説明

X線厚さ測定装置

【課題】 通電状態でターゲット電流設定値を自動的に最適な値に変更することができるX線厚さ測定装置を提供する
【解決手段】 駆動回路13によって電流駆動されるX線源14から出射されたX線が、被測定体30を通過した透過量をX線検出器21で検出し、透過量から被測定体21の厚さを測定するX線厚さ測定装置において、X線源14と検出器21との間の空気層による透過量が目標値と等しくなるように駆動回路13を制御する制御手段71と、制御手段71から出力される信号を保持し、厚さ測定時に駆動回路13の電流設定信号として出力する保持手段73とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、プラスチック、紙などのシート状物質の厚さを測定するX線厚さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線厚さ測定装置では、上ヘッドと下ヘッドの間のギャップにシートが挿入され、下ヘッドから照射されたX線がシートを透過し、上ヘッドで検出される。シートを透過する際にX線が減衰されるが、X線の透過量(減衰量でもよい)とシートの厚さとの間には図4に示す関係があるので、この関係を利用して厚さを測定する。
【0003】
図3はX線厚さ測定装置の従来例を示す構成ブロック図である。主要部である下ヘッド10と上ヘッド20はギャップ31を介して配置され、その間に被測定体であるシート30が通過する。
【0004】
下ヘッド10は一定のフラックス(X線の量)のX線を上ヘッド20へ向けて照射するX線源を構成するX線管14と、これを一定のターゲット電流で駆動するX線管ドライブ回路11とからなる。X線管ドライブ回路11はターゲット電流設定信号を出力する電流値設定回路12と、電流値設定回路12から与えられるターゲット電流設定値と等しくなるように出力電流を制御する定ターゲット電流回路13とからなる。
【0005】
上ヘッド20は下ヘッド10により照射されたX線のうち、シート30を通過したX線を検出してX線透過量に対応した電気信号に変換するX線検出器21と、X線検出器21から出力される信号を増幅して厚さ信号として出力するアンプ22とからなる。
【0006】
AD変換器40は上ヘッド20から出力された厚さ信号をディジタル値に変換する。
【0007】
正規化演算回路50はAD変換器40から得た厚さ信号のディジタル値を、校正時の厚さ信号を用いて(通常運転時の厚さ信号)/(校正時の厚さ信号)の演算を行うことにより、正規化する。ここで、校正時の厚さ信号とは、ギャップ31にシート30が挿入されていない、空気層のみのときの厚さ信号のことをいう。
【0008】
検量線演算回路60は正規化演算回路50から得た正規化データを、予め作成した検量線(正規化した信号値と厚さの関係を示したテーブル)により厚さに換算する。
【0009】
図3のX線厚さ測定装置の動作を以下に説明する。
【0010】
下ヘッド10において、ターゲット電流設定値を電流値設定回路12から与えられ、定ターゲット電流回路13はターゲット電流設定値と等しくなるように制御された出力電流でX線管14を駆動する。X線管14は一定のターゲット電流に対応した一定のフラックスのX線を上ヘッド20へ向けて照射する。X線管14により照射されたX線のうち、シート30を透過したX線は、上ヘッド20において、X線検出器21により検出されて電気信号に変換される。X線検出器21から出力された電気信号はアンプ22により増幅され、厚さ信号として出力される。上ヘッド20から出力された厚さ信号はAD変換器40によりディジタル値に変換され、正規化演算回路50により正規化される。正規化演算回路50から出力された正規化データは、検量線演算回路60において厚さに換算され、厚さ測定データとして出力される。
【0011】
X線厚さ測定装置に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0012】
【特許文献1】特開平2006−184183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図3のX線厚さ測定装置では、上ヘッド20や下ヘッド10がシート30と接触してシート30を傷つけるのを防ぐために、ギャップ31は広ければ広い方が望ましい。しかし、ギャップ31を広くすると測定精度が悪化する。X線の減衰量とギャップ31の広さには関係性があり、ギャップ31が狭ければX線の減衰量は小さく、ギャップ31が広ければX線の減衰量は大きい。ギャップ31が広いと上ヘッド20が得るX線のフラックスが少なくなるので、厚さ信号は小さくなり、厚さ分解能が悪化する。これを防ぐために、従来はターゲット電流設定値を大きくしてX線のフラックスを多くしていた。
【0014】
しかしながら、従来製品では、ターゲット電流設定値として数種類の固定値を用意しているが、ターゲット電流設定値を変更するためには、装置の電源を落し、下ヘッド10を開けて調整する必要があり、装置の通電時には変更できなかった。最近は厚さや材料の異なるシートを測定する機会が増え、通電時にターゲット電流設定値を変更できる機能が望まれていた。
【0015】
また、X線管の寿命はターゲット電流と関係があり、ターゲット電流が大きいと寿命が短くなる。したがって、ターゲット電流設定値として大き過ぎることのない適切な値を選ぶ必要があった。
【0016】
本発明はこのような課題を解決しようとするもので、通電状態でターゲット電流設定値を自動的に最適な値に変更することができるX線厚さ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
駆動回路によって電流駆動されるX線源から出射されたX線の、被測定体を通過した透過量をX線検出器で検出し、前記透過量に基づいて前記被測定体の厚さを測定するX線厚さ測定装置において、
前記X線源と前記X線検出器との間の空気層による前記透過量が目標値と等しくなるように前記駆動回路を制御する制御手段と、
該制御手段から出力される信号を保持し、前記厚さ測定時に前記駆動回路の電流設定信号として出力する保持手段と
を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載のX線厚さ測定装置において、
シート状の前記被測定体を走査して厚さ分布を測定するために前記X線検出器及び前記X線源が移動するビームと、
該ビームを支持するスタンドと
を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の発明は、
請求項1又は請求項2記載のX線厚さ測定装置において、
前記制御手段の出力端子と前記保持手段の入力端子との間に接続されて、校正時にオンとなり、前記厚さ測定時にオフとなるスイッチを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、校正時にX線源とX線検出器との間の空気層によるX線透過量が目標値と等しくなるように駆動回路を制御して制御信号を保持しておき、保持した信号に対応する一定の電流でX線源を駆動ことにより、通電状態でターゲット電流設定値を自動的に最適な値に変更することができるX線厚さ測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の実施の形態に係るX線厚さ測定装置の一実施例を示す構成ブロック図である。図3と同じ部分は同一の記号を付して、重複する説明は省略する。71は差動増幅回路や引算回路等で構成される制御手段で、アンプ22から出力される厚さ信号を厚さ信号目標値(以下、目標値と呼ぶ)と比較する。ここで厚さ信号目標値とは、X線厚さ測定装置の校正時に得るようにしたい最適の厚さ信号のことを言う。
【0023】
スイッチ72は制御手段71の出力端子に一端が接続し他端が電流設定値保持回路73の入力端子に接続して、その間を開閉(オンオフ)する。電流設定値保持回路73は出力端子が定ターゲット電流回路13の電流設定入力端子に接続し、スイッチ72を介して制御手段71から入力した制御信号に対応する電流設定信号を定ターゲット電流回路13に与えるとともに、保持する機能を持つ。
【0024】
なお、図1の装置において、定ターゲット電流回路13は駆動回路を構成する。
【0025】
上記の装置の動作を以下に説明する。
【0026】
X線厚さ測定装置の校正時は、ギャップ31に試料となるシート30がない状態で行われる。スイッチ72は閉じて(オン)、制御手段71、スイッチ72、電流設定値保持回路73、定ターゲット電流回路13、X線管14、X線検出器21、アンプ22は閉ループを構成する。この状態で、制御手段71は、フィードバック制御によってアンプ22からの厚さ信号が厚さ信号目標値と等しくなるような制御信号を電流設定値保持回路73に送る。厚さ信号が厚さ信号目標値と一致したときの電流設定値は、電流設定値保持回路73で記憶保持される。
【0027】
X線厚さ測定装置の通常運転時は、ギャップ31に試料となるシート30が挿入される。スイッチ72は開いて(オフ)、開ループとなり、上記校正時に電流設定値保持回路73に保持された電流設定値が定ターゲット電流回路13に与えられ、この電流設定値に基づいてシート30の厚さ測定が行われる。
【0028】
上記のような構成のX線厚さ測定装置によれば、校正時にX線源とX線検出器との間の空気層によるX線透過量が目標値と一致したときの制御信号を保持してターゲット電流設定値とすることにより、通電状態でターゲット電流設定値を自動的に最適な値に変更することができる。
【0029】
また、X線のフラックスを調整する際に、従来のように装置の電源を落とし、ヘッドを開ける必要がなくなるので、調整作業が簡単になる。
【0030】
また、必要最低限のターゲット電流でX線厚さ測定装置を運転できるので、X線管の寿命を長く保つことができる。
【0031】
なお、上記の実施例において、厚さ信号目標値は任意の値に変更することができ、任意の厚さ信号目標値に対応したフラックスのX線を発生させることができる。
【0032】
また、制御手段71、スイッチ72及び電流設定値保持回路73の機能はコンピュータのソフトウェアによって実現することもできる。この場合はAD変換器40の出力をコンピュータ(図示せず)で処理し、コンピュータからの制御出力データをDA変換して定ターゲット電流回路13に与えればよい。
【0033】
また、気圧が変化した場合には空気層におけるX線の減衰量が変化し、厚さ信号の分解能が変化するが、上記のようにフィードバック制御により自動的に定まる最適なターゲット電流設定値を適用することができるので、気圧の変化などの環境変化にも強い。
【0034】
また、X線管の種類によらず、任意の種類のX線管に適用することができる。
【0035】
また、上記の実施例ではX線の検出方式として透過式を用いたが、反射式を用いてもよい。この場合は、X線の反射の強さが試料の厚みに対応する。
【0036】
図2は図1のX線厚さ測定装置の応用例を示す構成斜視図である。図1と同じ部分は同一の記号を付してある。
【0037】
上ビーム81は上ヘッド20をガイドし、下ビーム82は下ヘッド10をガイドする。Fスタンド83及びBスタンド84は上ビーム81及び下ビーム82を両端で支持する。
【0038】
シート状の被測定体を走査して厚さ分布を測定するために、上ヘッド20及び下ヘッド10の対はそれぞれ上ビーム81及び下ビーム82に沿って左右に(図2の矢印Z方向に)移動する。
【0039】
このような構成のX線厚さ測定装置によれば、金属、プラスチック、紙などのシート状物質の厚さ(面積重量)について、オンラインの測定及び流れ方向・幅方向制御が実現できる。上ヘッ20及び下ヘッド10をシート上でスキャンさせることにより幅方向の厚さ分布(プロファイル)の測定を行うことができ、オンラインによる連続プロファイル測定を行うことにより、製品品質向上、原料使用量削減、歩留り向上を図ることができる。非接触式センサなので被測定物を傷つけることなく連続測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係るX線厚さ測定装置の一実施例を示す構成ブロック図である。
【図2】図1のX線厚さ測定装置の応用例を示す構成斜視図である。
【図3】X線厚さ測定装置の従来例を示す構成ブロック図である。
【図4】X線の透過量とシートの厚さの関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
13 駆動回路
14 X線源
21 X線検出器
30 被測定体
71 制御手段
73 保持手段
81,82 ビーム
83,84 スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回路によって電流駆動されるX線源から出射されたX線の、被測定体を通過した透過量をX線検出器で検出し、前記透過量に基づいて前記被測定体の厚さを測定するX線厚さ測定装置において、
前記X線源と前記X線検出器との間の空気層による前記透過量が目標値と等しくなるように前記駆動回路を制御する制御手段と、
該制御手段から出力される信号を保持し、前記厚さ測定時に前記駆動回路の電流設定信号として出力する保持手段と
を備えたことを特徴とするX線厚さ測定装置。
【請求項2】
シート状の前記被測定体を走査して厚さ分布を測定するために前記X線検出器及び前記X線源が移動するビームと、
該ビームを支持するスタンドと
を備えたことを特徴とする請求項1記載のX線厚さ測定装置。
【請求項3】
前記制御手段の出力端子と前記保持手段の入力端子との間に接続されて、校正時にオンとなり、前記厚さ測定時にオフとなるスイッチを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のX線厚さ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−128756(P2008−128756A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312562(P2006−312562)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】