説明

X線画像撮影装置

【課題】 可搬性を有するX線画像撮影装置において、外形サイズの増加を抑えつつ、耐衝撃性能を確保することを求められている。
【解決手段】 本発明に係るX線画像撮影装置は、X線を画像信号に変換するX線センサと、前記X線センサを支持する支持部材と、前記X線センサと前記支持部材とを内部に有する筺体とを有するX線画像撮影装置であって、前記筺体は、前記X線画像撮影装置のX線入射前面を覆う前筺体と、前記X線入射前面の反対面の後面を覆う後筺体とを有し、前記前筺体と前記後筺体との接合部には、前記筺体の外部に対して窪みが形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬性を有するX線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療画像診断や非破壊検査に用いるX線画像撮影装置として、半導体センサを使用してデジタル画像を取得する装置の普及が進められている。これにより、従来の感光性フィルムによる画像取得と異なり、取得画像を瞬時に確認出来ることで作業効率の向上が実現されている。更に、非常に広いダイナミックレンジを有していることから、X線露光量の変動に影響されない撮影も可能となっている。
また、前記装置の小型・軽量化が進められることで可搬型のものも実用化されている(特許文献1)。任意の姿勢での撮影が可能となり、一般病室や屋外などでのX線画像撮影に好んで用いられている。この可搬型のX線画像撮影装置においては、運搬する際などに、不注意によって落下させたりする場合がある。テーブルの高さや、持ち運び時の保持高さを考慮して、0.5〜1m程度の高さからの落下が想定される。そのため、十分な機械的強度を確保する必要がある。一方で、センサを駆動するための電気回路などを内部に収納するために、重量は一般的に2.5kg以下にすることは難しく、落下時の衝撃エネルギーは大きくなってしまう。また、撮影時にX線画像撮影装置を被験者下に配置する場合があり、その際の被験者の不快感低減等のために、厚さ15mm程度の薄型の製品が一般的になっており、剛性を高めて落下耐性を上げることも困難である。そのため、十分な強度を確保するために、X線画像撮影装置の側面に緩衝材を配して衝撃を吸収する構造が用いられている(特許文献2)。また、緩衝材を用いると外形サイズが大きくなるため、運搬等の際に筺体外部に装着して使用する保護用フレームも考案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3848288
【特許文献2】特開2006−006424
【特許文献3】特開2005−006806
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の実装技術の向上によってX線画像撮影装置の小型化は更に進められている。特に、従来のフィルムカセッテで用いられていた架台をそのまま使用可能とするために、従来のフィルムカセッテと同等の外形にしたいという要望が大きい。しかし、十分な機械的強度を得るために側面に緩衝材を配すると、外形サイズを小さくすることに制限がある。また、緩衝材の代わりに、架台に装着する際に取り外し可能な専用の保護用フレームを用いると、着脱の作業が煩雑であり、更に、外した保護用フレームの管理が必要であるために利便性に劣る。
本発明は、可搬性を有するX線画像撮影装置において、外形サイズの増加を抑えつつ、十分な機械的強度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るX線画像撮影装置は、X線を画像信号に変換するX線センサと、前記X線センサを支持する支持部材と、それらを内部に格納する筺体とを有するX線画像撮影装置であって、前記筺体は、X線入射面を前面とし、その対向する面を後面としたとき、X線画像撮影装置の前面を覆う平面部と撮影部側面の一部となる側壁とを持つ前筺体と、X線画像撮影装置の後面を覆う平面部と撮影部側面の一部となる側壁とを持つ後筺体とで構成され、前記筺体外側の側面、及び、角部に、X線画像撮影装置の厚み方向略中央部に窪みを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、可搬性を有するX線画像撮影装置の外形サイズの増加を抑えつつ、十分な機械的強度を確保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1におけるX線画像撮影装置を示す図
【図2】実施例1におけるX線画像撮影装置の周縁部の断面構造を示す図
【図3】実施例2におけるX線画像撮影装置を示す図
【図4】実施例2におけるX線画像撮影装置の周縁部の断面構造を示す図
【図5】実施例2におけるX線画像撮影装置の内部構造を示す図
【図6】実施例3におけるX線画像撮影装置の周縁部の断面構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施例1]
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0009】
図1は、本実施例における可搬性を有するX線画像撮影装置100を示す図である。図1(a)はX線入射面から見た正面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。X線画像の撮影時は、X線発生装置(不図示)とX線画像撮影装置100の間に被撮影体を配して、被撮影体を透過したX線をX線画像撮影装置100で読取り、画像情報を得る。X線画像撮影装置100の内部には、ガラス基板に光電変換素子と蛍光体が積層されて構成されるX線センサパネル140が配置されている。X線センサパネル140に照射したX線によって蛍光体が発光し、その光を光電変換素子が電気信号に変換することで、画像信号を得る。X線センサパネル140は、外部からの荷重や運搬時の振動などによって変形や割れが生じないよう、X線入射面の反対側の面に、剛性を持つ支持部材141が接着されている。X線センサパネル140のX線入射面側には、筺体との間に緩衝性能を持つシート(不図示)を配する。X線入射面側からの荷重によるX線センサパネル140の破損を抑制することが出来る。また、X線センサパネル140は、フレキシブル基板142を介して電気回路基板143と接続されている。電気回路基板143によって、X線センサパネル140の制御や画像信号の処理が行われる。支持部材141は、前記の電気回路基板143を固定する機能も有する。また、支持部材141がリブなどを有することで、筺体を支持することも出来、裏面からの荷重が電気回路基板143に直接作用しないようにすることも可能である。
【0010】
X線画像撮影装置100の筺体は、前筺体110、後筺体120、X線透過板130とで構成される。前筺体110は、前平面部111と側壁部112を持ち、同様に、後筺体120は、後平面部121と側壁部122を持つ。前筺体110と後筺体120は、落下や衝撃などに対する強度確保、および、運搬時の負担軽減を目的とした軽量化のため、アルミニウムやマグネシウムなどの低比重の材料が好んで用いられている。また、複雑な形状を形成するために、ダイカストによって製造することが好ましい。また、前平面部111は、X線読取領域に対応する位置にX線透過部130を備える。X線透過部130は、たとえばCFRPなどが用いられる。このX線透過部130には、X線センサパネル140の読取中心、読取範囲が分かる指標131、132が記されている。X線画像撮影装置100の外装側壁は、前筺体110と後筺体120のそれぞれの側壁部111、121が重ね合わされて形成される。この構造によって、それぞれの側壁を高く形成することが可能となり、側壁部の曲げ剛性を高めることが出来る。また、X線画像撮影装置100の内部に外光が入りにくい構造とすることが出来る。
【0011】
X線画像撮影装置100を誤って落下させてしまった場合、側面や角部が床に衝突するケースが多い。そのため、周縁部の耐衝撃性能を上げる必要がある。耐衝撃性能が不十分で筺体が変形してしまった場合は、内部に光が入ってしまって良好な画像を取得することが出来なくなったり、厚みが一部分だけ増すことで架台に収納出来なくなったりする恐れがある。図2を用いて、十分な耐衝撃性能を確保する構造を説明する。図2は、X線画像撮影装置100の周縁部の断面構造を示す図である。図2(a)は、図1(a)のB−B断面図であり、側面の断面図をあらわす。図2(b)は、図1(a)のC−C断面図であり、角部の断面図をあらわす。図に示すように、X線画像撮影装置100の側面、及び、角部に、厚み方向略中央部に窪みを形成する。具体的には、前筺体110、後筺体120のそれぞれの側壁112、122に、側壁の先端側が凹となる段差を設け、前筺体110と後筺体120を重ね合わせた際に前記窪みが出来る構成とする。前記窪みは、前平面部111の内側の面から、後平面部121の内側の面までとする。窪みを形成しない場合、側面や角部からの衝撃荷重は側壁112、122の全面で受けることとなるため、側壁の高さの分だけの曲げモーメントが生じてしまう。一方、本形状によれば、窪み部分は非接触領域となり、側面や角部からの衝撃荷重は前平面部111と後平面部121で受けることとなる。つまり、平面部への圧縮荷重が発生するだけであり、曲げモーメントが生じないので、筺体が変形しづらい。上記構成によって、十分な耐衝撃性能を得ることが可能となる。また、窪みの深さは0.5〜1.5mm程度であり、緩衝材を用いた際よりも狭額縁を実現することが可能となる。
【0012】
次に、側面と角部の窪みの深さについて説明する。落下等において、角部は側面と比較して衝突時の接触面積が狭い。そのため、床などの被衝突体が変形しやすく、窪み部分に被衝突体が接触して荷重を加えてしまうリスクがある。窪み部分に荷重が加わると、側壁に曲げモーメントが生じて筺体の変形につながる。そのため、窪みを深くし、窪み部分を確実に非接触領域とすることで、衝撃が加わった際のリスクを低減することが求められる。狭額縁実現のため、側面においてはX線センサパネル140から筺体最外までの距離が短く、窪みの深さのエリア確保が困難であるが、角部は比較的窪みの深さのエリア確保が可能である。上記理由から、角部の窪み深さD2が、側面の窪み深さD1よりも深いことが好ましい。
【0013】
[実施例2]
以下、1辺に把持部を有するX線画像撮影装置における実施例を説明する。把持部を有することで、運搬時に負荷が低減され、可搬性の向上につながる。図3は、本実施例におけるX線画像撮影装置200を示す図である。図中上側に、把持部201、開口部202を有しており、把持部201を握ってX線画像撮影装置200を持ち運び出来る。
【0014】
把持部を有する辺の、周縁部の断面構造を以下で示す。図4(a)は、図3のD−D断面図であり、図4(b)は、図3のE−E断面図である。把持部201は、前筺体110と後筺体120とで形成され、握りやすさを確保するために角部がR処理されている。ここで、前筺体110、後筺体120の把持部201を形成する部分は、外形サイズの制限が無いために十分な強度を有する肉厚に設定することが可能である。必要であれば、緩衝材(不図示)を用いることも出来る。角部近傍においては、前筺体110と後筺体120をネジ151によって締結することで、変形を抑制することも可能である。また、運搬時などにおいて、把持部201が上側にある状態で保持するため、不注意で落下させたときに把持部201が下側になるリスクが少ない。上記理由から、把持部201側の側面と角部には、窪みを形成しないことが好ましい。握る部分に段差が無いため、ユーザーの不快感も少ない形状とすることが出来る。
【0015】
次に、X線画像撮影装置200の筺体内部の構成について説明する。図5は、X線画像撮影装置200の、前筺体110を外した内部構造図である。支持部材141に接着されたX線センサパネル140が筺体に内包される。支持部材141の外形は、センサパネル140の外形よりも大きく、センサパネル140が突出しないことが好ましい。筺体の側壁内壁に支持部材141が先に接触して、センサパネル140が接触しないことで、ガラスの破損を防止出来るためである。次に、本実施例においては支持部材141の外形は筺体側壁内側と1mm以下の僅かな隙間を持って形成され、支持部材141を筺体の内側に嵌めこむことで固定される。支持部材141を筺体とネジ固定する場合と比べて、ネジ本数の削減が可能となる。センサパネル140は、複数のフレキシブル基板142を二つの辺に有する。フレキシブル基板142が筺体の側壁と支持部材141に挟まれないよう、支持部材141には凸部144を設ける。機台141に別部品を取り付けることで凸部144を形成しても良い。凸部144はフレキシブル基板142の間に配置することで、多くの面で側壁と接触することができ、X線センサパネル140や支持部材141の重量を支えた際の凸部144の変形を防止できる。
【0016】
上記のX線画像撮影装置200を落下させた際、支持部材141やX線センサパネル140の落下は筺体の側壁内側で支えられる。そのため、筺体の側壁内側に衝撃荷重が加わることとなる。筺体側壁に窪みを形成することで、上記内側からの衝撃荷重によって筺体が変形してしまうリスクが生じる。側壁内側からの衝撃荷重を、側壁の外側から受け止め支持することが出来ないためである。更に、窪みを有することで側壁の肉厚が薄くなってしまうことも原因となる。特に角部においては、荷重を受ける面が少なく、また、窪みを深くするために側壁の肉厚も薄くなる可能性がある。上記を鑑みて、角部の窪みを有する部分においては、支持部材141が筺体の側壁内側と離間していることが好ましい。内側からの衝撃荷重に弱い角部では、支持部材141やX線センサパネル140を側壁内側で支えないため、筺体の変形のリスクを低減することが出来る。特に、支持部材141が筺体にネジ固定されずに、本実施例のように移動可能に保持されているときには、支持部材141やセンサパネル140の重量を筺体の側壁内側のみで支持するため、特に好ましく適用される。
【0017】
[実施例3]
次に、筺体の側面と前面及び後面との角部がR処理されている場合について説明する。図6は、本実施例におけるX線画像撮影装置の断面図である。ユーザーの持ちやすさや美観性などを考慮して、筺体角部に曲率半径1.0〜3.0mm程度のR処理がなされている。この曲率半径が、前平面部111、後平面部121の板厚よりも厚い場合、側面や角部からの衝撃荷重を前平面部111と後平面部121だけで受けることは出来ず、筺体側壁に曲げモーメントが生じる。ここで、前筺体110の外側角の曲率半径の大きさをR1とし、X線画像撮影装置の前面窪みまでの距離をX1としたとき、前記曲げモーメントはX1+R1に比例する。窪みを大きくし、X1を小さくすることで、曲げモーメントの低減が可能である。後筺体120についても同様であるため、ここでは前筺体側を用いて詳細を説明する。B1を筺体の強度をあらわす係数、C1を要求する耐衝撃仕様をあらわす係数としたとき、X1+R1≦B1/C1を満たすと、必要な機械的強度を満足する形状と言える。ここで、B1は前筺体を形成する材料や形状、前平面部の板厚、側壁の板厚などで決められ、C1は要求する落下時の衝撃エネルギーによって決められる。B1は、シミュレーションや実験によって求められ、簡易的には、板厚の3乗に比例して計算される。また、C1は、落下時の高さ、X線画像撮影装置の重量に比例して計算される。たとえば、重量3kgで1mの高さから落下させる仕様において、筺体の材料がマグネシウムで、筺体の平面部の板厚が約1.5mm、側壁部の板厚が約2.0mmであるとき、実験によってB1/C1は約6mmであることが求められる。つまり、X1+R1が6mm以上であるとき、筺体の塑性変形が生じてしまい、筺体内部に光が入って良好な画像が取得することが出来なくなったり、厚みが一部分だけ増すことで架台に収納出来なくなったりする恐れが生じる。また、C1は落下高さに比例するため、落下高さの仕様を1/2にするとB1/C1は2倍になり、X1+R1が12mm以下であれば必要な落下強度を満足することが可能となる。
【0018】
一方、X1―R1で表わされる筺体側面の平面領域幅は、所定の値(ここではA1とする)以上である必要がある。A1は、製造バラつき公差や、ダイカストで製作する際に必要なゲート幅になどよって決められる。
【0019】
以上より、X1およびX2が、Rn+An≦Xn≦Bn/Cn−Rn(n=1、2)を満たすことで、持ちやすさや美観性などを考慮して角部がR処理された場合においても必要な強度仕様を満足するX線画像撮影装置が実現出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を画像信号に変換するX線センサと、前記X線センサを支持する支持部材と、前記X線センサと前記支持部材とを内部に有する筺体とを有するX線画像撮影装置であって、
前記筺体は、前記X線画像撮影装置のX線入射前面を覆う前筺体と、前記X線入射前面の反対面の後面を覆う後筺体とを有し、
前記前筺体と前記後筺体との接合部には、前記筺体の外部に対して窪みが形成されていることを特徴とするX線画像撮影装置
【請求項2】
前記筺体の角部の窪みは、前記筺体側面の窪みよりも深く形成されていることを特徴とする請求項1記載のX線画像撮影装置
【請求項3】
前記X線画像撮影装置は、少なくとも1つの側面に可搬用の把持部を有し、前記把持部を有する側面、及び、該側面側の角部の窪みは、前記把持部を有する側面に対抗する側面、及び、該側面側の角部の窪みよりも浅く形成されていることを特徴とする請求項1もしくは2のいずれか1項に記載のX線画像撮影装置
【請求項4】
前記支持部材と前記X線センサとは、前記筺体の角部において、筺体側壁内側の面と離間していることを特徴とする請求項2もしくは3のいずれか1項に記載のX線画像撮影装置
【請求項5】
前記支持部材と前記X線センサとは、前記筺体の内部において、前記筺体に対して移動可能に保持されていることを特徴とする請求項4記載のX線画像撮影装置
【請求項6】
前記前筺体もしくは前記後筺体の平面部から前記窪みまでの距離は、前記前筺体もしくは前記後筺体の角部の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のX線画像撮影装置
【請求項7】
前記前筺体もしくは前記後筺体の角部の曲率半径をR、製造工程により決まる係数をA、筺体の強度を示す係数をB、要求される耐衝撃仕様を示す係数をCとした場合、前記前筺体もしくは前記後筺体の平面部から前記窪みまでの距離Xは、R+A≦X≦B/C−Rを満たすことを特徴とする請求項6に記載のX線画像撮影装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−72709(P2013−72709A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211128(P2011−211128)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】