説明

Y分岐光導波路

【課題】 放射モードの光量を低減する。
【解決手段】 それぞれがシングルモード光導波路を構成する第1の導波路11と第2及び第3の導波路12,13とを結合するY分岐光導波路において、一端が幅狭とされて第1の導波路11と同一幅とされ、他端が幅広とされたテーパ導波路31の上記一端が第1の導波路11に接続され、上記他端に互いに平行な2本の直線導波路32が接続され、それら直線導波路32に第2及び第3の導波路12,13が接続される。2本の直線導波路32は互いの導波光の電界が干渉しない間隔Dを有し、導波路11〜13のいずれよりも幅狭とされる。2本の直線導波路32間に放射された光はそれら直線導波路32に再結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はY分岐光導波路に関し、特に対称形シングルモードのY分岐光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のY分岐光導波路の従来構成を図2を参照して説明する。
Y分岐光導波路はそれぞれシングルモード光導波路を構成する3本の導波路がY字型に結合されたものであって、第1の導波路11と分岐側をなす第2及び第3の導波路12,13とはテーパ導波路14を介して接続されている。
テーパ導波路14は一端が幅狭とされて第1の導波路11と同一幅とされており、この一端が第1の導波路11に接続され、幅広とされた他端に第2及び第3の導波路12,13が接続されている。テーパ導波路14の幅広とされた他端の幅は第2及び第3の導波路12,13の幅の和とほぼ等しくされている。
【0003】
このようなY分岐光導波路は例えば半導体基板等の基板15上に形成され、Y分岐パターンの形成にはフォトリソグラフィやエッチング等の技術が使用される。
分岐側の2本の導波路12,13間に構成されるくさび状の形状をなす分岐部16は性能上、その先端形状をできるだけシャープにすることが要求され、図2中、実線で示した分岐部16の先端形状はその理想的な形状を示したものであるが、実際にはフォトリソグラフィやエッチング等の工程でなまりが生じてこのようなシャープな形状は得られず、分岐部16の先端は図2中、点線で示したような曲線状のなまった形状になることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−211244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、分岐部16の先端には製作過程においてなまり(曲線状の形状)が生じてしまうことから、分岐側の2本の導波路12,13の接続部にはこのなまりによって図2中に示したように間隔Aが生じ、よって例えば第1の導波路11を伝播し、テーパ導波路14を通ってこの接続部にきた光は2本の導波路12,13にそれぞれ入っていくだけでなく、一部はこの間隔部(間隔Aの部分)17から導波路外に放射されることになる。
このような放射光の存在は伝播損失となり、またY分岐光導波路を用いて構成されるデバイスにおいて、その特性劣化の原因となる。
【0005】
図3はY分岐光導波路を用いて構成されるデバイスの一例として、マッハツェンダ(MZ)干渉計型のデバイスの構成を模式的に示したものであり、この例では分波用及び合波用の2つのY分岐光導波路21,22を備え、それらY分岐光導波路21,22によって分岐されている2本の直線導波路23,24に機能部分23a,24aが形成されたものとなっている。
このような構成とされたデバイスにおいて例えば矢印25で示したように光が入射され、Y分岐光導波路21において上述したように間隔部17の存在によって光が放射されると、2本の直線導波路23,24間に放射された光の一部はそのまま他方のY分岐光導波路22の合波部分に届いてしまい、よって例えば機能部分23a,24aで光が位相変調されるものとすると、その位相変調された光と干渉を起こし、合波後の光量変動を招くことになり、特性劣化の原因となる。
【0006】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、放射光を再結合することにより、放射モードの光量を大幅に低減することができるようにしたY分岐光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によれば、それぞれがシングルモード光導波路を構成する第1の導波路と第2及び第3の導波路とを結合するY分岐光導波路において、一端が幅狭とされて第1の導波路と同一幅とされ、他端が幅広とされたテーパ導波路の上記一端が第1の導波路に接続され、上記他端に互いに平行な2本の直線導波路の各一端が接続され、それら直線導波路の他端に第2及び第3の導波路がそれぞれ接続されており、上記2本の直線導波路は互いの導波光の電界が干渉しない間隔を有し、かつ第1、第2及び第3の導波路のいずれよりも幅狭とされているものとされる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、テーパ導波路の幅広端部に接続して設けた2本の互いに平行な直線導波路によって放射光が再結合されるものとなっており、よって放射モードの光量を大幅に低減することができ、その点で優れた性能を有するY分岐光導波路を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
図1はこの発明によるY分岐光導波路の一実施例を示したものであり、この例ではY分岐光導波路はそれぞれがシングルモード光導波路を構成する第1の導波路11と分岐側をなす第2及び第3の導波路12,13との間に、テーパ導波路31と互いに近接して平行に配置した2本の直線導波路32とが介在されているものとされる。
【0010】
テーパ導波路31は一端が幅狭とされて第1の導波路11と同一幅とされており、この一端が第1の導波路11に接続されている。テーパ導波路31の幅広とされた他端には互いに平行な2本の直線導波路32の各一端が図1に示したように接続されており、これら直線導波路32の他端に第2及び第3の導波路12,13がそれぞれ接続されている。第2及び第3の導波路12,13は互いの間隔が広がっていくように対称に配置されている。
【0011】
第1、第2及び第3の導波路11〜13の幅はこの例では共に等しくW0とされており、これに対し、2本の直線導波路32の幅W2は、
W2<W0
とされている。また、2本の直線導波路32の間隔Dはそれら直線導波路32を導波させる光の導波路媒質(導波路コア)中での波長よりやや大とされている。なお、テーパ導波路31の幅広とされた他端の幅W1は、
W1=2×W2+D
と表わされ、テーパ導波路31はその幅がW0からW1に滑らかに変化されているものとされる。
【0012】
上記のような構成とされたY分岐光導波路によれば、テーパ導波路31に接続して設けた2本の直線導波路32の幅W2が導波路11〜13の幅W0より狭くされているため、これら直線導波路32において導波路コア部分からの導波光の電界分布の染み出しが大きくなっている。一方、2本の直線導波路32の間隔Dは上述したように導波光の導波路コア内での波長より大きくされているため、互いの導波光の電界は干渉しないが、2本の直線導波路32間に放射された光には影響を与えることができるものとなっており、つまり放射光を再結合することができるものとなっている。
【0013】
従って、この例では2本の直線導波路32の間隔Dに対応してテーパ導波路31の幅広端部に間隔部33が存在しているものの、この間隔部33から放射された光は2本の直線導波路32に再結合されるものとなっており、よって2本の直線導波路32が分岐側の2本の導波路12,13に接続される部分での放射モードの光量を大幅に減らすことができるものとなっている。
なお、間隔部33から放射された光は伝送モードを構成することなく、2本の直線導波路32間の間隙のクラッド層内を広がりながら伝播していくので、2本の直線導波路32を適宜の長さ伸長することで、放射光の再結合の最大化を図ることができる。
【0014】
2本の直線導波路32の間隔Dを大きくしていくと、製作上のばらつきの影響を小さくすることができる反面、放射光へ与える影響が減少していく。間隔Dはデバイス構成や要求される性能等に応じて適宜決定される。
上述したように、この発明によるY分岐光導波路によれば、分岐側の2本の導波路12,13間に伝播していく放射モードの光量を低減することができるため、このようなY分岐光導波路を用いて構成されるデバイスにおいて、放射モードの影響による特性劣化を防止することができ、その点でデバイスの高性能化を図ることができる。なお、この発明によるY分岐光導波路においても、一般的なY分岐光導波路に求められる分岐比50%は維持される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明によるY分岐光導波路の一実施例を説明するための図。
【図2】Y分岐光導波路の従来構成を説明するための図。
【図3】Y分岐光導波路を用いて構成されるデバイスの一例を模式的に示した図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがシングルモード光導波路を構成する第1の導波路と第2及び第3の導波路とを結合するY分岐光導波路において、
一端が幅狭とされて上記第1の導波路と同一幅とされ、他端が幅広とされたテーパ導波路の上記一端が上記第1の導波路に接続され、
上記他端に互いに平行な2本の直線導波路の各一端が接続され、
それら直線導波路の他端に上記第2及び第3の導波路がそれぞれ接続されており、
上記2本の直線導波路は互いの導波光の電界が干渉しない間隔を有し、かつ上記第1、第2及び第3の導波路のいずれよりも幅狭とされていることを特徴とするY分岐光導波路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−215102(P2006−215102A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25313(P2005−25313)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】