説明

X線発生装置及びそれを用いた除電装置

【課題】放熱に適したX線発生装置を提供する。
【解決手段】X線発生装置1は、X線の出力窓13を有するX線管8と、X線管8を駆動させる電圧発生部21と、X線管8と電圧発生部21とを収容する保護ケース2と、この保護ケース2に設けられると共に、出力窓13が臨む開口部26を有する前面パネル5と、X線管8を駆動させる電圧発生部21が固定されたベースプレート22とを備え、前面パネル5の開口部26が出力窓13に相対するように、X線管8が前面パネル5に固定されると共に、この前面パネル5にはベースプレート22が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気除去などに利用されるX線を発生させるためのX線管を保護ケース内に収容したX線発生装置及びこのX線発生装置を用いた除電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から存在するX線管の一例として、特公平7−50594号公報がある。この公報に開示されたX線管では、フィラメントが通電により熱せられると、電子ビームが放出され、この電子ビームは、フォーカス用グリッドなどにより加速されてターゲットに高速で衝突し、ターゲットからは、その材料固有のX線が放射される。そして、このX線は、ターゲットの前方に離間して設けられたX線透過窓から外部に放出される。このようなタイプのX線管は高温になるため、その冷却は、ターゲットに固定されて外囲器(バルブ)から突出したターゲットリングを自然空冷することで達成される。そして、X線管の冷却により、X線の発生効率の維持やターゲットの破損を防止している。さらに、このタイプのX線管は、電圧発生部と一緒に保護ケース内に収められる。
【0003】
【特許文献1】特公平7−50594号公報
【特許文献2】特開平10−106463
【特許文献3】特開平6−251735
【特許文献4】US4384360
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ターゲットとX線透過窓とが離れているタイプのX線管では、外囲器自体が大きく、自然空冷を達成させるために、外囲器の周囲に大きな空間を必要し、その結果、保護ケースが大型化していた。これに対して、ターゲットとX線透過窓(出力窓)とが一体になった出力窓保持部を有するX線管は、ターゲットの熱を外部に適切に逃がす必要がある。
【0005】
本発明は、放熱に適したX線発生装置及びこのX線発生装置を用いた除電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係るX線発生装置は、X線の出力窓を有するX線管と、X線管を駆動させる電圧発生部と、X線管と電圧発生部とを収容する保護ケースとを備えたX線発生装置において、
保護ケースに設けられると共に、出力窓が臨む開口部を有する前面パネルと、X線管を駆動させる電圧発生部が固定されたベースプレートとを備え、
前面パネルの開口部が出力窓に相対するように、X線管が前面パネルに固定されると共に、この前面パネルにはベースプレートが固定されていることを特徴とする。
【0007】
また、X線管の先端には、導電性及び熱伝導性を有する出力窓保持部が設けられていると好適である。
【0008】
また、出力窓保持部にはフランジ部が設けられていると好適である。
【0009】
また、X線管のフランジ部は、パネルに押圧且つ固定されていると好適である。
【0010】
また、電圧発生部が搭載された回路基板を更に備え、回路基板はベースプレートに固定されていると好適である。
【0011】
請求項6に係る除電装置は、X線の出力窓を有するX線管と、X線管を駆動させる電圧発生部と、X線管と電圧発生部とを収容する保護ケースとを備えたX線発生装置が用いられている除電装置において、
保護ケースに設けられると共に、出力窓に臨む開口部を有する前面パネルと、X線管を駆動させる電圧発生部が固定されたベースプレートとを備え、
前面パネルの開口部が出力窓に相対するように、X線管が前面パネルに固定されると共に、この前面パネルにはベースプレートが固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係るX線発生装置は、X線の出力窓を有するX線管と、X線管を駆動させる電圧発生部と、X線管と電圧発生部とを収容する保護ケースとを備えたX線発生装置において、
保護ケースは、四角柱形状のケース本体部と、X線管を駆動させるための電圧発生部を固定させたベースプレート及びX線管が固定されると共に、X線管から出射したX線を透過させるための開口部を有する平板状の前面パネルと、ベースプレートが固定されると共に、このベースプレートに固定された接続端子を露出させる開口部を有する平板状の背面パネルと、で3分割型のボックスを構成していることを特徴とする。
【0013】
請求項10に係る除電装置は、X線の出力窓を有するX線管と、X線管を駆動させる電圧発生部と、X線管と電圧発生部とを収容する保護ケースとを備えたX線発生装置が用いられている除電装置において、
保護ケースは、四角柱形状のケース本体部と、X線管を駆動させるための電圧発生部を固定させたベースプレート及びX線管が固定されると共に、X線管から出射したX線を透過させるための開口部を有する平板状の前面パネルと、ベースプレートが固定されると共に、このベースプレートに固定された接続端子を露出させる開口部を有する平板状の背面パネルと、で3分割型のボックスを構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、適切な放熱が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るX線発生装置及び除電装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1〜図3に示すように、X線発生装置1は、ボックスタイプからなる保護ケース2を有し、この保護ケース2は、熱伝導性の良好な材料からなり、3分割されている。すなわち、保護ケース2は、ステンレスからなる四角柱形状のケース本体部4と、アルミニウムからなる平板状の前面パネル5と、アルミニウムからなる平板状の背面パネル6とからなり、3分割型のボックスを構成している。そして、この保護ケース2において、その全長が約100mmであり、前面パネル5の肉厚は約10mm程度に設定されている。従って、前面パネル5の肉厚は全長の約1/10に達しており、前面パネル5の肉厚を大きくすることで、高い放熱性を期待できる。なお、保護ケース2には、アルミニウムからなる取り付け用ベース7がネジ止めされている。
【0017】
このような保護ケース2内には、軟X線を発生させて静電気の除去を行う装置(すなわち除電装置)等に利用されるX線管8が配置されている。このX線管8は、図4に示すように、コバールガラス製の円筒状バルブ9を有し、このバルブ9の末端には、排気管10をもったステム11が形成され、バルブ9の開放端には、円筒状をなすコバール金属製の出力窓保持部12が融着接続されている。また、この出力窓保持部12には、その中央開口12aを塞ぐように円板状の出力窓13がAgロウ付けにより固定され、出力窓13の内面側には、電子ビームの衝突によりX線を発生させるターゲット14が蒸着されている。
【0018】
更に、ステム11には2本のステムピン15,15が固定され、バルブ9内には、所定の電圧で電子ビームを放出するカソードとしてのフィラメント16が設けられ、このフィラメント16は、ステムピン15の先端に固定されている。また、一方のステムピン15には、円筒状をなすステンレス製のフォーカス17が固定されている。そして、この出力窓保持部12は、コバール金属により形成されているので熱伝導性及び導電性が良好であると共に、アースされた保護ケース2に電気的に接続されるので接地電位になっており、その結果として、ターゲット14も接地電位に維持されている。
【0019】
そこで、X線管8のステムピン15に、後述する電圧発生部21から−9.5kVの高電位を供給し、接地電位のターゲット14に向けてフィラメント16から電子ビームを照射する。このとき、電子ビームの衝突によりターゲット14から軟X線が放射され、このX線が出力窓13から外部に放出される。X線管8をこのように構成することで、バルブ9を、直径15mm、長さ30mm程度の大きさにすることができ、全長が40mm程度の小型のX線管8を可能にしている。なお、使用時において、小型のX線管8のターゲット14は高温になっており、X線の発生効率の維持やターゲット14の破損防止のために、ターゲット14の熱を外部に適切に逃がす必要がある。
【0020】
さらに、図1及び図2に示すように、保護ケース2内には、回路基板20上に搭載された電圧発生部21が収容されている。この電圧発生部21は、−9.5kVの高電位をステムピン15に供給して、X線管8を駆動させるためのものである。先ず、電圧発生部21内の低電圧発生部位で−1kVまで電位を上げ、次に高電圧発生部位で−9.5kVまで電位を上げている。このような電圧発生部21の回路基板20は、ネジを介して鋼製のベースプレート22に固定されている。そして、電圧発生部の高電圧発生部位から延びた配線21aは、X線管8のステムピン15に結線され、X線管8のバルブ9には、ステムピン15を覆う円筒状のキャップ19が固定されている。なお、キャップ19内には、配線21aとステムピン15との結線後、シリコン樹脂Pが充填される(図6参照)。
【0021】
このベースプレート22の前端には、L字状に立ち上げられた第1の取付け片22aが一体的に設けられ、ベースプレート22の後端にも、L字状に立ち上げられた第2の取付け片22bが一体的に設けられている。そして、第1の取付け片22aは、電圧発生部21を保護ケース2に固定するために利用され、第2の取付け片22bは、回路基板20上の低電圧発生部位に結線された接続端子23の取り付けに利用される。例えば、第1の取付け片22aは、止めネジ25を介して前面パネル5に圧着させるように固定され、接続端子23は、締め付けナット24を介して第2の取付け片22bに固定され、背面パネル6は、ネジ28を介して第2の取付け片22bに圧着させるように固定されている。このように、熱伝導性の良好なアルミからなる平板状の前面パネル5と背面パネル6とは、鋼製のベースプレート22を介して連結されているので、背面パネル6でも放熱を可能にし、保護ケース2による高い放熱性を実現している。また、ベースプレート22の第2の取付け片22bに固定された接続端子23は、背面パネル6に設けられた開口部6aから露出する(図1及び図2参照)。
【0022】
さらに、前述したX線管8を保護ケース2に固定するに際し、X線管8は、アルミからなる前面パネル5に固定される。図1及び図5に示すように、この前面パネル5には、X線管8の出力窓保持部12が挿入される円柱状の開口部26が形成され、この開口部26を作り出す壁面26aには、内方に向けて環状の突起部27が形成されている。そして、この突起部27には、出力窓保持部12の先端に一体的に設けられた環状のフランジ部18が突き当てられる。
【0023】
さらに、開口部26の壁面26aに雌ねじ部29が形成され、この雌ねじ部29には、外ネジ30aをもった固定ナット30が螺合される。この固定ナット30は、熱伝導性の良好な黄銅からなると共に、開口部26内に挿入される略円筒形状の胴部31と、六角ナットを形成する六角ヘッド部32とからなる。
【0024】
そこで、前面パネル5の開口部26内にX線管8の出力窓保持部12を挿入した状態で、雌ねじ部29に固定ナット30の外ネジ部30aを螺合させるように、固定ナット30を締め込んでいく。そして、固定ナット30を十分に締め込むことにより、X線管8の出力窓保持部12に設けられた環状なフランジ部18が、前面パネル5の突起部27に突き当てられる。その結果として、固定ナット30の先端30bによりフランジ部18が突起部27に向けて押圧され、前面パネル5にX線管8が固定されることになる(図6参照)。従って、このような固定ナット30を利用することで、X線管8を保護ケース2内で簡単かつ確実に固定させることができる。しかも、固定ナット30は、熱伝導性の良い材質で形成されているので、X線管8の出力窓保持部12から前面パネル5への熱の伝達性が高められ、100°C近くなった出力窓保持部12の熱を逃がし易くすることで、X線の発生効率の維持やターゲット14の破損が防止される。
【0025】
また、固定ナット30の内壁面には、内方に向けて突出する位置決め面30cが形成され、この位置決め面30cが出力窓保持部12の外面12aに接触する。これによって、固定ナット30によるX線管8の位置決めが簡単かつ確実に達成され、しかも、X線管8に設けた出力窓保持部12から前面パネル5への熱の伝達性が更に高められる。従って、X線の発生効率の維持やX線管8におけるターゲット14の破損防止が更に高められることになる。
【0026】
また、固定ナット30の先端30bと出力窓保持部12のフランジ部18とでゴムリング34を挟み込むと、固定ナット30の締め込みにより、フランジ部18は突起部27に対して適切な押圧力をもって確実に固定される。また、前述した固定ナット30を採用すると、前面パネル5の肉厚は必然的に大きくなるが、それに伴って、前面パネル5での高い放熱性を期待することができる。さらに、鋼製のベースプレート22を仲介にして、熱伝導性の良好なアルミからなる前面パネル5と背面パネル6とを熱的に連結させているので、背面パネル6でも放熱を可能にし、保護ケース2による高い放熱性が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るX線発生装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示したX線発生装置の断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】X線管を示す断面図である。
【図5】図2に示したX線発生装置の要部拡大断面図である。
【図6】前面パネルにX線管を組み付けた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1…X線発生装置、2…保護ケース、4…ケース本体部、5…前面パネル、6…背面パネル、8…X線管、9…バルブ、12…出力窓保持部、13…出力窓、18…フランジ部、20…回路基板、21…電圧発生部、22…ベースプレート、23…接続端子、6a,26…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線の出力窓を有するX線管と、
前記X線管を駆動させる電圧発生部と、
前記X線管と前記電圧発生部とを収容する保護ケースとを備えたX線発生装置において、
前記保護ケースに設けられると共に、前記出力窓が臨む開口部を有する前面パネルと、
前記X線管を駆動させる電圧発生部が固定されたベースプレートとを備え、
前記前面パネルの前記開口部が前記出力窓に相対するように、前記X線管が前記前面パネルに固定されると共に、この前面パネルには前記ベースプレートが固定されていることを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記X線管の先端には、導電性及び熱伝導性を有する出力窓保持部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記出力窓保持部にはフランジ部が設けられていることを特徴とする請求項2記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記X線管の前記フランジ部は、前記パネルに押圧且つ固定されていることを特徴とする請求項3記載のX線発生装置。
【請求項5】
前記電圧発生部が搭載された回路基板を更に備え、前記回路基板は前記ベースプレートに固定されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載のX線発生装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載のX線発生装置を用いた除電装置。
【請求項7】
X線の出力窓を有するX線管と、
前記X線管を駆動させる電圧発生部と、
前記X線管と前記電圧発生部とを収容する保護ケースとを備えたX線発生装置において、
前記保護ケースは、
四角柱形状のケース本体部と、
前記X線管を駆動させるための電圧発生部を固定させたベースプレート及び前記X線管が固定されると共に、前記X線管から出射したX線を透過させるための開口部を有する平板状の前面パネルと、
前記ベースプレートが固定されると共に、このベースプレートに固定された接続端子を露出させる開口部を有する平板状の背面パネルと、で3分割型のボックスを構成していることを特徴とするX線発生装置。
【請求項8】
前記X線管の先端には、導電性及び熱伝導性を有する出力窓保持部が設けられていることを特徴とする請求項7記載のX線発生装置。
【請求項9】
前記出力窓保持部にはフランジ部が設けられていることを特徴とする請求項8記載のX線発生装置。
【請求項10】
請求項7〜9の何れか一項に記載のX線発生装置を用いた除電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−5319(P2007−5319A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213412(P2006−213412)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【分割の表示】特願2003−155428(P2003−155428)の分割
【原出願日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】