説明

VOC処理システム

【課題】プラントが放出するVOC含有の溶液を効率よく処理する提供する。
【解決手段】VOC処理システム100は、プラントPが放出するVOC含有の溶液を処理するシステムである。VOC処理システム100は、気化装置19と、燃焼装置30を備える。気化装置19は、溶液を加熱してVOC含有の2次ガスを生成する。燃焼装置30は、気化装置19が生成した2次ガスを燃焼する。気化装置19は、溶液を高温ガスによって加熱し、その溶液から蒸発した2次ガスを含む加熱後高温ガスを再加熱して溶液を加熱する高温ガスに還流させる循環型の気化装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性有機化合物(Volatile Organic Conpound、以下、「VOC」と称する場合がある)を含む溶液を処理するVOC処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントにて使用後の揮発性可燃物質含有の溶剤(例えば塗装ラインにおいて製品に付着しなかった塗料など)を効率よく処理する装置の一例が特許文献1に開示されている。その技術は、使用後溶剤を乾燥させて揮発性可燃物を含むガスを取り出し、そのガスを燃焼無臭化手段で燃焼して無害・無臭化した後、処理後の高温ガスを使用後溶剤の乾燥に用いるというものである。なお、本明細書における「プラント」とは、「工場」という意味だけでなく、一つの「装置」をも含む概念で用いられる。別言すれば、本明細書における「プラント」とは広く「設備」を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−55559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、処理後の高温ガスを使用後溶剤の乾燥に用いることで、使用後溶剤の乾燥に要する燃料を低減する。本明細書は、特許文献1に開示された処理装置よりもさらに効率のよい処理装置を実現する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する技術は、特に、VOC(Volatile Organic Compound、揮発性有機化合物)を処理する装置に関する。ここでいう「VOCを処理する」とは、VOCを含有するガスを燃焼させて無害化することを意味する。VOCの代表的な化合物には、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどがある。VOCは、塗料(インクを含む)や接着剤等に含まれる物質の一つであり、多種のプラントで用いられている。
【0006】
本明細書が開示するVOC処理システムは、プラントが排出する使用済みのVOC含有溶液(残液)を処理するVOC処理システムであり、溶液を加熱してVOCを含有するガス(2次ガス)を生成する気化装置と、その2次ガスを燃焼する燃焼装置とを備える。気化装置は、溶液を高温ガスによって加熱し、加熱された溶液から気化した2次ガスを含む加熱後高温ガスを再加熱して溶液を加熱する高温ガスに還流させる循環型の気化装置であることを特徴とする。なお、「2次ガス」とは、後述する、プラントが排出したVOCガス(1次ガス)と区別するための表現である。「2次ガス」は、別言すれば、「溶液(残液)由来のVOCガス」、あるいは、「溶液(残液)派生VOCガス」と表現することもできる。また、以下、プラントが排出するVOC含有溶液を「残液」と称する場合がある。
【0007】
上記のVOC処理システムの気化装置は、残液から得られた2次ガスを循環させることによって、VOC成分を高濃度に含む2次ガスを得ることができる。VOCは潜在的に有するエネルギが高いので、高濃度化することによって2次ガスそれ自体を燃料ガスとして利用することができるようになる。燃焼装置は、2次ガスを燃料として燃焼させるので、VOCを燃焼させて無害化するのと同時に、2次ガスを燃焼させて得られた熱エネルギを利用することが可能となる。燃焼後の2次ガスの熱エネルギを利用することによって、VOC処理に要する総コストを低減することができる。
【0008】
プラントでは、VOCを含む溶液を使用した後、塗装や接着など本来の目的で使用される際に製品に付着しなかった残液が残るだけでなく、大量のVOCガスが発生する。前述したように、プラントが排出するVOCガスを、残液を気化して得られる2次ガスと区別する目的で1次ガスと称する。1次ガスも、燃焼して無害化する必要がある。そこで、前記した気化装置は、気化装置が生成した2次ガスとともに、プラントが排出するVOC含有の1次ガスを燃焼するものであることが好ましい。そのような燃焼装置は、残液に含まれるVOCだけでなく、VOC1次ガスも同時に無害化することができる。ここで、プラントが排出する1次ガスは、大抵の場合、その圧力は1気圧程度であり、燃料として用いるには濃度が薄い。他方、2次ガスは、循環型の気化装置によって高濃度化されており、その濃度は1次ガス濃度より高くなっている点に留意されたい。
【0009】
上記のVOC処理システムは、溶液を気化するのにガス循環型の気化装置を採用し、1次ガスよりもVOC濃度が高い2次ガスを生成する。溶液を気化させる気化装置にて2次ガスのVOC濃度を高濃度にすることによって、2次ガスはそれ自体を燃料ガスとして利用することができるようになる。他方、1次ガスは、通常、大気圧の中でVOC含有溶液から気化したものであるから、可燃性であっても燃料ガスとして用いるには濃度が低い。上記のVOC処理システムは、溶液から得られるVOC2次ガスを燃料として用い、1次ガスを燃焼させることができるので、1次ガスを燃焼させる燃料コストを抑制することができる。燃焼装置の一態様は、2次ガスを燃料とするバーナを備えており、そのバーナが放出する熱によって1次ガスを燃焼させる燃焼装置である。ここで、ガス燃焼装置は、2次ガスのみを燃料とするものであってもよいし、外部から供給される他の燃料ガスと2次ガスとの混合ガスを燃料とするものであってもよい。
【0010】
VOC処理のコストをさらに低減するため、VOC処理システムは、1次ガスと2次ガスの燃焼排ガスのエネルギを回収するエネルギ回収装置をさらに備えているとよい。エネルギ回収装置の例としては、発電装置や給湯装置などが挙げられる。
【0011】
また、燃焼装置の他の態様は、発電機を備えたガスタービンであってよい。ガスタービンを採用する場合、1次ガスは、そのままでは濃度が低すぎるので、プレコンプレッサを介してガスタービンのコンプレッサ(タービンと連結されたコンプレッサ)に供給される。2次ガスは濃度が高いので、プレコンプレッサを解さずにガスタービンのコンプレッサに供給してよい。あるいは、2次ガスは、加圧器を介して高圧化した後に、ガスタービンの燃焼器用燃料ガスとして供給してもよい。
【0012】
気化装置から高濃度の2次ガスが燃焼装置へ送られるので、燃焼装置の安全性を高めるために以下の構成を有することも好適である。(1)2次ガスを気化装置から燃焼装置へ送るガス供給路に、2次ガスのVOC濃度が所定濃度以上となった場合にガス供給路を閉鎖する閉止ダンパが設けられている。(2)気化装置は、燃焼装置から送られる濃度指示信号に基づいて、燃焼装置へ供給する2次ガスのVOC濃度が目標濃度となるように気化装置への溶液供給量を調整する溶液供給量調整手段を備えている。(3)溶液供給量調整手段は、溶液(残液)を気化装置へ供給する供給管に設けられた溶液流量調整弁のバルブ開度、又は溶液を気化装置へ供給するポンプの出力を調整するものである。(4)気化装置はドラム式乾燥機であり、溶液供給量調整手段は、ドラム式乾燥機のドラム回転数を調整するものである。
【発明の効果】
【0013】
本明細書が開示する技術は、プラントが排出するVOC残液とVOCガスを同時に効率よく処理することのできるVOC処理システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施例のVOC処理システムのブロック図である。
【図2】第2実施例のVOC処理システムにおけるガスタービンのブロック図である。
【図3】第2実施例のガスタービンの変形例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、第1実施例のVOC処理システム100のブロック図を示す。VOC処理システム100は、プラントPが排出したVOC含有のガス(1次ガス)とVOC含有の残液を燃焼させ無害化するとともに、燃焼により生じる熱エネルギを回収する装置である。プラントPは、VOCを含む塗料を使う装置であり、例えば印刷装置や塗装装置である。或いは、プラントPは、VOCを含む接着剤を使う装置であってもよい。以下、VOC処理システム100を単に処理システム100と称する。なお、揮発性有機化合物(VOC)は、炭素元素を多く含むため、潜在的なエネルギが高く、気化したガスを高濃度化すると燃料として用いることができる。
【0016】
処理システム100は、貯留タンク4、気化装置19、燃焼装置30、それらを繋ぐ配管類、及び、コントローラ32を主たる要素として構成される。コントローラ32は、処理システム100が有するポンプやバルブなどを制御する。貯留タンク4は、プラントPが排出するVOC含有の残液を一時的に貯留するために備えられている。貯留タンク4の残液は、残液供給管7を通じて気化装置19に送られる。残液供給管7には、残液を貯留タンク4から気化装置19へ送るためのポンプ5と、気化装置19へ供給する残液の流量を調整する流量調整弁6が配置されている。
【0017】
次に、気化装置19について説明する。気化装置19は、回転するドラム18の内部に溶液を供給するとともに、ドラム18内に高温ガスを導入して溶液を乾燥させるドラム式乾燥機である。ドラム18は、密閉された筐体17内に横向きに配置されており、モータ16によって回転する。なお、「横向きに配置」とは、ドラム18の中心線をほぼ水平方向に向けてドラム18を配置することを意味する。
【0018】
ドラム18はその軸方向の両端に開口を有し、残液供給管7は、その開口を通してドラム18内へと伸びている。気化装置19は、ドラム18内に高温ガスを吹き出し、内部の残液を乾燥させる。高温ガスを吹き出す仕組みは次の通りである。ドラム18内に吹き出し、残液を加熱した後の高温ガスは、ドラム18の端部開口を通じて筐体17内に流れ出る。筐体17の壁面には、残液加熱後の高温ガスを回収する高温ガス管12が開口している。高温ガス管12の他端は、ドラム18の内部で開口している。高温ガス管12の途中には、混合弁10、ポンプ8、及び、加熱器9が備えられている。高温ガス管12は、残液加熱後の高温ガスを回収し、加熱器9によって昇温して再びドラム18内へ放出するガス循環路を構成している。混合弁10は、高温ガスに外気を混合するための三方弁である。混合弁10は、外気の導入比率を調整する調整バルブを備えている。ポンプ8は、ドラム18の内部に高温ガスを供給するためのデバイスである。ポンプ8の出力を調整することによって、ドラム18内への高温ガス供給量を調整することができる。
【0019】
ドラム18内において、残液は高温ガスに熱せされて、VOCガス(2次ガス)を発生し乾燥していく。残液が乾燥したのちの残留物は、排出管15によって残留物回収タンク14に回収される。残留物からはVOCが除去されているので残留物は無害である。他方、残液から気化したVOCガス(2次ガス)は、残液を加熱した高温ガスと混ざり、ドラム18外(筐体17内)へ流れ出た後、高温ガス管12によって回収され、加熱されて再びドラム18内へと還流する。即ち、気化装置19は、残液を加熱した後の高温ガスであってVOCを含むガスを還流させることによって、2次ガスに含まれるVOC濃度を高める。予め定められた濃度以上に高濃度化した2次ガスは、ガス供給管21を通じて燃焼装置30へ供給される。なお、気化装置19には、筐体17内部のVOC濃度を計測するガスセンサ13が備えられている。
【0020】
コントローラ32は、燃焼装置30へ供給する2次ガスのVOC濃度が既定値を維持するように、ポンプ5、又は、流量調整弁6(共に気化装置19へ供給する残液の流量を調整するデバイスである)を制御する。或いは、コントローラ32は、燃焼装置30へ供給する2次ガスのVOC濃度が既定値を維持するように、混合弁10(高温ガスに混合する外気の量を調整する)、ポンプ8(ドラム18内に供給する高温ガスの流量を調整する)、又は、加熱器(ドラム18内に供給する高温ガスの温度を調整する)を制御する。或いはコントローラ32は、モータ16を制御し、ドラム18の回転数を調整する。なお、ドラム回転数を上げると、残液の気化が促進され、回転数を下げると、残液の気化が抑制される。コントローラ32は、燃焼装置30から送られる濃度指示信号(燃焼装置30での燃焼に適したVOC濃度を示す信号)に基づいて、気化装置19が生成する2次ガスのVOC濃度を調整する。
【0021】
ガス供給管21には、火炎遮断メッシュ20、閉止ダンパ22、ポンプ23、及び、混合弁24が備えられている。火炎遮断メッシュ20は、目の細かい金属製のメッシュ板である。火炎遮断メッシュ20は、気化装置19の筐体17の内部で2次ガスが燃えた場合であっても、2次ガスの火炎がガス供給管21の奥まで達しないように火炎を遮断する。
【0022】
閉止ダンパ22は、燃焼装置30への2次ガスの供給を遮断するために設けられている。気化装置19内の2次ガスのVOC濃度が過度に上昇した場合、或いは、2次ガスの温度が過度に上昇した場合、コントローラ32が閉止ダンパ22を閉じ、燃焼装置30を保護する。ポンプ23は、燃焼装置30内に供給される2次ガスの供給量を調整する。
【0023】
燃焼装置30は、VOC濃度が高い2次ガスを燃料として、プラントPが排出したVOCガス(1次ガス)を燃焼させる装置である。なお、1次ガスは、プラントPから排出されるガスであってその圧力はほぼ大気圧(1hPa)である。また、1次ガスのVOC濃度は、2次ガスのVOC濃度よりも格段に低い。従って1次ガス自体は、燃料ガスとして用いるには圧力、VOC濃度ともに不足している。これに対して2次ガスは、気化装置19によって圧力が高くなっているとともに、VOC濃度が高濃度化しており、2次ガス自体を燃料として用いることができる。燃焼装置30では、ガス供給管21によって供給された2次ガスはバーナ25へ送られ、ここで燃焼する。なお、ガス供給管21には混合弁24が備えられている。混合弁24は、2次ガスに他の燃料ガス(たとえば都市ガス)を混合するための三方弁である。コントローラ32は、2次ガスの供給量が少ない場合などに、混合弁24を制御し、他の燃料ガスの比率を高める。
【0024】
プラントPが排出するVOC含有の1次ガスは、1次ガス導入管2を通じて燃焼装置30のガスチャンバ26へ送られる。なお、1次ガス導入管2には流量調整弁3が備えられている。コントローラ32によって流量調整弁3が制御され、燃焼装置30へ供給される1次ガスの流量が調整される。
【0025】
燃焼装置30では、バーナ25にて、高圧高濃度の2次ガスを燃料として火炎が発生する。その火炎の熱によって、ガスチャンバ26内にて1次ガスが燃焼する。ガスチャンバ26に隣接してエネルギ回収装置27が備えられており、1次ガスと2次ガスの燃焼排ガスのエネルギが他のエネルギとして回収される。エネルギ回収装置27の一例は、発電機と給湯器の組合せである。
【0026】
処理システム100の利点を説明する。処理システム100は、プラントPが排出するVOC含有の残液とVOC含有のガス(1次ガス)を共に燃焼させ、無害化するとともに、その燃焼エネルギを他のエネルギに変換して利用する。処理システム100は、残液に含まれるVOCを気化して取り出す際、燃料ガスとして利用できるまでにVOCガス(2次ガス)を高圧高濃度化する。高圧高濃度化した2次ガスは燃料ガスとして燃焼装置30に送られる。他方、ほぼ大気圧の1次ガスは、被燃焼材(燃やされる材料)としてそのまま燃焼装置30に送られる。即ち、処理システム100は、プラントPから同時に排出されるVOC含有残液とVOC含有ガス(1次ガス)のうち、前者を燃料として、後者を被燃焼材として利用する。特に、残液からVOCを取り出す過程(気化装置19)において、VOCを取り出す仕組みを利用してVOC濃度を高くする。即ち、VOCを高濃度に含むガスを効率よく得ることができる。処理システム100は、プラントPから同時に排出されるVOC含有残液とVOC含有ガス(1次ガス)の両方を燃料として利用できるまでに高濃度化するよりも、また、両方を被燃焼材として利用するよりも効率がよい。なお、プラントPが排出するVOC含有ガス(1次ガス)のガス圧とVOC濃度の一例は、300〜500Paと300ppm(トルエン換算)である。また、気化装置19が生成する2次ガスの圧力とVOC濃度は、一例では、300〜500Paと3000ppm(トルエン換算)である。
【0027】
次に、第2実施例の処理システム200について説明する。第2実施例の処理システム200は、燃焼装置30の替わりに、発電機を備えたガスタービンを備える。図2に処理システム200の一部のブロック図を示す。処理システム200は、ガスタービン以外の構成は第1実施例の処理システムと同様であるので図示を省略している。即ち図2は、ガスタービン回りの構成だけを示している。
【0028】
プラントPが排出したVOCを含む1次ガスは、1次ガス導入管2を通じてガスタービン47のコンプレッサ43に供給される。なお、コンプレッサ43に適した圧力まで1次ガスを昇圧するために、1次ガス導入管2の途中にプレコンプレッサ42が備えられている。他方、気化装置19(図1参照)から供給される2次ガスは、ガスタービン47の燃焼室45へ供給される。なお、気化装置19からガスタービン47へ2次ガスを供給するガス供給管21の途中には、2次ガスの圧力を燃焼室で燃焼するのに適した圧力まで昇圧する高圧コンプレッサ51が備えられている。また、ガス供給管21の途中には、2次ガスと他の燃料ガス(例えば都市ガス)を混合するための混合弁44が備えられている。
【0029】
ガスタービンの構造は良く知られているので、ここでは概略を説明する。燃焼室45では、2次ガスの燃焼を種火にして、コンプレッサ43にて圧縮された1次ガスを燃焼させる。燃焼室45で生じた高圧ガスのエネルギによってタービン46を回転させる。ガスタービン47は、タービン46の回転を動力源としてコンプレッサ43を回転させるとともに、発電機48を駆動する。
【0030】
ガスタービン47は、タービン46の回転エネルギによって発電機48を駆動し、電気エネルギを得る。また、タービン46を回転させた後の排ガスは、排ガス管49によって給湯装置50へ送られ、水の加熱に利用される。
【0031】
第2実施例におけるガスタービン47の構成を変形した処理システム300を図3に示す。処理システム300では、2次ガスを、燃焼室45ではなく、プレコンプレッサ42で与圧された1次ガスに合流させる。混合弁52が、与圧された1次ガスと2次ガスとを混合する。2次ガスは、気化装置19によって、コンプレッサ43へ供給するのに十分な圧力を有しているので、プレコンプレッサ42を通す必要がない。処理システム300のガスタービン47では、燃焼室45内で種火を起こすための燃料には、外部の燃料ガス(例えば都市ガス)が用いられる。
【0032】
第2実施例の処理システム200、及び、その変形例の処理システム300の利点を述べる。ガスタービンは、燃焼室45にて種火を起こすための燃料と、コンプレッサで圧縮するガスを必要とする。処理システム200では、コンプレッサで圧縮するためのガスとして1次ガスを用い、燃焼室45にて種火を起こすための燃料として2次ガスを用いた。処理システム300では、1次ガスと2次ガスをともにコンプレッサ43で圧縮するガスとして利用した。但し、1次ガスはプレコンプレッサ42で昇圧するが、2次ガスはプレコンプレッサ42を通す必要がない。処理システム200、及び、300は、低圧低濃度の1次ガスと、高圧高濃度の2次ガスを、ガスタービンの夫々に適した箇所に供給する。処理システム200、300はともに、1次ガスと2次ガスを夫々圧力と濃度の違いに応じて適所に供給するので、ガスタービンを駆動する効率がよい。なお、ガスタービン47のコンプレッサ43に供給するガスの圧力(プレコンプレッサ42の出力側のガス圧)の一例は、300〜500Paである。また、ガスタービン47の燃焼室45に供給するガスの圧力(高圧プレコンプレッサ42の出力側のガス圧)の一例は、0.6MPaである。
【0033】
実施例のVOC処理システムは、要約すると次のように説明することができる。実施例のVOC処理システムは、プラントが排出する使用済みのVOC含有溶液及びVOC含有ガス(1次ガス)を処理するVOC処理システムである。そのVOC処理システムは、気化装置、燃焼装置を備える。気化装置は、溶液を加熱してVOC含有の2次ガスを生成する。さらに気化装置は、溶液を高温ガスによって加熱し、当該溶液から蒸発した2次ガスを含む加熱後高温ガスを再加熱して当該溶液を加熱する高温ガスに還流させて2次ガスに含まれるVOC濃度を1次ガスのVOC濃度よりも高くする循環型の気化装置である。燃焼装置は、1次ガスと気化装置が生成した2次ガスを燃焼する。
【0034】
気化装置は、2次ガスを還流させて、2次ガスのVOC濃度を1次ガスのVOC濃度よりも高くする。燃焼装置は、気化装置が生成した2次ガスとともに、プラントが排出するVOC含有の1次ガスを燃焼する。燃焼装置は、外部から供給される他の燃料ガスと2次ガスとの混合ガスを燃料とするバーナを備えており、当該バーナが発生する熱によって1次ガスを燃焼する。燃焼装置は、発電機を備えたガスタービンであってもよい。
【0035】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0036】
2:1次ガス導入管
3:流量調整弁
4:貯留タンク
5、8、23:ポンプ
6:流量調整弁
7:残液供給管
9:加熱器
10、24、44:混合弁
12:高温ガス管
13:ガスセンサ
14:残留物回収タンク
15:排出管
16:モータ
17:筐体
18:ドラム
19:気化装置
20:火炎遮断メッシュ
21:ガス供給管
22:閉止ダンパ
25:バーナ
26:ガスチャンバ
27:エネルギ回収装置
30:燃焼装置
32:コントローラ
42:プレコンプレッサ
43:コンプレッサ
45:燃焼室
46:タービン
47:ガスタービン
48:発電機
49:排ガス管
50:給湯装置
51:高圧コンプレッサ
52:混合弁
100、200、300:VOC処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントが排出する揮発性有機化合物含有の溶液を処理するVOC処理システムであり、
溶液を加熱して揮発性有機化合物含有のガスを生成する気化装置と、
気化装置が生成したガスを燃焼する燃焼装置と、
を備え、
前記気化装置は、溶液を高温ガスによって加熱し、当該溶液から気化した前記ガスを含む加熱後高温ガスを再加熱して当該溶液を加熱する高温ガスに還流させる循環型の気化装置であることを特徴とするVOC処理システム。
【請求項2】
前記燃焼装置は、気化装置が生成したガス(2次ガス)とともに、プラントが排出した揮発性有機化合物含有のガス(1次ガス)を燃焼するように構成されており、
前記気化装置は、2次ガスを含む加熱後高温ガスを還流させて、2次ガスのVOC濃度を1次ガスのVOC濃度よりも高くするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のVOC処理システム。
【請求項3】
前記燃焼装置は、2次ガスを燃料とするバーナを備えており、当該バーナが発生する熱によって1次ガスを燃焼することを特徴とする請求項2に記載のVOC処理システム。
【請求項4】
前記燃焼装置が発生する1次ガスの燃焼排ガスのエネルギを回収するエネルギ回収装置をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のVOC処理システム。
【請求項5】
前記燃焼装置は、発電機を備えたガスタービンであることを特徴とする請求項2に記載のVOC処理システム。
【請求項6】
2次ガスを気化装置から燃焼装置へ送るガス供給路に、2次ガスのVOC濃度が所定濃度以上となった場合にガス供給路を閉鎖する閉止ダンパが設けられていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載のVOC処理システム。
【請求項7】
前記気化装置は、燃焼装置から送られる濃度指示信号に基づいて、燃焼装置へ供給する2次ガスのVOC濃度が目標濃度となるように気化装置への溶液供給量を調整する溶液供給量調整手段を備えていることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載のVOC処理システム。
【請求項8】
前記溶液供給量調整手段は、溶液を気化装置へ供給する供給管に設けられた溶液流量調整弁のバルブ開度、又は、溶液を気化装置へ供給するポンプの出力を調整するものであることを特徴とする請求項7に記載のVOC処理システム。
【請求項9】
気化装置は、ドラム式乾燥機であり、前記溶液供給量調整手段は、ドラム式乾燥機のドラム回転数を調整するものであることを特徴とする請求項7に記載のVOC調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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