説明

VOC除去装置およびVOC除去方法

【課題】VOC吸着ロータにおけるVOCの分離効率が低下するのを回避し、設定によってVOC除去効率を最大にすることのできるVOC除去装置を提供する。
【解決手段】VOCを含む処理対象ガスFを通流させる処理対象ガス通流路Aと、処理対象ガスFよりも高温に加熱された加熱ガスHを通流させる加熱ガス通流路Bと、多数の通流孔34を有するVOC吸着ロータ14と、通流孔34を通流する前の加熱ガスHに水蒸気を添加する水蒸気添加手段24とを備えるVOC除去装置10において、水蒸気添加手段24に、通流孔34を通流した後における処理対象ガスF中のVOC濃度に基づいて加熱ガスHに添加する水蒸気量を制御する水蒸気量制御手段56を設けることにより上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象ガスに含まれているホルムアルデヒド、トルエン、フロン類、ベンゼン、ジクロロメタンおよびシクロヘキサンなどの揮発性有機化合物(VOC)を除去する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒド、トルエン、フロン類、ベンゼン、ジクロロメタンおよびシクロヘキサンなどの揮発性有機化合物(=Volatile Organic Compounds、以下、「VOC」という。)は、洗浄剤や溶剤、あるいは燃料として幅広く利用されている一方で、例えばシックハウス症候群などの健康障害を引き起こす原因となることから、空気中のVOCを除去するためのVOC除去装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1のVOC除去装置1は、図7に示すように、ケーシング2と、ケーシング2内の左右に設けられた仕切板3a、3bと、処理対象ガス通流路4と、加熱空気通流路5と、仕切板3a、3b間に設けられ、処理対象ガスFに含まれたVOCを吸着する円柱状のVOC吸着ロータ7とで構成されている。
【0004】
ケーシング2は、VOC吸着ロータ7が回転可能に嵌め込まれる内部空間9を有しており、該内部空間9にVOC吸着ロータ7が嵌め込まれたとき、VOC吸着ロータ7の両側端とケーシング2の内壁との間に小空間9a、9bが形成される。
【0005】
仕切板3a、3bは、小空間9a、9bにそれぞれ配置され、小空間9a、9bを周方向に仕切り、それぞれ個別空間9a1、9a2と個別空間9b1、9b2とする板材である。また、個別空間9a1と個別空間9b1とは、VOC吸着ロータ7を挟んで互いに対応する位置に設定されている(個別空間9a2と個別空間9b2とも同様)。
【0006】
個別空間9a1、9b1、およびVOC吸着ロータ7における個別空間9a1、9b1に臨む通流孔8の内部空間で、処理対象ガスFを通流させる処理対象ガス通流路4の一部が構成され、また、個別空間9a2、9b2および個別空間9a2、9b2を臨むVOC吸着ロータ7における通流孔8の内部空間で、水蒸気が添加された加熱ガスHを通流させる加熱空気通流路5の一部が構成されている。
【0007】
VOC吸着ロータ7は、ケーシング2の内部空間9において、その中心軸6を中心として回転可能に収容されており、また、中心軸6の軸線方向に多数の通流孔8が形成されている。
【0008】
そうして、処理対象ガス通流路4に処理対象ガスFを通流させるとともに、加熱空気通流路5に加熱ガスHを通流させ、加熱ガスVOC吸着ロータ7を回転させると、VOC吸着ロータ7の各通流孔8は、処理対象ガス通流路4に位置する状態と加熱空気通流路5に位置する状態とを繰り返すことになり、ある通流孔8が処理対象ガス通流路4に位置しているとき、当該通流孔8には処理対象ガスFが通流し、VOC吸着ロータ7が回転して当該通流孔8が加熱空気通流路5に移動したとき、当該通流孔8には加熱ガスHが通流する。その結果、処理対象ガスFがVOC吸着ロータ7の通流孔8を通流する際、処理対象ガスFに含まれたVOCが通流孔8の壁面で吸着されるので、通流孔8から出てくる処理対象ガスF’中のVOC濃度が低減する。
【0009】
続いて、VOCが吸着された通流孔8が加熱空気通流路5に移動すると、今度は、水蒸気を含む加熱ガスHが当該通流孔8を通流し、通流孔8の壁面に吸着されたVOCは加熱ガスHからの熱によって分離され、加熱ガスH’とともに通流孔8から排出される。
【0010】
このようにVOCを吸着した通流孔8のVOC吸着能力は、加熱ガスHが通流することによって再生される。そして、VOC吸着能力が再生された通流孔8は、VOC吸着ロータ7が回転することによって再び処理対象ガス通流路4に移動し、処理対象ガスF中のVOCの吸着除去を行う。
【0011】
ここで、一般的には、VOCの吸着除去を行うに際し、単位時間当たりに導入する加熱ガスHの体積を例えば単位時間当たりに導入する処理対象ガスFの体積の1/5〜1/7に設定され、これにより、VOC除去装置1から排出される加熱ガスH中のVOC濃度を、VOC除去装置1に導入される処理対象ガスF中のVOC濃度の5倍〜7倍に濃縮することができる(つまり、VOCは、処理対象ガスFの量と、加熱ガスHの量との比に応じて濃縮される)。
【0012】
とりわけ、特許文献1のVOC除去装置1では、VOC吸着ロータ7の通流孔8に吸着されたVOCの分離を行う加熱ガスHに水蒸気が添加されており、VOCの分離に際して空気の顕熱だけでなく、空気よりも定圧比熱が大きい水蒸気の顕熱を利用することができることから、通流孔8内面の温度を効率よく高めることができ、VOCの分離効率が向上する。その結果、所定のVOC除去効率(処理対象ガスFからVOCを除去する効率)を改善することができる。
【特許文献1】特開2006−239116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1のVOC除去装置1において、加熱ガスHに添加する水蒸気の量が適切である場合には、上述のようにVOCの分離効率を向上させてVOC除去効率を改善することができるが、加熱ガスHに添加される水蒸気の量が多すぎる場合には、VOC除去効率が却って低下するという問題があった。
【0014】
この理由は以下のように考えられる。すなわち、上述したように、水蒸気の定圧比熱は空気よりも大きく、水蒸気によればより多くの熱量をVOCの分離に用いることができることから、加熱ガスHに添加する水蒸気量はできるだけ多い方が好ましい。
【0015】
ところが、空気中に含まれる水蒸気の量は、空気の体積が同じであればその温度に依存することから、空気の温度が低いほど、含まれる水蒸気の量は少なくなる(ある温度の空気が含むことのできる最大の水蒸気量を「飽和水蒸気量」という)。このため、沸点以上である加熱ガスHの温度が、常温の処理対象ガスFによって冷却されたVOC吸着ロータ7に接触して低下していくと、加熱ガスHに含まれる水蒸気のうち、飽和水蒸気量を上回る分が通流孔8の内面に結露する。
【0016】
加熱空気通流路5に一致する部分に位置する通流孔8の内面に結露水が発生すると、結露水が発生した当該通流孔8が処理対象ガス通流路4に一致する位置まで移動したとき、結露水が通流孔8の内面とVOCとの接触を妨げることから、当該通流孔8では処理対象ガスF中のVOCを新たに吸着することができなくなり、この結果、VOC除去効率が低下する。
【0017】
逆に、加熱ガスHに添加される水蒸気の量が少ない場合には、加熱ガスHが保有する熱量が少なくなることから、通流孔8内面の温度を効率よく高めることができず、この結果、VOCの分離効率が低下し、上述したように、VOC吸着ロータ7から分離させることができなかったVOCが残留することになる。そして、その分だけ新たなVOCを吸着させることができなくなることから、VOC除去効率が低下する。
【0018】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、VOC吸着ロータにおける結露水の発生を回避するとともに、VOC吸着ロータの温度を効率よく高めることにより、VOC除去効率を最大にすることのできるVOC除去装置およびVOC除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載した発明は、「VOCを含む処理対象ガスFを通流させる処理対象ガス通流路Aと、
前記処理対象ガスFよりも高温に加熱された加熱ガスHを通流させる加熱ガス通流路Bと、
前記処理対象ガス通流路Aと前記加熱ガス通流路Bとを横切って配設され、その中心軸38および前記中心軸38の軸線方向に多数の通流孔34が設けられた円柱状の吸着部36を有しており、前記中心軸38を中心として回転することによって前記各通流孔34が前記処理対象ガス通流路Aにあって前記処理対象ガスFが通流される状態と、前記加熱ガス通流路Bにあって前記加熱ガスHが通流される状態とを交互に繰り返すVOC吸着ロータ14と、
前記通流孔34を通流する前の前記加熱ガスHに水蒸気を添加する水蒸気添加手段24とを備えており、
前記水蒸気添加手段24は、前記通流孔34を通流した後における前記処理対象ガスF中のVOC濃度に基づいて前記加熱ガスHに添加する水蒸気量を制御する水蒸気量制御手段56を有することを特徴とするVOC除去装置10」である。
【0020】
本発明によれば、上述した特許文献1のVOC除去装置1と同様に、処理対象ガスF中のVOCを吸着除去するものであるが、さらに、加熱ガスHに水蒸気を添加する水蒸気添加手段24が取り付けられ、かつ、この水蒸気添加手段24の水蒸気量制御手段56が通流孔34を通流した後における処理対象ガスF中のVOC濃度に基づき、加熱ガスHに添加する水蒸気量を制御するようにしている。これにより、上述のように加熱ガスHに添加される水蒸気量が多くなってVOC除去効率が低下すること、あるいは水蒸気量が少なくなり過ぎて通流孔34の温度を十分に高めることができなくなってVOC除去効率が低下するのを回避して、VOC除去効率を任意に設定することが可能となり、もちろん設定によってVOC除去効率を最大にすることもできる。
【0021】
すなわち、VOC除去装置10に導入される処理対象ガスF中のVOC濃度が一定である場合、通流孔34を通流した後における処理対象ガスF’中のVOC濃度をモニタリングすればVOC除去効率を得られる。そして、得られたVOC除去効率と加熱ガスHに添加される水蒸気量との関係は、図3に示すように、所定の水蒸気量をピークとする「上に凸なグラフ」になる。このグラフ(図3)によれば、ピークの水蒸気量(図中のP線)よりも水蒸気量を多くすると(図中のP線よりも右側の領域、以下、この領域を「結露域」という)、VOC吸着ロータ14の通流孔34の内面に結露水が発生してVOC除去効率が低下し、逆に、ピークの水蒸気量よりも水蒸気量を少なくすると(図中のP線よりも左側の領域、以下、この領域を「非結露域」という)、加熱ガスHが保有する熱量が少なくなることからVOC除去効率が低下することがわかる。
【0022】
したがって、通流孔34を通流した後の処理対象ガスF中のVOC濃度をモニタリングしつつ水蒸気量を意図的に減少あるいは増加させることにより、現在の水蒸気量が「結露域」にあるのか、あるいは「非結露域」にあるのかを確認することができる(水蒸気量を減少させたとき、VOC除去効率が上昇すれば「結露域」にあり、逆に、VOC除去効率が降下すれば「非結露域」にある)。このように、現在の水蒸気量が「結露域」にあるのか、あるいは「非結露域」にあるのかを確認することができれば、「結露域」にある場合には水蒸気量を減少させ、逆に「非結露域」にある場合には水蒸気量を増加させることにより、VOC除去効率を任意に設定することが可能となり、もちろん設定によってVOC除去効率を最大にすることもできる。
【0023】
また、VOC除去装置10に導入される処理対象ガスF中のVOC濃度が変動する場合でも、水蒸気量を意図的に減少あるいは増加させ、その後、通流孔34を通流した後の処理対象ガスFのVOC濃度が増加あるいは減少するのを確認することにより、上述のように、現在の水蒸気量が「結露域」にあるのか、あるいは「非結露域」にあるのかを確認することができる(水蒸気量を減少させたとき、該VOC濃度が減少すれば「結露域」にあり、逆に、該VOC濃度が増加すれば「非結露域」にあると考えることができる)。よって、通流孔34を通流した後の処理対象ガスFのVOC濃度を任意に、あるいは最小に設定することができ、この結果、VOC除去効率を任意に、あるいは最大にすることができる。
【0024】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載のVOC除去装置10に関し、「通流孔34を通流した後の前記処理対象ガスF’の一部を前記VOC吸着ロータ14よりも上流側の前記処理対象ガス通流路Aへ循環させる循環ファン57と、
一端が前記VOC吸着ロータ14よりも下流側の前記処理対象ガス通流路Aに接続され、他端が前記循環ファン57に接続された循環用処理対象ガス導出ダクト58と、
一端が前記循環ファン57に接続され、他端が前記VOC吸着ロータ14よりも上流側の前記処理対象ガス通流路Aに接続された循環用処理対象ガス導入ダクト60とを備える」ことを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、通流孔34を通流した後(つまり、VOCが吸着除去された後)の「VOC濃度の低い」処理対象ガスF’の一部が、循環ファン57、循環用処理対象ガス導出ダクト58および循環用処理対象ガス導入ダクト60により、VOC吸着ロータ14よりも上流側の処理対象ガス通流路Aへ循環される。
【0026】
これにより、VOC吸着ロータ14で吸着除去しきれず処理対象ガスF’中に残留したVOCを再びVOC吸着ロータ14に導入することになり、残留したVOCがVOC吸着ロータ14に吸着される機会が増加するので、最終的にVOC除去装置10から排出される処理対象ガスF’中のVOC濃度をより低減することができる。
【0027】
また、処理対象ガス通流路Aへ循環される処理対象ガスF’のVOC濃度は、VOC除去装置10に導入される処理対象ガスFのVOC濃度よりも十分に低いことから、処理対象ガスFに処理対象ガスF’を混合させることにより混合後の処理対象ガスFのVOC濃度が低下し、該処理対象ガスFのVOC濃度が変動する場合には、その変動幅を小さくなる結果、VOC除去装置10から排出される処理対象ガスF’中のVOC濃度の変動幅も小さくすることができる。
【0028】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載のVOC除去装置10に関し、「前記VOC吸着ロータ14を冷却するための冷却ガスRを通流させる冷却ガス通流路Cをさらに備えており、
前記VOC吸着ロータ14が前記中心軸38を中心として回転することにより、前記各通流孔34は、前記処理対象ガス通流路Aにあって前記処理対象ガスFが通流される状態と、前記加熱ガス通流路Bにあって前記加熱ガスHが通流される状態と、さらに、前記冷却ガス通流路Cにあって前記冷却ガスRが通流される状態とをこの順に繰り返す」ことを特徴とする。
【0029】
加熱ガスHによってVOCを十分に分離できる温度まで加熱された状態の通流孔34が再び処理対象ガス通流路Aに移動した場合、当該通流孔34の内面の温度が高いうちは処理対象ガスF中のVOCを吸着除去することができず、処理対象ガスFが通流孔34を通流して該通流孔34の内面が冷却され、その温度が低くなるとVOCの吸着能力を発揮できるようになる。つまり、VOC除去装置10全体で考えた場合、高温の通流孔34でVOCが十分に吸着除去されない分だけVOC除去効率が低下することになる。
【0030】
この点、本発明では、各通流孔34が「加熱ガス通流路Bにあって加熱ガスHが通流される状態」から、「冷却ガス通流路Cにあって冷却ガスRが通流される状態」を経由して「処理対象ガス通流路Aにあって処理対象ガスFが通流される状態」になる。これにより、加熱ガスHによってVOCを分離できる温度まで十分に加熱された状態の通流孔34が再び処理対象ガス通流路Aに移動する前に、冷却ガスRにより、処理対象ガスF中のVOCを吸着除去できる程度まで当該通流孔34の温度を十分に冷却することができるので、上述したような、VOC除去効率の低下を防止することができる。
【0031】
請求項4に記載した発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のVOC除去装置10に関し、「VOC吸着ロータ14よりも下流側の加熱ガス通流路Bには、加熱ガスHに含まれたVOCを分解するVOC分解機28が設けられている」ことを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、濃縮されたVOCを含有する加熱ガスHが加熱ガス通流路Bを通じてVOC分解機28に導かれ、このVOC分解機28において加熱ガスH中のVOCが分解・無害化される。
【0033】
これにより、VOCを含有する加熱ガスHを処理するための装置を別途用意する必要がなくなり、VOC分解機28においてVOCを無害化した後の加熱ガスHをそのまま大気に排出することができる。とりわけ、加熱ガスHの体積を処理対象ガスFの体積の数十分の一に設定すると、VOC分解機28に導入される加熱ガスH中のVOC濃度はVOC除去装置10に導入される処理対象ガスF中のVOC濃度の数十倍に濃縮されることから、最初にVOC分解機28の温度をVOCの発火点まで上昇させておけば、後は加熱ガスHを連続的にVOC分解機28に導入するだけでVOCの燃焼熱によりVOC分解機28の温度を維持できる。このため、VOC分解機28の熱源となる電気や燃料等の必要量が減少することとなり、VOC除去装置10としてのランニングコストを低減させることができる。
【0034】
請求項5に記載した発明は、「VOCを含む処理対象ガスFを通流させる処理対象ガス通流路Aと、
前記処理対象ガスFよりも高温に加熱されるとともに水蒸気が添加された加熱ガスHを通流させる加熱ガス通流路Bと、
前記処理対象ガス通流路Aと前記加熱ガス通流路Bとを横切って配設され、その中心軸38および前記中心軸38の軸線方向に多数の通流孔34が設けられた円柱状の吸着部36を有しており、前記中心軸38を中心として回転することによって前記各通流孔34が前記処理対象ガス通流路Aにあって前記処理対象ガスFが通流される状態と、前記加熱ガス通流路Bにあって前記加熱ガスHが通流される状態とを交互に繰り返すVOC吸着ロータ14とを備えるVOC除去装置10を用いたVOC除去方法において、
前記処理対象ガス通流路Aに前記処理対象ガスFを通流するとともに、前記加熱ガス通流路Bに前記加熱ガスHを通流し、
前記加熱ガスHに添加する水蒸気量を、前記通流孔34を通流した後における前記処理対象ガスF中のVOC濃度に基づいて設定することを特徴とするVOC除去方法」である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、VOC吸着ロータにおける結露水の発生を回避するとともに、VOC吸着ロータの温度を効率よく高めることにより、設定によってVOC除去効率を最大にすることのできるVOC除去装置およびVOC除去方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を図示実施例に従い、まず、VOC吸着ロータに処理対象ガスおよび加熱ガスを通流させる第1実施例について説明し、続いて、上記2種類のガスに加えて、VOC吸着ロータに冷却ガスを通流させる第2実施例について説明する。なお、第2実施例の説明における第1実施例との共通部分については、第1実施例の説明を援用してその説明を省略し、相違部分を中心に説明する。
【0037】
(第1実施例)
以下、本発明を図示実施例にしたがって説明する。本発明を適用したVOC除去装置10は、VOCを含む処理対象ガスFから該VOCを吸着除去するための装置であり、図1および図2(図1におけるII−II部分の斜視図。なお、仕切板33a、33b、33c、33dの位置は図2が正しく、図1では図面として見易くするためにこれら仕切板の位置を移動させている。)に示すように、ケーシング12と、VOC吸着ロータ14と、処理対象ガス導入ダクト16と、処理対象ガス排出ダクト18と、加熱ガス導入ダクト20と、加熱ガス排出ダクト22と、水蒸気添加手段24と、必要に応じて設けられる処理対象ガス循環装置26およびVOC分解機28とで構成されている。なお、本実施例では、VOC吸着ロータ14を再生するための加熱ガスHとして加熱された空気を用いているが、当該空気に代えて窒素ガス等の不燃ガスを用いてもよい。
【0038】
ケーシング12は、VOC吸着ロータ14が回転可能に嵌め込まれる内部空間30を有するステンレス鋼製(なお、腐食のおそれがない部分に対しては、ステンレス鋼に代えて炭素鋼を使用してもよい。以下、他の部材についても同じ)の円筒体であり、その両端面には、一対の蓋32a、32bが取り付けられている。また、当該一対の蓋32a、32bの中央には、それぞれケーシング12の内方向に延びる円筒状の鞘35a、35bが設けられている。
【0039】
また、ケーシング12の内部空間30の長手方向の寸法は、VOC吸着ロータ14の長手方向の寸法よりも長く設定されており、内部空間30にVOC吸着ロータ14が嵌め込まれたとき、VOC吸着ロータ14の両側面14a、14bと蓋32a、32bの内側面との間には、それぞれ小空間30a、30bが形成される。
【0040】
一方の小空間30aには、該小空間30aを2つの個別空間30a1、30a2に仕切る一対の仕切板33a、33bが取り付けられており、また、他方の小空間30bには、同様に、該小空間30bを2つの個別空間30b1、30b2に仕切る一対の仕切板33c、33dが取り付けられている。
【0041】
また、個別空間30a1および30b1の中心軸方向に直交する断面積と個別空間30a2および30b2の中心軸方向に直交する断面積との比は、処理対象ガスFの風量と加熱ガスHの風量との比となるように設定されている。また、個別空間30a1と個別空間30b1とは、VOC吸着ロータ14を挟んで互いに対応する位置に設定されている(個別空間30a2と個別空間30b2とも同様)。
【0042】
仕切板33a、33b、33c、33dは、ステンレス鋼製の矩形状板材であり、それぞれ一方の長辺が蓋32a、32bの内側面に接続されており、該一方の長辺に対向する他方の長辺は、VOC吸着ロータ14の側面14a、14bの近傍(VOC吸着ロータ14の回転を阻害しない最小の隙間をあけて)に配設されている。また、残りの辺のうち、一方の短辺は、ケーシング12の内側面に接続されており、他方の短辺は、鞘35a、35bの外周面に接続されている。これにより、後述するように、個別空間30a1および30b1を通流する処理対象ガスFと、個別空間30a2および30b2を通流する加熱ガスHとが互いに混ざり合うおそれが極小化されている。
【0043】
ケーシング12に取り付けられた一方の蓋32aの個別空間30a1を臨む位置には、処理対象ガス導入ダクト16が接続される処理対象ガス導入孔44が設けられており、個別空間30a2を臨む位置には、加熱ガス排出ダクト22が接続される加熱ガス排出孔51が設けられている。また、他方の蓋32bの個別空間30b1を臨む位置には、処理対象ガス排出ダクト18が接続される処理対象ガス排出孔46が設けられており、個別空間30b2を臨む位置には、加熱ガス導入ダクト20が接続される加熱ガス導入孔48が設けられている。
【0044】
VOC吸着ロータ14は、吸着部36と、中心軸38とで構成されている。吸着部36は、その中心軸方向(後述する中心軸38の軸線方向)に処理対象ガスFあるいは加熱ガスHが通流する多数の通流孔34が形成された円柱状の構造体であり、これら通流孔34の内表面にはゼオライトが担持あるいは積層されている。ゼオライトは、ケイ素とアルミニウムと酸素とが三次元的に組み合わさった骨格構造を有しており、この骨格中に開かれた分子レベルの細穴によってVOCが吸着される。なお、吸着部36の材料は、VOCを吸着する能力があれば上記のものに限られない。
【0045】
中心軸38は、円柱状の吸着部36における軸方向の中心を貫通するように設けられたステンレス鋼製の中空パイプ材であり、その両端部がケーシング12における鞘35a、35bに挿通され、軸受け40によって回転可能に保持されている。
【0046】
また、中心軸38の一方端には、電動機42がギア、プーリあるいはタイミングベルト等の動力伝達手段(図示せず)を介して接続されている。
【0047】
処理対象ガス導入ダクト16は、ステンレス鋼板を組み合わせて形成された断面円形状の筒状体であって(もちろん、断面長方形状など他の形状であってもよい。以下、すべてのダクトでも同じ)、その一端が処理対象ガスFの発生源(図示せず)側に設けられており、他端がケーシング12の一方の蓋32aに設けられた処理対象ガス導入孔44に接続されている。また、処理対象ガス導入ダクト16には、処理対象ガス通流ファン(図示せず)が取り付けられており、処理対象ガスFをその発生源からVOC吸着ロータ14に向けて通流させるようになっている。なお、この処理対象ガス通流ファンは、処理対象ガス排出ダクト18に取り付けてもよい。
【0048】
処理対象ガス排出ダクト18は、その一端が処理対象ガスFの排出先に設けられており、他端がケーシング12の他方の蓋32bに設けられた処理対象ガス排出孔46に接続されている。
【0049】
したがって、処理対象ガス導入ダクト16の内部空間と、ケーシング12内の個別空間30a1と、VOC吸着ロータ14の通流孔34(両端が個別空間30a1および30b1に面しているもの)と、個別空間30b1と、処理対象ガス排出ダクト18の内部空間とで、処理対象ガスFを通流させる処理対象ガス通流路Aが形成されることになる。
【0050】
処理対象ガス排出ダクト18には、処理対象ガスF’に含まれているVOCの濃度を連続的に測定し、その測定結果を出力するVOC濃度測定器80が取り付けられている。
【0051】
VOC濃度測定器80には、VOCが接触したとき、当該VOCの濃度と特性に応じて膜厚が変化するセンサーチップが使用されており、その膜厚の変化に応じた干渉光強度の変化をモニターすることによってVOCの濃度を測定できる(干渉増幅反射法[IER法])。もちろん、他の測定方法による測定器を使用してもよい。
【0052】
加熱ガス導入ダクト20は、その一端が加熱用のガス(本実施例では空気が用いられている)を取り入れる加熱用ガス取入口(図示せず)側に設けられており、他端がケーシング12の他方の蓋32bに設けられた加熱ガス導入孔48に接続されている。また、加熱ガス導入ダクト20には、加熱用ガス取入口から取り入れられたガスを所定の温度まで加熱して加熱ガスHにするガス加熱器50が取り付けられている。なお、ガス加熱器50の熱源には、電気ヒータ、ガスあるいは油燃焼バーナ、プラズマトーチなどどのような方式を用いてもよい。
【0053】
また、加熱ガス導入ダクト20には、加熱ガス通流ファン(図示せず)が取り付けられており、加熱ガスHを加熱ガス取入口からVOC吸着ロータ14に向けて通流させるようになっている。なお、この加熱ガス通流ファンは、加熱ガス排出ダクト22に取り付けても良い。
【0054】
加熱ガス排出ダクト22は、その一端が加熱ガスHの排出先に設けられており、他端がケーシング12の一方の蓋32aに設けられた加熱ガス排出孔51に接続されている。
【0055】
したがって、加熱ガス導入ダクト20の内部空間と、ケーシング12内の個別空間30b2と、VOC吸着ロータ14の通流孔34(両端が個別空間30b2および30a2に面しているもの)と、個別空間30a2と、加熱ガス排出ダクト22の内部空間とで、加熱ガスHを通流させる加熱ガス通流路Bが形成されることになる。
【0056】
水蒸気添加手段24は、水蒸気発生源52と水蒸気導入ダクト54とで構成されている。水蒸気発生源52は、水を加熱することによって水蒸気を発生させるものであり、その熱源として電気ヒータ、ガスあるいは油燃焼バーナ、プラズマトーチなどを用いることができる。もちろん、水蒸気を発生させる方法は前述したものだけに限定されるものではなく、例えば、マイクロ波で水分子を振動させることにより水蒸気を発生させるものであってもよい。なお、VOC除去装置10の外部に水蒸気発生源がある場合には、水蒸気添加手段24に水蒸気発生源52を設ける必要はなく、水蒸気導入ダクト54の一端を当該水蒸気発生源に接続すればよい。
【0057】
水蒸気発生源52は、水蒸気量制御手段56を備えており、VOC濃度測定器80から出力された処理対象ガスF中のVOC濃度測定結果を受信し、当該結果に基づいて水蒸気量制御手段56が水を加熱する熱量を制御することにより、水蒸気発生源52から発生させる水蒸気の量を制御することができるようになっている(具体的な制御方法については後述する)。もちろん、水蒸気導入ダクト54にダンパを設け、該ダンパの開度によって加熱ガスHに導入する水蒸気の量を制御してもよい。
【0058】
水蒸気導入ダクト54は、その一端が水蒸気発生源52に接続され、他端が加熱ガス導入ダクト20に接続されている。なお、水蒸気発生源52を加熱ガス導入ダクト20に直接取り付けてもよく、この場合、水蒸気導入ダクト54を設ける必要はない。
【0059】
処理対象ガス循環装置26は、循環ファン57と、循環用処理対象ガス導出ダクト58と、循環用処理対象ガス導入ダクト60とで構成されている。循環用処理対象ガス導出ダクト58および循環用処理対象ガス導入ダクト60は、それぞれ炭素鋼板を組み合わせて形成された断面円形状の筒状体であり、循環用処理対象ガス導出ダクト58の一端は、処理対象ガス排出ダクト18に接続されており、他端は循環ファン57の吸気側端に接続されている。また、循環用処理対象ガス導入ダクト60の一端は、循環ファン57の排気側端に接続されており、他端は処理対象ガス導入ダクト16に接続されている。
【0060】
循環ファン57は、VOC吸着ロータ14の通流孔34を通流した後の処理対象ガスF’(すなわち、VOCが吸着除去された後の処理対象ガスF’)の一部を処理対象ガス排出ダクト18から処理対象ガス導入ダクト16へ循環させるためのものであり、処理対象ガスF’の成分や温度条件等に応じて、軸流ファンや遠心ファンなどを用いることができる。
【0061】
VOC分解機28は、VOC吸着ロータ14を通過した加熱ガスH’に含まれている濃縮VOCを分解するためのものであり、VOC分解機28の内部空間に設けられた電気ヒータからの熱によって当該内部空間の温度をVOCの着火点以上(例えば、750〜800℃)に維持されており、濃縮されたVOCを含んだ加熱ガスH’が、加熱ガス排出ダクト22を通流してVOC分解機28の内部空間に導入される。もちろん、VOC分解機28の熱源としては電気ヒータに限られず、ガスあるいは油燃焼バーナやプラズマトーチを用いてもよい。
【0062】
また、VOC分解機28の内部空間に触媒を設けることにより、VOCを熱分解ではなく触媒によって分解させるようにしてもよい。例えば、触媒を用いたVOC分解機28を有するVOC除去装置10の場合、図6に示すように、加熱ガス排出ダクト22において、白金触媒をその内部空間に収容したVOC分解機28が設けられ、VOC分解機28よりも加熱ガスHの上流側には、加熱ガスHの温度を350〜400℃まで予熱する(熱源は、電気ヒータをはじめ、どのようなものでもよい)加熱ガス予熱器62が設けられ、さらに加熱ガス予熱器62よりも加熱ガスHの上流側には、加熱ガス予熱器62で予熱され、VOC分解機28を通過した後の加熱ガスHと、VOC吸着ロータ14から排出された加熱ガスHとの間で熱交換を行う(もちろん、VOC分解機28を通過した後の加熱ガスHの方が高温である)加熱ガス熱交換器64が設けられている。
【0063】
次に、VOC除去装置10を用いて処理対象ガスFからVOCを除去する手順について説明する(図1および図2参照)。VOC除去装置10のメインスイッチ(図示せず)をオンにすると、処理対象ガス通流ファン(図示せず)が起動し、VOCを含む処理対象ガスFが処理対象ガス通流路Aを通流する。同時に加熱ガス通流ファン(図示せず)およびガス加熱器50が起動し、加熱ガス取入口(図示せず)から取り入れられたガス(本実施例では空気)がガス加熱器50で電気ヒータからの熱を受けて加熱ガスHとなった後、加熱ガス通流路Bを通流する。また、電動機42が起動し、当該電動機42の回転力がその出力端からギア(図示せず)を介してVOC吸着ロータ14の中心軸38に伝達され、中心軸38を中心として円筒状の吸着部36が回転する(例えば、80分〜120分/1回転)。
【0064】
処理対象ガス通流路Aを構成する処理対象ガス導入ダクト16の内部空間を通り、ケーシング12の蓋32aに設けられた処理対象ガス導入孔44からケーシング12の個別空間30a1に導入された処理対象ガスF(VOCを含む)は、VOC吸着ロータ14の吸着部36の一方の側面14aから通流孔34に入り込む。そして、通流孔34を通過する間に、処理対象ガスF中のVOCは該通流孔34の内面に担持または積層されたゼオライトによって処理対象ガスFから吸着除去される。
【0065】
VOCが除去され、通流孔34から個別空間30b1に出た処理対象ガスF’は、蓋32bに設けられた処理対象ガス排出孔46から処理対象ガス排出ダクト18に導かれる。そして、一部の処理対象ガスF’は、循環用処理対象ガス導出ダクト58、循環ファン57および循環用処理対象ガス導入ダクト60をこの順に通過して処理対象ガス導入ダクト16に戻されて循環する。そして、循環しない残部の処理対象ガスF’は、処理対象ガス排出ダクト18を通って排出先に排出される。
【0066】
加熱ガス導入ダクト20を通流する加熱ガスHには、加熱ガス導入ダクト20を通流する際、水蒸気発生源52で発生した水蒸気が水蒸気導入ダクト54を介して添加される。水蒸気が添加された加熱ガスHは、ケーシング12の蓋32bに設けられた加熱ガス導入孔48からケーシング12の個別空間30b2に導入され、VOC吸着ロータ14の吸着部36における他方の側面14bから通流孔34に入り込む。
【0067】
このとき、通流孔34を通過する加熱ガスHの熱および当該加熱ガスHに含まれた水蒸気の蒸発潜熱によって加熱ガス通流路Bに位置する通流孔34の温度を上げることにより、通流孔34の内面に担持されたゼオライトに吸着されていたVOCが効率よく分離され、加熱ガスH’とともに通流孔34から流出する。このとき、単位時間当たりに導入する加熱ガスHの体積を、例えば、単位時間当たりに導入する処理対象ガスFの体積の1/5〜1/50に設定することにより、VOC除去装置10から排出される加熱ガスH中のVOC濃度を、VOC除去装置10に導入される処理対象ガスF中のVOC濃度のほぼ5倍〜50倍に濃縮することができる(なお、処理対象ガスFの体積と加熱ガスHの体積との比に応じてVOC吸着ロータ14の両側面14a、14bにおける処理対象ガス通流路Aに含まれる面積と加熱ガス通流路Bに含まれる面積との比を設定することにより、両通流路における内圧がほぼ同じになり、処理対象ガスFと加熱ガスHとが混ざり合うおそれをさらに小さくすることができる)。つまり、VOCは、処理対象ガスFの風量と、加熱ガスHの風量との比に応じて濃縮される。
【0068】
濃縮されたVOCを含有する加熱ガスH’は、蓋32aに設けられた加熱ガス排出孔51から加熱ガス排出ダクト22に入り、当該加熱ガス排出ダクト22に設けられたVOC分解機28に導かれる。
【0069】
VOC分解機28に導入された加熱ガスH’に含まれるVOCは、VOC分解機28に設けられた電気ヒータからの熱を受け、加熱ガスH’中の酸素と結合することによって酸化分解し、無害化される。
【0070】
VOC分解機28においてVOCが無害化されることによって大気排出が可能となった加熱ガスH’は、加熱ガス排出ダクト22を通って排出先まで導かれた後、大気に排出される。
【0071】
また、VOC分解機28に触媒を用いる場合、図6に示すように、VOC吸着ロータ14から排出された加熱ガスH’は、加熱ガス熱交換器64においてVOC分解機28を通過した後の加熱ガスHからの熱を受け、さらに加熱ガス予熱器62において350〜400℃まで昇温された後、VOC分解機28に導入される。このとき、加熱ガスH’と同じ温度まで昇温されたVOCは、VOC分解機28内の白金触媒に接触することによって分解し、無害化される。含有するVOCが無害化された加熱ガスH’は加熱ガス熱交換器64に導入され、上述のようにVOC吸着ロータ14から排出された加熱ガスH’に熱を与えた後、加熱ガス排出ダクト22を通って排出先まで導かれ、大気に放出される。このように触媒を組み合わせることにより、VOCの着火温度(例えば、750〜800℃)よりも低い温度でVOCを十分に分解し、無害化することができる。
【0072】
本実施例に係るVOC除去装置10は、図1に示すように、加熱ガスHに水蒸気を添加する水蒸気添加手段24を備えており、この水蒸気添加手段24が有する水蒸気量制御手段56によって通流孔34を通流した後における処理対象ガスF中のVOC濃度に基づいて加熱ガスHに添加する水蒸気量が制御されるので、前述のように、加熱ガスHに添加される水蒸気量が多くなってVOC除去効率が低下するのを回避して、VOC除去効率を任意に設定することが可能となり、もちろん設定によってVOC除去効率を最大にすることもできる。
【0073】
すなわち、VOC濃度測定器80で測定されたVOC濃度信号は、信号線によって水蒸気添加手段24を構成する水蒸気発生源52の水蒸気量制御手段56まで伝達される。水蒸気量制御手段56は、VOC濃度測定器80で測定された、処理対象ガス導入ダクト16における処理対象ガスFに含まれているVOC濃度(つまり、VOCが除去される前の処理対象ガスF中のVOC濃度)に基づき、現在の水蒸気量が結露域にある場合には水蒸気量を減少させ、現在の水蒸気量が非結露域にある場合には増加させることにより、VOC除去効率を上昇させる。これにより、VOC除去効率を任意に設定することが可能となり、もちろん設定によってVOC除去効率を最大にすることもできる。
【0074】
なお、処理対象ガス導入ダクト16にもVOC濃度測定器82を設けてもよい。この場合、VOC濃度測定器80、82で測定されたVOC濃度信号を受けた水蒸気量制御手段56は、VOC濃度測定器82で測定された、VOCが除去される前の処理対象ガスF中のVOC濃度、およびVOC濃度測定器80で測定された、VOCが除去された後の処理対象ガスF’中のVOC濃度に基づいてVOC除去効率を算出する。そして、水蒸気量制御手段56は、上述したような加熱ガスHに添加される水蒸気量と当該VOC除去効率との関係に基づき、現在の水蒸気量が結露域にある場合には水蒸気量を減少させ、現在の水蒸気量が非結露域にある場合には増加させることにより、VOC除去効率を上昇させる。これにより、VOC除去効率を任意に設定することが可能となり、もちろん設定によってVOC除去効率を最大にすることもできる。
【0075】
(第2実施例)
第2実施例に係るVOC除去装置10も、第1実施例と同様、図4および図5に示すように、ケーシング12と、VOC吸着ロータ14と、処理対象ガス導入ダクト16と、処理対象ガス排出ダクト18と、加熱ガス導入ダクト20と、加熱ガス排出ダクト22と、水蒸気添加手段24と、必要に応じて設けられるVOC分解機28とで構成されており、加えて、第2実施例には、冷却ガス導入ダクト100と、冷却ガス排出ダクト102とが設けられている。なお、図4において破線で描いているように、第2実施例においても必要に応じて処理対象ガス循環装置26を適用することができる。
【0076】
ケーシング12内における一方の小空間30aには、該小空間30aを3つの個別空間30a1、30a2、30a3に仕切る仕切板33a、33b、33cが取り付けられており、他方の小空間30bには、該小空間30bを3つの個別空間30b1、30b2、30b3に仕切る仕切板33d、33e、33fが取り付けられている。また、個別空間30a1および30b1の中心軸方向に直交する断面積と個別空間30a2および30b2の中心軸方向に直交する断面積との比は、処理対象ガスFの量と加熱ガスHの量との比となるように設定されており、個別空間30a2および30b2の中心軸方向に直交する断面積と個別空間30a3および30b3の中心軸方向に直交する断面積とは互いにほぼ等しく形成されている。また、個別空間30a3と個別空間30b3とは、VOC吸着ロータ14を挟んで互いに対応する位置に設定されている(個別空間30a1,30a2と個別空間30b1、30b2とも同様)。
【0077】
ケーシング12に取り付けられた一方の蓋32aには、処理対象ガス導入孔44および加熱ガス排出孔51に加えて、冷却ガス排出ダクト102が接続される冷却ガス排出孔104が個別空間30a3を臨む位置に設けられており、他方の蓋32bには、処理対象ガス排出孔46および加熱ガス導入孔48に加えて、冷却ガス導入ダクト100が接続される冷却ガス導入孔106が個別空間30b3を臨む位置に設けられている。
【0078】
冷却ガス導入ダクト100は、その一端が冷却用のガス(本実施例では空気が用いられている)を取り入れる冷却ガス取入口(図示せず)側に設けられており、他端がケーシング12の他方の蓋32bに設けられた冷却ガス導入孔106に接続されている。
【0079】
また、冷却ガス導入ダクト100には、冷却ガス通流ファン(図示せず)が取り付けられており、冷却ガスRを冷却ガス取入口からVOC吸着ロータ14に向けて通流させるようになっている。なお、この冷却ガス通流ファンは、冷却ガス排出ダクト102に取り付けても良い。
【0080】
冷却ガス排出ダクト102は、その一端が処理対象ガス導入ダクト16に接続されており、他端がケーシング12の一方の蓋32aに設けられた冷却ガス排出孔104に接続されている。
【0081】
したがって、冷却ガス導入ダクト100の内部空間と、ケーシング12の個別空間30b3と、VOC吸着ロータ14の通流孔34(両端が個別空間30a3および30b3に面しているもの)と、個別空間30a3と、冷却ガス排出ダクト102の内部空間とで、冷却ガスRを通流させる冷却ガス通流路Cが形成されることになる。
【0082】
次に、VOC除去装置10を用いて処理対象ガスFからVOCを除去する手順について説明する。VOC除去装置10のメインスイッチ(図示せず)をオンにすると、冷却ガス通流ファン(図示せず)が起動し、冷却ガス取入口(図示せず)から取り入れられたガス(本実施例では空気)が冷却ガス通流路Cを通流する。
【0083】
第1実施例で説明したように、処理対象ガス通流路Aを構成する処理対象ガス導入ダクト16を通り、ケーシング12の蓋32aに設けられた処理対象ガス導入孔44からケーシング12の個別空間30a1に導入された処理対象ガスF中のVOCは、処理対象ガスFがVOC吸着ロータ14の通流孔34を通過する間に、処理対象ガスF中のVOCは該通流孔34の内面に担持または積層されたゼオライトによって処理対象ガスFから吸着除去される。また、水蒸気が添加された加熱ガスHは、ケーシング12の蓋32bに設けられた加熱ガス導入孔48からケーシング12の個別空間30b2に導入されてVOC吸着ロータ14の側面14bから通流孔34に入り込み、該通流孔34の温度を上げることにより、通流孔34の内面に担持されたゼオライトに吸着されていたVOCが効率よく分離され、加熱ガスH’とともに通流孔34から流出する。
【0084】
冷却ガス通流路Cを構成する冷却ガス導入ダクト100を通り、ケーシング12の蓋32bに設けられた冷却ガス導入孔106からケーシング12の個別空間30b3に導入された冷却ガスRは、加熱ガスHが通流することによって高温となった通流孔34に導かれる。これにより、VOCが分離する程度まで高温になっていた通流孔34は、吸着部36の回転に伴って処理対象ガス通流路Aに移動するまでの間において、冷却ガスRが通流することによって再びVOCを吸着できる温度まで冷却される。
【0085】
通流孔34から排出された冷却ガスR’(通流孔34から分離されたVOCを若干含んでいる)は、蓋32aに設けられた冷却ガス排出孔104から冷却ガス排出ダクト102に導かれ、冷却ガス排出ダクト102を通流して処理対象ガス導入ダクト16に導入されて処理対象ガスFと混合される。これにより、冷却ガスRに含まれている若干のVOCは、処理対象ガスF(混合された冷却ガスR’を含む)が吸着部36の通流孔34を通流する際に再び除去されることになる。
【0086】
[実施例]
第2実施例に係るVOC除去装置10を用いて処理対象ガスFからVOCを除去した結果を示す。800ppmのシクロヘキサン(C612)を含む30m3/分の処理対象ガスF(常温)を処理対象ガス導入ダクト16に通流させるとともに、120℃・0.6m3/分の加熱空気を加熱ガスHとして加熱ガス導入ダクト20に通流させた。その結果、加熱ガスHに添加される水蒸気量は、100〜120cc/分(200℃)となり、処理対象ガス排出ダクト18におけるVOC(シクロヘキサン)濃度は40ppmとなった(VOC除去効率=95%)。
【0087】
なお、VOC吸着ロータ14の回転速度とVOC除去効率との間にも、所定の回転速度をピークとする「上に凸なグラフ」となるような関係があるので、VOC濃度測定器80、82で測定された各VOC濃度から算出されたVOC除去効率に基づき、加熱ガスHに添加する水蒸気量だけでなく、VOC吸着ロータ14の回転速度を当該VOC除去効率に基づいて制御してもよい。もちろん、VOC除去装置10の試運転(例えば、出荷段階や現場据付直後)において、VOC除去効率を測定することによって最適な回転速度に設定し、回転速度を固定して運転してもよい。
【0088】
また、本実施例では、処理対象ガスFの通流方向と加熱ガスHの通流方向とが互いに対向するように処理対象ガス通流路Aと加熱ガス通流路Bとが形成されているが、処理対象ガスFの通流方向と加熱ガスHの通流方向とが互いに並行になるように処理対象ガス通流路Aと加熱ガス通流路Bとを形成してもよい。
【0089】
また、処理対象ガス通流路Aに対する加熱ガス通流路Bの位置はどのようなものであってもよいが、図2や図5に示すように、処理対象ガス通流路Aを加熱ガス通流路Bよりも高い位置に設定するのが好適である。このようにすれば、万一、加熱ガス通流路Bにおいて結露水が発生した場合でも、当該結露水が重力によって処理対象ガス通流路Aまで伝わり、通流孔34に流入してVOC除去効率が低下するおそれを回避できるからである。
【0090】
また、本実施例のVOC分解機28では、電気ヒータからの熱によってVOCを酸化分解しているが、通流孔34を通流した後における加熱ガスH中のVOC濃度が高い場合、最初に電気ヒータの熱でVOC分解機28の温度をVOCの発火点まで上昇させておけば、高濃度のVOCを含む加熱ガスHを連続的にVOC分解機28に導入するだけで、VOCの燃焼熱によりVOC分解機28の温度を維持できるので、それ以降電気ヒータを稼働させる必要がなくなり、VOC除去装置10のランニングコストを低減させることができる。
【0091】
また、上述の実施例では、VOC濃度測定器80からのVOC濃度値に基づいて水蒸気発生源52の水蒸気量制御手段56が加熱ガスHに添加する水蒸気量を制御するようにしていたが、処理対象ガスFの温度、量およびそのVOC濃度や、加熱ガスHの温度および量などがほとんど変化しない場合、VOC除去装置10の試運転において、通流孔34を通流した後における加熱ガスH中のVOC濃度を測定しながら加熱ガスHに添加する水蒸気量を設定し、当該設定後は一定の水蒸気量で運転するようにしてもよい。
【0092】
また、VOC吸着ロータ14は常時回転しているので、処理対象ガス通流路Aから加熱ガス通流路Bに入る直前の通流孔34に流入した処理対象ガスFが通流孔34から流出する際には、加熱ガス通流路Bに流出することとなり、その結果、該処理対象ガスFは、加熱ガスHに混入することになる。同様に、加熱ガス通流路Bから処理対処ガス通流路Aに入る直前の通流孔34に流入した加熱ガスHは、処理対象ガスFに混入することになる。
【0093】
このように、加熱ガスHに混入する処理対象ガスF(あるいは、処理対象ガスFに混入する加熱ガスH)の量は、VOC除去装置10に導入される処理対象ガスFや加熱ガスH全体からすればごくわずかではあるものの、例えば、VOCが濃縮された加熱ガスHに、処理対象ガスFにおけるVOC以外の成分が混入する可能性を極小化したいという要求がある。そのような要求には、処理対象ガス通流路Aを構成する個別空間30a1の位置と個別空間30b1の位置とをずらしておくことで対応することができる。具体的にいえば、通流孔34の全長と処理対象ガスFの通流孔34における流速とから、処理対象ガスFが通流孔34を通過するのに要する時間を求める。次に、当該時間でVOC吸着ロータ14が回転する角度を求め、個別空間30a1の位置に対する個別空間30b1の位置をVOC吸着ロータ14の回転方向にその角度だけずれた位置に設定する。これにより、処理対象ガス通流路Aから加熱ガス通流路Bに入る直前の通流孔34に流入した処理対象ガスFも、該通流孔34を通過後、処理対象ガス通流路Aに流出させることができるので、加熱ガスHに処理対象ガスFが混入する可能性を極小化することができる。同様にして、加熱ガスHが処理対象ガスFに混入する可能性も極小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】第1実施例にかかるVOC除去装置を示す概念図である。
【図2】図1におけるII−II部分の拡大斜視図である。
【図3】加熱ガスに添加する水蒸気量とVOC除去効率との関係を示すグラフである。
【図4】第2実施例にかかるVOC除去装置を示す概念図である。
【図5】第2実施例に関し、VOC吸着ロータ内を通流するガスの流れを示す概念図である。
【図6】他の実施例によるVOC除去装置を示す概念図である。
【図7】従来技術を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
10…VOC除去装置
12…ケーシング
14…VOC吸着ロータ
16…処理対象ガス導入ダクト
18…処理対象ガス排出ダクト
20…加熱ガス導入ダクト
22…加熱ガス排出ダクト
24…水蒸気添加手段
26…処理対象ガス循環装置
28…VOC分解機
30…(ケーシングの)内部空間
32a、32b…蓋
33a、33b、33c、33d、33e、33f…仕切板
34…通流孔
35a、35b…鞘
36…吸着部
38…中心軸
40…軸受け
42…電動機
44…処理対象ガス導入孔
46…処理対象ガス排出孔
48…加熱ガス導入孔
50…ガス加熱器
51…加熱ガス排出孔
52…水蒸気発生源
54…水蒸気導入ダクト
56…水蒸気量制御手段
57…循環ファン
58…循環用処理対象ガス導出ダクト
60…循環用処理対象ガス導入ダクト
62…加熱ガス予熱器
64…加熱ガス熱交換器
80、82…VOC濃度測定器
100…冷却ガス導入ダクト
102…冷却ガス排出ダクト
104…冷却ガス排出孔
106…冷却ガス導入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VOCを含む処理対象ガスを通流させる処理対象ガス通流路と、
前記処理対象ガスよりも高温に加熱された加熱ガスを通流させる加熱ガス通流路と、
前記処理対象ガス通流路と前記加熱ガス通流路とを横切って配設され、その中心軸および前記中心軸の軸線方向に多数の通流孔が設けられた円柱状の吸着部を有しており、前記中心軸を中心として回転することによって前記各通流孔が前記処理対象ガス通流路にあって前記処理対象ガスが通流される状態と、前記加熱ガス通流路にあって前記加熱ガスが通流される状態とを交互に繰り返すVOC吸着ロータと、
前記通流孔を通流する前の前記加熱ガスに水蒸気を添加する水蒸気添加手段とを備えており、
前記水蒸気添加手段は、前記通流孔を通流した後における前記処理対象ガス中のVOC濃度に基づいて前記加熱ガスに添加する水蒸気量を制御する水蒸気量制御手段を有することを特徴とするVOC除去装置。
【請求項2】
前記通流孔を通流した後の前記処理対象ガスの一部を前記VOC吸着ロータよりも上流側の前記処理対象ガス通流路へ循環させる循環ファンと、
一端が前記VOC吸着ロータよりも下流側の前記処理対象ガス通流路に接続され、他端が前記循環ファンに接続された循環用処理対象ガス導出ダクトと、
一端が前記循環ファンに接続され、他端が前記VOC吸着ロータよりも上流側の前記処理対象ガス通流路に接続された循環用処理対象ガス導入ダクトとを備えることを特徴とする請求項1に記載のVOC除去装置。
【請求項3】
前記VOC吸着ロータを冷却するための冷却ガスを通流させる冷却ガス通流路をさらに備えており、
前記VOC吸着ロータが前記中心軸を中心として回転することにより、前記各通流孔は、前記処理対象ガス通流路にあって前記処理対象ガスが通流される状態と、前記加熱ガス通流路にあって前記加熱ガスが通流される状態と、さらに、前記冷却ガス通流路にあって前記冷却ガスが通流される状態とをこの順に繰り返すことを特徴とする請求項1または2に記載のVOC除去装置。
【請求項4】
前記VOC吸着ロータよりも下流側の前記加熱ガス通流路には、前記加熱ガスに含まれたVOCを分解するVOC分解機が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のVOC除去装置。
【請求項5】
VOCを含む処理対象ガスを通流させる処理対象ガス通流路と、
前記処理対象ガスよりも高温に加熱されるとともに水蒸気が添加された加熱ガスを通流させる加熱ガス通流路と、
前記処理対象ガス通流路と前記加熱ガス通流路とを横切って配設され、その中心軸および前記中心軸の軸線方向に多数の通流孔が設けられた円柱状の吸着部を有しており、前記中心軸を中心として回転することによって前記各通流孔が前記処理対象ガス通流路にあって前記処理対象ガスが通流される状態と、前記加熱ガス通流路にあって前記加熱ガスが通流される状態とを交互に繰り返すVOC吸着ロータとを備えるVOC除去装置を用いたVOC除去方法において、
前記処理対象ガス通流路に前記処理対象ガスを通流するとともに、前記加熱ガス通流路に前記加熱ガスを通流し、
前記加熱ガスに添加する水蒸気量を、前記通流孔を通流した後における前記処理対象ガス中のVOC濃度に基づいて設定することを特徴とするVOC除去方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−291723(P2009−291723A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148579(P2008−148579)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(592010106)カンケンテクノ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】