説明

Y型ポリエチレングリコール修飾したG−CSFならびにその製造方法および使用

本発明はY型分岐のポリエチレングリコールで特定のリジン部位(K17)にシングルポイント修飾したG−CSFとその製造方法、ならびにこのポリエチレングリコール化G−CSFの製薬分野における応用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はY型ポリエチレングリコール修飾したG−CSF(YPEG−G−CSF)およびその製造方法、ならびにYPEG−G−CSFを含む医薬組成物および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte Colony Stimulating fFactor、G−CSF)は骨髄細胞コロニーの形成を刺激するコロニー刺激因子の一つであり、特異的に顆粒球系の増殖、分化、生存と活性化を刺激し調節し、各原因による顆粒球減少症に潜在的で巨大な応用価値を持っている。
【0003】
ヒトG−CSF遺伝子は17番染色体のq21〜22にあり、全長が2.5kbで、5つのエクソンおよび4つのイントロンからなって、成熟タンパクに174のアミノ酸を含んでいる。大腸菌で発現されたG−CSF分子のN末端にまた一つのMetがあり、全部で175のアミノ酸であり、図1(配列番号1)に示す。当分子は合わせて5つのCysを含み、その中のCys37−Cys43およびCys37−Cys43が2対のジスルフィド結合になり、分子内には4つのLys残基を含み、17番目、24番目、35番目および41番目にある。
【0004】
化学療法による好中球減少症、特に発熱性好中球減少症(febrile neutropenia、FN)は化学療法を受けるがん患者に、とりわけ一番目の化学治療周期において最も普通で、通常に最も重い副作用である。FNの結果、しばしば患者が入院検査または抗生物質治療を受けなければならない。余分の支出を負担するだけでなく、相当に高い死亡率を有する。もう一つの厳しい結果は好中球の減少によって、多くのがん患者の治療計画が変わらなければならない。例えば化学療法の薬物の服用量を降下し、次の化学療法周期を延期するなどであるが、これらのことは直接に最終の化学治療効果に関わっている。1991年rHug−CSF薬物の発売がFDAに承認された以来、もう数百万人の化学療法を採用するがん患者はその利益を受けた。今その年間売上げは世界生物製剤のトップテンに入り、非常に将来性がある。
【0005】
だが、組み換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(rhG−CSF)は体内循環半減期が短く(t1/2が僅か1.3〜4.2h)、効果持続時間が短く、酵素に加水分解されやすく、腎臓に排出されやすく、何度も注射が必要などの問題で、患者に対して不便だけでなく、繰り返して注射すると副作用が起こる恐れがあり、効果も限られる。
【0006】
近年発展してきたポリエチレングリコール(Polyethylene Glycol,PEG)修飾技術は上述の問題の克服に可能な選択を提供する。
【0007】
ポリエチレングリコール(Polyethylene Glycol,PEG)は無毒な水溶性の中性ポリマーであり、良好な生体適合性および血液適合性を有し、人体局部、胃腸および静脈投与に応用されることがアメリカ食品医薬品局(FDA)に承認された。タンパク質のPEG修飾技術とは、PEG両端の一つあるいは二つの末端基が活性化され、所定の官能基を備え、この官能基は少なくとも結合させたいタンパク質に対して活性を持ち、共有結合によってPEGをタンパク質の末端(N末端あるいはC末端)あるいは特定のアミノ酸に結び付けることを指している。PEGの作用部位は普遍性を持っている。
【0008】
PEGはエチレングリコールとエチレンオキシドのポリマーであり、カーボンワックスとも言われ、構造式を以下に示す。
【化1】



【0009】
普通のPEGは分子量の増加にしたがって、その外観が無色の粘性液体(190〜630ダルトン)から、白い膏状体(950〜1050ダルトン)、白いワックス状あるいは片状の固体(>1200ダルトン)まで変わる。タンパク質およびほかの薬物の修飾に用いられるPEGの分子量が通常巨大である(表1)。例えば、米国Roche社に発売されたPegasys(ポリエチレングリコールインターフェロンα2a注射剤、ペガシス)に採用されたU型分岐二本鎖PEGの分子量は40KDで、米国Schering−Plough社に発売されたPeg−Intron(ポリエチレングリコールインターフェロンα2b注射剤、ペグイントロン)に採用された直鎖線性PEGの分子量は12KDで、米国Amgenに発売されたNeulasta(商標登録;ポリエチレングリコール顆粒球コロニー刺激因子)に採用された直鎖線性PEGの分子量は20KDである。薬物中のPEG部分(あるいはPEG)の体内代謝プロセスはもう相当に明らかで、素晴らしく、安全的、副作用のない薬物改質剤として見られる。
【0010】
【表1】



【0011】
タンパク質薬物は、PEG化によりその性質が大幅に改善される。具体的には、薬物代謝半減期が延長し(表1)、免疫原性が低下し、安全性が向上し、薬効が増加し、投与頻度が少なくなり、薬物の溶解性と水溶性が改善され、タンパク酵素分解耐性が強くなり、薬の放出制御が容易になるなどである。米国特許第4179337号によると、PEGが酵素あるいはインシュリンと連結すると、タンパク質の免疫原性が低下し、同時にタンパク質原来の活性もある程度保留された。PEG化による独特な効果は、タンパク質の体外活性が降下するが、体内活性が増加することである。米国特許第4179337号によると、PEGが酵素あるいはインシュリンと連結すると、タンパク質の免疫原性が低下する同時にタンパク質の活性も明らかに降下するが、タンパク質原来の活性がある程度残された。
【0012】
薬物修飾に用いられるPEGは線型構造および分岐鎖状構造が二種ある。例えば、米国Roche社に発売されたPegasys(登録商標;ポリエチレングリコールインターフェロンα2a注射剤、ペガシス)に採用されたのはU型分岐の二本鎖PEG誘導体で、PEGの平均分子量は26KD〜66KDの間であり、(米国特許5382657、1992年8月26日出願、Hoffmann−La Roche Inc.)、分子式を以下に示す。
【化2】



ここで、RおよびR’は独立して関係のない低分子量アルキル基で、nおよびn’は600から1500までである。
【0013】
2002年にFDAに承認され、Amgen社に発売されたNeulasta(登録商標;ポリエチレングリコール顆粒球コロニー刺激因子)に採用されたのは直鎖線性PEG分子で、分子量は20kDである(米国特許5824784、1994年10月12日出願、Amgen Inc.)。修飾反応式を以下に示す。
【化3】




【0014】
Amgen社のNeulasta(登録商標)製品は、末端にアルデヒド基の着いたPEG修飾剤がタンパク質のN末端アミノ基を修飾し、シングルポイント修飾したPEG−G−CSFである。その特徴はPEGとG−CSFがC−N結合で連結している。
【0015】
配置の異なるPEGでタンパク質を修飾し、産物の性状は明らかに区別している。文献で報告されたように(Monfardini C,Schiavon O,Caliceti P,et al.Bioconjugate Chem,1995,6(1):62〜69)、支鎖PEG修飾したタンパク質はpH耐性、熱安定性および抗タンパク酵素分解能力においてすべて直鎖PEGより明らかに優れている。
【0016】
一種の新規Y型分岐二本鎖PEG誘導体が中国特許ZL03801105.0に報告された。その基本の分子構造式を以下に示す。
【化4】



ここで、PaおよびPbは同一または異なる親水性ポリマーである。ポリエチレングリコール、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンモルホリンあるいはそれらの共重合体で、特別に好ましくはポリエチレングリコールおよびその共重合体であり、
jは1〜12の整数であり、
Riは水素、置換あるいは無置換のC1〜12アルキル基、置換アラルキル基、アリール基またはヘテロアルキル基であり、
およびXは独立して連結基であり、X1は(CH)nであり、Xは(CH)n、(CH)nOCO、(CH)nNHCO、(CH)nCOからなる群から選ばれる基であり、nは1〜10の整数であり、
Fはヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アシルクロライド、ヒドラジド、マレイミド、ピリジンジスルフィドからなる群から選ばれる末端基であり、治療薬あるいはタンパクにあるアミノ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基と反応して共有結合を形成してもよい。
【0017】
PaおよびPbは好ましくはポリエチレングリコールおよびその共重合体であるとき、その基本の分子構造式を以下に示す。
【化5】



【0018】
このY型PEGの特許、タンパクに対する修飾はタンパクの遊離アミノ基において行い、非固定ポイントのタンパク修飾に属する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
既知の技術に、N−ヒドロキシコハク酸イミド活性化法によってY型分岐のNHS−PEGを合成し、修飾に用いられる。NHS−PEGの特徴は、rhG−CSFのリジンの遊離アミノ基あるいは末端遊離アミノ基とアミド結合になり、アミド結合が体内で緩やかに加水分解され、rhG−CSFの活性を回復させることである。しかし、今採用されたY型分岐のNHS−PEGは普遍的に高い活性を持ち、選択性の悪い問題があり、修飾部位に指向できなく、シングルポイント修飾の修飾物を得難い。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は新規のシングルポイント修飾したY型ポリエチレングリコール化顆粒球コロニー刺激因子(YPEG−G−CSF)に基づく。具体的に、本発明はYPEG化G−CSFおよびその製造方法、ならびにYPEG−G−CSFを含む医薬組成物および使用に関する。ここで、本発明のYPEG−G−CSFは17番目のリジン(K17)にシングルポイント修飾したものである。前記K17シングルポイント修飾したYPEG−G−CSFを利用して、優れた動物体内治療効果を得た。このほかに、前記K17シングルポイント修飾したYPEG−G−CSFは血清薬物代謝半減期などにおいて明らかに改善されている。
【0021】
一方、本発明に関連するY型PEG誘導体(YPEGとも書かれる)修飾したG−CSF(YPEG−G−CSFあるいはPEG−G−CSFとも書かれる)、その分子構造を以下に示す。
【化6】



ここで、
PaおよびPbは同一または異なるポリエチレングリコールであり、
jは1〜12の整数であり、
Riは水素、置換あるいは無置換のC1〜12アルキル基、置換アラルキル基、アリール基またはヘテロアルキル基であり、
およびXは独立して連結基であり、Xは(CH)nであり、Xは(CH)n、(CH)nOCO、(CH)nNHCO、(CH)nCOからなる群から選ばれる基であり、nは1〜10の整数であり、
Fはヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アシルクロライド、ヒドラジド、マレイミド、ピリジンジスルフィドからなる群から選ばれる末端基であり、G−CSFにあるアミノ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基と反応して共有結合を形成してもよい。
【0022】
一つの態様において、本発明のY型ポリエチレングリコール化G−CSFは以下の構造式を持つ。
【化7】



ここで、RおよびR’は、独立して低分子量のアルキル基、好ましくはメチル基であり、jは1〜12の整数であり、mおよびm’は重合度を表し、任意の整数であり、好ましくはm=m’、かつ、m+m’は好ましくは600から1500までである。この構造式中、Y型分岐PEGはアミド結合によってシングルポイントでG−CSF分子に連結する。
【0023】
好ましい態様において、前記Y型ポリエチレングリコール化G−CSFの中に、G−CSFは配列番号1の17番目に対応するリジンの側鎖εアミノ基によってY型PEGの末端基カルボキシル基とアミド結合で連結する。
【0024】
任意に、本発明のG−CSFは天然物から抽出、あるいは組み換えバイオテクノロジーによって得られたG−CSFである。好ましくは、前記G−CSFは天然物から抽出、あるいは組み換えバイオテクノロジーによって得られた、配列番号1の配列を有するヒトG−CSF(hG−CSF)である。さらに好ましくは、前記ヒトG−CSFは組み換えヒトG−CSF(rhG−CSF)である。rhG−CSFは人工的に合成されたものであってよく、原核生物発現系、例えば大腸菌(E.coli)で発現されたものであってもよく、真核酵母発現系、例えばピチア(Pichia pastoris)で発現されたものであってもよく、ほかの昆虫細胞系あるいは哺乳類細胞系、例えばCHOで発現されたものであってもよい。天然あるいは組み換えG−CSFを製造する方法およびG−CSFとそのYPEG修飾物の活性検査方法は当該技術分野において既存の技術である。
【0025】
もう一方、本発明がYPEGでG−CSFを修飾する方法に関する。一つの態様において、式IIIに示すYPEGを利用して、活性化した誘導体例えば、ポリエチレングリコールスクシンイミジルエステル(YPEG‐NHS)を通じて、求核置換反応によって、PEG部分を共有結合でG−CSFの17番目のリジン残基のε‐アミノ基と連結する。
【化8】



ここで、YPEG−NHSはEP1496076によって造られる。
【0026】
G−CSFとYPEGとを反応させ、YPEG−G−CSFを生成する反応式を以下に示す。
【化9】



【0027】
反応条件は穏やかであり、pH範囲は6.0〜10にあり、好ましくは8.0で、温度は0〜25℃であり、撹拌あるいはほかの混合手段が必要である。得たYPEG−G−CSFに対して分子量分析を行い、分子量フィンガープリントグラフおよび膵酵素ペプチドマッピングならびにタンパク質のN末端序列測定などの技術によってPEG化の修飾部位を確認する。本発明者によると、本発明のG−CSFに対するPEG修飾はG−CSFの17番目のリジンにおいて行い、この修飾産物をYPEG−G−CSF(17)と記録する。
【0028】
前記YPEG−G−CSF(17)に対する分離と精製はイオン交換などの方法で行われる。本発明の好ましい態様における、造ったYPEG−G−CSFを陽イオン交換カラムを通して、四つ目の活性ピークを収め、さらにSephacryl S−400HRカラムで精製し、純粋なYPEG−G−CSF(17)を得る。
【0029】
他の態様において、本発明は、治療にG−CSFを必要とする疾患を治療するために、本発明のY型ポリエチレングリコール化G−CSF、あるいは本発明のY型ポリエチレングリコール化G−CSFを含む組成物の使用を提供する。前記本発明のポリエチレングリコール化G−CSF、あるいはポリエチレングリコール化G−CSFを含む組成物は、G−CSFの臨床応用と同じように、いずれも顆粒球減少に関わる疾患、例えば重度感染、白血病などの治療に適用する。幹細胞移植および悪性固形腫瘍の化学放射線療法による顆粒球減少症(童英ら、“G−CSF、GM−CSFの臨床応用の現状”,基礎医学と臨床 2000 Vol.20 No.2 p.101〜104)。動物体内実験の結果によると、G−CSFに比べて、本発明のYPEG−G−CSFを使って、期待以上の動物体内実験効果をあげた。すなわち、総投与量を減少したうえに、同じあるいは向上した効果を得、具体的に実施例の部分を参照されたい。このほかに、本発明のYPEG−G−CSFは血清薬物代謝半減期などの方面において明らかに改善されている。本発明のYPEG−G−CSFは組成物の形式で患者に投与できる。前記組成物は、薬学的に有効投与量のYPEG−G−CSFおよび薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む。好ましくは、前記組成物はマンニトール、アミノ酸、酢酸および酢酸ナトリウムを含み、アミノ酸は好ましくはアスパラギン酸、アスパラギンおよびグリシンである。前記組成物は適当な製剤に作られ、経験に富む医師によっていずれの許容的な方式で投与される。本発明は顆粒球減少症を治療する方法を提供し、本発明のYPEG−G−CSFを含有する組成物を投与することも含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】G−CSFのアミノ酸配列(配列番号1)を示す図である。そのMWが18801.79、PIが5.62である。下線のアミノ酸は前記アミノ酸配列に対する理論的なYPEG修飾部位であり、すなわちN末端アミノ基およびLysの上の遊離アミノ基を含んで全部で5つの理論的な修飾部位である。
【図2】陽イオン交換カラムでYPEG−G−CSFを分離した活性ピークを示す図である。図に示す4つ目(4#)のピークは目的ピークのYPEG−G−CSF(17)である。
【図3】Sephacryl S−400HRカラムでYPEG−GCSFを精製したピークを示す図である。
【図4】MALDI−TOFでPEG−G−CSFの分子量を測った結果を示す図である。
【図5】Maldi−TofでG−CSFのペプチド断片に対するペプチドマスフィンガープリントの結果を示す図である。
【図6】Maldi−TofでPEG−G−CSFのペプチド断片に対するペプチドマスフィンガープリントの結果を示す図である。
【図7】逆相HPLCカラムC18でトリプシンによって切断したG−CSFを分離した結果を示す図である。
【図8】逆相HPLCカラムC18でトリプシンによって切断したPEG−G−CSFを分離した結果を示す図である。
【図9】N末端のアミノ酸配列決定結果を示す図である。
【図10】YPEG−G−CSFの生物学的比活性を測定した結果を示す図である。
【図11】YPEG−rHuG−CSFが60Coサル好中球の対数変化に対する影響のトレンド図である。
【図12】PEG−GCSFおよびG−CSFの薬物代謝動態学曲線の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は下記の非制限性の実施例を通じてさらに説明する。実施例からみると、既存の技術に比べて、本発明の利点は以下のとおりである。
【0032】
1.本発明のYPEG−G−CSFは反応によってYPEGをG−CSFに修飾させ、得た反応混合物から有効的な精製手段によってK17位のシングルポイント定位修飾生成物を獲得する。既知の技術におけるNHS−PEGの活性が高いため、選択性が悪く、修飾部位を指向的に選択することができなく、高純度のシングルポイント修飾生成物を得がたいなどの問題を解決し、大規模製造のとき品質コントロールを行い、ロット間の安定性も保証しやすくなる。
【0033】
2.本発明のYPEG−G−CSFは動物体内における循環半減期が修飾しないG−CSFに比べて顕著に延長する。
【0034】
3.本発明のYPEG−G−CSFは薬カ学の方面において非PEG化のG−CSFに比べて明らかに改善する。具体的に、既知の技術におけるG−CSFに比べて、同じ総量あるいはより低い総量のYPEG−G−CSFを投与すると、同じさらにより明らかな治療効果を実現する。
【0035】
任意の例あるいはこれらの組合せに、本発明の範囲あるいは態様を限定するものではないと当業者は理解すべきである。本発明の範囲は添付の請求の範囲に限定され、本明細書および当該技術分野の一般的な常識を組み合わせて、当業者は、請求の範囲により限定される範囲を明確に理解することができる。
【実施例】
【0036】
実施例1 YPEG化G−CSF(YPEG−CSF)の製造
400mgの9.58mg/ml G−CSF原液のバッファー系を50mMホウ酸ナトリウムバッファー溶液(pH8.0)に替え、2mM HClで40KDのNHS−YPEG(北京鍵凱科技有限公司(Jenkem Technology Co., Ltd.))3.2gを溶解し、タンパク:PEG=1:6(質量比)の比例で両者を混合した。4℃において3時間反応させ、生成物を10mM NaAc pH4.0で15倍希釈し、10mM NaAc/HAc pH4.0で平衡化した陽イオン交換カラム(GE社)に加え、10mM NaAc/HAc +NaCl 160mM pH4.0バッファー溶液で勾配溶出し、四つ目の活性ピークを収集した(図2)。10mMリン酸ナトリウムバッファー溶液(pH7.0)で平衡化したSephacryl S−400HRカラム(GE社)を使って大分子ポリマーを除去し、活性ピークを収集した(図3)。限外ろ過し10mM NaAc pH4.0バッファー系に替え、スキャンによって合計してサンプル73mgを収めた。
【0037】
実施例2 PEG化G−CSFの分子量分析
MALDI−TOFで実施例1に製造したPEG−G−CSFの分子量を測定した。ドイツBRUKER社のautoflex TOF/TOFマススペクトロメトリーを採用し、TOF/TOF MS法でYPEG−rHuG−CSFおよびrHuG−CSFの分子量を測った。シナピン酸(Sinapinic acid,SA,C11H12O5,MW 224.22)を基質として用い、分析ソフトはflexAnalysis Ver.3.0.54.0.であった。
【0038】
測定結果:YPEG−rHuG−CSFMSの分子量は約59kDで、理論分子量の58801.8ダルトンと大体一致した。測定スペクトルを図4に示す。
【0039】
YPEG−rHuG−CSFはrHuG−CSFのYPEG修飾生成物である。修飾剤(YPEG)は一連の分子量が正規分布を呈するYPEGからなっている混合物で、平均分子量は40kD±10%である。YPEGの分子量が正規分布を呈する特徴に基づいて、YPEG修飾生成物の分子量も正規分布を呈し(±10%)、すなわちYPEG−rHuG−CSFの分子量は58802.0ダルトン±10%であるはずである。
【0040】
実施例3 PEG化の修飾部位の確認
実施例1で製造したPEG−G−CSFのPEG化修飾部位を分析した。
G−CSFおよびPEG−G−CSFのバッファー溶液を50mM (NH)HCO、pH8.0に替え、1:20の比例でエンドプロテアーゼ(Endoproteinase)Glu−Cを加え、G−CSFおよびYPEG−G−CSFを酵素切断し、得られたペプチド断片に対してMaldi−Tof法で分子量ペプチド断片フィンガープリントを描き、結果はそれぞれ図5および図6に示す。
【0041】
上記の結果から、G−CSF/Glu−cを切断することによって、YPEGの反応部位MおよびK17(MTPLGPASSLPQSFLLKCLE、分子量2132.6D)を含む1〜20番目のアミノ酸からなるペプチド断片、YPEGの反応部位K24(QVRKIQGDGAALQE、分子量1512.7D)を含む21〜34番目のアミノ酸からなるペプチド断片、および、YPEGの反応部位K35およびK41(KLCATYKLCHPEE、分子量1534.7D)を含む35〜47番目のアミノ酸からなるペプチド断片が得られることが分かった。しかし、YPEG−G−CSF/Glu−cを切断する場合、1〜20番目のアミノ酸からなるペプチド断片が得られず、21〜34番目のアミノ酸からなるペプチド断片(QVRKIQGDGAALQE)および35〜47番目のアミノ酸からなるペプチド(KLCATYKLCHPEE)が得られることから、修飾反応はK24、K35およびK41部位で行われておらず、N末端アミノ酸あるいは17番目のリジンで行うことが判明された。それによって、該ペプチド断片の分子量は非修飾のペプチドに比べて40kDのYPEGが多くなり、分子量の変化を引き起こした。
【0042】
上記の結論を実証するために、得たPEG−G−CSFの酵素切断ペプチドマッピングおよび非修飾したG−CSFの酵素切断ペプチドマッピングを比べた。シークエンスグレードのトリプシン(Promega、豚、seq.grade modified、>5000U/mg)をバッファー溶液に溶け、濃度を1μg/μlにした。G−CSF−PEGを限外ろ過し、バッファー溶液を50mM NH4HCO pH8.0に替え、PEG−G−CSFの濃度を1mg/mlにし、YPEG−G−CSFサンプル溶液を得た。トリプシンを1μl取り、50μlのYPEG−G−CSFサンプルを加え、37℃において24時間酵素切断をした。非修飾のG−CSFサンプルに対して同じように処理し、コントロールとして使われた。
【0043】
逆相HPLCカラムC18で酵素切断のG−CSFおよびPEG−G−CSFサンプルを別々に分離した。カラムの固定相がオクタデシルシリルシリカゲルであり、規格がΦ4.6mm×150mmで、粒径が5μmで、孔径が300Aである。移動相Aは0.1%TFA/HO(V/V)で、移動相Bは0.1%TFA/90%ACN(V/V)であった。流速が1.0ml/分である条件で濃度勾配溶出を行い、溶出勾配を表2に示す。得られた分離クロマトグラフを図7および図8に示す。
【0044】
【表2】



【0045】
ペプチドマッピングによると、PEG修飾したPEG−G−CSFのペプチドマッピングにおける52.479min(分)に非修飾したG−CSFよりピークは一つ多かったが、39.172minのピークがなくなった。この二つのペプチド断片を別々に収集し、収集したペプチド断片のN末端の5つアミノ酸配列をEdman分解法で測定した結果、すべて同じN末端MTPLGを有した。このペプチド断片はYPEGと連結することによって、保留時間が変化したことから、YPEG化の修飾部位は確かにタンパクのN末端ペプチド断片にあることが判明された。
【0046】
製造されたPEG−G−CSFのN末端配列を測定し、N末端15個のアミノ酸配列MTPLGPASSLPQSFLが測定された。ピーク形状について分析すると、1つ目のアミノ酸はMetであり、2つ目のアミノ酸Thrに比べてピーク面積が顕著に小さいことは認められなかった(図9)。N末端に遊離状態のアミノ基が存在し、まだ修飾されていないと判明された。すなわち、PEG修飾はN末端Mではなく、K17の上で行われた。実施例1に製造されたPEG−G−CSFはK17のシングルポイント修飾であることが明らかになった。
【0047】
実施例4 PEG−G−CSFの生物学的活性の測定
1 試薬の調整と細胞培養
1.1 1640培養液:RPMI1640液体培地、4℃に保存した。あるいは培地説明書の調整方法によって調整した。使う前に毎リットルの培地にペニシリンおよびストレプトマイシンを105IU/Lまで追加した。
1.2 基本培養液:1640液に2.5%のウシ胎児血清(FBS,v/v)および12.5%の馬血清(ES,v/v)を添加し、4℃に保存した。
1.3 完全培養液:基本培養液に最終濃度が20ng(2000U)/mlに達するまでにrhG−CSFを添加し、4℃に保存した。
1.4 NFS−60細胞株:完全培養液で37℃,5%COの条件で培養し、48〜72時間において継代し、細胞濃度を2.0×10〜10.0×10/mlの間にコントロールし、前回継代の後24〜36時間にrhG−CSF効力測定に用いられた。
1.5 リン酸塩バッファー溶液(Hyclone):塩化ナトリウム8g、塩化カリウム0.2g、リン酸水素ジナトリウム1.44g、リン酸ジ水素カリウム0.24gを取り、超純水で1000mlの溶液を調節し、121℃において15分間高圧滅菌をした。
1.6 チアゾリルブルーMTT溶液:MTT粉剤(Sigma)をリン酸塩バッファー溶液に溶け、5.0mg/mlの溶液を調節し、0.22μmメンブランフィルターでろ過除菌を行い、4℃で日陰のところに保存した。
1.7 溶解液
溶解液1:1%の濃塩酸、5%のTritonX−100を含むイソプロピル溶液であり、室温で日陰のところに保存した。
溶解液2:2.8%の濃塩酸、10%のTritonX−100を含むイソプロピル溶液であり、室温で日陰のところに保存した。
【0048】
2.PEG−G−CSF生物活性の測定
2.1 細胞懸濁液の調製
充分のNFS−60細胞培養物を取り、遠心しNFS−60細胞を収集し、リン酸塩バッファー溶液で3回洗い、再び基本培養液の中に懸濁した。細胞濃度は約2.0×10/mlに調節し、37℃で放置した。
2.2 G−CSF標準物質(標準物質または中検所より提供されたrhG−CSF国家標準物質;国際標準物質が参照として照合に使われ得る)および検査用サンプルは、タンパクの含有量を基準に基本培養液で2ng/mlになるように希釈し、いずれのステップの希釈も10倍を超えるべきでない。
2.3 96ウェル細胞培養プレートに前もって基本培養液を50μl/ウェル加えた。2.2項の溶液を続けて2倍の勾配で希釈し、対照品および検査用サンプルについて8つの希釈度(1ng/ml、0.5ng/ml、0.25ng/ml……)を有する希釈液を作り、50μl/ウェルであった。別に陰性対照(rhG−CSFを含まない)ならびに陽性対照(2ng/mlのrhG−CSFを含む)を調製し、それぞれ少なくとも3ウェルずつであった。
2.4 細胞懸濁液を50μl/ウェルで加え、37℃において、5%COで40〜48時間培養した。陰性細胞がほぼ破砕した(95%)後、MTT溶液を20μl/ウェルで加え、37℃において、5%COで4〜6時間培養した。
2.5 溶解液1を180μl/ウェルあるいは溶解液2を100μl/ウェル加え、均一に混合してから酵素標識メーターで比色し、検出波長を570nm、参照波長を630nmに設定した
【0049】
3.結果
OD570nm〜630nmをY軸にし、プレートの希釈勾配の対数をX軸にし、標準物質および検査用サンプルの用量効果関係図を描いた。実験データは4つのパラメータ曲線回帰計算法で処理した。標準物質の最高勾配OD570nm〜630nm値ならび最低勾配OD570nm〜630nm値の平均値を半有効OD570nm〜630nm値にした。各サンプルの曲線に半有効OD570nm〜630nm値に当たる希釈勾配対数はこのサンプルのC値である。以下の式によって結果を計算した。
検査用サンプルの力価(IU/本)=標準物質の力価×C1/C2×D1/D2×V
ここで、C1が標準物質の半有効量に相当する検査用サンプルの希釈倍数を、C2が標準物質の半有効希釈倍数を、D1が検査用サンプルの予備希釈倍数を、D2が標準物質の予備希釈倍数を、Vが包装量(ml)を、それぞれ表す。
検査の結果、実施例で製造したYPEG−G−CSFの生物学的比活性が2.96×10IU/mg(図10)。
【0050】
実施例5 Y型ポリエチレングリコール化顆粒球コロニー刺激因子(YPEG−G−CSF)の薬効学的測定
一. ポリエチレングリコール化顆粒球コロニー刺激因子(YPEG−G−CSF)が5−フルオロウラシル(5−FU)によるマウス顆粒球減少症に対する治療効果
1. 材料及び方法
サンプル:YPEG−G−CSF、規格:1ml/本、アンプルに包装された液体注射剤であり、2〜8℃において保存した。アモイ伯賽遺伝子転写技術有限公司より提供された。
陽性対照:グラン(G−CSF)、300μg/本、麒麟鯤鵬(中国)生物薬業有限公司(Kirin Kunpeng(China)Bio-Pharmaceutical Co., Ltd.)製品。保存:遮光、2〜8℃。
【0051】
実験動物:マウス、昆明種、SPF級、140匹、雄、舒泰神(北京)薬業有限公司(Staidson (Beijing) Pharmaceutical Co., Ltd)製品、実験動物生産承認番号SCXK−(京)−2006−0004。無作為に7群に振り分けた。それぞれ正常対照群、モデル対照群、低用量群1、低用量群2、中用量群、高用量群および陽性対照群であった。
【0052】
モデルの作り方:正常対照群のほかに、モデル対照群および各投与群はすべて150mg/kgの5−FUを投与し、翌日にサンプルあるいは対照品の治療を受けた。
【0053】
投与量と頻度:YPEG−rHuG−CSFの投与量が15、50、150、500μg/kg、4日間おきに1回投与し、全部で3回投与した。陽性対照品の投与量が50μg/kg、1〜11日目に投与した。投与量は以下の表3に示す。
【表3】



【0054】
投与方法:正常対照群、モデル対照群を除き、ほかの各群はモデルを作ってから24時間以降にサンプルおよび陽性対照品を投与し、投与頻度は表に示した通りである。皮下注射による投与であった。
【0055】
2.結果
5−FUの作用によって、マウスの好中球の数が減少し、3日間後ならびに9日間以内に多数の動物の全血好中球は極めて低く、機器で検出できなかった。そのため、本実験は、実験前、3日後ならびに9日後の好中球百分率をそれぞれ測り、好中球の絶対値(ANC)を計算した。結果を表4に示す。結果によると、5−FUの作用後、モデル対照群ならび15μg/kg群の動物は投与の3日にANCが顕著に降下し、同時の正常対照群に比べて、顕著な差異が認められた(p<0.05およびp<0.01)が、50−500μg/kg群および陽性対照群のANCは降下せず、正常動物のWBC値ならび正常対照群に比べて、差異が認められなかった。サンプルは50〜500μg/kgの投与量でANCの降下を緩和させられることがわかった。9日目の検査のとき、モデル対照群対照群はまた正常対照群より低く、150および500μg/kg群は正常対照群を超え、陽性対照群は正常対照群のレベルに達した。11日目におけるモデル対照群は正常対照群のレベルに達した。サンプルあるいは陽性対照品はいずれも動物の好中球をできるだけ早く正常レベルに回復できることが示唆された。
【0056】
【表4】

【0057】
【表5】



【0058】
3.結論
本発明者らは、YPEG−G−CSFは、明らかな持続効果のほかに、5−フルオロウラシルによるマウス好中球減少症に現れる外周血の好中球減少に対して、明らかに増強された保護促進効果を有することを発現した。YPEG−G−CSFはマウス好中球減少症モデルの好中球低下の持続時間を明らかに短縮させ、外周血の好中球の数を迅速に回復させた。さらに、グランの1日に1回の投与で、11回投与したこと(グラン50μg/kg×11)に比べて、YPEG−G−CSFは4日間1回の投与で、3回投与したこと(低用量YPEG−G−CSF 50μg/kg×3、中用量YPEG−G−CSF 150μg/kg×3)を考慮すれば、本発明のYPEG−G−CSF総投与量が明らかに減少したにもかかわらず、好中球の増加促進効果はグランと同程度またはより優れることが明らかである。
【0059】
二.Y型PEG化組み換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(YPEG−rHuG−CSF)が60Co 3.0Gy照射によるサル顆粒球減少症に対する治療効果
1.材料および方法
サンプル:YPEG−G−CSF、規格:1mg/本、アンプルに包装された液体注射剤であり、2〜8℃において保存した。アモイ伯賽遺伝子転写技術有限公司(Biosteed Gene Expression Tech. Co. Ltd.)より提供された。
陽性対照品:グラン(G−CSF)、300μg/本、麒麟鯤鵬(中国)生物薬業有限公司製品。保存:遮光、2〜8℃。
【0060】
実験動物:カニクイザル、一般グレード、雄雌、3〜4歳、体重2.5〜4.5kg、蘇州西山中科実験動物有限公司、実験動物生産承認番号:SCXK(蘇)2002−0032。モデル対照群は5匹の動物で、ほかの群はいずれも4匹の動物。
【0061】
モデルの作り方と投与方法:約30日の検疫と予備飼育後、動物が群分けられ、60Coで一回に3.0Gy全身照射され、照射量率が1.8Gy/分である。動物照射の当日から(5時間以内)薬物を投与し、後肢の内側で皮下注射した。表5に示す。
【表6】



【0062】
2.実験結果および分析
実験中、毎日動物の血液生化学検査を行い、好中球を計算した。その結果、YPEG−rHuG−CSF低、中、高用量群および陽性対照群のANC平均値は同期のモデル対照群より高く、多くの時刻における投与群はモデル対照群に比べて統計学の差異がすべて認められた(p<0.05あるいはp<0.01)。実験の結果を表6及び図11に示す。
【0063】
【表7】



【0064】
【表8】



【0065】
【表9】



【0066】
【表10】



【0067】
3.結論
Y型PEG化組み換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(YPEG−rHuG−CSF)が60Co 3.0Gy照射によるサル顆粒球減少症に対して治療効果を有する。
【0068】
YPEG−rHuG−CSFが持続効果を持ち、体内実験結果からみると、6日において本発明に製造したYPEG−G−CSF25μg/kgを5回注射するのは毎日グランを10μg/kg25回注射するのに比べて、前者は総合投与量が減少する同時に、好中球の増加に対する刺激効果は後者と相当する。
【0069】
実施例6.YPEG−G−CSFの動物体内薬物代謝動態学実験
1.実験方法と順序
1.1薬品および試薬
サンプル:YPEG−G−CSF、規格:1mg/本、アンプルに包装された液体注射剤であり、2〜8℃において保存した。アモイ伯賽遺伝子転写技術有限公司より提供された。
陽性対照品:グラン(G−CSF)、300μg/本、麒麟鯤鵬(中国)生物薬業有限公司製品。保存:遮光、2〜8℃。
1.2実験動物
カニクイザル6匹、雌3匹雄3匹。広西営林開発中心サル飼育基地製(合格証番号:SCXK(桂)2005−0005)、体重3.11〜5.62kg、ケージ別に飼育され、標準サル餌を与え、水を自由に与え、毎日新鮮な果物二回与えた。
1.3実験計画
実験は2群に分けて行われた。それぞれはYPEG−G−CSFを300μg/kg皮下注射する群と普通G−CSF(グラン300μg/kg)群であった。
【0070】
2.実験方法
2.1血液サンプルの採集
YPEG−rHuG−CSFを単回皮下注射した投与前、投与後0.25、0.5、1h、2h、4h、8h、24h、48h、96h、168h、240h、312h、384hおよび480hに投与した後肢の対側の後肢から静脈血を1mL採血した。グラン(G−CSF)群は投与前、投与後5分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間に静脈血を1mL採血した。血液サンプルを4℃において30分放置した後、3000回転で10分低温遠心分離してからすぐ分離した血清を−20℃において保存し分析に供する。
【0071】
2.2血清薬物濃度測定
免疫定量キット(ELISA法)でカニクイザル血清中のG−CSFあるいはYPEG−rHuG−CSFの薬物濃度を測った。Ray Biotech社のHuman G−CSF ELISAキットで血清中のG−CSFならびYPEG−rHuG−CSFの濃度を測るELISA方法を立てた。
【0072】
2.2.1測定原理の概要
このキットの分析に定量サンドイッチ技術を利用する。予め組み換えヒトG−CSF特異的なモノクローナル抗体をミクロウェルプレートにコーテイングした。標準品およびサンプルをウェルに吸い入れ、その中のG−CSFあるいはYPEG−G−CSFは固定化抗体と結合した。結合しない物質を洗い、ペルオキシダーゼ(HRP)を結びついたアンチヒトG−CSFのIgGをウェルに加え、結合しない抗体―酵素試薬を洗い、ウェルにHRPの基質溶液を加え呈した色は最初の結合したG−CSFあるいはYPEG−G−CSFの量と比例関係を持っている。反応を終止させ、色の強度を測定する。吸光度O.D.値が高ければ高いほど、サンプルの中のG−CSFあるいはYPEG−G−CSFの濃度が高い。
【0073】
2.2.2測定のステップ
測定操作は完全にキットの説明書に準じて行われた。ウェルに100μLの標準品あるいは血清サンプルを加え、プレートミキサーで軽く均一に混合し、未知サンプルの予期濃度によって、希釈液で標準校正曲線の濃度範囲に希釈した。各プレートに組み換えG−CSFあるいはYPEG−G−CSFの標準校正曲線を設定し、このプレートにある未知サンプルの濃度を計算した。室温で1hインキュベーションした。プレートを洗液で3回洗った。ウェルに100μLの二次抗体を加え、続けて室温で1h反応させ、ウェルに100TMB基質を加え、室温で15分遮光放置した。ウェルに100終止液を加え、軽く均一に混合し、反応を終止させた。5分以内にマイクロプレートリーダーで450nm波長の吸光度ODを測った。
【0074】
2.2.3結果の計算
Originソフトで濃度の対数ならび光吸収OD値の対数を標準曲線に描いた。未知サンプルの96ウェルプレートに設計された標準曲線を利用して、直線性回帰でサンプルの中の組み換えG−CSFあるいはYPEG−G−CSFの濃度を計算し、希釈倍数で校正してから薬物血中濃度を求めた。
【0075】
2.3実験の統計方法ならび薬物動態学のパラメータの計算
非コンパートメントモデルの統計学的モーメント法で各薬物動態学のパラメータを計算する。計算用のソフトが3P97であった。サル自身データの比較にはStudent’sペアt−検定法で統計し、異なるサルに対して、群別t−検定法で統計し、すべてMicrosoft Office Execl(バージョンXP)に提供された統計ソフトで計算した。実験結果の直線性回帰にはOriginソフトで回帰方程式および関連統計パラメータを求め、薬物動態学曲線の比較を図12に示す。
【0076】
カニクイザルにYPEG−rHuG−CSFを300g?kg−1単回皮下注射した後、血清中のYPEG−rHuG−CSF濃度は皮下注射後8〜24hにピークになり、Cmaxは4.53±0.86g?mL−1であった。末端半減期がそれぞれ77.55±0.34hで、MRTが95.03±14.51hであった。AUC(0〜480h)が534.75±155.28μg・h・mL−1で、AUC(0〜∞)が539.27±158.32μg・h・mL−1であった。平均除去率が0.60±0.20mL・kg−1・h−1で、基本的に線性薬物動態学の特徴を呈した。
【0077】
G−CSFを300μg.kg−1単回皮下注射した後、Cmaxが2.49±0.20μg・mL−1、AUC(0〜24h)が23.07±2.93μg・h・mL−1、末端半減期が4.00±1.44h、MRTが6.48±1.35h、VSSが72.53±18.86mL・kg−1であった。YPEG−rHuG−CSFのカニクイザルにおける薬物動態学の特徴に比べて差別は非常に明らかであった。G−CSFをY型PEG化した後、消失速率係数、除去率ならび見かけの分布容積はすべて明かに減少し、MRTおよび末端半減期は顕著に延長した(77.55±0.34h vs 4.00±1.44h)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の構造を有するY型ポリエチレングリコール化G−CSF。
【化1】



(ここで、RおよびR’は、独立して低分子量のアルキル基、好ましくはメチル基であり、
mおよびm’は重合度を表し、任意の整数であり、m+m’は好ましくは600から1500までであり、
は水素、置換あるいは無置換のC1〜12アルキル基、置換アラルキル基、アリール基またはヘテロアルキル基であり、
jは1〜12の整数であり、
Fはヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アシルクロライド、ヒドラジド、マレイミド、ピリジンジスルフィドからなる群から選ばれる末端基であり、G−CSFにあるアミノ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基と反応して共有結合を形成する。)
【請求項2】
Y型ポリエチレングリコールが末端のカルボキシル基によってG−CSFのアミノ基と結合する、一般式(II)の構造を有する、請求項1に記載のY型ポリエチレングリコール化G−CSF。
【化2】




(ここで、RおよびR’はすべてメチル基であり、jは1〜12の整数であり、m=m’かつm+m’は600から1500までである。)
【請求項3】
前記アミノ基がG−CSFにおいて配列番号1の17番目のリジンに対応する側鎖εアミノ基である、請求項2に記載のY型ポリエチレングリコール化G−CSF。
【請求項4】
前記ポリエチレングリコールの総平均分子量が約10000〜60000ダルトンであり、好ましくは40000±4000(10%)ダルトンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のY型ポリエチレングリコール化G−CSF。
【請求項5】
前記G−CSFは天然物から抽出、または組み換えバイオテクノロジーによって得られたG−CSFであり、好ましくは、配列番号1に示す配列を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のY型ポリエチレングリコール化G−CSF。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のY型ポリエチレングリコール化G−CSFまたは請求項6に記載の組成物の、G−CSF治療を必要とする疾患の治療薬の製造における使用であって、前記G−CSF治療を必要とする疾患は、例えば重度の感染、白血病、幹細胞移植および悪性固形腫瘍の化学放射線療法等による顆粒球減少症である、使用。
【請求項7】
請求項3に記載のY型ポリエチレングリコール化G−CSFを製造および精製する方法であって、
(a)一般式(III)の構造を有するY型分岐構造のPEGとG−CSFとの両者をタンパク:PEG=1:6(質量比)の比例で混合し、4℃において反応させYPEG化G−CSFを得るステップと、
【化3】

(ここで、RおよびR’はメチル基で、jは1〜12の整数で、mおよびm’は重合度を表し、任意の整数であり、m+m’好ましくは600から1500までである。)
(b)生成物を10mM NaAc pH4.0で希釈し、10mM NaAc/HAc pH4.0で平衡化した陽イオン交換カラムに加え、10mM NaAc/HAc+NaCl 160mM pH4.0バッファー溶液で勾配溶出し、四つ目の活性ピークを収集し、10mMリン酸ナトリウムバッファー溶液(pH7.0)で平衡化したSephacryl S−400HRカラム(GE社)を使って大分子ポリマーを除去し、活性ピークを収集しK17位に修飾したY型ポリエチレングリコール化G−CSFを得るステップと
を含む、方法。
【請求項8】
請求項3に記載のY型ポリエチレングリコール化G−CSFを投与することを含む、顆粒球減少症を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−507913(P2011−507913A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539988(P2010−539988)
【出願日】平成19年12月29日(2007.12.29)
【国際出願番号】PCT/CN2007/003897
【国際公開番号】WO2009/086656
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510179571)バイオスティード ジーン エクスプレッション テック. カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】