説明

X線撮影装置およびX線撮影方法

【課題】 検査に使用する対象物の視認性を向上することが可能なX線撮影装置およびX線撮影方法を提供する。
【解決手段】 X線管3と、X線管3に付与する管電圧を制御するX線管制御部6と、X線管3から照射され被検者1を通過したX線を検出するフラットパネルディテクタ4と、X線管3に高電圧値が付与されたときのフラットパネルディテクタ4によるX線の測定値と、X線管3に低い低電圧値が付与されたときのフラットパネルディテクタ4によるX線の測定値とに対してサブトラクション処理を行うことにより、サブトラクション画像を得るサブトラクション部17と、X線管3に付与する高電圧値を変化させたときの、サブトラクション画像におけるガイドワイヤの画像と被検者1の骨部の画像との輝度の差が最大となる電圧値を、最適電圧値として判定する最適電圧判定部19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デュアルエネルギーサブトラクション撮影を行うためのX線撮影装置およびX線撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなデュアルエネルギーサブトラクション撮影を行うためのX線撮影装置においては、X線管に高電圧値が付与されたときのX線の測定値とX線管に低電圧値が付与されたときのX線の測定値とに対してサブトラクション処理を行うことにより、X線吸収係数が異なる組織を抽出している(特許文献1参照)。
【0003】
また、被検体の放射線画像を複数フレームの連続した画像として撮影し、奇数枚目の画像と複数枚目の画像とでX線管に付与する管電圧を変化させ、それらの画像に対してサブトラクション処理を施すことにより、デュアルエネルギーサブトラクション撮影を動画に利用する技術も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−236766号公報
【特許文献2】特開2004−321310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなX線撮影装置において、例えば血管造影検査等を行うために、極細のガイドワイヤを透視により観察しながら作業を行う場合がある。このような場合に、ガイドワイヤが背景の骨部等と重なった状態においては、ガイドワイヤの視認性が極めて悪くなる場合がある。このような問題は、例えば、カテーテルによる操作を行う場合等においても同様に発生し得る問題である。
【0006】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、検査に使用する対象物の視認性を向上することが可能なX線撮影装置およびX線撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、検査に使用する対象物を被検体とともに表示するX線撮影装置において、被検体に向けてX線を照射するX線管と、前記X線管に付与する管電圧を制御するX線管制御部と、前記X線管から照射され被検体を通過したX線を検出するX線検出手段と、前記X線管に高電圧値が付与されたときの前記X線検出手段によるX線の測定値と、前記X線管に前記高電圧値より低い低電圧値が付与されたときの前記X線検出手段によるX線の測定値とに対してサブトラクション処理を行うことにより、サブトラクション画像を得るサブトラクション手段と、前記X線管制御部の制御により、前記照射手段に付与する高電圧値または低電圧値のいずれか一方を変化させたときの、前記サブトラクション画像における前記対象物の画像と前記被検体の画像との輝度の差が、前記対象物の画像が視認容易となる所定の電圧値を、最適電圧値として判定する最適電圧判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記最適電圧判定手段は、前記照射手段に付与する高電圧値または低電圧値のいずれか一方を変化させたときの、前記サブトラクション画像における前記対象物の画像と前記被検体の画像との輝度の差が最大となる電圧値を、最適電圧値として判定する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記X線管制御部は、低電圧値を一定にするとともに高電圧値を変化させた状態で、前記X線管に高電圧と低電圧とを交互に付与し、前記サブトラクション手段は、前記X線管に高電圧と低電圧とが交互に付与されたときの前記X線検出手段によるX線の測定値に対して順次サブトラクション処理を行う。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記最適電圧判定手段は、前記対象物の画像を表示する表示手段と、前記表示手段に表示された対象物の画像を含む領域を指定領域として指定する領域指定手段と、前記領域指定手段により指定された指定領域の画像のプロファイルを演算する演算手段と、を備え、前記演算手段により演算された指定領域の画像のプロファイルから前記最適電圧値を判定する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記最適電圧判定手段は、前記指定領域の画像における輝度の最大値を対象物の画像の輝度値と認定し、この輝度の最大値を前記指定領域の輝度値と比較することにより前記最適電圧値を判定する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記最適電圧判定手段は、前記指定領域の画像における平均輝度と前記指定領域の画像における輝度の最大値との差が最大となる電圧値を最適電圧値として判定する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の発明において、 前記最適電圧判定手段により判定された最適電圧値を利用してサブトラクション透視画像の撮影を行う。
【0014】
請求項8に記載の発明は、検査に使用する対象物を被検体とともに表示するX線撮影方法において、低電圧値を一定にし、高電圧値を変化させた状態で、X線管に高電圧と低電圧とを交互に付与することにより、高電圧画像と低電圧画像とを順次入手するとともに、前記高電圧画像と前記低電圧画像とに対してサブトラクション処理を行うサブトラクション工程と、前記サブトラクション工程で得た複数のサブトラクション画像のうち、前記対象物の画像と前記被検体の画像との輝度の差が、前記対象物の画像が視認容易となるサブトラクション画像を得たときの高電圧値を、最適電圧値として判定する最適電圧判定工程と、前記最適電圧判定工程で判定した最適電圧値を高電圧値として、サブトラクション透視画像の撮影を行う撮影工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、検査に使用する対象物をコントラストよく表示させることができることから、対象物の視認性を向上させることが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、X線の照射パルス幅への影響が小さい高電圧値を変更することにより、パルス幅を一定にしたままで、順次サブトラクション画像を得ることが可能となる。このため、複数のサブトラクション画像を容易に入手することができ、最適電圧値を好適に判定することが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、対象物の画像と被検体の画像とを含む領域の画像のプロファイルに基づいて、対象物の画像と被検体の画像との輝度の差が最大となる最適電圧値を判定することが可能となる。これにより、最適電圧値を正確に判定することが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、指定領域の画像における輝度の最大値を検査に使用する対象物の輝度値と認定することから、対象物の輝度値の認定が容易となり、最適電圧値の判定を容易に実行することが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、指定領域の画像における平均輝度と指定領域の画像における輝度の最大値との差が最大となる電圧値を最適電圧値として判定することから、最適電圧判定手段による最適電圧値の判定をさらに容易に実行することが可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、最適電圧判定手段により判定された最適電圧値を利用してサブトラクション透視画像の撮影を行うことから、透視画像中における検査に使用する対象物の画像をコントラストよく表示させることができ、透視画像中における対象物の視認性を向上させることが可能となる。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、検査に使用する対象物をコントラストよく表示させることができることから、対象物の視認性を向上させることが可能となる。また、X線の照射パルス幅への影響が小さい高電圧値を変更することにより、パルス幅を一定にしたままで、順次サブトラクション画像を得ることができる。このため、複数のサブトラクション画像を容易に入手することができ、最適電圧値を好適に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係るX線撮影装置のブロック図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係るX線撮影動作を示すフローチャートである。
【図3】領域指定工程において撮影された画像100の模式図である。
【図4】高電圧撮影工程と低電圧撮影工程において、X線管3に付与される管電圧を示すタイムチャートである。
【図5】サブトラクション処理の概要を示す説明図である。
【図6】サブトラクション工程により得たサブトラクション画像のプロファイルを示す概要図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係るX線撮影動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係るX線撮影装置のブロック図である。
【0024】
このX線撮影装置は、デュアルエネルギーサブトラクション処理を利用してX線吸収係数が異なる組織を抽出することにより、透視画像の撮影を行うためのものであり、被検体である被検者1を載置するテーブル2と、X線管3と、X線検出手段としてのフラットパネルディテクタ4と、制御部5と、X線管3に付与する管電圧等を制御するX線管制御部6と、マウス9を有するキーボード等の入力装置7と、CRT等の表示部8とを備える。
【0025】
また、制御部5は、高電圧撮影時に使用される高電圧画像メモリ11、LOG変換部12および重みづけ部13と、低電圧撮影時に使用される低電圧画像メモリ14、LOG変換部15および重みづけ部16と、サブトラクション処理を実行するサブトラクション部17と、最適電圧値を判定するための最適電圧判定部19とを備える。これらの高電圧画像メモリ11、LOG変換部12、重みづけ部13、低電圧画像メモリ14、LOG変換部15、重みづけ部16、サブトラクション部17、最適電圧判定部19は、論理演算を実行するCPU18により制御される。
【0026】
このX線撮影装置においては、X線管3に高電圧値が付与された場合には、フラットパネルディテクタ4により測定された高電圧画像が高電圧画像メモリ11に記憶される。高電圧画像メモリ11に記憶された高電圧画像は、LOG変換部12において対数処理が行われて画像信号に変換された後、重み付け部13にて体厚情報等に応じた重み係数が乗算される。同様に、X線管3に低電圧値が付与された場合には、フラットパネルディテクタ4により測定された低電圧画像が低電圧画像メモリ14に記憶される。低電圧画像メモリ14に記憶された低電圧画像は、LOG変換部15において対数処理が行われた後、重みづけ部16にて体厚情報等に応じた重み係数が乗算される。
【0027】
対数処理および重みづけ処理された高電圧画像と低電圧画像に対しては、サブトラクション部17において、減算処理であるサブトラクション処理がなされる。サブトラクション処理されたサブトラクション像は、後述する最適電圧判定部19に送られるとともに、表示部8にも送られ、表示部8においてサブトラクション画像が表示される。
【0028】
このようなX線撮影装置において、例えば血液造影検査を行う場合、ガイドワイヤが使用される場合がある。このガイドワイヤは、カテーテルを案内するために使用されるものであり、オペレータがX線撮影装置による透視画像を確認しながら、ガイドワイヤを操作する。このとき、このガイドワイヤは極細の金属から構成されることから、ガイドワイヤが背景の骨部等と重なった状態においては、ガイドワイヤの視認性が極めて悪くなる場合がある。このような問題は、ガイドワイヤのかわりに、カテーテルを使用する場合等においても同様に発生し得る問題である。
【0029】
このため、この発明に係るX線撮影装置においては、サブトラクション画像における対象物としてのガイドワイヤ等の画像と被検者1の骨部等の画像との輝度の差が、ガイドワイヤ等の画像が視認容易となる最適電圧値を判定し、この最適電圧値を利用することにより、その後の透視撮影を行うようにしている。
【0030】
以下、この判定動作を含むX線撮影動作について説明する。図2は、この発明の第1実施形態に係るX線撮影動作を示すフローチャートである。
【0031】
透視検査を開始するときには、最初に、透視画像の撮影を行い(ステップS1)、オペレータがガイドワイヤの画像101の視認性が良好であるか否かを確認する(ステップS2)。そして、視認性が良好でガイドワイヤの画像101が視認容易であるときには、そのまま透視検査を開始する(ステップS11)。
【0032】
一方、視認性が悪く、オペレータが透視動作中にガイドワイヤの画像101の画像が見にくいと感じたときには、調整モードを実行する。この調整モードを実行するときには、最初に、ガイドワイヤ等の画像と被検者1の骨部等の画像との輝度の差が最大となる最適電圧値を判定するために使用する指定領域を指定する(ステップS3)。この領域の指定は、ガイドワイヤと被検者1の骨部等の画像を図1に示す表示部8に表示し、この画像に基づいて領域を指定することにより行われる。
【0033】
図3は、領域指定工程において撮影された画像100の模式図である。
【0034】
この図に示す領域指定工程において撮像された画像100は、図1に示す表示部8に表示される。この画像100には、検査に使用する対象物としてのガイドワイヤの画像101と被検者1の骨部の画像102とが重畳して映し出されている。オペレータは、この画像100を表示部8において確認し、図1に示す入力装置7のマウス9を操作して、ガイドワイヤの画像101を含む領域を指定領域103として指定する。図1に示す最適電圧判定部19における領域指定部21は、オペレータによる入力に対応して、指定領域103を指定して記憶し、以降の撮影時においては、この指定領域に対して、高電圧撮影、低電圧撮影、サブトラクション処理等の各種の工程を実行する。
【0035】
なお、この領域指定時に使用する画像100は、サブトラクション処理を行った後の画像でもよいが、対象物としてのガイドワイヤの画像101が認識できるようであれば、サブトラクション処理を行う前の画像でもよい。
【0036】
次に、高電圧撮影(ステップS4)と低電圧撮影(ステップS5)を実行する。この高電圧撮影と低電圧撮影とは、X線管制御部6がX線管3に対して、高電圧値と低電圧値を付与することにより実行される。高電圧撮影により得られた高電圧画像は、高電圧画像メモリ11に記憶される。また、低電圧撮影により得られた低電圧画像は、低電圧画像メモリ14に記憶される。そして、それらの画像に対して対数処理および重み係数の乗算が行われた後、サブトラクション部17においてサブトラクション処理が実行される(ステップS6)。サブトラクション処理が完了すれば、X線管に付与される管電圧が変更され(ステップS7)、上述した工程(ステップS4〜ステップS7)が必要な回数だけ繰り返される(ステップS8)。この実施形態においては、これらの工程が3回繰り返された場合を示している。
【0037】
図4は、上述した高電圧撮影工程と低電圧撮影工程において、X線管3に付与される管電圧を示すタイムチャートであり、図5は、上述したサブトラクション処理の概要を示す説明図である。なお、これらの図において、H1、H2、H3は高電圧撮影工程においてX線管3に付与される管電圧を示し、L1、L2、L3は低電圧撮影工程においてX線管3に付与される管電圧を示している。
【0038】
上述した高電圧撮影工程と低電圧撮影工程においては、X線管制御部6は、低電圧値を60キロボルトとするとともに、高電圧値を100キロボルト、110キロボルト、120キロボルトと順次変化させ、X線管3に対してこれらの高電圧と低電圧とを交互に付与する。そして、サブトラクション部17は、X線管3に高電圧と低電圧とが交互に付与されたときのフラットパネルディテクタ4によるX線の測定値に対して順次サブトラクション処理を実行して、図5に示すサブトラクション画像S1、S2、S3、S4、S5を得る。
【0039】
なお、この高電圧撮影工程と低電圧撮影工程においては、少なくとも上述した領域指定工程において指定したガイドワイヤの画像101を含む指定領域103が撮影されればよい。このため、図示しないコリメータ等を利用し、X線管3から照射されるX線の照射領域を必要な領域のみに絞り込めばよい。これにより、被検者1に対する被曝量を低減することが可能となる。
【0040】
図6は、サブトラクション工程(ステップS6)により得たサブトラクション画像のプロファイルを示す概要図である。この図において横軸は指定領域における位置を示し、縦軸は輝度を示している。また、図6(a)は高電圧値が100キロボルトで低電圧値が60キロボルトのときのプロファイルを、図6(b)は高電圧値が110キロボルトで低電圧値が60キロボルトのときのプロファイルを、図6(c)は高電圧値が120キロボルトで低電圧値が60キロボルトのときのプロファイルを、各々、示している。
【0041】
最適電圧判定部19は、これらのプロファイルに基づいて、サブトラクション画像におけるガイドワイヤの画像101と被検者1の骨部の画像102との輝度の差が最大となる最適電圧値を演算する。すなわち、最適電圧判定部19における演算部22は、高電圧値が異なる各サブトラクション画像のプロファイルを参照し、そのプロファイルのうちの輝度の最大値または最大値付近の複数の輝度値を、ガイドワイヤの画像101であると認定する。そして、その他の領域の輝度値と輝度の最大値との差を演算する。しかる後、高電圧値が100キロボルトのときの輝度の差B1と、高電圧値が110キロボルトのときの輝度の差B2と、高電圧値が120キロボルトのときの輝度の差B3とを比較し、それらのうちの輝度差が最も大きくなったときの高電圧値を、ガイドワイヤの画像101が視認容易となる所定の電圧値であると判定し、そのときの高電圧値を最適電圧値と認定する(ステップS9)。図6に示す実施形態においては、高電圧値が110キロボルトのときの輝度の差B2が最も大きいことから、最適電圧値は110キロボルトであると認定される。
【0042】
この最適電圧判定工程においては、図6においてB1、B2、B3で示すように、サブトラクション画像のプロファイルのうちの輝度の最大値をガイドワイヤの画像101であると認定した上で、その他の領域の輝度値と輝度の最大値との差を演算することにより最適電圧値を判定している。これに対して、指定領域の画像における全画素の平均輝度と指定領域の画像における輝度の最大値との差を演算し、これらの差が最大となる電圧値を最適電圧値として判定するようにしてもよい。このような構成を採用した場合には、最適電圧判定部19による最適電圧値の判定をより容易に実行することが可能となる。
【0043】
なお、この最適電圧判定工程において、高電圧値が110キロボルトで低電圧値が60キロボルトのときのプロファイルを得るためのサブトラクション画像としては、図5に示すS2、S3のいずれを使用してもよく、また、それらの平均値を使用してもよい。同様に、高電圧値が120キロボルトで低電圧値が60キロボルトのときのプロファイルを得るためのサブトラクション画像としては、図5に示すS4、S5のいずれを使用してもよく、また、それらの平均値を使用してもよい。
【0044】
最適電圧判定工程が終了すれば、X線管制御部6は、X線管3に付与する管電圧を最適電圧値である110キロボルトに設定する(ステップS10)。そして、高電圧値を110キロボルトとし低電圧値を60キロボルトとした状態でサブトラクション透視画像の撮影を行うことにより、透視検査を実行する(ステップS11)。このときには、X線管3に付与される管電圧は、最適電圧値である110キロボルトとなっていることから、検査に使用するガイドワイヤの画像101をコントラストよく表示させることができ、ガイドワイヤの視認性を向上させることが可能となる。
【0045】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図7は、この発明の第2実施形態に係る透視画像の撮影動作を示すフローチャートである。
【0046】
上述した実施形態においては、X線管3に付与する高電圧値を変化させたときの、サブトラクション画像におけるガイドワイヤの画像101の画像と被検者1の骨部の画像102との輝度の差が最大となる電圧値を自動的に測定することより、最適電圧値を判定していた。これに対して、この第2実施形態においては、視認性が良好となるまで高電圧撮影と低電圧撮影とを繰り返して実行することにより、最適電圧値を判定する構成となっている。
【0047】
この第2実施形態においても、透視画像の撮影を開始したときに(ステップS21)、オペレータがガイドワイヤの画像101の視認性が良好であるか否かを確認する(ステップS22)。そして、視認性が良好でガイドワイヤの画像101が視認容易であるときには、そのまま透視検査を開始する(ステップS31)。
【0048】
一方、視認性が悪く、オペレータが透視動作中にガイドワイヤの画像101の画像が見にくいと感じたときには、調整モードを実行する。この調整モードを実行するときには、第1実施形態の場合と同様、図4および図5に示すように、オペレータが管電圧H1、H2、H3、L1、L2、L3を選択する。また、図1に示す入力装置7のマウス9を操作して、図3に示すように、ガイドワイヤの画像101を含む領域を指定領域103として指定する(ステップS23)。図1に示す最適電圧判定部19における領域指定部21は、オペレータによる入力に対応して、指定領域103を指定して記憶する。
【0049】
次に、オペレータの指定に従って、X線管3に付与する管電圧の高電圧値と低電圧値とを指定されたもののうちの一つに設定した後(ステップS24)、高電圧撮影(ステップS25)と低電圧撮影(ステップS26)を実行する。この高電圧撮影と低電圧撮影とは、上述した第1実施形態と同様、X線管制御部6がX線管3に対して、高電圧値と低電圧値を付与することにより実行される。高電圧撮影により得られた高電圧画像は、高電圧画像メモリ11に記憶される。また、低電圧撮影により得られた低電圧画像は、低電圧画像メモリ14に記憶される。そして、それらの画像に対して対数処理および重み係数の乗算が行われた後、サブトラクション部17においてサブトラクション処理が実行される(ステップS27)。
【0050】
サブトラクション処理が完了すれば、ガイドワイヤの画像101の視認性が良好で、この画像が視認容易となったか否かが判定される(ステップS28)。この判定は、次のようにして実行される。すなわち、予め輝度差の異なる複数のサンプル画像を準備し、視認性が良好となるときのガイドワイヤの画像101の画像と被検者1の骨部の画像102との輝度の差を求めておく。この輝度差の測定は、図2に示すステップS3〜ステップS7と同様の工程を実行することにより行われる。そして、ガイドワイヤの画像101の画像と被検者1の骨部の画像102との輝度の差が、このようにして予め求めた輝度差と一致した時点で、視認性が良好となったと判定する。但し、この判定は、オペレータが行ってもよく、また、予め設定したその他の条件に従って制御部5における最適電圧判定部19が行ってもよい。
【0051】
視認性が悪いと判定された場合には、高電圧値を次の設定値に変更した後(ステップS24)、高電圧撮影(ステップS25)と低電圧撮影(ステップS26)を実行する。そして、再度、視認性が良好となったか否かが再度判定される(ステップS28)。この動作は、ステップS28で視認性が良好であると判断されるまで繰り返される。なお、ステップS23においてオペレータが設定した管電圧の設定値では視認性が良好と判断されなかった場合には、再度ステップS23に戻り、管電圧を再設定すればよい。
【0052】
一方、ガイドワイヤの画像101の視認性が良好で、この画像が視認容易であると判定された場合には、最適電圧判定部19は、そのときの電圧値が最適電圧値であると判定し(ステップS29)、X線管制御部6は、X線管3に付与する高電圧値をそのときの電圧値に設定する(ステップS30)。そして、この状態によりサブトラクション透視画像の撮影を行うことにより、透視検査を実行する(ステップS31)。この実施形態においても、X線管3に付与される管電圧は、オペレータがガイドワイヤの画像101を視認容易な最適電圧値となっていることから、検査に使用するガイドワイヤの画像101をコントラストよく表示させることができ、ガイドワイヤの視認性を向上させることが可能となる。
【0053】
なお、上述した実施形態においては、いずれも、X線管3に付与する管電圧における高電圧値を順次変化させてサブトラクション画像を得ている。これは、高電圧撮影時にはX線管3に高電圧を付与して高電圧撮影をおこなう時間が比較的短く、X線の照射パルス幅への影響が小さいためである。但し、高電圧値を一定にし、低電圧値を順次変化させてサブトラクション画像を得るようにしてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態においては、指定領域の画像における輝度の最大値をガイドワイヤの画像101の輝度値と認定し、この輝度の最大値を指定領域の画像の輝度値あるいは輝度値の平均値と比較している。しかしながら、プロファイルにおける輝度の変化量等からガイドワイヤの画像101を抽出し、認識された画像の輝度値と指定領域の画像の輝度値あるいは輝度値の平均値とを比較するようにしてもよい。
【0055】
さらに、上述した実施形態においては、対象物としてのガイドワイヤの画像101を含む指定領域103として、直線状の領域を指定し、この指定領域103の画像のプロファイルを作成しているが、指定領域として矩形状の領域や、その他の形状を有する領域を指定してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 被検者
2 テーブル
3 X線管
4 フラットパネルディテクタ
5 制御部
6 X線管制御部
7 入力装置
8 表示部
11 高電圧メモリ
12 LOG変換部
13 重みづけ部
14 高電圧メモリ
15 LOG変換部
16 重みづけ部
17 サブトラクション部
18 CPU
19 最適電圧判定部
21 領域指定部
22 演算部
100 領域指定工程において撮影された画像
101 ガイドワイヤの画像
102 骨部の画像
103 指定領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査に使用する対象物を被検体とともに表示するX線撮影装置において、
被検体に向けてX線を照射するX線管と、
前記X線管に付与する管電圧を制御するX線管制御部と、
前記X線管から照射され被検体を通過したX線を検出するX線検出手段と、
前記X線管に高電圧値が付与されたときの前記X線検出手段によるX線の測定値と、前記X線管に前記高電圧値より低い低電圧値が付与されたときの前記X線検出手段によるX線の測定値とに対してサブトラクション処理を行うことにより、サブトラクション画像を得るサブトラクション手段と、
前記X線管制御部の制御により、前記照射手段に付与する高電圧値または低電圧値のいずれか一方を変化させたときの、前記サブトラクション画像における前記対象物の画像と前記被検体の画像との輝度の差が、前記対象物の画像が視認容易となる所定の電圧値を、最適電圧値として判定する最適電圧判定手段と、
を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置において、
前記最適電圧判定手段は、前記照射手段に付与する高電圧値または低電圧値のいずれか一方を変化させたときの、前記サブトラクション画像における前記対象物の画像と前記被検体の画像との輝度の差が最大となる電圧値を、最適電圧値として判定するX線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線撮影装置において、
前記X線管制御部は、低電圧値を一定にするとともに高電圧値を変化させた状態で、前記X線管に高電圧と低電圧とを交互に付与し、
前記サブトラクション手段は、前記X線管に高電圧と低電圧とが交互に付与されたときの前記X線検出手段によるX線の測定値に対して順次サブトラクション処理を行うX線撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線撮影装置において、
前記最適電圧判定手段は、
前記対象物の画像を表示する表示手段と、前記表示手段に表示された対象物の画像を含む領域を指定領域として指定する領域指定手段と、前記領域指定手段により指定された指定領域の画像のプロファイルを演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段により演算された指定領域の画像のプロファイルから前記最適電圧値を判定するX線撮影装置。
【請求項5】
請求項4に記載のX線撮影装置において、
前記最適電圧判定手段は、前記指定領域の画像における輝度の最大値を対象物の画像の輝度値と認定し、この輝度の最大値を前記指定領域の輝度値と比較することにより前記最適電圧値を判定するX線撮影装置。
【請求項6】
請求項5に記載のX線撮影装置において、
前記最適電圧判定手段は、前記指定領域の画像における平均輝度と前記指定領域の画像における輝度の最大値との差が最大となる電圧値を最適電圧値として判定するX線撮影装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記最適電圧判定手段により判定された最適電圧値を利用してサブトラクション透視画像の撮影を行うX線撮影装置。
【請求項8】
検査に使用する対象物を被検体とともに表示するX線撮影方法において、
低電圧値を一定にし、高電圧値を変化させた状態で、X線管に高電圧と低電圧とを交互に付与することにより、高電圧画像と低電圧画像とを順次入手するとともに、前記高電圧画像と前記低電圧画像とに対してサブトラクション処理を行うサブトラクション工程と、
前記サブトラクション工程で得た複数のサブトラクション画像のうち、前記対象物の画像と前記被検体の画像との輝度の差が、前記対象物の画像が視認容易となるサブトラクション画像を得たときの高電圧値を、最適電圧値として判定する最適電圧判定工程と、
前記最適電圧判定工程で判定した最適電圧値を高電圧値として、サブトラクション透視画像の撮影を行う撮影工程と、
を備えることを特徴とするX線撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−253014(P2010−253014A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106037(P2009−106037)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】