説明

VPNエッジルータ間でのアドレス変換テーブル同期による呼接続システム及び呼接続方法

【課題】パケットの中身まで検査、書換えを必要としないことによりエッジルータの処理負荷を低減することを課題とする。
【解決手段】少なくとも2台のエッジルータ(102、104)がアドレス対応情報を互いに同期し、前記アドレス対応情報に基づき、VoIPパケット受信時に、VoIPパケットの自身のグローバルIPアドレスを自身のVPNにおける通信端末のプライベートIPアドレスに変換し、VoIPパケット送信時に、VoIPパケットの宛先通信端末のプライベートIPアドレスを前記宛先通信端末が属するVPNにおけるエッジルータのグローバルIPアドレスに変換することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VPNエッジルータ間でのアドレス変換テーブル同期による呼接続システム及び呼接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SIP(Session Initiation Protocol)によるVoIP通信においては、通信端末が自身のIPアドレス情報を埋め込んだSIPパケットを相手の通信端末に相互に送受信し、セッション確立が行われている。当該セッション確立の後に、相手方から送信されたSIPパケットのデータ部における相手の通信端末のIPアドレス情報を宛先として、以後音声データの送受信が行われる(非特許文献1)。
【0003】
ここで通信端末に対しVPN拠点内におけるプライベートIPアドレス(以下、「PA」という。)のみが割り当てられている場合には、SIPパケットのデータ部には、PAが埋め込まれる。この場合、当該VPN拠点外の通信端末からは、SIPパケットにおけるIPアドレスの情報をPAからグローバルIPアドレス(以下、「GA」という。)に変換しなければ、音声データの送受信を行えない。
【0004】
これに対し従来から、エッジルータにSIP−ALG(Application Level Gateway)機能を実装し、SIPデータ部に埋め込まれたIPアドレス情報をPAからGAに変換する方法が広く用いられている。SIP−ALGによりSIPデータ部に埋め込まれたIPアドレス情報をPAからGAに変換することで、異なるVPN拠点においてPAのみを有する通信端末間の音声データの送受信が実現できる(非特許文献2及び非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Rosenberg、“SIP: Session Initiation Protocol”、[online]、2002年6月、IETF、[平成23年5月24日検索]、インターネット<URL: http://www.ietf.org/rfc/rfc3261.txt>
【非特許文献2】Egevang & Francis、“The IP Network Address Translator (NAT)”、[online]、1994年5月、IETF、[平成23年5月24日検索]、インターネット<URL: http://www.ietf.org/rfc/rfc1631.txt>
【非特許文献3】Tsirtsis & Srisuresh、“Network Address Translation - Protocol Translation (NAT-PT)”、[online]、2000年2月、IETF、[平成23年5月24日検索]、インターネット<URL: http://www.ietf.org/rfc/rfc2766.txt>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のSIP−ALG機能を用いた方法では,エッジルータが、SIPパケットの中身まで検査し、アドレス情報を書き換える必要がある。すなわちエッジルータがアプリケーションレイヤまで対応しなければならず、エッジルータの処理負荷が高くなってしまうという課題があった。また、SIP以外のプロトコルによりパケット中のデータ部にIPアドレス情報が埋め込まれた場合には、当該プロトコル毎に個別にALG機能をエッジルータに備えなければならないという課題があった。
【0007】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、パケットの中身まで検査、書換えを必要としないことによりエッジルータの処理負荷を低減できる呼接続システム、呼接続方法、及びエッジルータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る呼接続システムは、VoIPによる通信をする通信端末間の呼接続を行う呼接続装置と、前記呼接続装置に接続され、前記通信端末のプライベートIPアドレスと自身のグローバルIPアドレスとのアドレス対応情報に基づき、VoIPパケットのアドレス変換を行う少なくとも2台のエッジルータと、を備える呼接続システムであって、前記少なくとも2台のエッジルータは、前記アドレス対応情報を互いに同期し、前記アドレス対応情報に基づき、VoIPパケット受信時に、VoIPパケットの自身のグローバルIPアドレスを、自身に属する通信端末のプライベートIPアドレスに変換し、VoIPパケット送信時に、VoIPパケットの宛先通信端末のプライベートIPアドレスを前記宛先通信端末が属するエッジルータのグローバルIPアドレスに変換することを特徴とする。
【0009】
また本発明に係る呼接続方法は、VoIPによる通信をする通信端末間の呼接続を行う呼接続装置と、前記呼接続装置に接続され、前記通信端末のプライベートIPアドレスと自身のグローバルIPアドレスとのアドレス対応情報に基づき、VoIPパケットのアドレス変換を行う少なくとも2台のエッジルータと、を備える呼接続方法であって、前記少なくとも2台のエッジルータが、前記アドレス対応情報を互いに同期するステップと、前記アドレス対応情報に基づき、VoIPパケット受信時に、VoIPパケットの自身のグローバルIPアドレスを、自身のVPNにおける通信端末のプライベートIPアドレスに変換するステップと、VoIPパケット送信時に、VoIPパケットの宛先通信端末のプライベートIPアドレスを前記宛先通信端末が属するVPNにおけるエッジルータのグローバルIPアドレスに変換するステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
また本発明に係るエッジルータは、VoIPによる通信をする第一の通信端末と、呼接続装置とに接続され、前記第一の通信端末のプライベートIPアドレスと自身のグローバルIPアドレスとを対応付けたアドレス対応情報を格納した第一のアドレス変換テーブルと、を有するエッジルータであって、前記第一のアドレス変換テーブルは、第二の通信端末に接続された第二のエッジルータが有する自身のグローバルIPアドレスと前記第二の通信端末のプライベートIPアドレスとを対応付けたアドレス対応情報を格納した第二のアドレス変換テーブルと、格納されるアドレス対応情報が更新された場合に格納されたアドレス対応情報を同期し、VoIPパケット受信時に、前記アドレス対応情報に基づきVoIPパケットの自身のグローバルIPアドレスを、自身のVPNにおける通信端末のプライベートIPアドレスに変換するアドレス変換部と、VoIPパケット送信時に、前記アドレス対応情報に基づきVoIPパケットの宛先通信端末のプライベートIPアドレスを前記宛先通信端末が属するVPNにおけるエッジルータのグローバルIPアドレスに変換する宛先アドレス変換部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による呼接続システム、呼接続方法、及びエッジルータ装置は、エッジルータがパケットの中身まで検査、書換えを必要とせず、エッジルータの処理負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る呼接続システムの構成を表すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るエッジルータの詳細構成を表すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る呼接続システムにおけるアドレス変換テーブルの同期処理を表すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る呼接続システムの動作を表すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る呼接続システムの各VoIPパケットを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る呼接続システムの構成を示すブロック図である。本発明の一実施形態に係る呼接続システムは、第一のVPNに属する第一の通信端末101と、第一の通信端末101に接続された第一のエッジルータ102と、第一の通信端末101とVoIP通信を行い、第二のVPNに属する第二の通信端末103と、第二の通信端末103に接続された第二のエッジルータ104と、第一のエッジルータ102及び第二のエッジルータ104にインターネットを介して接続されたSIP呼接続装置105とを備える。なお、本実施形態においては、SIPによる呼接続システムを説明するが、これに限られず、当該プロトコルで規定されたパケット内にIPアドレスを埋め込むプロトコルであればいかなるプロトコルであっても適用可能である。またエッジルータは少なくとも2台備えていればよく、2台以上であってもよい。
【0015】
第一の通信端末101は、無線または/及び有線により第一のエッジルータ102と接続されるSIPクライアントである。第一の通信端末101は、好ましくはIP電話、携帯電話、パーソナル・コンピュータ等により構成される。第一の通信端末101は、図示しない通信部、ディスプレイ、キーボード等を有しており、通信部により第一のエッジルータ102を介して、インターネット網における他の通信機器(第二の通信端末103及びSIP呼接続装置105を含む)と接続される。なお、第一の通信端末101にはPAとして“A”が割り当てられているものとする。
【0016】
第一のエッジルータ102は、第一のVPN拠点における通信端末とインターネットとのゲートウェイであり、第一の通信端末101とSIP呼接続装置105とに有線又は無線のネットワークにより接続される。なお、第一のエッジルータ102にはPAとして“B”、GAとして“C”が割り当てられているものとする。
【0017】
第二の通信端末103は、無線または/及び有線により第二のエッジルータ104と接続されるSIPクライアントである。第二の通信端末103は、好ましくはIP電話、携帯電話、パーソナル・コンピュータ等により構成される。第二の通信端末103は、図示しない通信部、ディスプレイ、キーボード等を有しており、通信部により第二のエッジルータ104を介して、インターネット網における他の通信機器(第一の通信端末101及びSIP呼接続装置105を含む)と接続される。なお、第二の通信端末103にはPAとして“G”が割り当てられているものとする。
【0018】
第二のエッジルータ104は、第二のVPN拠点における通信端末とインターネットとのゲートウェイであり、第二の通信端末103とSIP呼接続装置105とに有線又は無線のネットワークにより接続される。なお、第二のエッジルータ104にはPAとして“F”、GAとして“E”が割り当てられているものとする。
【0019】
SIP呼接続装置105は、インターネット網上に存在するSIPによるセッション確立及び音声データ通信を行うためのSIP呼接続用のサーバである。SIP呼接続装置105は、位置情報登録(Register)をしたSIPクライアントのセッションを管理する。本実施例において、SIP呼接続装置105は、第一のエッジルータ102と第二のエッジルータ104とにネットワークを介して接続される。なお、SIP呼接続装置105にはGAとして“D”が割り当てられているものとする。
【0020】
図2に第一のエッジルータ102及び第二のエッジルータ104の詳細構成を表すブロック図を示す。第一のエッジルータ102は、エッジルータ制御部201と、アドレス変換テーブル202と、アドレス変換部203と、アドレス対応情報取得部204と、宛先アドレス変換部205と、アドレス対応情報送信部206とを備える。
【0021】
エッジルータ制御部201は、第一のエッジルータ102が受信したVoIPパケットを所定の宛先にルーティング制御をし、また第一のエッジルータ102に係る各種制御を行う。
【0022】
アドレス変換テーブル202には、第一のエッジルータ102のVPNにおけるPAとGAとのアドレス対応情報(以下、「第一のアドレス対応情報」という。)が格納される。アドレス変換部203は、アドレス変換テーブル202を参照し、パケットデータにおける自己のVPN拠点のPAをGAに変換し、またGAをPAに変換する。
【0023】
アドレス対応情報取得部204は、第二のエッジルータ104から第二のエッジルータ104のVPNにおけるPAとGAとのアドレス対応情報を取得し、アドレス変換テーブル202に格納する。
【0024】
宛先アドレス変換部205は、第一の通信端末101から送信されたパケットデータの宛先として第二の通信端末103のPAが指定された場合に、アドレス変換テーブル202に基づき前記第二の通信端末103のGAに変換する。
【0025】
アドレス対応情報送信部206は、第二のエッジルータ104に第一のアドレス対応情報を送信する。
【0026】
第二のエッジルータ104は、エッジルータ制御部211と、アドレス変換テーブル212と、アドレス変換部213と、アドレス対応情報取得部214と、宛先アドレス変換部215と、アドレス対応情報送信部216とを備える。
【0027】
エッジルータ制御部211は、第二のエッジルータ104が受信したVoIPパケットを所定の宛先にルーティング制御をし、また第二のエッジルータ104に係る各種制御を行う。
【0028】
アドレス変換テーブル212には、第二のエッジルータ104のVPNにおけるPAとGAとのアドレス対応情報(以下、「第二のアドレス対応情報」という。)が格納される。アドレス変換部213は、アドレス変換テーブル212を参照し、パケットデータにおける自己のVPN拠点のPAをGAに変換し、またGAをPAに変換する。
【0029】
アドレス対応情報取得部214は、第一のエッジルータ102から第一のアドレス対応情報を取得し、アドレス変換テーブル212に格納する。
【0030】
宛先アドレス変換部215は、第二の通信端末103から送信されたパケットデータの宛先として第一の通信端末101のPAが指定された場合に、アドレス変換テーブル212に基づきGAに変換する。
【0031】
アドレス対応情報送信部216は、第一のエッジルータ102に第二のアドレス対応情報を送信する。
【0032】
以上示したとおり、第一のエッジルータ102のアドレス変換テーブル202と、第二のエッジルータ104のアドレス変換テーブル212とは、双方とも第一のアドレス対応情報と、第二のアドレス対応情報を有しており、すなわち両方のアドレス変換テーブルが同期されている。
【0033】
次に、本発明に係る呼接続システムについて、図3から図5によりその動作を説明する。
【0034】
図3は本発明の一実施形態に係る呼接続システムにおけるアドレス変換テーブルの同期処理及び位置情報登録処理を表すフローチャートである。アドレス変換テーブルの同期処理は、概略としては第一の通信端末101及び第二の通信端末103がSIP呼接続装置105に対して位置情報登録(Register)を行う際に第一のエッジルータ102及び第二のエッジルータ104のアドレス対応情報が更新された場合に、該アドレス対応情報を相互に送信し、共有することにより行う。また、動作開始時において第一のエッジルータ102及び第二のエッジルータ104には、第一の通信端末101及び第二の通信端末103に係るアドレス対応情報は格納されていないものとする。
【0035】
はじめにステップS301において、第一の通信端末101は、ユーザの入力操作に基づき、第一のエッジルータ102に位置情報登録要求を送信する。
【0036】
第一のエッジルータ102が位置情報登録要求のパケットを受信すると、ステップS302において、エッジルータ制御部201は、当該パケットの送信元PAとGAとのアドレス対応情報を作成する。具体的には第一の通信端末101のPAである“A”と、第一のエッジルータ102のGAである“C”とのアドレス対応情報を作成する。作成したアドレス対応情報は、アドレス変換テーブル202に格納される。
【0037】
次にステップS303において、アドレス対応情報送信部206は、当該アドレス対応情報を第二のエッジルータ104に送信する。第二のエッジルータ104は当該アドレス対応情報を、アドレス変換テーブル212に格納する(ステップS304)。
【0038】
続いてステップS305において、アドレス変換部203は、アドレス変換テーブル202に基づき、パケットにおける送信元PAをGAに変換する。具体的にはPA“A”をGA“C”に変換する。変換後、エッジルータ制御部201はパケットをSIP呼接続装置105に転送する(ステップS306)。SIP呼接続装置105がパケットを受信すると、SIP呼接続装置105は、第一の通信端末101の位置情報をIPアドレス“C”として登録する(ステップS307)。
【0039】
続いてステップS308において、通信端末103は、ユーザの入力操作に基づき、第二のエッジルータ104に位置情報登録要求を送信する。
【0040】
第二のエッジルータ104が位置情報登録要求のパケットを受信すると、ステップS309においてエッジルータ制御部211は、当該パケットの送信元PAとGAとのアドレス対応情報を作成する。具体的には第二の通信端末103のPAである“G”と、第二のエッジルータ104のGAである“E”とのアドレス対応情報を作成する。作成したアドレス対応情報は、アドレス変換テーブル212に格納される。
【0041】
次にステップS310において、アドレス対応情報送信部216は、当該アドレス対応情報を第一のエッジルータ102に送信する。第一のエッジルータ102は当該アドレス対応情報を、アドレス変換テーブル202に格納する(ステップS311)。
【0042】
続いてステップS312において、アドレス変換部203は、アドレス変換テーブル202に基づき、パケットにおける送信元PAをGAに変換する。具体的にはPAの“G”をGAの“E”に変換する。変換後、エッジルータ制御部201はパケットをSIP呼接続装置105に転送する(ステップS313)。SIP呼接続装置105がパケットを受信すると、SIP呼接続装置105は、第二の通信端末103の位置情報をIPアドレス“E”として登録し(ステップS314)、アドレス変換テーブル202と212の同期処理と位置情報登録処理が完了する。
【0043】
図4は本発明の一実施形態に係る呼接続システムの動作を表すフローチャートである。
また、図5は呼接続システムの送受信される各VoIPパケットを表す図である。以下本発明の一実施形態に係る呼接続システムの動作を図4及び図5を用いて説明する。また図4においては、第一の通信端末101と第二の通信端末103とのセッションを確立し、第一の通信端末101と第二の通信端末103とが音声データの送受信を行うことを前提に説明をする。
【0044】
はじめにステップS401において、第一の通信端末101は、ユーザの入力操作に基づき、第一のエッジルータ102にセッション確立要求(INVITE)を送信する。このときに送信されるVoIPパケットは図5に示すVoIPパケット501である。VoIPパケット501は、宛先IPアドレス502と、送信元IPアドレス503と、SIPデータ504と、SIPデータ内IPアドレス505とを備えている。具体的には宛先IPアドレス502はSIP呼接続装置105のGAである“D”、送信元IPアドレス503は“A”、SIPデータ内IPアドレス505は“A”となる。なお、図5に示すVoIPパケット506、VoIPパケット508、VoIPパケット511、VoIPパケット514、VoIPパケット519、VoIPパケット521、VoIPパケット524もVoIPパケット501と同一の構造であり、格納されるIPアドレス及びデータが異なる。
【0045】
次にステップS402において、アドレス変換部203は、アドレス変換テーブル202に基づき、VoIPパケットにおける送信元PAをGAに変換する。具体的にはPAの“A”をGAの“C”に変換する。変換されたVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット506である。VoIPパケット506は送信元IPアドレス507が“C”に変換されている。
【0046】
次にステップS403において、エッジルータ制御部201は、VoIPパケット506をSIP呼接続装置105に転送する。
【0047】
VoIPパケット506を受信すると、ステップS404においてSIP呼接続装置105は、SIPデータを解析し、セッション確立を要求する先のGAを決定する。具体的には、SIPデータにおけるURIからセッション確立要求先のGAを決定する。図3のステップS314における位置情報登録により第二の通信端末103のIPアドレスは“E”として登録されているため、SIP呼接続装置105はGAが“E”により特定される第二のエッジルータ104にセッション確立要求を転送する(ステップS405)。このとき送信されるVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット508である。VoIPパケット508は、宛先IPアドレス509が“E”に変更され、送信元IPアドレス510が“D”に変更される。
【0048】
第二のエッジルータ104がセッション確立要求を受信すると、続いてステップS406においてアドレス変換部213は、アドレス変換テーブル212に基づき、VoIPパケットにおける宛先IPアドレスであるGAをPAに変換する。具体的にはGAの“E”をPAの“G”に変換する。変換されたVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット511である。VoIPパケット512は宛先IPアドレス512が“G”に変換されている。なおSIPデータ内IPアドレス513は不変で、“A”が格納されている。
【0049】
続いてエッジルータ制御部211は、VoIPパケット511を宛先IPアドレスであるPAの“C”により特定される第二の通信端末103に転送する(ステップS407)。このようにして第一の通信端末101からのセッション確立要求が第二の通信端末103に送信される。
【0050】
セッション確立要求を受けると第二の通信端末103は、セッション確立要求に対する応答(OK)を第二のエッジルータ104に送信する(ステップS408)。このとき送信されるVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット514である。宛先IPアドレス515はSIP呼接続装置105のGAである“D”、送信元IPアドレス516は“G”、SIPデータ517のSIPデータ内IPアドレス518は“G”となる。
【0051】
次にステップS409において、アドレス変換部213は、アドレス変換テーブル212に基づき、VoIPパケットにおける送信元PAをGAに変換する。具体的にはPAの“G”をGAの“E”に変換する。変換されたVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット519である。VoIPパケット519は送信元IPアドレス520が“E”に変換されている。続くステップS410において、エッジルータ制御部211は、VoIPパケット514をSIP呼接続装置105に転送する。
【0052】
VoIPパケット514を受信すると、ステップS411においてSIP呼接続装置105は、SIPデータを解析し、セッション確立を応答する先のGAを決定する。具体的には、SIPデータにおけるURIからセッション確立応答先のGAを決定する。図3のステップS307における位置情報登録により第一の通信端末101のIPアドレスは“C”として登録されているため、SIP呼接続装置105はGAが“C”により特定される第一のエッジルータ102にセッション確立要求への応答を転送する(ステップS412)。このとき送信されるVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット521である。VoIPパケット521は、宛先IPアドレス522が“C”に変更され、送信元IPアドレス523が“D”に変更される。
【0053】
第一のエッジルータ102がセッション確立要求への応答を受信すると、続いてステップS413においてアドレス変換部203は、アドレス変換テーブル202に基づき、VoIPパケットにおける宛先IPアドレスであるGAをPAに変換する。具体的にはGAの“C”をPAの“A”に変換する。変換されたVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット524である。VoIPパケット524は宛先IPアドレス525が“A”に変換されている。なおSIPデータ内IPアドレス526は不変で、“G”が格納されている。
【0054】
続いてエッジルータ制御部201は、VoIPパケット519を宛先IPアドレスであるPAの“A”により特定される第一の通信端末101に転送する(ステップS414)。このようにして第二の通信端末103からのセッション確立要求への応答が第一の通信端末101に送信され、第一の通信端末101が当該応答を受信する(ステップS415)。
【0055】
以上のステップS401〜S415により、セッション確立処理が完了する。セッションが確立した後に第一の通信端末101と第二の通信端末103は相互に音声データの送受信を行う。以下当該音声データの送受信の処理を説明する。
【0056】
ステップS416において、第一の通信端末101は、第一のエッジルータ102に音声データを送信する。このとき送信されるVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット527である。VoIPパケット527は、宛先IPアドレス528と、送信元IPアドレス529と、音声データ530とを備える。具体的には宛先IPアドレス528は、ステップS415で第一の通信端末101が受信したVoIPパケット524のSIPデータ内IPアドレス526である“G”が格納される。また送信元IPアドレス529には、第一の通信端末101のPAである“A”が格納される。
【0057】
次にステップS417において、アドレス変換部203は、アドレス変換テーブル202に基づき、VoIPパケットにおける送信元PAをGAに変換する。具体的にはPAの“A”をGAの“C”に変換する。また宛先アドレス変換部205は、アドレス変換テーブル202に基づき、宛先IPアドレスを前記第二の通信端末103に係るGAに変換する。変換されたVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット531である。VoIPパケット531は宛先IPアドレス532が“E”に変換され、送信元IPアドレス533が“C”に変換されている。続くステップS418において、エッジルータ制御部201は、VoIPパケット531をアドレス“E”にて特定される第二のエッジルータ104に転送する。
【0058】
続いてステップS419においてアドレス変換部213は、アドレス変換テーブル212に基づき、VoIPパケットにおける宛先IPアドレスであるGAをPAに変換する。具体的にはGAの“E”をPAの“G”に変換する。変換されたVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット534である。VoIPパケット534は宛先IPアドレス535が“G”に変換されている。
【0059】
続いてエッジルータ制御部211は、VoIPパケット534を宛先IPアドレスであるPAの“G”により特定される第二の通信端末103に転送する(ステップS420)。このようにして第一の通信端末101からの音声データが第二の通信端末103に送信される。
【0060】
次にステップS421において、第二の通信端末103は、第二のエッジルータ104に音声データを送信する。このとき送信されるVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット536である。VoIPパケット536は、宛先IPアドレス537と、送信元IPアドレス538と、音声データ539とを備える。具体的には宛先IPアドレス537は、ステップS407で第二の通信端末103が受信したVoIPパケット511のSIPデータ内IPアドレス513である“A”が格納される。また送信元IPアドレス538には、第二の通信端末103のPAである“G”が格納される。
【0061】
次にステップS422において、アドレス変換部213は、アドレス変換テーブル212に基づき、VoIPパケットにおける送信元PAをGAに変換する。具体的にはPAの“G”をGAの“E”に変換する。また宛先アドレス変換部215は、アドレス変換テーブル212に基づき、宛先IPアドレスを前記第一の通信端末101に係るGAに変換する。変換されたVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット540である。VoIPパケット540は宛先IPアドレス541が“C”に変換され、送信元IPアドレス542が“E”に変換されている。続くステップS423において、エッジルータ制御部211は、VoIPパケット540をアドレス“C”にて特定される第一のエッジルータ102に転送する。
【0062】
続いてステップS424においてアドレス変換部203は、アドレス変換テーブル202に基づき、VoIPパケットにおける宛先IPアドレスであるGAをPAに変換する。具体的にはGAの“C”をPAの“A”に変換する。変換されたVoIPパケットは、図5に示すVoIPパケット543である。VoIPパケット543は宛先IPアドレス544が“A”に変換されている。
【0063】
続いてエッジルータ制御部201は、VoIPパケット543を宛先IPアドレスであるPAの“A”により特定される第一の通信端末101に転送する(ステップS425)。このようにして第二の通信端末103からの音声データが第一の通信端末101に送信されることにより、音声データの送受信処理が行われる。
【0064】
このように、本発明によれば、エッジルータ同士が同期し、同期したアドレス変換テーブル202及びアドレス変換テーブル212に基づき、宛先IPアドレスをPAからGAに変換するため、第一の通信端末101と第二の通信端末103が音声データを送受信する際に、エッジルータがSIPパケットの中身のIPアドレスまで検査、書換えをする必要がなくエッジルータの処理負荷を低減することができる。
【0065】
また、SIP以外のプロトコルによりパケットのデータ部にIPアドレス情報が埋め込まれた場合であっても適用可能であり、プロトコル毎に個別にALG機能をエッジルータに備えなくてよい。
【0066】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
101 第一の通信端末
102 第一のエッジルータ
103 第二の通信端末
104 第二のエッジルータ
105 SIP呼接続装置
201 エッジルータ制御部
202 アドレス変換テーブル
203 アドレス変換部
204 アドレス対応情報取得部
205 宛先アドレス変換部
206 アドレス対応情報送信部
211 エッジルータ制御部
212 アドレス変換テーブル
213 アドレス変換部
214 アドレス対応情報取得部
215 宛先アドレス変換部
216 アドレス対応情報送信部
501、506、508、511、514、519、521、524、527、531、534、535、540、543 パケット
502、509、512、515、522、525、528、532、535、537、541、544 宛先IPアドレス
503、507、510、515、520、523、529、533、538、542、545 送信元IPアドレス
504、517 SIPデータ
505、513、518、526 SIPデータ内IPアドレス
530、539 音声データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VoIPによる通信をする通信端末間の呼接続を行う呼接続装置と、
前記呼接続装置に接続され、前記通信端末のプライベートIPアドレスと自身のグローバルIPアドレスとのアドレス対応情報に基づき、VoIPパケットのアドレス変換を行う少なくとも2台のエッジルータと、を備える呼接続システムであって、
前記少なくとも2台のエッジルータは、
前記アドレス対応情報を互いに同期し、
前記アドレス対応情報に基づき、VoIPパケット受信時に、VoIPパケットの自身のグローバルIPアドレスを、自身に属する通信端末のプライベートIPアドレスに変換し、VoIPパケット送信時に、VoIPパケットの宛先通信端末のプライベートIPアドレスを前記宛先通信端末が属するエッジルータのグローバルIPアドレスに変換することを特徴とする呼接続システム。
【請求項2】
前記少なくとも2台のエッジルータは、前記自身のVPNにおける通信端末が前記呼接続装置に現在位置登録をした場合に、前記アドレス対応情報を互いに同期することを特徴とする請求項1に記載の呼接続システム。
【請求項3】
VoIPによる通信をする通信端末間の呼接続を行う呼接続装置と、
前記呼接続装置に接続され、前記通信端末のプライベートIPアドレスと自身のグローバルIPアドレスとのアドレス対応情報に基づき、VoIPパケットのアドレス変換を行う少なくとも2台のエッジルータと、を備える呼接続方法であって、
前記少なくとも2台のエッジルータが、
前記アドレス対応情報を互いに同期するステップと、
前記アドレス対応情報に基づき、VoIPパケット受信時に、VoIPパケットの自身のグローバルIPアドレスを、自身のVPNにおける通信端末のプライベートIPアドレスに変換するステップと、
VoIPパケット送信時に、VoIPパケットの宛先通信端末のプライベートIPアドレスを前記宛先通信端末が属するVPNにおけるエッジルータのグローバルIPアドレスに変換するステップと、
を有することを特徴とする呼接続方法。
【請求項4】
前記同期するステップは、前記自身のVPNにおける通信端末が前記呼接続装置に現在位置登録をした場合に、前記アドレス対応情報を互いに同期することを特徴とする請求項3に記載の呼接続方法。
【請求項5】
VoIPによる通信をする第一の通信端末と、呼接続装置とに接続され、
前記第一の通信端末のプライベートIPアドレスと自身のグローバルIPアドレスとを対応付けたアドレス対応情報を格納した第一のアドレス変換テーブルと、
を有するエッジルータであって、
前記第一のアドレス変換テーブルは、第二の通信端末に接続された第二のエッジルータが有する自身のグローバルIPアドレスと前記第二の通信端末のプライベートIPアドレスとを対応付けたアドレス対応情報を格納した第二のアドレス変換テーブルと、格納されるアドレス対応情報が更新された場合に格納されたアドレス対応情報を同期し、
VoIPパケット受信時に、前記アドレス対応情報に基づきVoIPパケットの自身のグローバルIPアドレスを、自身のVPNにおける通信端末のプライベートIPアドレスに変換するアドレス変換部と、
VoIPパケット送信時に、前記アドレス対応情報に基づきVoIPパケットの宛先通信端末のプライベートIPアドレスを前記宛先通信端末が属するVPNにおけるエッジルータのグローバルIPアドレスに変換する宛先アドレス変換部と、
を有することを特徴とするエッジルータ。
【請求項6】
前記第一のアドレス変換テーブルは、前記第一の通信端末及び/又は前記第二の通信端末が前記呼接続装置に現在位置登録をした場合に、格納された前記アドレス対応情報を前記第二のアドレス変換テーブルと互いに同期することを特徴とする請求項5に記載のエッジルータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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