説明

X線画像診断装置

【課題】被曝低減を図りながら、被検体に対する関心領域が変更されても関心領域とその周辺領域との位置関係の把握を正確に行い、さらに、周辺領域の再撮像による被曝量の増加及び作業性の低下を防止する。
【解決手段】X線画像診断装置1は、注目部位の静止画像を得る場合、注目部位の所定領域のX線画像を撮像し、注目部位の動画像を得る場合、所定領域内の関心領域のX線画像を順次撮像する撮像部3と、撮像した所定領域のX線画像を記憶する画像記憶部5cと、撮像した関心領域のX線画像と、記憶した所定領域のX線画像における関心領域以外の周辺領域のX線画像とを合成し、合成画像を生成する画像処理部5bと、生成した合成画像を表示する表示部6とを備える。画像処理部5bは、関心領域の変更に応じて、関心領域から周辺領域となった変化領域のX線画像を変更前の関心領域のX線画像から取得し、周辺領域のX線画像に重ねて合成画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像診断装置は、X線照射器により患者などの被検体に対してX線を照射し、X線検出器により被検体を透過したX線を検出し、被検体のX線画像を得る装置である。このX線画像診断装置としては、例えば、X線照射器やX線検出器を対向状態で保持するCアームなどを備え、天板上の被検体に対する撮像位置にX線照射器及びX線検出器を移動させて被検体の注目部位のX線画像を撮像してモニタに表示するX線画像診断装置が開発されている。
【0003】
このようなX線画像診断装置では、通常の撮影モードに加え、X線照射器から少量のX線を継続的に照射し、被検体のX線画像を連続的に表示する透視モードと呼ばれるX線照射モードがある。透視モードは目的部位を見つけ出したり、運動している部位を動画として観察したりする場合に多く利用されている。この透視モードを用いることで、被検体に照射されるX線が少量となり、被検体の被曝量を低減させることができる。なお、この透視モードで撮像されたX線画像は一般に透視画像と称される。
【0004】
このように被検体の被曝低減が実現されているが、さらなる被曝低減が求められている。そこで、予め記憶した透視画像(静止画像)に関心領域(ROI:Region Of Interest)を設定し、この設定した関心領域だけにX線を照射して関心領域の透視画像(動画像)を得て、その動画像を静止画像に重ねて表示する技術(例えば、スポット撮影法など)が提案されている。この技術は、例えば、カテーテルを用いたアブレーションを行う場合などに用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−164130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のように静止画像に動画像を重ねて合成画像を生成する技術では、予め記憶した静止画像と動画像との間に、撮像したタイミングの時間差が存在するため、被検体である患者の体動などで、静止画像及び動画像に対する被検体の位置関係がずれ、合成画像が有効でなくなる恐れがある。このため、被検体の移動に応じて関心領域が変更されるが、それと同時に、予め記憶した静止画像も変更しないと、関心領域とその周辺領域との位置関係が不正確になり、それらの位置関係を正確に把握することができなくなってしまう。また、予め記憶した静止画像を変更する場合には、再度、周辺領域の透視画像を撮像する必要が生じるため、被曝量の増加に加え、作業性も低下してしまう。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、被曝低減を図りながら、被検体に対する関心領域が変更されても関心領域とその周辺領域との位置関係の把握を正確に行うことができ、さらに、周辺領域の再撮像による被曝量の増加及び作業性の低下を防止することができるX線画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係るX線画像診断装置は、被検体の注目部位の静止画像を得る場合、注目部位の所定領域のX線画像を撮像し、注目部位の動画像を得る場合、所定領域内の関心領域のX線画像を順次撮像する撮像部と、撮像部により撮像された所定領域のX線画像を記憶する画像記憶部と、撮像部により撮像された関心領域のX線画像と、画像記憶部により記憶された所定領域のX線画像における関心領域以外の周辺領域のX線画像とを合成し、合成画像を生成する画像処理部と、画像処理部により生成された合成画像を表示する表示部とを備える。画像処理部は、関心領域の変更に応じて、関心領域から周辺領域となった変化領域のX線画像を変更前の関心領域のX線画像から取得し、周辺領域のX線画像に重ねて合成画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係るX線画像診断装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示すX線画像診断装置が備える画像処理装置の画像合成処理を説明するための説明図である。
【図3】図1に示すX線画像診断装置が行う画像合成表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図3に示す画像合成表示処理における周辺領域の一部変更を伴う画像合成処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態に係るX線画像診断装置が備える画像処理装置の画像合成処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図1ないし図4を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、第1の実施形態に係るX線画像診断装置1は、患者などの被検体Pが載置される寝台2と、その寝台2上の被検体Pを撮像する撮像部3と、その撮像部3を保持して撮像位置まで移動させる移動装置4と、X線画像を処理する画像処理装置5と、X線画像などの各種画像を表示する表示部6と、各部を制御する制御装置7とを備えている。
【0012】
寝台2は、被検体Pを載せる長方形状の天板2aと、その天板2aを支持して水平方向及び鉛直方向に移動させる天板駆動部2bとを備えている。天板駆動部2bは、天板2aを移動させる移動機構やその移動のための駆動力を供給する駆動源などを有している。この寝台2は、天板駆動部2bにより天板2aを所望の高さまで移動させ、さらに、その天板2aを水平方向に移動させて天板2a上の被検体Pを所望位置まで移動させる。
【0013】
撮像部3は、天板2a上の被検体Pに対してX線を照射するX線照射部3aと、その被検体Pを透過したX線を検出するX線検出部3bとを備えている。この撮像部3は、天板2aの周囲を移動可能に設けられており、撮像位置まで移動してその撮像位置から天板2a上の被検体Pの注目部位のX線画像を撮像する。このX線画像としては、例えば、注目部位の血管などの透視画像が撮像される。
【0014】
X線照射部3aは、X線を出射するX線管3a1やそのX線管3a1から出射されたX線を絞ってX線の照射野(照射範囲)を制限するX線可動絞り器3a2、X線管3a1に供給する高電圧を発生させるX線高電圧発生部3a3などを備えている。このようなX線照射部3aは、X線高電圧発生部3a3により高電圧をX線管3a1に供給し、そのX線管3a1によりX線を出射し、さらに、そのX線をX線可動絞り器3a2により絞って天板2a上の被検体Pに照射する。
【0015】
ここで、X線可動絞り器3a2としては、様々なタイプのX線可動絞り器を用いることが可能である。例えば、鉛のような四枚のX線遮断部材を井桁状に組み合わせ、それらのX線遮断部材を互いに接離方向に移動させて、各X線遮断部材により囲まれて形成される窓の位置及び大きさを適宜変更するX線可動絞り器を用いても良い。その窓の部分が、X線が通過する通過領域となり、その窓以外の各X線遮断部材がX線を吸収して遮断する遮断領域となる。
【0016】
X線検出部3bは、X線管3a1に対向させて移動装置4に設けられており、対向するX線管3a1に対して接離方向に移動可能に形成されている。このX線検出部3bは画像処理装置5に電気的に接続されており、その画像処理装置5に検出したX線、すなわちX線画像信号を送信する。X線検出部3bとしては、例えば、イメージ・インテンシファイアやX線平面検出器(FPD)などを用いることが可能である。
【0017】
移動装置4は、X線管3a1及びX線検出部3bを対向させて保持する保持アーム4aと、その保持アーム4aをスライド移動可能に支持するアーム支持部4bと、そのアーム支持部4bを回動可能に支持する支柱4cとを備えている。
【0018】
保持アーム4aは、例えばC字形状のCアームであり、そのアームが伸びる方向にスライド移動可能にアーム支持部4bに設けられている。この保持アーム4aの長手方向の両端部に、X線管3a1及びX線検出部3bが対向させて設けられている。また、アーム支持部4bは、保持アーム4aをスライド移動可能に保持し、支柱4cに回動可能に設けられている。支柱4cは、アーム支持部4bを回動可能に支持し、床面に立設されている。
【0019】
画像処理装置5は、X線画像信号が入力される画像入力部5aと、その入力されたX線画像信号に基づいてX線画像を生成する画像処理部5bと、生成したX線画像を記憶する画像記憶部5cと、生成したX線画像あるいは記憶したX線画像を表示部6に出力する画像出力部5dとを備えている。
【0020】
画像入力部5aは、X線検出部3bにより検出されたX線画像信号を受信し、その受信したX線画像信号を画像処理部5bに送信する。画像処理部5bは、画像入力部5aから送信されたX線画像信号から被検体PのX線画像を生成し、その生成したX線画像を画像記憶部5cや画像出力部5dに送信する。画像記憶部5cは、画像処理部5bから送信されたX線画像を記憶する。この画像記憶部5cとしては、例えば、磁気ディスク装置や半導体ディスク装置(フラッシュメモリ)などを用いることが可能である。画像出力部5dは、画像処理部5bから送信されたX線画像あるいは画像記憶部5cにより記憶されたX線画像を表示部6に出力する。
【0021】
このような画像処理装置5は、電気回路などのハードウエアで構成されていても良く、あるいは、これらの機能を実行するプログラムなどのソフトウエアで構成されていても良く、また、それらの両方の組合せにより構成されていても良い。
【0022】
表示部6は、画像出力部5dから送信されたX線画像などの各種画像を表示する表示装置である。この表示部6としては、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどを用いることが可能である。
【0023】
制御装置7は、システムの各部を制御するシステム制御部7aと、X線可動絞り器3a2を制御する絞り移動制御部7bと、X線高電圧発生部3a3を制御するX線制御部7cと、操作者により入力操作される操作部7dとを備えている。なお、システム制御部7aには、心臓の電気的な活動を記録する心電計7eがケーブルなどの接続線を介して接続されている。
【0024】
システム制御部7aは、記憶した各種プログラムや各種データに基づいて各部を制御するものであり、特に、操作部7dに対する操作者の入力操作に応じて寝台2や撮像部3、移動装置4などを制御する。また、システム制御部7aは画像処理装置5の画像処理部5bに対して画像処理実行の指示を出力する。これに応じて、画像処理部5bは必要とする画像処理を実行することになる。なお、システム制御部7aは、移動装置4の駆動部(例えば、サーボモータ)などに設けられたエンコーダからの出力値に基づいて、保持アーム4aの位置に関する情報を得ることが可能である。
【0025】
絞り移動制御部7bは、システム制御部7aによる制御に応じて、X線可動絞り器3a2の開口度を制御する。例えば、被検体Pの注目部位の静止画像を得る場合には、X線可動絞り器3a2の開口度を、注目部位の所定領域のX線画像を撮像するための開口度にする。また、注目部位の動画像を得る場合には、X線可動絞り器3a2の開口度を、前述の所定領域内の関心領域(所定領域より狭い領域)のX線画像を撮像するための開口度にする。なお、絞り移動制御部7bは、X線可動絞り器3a2の駆動部(例えば、サーボモータ)などに設けられたエンコーダからの出力値に基づいて、X線可動絞り器3a2の開口度に関する情報を得ることが可能である。
【0026】
X線制御部7cは、システム制御部7aによる制御に応じて、X線照射部3aのX線管3a1により所望のX線を発生させるため、X線高電圧発生部3a3に与える電圧の波形、すなわち振幅やパルス幅などの各種条件を制御する。この制御に応じて、X線高電圧発生部3a3は、電圧を昇圧及び整流し、その電圧をX線管3a1に供給することになる。
【0027】
操作部7dは、術者や助手などの操作者からの入力操作を受け付ける入力部である。この操作部7dとしては、例えば、ジョイスティックやキーボード、マウス、フットスイッチなどの入力デバイスを用いることが可能である。術者や助手などの操作者は、操作部7dを入力操作し、撮像部3を所望の撮影位置に移動させる。
【0028】
心電計7eは、心臓の動きをコントロールしている電気の変化を記録するための機器であり、記録した心電波形をシステム制御部7aに入力する。システム制御部7aは、その心電波形から特定位相(例えば、心臓の拡張末期や縮小末期など)を把握することが可能となり、その特定位相に応じたタイミングで撮像を行うことができる。
【0029】
次に、前述の画像処理装置5が行う画像合成処理について説明する。
【0030】
図2に示すように、画像処理装置5は、X線照射野全域のX線画像(原画像)G1に関心領域R1が設定されると、画像処理部5bを用いて、画像記憶部5cに記憶されたX線画像G1からX線照射野全域において関心領域R1以外の周辺領域R2のX線画像G2aを生成し、その周辺領域R2のX線画像G2aと関心領域R1のX線画像G2bと合成して合成画像G2を生成する。この合成画像G2は表示部6により表示される。
【0031】
その後、関心領域R1に対してだけ繰り返し透視(X線撮像)が行われ、関心領域R1のX線画像G2bだけが更新されて動画像となり、周辺領域R2のX線画像G2aは同じ画像のままで静止画像となる。このような合成画像G2は後処理で用いられるため、画像記憶部5cに保存される。
【0032】
ここで、前述の関心領域R1の設定では、操作者が操作部7dのマウスなどを操作し、表示部6により表示されているX線照射野全域のX線画像G1に対し、特に、診断上重要な動きのある注目部位などを関心領域R1として指定する。これに応じて、システム制御部7aは関心領域R1を設定し、その関心領域R1に関する情報(例えば、座標情報)を画像処理装置5に入力する。画像処理装置5は、その情報を用いて関心領域R1を特定し、画像記憶部5cにより記憶されたX線画像G1から周辺領域R2のX線画像G2aを抜き出し、関心領域R1のX線画像G2bと合成する。
【0033】
その後、画像処理装置5は、前述の関心領域R1が変更されると、画像処理部5bを用いて、画像記憶部5cに記憶された周辺領域R2のX線画像G2aから、X線照射野全域において変更前後の関心領域R1以外の周辺領域R2のX線画像G3aを生成し、さらに、画像記憶部5cに記憶された関心領域R1のX線画像G2bから、関心領域R1から周辺領域R2となった変化領域R3のX線画像G3bを生成する。この生成後、画像処理装置5は、それらのX線画像G3a、G3bと変更後の関心領域R1のX線画像G3cとを合成して合成画像G3を生成する。この合成画像G3は表示部6により表示される。
【0034】
これ以降、変更後の関心領域R1に対してだけ繰り返し透視(X線撮像)が行われ、変更後の関心領域R1のX線画像G3cだけが更新されて動画像となり、周辺領域R2のX線画像G3a及び変換領域R3のX線画像G3bは同じ画像のままで静止画像となる。したがって、変化領域R3のX線画像G3bは、関心領域R1の変更直後、一度だけ周辺領域R2の一部として合成されることになる。このような合成画像G3は、関心領域R1が再度変更された場合に用いられるため、画像記憶部5cに保存される。
【0035】
次いで、前述の画像処理装置5を備えるX線画像診断装置1が行う画像合成表示処理について詳しく説明する。
【0036】
図3に示すように、まず、X線照射野全域の透視が行われ、全域のX線画像G1が生成されて表示及び保存される(ステップS1)。次いで、関心領域R1の指定に応じて関心領域R1が設定され、X線照射野が絞られる(ステップS2)。
【0037】
ステップS1では、絞り移動制御部7bによりX線可動絞り器3a2の開口度が所定のX線照射野となるように調整され、X線照射野全域の透視が行われる。この透視により得られたX線画像信号は画像入力部5aに入力され、その入力されたX線画像信号に基づいて画像処理部5bにより全域のX線画像G1が生成される。その生成されたX線画像G1は画像出力部5dを介して表示部6に送られて表示され、加えて、画像記憶部5cにより保存される。その後、操作者は操作部7dのマウスなどを操作して、表示部6により表示されている全域のX線画像G1に対し、特に、診断上重要な動きのある注目部位などを関心領域R1として指定する。
【0038】
ステップS2では、前述の関心領域R1の指定に応じて、システム制御部7aにより関心領域R1が設定され、その関心領域R1に関する情報(例えば、座標情報)が画像処理装置5及び絞り移動制御部7bに出力される。その情報に含まれる関心領域R1の位置及び大きさに応じて、絞り移動制御部7bによりX線可動絞り器3a2が駆動され、その開口度が前述の関心領域R1の位置及び大きさに合うX線照射野となるように調整される。なお、関心領域R1の設定には、周知の各種設定手段を用いることが可能である。
【0039】
前述のステップS2の後、関心領域R1の透視が行われ、その関心領域R1のX線画像G2bが生成される(ステップS3)。さらに、関心領域R1のX線画像G2bとその関心領域R1を除く周辺領域R2のX線画像G2aとが合成され(ステップS4)、その合成画像G2が表示及び記憶される(ステップS5)。
【0040】
ステップS3では、関心領域R1だけの透視(X線撮影)が行われ、その透視により得られたX線画像信号が画像入力部5aに入力される。その入力されたX線画像信号に基づいて画像処理部5bにより関心領域R1のX線画像G2bが生成される。
【0041】
ステップS4では、関心領域R1の座標位置はすでにわかっているので、この座標データが使用され、画像記憶部5cから読み出したX線画像G1から関心領域R1を抜き出し、関心領域R1を除く周辺領域R2のX線画像G2aが生成される。その後、周辺領域R2のX線画像G2aと前述の関心領域R1のX線画像G2bとが合成されて合成画像G2が生成される。この合成画像G2は画像記憶部5cに保存され、必要に応じて読み出されて用いられる。
【0042】
ステップS5では、生成された合成画像G2が画像出力部5dにより表示部6に出力され、その合成画像G2が表示部6により表示される。この合成画像G2が医師や助手などにより視認されて用いられる。
【0043】
前述のステップS5の後、関心領域R1の透視が完了したか否かが判断され(ステップS6)、関心領域R1の透視が完了したと判断されると(ステップS6のYES)、処理が終了する。一方、関心領域R1の透視が完了していないと判断された場合には(ステップS6のNO)、透視中に関心領域R1の位置が変更されたか否かが判断され(ステップS7)、関心領域R1の位置が変更されていないと判断されると(ステップS7のNO)、処理がステップS3に戻る。一方、関心領域R1の位置が変更されたと判断された場合には(ステップS7のYES)、周辺領域の一部変更を伴う画像合成処理が行われ(ステップS8)、処理がステップS5に戻る。
【0044】
ステップS6では、操作者が操作部7dのマウスなどを操作して、関心領域R1の透視の完了を指示する。これに応じて、システム制御部7aは関心領域R1の透視動作を終了するため、合成画像G2における関心領域R1のX線画像G2bは更新されなくなる。
【0045】
ステップS7では、関心領域R1の位置が変更されていないと判断されると、処理がステップS3に戻るため、ステップS6で関心領域R1の透視完了が指示されるまで、関心領域R1の透視が行われ、関心領域R1のX線画像G2bだけが順次更新されて動画像となる。このとき、周辺領域R2のX線画像G2aは同じ画像のままで静止画像となる。
【0046】
このように、例えば、注目部位の動画像を観測するために関心領域R1が設定されると、関心領域R1の外側の周辺領域R2にはX線は照射されず、関心領域R1内にのみX線が照射されて関心領域R1のX線画像G2bが得られる。そして、関心領域R1のX線画像G2bである動画像の周辺には、周辺領域R2のX線画像G2aが静止画像として表示され続けることになる。これにより、関心領域R1の動画像と周辺領域R2の静止画像との位置関係が明瞭となって診断が容易になる。さらに、周辺領域R2の静止画像は、動画像を得る前に画像記憶部5cに保存された画像であるため、その保存後、周辺領域R2にはX線が照射されなくなるので、その分被検体Pの被曝量が軽減されることになる。
【0047】
ステップS8では、図4に示すように、関心領域R1の変更に応じて、関心領域R1から周辺領域R2になった変化領域R3が求められ(ステップS11)、変更後の関心領域R1に対応し、X線照射野の位置が変更される(ステップS12)。その後、変更前の関心領域R1の最後のX線画像G2bから前述の変化領域R3部分のX線画像が変化領域R3のX線画像G3bとして取得され(ステップS13)、変更後の関心領域R1のX線画像G3cと、変化領域R3のX線画像G3bと、X線照射野全域において変更前後の関心領域R1以外の周辺領域R2のX線画像G3aとが合成される(ステップS14)。このようなステップS8の完了後、処理はステップS5に戻り、合成画像G3が表示及び記憶される。
【0048】
ここで、関心領域R1から周辺領域R2になった変化領域R3のピクセルに関しては、最後にX線照射された際のX線検出値(ピクセル値)が画像処理部5bにより保持されており、変化領域R3のピクセルは最後に保持されたX線検出値に更新されることになる。なお、心電計7eが接続されているので、単純に最後ではなく、心電波形の特定位相(例えば、心臓の拡張末期や縮小末期など)と同期した最後にX線照射された際のX線検出値が保持されても良い。
【0049】
このように、関心領域R1が変更されても、変化領域R3のX線画像G3bが変更前の関心領域R1のX線画像G2bから取得され、周辺領域R2のX線画像G3aに重ね合わされ、変更後の関心領域R1のX線画像G3cと共に合成画像G3が生成される。これにより、関心領域R1の変更に応じて、変化領域R3のX線画像G3bは変更前の関心領域R1のX線画像G2bが用いられて更新され、周辺領域R2の一部となる。このため、関心領域R1が変更された場合でも、関心領域R1の動画像とその周辺領域R2の静止画像との位置関係の把握を正確に行うことが可能になる。また、変化領域R3の更新により、予め記憶したX線画像G1を更新する必要はなく、再度、X線照射野全域のX線画像を撮像せずに済むので、再撮像による被曝量の増加を抑えることができ、さらに、作業性の低下を抑えることができる。
【0050】
ここで、前述の関心領域R1が変更されて大きく移動する場合でも、その関心領域R1が移動する間、所定タイミングで透視が行われており、関心領域R1のX線画像G2bは連続的に撮像されている。この連続的な撮像により順次得られた関心領域R1のX線画像G2bが用いられ、関心領域R1の移動に応じて移動する変化領域R3のX線画像G3bも順次得られる。このため、前述のような変化領域R3の更新処理が繰り返され、移動する変化領域R3は順次更新されるので、関心領域R1が変更されて大きく移動する場合でも、前述と同様に、関心領域R1の動画像とその周辺領域R2の静止画像との位置関係の把握を正確に行うことが可能になる。
【0051】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、関心領域R1の変更に応じて、関心領域R1から周辺領域R2となった変化領域R3のX線画像G3bを変更前の関心領域R1のX線画像G2bから取得し、周辺領域R2のX線画像G3aに重ね、変更後の関心領域R1のX線画像G3cと共に合成画像G3を生成する。これにより、関心領域R1が変更されると、変化領域R3のX線画像G3bも変更前の関心領域R1のX線画像G2bが用いられて更新されるので、X線照射野の絞りにより被曝低減を図りながら、関心領域R1が変更された場合でも、関心領域R1とその周辺領域R2との位置関係の把握を正確に行うことができる。さらに、変化領域R3の更新により、予め記憶したX線画像G1を更新する必要はなく、再度、X線照射野全域のX線画像を撮像せずに済むので、再撮像による被曝量の増加及び作業性の低下を防止することができる。
【0052】
また、変更前の関心領域R1のX線画像G2bとして、心電波形と同期した関心領域R1のX線画像を用いることによって、注目部位の動きに合わせてX線画像を得ることができ、例えば、画像がぶれるような撮像不良のX線画像ではなく鮮明な画像を前述のような各種画像として用いることが可能となるので、関心領域R1とその周辺領域R2との位置関係をより正確に把握することができる。
【0053】
特に、心電波形の心臓の拡張又は収縮に同期した関心領域R1のX線画像を用いた場合には、心臓の動きに合わせてX線画像を得ることができ、また、肺の拡張又は収縮に同期した関心領域R1のX線画像を用いた場合には、肺の動きに合わせてX線画像を得ることができる。肺の動きにより肝臓も動くため、注目部位が肝臓である場合にも、肺の拡張又は収縮に同期した関心領域R1のX線画像を用いることは有効である。これらのように特に動く部位を注目部位としても、鮮明なX線画像を前述のような各種画像として用いることが可能となるので、関心領域R1とその周辺領域R2との位置関係をより正確に把握することができる。
【0054】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について図5を参照して説明する。
【0055】
第2の実施の形態は第1の実施の形態と基本的に同じである。したがって、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と異なる部分について説明し、第1の実施の形態で説明した部分と同じ部分の説明を省略する。
【0056】
図5に示すように、画像処理装置5は、X線照射野全域のX線画像(原画像)G1に関心領域R1が設定されると、画像処理部5bを用いて、画像記憶部5cに記憶されたX線画像G1からX線照射野全域において関心領域R1以外の周辺領域R2のX線画像G2aを生成し、その周辺領域R2のX線画像G2aと関心領域R1のX線画像G2bと合成して合成画像G2を生成する。この合成画像G2は表示部6により表示される。
【0057】
その後、関心領域R1に対してだけ繰り返し透視(X線撮像)が行われ、関心領域R1のX線画像G2bだけが更新されて動画像となり、周辺領域R2のX線画像G2aは同じ画像のままで静止画像となる。このような合成画像G2は後処理で用いられるため、画像記憶部5cに保存される。
【0058】
ここで、前述の関心領域R1の設定では、操作者が操作部7dのフットスイッチを操作し、表示部6により表示されている全域のX線画像G1に対し、特に、診断上重要な動きのある注目部位などを関心領域R1として指定する。これに応じて、システム制御部7aは関心領域R1を設定し、その関心領域R1に関する情報(例えば、座標情報)を画像処理装置5に入力する。画像処理装置5は、その情報を用いて関心領域R1を特定し、画像記憶部5cにより記憶されたX線画像G1から周辺領域R2のX線画像G2aを抜き出し、関心領域R1のX線画像G2bと合成する。
【0059】
さらに、操作者が操作部7dのフットスイッチを操作し、前述の関心領域R1より狭い関心領域R1を指定する。これに応じて、システム制御部7aは関心領域R1を再度設定する。これにより、関心領域R1は広い範囲から狭い範囲に変更される。最初の段階(X線照射野全域)を含めると、X線の照射野は三段階の大きさに切替可能である。すなわち、X線の照射野の大きさは、第一段階(X線照射野全域)>第二段階>第三段階の関係となっており、それらの段階はフットスイッチにより切り替えられる。
【0060】
その後、画像処理装置5は、前述の関心領域R1が変更されると、画像処理部5bを用いて、画像記憶部5cに記憶されたX線画像G1から、X線照射野全域において関心領域R1以外の周辺領域R2のX線画像G3aを生成し、さらに、画像記憶部5cに記憶された関心領域R1のX線画像G2bから、関心領域R1から周辺領域R2となった変化領域R3(変更前後の関心領域R1の差分)のX線画像G3bを生成する。この生成後、画像処理装置5は、それらのX線画像G3a、G3bと変更後の関心領域R1のX線画像G3cとを合成して合成画像G3を生成する。この合成画像G3は表示部6により表示される。
【0061】
これ以降、変更後の関心領域R1に対してだけ繰り返し透視(X線撮像)が行われ、変更後の関心領域R1のX線画像G3cだけが更新されて動画像となり、周辺領域R2のX線画像G3a及び変換領域R3のX線画像G3bは同じ画像のままで静止画像となる。したがって、変化領域R3のX線画像G3bは、関心領域R1の変更直後、一度だけ周辺領域R2の一部として合成されることになる。このような合成画像G3は、関心領域R1が再度変更された場合に用いられるため、画像記憶部5cに保存される。
【0062】
前述の画像処理装置5を備えるX線画像診断装置1が行う画像合成表示処理は第1の実施形態と同じである。ただし、図3に示すステップS7では、関心領域R1の位置が変更されたか否かが判断されているが、これにかえて、第2の実施形態では、関心領域R1の大きさが変更されたか否かが判断される。なお、前述のように操作者がフットスイッチを操作して関心領域R1の大きさが例えば三段階に切り替えられる。このように関心領域R1の大きさが変更される場合でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 X線画像診断装置
2 寝台
2a 天板
2b 天板駆動部
3 撮像部
3a X線照射部
3a1 X線管
3a2 X線可動絞り器
3a3 X線高電圧発生部
3b X線検出部
4 移動装置
4a 保持アーム
4b アーム支持部
4c 支柱
5 画像処理装置
5a 画像入力部
5b 画像処理部
5c 画像記憶部
5d 画像出力部
6 表示部
7 制御装置
7a システム制御部
7b 絞り移動制御部
7c X線制御部
7d 操作部
7e 心電計
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の注目部位の静止画像を得る場合、前記注目部位の所定領域のX線画像を撮像し、前記注目部位の動画像を得る場合、前記所定領域内の関心領域のX線画像を順次撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された前記所定領域のX線画像を記憶する画像記憶部と、
前記撮像部により撮像された前記関心領域のX線画像と、前記画像記憶部により記憶された前記所定領域のX線画像における前記関心領域以外の周辺領域のX線画像とを合成し、合成画像を生成する画像処理部と、
前記画像処理部により生成された前記合成画像を表示する表示部と、
を備え、
前記画像処理部は、前記関心領域の変更に応じて、前記関心領域から前記周辺領域となった変化領域のX線画像を変更前の前記関心領域のX線画像から取得し、前記周辺領域のX線画像に重ねて前記合成画像を生成することを特徴とするX線画像診断装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、変更前の前記関心領域のX線画像として、心電波形と同期した前記関心領域のX線画像を用いることを特徴とする請求項1記載のX線画像診断装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、変更前の前記関心領域のX線画像として、前記心電波形の心臓の拡張又は収縮に同期した前記関心領域のX線画像を用いることを特徴とする請求項2記載のX線画像診断装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、変更前の前記関心領域のX線画像として、肺の拡張又は収縮に同期した前記関心領域のX線画像を用いることを特徴とする請求項1記載のX線画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−111227(P2013−111227A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259929(P2011−259929)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】