説明

X線CT装置

【課題】アーチファクトの発生を抑えた画像を生成することが可能なX線CT装置を提供する。
【解決手段】傾斜機構部22は、X線管球12とX線検出器14とを含む支持部10を、被検体の体軸方向に傾斜させる。スキャン制御部40は、支持部10を体軸方向に第1の傾斜角度に傾けた状態でX線管球12からX線を曝射させ、支持部10を体軸方向に第2の傾斜角度に傾けた状態でX線管球12からX線を曝射させる。画像生成部50は、支持部10が第1の傾斜角度に傾けられた状態で収集された第1の投影データと、支持部10が第2の傾斜角度に傾けられた状態で収集された第2の投影データとに基づいて、画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体にX線を曝射して投影データを収集し、収集された投影データに基づいて画像データを生成するX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体を間にして対向して配置されたX線管球とX線検出器とを有する。X線CT装置は、X線管球とX線検出器とを被検体の周囲で回転させながらX線管球からX線を曝射し、被検体を透過したX線をX線検出器で検出する。X線検出器によって検出されたデータをデータ収集装置(DAS)にて投影データとして収集し、収集された投影データによって被検体の画像データを再構成する。例えばX線管球とX線検出器とを、360°、又は(180°+ファン角)回転させて投影データを収集し、360°分、又は(180°+ファン角)分の投影データに基づいて画像データを再構成する。
【0003】
被検体に対するある角度において、複数の検出素子を有するX線検出器で検出された検出データの集合をビュー(view)と称する。例えば1°ごとに1ビューの投影データを収集する場合には、X線管球とX線検出器とを1回転させて360ビューの投影データを得て、この360ビューの投影データを用いて画像を再構成することになる。
【0004】
X線CT装置はボリュームスキャンを行うことで、被検体の体軸方向(スライス方向)に幅を有する3次元の撮影領域を撮影することができる(例えば特許文献1)。X線CT装置は、スライス方向に複数の検出素子を備えた2次元のX線検出器(多列化検出器)を用いることで、スライス方向に幅を有する3次元の撮影領域を撮影し、その撮影によってボリュームデータを生成することができる。例えば心臓、脳、又は小児の肺野などの部位を撮影する場合、ボリュームスキャンを行うことで、被検体を載置した寝台天板を移動させずに撮影対象となる部位を表すボリュームデータを生成することができる。
【0005】
図8及び図9を参照して、ボリュームスキャンにおいてX線が曝射される領域について説明する。図8は、従来技術に係るボリュームスキャンにおいてX線が曝射される領域を模式的に示す図である。図9は、寝台天板を移動させながらスキャンを行う場合において、X線が曝射される領域を模式的に示す図である。図8(a)、(b)に示すように、被検体Pを載置する寝台天板33を間にして、X線管球12とX線検出器14とが対向して配置されている。寝台天板33は、被検体Pの体軸方向(スライス方向)に移動可能となっている。X線検出器14は、スライス方向に複数の検出素子を備えている。X線管球12から曝射されたX線は、X線検出器14に向かってコーン状に広がっていく。すなわち、X線管球12から曝射されたX線は、スライス方向に広がりながらX線検出器14に向かっていく。X線管球12とX線検出器14とは、寝台天板33の周りで回転方向(φ方向)に回転させられる。
【0006】
図8(a)は、回転方向の原点(回転角度φが0°の位置)にX線管球12がある状態を示す図である。図8(b)は、回転角度φが180°の位置にX線管球12がある状態を示す図である。上述したように、X線管球12から曝射されたX線はコーン状に広がりながらX線検出器14に向かう。そのため、回転角度φが0°の位置にX線管球12がある場合には、図8(a)に示すように、X線がコーン状に広がる領域S1にX線が曝射され、領域S1よりも外側の領域A1にはX線が曝射されない。一方、回転角度φが180°の位置にX線管球12がある場合には、図8(b)に示すように、X線がコーン状に広がる領域S2にX線が曝射され、領域S2よりも外側の領域A2にはX線が曝射されない。
【0007】
また、図8(b)に示すように回転角度φが180°の位置にX線管球12がある場合、領域A1の一部にはX線が曝射される。同様に、図8(a)に示すように回転角度φが0°の位置にX線管球12がある場合、領域A2の一部にはX線が曝射される。このように、X線管球12の回転角度φによってX線が曝射されたり、曝射されなかったりする領域(領域A1や領域A2など)が存在する。
【0008】
そして、X線管球12を1回転(360°回転)させた場合、コーン状に広がるX線の中心付近の領域には、X線管球12がどの回転角度φにあってもX線が曝射される。つまり、各回転角度φでX線が曝射される領域が重なる領域には、X線管球12がどの回転角度φにあってもX線が曝射される。一方、X線管球12の回転角度φによってX線が曝射されない領域(領域A1や領域A2)がある。
【0009】
回転角度φによってはX線が曝射されない領域(領域A1や領域A2など)においては、X線検出器14によって検出されるX線の透過量が乏しくなる。そのため、領域A1や領域A2などの領域を表す画像には、アーチファクトが発生しやすく、画質が劣化する問題があった。
【0010】
そこで従来においては図9に示すように、寝台天板33を被検体の体軸方向(スライス方向)に移動させながら連続的にスキャンを行うことで、上記の問題を解決する試みがなされている。
【0011】
また、取得された画像データに補正を施すことで、アーチファクトの発生を抑制し、画質の劣化を抑制する試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−301228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、寝台天板33を被検体の体軸方向(スライス方向)に移動させながらスキャンを行う場合、その移動の間に被検体の体位や位置が変わるおそれがある。このようにスキャン中に被検体の位置がずれる場合があり、この位置ずれによるアーチファクトの発生を抑制することは困難である。
【0014】
また、寝台天板33をスライス方向に移動させる距離が短いほど、領域A1や領域A2などの領域を網羅して撮影することができる。ところが、寝台天板33の移動距離を短くすると、多列化されたX線検出器のメリットが活用されない結果となる。すなわち、多列化されたX線検出器を用いることでスライス方向に対して広い領域を撮影することができ、寝台天板33をスライス方向に移動させる場合には、本来はより広い領域を撮影することができる。しかしながら寝台天板33の移動距離を短くした分、撮影される領域は狭くなり、多列化されたX線検出器のメリットが活用されないことになる。また、寝台天板33をスライス方向に移動させながらスキャンを行うと、X線が曝射される部位が重なるため、被検体に過剰な被曝を被らせるおそれがある。
【0015】
この発明は上記の問題を解決するものであり、アーチファクトの発生を抑えた画像を生成することが可能なX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明は、X線発生手段と、被検体を間にして前記X線発生手段と対向して配置され、前記X線発生手段から曝射されて前記被検体を透過したX線を投影データとして検出するX線検出手段と、を有し、前記X線発生手段及び前記X線検出手段が前記被検体の周りで回転可能に構成されたX線CT装置であって、前記被検体の体軸方向に前記X線発生手段を傾斜させる傾斜手段と、前記傾斜手段によって前記X線発生手段を前記体軸方向に第1の傾斜角度に傾けた状態で前記X線発生手段からX線を曝射させ、前記傾斜手段によって前記X線発生手段を前記体軸方向に前記第1の傾斜角度とは異なる第2の傾斜角度に傾けた状態で前記X線発生手段からX線を曝射させる制御手段と、前記第1の傾斜角度に前記X線発生手段が傾けられた状態で前記X線検出手段によって検出された第1の投影データと、前記第2の傾斜角度に前記X線発生手段が傾けられた状態で前記X線検出手段によって検出された第2の投影データとに基づいて、画像データを生成する画像生成手段と、を有することを特徴とするX線CT装置である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によると、複数の傾斜角度からX線を曝射することで、それぞれの傾斜角度からのX線曝射ではX線量が少ない領域に対して、別の傾斜角度からX線を曝射することが可能となる。そのことにより、それぞれの傾斜角度で検出された投影データを用いて画像データを生成することで、アーチファクトの発生を抑えた画像データが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態に係るX線CT装置を示すブロック図である。
【図2】X線管球を傾斜させた状態を示す図である。
【図3】異なる傾斜角度で検出された投影データを用いて画像データを生成する処理を説明するための図である。
【図4】X線管球を傾斜させた状態を示す図である。
【図5】X線管球を傾斜させた状態を示す図である。
【図6】架台(ガントリ)の外観を示す外観図である。
【図7】架台の内部を示す断面図である。
【図8】従来技術に係るボリュームスキャンにおいてX線が曝射される領域を模式的に示す図である。
【図9】寝台天板を移動させながらスキャンを行う場合において、X線が曝射される領域を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、この発明の実施形態に係るX線CT装置について説明する。この発明の実施形態に係るX線CT装置は、架台装置1とコンソール部2と寝台装置3とを備えている。架台装置1は被検体に対してX線を曝射し、被検体を透過したX線を投影データとして収集する。その投影データはコンソール部2に出力されて再構成処理が施される。寝台装置3は、被検体を載置するための寝台31を備えている。
【0020】
(架台装置1)
架台装置1は、支持部10と支持部駆動部20とを備えている。
【0021】
(支持部10)
支持部10は、高電圧発生部11と、X線管球12と、コリメータ13と、X線検出器14と、データ収集部15とを格納する。支持部10は、被検体の体軸方向(スライス方向)に貫通した図示しない開口部を有する。被検体が載置された寝台天板が、その開口部に挿入される。
【0022】
X線管球12とX線検出器14とは、支持部10の上記開口部を間にして対向して配置されている。X線管球12のX線曝射口には、コリメータ13が設置されている。X線管球12はX線を曝射し、X線検出器14は被検体を透過したX線を検出する。なお、X線管球12が、この発明の「X線発生手段」の1例に相当する。
【0023】
コリメータ13は所定幅のスリット(開口部)を有し、スリットの幅を変えることで、X線管球12から曝射されたX線のファン角(チャンネル方向の広がり角)とX線のコーン角(スライス方向の広がり角)とを調整する。スライス方向は被検体の体軸方向に相当し、チャンネル方向はX線管球12の回転方向に相当する。
【0024】
X線検出器14には、検出素子が互いに直交する2方向(スライス方向とチャンネル方向)にそれぞれ複数配置された2次元のX線検出器が用いられる。すなわちX線検出器14には、被検体の体軸方向(スライス方向)に複数の検出素子を有する2次元のX線検出器が用いられる。これにより、スライス方向に幅を有する3次元の撮影領域を撮影する(ボリュームスキャン)。
【0025】
高電圧発生部11はスキャン制御部40の制御の下、X線を曝射させるための管電圧をX線管球12に供給する。これにより、X線管球12からX線が発生させられる。
【0026】
X線検出器14にはデータ収集部(DAS)15が設けられている。データ収集部15は、X線検出器14の各検出素子と同様に配列されたデータ収集素子を有する。データ収集部15は、X線検出器14によって検出されたX線(検出信号)を、スキャン制御部40から出力されたデータ収集制御信号(View Trigger信号(VT信号))に対応させて収集する。この収集されたデータが投影データである。データ収集部15は投影データをコンソール部2に出力する。なお、X線検出器14とデータ収集部15とによって、この発明の「X線検出手段」の1例を構成する。
【0027】
X線管球12から曝射されたX線は、コリメータ13を介して被検体に照射される。被検体を透過したX線はX線検出器14で検出され、検出された信号はデータ収集部15にて投影データとして収集される。
【0028】
(支持部駆動部20)
支持部駆動部20は、回転機構部21と傾斜機構部22と傾斜角度検出部23とを備えている。
【0029】
(回転機構部21)
回転機構部21は、スキャン制御部40から出力された架台制御信号に基づいて、支持部10を被検体の周りで回転させる。これにより、支持部10に格納されているX線管球12とX線検出器14とが、被検体の周りで回転させられる。
【0030】
(傾斜機構部22、傾斜角度検出部23)
傾斜機構部22は、スキャン制御部40から出力された傾斜制御信号に基づいて、被検体の体軸方向(スライス方向)に支持部10を傾斜させる。これにより、支持部10に格納されているX線管球12とX線検出器14とが、スライス方向に傾斜させられる。傾斜機構部22は、支持部10を傾斜させる構造的な機構と、その機構を動かすモータとを含む図示しない駆動部を有する。傾斜機構部22はスキャン制御部40によって制御され、目標となる傾斜角度が傾斜角度検出部23によって検出されるまで、スライス方向に支持部10を傾斜させる。傾斜角度検出部23は、傾斜機構部22の駆動量を検出するエンコーダと、エンコーダからの出力をカウントするカウンタとを備えている。傾斜角度検出部23は、支持部10が垂直に立っているときの位置を傾斜原点位置とし、そのときのカウント値を0(零)にリセットして、傾斜移動に応じたエンコーダの出力をカウントする。なお、傾斜機構部22が、この発明の「傾斜手段」の1例に相当する。
【0031】
この実施形態では、支持部10(X線管球12とX線検出器14)を複数の傾斜角度に傾斜させ、それぞれの傾斜角度においてX線管球12からX線を曝射させることで、それぞれの傾斜角度において投影データを収集する。
【0032】
(傾斜移動の具体例)
図2を参照して、支持部10(X線管球12とX線検出器14)の傾斜移動について説明する。1例として、2つの傾斜角度に支持部10を傾斜させて、それぞれの傾斜角度においてX線管球12からX線を曝射させる。
【0033】
図2(a)、(b)に示すように、被検体Pを載置する寝台天板33を間にして、X線管球12とX線検出器14とが対向して配置されている。寝台天板33は、被検体Pの体軸方向(スライス方向)に移動可能となっている。X線検出器14は、スライス方向に複数の検出素子を備えている。X線管球12から曝射されたX線は、X線検出器14に向かってコーン状に広がっていく。すなわち、X線管球12から曝射されたX線は、スライス方向に広がりながらX線検出器14に向かっていく。X線管球12とX線検出器14とは、被検体Pの周りで回転方向(φ方向)に回転させられる。支持部10(X線管球12とX線検出器14)が垂直に立っている位置を、垂直位置VLとする。垂直位置VLは、支持部10が傾斜する方向(傾斜方向(θ方向))の傾斜原点位置に相当する。
【0034】
例えば図2(a)に示すように、傾斜機構部22は、X線管球12とX線検出器14とを、垂直位置VLを基準にしてスライス方向に、傾斜角度が傾斜角度θaとなる位置に傾斜させる。X線管球12とX線検出器14とを傾斜角度θaに傾斜させた状態で、X線管球12とX線検出器14とを被検体Pの周りで回転させながら、X線管球12からX線を曝射させる。X線検出器14は、被検体を透過したX線を検出する。データ収集部15は、X線検出器14によって検出されたX線を投影データとして収集する。例えば回転角度1°ごとに1ビュー(view)の投影データを収集する場合、X線管球12とX線検出器14とを被検体Pの周りで1回転(360°回転)させることで、データ収集部15は360ビューの投影データを収集する。なお、傾斜角度θaが、この発明の「第1の傾斜角度」の1例に相当する。
【0035】
図2(a)は、回転方向の原点(回転角度φが0°の位置)にX線管球12がある状態を示す図である。X線管球12から曝射されたX線はコーン状に広がりながらX線検出器14に向かう。回転角度φが0°の位置にX線管球12がある場合には、X線がコーン状に広がる領域SaにX線が曝射され、領域Saよりも外側の領域AにはX線が曝射されない。X線管球12を回転方向(φ方向)に1回転(360°回転)させた場合、コーン状に広がるX線の中心付近の領域には、X線管球12がどの回転角度φにあってもX線が曝射される。つまり、各回転角度φでX線が曝射される領域が重なる領域には、X線管球12がどの回転角度φにあってもX線が曝射される。一方、回転角度φによってはX線が曝射されない領域がある。例えば領域Aは、回転角度φが0°の場合にはX線が曝射されないが、回転角度φが180°の場合には領域Aの一部にX線が曝射される。このように領域Aは、回転角度φによってX線が曝射されたり曝射されなかったりするため、コーン状に広がるX線の中心付近の領域に比べてX線の透過量が少なくなる。
【0036】
また図2(b)に示すように、傾斜機構部22は、傾斜角度θaとは異なる傾斜角度θbに、X線管球12とX線検出器14とを傾斜させる。例えば傾斜機構部22は、垂直位置VLを傾斜原点位置として、傾斜角度θaに傾ける方向とは反対の方向に向けて、傾斜角度が傾斜角度θbとなる位置にX線管球12とX線検出器14とを傾斜させる。X線管球12とX線検出器14とを傾斜角度θbに傾斜させた状態で、X線管球12とX線検出器14とを被検体Pの周りで回転させながら、X線管球12からX線を曝射させる。例えば回転角度1°ごとに1ビューの投影データを収集する場合、X線管球12とX線検出器14とを被検体Pの周りで1回転(360°回転)させることで、データ収集部15は360ビューの投影データを収集する。なお、傾斜角度θbが、この発明の「第2の傾斜角度」の1例に相当する。
【0037】
図2(b)は、回転方向の原点(回転角度φが0°の位置)にX線管球12がある状態を示す図である。X線管球12から曝射されたX線はコーン状に広がりながらX線検出器14に向かう。回転角度φが0°の位置にX線管球12がある場合には、X線がコーン状に広がる領域SbにX線が曝射され、領域Sbよりも外側の領域BにはX線が曝射されない。この領域Bも上述した領域Aと同様に、回転角度φが0°の場合にはX線が曝射されないが、回転角度φが180°の場合には領域Bの一部にX線が曝射される。このように領域Bは、回転角度φによってX線が曝射されたり曝射されなかったりするため、コーン状に広がるX線の中心付近の領域に比べてX線の透過量が少なくなる。
【0038】
データ収集部15は、X線管球12が傾斜角度θaに傾斜された状態で収集された投影データ(以下、「投影データDa」と称する場合がある)をコンソール部2に出力する。また、データ収集部15は、X線管球12が傾斜角度θbに傾斜された状態で収集された投影データ(以下、「投影データDb」と称する場合がある)をコンソール部2に出力する。なお、投影データDaが、この発明の「第1の投影データ」の1例に相当する。また、投影データDbが、この発明の「第2の投影データ」の1例に相当する。
【0039】
(コンソール部2)
コンソール部2は、スキャン制御部40と、前処理部41と、画像生成部50と、画像記憶部42と、表示制御部43と、表示部44とを備えている。
【0040】
(スキャン制御部40)
スキャン制御部40は、被検体の体軸方向(スライス方向)に支持部10を傾斜させるために、傾斜制御信号を支持部駆動部20に出力する。例えばスキャン制御部40は、傾斜角度情報を含む傾斜制御信号を生成して、その傾斜制御信号を支持部駆動部20に出力する。傾斜角度情報は、垂直位置VLを基準にした傾斜角度θを示している。図2に示す例では、スキャン制御部40は、傾斜角度θaを示す傾斜角度情報と傾斜角度θbを示す傾斜角度情報とを含む傾斜制御信号を生成して、傾斜制御信号を支持部駆動部20に出力する。傾斜機構部22は傾斜制御信号をスキャン制御部40から受けて、その傾斜制御信号に従って支持部10をスライス方向に傾斜させる。傾斜角度θは図示しない記憶部に予め記憶されていても良いし、操作者が図示しない操作部を用いて任意の傾斜角度θを入力するようにしても良い。なお、スキャン制御部40が、この発明の「制御手段」の1例に相当する。
【0041】
また、スキャン制御部40は、支持部10を一定の速度で回転方向φに回転さるために、架台制御信号を支持部駆動部20に出力する。また、スキャン制御部40は、X線発生を制御するX線発生制御信号を高電圧発生部11に出力し、X線の検出のタイミングを示すデータ収集制御信号をデータ収集部15に出力する。
【0042】
また、スキャン制御部40は、X線の広がり角を示すX線情報と傾斜角度情報とを画像生成部50に出力する。X線の広がり角には、ファン角(チャンネル方向の広がり角)と、コーン角(スライス方向の広がり角)とが含まれる。
【0043】
(前処理部41)
前処理部41は、データ収集部15から出力された投影データに対して、感度補正やX線強度補正などの処理を施す。前処理部41によって処理が施された投影データは、画像生成部50に出力される。
【0044】
(画像生成部50)
画像生成部50は、処理部51と再構成処理部54とを備えている。画像生成部50は、第1の傾斜角度(傾斜角度θa)にX線管球12が傾斜された状態で収集された第1の投影データ(投影データDa)と、第2の傾斜角度(傾斜角度θb)にX線管球12が傾斜された状態で収集された第2の投影データ(投影データDb)とに基づいて、画像データを生成する。なお、画像生成部50が、この発明の「画像生成手段」の1例に相当する。
【0045】
(処理部51)
処理部51は、撮影領域算出部52と補間処理部53とを備えている。処理部51は、X線管球12がある傾斜角度に傾けられた状態でX線を曝射した場合に、X線が曝射されない領域における投影データを、別の傾斜角度で得られた投影データを用いて求める。図3を参照して、処理部51による処理について説明する。
【0046】
(撮影領域算出部52)
撮影領域算出部52は、X線の広がり角を示すX線情報と支持部10の傾斜角度θを示す傾斜角度情報とをスキャン制御部40から受けて、X線が曝射される領域の位置を求める。すなわち、撮影領域算出部52は、傾斜角度情報が示す傾斜角度θにX線管球12が傾けられた状態で、X線情報が示す広がり角を持ってX線が曝射された場合に、X線が曝射される領域の位置を求める。撮影領域算出部52は、X線管球12が各回転角度φの位置にある場合について、X線が曝射される領域の位置を求める。つまり、撮影領域算出部52は、各回転角度φに対してX線が曝射される領域の位置を求める。
【0047】
例えば図3に示すように、撮影領域算出部52は、X線管球12の傾斜角度θaと、コーン状に広がるX線の広がり角とに基づいて、X線管球12が傾斜角度θaに傾けられた状態でX線が曝射される領域Saの位置を求める。同様に、撮影領域算出部52は、X線管球12の傾斜角度θbと、コーン状に広がるX線の広がり角とに基づいて、X線管球12が傾斜角度θbに傾けられた状態でX線が曝射される領域Sbの位置を求める。図3に示す領域Saと領域Sbとは、回転角度φが0°の状態でX線が曝射される領域である。撮影領域算出部52は、各回転角度φに対してX線が曝射される領域を求める。例えば、撮影領域算出部52は、回転角度φが0°から360°までの1°ごとに、X線が曝射される領域を求める。
【0048】
(補間処理部53)
補間処理部53は、回転角度φによってはX線が曝射されない領域における投影データを求める。例えば、補間処理部53は、X線管球12の各回転角度φにおいて、異なる傾斜角度θでそれぞれ収集された投影データを合成する。具体的には、補間処理部53は、領域Sbにおいて領域Saとは重複しない領域を補間領域として求める。そして、補間処理部53は、領域Saにおける投影データDaと、上記補間領域における投影データDbとを合成することで、合成投影データDを求める。すなわち、補間処理部53は、傾斜角度θaで収集された領域Saにおける投影データと、傾斜角度θbで収集された領域Sbの投影データであって領域Saとは重複しない補間領域における投影データとを合成する。補間処理部53は、X線管球12が各回転角度φの位置にある場合について、領域Saにおける投影データDaと補間領域における投影データDbとを合成することで、各回転角度φにおける合成投影データDを求める。例えば、補間処理部53は、回転角度φが0°から360°まで1°ごとに、領域Saにおける投影データと補間領域における投影データDbとを合成することで、各回転角度φにおける合成投影データを求める。
【0049】
(再構成処理部54)
再構成処理部54は、投影データを逆投影処理することにより画像データを再構成する。この実施形態では、再構成処理部54は、合成投影データDを逆投影処理することにより画像データを生成する。これにより、被検体を表す画像データが生成される。再構成処理部54は、画像データを画像記憶部42に出力する。画像記憶部42は画像データを記憶する。
【0050】
なお、画像生成部50は、再構成処理前の投影データを合成して画像データを生成しても良いし、再構成処理後の画像データを合成することで、回転角度φによってはX線が曝射されない領域の画像データを含む画像データを生成しても良い。
【0051】
(表示制御部43)
表示制御部43は、画像記憶部42から画像データを読み込み、画像データに基づく画像を表示部44に表示させる。この実施形態では、合成投影データDに基づいて生成された画像が表示部44に表示させられる。
【0052】
(寝台装置3)
寝台装置3は、寝台31と寝台駆動部32とを備えている。寝台31は、被検体を載置するための寝台天板33と、寝台天板33を支持する寝台基台とを備えている。寝台天板33は、上述したように、寝台駆動部32によって被検体の体軸方向(スライス方向)に移動可能となっている。寝台基台は、寝台駆動部32によって寝台天板33を上下方向に移動させることが可能となっている。
【0053】
スキャン制御部40と画像生成部50と表示制御部43とはそれぞれ、CPU、GPU、又はASICなどの図示しない処理装置と、ROM、RAM、又はHDDなどの図示しない記憶装置とによって構成されていても良い。記憶装置には、スキャン制御部40の機能を実行するためのスキャン制御プログラムが記憶されている。また記憶装置には、画像生成部50の機能を実行するための画像生成プログラムが記憶されている。また記憶装置には、表示制御部43の機能を実行するための表示制御プログラムが記憶されている。画像生成プログラムには、処理部51の機能を実行するための処理プログラムと、再構成処理部54の機能を実行するための再構成処理プログラムとが含まれている。処理プログラムには、撮影領域算出部52の機能を実行するための撮影領域算出プログラムと、補間処理部53の機能を実行するための補間処理プログラムとが含まれている。そしてCPUなどの処理装置が、記憶装置に記憶されている各プログラムを実行することで各部の機能を実行する。
【0054】
以上の構成を有するこの実施形態に係るX線CT装置によると、傾斜角度θaと傾斜角度θbとにそれぞれX線管球12を傾けてX線を曝射させることで、傾斜角度θaからのX線曝射ではX線量が比較的少ない領域(例えば領域A)に対して、別の傾斜角度θbからX線を曝射することが可能となる。そして、領域Saに含まれない領域については、傾斜角度θbで得られた領域Sbにおける投影データを用いて再構成処理を行うことで、X線量の乏しさを解消してアーチファクトの発生を抑えた画像データを生成することが可能となる。また、寝台天板33をスライス方向に移動させなくても、X線量が比較的少ない領域に対してX線を曝射することができる。そのことにより、寝台天板33の移動中に発生しうる被検体の位置ずれが生じることはないため、その位置ずれによるアーチファクトの発生を防止することができる。
【0055】
上述した実施形態では、2つの傾斜角度θ(θa、θb)に支持部10を傾けて撮影を行っているが、3つ以上の傾斜角度θに傾けて撮影を行っても良い。また、2つ以上の傾斜角度θのうち、1つの傾斜角度θが0°であっても良い。すなわち、傾斜角度θには0°を含むものとし、支持部10を垂直に立たせた状態(傾斜角度θが0°)で撮影を行っても良い。例えば傾斜角度θa及び傾斜角度θbのうち、いずれか一方の傾斜角度を0°にして撮影を行っても、上述した作用及び効果を奏することができる。
【0056】
図4を参照して、3つの傾斜角度(θa、θb、θc)に支持部10を傾斜させる場合について説明する。
【0057】
図4(a)に示すように、傾斜機構部22は、X線管球12とX線検出器14とを、傾斜角度が傾斜角度θaとなる位置に傾斜させる。この状態でX線を曝射することで、データ収集部15は投影データDaを収集する。
【0058】
また図4(b)に示すように、傾斜機構部22は、X線管球12とX線検出器14とを、傾斜角度が傾斜角度θbとなる位置に傾斜させる。この状態でX線を曝射することで、データ収集部15は投影データDbを収集する。
【0059】
また図4(c)に示すように、傾斜機構部22は、X線管球12とX線検出器14とを、傾斜角度が0°(傾斜角度θc)となる位置に傾斜移動させる。この状態でX線を曝射することで、データ収集部15は投影データDcを収集する。
【0060】
画像生成部50は上述した実施形態と同様に、それぞれ異なる傾斜角度で収集された投影データに基づいて画像データを生成する。すなわち、撮影領域算出部52は、各傾斜角度(θa、θb、θc)にてX線が曝射される領域を求める。補間処理部53は、上述したように補間領域を求め、合成投影データDを求める。再構成処理部54は、合成投影データDに基づいて画像データを生成する。
【0061】
このように3つの傾斜角度に支持部10を傾斜させて撮影を行う場合も、ある傾斜角度からのX線曝射ではX線量が比較的少ない領域に対して、別の傾斜角度からX線を曝射することが可能となる。そのため、X線量の乏しさを解消してアーチファクトの発生を抑えた画像データを生成することが可能となる。また、より多くの傾斜角度に支持部10を傾斜させて撮影を行うことで、X線量が比較的少ない領域をより細かく網羅して撮影することが可能となる。
【0062】
(変形例1)
図5を参照して変形例1について説明する。変形例1に係るX線CT装置は、X線管球12から曝射されるX線の広がり角を傾斜角度θごとに変える。すなわち、変形例1に係るX線CT装置は、コリメータ13のスリットの幅を傾斜角度θごとに変える。
【0063】
スキャン制御部40は、各傾斜角度θに対するスリットの幅を示すスリット情報を支持部駆動部20に出力する。支持部駆動部20はスリット情報をスキャン制御部40から受けて、そのスリット情報に従ってコリメータ13のスリットの幅を変える。各傾斜角度θに対するスリットの幅を示す情報は、図示しない記憶部に予め記憶されていても良いし、操作者が図示しない操作部を用いてスリットの幅を入力するようにしても良い。
【0064】
例えば図5に示すように、傾斜角度θaが0°で、コリメータ13のスリットの幅を幅Waにした状態で、X線管球12からX線を曝射させことで、領域SaにX線が曝射される。また、X線管球12を傾斜角度θbに傾け、コリメータ13のスリット幅を幅Wb(>幅Wa)にした状態で、X線管球12からX線を曝射させることで、領域SbにX線が曝射される。傾斜角度θbにおける幅Wbは、傾斜角度θaにおける幅Waよりも広いため、領域Sbは領域Saよりも広い。
【0065】
例えば撮影対象の部位が小さい場合には、被検体の被曝を抑えるためにコリメータ13のスリット幅を狭めて撮影を行う。この撮影でX線量が比較的少なくなる領域を網羅するために、傾斜角度θを傾斜角度θaから傾斜角度θbを変え、さらにスリット幅を広げて撮影を行う。これにより、被検体の被曝を抑えつつ、より広い領域を網羅して撮影することができる。
【0066】
このように傾斜角度θによってコリメータ13のスリット幅を変えた場合であっても、画像生成部50は上述した実施形態と同様に合成投影データDを求め、合成投影データDに基づいて画像データを生成する。これにより、X線量の乏しさを解消してアーチファクトの発生を抑えた画像データを生成することが可能となる。
【0067】
(変形例2)
図6及び図7を参照して、変形例2について説明する。図6(a)、(b)に示すように、X線管球12やX線検出器14を格納する架台を、架台の外装カバー200も含めてスライス方向に傾斜させることで、X線管球12をスライス方向に傾斜させることができる。しかしながら、外装カバー200を含めてX線管球12をスライス方向に傾斜させると、X線CT装置の土台210と外装カバー200との間に隙間220が生じる。このように隙間220が生じると、技師や患者が挟まれるおそれがあるため、それを防止する手段が必要となる。
【0068】
変形例2に係るX線CT装置では外装カバー200を傾斜させずに、X線管球12やX線検出器14を含む支持部10を、外装カバー200内で傾斜させる。
【0069】
具体例を図7に示す。図7に示すように架台(格納部)の外装カバー100の内部に、X線管球12とX線検出器14とを含む支持部10を設ける。傾斜機構部22は、外装カバー100の内部で支持部10をスライス方向に傾斜させる。また、回転機構部21は、外装カバー100の内部で支持部10を回転方向(φ方向)に回転させる。なお、外装カバー100は、スライス方向に貫通する開口部110を有し、被検体が載置された寝台天板33が開口部110に挿入される。
【0070】
以上のように、支持部10(X線管球12とX線検出器14)を外装カバー100の内部でスライス方向に傾斜させることで、図6に示す隙間220が生じることがない。そのことにより、支持部10を傾斜させる場合に、技師や患者の安全を担保することが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
1 架台装置
2 コンソール部
3 寝台装置
10 支持部
11 高電圧発生部
12 X線管球
13 コリメータ
14 X線検出器
15 データ収集部
20 支持部駆動部
21 回転機構部
22 傾斜機構部
23 傾斜角度検出部
40 スキャン制御部
41 前処理部
42 画像記憶部
43 表示制御部
44 表示部
50 画像生成部
51 処理部
52 撮影領域算出部
53 補間処理部
54 再構成処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生手段と、
被検体を間にして前記X線発生手段と対向して配置され、前記X線発生手段から曝射されて前記被検体を透過したX線を投影データとして検出するX線検出手段と、
を有し、前記X線発生手段及び前記X線検出手段が前記被検体の周りで回転可能に構成されたX線CT装置であって、
前記被検体の体軸方向に前記X線発生手段を傾斜させる傾斜手段と、
前記傾斜手段によって前記X線発生手段を前記体軸方向に第1の傾斜角度に傾けた状態で前記X線発生手段からX線を曝射させ、前記傾斜手段によって前記X線発生手段を前記体軸方向に前記第1の傾斜角度とは異なる第2の傾斜角度に傾けた状態で前記X線発生手段からX線を曝射させる制御手段と、
前記第1の傾斜角度に前記X線発生手段が傾けられた状態で前記X線検出手段によって検出された第1の投影データと、前記第2の傾斜角度に前記X線発生手段が傾けられた状態で前記X線検出手段によって検出された第2の投影データとに基づいて、画像データを生成する画像生成手段と、
を有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記画像生成手段は、前記第2の投影データのうち前記第1の傾斜角度ではX線が曝射されない領域における投影データと、前記第1の投影データとを合成して、前記画像データを生成することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記X線発生手段から曝射されるX線の広がり角を調整するコリメータを更に有し、
前記制御手段は、前記第1の傾斜角度と前記第2の傾斜角度とで、前記広がり角を変えるように前記コリメータを制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記X線発生手段と前記X線検出手段とを格納する格納部を更に有し、
前記傾斜手段は、前記格納部内で前記X線発生手段を傾斜させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−160947(P2011−160947A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26208(P2010−26208)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】