VOCガス処理装置及びフィルタクリーニング方法
【課題】塗料ミストに含まれる無機成分の堆積を抑制し得て、クリーニング作業負担を軽減することができるばかりでなく、フィルタ濾材の目詰まりに伴うフィルタ圧力損失の増加を抑えつつ長期の連続稼働を実現することができるVOCガス処理装置を提供する。
【解決手段】円筒状の吸着カートリッジ5に収納された吸着フィルタユニット14は、円筒形状のフィルタ濾材18と、フィルタ濾材18を包囲するようにフィルタ濾材18の外径よりも大径な内径を有する円筒状の掻き取り部材19と、フィルタ濾材18の稜線付近の外周面と掻き取り部材19の内周面とが接触するように掻き取り部材19を変位可能に支持するクリップ21並びに金網保持部材22とを備えている。
【解決手段】円筒状の吸着カートリッジ5に収納された吸着フィルタユニット14は、円筒形状のフィルタ濾材18と、フィルタ濾材18を包囲するようにフィルタ濾材18の外径よりも大径な内径を有する円筒状の掻き取り部材19と、フィルタ濾材18の稜線付近の外周面と掻き取り部材19の内周面とが接触するように掻き取り部材19を変位可能に支持するクリップ21並びに金網保持部材22とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷・塗装工場等で使用されるインクや塗料に含まれるベンゼン・キシレン・トルエン等の揮発性有機化合物(以下、「VOC」と称する)を除去処理するVOCガス処理装置及びフィルタクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、塗装工場・印刷工場・化学工場等にあっては、インク・塗料・接着剤等の原料の化学物質に起因して、ベンゼン・キシレン・トルエン等の様々なVOCガスが発生する。
【0003】
このようなVOCガスは、悪臭公害や光化学オキシダント生成防止といった観点から、VOCガス処理装置を用いて無害化処理を行なっている。
【0004】
また、VOCガス処理装置としては、吸着ユニットを収納した複数の吸着カートリッジを環状に配置したロータを備えていると共に、このロータを間欠回転させつつ吸着カートリッジの一端口から塗料ミスト等の微粒子を含んだ排ガスを導入し、吸着ユニットにより可燃性VOC並びに微粒子を吸着するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この際、VOCガス処理装置は、ロータの回転領域中に熱風を導入して溶剤を脱離させる溶剤脱離ステーション部と、吸着ユニットに付着した塗料ミスト等を焼却又は減量処理する微粒子処理ステーション部と、を設け、有機溶剤の吸着/脱離の再生サイクルを形成すると共に、付着した塗料ミストの消滅または減量によって吸着カートリッジの目詰まりを抑制し、カートリッジ寿命の延長化を実現している。
【0006】
また、このようなVOCガス処理装置の吸着ユニットに使用されるVOCガス除去用フィルタとしては、無機質の繊維を用いて円筒状とした内外2層構造とし、これ等内外各層の何れか一方の層体内に合成ゼオライトを担持させることにより、耐熱・耐久性を維持しつつ、高温風を用いて吸着したVOCガスの除去並びに付着した塗料の熱分解による再生を可能とした技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−281089号公報
【特許文献2】特開2008−049287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、印刷・塗装工場等でVOCガス処理装置を用いてVOCガスを吸着/脱離させる際には、微粒子処理ステーション部において、500℃程度の高温ガスで加熱する事で塗料ミストに含まれる有機成分を気化することで除去・減量することができるが、塗料ミストに含まれる一部の無機成分だけは高温ガスで気化することができず、VOCガス除去用フィルタに付着したまま次第に堆積してしまうという問題が生じていた。
【0008】
また、対象物に印刷又は塗装を行う際に有機系樹脂塗料を用いた場合、印刷又は塗装後の対象物における耐候性・耐酸性・耐熱性・耐摩耗性を持たせるためには、適度な無機成分を含ませる必要がある。
【0009】
この無機成分は、通常の有機成分よりもそれ自身が耐熱性を有しているため、上述したような塗料ミストの除去・減量過程では除去することが困難で、熱分解することができない塗料ミストに含まれる無機成分は、VOCガス除去用フィルタの表面に付着したままとなってフィルタ圧力の損失を上昇させてしまうという問題も生じていた。
【0010】
従って、VOCガス除去用フィルタにあっては、定期的に付着した無機成分を取り除くためにフィルタクリーニングを実施する必要があった。
【0011】
具体的には、VOC処理装置から吸着フィルタカートリッジを取り外した後、この吸着フィルタカートリッジを分解して内部の吸着フィルタユニットを取り出すことにより、表面に固着した無機成分を掻き落として吸引する等の作業を行っていた。
【0012】
さらに、このような取り外し・分解・吸引といった煩雑な作業は、複数の吸着フィルタカートリッジの全てに対して行う必要があるため、クリーニング作業者の作業負荷が大きいばかりでなく、印刷や塗装作業の効率低下の要因ともなっていた。
【0013】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、塗料ミストに含まれる無機成分の堆積を抑制し得て、クリーニング作業負担を軽減することができるばかりでなく、フィルタ濾材の目詰まりに伴うフィルタ圧力損失の増加を抑えつつ長期の連続稼働を実現することができるVOCガス処理装置及びフィルタクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のVOCガス処理装置は、吸着フィルタユニットを収納した円筒状の吸着カートリッジと、該吸着カートリッジを周方向に複数隣接配設したロータと、該ロータを回転させる駆動装置と、を備え、前記ロータを間欠回転させつつ前記複数の吸着カートリッジに原料化学物質に含まれるVOCガスを供給してVOCガスを処理するVOCガス処理装置において、前記吸着フィルタユニットは、円筒形状のフィルタ濾材と、該フィルタ濾材を包囲するように該フィルタ濾材の外径よりも大径な内径を有する円筒状の摺接部材と、前記フィルタ濾材の稜線付近の外周面と前記摺接部材の内周面とが接触するように前記摺接部材を変位可能に支持する支持部材と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明のVOCガス処理装置によれば、フィルタ濾材の外周に原材料に含まれる除去し難い無機成分が固着・残留しようとした場合に、フィルタ濾材の外表面と摺接部材の内周面との摺動によってフィルタ濾材の外表面に付着した無機成分を除去することができ、フィルタ濾材の目詰まりに伴う圧力損失の増加を抑制することができる。
【0016】
また、前記ロータの回転に連動する前記吸着カートリッジの回転姿勢変化に伴う前記吸着フィルタユニットの位相ズレを維持して前記ロータの一回転中に前記吸着フィルタユニットの稜線を360度変位させる振子部材を備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明のVOCガス処理装置によれば、振子部材によって前記ロータの一回転中における前記吸着カートリッジの回転姿勢変化に伴う前記吸着フィルタユニットを360度で位相ズレさせることにより、フィルタ濾材の全外表面に付着した無機成分を満遍なく除去することができる。
【0018】
さらに、前記振子部材は、前記ロータの一回転方向に対する前記吸着フィルタユニットの位相ズレを許容し且つ前記ロータの他回転方向に対する前記吸着フィルタユニットの位相ズレを阻止するロック部材を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明のVOCガス処理装置によれば、ロータの回転方向が正転方向の際と逆転方向の際とでフィルタ濾材の外表面と摺接部材の内周面との摺動が往復してしまうことを防止し得て、VOC吸着運転中には摺動させず、それ以外のクリーニング運転時のみ摺動させることで、効率良く無機成分のみを除去することができる。
【0020】
また、前記吸着カートリッジには複数の吸着フィルタユニットが収納され、該複数の各吸着フィルタユニットに前記振子部材が設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明のVOCガス処理装置によれば、各吸着フィルタユニットに設けた振子部材により、独立してフィルタ濾材の外表面と摺接部材の内周面とを摺動させることができる。
【0022】
さらに、前記吸着カートリッジには複数の吸着フィルタユニットが収納され、該複数の吸着フィルタユニットが、一つの前記振子部材によって連動・連結されていることを特徴とする。
【0023】
本発明のVOCガス処理装置によれば、一つの吸着フィルタユニットに設けた振子部材により、複数の吸着フィルタユニットを連動してフィルタ濾材の外表面と摺接部材の内周面とを摺動させることができる。
【0024】
本発明のVOCガス処理装置のフィルタクリーニング方法は、吸着フィルタユニットを収納した円筒状の吸着カートリッジを周方向に複数隣接配設したロータを間欠回転させつつ前記複数の吸着カートリッジに原料化学物質に含まれるVOCガスを供給してVOCガスを処理すると共に、前記ロータの回転に伴う前記吸着カートリッジの回転姿勢変化に連動して前記吸着フィルタユニットを構成する円筒形状のフィルタ濾材の位相をズラすと同時に、該フィルタ濾材を包囲する円筒状の摺接部材の内周面を前記フィルタ濾材の稜線付近の外周面に接触させて前記フィルタ濾材の外周面をクリーニングすることを特徴とする。
【0025】
本発明のVOCガス処理装置のフィルタクリーニング方法によれば、フィルタ濾材の外周に原材料に含まれる除去し難い無機成分が固着して残留しても、摺接部材の摺動によってフィルタ濾材表面に付着した無機成分を除去することができ、フィルタ濾材の目詰まりに伴う圧力損失の増加を抑制することができる。
【0026】
また、前記ロータが一回転方向に回転している際にのみ前記フィルタ濾材の位相をズラして前記摺接部材の内周面を前記フィルタ濾材の稜線付近の外周面に摺接させることを特徴とする。
【0027】
本発明のVOCガス処理装置のフィルタクリーニング方法によれば、例えば、VOC吸着運転時と同方向のロータ回転時にはフィルタ濾材の外周面に対する摺接部材の摺接を停止して吸引・吸着中のVOCガスをフィルタ濾材の表面に擦り付けることを抑制し、VOC吸着運転時のロータ回転方向とは逆方向のロータ回転時にのみフィルタ濾材の外周面に対して摺接部材を摺接させて摺接部材の摺動によってフィルタ濾材表面に付着した無機成分を除去することができ、フィルタ濾材の目詰まりに伴う圧力損失の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のVOCガス処理装置及びフィルタクリーニング方法は、塗料ミストに含まれる無機成分の堆積を抑制し得て、クリーニング作業負担を軽減することができるばかりでなく、フィルタ濾材の目詰まりに伴うフィルタ圧力損失の増加を抑えつつ長期の連続稼働を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施形態は本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
【0030】
以下、本発明に係るVOCガス処理装置に係る一実施の形態を図面と共に説明する。
【0031】
(VOCガス処理装置)
先ず、図1に基づいて、本発明に係るVOCガス処理装置のシステム構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置のシステム構成を示すブロック説明図である。
【0032】
図1において、本発明のVOCガス処理装置1は、回転可能なロータ2を備えている。
【0033】
ロータ2は、図示を略する塗装ブース等から未処理ガス(排ガス)を吸込ダクトD1で取り込んで排ガス中に含まれる可燃性の揮発性有機化合物や微粒子等を吸着する吸着ステーション部Vと、150〜200℃に加温された熱風を導入して排ガス中に含まれる有機溶剤を脱離させる溶剤脱離ステーション部Wと、550〜600℃の高温に加熱された熱気を導入して塗料ミスト等の微粒子を焼却又は減量処理する微粒子処理ステーション部Xと、が配置されている。
【0034】
吸着ステーション部Vに吸引する未処理ガスは、有機溶剤を吸着処理した後の清浄ガスを排出ダクトD2から外部に排出するための第1排気ファンF1によって吸引される。
【0035】
溶剤脱離ステーション部Wに導入される熱風は、第1ヒータH1によって有機溶剤の沸点以上である150〜200℃に加温されて溶剤脱離ステーション入口ダクトD3から導入される。また、溶剤脱離ステーション部Wにより脱離された有機溶剤を含んだ空気は溶剤脱離ステーション出口ダクトD4から触媒の燃焼可能な200〜250℃に加熱する第2ヒータH2へと送られる。
【0036】
微粒子処理ステーション部Xには、第2ヒータH2によって加熱された脱離有機溶剤を含んだ空気を触媒部Cで550〜600℃に燃焼分解した後の高温ガスが微粒子処理ステーション入口ダクトD5から導入される。また、微粒子処理ステーション部Xで微粒子を処理した後の高温ガスは微粒子処理ステーション出口ダクトD6から熱交換器HEへと送られる。
【0037】
尚、第2ヒータH2と触媒部Cとは脱離溶剤燃焼部を構成している。また、熱交換器HEは、放熱側で400℃から40℃に冷却処理された排ガスが第2排気ファンF2から排気され、受熱側で大気を150℃に加温したうえで第1ヒータH1に導入される。
【0038】
(ロータ2の構成)
次に、図2乃至図4に基づいて、ロータ2の具体的な構成を説明する。
【0039】
図2は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用されるロータの斜視図、図3は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用されるロータの分解斜視図、図4は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用されるロータの正面図である。
【0040】
図2乃至図4において、ロータ2は、筐体状に組み合わされたフレーム3に支持・包囲されており、離間状態で対向する一対の円板状のロータプレート4,4と、一対のロータプレート4,4間に挟持されるように周縁部に沿って環状に隣接配置された複数の吸着カートリッジ5…と、一対のロータプレート4,4を回転させる回転軸6と、一対のロータプレート4,4の各外側にそれぞれ位置して吸込ダクトD1に連通された吸気用チャンバー7並びに排出ダクトD2に連通された排気用チャンバー8と、を備えている。また、ロータ2は、モータ9(図4参照)の駆動によって回転軸6を回転中心として回転する。この際、ロータ2は、図4の時計回り方向Nに回転し、その1回転中(例えば、所要時間24分間)でVOCガスの吸着/脱離サイクルを実現している。
【0041】
尚、図4において、背面側に位置する構成部材の符号を正面側に位置する構成部材の符号に括弧書きで付している。
【0042】
また、上述したロータ2の回転は、間欠的に行われ、例えば、数分間の吸着動作/脱離サイクル毎に第1排気ファンF1が吸引稼働すると共に、ロータ2が一定角度(例えば、30度)毎に回転・停止するといった間欠回転動作が繰り返される。
【0043】
(ロータプレート4の構成)
各ロータプレート4,4には、例えば、12個の連通口4a…と短尺管(スペーサ)4bとが同軸上に配置され、各ロータプレート4,4の連通口4a…同士を対向させた状態で12個の吸着カートリッジ5…をロータプレート4,4間で挟持する。
【0044】
また、各チャンバー7,8は、この12個の連通口4a…のうち、回転中の下死点寄り2個を除いた10個を外方から覆うようにフレーム3に支持されている。また、各チャンバー7,8の内壁面には、その10個の連通口4a…と連通する環状の開口部7a,8aが形成されている。
【0045】
これにより、本実施の形態では、12個の吸着カートリッジ5…は、VOCガスの吸着/脱離サイクルとして、下死点に位置したときの2個を除いた10個を吸着ステーション部Vとして利用し、下死点に位置したときの2個のうちの一方(ロータ回転方向上流側)を溶剤脱離ステーション部W、他方(ロータ回転方向下流側)を微粒子処理ステーション部Xとして利用する。
【0046】
尚、VOCガスの吸着/脱離サイクルにおけるロータ2の回転中において、溶剤脱離ステーション部Wに位置したときの連通口4a…は各ダクトD3,D4と連通され、微粒子処理ステーション部Xに位置したときの連通口4a…は各ダクトD5,D6と連通される。
【0047】
また、吸着カートリッジ5…は、ロータ2の周縁部で固定されている。従って、各吸着カートリッジ5…の上死点(稜線)に位置する部分は、ロータ2の1回転サイクル中において、その回転姿勢が360度ズレるように変位する。
【0048】
ところで、溶剤脱離ステーション部Wと微粒子処理ステーション部Xとして利用する連通口4a…の位置は、上述した下死点に位置したときに限定されるものではないが、少なくとも隣接する2個の連通口4a…を利用する。
【0049】
また、吸着ステーション部Vとして利用する連通口4a…の数を9個とし、微粒子処理ステーション部Xの次サイクル位置に、吸着カートリッジ5…の内部に冷風を導入して冷却する冷却ステーション部を配置しても良い。
【0050】
(吸着カートリッジ5の構成)
次に、図5乃至図8に基づいて、吸着カートリッジ5の具体的な構成を説明する。
【0051】
図5は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの分解斜視図、図6は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの正面図(吸気側)、図7は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの背面図(排気側)、図8は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの断面図である。
【0052】
図5乃至図8において、吸着カートリッジ5…は、両端に環状の外側フランジ10a(吸気側)並びに内側フランジ10b(排気側:図8参照)を一体に形成すると共に把手11を固定した円筒形状の筒体10と、この筒体10の両端を閉成する蓋体12,13と、筒体10に内装されて蓋体12,13に挟持される複数の吸着フィルタユニット14…と、を備えている。
【0053】
尚、蓋体12,13は、ネジ15…及びネジ16…によって筒体10の各フランジ10a,10bに固定されていると共に、それぞれ複数の通気孔12a…及び通気孔13a……が形成されている。また、吸着フィルタユニット14…は、蓋体12側にてボルト17…によって固定されている。さらに、蓋体13の内側には、吸着フィルタユニット14…の一端側を支持するために、通気孔13a…を取り巻くように突出された環状フランジ13b…が形成されている。
【0054】
これにより、吸着カートリッジ5…は、VOC吸着動作時には蓋体12の通気孔12a…より筒体10内に塗料ミストが導入され、吸着フィルタユニット14…を通過して蓋体13の通気孔13a…より濾過された空気が排出される(図8の矢印参照)。
【0055】
(吸着フィルタユニット14…の構成)
次に、図9乃至図11に基づいて、吸着フィルタユニット14…の具体的な構成を説明する。
【0056】
図9は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの分解斜視図、図10は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの正面図(吸気側)、図11は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの断面図である。
【0057】
図9乃至図11において、吸着フィルタユニット14…は、外層材18aと内層材18bとで円筒状とされたフィルタ濾材18と、フィルタ濾材18の外周を包囲する円筒状の摺接部材としての掻き取り部材19と、フィルタ濾材18の一端側を保持する有底円筒形状のフィルタ保持部材20と、掻き取り部材19の一端側を複数(例えば、4つ)のクリップ21を介して保持すると共にフィルタ保持部材20の中心から突出された軸部20aが貫通する有底円筒形状の金網保持部材22と、から構成されている。
【0058】
フィルタ濾材18は、例えば、外層材18aは多結晶アルミナファイバー等のガラス繊維フィルタから構成された塗装ミスト除去用とされ、内層材18bはゼオライトを胆持させたセラミックフィルタから構成されたVOC吸着用とされている。
【0059】
掻き取り部材19は、比較的目の粗い金網状のものが用いられ、フィルタ濾材18の外径よりも大きい内径とされ、これにより、掻き取り部材19の自重によりフィルタ濾材18の外表面の上死点と接触する。
【0060】
フィルタ保持部材20は、その中心の軸部20aで金網保持部材22からカバー28に至る各部材を支持することで、掻き取り部材19を除く中心軸を規定する。
【0061】
一方、各吸着フィルタユニット14…には、それぞれ独立した振子ユニットFが設けられている。
【0062】
この振子ユニットFは、フィルタ保持部材20と金網保持部材22との間に介在されて軸部20aが貫通するワッシャ(スペーサ)23と、金網保持部材22の外側(吸気側)で軸部20aが貫通する略半円形状の大振子24と、大振子24の回転中心と同軸上で大振子24に固定された小振子押え板25と、大振子24と小振子押え板25との間で一端が揺動可能に支持された小振子26と、小振子26の自由端が係止する複数(例えば、12ヶ所)の爪部27a…を回転中心側に向けて突出させた環状の係止輪部材27と、大振子24・小振子押え板25・係止輪部材27を金網保持部材22とで挟持するカバー28とを備えている。
【0063】
大振子24は、比重の高い材質を用いて略半円形状(扇形状)に形成され、軸部20aに吊り下げられることによって、自重により常に下向きに懸架した姿勢を維持するようになっている。
【0064】
小振子押え板25は、薄肉金属板等から略小判型を呈しており、その一端側には軸部20aが貫通する貫通孔25aが形成され、その他端寄りには小振子26の一端を支持する支持孔25bが形成されている。
【0065】
小振子26は、大振子24と小振子押え板25との間で軸状の一端が支持され、その他端(自由端)が爪部27a…に係合可能となっている。この際、小振子26の姿勢は、爪部27a…に対して一回転方向のみで係合し、他回転方向では爪部27a…に乗り上げるラチェット関係にある。尚、大振子24には、小振子26の揺動範囲を規定する凹部24a…が形成されている。
【0066】
(掻き落し動作(クリーニング動作)の説明)
次に、本発明の実施例の吸着フィルタユニット14…を用いた掻き落し動作(クリーニング動作)の説明をする。
【0067】
図12及び図13は、本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの要部の動作説明図である。
【0068】
尚、ここでは、ロータ2(図12ではロータプレート4で図示)に配置された吸着カートリッジ5…のうち、例えば、図4で示した三時付近に位置するもので説明する。
【0069】
図12に示すように、吸着カートリッジ5の内部に配置された3本の吸着フィルタユニット14…において、ロータ2の回転方向が時計回り方向Nの時、吸着カートリッジ5の回転姿勢変化に連動して係止輪部材27も時計回り方向Nと同じ時計回り方向Mに位相がズレようとすると、小振子26の先端は係止輪部材27の爪部27a…によって押し上げられるだけであるため、係止輪部材27の位相ズレが許容される。
【0070】
これにより、係止輪部材27に連結した掻き取り部材19も時計回り方向Mに回転することができるため、結果的にはフィルタ濾材18も時計回り方向Mに回転する(姿勢を変える)ため、掻き取り部材19の内表面とフィルタ濾材18の外表面との間には、摺動が殆ど発生しない。
【0071】
一方、図13に示すように、ロータ2の回転方向が反時計回り方向−Nの時、吸着カートリッジ5の回転姿勢変化に連動して係止輪部材27も反時計回り方向−Mに位相がズレようとすると、係止輪部材27の爪部27a…部と小振子26の先端とが当接して引っ掛かり、それ以上の係止輪部材27の反時計回り方向−Mへの位相ズレが阻止される。これは、大振子24の自重によるモーメントの範囲内であり、それ以上の回転力を与えない限り、大振子24の姿勢と一体で係止輪部材27はその姿勢を維持しようとする。
【0072】
これにより、係止輪部材27と一体的に回転する掻き取り部材19も同様にその場での姿勢を維持するため、掻き取り部材19はその自重分でフィルタ濾材18の外表面の稜線部分に自重を作用させながらその場に停止する。
【0073】
従って、フィルタ濾材18の反時計回り方向−Nの回転に伴い、結果的には掻き取り部材19の内表面とフィルタ濾材18の外表面との間には、摺動が発生する。
【0074】
よって、VOC吸着/脱離サイクルの何回かに一回は、無機成分除去のためにロータ2を逆転させるクリーニング運転を実施することによって、フィルタ濾材18の外表面に付着・固化した無機成分を掻き取り部材19の摺擦によってクリーニング作用で掻き落とし、フィルタ濾材18外表面に無機成分が残留してしまうことが抑制され、フィルタ圧力損失が増加することなく、寿命の長いVOC吸着/脱離サイクルを実現することができる。
【0075】
尚、VOC吸着/脱離サイクルであるロータ2の時計回り方向Nの時に、常に掻き取り部材19の内表面とフィルタ濾材18の外表面とを摺動させると、塗料ミストをフィルタ濾材18の外表面に擦り付けながら吸着運転することとなって圧力損失が増加する虞がある。
【0076】
従って、本実施の形態においては、ロータ2の回転方向(N,−N)によって、フィルタ濾材18と掻き取り部材19との摺動の有無を選択的に切り換えることとした。
【0077】
(実施例)
上記の構成において、吸着カートリッジ5…が溶剤脱離ステーションWに位置した場合には、第1ヒータH1から溶剤脱離ステーション入口ダクトD3を経由して導入された約200℃のガスによりVOC成分のみが脱離され、触媒によって分解される。
【0078】
その後、吸着カートリッジ5…が微粒子処理ステーションXに位置した場合には、触媒部Cから微粒子処理ステーション入口ダクトD5を経由して導入される高温ガスによって流れが逆になり、内層材18bの内側からその約500℃の高温ガスが外層材18aの外表面へと流れ、外層材18aの外表面に付着している塗料を高温ガスで加熱することで有機成分が気化されて除去される。
【0079】
ところが、VOCを吸着/脱離させるにあたり、微粒子処理ステーションXにおいて500℃程度の高温ガスで加熱することで塗料ミストに含まれる有機成分は気化による除去・減量を行うことができるが、塗料ミストに含まれる一部の無機成分だけは高温ガスでは気化することができず、フィルタ濾材18の表面に付着したまま次第に堆積してしまう。
【0080】
これは有機系機樹脂塗料においても、印刷・塗装後の耐候性・耐酸性・耐熱性・耐摩耗性を持たせるために、適度な無機成分が含まれており、この無機成分は通常の有機成分よりもそれ自身が耐熱性を有しているために、塗料ミストの除去・減量過程では除去することができず、熱分解ができない塗装ミスト中の無機物はフィルタ濾材18に表面に付着し、フィルタ圧力損失を上昇させる。
【0081】
そこで、本実施の形態においては、2層のフィルタ濾材18の外表面に、ほぼ同心状でフィルタ濾材18の外径よりも若干大きい内径を有する円筒状の掻き取り部材19の内表面を摺り合わせている。
【0082】
これにより、VOC吸着時には掻き取り部材19のメッシュ(金網)を通して吸着動作が実行され、フィルタ濾材18に表面に付着して徐々に堆積しようとする無機物は、フィルタ圧力損失を上昇させることが無いように、ロータ2の回転方向が通常動作である時計回り方向Nとは逆の反時計回り方向−Nの回転の際に、掻き取り部材19によってフィルタ濾材18の外表面付着物を掻き取ることができる。
【0083】
図14(A)は掻き取り部材19を用いなかった場合のフィルタ濾材18の圧力損失と稼働時間との関係で示したグラフ図、図14(B)は掻き取り部材19を用いた場合のフィルタ濾材18の圧力損失と稼働時間との関係で示したグラフ図である。
【0084】
図14(A)に示すように、掻き取り部材19を用いなかった場合のフィルタ圧力損失値は初期損失に比べて数倍以上に上昇し、フィルタ交換予定として設定された稼働時間に達する前に、圧力損失上昇許容値を大きく上回ってしまう。
【0085】
これに対し、図14(B)に示すように、本発明の掻き取り部材19を用いた場合のフィルタ圧力損失値は、フィルタ交換予定として設定された稼働時間までに圧力損失上昇許容値に達することがなく、結果的に寿命が延びて実際の交換頻度を少なくすることができる。
【0086】
尚、図14の各稼働時間は、実際に吸着/脱離サイクル稼働運転を行っている時間を積算したものであるが、吸着/脱離サイクル稼働を23時間稼働し、1時間クリーニングをおこなうといった割合でクリーニング行程を入れながら稼働した事例であり、図14のグラフ図上では吸着/脱離サイクル稼働時間以外のクリーニング時間は入れず、吸着/脱離サイクル稼働時間が同じ場合でのフィルタ圧力損失の変化で示している。
【0087】
(他の実施の形態)
図15乃至図19は、本発明の他の実施形態を示す。
【0088】
図15は本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの分解斜視図、図16は本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの正面図(吸気側)、図17は本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの要部の断面図、図18は本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される周辺配置用の吸着フィルタユニットの要部の断面図、図19は本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される中央配置用の吸着フィルタユニットの要部の断面図である。
【0089】
上記実施の形態で示した吸着カートリッジ5…では、内部に3本の吸着フィルタユニット14…を配置すると共に、各吸着フィルタユニット14…に振子ユニットFを設けたものを開示したしたが、この他の実施の形態の吸着カートリッジ35…は、内部に7本の吸着フィルタユニット14…を配置すると共に、これら7本の吸着フィルタユニット14…に対して1つの振子ユニットF'を設けたものである。
【0090】
尚、吸着フィルタユニット14…の構成は、上記実施の形態と実質的に同一構成であるため、ここでは同一の符号を付して、その説明を省略する(図18,図19参照)。
【0091】
(吸着カートリッジ35の構成)
吸着カートリッジ35…は、上記実施の形態と同様に、ロータ2の周縁部12箇所に各々固定されている。従って、各吸着カートリッジ35…の上死点(稜線)に位置する部分は、ロータ2の1回転サイクル中において、その回転姿勢が360度ズレるように変位する。
【0092】
図15乃至図17において、吸着カートリッジ35…は、両端に環状の外側フランジ40a(吸気側)並びに内側フランジ(排気側:図示せず)を一体に形成すると共に把手41を固定した円筒形状の筒体40と、この筒体40の両端を閉成する蓋体42,43と、筒体40に内装されて蓋体42,43に挟持される複数(ここでは7本)の吸着フィルタユニット14…と、を備えている。
【0093】
尚、蓋体42,43は、ネジ(図示せず)によって筒体40に固定されていると共に、それぞれ複数の通気孔42a…及び通気孔43a…が形成されている。また、吸着フィルタユニット14…は、蓋体42側にてボルト(図示せず)によって固定されている。さらに、蓋体43の内側には、吸着フィルタユニット14…の一端側を支持するために、通気孔43a…を取り巻くように突出された環状フランジ43b…が形成されている。
【0094】
これにより、吸着カートリッジ35…は、VOC吸着動作時には蓋体42の通気孔42a…より筒体40内に塗料ミストが導入され、吸着フィルタユニット14…を通過して蓋体43の通気孔43a…より濾過された空気が排出される。
【0095】
一方、各吸着フィルタユニット14…は、一つの振子ユニットF'によって連動して回転する。
【0096】
この振子ユニットF'は、筒体40の内側周囲に配置された6つの吸着フィルタユニット14…に対して金網保持部材22の外側(吸気側)に位置するように軸部20aに支持された複数の従動歯車44…(図18参照)と、筒体40の中心に配置された1つの吸着フィルタユニット14…に対して金網保持部材22の外側(吸気側)に位置し且つ各従動歯車44…と噛み合う環状の爪歯車45…(図19参照)と、各爪歯車45…の内側に形成された複数(例えば、12個)の爪部45a…の内側に位置するように軸部20aに支持された小振子軸受部材46と、小振子軸受部材46と協働して小振子47を支持する小振子押え板48と、小振子押え板48の一端に固定されて軸部20aが貫通する円筒形状のカラー(軸受)49と、カラー49に支持されたカバー円板50と、筒体40の内側周囲に配置された6つの吸着フィルタユニット14…を支持する取付枠51と、カラー49に支持された大振子52と、を備えている。
【0097】
小振子軸受部材46は、金属板等から略小判型を呈しており、その一端側にはカラー49の端部が嵌合する貫通孔46aが形成され、その他端寄りには小振子47の軸状の一端を支持すると共に小振子47の揺動範囲を規定する凹部46bが形成されている。
【0098】
小振子47は、小振子軸受部材46と小振子押え板48との間で軸状の一端が支持されていると共に、その他端(自由端)が爪部45a…と係合可能となっている。この際、小振子47の姿勢は、爪部45a…に対して一回転方向のみで係合し、他回転方向では爪部45a…に乗り上げるラチェット関係にある。
【0099】
小振子押え板48は、薄肉金属板等から略小判型を呈しており、その一端側にはカラー49が固定され、その他端寄りには小振子47の一端を支持する支持孔48aが形成されている。
【0100】
取付枠51は爪歯車45…の外径よりも大径なリング状を呈していると共に、放射状に突出され且つ先端が蓋体42側(吸気側)に屈曲して蓋体42と係合する複数の係合爪部51a…が形成されている。尚、この係合爪部51a…の蓋体42側(吸気側)への屈曲は、少なくとも大振子52の厚さ以上とされる。
【0101】
大振子52は、比重の高い材質を用いて扇形状に形成され、カラー49を介して筒体40の中心に位置する吸着フィルタユニット14…の軸部20aに吊り下げられることによって、自重により常に下向きに懸架した姿勢を維持するようになっている。
【0102】
ところで、吸着カートリッジ35…の内部の吸着フィルタユニット14…は本数が多ければ多いほどVOCの吸着量が増えて効率化するが、吸着フィルタユニット14…の設置本数を吸着カートリッジ35…の内部に納めるには限界があるうえ、各吸着フィルタユニット14…に振子ユニットFを配置したのでは、部品コストが高騰するうえ、大振子24の数だけ重量が増してしまう。
【0103】
そこで、本発明の他の実施例においては、例えば1つの吸着カートリッジ35に7本の吸着フィルタユニット14…を収め、そのうちの筒体40の中心に配置した吸着フィルタユニット14…に対してのみ大振子52と小振子47とを配置すると共に、筒体40の周囲に配置した吸着フィルタユニット14…に対しては従動歯車44…のみを設け、筒体40の中心に配置した吸着フィルタユニット14…に連動させる構成を採用した。
【0104】
これにより、筒体40の中心に配置した吸着フィルタユニット14…の掻き取り部材19の姿勢と他の吸着フィルタユニット14…の掻き取り部材19の姿勢とは、各歯車44…及び爪歯車45…を介して連動され、常に同じ位相を維持することができる。
【0105】
この際、各掻き取り部材19と外層材18aとの摺動負荷よりも大きいモーメントを発生させるように、大振子52の大きさと重量とを考慮する必要があるが、少なくとも、7つの大振子24を配置する場合よりも軽量化を実現しつつ、小振子47と爪部45a…との関係においては上記実施の形態と同様の効果を奏することができ、個々の吸着フィルタユニット14…に独立した振子ユニットFを配置する場合に比べて全体的な部品点数を増やさずに多数の吸着フィルタユニット14…のクリーニングを実施することができる。
【0106】
尚、掻き取り部材19の開口率や太さは適宜選択すれば良く、掻き取り部材19の自重だけでは無機成分の掻き落としが不十分な場合には、掻き取り部材19の外周に錘を円周方向に均等配置することによって、フィルタ濾材18の外周の頂上部に作用する加圧力が増加し、掻き取り効果をより一層確保することも可能である。
【0107】
尚、上記各実施の形態で示したVOCガス処理装置1におけるフィルタ濾材18のクリーニング稼働時には、各ファンF1,F2並びに溶剤脱離ステーション部Wや微粒子処理ステーション部Xと連通する各ヒータH1,H2及び熱交換器HE等は、吸着/脱離稼働時と同様に稼働を続けているが、印刷・塗装行程では休止した状態となる。
【0108】
従って、フィルタ濾材18のクリーニング稼働時に掻き落とされた無機成分の粉塵は、微粒子処理ステーション部Xにおいて逆方向の空気の流れによってフィルタカートリッジとしての吸着カートリッジ5…(又は吸着カートリッジ35…)の外部に排出されることになり、その排出流路内には無機成分を回収・排気する別途のフィルタ等が搭載されているか、若しくはクリーニング稼働時のみ、別途のフィルタを排出流路内に介在させる等の対応がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置のシステム構成を示すブロック説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用されるロータの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用されるロータの分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用されるロータの正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの分解斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの正面図(吸気側)である。
【図7】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの背面図(排気側)である。
【図8】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの分解斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの正面図(吸気側)である。
【図11】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの正方向回転時における要部の動作説明図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの逆方向回転時における要部の動作説明図である。
【図14】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置における圧力損失と稼働時間との関係のグラフ図で、(A)は掻き取り部材を用いなかった場合のフィルタ濾材の圧力損失と稼働時間との関係で示したグラフ図である。(B)は掻き取り部材を用いた場合のフィルタ濾材の圧力損失と稼働時間との関係で示したグラフ図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの分解斜視図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの正面図(吸気側)である。
【図17】本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの要部の断面図である。
【図18】本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される周辺配置用の吸着フィルタユニットの要部の断面図である。
【図19】本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される中央配置用の吸着フィルタユニットの要部の断面図である。
【符号の説明】
【0110】
1…VOCガス処理装置
2…ロータ
5…吸着カートリッジ
9…モータ(駆動装置)
14…吸着フィルタユニット
18…フィルタ濾材
19…掻き取り部材(摺接部材)
21…クリップ(支持部材)
22…金網保持部材(支持部材)
F…振子ユニット(振子部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷・塗装工場等で使用されるインクや塗料に含まれるベンゼン・キシレン・トルエン等の揮発性有機化合物(以下、「VOC」と称する)を除去処理するVOCガス処理装置及びフィルタクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、塗装工場・印刷工場・化学工場等にあっては、インク・塗料・接着剤等の原料の化学物質に起因して、ベンゼン・キシレン・トルエン等の様々なVOCガスが発生する。
【0003】
このようなVOCガスは、悪臭公害や光化学オキシダント生成防止といった観点から、VOCガス処理装置を用いて無害化処理を行なっている。
【0004】
また、VOCガス処理装置としては、吸着ユニットを収納した複数の吸着カートリッジを環状に配置したロータを備えていると共に、このロータを間欠回転させつつ吸着カートリッジの一端口から塗料ミスト等の微粒子を含んだ排ガスを導入し、吸着ユニットにより可燃性VOC並びに微粒子を吸着するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この際、VOCガス処理装置は、ロータの回転領域中に熱風を導入して溶剤を脱離させる溶剤脱離ステーション部と、吸着ユニットに付着した塗料ミスト等を焼却又は減量処理する微粒子処理ステーション部と、を設け、有機溶剤の吸着/脱離の再生サイクルを形成すると共に、付着した塗料ミストの消滅または減量によって吸着カートリッジの目詰まりを抑制し、カートリッジ寿命の延長化を実現している。
【0006】
また、このようなVOCガス処理装置の吸着ユニットに使用されるVOCガス除去用フィルタとしては、無機質の繊維を用いて円筒状とした内外2層構造とし、これ等内外各層の何れか一方の層体内に合成ゼオライトを担持させることにより、耐熱・耐久性を維持しつつ、高温風を用いて吸着したVOCガスの除去並びに付着した塗料の熱分解による再生を可能とした技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−281089号公報
【特許文献2】特開2008−049287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、印刷・塗装工場等でVOCガス処理装置を用いてVOCガスを吸着/脱離させる際には、微粒子処理ステーション部において、500℃程度の高温ガスで加熱する事で塗料ミストに含まれる有機成分を気化することで除去・減量することができるが、塗料ミストに含まれる一部の無機成分だけは高温ガスで気化することができず、VOCガス除去用フィルタに付着したまま次第に堆積してしまうという問題が生じていた。
【0008】
また、対象物に印刷又は塗装を行う際に有機系樹脂塗料を用いた場合、印刷又は塗装後の対象物における耐候性・耐酸性・耐熱性・耐摩耗性を持たせるためには、適度な無機成分を含ませる必要がある。
【0009】
この無機成分は、通常の有機成分よりもそれ自身が耐熱性を有しているため、上述したような塗料ミストの除去・減量過程では除去することが困難で、熱分解することができない塗料ミストに含まれる無機成分は、VOCガス除去用フィルタの表面に付着したままとなってフィルタ圧力の損失を上昇させてしまうという問題も生じていた。
【0010】
従って、VOCガス除去用フィルタにあっては、定期的に付着した無機成分を取り除くためにフィルタクリーニングを実施する必要があった。
【0011】
具体的には、VOC処理装置から吸着フィルタカートリッジを取り外した後、この吸着フィルタカートリッジを分解して内部の吸着フィルタユニットを取り出すことにより、表面に固着した無機成分を掻き落として吸引する等の作業を行っていた。
【0012】
さらに、このような取り外し・分解・吸引といった煩雑な作業は、複数の吸着フィルタカートリッジの全てに対して行う必要があるため、クリーニング作業者の作業負荷が大きいばかりでなく、印刷や塗装作業の効率低下の要因ともなっていた。
【0013】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、塗料ミストに含まれる無機成分の堆積を抑制し得て、クリーニング作業負担を軽減することができるばかりでなく、フィルタ濾材の目詰まりに伴うフィルタ圧力損失の増加を抑えつつ長期の連続稼働を実現することができるVOCガス処理装置及びフィルタクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のVOCガス処理装置は、吸着フィルタユニットを収納した円筒状の吸着カートリッジと、該吸着カートリッジを周方向に複数隣接配設したロータと、該ロータを回転させる駆動装置と、を備え、前記ロータを間欠回転させつつ前記複数の吸着カートリッジに原料化学物質に含まれるVOCガスを供給してVOCガスを処理するVOCガス処理装置において、前記吸着フィルタユニットは、円筒形状のフィルタ濾材と、該フィルタ濾材を包囲するように該フィルタ濾材の外径よりも大径な内径を有する円筒状の摺接部材と、前記フィルタ濾材の稜線付近の外周面と前記摺接部材の内周面とが接触するように前記摺接部材を変位可能に支持する支持部材と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明のVOCガス処理装置によれば、フィルタ濾材の外周に原材料に含まれる除去し難い無機成分が固着・残留しようとした場合に、フィルタ濾材の外表面と摺接部材の内周面との摺動によってフィルタ濾材の外表面に付着した無機成分を除去することができ、フィルタ濾材の目詰まりに伴う圧力損失の増加を抑制することができる。
【0016】
また、前記ロータの回転に連動する前記吸着カートリッジの回転姿勢変化に伴う前記吸着フィルタユニットの位相ズレを維持して前記ロータの一回転中に前記吸着フィルタユニットの稜線を360度変位させる振子部材を備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明のVOCガス処理装置によれば、振子部材によって前記ロータの一回転中における前記吸着カートリッジの回転姿勢変化に伴う前記吸着フィルタユニットを360度で位相ズレさせることにより、フィルタ濾材の全外表面に付着した無機成分を満遍なく除去することができる。
【0018】
さらに、前記振子部材は、前記ロータの一回転方向に対する前記吸着フィルタユニットの位相ズレを許容し且つ前記ロータの他回転方向に対する前記吸着フィルタユニットの位相ズレを阻止するロック部材を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明のVOCガス処理装置によれば、ロータの回転方向が正転方向の際と逆転方向の際とでフィルタ濾材の外表面と摺接部材の内周面との摺動が往復してしまうことを防止し得て、VOC吸着運転中には摺動させず、それ以外のクリーニング運転時のみ摺動させることで、効率良く無機成分のみを除去することができる。
【0020】
また、前記吸着カートリッジには複数の吸着フィルタユニットが収納され、該複数の各吸着フィルタユニットに前記振子部材が設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明のVOCガス処理装置によれば、各吸着フィルタユニットに設けた振子部材により、独立してフィルタ濾材の外表面と摺接部材の内周面とを摺動させることができる。
【0022】
さらに、前記吸着カートリッジには複数の吸着フィルタユニットが収納され、該複数の吸着フィルタユニットが、一つの前記振子部材によって連動・連結されていることを特徴とする。
【0023】
本発明のVOCガス処理装置によれば、一つの吸着フィルタユニットに設けた振子部材により、複数の吸着フィルタユニットを連動してフィルタ濾材の外表面と摺接部材の内周面とを摺動させることができる。
【0024】
本発明のVOCガス処理装置のフィルタクリーニング方法は、吸着フィルタユニットを収納した円筒状の吸着カートリッジを周方向に複数隣接配設したロータを間欠回転させつつ前記複数の吸着カートリッジに原料化学物質に含まれるVOCガスを供給してVOCガスを処理すると共に、前記ロータの回転に伴う前記吸着カートリッジの回転姿勢変化に連動して前記吸着フィルタユニットを構成する円筒形状のフィルタ濾材の位相をズラすと同時に、該フィルタ濾材を包囲する円筒状の摺接部材の内周面を前記フィルタ濾材の稜線付近の外周面に接触させて前記フィルタ濾材の外周面をクリーニングすることを特徴とする。
【0025】
本発明のVOCガス処理装置のフィルタクリーニング方法によれば、フィルタ濾材の外周に原材料に含まれる除去し難い無機成分が固着して残留しても、摺接部材の摺動によってフィルタ濾材表面に付着した無機成分を除去することができ、フィルタ濾材の目詰まりに伴う圧力損失の増加を抑制することができる。
【0026】
また、前記ロータが一回転方向に回転している際にのみ前記フィルタ濾材の位相をズラして前記摺接部材の内周面を前記フィルタ濾材の稜線付近の外周面に摺接させることを特徴とする。
【0027】
本発明のVOCガス処理装置のフィルタクリーニング方法によれば、例えば、VOC吸着運転時と同方向のロータ回転時にはフィルタ濾材の外周面に対する摺接部材の摺接を停止して吸引・吸着中のVOCガスをフィルタ濾材の表面に擦り付けることを抑制し、VOC吸着運転時のロータ回転方向とは逆方向のロータ回転時にのみフィルタ濾材の外周面に対して摺接部材を摺接させて摺接部材の摺動によってフィルタ濾材表面に付着した無機成分を除去することができ、フィルタ濾材の目詰まりに伴う圧力損失の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のVOCガス処理装置及びフィルタクリーニング方法は、塗料ミストに含まれる無機成分の堆積を抑制し得て、クリーニング作業負担を軽減することができるばかりでなく、フィルタ濾材の目詰まりに伴うフィルタ圧力損失の増加を抑えつつ長期の連続稼働を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施形態は本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
【0030】
以下、本発明に係るVOCガス処理装置に係る一実施の形態を図面と共に説明する。
【0031】
(VOCガス処理装置)
先ず、図1に基づいて、本発明に係るVOCガス処理装置のシステム構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置のシステム構成を示すブロック説明図である。
【0032】
図1において、本発明のVOCガス処理装置1は、回転可能なロータ2を備えている。
【0033】
ロータ2は、図示を略する塗装ブース等から未処理ガス(排ガス)を吸込ダクトD1で取り込んで排ガス中に含まれる可燃性の揮発性有機化合物や微粒子等を吸着する吸着ステーション部Vと、150〜200℃に加温された熱風を導入して排ガス中に含まれる有機溶剤を脱離させる溶剤脱離ステーション部Wと、550〜600℃の高温に加熱された熱気を導入して塗料ミスト等の微粒子を焼却又は減量処理する微粒子処理ステーション部Xと、が配置されている。
【0034】
吸着ステーション部Vに吸引する未処理ガスは、有機溶剤を吸着処理した後の清浄ガスを排出ダクトD2から外部に排出するための第1排気ファンF1によって吸引される。
【0035】
溶剤脱離ステーション部Wに導入される熱風は、第1ヒータH1によって有機溶剤の沸点以上である150〜200℃に加温されて溶剤脱離ステーション入口ダクトD3から導入される。また、溶剤脱離ステーション部Wにより脱離された有機溶剤を含んだ空気は溶剤脱離ステーション出口ダクトD4から触媒の燃焼可能な200〜250℃に加熱する第2ヒータH2へと送られる。
【0036】
微粒子処理ステーション部Xには、第2ヒータH2によって加熱された脱離有機溶剤を含んだ空気を触媒部Cで550〜600℃に燃焼分解した後の高温ガスが微粒子処理ステーション入口ダクトD5から導入される。また、微粒子処理ステーション部Xで微粒子を処理した後の高温ガスは微粒子処理ステーション出口ダクトD6から熱交換器HEへと送られる。
【0037】
尚、第2ヒータH2と触媒部Cとは脱離溶剤燃焼部を構成している。また、熱交換器HEは、放熱側で400℃から40℃に冷却処理された排ガスが第2排気ファンF2から排気され、受熱側で大気を150℃に加温したうえで第1ヒータH1に導入される。
【0038】
(ロータ2の構成)
次に、図2乃至図4に基づいて、ロータ2の具体的な構成を説明する。
【0039】
図2は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用されるロータの斜視図、図3は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用されるロータの分解斜視図、図4は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用されるロータの正面図である。
【0040】
図2乃至図4において、ロータ2は、筐体状に組み合わされたフレーム3に支持・包囲されており、離間状態で対向する一対の円板状のロータプレート4,4と、一対のロータプレート4,4間に挟持されるように周縁部に沿って環状に隣接配置された複数の吸着カートリッジ5…と、一対のロータプレート4,4を回転させる回転軸6と、一対のロータプレート4,4の各外側にそれぞれ位置して吸込ダクトD1に連通された吸気用チャンバー7並びに排出ダクトD2に連通された排気用チャンバー8と、を備えている。また、ロータ2は、モータ9(図4参照)の駆動によって回転軸6を回転中心として回転する。この際、ロータ2は、図4の時計回り方向Nに回転し、その1回転中(例えば、所要時間24分間)でVOCガスの吸着/脱離サイクルを実現している。
【0041】
尚、図4において、背面側に位置する構成部材の符号を正面側に位置する構成部材の符号に括弧書きで付している。
【0042】
また、上述したロータ2の回転は、間欠的に行われ、例えば、数分間の吸着動作/脱離サイクル毎に第1排気ファンF1が吸引稼働すると共に、ロータ2が一定角度(例えば、30度)毎に回転・停止するといった間欠回転動作が繰り返される。
【0043】
(ロータプレート4の構成)
各ロータプレート4,4には、例えば、12個の連通口4a…と短尺管(スペーサ)4bとが同軸上に配置され、各ロータプレート4,4の連通口4a…同士を対向させた状態で12個の吸着カートリッジ5…をロータプレート4,4間で挟持する。
【0044】
また、各チャンバー7,8は、この12個の連通口4a…のうち、回転中の下死点寄り2個を除いた10個を外方から覆うようにフレーム3に支持されている。また、各チャンバー7,8の内壁面には、その10個の連通口4a…と連通する環状の開口部7a,8aが形成されている。
【0045】
これにより、本実施の形態では、12個の吸着カートリッジ5…は、VOCガスの吸着/脱離サイクルとして、下死点に位置したときの2個を除いた10個を吸着ステーション部Vとして利用し、下死点に位置したときの2個のうちの一方(ロータ回転方向上流側)を溶剤脱離ステーション部W、他方(ロータ回転方向下流側)を微粒子処理ステーション部Xとして利用する。
【0046】
尚、VOCガスの吸着/脱離サイクルにおけるロータ2の回転中において、溶剤脱離ステーション部Wに位置したときの連通口4a…は各ダクトD3,D4と連通され、微粒子処理ステーション部Xに位置したときの連通口4a…は各ダクトD5,D6と連通される。
【0047】
また、吸着カートリッジ5…は、ロータ2の周縁部で固定されている。従って、各吸着カートリッジ5…の上死点(稜線)に位置する部分は、ロータ2の1回転サイクル中において、その回転姿勢が360度ズレるように変位する。
【0048】
ところで、溶剤脱離ステーション部Wと微粒子処理ステーション部Xとして利用する連通口4a…の位置は、上述した下死点に位置したときに限定されるものではないが、少なくとも隣接する2個の連通口4a…を利用する。
【0049】
また、吸着ステーション部Vとして利用する連通口4a…の数を9個とし、微粒子処理ステーション部Xの次サイクル位置に、吸着カートリッジ5…の内部に冷風を導入して冷却する冷却ステーション部を配置しても良い。
【0050】
(吸着カートリッジ5の構成)
次に、図5乃至図8に基づいて、吸着カートリッジ5の具体的な構成を説明する。
【0051】
図5は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの分解斜視図、図6は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの正面図(吸気側)、図7は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの背面図(排気側)、図8は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの断面図である。
【0052】
図5乃至図8において、吸着カートリッジ5…は、両端に環状の外側フランジ10a(吸気側)並びに内側フランジ10b(排気側:図8参照)を一体に形成すると共に把手11を固定した円筒形状の筒体10と、この筒体10の両端を閉成する蓋体12,13と、筒体10に内装されて蓋体12,13に挟持される複数の吸着フィルタユニット14…と、を備えている。
【0053】
尚、蓋体12,13は、ネジ15…及びネジ16…によって筒体10の各フランジ10a,10bに固定されていると共に、それぞれ複数の通気孔12a…及び通気孔13a……が形成されている。また、吸着フィルタユニット14…は、蓋体12側にてボルト17…によって固定されている。さらに、蓋体13の内側には、吸着フィルタユニット14…の一端側を支持するために、通気孔13a…を取り巻くように突出された環状フランジ13b…が形成されている。
【0054】
これにより、吸着カートリッジ5…は、VOC吸着動作時には蓋体12の通気孔12a…より筒体10内に塗料ミストが導入され、吸着フィルタユニット14…を通過して蓋体13の通気孔13a…より濾過された空気が排出される(図8の矢印参照)。
【0055】
(吸着フィルタユニット14…の構成)
次に、図9乃至図11に基づいて、吸着フィルタユニット14…の具体的な構成を説明する。
【0056】
図9は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの分解斜視図、図10は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの正面図(吸気側)、図11は本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの断面図である。
【0057】
図9乃至図11において、吸着フィルタユニット14…は、外層材18aと内層材18bとで円筒状とされたフィルタ濾材18と、フィルタ濾材18の外周を包囲する円筒状の摺接部材としての掻き取り部材19と、フィルタ濾材18の一端側を保持する有底円筒形状のフィルタ保持部材20と、掻き取り部材19の一端側を複数(例えば、4つ)のクリップ21を介して保持すると共にフィルタ保持部材20の中心から突出された軸部20aが貫通する有底円筒形状の金網保持部材22と、から構成されている。
【0058】
フィルタ濾材18は、例えば、外層材18aは多結晶アルミナファイバー等のガラス繊維フィルタから構成された塗装ミスト除去用とされ、内層材18bはゼオライトを胆持させたセラミックフィルタから構成されたVOC吸着用とされている。
【0059】
掻き取り部材19は、比較的目の粗い金網状のものが用いられ、フィルタ濾材18の外径よりも大きい内径とされ、これにより、掻き取り部材19の自重によりフィルタ濾材18の外表面の上死点と接触する。
【0060】
フィルタ保持部材20は、その中心の軸部20aで金網保持部材22からカバー28に至る各部材を支持することで、掻き取り部材19を除く中心軸を規定する。
【0061】
一方、各吸着フィルタユニット14…には、それぞれ独立した振子ユニットFが設けられている。
【0062】
この振子ユニットFは、フィルタ保持部材20と金網保持部材22との間に介在されて軸部20aが貫通するワッシャ(スペーサ)23と、金網保持部材22の外側(吸気側)で軸部20aが貫通する略半円形状の大振子24と、大振子24の回転中心と同軸上で大振子24に固定された小振子押え板25と、大振子24と小振子押え板25との間で一端が揺動可能に支持された小振子26と、小振子26の自由端が係止する複数(例えば、12ヶ所)の爪部27a…を回転中心側に向けて突出させた環状の係止輪部材27と、大振子24・小振子押え板25・係止輪部材27を金網保持部材22とで挟持するカバー28とを備えている。
【0063】
大振子24は、比重の高い材質を用いて略半円形状(扇形状)に形成され、軸部20aに吊り下げられることによって、自重により常に下向きに懸架した姿勢を維持するようになっている。
【0064】
小振子押え板25は、薄肉金属板等から略小判型を呈しており、その一端側には軸部20aが貫通する貫通孔25aが形成され、その他端寄りには小振子26の一端を支持する支持孔25bが形成されている。
【0065】
小振子26は、大振子24と小振子押え板25との間で軸状の一端が支持され、その他端(自由端)が爪部27a…に係合可能となっている。この際、小振子26の姿勢は、爪部27a…に対して一回転方向のみで係合し、他回転方向では爪部27a…に乗り上げるラチェット関係にある。尚、大振子24には、小振子26の揺動範囲を規定する凹部24a…が形成されている。
【0066】
(掻き落し動作(クリーニング動作)の説明)
次に、本発明の実施例の吸着フィルタユニット14…を用いた掻き落し動作(クリーニング動作)の説明をする。
【0067】
図12及び図13は、本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの要部の動作説明図である。
【0068】
尚、ここでは、ロータ2(図12ではロータプレート4で図示)に配置された吸着カートリッジ5…のうち、例えば、図4で示した三時付近に位置するもので説明する。
【0069】
図12に示すように、吸着カートリッジ5の内部に配置された3本の吸着フィルタユニット14…において、ロータ2の回転方向が時計回り方向Nの時、吸着カートリッジ5の回転姿勢変化に連動して係止輪部材27も時計回り方向Nと同じ時計回り方向Mに位相がズレようとすると、小振子26の先端は係止輪部材27の爪部27a…によって押し上げられるだけであるため、係止輪部材27の位相ズレが許容される。
【0070】
これにより、係止輪部材27に連結した掻き取り部材19も時計回り方向Mに回転することができるため、結果的にはフィルタ濾材18も時計回り方向Mに回転する(姿勢を変える)ため、掻き取り部材19の内表面とフィルタ濾材18の外表面との間には、摺動が殆ど発生しない。
【0071】
一方、図13に示すように、ロータ2の回転方向が反時計回り方向−Nの時、吸着カートリッジ5の回転姿勢変化に連動して係止輪部材27も反時計回り方向−Mに位相がズレようとすると、係止輪部材27の爪部27a…部と小振子26の先端とが当接して引っ掛かり、それ以上の係止輪部材27の反時計回り方向−Mへの位相ズレが阻止される。これは、大振子24の自重によるモーメントの範囲内であり、それ以上の回転力を与えない限り、大振子24の姿勢と一体で係止輪部材27はその姿勢を維持しようとする。
【0072】
これにより、係止輪部材27と一体的に回転する掻き取り部材19も同様にその場での姿勢を維持するため、掻き取り部材19はその自重分でフィルタ濾材18の外表面の稜線部分に自重を作用させながらその場に停止する。
【0073】
従って、フィルタ濾材18の反時計回り方向−Nの回転に伴い、結果的には掻き取り部材19の内表面とフィルタ濾材18の外表面との間には、摺動が発生する。
【0074】
よって、VOC吸着/脱離サイクルの何回かに一回は、無機成分除去のためにロータ2を逆転させるクリーニング運転を実施することによって、フィルタ濾材18の外表面に付着・固化した無機成分を掻き取り部材19の摺擦によってクリーニング作用で掻き落とし、フィルタ濾材18外表面に無機成分が残留してしまうことが抑制され、フィルタ圧力損失が増加することなく、寿命の長いVOC吸着/脱離サイクルを実現することができる。
【0075】
尚、VOC吸着/脱離サイクルであるロータ2の時計回り方向Nの時に、常に掻き取り部材19の内表面とフィルタ濾材18の外表面とを摺動させると、塗料ミストをフィルタ濾材18の外表面に擦り付けながら吸着運転することとなって圧力損失が増加する虞がある。
【0076】
従って、本実施の形態においては、ロータ2の回転方向(N,−N)によって、フィルタ濾材18と掻き取り部材19との摺動の有無を選択的に切り換えることとした。
【0077】
(実施例)
上記の構成において、吸着カートリッジ5…が溶剤脱離ステーションWに位置した場合には、第1ヒータH1から溶剤脱離ステーション入口ダクトD3を経由して導入された約200℃のガスによりVOC成分のみが脱離され、触媒によって分解される。
【0078】
その後、吸着カートリッジ5…が微粒子処理ステーションXに位置した場合には、触媒部Cから微粒子処理ステーション入口ダクトD5を経由して導入される高温ガスによって流れが逆になり、内層材18bの内側からその約500℃の高温ガスが外層材18aの外表面へと流れ、外層材18aの外表面に付着している塗料を高温ガスで加熱することで有機成分が気化されて除去される。
【0079】
ところが、VOCを吸着/脱離させるにあたり、微粒子処理ステーションXにおいて500℃程度の高温ガスで加熱することで塗料ミストに含まれる有機成分は気化による除去・減量を行うことができるが、塗料ミストに含まれる一部の無機成分だけは高温ガスでは気化することができず、フィルタ濾材18の表面に付着したまま次第に堆積してしまう。
【0080】
これは有機系機樹脂塗料においても、印刷・塗装後の耐候性・耐酸性・耐熱性・耐摩耗性を持たせるために、適度な無機成分が含まれており、この無機成分は通常の有機成分よりもそれ自身が耐熱性を有しているために、塗料ミストの除去・減量過程では除去することができず、熱分解ができない塗装ミスト中の無機物はフィルタ濾材18に表面に付着し、フィルタ圧力損失を上昇させる。
【0081】
そこで、本実施の形態においては、2層のフィルタ濾材18の外表面に、ほぼ同心状でフィルタ濾材18の外径よりも若干大きい内径を有する円筒状の掻き取り部材19の内表面を摺り合わせている。
【0082】
これにより、VOC吸着時には掻き取り部材19のメッシュ(金網)を通して吸着動作が実行され、フィルタ濾材18に表面に付着して徐々に堆積しようとする無機物は、フィルタ圧力損失を上昇させることが無いように、ロータ2の回転方向が通常動作である時計回り方向Nとは逆の反時計回り方向−Nの回転の際に、掻き取り部材19によってフィルタ濾材18の外表面付着物を掻き取ることができる。
【0083】
図14(A)は掻き取り部材19を用いなかった場合のフィルタ濾材18の圧力損失と稼働時間との関係で示したグラフ図、図14(B)は掻き取り部材19を用いた場合のフィルタ濾材18の圧力損失と稼働時間との関係で示したグラフ図である。
【0084】
図14(A)に示すように、掻き取り部材19を用いなかった場合のフィルタ圧力損失値は初期損失に比べて数倍以上に上昇し、フィルタ交換予定として設定された稼働時間に達する前に、圧力損失上昇許容値を大きく上回ってしまう。
【0085】
これに対し、図14(B)に示すように、本発明の掻き取り部材19を用いた場合のフィルタ圧力損失値は、フィルタ交換予定として設定された稼働時間までに圧力損失上昇許容値に達することがなく、結果的に寿命が延びて実際の交換頻度を少なくすることができる。
【0086】
尚、図14の各稼働時間は、実際に吸着/脱離サイクル稼働運転を行っている時間を積算したものであるが、吸着/脱離サイクル稼働を23時間稼働し、1時間クリーニングをおこなうといった割合でクリーニング行程を入れながら稼働した事例であり、図14のグラフ図上では吸着/脱離サイクル稼働時間以外のクリーニング時間は入れず、吸着/脱離サイクル稼働時間が同じ場合でのフィルタ圧力損失の変化で示している。
【0087】
(他の実施の形態)
図15乃至図19は、本発明の他の実施形態を示す。
【0088】
図15は本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの分解斜視図、図16は本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの正面図(吸気側)、図17は本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの要部の断面図、図18は本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される周辺配置用の吸着フィルタユニットの要部の断面図、図19は本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される中央配置用の吸着フィルタユニットの要部の断面図である。
【0089】
上記実施の形態で示した吸着カートリッジ5…では、内部に3本の吸着フィルタユニット14…を配置すると共に、各吸着フィルタユニット14…に振子ユニットFを設けたものを開示したしたが、この他の実施の形態の吸着カートリッジ35…は、内部に7本の吸着フィルタユニット14…を配置すると共に、これら7本の吸着フィルタユニット14…に対して1つの振子ユニットF'を設けたものである。
【0090】
尚、吸着フィルタユニット14…の構成は、上記実施の形態と実質的に同一構成であるため、ここでは同一の符号を付して、その説明を省略する(図18,図19参照)。
【0091】
(吸着カートリッジ35の構成)
吸着カートリッジ35…は、上記実施の形態と同様に、ロータ2の周縁部12箇所に各々固定されている。従って、各吸着カートリッジ35…の上死点(稜線)に位置する部分は、ロータ2の1回転サイクル中において、その回転姿勢が360度ズレるように変位する。
【0092】
図15乃至図17において、吸着カートリッジ35…は、両端に環状の外側フランジ40a(吸気側)並びに内側フランジ(排気側:図示せず)を一体に形成すると共に把手41を固定した円筒形状の筒体40と、この筒体40の両端を閉成する蓋体42,43と、筒体40に内装されて蓋体42,43に挟持される複数(ここでは7本)の吸着フィルタユニット14…と、を備えている。
【0093】
尚、蓋体42,43は、ネジ(図示せず)によって筒体40に固定されていると共に、それぞれ複数の通気孔42a…及び通気孔43a…が形成されている。また、吸着フィルタユニット14…は、蓋体42側にてボルト(図示せず)によって固定されている。さらに、蓋体43の内側には、吸着フィルタユニット14…の一端側を支持するために、通気孔43a…を取り巻くように突出された環状フランジ43b…が形成されている。
【0094】
これにより、吸着カートリッジ35…は、VOC吸着動作時には蓋体42の通気孔42a…より筒体40内に塗料ミストが導入され、吸着フィルタユニット14…を通過して蓋体43の通気孔43a…より濾過された空気が排出される。
【0095】
一方、各吸着フィルタユニット14…は、一つの振子ユニットF'によって連動して回転する。
【0096】
この振子ユニットF'は、筒体40の内側周囲に配置された6つの吸着フィルタユニット14…に対して金網保持部材22の外側(吸気側)に位置するように軸部20aに支持された複数の従動歯車44…(図18参照)と、筒体40の中心に配置された1つの吸着フィルタユニット14…に対して金網保持部材22の外側(吸気側)に位置し且つ各従動歯車44…と噛み合う環状の爪歯車45…(図19参照)と、各爪歯車45…の内側に形成された複数(例えば、12個)の爪部45a…の内側に位置するように軸部20aに支持された小振子軸受部材46と、小振子軸受部材46と協働して小振子47を支持する小振子押え板48と、小振子押え板48の一端に固定されて軸部20aが貫通する円筒形状のカラー(軸受)49と、カラー49に支持されたカバー円板50と、筒体40の内側周囲に配置された6つの吸着フィルタユニット14…を支持する取付枠51と、カラー49に支持された大振子52と、を備えている。
【0097】
小振子軸受部材46は、金属板等から略小判型を呈しており、その一端側にはカラー49の端部が嵌合する貫通孔46aが形成され、その他端寄りには小振子47の軸状の一端を支持すると共に小振子47の揺動範囲を規定する凹部46bが形成されている。
【0098】
小振子47は、小振子軸受部材46と小振子押え板48との間で軸状の一端が支持されていると共に、その他端(自由端)が爪部45a…と係合可能となっている。この際、小振子47の姿勢は、爪部45a…に対して一回転方向のみで係合し、他回転方向では爪部45a…に乗り上げるラチェット関係にある。
【0099】
小振子押え板48は、薄肉金属板等から略小判型を呈しており、その一端側にはカラー49が固定され、その他端寄りには小振子47の一端を支持する支持孔48aが形成されている。
【0100】
取付枠51は爪歯車45…の外径よりも大径なリング状を呈していると共に、放射状に突出され且つ先端が蓋体42側(吸気側)に屈曲して蓋体42と係合する複数の係合爪部51a…が形成されている。尚、この係合爪部51a…の蓋体42側(吸気側)への屈曲は、少なくとも大振子52の厚さ以上とされる。
【0101】
大振子52は、比重の高い材質を用いて扇形状に形成され、カラー49を介して筒体40の中心に位置する吸着フィルタユニット14…の軸部20aに吊り下げられることによって、自重により常に下向きに懸架した姿勢を維持するようになっている。
【0102】
ところで、吸着カートリッジ35…の内部の吸着フィルタユニット14…は本数が多ければ多いほどVOCの吸着量が増えて効率化するが、吸着フィルタユニット14…の設置本数を吸着カートリッジ35…の内部に納めるには限界があるうえ、各吸着フィルタユニット14…に振子ユニットFを配置したのでは、部品コストが高騰するうえ、大振子24の数だけ重量が増してしまう。
【0103】
そこで、本発明の他の実施例においては、例えば1つの吸着カートリッジ35に7本の吸着フィルタユニット14…を収め、そのうちの筒体40の中心に配置した吸着フィルタユニット14…に対してのみ大振子52と小振子47とを配置すると共に、筒体40の周囲に配置した吸着フィルタユニット14…に対しては従動歯車44…のみを設け、筒体40の中心に配置した吸着フィルタユニット14…に連動させる構成を採用した。
【0104】
これにより、筒体40の中心に配置した吸着フィルタユニット14…の掻き取り部材19の姿勢と他の吸着フィルタユニット14…の掻き取り部材19の姿勢とは、各歯車44…及び爪歯車45…を介して連動され、常に同じ位相を維持することができる。
【0105】
この際、各掻き取り部材19と外層材18aとの摺動負荷よりも大きいモーメントを発生させるように、大振子52の大きさと重量とを考慮する必要があるが、少なくとも、7つの大振子24を配置する場合よりも軽量化を実現しつつ、小振子47と爪部45a…との関係においては上記実施の形態と同様の効果を奏することができ、個々の吸着フィルタユニット14…に独立した振子ユニットFを配置する場合に比べて全体的な部品点数を増やさずに多数の吸着フィルタユニット14…のクリーニングを実施することができる。
【0106】
尚、掻き取り部材19の開口率や太さは適宜選択すれば良く、掻き取り部材19の自重だけでは無機成分の掻き落としが不十分な場合には、掻き取り部材19の外周に錘を円周方向に均等配置することによって、フィルタ濾材18の外周の頂上部に作用する加圧力が増加し、掻き取り効果をより一層確保することも可能である。
【0107】
尚、上記各実施の形態で示したVOCガス処理装置1におけるフィルタ濾材18のクリーニング稼働時には、各ファンF1,F2並びに溶剤脱離ステーション部Wや微粒子処理ステーション部Xと連通する各ヒータH1,H2及び熱交換器HE等は、吸着/脱離稼働時と同様に稼働を続けているが、印刷・塗装行程では休止した状態となる。
【0108】
従って、フィルタ濾材18のクリーニング稼働時に掻き落とされた無機成分の粉塵は、微粒子処理ステーション部Xにおいて逆方向の空気の流れによってフィルタカートリッジとしての吸着カートリッジ5…(又は吸着カートリッジ35…)の外部に排出されることになり、その排出流路内には無機成分を回収・排気する別途のフィルタ等が搭載されているか、若しくはクリーニング稼働時のみ、別途のフィルタを排出流路内に介在させる等の対応がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置のシステム構成を示すブロック説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用されるロータの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用されるロータの分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用されるロータの正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの分解斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの正面図(吸気側)である。
【図7】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの背面図(排気側)である。
【図8】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの分解斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの正面図(吸気側)である。
【図11】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの正方向回転時における要部の動作説明図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着フィルタユニットの逆方向回転時における要部の動作説明図である。
【図14】本発明の一実施形態に係るVOCガス処理装置における圧力損失と稼働時間との関係のグラフ図で、(A)は掻き取り部材を用いなかった場合のフィルタ濾材の圧力損失と稼働時間との関係で示したグラフ図である。(B)は掻き取り部材を用いた場合のフィルタ濾材の圧力損失と稼働時間との関係で示したグラフ図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの分解斜視図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの正面図(吸気側)である。
【図17】本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される吸着カートリッジの要部の断面図である。
【図18】本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される周辺配置用の吸着フィルタユニットの要部の断面図である。
【図19】本発明の他の実施形態に係るVOCガス処理装置に適用される中央配置用の吸着フィルタユニットの要部の断面図である。
【符号の説明】
【0110】
1…VOCガス処理装置
2…ロータ
5…吸着カートリッジ
9…モータ(駆動装置)
14…吸着フィルタユニット
18…フィルタ濾材
19…掻き取り部材(摺接部材)
21…クリップ(支持部材)
22…金網保持部材(支持部材)
F…振子ユニット(振子部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着フィルタユニットを収納した円筒状の吸着カートリッジと、該吸着カートリッジを周方向に複数隣接配設したロータと、該ロータを回転させる駆動装置と、を備え、前記ロータを間欠回転させつつ前記複数の吸着カートリッジに原料化学物質に含まれるVOCガスを供給してVOCガスを処理するVOCガス処理装置において、
前記吸着フィルタユニットは、円筒形状のフィルタ濾材と、該フィルタ濾材を包囲するように該フィルタ濾材の外径よりも大径な内径を有する円筒状の摺接部材と、前記フィルタ濾材の稜線付近の外周面と前記摺接部材の内周面とが接触するように前記摺接部材を変位可能に支持する支持部材と、を備えていることを特徴とするVOCガス処理装置。
【請求項2】
前記ロータの回転に連動する前記吸着カートリッジの回転姿勢変化に伴う前記吸着フィルタユニットの位相ズレを維持して前記ロータの一回転中に前記吸着フィルタユニットの稜線を360度変位させる振子部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のVOCガス処理装置。
【請求項3】
前記振子部材は、前記ロータの一回転方向に対する前記吸着フィルタユニットの位相ズレを許容し且つ前記ロータの他回転方向に対する前記吸着フィルタユニットの位相ズレを阻止するロック部材を備えていることを特徴とする請求項2に記載のVOCガス処理装置。
【請求項4】
前記吸着カートリッジには複数の吸着フィルタユニットが収納され、該複数の各吸着フィルタユニットに前記振子部材が設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のVOCガス処理装置。
【請求項5】
前記吸着カートリッジには複数の吸着フィルタユニットが収納され、該複数の吸着フィルタユニットが、一つの前記振子部材によって連動・連結されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のVOCガス処理装置。
【請求項6】
吸着フィルタユニットを収納した円筒状の吸着カートリッジを周方向に複数隣接配設したロータを間欠回転させつつ前記複数の吸着カートリッジに原料化学物質に含まれるVOCガスを供給してVOCガスを処理すると共に、前記ロータの回転に伴う前記吸着カートリッジの回転姿勢変化に連動して前記吸着フィルタユニットを構成する円筒形状のフィルタ濾材の位相をズラすと同時に、該フィルタ濾材を包囲する円筒状の摺接部材の内周面を前記フィルタ濾材の稜線付近の外周面に接触させて前記フィルタ濾材の外周面をクリーニングすることを特徴とするVOCガス処理装置のフィルタクリーニング方法。
【請求項7】
前記ロータが一回転方向に回転している際にのみ前記フィルタ濾材の位相をズラして前記摺接部材の内周面を前記フィルタ濾材の稜線付近の外周面に摺接させることを特徴とする請求項6に記載のVOCガス処理装置のフィルタクリーニング方法。
【請求項1】
吸着フィルタユニットを収納した円筒状の吸着カートリッジと、該吸着カートリッジを周方向に複数隣接配設したロータと、該ロータを回転させる駆動装置と、を備え、前記ロータを間欠回転させつつ前記複数の吸着カートリッジに原料化学物質に含まれるVOCガスを供給してVOCガスを処理するVOCガス処理装置において、
前記吸着フィルタユニットは、円筒形状のフィルタ濾材と、該フィルタ濾材を包囲するように該フィルタ濾材の外径よりも大径な内径を有する円筒状の摺接部材と、前記フィルタ濾材の稜線付近の外周面と前記摺接部材の内周面とが接触するように前記摺接部材を変位可能に支持する支持部材と、を備えていることを特徴とするVOCガス処理装置。
【請求項2】
前記ロータの回転に連動する前記吸着カートリッジの回転姿勢変化に伴う前記吸着フィルタユニットの位相ズレを維持して前記ロータの一回転中に前記吸着フィルタユニットの稜線を360度変位させる振子部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のVOCガス処理装置。
【請求項3】
前記振子部材は、前記ロータの一回転方向に対する前記吸着フィルタユニットの位相ズレを許容し且つ前記ロータの他回転方向に対する前記吸着フィルタユニットの位相ズレを阻止するロック部材を備えていることを特徴とする請求項2に記載のVOCガス処理装置。
【請求項4】
前記吸着カートリッジには複数の吸着フィルタユニットが収納され、該複数の各吸着フィルタユニットに前記振子部材が設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のVOCガス処理装置。
【請求項5】
前記吸着カートリッジには複数の吸着フィルタユニットが収納され、該複数の吸着フィルタユニットが、一つの前記振子部材によって連動・連結されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のVOCガス処理装置。
【請求項6】
吸着フィルタユニットを収納した円筒状の吸着カートリッジを周方向に複数隣接配設したロータを間欠回転させつつ前記複数の吸着カートリッジに原料化学物質に含まれるVOCガスを供給してVOCガスを処理すると共に、前記ロータの回転に伴う前記吸着カートリッジの回転姿勢変化に連動して前記吸着フィルタユニットを構成する円筒形状のフィルタ濾材の位相をズラすと同時に、該フィルタ濾材を包囲する円筒状の摺接部材の内周面を前記フィルタ濾材の稜線付近の外周面に接触させて前記フィルタ濾材の外周面をクリーニングすることを特徴とするVOCガス処理装置のフィルタクリーニング方法。
【請求項7】
前記ロータが一回転方向に回転している際にのみ前記フィルタ濾材の位相をズラして前記摺接部材の内周面を前記フィルタ濾材の稜線付近の外周面に摺接させることを特徴とする請求項6に記載のVOCガス処理装置のフィルタクリーニング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−262111(P2009−262111A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118383(P2008−118383)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000101617)アマノ株式会社 (174)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000101617)アマノ株式会社 (174)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]