X線コンピュータ断層撮影装置
【課題】再構成する画像データの位置と投影データのビュー中心との不一致に起因するアーチファクトを低減することにある。
【解決手段】スキャン制御部31は、天板15の速度を変えながら天板15を移動させるとともにコーンビームX線により天板15に載置された被検体をスキャンして投影データを収集する。重みづけ部43は、収集された投影データから所定スライス位置の画像データを再構成するために必要十分な範囲の投影データセットが収集されなかった場合において、再構成に必要だが、収集されなかったデータ範囲に対して所定値を割付け、所定スライス位置に関する画像データを再構成するのに必要であり、収集された投影データに対して収集時刻に対応する重みづけを行なう。再構成処理部45は、当該所定値と重みづけされた投影データとに基づいて所定スライス位置に関する画像データを再構成する。
【解決手段】スキャン制御部31は、天板15の速度を変えながら天板15を移動させるとともにコーンビームX線により天板15に載置された被検体をスキャンして投影データを収集する。重みづけ部43は、収集された投影データから所定スライス位置の画像データを再構成するために必要十分な範囲の投影データセットが収集されなかった場合において、再構成に必要だが、収集されなかったデータ範囲に対して所定値を割付け、所定スライス位置に関する画像データを再構成するのに必要であり、収集された投影データに対して収集時刻に対応する重みづけを行なう。再構成処理部45は、当該所定値と重みづけされた投影データとに基づいて所定スライス位置に関する画像データを再構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ヘリカルスキャンを行なうX線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体が載置された天板を移動させながらコーンビームX線でスキャンし投影データを収集するヘリカルスキャンがある。ヘリカルスキャンによって収集された投影データに基づいて画像データを再構成する際の一般的な手順は、
1.1画像の再構成に必要な投影データ(投影データセット)の抽出
2.データ冗長度補正(重みづけ)
3.フィルタリング
4.逆投影(バックプロジェクション)
である。ただし、手順2と3とは逆でも良い。手順2の重みづけに注目する。再構成処理(ハーフスキャン法)の際、目的とするスライス位置Iを挟んで(−π/2−α/2)〜(+π/2+α/2)の範囲の投影データ(投影データセット)が用いられる。重み関数は、スライス位置Iから離れたところの投影データに対して低い重みを、近いところの投影データに対して大きい重みを与える。天板速度(ヘリカルピッチ)が一定の場合、この重み関数上のスライス位置と手順1で抽出された投影データセットのビュー中心(投影データセットの全ビュー数の半分)とが一致している。このような、ビュー中心に対して対称な重みの分布を有する重み関数をshift-invariant型の重み関数と呼ぶ。
【0003】
ヘリカルスキャンの応用として、天板速度(ヘリカルピッチ)を変化させながらスキャンを行う可変速ヘリカルスキャンがある。図11は、可変速ヘリカルスキャン(加速)における重み関数とX線管の位置との関係を示す図である。可変速ヘリカルスキャンの場合、(−π/2−α/2)〜0の間のビュー数は、0〜(+π/2+α/2)の間のビュー数よりも大きい。従って、図11(a)に示すように、スキャン中に天板速度を変化させることによりスライス位置Iと再構成に使用する投影データセットのビュー中心tcとが一致しない。スライス位置Iとビュー中心tcとが不一致になる可変速ヘリカルスキャンの場合に、shift-invariant型の重み関数を適用すると、アーチファクトが発生してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目的は、被検体をヘリカルスキャンして得られたデータに基づいて画像データを再構成するX線コンピュータ断層撮影装置において、再構成する画像データの位置と投影データのビュー中心との不一致に起因するアーチファクトを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、天板速度を変えながら前記天板を移動させるとともにコーンビームX線により前記天板に載置された被検体をスキャンして投影データを収集するスキャン部と、前記収集された投影データから所定スライス位置の画像データを再構成するために必要十分な範囲の投影データセットが収集されなかった場合において、前記再構成に必要だが前記スキャン部によって収集されなかったデータ範囲に対して所定値を割付け、前記位置に関する画像データを再構成するのに必要であり、前記スキャン部により収集された投影データに対して収集時刻に対応する重みづけを行なう重みづけ部と、前記所定値と前記重みづけされた投影データとに基づいて前記位置に関する画像データを再構成する再構成処理部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施形態に係るX線CT装置の構成を示す図。
【図2】図1のX線検出器の構造を示す図。
【図3】本実施形態に係る1次元の重み関数CとX線管の回転角度との関係を示す図。
【図4】等速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルを示す図。
【図5】本実施形態に係る可変速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルを示す図。
【図6】本実施形態におけるヘリカルスキャンの開始から画像データの再構成までの処理の流れを示す図。
【図7】図1のステップS1における投影データと1次元の重み関数Cと天板速度との関係を示す図。
【図8】本実施形態の変形例に係り、等速ヘリカルスキャンにて収集した投影データのビュー範囲と、再構成処理に使用する投影データの列方向(Z軸方向)に関する範囲とを示す図。
【図9】図8の位置Z0における投影データにshift-invariant型の重み関数Cを適用した場合を示す図。
【図10】図8の位置Z0における投影データにshift-variant型の重み関数Cを適用した場合を示す図。
【図11】ビュー中心に対して対称な1次元の重み関数とX線管の回転角度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と呼ぶ)の実施形態を説明する。なお、X線CT装置には、X線管とX線検出器とが1体となって被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプや、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあるが、いずれのタイプでも本発明は適用可能である。ここでは、回転/回転タイプとして説明する。また、1スライスの画像データを再構成するには、フルスキャン法では被検体の周囲1周、約2π分の投影データが、またハーフスキャン法でもπ+α(α:ファン角)分の投影データが必要である。本実施形態は、どちらの方法も適用可能であるが、ここでは、ハーフスキャン法を採用する。
【0008】
図1は、本実施形態に係るX線CT装置1の構成を示す図である。X線CT装置1は、架台装置10とコンピュータ装置30とから構成される。架台装置10は、円環又は円板状の回転フレーム11を回転可能に支持する。回転フレーム11は、撮影領域中に寝台13の天板15に載置された被検体Pを挟んで対向するようにX線管17とマルチスライス型のX線検出器19とを有する。回転フレーム11は、架台駆動装置21により一定の角速度で連続回転する。ここで、回転フレーム11の回転軸をZ軸に規定し、X線管17の焦点からX線検出器19の検出面中心を結びZ軸に垂直な軸をX軸、Z軸及びX軸に直交する軸をY軸に規定する。このXYZ座標系は、Z軸を回転軸とする回転座標系をなす。なお、被検体Pは、その体軸がZ軸に略一致するように天板15に載置されるとする。
【0009】
寝台13は、天板をZ軸方向に沿ってスライド移動可能に支持する。寝台13は、天板15を移動させるための駆動モータを有し、スキャン制御部31からの駆動信号に応じて、天板15を入力装置33等により設定された期間内で等速又は変速移動させる。寝台13の駆動モータには、光学式あるいは磁気式のエンコーダ23を備え、寝台13の駆動モータの回転軸が一定角度回転する毎に、回転軸の回転角度を検出するためのパルス信号を発生する。回転軸の回転角度は、天板15のZ軸方向の位置(以下、単に天板位置と呼ぶ)に対応している。発生されたパルス信号は、スキャン制御部31及び天板情報測定部35に送信される。
【0010】
X線管17は、高電圧発生装置25からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給を受けてコーンビームX線を発生する。図2に示すように、X線管17の焦点Fから発生されたコーンビームX線は、X線検出器19によって検出される。X線検出器19は、チャンネル方向(Y軸に略一致)と列方向(Z軸)との両方向に関して稠密に分布される複数のX線検出素子19aを有する。チャンネル方向に沿って1列に配列された素子列は、列方向(Z軸)に沿って複数並列される。コーンビームX線のチャンネル方向の広がり角はファン角α、列方向の広がり角はコーン角βと呼ばれている。ここで、検出器のチャンネル数をNチャンネル、列数をM列とする。
【0011】
X線検出器19には、データ収集部27(DAS:Data Acquisition System)が接続されており、X線検出器19の各チャンネルから出力される透過X線の強度に応じた信号をデジタル信号に変換する。このデジタル信号は、投影データと呼ばれている。一回のX線発生により収集される投影データの集合はビュー(view)と呼ばれ、ビュー角はX線管17の回転角度を表す。
【0012】
コンピュータ装置30は、スキャン制御部31を中枢として、入力装置33、天板情報測定部35、前処理部37、投影データ記憶部39、投影データ抽出部41、重みづけ部43、再構成処理部45、画像記憶部47、画像処理部49、及び画像表示装置51を有する。
【0013】
入力装置33は、スライス位置、天板速度、撮影領域(FOV)のサイズ、ヘリカルピッチ(天板15の移動速度に関する情報)、X線管電圧、管電流等の撮影条件を入力する。
【0014】
天板情報測定部35は、エンコーダ23から送信されるパルス信号に基づいて天板位置及び天板速度を測定する。
【0015】
前処理部37は、データ収集部27から出力される投影データに対して感度補正等の前処理をする。前処理された投影データは、一旦投影データ記憶部39に記憶される。投影データ記憶部39は、投影データに、ビューが収集された順番(収集時刻)を表すビュー番号、ビュー角、チャンネル番号、列番号、天板位置及び天板速度を表すコードを関連付けて記憶する。
【0016】
投影データ抽出部41は、投影データを一意に特定できる情報に基づいて、入力装置33から指定されたスライス位置の画像データを再構成するのに必要な範囲の投影データ(実データ及び対向データ)を抽出する。再構成するのに必要な範囲は、スライス位置を中心(0)として(−π/2−α/2)〜(+π/2+α/2)の角度範囲である。以下、スライス位置を中心としたπ+αの角度範囲分の投影データ(ビュー)の群を投影データセットと呼ぶ。投影データセットに含まれるビューの数をViewProcessとする。また、(ViewProcess/2)をビュー中心と呼ぶ。また、投影データを一意に特定できる情報とは、投影データに関連付けられているビュー角、ビュー番号、天板位置等の少なくとも1つの情報である。
【0017】
重みづけ部43は、抽出された投影データセットを重みづけ及び正規化するために、2次元の重み関数(以下、データ冗長度補正関数と呼ぶ)W[ch,view]を、投影データセットに掛ける。そして重みづけ部43は、寄与度テーブルによって、重みづけ及び正規化された投影データセットに含まれる投影データのうち再構成処理に寄与しない列の投影データを除去し、寄与する列の投影データを出力する。
【0018】
データ冗長度補正関数W[ch,view]は、投影データセットのレイごとに算出される。データ冗長度補正関数W[ch,view]は、チャンネル番号とビュー番号とを変数とする2次元の関数であり、投影データセットのチャンネル中心に対して非点対称かつビュー中心に対して非線対称な重みの分布を有する関数である。
【0019】
データ冗長度補正関数W[ch,view]は、重み関数C[view]に基づいて生成される。重み関数C[view]は、ビュー番号を変数とする1次元の関数である。重み関数C[view]は、ビューのスライス位置からの実距離に応じた重みの分布を有する。具体的には、重み関数C[view]は、天板速度の変化に応じて、スライス位置から離れた実距離を有するビューに小さい重みを、近い実距離を有するビューに大きい重みを与える。重み関数C[view]は、投影データセットのビュー中心に対して非線対称な重みの分布を有する関数である。重み関数C[view]は、スライス位置にける投影データの収集時刻と再構成処理に用いる投影データセットの収集期間とに基づいて生成される。
【0020】
寄与度テーブルは、スライス位置、天板速度、及び再構成処理に用いる投影データのビュー範囲(ViewProcess)によって変化する。
【0021】
再構成処理部45は、重みづけ及び正規化された投影データセットにフィルタリング処理及び逆投影処理等の処理からなる再構成処理をすることにより画像データを再構成する。典型的には、再構成法は、コーンビーム再構成法である。コーンビーム再構成法は、コーン角βを考慮して再構成画素に逆投影する投影データを決定して、逆投影処理を行なう方法である。再構成された画像データはスライス位置を表すコードとともに画像データ記憶部47に記憶される。
【0022】
画像処理部49は、再構成された画像データに各種の既知の画像処理を行い、画像処理された画像データは画像表示装置51に表示される。
【0023】
上記構成を有するX線CT装置1は、ヘリカルスキャン中に天板15を一定の加速度で加速させる。加速させる範囲は、再構成するスライス位置を含み、当該スライス位置を基準として少なくともπ+α分の範囲である。なお、天板15を一定の加速度で加速させるとしたが本実施形態はこれに限定されず、減速を含むいかなる加速度にも適用可能である。以下、X線CT1の動作を説明する。
【0024】
まずは、本実施形態において特徴的な重み関数C[view]、データ冗長度補正関数W[ch,view]、寄与度テーブルについて説明する。重み関数C[view]は、投影データセットのビュー中心に対して非線対称で、スライス位置から離れた位置に対して投影データに小さい重みを、スライス位置及びスライス位置に近い投影データに大きい重みをつけるための関数である。
【0025】
図3は、重み関数C[view]とX線管17の回転角度(ビュー角)とを示す図である。図3(a)は、重み関数C[view]を示す図であり、縦軸は重み、横軸はビュー番号(時間)である。図3(a)に示すように、再構成処理の開始位置におけるビュー番号をts、再構成処理の終了位置におけるビュー番号をteとする。すなわち、ビュー番号ts〜ビュー番号teの範囲(ビュー数)Dは、投影データセットの収集期間に一致する。ビュー番号ts〜ビュー番号te間は天板15が加速しているので、ビュー番号ts〜スライス位置Iまでのビュー数は、スライス位置VC〜ビュー番号teまでのビュー数よりも多い。ビュー番号ts〜ビュー番号teのビュー範囲Dの中間であるビュー中心VCは、再構成するスライス位置Iに一致していない。このスライス位置Iとビュー中心VCとの不一致は、ヘリカルスキャン中、天板速度が変速していることに起因する。
【0026】
次に、この図3を参照しながら重み関数C[view]の生成手順を説明する。投影データセットが抽出されると、再構成処理の開始位置におけるビュー番号tsとスライス位置Iとの間のビュー範囲(D1+D2)と、スライス位置Iと再構成処理の終了位置におけるビュー番号teとの間のビュー範囲(D3+D4)とが決定される。次にビュー番号tsとスライス位置Iとの中点D12と、スライス位置Iとビュー番号teとの中点D34とを算出する。
【0027】
ビュー番号ts〜中点D12のビュー範囲D1と中点Cab〜スライス位置Iのビュー範囲D2との間には、D1=D2×αの関係が成り立つ。また、スライス位置I〜中点D34の範囲D3と中点D34〜ビュー番号teの範囲D4との間には、D4=D3×αの関係が成り立つ。なお、αの値は、入力装置33を介して任意に設定可能である。ここで、天板12を加速させているので、D1>D3である。そして、範囲D2と範囲D3とは重み“1”とする。ビュー番号ts〜中点D12は、値“0”と“1”とを結ぶS字状の3次曲線である。また、中点D34〜ビュー番号teは、値“1”と“0”とを結ぶ逆S字状の3次曲線である。3次曲線のビュー範囲での中点の重みは、“0.5”であるとする。但し、範囲D1と範囲D4とにおける曲線は、3次曲線に限らず、天板速度の変化の仕方等に応じて1次曲線や2次曲線であってもよい。
【0028】
また、天板速度が速い場合等など、投影データセットのビュー方向に関して端部付近にある投影データは、スライス位置から離れすぎてしまうために、アーチファクトの原因となる。そのため、スライス位置と、投影データに関連付けられている天板位置とがある閾値以上であれば、その投影データに対する重みを“0”に設定するとしてもよい。
【0029】
上記の手順によって設定された重み関数C[view]は、従来のshift-invariant型の重み関数のようなビュー中心に対して線対称な関数ではなく、非線対称な関数である。このような、ビュー中心に対して非線対称な関数をshift-variant型の重み関数と呼ぶことにする。shift-variant型の重み関数C[view]を用いることにより、可変速ヘリカルスキャンによって収集された投影データに対して、天板速度の変化に応じた適切な重みづけが可能となる。
【0030】
次にshift-variant型の重み関数C[view]に基づいて算出されるデータ冗長度補正関数W[ch,view]について説明する。データ冗長度補正関数W[ch,view]の値は、再構成処理の前に投影データセットのレイごとに算出される。データ冗長度補正関数W[ch,view]の値は、以下の式(1)〜(7)に基づいて算出される。
【数1】
【0031】
ここで、式(1)〜(7)に用いられるパラメータを以下に示す。
【0032】
FanAngle:X線のファン角(定数)
Nch:X線検出器のチャンネル数(定数)
Δγ:隣合うチャンネル間のファン角(定数)
ViewRev:X線管が1回転する間に収集されるビュー数(定数)
Δβ:隣合うビュー間のX線管の回転角度(定数)
ch:投影データのチャンネル番号(変数)
Cch:X線検出器の中心チャンネルの番号(定数)
γ[ch]:chのファン角(chの関数)
view:ビュー番号(変数)
ceil:小数点以下を切り上げ
ViewProcess:1枚の画像再構成に必要な投影データセットのビュー数(定数)
C:shift-variant型の重み関数C(viewの関数)
tmpReal[view]:投影データセットの全ての実レイに掛かる重み関数Cの総和(viewの関数)
tmpTaiko[ch,view]:投影データセットの全ての対向レイに掛かる重み関数Cの総和(viewの関数)
W[ch,view]:データ冗長度補正関数W(ch及びviewの関数)
データ冗長度補正関数W[ch,view]を算出し投影データを正規化する具体的な手順の一例を説明する。データ冗長度補正関数W[ch,view]の算出処理は、投影データセットのレイごとに行なわれる。まず、撮影条件等に基づいて、レイごとに式(1)〜式(4)を計算してΔγ、Δβ、γ、β、Nrotを算出する。次に、式(5)及び(6)によりtmpReal[ch,view]とtmpTaiko[ch,view]とを算出する。そして式(7)によりデータ冗長度補正関数W[ch,view]の値を算出する。この様な手順により、全てのレイについてデータ冗長度補正関数W[ch,view]の値を算出し、全ての投影データセットを正規化する。
【0033】
データ冗長度補正関数W[ch,view]は、重み関数C[view]に基づいて決定され、ビュー中心に対して非線対称かつ中心チャンネルに対して非点対称な2次元の関数である。この様なビュー方向及びチャンネル方向に関する非対称性により、投影データに対して、天板速度の変化に対応した適切な正規化が可能となる。従って、可変速ヘリカルスキャンにおいて、スライス位置と投影データセットのビュー中心との不一致に起因するアーチファクトが低減される。その結果、再構成される画像データの画質が向上する。
【0034】
次に寄与度テーブルについて説明する。寄与度テーブルは、スライス位置及び天板位置に基づいて決定され、正規化された投影データセットのうち再構成処理に寄与しない列の投影データを除去する。
【0035】
図4は等速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルUTの一例を示す図である。右方向はビュー番号を、縦方向は投影データの列番号を示す。寄与度“1”の範囲にある投影データは除去されず、寄与度“0”の範囲にある投影データは除去される。列の寄与度は、スライス位置からのビュー角に応じて決定され、ビュー番号の端から画像中心に行くにつれて、列方向に関する寄与度の幅を狭めながら直線的に列の中心にシフトする。等速ヘリカルスキャンの場合、列の寄与度は、列中心とスライス位置Iとの交点に関して点対称となる。
【0036】
図5は可変速ヘリカルスキャンにおける寄与度デーブルVTの一例を示す図である。上記のように、列の寄与度は、スライス位置からのビュー角に応じて決定される。従って、あるビュー番号における列の寄与度は、等速と変速とで変化しない。換言すれば、等速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルUTと可変速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルVTとの同じビュー角における列の寄与度は、等しい。従って、天板速度が加速する場合の列の寄与度1の範囲は、図5に示すようにゆがんだ形状になる。この可変速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルVTが投影データセットに適用されることにより、天板速度が変化する場合にも適切に、再構成処理に寄与しない列の投影データが除去される。その結果、再構成される画像データのアーチファクトが低減され画質が向上する。なお上記の寄与度テーブルVTは、一例であり他の寄与度テーブルでもよい。例えば、テーブルの寄与度を“0”と“1”との2段階だけではなく、“0”と“1”との間を数段階に分けて段階的に変化させてもよい。
【0037】
これら重み関数C[view]、データ冗長度補正関数W[ch,view]、寄与度テーブルVTは、上記のパラメータやスライス位置、天板速度が変更されるたびに、変更される。
【0038】
図6は、上記のデータ冗長度補正関数Wと寄与度テーブルVTとを用いる場合における、ヘリカルスキャンの開始から画像データの発生までの流れを示した図である。図7は、投影データ、重み関数C[view]、天板速度の関係を示す図である。
【0039】
まず、スキャン制御部31は、X線CT装置1の各構成要素を制御することにより、コーンビームX線で被検体をヘリカルスキャンする(ステップS1)。ヘリカルスキャンによって収集された投影データは投影データ記憶部39に記憶される。投影データが記憶されると、スキャン制御部31は、スライス位置の指定(再構成処理の開始指示)を待機する(ステップS2)。操作者により入力装置33を介してスライス位置を示すコードを受信すると(ステップS2:YES)、スキャン制御部31は、投影データ抽出部41に投影データ抽出処理を行なわせる(ステップS3)。投影データ抽出処理において投影データ抽出部41は、記憶された全投影データから、入力されたスライス位置を挟んで(−π/2−α/2)〜(+π/2+α/2)の角度範囲にある投影データセットを抽出する(ステップS3)。
【0040】
投影データセットが抽出されると、スキャン制御部31は、重みづけ部43に重みづけ関数算出処理を行なわせる。重みづけ関数算出処理において重みづけ部43は、スライス位置と投影データに関連付けて記憶されている天板位置とに基づいて、ビューに依存するshift-variant型の重み関数C[view]を算出する(ステップS4)。次に重みづけ部43は、上記の式(1)〜(7)によりデータ冗長度補正関数W[ch,view]を算出する(ステップS5)。データ冗長度補正関数W[ch,view]が算出されると、重みづけ部43は、投影データセットにデータ冗長度補正関数W[ch,view]を掛けて、投影データセットを正規化する(ステップS6)。ステップS5〜ステップS6の処理は、投影データセットのレイごとに行われる。全てのレイについて正規化が行なわれると重みづけ部43は、正規化した投影データセットを可変速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルに適用して、投影データセットのうち再構成処理に寄与しない列の投影データを除去し、寄与する列の投影データを出力する(ステップS7)。ステップS7にて重みづけ処理が終了する。
【0041】
重みづけ処理が終了すると、スキャン制御部31は、再構成処理部45に再構成処理を行なわせる。再構成処理において再構成処理部45は、ステップS7にて出力された投影データセットにコーンビーム再構成処理し、入力されたスライス位置の画像データを発生する(ステップS8)。
【0042】
本実施形態によれば、再構成する画像の位置と投影データセットの中心とが一致しない可変速ヘリカルスキャンにおいて、スライス位置と天板位置とに基づいて、スライス位置と投影データのビュー中心とに対して非対称なデータ冗長度補正関数W[ch,view]を算出し、算出したデータ冗長度補正関数W[ch,view]を掛けた投影データセットを寄与度テーブルVTに適用して、再構成処理に寄与しない列の投影データを除去し、寄与する列の投影データを出力する。かくして本実施形態によれば、可変速ヘリカルスキャンにおいて、スライス位置と投影データセットのビュー中心とが一致しないことに起因するアーチファクトを低減することが可能となる。
【0043】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。変形例では、等速ヘリカルスキャンにおける、いわゆる「ヘリカルのりしろ」問題のような、スライス位置と投影データセットのビュー中心とが不一致の場合における重みづけの例を示す。
【0044】
まずは、「ヘリカルのりしろ」問題について説明する。図8は、等速ヘリカルスキャンにて収集した投影データのビュー範囲と、再構成処理に使用する投影データの列方向(Z軸方向)に関する範囲とを示す図である。図8に示すように、収集された投影データの範囲は、時間とともに一定の割合でZ位置がシフトする。投影データ抽出部41は、まず再構成処理に使用する投影データのビュー範囲P(ViewProcess)を決定する。位置Z1の画データを再構成する場合、ビュー範囲P分の投影データがあるので、問題なく再構成処理が行なわれる。この際の重み関数は、通常通りビュー中心に対して対称な重みの分布を有するshift-invariant型の重み関数である。
【0045】
一方、スキャン開始位置付近である位置Z0の画像データを再構成する場合、ビュー範囲P分の投影データはない。この場合図9に示すように、通常のshift-invariant型の重み関数を用いると、存在しない投影データに対しても重みが適用されることになる。その結果、再構成された画像データには、激しいアーチファクトが発生し、再構成できない。そこで、位置Z0の位置の画像の再構成を担保するために、余分に投影データを収集することになる。これが「ヘリカルのりしろ」問題である。
【0046】
そこで、本実施形態の変形例に係るX線CT装置1では、ビュー範囲では、「ヘリカルのりしろ」問題を解消するために、ビュー中心に対して非対称な重みの分布を有するshift-variant型の重み関数C[view]を使用する。まず、投影データ抽出部41は、入力装置33等によりスライス位置が入力されると、入力されたスライス位置に関する画像データを再構成するのに必要な投影データセットを抽出する。この際、投影データ抽出部41は、再構成処理に必要十分なビュー範囲(長さ)P(ViewProcess)分の投影データを抽出したか否かを判定する。
【0047】
以下、否と判定した場合における重みづけ部43による重みづけについて説明する。図10は、ビュー範囲P分の投影データがない位置における重み関数C[view]を示す図である。図10に示すように、投影データが存在しないビュー範囲P−P0には重み“0”を設定する。投影データが存在するビュー範囲P0にはビューの変化に応じた重み関数C[view]を設定する。例えば、ビュー範囲P0に設定する重み関数C[view]は、図10に示すようなshift-invariant型の重み関数C[view]のビュー範囲Pをビュー範囲P0に圧縮した重み関数C[view]を設定する。また他の重み関数C[view]として、投影データが存在しないビュー範囲P−P0には重み“0”を、投影データが存在するビュー範囲P0には、端列に小さい重みを、中間列に大きい重みを設定する。なお説明の簡単のため、位置Z0において収集した投影データのビュー範囲P0と、再構成処理するのに足りない投影データのビュー範囲P−P0とは、等しいとしたが、本実施形態における変形例はこれに限定されず、P0≠P−P0であってもよい。
【0048】
shift-variant型の重み関数C[view]が算出されると、本実施形態と同様にして画像データが再構成される。すなわち、算出されたshift-invariant型の重み関数C[view]に基づいて重みづけ部43は、データ冗長度補正関数W[ch,view]を算出し、投影データセットにデータ冗長度補正関数W[ch,view]を適用して正規化し、正規化した投影データセットに等速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルUTを適用して、再構成処理に寄与しない列の投影データを除去する。そして、再構成処理部45は、再構成処理に寄与しない列の投影データが除去された投影データセットに再構成処理し、画像データを再構成する。
【0049】
なお、投影データ抽出部41により再構成処理に必要十分なビュー範囲Pの投影データが抽出されたと判定された場合、本実施形態において説明したように、重みづけ部43による重みづけが行なわれ、再構成処理部45により再構成処理がおこなわれ、入力されたスライス位置の画像データが再構成される。
【0050】
上記構成のように、本実施形態の変形例においては、再構成処理に使用する範囲分の投影データがない位置における画像を再構成する場合において、ビュー中心に対して非対称な重みの分布を有する重み関数によって、投影データが存在しない範囲には重み“0”を設定する。かくして本実施形態の変形例によれば、ビュー中心に対して非対称な重みの分布を有する重みづけ関数C[view]により、「ヘリカルのりしろ」を削減することが可能となる。
【0051】
なお、本実施形態は、コーンビームX線に限らずファンビームX線にも適用可能である。その場合、投影データセットには、重み関数C[view]とデータ冗長度補正関数W[ch,view]とを適用し、寄与度テーブルVT、UTは適用しない。
【0052】
なお、本実施形態の変形例においては、等速ヘリカルスキャンに限定して説明した。しかしながら本実施形態における変形例は、可変速ヘリカルスキャンにも適用可能である。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…X線CT装置、10…架台装置、11…回転フレーム、13…寝台、15…天板、17…X線管、19…X線検出器、21…架台駆動装置、23…エンコーダ、25…高電圧発生装置、27…データ収集部、30…コンピュータ装置、31…スキャン制御部、33…入力装置、35…天板情報測定部、37…前処理部、39…投影データ記憶部、41…投影データ抽出部、43…重みづけ部、45…再構成処理部、47…画像データ記憶部、49…画像処理部、51…画像表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ヘリカルスキャンを行なうX線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体が載置された天板を移動させながらコーンビームX線でスキャンし投影データを収集するヘリカルスキャンがある。ヘリカルスキャンによって収集された投影データに基づいて画像データを再構成する際の一般的な手順は、
1.1画像の再構成に必要な投影データ(投影データセット)の抽出
2.データ冗長度補正(重みづけ)
3.フィルタリング
4.逆投影(バックプロジェクション)
である。ただし、手順2と3とは逆でも良い。手順2の重みづけに注目する。再構成処理(ハーフスキャン法)の際、目的とするスライス位置Iを挟んで(−π/2−α/2)〜(+π/2+α/2)の範囲の投影データ(投影データセット)が用いられる。重み関数は、スライス位置Iから離れたところの投影データに対して低い重みを、近いところの投影データに対して大きい重みを与える。天板速度(ヘリカルピッチ)が一定の場合、この重み関数上のスライス位置と手順1で抽出された投影データセットのビュー中心(投影データセットの全ビュー数の半分)とが一致している。このような、ビュー中心に対して対称な重みの分布を有する重み関数をshift-invariant型の重み関数と呼ぶ。
【0003】
ヘリカルスキャンの応用として、天板速度(ヘリカルピッチ)を変化させながらスキャンを行う可変速ヘリカルスキャンがある。図11は、可変速ヘリカルスキャン(加速)における重み関数とX線管の位置との関係を示す図である。可変速ヘリカルスキャンの場合、(−π/2−α/2)〜0の間のビュー数は、0〜(+π/2+α/2)の間のビュー数よりも大きい。従って、図11(a)に示すように、スキャン中に天板速度を変化させることによりスライス位置Iと再構成に使用する投影データセットのビュー中心tcとが一致しない。スライス位置Iとビュー中心tcとが不一致になる可変速ヘリカルスキャンの場合に、shift-invariant型の重み関数を適用すると、アーチファクトが発生してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目的は、被検体をヘリカルスキャンして得られたデータに基づいて画像データを再構成するX線コンピュータ断層撮影装置において、再構成する画像データの位置と投影データのビュー中心との不一致に起因するアーチファクトを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、天板速度を変えながら前記天板を移動させるとともにコーンビームX線により前記天板に載置された被検体をスキャンして投影データを収集するスキャン部と、前記収集された投影データから所定スライス位置の画像データを再構成するために必要十分な範囲の投影データセットが収集されなかった場合において、前記再構成に必要だが前記スキャン部によって収集されなかったデータ範囲に対して所定値を割付け、前記位置に関する画像データを再構成するのに必要であり、前記スキャン部により収集された投影データに対して収集時刻に対応する重みづけを行なう重みづけ部と、前記所定値と前記重みづけされた投影データとに基づいて前記位置に関する画像データを再構成する再構成処理部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施形態に係るX線CT装置の構成を示す図。
【図2】図1のX線検出器の構造を示す図。
【図3】本実施形態に係る1次元の重み関数CとX線管の回転角度との関係を示す図。
【図4】等速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルを示す図。
【図5】本実施形態に係る可変速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルを示す図。
【図6】本実施形態におけるヘリカルスキャンの開始から画像データの再構成までの処理の流れを示す図。
【図7】図1のステップS1における投影データと1次元の重み関数Cと天板速度との関係を示す図。
【図8】本実施形態の変形例に係り、等速ヘリカルスキャンにて収集した投影データのビュー範囲と、再構成処理に使用する投影データの列方向(Z軸方向)に関する範囲とを示す図。
【図9】図8の位置Z0における投影データにshift-invariant型の重み関数Cを適用した場合を示す図。
【図10】図8の位置Z0における投影データにshift-variant型の重み関数Cを適用した場合を示す図。
【図11】ビュー中心に対して対称な1次元の重み関数とX線管の回転角度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と呼ぶ)の実施形態を説明する。なお、X線CT装置には、X線管とX線検出器とが1体となって被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプや、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあるが、いずれのタイプでも本発明は適用可能である。ここでは、回転/回転タイプとして説明する。また、1スライスの画像データを再構成するには、フルスキャン法では被検体の周囲1周、約2π分の投影データが、またハーフスキャン法でもπ+α(α:ファン角)分の投影データが必要である。本実施形態は、どちらの方法も適用可能であるが、ここでは、ハーフスキャン法を採用する。
【0008】
図1は、本実施形態に係るX線CT装置1の構成を示す図である。X線CT装置1は、架台装置10とコンピュータ装置30とから構成される。架台装置10は、円環又は円板状の回転フレーム11を回転可能に支持する。回転フレーム11は、撮影領域中に寝台13の天板15に載置された被検体Pを挟んで対向するようにX線管17とマルチスライス型のX線検出器19とを有する。回転フレーム11は、架台駆動装置21により一定の角速度で連続回転する。ここで、回転フレーム11の回転軸をZ軸に規定し、X線管17の焦点からX線検出器19の検出面中心を結びZ軸に垂直な軸をX軸、Z軸及びX軸に直交する軸をY軸に規定する。このXYZ座標系は、Z軸を回転軸とする回転座標系をなす。なお、被検体Pは、その体軸がZ軸に略一致するように天板15に載置されるとする。
【0009】
寝台13は、天板をZ軸方向に沿ってスライド移動可能に支持する。寝台13は、天板15を移動させるための駆動モータを有し、スキャン制御部31からの駆動信号に応じて、天板15を入力装置33等により設定された期間内で等速又は変速移動させる。寝台13の駆動モータには、光学式あるいは磁気式のエンコーダ23を備え、寝台13の駆動モータの回転軸が一定角度回転する毎に、回転軸の回転角度を検出するためのパルス信号を発生する。回転軸の回転角度は、天板15のZ軸方向の位置(以下、単に天板位置と呼ぶ)に対応している。発生されたパルス信号は、スキャン制御部31及び天板情報測定部35に送信される。
【0010】
X線管17は、高電圧発生装置25からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給を受けてコーンビームX線を発生する。図2に示すように、X線管17の焦点Fから発生されたコーンビームX線は、X線検出器19によって検出される。X線検出器19は、チャンネル方向(Y軸に略一致)と列方向(Z軸)との両方向に関して稠密に分布される複数のX線検出素子19aを有する。チャンネル方向に沿って1列に配列された素子列は、列方向(Z軸)に沿って複数並列される。コーンビームX線のチャンネル方向の広がり角はファン角α、列方向の広がり角はコーン角βと呼ばれている。ここで、検出器のチャンネル数をNチャンネル、列数をM列とする。
【0011】
X線検出器19には、データ収集部27(DAS:Data Acquisition System)が接続されており、X線検出器19の各チャンネルから出力される透過X線の強度に応じた信号をデジタル信号に変換する。このデジタル信号は、投影データと呼ばれている。一回のX線発生により収集される投影データの集合はビュー(view)と呼ばれ、ビュー角はX線管17の回転角度を表す。
【0012】
コンピュータ装置30は、スキャン制御部31を中枢として、入力装置33、天板情報測定部35、前処理部37、投影データ記憶部39、投影データ抽出部41、重みづけ部43、再構成処理部45、画像記憶部47、画像処理部49、及び画像表示装置51を有する。
【0013】
入力装置33は、スライス位置、天板速度、撮影領域(FOV)のサイズ、ヘリカルピッチ(天板15の移動速度に関する情報)、X線管電圧、管電流等の撮影条件を入力する。
【0014】
天板情報測定部35は、エンコーダ23から送信されるパルス信号に基づいて天板位置及び天板速度を測定する。
【0015】
前処理部37は、データ収集部27から出力される投影データに対して感度補正等の前処理をする。前処理された投影データは、一旦投影データ記憶部39に記憶される。投影データ記憶部39は、投影データに、ビューが収集された順番(収集時刻)を表すビュー番号、ビュー角、チャンネル番号、列番号、天板位置及び天板速度を表すコードを関連付けて記憶する。
【0016】
投影データ抽出部41は、投影データを一意に特定できる情報に基づいて、入力装置33から指定されたスライス位置の画像データを再構成するのに必要な範囲の投影データ(実データ及び対向データ)を抽出する。再構成するのに必要な範囲は、スライス位置を中心(0)として(−π/2−α/2)〜(+π/2+α/2)の角度範囲である。以下、スライス位置を中心としたπ+αの角度範囲分の投影データ(ビュー)の群を投影データセットと呼ぶ。投影データセットに含まれるビューの数をViewProcessとする。また、(ViewProcess/2)をビュー中心と呼ぶ。また、投影データを一意に特定できる情報とは、投影データに関連付けられているビュー角、ビュー番号、天板位置等の少なくとも1つの情報である。
【0017】
重みづけ部43は、抽出された投影データセットを重みづけ及び正規化するために、2次元の重み関数(以下、データ冗長度補正関数と呼ぶ)W[ch,view]を、投影データセットに掛ける。そして重みづけ部43は、寄与度テーブルによって、重みづけ及び正規化された投影データセットに含まれる投影データのうち再構成処理に寄与しない列の投影データを除去し、寄与する列の投影データを出力する。
【0018】
データ冗長度補正関数W[ch,view]は、投影データセットのレイごとに算出される。データ冗長度補正関数W[ch,view]は、チャンネル番号とビュー番号とを変数とする2次元の関数であり、投影データセットのチャンネル中心に対して非点対称かつビュー中心に対して非線対称な重みの分布を有する関数である。
【0019】
データ冗長度補正関数W[ch,view]は、重み関数C[view]に基づいて生成される。重み関数C[view]は、ビュー番号を変数とする1次元の関数である。重み関数C[view]は、ビューのスライス位置からの実距離に応じた重みの分布を有する。具体的には、重み関数C[view]は、天板速度の変化に応じて、スライス位置から離れた実距離を有するビューに小さい重みを、近い実距離を有するビューに大きい重みを与える。重み関数C[view]は、投影データセットのビュー中心に対して非線対称な重みの分布を有する関数である。重み関数C[view]は、スライス位置にける投影データの収集時刻と再構成処理に用いる投影データセットの収集期間とに基づいて生成される。
【0020】
寄与度テーブルは、スライス位置、天板速度、及び再構成処理に用いる投影データのビュー範囲(ViewProcess)によって変化する。
【0021】
再構成処理部45は、重みづけ及び正規化された投影データセットにフィルタリング処理及び逆投影処理等の処理からなる再構成処理をすることにより画像データを再構成する。典型的には、再構成法は、コーンビーム再構成法である。コーンビーム再構成法は、コーン角βを考慮して再構成画素に逆投影する投影データを決定して、逆投影処理を行なう方法である。再構成された画像データはスライス位置を表すコードとともに画像データ記憶部47に記憶される。
【0022】
画像処理部49は、再構成された画像データに各種の既知の画像処理を行い、画像処理された画像データは画像表示装置51に表示される。
【0023】
上記構成を有するX線CT装置1は、ヘリカルスキャン中に天板15を一定の加速度で加速させる。加速させる範囲は、再構成するスライス位置を含み、当該スライス位置を基準として少なくともπ+α分の範囲である。なお、天板15を一定の加速度で加速させるとしたが本実施形態はこれに限定されず、減速を含むいかなる加速度にも適用可能である。以下、X線CT1の動作を説明する。
【0024】
まずは、本実施形態において特徴的な重み関数C[view]、データ冗長度補正関数W[ch,view]、寄与度テーブルについて説明する。重み関数C[view]は、投影データセットのビュー中心に対して非線対称で、スライス位置から離れた位置に対して投影データに小さい重みを、スライス位置及びスライス位置に近い投影データに大きい重みをつけるための関数である。
【0025】
図3は、重み関数C[view]とX線管17の回転角度(ビュー角)とを示す図である。図3(a)は、重み関数C[view]を示す図であり、縦軸は重み、横軸はビュー番号(時間)である。図3(a)に示すように、再構成処理の開始位置におけるビュー番号をts、再構成処理の終了位置におけるビュー番号をteとする。すなわち、ビュー番号ts〜ビュー番号teの範囲(ビュー数)Dは、投影データセットの収集期間に一致する。ビュー番号ts〜ビュー番号te間は天板15が加速しているので、ビュー番号ts〜スライス位置Iまでのビュー数は、スライス位置VC〜ビュー番号teまでのビュー数よりも多い。ビュー番号ts〜ビュー番号teのビュー範囲Dの中間であるビュー中心VCは、再構成するスライス位置Iに一致していない。このスライス位置Iとビュー中心VCとの不一致は、ヘリカルスキャン中、天板速度が変速していることに起因する。
【0026】
次に、この図3を参照しながら重み関数C[view]の生成手順を説明する。投影データセットが抽出されると、再構成処理の開始位置におけるビュー番号tsとスライス位置Iとの間のビュー範囲(D1+D2)と、スライス位置Iと再構成処理の終了位置におけるビュー番号teとの間のビュー範囲(D3+D4)とが決定される。次にビュー番号tsとスライス位置Iとの中点D12と、スライス位置Iとビュー番号teとの中点D34とを算出する。
【0027】
ビュー番号ts〜中点D12のビュー範囲D1と中点Cab〜スライス位置Iのビュー範囲D2との間には、D1=D2×αの関係が成り立つ。また、スライス位置I〜中点D34の範囲D3と中点D34〜ビュー番号teの範囲D4との間には、D4=D3×αの関係が成り立つ。なお、αの値は、入力装置33を介して任意に設定可能である。ここで、天板12を加速させているので、D1>D3である。そして、範囲D2と範囲D3とは重み“1”とする。ビュー番号ts〜中点D12は、値“0”と“1”とを結ぶS字状の3次曲線である。また、中点D34〜ビュー番号teは、値“1”と“0”とを結ぶ逆S字状の3次曲線である。3次曲線のビュー範囲での中点の重みは、“0.5”であるとする。但し、範囲D1と範囲D4とにおける曲線は、3次曲線に限らず、天板速度の変化の仕方等に応じて1次曲線や2次曲線であってもよい。
【0028】
また、天板速度が速い場合等など、投影データセットのビュー方向に関して端部付近にある投影データは、スライス位置から離れすぎてしまうために、アーチファクトの原因となる。そのため、スライス位置と、投影データに関連付けられている天板位置とがある閾値以上であれば、その投影データに対する重みを“0”に設定するとしてもよい。
【0029】
上記の手順によって設定された重み関数C[view]は、従来のshift-invariant型の重み関数のようなビュー中心に対して線対称な関数ではなく、非線対称な関数である。このような、ビュー中心に対して非線対称な関数をshift-variant型の重み関数と呼ぶことにする。shift-variant型の重み関数C[view]を用いることにより、可変速ヘリカルスキャンによって収集された投影データに対して、天板速度の変化に応じた適切な重みづけが可能となる。
【0030】
次にshift-variant型の重み関数C[view]に基づいて算出されるデータ冗長度補正関数W[ch,view]について説明する。データ冗長度補正関数W[ch,view]の値は、再構成処理の前に投影データセットのレイごとに算出される。データ冗長度補正関数W[ch,view]の値は、以下の式(1)〜(7)に基づいて算出される。
【数1】
【0031】
ここで、式(1)〜(7)に用いられるパラメータを以下に示す。
【0032】
FanAngle:X線のファン角(定数)
Nch:X線検出器のチャンネル数(定数)
Δγ:隣合うチャンネル間のファン角(定数)
ViewRev:X線管が1回転する間に収集されるビュー数(定数)
Δβ:隣合うビュー間のX線管の回転角度(定数)
ch:投影データのチャンネル番号(変数)
Cch:X線検出器の中心チャンネルの番号(定数)
γ[ch]:chのファン角(chの関数)
view:ビュー番号(変数)
ceil:小数点以下を切り上げ
ViewProcess:1枚の画像再構成に必要な投影データセットのビュー数(定数)
C:shift-variant型の重み関数C(viewの関数)
tmpReal[view]:投影データセットの全ての実レイに掛かる重み関数Cの総和(viewの関数)
tmpTaiko[ch,view]:投影データセットの全ての対向レイに掛かる重み関数Cの総和(viewの関数)
W[ch,view]:データ冗長度補正関数W(ch及びviewの関数)
データ冗長度補正関数W[ch,view]を算出し投影データを正規化する具体的な手順の一例を説明する。データ冗長度補正関数W[ch,view]の算出処理は、投影データセットのレイごとに行なわれる。まず、撮影条件等に基づいて、レイごとに式(1)〜式(4)を計算してΔγ、Δβ、γ、β、Nrotを算出する。次に、式(5)及び(6)によりtmpReal[ch,view]とtmpTaiko[ch,view]とを算出する。そして式(7)によりデータ冗長度補正関数W[ch,view]の値を算出する。この様な手順により、全てのレイについてデータ冗長度補正関数W[ch,view]の値を算出し、全ての投影データセットを正規化する。
【0033】
データ冗長度補正関数W[ch,view]は、重み関数C[view]に基づいて決定され、ビュー中心に対して非線対称かつ中心チャンネルに対して非点対称な2次元の関数である。この様なビュー方向及びチャンネル方向に関する非対称性により、投影データに対して、天板速度の変化に対応した適切な正規化が可能となる。従って、可変速ヘリカルスキャンにおいて、スライス位置と投影データセットのビュー中心との不一致に起因するアーチファクトが低減される。その結果、再構成される画像データの画質が向上する。
【0034】
次に寄与度テーブルについて説明する。寄与度テーブルは、スライス位置及び天板位置に基づいて決定され、正規化された投影データセットのうち再構成処理に寄与しない列の投影データを除去する。
【0035】
図4は等速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルUTの一例を示す図である。右方向はビュー番号を、縦方向は投影データの列番号を示す。寄与度“1”の範囲にある投影データは除去されず、寄与度“0”の範囲にある投影データは除去される。列の寄与度は、スライス位置からのビュー角に応じて決定され、ビュー番号の端から画像中心に行くにつれて、列方向に関する寄与度の幅を狭めながら直線的に列の中心にシフトする。等速ヘリカルスキャンの場合、列の寄与度は、列中心とスライス位置Iとの交点に関して点対称となる。
【0036】
図5は可変速ヘリカルスキャンにおける寄与度デーブルVTの一例を示す図である。上記のように、列の寄与度は、スライス位置からのビュー角に応じて決定される。従って、あるビュー番号における列の寄与度は、等速と変速とで変化しない。換言すれば、等速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルUTと可変速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルVTとの同じビュー角における列の寄与度は、等しい。従って、天板速度が加速する場合の列の寄与度1の範囲は、図5に示すようにゆがんだ形状になる。この可変速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルVTが投影データセットに適用されることにより、天板速度が変化する場合にも適切に、再構成処理に寄与しない列の投影データが除去される。その結果、再構成される画像データのアーチファクトが低減され画質が向上する。なお上記の寄与度テーブルVTは、一例であり他の寄与度テーブルでもよい。例えば、テーブルの寄与度を“0”と“1”との2段階だけではなく、“0”と“1”との間を数段階に分けて段階的に変化させてもよい。
【0037】
これら重み関数C[view]、データ冗長度補正関数W[ch,view]、寄与度テーブルVTは、上記のパラメータやスライス位置、天板速度が変更されるたびに、変更される。
【0038】
図6は、上記のデータ冗長度補正関数Wと寄与度テーブルVTとを用いる場合における、ヘリカルスキャンの開始から画像データの発生までの流れを示した図である。図7は、投影データ、重み関数C[view]、天板速度の関係を示す図である。
【0039】
まず、スキャン制御部31は、X線CT装置1の各構成要素を制御することにより、コーンビームX線で被検体をヘリカルスキャンする(ステップS1)。ヘリカルスキャンによって収集された投影データは投影データ記憶部39に記憶される。投影データが記憶されると、スキャン制御部31は、スライス位置の指定(再構成処理の開始指示)を待機する(ステップS2)。操作者により入力装置33を介してスライス位置を示すコードを受信すると(ステップS2:YES)、スキャン制御部31は、投影データ抽出部41に投影データ抽出処理を行なわせる(ステップS3)。投影データ抽出処理において投影データ抽出部41は、記憶された全投影データから、入力されたスライス位置を挟んで(−π/2−α/2)〜(+π/2+α/2)の角度範囲にある投影データセットを抽出する(ステップS3)。
【0040】
投影データセットが抽出されると、スキャン制御部31は、重みづけ部43に重みづけ関数算出処理を行なわせる。重みづけ関数算出処理において重みづけ部43は、スライス位置と投影データに関連付けて記憶されている天板位置とに基づいて、ビューに依存するshift-variant型の重み関数C[view]を算出する(ステップS4)。次に重みづけ部43は、上記の式(1)〜(7)によりデータ冗長度補正関数W[ch,view]を算出する(ステップS5)。データ冗長度補正関数W[ch,view]が算出されると、重みづけ部43は、投影データセットにデータ冗長度補正関数W[ch,view]を掛けて、投影データセットを正規化する(ステップS6)。ステップS5〜ステップS6の処理は、投影データセットのレイごとに行われる。全てのレイについて正規化が行なわれると重みづけ部43は、正規化した投影データセットを可変速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルに適用して、投影データセットのうち再構成処理に寄与しない列の投影データを除去し、寄与する列の投影データを出力する(ステップS7)。ステップS7にて重みづけ処理が終了する。
【0041】
重みづけ処理が終了すると、スキャン制御部31は、再構成処理部45に再構成処理を行なわせる。再構成処理において再構成処理部45は、ステップS7にて出力された投影データセットにコーンビーム再構成処理し、入力されたスライス位置の画像データを発生する(ステップS8)。
【0042】
本実施形態によれば、再構成する画像の位置と投影データセットの中心とが一致しない可変速ヘリカルスキャンにおいて、スライス位置と天板位置とに基づいて、スライス位置と投影データのビュー中心とに対して非対称なデータ冗長度補正関数W[ch,view]を算出し、算出したデータ冗長度補正関数W[ch,view]を掛けた投影データセットを寄与度テーブルVTに適用して、再構成処理に寄与しない列の投影データを除去し、寄与する列の投影データを出力する。かくして本実施形態によれば、可変速ヘリカルスキャンにおいて、スライス位置と投影データセットのビュー中心とが一致しないことに起因するアーチファクトを低減することが可能となる。
【0043】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。変形例では、等速ヘリカルスキャンにおける、いわゆる「ヘリカルのりしろ」問題のような、スライス位置と投影データセットのビュー中心とが不一致の場合における重みづけの例を示す。
【0044】
まずは、「ヘリカルのりしろ」問題について説明する。図8は、等速ヘリカルスキャンにて収集した投影データのビュー範囲と、再構成処理に使用する投影データの列方向(Z軸方向)に関する範囲とを示す図である。図8に示すように、収集された投影データの範囲は、時間とともに一定の割合でZ位置がシフトする。投影データ抽出部41は、まず再構成処理に使用する投影データのビュー範囲P(ViewProcess)を決定する。位置Z1の画データを再構成する場合、ビュー範囲P分の投影データがあるので、問題なく再構成処理が行なわれる。この際の重み関数は、通常通りビュー中心に対して対称な重みの分布を有するshift-invariant型の重み関数である。
【0045】
一方、スキャン開始位置付近である位置Z0の画像データを再構成する場合、ビュー範囲P分の投影データはない。この場合図9に示すように、通常のshift-invariant型の重み関数を用いると、存在しない投影データに対しても重みが適用されることになる。その結果、再構成された画像データには、激しいアーチファクトが発生し、再構成できない。そこで、位置Z0の位置の画像の再構成を担保するために、余分に投影データを収集することになる。これが「ヘリカルのりしろ」問題である。
【0046】
そこで、本実施形態の変形例に係るX線CT装置1では、ビュー範囲では、「ヘリカルのりしろ」問題を解消するために、ビュー中心に対して非対称な重みの分布を有するshift-variant型の重み関数C[view]を使用する。まず、投影データ抽出部41は、入力装置33等によりスライス位置が入力されると、入力されたスライス位置に関する画像データを再構成するのに必要な投影データセットを抽出する。この際、投影データ抽出部41は、再構成処理に必要十分なビュー範囲(長さ)P(ViewProcess)分の投影データを抽出したか否かを判定する。
【0047】
以下、否と判定した場合における重みづけ部43による重みづけについて説明する。図10は、ビュー範囲P分の投影データがない位置における重み関数C[view]を示す図である。図10に示すように、投影データが存在しないビュー範囲P−P0には重み“0”を設定する。投影データが存在するビュー範囲P0にはビューの変化に応じた重み関数C[view]を設定する。例えば、ビュー範囲P0に設定する重み関数C[view]は、図10に示すようなshift-invariant型の重み関数C[view]のビュー範囲Pをビュー範囲P0に圧縮した重み関数C[view]を設定する。また他の重み関数C[view]として、投影データが存在しないビュー範囲P−P0には重み“0”を、投影データが存在するビュー範囲P0には、端列に小さい重みを、中間列に大きい重みを設定する。なお説明の簡単のため、位置Z0において収集した投影データのビュー範囲P0と、再構成処理するのに足りない投影データのビュー範囲P−P0とは、等しいとしたが、本実施形態における変形例はこれに限定されず、P0≠P−P0であってもよい。
【0048】
shift-variant型の重み関数C[view]が算出されると、本実施形態と同様にして画像データが再構成される。すなわち、算出されたshift-invariant型の重み関数C[view]に基づいて重みづけ部43は、データ冗長度補正関数W[ch,view]を算出し、投影データセットにデータ冗長度補正関数W[ch,view]を適用して正規化し、正規化した投影データセットに等速ヘリカルスキャンにおける寄与度テーブルUTを適用して、再構成処理に寄与しない列の投影データを除去する。そして、再構成処理部45は、再構成処理に寄与しない列の投影データが除去された投影データセットに再構成処理し、画像データを再構成する。
【0049】
なお、投影データ抽出部41により再構成処理に必要十分なビュー範囲Pの投影データが抽出されたと判定された場合、本実施形態において説明したように、重みづけ部43による重みづけが行なわれ、再構成処理部45により再構成処理がおこなわれ、入力されたスライス位置の画像データが再構成される。
【0050】
上記構成のように、本実施形態の変形例においては、再構成処理に使用する範囲分の投影データがない位置における画像を再構成する場合において、ビュー中心に対して非対称な重みの分布を有する重み関数によって、投影データが存在しない範囲には重み“0”を設定する。かくして本実施形態の変形例によれば、ビュー中心に対して非対称な重みの分布を有する重みづけ関数C[view]により、「ヘリカルのりしろ」を削減することが可能となる。
【0051】
なお、本実施形態は、コーンビームX線に限らずファンビームX線にも適用可能である。その場合、投影データセットには、重み関数C[view]とデータ冗長度補正関数W[ch,view]とを適用し、寄与度テーブルVT、UTは適用しない。
【0052】
なお、本実施形態の変形例においては、等速ヘリカルスキャンに限定して説明した。しかしながら本実施形態における変形例は、可変速ヘリカルスキャンにも適用可能である。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…X線CT装置、10…架台装置、11…回転フレーム、13…寝台、15…天板、17…X線管、19…X線検出器、21…架台駆動装置、23…エンコーダ、25…高電圧発生装置、27…データ収集部、30…コンピュータ装置、31…スキャン制御部、33…入力装置、35…天板情報測定部、37…前処理部、39…投影データ記憶部、41…投影データ抽出部、43…重みづけ部、45…再構成処理部、47…画像データ記憶部、49…画像処理部、51…画像表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板速度を変えながら前記天板を移動させるとともにコーンビームX線により前記天板に載置された被検体をスキャンして投影データを収集するスキャン部と、
前記収集された投影データから所定スライス位置の画像データを再構成するために必要十分な範囲の投影データセットが収集されなかった場合において、前記再構成に必要だが前記スキャン部によって収集されなかったデータ範囲に対して所定値を割付け、前記位置に関する画像データを再構成するのに必要であり、前記スキャン部により収集された投影データに対して収集時刻に対応する重みづけを行なう重みづけ部と、
前記所定値と前記重みづけされた投影データとに基づいて前記位置に関する画像データを再構成する再構成処理部と、
を具備するX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項1】
天板速度を変えながら前記天板を移動させるとともにコーンビームX線により前記天板に載置された被検体をスキャンして投影データを収集するスキャン部と、
前記収集された投影データから所定スライス位置の画像データを再構成するために必要十分な範囲の投影データセットが収集されなかった場合において、前記再構成に必要だが前記スキャン部によって収集されなかったデータ範囲に対して所定値を割付け、前記位置に関する画像データを再構成するのに必要であり、前記スキャン部により収集された投影データに対して収集時刻に対応する重みづけを行なう重みづけ部と、
前記所定値と前記重みづけされた投影データとに基づいて前記位置に関する画像データを再構成する再構成処理部と、
を具備するX線コンピュータ断層撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−59676(P2013−59676A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−213(P2013−213)
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2012−168609(P2012−168609)の分割
【原出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2012−168609(P2012−168609)の分割
【原出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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