説明

X線管内の高電圧過渡抑制およびスピット保護のためのシステムおよび方法

【課題】X線管内の高電圧過渡現象からのバイアス回路の保護およびスピット保護を行うシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】アノードアセンブリ(20、40)から離間されたカソードアセンブリ(18、38)を有するX線管真空筺体(16、36)と、カソードアセンブリ(18、38)からアノードアセンブリ(20、40)上の焦点への電子ビームを制御するための複数のバイアス回路からの複数のバイアス電圧を供給するX線管真空筺体(16、36)に結合された高電圧発生装置(14、34)と、X線発生システム(10、30)内で複数のバイアス回路の保護のための高圧発生装置(14、34)とX線管真空筺体(16、36)との間に結合された高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ(100、200)とを備えたX線発生システム(10、30)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、X線発生システムに関する。詳細には、本開示は、X線管内の高電圧過渡現象からのバイアス回路の保護および放電/スピット保護のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管は、一般に、真空容器内に配置されたカソードアセンブリおよびアノードアセンブリを含む。アノードアセンブリは、タングステンまたはタングステン合金など、高原子番号を有する耐熱金属から一般に製造される目標トラックまたは衝撃ゾーンを有するアノードを含む。アノードは、通常、回転ディスクである。カソードアセンブリは、カソードアセンブリとアノードアセンブリとの間に真空ギャップを形成するアノードアセンブリからの距離の一部に位置決めされ、高電圧の電位差がそれらの間に維持される。カソードアセンブリは、電位差を横切って加速される電子ビームの形態で電子を放射し、アノードの焦点において、高速度で、目標トラックに衝突する。電子が目標トラックに衝突するとき、電子の運動エネルギーは、高エネルギー電磁放射線またはX線に変換される。その場合、X線は、患者の体など、物体を透過し、物体の内部生体構造の画像を形成する検出器によって阻止される。
【0003】
X線管では、焦点は、バイアス電圧を通じて、静電的に制御および偏向可能である。これは、カソードアセンブリ内のいくつかの電極において種々のバイアス電圧を印加することによって達成される。カソードアセンブリは、一般に、電子ビームのサイズおよび偏向を制御するためにカソードフィラメントの対向側面上に位置決めされた少なくとも2つのペアの電極を含む。バイアス電圧は、電子ビームを焦点に合わせるため、および/または偏向させるために、それぞれの電極に、独立に印加される。焦点のぶれを有するX線管では、走査シーケンス中に、焦点は、アノードの目標トラック上の2つの位置間で静電的にぶれる。カソード隔壁を電気的に分離させ、連続的に変化するバイアス電圧をカソードフィラメントに印加することにより、バイアス電圧で制御可能である2つの特異な焦点がもたらされる。絶縁破壊の恐れを低減し、X線管の信頼性を向上させるために、電極においてバイアス電圧を最小限にすることが、一般的には、好ましい。
【0004】
X線管における潜在的問題の1つは、バイアス回路全体に誘発される非常に高い電圧の過渡現象があることであり、スピット(真空放電または真空アーク)が起きた場合には、高電圧発生装置内で高電圧ケーブルアセンブリおよびある種の構成部品が損傷する可能性が生じる。バイアス回路内の一般的な高電圧過渡現象は、X線管に対して数十キロボルトほどもの高さである場合があろう。これは、バイアス回路に沿ってわずかな絶縁についての基本絶縁レベルがこれらの高電圧過渡現象に耐えるほど高くないときに、深刻な信頼性問題を呈する。
【特許文献1】米国特許第4768215号公報
【特許文献2】米国特許第5159697号公報
【特許文献3】米国特許第5241260号公報
【特許文献4】米国特許第5495165号公報
【特許文献5】米国特許第6212256号公報
【特許文献6】米国特許第6362415号公報
【特許文献7】米国特許第6452477号公報
【特許文献8】米国特許第6466645号公報
【特許文献9】米国特許第6798865号公報
【特許文献10】米国特許第6901136号公報
【特許文献11】米国特許第6922463号公報
【特許文献12】米国特許第6975698号公報
【特許文献13】米国特許出願公開第20060078088号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、X線管内で高電圧過渡現象の発生を防ぎ、具体的には、X線管内の高電圧過渡現象からのバイアス回路の保護およびスピット保護を行うシステムおよび方法のための必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的実施形態では、X線発生システムは、アノードアセンブリから離間されたカソードアセンブリを有するX線管真空筺体と、カソードアセンブリからアノードアセンブリ上の焦点への電子ビームを制御するための複数のバイアス回路からの複数のバイアス電圧を供給する、X線管真空筺体に結合された高電圧発生装置と、X線発生システム内の複数のバイアス回路の保護のための高電圧発生装置とX線管真空筺体との間に結合された高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリとを備える。
【0007】
例示的実施形態では、X線発生システム内の複数のバイアス回路を保護するための高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリは、各複数のバイアス回路と高電圧コモンリターンとの間に結合された少なくとも1つの過渡抑制デバイスと、フィラメントデバイス回路と高電圧コモンリターンとの間に結合された少なくとも1つの過渡抑制デバイスとを備える。
【0008】
例示的実施形態では、X線発生システム内の高電圧過渡抑制およびスピット保護のための方法が、X線発生システム内で高電圧過渡現象を抑制するために、X線発生システム内で複数のバイアス回路に結合された高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリを提供するステップと、サージ抵抗器を使用して過渡電流を制限することにより、X線発生システム内で誘発される電圧を抑えるステップと、過渡抑制デバイスを使用することにより、過渡電圧を固定するステップと、高電圧発生装置回路の構成部品故障を招く高サージ電流の流れを、X線発生システム内で高電圧発生装置回路に入らないように変えるステップとを含む。
【0009】
本発明の様々な他の特徴、目的、および利点が、添付の図面およびその詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ここで、図面を参照すると、図1は、X線発生システム10の例示的実施形態の概略図を示している。X線発生システム10は、高電圧発生装置14に結合され、その装置に電力を供給する電源12を含み、高電圧発生装置14は、X線管真空筺体16に結合され、その筺体内のカソードアセンブリ18とアノードアセンブリ20との間に高電圧電位差をもたらす。カソードアセンブリ18は、X線管真空筺体16内でアノードアセンブリ20に対向して位置し、カソードアセンブリ18およびアノードアセンブリ20は、これらの間に位置する真空ギャップ22によって分離される。X線発生システム10は、高電圧発生装置14とX線管真空筺体16との間に結合された高電圧ケーブルアセンブリ、高電圧ケーブルアセンブリの対向端部に位置決めされた2つの高電圧コネクタまたはカソードアセンブリ18内に位置する複数の電気構成部品を備えた高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ24をさらに含む。
【0011】
電源12は、AC電力を高電圧発生装置14に供給するAC電源である。高電圧発生装置14は、電源12からのAC電力を受け、X線管筺体16内でカソードアセンブリ18とアノードアセンブリ20との間にDC高電圧電位差をもたらすように設計され、カソードアセンブリ18およびアノードアセンブリ20は、異なる電極の等しい電圧を運ぶ。高電圧発生装置14はまた、カソードアセンブリ18内の電子放射フィラメントのためのフィラメント駆動電流と、カソードアセンブリからアノードアセンブリへの電子ビームを制御するためのバイアス電圧とを供給する。
【0012】
カソードアセンブリ18は、電子を放射することが可能である電子放射フィラメントを含む。X線を発生させるために、高電圧発生装置14は、カソードアセンブリ18内のフィラメントを通じて電流を生成するフィラメント駆動回路に電力を供給する。フィラメントは、白熱まで加熱され、電子を放出する。電子は、電子ビームにおいてカソードアセンブリ18とアノードアセンブリ20との間の高電圧電位差によって真空ギャップ22を横切って加速され、X線を生成するアノードアセンブリ20上の目標トラックをストライクする。
【0013】
図2に、X線発生システム30の例示的実施形態の概略図を示す。X線発生システム30は、高電圧発生装置34に結合され、その装置に電力を供給する電源32を含み、高電圧発生装置34は、X線管真空筺体36に結合され、その筺体内のカソードアセンブリ38とアノードアセンブリ40との間に高電圧電位差をもたらす。カソードアセンブリ38は、X線管真空筺体36内でアノードアセンブリ40に対向して位置し、カソードアセンブリ38およびアノードアセンブリ40は、これらの間に位置する真空ギャップ42によって分離される。X線発生システム30は、高電圧発生装置34とX線管真空筺体36との間に結合された高電圧ケーブルアセンブリ46、高電圧ケーブルアセンブリ46の対向端部に位置決めされた2つの高電圧コネクタ48、50のいずれか、またはカソードアセンブリ38内に位置する複数の電気構成部品を備えた高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ44をさらに含む。
【0014】
複数の高電圧および高電流は、高電圧ケーブルアセンブリ46を通じて、高電圧発生装置34からカソードアセンブリ38に供給される。高電圧ケーブルアセンブリ46は、高電圧発生装置34をX線管真空筺体36と接続する。高電圧コネクタ48、50は、高電圧ケーブルアセンブリ46の各端部に取り付けられる。高電圧発生装置34は、カソードアセンブリ38とアノードアセンブリ40との間の高電圧電位差と、フィラメント駆動電流と、カソードアセンブリ38からアノードアセンブリ40への電子ビームを制御するためのバイアス電圧とを供給する。高電圧発生装置34内でバイアス回路を保護するために設計された高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ44は、高電圧ケーブルアセンブリ46、高電圧コネクタ48、50のいずれか、またはカソードアセンブリ38内に集積可能である。
【0015】
カソードアセンブリ38は、電子を放射することが可能である電子放射フィラメントを含む。X線を発生させるために、高電圧発生装置34は、カソードアセンブリ38内のフィラメントを通じて電流を生成するフィラメント駆動回路に電力を供給する。フィラメントは、白熱まで加熱され、電子を放出する。電子は、電子ビーム内のカソードアセンブリ38とアノードアセンブリ40との間の高電圧電位差によって真空ギャップ42を横切って加速され、X線を生成するアノードアセンブリ40上の目標トラックをストライクする。
【0016】
図3は、図2のX線発生システム30の例示的実施形態の一部分のより詳細な概略図を示している。X線発生システム30は、アノードアセンブリ40の目標トラック上の電子ビームの焦点の制御および偏向のための電子ビーム偏向システムを含む。電子ビームの焦点は、高電圧発生装置34内のバイアス回路によって供給される、およびカソードアセンブリ38上の複数の電極に加えられる複数のバイアス電圧を通じて、静電的に制御され、偏向される。これは、高電圧ケーブルアセンブリ46を通じて、高電圧発生装置34からの複数の種々のバイアス電圧をカソードアセンブリ38上の複数の電極に印加することによって達成される。バイアス回路全体に誘発される高電圧過渡現象の可能性があり、スピット(真空放電または真空アーク)が起きた場合には、高電圧発生装置34内で高電圧ケーブルアセンブリ46および構成部品が損傷する可能性が生じる。
【0017】
X線発生システム30は、高電圧ケーブルアセンブリ46、高電圧コネクタ48、50のいずれか、またはカソードアセンブリ38内に集積される高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ44を含む。高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ44は、真空放電または真空アーク(スピット)によって生じる高電圧過渡現象がバイアス制御回路全体に起こらないように抑制および回避するように設計されている。
【0018】
高電圧発生装置34は、複数の高電圧をカソードアセンブリ38に高電圧ケーブルアセンブリ46を通じて供給する。高電圧ケーブルアセンブリ46は、高電圧発生装置34をX線管真空筺体36と接続する。高電圧コネクタ48、50は、高電圧ケーブルアセンブリ46の各端部に取り付けられる。高電圧発生装置34は、カソードアセンブリ38とアノードアセンブリ40との間の高電圧電位差と、カソードアセンブリ38内のフィラメント80を通じて電流を生成するフィラメント駆動回路への電力と、カソードアセンブリ38からアノードアセンブリ40への電子ビームを制御するためのバイアス電圧とを供給する。
【0019】
高電圧発生装置34は、複数のバイアス電圧をカソードアセンブリ内の複数の電極に供給することによって、電極ビームのサイズおよび偏向を制御するために、バイアス電圧をカソードアセンブリ38に供給するための複数のバイアス制御回路および端子を含む。電子ビームの焦点は、走査シーケンス中に、アノードアセンブリ40の目標トラック上の異なる位置間で静電的にぶれる可能性がある。カソード隔壁を電気的に分離させ、連続的に変化するバイアス電圧をカソードフィラメントに印加することにより、高電圧発生装置34によって、および高電圧ケーブルアセンブリ46内の複数の導体を通じて、供給されるバイアス電圧で制御可能である特異な焦点がもたらされる。
【0020】
高電圧ケーブルアセンブリ46は、ケーブルアセンブリ内に位置決めされ、各導体を取り囲む高電圧絶縁体の層によりそれを通して延在する複数の導電体52、54、56、58、60、62、64を備える。複数の導体52、54、56、58、60、62、64は、焦点幅を制御するためにバイアス電圧を供給する少なくとも2つの導体52(幅1の導体)、54(幅2の導体)と、焦点長さを制御するためにバイアス電圧を供給する少なくとも2つの導体56(長さ1の導体)、58(長さ2の導体)と、焦点の集束および/または偏向(焦点のぶれ)を制御するためにバイアス電圧を供給する少なくとも1つの導体60(集束導体)と、フィラメント駆動電流を供給する少なくとも1つの導体62(フィラメント導体)と、高電圧コモンリターンを供給する少なくとも1つの導体64とを備える。高電圧ケーブルアセンブリ46は、高電圧ケーブルアセンブリ46を高電圧発生装置34に接続するためのその一方の端部において第1の高電圧コネクタ48を、および高電圧ケーブルアセンブリ46をX線管真空筺体36に接続するためのその対向端部において第2の高電圧コネクタ50をさらに備える。
【0021】
高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ44は、高電圧発生装置34とカソードアセンブリ38との間の各導体52、54、56、58、60、62に結合された複数の過渡抑制回路の構成部品またはデバイス82、84、86、88、90、92を備える。複数の過渡抑制回路の構成部品またはデバイスを有する高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリの例は、図4〜6に示している。
【0022】
カソードアセンブリ38は、電子放射フィラメント80と、電子ビーム焦点のサイズおよび偏向を制御するためにカソードフィラメント80の対向側面および端部上に位置決めされた複数の電極66、68、70、72、74、76、78とを含む。複数のバイアス電圧は、カソードアセンブリ38内の複数の電極66、68、70、72、74、76、78に印加され、アノードアセンブリは、接地される。バイアス電圧は、電子ビームを焦点に合わせるため、および/または偏向させるために、各電極66、68、70、72、74、76、78に独立に印加される。
【0023】
複数の電極66、68、70、72、74、76、78は、焦点幅を制御するためにフィラメント80の対向側面上に少なくとも2つの電極66(幅1の電極)、68(幅2の電極)と、焦点長さを制御するためにフィラメント80の対向端部上に少なくとも2つの電極70(長さ1の電極)、72(長さ2の電極)と、焦点の集束および/または偏向(焦点のぶれ)を制御するために少なくとも1つの電極74(集束電極)と、フィラメント駆動電流を供給するためにフィラメント80の一方の端部に接続された電極76(フィラメント1の電極)と、高電圧コモンリターンを供給するためにフィラメント80の他方の端部に接続された電極78(フィラメント2の電極)とを含む。電極は、互いから分離されている。
【0024】
図4は、X線管のための高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ100の例示的実施形態の概略図である。回路アセンブリ100は、バイアス制御回路に結合された複数の過渡抑制デバイス(非線形高電圧保護構成部品)を含む。回路アセンブリ100は、それぞれ幅1、幅2、長さ1、長さ2の導体および集束バイアス導体と高電圧コモンリターン導体との間に結合された過渡抑制デバイス、ならびにフィラメント導体と高電圧コモンリターンとの間に結合された過渡抑制デバイスを含む。複数の過渡抑制デバイスは、高電圧過渡現象が起きないように、ならびに高電圧発生装置34、高電圧ケーブルアセンブリ46、およびカソードアセンブリ38をスピット(真空放電または真空アーク)から保護するように設計されている。
【0025】
過渡サージ保護装置として働く非線形高電圧保護構成部品または高電圧過渡抑制デバイスの例は、ダイオード、DIAC、SIDAC、金属酸化物バリスタ(MOV)、サイリスタ、SIDACtor(商標)サイリスタ、アバランシェダイオード、過渡電圧抑制(TVS)ダイオード、火花ギャップなどを含むが、それらに限定されない。
【0026】
高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ100は、高電圧発生装置34、高電圧ケーブルアセンブリ46、高電圧コネクタ48、50、X線管真空筺体36内に、または高電圧発生装置34をX線管真空筺体36に接続するスタンドアロンのアセンブリとして、パッケージ可能である。
【0027】
高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ100では、幅1の導体106が、高電圧発生装置34上の幅1の端子102とカソードアセンブリ38上の幅1の端子104との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上の幅1の電極66に結合されている。過渡抑制デバイス108が幅1の導体106(高電圧発生装置内の幅1のバイアス回路)と高電圧コモンリターン166との間に結合されている。
【0028】
幅2の導体116が、高電圧発生装置34上の幅2の端子112とカソードアセンブリ38上の幅2の端子114との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上の幅2の電極68に結合されている。過渡抑制デバイス118が幅2の導体116(高電圧発生装置内の幅2のバイアス回路)と高電圧コモンリターン166との間に結合されている。
【0029】
長さ1の導体126が、高電圧発生装置34上の長さ1の端子122とカソードアセンブリ38上の長さ1の端子124との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上の長さ1の電極70に結合されている。過渡抑制デバイス128が長さ1の導体126(高電圧発生装置内の長さ1のバイアス回路)と高電圧コモンリターン166との間に結合されている。
【0030】
長さ2の導体136が、高電圧発生装置34上の長さ2の端子132とカソードアセンブリ38上の長さ2の端子134との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上の長さ2の電極72に結合されている。過渡抑制デバイス138が長さ2の導体136(高電圧発生装置内の長さ2のバイアス回路)と高電圧コモンリターン166との間に結合されている。
【0031】
集束導体146が、高電圧発生装置34上の集束端子142とカソードアセンブリ38上の集束端子144との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上の集束電極74に結合されている。過渡抑制デバイス148が集束導体146(高電圧発生装置内の集束バイアス回路)と高電圧コモンリターン166との間に結合されている。
【0032】
フィラメント導体156が、高電圧発生装置34上のフィラメント端子152とカソードアセンブリ38上のフィラメント端子154との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上のフィラメント1の電極76に結合されている。過渡抑制デバイス158がフィラメント導体156(高電圧発生装置内のフィラメント駆動回路)と高電圧コモンリターン166との間に結合されている。
【0033】
高電圧コモンリターン導体166が、高電圧発生装置34上の高電圧コモンリターン端子162とカソードアセンブリ38上の高電圧コモンリターン端子164との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上のフィラメント2の電極78に結合されている。
【0034】
図5は、X線管のための高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ200の例示的実施形態の概略図である。回路アセンブリ200は、複数のサージ抵抗器と、バイアス制御回路に結合された複数の過渡抑制デバイスとを含む。回路アセンブリ200は、それぞれ幅1、幅2、長さ1、長さ2の導体および集束バイアス導体と高電圧コモンリターン導体との間に結合された過渡抑制デバイスと共にサージ抵抗器、ならびにフィラメント導体と高電圧コモンリターンとの間に結合された過渡抑制デバイスを含む。複数のサージ抵抗器および複数の過渡抑制デバイスは、高電圧過渡現象が起きないように、ならびに高電圧発生装置34、高電圧ケーブルアセンブリ46、およびカソードアセンブリ38をスピット(真空放電または真空アーク)から保護するように設計されている。
【0035】
過渡サージ保護装置として働く非線形高電圧保護構成部品または高電圧過渡抑制デバイスの例は、ダイオード、DIAC、SIDAC、MOV、サイリスタ、SIDACtor(商標)サイリスタ、アバランシェダイオード、TVSダイオード、火花ギャップなどを含むが、それらに限定されない。
【0036】
高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ200は、高電圧発生装置34、高電圧ケーブルアセンブリ46、高電圧コネクタ48、50、X線管真空筺体36内に、または高電圧発生装置34をX線管真空筺体36に接続するスタンドアロンのアセンブリとして、パッケージ可能である。
【0037】
高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ200では、幅1の導体206が高電圧発生装置34上の幅1の端子202とカソードアセンブリ38上の幅1の端子204との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上の幅1の電極66に結合されている。サージ抵抗器210が幅1の導体206と直列に存在し、過渡抑制デバイス208が幅1の導体206(高電圧発生装置内の幅1のバイアス回路)と高電圧コモンリターン266との間に結合されている。
【0038】
幅2の導体216が、高電圧発生装置34上の幅2の端子212とカソードアセンブリ38上の幅2の端子214との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上の幅2の電極68に結合されている。サージ抵抗器220が幅2の導体216と直列に存在し、過渡抑制装置218が幅2の導体216(高電圧発生装置内の幅2のバイアス回路)と高電圧コモンリターン266との間に結合されている。
【0039】
長さ1の導体226が、高電圧発生装置34上の長さ1の端子222とカソードアセンブリ38上の長さ1の端子224との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上の長さ1の電極70に結合されている。サージ抵抗器230が長さ1の導体226と直列に存在し、過渡抑制デバイス228が長さ1の導体226(高電圧発生装置内の長さ1のバイアス回路)と高電圧コモンリターン266との間に結合されている。
【0040】
長さ2の導体236が、高電圧発生装置34上の長さ2の端子232とカソードアセンブリ38上の長さ2の端子234との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上の長さ2の電極72に結合されている。サージ抵抗器240が長さ2の導体236と直列に存在し、過渡抑制デバイス238が長さ2の導体236(高電圧発生装置内の長さ2のバイアス回路)と高電圧コモンリターン266との間に結合されている。
【0041】
集束導体246が、高電圧発生装置34上の集束端子242とカソードアセンブリ38上の集束端子244との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上の集束電極74に結合されている。サージ抵抗器250が集束導体246と直列に存在し、過渡抑制デバイス248が集束導体246(高電圧発生装置内の集束バイアス回路)と高電圧コモンリターン266との間に結合されている。
【0042】
フィラメント導体256が、高電圧発生装置34上のフィラメント端子252とカソードアセンブリ38上のフィラメント端子254との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上のフィラメント1の電極76に結合されている。過渡抑制デバイス258がフィラメント導体256(高電圧発生装置内のフィラメント駆動回路)と高電圧コモンリターン266との間に結合されている。
【0043】
高電圧コモンリターン導体266が、高電圧発生装置34上の高電圧コモンリターン端子262とカソードアセンブリ38上の高電圧コモンリターン端子264との間に延在し、それは、図3に示すように、カソードアセンブリ38上のフィラメント2の電極78に結合されている。
【0044】
例示の実施形態では、X線発生システム内の高電圧過渡抑制およびスピット保護のための方法が、X線発生システム内で電気的過渡現象を抑制するためにX線発生システム内に電気回路を提供するステップと、X線発生システム内の過渡電流をサージ抵抗器によって制限することにより、X線発生システム内で誘発される電圧を抑えるステップと、X線発生システムに結合された過渡抑制デバイスまたは別の非線形保護構成部品を通じて、X線発生システム内の過渡電圧を固定するステップと、高電圧発生装置の構成部品故障を招く電位的に高いサージ電流の流れを、X線発生システム内の高電圧発生装置回路に入らないように変えるステップとを含む。
【0045】
上述の高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路システムおよび方法の例示的実施形態により、過渡電圧を許容可能なレベルまで含むことによって、高電圧過渡現象がスピットによって生じることによる高電圧の完全性を損失することなく、バイアス電圧をX線発生システムに印加させることと、電位的に高いサージ電流がX線発生システムの高電圧発生装置に入らないようにすることとが可能になり、それによって、過渡状態の下で、X線発生システムの信頼性が著しく向上する。
【0046】
本発明を、様々な実施形態に関して説明してきたが、当業者には、ある種の代用、変更および省略が本発明の精神から逸脱することなく、実施形態に対して行われることが可能であることが理解されよう。したがって、前述の説明は、単に例示に過ぎないことを意味しており、添付の請求項に記載の本発明の範囲を限定すべきではない。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】X線発生システムの例示的実施形態の概略図である。
【図2】X線発生システムの例示的実施形態の概略図である。
【図3】図2のX線発生システムの例示的実施形態の一部分のより詳細な概略図である。
【図4】X線発生システムのための高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリの例示的実施形態の概略図である。
【図5】X線発生システムのための高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリの例示的実施形態の概略図である。
【符号の説明】
【0048】
10 X線発生システム
12 電源
14 高電圧発生装置
16 X線管真空筺体
18 カソードアセンブリ
20 アノードアセンブリ
22 真空ギャップ
24 回路アセンブリ
30 X線発生システム
32 電源
34 高電圧発生装置
36 X線管真空筺体
38 カソードアセンブリ
40 アノードアセンブリ
42 真空ギャップ
44 回路アセンブリ
46 高電圧ケーブルアセンブリ
48 高電圧コネクタ
50 高電圧コネクタ
52 幅1の導体
54 幅2の導体
56 長さ1の導体
58 長さ2の導体
60 集束導体
62 フィラメント導体
64 高電圧コモンリターン
66 幅1の電極
68 幅2の電極
70 長さ1の電極
72 長さ2の電極
74 集束電極
76 フィラメント1の電極
78 フィラメント2の電極
80 フィラメント
82 過渡抑制回路
84 過渡抑制回路
86 過渡抑制回路
88 過渡抑制回路
90 過渡抑制回路
92 過渡抑制回路
100 回路アセンブリ
102 HV発生装置の幅1の端子
104 カソードの幅1の端子
106 幅1の導体
108 過渡抑制デバイス
112 HV発生装置の幅2の端子
114 カソードの幅2の端子
116 幅2の導体
118 過渡抑制デバイス
122 HV発生装置の長さ1の端子
124 カソードの長さ1の端子
126 長さ1の導体
128 過渡抑制デバイス
132 HV発生装置の長さ2の端子
134 カソードの長さ2の端子
136 長さ2の導体
138 過渡抑制デバイス
142 HV発生装置の集束端子
144 カソードの集束端子
146 集束導体
148 過渡抑制デバイス
152 HV発生装置のフィラメント端子
154 カソードのフィラメント端子
156 フィラメント導体
158 過渡抑制デバイス
162 HV発生装置HVのCR端子
164 カソードHVのCR端子
166 HVのCR導体
200 回路アセンブリ
202 HV発生装置の幅1の端子
204 カソードの幅1の導体
206 幅1の導体
208 過渡抑制デバイス
210 サージ抵抗器
212 HV発生装置の幅2の端子
214 カソードの幅2の端子
216 幅2の導体
218 過渡抑制デバイス
220 サージ抵抗器
222 HV発生装置の長さ1の端子
224 カソードの長さ1の端子
226 長さ1の導体
228 過渡抑制デバイス
230 サージ抵抗器
232 HV発生装置の長さ2の端子
234 カソードの長さ2の端子
236 長さ2の導体
238 過渡抑制デバイス
240 サージ抵抗器
242 HV発生装置の集束端子
244 カソードの集束端子
246 集束導体
248 過渡抑制デバイス
250 サージ抵抗器
252 HV発生装置のフィラメント端子
254 カソードのフィラメント端子
256 フィラメント導体
258 過渡抑制デバイス
262 HV発生装置HVのCR端子
264 カソードHVのCR端子
266 HVのCR導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードアセンブリ(20、40)から離間されたカソードアセンブリ(18、38)を有するX線管真空筺体(16、36)と、
前記カソードアセンブリ(18、38)から前記アノードアセンブリ(20、40)上の焦点への電子ビームを制御するための複数のバイアス回路からの複数のバイアス電圧を供給する、前記X線管真空筺体(16、36)に結合された高電圧発生装置(14、34)と、
X線発生システム(10、30)内で前記複数のバイアス回路を保護するための前記高電圧発生装置(14、34)と前記X線管真空筺体(16、36)との間に結合された高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ(100、200)と
を備えたX線発生システム(10、30)。
【請求項2】
前記高電圧発生装置(14、34)と前記X線管真空筺体(16、36)との間に結合された高電圧ケーブルアセンブリ(46)をさらに備え、前記高電圧ケーブルアセンブリ(46)が、前記高電圧ケーブルアセンブリ(46)を前記高電圧発生装置(14、34)に接続するための前記高電圧ケーブルアセンブリ(46)の一方の端部に取り付けられた第1の高電圧コネクタ(48)と、前記高電圧ケーブルアセンブリ(46)を前記X線管真空筺体(16、36)に接続するための前記高電圧ケーブルアセンブリ(46)の対向端部に取り付けられた第2の高電圧コネクタ(50)とを含む、請求項1記載のX線発生システム(10、30)。
【請求項3】
前記高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ(44、100、200)が、各バイアス回路(66、68、70、72、74、106、116、126、136、146、156、206、216、226、236、246、256)と高電圧コモンリターン(64、166、266)との間に結合された少なくとも1つの過渡抑制デバイス(82、84、86、88、90、92、108、118、128、138、148、158、208、218、228、238、248、258)を備えた、請求項1記載のX線発生システム(10、30)。
【請求項4】
前記高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ(44、100、200)が、前記高電圧発生装置(14、34)のフィラメント駆動回路(76、78、80、106、116、126、136、146、156、206、216、226、236、246、256)と前記高電圧コモンリターン(64、166、266)との間に結合された少なくとも1つの過渡抑制デバイス(82、84、86、88、90、92、108、118、128、138、148、158、208、218、228、238、248、258)を備えた、請求項3記載のX線発生システム(10、30)。
【請求項5】
前記高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ(44、100、200)が、前記高電圧発生装置(14、34)内に集積されている、請求項1記載のX線発生システム(10、30)。
【請求項6】
前記高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ(44、100、200)が、前記X線管真空筺体(16、36)内に集積されている、請求項1記載のX線発生システム(10、30)。
【請求項7】
前記高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ(44、100、200)が、前記高電圧ケーブルアセンブリ(46)内に集積されている、請求項2記載のX線発生システム(10、30)。
【請求項8】
前記高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ(44、100、200)が、前記高電圧発生装置(14、34)を前記X線管真空筺体(16、36)に接続するアセンブリ(24、44)内に集積されている、請求項1記載のX線発生システム(10、30)。
【請求項9】
複数のバイアス回路(66、68、70、72、74、106、116、126、136、146、156、206、216、226、236、246、256)のそれぞれと高電圧コモンリターン(64、166、266)との間に結合された少なくとも1つの過渡抑制デバイス(82、84、86、88、90、92、108、118、128、138、148、158、208、218、228、238、248、258)と、
フィラメント駆動回路(76、78、80、106、116、126、136、146、156、206、216、226、236、246、256)と高電圧コモンリターン(64、166、266)との間に結合された少なくとも1つの過渡抑制デバイス(82、84、86、88、90、92、108、118、128、138、148、158、208、218、228、238、248、258)と
を含む、X線発生システム(10、30)内で前記複数のバイアス回路を保護するための、高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ(44、100、200)。
【請求項10】
少なくとも1つのサージ抵抗器(210、220、230、240、250)と、前記複数のバイアス回路(206、216、226、236、246、256)と前記高電圧コモンリターン(266)との間に結合された少なくとも1つの過渡抑制デバイス(208、218、228、238、248、258)とをさらに含む、請求項9記載の高電圧過渡抑制およびスピット保護の回路アセンブリ(44、100、200)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−282813(P2008−282813A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125527(P2008−125527)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】