心房細動(atrial fibrillation)を受けるリスクがあり、これにより心臓活動の致命的な停止;腎機能障害;または、肺において流体の血管外遊走(いわゆる「湿性肺(wet lungs)」またはARDS)を生じる可能性もある。したがって、手術における、並びに主要な組織損傷の治療における主な目標は、出血を避けること、または最小にすることである。このような望まれない出血を避けるため、または最小にするために、線維素溶解酵素によって容易に溶解されない安定な、および固体の止血栓の形成を確実にすることが重要である。さらに、このような栓または血餅の迅速かつ効率的な形成を確実にすることは、重要である。
【0070】
また、血小板減少症(血小板の数または活性が低下された)の被検者は、トロンビン生成が損なわれており、並びにフィブリン栓の安定化が不完全であることにより、中途で溶解されやすい止血栓を生じる。さらに、重大な外傷または器官損傷を受けた被検者は、結果として、頻繁に輸血が行われ、血小板数の低下、並びにフィブリノーゲン、VIII因子、およびその他の凝固タンパク質のレベルが低下することが多い。これらの被検者は、トロンビン生成の障害(または、低下)を経験する。
したがって、これらの被検者では、止血に欠陥があるか、またはほとんど効果がなく、タンパク質分解酵素によって容易に、および中途で溶解されるフィブリン栓を形成することになり、そのうえこのような酵素は、広範な外傷および器官損傷によって特徴づけられる局面で広範囲に放出される。
【0071】
また、組織の出血により、血腫(haematomas)を形成する可能性もある。血腫の大きさ(特に、頭蓋内および脊髄内における)は、神経機能の損失の程度、リハビリの困難さ、および/またはリハビリ後の神経機能の永久的な減失(impairments)の重篤さおよび程度と密接に関連がある。最も重篤な血腫の結果は、これらが脳に位置するときに見られ、これらにより、患者の死亡さえも引き起こすであろう。
【0072】
したがって、出血の治療における主要な目的は、最短時間で止血を行い、従って、失血を最小にしておくことである。
【0073】
したがって、本発明は、このような治療を必要とする被検者における出血の発症の治療のための治療の、有益な組成物、使用、および方法を提供する。前記組成物、使用、および方法は、止血が行われる前に失血を少なくすること、手術の際に必要とされる血液を少なくすること、止血が行われるまで血圧を許容されるレベルに保持すること、血圧のより迅速な安定化、治療された患者の回復時間を短縮すること、治療された患者のリハビリ時間を短くすること、脳血腫を含む血腫の形成の減少または血腫の形成を小さくすること、迅速な出血の抑止、出血の停止および止血の維持のために必要な投与数の減少などの有益な効果に関与し得る。
【0074】
イプシロン―アミノカプロン酸の標品と組み合わせて、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、たとえばVIIa因子の標品を投与することにより、VIIa因子またはイプシロン―アミノカプロン酸のいずれかが単独で投与されるときの凝固時間、血餅の堅固さ、および耐性と比較して、凝固時間の短縮、堅固な血餅、および線維素溶解に対する耐性の増大がもたらされる。
【0075】
また、イプシロン―アミノカプロン酸の標品と組み合わせて、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、たとえばVIIa因子の標品を投与することにより、VIIa因子またはイプシロン―アミノカプロン酸のいずれかが単独で投与されるときの状況と比較して、出血の阻止を行うための時間の減少および止血を維持するための投与数の減少がもたらされる。本発明は、イプシロン―アミノカプロン酸の標品およびVII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品の同時または逐次の投薬における有益な効果を提供する。本発明に従った薬学的組成物は、単一の組成物の形態であってもよく、または多成分性のキット(パーツのキット)の形態であってもよい。本発明に従った組成物は、ヒトなどの霊長類を含む哺乳類において、治療的および予防的な凝血原として有用である。本発明は、ヒトを含む被検者における出血の発症を治療する(予防的に治療することまたは防止することを含む)ための方法をさらに提供する。
【0076】
第1または第2または第3の、その他の単位用量がこの明細書の全体にわたって言及されるが、これは、投与の好ましい順序を示すのではなく、単に便宜上の目的でなされるだけである。
【0077】
VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品の組み合わせは、短い凝固時間、止血栓の迅速な形成、および安定な止血栓の形成を確実にする有利な製品である。VII因子またはVII因子関連ポリペプチドおよびイプシロン―アミノカプロン酸の組み合わせは、堅固な、安定な、かつ迅速に形成される止血栓の形成を確実にする有利な製品であることが、本発明の発明者によって見いだされた。
【0078】
本発明の発明者は、VIIa因子およびイプシロン―アミノカプロン酸の組み合わせが、VIIa因子またはイプシロン―アミノカプロン酸のいずれか単独よりも効率的に血餅の堅固さを増大することができることを示した。また、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドおよびイプシロン―アミノカプロン酸の組み合わせが、VIIa因子またはイプシロン―アミノカプロン酸のいずれか単独よりも効率的に正常なヒト血漿におけるインビトロでの血餅溶解時間を引き延ばすことができることが示された。また、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドおよびイプシロン―アミノカプロン酸の組み合わせが、VIIa因子またはイプシロン―アミノカプロン酸のいずれか単独よりも効率的に正常なヒト血漿における半分の血餅溶解時間(half−clot lysis time)での血餅溶解時間を引き延ばすことができることが示された。また、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドおよびイプシロン―アミノカプロン酸の組み合わせが、VIIa因子またはイプシロン―アミノカプロン酸のいずれか単独よりも効率的に正常なヒト血漿における線維素溶解、特にtPAを媒介した線維素溶解から血餅を保護できることが示された。したがって、凝固を増強することにより、被験者の出血のより有効な治療を得ることができる。
【0079】
理論によって義務づけられることは望まないが、完全なトロンビン生成は、堅固で安定な止血栓を形成するために、またその結果、止血の維持のために必要であると考えられている。このような栓のフィブリン構造は、形成されるトロンビンの量および初期のトロンビン生成速度の両方に依存的である。障害性のトロンビン生成の存在下では、非常に浸透性の多孔性フィブリン栓が形成されている。フィブリン表面に存在する線維素溶解性酵素は、通常容易にこのようなフィブリン栓を溶解する。また、安定なフィブリン栓の形成は、トロンビンによって活性化されるXIIIa因子の存在に依存的であり、したがって完全なトロンビン生成にも依存的である。さらに、最近記載されたトロンビンで活性化可能な線維素溶解阻害剤のTAFIは、その活性化のためにむしろ多量のトロンビンを必要とする。したがって、完全に十分ではないトロンビン形成の存在下では、TAFIは活性化されず、通常の繊維素溶解活性により通常の分解されるものよりも簡易な止血栓の形成を生じる。血小板数が低下した状況である血小板減少症では、外因性の余分のVIIa因子の投与によって、より迅速なトロンビン生成が開始される。しかし、総トロンビン生成は、高濃度のVIIa因子によってさえ正常化されない。
【0080】
フィブリノーゲンの血漿濃度が低下した被検者(多くの外傷または広範な手術の結果として多回輸血された被検者)では、完全なトロンビン活性化は起こらない。次いで、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸の組み合わせの投与によって、より有効な止血が達成される。
【0081】
血小板減少症の被検者は、障害性トロンビン生成並びにフィブリン栓の安定化の欠陥がもたらされ、中途で溶解されやすい止血栓を生じる。さらに、重大な外傷または器官損傷を受けた被検者は、結果として、頻繁に輸血が行われ、血小板数の低下、並びにフィブリノーゲン、VIII因子、およびその他の凝固タンパク質のレベルが低下することが多い。これらの被検者は、トロンビン生成の障害(または、低下)を経験する。加えて、これらのフィブリノーゲン・レベルの低下は、ネガティブにXIII因子の活性化に干渉する。したがって、これらの被検者は、止血に欠損があるか、またはあまり効率的でなく、タンパク質分解酵素によって、加えてこのような酵素が広範な外傷および器官損傷によって特徴づけられる状況で広範囲に放出されることによって、容易にかつ中途で溶解されるフィブリン栓の形成を引き起こす。
【0082】
被検者の止血を維持するための完全な能力を有する完全に安定化された栓の形成を容易にするために、本発明の組成物が投与される。この組成物は、特に血小板数が低下した被検者において、並びにフィブリノーゲンおよび/またはその他の凝固タンパク質の血漿レベルが低下した被検者において、有益である。
【0083】
VII因子ポリペプチド:
本発明を実施する際に、出血を防止または治療するために有効なる任意のVII因子ポリペプチドを使用してもよい。これは、血液もしくは血漿に由来するか、または組換え手段によって産生されたVII因子ポリペプチドを含む。
【0084】
本発明は、たとえば米国特許第4,784,950号(野生型ヒトVII因子)に開示されたアミノ酸配列を有するものなどのVII因子ポリペプチドを含む。一部の態様において、VII因子ポリペプチドは、たとえば米国特許第4,784,950号(野生型VII因子)に開示されたとおりのヒトVIIa因子である。一連の態様において、VII因子ポリペプチドは、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、および最も好ましくは少なくとも約70%のヒトVIIa因子の生物比活性(specific biological activity)を示すポリペプチドを含む。一連の態様において、VII因子ポリペプチドは、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約120%、より好ましくは少なくとも約140%、および最も好ましくは少なくとも約160%のヒトVIIa因子の特異的な生物活性を示すポリペプチドを含む。一連の態様において、VII因子ポリペプチドは、米国特許第4,784,950号に開示されたとおりの野生型VII因子の配列と少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、および最も好ましくは少なくとも約95%の一致性を示すポリペプチドを含む。
【0085】
本明細書で使用されるものとして、「VII因子ポリペプチド」は、VII因子、並びにVII因子関連ポリペプチドを含むが、限定されない。「VII因子」の用語は、野生型ヒトVII因子(米国特許第4,784,950号に開示されたもの)、並びに例えばウシ、ブタ、イヌ、マウス、およびサケVII因子などのその他の種に由来する野生型VII因子のアミノ酸配列1−406を有するポリペプチドを含むことが企図されるが、限定されず、前記VII因子は、血液もしくは血漿に由来するか、または組換手段によって産生される。これには、1つの個体から別の個体へと存続し且つ出現するであろう、VII因子の天然の対立形質の変異をさらに含む。また、糖鎖形成またはその他のポスト−翻訳修飾の程度および部位は、選ばれた宿主細胞および宿主細胞の環境の性質に依存して異なってもよい。また、「VII因子」の用語は、VII因子ポリペプチドの未切断(酵素前駆体)の形態、並びにタンパク分解性にプロセスされてこれらのそれぞれの生理活性の形態に産生された、VIIa因子と称されるものを含むことが企図される。典型的には、VII因子は、残基152および153の間で切断されてVIIa因子を産生する。
【0086】
「VII因子関連ポリペプチド」は、ヒトVII因子と比較して化学的に修飾されたか、および/またはヒトVII因子と比較して1つまたは複数のアミノ酸配列の変化を含む(すなわちVII因子変異体)か、および/またはヒトVII因子と比較して切断されたアミノ酸配列を含む(すなわちVII因子断片)、いずれかのVII因子ポリペプチドを含むが、これらに限定されない。このようなVII因子関連ポリペプチドは、ヒトVII因子と比較して、安定度、リン脂質結合、変更された比活性などを含む異なる特性を示してもよい。
「VII因子関連ポリペプチド」の用語は、未切断(酵素前駆体)形態のポリペプチド、並びにタンパク分解性にプロセスされてこれらのそれぞれの生理活性の形態に産生された「VIIa関連ポリペプチド」または「活性化されたVII因子関連ポリペプチド」と称されるものを含むことが企図される。
【0087】
本明細書に使用されるものとして、「VII因子関連ポリペプチド」は、野生型のヒトVII因子と比較して、実質的に同等または改善された生物活性を示すポリペプチド、並びに野生型ヒトVIIa因子の活性と比較して、VIIa因子生物活性が実質的に修飾され、または減少したポリペプチドを含むが、限定されない。
これらのポリペプチドは、化学的に修飾されたVII因子またはVIIa因子および特定のアミノ酸配列の変化が導入されて、ポリペプチドの生理活性が修飾されまたは崩壊されたVII因子変異体を含むが、これらに限定されない。
【0088】
更に、わずかに修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチド、たとえばN末端アミノ酸の欠失もしくは付加を含む修飾されたN末端を有するポリペプチド、および/またはヒトVIIa因子と比較して化学的に修飾されたポリペプチドを含む。
【0089】
VII因子の変異体を含むVII因子関連ポリペプチドは、実質的に野生型VII因子と同等もしくは優れた生理活性を示すか、または代わりに、野生型VII因子と比較して実質的に修飾され、もしくは減少した生理活性を示すかどうかにかかわらず、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換によって野生型VII因子の配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
【0090】
変異体を含むVII因子関連ポリペプチドは、上記の通りに凝固アッセイ法、タンパク質分解アッセイ法、またはTF結合実験の1つまたは複数において試験したときに、同じ細胞タイプにおいて産生された野生型VIIa因子の比活性の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、または少なくとも約130%を示すものを含む。
【0091】
変異体を含むVII因子関連ポリペプチドは、野生型VIIa因子と比較して実質的に同等または改善された生物活性を有し、上記の通りに凝固アッセイ法、タンパク質分解アッセイ法、またはTF結合実験の1つまたは複数において試験したときに、同じ細胞タイプにおいて産生された野生型VIIa因子の比活性の少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約110%、より好ましくは少なくとも約120%、およびもっとも好ましくは少なくとも約130%を示すものを含む。
【0092】
変異体を含み、野生型VIIa因子と比較して実質的に同等または改善された生物活性を有するVII因子関連ポリペプチドは、上記の通りに凝固アッセイ法、タンパク質分解アッセイ法、またはTF結合実験の1つまたは複数において試験したときに、同じ細胞タイプにおいて産生された野生型VIIa因子の比活性の多くとも約25%、好ましくは多くとも約10%、より好ましくは多くとも約5%、最も好ましくは多くとも約1%を示すものである。野生型VII因子と比較して実質的に修飾された生物活性を有するVII因子変異体は、TF非依存性のX因子タンパク分解活性を示すVII因子変異体、およびTFに結合するが、X因子を切断しないものを含むが、これらに限定されない。
【0093】
一部の態様において、VII因子ポリペプチドは、VII因子関連ポリペプチド、特に変異体であって、ここで「インビトロ加水分解アッセイ法」(下記の「アッセイ法」を参照されたい)で試験したときに、前記VII因子ポリペプチドの活性と天然のヒトVIIa因子(野生型FVIIa)の活性との間の比は少なくとも約1.25.25であり;その他の態様において、比は、少なくとも約2.0であり;さらなる態様において、比は、少なくとも約4.0である。本発明の一部の態様において、VII因子ポリペプチドは、VII因子関連ポリペプチド、特に変異体であって、ここで「インビトロタンパク質分解アッセイ法」(下記の「アッセイ法」を参照されたい)で試験したときに、前記VII因子ポリペプチドの活性と天然のヒトVIIa因子(野生型FVIIa)の活性との間の比が少なくとも約1.25であり;その他の態様において、比は、少なくとも約2.0であり;さらなる態様において、比は、少なくとも約4.0であり;さらなる態様において、比は、少なくとも約8.0である。
【0094】
一部の態様において、VII因子ポリペプチドは、たとえば米国特許第4,784,950号(野生型VII因子)に開示されたとおりのヒトVII因子である。一部の態様において、VII因子ポリペプチドは、ヒトVIIa因子である。一連の態様において、VII因子ポリペプチドは、ヒトVIIa因子の生物比活性の少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、および最も好ましくは少なくとも約70%を示すVII因子関連ポリペプチドである。一部の態様において、VII因子ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換によって野生型VII因子の配列と異なるアミノ酸配列を有する。
【0095】
野性型VIIa因子と比較して、実質的に同等または優れた生物活性を有するVII因子の変異体の非限定の例は、デンマーク特許出願番号第PA2000 00734およびPA2000 01360号(WO 01/83725に対応する)およびPA2000 01361号(WO 02/22776に対応する)に記載されているものを含むが、これらに限定されない。野性型VII因子と実質的に同等または改善された生物活性を有するVII因子変異体の非限定の例は、S52A−FVII、S60A−FVII(lino ら、Arch. Biochem. Biophys.352 : 182−192,1998);L305V−FVII、L305V/M306D/D309S−FVII、L305I−FVII、L305T−FVII、F374P−FVII、V158T/M298Q−FVII、V158D/E296V/M298Q−FVII、K337A−FVII、M298Q−FVII、V158D/M298Q−FVII、L305V/K337A−FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V−FVII、V158D/E296V/M298Q/K337A−FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A−FVII、K157A−FVII、E296V−FVII、E296V/M298Q−FVII、V158D/E296V−FVII、V158D/M298K−FVII、およびS336G−FVII;米国特許第5,580,560号に開示したとおりの、増大されたタンパク分解性の安定度を示すFVIIa変異体;残基290および291の間または残基315および316の間でタンパク質加水分解で切断されたVIIa因子(Mollerupら、Biotechnol. Bioeng. 48:501−505,1995);並びにVIIa因子の酸化型(Kornfeltら、Arch. Biochem. Biophys. 363:43−54,1999)を含む。野生型VII因子と比較して、実質的に減少したまたは修飾された生物活性を有するVII因子変異体の非限定の例は、R152E−FVIIa(Wildgooseら、Biochem29 : 3413−3420,1990)、S344AFVIIaな(Kazamaら、J. Biol. Chem. 270:66−72, 1995)、FFR−FVIIa(Holstら、Eur. J. Vasc. Endovasc. Surg. 15: 515−520, 1998)、およびGlaドメインを欠いているVIIa因子(Nicolaisenら、FEBS Letts. 317: 245−249,1993)を含む。
化学的に修飾されたVII因子ポリペプチドおよび配列変異体の非限定の例は、たとえば米国特許第5,997,864号に記載されている。
【0096】
血液凝固におけるVIIa因子の生物活性は、(i)これが組織因子(TF)に結合する能力、および(ii)IX因子またはX因子のタンパク分解性の切断を触媒して活性化されたIX因子またはX因子(それぞれIXa因子またはXa因子)を産生する能力に由来する。
【0097】
本発明の目的のために、VII因子ポリペプチドの生物活性(「VII因子生物活性」)は、たとえば米国特許第5,997,864号に記載されているとおり、VII因子が欠損した血漿およびトロンボプラスチンを使用して、標品が血液凝固を促進する能力を測定することによって定量してもよいこのアッセイ法において、生物活性は、対象試料と比較した凝固時間の減少として現され、1単位/mlのVII因子活性を含むプールされたヒト血清標準的と比べることにより「VII因子単位」に換算される。あるいは、VIIa因子生物活性は、
【0098】
(i)脂質膜およびX因子に包埋されたTFを含む系において、VIIa因子またはVIIa因子関連ポリペプチドが活性化されたX因子(Xa因子)を産生する能力を測定すること(Perssonら、J. Biol. Chem. 272:19919−19924,1997);
(ii)水性系におけるX因子の加水分解を測定すること(「インビトロ・タンパク質分解アッセイ法」、下記を参照されたい);
(iii)表面プラスモン共振に基づいた機器を使用して、VIIa因子またはVIIa因子関連ポリペプチドのTFに対する物理的な結合を測定すること(Persson, FEBS Letts. 413: 359−363,1997);および、
(iv)VIIa因子および/またはVIIa因子関連ポリペプチドによる合成基質の加水分解を測定すること(「インビトロ加水分解アッセイ法」、下記を参照されたい);および、
(v)TF非依存的なインビトロ系におけるトロンビン生成の測定、によって定量してもよい。
【0099】
「VII因子の生物活性」または「VII因子の活性」の用語は、トロンビンを生成する能力を含むことが企図され;該用語は、組織因子の非存在下で活性化された血小板の表面においてトロンビンを生成する能力も含む。
【0100】
本発明に従って使用してもよいVIIa因子標品は、NovoSeven(登録商標)(Novo Nordisk AIS, Bagsvaerd, Denmark)であるが、限定されない。
【0101】
イプシロン―アミノカプロン酸
【0102】
イプシロン―アミノカプロン酸は、例えば、Vander Salm TJ, et al ; J Thorac Cardiovasc Surg, 1996 Oct; Penta de Peppo A, et al ; Tex Heart Inst J, 1995; およびLeipzig TJ, et al ; J Neurosurg, 1997 Feb により記載されている。
【0103】
本発明において、アミノ酸の3文字または1文字の表示は、表1に示したとおり、これらの従来の意味で使用した。明示的に示されない限り、本明細書において言及されるアミノ酸は、Lアミノ酸である。例えば、K337における最初の文字は、野生型VII因子の示された位置において天然に存在するアミノ酸を表すこと、そして、たとえば、[K337A]−FVIIaは、示された位置において天然に存在する1文字コードKによって表されるアミノ酸が、1文字コードAによって表されるアミノ酸で置換されたFVII−変異体を示すことが理解される。
【0104】
【表1】

【0105】
「VIIa因子」または「FVIIa」の用語は、交換可能に使用されてもよい。
【0106】
この文脈において、「トロンビン生成の障害を有する被検者」は、活性化された血小板表面において完全なトロンビンのバーストを生成することができない被験者を意味し、正常な量および機能の凝固因子、血小板、およびフィブリノーゲン(たとえば、プールされた、正常ヒト血漿のもの)を含む、完全に機能する、正常な止血系を有する被験者におけるトロンビン生成よりも少ないトロンビンの生成を有する被検者を含み、そしてVIIl因子を欠いた被験者;血小板数の低下または機能に欠陥のある血小板を有する被験者(たとえば、血小板減少症またはグランツマン血小板無力症または多量に出血した被験者);プロトロンビン、FXまたはFVIIのレベルが低下した被検者;いくつかの凝固因子のレベルが低下した被験者(たとえば、外傷または広範な手術の結果の過剰な出血によるもの);および、フィブリノーゲンの血漿濃度が低下した被検者(たとえば、多回輸血された被検者)を含むが、限定されない。
【0107】
「トロンビン生成のレベル」または「正常なトロンビン生成」は、健康な被験者のレベルと比較した患者のトロンビン生成のレベルのレベルを意味する。該レベルは、正常レベルの割合として表される。本用語は、適切な場合には、交換可能に使用される。
【0108】
「止血系の増強」の用語は、トロンビンを生成する能力の増強を意味する。「止血を増強する」の用語は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む試験試料について測定されたトロンビン生成が、同じトロンビン生成アッセイ法で試験したとき、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドまたはイプシロン―アミノカプロン酸のみをそれぞれ含む対象試料における個々のトロンビン生成と比較して、延長される状況を含むことを企図する用語である。トロンビン生成は、本記述のトロンビン生成アッセイ法に記載したようにアッセイしてもよい(「アッセイ法の部」を参照されたい)。
【0109】
本明細書において使用される「唯一の(Sole)」薬剤または因子は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドおよびイプシロン―アミノカプロン酸が、共に、薬学的組成物またはキットに含まれる唯一の止血剤もしくは活性な止血薬剤もしくは凝固因子であるか、或いは特定の治療の過程において、たとえば特定の出血の発症の過程などにおいて、患者に投与した唯一の止血剤もしくは活性な止血剤もしくは凝固因子である状況をいう。これらの状況は、その他の止血剤または凝固因子が、1つまたは複数の凝固パラメータに有意に影響するように、適用可能なものとして、十分な量または活性で存在しないものを含むことが理解される。
【0110】
血餅溶解時間、血餅強度、フィブリン血餅形成、および凝固時間は、患者の止血系の状態を検定するために使用される臨床的パラメータである。血液試料は、適切な間隔で患者から吸い出し、たとえばMeh ら、Blood Coagulation & Fibrinolysis 2001 ; 12: 627637; Vig ら、Hematology, Vol. 6 (3) pp. 205−213 (2001); Vigら、Blood coagulation &fibrinolysis, Vol. 12 (7) pp. 555−561 (2001) Oct; Glidden ら、Clinical and applied thrombosis/hemostasis, Vol. 6 (4) pp. 226−233 (2000) Oct; McKenzieら、Cardiology, Vol. 92 (4) pp. 240−247 (1999) Apr; or Davis ら、Journal of the American Society of Nephrology, Vol. 6 (4) pp.1250−1255 (1995)に記載されているように、トロンボエラストグラフィによって1つまたは複数のパラメータがアッセイされる。
【0111】
「血餅溶解時間を延長すること」の用語は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品、およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む試験試料について測定された血餅溶解時間が、同じ血餅溶解アッセイ法で試験したときの、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドまたはイプシロン―アミノカプロン酸のみをそれぞれ含む対象試料における個々の血餅溶解時間と比較して延長される状況を含むことを企図する用語である。
血餅溶解時間は、上記の通りにアッセイしてもよい。
【0112】
「血餅強度を増大すること」の用語は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む試験試料について測定された血餅強度(たとえば機械強度)が、同じ血餅強度アッセイ法で試験したときの、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドまたはイプシロン―アミノカプロン酸のみをそれぞれ含む対象試料における個々の血餅溶解時間と比較して、増大される状況を含むことを企図する用語である。血餅強度は、たとえばCarrら1991(Carr ME, Zekert SL. Measurement of platelet−mediated force development during plasma clot formation. AM J MED SCI 1991; 302: 13−8)に記載されたように、または上記の通りにトロンボエラストグラフィによってアッセイしてもよい。
【0113】
「フィブリン血餅形成を増強すること」の用語は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む試験試料について測定されたフィブリン血餅形成の速度または程度が、同じ凝固アッセイ法で試験したときの、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドまたはイプシロン―アミノカプロン酸のみをそれぞれ含む対象試料における個々のフィブリン血餅形成の速度または程度と比較して増大される状況を含むことを企図する用語である。フィブリン血餅形成は、上記の通りにアッセイしてもよい。
【0114】
「凝固時間を短縮すること」の用語は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む試験試料について測定された血餅形成の時間(凝固時間)が、同じ凝固アッセイ法で試験したときの、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドまたはイプシロン―アミノカプロン酸のみをそれぞれ含む対象試料における個々の凝固時間と比較して増大される状況を含むことを企図する用語である。凝固時間は、当業者に既知の標準的なPtまたはaPTTアッセイの手段によってアッセイしてもよい。
【0115】
「血小板の数または活性の低下」の用語は、被検者の血漿中に存在する血小板(platelet)(血小板:thrombocyte)の数、およびこのような血小板の生物学的な凝固に関連した活性をいう。数の低下は、たとえば血小板破壊の増大、血小板産生の減少、および脾臓における血小板の通常割合(normal fraction)より多い貯留によるものであってもよい。血小板減少症は、たとえば、150,000血小板/マイクロリットルよりも少ない血小板数として定義され;一般に、正常な血小板数の上限は、350,000および450,000血小板/マイクロリットルの間であると考えられる。血小板数は、自動化された血小板計数器によって計数されてもよく;これは、当業者に周知の方法である。血小板数の低下による症候群としては、血小板減少症、凝固障害(coagulophathy)を含むが、これらに限定されない。「活性」には、血小板の凝集、接着、および血液凝固活性を含むが、これらに限定されない。活性の減少は、たとえば糖タンパク質異常、異常な膜−細胞骨格相互作用、血小板顆粒の異常、血小板血液凝固活性の異常、シグナル伝達および分泌の異常によるものを含む。凝集、接着、および血液凝固活性を含む血小板活性は、当業者既知の標準的な方法によって測定され、たとえば、 Platelets. A Practical Approach, Ed. S. P. Watson &K. S. Authi: Clinical Aspects of Platelet Disorders(K. J. Clemetson) 15: 299−318,1996, Oxford UniversityPress ; Williams Hematology, Sixth Edition, Eds. Butler, Lichtman, Coller, Kipps &Seligsohn, 2001, McGraw−Hillを参照されたい。血小板活性の低下による症候群は、グランツマン血小板無力症、ベルナール‐スリエ症候群、抗凝血薬療法(anticoagulant treatment)、および血栓溶解治療(thrombolytic treatment)を含むが、限定されない。「低下」は、同じアッセイ法において測定したときの、正常なプールされた血漿の試料の数または活性と比較した、試験血漿の試料の数または活性をいう。
【0116】
本明細書において使用される、「出血障害(bleeding disorder)」の用語は、出血の発症の際に現れる、先天性の、後天性の、または誘導される、細胞または分子起源のいずれかの欠陥を表す。出血障害の例は、凝固因子欠損(たとえば、凝固因子VIIl、IX、XIまたはVIIの欠損)、凝固因子阻害剤、血小板機能の欠陥(たとえば、グランツマン血小板無力症、ベルナール‐スリエ症候群)、血小板減少症、フォンウィルブランド病、並びに出血および/または輸液による凝固タンパク質の希釈、線維素溶解の増大および血小板数の低下(たとえば、手術または外傷を受けた多回輸血された被験者における)によって生じるものなどの凝固障害を含むが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書において使用される、「凝固障害」の用語は、基本的に正常な凝固系を有しているが、出血および/または輸液による、凝固タンパク質の希釈、線維素溶解の増大および血小板数の低下(たとえば、手術または外傷を受けた多回輸血された被験者のもの)を経験している被験者において生じている出血傾向を意味する。
【0118】
出血は、循環系の任意の部分から血液が血管外遊走することをいう。
「出血の発症」の用語は、手術、外傷、その他の形態の組織の損害と関連して、望まれず、制御できず、およびしばしば過剰である出血、並びに出血障害を有する被検者における望まれない出血を含むことを意味する。出血の発症は、基本的には正常な凝固系を有するが、(一時的な)凝固障害を受けている被験者において、並びに先天性のまたは後天性の凝固障害または出血障害を有する被検者において、生じるであろう。血小板機能の欠陥を有する被検者において、止血系は、必須の凝固「化合物(compounds)」(たとえば、血小板)を欠いているか、または異常である。たとえば手術または莫大な外傷に関連して、広範な組織損傷を受けている被検者では、正常な止血機構による即時性の止血の要求によっては手に負えず、彼らは、基本的には(外傷前または手術前には)正常な止血機構であるにもかかわらず過剰の出血を発生してしまうであろう。さらに、このようなしばしば多回輸血された被検者は、出血および/または輸液の結果として、(一時的な)凝固障害(すなわち、出血および/または輸液による、凝固タンパク質の希釈、線維素溶解の増大、および血小板数の低下)を発病する。出血は、また、脳、内耳領域、および目などの器官においても生じるであろうし;これらにおいては、外科的な止血の可能性が制限されており、従って、満足な止血を達成するのに問題がある領域である。同様の問題は、種々の器官(肝臓、肺、腫瘍組織、胃腸管)からの生検を行うプロセスにおいて、並びに腹腔鏡検査手術および根治的な恥骨後前立腺摘除術においても起こるであろう。これら全ての状況において共通することは、出血がびまん性(diffuse)である場合(たとえば出血性胃炎および大量の子宮出血)にも、手術の技術(縫合、クリップ、その他)によって止血を実現することが困難なことである。また、出血は、与えられた治療によって止血の欠陥が誘導される抗凝固療法の被検者において生じるであろうし;これらの出血は、急性および大量であることが多い。抗凝固療法は、血栓塞栓性疾患を防止するために行われることが多い。このような治療は、ヘパリン、その他の形態のプロテオグリカン、ワルファリンまたはその他の形態のビタミンK−アンタゴニスト、並びにアスピリンおよび例えば抗体などのその他の血小板凝集阻害剤またはその他のGPllb/Illa活性阻害剤を含むであろう。また、出血は、抗血小板剤(たとえば、アセチルサリチル酸)、抗凝固薬(たとえば、ヘパリン)、および線維素溶解素(たとえば、組織プラスミノゲンアクチベータ、tPA)と組み合わせた治療を含む、いわゆる血栓溶解療法によるものであってもよい。また、出血の発症は、急性の関節出血(haemarthroses)(関節の出血)、慢性血友病の関節症、血腫(たとえば筋肉、後腹膜、舌下、および咽頭後方のもの)、その他の組織における出血、血尿(腎尿管(renal tract)からの出血)、大脳出血、手術(たとえば、肝切除)、抜歯、および胃腸出血(たとえば、UGIの出血)を有する被験者における手術または外傷と関連した、制御できない過剰な出血を含むことが意図されるが、これらに限定されない。出血の発症は、VIII因子に対する阻害剤;血友病A;血友病Aと阻害剤;血友病B;VII因子の欠損;イプシロン―アミノカプロン酸の欠損;血小板減少症;フォンウィルブランド因子の欠損(フォンウィルブランド病);重篤な組織損傷;重篤な外傷;手術;腹腔鏡検査手術;出血性胃炎;生検採取;抗凝固剤療法;上胃腸出血(upper gastroentestinal bleedings:UGI);または幹細胞移植に関連していてもよい。出血の発症は、大量の子宮出血;機械的な止血の可能性が制限されている器官において生じるもの;脳において生じるもの;内耳領域において生じるもの;または、目元において生じるものであってもよい。「出血の発症」および「出血」の用語は、適切な場合は、交換可能に使用されてもよい。
【0119】
本明細書において使用される、「非血友病」は、血液凝固因子VIIIまたはIX、またはフォンウィルブランド因子を欠損せず、且つこれらの因子の任意に対する阻害剤を有していないことを意味する。「非血友病被験者」の用語は、血液凝固因子VIIIまたはIX、またはフォンウィルブランド因子を欠損せず、且つこれらの因子の任意に対する阻害剤を有していない被験者を意味する。前記用語は、先天性のまたは後天性の血友病AまたはB、阻害剤を有するか又は有さない、およびフォンウィルブランド病を有する被験者を含む。血液凝固因子VIIIまたはIX、またはフォンウィルブランド因子を欠損せず、且つこれらの因子の任意に対する阻害剤を有していない被験者と、交換可能に使用されてもよい。
【0120】
本明細書において使用される、「非血友病の出血障害(non−haemophilic bleeding disorder)」の用語は、出血の発症の際に現れる、先天性の、後天性の、または誘導される、細胞または分子起源のいずれかの欠陥を表す。出血障害の例には、血小板機能の欠陥(たとえば、グランツマン血小板無力症、ベルナール‐スリエ症候群)、血小板減少症、並びに出血および/または輸液による凝固タンパク質の希釈、線維素溶解の増大および血小板数の低下(たとえば、手術または外傷を受けた多回輸血された被験者のもの)によって生じるものなどの凝固障害が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
非血友病被験者における「出血の発症」の用語は、手術、外傷、その他の形態の組織の損害と関連して、望まれず、制御できず、およびしばしば過剰である出血、並びに非血友病の出血障害を有する被検者における望まれない出血を含むことを意味する。出血の発症は、基本的には正常な凝固系を有するが、(一時的な)凝固障害を受けている被験者において、並びに先天性のまたは後天性の非血友病の出血障害を有する被検者において、生じるであろう。血小板機能の欠陥を有する被検者において、止血系は、必須の凝固「化合物(compounds)」(たとえば、血小板)を欠いているか、または異常である。たとえば手術または莫大な外傷に関連して、広範な組織損傷を受けている被検者では、正常な止血機構による即時性の止血の要求によっては手に負えず、彼らは、基本的には(外傷前または手術前には)正常な止血機構であるにもかかわらず過剰の出血を発生してしまうであろう。さらに、このようなしばしば多回輸血された被検者は、出血および/または輸液の結果として、(一時的な)凝固障害(すなわち、出血および/または輸液による、凝固タンパク質の希釈、線維素溶解の増大、および血小板数の低下)を発病する。出血は、また、脳、内耳領域、および目などの器官においても生じるであろうし;これらにおいては、外科的な止血の可能性が制限されており、従って、満足な止血を達成するのに問題がある領域である。同様の問題は、種々の器官(肝臓、肺、腫瘍組織、胃腸管)からの生検を行うプロセスにおいて、並びに腹腔鏡検査手術および根治的な恥骨後前立腺摘除術においても起こるであろう。これら全ての状況において共通することは、出血がびまん性(diffuse)である場合(たとえば出血性胃炎および大量の子宮出血)にも、手術の技術(縫合、クリップ、その他)によって止血を実現することが困難なことである。また、出血は、与えられた治療によって止血の欠陥が誘導される抗凝固療法の被検者において生じるであろうし;これらの出血は、急性および大量であることが多い。抗凝固療法は、血栓塞栓性疾患を防止するために行われることが多い。このような治療は、ヘパリン、その他の形態のプロテオグリカン、ワルファリンまたはその他の形態のビタミンK−アンタゴニスト、並びにアスピリンおよび例えば抗体などのその他の血小板凝集阻害剤またはその他のGPllb/Illa活性阻害剤を含むであろう。また、出血は、抗血小板剤(たとえば、アセチルサリチル酸)、抗凝固薬(たとえば、ヘパリン)、および線維素溶解素(たとえば、組織プラスミノゲンアクチベータ、tPA)と組み合わせた治療を含む、いわゆる血栓溶解療法によるものであってもよい。
出血の発症は、イプシロン―アミノカプロン酸の欠損;血小板減少症;重篤な組織損傷;重篤な外傷;手術;腹腔鏡検査手術;出血性胃炎;生検採取;抗凝固剤療法;上胃腸出血(upper gastroentestinal bleedings:UGI);または幹細胞移植に関連していてもよい。出血の発症は、大量の子宮出血;機械的な止血の可能性が制限されている器官において生じるもの;脳において生じるもの;内耳領域において生じるもの;または、目元において生じるものであってもよい。「出血の発症」および「出血(bleedings)」の用語は、適切な場合には、交換可能に使用される。
【0122】
この文脈において、「治療(treatment)」の用語は、たとえば手術におけるものなどの予想される出血を防止すること、およびたとえば外傷におけるものなどのすでに起こっている出血を、出血を阻害するか、または最小にする目的で、調節することの両者を含むことが意図される。
上述した「予想される出血(expected bleeding)」は、特定の組織または器官において起こると思われる出血であってもよく、または詳細不明の出血であってもよい。したがって、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品の予防的投与は、「治療」の用語に含まれる。
【0123】
本明細書に使用されるものとして、「被験者(subject)」の用語は、任意の動物、特にヒトなどの哺乳類を意味することが企図され、適切な場合は、「患者(patient)」の用語と交換可能に使用されてもよい。
また、本発明は、獣医学の手順の範囲内におけるVII因子またはFVII関連ポリペプチド、およびtPA阻害剤の使用を含む。
【0124】
本明細書において定義されたVII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、同時に、または逐次に投与されてもよい。本因子は、単一の剤形に両方の凝固因子を含む単一の剤形において、または第1の単位剤形としてVII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品を、第2の単位剤形としてイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含むパーツのキットの形態で供給されてもよい。第1または第2または第3の、その他の単位用量がこの明細書の全体にわたって言及されるが、これは、投与の好ましい順序を示すのではなく、単に便宜上の目的でなされるだけである。
【0125】
VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品、およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品の「同時」投薬は、単一の単位剤形での凝固因子の投与を、または第1の凝固因子タンパク質の投与に続き、第2の凝固因子タンパク質の投与が、15分、好ましくは10分、より好ましくは5分、より好ましくは2分を超えて時間を離されていないことを意味する。何れの因子が最初に投与されてもよい。
【0126】
「逐次の投薬」は、第1の凝固因子タンパク質の投与に続き、第2の凝固因子タンパク質の投与が、2時間まで、好ましくは1〜2時間、より好ましくは1時間まで、より好ましくは30分〜1時間、より好ましくは30分まで、より好ましくは15〜30分まで時間を離して投与されることを意味する。
2つの単位剤形、または凝固因子タンパク質のいずれかが最初に投与される。
好ましくは、両製品が同じ静脈通路(intravenous access)を通じて注射される。
【0127】
「VII因子のレベル」または「VII因子レベル」は、健康な被験者におけるレベルと比較した、患者のVII因子活性のレベルを意味する。該レベルは、正常レベルの割合として表される。本用語は、適切な場合には、交換可能に使用される。
【0128】
「VII因子のレベルの減少」または「VII因子レベルの減少」は、VII因子の欠損を有さない被検者集団における平均VII因子レベルと比較した、血流におけるVII因子の存在もしくは活性の減少を意味する。循環しているVII因子のレベルは、凝固剤または免疫アッセイ法のいずれかによって測定することができる。VII因子の凝血促進性の活性(procoagulant activity)は、患者の血漿がVII因子を欠損する血漿における凝固時間を修正する能力によって決定される(たとえばAPTTアッセイ法、下記参照されたい;また、本明細書の「アッセイ法の部分」を参照されたい)。
【0129】
1単位のVII因子は、1mlの正常血漿に存在するVII因子の量として定義され、約0.5μgタンパク質に相当する。活性化された後では、50単位は、約1gのタンパク質に対応する。
【0130】
「欠損」は、たとえば正常な健康な個々のものと比較して、血漿中の例えばVII因子の存在または活性が減少することを意味する。本用語は、適切な場合には、「減少したVII因子レベル」と交換可能に使用されてもよい。
【0131】
「APTT」または「aPTT」は、活性化された部分的トロンボプラスチン時間を意味する(たとえば、Proctor RR, Rapaport SI : The partial thromboplastin time with kaolin ; a simple screening test for first−stage plasma clotting factor deficiencies. Am J Clin Pathol 36: 212,1961に記載されている)。
【0132】
「VII因子応答性の症候群」は、その必要がある被検者に投与された外因性のVII因子、好ましくはVIIa因子により、該症候群によって引き起こされる、予測され、もしくは存在する、いずれかの徴候、症状、または疾病を防止、治癒、または寛解するであろう症候群を意味する。凝固因子VIIl、IX、XIまたはVIIレベルの減少、凝固因子阻害剤、血小板機能の欠陥(たとえば、グランツマン血小板無力症、ベルナール‐スリエ症候群)、血小板減少症、フォンウィルブランド病、並びに出血および/または輸液による凝固タンパク質の希釈、線維素溶解の増大および血小板数の低下(たとえば、手術または外傷を受けた多回輸血された被験者のもの)によって生じるものなどの凝固障害によって引き起こされる症候群が含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
「半減期(Half−life)」は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、またはイプシロン―アミノカプロン酸の血漿濃度が、特定の値からその値の半分まで減少するために必要とされる時間をいう。
【0134】
「一次止血」は、FXaおよびTF:VIIa因子によるトロンビンの初期の生成、その後の血小板の活性化および活性化されて、接着された血小板による初期のゆるい栓の形成であって、フィブリンによって(最終的には架橋されたフィブリンによって)まだ安定化されていないものを意味する。止血工程の第二工程の間に形成されるフィブリンによって安定化されない場合、前記栓は線溶系によって容易に溶解される。
【0135】
「二次止血」または「止血の維持」は、二次的な、完全かつ主要な、トロンビンのバーストまたは生成であって、活性化された血小板表面において生じ、かつVIIIa因子およびVIIIa因子によって触媒され、その後のフィブリンの形成および初期の血小板栓の安定化を意味する。フィブリンによる栓の安定化によって、完全な止血がなされる。
【0136】
「完全な止血」は、傷害の部位における安定かつ堅固なフィブリンの血餅または栓の形成であって、有効に出血を止め、線溶系によって容易に溶かされないものを意味する。この文脈において、止血の用語は、上記の通りに完全な止血を表すために使用される。
【0137】
標品中の総タンパク質量は、一般に既知の方法によって、たとえば光学濃度を測定することによって測定してもよい。イプシロン―アミノカプロン酸またはVII因子タンパク質(「抗原」)の量は、標準的なElisa免疫アッセイ法などの一般に既知の方法によって測定してもよい。一般な用語として、このようなアッセイ法は、たとえばイプシロン―アミノカプロン酸タンパク質を含有する標品の溶液を、elisaプレート上に固定化された抗トロンボモジュリン抗体と接触させて、その後に固定された抗体−イプシロン―アミノカプロン酸複合体を、マーカーを有する抗イプシロン―アミノカプロン酸二次抗体と接触させ、その量を第3の工程において測定することによって行われる。それぞれの凝固因子の量は、同様の方法において適切な抗体を使用して測定してもよい。標品中に存在する凝固因子タンパク質の総量は、個々の凝固因子タンパク質の量を加えることによって決定される。1つの態様において、標品は、単離された凝固因子を含む。もう1つの態様において、標品は、基本的に凝固因子IIおよび凝固因子IIa(プロトロンビンおよびトロンビン)および/またはXもしくはXa因子を含まない。
【0138】
本明細書において使用されるものとして、「単離された」の用語は、凝固因子、たとえばイプシロン―アミノカプロン酸であって、これらが合成された細胞又はこれらが天然において見出される媒体(例えば、血漿もしくは血液)から分離されたものをいう。これらの起源の細胞に由来するポリペプチドの分離は、当該技術分野において既知の任意の方法によって達成されてもよく、付着した細胞培養からの所望の産物を含む細胞培養培地を除去すること;非接着細胞を遠心分離または濾過して除去することなどを含むが、これらに限定されない。これらが天然に存在する媒体からのポリペプチドの分離は、当該技術分野において既知の任意の方法によって達成されてもよく、たとえば、抗VII因子または抗イプシロン―アミノカプロン酸抗体のそれぞれのカラムなどにおける、アフィニティークロマトグラフィ;疎水性相互作用クロマトグラフィ;イオン交換クロマトグラフィ;サイズ排除クロマトグラフィ;電気泳動的な手順(たとえば調製用の等電点電気泳動(IEF))、溶解度の差(たとえば、硫酸アンモニウム沈殿)、または抽出などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0139】
本発明の範囲内において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸の「有効な量」は、共に、疾患およびその合併症を治癒する、軽減する、または部分的に抑えるために、出血もしくは失血を防止または減少するために十分な、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド(たとえばFVIIa)、およびイプシロン―アミノカプロン酸の量として定義される。
【0140】
「VIIa因子の活性」または「VIIa因子活性」の用語は、トロンビンを生成する能力を含み;本用語には、組織因子の非存在下で活性化された血小板の表面においてトロンビンを生成する能力も含む。
【0141】
略語:
TF 組織因子
FVII VII因子の単鎖、不活性化型
FVIIa VII因子の活性化型
rFVIIa 組換えVII因子の活性化型
TAFI TAFIの酵素前駆体、不活性化型
【0142】
化合物の調製:
本発明に使用するために適したヒト精製VIIa因子は、たとえばHagenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83 : 2412−2416, 1986に記載されているように、または欧州特許番号第200.421号(ZymoGenetics)に記載されているように、好ましくはDNA組換技術によって作出される。
【0143】
VII因子は、BrozeおよびMajerus(J. Biol. Chem. 255 (4): 1242−1247, 1980 and Hedner and Kisiel, J. Clin. invest. 71: 1836−1841, 1983)により記載された方法で産生してもよい。これらの方法では、検出可能な量のその他の血液凝固因子を伴わずにVII因子を産生する。なおさらに精製されたVII因子標品を、最終的な精製工程として付加的なゲル濾過を含むことによって得てもよい。次いで、既知の手段(たとえば、イプシロン―アミノカプロン酸Ia、IX、またはXaなどの異なるいくつかの血漿タンパク質)によって、VII因子を活性化VIIa因子に変換してもよい。
あるいは、Bjoernら(Research Disclosure, 269 September 1986, pp. 564− 565)によって記載されているように、VII因子をMono Q(登録商標)(Pharmacia fine Chemicals)などのイオン交換クロマトグラフィーに通すことにより、活性化してもよい。
【0144】
VII因子関連ポリペプチドは、野生型VII因子の修飾によって、または組換技術によって産生してもよい。野生型VII因子と比較したときにアミノ酸が変更されているVII因子関連ポリペプチドは、野生型VII因子をコードする核酸配列を、天然のVII因子をコードする核酸においてアミノ酸コドンを変更すること、またはいくつかのアミノ酸コドンを除去することのいずれかを周知の手段(たとえば部位特異的突然変異)で修飾することによって産生されてもよい。
【0145】
VIIa因子の機能に重要な領域の外側に置換を作成し、なおも活性なポリペプチドを生じさせることができることは当業者には明らかであろう。VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの活性に必須であり、従って、好ましくは、置換を受けないアミノ酸残基は、部位特異的突然変異生成またはアラニン走査変異生成(たとえば、CunninghamおよびWells, 1989, Science 244: 1081−1085を参照されたい)などの当該技術分野において既知の手順に従って同定し得る。後者の技術では、分子において正に荷電したすべての残基に変異が導入され、そして生じる変異体分子を、分子の活性に重要であるアミノ酸残基を同定するために、凝固剤について、架橋性活性をそれぞれ試験する。また、基質−酵素の相互作用部位は、核磁気共鳴解析、結晶学、または光親和性標識化(たとえば、de Vos ら、1992, Science 255: 306−312;Sm ith et a/., 1992, Journal of Molecular Biology 224: 899−904;Wlodaverら、1992, FEBS Letters 309: 59−64を参照されたい)などの技術によって決定される、三次元構造解析によって決定することもできる。
【0146】
1つのヌクレオチドをもう一つのヌクレオチドに交換するための、核酸配列への突然変異の導入は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用した、部位特異的変異誘発によって達成されてもよい。関心対象のインサートを有するスーパーコイル二重鎖DNAベクターおよび所望の変異を含む2つの合成プライマーを利用する手順が、特に有用である。前記ベクターの反対の鎖に対してそれぞれ相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを、Pfu DNAポリメラーゼによって温度サイクリングの間に伸長した。プライマの取り込みにおいて、ねじれ型のニック(staggered nicks)を含む変異プラスミドが産生される。温度サイクリングの後、メチル化およびヘミメチル化されたDNAに特異的であるDpnlで産物を処理して、親のDNA鋳型を消化し、変異を含有する合成DNAを選択する。遺伝子混合技術またはファージディスプレイ技術などの、変異体を作成、同定、および単離するための当該技術分野において既知のその他の手順を使用してもよい。
【0147】
これらの起源細胞からのポリペプチドの分離は、当該技術分野において既知のいずれの方法によって達成され、所望の産物を含む細胞培養培地を接着細胞培養物から除去すること;遠心分離または濾過して非接着細胞を除去すること;などを含むが、これらに限定されない。
【0148】
任意に、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドをさらに精製してもよい。精製は、たとえば抗VII因子抗体カラム(たとえば、Wakabayashiら、J. Biol. Chem. 261: 11097,1986 ;およびThimら、Biochem. 27: 7785,1988を参照)などのアフィニティークロマトグラフィ;疎水性相互作用クロマトグラフィ;イオン交換クロマトグラフィ;サイズ排除クロマトグラフィ;電気泳動的な手順(たとえば調製用の等電点電気泳動(IEF)、溶解度の差(たとえば、硫酸アンモニウム沈殿)または抽出などを含む、これに限定されない、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して達成されてもよい。一般に、Scopes, Protein Purification, Springer−Verlag, New York, 1982;およびProtein Purification, J. C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照されたい。精製に続いて、本標品は、宿主細胞に由来する非VII因子またはVII因子関連ポリペプチドを約10重量%未満、より好ましくは約5%未満、および最も好ましくは約1%未満で含む。
【0149】
VII因子またはVII因子関連ポリペプチドは、XIa因子またはたとえば、IXa因子、カリクレイン、Xa因子、およびトロンビンなどのトリプシン様の特異性を有するその他のプロテアーゼを使用するタンパク分解性の切断によって活性化されてもよい。たとえばOsterud ら、Biochem. 11: 2853 (1972);Thomas米国特許第4,456,591号;およびHednerら、J. Clin. Invest. 71: 1836 (1983)を参照されたい。あるいは、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドは、それをMono Q(登録商標)(Pharmacia)などのイオン交換クロマトグラフィーに通すことにより、活性化してもよい。次いで、生じる活性化されたVII因子またはVII因子関連ポリペプチドを、後述するように処方し、および投与してもよい。
【0150】
本発明内で使用するためのイプシロン―アミノカプロン酸は、既知の方法により、例えば胎盤または肺から分離し得る;しかし、組換え型イプシロン―アミノカプロン酸を使用することが好ましい(疾患の伝播のリスクがある血液または組織に由来する産物の使用を避けるため)。イプシロン―アミノカプロン酸を分離する及び組換え型イプシロン―アミノカプロン酸を調製するための方法は、当該技術において既知であり;例えば、Gomi et al., Blood 75: 1396,1990 ; Ogata et al., Appl Microbiol Biotechnol 38: 520,1993 を参照されたい。イプシロン―アミノカプロン酸変異体は、上記の通りに部位特異的突然変異誘発によって作製されてもよい。
【0151】
薬学的組成物および使用方法
本発明の標品は、たとえば凝固因子VIIl、IX、XIまたはVIIレベルの減少、凝固因子阻害剤、血小板機能の欠陥(たとえば、グランツマン血小板無力症およびベルナール‐スリエ症候群)、血小板減少症、フォンウィルブランド病、並びに出血および/または輸液による凝固タンパク質の希釈、線維素溶解の増大および血小板数の低下(たとえば、手術または外傷を受けた多回輸血された被験者のもの)によって生じるものなどの凝固障害によって引き起こされる症候群を含む(これらに限定されない)、出血障害などの、いずれのVII因子応答性の症候群を治療するために使用してもよい。
本発明に従ったVII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品、およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む薬学的組成物は、主に予防的(prophylactic)および/または治療的(therapeutic)な治療のための非経口投与が企図される。好ましくは、薬学的組成物は、非経口的、すなわち静脈内に、皮下に、または筋肉内に投与され;静脈内が最も好ましい。また、これらは、持続的またはパルス状(pulsatile)の輸液によって投与されてもよい。
【0152】
本発明に従った薬学的組成物または製剤は、単一の単位剤形に、またはキットのパーツに、いずれかに処方され、好ましくは薬学的に許容されるキャリアに、好ましくは水性キャリアまたは希釈液に溶解された、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸を含む。簡単には、本発明に従って使用するために適した薬学的組成物は、VII因子もしくはVII因子関連ポリペプチド、またはイプシロン―アミノカプロン酸、またはイプシロン―アミノカプロン酸と組み合わせたVII因子もしくはVII因子関連ポリペプチドを、好ましくは精製した形態で、適切なアジュバントおよび適切なキャリアまたは希釈液と混合して作出される。水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどの種々の水溶性キャリアを使用してもよい。また、本発明の標品は、傷害の部位に対してデリバリーまたはターゲティングするために、たとえばゲルの形態で、またはリポソーム標品としてなどの非水系のキャリアを使用して処方することもできる。リポソーム標品は、たとえば米国特許第4,837,028号,4,501,501,728号、および4,975,282号において一般に記載されている。本組成物は、従来のよく知られた滅菌法技術によって殺菌されていてもよい。生じる水溶液は、使用のためにパックされ、または無菌条件下で濾過して凍結乾燥されていてもよく、凍結乾燥された標品は、投与の前に滅菌水溶液と混合される。
【0153】
本組成物は、たとえば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、その他などの、pH調整して、かつ緩衝化した薬剤および/または緊張度(tonicity)を調整した薬剤を含む(これらに限定されるものではない)、薬剤的に許容される補助物質またはアジュバントを含んでいてもよい。
【0154】
製剤は、1つまたは複数の希釈液、乳化剤、保存剤、緩衝液、賦形剤、その他を更に含んでもよく、液体、粉末、エマルジョン、徐放性(controlled release)、その他などの形態で提供されてもよい。この技術分野の当業者であれば、本発明の組成物を適切な方法で、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences, Gennaro, ed., Mack Publishing Co. , Easton, PA, 1990に開示されたものなどの是認された実務に従って処方してもよい
このようにして、静脈内輸液のための典型的な薬学的組成物は、250mlの無菌のリンゲル液および10mgの本標品を含むように作出することができるであろう。
【0155】
本発明の標品を含む組成物は、予防的および/または治療的な治療のために投与することができる。治療的な適用において、組成物は、すでに疾患に罹患している被検者に対して、疾患およびその合併症の臨床症状を治癒する、軽減する、または部分的に抑えるために十分な量で、上記の通りに投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療的に有効な量(therapeutically effective amount)」として定義される。それぞれの目的のための有効な量は、疾患または傷害の重篤さ、並びに被検者の重量および一般的な状態に依存する。適切な用量の決定が、値からマトリックス(a matrix)を構築すること、および前記マトリックスの異なる点を試験することによるルーチン試験を使用して達成し得ることが理解される。
【0156】
本発明の標品の局所的デリバリー、たとえば局所的適用は、たとえば噴霧、灌流、二重バルーンカテーテル、ステント、血管グラフトまたはステントに組み込むこと、バルーンカテーテルを被覆するために使用されるヒドロゲル、またはその他のよくは確立された方法によって行ってもよい。いずれにしても、薬学的組成物は、症状を有効に治療するために十分な標品の量を提供するべきである。
【0157】
これらの製剤中の、VII因子もしくはVII因子関連ポリペプチド、イプシロン―アミノカプロン酸、またはイプシロン―アミノカプロン酸と組み合わせたVII因子もしくはVII因子関連ポリペプチドの濃度は、広く、すなわち、約0.5重量%未満、通常少なくとも約1重量%以上から、15または20重量%程度にまで変更することができ、選択される特定の投与方法に従って、主に液体体積、粘性、その他によって選択される。注射または輸液、特に注射による投与が好ましい。このようにして、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸の両方を含む溶解された凍結乾燥粉末または液状製剤の1つの剤形のもの、或いはVII因子またはVII因子関連ポリペプチドを含む溶解された凍結乾燥粉末または液状製剤の1つの剤形のもの及びイプシロン―アミノカプロン酸を含む溶解された凍結乾燥粉末または液状製剤のもう1つの剤形のもの、のいずれかの標品などの静脈内投与に適した形態で調製される。
【0158】
VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの量、およびイプシロン―アミノカプロン酸の量は、共に、出血の発症を治療するために有効な量の集合体(aggregate)を含むことが理解される。
【0159】
本発明の材料が、一般に重篤な疾病または傷害の状態において、すなわち生命に脅威となる、または潜在的に生命に脅威となる状況において使用されことを考慮に入れておかなければならない。そのような場合、外来物質の極小化およびヒトにおけるVIIa因子およびイプシロン―アミノカプロン酸の免疫原性の一般的な欠如の点からみて、治療医師によって、これらの組成物を実質的に過剰に投与することが可能であり、および望ましいと感じられるであろう。
【0160】
予防的適用において、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品、およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む組成物は、疾病状態または傷害に感受性があるか、またはさもなければリスクのある被験者に投与されて、被検者自身の凝固能力を増強する。このような量は、「予防的に有効な用量(prophylactically effective dose)」であると定義される。VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの量、およびイプシロン―アミノカプロン酸の量は、共に、出血の発症を防止するために有効な量の集合体(aggregate)を含むことが理解される。
【0161】
本組成物の一回または複数回の投与は、治療者により選択される用量レベル及びパターンで実施される。本組成物は、日または週につき、1回または複数回で投与されてもよい。このような薬学的組成物の有効な量は、出血の発症に対して臨床的に有意な効果を提供する量である。
このような量は、一つには治療される特定の症状、被検者の年齢、重量、および一般的な健康、並びに当業者に明らかなその他の因子に依存する。
【0162】
本発明の組成物は、予想される出血の前に、または出血の開始時に、単一用量で一般に投与される。しかし、好ましくは、与えられる用量および被検者の症状に依存して、2−4−6−12時間の間隔で繰り返し(多回投与において)与えられてもよい。
【0163】
慎重な処置に関連した治療のためには、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、典型的には処置(intervention)を行う前の約24時間以内に、およびその後に7日以上の間投与される。
凝固剤としての投与は、本明細書に記載されているような種々の経路によるものであってもよい。
【0164】
本組成物は、適切な濃度のVII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品、およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品の両方を含む単一の標品(単一の剤形)の形態であってもよい。また、本組成物は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドの標品を含む第1の単位剤形およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む第2の単位剤形からなるパーツのキットの形態であってもよい。
この場合、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸は、一方の後に他方が、好ましくは、互いに約15分以内、たとえば互いに10分以内、または好ましくは5分以内、または、より好ましくは互いに2分以内に、投与されるべきである。2つの単位剤型のいずれも、最初に投与することができる。
【0165】
本キットは、少なくとも2つの別々の薬学的組成物を含む。本キットは、別々の瓶または別々の箔パケット(foil packet)などの別々の組成物を含むための容器手段を含む。典型的には、本キットは、別々の成分の投与のための説明書を含む。別々の成分が好ましくは異なる剤形で、異なる投与間隔(dosage intervals)で投与されるときに、または個々の成分の組み合わせの滴定(titration)が処方する医師によって要求されているときに、本キット形態は特に有利である。
【0166】
本発明に従って投与されるVII因子またはVII因子関連ポリペプチドの量、およびイプシロン―アミノカプロン酸の量は、約1:100〜約100:1(w/w)の間で比を変化してもよい。したがって、イプシロン―アミノカプロン酸に対するVII因子の比は、たとえば約1:100、または1:90、または1:80、または1:70、または1:60、または1:50、または1:40、または1:30、または1:20、または1:10、または1:5、または1:2、または1:1、または2:1、または5:1、または10:1、または20:1、または30:1、または40:1、または50:1、または60:1、または70:1、または80:1、または90:1、または100:1;または、約1:90〜約1:1の間、または、約1:80〜約1:2の間、または、約1:70〜約1:5の間、または、約1:60〜約1:10の間、約1:50〜約1:25の間、約1:40〜約1:30の間、または約90:1〜約1:1の間、または、約80:1〜約2:1の間、または、約70:1〜約5:1の間、または約60:1〜約10:1の間、または約50:1〜約25:1の間、または約40:1〜約30:1の間であってもよい。
【0167】
VII因子ポリペプチドの用量は、被検者の重量、症状、および症状の重篤さに依存して、負荷投与量および維持量として、70kgの被検者について約0.05mg〜約500mg/日、たとえば約1mg〜約200mg/日、またはたとえば約5mg〜約175mg/日に対応する範囲で変動する。
【0168】
イプシロン―アミノカプロン酸の用量は、被検者の重量、症状、および症状の重篤さに依存して、負荷投与量および維持量として、70kgの被検者について約0.05mg〜約6000mg/日、たとえば約1mg〜約5000mg/日、またはたとえば約5mg〜約5000mg/日に対応する範囲で変動する。
【0169】
VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸の組み合わせにより、インビトロにおける血餅堅固性アッセイ法および線維素溶解時間アッセイ法において相乗効果を示す。さらに、VII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸の組み合わせにより、安定なフィブリン凝塊の形成、半分血餅溶解時間の増大、血餅強度の増大、および線維素溶解に対する耐性の増大において相乗効果を示す。
【0170】
本組成物は、適切な濃度のVII因子またはVII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸の両方を含む単一の標品の形態であってもよい。また、本組成物は、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドを含む第1の単位剤形およびイプシロン―アミノカプロン酸を含む第2の単位剤形からなるキットの形態であってもよい。この場合、VII因子またはVII因子関連ポリペプチドおよびイプシロン―アミノカプロン酸は、好ましくは、互いに約1〜2時間以内、たとえば、互いに30分以内、または好ましくは10分以内、またはより好ましくは互いに5分以内に、逐次投与されるべきである。2つの単位剤型のいずれも、最初に投与することができる。
【0171】
本発明は、別々に投与されてもよい活性成分を組み合わせて治療することによる出血の発症の、または凝固治療の、防止または治療に関するので、本発明は、キット形態で別々の薬学的組成物を組み合わせることにも関する。本キットは、少なくとも2つの別々の薬学的組成物を含む。本キットは、別々の瓶または別々の箔パケット(foil packet)などの別々の組成物を含むための容器手段を含む。典型的には、本キットは、別々の成分の投与のための説明書を含む。別々の成分が好ましくは異なる剤形で、異なる投与間隔で投与されるときに、または個々の成分の組み合わせの滴定が処方する医師によって要求されているときに、本キット形態は特に有利である。
【0172】
アッセイ法:
【0173】
VIIa因子活性の試験:
VIIa因子活性を試験することにより、適切なVIIa因子変異体を選択することに適したアッセイ法は、簡単で予備的なインビトロ試験として行うことができる:
【0174】
インビトロ加水分解アッセイ法
天然の(野生型)VIIa因子およびVIIa因子変異体(両者とも、これ以降「VIIa因子」と称する)で比活性をアッセイしもよい。また、これらは、平行して、直接これらの比活性を比較するためにアッセイしてもよい。アッセイ法は、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)において行う。終濃度1mMの色素生産性基質D−Ile−Pro−Arg−p−ニトロアニリド(S−2288、Chromogenix、Sweden)を、VIIa因子(終濃度100nM)の0.1M NaCI、5mM CaCl、および1mg/mlのウシ血清アルブミンを含む50mMのHepes、pH7.4溶液に添加する。405nmの吸光度を、SpectraMax(商標)340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)において連続的に測定する。20分のインキュベーションの間に発生した吸光度を、酵素を含んでいない空のウェルの吸光度を減算した後に、変異体および野生型のVIIa因子活性の間の比を算出するために使用する:
【0175】
比=(A405nm VIIa因子変異体)/(A405nm VIIa因子野生型)。
【0176】
その結果に基づいて、天然のVIIa因子に匹敵するか、それよりも高い活性を有するVIIa因子変異体は、たとえば変異体の活性および天然のVII因子(野生型FVII)の活性の間の比が、1.0を超える数値の周辺(around, versus above 1.0)である変異体などとして同定されてもよい。
【0177】
また、VIIa因子またはVIIa因子変異体の活性は、X因子などの生理学的な基質を、適切には100〜1000nMの濃度で使用して測定してもよく、この場合、Xa因子の生成は、適切な色素生産性基質(例えば、S−2765)を添加した後に測定される。加えて、活性アッセイ法は、生理学的な温度で行ってもよい。
【0178】
インビトロ・タンパク質分解アッセイ法
天然の(野生型)VIIa因子およびVIIa因子変異体(両者とも、これ以降「VIIa因子」と称する)を、平行して、直接これらの比活性を比較するためにアッセイする。アッセイ法は、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)において行う。VIIa因子(10nM)およびX因子(0.8μM)の0.1M NaCl、5mM CaCl2、および1mg/mlのウシ血清アルブミンを含む50mMのHepes、pH7.4の100μlの溶液を15分間インキュベートする。次いで、0.1M NaCl、20mM EDTA、および1mg/mlのウシ血清アルブミンを含む50mMのHepes、pH7.4を50μl添加することにより、X因子の切断を停止する。生成したXa因子の量は、色素生産性基質Z−D−Arg−Gly−Arg−p−ニトロアニリド(S−2765, Chromogenix, Sweden)(終濃度0.5mM)の添加によって測定する。405nmの吸光度を、SpectraMax(商標)340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)において連続的に測定する。10分の間に発生した吸光度を、FVIIaを含んでいない空のウェルの吸光度を減算した後に、変異体および野生型のVIIa因子のタンパク分解活性間の比を算出するために使用する:
【0179】
比=(A405nm VIIa因子変異体)/(A405nm VIIa因子野生型)。
【0180】
その結果に基づいて、天然のVIIa因子に匹敵するか、それよりも高い活性を有するVIIa因子変異体は、たとえば変異体の活性および天然のVII因子(野生型FVII)の活性の間の比が、1.0を超える数値の周辺(around, versus above 1.0)である変異体などとして同定されてもよい。
【0181】
トロンビン生成アッセイ法:
VII因子もしくはVII因子関連ポリペプチド、またはイプシロン―アミノカプロン酸(たとえば、変異体)がトロンビンを生成する能力は、全ての関連した凝固因子および生理的濃度の阻害剤および活性化された血小板を含むアッセイ法において測定することができる(Monroeら(1997) Brit. J.Haematol.99,542−547の543ページに記載されているもの、これは本明細書に参照として援用される)。
【0182】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これは、保護の範囲を限定するものとして解釈されない。これまでの記載において、および以下の実施例において、開示された特徴は、別々に、およびその任意の組み合わせの両方ともが、本発明のその多様な形態に具現化するための材料(material)である。
【実施例】
【0183】
実施例1
VIIa凝固因子およびイプシロン―アミノカプロン酸を組み合わせることによって、止血性の血餅の安定度を改善する。
【0184】
方法:
血餅溶解アッセイ法:イノビン(Innovin)(Dade Behring,2000倍希釈)、rFVIIa(Novo Nordisk A/S Bagsvaerd, Denmark、種々の濃度)、およびt−PA(American Diagnostica、8nM)を含む緩衝液(20mMのHEPES、150mMのNaCl、5mMのCaCl、pH7.4)で10倍に希釈した正常ヒト血漿を、96−ウェルELISAプレートに添加して、650nmの濁度を室温において時間とともに測定した。示した場合には、イプシロン―アミノカプロン酸(シグマ、種々の濃度)を含めた。
【0185】
結果:
血餅溶解アッセイ法:FVIIa添加により、血餅溶解時間(図1)の用量依存的な延長を生じる。この効果は、10nMのFVIIaで最適であった。10nmのFVIIaの存在下において、ε―アミノカプロン酸を添加することにより、血餅溶解時間(図2)のさらなる延長を生じた。効果は、用量依存的であり、1μMのイプシロン―アミノカプロン酸で最適であった。
【0186】
結論:
これらの結果は、血漿にFVIIaおよびイプシロン―アミノカプロン酸を相乗的様式(a synergistic fashion)で添加することにより、血餅の線維素溶解に対する耐性を改善することを実証する。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】図1は、FVIIaの添加により、血餅溶解時間の用量依存的な延長が生じることを示す。この効果は、10nMのFVIIaで最適であった。
【図2】図2は、10nmのFVIIaの存在下において、ε―アミノカプロン酸を添加することにより、血餅溶解時間のさらなる延長を生じたことを示す。効果は、用量依存的であり、1μMのイプシロン―アミノカプロン酸で最適であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VII因子関連ポリペプチドおよびイプシロン―アミノカプロン酸を含む薬学的組成物。
【請求項2】
前記VII因子関連ポリペプチドが、VII因子アミノ酸配列変異体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の組成物であって、前記VII因子関連ポリペプチドの活性と天然のヒトVIIa因子(野生型FVIIa)の活性との間の比は、本明細書に記載されたとおりの「インビトロ加水分解アッセイ法」で試験したときに、少なくとも約1.25である組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物であって、前記VII因子関連ポリペプチドおよびイプシロン―アミノカプロン酸は、約100:1および約1:100(w/w VII:イプシロン―アミノカプロン酸)の間の質量比で存在する組成物。
【請求項5】
前記組成物は、注射または注入、特に注射のために適切な薬学的に許容される賦形剤を更に含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物であって、パーツのキットの形態において、
a)第1の単位剤形の、VII因子関連ポリペプチドの標品の有効な量、および薬学的に許容されるキャリア;
b)第2の単位剤形の、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の有効な量、および薬学的に許容されるキャリア;および
c)前記第1および第2の剤形を含むための容器手段;を含む組成物。
【請求項7】
出血の発症を治療するための薬物の製造のための、イプシロン―アミノカプロン酸と組み合わせたVII因子関連ポリペプチドの使用。
【請求項8】
出血の発症を治療するための薬物の製造のための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項9】
前記薬物が、凝固時間を減少するためのものである、請求項7または請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記薬物が、血餅溶解時間を延長するためのものである、請求項7または請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記薬物が、血餅強度を増大するためのものである、請求項7または請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記薬物が、注射または注入、特に注射のために処方される、請求項7〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記出血の発症が、外傷、または手術、または血小板の計数もしくは活性の低下による、請求項7〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記出血の発症が、凝固因子VIIlもしくはIXの欠損またはフォンビルブラント因子の欠損による、請求項7〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記出血の発症が、抗凝血薬療法による、請求項7〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記薬物が、単一剤形である、請求項7〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記薬物が、VII因子関連ポリペプチドの標品を含む第1の単位剤形およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む第2の単位剤形の形態で調製される、請求項7〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
被検者における出血の発症を治療するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に出血を治療するために有効である方法。
【請求項19】
被検者における凝固時間を減少するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に凝固時間を減少するために有効である方法。
【請求項20】
被検者における止血を増強するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に止血を増強するために有効である方法。
【請求項21】
被検者における血餅溶解時間を延長するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に血餅溶解時間を延長するために有効である方法。
【請求項22】
被検者における血餅強度を増大するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子関連ポリペプチドの標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に血餅強度を増大するために有効である方法。
【請求項23】
VII因子関連ポリペプチド、およびイプシロン―アミノカプロン酸が、単一の剤形で投与される、請求項18〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項18〜22のいずれか1項に記載の方法であって、前記VII因子関連ポリペプチドおよび前記イプシロン―アミノカプロン酸は、VII因子関連ポリペプチドの標品を含む第1の単位剤形、およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む第2の単位剤形の形態で投与される方法。
【請求項25】
前記第1の単位剤形および前記第2の単位剤形が、15分を超えない時間を離して投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
出血の発症のための治療剤を含むキットであって、
a)VII因子関連ポリペプチドの有効な量、およびイプシロン―アミノカプロン酸の有効な量、および薬剤的に許容されるキャリアの単一の単位剤形;並びに、
b)前記単一の単位剤形を含むための容器手段、を含むキット。
【請求項27】
非血友病被験者における出血の発症を治療するための薬物の製造のための、イプシロン―アミノカプロン酸と組み合わせたVII因子の使用。
【請求項28】
前記薬物が、凝固時間を減少するためのものである、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記薬物が、血餅溶解時間を延長するためのものである、請求項27に記載の使用。
【請求項30】
前記薬物が、血餅強度を増大するためのものである、請求項27に記載の使用。
【請求項31】
前記薬物が、注射または注入、特に注射のために処方される、請求項27〜30のいずれか1項に記載の使用。
【請求項32】
前記出血の発症が、凝固障害または血小板の計数もしくは活性の低下による、請求項27〜31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項33】
前記出血の発症が、凝固障害による、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記出血の発症が、血小板の計数の低下による、請求項32に記載の使用。
【請求項35】
前記出血の発症が、抗凝血薬療法による、請求項27〜31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
前記薬物が、単一剤形である、請求項27〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
前記薬物が、VII因子の標品を含む第1の単位剤形およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む第2の単位剤形の形態で調製される、請求項27〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項38】
非血友病被検者における出血の発症を治療するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子の標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に出血を治療するために有効である方法。
【請求項39】
非血友病被検者における凝固時間を減少するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子の標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に凝固時間を減少するために有効である方法。
【請求項40】
非血友病被検者における止血を増強するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子の標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に止血を増強するために有効である方法。
【請求項41】
非血友病被検者における血餅溶解時間を延長するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子の標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に血餅溶解時間を延長するために有効である方法。
【請求項42】
非血友病被検者における血餅強度を増大するための方法であって、該方法は、その必要がある被検者に対して、VII因子の標品の第1の量と、イプシロン―アミノカプロン酸の標品の第2の量とを投与することを含み、前記第1および第2の量は、共に血餅強度をするために有効である方法。
【請求項43】
VII因子およびイプシロン―アミノカプロン酸が、単一の剤形で投与される、請求項38〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
請求項38〜42のいずれか1項に記載の方法であって、前記VII因子および前記イプシロン―アミノカプロン酸は、VII因子の標品を含む第1の単位剤形、およびイプシロン―アミノカプロン酸の標品を含む第2の単位剤形の形態で投与される方法。
【請求項45】
前記第1の単位剤形および前記第2の単位剤形が、15分を超えない時間を離して投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
非血友病の出血の発症のための治療剤を含むキットであって、
c)VII因子の有効な量、およびイプシロン―アミノカプロン酸の有効な量、および薬剤的に許容されるキャリアの単一の単位剤形;並びに、
d)前記単一の単位剤形を含むための容器手段、を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−510568(P2006−510568A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−541873(P2003−541873)
【出願日】平成14年11月8日(2002.11.8)
【国際出願番号】PCT/DK2002/000752
【国際公開番号】WO2003/039582
【国際公開日】平成15年5月15日(2003.5.15)
【出願人】(501497563)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】