説明

VII因子活性化プロテアーゼ(FSAP)のマールブルクI多型性に向けられる抗体並びにそれらの製造及び使用

【課題】FSAPマールブルクI変異体の存在を測定する方法の提供。
【解決手段】FSAPマールブルクI変異体に向けられる抗体及びそれらの製造並びに、特に治療と診断における使用に関する。本抗体は、FSAP MR I変異体に特異的に結合するが、FSAP野生型タンパク質又はFSAPタンパク質における別の位置でのアミノ酸置換によって特徴付けられる他の変異体には結合しないという事実によって特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固VII因子活性化プロテアーゼ(FSAP)のマールブルク(Marburg)I多型性に向けられる抗体並びにそれらの製造及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
VII因子活性化プロテアーゼ(FSAP)は、血液凝固VII因子を活性化する性質に加えて、プロウロキナーゼを活性化する性質であるプラスミノーゲンアクチベーターの性質を有する血漿セリンプロテアーゼである[Roemischら(1999) Haemostasis 76:292−299;EP 952216A2]。このことは、FSAPが血液凝固カスケード及び線溶系の両者において役割を演じていることを示唆している。
【0003】
FSAPは、ヒト血漿に約12μg/mlの濃度で存在し、単一鎖プロ酵素から自己触媒反応によって、活性な二本鎖プロテアーゼに変換される。ヒトFSAP遺伝子の野生型配列に加えて、種々のヌクレオチド多型性が知られており、これらの多型性のうちの2つの例もまたアミノ酸配列での変化をもたらす(EP 1182258A1)。マールブルクI多型性(MR I変異、対立遺伝子又は変異体)と称されているものは、シグナルペプチドを包含するプロ酵素の534位でのGly/Gluアミノ酸置換(Gly/Glu 534)を導き、プロウロキナーゼを活性化する作用において50〜80%の減少を生じるが、VII因子を活性化する能力は不変で残る。別の多型性、すなわちマールブルクII多型性(MR II変異、対立遺伝子又は変異体とも云う)と称されるものは、シグナルペプチドを包含するプロ酵素の370位でのGlu/Glnアミノ酸置換(Glu/Gln 370)を導く。しかし、マールブルクII変異は、FSAPのプロウロキナーゼを活性化する作用には影響を及ぼさない。MR I多型性は、西ヨーロッパの人口の約5%に見出されている。MR I多型性のヘテロ接合キャリアーは、母集団平均よりも頸動脈狭窄を発症するリスクが高いとみられている[Willeitら(2003)、Circulation 107:667−670]。従って、FSAP又はFSAP MR I変異体はアテローム性動脈硬化疾患に対する素因を認識する潜在的なマーカーである。
【0004】
公知技術によると、FSAP MR I変異体の少なくとも1つのコピーを担持している個人を同定するために種々の方法論的アプローチを使うことが可能である(EP 952215A1及びEP 1182258A1を参照)。公知の方法の1つは、試料中のFSAPのプロウロキナーゼ活性化力を測定することに基づいている。これを行うには、野生型FSAPと既知のFSAP変位体を区別することができない特異抗体を固相に結合し、試料溶液とインキュベートする。プロウロキナーゼ及び発色基質を加えた後、変換された発色基質の量をFSAPのプロウロキナーゼを活性化する作用の尺度として測定する。マールブルクI多型性のキャリアーは、50〜80%減少したプロウロキナーゼ活性を表す。しかしながら、プロウロキナーゼ活性の減少は、試料中のFSAPの濃度が低いことにも起因する。それゆえに、プロウロキナーゼ活性に加えて試料中におけるFSAP抗原濃度を測定することが特に有利である。FSAPを免疫的に測定し得るモノクローナル抗体が公知技術から知られている。EP 1182258A1には、ハイブリドーマ細胞株DSM ACC2453及び、同様に、DSM ACC2454から誘導され、そしてマウスをFSAPタンパク質で免役した後に得られた2つのモノクローナル抗体が記載されている。両抗体は、マールブルクI並びにII変異体及びFSAP野生型タンパク質に結合する。別の公知のFSAP抗体は、野生型FSAPと、公知の突然変異型変異体に平等に結合し、このことは、例えば、試料中のFSAP抗原の総含量をサンドイッチELISAで測定し得ることを意味している(DE 10023923A1を参照)。プロウロキナーゼ活性の減少は、この減少した活性が、正常範囲内であるFSAP抗原濃度とともに観察されるとき、FSAP MR I変異体の存在を具体的に指示するだけのことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、記載されたこれら方法はいずれも、FSAP MR I変異体の存在の信頼できる証拠を提供しない。しかし、例えば、FSAPプロウロキナーゼ活性化力が減少するとき、適当な予防及び治療手段にたよるためには、機能の消失の原因を正確に診断することが絶対に必要である。
【0006】
それゆえ、プロ酵素の534位でのGly/Gluアミノ酸置換(Gly/Glu 534)を明白に検出するには、ゲノムDNA又はmRNAにおける相当するコード領域を配列決定するほかなかった。cDNAのヌクレオチドの1601位において検出され得る、ゲノム配列のG/A塩基置換が、FSAP MR I多型性の遺伝子的原因である(EP 1182258A1を参照)。たとえDNA配列解析が信頼できる結果を提供するとしても、通常の実験室では、できるだけ経済的で信頼できそして早い、さらに加えて、市販の診断装置で自動的に実行し得る確立された試験方法が必要とされる。知られた基準に合致し、検査診断で既に広く使われているため、免疫学的検出方法又はテストアッセイが主として優先的に使用される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、それゆえ、抗体を用いてFSAP MRI変異体を特異的に検出することを可能とする方法及び/又は成分を提供する目的に基づいていた。
【0008】
この目的は、請求項に記載されている発明に従った方法及び目的の提供によって達成される。
【0009】
特に、本目的は、FSAP MRI変異体に特異的に結合するが、FSAP野生型タンパク質又はFSAPプロ酵素の534位のGly/Gluアミノ酸置換によって特徴付けられないその他の突然変異体には結合しない抗体の提供によって達成される。これら抗体は、ヘテロ接合キャリアー又はホモ接合の個人からの血漿試料中のFSAP MR
I変異体の直接免疫学的検出及び定量の基本となるものである。
【0010】
FSAP MR I変異体のアミノ酸532から536に相当し、ついてはプロ酵素の534位にGly/Gluアミノ酸置換(Gly/Glu534)を含有するアミノ酸配列Glu−Cys−Glu−Lys−Arg(配列番号1)を少なくとも含有するペプチドが、驚くべきことに、FSAP MR I特異的抗体を調製するための免疫抗原として使用するのに特に適していることが見出された。本発明によるペプチドは、534位のFSAP MR I特異的なGlu残基が、少なくとも2つのさらなるアミノ酸残基によって、N末端側及びC末端側の両方からはさまれているという事実によって区別される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の具体的な実施態様は、以下により詳細に説明される。
【0012】
本発明の主題の一つの部分は、5から25アミノ酸、好ましくは5から20アミノ酸、非常に特に好ましくは10から15アミノ酸を含み、それらがアミノ酸配列Glu−Cys−Glu−Lys−Arg(配列番号1)を含有することを特徴とするペプチドによって表される。本発明による好ましいペプチドは、アミノ酸配列Tyr−Val−Tyr−Gly−Ile−Val−Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Glu−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr−Thr−Gln−Val−Thr−Lys−Phe(配列番号2)を含むペプチド、又は少なくともアミノ酸配列Glu−Cys−Glu−Lys−Arg(配列番号1)を含有するその断片、特にアミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Glu−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号3)を有するペプチドである。
【0013】
本発明の意味において、用語「ペプチド」は、加水分解でアミノ酸に分解する酸アミド、例えばポリペプチド、オリゴペプチド、タンパク質又はタンパク質断片のようなアミノ酸ポリマーを包含する。
【0014】
本発明によるペプチドは、本発明による抗体を製造するための又はその他にアフィニティクロマトグラフィによって本発明による抗体を精製するための免疫抗原として使用できる。さらに、本発明のペプチドはまた、検体、好ましくはFSAP MR I変異体を定量的に又は定性的に検出する方法において使用できる。本発明のペプチドはまた、固相及び/又はシグナル生成系の成分に結合させることもできる。
【0015】
本発明の主題の別の好ましい部分は、FSAP MR I変異体の特徴的なエピトープ、すなわち、FSAP MR I変異体のアミノ酸528〜540に相当するアミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Glu−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号3)に結合することを特徴とする抗体によって表される。
【0016】
本発明の意味において、用語「抗体」は免疫グロブリン、例えば、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4又はIgMクラス又はサブクラスの免疫グロブリンを意味するものと理解されるべきである。抗体は、抗原又はハプテンにおけるエピトープ(しばしば、抗原決定基とも名付けられている)に対する少なくとも1つの結合部位(しばしばパラトープと名付けられている)を有している。そのようなエピトープは、例えば、その空間的構造及び/又は極性及び/又は無極性の基の存在によって特徴付けられる。抗体の結合部位はエピトープに相補的である。抗原抗体反応又はハプテン抗体反応は、「鍵と鍵穴原理」と名付けられたものに従って機能しており、そして通常、高度に特異的である。すなわち抗体は、抗原又はハプテンの1次構造における、荷電における、空間的配置における及び立体的配列における小さな相異を区別し得る。特に、抗体の「相補性決定領域」と名付けられたものは、抗原又はハプテンに抗体が結合するのに寄与している。
【0017】
用語「抗原」は、一価及び多価の抗原を包含する。多価抗原が、1より多くの免疫グロブリンが同時に結合し得る分子又は分子複合体であるのに対して、一価抗原には1つの単一抗体のみがいずれかの時期に結合し得る。ハプテンとは、通常、それ自体免疫原性ではないが、免疫化の目的のためには通常、担体に結合する分子に与えらた名称である。
【0018】
本発明の意味において、用語「抗体」は完全抗体だけでなく、抗原又はハプテンへの結合に関する性質が保持されているという条件で、特に、Fab、Fv、F(ab’)2及びFab’のような抗体断片;及びキメラ、ヒト化、二重特異性若しくはオリゴ特異性又は一本鎖の抗体;及び、これらに加えて、免疫グロブリン及びこれらの断片の凝集体、ポリマー及び抱合体も意味するものと理解されるべきである。抗体断片は、例えば、ペプシン又はパパインのような酵素で抗体を酵素的に開裂することによって製造し得る。抗体凝集体、抗体ポリマー及び抗体抱合体は、多くの異なった方法、例えば熱処理によって、グルタルアルデヒドのような物質との反応、免疫グロブリン結合分子との反応、抗体のビオチン化及びこれに続くストレプトアビジン又はアビジンとの反応等によって生成され得る。
【0019】
本発明の意味において、抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり得る。この抗体は、例えば、ヒト患者又は動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ウマ、ロバ、ヒツジ、ヤギ又はニワトリを免役し[Messerschmid(1996)、BIOform 11:500−502を参照]、次いで抗血清を単離することにより;又はハイブリドーマ細胞を確立し、続いて分泌された抗体を精製することにより;又は抗原及び/又はハプテンに対する自然抗体の結合を担うアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列又はその修飾体をクローニング及び発現すること等により、通例の方法に従って調製し得る。
【0020】
本発明による抗体は、特に、5から25アミノ酸、好ましくは5から20アミノ酸、非常に特に好ましくは10から15アミノ酸から構成され、そしてFSAP MR I特異的アミノ酸配列Glu−Cys−Glu−Lys−Arg(配列番号1)を含有するペプチドに結合する抗体である。本発明の意味において非常に特に好ましい抗体は、アミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Glu−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号3)を有するペプチドに、又は少なくともアミノ酸配列Glu−Cys−Glu−Lys−Arg(配列番号1)を含むこのペプチドの断片に特異的に結合する抗体である。
【0021】
ハイブリドーマ細胞株により製造される抗体:
a)ECE−KLH2004−9/014に向けられるMab(マウス)(1)
b)ECE−KLH2004−9/026に向けられるMab(マウス)(2)
c)ECE−KLH2004−35/05に向けられるMab(マウス)(1)
d)ECE−KLH2004−34/08に向けられるMab(マウス)(2)又は
e)ECE−KLH2004−151/013に向けられたMab(マウス)(2)
も、本発明の意味において、特に好ましい抗体である。ハイブリドーマ細胞株a)からc)は、2004年8月11日に、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(ドイツ微生物及び細胞培養株寄託所)GmbH、Mascheroder Weg 1b、38124 Braunschweig、Germanyに、受託番号a)DSM ACC2675、b)DSM ACC2676及びc)DSM ACC2674で寄託された。ハイブリドーマ細胞株d)及びe)は、2005年5月19日に、受託番号d)DSM ACC2725及びe)DSM ACC2726で上記寄託所に寄託された。
【0022】
本発明の主題の別の部分は、本発明の抗体によって認識されるエピトープに結合する特異的結合パートナーに関する。
【0023】
「特異的結合パートナー」は、特異的結合対のメンバーであると理解すべきである。特異的結合対のメンバーは、各々の場合において、他の分子の構造に相補的である少なくとも1つの構造を有する2つの分子であって、2つの分子は相補構造結合によって互いに結合し得るものである。用語「分子」は、また、アポ酵素及び補酵素から成る酵素、いくつかのサブユニットから成るタンパク質、タンパク質及び脂質から成るリポタンパク質等のような分子複合体を包含する。特異的結合パートナーは、天然に存在する物質又は、例えば、化学合成、微生物技術及び/又は組換え法によって製造される物質であり得る。以下のものが、例えば、用語「特異的結合パートナー」を例示するために挙げられるがこれらに限定されるものと理解されるべきでない:チロキシン結合グロブリン、ステロイド結合タンパク質、抗体、抗原、ハプテン、酵素、レクチン、核酸、リプレッサー、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド、プロテインA、プロテインG、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、補体成分C1q、核酸結合タンパク質等。特異的結合対の例は、抗体−抗原、抗体−ハプテン、オペレーター−リプレッサー、ヌクレアーゼ−ヌクレオチド、ビオチン−アビジン、レクチン−多糖類、ステロイド−ステロイド結合タンパク質、活性化合物−活性化合物受容体、ホルモン−ホルモン受容体、酵素−基質、IgG−プロテインA、相補性オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド等である。
【0024】
本発明による抗体の提供の結果、当業者にとって、例えば、競合実験によって(Petersら(1985)、Monoklonale Antikoerper(Monoclonal Antibodies)、Springer Verlag、Chapter 12.2 “Epitope analysis”も参照のこと)、明白に含まれている抗体と共に、本発明による抗体のエピトープに結合する別の特異的結合パートナーを同定することが可能である。それゆえ、特異的結合パートナーを、合成ペプチドデータベースによって、ファージディスプレイライブラリーを用いて、又はリコンビナトリアル抗体ライブラリーを用いて選択し得る(Larrick & Fry(1991)、Human Antibodies and Hybridomas 2:172−189)。
【0025】
本発明は、また、固相及び/又はシグナル生成系の成分に結合した本発明による抗体にも関する。
【0026】
本発明の意味において、用語「固相」は多孔質及び/又は非多孔質であって通常は非水溶性の材料から成り、多種多様な形態、例えば容器、チューブ、微量滴定プレート、球形、微粒子、ロッド、ストリップ、濾紙、クロマトグラフィペーパー等の形態をとることができる対象を意味する。通常、固相の表面は親水性であるか又は親水性にすることができる。固相は、非常に広範な材料、例えば、無機及び/又は有機材料、合成材料、天然に存在する材料及び/又は改質された天然に存在する材料から構成され得る。固相材料の例としては、ポリマー、例えば、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ポリビニルクロリド、ポリアクリルアミド、架橋デキストラン分子、アガロース、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリレート又はナイロン;セラミック、ガラス又は金属、特に貴金属、例えば金及び銀;磁鉄鉱;これらの混合物又は組合せ;等を挙げ得る。細胞、リポソーム及びリン脂質小胞もまた用語「固相」に含まれる。
【0027】
固相は、例えば、固相に対する試料成分の非特異的結合を抑制又は予防するため又は、例えば、特定の固相の懸濁安定性に関する、貯蔵安定性に関する、寸法安定性に関する又は破壊効果を有するUV光線、微生物又はその他の薬剤に対する抵抗性に関する改善を達成するために、例えばタンパク質、炭水化物、親油性物質、バイオポリマー若しくは有機ポリマー又はその混合物の1つ又はそれ以上の層から成る被覆を有することもできる。
【0028】
シグナル生成系は、少なくとも成分の1つが検出可能な標識である1つ又はそれ以上の成分であり得る。標識は、それ自体シグナルを生成するか又はシグナルの生成を誘導し得る、例えば蛍光物質、放射性物質、酵素又はケミルミネセンス物質のような任意の分子であると理解されるべきである。シグナルは、例えば、酵素活性、ルミネセンス、光吸収、光散乱、電磁放射又は放射性放射の放出、又は化学反応を使用して検出又は測定し得る。
【0029】
標識は、それ自体で、さらなる成分を必要とせずに、検出し得るシグナルを生成し得る。多くの有機分子は紫外線又は可視光線を吸収し、その結果、これら分子は、励起エネルギー状態に達して、入射光とは異なった波長の光の形で吸収エネルギーを放出し得る。さらに別の標識は、検出し得るシグナル、例えば放射性同位元素又は色素を直接生成し得る。
【0030】
また別の標識は、シグナルを生成するための追加的成分を必要とする。すなわち、その
ような場合においては、シグナル生成系は、シグナルを産生するために必要な全ての成分、例えば、基質、補酵素、消光剤、促進剤、付加的な酵素、酵素産物と反応する物質、触媒、活性化剤、補助因子、阻害剤、イオン等を包含する。
【0031】
適当な標識の例としては[EP 0515194A2;US 5,340,716;US
5,545,834;Baileyら(1987)、J.Pharmaceutical
& Biomedical Analysis 5:649−658も参照のこと]、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、ウレアーゼ及びアセチルコリンエステラーゼを包含する酵素;色素;フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、臭化エチジウム、5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホニルクロリド及び希土類の蛍光キレートを包含する蛍光物質;ルミノール、イソルミノール、アクリジニウム化合物、オレフィン、エノールエーテル、エナミン、アリールビニルエーテル、ジオキセン、アリールイミダゾール、ルシゲニン、ルシフェリン及びエクオリンを包含するケミルミネセンス物質;エオシン、9,10−ジブロモアントラセン、メチレンブルー、ポルフィリン、フタロシアニン、クロロフィル及びローズベンガルを包含する増感剤;補酵素;酵素基質;125I、131I、14C、3H、32P、33P、35S、14C、51Cr、59Fe、57Co及び75Seを包含する放射性同位元素;磁気粒子又はそれ自身が、例えば、色素、増感剤、蛍光物質、ケミルミネセント物質、同位元素又はその他の検出し得る標識で標識され得る粒子、好ましくはラテックス粒子を包含する粒子;金ゾル又は銀ゾルを包含するゾル粒子;それ自体、検出し得る標識で標識され得るリポソーム又は細胞;等があげられる。
【0032】
シグナル生成系は、また、互いに空間的に接近しているとき、検出し得る相互作用を生むことができる成分、例えば、光増感剤とケミルミネセンス物質(EP 0515194A2)、光増感剤と発蛍光団(WO 95/06877)、放射性ヨウ化物125と発蛍光団(Udenfriendら(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.82:8672−8676)、発蛍光団と発蛍光団(Mathis(1993)、Clin.Chem.39:1953−1959)又は発蛍光団と蛍光消光剤(US 3,996,345)のようなエネルギードナーとエネルギーレシピエントの形の成分を含み得る。成分間の相互作用は、また、例えば、光放射又は電子放射による、そしてまた、短寿命の反応性化学分子による成分間のエネルギーの直接移動も包含する。相互作用は、また、成分の活性が1つ又はそれ以上の別の成分によって阻害又は増加される、例えば酵素活性の阻害若しくは増加又は影響された成分によって放射される電磁放射の阻害、増加又は変化(例えば、波長シフト、分極)のプロセスを包含する。成分間の相互作用は、また、酵素カスケードを包含する。この場合の成分は、少なくとも1つが他に基質を提供し、それによって結合した基質反応が最大又は最小反応速度で起こる酵素である。通常、成分間の効果的な相互作用は、成分が空間的に互いに近接しているとき、すなわち、例えば、数μmの距離範囲内、特に600nm未満の距離範囲内、好ましくは400nm未満、非常に特に好ましくは200nm未満であるときに起こる。
【0033】
微粒子は、しばしば固相及び/又は標識として使用される。本発明の意味において、用語「微粒子」は、およその直径が20nm未満で20μmを越えない、習慣的には40nmと10μmの間、好ましくは0.1と10μmの間、特に好ましくは0.1と5μmの間、特に好ましくは0.15と2μmの間である粒子を意味すると理解されるべきである。微粒子は、規則的又は不規則な形を有し得る。それらは、球形、長球又は大きな又は小さなサイズの空洞又は孔を有する球形であり得る。微粒子は、また、有機物質若しくは無機物質又は二つの混合又は組合せから成り得る。それらは多孔性又は非多孔性、膨潤性又は非膨潤性の材料から成り得る。原則として、微粒子はいかなる密度であってもよいが、好ましくは約0.7から約1.5g/mlのような、水の密度に近い密度を有する粒子である。好ましい微粒子は、それらの懸濁液ができるだけ長い間安定であるように、水溶液に懸濁し得る。それらは、透明であっても、部分的に透明であっても、又は不透明であってもよい。微粒子は、例えば、コアと1つ又はそれ以上の被覆層を有するコア−シェル粒子と命名されるもののように、いくつかの層から成ることができる。
【0034】
用語「微粒子」は、例えば、色素結晶、金属ゾル、シリカ粒子、ガラス粒子、磁気粒子、高分子粒子、油滴、脂質粒子、デキストラン及びタンパク質凝集体を包含する。好ましい微粒子は、水性溶液に懸濁することができ、水不溶性ポリマー材料、特に置換ポリエチレンから成る粒子である。非常に好ましくは、例えば、ポリスチレン、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、アクリロニトリルポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリビニルアセテート−アクリレート、ポリビニルピリジン又はビニルクロリド−アクリレートから成るラテックス粒子である。カルボキシル、アミノ又はアルデヒド基のような反応性基を表面に有するラテックス粒子は、特に興味を起こさせるものであり、ここで、これらの反応性基は、特異的結合パートナーが当該ラテックス粒子に例えば共有結合で結合することを可能にする。ラテックス粒子の製造は、例えば、EP 0080614、EP 0227054及びEP 0246446に記載されている。
【0035】
用語「結合した(linked)」は、広い意味に理解されるべきであり、例えば、共有結合及び非共有結合、直接結合及び間接結合、表面への吸着及び陥入部又は空洞への封入等を包含する。共有結合の場合、抗体又は結合パートナーは、化学結合によって固相又は標識に結合する。非共有結合の例としては、表面吸着、空洞への封入又は2つの特異的結合パートナーの結合がある。固相又は標識への直接結合に加えて、抗体又は結合パートナーは、また、他の特異的結合パートナーとの特異的相互作用によって固相又は標識に間接的に結合することもできる(EP 0411945A2を参照)。これは実施例の助けを借りてより詳細に例示されるであろう。すなわち、ビオチン化抗体は標識結合アビジンによって標識に結合し得、又はフルオレセイン−抗体抱合体は固相−結合抗フルオレセイン抗体によって固相に結合し得、又は抗体は免疫グロブリン−結合タンパク質によって固相又は標識に結合し得る。
【0036】
本発明は、さらに、イン・ビトロ診断薬として又はイン・ビトロ診断薬の成分として使用される本発明による特異的結合パートナー又は抗体に関する。イン・ビトロ診断薬の場合、ヒト又は動物の体外の試料において、検出されるべき検体、例えばFSAPマールブルクI変異体が検出されるか又はその濃度又は量が決定される。
【0037】
本発明の意味において、「試料」は、検出されるべき物質を含有する疑いのある材料を意味するものと理解されるべきである(用語「検体」の例として、EP 0515194A2、p.8−15を参照)。用語「試料」は、例えば、ヒト及び動物からの体液又は組織、特に、血液、血漿、血清、喀痰、滲出液、気管支肺胞洗浄液、リンパ液、滑液、精液、膣粘液、糞便、尿、脳脊髄液、毛髪、皮膚及び組織試料又は切片を包含する。また、細胞培養試料、植物液又は組織、法医学試料、水及び流出液試料、栄養素及び医薬も包含する。適切な場合には、試料は、検体が検出方法に適するようにするため、又は試料成分を妨害するものを除去するために前処理されなければならない。そのような試料の前処理は、細胞の分離及び/又は溶解、沈殿、タンパク質のような試料成分の加水分解又は変性、試料の遠心分離、アルコール、特にメタノールのような有機溶媒による試料の処置;及び界面活性剤による試料の処理を包含する。試料は、しばしば、もし可能ならば、検出法を阻害しない、通常は水性である別の媒体に移される。
【0038】
本発明による抗体は、試料中の検体、好ましくはFSAPマールブルクI変異体を定量又は定性的に検出するための方法で使用され得る。
【0039】
定量的検出の場合、試料中の検体の量、濃度又は活性(例えば、酵素活性)が測定される。用語「定量的検出」は、また、試料中の検体のおよその量、濃度又は活性を検出するだけの、又は量、濃度又は活性の相対的な指示を与えることに使用され得るだけの半定量的方法も包含する。定性的検出は、検体が試料中に存在するかを検出するものとして、又は試料中の検体の濃度又は活性が、一つの特定の閾値又はいくつかの特定の閾値より下回るか越えるかを指示するものとして理解されるべきである。
【0040】
本発明は従って、試料中の検体、好ましくはFSAPマールブルクI変異体を定量的又は定性的に検出する方法及びこの目的に適した試薬に関する。
【0041】
試料中の検体の存在、不存在又は量に関する結論を導くために、検出されるべき検体の、検体特異的結合パートナーへの特異的結合を使用し得る結合試験が、検体を検出するためにしばしば採用される。オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが加水分解されるイムノアッセイ又は方法は、結合試験の例である。
【0042】
「不均一(heterogeneous)結合試験」と名付けられたものは、1つ又はそれ以上の分離ステップ及び/又は洗浄ステップによって特徴付けられる。分離は、例えば、免疫沈降反応、ポリエチレングリコール又は硫酸アンモニウムのような物質による沈殿、濾過、磁気分離又は固相への結合によって実行される。そのような「固相」は、通常は水不溶性の多孔質及び/又は非多孔質物質から成る。それは、容器、チューブ、微量滴定プレート、球形、微粒子、ロッド、ストリップ、濾紙、クロマトグラフィペーパー、等々のような非常に広範な種々の形状を有し得る。サンドイッチ形態での不均一結合試験の場合、検体特異的結合パートナーの一つは、通常、固相に結合され、液層から「検体/検体特異的結合パートナー」結合複合体を分離するよう作用し、一方、別の検体特異的結合パートナーは、結合複合体を検出するための、検出し得る標識、例えば酵素又は蛍光又はケミルミネセンス標識等を担持している。これらの試験方法は、さらに、2つの特異的結合パートナーが試料と同時にインキュベートされる1ステップサンドイッチ試験と名付けられたもの、及び試料が最初に固相試薬とインキュベートされ、分離及び洗浄ステップの後に、検体及び検体特異的結合パートナーから成り固相に結合した結合複合体が検出試薬とインキュベートされる2ステップサンドイッチ試験と名付けられたものに細分される。
【0043】
「均一(homogeneous)結合試験」の場合、「検体/検体特異的結合パートナー」複合体に結合しているシグナル生成系の成分及び遊離している成分は分離されない。検体特異的結合パートナー、シグナル生成成分及び試料を含有する、試験混合物が測定され、そして相当する測定シグナルが、結合反応後に又は反応中にでも、さらなる分離及び/又は洗浄ステップなしで決定される。検出のために採用される検体特異的結合パートナーがラテックス粒子に結合される多くの濁度法又は比濁法、例えば、EMIT(登録商標)法、CEDIA(登録商標)法、蛍光偏光イムノアッセイ、ルミネセンス酸素チャネリングイムノアッセイ(LOCI(登録商標))、EP 0515194A23;Ullmanら(1994)、Proc.Natl.Acad.Sci.91:5426−5430;Ullmanら(1996)、Clinical Chemistry 42:1518−1526)等は、均一イムノアッセイの例である(Boguslaski & Li(1982)、Applied Biochemistry and Biotechnology 7:401−414)。比濁ラテックス法のような均一サンドイッチイムノアッセイにおいて、抗体試薬は、試料と共にインキュベートされ、インキュベーションの間及び/又は後にシグナルが測定され、分離又は洗浄ステップは測定前に実施されない。別の言葉で表現すると、抗体に結合した検体は、遊離の検体から又はどのような検体とも結合していない抗体からは分離されない。
【0044】
本発明による抗体は、均一結合試験においての使用に特に適している。
【0045】
均一及び不均一結合試験は、また、「サンドイッチアッセイ」と命名された形で実行することもできる。この場合、検体は、例えば不均一結合試験の場合において、固相結合、検体特異的結合パートナーによって、及びシグナル生成系の成分に結合している検体特異的結合パートナーによって結合している。サンドイッチイムノアッセイにおいて、抗体又は抗原又はハプテンは検体特異的結合パートナーであり得る。
【0046】
「間接イムノアッセイ」は、不均一又は均一結合試験の別の特別な実施態様である。この場合、検体は抗体である。検体特異的結合パートナーの一つは、抗原であり又は、例えば、本発明によるペプチド又は検出される抗体(=検体)の修飾抗原でありそして別の検体特異的結合パートナーは、通常、検出される抗体(=検体)に特異的に結合し得る抗体のような免疫グロブリン結合タンパク質である。
【0047】
均一又は不均一「競合結合試験」において、試料検体及び試薬検体は、限られた数の検体特異的結合パートナーに結合するため競合する。試薬検体は、例えば、標識した検体のような「修飾した検体」、本発明によるペプチドのような検体断片又は検体の類縁体である。以下の例示はその原理を示す:(i)試料検体は、シグナル生成系の成分に結合した試薬検体と、固相に結合した検体特異的結合パートナーに結合するために競合する、又は(ii)試料検体は、シグナル生成系の成分に結合している検体特異的結合パートナーに結合するため、固相に結合した検体(=試薬検体)と競合する。
【0048】
本発明による抗体は、また、ウエスタンブロッティング、ドットブロッティング、免疫電気泳動、免疫固定電気泳動、電気免疫拡散、免疫沈降、放射状免疫拡散、免疫固定、免疫クロマトグラフィ、ラテックス凝集、濁度又は比濁試験、均一又は不均一結合試験、1ステップ又は2ステップ試験、サンドイッチ試験、間接試験、競合試験、ポイントオブケア検査等の方法を採用してFSAPマールブルクI変異体を検出するために使用することもできる。これら及びその他の検出方法は、例えば、「Labor und Diagnose(Laboratory and Diagnosis)、L.Thomas編、TH−Books Verlagsgesellschaft mbH、Frankfurt,1998、Chapter 60」;「Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−An Introduction to Radioimmunoassay and Related Techniques」、T.Chard編、Elsevier、Amsterdam、1987に記載されている。
【0049】
用語「ポイントオブケア検査」つまり「POC検査」は、検査の実施又は検査の評価に別の分析又は測定の装置が必要とされない試験を含む。多くの場合、POC検査は、免疫クロマトグラフィ法、濾過による免役複合体分離及び/又は免疫固定技術に基づいている。POC検査は、特に、スポット、例えば患者のベッドサイド又は家庭で実施する測定を行うこと、及び救急医及び/又は登録医師のため、及び少数であるが大きな検査室で行うことを意図している。POC検査は、特に、臨床検査の分野で詳細な医療トレーニングや経験を有しない個人によっても実施され得る。本発明の意味において、用語「POC検査」は、また、例えば、家庭で使用するために市販されている種々の妊娠テストのような医療に無縁の一般人によって実施されるホームテスト又はOTCテストと名付けられるものを包含するものと理解されるべきである。別のPOC検査は、例えば、心筋梗塞マーカー、薬物、医薬、感染マーカー及び炎症マーカーを検出することに関する。多くのPOC検査において、特異的結合パートナーが、フィルター又はクロマトグラフィストリップ又はディスクに結合しているか又は検査を実行する間に結合される。陽性又は陰性の検出反応は、例えば、特定の試験場所における着色したバンドの出現又は非出現に、及び/又は、例えば「+」又は「−」と云った特別のシンボルの出現又は非出現及び/又はそれぞれの測定シグナルの強度に結びつけ得る。
【0050】
FSAPマールブルクI変異体に対するPOC検査は、例えば、以下のように設定し得る。試料と、FSAPマールブルクI変異体には結合し得るが、野生型FSAP又はその他のFSAP変異体には結合しない標識抗体をテストストリップ上に付す。適当な標識の例としては、呈色ラテックス粒子、コロイド状金、酵素等がある。試料中にFSAP
マールブルクI変異体が存在すれば、FSAP MR I/抗体複合体が生じる。これらの複合体は、別のFSAP MR Iエピトープに結合できる抗体であって例えばバンドの形で固定されているか又は検査処置中に(例えば、ビオチン−アビジン架橋によって)固定される抗体が位置する領域の方向に、例えば、毛管力によって移動する。標識FSAP MR I/抗体複合体は、この領域に結合され、固定された抗体とともにサンドイッチ複合体を形成する。この場合、標識シグナルの強度は、試料中のFSAP MR Iの濃度に比例する。競合POC検査方法の場合には、抗体断片は、例えば、テストストリップの領域に、固定されているか又は検査処置中に固定される。この固定された抗体は、標識された抗FSAP MR I抗体に結合するために、試料からのFSAPマールブルクI変異体と競合することになる。又は、固定された抗FSAPマールブルクI変異体抗体と標識されたFSAP MR Iタンパク質又は本発明によるペプチドが、競合FSAPマールブルクI変異体検査を組立てるために採用され得る。
【0051】
本発明による特別に好ましい実施態様は、比濁又は濁度試験であり、特に、好ましくは微粒子(特に、ラテックス粒子)に結合している、本発明による抗体を採用したそのような試験である。
【0052】
本発明の主題の別の部分は、本発明による1つ又はそれ上の抗体及び/又はペプチドを含む検査キットである。そのようなキットは、包装形態に検査の全ての成分又はある種の成分のみを慣習的に含む。本発明による抗体及び/又はペプチドは、例えば、1つ又はそれ以上の固相及び/又はシグナル生成系の1つ又はそれ以上の成分に結合し得る。検査キットは、例えば、標準、対照、キャリブレーター及びその他の試薬、例えばバッファ、洗浄液、測定シグナル−開始溶液及び/又は酵素基質、キュベット、ピペット及び/又は試験指示書を含み得る。
【0053】
一定量のFSAPマールブルクIタンパク質を天然又は組換え体の形で含有するか、又はアミノ酸配列Glu−Cys−Glu−Lys−Arg(配列番号1)を示す一定量の本発明のペプチドを含有する、再構成し得る凍結乾燥製剤及び、特に、液体製剤が、特異的結合パートナーを用いたFSAP MR I変異体を定量的又は定性的に検出するための方法における標準、対照又はキャリブレーターとして使用するのに適している。5から25アミノ酸から成り且つアミノ酸配列Glu−Cys−Glu−Lys−Arg(配列番号1)を含有する部分から成るペプチド、及び5から15アミノ酸から成り且つアミノ酸配列Glu−Glu−Phe−His−Glu(配列番号4)を含有する別の部分から成るペプチドは、同様に適している。これらの融合ペプチドの後者の部分は、好ましくは、アミノ酸配列Gln−Asp−Leu−Lys−Lys−Glu−Glu−Phe−His−Glu−Gln−Ser−Phe−Arg−Val(配列番号5)を有するペプチド、又はGlu−Glu−Phe−His−Glu(配列番号4)を含有するその断片から成る。アミノ酸配列Glu−Glu−Phe−His−Glu(配列番号4)はFSAPプロ酵素のアミノ酸の383から387位に相当し、そして野生型FSAPタンパク質及びFSAPマールブルクI変異体中の両者に存在するエピトープを表す。本発明による融合ペプチドは、FSAPマールブルクI多型性に対する特異性を有する結合パートナー、例えば本発明による抗体、及びFSAPプロ酵素のGlu−Glu−Phe−His−Glu含有エピトープに対する特異性を有する結合パートナー、例えばハイブリドーマ細胞株(これは、受託番号DSM ACC2453で、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(ドイツ微生物及び細胞培養株寄託所)GmbH、Braunschweig、Germany(EP 1182258A1を参照)に寄託された)により形成されたモノクロール抗体によって結合されるので、それらは定量的又は定性的サンドイッチ試験法の標準化、キャリブレーション又は制御に特に適している。融合ペプチドは、適当なペプチド合成によって製造し得る。同様に、グルタルアルデヒド又はbi−NHSエステルのようなホモ型二官能性架橋剤を使用して、又はN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)−X−マレイミド、NHS−X−ハロアセチル、N−γ−マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)のようなヘテロ二官能性架橋剤、及び、イミノチオラン、N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジル−ジチオ)プロピオネート(SPDP)、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)のような、遊離SH基を生成するヘテロ二官能性試薬を使用してFSAPマールブルクIエピトープ及び野生型エピトープを一緒に結合させるか、又は、2つのエピトープを、オバルブミン、アルブミン、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、ウシα−ラクトアルブミンのような共有キャリアー、及びデキストラン、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリ−d−グルタミン−d−リジンのようなポリマーと共役させることができる。ペプチドを、例えば、カルボジイミドもしくはグルタルアルデヒドを使用して、又は別に、スペーサーとしても作用することもできる、N−マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル(GBMS)のようなヘテロ二官能性試薬を使用してこれらのキャリアーに結合させ得る。さらなる例及び結合方法として、Wong、S.(1993)、Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking、CRC Press Inc.,Boca Ratonを参照のこと。
【0054】
本発明の好ましい検査キットは、本発明による抗体及び/又はラテックス粒子に結合した本発明によるペプチドを含む。
【0055】
本発明による別の検査キットは、少なくとも5名の、好ましくは20名を越える、ヘテロ接合FSAPマールブルクIドナー由来のヒト血漿のプールから成る血漿製品を含む。ヘテロ接合ドナーは、公知のスクリーニング法を使用して(EP 1182258A1を参照)、そして、当然ながら、本発明による抗体も使用して同定し得る。そのようなFSAPマールブルクI血漿プールは、例えば、プールについて決定される、100%又は1PEU(血漿等量単位)/mlのような参照値と共に、標準として使用し得る。そのようなプール、又は血漿プールの種々の希釈体は副標準(例えばペプチド標準)を設定するため、又はカットオフ値及びグレー領域を定義するために使用され、それは、FSAPマールブルクI変異体抗原を検出するために多分必要とされるであろう。
【0056】
本発明による抗体及びペプチドは、また、アフィニティクロマトグラフィのために使用することもできる。用語「アフィニティクロマトグラフィ」は、多くの物質が、選択的に、非共有的に、可逆的に、それらに特異的である結合パートナーと結合し得るという事実に基づいて、物質、特にバイオポリマーを精製及び単離するための方法を意味するものと理解されるべきである。本方法の原理は、特異的結合パートナーが、通常は共有結合で、不溶性マトリックス(例えば、多孔性ガラス又はアガロース、セルロース、デキストラン、ポリマー又はシリカをベースとするゲル)に結合し、そして物質を含有する試料と接触することである。マトリックスに結合した特異的結合パートナーとの特異的相互作用のゆえに、試料中に存在する全てのその他の物質が溶出により分離されるのに対して、求められている物質は固定化され保持される。求められている物質は、物質と特異的結合パートナーの間の非共有結合を破壊する適当な溶出液を用いてマトリックスから放出される(E.Buddecke、1989、Grundrisse der Biochemie(生化学の概略)、Walter de Gruyter、第7章 “Proteine(タンパク質)”を参照)。
【0057】
本発明の主題の別の部分は、医薬的に許容される滅菌注射媒体における、本発明による抗体又は本発明によるペプチドを包含する。医薬的に許容される滅菌注射媒体は、例えば、微生物を含まず、発熱物質を含まない溶液、例えば医薬、ワクチン又は造影剤の静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下投与に習慣的に使用されるものとしての生理食塩水又はその他の電解質溶液として理解されるべきである。
【0058】
本発明の主題のさらに別の部分は、診断薬として又は診断薬の成分としての、本発明による抗体の使用である。
【0059】
本発明の主題の別の部分は、本発明による抗体を製造する方法であり、その方法は、5から25アミノ酸から成り、好ましくは5から20アミノ酸から成り、非常に特に好ましくは10から15アミノ酸から成り、そしてアミノ酸配列Glu−Cys−Glu−Lys−Arg(配列番号1)を含有する、1つ又はそれ以上のペプチドが免疫に使用されることを特徴とするものである。本発明による方法において特に好ましい免疫抗原は、アミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Glu−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号3)を有するペプチド又はアミノ酸配列Glu−Cys−Glu−Lys−Arg(配列番号1)を少なくとも含有する断片である。
【0060】
本発明による抗体は、また、天然に存在する及び/又は組換えFSAP MR Iタンパク質、又はFSAP MR I特異的多型性を含有するその断片を使用することにより製造できる。
【0061】
免疫抗原として使用されるペプチドは、非結合形態及び/又はキャリアー結合形態において免疫に使用され得る。
【0062】
典型的なキャリアーの例としては、オバルブミン、アルブミン、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)のようなタンパク質、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリ−d−グルタミン−d−リジンのようなポリマーがある。ペプチドは、例えば、カルボジイミドもしくはグルタルアルデヒドを使用して、又は別に、スペーサーとしても作用し得る、N−マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル(GBMS)のようなヘテロ二官能性試薬を使用してこれらのキャリアーに結合させ得る。さらなる例及び結合方法として、Wong、S.(1993)、Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,CRC Press Inc.,Boca Ratonを参照のこと。
【0063】
なかんづく免疫抗原として使用される本発明によるペプチドを製造する好ましい方法は、リジン核上に合成されるペプチドの多数のコピーを有する固相合成法である(Tam J.P.(1988)、Proc. Natl.Acad.Sci.USA 85:5409−5413を参照)。ペプチド合成は、標準の操作手順に従って、例えばApplied Biosystems社(USA)によって市販されているもののような自動装置を使用して好ましく実施される。これらのマルチマーペプチドは、次いで、キャリアータンパク質に結合させ得る。
【0064】
免疫抗原は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水にとりあげられ、Immune Easy Mouse Adjuvantで処理される。このエマルジョンは、次いで、動物、例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ウマ、ロバ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ等に対して、例えば、皮内、腹腔内及び/又は皮下に、投与され得る。不完全フロイントアジュバントと免疫抗原を乳化させることが可能でもあるブースター注射は、免疫応答を増加させるのに役立つであろう。
【0065】
本発明によるポリクローナル抗体は、免疫動物の抗血清から単離することができ、例えば、FSAPマールブルクI変異体又は免疫抗原として採用されたペプチドが結合したマトリックスを介したアフィニティクロマトグラフィによってさらに精製され得る。
【0066】
本発明によるモノクローナル抗体を製造するために、マウス又はウサギのような免疫動物の免疫細胞が、公知の方法に従って(Harlow & Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Habor Laboratory、Cold Spring Harbor;Petersら(1985)、Monoklonale Antikoerper: Herstellung und Charakterisierung(モノクローナル抗体:製造及び特性評価)、Springer Verlagを参照)、骨髄腫細胞と融合され、抗体産生ハイブリドーマ細胞を生成し、その後適当なクローンが単離され、個々に培養される。特異的スクリーニング方法が、所望のモノクローナル抗体を生産するクローンを選択するために使用される。これに関連して、酵素イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ及び/又はウエスタンブロッティングが、細胞培養上清に放出される抗体の、例えば、免疫抗原への又は免疫抗原の可能なキャリアーへの結合特異性を調べるために使用される。本発明による抗体を産生するハイブリドーマは、クローン的に増殖される。このようにして得られたハイブリドーマ細胞株は、長期間にわたってモノクローナル抗体の生産に利用できる。比較的大量の抗体が、例えば、細胞培養上清から、特に発酵槽又はローラー培養及び腹水から得られる。
【0067】
所望の目的に応じて、Fab、F(ab’)2、又はFab’断片のような抗体の一部のみを有利に使用できる。後者は、例えば、当業者に知られた酵素開裂法を使用して製造できる(Harlow & Lane(1988)、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Habor Laboratory、Cold Spring Harbor参照)。
【0068】
抗体中の抗原結合部位は、V遺伝子によってコードされている可変領域と呼ばれるところに位置している。公知の組換え方法(例えば、 Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、2nd Ed.;McCaffertyら(1990)、Nature 348:552−554)を、本発明による抗体の相当する核酸配列、そして結果として、相当するアミノ酸配列を決定するために使用することが可能である。ただし、後者はアミノ酸配列決定によって明らかにされたのではない。ハイブリドーマ細胞又は免疫動物の抗体産生免疫細胞は、これらの解析のための出発材料として使用され得る。
【0069】
核酸配列及び/又はアミノ酸配列が分かると、次に、通常の組換え及び分子生物学的方法(Johnson & Chiswell(1993)、Current Opinion in Structural Biology 3:564−571を参照)を、FSAP MR I特異的エピトープ、特に、本発明によるペプチドに結合する、ヒト化、キメラ化、二重特異的又はオリゴ特異的抗体、及び相補性決定領域由来ペプチド(「最小認識単位」)、一本鎖断片及び/又は機能的融合産物、例えば、組換えで製造した抗体−酵素構造物(Larrick & Fry(1991)、Human Antibodies and Hybridomas 2:172−189;Kitanoら(1986)、Appl. Micorobiol.Biotechnol.24:282−286; Thompsonら(1986)、J.Immunol.Methods 94:7−12を参照)を製造するために使用し得る。用語「抗体」に包含されるこれらのペプチドは、例えば、医薬又はイン・ビボ診断薬としての投与に関連する免疫性の減少及び/又は活性の増加、及び/又はイン・ビトロ診断薬としての若しくはイン・ビトロ診断薬におけるペプチドの使用により得られる利点を達成するために使用され得る。これらの抗体は、また、適当ならば組換え法を用いて、酵母細胞のような真菌で(Fischerら(1999)、Biol.Chem.380:825−839;Hiattら(1992)、Genetic Engineering 14:49−64)、植物、動物及び原核細胞において(WO 95/25172参照)及び単離されたヒト細胞において製造することもできる。
【0070】
本発明は、また、本発明による抗体を産生する、真菌、動物、植物又は原核細胞、及び単離されたヒト細胞にも関する。本発明の好ましい実施態様は、本発明による抗体を産生するハイブリドーマ細胞株、例えばハイブリドーマ細胞株a)ECE−KLH2004−9/014、b)ECE−KLH2004−9/026、c)ECE−KLH2004−35/05、d)ECE−KLH2004−34/08、及びe)ECE−KLH2004−151/013を包含し、これらは、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(ドイツ微生物及び細胞培養株寄託所)GmbH、Mascherode Weg 1b,38124 Braunschweig、Germanyに、受託番号a)DSM ACC2675、b)DSM ACC2676、c)DSM ACC2674、d)DSM ACC2725及びe)DSM ACC2726で寄託された。
【0071】
以下に記載される実施例は、一例として本発明の個々の態様を明らかにする助けとなるものであり、限定するものと理解されるべきではない。
【0072】
〔実施例〕
実施例1
FSAPマールブルクI特異的モノクローナル抗体の製造
1a)免疫マウス
BALB/cマウスを、それぞれ、Immune Easy Mouseアジュバント(Qiagen GmbH、Germany)中の免疫抗原[アミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Glu−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号3)を有するKLH結合ペプチド]20μgで腹腔内免疫した。4及び8週間後、各マウスにアジュバントなしの免疫抗原20μgをブースター注射した。融合に先立つ最後の3日に、各マウスを免疫抗原10μgで静脈内追加免疫した。
【0073】
1b)融合
CO2吸入によってマウスを殺処分した後、脾臓を分離し、単細胞懸濁液を無血清Dulbecco変法Eagle培地(DMEM:PAN Biotech GmbH、Germany)中に調製した。細胞を遠心分離し(652×g)、DMEMで2回洗浄した。細胞数をトリパンブルー染色によって決定した。2×107骨髄腫細胞(Sp2/0)を、およそ108脾細胞に加えた。遠心分離(360×g)に次いで、上清を捨て、ポリエチレングリコール溶液1ml(PEG4000、Merck Eurolab GmbH、Germany;DMEM中でおよそ50%濃度)を細胞ペレットに加え、再懸濁の後、37℃で1分間インキュベートした。DMEM約10mlを加え、混合物を室温で、2から4分間インキュベートした。融合細胞を遠心分離し(326×g)、ペレットをDMEM+10%ウシ胎仔血清(Bio Whittaker Europe、Belgium)+HAT培地(CC Pro GmbH、 Germany)に再懸濁し、一定量を24穴細胞培養プレート(Corning Costar GmbH、Germany)に分注した。およその細胞濃度は、5×104から5×106細胞/穴であった。
2から3週間後、発生した細胞コロニー(ハイブリッド)を取り、新しい培養プレ
ートに移した。
【0074】
1c)スクリーニング
細胞培養中に放出された抗体の特異性を、アミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu―Glu−Cys−Glu−Lys−Arg―Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号3)を有するペプチドで被覆されたマイクロタイタープレート(Nunc GmbH & Co. KG、Germany)を用いて、第1の試験ステップで調べた。
【0075】
細胞培養上清100μl(1:2に希釈)をマイクロプレートの各穴にピペットで入れ、そのプレートを+15から+25℃で、1時間インキュベートした。プレートをPOD洗浄液(OSEW;Dade Behring Marburg GmbH、Germany)で2回洗浄した後、抗マウスIgG/F(ab’)2−POD抱合体、100μl(Dade Behring Marburg GmbH、Germany)を各穴に一定量分注し、プレートを+15から+25℃で、1時間インキュベートした。プレートをさらに2回洗浄した後、Chromogen TMB溶液100μl(Dade Behring Marburg GmbH、Germany)を各穴に一定量分注して、プレートを+15から+25℃で、さらに30分間インキュベートした。インキュベーションの後、POD停止液100μl(Dade Behring Marburg GmbH、 Germany)を各穴に一定量分注し、マイクロタイタープレートをBEP II(Behring−ELISA Processor II, Dade Behring Marburg GmbH、Germany)中で、450nmにて評価した。
第2の試験ステップにおいて、ハイブリッドを再び個々の細胞に分離した後に、上に記載したようにして同じ試験形式で試験した。
【0076】
1d)クローニング
FSAP MR I特異的抗体を産生するハイブリッドの個々の細胞をマイクロマニピュレーター(Leitz Messtechnik GmbH、Germany)を使用してクローン化した。これらのクローンからの培養上清を、1g)に記載されたようにして精製し、1e)、1h)及び1i)に記載されたようにしてより詳細に性質を調べた。FSAP MR I特異的エピトープに結合する本発明による抗体は、例えば、以下のクローンによって産生される:
a)ECE−KLH2004−9/014に向けられるMab(マウス)(1)、
b)ECE−KLH2004−9/026に向けられるMab(マウス)(2)、
c)ECE−KLH2004−35/05に向けられるMab(マウス)(1)、
d)ECE−KLH2004−34/08に向けられるMab(マウス)(2)、及び
e)ECE−KLH2004−151/013に向けられたMab(マウス)(2)。
【0077】
これらのハイブリドーマ細胞株は、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(ドイツ微生物及び細胞培養株寄託所)、Mascherode Weg 1b、38124 Braunschweig、Germanyに、受託番号a)DSM ACC2675、b)DSM ACC2676、c)DSM ACC2674、d)DSM ACC2725及びe)DSM ACC2726で寄託された。
【0078】
1e)抗体サブクラスの決定
FSAPマールブルクI変異体に対して向けられた抗体のサブクラスは、Boehriger Mannheim、Germanyによって供給されるIsoStripTMマウスモノクローナル抗体イソタイピングキットを使用して決定された。以下のサブクラスが決定された。
a)ECE−KLH2004−9/014に向けられるMab(マウス)(1)−サブクラス:IgG 2a、
b)ECE−KLH2004−9/026に向けられるMab(マウス)(2)−サブクラス:IgG 2a、
c)ECE−KLH2004−35/05に向けられるMab(マウス)(1)−サブクラス:IgG 2b、
d)ECE−KLH2004−34/08に向けられるMab(マウス)(2)−サブクラス:IgG 1、
e)ECE−KLH2004−151/013に向けられるMab(マウス)(2)−サブクラス:IgG 1。
【0079】
1f)抗体の製造
比較的大量の抗体を製造するため、相当する細胞クローンを回転フラスコ(Corning Costar GmbH、Germany)に移し、+37℃で、所望の最終容積に増大させた。その後、回転培養懸濁液を、細胞を除去するために0.22μmのフィルターを通して濾過した。無細胞となった抗体溶液を、限外濾過器(カットオフ値30000ダルトン)を使用して濃縮し、精製した。
【0080】
1g)抗体の精製
得られた抗体溶液を0.14Mリン酸バッファ、pH8.6で再バッファ処理し、rProtein A SepharoseTM Fast Flow(Amersham biosciences Europe GmbH、Germany)を充填したクロマトグラフィーカラムに負荷した(精製すべき抗体10mg当たりrProtein A SepharoseTM Fast Flow、1mlを使用した)。非結合成分の全てを0.14Mリン酸バッファ、pH8.6、でカラムを洗浄することによって除去した。結合した抗体は、0.1Mクエン酸、pH3.0でカラムから溶出し、0.05M酢酸ナトリウム+0.5MNaCl+0.05Mトリス+0.01%アジ化ナトリウム、pH7.0で透析した。
【0081】
1h)FSAPマールブルクIサンドイッチELISAに適した抗体の選択
モノクローナル抗FSAPマールブルクI抗体と、FSAP MR I特異的エピトープ[アミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Glu−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号3)を有するペプチド]又は相当するFSAP野生型エピトープ[アミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Gly−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号6)を有するペプチド]の反応を試験した。
【0082】
FSAP MR I特異的ペプチドとの反応
アミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Glu−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号3)を有するペプチドで被覆されたマイクロタイタープレートを固相として使用する。培養上清からの抗FSAP MR I抗体を、その上でインキュベートする。洗浄ステップの後、ウサギポリクローナル抗マウス抗体及び酵素ペルオキシダーゼの抱合体を、これに続く呈色反応と一緒に、ペプチドへの抗体の結合を検出するために使用する。
【0083】
FSAP野生型ペプチドとの反応
アミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Gly−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号6)を有するペプチドで被覆されたマイクロタイタープレートを固相として使用する。培養上清からの抗FSAP MR I抗体を、その上でインキュベートする。洗浄ステップの後、ウサギポリクローナル抗マウス抗体及び酵素ペルオキシダーゼの抱合体を、これに続く呈色反応と一緒に、ペプチドへの抗体の結合を検出するために使用する。
【0084】
アミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Glu−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号3)を有するペプチド(FSAPマールブルクI変異体)と反応するが、同時に、アミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Gly−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号6)を有するペプチド(FSAP野生型)とは反応しない抗体を選択した。当業者に知られた方法(例えば、Nakane conjugation)を採用して西洋ワサビペルオキシダーゼに結合するFSAP MR I特異的抱合抗体を使用するサンドイッチELISAにおける固相抗体として使用するための抗体の適合性を試験した。
【0085】
適合性は、実施例3a)に記載されているようなサンドイッチELISAで試験した。適合性について決定するために必須の基準は、FSAPマールブルクI変異体とFSAP野生型の間の明確な分化、すなわちFSAPマールブルクI変異体を含有する試料での高いシグナル生成と、FSAP野生型でのシグナル生成が無いか、又はごく僅かであることであった。クエン酸塩血漿は好ましい試料である。別の基準は、低い検出限界及び検量線の直線性である。
【0086】
クローンにより産生された抗体:
a)ECE−KLH2004−9/014に向けられるMab(マウス)(1)(DSM ACC2675);
b)ECE−KLH2004−9/026に向けられるMab(マウス)(2)(DSM ACC2676);
c)ECE−KLH2004−35/05に向けられるMab(マウス)(1)(DSM ACC2674);
d)ECE−KLH2004−34/08に向けられるMab(マウス)(2)(DSM ACC2725);及び
e)ECE−KLH2004−151/013に向けられるMab(マウス)(2)(DSM ACC2726)
が、これらの基準に関して最高の結果を示した。
【0087】
実施例2
試料中のFSAPマールブルクI変異体の検出
2a)サンドイッチELISA試験方法
サンドイッチ原理に従って実行された酵素イムノアッセイにおいて、本発明によるモノクローナル抗FSAPマールブルクI抗体と組合せてペルオキシダーゼ抱合抗FSAP抗体が採用された。
【0088】
第1のインキュベーションの間、実際に存在するならば、試料中に存在しているFSAPマールブルクI抗原変異体は、FSAPマールブルクIに対して向けられ、そして微量滴定プレートの穴の表面に固定されている本発明による抗体に結合する。穴が洗浄された後、ハイブリドーマ細胞株DSM ACC2453及びDSM ACC2454(EP 1 182 258 A1)の1つによって形成されたもののようなFSAP MR I変異体の、又は、FSAP野生型タンパク質の任意のエピトープに対して向けられている、ペルオキシダーゼ抱合抗FSAP抗体が第2の結合反応に使用される。過剰の酵素抱合抗体は、洗い流される。穴に結合している酵素活性が、次いで求められる。過酸化水素とテトラメチルベンジジンの酵素反応は、希硫酸を加えることによって停止される。FSAP MR I抗原濃度に比例する色強度は、波長450nmで分光学的に決定され、カットオフを使って定性的に分析されるか、標準からつくられた検量線を使って定量される。そのような本発明によるサンドイッチイムノアッセイは、ただ1つの試験方法で特異的にFSAPマールブルクI変異体を検出する。
【0089】
結果は表1に示される。FSAPマールブルクI多型性を表すヘテロ接合型試験被験者に由来する試料中の顕著な色反応は、本発明による抗体を使用すると、FSAPマールブルクI変異体を、特異的に、かつ信頼性をもって決定することが可能となることを示している。
【0090】
2b)LOCI(登録商標)試験方法
LOCI(登録商標)法の測定原理は、酸素フリーラジカルによってもたらされるケミルミネセンスに基づいている。これに関する前提条件は、反応成分(例えば、ケミルミネセンスラテックス粒子及び光感受性ラテックス粒子)が、空間的に接近していること、この空間的接近が抗原抗体複合体によってもたらされることである。
【0091】
ビオチン抱合抗FSAP抗体が、本発明によるモノクローナル抗FSAPマールブルクI抗体との組合せで、サンドイッチ原理に従って行われる均一LOCI(登録商標)中で使用される。第1のインキュベーションの間、もし実際に存在するならば、血漿試料中に存在するFSAPマールブルクI抗原変異体は、FSAPマールブルクIに対して向けられており、そしてオレフィンを含有するケミルミネセンス粒子の表面に固定されている本発明による抗体に結合する。ビオチン抱合抗FSAP抗体が加えられた後、そして+37℃にて7分間のインキュベーションの後に、表面にストレプトアビジンが固定されている光感受性ラテックス粒子が加えられる。もしFSAPマールブルクI抗原変異体が試料中に存在するならば、抗FSAP MR Iケミルミネセンス粒子、ビオチン抱合抗FSAP抗体及び光感受性ラテックス−ストレプトアビジン粒子は、空間的に接近した複合体を形成する。波長680nmの光で励起すると、光感受性ラテックス粒子は、短寿命一重項酸素を放出し、それは、抗原・抗体複合体によって結合されているケミルミネセンス粒子からルミネセンス/蛍光シグナル(520〜620nm)を発し始める。その不安定性の結果、一重項酸素は、光感受性ラテックス粒子に最接近した(<200nm)位置にあるケミルミネセンス粒子にのみ到達する。放射された光は、備えつけのルミネセンス検出ユニットを有する改変Tecan RSP 150を用いて測定される[Ullmanら(1994),Proc.Natl.Acad.Sci.,91:5426−5430;Ullmanら(1996)、Clinical Chemistry,42:1518−1526]。
【0092】
2c)患者試料中のFSAPマールブルクI変異体の検出
前もって遺伝子型を調べてある試験の被験者から、10血漿試料を調べるために2a)に記載した方法を使用し、一方84血漿試料を調べるために2b)に記載された方法を使用した。5つの試料は、1遺伝子コピーにFSAP遺伝子のコード領域のヌクレオチド1601位(ここで、1は開始コドンのAである)にG/A転位を有し、従って、アミノ酸レベルで、プロ酵素の534位のGly/Gluアミノ酸置換(Gly/Glu534)をもたらす、FSAP MR I多型性のヘテロ接合型保持者である被験者から由来した。さらに5つの試料は、FSAP遺伝子のコード領域のヌクレオチド1601位には変異を有さなかったが、その代わりに、両遺伝子コピーに野生型遺伝子配列(G)を表していた被験者から由来した。
【0093】
表1及び2から見られるように、サンドイッチELISA又はLOCI(登録商標)アッセイにおける本発明による抗体の使用は、FSAP MR I陽性とFSAP MR I陰性試料の明確な区別を可能ならしめる。ハイブリドーマ細胞株DSM ACC2725及びDSM ACC2726によって生成されるモノクローナル抗体は、LOCI(登録商標)アッセイにおける使用に特に適している。300,000カウントのシグナルが、LOCI(登録商標)アッセイにおけるカットオフ値として特定された。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列Glu−Cys−Glu−Lys−Arg(配列番号1)を有する、5から25アミノ酸、好ましくは5から20アミノ酸、非常に特に好ましくは10から15のアミノ酸を含むペプチド。
【請求項2】
アミノ酸配列Ser−Trp−Gly−Leu−Glu−Cys−Glu−Lys−Arg−Pro−Gly−Val−Tyr(配列番号3)を有する請求項1に記載のペプチド、又は少なくともアミノ酸配列Glu−Cys−Glu−Lys−Arg(配列番号1)を有するその断片。
【請求項3】
アミノ酸配列Gln−Asp−Leu−Lys−Lys−Glu−Glu−Phe−His−Glu−Gln−Ser−Phe−Arg−Val(配列番号5)を有するペプチド又は少なくともアミノ酸配列Glu−Glu−Phe−His−Glu(配列番号4)を有するその断片に結合した請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
アミノ酸配列Glu−Cys−Glu−Lys−Arg(配列番号1)を含有するペプチド及びアミノ酸配列Glu−Glu−Phe−His−Glu(配列番号4)を有するペプチドが、ヘテロ二官能性架橋剤又はホモ二官能性架橋剤によって互いに結合している請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
固相及び/又はシグナル生成系の成分に結合した請求項1〜4のいずれかに記載のペプチド。
【請求項6】
免役するための及び/又は抗体を精製するための請求項1又は2記載のペプチドの使用。
【請求項7】
検体、好ましくはFSAPマールブルクI変異体を定量的に又は定性的に検出する方法における請求項1〜5のいずれかに記載されたペプチドの使用。
【請求項8】
FSAPマールブルクI変異体の特徴的なエピトープに特異的に結合する抗体。
【請求項9】
モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
請求項1から2のいずれかに記載されたペプチドに特異的に結合する請求項8又は9に記載の抗体。
【請求項11】
ハイブリドーマ細胞株DSM ACC2674、DSM ACC2675、DSM ACC2676、DSM ACC2725及びDSM ACC2726の1つによって産生される請求項8〜10のいずれかに記載の抗体。
【請求項12】
固相及び/又はシグナル生成系の成分に結合した請求項8〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項13】
医薬として許容される、滅菌された注射媒体中にある請求項8〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項14】
検体、好ましくはFSAPマールブルクI変異体を定量的に又は定性的に検出する方法における請求項8〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項15】
検体、好ましくはFSAPマールブルクI変異体を定量的に又は定性的に検出するための均一結合試験における請求項8〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項16】
アフィニティクロマトグラフィにおける請求項8〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項17】
診断薬として又は診断薬の成分としての請求項8〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項18】
請求項1〜5のいずれかに記載された1つ又はそれ以上のペプチド及び/又は請求項8〜12のいずれかに記載された1つ又はそれ以上の抗体を含有する試薬。
【請求項19】
請求項1〜5のいずれかに記載された1つ又はそれ以上のペプチド及び/又は請求項8〜12のいずれかに記載された1つ又はそれ以上の抗体を含む検査キット。
【請求項20】
FSAPマールブルクI血漿プールも含む請求項19記載の検査キット。
【請求項21】
請求項8〜11のいずれかに記載の抗体を産生する動物、植物、真菌又は原核細胞及び単離されたヒト細胞。
【請求項22】
請求項21に記載のハイブリドーマ細胞株。
【請求項23】
受託番号DSM ACC2675、DSM ACC2676、DSM ACC2674、DSM ACC2725及びDSM ACC2726のいずれかでDSMZに寄託された請求項22記載のハイブリドーマ細胞株。
【請求項24】
請求項1〜5のいずれかに記載された1つ又はそれ以上のペプチド及び/又は請求項8〜12のいずれかに記載された1つ又はそれ以上の抗体を使用する試料中のFSAPのマールブルクI変異体を定量的又は定性的に検出する方法。
【請求項25】
請求項8〜12のいずれかに記載の抗体が、FSAPのマールブルクI変異体に特異的ではあるが、該変異体を特徴付けるものではないFSAPマールブルクI変異体のエピトープに結合する抗体と組合せて使用される請求項24記載の方法。

【公開番号】特開2006−83166(P2006−83166A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−240653(P2005−240653)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(398032751)デイド・ベーリング・マルブルク・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (36)
【Fターム(参考)】