説明

X線CT装置

【課題】再度のCT撮影の要否を判断するための情報を迅速かつ安価に提供することができるX線CT装置を提供する。
【解決手段】実施形態のX線CT装置は、被検体をX線でスキャンし、その検出データを収集するデータ収集部を含む架台部と、コンソール部とを含む。抽出部は、架台部に設けられ、検出データのうちの一部を抽出する。記憶部は、架台部に設けられ、抽出されなかった検出データを記憶する。送信制御部は、架台部又はコンソール部に設けられ、抽出部で抽出された検出データをコンソール部に送信させた後、抽出された検出データ以外の検出データを記憶部から読み出し、コンソール部に送信させる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography)装置は、X線を利用して被検体をスキャンし、収集されたデータをコンピュータにより処理することで、被検体の内部を画像化する装置である。
【0003】
具体的には、X線CT装置は、被検体に対してX線を異なる方向から複数回曝射し、被検体を透過したX線をX線検出器にて検出して複数の検出データを収集する。収集された検出データはデータ収集部によりA/D変換された後、X線CT装置のコンソール部に送信される。コンソール部では、当該検出データに基づいて画像を再構成する。
【0004】
X線CT装置を用いて撮影を行う際、撮影したい部位(たとえば病変が疑われる部位)が検出データに含まれていないと再度のCT撮影を行う必要が生じる。よって、撮影したい部位を含む検出データが収集できているかどうかを確かめる必要がある。
【0005】
このため、X線CT装置においては、収集された全ての検出データをコンソール部に送信し、画像を再構成する。そして、技師等が当該再構成された画像に基づいて、撮影したい部位が検出データに含まれているかどうかを確認する作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−127616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、1台のX線CT装置を用いて複数人を順次に検査する場合(たとえば集団検診や大病院等)がある。この場合、1人当たりの検査時間は短いことが望ましい。従って、再度のCT撮影が必要かどうかを早く判断したいという要望がある。そのためには、検出データの収集から当該データに基づく画像の再構成までの処理にかかる時間をできるだけ短くすることが望ましい。
【0008】
このために、たとえば、検出データの収集と当該データのコンソール部への伝送をほぼ同時に完了させることで画像の再構成を早期に開始することも考えられる。しかし、そのためにはX線CT装置に高速且つ大容量のデータ伝送能力が求められる。このように高速且つ大容量のデータ伝送能力を持つX線CT装置は、高価になるという問題がある。
【0009】
実施形態は、前述の問題点を解決するためになされたものであり、再度のCT撮影の要否を判断するための情報を迅速かつ安価に提供することができるX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態のX線CT装置は、被検体をX線でスキャンし、その検出データを収集するデータ収集部を含む架台部と、コンソール部とを含む。抽出部は、架台部に設けられ、検出データのうちの一部を抽出する。記憶部は、架台部に設けられ、抽出されなかった検出データを記憶する。送信制御部は、架台部又はコンソール部に設けられ、抽出部で抽出された検出データをコンソール部に送信させた後、抽出された検出データ以外の検出データを記憶部から読み出し、コンソール部に送信させる制御を行う。
【0011】
また、実施形態のX線CT装置は、被検体をX線でスキャンし、その検出データを収集するデータ収集部を含む架台部と、コンソール部とを含む。前処理部は、架台部に設けられ、検出データに対して所定の処理を行い、投影データを作成する。抽出部は、架台部に設けられ、投影データのうちの一部を抽出する。記憶部は、架台部に設けられ、抽出されなかった投影データを記憶する。送信制御部は、架台部又はコンソール部に設けられ、抽出部で抽出された投影データをコンソール部に送信させた後、抽出された投影データ以外の投影データを記憶部から読み出し、コンソール部に送信させる制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係るX線CT装置のブロック図である。
【図2】第1実施形態に係るX線CT装置の動作の概要を示すフローチャートである。
【図3】第2実施形態に係るX線CT装置のブロック図である。
【図4】第2実施形態に係るX線CT装置の動作の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1及び図2を参照して、第1実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明する。
【0014】
<装置構成>
図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール部40とを含んで構成されている。
【0015】
[架台装置]
架台装置10は、被検体Eに対してX線を曝射し、被検体Eを透過した当該X線の検出データを収集する装置である。架台装置10は、X線発生部11と、X線検出部12と、回転体13と、高電圧発生部14と、架台駆動部15と、X線絞り部16と、絞り駆動部17と、データ収集部18と、抽出部19と、記憶部20と、送信制御部21とを有する。本実施形態における架台装置10は、「架台部」の一例である。
【0016】
X線発生部11は、X線を発生させるX線管球(図示なし)を含んで構成されている。発生したX線は被検体Eに対して曝射される。X線検出部12は、複数のX線検出素子(図示なし)を有し、被検体Eを透過したX線を検出し、その検出データを電流信号として出力する。X線検出部12は、たとえば、検出素子が互いに直交する2方向(スライス方向とチャンネル方向)にそれぞれ複数配置された2次元のX線検出器が用いられる。このX線検出器により、スライス方向に幅を有する3次元の撮影領域を撮影する(ボリュームスキャン)。なお、スライス方向は被検体Eの体軸方向に相当し、チャンネル方向はX線発生部11の回転方向に相当する。
【0017】
回転体13は、X線発生部11とX線検出部12とを被検体Eを挟んで対向するよう支持する部材である。回転体13は、スライス方向に貫通した開口部を有する。被検体Eが載置された寝台天板33(後述)は、その開口部に挿入される。架台装置10内において、回転体13は、被検体Eを中心とした円軌道で回転するよう配置されている。
【0018】
高電圧発生部14は、X線発生部11に対して高電圧を印加する。X線発生部11は、当該高電圧に基づいてX線を発生させる。架台駆動部15は、回転体13を回転駆動させる。X線絞り部16は、所定幅のスリット(開口部)を有し、スリットの幅を変えることで、X線発生部11から曝射されたX線のファン角(チャンネル方向の広がり角)とX線のコーン角(スライス方向の広がり角)とを調整する。絞り駆動部17は、X線発生部11で発生したX線が所定の形状となるようX線絞り部16を駆動させる。
【0019】
データ収集部18は、X線検出部12(各X線検出素子)からの検出データを収集する。また、データ収集部18は、収集した検出データ(電流信号)を電圧信号に変換し、この電圧信号を周期的に積分して増幅し、デジタル信号に変換する。そして、データ収集部18は、デジタル信号に変換された検出データを抽出部19に送信する。
【0020】
抽出部19は、データ収集部18で収集された検出データのうちの一部を抽出する処理を行う。抽出部19による処理は、たとえば、複数の検出データから任意の条件で一部の検出データを間引くことにより行われる。具体的には、抽出部19は、1回のCT撮影で取得された検出データV(k=1〜n)を1つおきに間引く処理(検出データV、V、V・・・・を抽出する)を行う。間引く間隔は、1つおきに限らず任意の間隔で可能である。たとえば、抽出部19が、検出データVから検出データV、V、V、V、V・・・・を間引くことにより、検出データV、V、V・・・・のみを抽出することができる。すなわち、抽出部19は、検出データVを2つおきに抽出することもできる。また、X線CT装置1によるCT撮影がフルスキャンで行われた場合、回転体13の回転軸を中心として対向する位置で取得される検出データは、X線の曝射方向が異なるだけで同じ部位を示す検出データである。従って、抽出部19による処理を行う場合には、いずれか一方のみを間引くことが好ましい。なお、抽出部19による上記処理は、X線CT装置1によるCT撮影がハーフスキャンで行われた場合にも適用可能である。
【0021】
抽出部19において抽出される検出データは、当該検出データに基づいて再構成画像を形成した場合に、撮影したい部位(たとえば病変が疑われる部位)が写っているかどうかを判断できるデータ、つまり再度の撮影が必要かどうかを判断できるデータであればよい。このように、再度の撮影が必要かどうかを判断するためには、データ収集部18で収集された全ての検出データ(1回のCT撮影で得られた検出データ)を使用しなくともよい。
【0022】
記憶部20は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体記憶装置によって構成される。記憶部20は、データ収集部18で収集された検出データのうち、抽出部19で抽出されなかった検出データ(たとえば間引かれた検出データ)を記憶する。
【0023】
送信制御部21は、検出データを架台装置10からコンソール部40へ送信するタイミングの制御を行う。具体的には、送信制御部21は、抽出部19で抽出された検出データを抽出部19からコンソール部40に送信させた後、抽出部19で抽出された検出データ以外の検出データを記憶部20から読み出し、コンソール部40に送信させるよう制御を行う。
【0024】
本実施形態では、送信制御部21は、抽出した検出データをコンソール部40内の前処理部43a(後述)に送信するよう抽出部19に対して制御信号を送る。そして、送信制御部21は、抽出部19において抽出された検出データが全て送信されたことを検知すると、記憶部20に対して制御信号を送り、記憶されている検出データを読み出し、コンソール部40内の前処理部43a(後述)に送信させる。なお、好ましくは、送信制御部21は、抽出部19で抽出された検出データを前処理部43a(後述)に送信させた直後に、記憶部20に記憶された検出データを前処理部43aに送信させるように抽出部19及び記憶部20の制御を行う。このように、検出データを連続して伝送することにより、X線CT装置1のアイドリング時間(X線によるスキャンを行っていない時間)を有効に活用することができる。
【0025】
記憶部20の記憶領域を確保するために、全ての検出データ(抽出部19で抽出された検出データ及び記憶部20に記憶された検出データ)の送信は、少なくとも次の検査が開始されるまでに行われることが望ましい。但し、記憶部20に十分な記憶領域(複数の検査における検出データそれぞれを記憶できる領域)を確保できる場合にはこの限りではない。
【0026】
[寝台装置]
寝台装置30は、寝台31と寝台駆動部32とを備えている。寝台31は、被検体Eを載置するための寝台天板33と、寝台天板33を支持する基台34とを備えている。寝台天板33は、寝台駆動部32によって被検体Eの体軸方向に移動可能となっている。基台34は、寝台駆動部32によって寝台天板33を上下方向に移動させることが可能となっている。
【0027】
[コンソール部]
コンソール部40は、X線CT装置に対する操作入力に用いられる。また、コンソール部40は、架台装置10によって収集された検出データから被検体Eの内部形態を表すCT画像を再構成する機能を有している。コンソール部40は、スキャン制御部41と、制御部42と、処理部43と、記憶部44と、表示部45と、入力部46とを含んで構成されている。
【0028】
スキャン制御部41は、高電圧発生部14、架台駆動部15、絞り駆動部17及び寝台駆動部32を制御し、架台装置10及び寝台装置30を動作させる。
【0029】
制御部42は、架台装置10、寝台装置30およびコンソール部40の動作を制御することによって、X線CT装置1の全体制御を行う。たとえば、制御部42は、スキャン制御部41を制御することで、架台装置10に対して予備スキャン及びメインスキャンを実行させ、検出データを収集させる。また、制御部42は、処理部43を制御することで、検出データに対する各種処理(詳細は後述)を行わせる。或いは、制御部42は、記憶部44に記憶された再構成画像データ等に基づき、CT画像を表示部45に表示させる。
【0030】
処理部43は、架台装置10から送信される検出データに対して各種処理を実行する。処理部43は、前処理部43aと、再構成処理部43bとを含んで構成されている。
【0031】
前処理部43aは、架台装置10(X線検出部12)で検出された検出データに対して所定の前処理を行い、投影データを作成する。所定の処理は、対数変換によるX線の強度補正等である。
【0032】
再構成処理部43bは、前処理部43aで作成された投影データを逆投影処理することにより、CT画像の基となる再構成画像データを再構成する処理を行う。再構成処理としては、たとえば2次元フーリエ変換法、コンボリューション・バックプロジェクション法等、任意の方法を採用することができる。
【0033】
本実施形態において、再構成処理部43bは、抽出部19で抽出された検出データに基づいて作成された投影データのみから再構成画像データを生成する。また、再構成処理部43bは、抽出部19で抽出された検出データに基づいて作成された投影データ、及び記憶部20に記憶された検出データに基づいて作成された投影データから再構成画像データを生成する。つまり、抽出された検出データに基づいて作成された投影データのみからなる再構成画像データによるCT画像は、抽出された検出データに基づく投影データ及び記憶部20に記憶された検出データに基づく投影データからなる再構成画像データによるCT画像よりも画像を構成するデータ量が少ない。従って、当該CT画像は、粗い画像となる。
【0034】
記憶部44は、RAMやROM等の半導体記憶装置によって構成される。記憶部44は、複数人の検出データや投影データ、或いは再構成処理後の再構成画像データ等を記憶する。
【0035】
表示部45は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等の任意の表示デバイスによって構成される。表示部45には、再構成処理部43bで再構成して得られる画像データに基づくCT画像等が表示される。
【0036】
入力部46は、コンソール部40に対する各種操作を行う入力デバイスとして用いられる。入力部46は、たとえばキーボード、マウス、トラックボール、ジョイスティック等により構成される。また、入力部46として、表示部45に表示されたGUI(Graphical User Interface)を用いることも可能である。
【0037】
送信制御部21、スキャン制御部41、制御部42及び処理部43はそれぞれ、CPU、GPU、又はASICなどの図示しない処理装置と、ROM、RAM、又はHDDなどの図示しない記憶装置とによって構成されていてもよい。記憶装置には、送信制御部21の機能を実行するための送信制御プログラムが記憶されている。また記憶装置には、スキャン制御部41の機能を実行するためのスキャン制御プログラムが記憶されている。また記憶装置には、制御部42の機能を実行するための制御プログラムが記憶されている。また記憶装置には、処理部43の機能を実行するための処理プログラムが記憶されている。処理プログラムには、前処理部43aの機能を実行するための前処理プログラムと、再構成処理部43bの機能を実行するための再構成処理プログラムとが含まれている。そしてCPUなどの処理装置が、記憶装置に記憶されている各プログラムを実行することで各部の機能を実行する。
【0038】
<動作>
次に、図2を参照して、本実施形態に係るX線CT装置1の動作について説明する。
【0039】
まず、被検体Eの撮影準備を行う(S10)。たとえば、被検体Eを寝台装置30に載置し、撮影開始位置に移動させる。或いは、入力部46等により、被検体Eに関する患者情報を入力する。
【0040】
そして、X線CT装置1により、被検体Eに対してCT撮影を行う(S11)。X線発生部11により発生されたX線は被検体Eに対して曝射される。X線検出部12は、被検体Eを透過したX線を検出し、その検出データを取得する。データ収集部18は、X線検出部12で検出された検出データを収集する。
【0041】
X線CT装置1によるCT撮影が完了すると、抽出部19は、データ収集部18で収集された検出データのうちの一部を間引く処理を行う(S12)。なお、間引く検出データの数や条件(2つおきに間引く等)は、たとえば入力部46等を介して予め設定することが可能である。
【0042】
送信制御部21は、S12の処理が行われた検出データを前処理部43aに送信させる(S13)。S13で送信される検出データは、1回のCT撮影で取得された全ての検出データの一部であるため、データ量が少なくなっている。従って、高速且つ大容量のデータ伝送能力を有するX線CT装置を用いることなくデータ伝送が可能となる。
【0043】
前処理部43aは、S13で送信された検出データに基づいて投影データを作成する(S14)。再構成処理部43bは、S14で作成された投影データに基づいて再構成画像データを生成する(S15)。
【0044】
生成された再構成画像データに基づくCT画像は、制御部42等の制御により、表示部45に表示される(S16)。技師は当該画像を観察し、再度の撮影が必要かどうかを判断する(S17)。再度の撮影が必要な場合には、同一の被検体Eに対して同様のステップを繰り返す(S17でYの場合)。再度の撮影が不要の場合(S17でNの場合)には、次の被検体E´に対して同様のステップでX線CT装置1によるCT撮影を行う(S18)。
【0045】
表示部45に表示されたCT画像は、取得された検出データの一部のみを使用して構成されているため、粗い画像となる。しかし、当該CT画像は、技師が再度の撮影の必要性を判断可能な画像となっている。なお、X線CT装置1を用いてヘリカルスキャンによるCT撮影を行う場合、S16で表示されるCT画像は、アキシャル画像であることが望ましい。一方、被検体Eに薬剤を注入し、その薬剤が被検体Eに浸透していく状態を連続的にCT撮影する場合等には、必ずしもアキシャル画像である必要はない。すなわち、S16で表示されるCT画像は、撮影したい部位が取れているかどうかを判断できる画像(たとえば、CT値の変化が分かる画像)であればよい。
【0046】
一方、S12において間引かれた検出データ(S12で抽出された検出データ以外の残りの検出データ)は、記憶部20に一時的に記憶される(S19)。
【0047】
そして、送信制御部21は、S13における送信が完了した直後に、S19で記憶された検出データを前処理部43aに送信させる(S20)。
【0048】
前処理部43aは、S20で送信された検出データに基づいて投影データを作成する(S21)。再構成処理部43bは、S14及びS21で作成された投影データに基づいて再構成画像データを生成する(S22)。S22で取得された再構成画像データは、制御部42等の制御により、必要に応じて画像化され、表示部45等に表示させることができる(S23)。S22における再構成画像データに基づくCT画像は、1回のCT撮影によって得られる全ての検出データを用いた画像である。よって、S16で表示されるCT画像に比べデータ量が多い画像(細かい画像)となる。すなわち、当該CT画像は、医師等が病変の有無等を判断する際に用いるCT画像として有用なものとなる。なお、S21以降の処理は任意のタイミングで行うことが可能である。たとえば、図2に示すように、投影データの作成(S21)を次の被検体E´に対するCT撮影(S18)と同時に開始してもよい。但し、S21以降の処理は、次のCT撮影における前処理や再構成処理に影響を与えないタイミングでなされることが要求される。
【0049】
このように、S13の後に残りの検出データを伝送することにより、全ての検出データを一度に伝送する場合と比較して1回のデータ量を減らすことができる。従って、高速且つ大容量のデータ伝送能力を有するX線CT装置を用いる必要はない。また、たとえばS16において表示されたCT画像を技師が読影している間に、S21及びS22の処理を進めることができる。よって、X線CT装置1のアイドリング時間を有効に活用することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、送信制御部21が架台装置10内に設けられている構成について説明を行ったが、送信制御部21が配置される箇所はこれに限られない。たとえば、送信制御部21をコンソール部40内に設けることも可能である。或いは、制御部42が送信制御部21としての機能を有していてもよい。この場合、制御部42は「送信制御部」の一例となる。
【0051】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0052】
本実施形態のX線CT装置1は、被検体EをX線でスキャンし、その検出データを収集するデータ収集部18を含む架台装置10と、コンソール部40とを含む。架台装置10は、抽出部19と、記憶部20と、送信制御部21とを含む。抽出部19は、検出データのうちの一部を抽出する。記憶部20は、抽出されなかった検出データを記憶する。送信制御部21は、抽出部19で抽出された検出データをコンソール部40に送信させた後、抽出された検出データ以外の検出データを記憶部20から読み出し、コンソール部40に送信させる制御を行う。
【0053】
具体的には、コンソール部40は、前処理部43aと、再構成処理部43bとを含む。前処理部43aは、検出データに対して所定の処理を行い、投影データを作成する。再構成処理部43bは、抽出部19で抽出された検出データに基づく投影データのみ、或いは抽出部19で抽出された検出データに基づく投影データと記憶部20に記憶された検出データに基づく投影データとを再構成して得られる画像データを生成する処理を行う。また、送信制御部21は、抽出部19で抽出された検出データを前処理部43aに送信させた後、抽出された検出データ以外の検出データを記憶部20から読み出し、前処理部43aに送信させる制御を行う。
【0054】
このように、抽出部19が、検出データのうちの一部を抽出し、当該抽出された検出データのみをコンソール部40(前処理部43a)に送信することで、再度の撮影が必要かどうかを判断するための情報(CT画像)を迅速に提供することができる。また、一部の検出データのみを先に送信し、その後、残りの検出データを送信する。つまり検出データの伝送を時間的にずらすことで1回に送信するデータ量を減らすことができる。よって、X線CT装置1を高速化、大容量化する必要がないことから装置自体を安価に製造することができる。
【0055】
また、本実施形態における送信制御部21は、抽出部19で抽出された検出データが前処理部43aに送信された直後に、抽出された検出データ以外の検出データを記憶部20から前処理部43aに送信させるよう、抽出部19及び記憶部20の制御を行う。
【0056】
このように、抽出された検出データを送信した直後に、残りの検出データを送信することにより、X線CT装置1のアイドリング時間を有効に活用することができる。
【0057】
また、本実施形態における抽出部19により抽出される検出データは、X線のスキャンにより得られた複数の検出データからその一部を間引いたデータである。
【0058】
このように、一部を間引いた検出データを用いることにより、架台装置10からコンソール部40へ伝送するデータ量を減らすことができる。よって、X線CT装置1を高速化、大容量化する必要がないことから装置自体を安価に製造することができる。
【0059】
また、本実施形態におけるX線CT装置1は、再構成処理部43bで再構成して得られる画像データに基づく再構成画像が表示される表示部45を有する。
【0060】
このように、表示部45に再構成画像を表示させることにより、技師は再度の撮影が必要かどうかを容易に判断することができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、図3及び図4を参照して、第2実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成及び動作については詳細な説明を省略する場合がある。
【0062】
<装置構成>
図3に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール部40とを含んで構成されている。
【0063】
[架台装置]
本実施形態において、架台装置10は、X線発生部11と、X線検出部12と、回転体13と、高電圧発生部14と、架台駆動部15と、X線絞り部16と、絞り駆動部17と、データ収集部18と、抽出部19と、記憶部20と、送信制御部21と、前処理部43aとを含んで構成されている。
【0064】
本実施形態におけるデータ収集部18は、デジタル信号に変換された検出データを前処理部43aに送信する。
【0065】
前処理部43aは、データ収集部18で検出された検出データに対して対数変換によるX線の強度補正等を行い、投影データを作成する。そして、前処理部43aは、投影データを抽出部19に送信する。
【0066】
抽出部19は、前処理部43aで作成された投影データのうちの一部を抽出する処理を行う。抽出部19による処理は、たとえば、複数の投影データから任意の条件で一部の投影データを間引く等、第1実施形態と同様に行うことが可能である。
【0067】
記憶部20は、RAMやROM等の半導体記憶装置によって構成される。記憶部20は、前処理部43aで作成された投影データのうち、抽出部19で抽出されなかった投影データ(たとえば間引かれた投影データ)を記憶する。
【0068】
送信制御部21は、投影データを架台装置10からコンソール部40へ送信するタイミングの制御を行う。具体的には、送信制御部21は、抽出部19で抽出された投影データを抽出部19からコンソール部40に送信させた後、抽出部19で抽出された投影データ以外の投影データを記憶部20から読み出し、コンソール部40に送信させるよう制御を行う。
【0069】
本実施形態では、送信制御部21は、抽出した投影データをコンソール部40内の再構成処理部43bに送信するよう抽出部19に対して制御信号を送る。そして、送信制御部21は、抽出部19において抽出された投影データが全て送信されたことを検知すると、記憶部20に対して制御信号を送り、記憶されている投影データを読み出し、コンソール部40内の再構成処理部43bに送信させる。
【0070】
[コンソール部]
本実施形態におけるコンソール部40は、第1実施形態と同様、スキャン制御部41と、制御部42と、処理部43と、記憶部44と、表示部45と、入力部46とを含んで構成されている。
【0071】
処理部43は、架台装置10から送信される投影データに対して各種処理を実行する。本実施形態における処理部43は、再構成処理部43bを含んで構成されている。
【0072】
再構成処理部43bは、抽出部19(記憶部20)から送信された投影データを逆投影処理することにより、CT画像の基となる再構成画像データを再構成する処理を行う。
【0073】
本実施形態において、再構成処理部43bは、抽出部19で抽出された投影データのみに基づいて再構成画像データを生成する。また、再構成処理部43bは、抽出部19で抽出された投影データ、及び記憶部20に記憶された投影データから再構成画像データを生成する。つまり、抽出された投影データのみからなる再構成画像データによるCT画像は、抽出された投影データ及び記憶部20に記憶された投影データからなる再構成画像データによるCT画像よりも画像を構成するデータ量が少ない。従って、当該CT画像は、粗い画像となる。
【0074】
<動作>
次に、図4を参照して、本実施形態に係るX線CT装置1の動作について説明する。
【0075】
まず、被検体Eの撮影準備を行う(S30)。そして、X線CT装置1により、被検体Eに対してCT撮影を行って検出データを取得する(S31)。
【0076】
前処理部43aは、S31で取得された検出データに基づいて投影データを作成する(S32)。
【0077】
抽出部19は、S32で作成された投影データのうちの一部を間引く処理を行う(S33)。
【0078】
送信制御部21は、S33の処理が行われた投影データを再構成処理部43bに送信させる(S34)。
【0079】
再構成処理部43bは、S34で送信された投影データに基づいて再構成画像データを生成する(S35)。
【0080】
S35において生成された再構成画像データに基づくCT画像は、制御部42等の制御により、表示部45に表示される(S36)。技師は当該画像を観察し、再度の撮影が必要かどうかを判断する(S37)。再度の撮影が必要な場合には、同一の被検体Eに対して同様のステップを繰り返す(S37でYの場合)。再度の撮影が不要の場合(S37でNの場合)には、次の被検体E´に対して同様のステップでX線CT装置1によるCT撮影を行う(S38)。
【0081】
一方、S33において間引かれた投影データ(S33で抽出された投影データ以外の残りの投影データ)は、記憶部20に一時的に記憶される(S39)。
【0082】
そして、送信制御部21は、S34における送信が完了した直後に、S39で記憶された投影データを再構成処理部43bに送信させる(S40)。
【0083】
再構成処理部43bは、S34及びS40で送信された投影データに基づいて再構成画像データを生成する(S41)。S41で生成された再構成画像データは、制御部42等の制御により、必要に応じて画像化され、表示部45等に表示させることができる(S42)。
【0084】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0085】
本実施形態のX線CT装置1は、被検体EをX線でスキャンし、その検出データを収集するデータ収集部18を含む架台装置10と、コンソール部40とを含む。架台装置10は、抽出部19と、記憶部20と、送信制御部21と、前処理部43aとを含む。 前処理部43aは、検出データに対して所定の処理を行い、投影データを作成する。抽出部19は、投影データのうちの一部を抽出する。記憶部20は、抽出されなかった投影データを記憶する。送信制御部21は、抽出部19で抽出された投影データをコンソール部40に送信させた後、抽出された投影データ以外の投影データを記憶部20から読み出し、コンソール部40に送信させる制御を行う。
【0086】
具体的には、コンソール部40は、再構成処理部43bを含む。再構成処理部43bは、抽出部19で抽出された投影データのみ、或いは抽出部19で抽出された投影データと記憶部20に記憶された投影データとを再構成して得られる画像データを生成する処理を行う。また、送信制御部21は、抽出部19で抽出された投影データを再構成処理部43bに送信させた後、抽出された投影データ以外の投影データを記憶部20から読み出し、再構成処理部43bに送信させる制御を行う。
【0087】
このように、前処理を行った投影データに対し、抽出部19がその一部を抽出し、当該抽出された投影データのみをコンソール部40(再構成処理部43b)に送信することでも、再度の撮影が必要かどうかを判断するための情報(CT画像)を迅速に提供することができる。また、一部の投影データのみを先に送信し、その後、残りの投影データを送信する。つまり投影データの伝送を時間的にずらすことで1回に送信するデータ量を減らすことができる。よって、X線CT装置1を高速化、大容量化する必要がないことから装置自体を安価に製造することができる。
【0088】
また、本実施形態における送信制御部21は、抽出部19で抽出された投影データが再構成処理部43bに送信された直後に、抽出された投影データ以外の投影データを記憶部20から再構成処理部43bに送信させるよう、抽出部19及び記憶部20の制御を行う。
【0089】
このように、抽出された投影データを送信した直後に、残りの投影データを送信することにより、X線CT装置1のアイドリング時間を有効に活用することができる。
【0090】
また、本実施形態における抽出部19により抽出される投影データは、X線のスキャンにより得られた複数の検出データに基づく投影データからその一部を間引いたデータである。
【0091】
このように、一部を間引いた投影データを用いることにより、架台装置10からコンソール部40へ伝送するデータ量を減らすことができる。よって、X線CT装置1を高速化、大容量化する必要がないことから装置自体を安価に製造することができる。
【0092】
<変形例>
上記実施形態の構成は、再構成処理部43bを架台装置10内に設ける場合にも応用可能である。この場合、送信制御部21は、再構成処理部43bを制御し、抽出部19が抽出した投影データに基づく再構成画像データをコンソール部40に送信させた後、抽出部19が抽出した投影データ及び記憶部20に記憶された投影データ(抽出部19で抽出されなかった残りの投影データ)に基づく再構成画像データをコンソール部40に送信させる。
【0093】
また、第2実施形態のように、前処理部43aを架台装置10内に設ける場合、データ収集部18で収集された検出データに対して先に抽出処理を行い、その検出データに対して前処理部43aによる前処理を行うことも可能である。この場合、送信制御部21は、前処理部43aを制御し、抽出部19が抽出した検出データに基づく投影データをコンソール部40に送信させた後、記憶部20に記憶された検出データに基づく投影データをコンソール部40に送信させる。
【0094】
<実施形態に共通の効果>
以上述べた少なくともひとつの実施形態のX線CT装置によれば、抽出部が検出データ(投影データ)の一部を抽出し、当該抽出されたデータのみをコンソール部に送信することができる。従って、再度の撮影が必要かどうかを判断するための情報(CT画像)を迅速に提供することができる。また、一部の検出データ(投影データ)のみを先に送信し、その後、残りのデータを送信することで1回に送信するデータ量を減らすことができる。よって、X線CT装置を高速化、大容量化する必要がないことから装置自体を安価に製造することができる。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0096】
1 X線CTシステム
10 架台装置
11 X線発生部
12 X線検出部
13 回転体
14 高電圧発生部
15 架台駆動部
16 X線絞り部
17 絞り駆動部
18 データ収集部
19 抽出部
20 記憶部
21 送信制御部
30 寝台装置
32 寝台駆動部
33 寝台天板
34 基台
40 コンソール部
41 スキャン制御部
42 制御部
43 処理部
43a 前処理部
43b 再構成処理部
44 記憶部
45 表示部
46 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体をX線でスキャンし、その検出データを収集するデータ収集部を含む架台部と、コンソール部とを含むX線CT装置において、
前記架台部に設けられ、前記検出データのうちの一部を抽出する抽出部と、
前記架台部に設けられ、抽出されなかった前記検出データを記憶する記憶部と、
前記架台部又は前記コンソール部に設けられ、前記抽出部で抽出された検出データを前記コンソール部に送信させた後、前記抽出された検出データ以外の検出データを前記記憶部から読み出し、前記コンソール部に送信させる制御を行う送信制御部と、
を有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記コンソール部は、
前記検出データに対して所定の処理を行い、投影データを作成する前処理部と、
前記抽出部で抽出された検出データに基づく投影データのみ、或いは前記抽出部で抽出された検出データに基づく投影データと前記記憶部に記憶された検出データに基づく投影データとを再構成して得られる画像データを生成する処理を行う再構成処理部と、
を有し、
前記送信制御部は、前記抽出部で抽出された検出データを前記前処理部に送信させた後、前記抽出された検出データ以外の検出データを前記記憶部から読み出し、前記前処理部に送信させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記送信制御部は、前記抽出部で抽出された検出データが前記前処理部に送信された直後に、前記抽出された検出データ以外の検出データを前記記憶部から前記前処理部に送信させるよう、前記抽出部及び前記記憶部の制御を行うことを特徴とする請求項2記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記抽出部により抽出される検出データは、前記X線のスキャンにより得られた複数の検出データからその一部を間引いたデータであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項5】
被検体をX線でスキャンし、その検出データを収集するデータ収集部を含む架台部と、コンソール部とを含むX線CT装置において、
前記架台部に設けられ、前記検出データに対して所定の処理を行い、投影データを作成する前処理部と、
前記架台部に設けられ、前記投影データのうちの一部を抽出する抽出部と、
前記架台部に設けられ、抽出されなかった前記投影データを記憶する記憶部と、
前記架台部又は前記コンソール部に設けられ、前記抽出部で抽出された投影データを前記コンソール部に送信させた後、前記抽出された投影データ以外の投影データを前記記憶部から読み出し、前記コンソール部に送信させる制御を行う送信制御部と、
を有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項6】
前記コンソール部は、
前記抽出部で抽出された投影データのみ、或いは前記抽出部で抽出された投影データと前記記憶部に記憶された投影データとを再構成して得られる画像データを生成する処理を行う再構成処理部を有し、
前記送信制御部は、前記抽出部で抽出された投影データを前記再構成処理部に送信させた後、前記抽出された投影データ以外の投影データを前記記憶部から読み出し、前記再構成処理部に送信させる制御を行うことを特徴とする請求項5記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記送信制御部は、前記抽出部で抽出された投影データが前記再構成処理部に送信された直後に、前記抽出された投影データ以外の投影データを前記記憶部から前記再構成処理部に送信させるよう、前記抽出部及び前記記憶部の制御を行うことを特徴とする請求項6記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記抽出部により抽出される投影データは、前記X線のスキャンにより得られた複数の検出データに基づく投影データからその一部を間引いたデータであることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記再構成処理部で再構成して得られる画像データに基づく再構成画像が表示される表示部を有することを特徴とする請求項2から4、6から8のいずれかに記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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