説明

X線検査装置

【課題】試料を高分解能で検査することが可能なX線検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】固定ベース40と、電子を放出する電子銃11と、電子銃11から放出された電子が衝突する陽極ターゲット12と、陽極ターゲット12を支持するヘッド部15B及びボディ部15Aを有するとともに電子銃11を収容する真空外囲器15と、を有するX線管10と、X線管10から放出されたX線を検出するセンサ20と、X線管10とセンサ20との間に位置するとともに試料を保持する試料ステージ30と、ボディ部15Aを固定ベース40に固定する第1固定部材50Aと、ヘッド部15Bを固定ベース40に固定する第2固定部材50Bと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線を発生するX線管を有するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な微小焦点を有するX線管は、マイクロフォーカスX線管として既に製品化がなされている。微小焦点を有するX線管は、検査対象物の微小領域を高分解能で検査する非破壊検査装置などに広く利用されている。このようなX線管において、例えば、特許文献1によれば、電子銃から放出された電子ビームをビーム収束用磁気レンズにより収束させる技術が開示されている。
【0003】
また、マイクロフォーカスX線源などの放射状X線照射源とするX線検査装置において、簡単な機構を用いて2次元X線透過像を生成するために、例えば、特許文献2によれば、X線放射源とラインディテクタを対峙させて、X線放射が確実にラインディテクタに入射するようにして固定した間に、被険体を載置するステージがラインディタクタの軸に垂直方向に往復動するようにした試料台を介設して、固定されたラインディタクタを横切る方向に被検体を往復動させることにより、被検体の隣接する位置ごとに1次元のX線透過プロフィールを取得し、この1次元X線測定結果を集積複合して2次元X線透過像を生成する技術が開示されている。
【0004】
微小焦点を有するX線管を用いたX線検査装置において、電子源から放出された電子ビームが陽極ターゲットに衝突することにより熱が発生し、X線管が熱膨張することがあり、検査対象物である試料に対して電子が衝突する陽極ターゲットの微小焦点の位置がずれてしまうことがある。また、X線検査装置の起動時における振動により、試料に対して微小焦点の位置がずれてしまうことがある。これにより、試料を高分解能で検査することができないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−28845号公報
【特許文献2】特開2004−239815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、試料を高分解能で検査することが可能なX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一態様によれば、固定ベースと、電子を放出する電子銃と、前記電子銃から放出された電子が衝突する陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットを支持するヘッド部及びボディ部を有するとともに前記電子銃を収容する真空外囲器と、を有するX線管と、前記X線管から放出されたX線を検出するセンサと、前記X線管と前記センサとの間に位置するとともに試料を保持する試料ステージと、前記ボディ部を前記固定ベースに固定する第1固定部材と、前記ヘッド部を前記固定ベースに固定する第2固定部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、試料を高分解能で検査することが可能なX線検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係るX線検査装置のX線管の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図2は、この発明の一実施の形態に係るX線検査装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、他の実施の形態に係るX線検査装置の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
まず、本実施の形態に係るX線検査装置に用いられるX線管の構成の一例について図1を参照して説明する。図1に示すように、X線管10は、電子銃11と、陽極ターゲット12と、真空外囲器15と、を有している。
【0012】
電子銃11は、電子(電子ビーム)を放出する電子源(図示しない)と、放出された電子を収束する収束機構(図示しない)と、を備えている。電子銃11は、絶縁筒13によって支持されている端子部14と接続されている。電子銃11は、端子部14を介して駆動電源(図示しない)と接続されている。
【0013】
陽極ターゲット12は、電子銃11の電子を放出する電子放出面SFと対向するように配置されている。陽極ターゲット12は、電子銃11から放出された電子が衝突する微小焦点(電子衝突面)を有している。微小焦点は、ミクロンオーダ、またはそれ以下の領域である。
【0014】
真空外囲器15の内部には、ゲッタ16が収容されており、ゲッタ16によって真空状態に維持されている。なお、真空状態を維持する手段として、ゲッタ16に限らず、イオンポンプなどの真空ポンプを用いてもよい。
【0015】
真空外囲器15は、電子銃11を収容している。真空外囲器15は、略円筒状のボディ部15Aと、ヘッド部15Bと、を有している。ここでは、ボディ部15Aには、電子銃11の一部が固定されている。これにより、ボディ部15Aは、電子銃11を支持している。ヘッド部15Bは、電子放出面SFと対向する開口APを有している。ヘッド部15Bには、開口APを塞ぐように、陽極ターゲット12の一部が固定されている。これにより、ヘッド部15Bは、陽極ターゲット12を支持している。ここでは、ヘッド部15Bには、固定用ネジ穴15Hが設けられている。ヘッド部15Bは、ステンレス鋼(SUS)などの剛性の高い材料によって形成されている。
【0016】
つまり、真空外囲器15内には電子銃11が固定されており、真空外囲器15の一端には陽極ターゲット12が固定されている。真空外囲器15は、電子銃11と陽極ターゲット12とが対向するように、電子銃11と陽極ターゲット12とを固定している。
【0017】
このようなX線管10の動作時において、電子銃11に端子部14を介して駆動電源から電圧及び電流が供給され、電子銃11の電子源が電子を放出する。電子銃11は、陽極ターゲット12に向けて放出された電子を加速させ、収束させる。電子銃11から放出された電子は、陽極ターゲット12に衝突し、X線が発生する。X線は、陽極ターゲット12を透過して、X線管10の外側に向かって放出される。
【0018】
次に、本実施の形態に係るX線検査装置の一例の構成について図2を参照して説明する。図2に示すように、X線検査装置1は、X線管10と、センサ20と、試料ステージ30と、固定ベース40と、第1固定部材50Aと、第2固定部材50Bと、を有している。
【0019】
センサ20は、X線管10の陽極ターゲット12に対向するように配置されている。センサ20は、X線管10から放出されたX線を検出する。センサ20は、データを収集する。収集されたデータにより透過画像が得られる。
【0020】
試料ステージ30は、検査対象物である試料SAを保持する。試料ステージ30は、X線管10とセンサ20との間に位置している。試料ステージ30は、移動可能である。
【0021】
固定ベース40は、定盤40Aと、第1ベース部40B1と、第2ベース部40B2と、第3ベース部40B3と、を有している。第1ベース部40B1、第2ベース部40B2及び第3ベース部40B3は、定盤40Aの上に固定されている。
【0022】
第1ベース部40B1の上には、X線管10が配置されている。ここでは、第1ベース部40B1は、固定用ネジ穴(図示しない)を有している。第2ベース部40B2の上には、試料ステージ30が固定されている。ここでは、第2ベース部40B2は、剛性の高い材料によって形成されている。第3ベース部40B3の上には、センサ20が固定されている。
【0023】
第1固定部材50Aは、X線管10の真空外囲器15のボディ部15Aを固定ベース40の第1ベース部40B1に固定している。つまり、第1ベース部40B1には、第1固定部材50AによりX線管10が固定されている。ここでは、第1固定部材50Aは、第1ベース部40B1の固定用ネジ穴と略同等のサイズの固定用穴部(図示しない)を有している。第1固定部材50Aは、ボディ部15Aの外周面に沿って架け渡されている。この第1固定部材50Aは、固定用ネジ50Sを第1固定部材50Aの固定用穴部に貫通させ、第1ベース部40B1に設けられた固定用ネジ穴に嵌め込むことによって第1ベース部40B1に固定されている。
【0024】
第2固定部材50Bは、X線管10の真空外囲器15のヘッド部15Bを固定ベース40の第2ベース部40B2に固定している。つまり、第2ベース部40B2には、第2固定部材50B及び試料ステージ30が固定されている。第2固定部材50Bは、陽極ターゲット12により近い位置でヘッド部15Bに固定されていることが望ましい。
【0025】
ここでは、第2固定部材50Bは、X線管10の真空外囲器15よりも熱伝導率が高い金属製フランジ、金属板などによって形成されている。第2固定部材50Bは、ヘッド部15Bの外周面に沿って架け渡され、固定用ネジ(図示しない)をヘッド部15Bに設けられた固定用ネジ穴15Hに嵌め込むことによってヘッド部15Bに固定されている。
【0026】
このようなX線検査装置1において、試料SAを試料ステージ30の上に配置し、X線管10から放出されたX線が試料SAに照射されるように試料ステージ30を移動させ試料の位置を調節する。X線検査装置1の起動時において、X線管10から放出されたX線が試料SAに照射され、試料SAを透過したX線をセンサ20が検出し、検出したデータから透過画像が得られる。なお、試料ステージ30を移動させることによって、試料SAの任意の領域にX線を照射することができ、その照射領域を検査することができる。
【0027】
ところで、微小焦点を有するX線管10を用いたX線検査装置1において、電子銃11から放出された電子ビームが陽極ターゲット12に衝突することにより熱が発生し、X線管10が熱膨張することがある。これにより、陽極ターゲット12の位置が変動することがあるため、試料SAに対して陽極ターゲット12の微小焦点の位置がずれることがある。
【0028】
また、X線検査装置1のX線管10の真空外囲器15の中央部分を固定部材によって固定ベース部に固定するような構成の場合において、X線検査装置1の起動時における振動による影響を陽極ターゲット12が受けやすく、試料SAに対して陽極ターゲット12の微小焦点の位置がずれることがある。つまり、1μm以下の微小焦点で、試料SAに対して陽極ターゲット12の微小焦点の位置を維持することができないことがあり、微小焦点の性能が発揮できないことがある。これにより、センサ20によって得られる透過画像にぶれが生じ、試料SAを高分解能で検査ができないことがある。
【0029】
これに対して、本実施の形態において、第1固定部材50Aがボディ部15Aを固定し、第2固定部材50Bが陽極ターゲット12を支持するヘッド部15Bを固定しているため、X線管10の熱膨張あるいは振動が抑制され、陽極ターゲット12の位置の変動を抑制することができ、試料SAに対する陽極ターゲット12の微小焦点の位置の変動を抑制することができる。
【0030】
また、本実施の形態において、第2固定部材50Bが陽極ターゲット12により近い位置でヘッド部15Bを固定しているため、さらに陽極ターゲット12の位置の変動を抑制することができ、試料SAに対する陽極ターゲット12の微小焦点の位置の変動を抑制することができる。
【0031】
さらに、本実施の形態において、第2固定部材50BがX線管10の真空外囲器15より、熱伝導性の高い材料によって形成されているため、電子ビームが陽極ターゲット12に衝突することにより発生する熱をX線管10から第2固定部材50Bを介してX線管10の外部へ放熱することができる。これにより、X線管10の熱膨張を抑制することができ、さらに試料SAに対する陽極ターゲット12の微小焦点の位置の変動を抑制することができる。
【0032】
さらに、本実施の形態において、第2ベース部40B2が剛性の高い材料によって形成されているため、第2ベース部40B2の熱膨張を抑制することができ、第2ベース部40B2の上に配置された第2固定部材50Bの位置の変動を抑制することができ、ヘッド部15Bの位置の変動を抑制することができる。これにより、さらに陽極ターゲット12の位置の変動を抑制することができ、試料SAに対する陽極ターゲット12の微小焦点の位置の変動を抑制することができる。
【0033】
以上、本実施の形態によれば、試料SAに対する陽極ターゲット12の微小焦点の位置の変動を抑制することが可能となり、試料SAを高分解能で検査することが可能なX線検査装置を提供することができる。
【0034】
なお、真空外囲器15のボディ部15Aとヘッド部15Bとが一体的に形成されていてもよい。このとき、ボディ部15Aは、電子銃11が固定されている位置より絶縁筒13側の部分であり、ヘッド部15Bは、電子銃11が支持されている位置より陽極ターゲット12側の部分である。
【0035】
次に、他の実施の形態について図3を参照して説明する。この図3に示したX線検査装置1は、図2に示したX線検査装置1と比較して冷却器を備えている点で異なる。なお、他の構成については、図2に示した例と同一であるため、同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。
【0036】
すなわち、X線管10の真空外囲器15のボディ部15Aは、第1固定部材50Aによって第1ベース部40B1に固定されている。ヘッド部15Bは、第2固定部材50Bによって第2ベース部40B2に固定されている。
【0037】
図3に示すように、X線検査装置1は、冷却器60を有している。冷却器60は、第2ベース部40B2を冷却している。冷却器60は、例えば、冷却液によって満たされた配管60P及びポンプ(図示しない)を有しており、ポンプによって冷却液を循環させることにより第2ベース部40B2を冷却している。
【0038】
この実施の形態においても、図2に示した例と同様の効果が得られる。
【0039】
また、この実施の形態において、第2ベース部40B2が冷却器60によって冷却されているため、電子ビームが陽極ターゲット12に衝突することにより発生する熱をさらにX線管10からX線管10の外部へと放出することができ、X線管10の熱膨張を抑制することができ、試料SAに対する陽極ターゲット12の微小焦点の位置の変動を抑制することができる。
【0040】
さらに、この実施の形態において、第2ベース部40B2が冷却器60によって冷却されているため、さらに第2ベース部40B2の熱膨張を抑制することができ、第2固定部材50Bの位置の変動を抑制することができ、ヘッド部15Bの位置の変動を抑制することができる。これにより、さらに陽極ターゲット12の位置の変動を抑制することができ、試料SAに対する陽極ターゲット12の微小焦点の位置の変動を抑制することができる。
【0041】
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0042】
40…固定ベース 11…電子銃 12…陽極ターゲット 15A…ボディ部 15B…ヘッド部 15…真空外囲器 10…X線管 20…センサ 30…試料ステージ 50A…第1固定部材 50B…第2固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ベースと、
電子を放出する電子銃と、前記電子銃から放出された電子が衝突する陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットを支持するヘッド部及びボディ部を有するとともに前記電子銃を収容する真空外囲器と、を有するX線管と、
前記X線管から放出されたX線を検出するセンサと、
前記X線管と前記センサとの間に位置するとともに試料を保持する試料ステージと、
前記ボディ部を前記固定ベースに固定する第1固定部材と、
前記ヘッド部を前記固定ベースに固定する第2固定部材と、
を備えたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記第2固定部材は、前記真空外囲器よりも熱伝導率が高い材料によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記固定ベースは、前記第1固定部材を固定する第1ベース部と、前記試料ステージ及び前記第2固定部材を固定する第2ベース部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項4】
さらに、前記第2ベース部を冷却する冷却器を備えたことを特徴とする請求項3に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−129430(P2011−129430A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288153(P2009−288153)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】