説明

X線装置

この発明は、陽極(11)に向けて電子を発生する電子放出源(17)、陽極を回転可能に支持する軸(13)、ロータ軸(15)を回転させる力を発生するステータ(19)、少なくとも陽極と電子放出源とロータ軸を真空に維持する外囲器(9)、外囲器の周囲に冷却媒体を介在させるハウジング(3)を含むX線装置(1)であり、電子放出源、ステータ等に電源を供給する電線材またはその電線材との接続に利用されるコネクタを、絶縁性を示す材料によりモールドしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線装置、ならびにX線装置に適用される回転陽極型X線管に関する。
【背景技術】
【0002】
回転陽極型X線管を用いたX線装置は、回転可能に支持された陽極ターゲットを真空外囲器内に収納した回転陽極型X線管本体と、陽極ターゲットが連結されたロータに対してX線管の外部から駆動磁界を提供するステータコイルと、X線管本体およびステータコイル両者を収納するハウジング等から構成されている。
【0003】
ハウジングと回転陽極型X線管本体の隙間との間には、陽極ターゲット等から発生した熱を放熱する冷却媒体、例えば絶縁油や、水を主な成分として含む非油脂系冷却液が満たされている。すなわち、陽極ターゲット等からの熱は冷却媒体に放熱され、対流により冷却媒体が冷却されることにより、排熱される。この結果、陽極ターゲット等の発熱する要素が冷却される。この際、ステータコイルから生じた熱も同様に排熱され、結果として、ステータコイルも冷却される。なお、この種の密閉された冷却媒体を用いる冷却は、熱容量に余裕のある比較的小形のX線管に多く採用されている(例えば、実開昭58−164171号公報)。
【0004】
また、ステータコイルと回転陽極型X線管とを、非油脂系冷却液のなかでも熱伝達効率の大きい不凍液とした例も既に提案されている(例えば、特表2001−502473号公報)。
【0005】
しかしながら、油脂系冷却液を冷却媒体に用いた場合、例えばステータコイルの絶縁被覆材として広く利用されている含浸ワニス等が冷却媒体に溶出することにより、ステータコイルや絶縁油自身の絶縁性が低下してX線装置の寿命が低下する問題がある。
【0006】
また、冷却媒体に非油脂系冷却液を用いる場合に特有の問題として、冷却媒体の電気伝導率が油脂系冷却液に比べて高いため、ステータコイルの絶縁を確保しなければならない問題がある。
【発明の開示】
【0007】
この発明の目的は、冷却媒体を使用して、回転陽極型X線管を冷却するX線装置の特性を、長期に亘って安定に維持可能とすることである。
【0008】
この発明は、X線を発生する陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットに向けて電子を発生する電子放出源と、前記陽極ターゲットが連結されたロータと、前記ロータを回転させるための推進力を発生するステータコイルと、少なくとも前記陽極ターゲットと前記電子放出源と前記ロータを所定の真空度に維持する外囲器と、前記外囲器の周囲に冷却媒体を介在させることのできるハウジングと、前記電子放出源、前記ステータコイル等に電源を供給する電線材と、を有するX線装置において、前記電線材に前記冷却媒体が接することを抑止するモールド材が所定位置に設けられていることを特徴とするX線装置を提供するものである。
【0009】
また、この発明は、回転陽極ターゲットと、前記回転陽極ターゲットに向けて電子を発生する電子放出源と、前記陽極ターゲットが連結されたロータと、前記ロータを回転させるための推進力を発生するステータコイルと、少なくとも前記陽極ターゲットと前記電子放出源と前記ロータを所定の真空度に維持する外囲器と、前記外囲器の周囲に冷却媒体を介在させることのできるハウジングと、前記電子放出源、前記ステータコイル等に電源を供給する電線材またはその電線材との接続に利用されるコネクタと、前記電線材およびコネクタもしくは前記ステータコイルの任意の領域に前記冷却媒体が接することを抑止するモールド材と、を有することを特徴とするX線装置を提供するものである。
【0010】
また、この発明は、回転陽極ターゲットと、前記回転陽極ターゲットに向けて電子を発生する電子放出源と、前記陽極ターゲットが連結されたロータと、前記ロータを回転させるための推進力を発生するステータコイルと、少なくとも前記陽極ターゲットと前記電子放出源と前記ロータを所定の真空度に維持する外囲器と、前記外囲器の周囲に冷却媒体を介在させることのできるハウジングと、前記電子放出源、前記ステータコイル等に電源を供給する電線材またはその電線材との接続に利用されるコネクタと、を有するX線装置において、前記電線材およびコネクタもしくは前記ステータコイルの任意の領域が絶縁性を示す材料によりモールドされていることを特徴とするX線装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、この発明の実施の形態が適用可能なX線装置の一例を説明する概略図。
【図2】図2は、この発明の実施の形態が適用可能なX線装置の別の一例を説明する概略図。
【図3】図3は、この発明の実施の形態が適用可能なX線装置のさらに別の一例を説明する概略図。
【図4】図4は、図1ないし図3により説明したX線装置に適用可能な冷却系(非油脂系冷却媒体のみを使用)の一例を説明する概略図。
【図5】図5は、図4に示したX線装置において、内部構造を説明するために、ハウジングの一部を取り外した状態を示す概略図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1に示したように、例えばX線画像診断装置や非破壊検査装置に組み込まれ、対象物すなわち非検査対象に対して照射すべきX線を放射するX線装置1は、ハウジング3とハウジング3に収容され、所定強度のX線を所定方向に向けて放射可能なX線管本体(回転陽極型X線管)5を有する。
【0014】
X線管本体5は、例えば主な成分が水であり、電気伝導率が所定の大きさ未満に管理された非油脂系冷却液7を介してハウジング3の所定の位置に収容されている。なお、冷却液7としては、周知の絶縁油等も利用可能である。
【0015】
X線管本体5は、内部を所定の真空度に保持する外囲器9と、外囲器9内の所定の位置に設けられた陰極電子銃(熱電子放出源)17と、電子銃17から放出された電子が衝突されることにより所定波長のX線を放射する回転陽極(陽極ターゲット)11と、陽極ターゲット11が連結されたロータ15(ロータ15とターゲット11とを合わせて回転部13と呼称する場合もある)と、ロータ15を回転させるための推進力すなわち磁界を提供するステータコイル19と、外囲器9内の真空度を所定の条件に維持するため、内部で発生するガス(水素ガス等)を捕獲するゲッタ31等を有する。なお、外囲器9の所定の位置には、回転陽極11から放射されるX線を外部に出射するための、例えばベリリウム製の窓9aが設けられている。
【0016】
上述したX線管本体5において、陰極電子銃17や、ステータコイル19およびゲッタ31等に電源を供給するための電源線すなわち電線材17l,19lおよび31lは、それぞれに設けられているターミナル部(コネクタあるいはコンタクトもしくは接触子と表示されることもある)と、ハウジング3に設けられる対応するターミナル部との間の電気的な接続に利用される。なお、個々の電線材は、ターミナル部等が用いられることなく、そのままハウジング3の外側まで延ばされてもよい。
【0017】
任意の電線材17l,19lあるいは31lにおいて、ターミナル部と接続される部分すなわち電線材の導体が露出されている部分やターミナル部等において母材が露出されている部分は、樹脂等によりモールド(被複)されている(識別のために符号に「100」を加算し、さらに「m」を付加する、また、以下、モールド部と呼称する)。なお、個々のモールド部を提供するために用いられる樹脂材料としては、耐熱性や耐薬品性に優れた、例えばエポキシ樹脂やフッ素樹脂等が好ましい。
【0018】
個々のモールド部117m,119mあるいは131mは、少なくともハウジング3や外囲器9の孔の近傍あるいは図示しないコネクタ等の周囲に、冷却液が外囲器9内部に浸透することを防止可能に、形成される。なお、冷却液7と触れることある電線材の全ての領域がモールドされてもよいことは、いうまでもない。
【0019】
特に、ステータコイル19向けの電線材が、例えば含浸ワニス等の、冷却液7が内部に浸透する虞れのある材料である場合は、ステータコイル19の周囲の全域にモールド材が配置されてもよい(ステータコイル19がモールド材により完全に被覆されてもよい)。なお、ステータコイル19をモールドすることにより、ステータコイル19に電流が流れた場合に生じる騒音(電磁音)も低減される。
【0020】
ステータコイルのモールド材としては、前記した樹脂に例えばアルミナ(酸化アルミ)又は窒化アルミもしくは窒化ホウ素等の絶縁性が高く、しかも樹脂よりも熱伝導性の良い材料からなる粉を分散させたものが好適である。
【0021】
このように、冷却液に浸る電線材(電源線)もしくはコネクタの周囲を絶縁性が高い、モールド材により、被覆(モールド)することにより、冷却液として用いることのできる媒体の材質の自由度を高めることができる。この場合、冷却媒体としては、例えばエチレングリコールやプロピレングリコール等のグリコール類や、水とグリコール類とが混合された混合液等が利用可能である。
【0022】
図2および図3は、図1に示した回転陽極型X線管を含むX線装置の別の実施の形態を説明する概略図である。なお、図1を用いて前に説明したと同様の、または類似した構成には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0023】
図2に示すように、X線管本体5は、例えば主な成分が水であり、電気伝導率が所定の大きさ未満に管理された非油脂系冷却液7を介してハウジング3の所定の位置に収容されている。なお、冷却液7としては、周知の絶縁油等も利用可能である。
【0024】
ハウジング3内に満たされた冷却液7は、ハウジング3の所定の位置に設けられた第1および第2の接続部C01およびC02を経由して、ハウジング3の外部の所定位置に設けられ、冷却液7を強制的に冷却する冷却ユニット21により冷却されるとともに、冷却ユニット21と一体に、または冷却液7が流れる経路内の任意に位置に組み込まれているポンプ21aにより所定の流量でハウジング3と冷却ユニット21との間を循環される。なお、ポンプ21aは、好ましくはギアポンプである。
【0025】
従って、ステータコイル19や外囲器9内、特に陽極ターゲット11の近傍で生じる熱が冷却液7を介して冷却ユニット21に排熱される。これにより、X線出力の大きなX線管本体が組み込まれた場合であっても、効率よく冷却されるので、特性が安定で長期に亘って所定のX線出力が維持可能なX線装置1が得られる。
【0026】
なお、図3に示すように、冷却ユニット21とポンプ21aにより循環される冷却液7は、最も発熱量の大きな陽極ターゲット11と電子銃17および電子銃17を囲むように設けられる反跳電子捕捉トラップ(シールド構体)23やロータ15の内側にも、例えば冷却液流路C11やC12を介して循環されてもよい。
【0027】
この場合、外囲器9内に循環される冷却液と、外囲器9とハウジング3との間を循環される冷却液とは、流路の構成により、同一の冷却液により循環可能となる。
【0028】
図4は、図3に示したX線装置のX線管本体内の陽極ターゲットおよび陽極ターゲットとロータとからなる回転ユニットの軸部を、より効率よく冷却する冷却系の一例を示す。
【0029】
図4に示すように、冷却ユニット21のポンプ21aにより送出される冷却液7は、熱交換器21bで冷却され、接続点T4およびハウジング3の接続点T1とを経由し、陽極ターゲット11の回転ユニット13の固定軸13aのパイプ13hに、配管P101を介して案内される。なお、冷却媒体の流路は、X線管本体5の少なくとも一部に近接して設けられ、配管P101を含む第1冷却路C101、第2冷却路C102、および第3冷却路C103からなる。
【0030】
第2冷却路C102は、電子銃17近傍および反跳電子捕捉トラップ23に冷却媒体7を案内し、第3冷却路C103は、反跳電子捕捉トラップ23から陽極ターゲットの裏面に対向する位置に設けられた円盤状空間27に冷却媒体7を案内する。なお、円盤状空間27の導出口C132から排出された冷却媒体7はハウジング3の内部空間3bを経由して、冷却ユニット21へ戻される。
【0031】
より詳細には、図4に示すX線装置において、冷却媒体が供給される流路は、冷却ユニット21のラジエータ21bから、配管P101により、ロータ15の固定軸13aのパイプ13hに直接、接続される(導入口C111,第1冷却路C101)。
【0032】
パイプ13hに案内された冷却媒体は、固定軸13a内の空胴すなわち円筒状の固定軸13a内に設けられたパイプ13hと軸13aとの間に規定される空間を通って、導入口C111の外周、かつ近傍に規定される導出口C112から、配管P102に案内され、陰極17の周囲すなわち反跳電子捕捉トラップ23と陽極ターゲット11の近傍に位置されている第2冷却路C102に案内される。すなわち、固定軸13aを循環した冷却媒体は、導入口C121から反跳電子捕捉トラップ23の近傍に案内され、導出口C122へ排出される。
【0033】
反跳電子捕捉トラップ23を循環された冷却媒体は、配管P103を通じて、真空容器9の外側、かつステータコイル19の近傍に、回転ユニット13の図示しない回転軸と直交するように設けられた壁面25により外囲器9を囲む形状に設けられた壁面25により規定される円盤状空間27として定義されている第3冷却路C103の導入口C131に案内される。
【0034】
円盤状空間27は、その中心部を挟んで導入口C131から180°の位置に形成されている導出口C132と接続されている。
【0035】
冷却媒体は導入口C131から円盤状空間27に導入され、導出口C132からハウジング3の内部空間3bに排出される。このためハウジング3の内部空間3bは冷却媒体で満たされる。なお、内部空間3bに導入さえた冷却媒体は、接続点T2から配管P104を通じて、冷却ユニット21に戻される。
【0036】
換言すると、図4に示す冷却機構においては、冷却ユニット21のラジエータ(熱交換器)21bと導入口C111(第1冷却路C101)との間、導出口C112(第1冷却路C101)と導入口C121(第2冷却路C102)との間、導出口C122(第2冷却路C102)と導入口C131(第3冷却路C103)との間は、それぞれ、配管P101、P102およびP103により相互に連結されている。なお、配管P102およびP103は、その一部がハウジング3の外側に示されているが、いずれもハウジング3内に設けることができ、その位置(パイプ配置)は、図示の例に制限を受けることはない。また、任意の配管あるいは導入口もしくは導出口は、例えばホースにより接続され、しかも少なくとも一端が着脱可能であることはいうまでもない。
【0037】
図4に示した冷却流路によれば、熱交換器21bから送出された冷却媒体は、発熱量の大きな回転ユニット13の軸受け部となる回転体13bと固定軸13aとを第1に冷却するできる。従って、動圧流体軸受けが焼き付くことが、確実に防止できる。また、ゲッタ31やステータコイル19の周辺も、確実に冷却される。
【0038】
ステータ19は、ハウジング3内において、X線管本体5とともに、冷却媒体に浸されることから、たとえば絶縁性および耐水性が高く、しかも熱伝導率の高い樹脂材料等によりモールドされることが好ましい。
【0039】
モールドに利用可能な樹脂材料としては、例えばエポキシ樹脂、タールエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂の中から選ばれた樹脂またはそれを主成分とする混合樹脂を使用することができる。
【0040】
また前記したようにモールド材の熱伝導性を向上させるために、上記樹脂中にアルミナ又は窒化アルミもしくは窒化ホウ素等の粉末を分散させても良い。
【0041】
これにより、ステータ19の周囲は、水系冷却媒体に接することがなく、電気絶縁性の低下を防止することが可能となる。
【0042】
図4に示したX線装置においては、冷却媒体を水系冷却媒体の1種類のみとすることができ、コストが低減可能で、しかもメンテナンスも容易である。また、水系冷却媒体は、絶縁油と比較して熱伝達効率が高いため、装置全体の熱を効率よく放出可能となる。
【0043】
また、水系冷却媒体は、絶縁油(非油脂系冷却媒体)に比較して粘性係数が小さいことから、ポンプ21aに作用する負荷が低減される。従って、冷却媒体が循環される流量が安定化される。しかも、冷却機構による冷却媒体の冷却能力が向上されることから、比較的負荷が大きいとされる動圧流体軸受けが損傷する(焼き付く)虞れが低減される。
【0044】
図5は、図4に示したX線装置において、内部構造を説明するために、ハウジングの一部を取り外した状態を示している。
【0045】
図5に示されるように、ステータコイル19の周囲の所定の位置に設けられるモールド材119mは、ハウジング3にステータコイル19(X線管本体5)を固定するための固定ブロック19sを兼用する。もちろん、固定ブロック19sは、電線材19lのモールドに用いられる部分と別々であってもよいことはいうまでもない。
【0046】
なお、X線管本体5の外囲器9をハウジング3に固定する際に利用可能となる固定ブロック9sが外囲器9の所定の位置に、任意の電線材をモールドするために利用されるモールド材が供給される工程において、外囲器9と一体的に形成されてもよい(図5は、既にモールドが形成された状態を示している)。
【0047】
このように、ステータコイル19やゲッタ31の電線材をモールドする際に、モールドに利用されるモールド材を、外囲器9の所定の位置あるいは電線材をモールドするために不可欠な領域とは異なる領域に配置し、その(モールドされた)部分を、ハウジング3と外囲器9やステータコイル19とを固定するための位置決め部(固定ブロック)とすることも可能である。
【0048】
なお、モールド材によりハウジングと外囲器やステータコイルとを固定するための位置決め部(固定ブロック)を一体に形成することで、X線装置を組み立てる際の工数が低減されるとともに、ハウジング内のX線管本体(外囲器)の位置を正確に設定(組み立て)可能となることはいうまでもない。また、外囲器やステータコイルに固定ブロックをモールドにより設けることにより、ハウジング内でX線管本体に働く外力の影響を吸収でき、輸送時に損傷を受けることも低減される。
【0049】
なお、この発明は上記した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を種々変形して具体化することができる。また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0050】
以上説明したように、この発明によれば、油脂系冷却液を用いて発熱部分で生じる熱を排熱(冷却)する際に、内部に用いられる電線材がワニス含浸材を含む場合であっても冷却液の絶縁性が低下することがなく、効率よく排熱されるので、X線管から放射されるX線の特性が長期に亘って安定に維持される。
【0051】
また、この発明によれば、ステータコイルに電流が流れることにより生じる騒音(電磁音)が低減される。
【0052】
さらに、この発明によれば、冷却液の絶縁性(導電性)を考慮する必要がなく冷却効率の高い冷却媒体が利用可能で、冷却効率が向上される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明によれば、冷却媒体を使用して回転陽極型X線管を冷却するX線装置において、長期に亘って安定な特性が確保できる。これにより、X線装置が組み込まれる、例えばX線画像診断装置や非破壊検査装置の寿命が増大される。また、X線装置自身の寿命も増大されるので、X線画像診断装置や非破壊検査装置のランニングコストも低減される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生する陽極ターゲットと、
前記陽極ターゲットに向けて電子を発生する電子放出源と、
前記陽極ターゲットが連結されたロータと、
前記ロータを回転させるための推進力を発生するステータコイルと、
少なくとも前記陽極ターゲットと前記電子放出源と前記ロータを所定の真空度に維持する外囲器と、
前記外囲器の周囲に冷却媒体を介在させることのできるハウジングと、
前記電子放出源、前記ステータコイル等に電源を供給する電線材と、
を有するX線装置において、
前記電線材に前記冷却媒体が接することを抑止するモールド材が所定位置に設けられていることを特徴とするX線装置。
【請求項2】
前記モールド材は、電気絶縁性を有する樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載のX線装置。
【請求項3】
前記モールド材には、熱伝導率を高めることのできる電気絶縁材料が含まれていることを特徴とする請求項2記載のX線装置。
【請求項4】
前記冷却媒体は、絶縁油を含むことを特徴とする請求項1記載のX線装置。
【請求項5】
前記冷却媒体は、水を主な成分として含むことを特徴とする請求項1記載のX線装置。
【請求項6】
前記冷却媒体は、グリコール類を含むことを特徴とする請求項1記載のX線装置。
【請求項7】
前記冷却媒体は、水を主な成分としたグリコール類との混合液を含むことを特徴とする請求項1記載のX線装置。
【請求項8】
前記冷却媒体は、冷却ユニットにより冷却されて循環されることを特徴とする請求項1記載のX線装置。
【請求項9】
前記冷却媒体は、少なくとも前記陽極ターゲットと前記電子放出源との近傍を循環されることを特徴とする請求項8記載のX線装置。
【請求項10】
回転陽極ターゲットと、
前記回転陽極ターゲットに向けて電子を発生する電子放出源と、
前記陽極ターゲットが連結されたロータと、
前記ロータを回転させるための推進力を発生するステータコイルと、
少なくとも前記陽極ターゲットと前記電子放出源と前記ロータを所定の真空度に維持する外囲器と、
前記外囲器の周囲に冷却媒体を介在させることのできるハウジングと、
前記電子放出源、前記ステータコイル等に電源を供給する電線材またはその電線材との接続に利用されるコネクタと、
前記電線材およびコネクタもしくは前記ステータコイルの任意の領域に前記冷却媒体が接することを抑止するモールド材と、
を有することを特徴とするX線装置。
【請求項11】
前記冷却媒体は、冷却ユニットにより冷却されて循環されることを特徴とする請求項10記載のX線装置。
【請求項12】
前記冷却媒体は、少なくとも前記陽極ターゲットと前記電子放出源との近傍を循環されることを特徴とする請求項9記載のX線装置。
【請求項13】
回転陽極ターゲットと、前記回転陽極ターゲットに向けて電子を発生する電子放出源と、前記陽極ターゲットが連結されたロータと、前記ロータを回転させるための推進力を発生するステータコイルと、少なくとも前記陽極ターゲットと前記電子放出源と前記ロータを所定の真空度に維持する外囲器と、前記外囲器の周囲に冷却媒体を介在させることのできるハウジングと、前記電子放出源、前記ステータコイル等に電源を供給する電線材またはその電線材との接続に利用されるコネクタと、を有するX線装置において、
前記電線材およびコネクタもしくは前記ステータコイルの任意の領域が絶縁性を示す材料によりモールドされていることを特徴とするX線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【国際公開番号】WO2005/038851
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514820(P2005−514820)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015385
【国際出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】