説明

iPS細胞を生成するための方法

多能性幹細胞の誘導の方法および組成物が開示されている。例えば特定の態様においてレポーター遺伝子を使用する誘導多能性幹細胞を生成するための方法が記載されている。さらに本発明は、レポーター遺伝子を使用する新規再プログラムベクターを提供する。一局面において、本発明は、多シストロン性発現カセットを含む再プログラムベクターを提供し、このカセットは、(a)転写制御エレメント、ならびに(b)前記転写制御エレメントに機能的に連結した第1および第2コード配列であって、前記第1コード配列が再プログラム因子をコードし、かつ前記第2コード配列が第2再プログラム因子またはレポーターをコードする、第1および第2コード配列を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2008年8月12日に出願された米国特許出願第61/088,054号(この全体の開示は、放棄することなくその全体が、参考として具体的に本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、一般に幹細胞の分野に関する。より詳細には、体細胞の再プログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
一般に幹細胞は、一連の成熟した機能細胞を生じうる未分化細胞である。例えば造血幹細胞は、最終分化した血液細胞の様々な型のいずれをも生じうる。胚性幹(ES)細胞は、胚由来であり、多能性であり、したがっていかなる器官もしくは組織型または少なくとも潜在的には完全な胚に発生する能力を有する。
【0004】
慣用でiPS細胞またはiPSCと略される誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)は、特定の遺伝子を挿入することによって非多能性細胞、典型的には成体体細胞から人工的に誘導された多能性幹細胞の1種である。誘導多能性幹細胞は、胚性幹細胞などの天然の多能性幹細胞と多くの点で、例えば特定の幹細胞遺伝子およびタンパク質の発現、クロマチンメチル化パターン、倍加時間、胚様体形成、奇形腫形成、生存キメラ形成、ならびに能力および分化能において同一であると考えられているが、天然の多能性幹細胞とのそれらの完全な関連性はいまだ評価が続いている。
【0005】
iPS細胞は、2006年にマウス細胞から(非特許文献1)、および2007年にヒト細胞から(非特許文献2;非特許文献3)初めて産生された。これは、論争を呼ぶ胚の使用を行わずに、研究において重要でありかつ治療的使用の可能性を有する多能性幹細胞を研究者が得られるようにする可能性があることから幹細胞研究における重要な進歩として挙げられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Takahashiら、Cell(2006)126(4):663〜676
【非特許文献2】Takahashiら、Cell(2007)126(4):663〜76
【非特許文献3】Yuら、Science(2007)318:1917〜1920
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしこれらの誘導多能性幹(iPS)細胞の研究のこの段階では、iPS細胞を生成する効率は低く、これが臨床研究におけるiPS細胞の応用性の障害となっている。したがって誘導多能性幹細胞の産生効率を増強するための方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、改善された効率で誘導多能性幹細胞を提供することにおける当技術分野での主な欠陥を克服する。第1の実施形態において誘導多能性幹(iPS)細胞集団を産生するための方法が提供され、この方法は:(a)(i)転写制御エレメント、(ii)転写制御エレメントに機能的に連結した第1ヌクレオチド配列(第1ヌクレオチド配列は再プログラム因子またはレポーターをコードする)、(iii)第1ヌクレオチド配列の3’に位置するIRES、および(iv)再プログラム因子またはレポーターをコードしており、IRESの翻訳調節下であるように前記IRESの3’に位置する第2ヌクレオチド配列を含む発現カセットであって、(1)第1核酸が再プログラム因子をコードする場合は、第2ヌクレオチド配列は他の再プログラム因子またはレポーターをコードし、(2)第1核酸がレポーターをコードする場合は、第2ヌクレオチド配列は再プログラム因子をコードする、発現カセットを各ベクターが含む1つまたは複数の再プログラムベクターを得るステップ;(b)再プログラムベクターを体細胞集団の細胞に導入するステップ;(c)集団を増大させるために細胞を培養するステップ;(d)前記増大させた集団の後代細胞を選択するステップ(前記後代は胚性幹細胞の1つまたは複数の特徴を有する);ならびに(e)選択された後代細胞を培養して、iPS細胞集団を提供するステップを含む。
【0009】
特定の態様において、第1ヌクレオチド配列は再プログラム因子をコードし、第2ヌクレオチド配列はレポーターをコードするまたはその逆であり、したがって以下に記載のとおりレポーター遺伝子の同時発現は、再プログラム細胞の選択を支援する。
【0010】
複数の再プログラム因子を同じ転写制御エレメントの下で共発現するために、発現カセットは第2IRESと、第2IRESの翻訳調節下になるように第2IRESの3’に位置する第3ヌクレオチド配列とを含みうる。特定の実施形態において第1および第2ヌクレオチド配列は、異なる再プログラム因子をコードできる。任意の上の状況において、レポーターは、トランスフェクションおよびiPS細胞選択の効率を改善するために第1、第2または第3ヌクレオチド配列によってコードされうる。
【0011】
本発明の効力は、感染効率の指標として役立ち、同じ多シストロン性転写物上の再プログラム遺伝子からの発現レベルと一般に相関し、細胞が多能性を完全に誘導されると抑制される蛍光タンパク質などのレポーターの発現に部分的に依存する。例えば上の方法のステップc)は、体細胞の集団(ここで体細胞はレポーターを発現する)を選択するステップおよび集団を増大させるために選択された細胞を培養するステップをさらに含みうる。したがって特定の態様において、蛍光補助細胞分取(FACS)を使用するレポーター、例えば蛍光タンパク質の発現レベルに基づいて最も少なく感染している細胞を最も効率良く選択することは可能である。
【0012】
例示的実施形態においてレポーターは、細胞表面マーカー、蛍光タンパク質、エピトープ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼまたはβ−ガラクトシダーゼでありうる。例えば蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP);赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)もしくは黄色蛍光タンパク質(YFP)またはこれらの変種でありうる。使用されるレポーターに依存して、ステップc)における選択は、蛍光励起細胞分取(FACS)、CATアッセイ、発光アッセイまたはトランスフェクトされた細胞を効率的に選択するためにレポーター発現を検出または選別する当業者に公知の任意の方法を含みうる。別法または補完的な手法は、後代細胞における外来性レポーター転写物の欠如を、RT−PCR、in situハイブリダイゼーション、RNAアレイもしくはハイブリダイゼーション(例えばノーザンブロット)などの従来法を使用して検査することである。
【0013】
本発明のさらなる実施形態において、1つまたは複数の再プログラムベクターに含まれる任意のヌクレオチド配列によってコードされるiPS再プログラム因子は、Soxファミリー由来の少なくとも1つの成分およびOctファミリー由来の少なくとも1つの成分を含みうる。SoxおよびOctは、ES細胞同一性を特定する転写制御階層での中核であると考えられている。例えばSoxは、Sox−1、Sox−2、Sox−3、Sox−15またはSox−18でありえ、Octは、Oct−4でありうる。Nanog、Lin28、Klf4またはc−Mycなどの追加的因子も、再プログラム効率を増大でき、再プログラム因子の具体的なセットは、Sox−2、Oct−4、Nanogおよび場合によりLin−28を含む、またはSox−2、Oct4、Klfおよび場合によりc−Mycを含むセットでありうる。
【0014】
さらなる実施形態においてベクターは、ウイルスベクター、より具体的にはマウス白血病ウイルス(MLV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、Akv−MLV、SL−3−3−MLVまたは他の近縁関係にあるウイルスなどのレトロウイルスベクターでありうる。ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターであっても良い。特定の態様において転写制御エレメントは、ウイルス遺伝子の組込みを介在するための末端反復配列領域(long terminal repeat region)(LTR)を含みうる。
【0015】
特定の実施形態において多シストロン性転写物は、1つまたは複数の配列内リボソーム進入部位(IRES)を使用することによって使用されうる。例示的IRESは、脳心筋炎ウイルスIRES、ピコルナウイルスIRES、口蹄疫ウイルスIRES、A型肝炎ウイルスIRES、C型肝炎ウイルスIRES、ヒトライノウイルスIRES、ポリオウイルスIRES、ブタ水疱病(swine vesicular disease)ウイルスIRES、カブモザイクポティウイルス(turnip mosaic potyvirus)IRES、ヒト線維芽細胞増殖因子2 mRNA IRES、ペスチウイルスIRES、リーシュマニアRNAウイルスIRES、モロニーマウス白血病ウイルスIRESヒトライノウイルス14 IRES、アフトウイルスIRES、ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質mRNA IRES、Drosophila Antennapedia mRNA IRES、ヒト線維芽細胞増殖因子2 mRNA IRES、G型肝炎ウイルスIRES、トバモウイルス(tobamovirus)IRES、血管内皮増殖因子mRNA IRES、コクサッキーB群ウイルスIRES、c−myc癌原遺伝子mRNA IRES、ヒトMYT2 mRNA IRES、ヒトパレコウイルス(human parechovirus)1型ウイルスIRES、ヒトパレコウイルス2型ウイルスIRES、真核生物開始因子4GI mRNA IRES、Plautia stali腸管ウイルスIRES、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルスIRES、ウシエンテロウイルスIRES、コネキシン43 mRNA IRES、ホメオドメインタンパク質Gtx mRNA IRES、AML1転写因子mRNA IRES、NFカッパB抑制因子mRNA IRES、X連鎖アポトーシス抑制物質(X−linked inhibitor of apoptosis)mRNA IRES、コオロギ麻痺ウイルス(cricket paralysis virus)RNA IRES、p58(PITSLRE)プロテインキナーゼmRNA IRES、オルニチンデカルボキシラーゼmRNA IRES、コネキシン−32 mRNA IRES、ウシウイルス性下痢症ウイルスIRES、インスリン様増殖因子I受容体mRNA IRES、ヒト免疫不全ウイルス1型gag遺伝子IRES、ブタコレラウイルスIRES、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスIRES、ランダムオリゴヌクレオチドのライブラリーから選択される短いIRES、ジェンブラナ病ウイルス(Jembrana disease virus)IRES、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子1 mRNA IRES、Rhopalosiphum padiウイルスIRES、カチオン性アミノ酸輸送体mRNA IRES、ヒトインスリン様増殖因子IIリーダー2 mRNA IRES、ジアルジアウイルス(giardiavirus)IRES、Smad5 mRNA IRES、ブタテッショウウイルス−1 talfan IRES、Drosophila Hairless mRNA IRES、hSNM1 mRNA IRES、Cbfa1/Runx2 mRNA IRES、エプスタイン−バーウイルスIRES、ハイビスカスクロロティック輪斑ウイルス(hibiscus chlorotic ringspot virus)IRES、ラット下垂体バソプレシンV1b受容体mRNA IRES、ヒトhsp70 mRNA IRESまたはこれらの変種でありうる。詳細にはIRESエレメントは脳心筋炎ウイルスIRESでありうる。
【0016】
さらなる実施形態において再プログラムベクターは、リポソームトランスフェクション、電気穿孔法、微粒子銃(particle bombardment)、リン酸カルシウム、ポリカチオンもしくはポリアニオンまたは細胞中に外来性遺伝性要素を導入するために適切な任意の方法によって導入されうる。
【0017】
本発明のさらなる態様において体細胞は、哺乳動物、より具体的にはヒト由来でありうる。体細胞は、これだけに限らないが線維芽細胞、造血細胞または間葉細胞が挙げられる最終分化した細胞または組織幹細胞であって良い。例えば体細胞は線維芽細胞である。体細胞は組織細胞バンク由来または選択されたヒト被験体、具体的には生存しているヒト由来であって良い。これらの体細胞の後代由来のゲノムは、選択されたヒト個体などの特定の供給原のこれらの体細胞に由来すると考えられる。
【0018】
特定の態様において後代細胞は、レポーター発現の本質的な消失、未分化形態、胚性幹細胞特異的なマーカーもしくは多能性もしくは多系統分化能もしくは当技術分野において公知の任意の特徴またはこれらの組合せについて選択されうる。この選択ステップは、細胞が多能性状態にあり、分化状態に戻らないことを確実にするためにトランスフェクション後の1回または複数回の時点で使用されうる。したがって選択ステップは、再プログラムベクターが細胞に導入された少なくとも約10日後から少なくとも30日後などの後代細胞が自律的な多能性状態に入った後の時点であることができる。
【0019】
具体的には後代細胞は、その利便性から未分化形態について選択されうる。胚性幹細胞特異的マーカーは、SSEA−3、SSEA−4、Tra−1−60またはTra−1−81、Tra−2−49/6E、GDF3、REX1、FGF4、ESG1、DPPA2、DPPA4およびhTERTからなる群から選択される1つまたは複数の特異的マーカーでありうる。
【0020】
詳細な態様において後代細胞は、再プログラムされた細胞は細胞が多能性になると外来性に導入された物質を抑制できることから、導入されたレポーター遺伝子の発現が本質的にないことに基づいてiPS細胞について選択されうる。したがってレポーター発現、例えば蛍光の本質的な消失は、形態的な特徴に加えての細胞が再プログラムされたことの指標である。そのような特徴は、導入されたレポーター遺伝子に基づいて蛍光励起細胞分取(FACS)、CATアッセイまたは発光アッセイによって選択されうる。レポーター遺伝子発現の「本質的な消失」は、iPS細胞集団の1%、0.5%、0.1%、0.05%または任意の中間の百分率値より少ない細胞が外来性レポーター発現を含むことを意味する。
【0021】
さらなる態様において再プログラムベクターは、(a)転写制御エレメント、(b)転写制御エレメントに機能的に連結した第1ヌクレオチド配列(第1ヌクレオチド配列は再プログラム因子またはレポーターをコードする)、c)第1のヌクレオチド配列の3’に位置するIRES、および(d)再プログラム因子またはレポーターをコードしており、IRESの翻訳調節下であるようにIRESの3’に位置する第2ヌクレオチド配列を含む発現カセットであって、(i)第1核酸が再プログラム因子をコードする場合は、第2ヌクレオチド配列は他の再プログラム因子またはレポーターをコードし、(ii)第1核酸がレポーターをコードする場合は、第2ヌクレオチド配列は再プログラム因子をコードする、発現カセットを含むとしても開示される。
【0022】
特定の態様において、第1ヌクレオチド配列は再プログラム因子をコードし、第2ヌクレオチド配列はレポーターをコードするまたはその逆であり、別法として第1および第2ヌクレオチド配列は異なる再プログラム因子をコードする。同じ転写制御エレメント下で複数の再プログラム因子を同時発現するために、発現カセットは第2IRESおよび、第2IRESの翻訳調節下になるように第2IRESの3’に位置する第3ヌクレオチド配列を含みうる。任意の上の状況において、レポーターは、トランスフェクションおよびiPS細胞選択の効率を改善するために第1、第2または第3ヌクレオチド配列によってコードされうる。
【0023】
さらなる態様において、(a)転写制御エレメント、および(b)転写制御エレメントに機能的に連結した第1および第2コード配列(第1コード配列は再プログラム因子をコードし、第2コード配列は第2再プログラム配列またはレポーターをコードする)を含む多シストロン性発現カセットを含む再プログラムベクターも提供される。例えば転写制御エレメントは、末端反復配列領域、プロモーター、エンハンサー、転写調節エレメントなどを含みうる。多シストロン性発現カセットに含まれる場合、第2コード配列は、再プログラムプロセスを支援するために(1つまたは複数の)コード配列の発現または発現の本質的な消失についての選択の促進のためにレポーターをコードできる。別法として第2コード配列は、プロウイルスコピーおよび、単一の多シストロン性転写物由来の2つ以上の再プログラム因子を発現することによる挿入変異の可能性を低減させるために、2番目以降の再プログラム因子でありうる。同様に多シストロン性発現カセットは、転写制御エレメントに機能的に連結した1つまたは複数の追加的コード配列(例えば第3、第4または第5コード配列など)を含みうる、ここで1つまたは複数の追加的コード配列は再プログラム因子、レポーターまたは選択マーカーをコードする。例えば選択マーカーは、抗生物質耐性マーカーまたは表面選択マーカーでありうる。
【0024】
上に記載の再プログラムベクターの例示的実施形態において、レポーターは細胞表面マーカー、蛍光タンパク質、エピトープ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼまたはβ−ガラクトシダーゼでありうる。例えば蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)もしくは黄色蛍光タンパク質(YFP)またはeGFP、eRFP、eBFP、eBFP2、eCFP、eYFPなどのそれらの変種でありうる。特定の態様において再プログラムベクターは、抗生物質耐性マーカーなどの選択マーカーをさらに含みうる。
【0025】
再プログラムベクターのさらなる実施形態において、再プログラムベクターに含まれる任意のヌクレオチド配列によってコードされるiPS再プログラム因子は、Sox、Oct、Nanog、Lin28、Klf4またはc−Mycを含みうる。例えばSoxは、Sox−1、Sox−2、Sox−3、Sox−15またはSox−18でありえ、Octは、Oct−4でありうる。Nanog、Lin28、Klf4またはc−Mycなどの追加的因子も、再プログラム効率を増大できる。さらなる実施形態においてベクターは、ウイルスベクター、より具体的にはマウス白血病ウイルス(MLV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、Akv−MLV、SL−3−3−MLVまたは他の近縁関係にあるウイルスなどのレトロウイルスベクターでありうる。ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、エプスタイン−バーウイルス(EBV)に基づくベクターであっても良い。特定の態様において転写制御エレメントは、外来性遺伝子の組込みおよび転写を介在するための末端反復配列領域(LTR)を含みうる。
【0026】
特定の実施形態において再プログラムベクターは、1つもしくは複数の配列内リボソーム進入部位(IRES)またはコード配列の非依存的翻訳を駆動するために十分な任意の配列を含みうる。例示的IRESは、脳心筋炎ウイルスIRES、ピコルナウイルスIRES、口蹄疫ウイルスIRES、A型肝炎ウイルスIRES、C型肝炎ウイルスIRES、ヒトライノウイルスIRES、ポリオウイルスIRES、ブタ水疱病ウイルスIRES、カブモザイクポティウイルスIRES、ヒト線維芽細胞増殖因子2 mRNA IRES、ペスチウイルスIRES、リーシュマニアRNAウイルスIRES、モロニーマウス白血病ウイルスIRESヒトライノウイルス14 IRES、アフトウイルスIRES、ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質mRNA IRES、Drosophila Antennapedia mRNA IRES、ヒト線維芽細胞増殖因子2 mRNA IRES、G型肝炎ウイルスIRES、トバモウイルスIRES、血管内皮増殖因子mRNA IRES、コクサッキーB群ウイルスIRES、c−myc癌原遺伝子mRNA IRES、ヒトMYT2 mRNA IRES、ヒトパレコウイルス1型ウイルスIRES、ヒトパレコウイルス2型ウイルスIRES、真核生物開始因子4GI mRNA IRES、Plautia stali腸管ウイルスIRES、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルスIRES、ウシエンテロウイルスIRES、コネキシン43 mRNA IRES、ホメオドメインタンパク質Gtx mRNA IRES、AML1転写因子mRNA IRES、NFカッパB抑制因子mRNA IRES、X連鎖アポトーシス抑制物質mRNA IRES、コオロギ麻痺ウイルスRNA IRES、p58(PITSLRE)プロテインキナーゼmRNA IRES、オルニチンデカルボキシラーゼmRNA IRES、コネキシン−32 mRNA IRES、ウシウイルス性下痢症ウイルスIRES、インスリン様増殖因子I受容体mRNA IRES、ヒト免疫不全ウイルス1型gag遺伝子IRES、ブタコレラウイルスIRES、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスIRES、ランダムオリゴヌクレオチドのライブラリーから選択される短いIRES、ジェンブラナ病ウイルスIRES、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子1 mRNA IRES、Rhopalosiphum padiウイルスIRES、カチオン性アミノ酸輸送体mRNA IRES、ヒトインスリン様増殖因子IIリーダー2 mRNA IRES、ジアルジアウイルスIRES、Smad5 mRNA IRES、ブタテッショウウイルス−1 talfan IRES、Drosophila Hairless mRNA IRES、hSNM1 mRNA IRES、Cbfa1/Runx2 mRNA IRES、エプスタイン−バーウイルスIRES、ハイビスカスクロロティック輪斑ウイルスIRES、ラット下垂体バソプレシンV1b受容体mRNA IRES、ヒトhsp70 mRNA IRESまたはこれらの変種でありうる。具体的にはIRESエレメントは、脳心筋炎ウイルスIRES、ピコルナウイルスIRESまたは口蹄疫ウイルスIRESでありうる。
【0027】
さらなる実施形態において、誘導多能性幹(iPS)細胞集団を産生するための方法が提供され、この方法は(a)上に記載の1つまたは複数の再プログラムベクターを得るステップ、および(b)再プログラムベクターを体細胞集団の細胞に導入して、iPS細胞集団を提供するステップを含む。特定の態様において、iPS細胞を産生するための1つまたは複数の再プログラムベクターは、SoxおよびOctを含む再プログラム因子をコードするコード配列を含みうる。
【0028】
上記方法は、(c)集団を増大させるために細胞を培養するステップ、および(d)増大させた集団の後代細胞を選択するステップ(後代細胞は胚性幹細胞の1つまたは複数の特徴を有する)をさらに含みうる。追加的ステップが、上記方法にさらに含まれうる:(e)選択された後代細胞を培養して、iPS細胞集団を提供するステップ。
【0029】
レポーターをコードしている(1つまたは複数の)コード配列を含む再プログラムベクターについて、ステップ(c)は、体細胞の集団を選択するステップをさらに含むことができ、再プログラムベクターの導入後はレポーターの発現と再プログラム因子の発現との間には相関関係があることから、選択された体細胞はレポーターを発現する。ステップ(c)における選択ステップは、特定の態様におけるレポーター発現の検出のための光学アッセイ、蛍光励起細胞分取(FACS)、CATアッセイまたは発光アッセイを含みうる。
【0030】
特定の態様において1つまたは複数の再プログラムベクターは、リポソームトランスフェクション、電気穿孔法、微粒子銃、リン酸カルシウム、ポリカチオン、ポリアニオンまたはヌクレオチドの細胞内侵入のための当技術分野において公知の任意の方法によって体細胞に導入される。
【0031】
再プログラムのために体細胞は、ヒト体細胞などの哺乳動物の体細胞でありうる。体細胞の種類は、線維芽細胞、造血細胞、リンパ球(T細胞またはB細胞など)、間葉細胞、島細胞または組織幹細胞でありうる。
【0032】
後代細胞が自立的多能性状態を確立するために予め定めた期間の後、ウイルスベクターに含まれる発現カセットの発現は、遮断される。したがって後代細胞は、レポーター発現の本質的な消失または、未分化形態、胚性幹細胞特異的マーカーもしくは多能性などの他の公知の胚性細胞様特性などの特徴について選択されうる。後代細胞は、レポーター発現の消失もしくは低下の選択のための光学アッセイ、蛍光励起細胞分取(FACS)、CATアッセイまたは発光アッセイまたはSSEA−3、SSEA−4、Tra−1−60もしくはTra−1−81、Tra−2−49/6E、GDF3、REX1、FGF4、ESG1、DPPA2、DPPA4およびhTERTなどのES細胞特異的表面マーカーによって選択されうる。
【0033】
本発明の方法および/または組成物の内容について論じられた実施形態は、本明細書に記載する任意の他の方法または組成物に関しても使用されうる。したがって1つの方法または組成物に関係する実施形態は、本発明の他の方法および組成物にも同様に適用されうる。
【0034】
核酸を参照して本明細書において使用される用語「コードする」または「コードしている」は、本発明が当業者によって容易に理解されうるようにするために使用されるが、これらの用語は、「含む」または「含んでいる」とそれぞれ互換的に使用されうる。
【0035】
本明細書において使用される記述「a」または「an」は、1つまたは複数を意味できる。本明細書の(一項または複数項の)特許請求の範囲において使用されるとおり、用語「含んでいる」と併せて使用される場合は、用語「a」または「an」は、1つまたは1つより多くを意味できる。
【0036】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、選択のみ、または選択肢が相互排他的であることを意味すると明確に示す場合を除いて、「および/または」を意味して使用されるが、開示は単なる選択肢および「および/または」を意味する定義を支持する。本明細書において使用される「他の」は、少なくとも2番目以降を意味できる。
【0037】
本出願全体について用語「約」は値が、装置、値を決定するために使用される方法、または研究対象に存在する変動についての固有の誤差変動を含むことを示して使用される。
【0038】
本発明の他の目的、特性および有利点は、以下の詳細な記載から明らかになる。しかし、詳細な記載および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示の方法によってのみ与えられることは、本発明の精神および範囲中の種々の変更および修正がこの詳細な記載から当業者に明らかになることから理解されるべきである。
【0039】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに示すために含まれる。本発明は、これらの図面の1つまたは複数を本明細書において示す具体的な実施形態の詳細な記載と組み合わせて参照することによってより良く理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1A−Bは、IRES依存性多シストロン性の系の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
I.本発明
体細胞性、または完全に分化したヒト細胞を多能性または「幹細胞」状態に戻すように駆動する能力は、胚由来幹細胞の使用への多くの重要な科学的および社会的な課題を克服し、再生医療の可能性の実現に役立つであろう。しかし現在の再プログラムプロセスは、非効率的であり、それによりその適用を妨げている。本発明は、改善された効率を有する誘導多能性幹細胞の生成において現在の再プログラム技術に伴ういくつかの主要な問題を克服する。一般に胚性幹細胞様形態だけに基づく選択を使用する従来法とは対照的に、これらの方法の特定の態様は、選択を精密化し、かつ細胞の再プログラム化効率を最適化するために再プログラム因子に加えてレポーターをコードする多シストロン性転写物を発現しているベクターを使用する。本発明のさらなる実施形態および有利点は以下に記載される。
【0042】
II.定義
「再プログラム」は、培養中またはin vivoのいずれでも、再プログラムを行わない他は同じ条件下で有するのと比べて少なくとも1つの新たな細胞型の後代を形成するための測定可能な程度に増大した能力を、細胞に与えるプロセスである。より具体的には再プログラムは、体細胞に多能性ポテンシャルを与えるプロセスである。これは十分な増殖後に、再プログラム化前にはそのような後代が本質的に形成できない場合、測定可能な割合の後代が新たな細胞型の表現型特徴を有し、そうでなければ新たな細胞型の特徴を有する割合が再プログラム前を測定可能な程度超えていることを意味する。特定の条件下で新たな細胞型の特徴を有する後代の割合は、好ましさが増加する順で少なくとも約1%、5%、25%またはそれを超える場合がある。
【0043】
「ベクター」または「構築物」(時には遺伝子送達または遺伝子輸送の「ビヒクル」と称される)は、in vitroまたはin vivoのいずれでも宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む巨大分子または分子の複合体を意味する。
【0044】
「発現構築物」または「発現カセット」によって、転写を方向付けられる核酸分子が意味される。発現構築物は、少なくともプロモーターまたはプロモーターと機能的に等価な構造を含む。エンハンサーなどの追加的エレメントおよび/または転写終結シグナルも含まれうる。
【0045】
用語「外来性」は、細胞もしくは生体中のタンパク質、遺伝子、核酸もしくはポリヌクレオチドと関連して使用される場合は、人工的もしくは天然の手段によって細胞もしくは生体に導入されているタンパク質、遺伝子、核酸もしくはポリヌクレオチドを意味し、または細胞に関連する場合は、単離され、続いて人工的もしくは天然の手段によって他の細胞もしくは生体に導入された細胞を意味する。外来性核酸は、異なる生体もしくは細胞由来であって良く、または生体もしくは細胞中に天然に存在する核酸の1つもしくは複数の追加的複製物であって良い。外来性細胞は、異なる生体由来であって良く、または同じ生体由来であって良い。非限定的例の方法により外来性核酸は、天然の細胞とは異なる染色体上の位置にあるか、そうでなければまたは天然において見出されるのとは異なる核酸配列によって隣接されている。
【0046】
本明細書において使用される用語「対応する」は、ポリヌクレオチド配列が参照ポリペプチド配列の全体もしくは一部に相同である(すなわち同一である、厳密には進化的に関連しない)こと、またはポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列と同一であることを意味する。対照的に、本明細書において使用される用語「相補的」は、相補的配列が参照ポリヌクレオチド配列の全体または一部に相同であることを意味する。例示として、ヌクレオチド配列「TATAC」は、参照配列「TATAC」に対応し、参照配列「GTATA」に相補的である。
【0047】
具体的なタンパク質を「コード」する「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「コード領域」、「配列」、「セグメント」、「断片」または「導入遺伝子」は、適切な制御配列の調節下に位置する場合にin vitroまたはin vivoで転写されかつ場合により遺伝子産物、例えばポリペプチドに翻訳もされる核酸分子である。コード領域は、cDNA、ゲノムDNAまたはRNA形態のいずれかで存在できる。DNA形態で存在する場合、核酸分子は1本鎖(すなわちセンス鎖)または2本鎖でありうる。コード領域の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。遺伝子として、これだけに限らないが原核生物または真核生物のmRNA由来のcDNA、原核生物または真核生物のDNA由来のゲノムDNA配列および合成DNA配列が挙げられる。転写終結配列は、遺伝子配列の3’に通常位置する。
【0048】
用語「調節エレメント」は、レシピエント細胞においてコード配列の複製、転写、転写後プロセシングおよび翻訳を集合的に提供するプロモーター領域、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流制御ドメイン、複製開始点、配列内リボソーム進入部位(「IRES」)、エンハンサー、スプライスジャンクションなどを集合的に意味する。選択されたコード配列が適切な宿主細胞において複製、転写および翻訳されうる限り、これらの調節エレメントの全てが常に存在する必要はない。
【0049】
本明細書において使用される用語「LTR」は、プロウイルス(例えばレトロウイルスの組み込まれた形態)の各末端で見出される末端反復配列を意味する。LTRは、転写調節エレメント、ポリアデニル化シグナルならびにウイルスゲノムの複製および組込みのために必要な配列を含む多数の制御シグナルを含有する。ウイルス性LTRは、U3、RおよびU5と称される3つの領域に分けられる。U3領域は、エンハンサーおよびプロモーターエレメントを含有する。U5領域は、ポリアデニル化シグナルを含有する。R(反復)領域は、U3領域とU5領域とを分けており、R領域の転写された配列はウイルスRNAの5’末端および3’末端の両方に生じる。
【0050】
「蛍光タンパク質」は、蛍光発色団を含むタンパク質の種類を意味し、発色団は少なくとも3個のアミノ酸から形成され、p−ヒドロキシベンジリデン−イミダゾリジノン発色団を生じる環化反応によって特徴付けられる。発色団は、補欠分子族を含有せず、選択的エネルギーの光を発光でき、エネルギーは、適切な(1つまたは複数の)波長を含む外部光源からの先行する照射によって発色団に貯えられている。天然の蛍光タンパク質は、発色団が上に詳述のp−ヒドロキシベンジリデン−イミダゾリジノン環構造を含むとの条件で、任意の数のアミノ酸を含む発色団を有する任意の構造でありうる。典型的にはSFPは、排他的ではなく、緑色蛍光タンパク質において見出され、Chalfieら、(1994年)に記載されているなどのβ−バレル構造を含む。
【0051】
蛍光タンパク質は、タンパク質によって吸収される特定の波長の入射光への応答で長波長の光を生じる能力である「蛍光特性」を特徴的に示す。
【0052】
用語「プロモーター」は、DNA制御配列を含むヌクレオチド領域を意味して本明細書においてその通常の意味で使用され、ここで制御配列はRNAポリメラーゼに結合でき、かつ下流(3’方向)コード配列の転写を開始できる遺伝子に由来する。
【0053】
「エンハンサー」により、プロモーターの近くに位置する場合、エンハンサードメインの非存在下でプロモーターから生じる転写活性と比較して増大した転写活性を与えるヌクレオチド配列が意味される。
【0054】
核酸分子に関連して「機能的に連結する」により、2つ以上の核酸分子(例えば転写される核酸分子、プロモーターおよびエンハンサーエレメント)が核酸分子の転写を可能にするように連結していることが意味される。ペプチドおよび/またはポリペプチド分子に関連して「機能的に連結」は、2つ以上のペプチドおよび/またはポリペプチド分子が、融合の各ペプチドおよび/またはポリペプチド成分の少なくとも1つの特性を有する単一のポリペプチド鎖、すなわち融合ポリペプチドを生じるように連結していることを意味する。融合ポリペプチドは、好ましくはキメラである、すなわち異種性分子からなる。
【0055】
用語「細胞」は、本明細書において当技術分野におけるその広義で使用され、多細胞生物の組織の構造単位であり、それを外部から隔てる膜構造によって囲まれており、自己複製能を有し、遺伝情報およびそれを発現するための機構を有する生存しているものを意味する。本明細書において使用される細胞は、天然に存在する細胞または人工的に改変された細胞(例えば融合細胞、遺伝的に改変された細胞など)でありうる。
【0056】
本明細書において使用される用語「幹細胞」は、自己複製でき、多能性である細胞を意味する。典型的には幹細胞は、障害組織を再生できる。本明細書における幹細胞は、これだけに限らないが胚性幹(ES)細胞または組織幹細胞(組織特異的幹細胞または体性幹細胞とも称される)でありうる。上に記載の能力を有しうる人工的に産生された任意の細胞(例えば本明細書において使用される融合細胞、再プログラム細胞など)は、幹細胞でありうる。
【0057】
「胚性幹(ES)細胞」は、初期胚由来の多能性幹細胞である。ES細胞は、1981年に初めて確立され、1989年からノックアウトマウスの産生にも応用されている。1998年にヒトES細胞が確立され、現在再生医療に利用可能になっている。
【0058】
ES細胞とは異なり組織幹細胞は、限定された分化能を有する。組織幹細胞は、組織の特定の位置に存在し、未分化の細胞内構造を有する。したがって組織幹細胞の多能性は、典型的には低い。組織幹細胞は、高い核/細胞質比を有し、細胞内小器官をほとんど有さない。ほとんどの組織幹細胞は、低い多能性、長い細胞周期および個体の寿命を超える増殖能を有する。組織幹細胞は、皮膚系、消化器系、骨髄系、神経系などの細胞が由来する部位に基づいて分類される。皮膚系における組織幹細胞は、表皮幹細胞、毛包幹細胞などを含む。消化器系における組織幹細胞は、膵臓(共通)幹細胞、肝臓幹細胞などを含む。骨髄系における組織幹細胞は、造血幹細胞、間葉幹細胞などを含む。神経系幹における組織幹細胞は、神経幹細胞、網膜幹細胞などを含む。
【0059】
慣用でiPS細胞またはiPSCと略される「誘導多能性幹細胞」は、非多能性細胞、典型的には成体体細胞または、線維芽細胞、造血細胞、筋細胞、神経細胞、表皮細胞などの最終分化した細胞から、再プログラム因子と称される特定の遺伝子を挿入することによって人工的に調製された多能性幹細胞の一種を意味する。
【0060】
「多能性」は、1つもしくは複数の組織もしくは器官を構成する全ての細胞に、または好ましくは3種の胚葉:内胚葉(胃の内部の内膜、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)または外胚葉(表皮組織および神経系)のいずれにも分化する可能性を有する幹細胞を意味する。本明細書において使用される「多能性幹細胞」は、3種の胚葉のいずれかに由来する細胞、例えば全能性細胞の子孫または誘導多能性細胞に分化できる細胞を意味する。
【0061】
「自己再生」は、未分化状態を維持しながら細胞分割の多数の周期を経る能力を意味する。
【0062】
本明細書において使用される用語「体細胞」は、例えば卵子、精子などの生殖系細胞以外の、任意の細胞を意味し、そのDNAを次世代に直接移行させない。典型的には体細胞は、限定された多能性を有するかまたは多能性を有さない。本明細書において使用される体細胞は、天然に存在しうるまたは遺伝的に改変されうる。
【0063】
III.誘導多能性幹細胞についての一般的背景
本発明の特定の実施形態において、レポーターおよび再プログラム因子の両方をコードする多シストロン性転写物を発現している再プログラムベクターでの体細胞の再プログラム方法が開示される。例えばこれらの細胞は、形質転換された細胞を濃縮するために最初にレポーター遺伝子の発現について選択されることができ、その後、誘導多能性幹細胞に関するレポーター遺伝子の抑制についてそれらの後代が選択されうる。胚性幹細胞の特徴の理解は、これらの方法に加えて誘導多能性幹細胞を選択することに役立ちうる。幹細胞再プログラム研究から公知の再プログラム因子は、これらの新規方法に使用されうる。これらの誘導多能性幹細胞が、胚性幹細胞に替わって治療的および研究的な応用のために潜在的に使用されうることは、後者を使用する倫理的障害によりさらに検討される。
【0064】
A.幹細胞
幹細胞は、全てではないがほとんどの多細胞生物において見出される細胞である。それらは、有糸細胞分裂および特殊化した細胞型の多様な範囲への分化を通じてそれら自体を再生する能力によって特徴付けられる。哺乳動物の幹細胞の2つの広範な種類は:胚盤胞に見出される胚性幹細胞、および成体組織に見出される成体幹細胞である。発生中の胚において幹細胞は、特殊化する胚組織の全てに分化できる。成体において幹細胞および前駆細胞は、特殊化した細胞を補充している身体のための修復系として作用するが、血液、皮膚または腸組織などの再生器官の通常の代謝回転も維持する。
【0065】
幹細胞が細胞培養を通じて増殖でき、かつ筋肉または神経などの種々の組織の細胞と合致する特徴を有する特殊化した細胞に転換されうることから、医学的治療におけるそれらの使用が、計画されている。具体的には、胚細胞系、治療的クローニングを通じて生成された自己胚性幹細胞および臍帯血または骨髄由来の高度に可塑的な成体幹細胞は、有望な候補としてもてはやされている。最近、成体細胞の誘導多能性幹細胞への再プログラムが胚性幹細胞に替わる大きな可能性を有している。
【0066】
B.胚性幹細胞
胚性幹細胞系(ES細胞系)は、胚盤胞の内部細胞塊(ICM)の胚盤葉上層組織または初期桑実胚状態の胚由来の細胞の培養物である。胚盤胞は、初期状態(ヒトではおよそ4〜5日後)の胚であり、細胞50〜150個からなる。ES細胞は多能性であり、発生中に3つの主要な胚葉、外胚葉、内胚葉および中胚葉の全ての派生物を生じる。言い換えると、それらは、特定の細胞型用に十分かつ必要な刺激を与えられた場合に、成体の200を超える細胞型のそれぞれに発生できる。それらは、胚体外膜または胎盤には寄与しない。
【0067】
今日までのほとんどの研究は、マウス胚性幹細胞(mES)またはヒト胚性幹細胞(hES)を使用して実施されている。両者は、本質的な幹細胞特徴を有しているが、未分化状態を維持するためにそれらは非常に異なる環境を必要とする。マウスES細胞は、ゼラチン層上で増殖でき、白血病抑制因子(LIF)の存在を必要とする。ヒトES細胞は、マウス胎仔線維芽細胞(MEF)の支持細胞層上で増殖でき、しばしば塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFまたはFGF−2)の存在を必要とする。最適な培養条件または遺伝子操作がなければ(Chambersら、2003年)、胚性幹細胞は直ちに分化する。
【0068】
ヒト胚性幹細胞は、いくつかの転写因子および細胞表面タンパク質の存在によっても定義されうる。転写因子Oct−4、NanogおよびSox2は、分化を生じる遺伝子の抑制を確実にし、多能性を維持するコア制御ネットワークを形成する(Boyerら、2005年)。hES細胞を同定するために最も慣用される細胞表面抗原として糖脂質SSEA3およびSSEA4ならびにケラタン表面抗原Tra−1−60およびTra−1−81が挙げられる。
【0069】
20年間の研究の後、胚性幹細胞を使用する認可された治療およびヒトでの治験はない。多能性細胞であるES細胞は、正確な分化のために特異的シグナルを必要とし、身体に直接注入されるとES細胞は多種多様な型の細胞に分化し、奇形腫を生じる。移植片拒絶を回避する一方で有用な細胞にES細胞を分化させることは、胚性幹細胞研究者がいまだ直面している障害のほんの一部に過ぎない。現在多数の国がES細胞研究または新規ES細胞系の産生のいずれかを一時的に禁止している。非限定的な増大と多能性とが組み合わされたそれらの能力により、胚性幹細胞は障害または疾患の後の再生医療および臓器移植のための理論的潜在的な供給原に留まっている。しかしこの問題を回避する1つの方法は、直接再プログラムによって体細胞に多能性状態を誘導することである。
【0070】
C.再プログラム因子
iPS細胞の生成には、誘導のために使用される遺伝子が非常に重要である。以下の因子またはそれらの組合せは、本発明において開示されるベクター系において使用されうる。特定の態様においてSoxおよびOct(好ましくはOct3/4)をコードしている核酸は、再プログラムベクターに含まれる。例えば再プログラムベクターは、Sox2、Oct4、Nanogおよび場合によりLin−28をコードしている発現カセットまたはSox2、Oct4、Klf4および場合によりc−mycをコードしている発現カセットを含みうる。これらの再プログラム因子をコードしている核酸は、同じ発現カセット、異なる発現カセット、同じ再プログラムベクターまたは異なる再プログラムベクターに含まれうる。
【0071】
Oct−3/4およびSox遺伝子ファミリー(Sox1、Sox2、Sox3およびSox15)の特定のメンバーは、誘導プロセスに関与し、その欠如が誘導を不可能にする重要な転写制御因子として同定されている。しかしKlfファミリー(Klf1、Klf2、Klf4およびKlf5)、Mycファミリー(C−myc、L−mycおよびN−myc)、NanogならびにLIN28の特定のメンバーを含む追加的遺伝子が、誘導効率を増大させるために同定されている。
【0072】
Oct−3/4(Pou5f1)は、オクタマー(「Oct」)転写因子のファミリーの1つであり、多能性の維持において決定的な役割を演じる。卵割球および胚性幹細胞などのOct−3/4+細胞におけるOct−3/4の欠如は、自発的な栄養芽細胞への分化を生じ、Oct−3/4の存在は、したがって胚性幹細胞の多能性および分化能を生じる。Oct−3/4の密接な類縁体、Oct1およびOct6を含む「Oct」ファミリー中の種々の他の遺伝子は、誘導を誘発することができず、それにより誘導プロセスへのOct−3/4の排他性を実証している。
【0073】
遺伝子のSoxファミリーは、Oct−3/4と同様に多能性の維持に関連しているが、多能性幹細胞において独占的に発現されるOct−3/4とは対照的に多能性および単能性幹細胞に伴っている。Sox2はYamanakaら(2007年)、Jaenischら(1988年)およびYuら(2007年)によって誘導のために使用された最初の遺伝子であったが、Soxファミリーの他の遺伝子が誘導プロセスにおいて同様に作用することが見出されている。Sox1は、Sox2と同様の効率でiPS細胞をもたらし、遺伝子Sox3、Sox15およびSox18も効率は低下しているがiPS細胞を生成する。
【0074】
胚性幹細胞において、Oct−3/4などの少なくともOctメンバーおよびSox2などの少なくともSoxメンバーは、多能性を促進するために必要である。Yamanakaら(2007年)は、Nanogが誘導に不必要であることを報告したが、Yuら(2007年)は、因子の1つとしてNanogを用いてiPS細胞を生成できることおよびNanogが用量依存的に確実に再プログラム効率を増強することを報告した。
【0075】
LIN28は、分化および増殖と関連して胚性幹細胞および胚性癌腫細胞において発現されるmRNA結合タンパク質である。Yuら(2007年)は、それが不必要ではあるが、iPS生成における因子であることを実証した。
【0076】
遺伝子のKlfファミリーのKlf4は、Yamanakaらによって最初に同定され、Jaenischら(1988年)によってマウスiPS細胞の生成のための因子として確認され、Yamanakaら(2007年)によってヒトiPS細胞の生成のための因子として実証された。しかしThompsonらは、Klf4がヒトiPS細胞の生成のために不必要であることおよび実際にヒトiPS細胞を生成することに失敗したことを報告した。Klf2およびKlf4は、iPS細胞を生成できる因子であることが見出され、関連遺伝子Klf1およびKlf5も効率は低下していたが同様にできた。
【0077】
遺伝子のMycファミリーは、癌に関係する癌原遺伝子である。YamanakaらおよびJaenischら(1988年)は、c−mycがマウスiPS細胞の生成に関係する因子であることを実証し、YamanakaらはそれがヒトiPS細胞の生成に関係する因子であったことを実証した。しかし、ThomsonらおよびYamanakaら(2007年)は、c−mycがヒトiPS細胞の生成に不必要であったことを報告した。iPS細胞の誘導における遺伝子の「myc」ファミリーの使用は、c−myc誘導iPS細胞を移植されたマウスの25%が致死的奇形腫を発症したことから臨床治療としてのiPS細胞の可能性に関して問題である。N−mycおよびL−mycは、c−mycの代わりに同様の効率で誘導するために同定されている。
【0078】
D.再プログラム因子を使用する多能性幹細胞の誘導
典型的にはiPS細胞は、成体線維芽細胞などの非多能性細胞への特定の幹細胞関連遺伝子のトランスフェクションによって誘導される。典型的にはトランスフェクションは、現在のやり方ではレトロウイルスなどのウイルスベクターの組込みを通じて達成される。トランスフェクトされる遺伝子は、主要な転写制御因子Oct−3/4(Pouf51)およびSox2を含むが、他の遺伝子が誘導の効率を増強することが示唆される。臨界期後に、トランスフェクトされた細胞の少数が形態学的および生化学的に多能性幹細胞に類似し始め、典型的には形態学的選定、倍加時間を通じてまたはレポーター遺伝子および抗生物質感染を通じて単離される。
【0079】
2007年11月に、2つの独立した研究者チームの研究により成体ヒト細胞からiPSを作製することによってマイルストーンが達成された(Yuら、2007年;Yamanakaら、2007年)。マウスモデルにおいて先に使用された同じ原理でYamanakaは、同じ4つの中心的な遺伝子:Oct3/4、Sox2、Klf4およびc−Mycを、c−Mycは癌遺伝子であるがレトロウイルス系で使用してヒト線維芽細胞を多能性幹細胞に形質転換することに成功した。Thomsonらは、c−Mycの使用を避けてレンチウイルス系を使用し、Oct4、Sox2、NANOGおよび異なる遺伝子LIN28を使用した。
【0080】
しかし、誘導多能性幹細胞を生成するための現在のプロセスは、緩徐かつ非効率的であり、ほとんどの細胞が失敗する。このプロセスの効率を改善するために、特定の態様において本方法およびベクターは、再プログラム因子および(レポーターの存在に関して選択することによってトランスフェクション効率を最適化する)レポーターを含有する多シストロン性構築物を利用し、導入遺伝子抑制が多能性細胞においては非常に効果的であることから、後者はレポーター遺伝子の発現のないものを選択することによって多能性細胞の選択を改善する。
【0081】
IV.誘導多能性幹細胞を生成するための多シストロン性の系
本発明の特定の態様において、このIRES依存性多シストロン性系に由来する適用性および効率的発現は、その有利点の根拠となり、iPS細胞産生の効率を増強するための有用な手段としてそれを確立する。この系の多数の変更として、これだけに限らないが(例えば図1を参照されたい)、1)使用するレポーターの変更(例えばシアン蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質など)、2)レポーター遺伝子の他の再プログラム遺伝子への置換(合成される必要のあるウイルスが少なくなる)、または3)LTRがOct4 IRES Sox−2 IRES eGFPの発現を駆動するような2つのIRESを有するカセットの作製が挙げられる。
【0082】
A.配列内リボソーム進入部位(IRES)
多シストロン性転写物の産生を可能にするためにIRES配列は、本発明に含まれる。これは、本発明の発現系が単一の転写物単位から複数の再プログラム因子を産生すること、または融合タンパク質を作製することなく、もしくは追加的遺伝子の発現を調節するための追加的制御エレメントの必要性がなく多シストロン性転写物にレポーターを容易に組み込むことを可能にする。
【0083】
ほとんどの真核生物およびウイルスのメッセージは、mRNAの5’末端の7−メチルグアノシンキャップの認識に関与する機構によって翻訳を開始する。しかし少数の例においては、翻訳は、mRNAのキャップ領域から翻訳される遺伝子の3’下流に位置する配列内リボソーム進入部位(IRES)がリボソームによって認識されるキャップ非依存的機構を介して生じ、転写物からの第2のコード領域の翻訳を可能にする。したがってIRESエレメントは、5’メチル化キャップ依存性翻訳のリボソームスキャニングモデルの迂回を可能にし、内部部位で翻訳を開始する(PelletierおよびSonenberg、1988年)。
【0084】
これは、IRES配列が単一の遺伝子座からの複数のタンパク質の同時発現を可能にすることから本発明において特に重要である。IRESエレメントは、異種性の翻訳領域に連結されうる。複数の翻訳領域は、一緒に転写されることができ、IRESによってそれぞれ分離されることができ、多シストロン性メッセージを作製する。IRESエレメントの効力により、各翻訳領域は効率的な翻訳のためにリボソームに接近可能である。複数の遺伝子は、単一のメッセージを転写するための単一のプロモーター/エンハンサーを使用して効率的に発現されうる(米国特許第5,925,565号および第5,935,819号を参照されたい、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。
【0085】
特に好ましい実施形態は、同じ多シストロン性転写物中の所望の組換え産物およびレポーターの両方についてのコード配列を包含するものである。形質転換事象の成功は、所望の再プログラム因子および容易に検出可能なレポーターの両方の発現によって示され、トランスフェクションに成功した細胞の選択を促進する。
【0086】
ピコルナウイルスファミリーの2つのメンバー(ポリオおよび脳心筋炎)由来のIRES要は記載されており(PelletierおよびSonenberg、1988年)、哺乳動物メッセージ由来のIRES(MacejakおよびSarnow、1991年)も同様である。特定の例として、ポリオウイルスI型、脳心筋炎ウイルス(EMV)の、「タイラー(Thelier’s)マウス脳脊髄炎ウイルス」(TMEV)の、「口蹄疫ウイルス」(FMDV)の、「ウシエンテロウイルス」(BEV)の、「コクサッキーBウイルス」(CBV)のもしくは「ヒトライノウイルス」(HRV)の5’UTR、または「ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質」(BIP)5’UTR、Drosophila Antennapediae 5’UTRもしくはDrosophila ultrabithorax 5’UTRあるいは上に列挙した配列由来の遺伝子交雑物または断片由来のIRESエレメントが挙げられる。IRES配列はKimら(1992年)およびMcBratneyら(1993年)に記載されている。
【0087】
B.レポーター
本発明の特定の実施形態は、形質転換の成功を示すためにレポーター遺伝子を利用する。例えばレポーター遺伝子は、発現カセット内で、同時発現のための再プログラム遺伝子のコード領域に通常は付随する制御エレメントの調節下に位置付けられうる。レポーターは、再プログラムベクターを含有する細胞が、それらを薬物もしくは他の選択圧の下に置くことなくまたはそうでなければ細胞生存率を危険にさらすことなく単離されることを可能にする。追加的有利点は、抑制されたレポーター発現を有する誘導多能性幹細胞を濃縮することである。
【0088】
そのようなレポーターの例として、細胞表面タンパク質(例えばCD4、HAエピトープ)、蛍光タンパク質、抗原決定基および酵素(例えばβ−ガラクトシダーゼ)をコードする遺伝子が挙げられる。ベクターを含有する細胞は、例えば、細胞表面タンパク質に対する蛍光標識抗体またはベクターにコードされた酵素によって蛍光産物に転換されうる基質を使用するFACSによって単離されうる。
【0089】
具体的な実施形態においてレポーター遺伝子は、蛍光タンパク質である。蛍光発光スペクトルのプロファイルが可視光スペクトルのほぼ全体にわたることを特徴とする蛍光タンパク質の広範囲の遺伝的変種が開発されている。(非限定的な例として表1を参照されたい)。最初のAequorea victoriaクラゲ緑色蛍光タンパク質での変異誘導の試みは、青色から黄色の範囲の新たな蛍光プローブをもたらし、生物学的研究でのin vivoレポーター分子で最も広く使用されているものの一部である。橙色および赤色スペクトル領域で発光する長波長蛍光タンパク質は、花虫網に属するマリンアネモネ(marine anemone)、Discosoma striataおよび造礁サンゴから開発されている。さらに他の種がシアン、緑色、黄色、橙色および深紅の蛍光発光を有する同様のタンパク質を産生するために採取されている。開発研究の努力は、蛍光タンパク質の輝度および安定性を改善するために継続されており、それによりそれら全般の有用性を改善している。
【0090】
【表1−1】

【0091】
【表1−2】

V.ベクター構築および送達
特定の実施形態において再プログラムベクターは、ウイルスベクター、例えば細胞内でこれらの再プログラム因子を発現するためのレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターでありうる。これらの方法の新規特性は、上に記載の多シストロン性転写物の使用であり、形質転換された細胞および誘導多能性細胞の選択を促進する。これらのベクターの構築および送達方法の詳細は、下に記載されている。
【0092】
A.ベクター
当業者は、標準的組換え技術(例えばSambrookら、2001年およびAusubelら、1996年を参照されたい、どちらも参照により本明細書に組み込まれる)を通じてベクターを構築する態勢が十分に整っている。ベクターとして、これだけに限らないがプラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルスおよび植物ウイルス)ならびにレトロウイルスベクター(例えばモロニーマウス白血病ウイルスベクター(MoMLV)、MSCV、SFFV、MPSV、SNVなどに由来)、レンチウイルスベクター(例えばHIV−1、HIV−2、SIV、BIV、FIVなどに由来)、複製能力を有するもの、複製欠損およびそのガットレス形態を含むアデノウイルス(Ad)ベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、サルウイルス40(SV−40)ベクター、ウシパピローマウイルスベクター、エプスタイン−バーウイルス、ヘルペスウイルスベクター、ワクチニアウイルスベクター、ハーベイマウス肉腫ウイルスベクター、マウス乳癌ウイルスベクター、ラウス肉腫ウイルスベクターなどの人工染色体(例えばYAC)が挙げられる。
【0093】
好ましい1つのアプローチにおいてベクターは、ウイルスベクターである、具体的には、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターは、体細胞の再プログラムに成功裏に使用されている。ウイルスベクターは、細胞を効率的に形質導入し、それら自体のDNAを宿主細胞に導入できる。組換えウイルスベクターの生成において、典型的には非必須遺伝子が異種(または非天然)タンパク質の遺伝子またはコード配列で置換される。
【0094】
ウイルスベクターは、核酸および場合によりタンパク質を細胞に導入するためにウイルス配列を利用する発現構築物の一種である。特定のウイルスが受容体−依存性エンドサイトーシスを介して細胞に感染する、または細胞に侵入する能力および宿主細胞ゲノム中に組み込み、かつウイルス遺伝子を安定かつ効率的に発現する能力は、それらを外来性核酸の細胞(例えば哺乳動物細胞)への移行のための魅力的な候補にしている。本発明の多シストロン性転写物を送達するために使用されうるウイルスベクターの非限定的例は、下に記載される。
【0095】
a.レトロウイルスベクター
レトロウイルスは、それらの遺伝子を宿主ゲノムに組み込み、多量の外来性遺伝物質を移行し、広域スペクトルの種および細胞型に感染し、特定の細胞系にパッケージされるそれらの能力により遺伝子送達ベクターとしての将来性がある(Miller、1992年)。
【0096】
レトロウイルスベクターを構築するために、核酸は、複製欠損であるウイルスを産生するために特定のウイルス配列の位置のウイルスゲノムに挿入される。ウイルス粒子を産生するために、gag、polおよびenv遺伝子を含有するがLTRおよびパッケージング成分を含まないパッケージング細胞系が構築される(Mannら、1983年)。cDNAを含有する組換えプラスミドがレトロウイルスLTRおよびパッケージング配列と共に特定の細胞系に導入されると(例えばリン酸カルシウム沈殿法によって)、パッケージング配列は組換えプラスミドのRNA転写物の(次いで培養培地に分泌される)ウイルス粒子へのパッケージングを可能にする(NicolasおよびRubenstein、1988年;Temin、1986年;Mannら、1983年)。組換えレトロウイルスを含有する培地は、次いで回収され、場合により濃縮され、遺伝子導入に使用される。レトロウイルスベクターは、幅広い細胞型に感染可能できる。しかし組込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を必要とする(Paskindら、1975年)。
【0097】
b.レンチウイルスベクター
レンチウイルスは複合レトロウイルスであり、共通のレトロウイルス遺伝子gag、polおよびenvに加えて制御および構造的機能を有する他の遺伝子を含有する。レンチウイルスベクターは、当技術分野において周知である(例えばNaldiniら、1996年;Zuffereyら、1997年;Blomerら、1997年;米国特許第6,013,516号および第5,994,136号を参照されたい)。
【0098】
組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染でき、in vivoおよびex vivoの両方での遺伝子導入および核酸配列の発現のために使用されうる。例えば非分裂細胞に感染できる組換えレンチウイルス(ここで適切な宿主細胞は、パッケージング機能、すなわちgag、polおよびenvならびにrevおよびtatを保有している2つ以上のベクターによってトランスフェクトされる)は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,994,136号に記載されている。
【0099】
B.制御エレメント
ベクターは、遺伝子送達および/もしくは遺伝子発現をさらに調節する、または他に標的細胞へ有益な特性をもたらす他の成分または機能性も含みうる。そのような他の成分として、例えば細胞への結合および標的化に影響を与える成分(細胞型または組織特異的結合を調節する成分を含む);細胞によるベクター核酸の取り込みに影響を与える成分;取り込み後の細胞でのポリヌクレオチドの局在性に影響を与える成分(核局在化を介在する薬剤など);およびポリヌクレオチドの発現に影響を与える成分が挙げられる。
【0100】
ベクターに含まれる真核生物の発現カセットは、好ましくは(5’から3’への方向で)タンパク質コード配列に機能的に連結した真核生物転写プロモーター、介在配列を含むスプライスシグナル、および転写終結/ポリアデニル化配列を含有する。
【0101】
a.プロモーター/エンハンサー
「プロモーター」は、転写の開始および速度が調節されている核酸配列の領域である調節配列である。それは、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子などの制御タンパク質および分子が核酸配列の特定の転写を開始するために結合する場合がある遺伝エレメントを含有できる。語句、「機能的に位置した」、「機能的に連結した」、「調節下」および「転写調節下」は、プロモーターが、転写開始および/またはその配列の発現を調節するために核酸配列に関連して正確な機能的位置にあるおよび/または方向にあることを意味する。
【0102】
プロモーターは、RNA合成についての開始部位を位置付けるために機能する配列を一般的に含む。これの最も公知である例は、TATAボックスであるが、例えば哺乳動物の末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ遺伝子に対するプロモーターおよびSV40後期遺伝子に対するプロモーターなどTATAボックスを欠いているいくつかのプロモーターでは、開始部位を覆っている分離したエレメントそれ自体が、開始場所を定めることに役立っている。追加的プロモーターエレメントは、転写開始の頻度を制御する。典型的にはこれらは、開始部位の30〜110bp上流の領域に位置するが、多数のプロモーターは開始部位の下流に機能的エレメントを同様に含有することが示されている。コード配列をプロモーター「の調節下」にするために、それは選択したプロモーターの「下流」(すなわちその3’)転写翻訳領域の転写開始部位の5’末端に位置している。「上流」プロモーターは、DNAの転写を刺激し、コードされたRNAの発現を促進する。
【0103】
プロモーターエレメント間の間隙は、しばしば変動性であり、したがってエレメントが相互に反転または移動する場合にプロモーター機能は保存される。tkプロモーターにおいてプロモーターエレメント間の間隙は、活性が低下し始める前に50bp解離まで増大できる。プロモーターに依存して、個々のエレメントは、転写を活性化するために協調してまたは独立してのいずれでも機能できると考えられている。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用性制御配列を意味する「エンハンサー」と併せて使用されうる、または使用されえない。
【0104】
プロモーターは、コードセグメントおよび/またはエキソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得られることから、天然で核酸配列に付随するものである場合がある。そのようなプロモーターは、「内在性」であると称されうる。同様にエンハンサーは、天然で核酸配列に付随するものである場合があり、配列の下流または上流のいずれかに位置する。別法としてある種の有利点は、コード核酸セグメントを組換えまたは異種性プロモーター(その天然環境では核酸配列に通常付随しないプロモーターを意味する)の調節下に位置付けることによって得られる。組換えまたは異種性エンハンサーもその天然環境では核酸配列と通常付随しないエンハンサーを意味する。そのようなプロモーターまたはエンハンサーとして、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、および任意の他のウイルスまたは原核細胞もしくは真核細胞から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、および「天然には存在」しないプロモーターまたはエンハンサー(すなわち異なる転写制御領域の異なるエレメントおよび/または発現を変化させる変異を含有している)が挙げられる。例えば組換えDNA構築物中で最も慣用されるプロモーターとして、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースおよびトリプトファン(trp)プロモーター系が挙げられる。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成的に産生することに加えて、配列は、本明細書において開示する組成物と関連して、組換えクローニングおよび/またはPCR(商標)を含む核酸増幅技術を使用して産生されうる(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,683,202号および第5,928,906号を参照されたい)。さらに、ミトコンドリア、葉緑体などの非核細胞小器官内の配列の転写および/または発現を方向付ける調節配列も同様に使用されうることが予期される。
【0105】
当然のことながら、発現のために選択された細胞小器官、細胞型、組織、器官または生体においてDNAセグメントの発現を効果的に方向付けるプロモーターおよび/またはエンハンサーを使用することは重要である。分子生物学の分野の当業者は、プロモーター、エンハンサーおよびタンパク質発現のための細胞型組合せの使用を全般に理解している(例えば参照により本明細書に組み込まれるSambrookら、1989年を参照されたい)。使用されるプロモーターは、組換えタンパク質および/またはペプチドの大規模な産生において有利であるなどのように、導入されたDNAセグメントの高いレベルの発現を方向付けるための適切な条件下で構成的、組織特異的、誘導性、および/または有用でありうる。プロモーターは、異種性または内在性でありうる。
【0106】
追加的に、任意のプロモーター/エンハンサー組合せ(例えばEukaryotic Promoter Data Base EPDB、http://www.epd.isb−sib.ch/のとおり)も、発現を駆動するために使用されうる。T3、T7またはSP6細胞質発現系の使用は、可能性のある他の実施形態である。真核細胞は、適切な細菌性ポリメラーゼが送達複合体の一部としてまたは追加的遺伝子発現構築物としてのいずれかで提供される場合には、特定の細菌性プロモーターからの細胞質発現を支持できる。
【0107】
プロモーターの非限定的な例として、SV40初期または後期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)初期プロモーターなどの初期または後期ウイルスプロモーター;例えばベータアクチンプロモーター(Ng、1989年、Quitscheら、1989年)、GADPHプロモーター(Alexanderら、1988年、Ercolaniら、1988年)、メタロチオネインプロモーター(Karinら、1989年、Richardsら、1984年)などの真核細胞プロモーター;ならびにサイクリックAMP応答エレメントプロモーター(cre)、血清応答エレメントプロモーター(sre)、ホルボールエステルプロモーター(TPA)およびミニマルTATAボックス近傍の応答配列プロモーター(tre)などの連鎖状の応答エレメントプロモーター、が挙げられる。ヒト成長ホルモンプロモーター配列(例えばGenbank受入番号X05244、ヌクレオチド283〜341に記載のヒト成長ホルモンミニマルプロモーター)またはマウス乳癌プロモーター(ATCCから入手可能である、Cat.No.ATCC 45007)を使用することも可能である。具体的な例は、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターでありうる。
【0108】
b.開始シグナル
特定の開始シグナルもコード配列の効率的な翻訳のために必要である場合がある。これらのシグナルとして、ATG開始コドンまたは隣接配列が挙げられる。ATG開始コドンを含む外来性翻訳調節シグナルは、提供される必要がある場合がある。当業者は、これを容易に決定でき、必要なシグナルを提供できる。開始コドンは、挿入物全体の翻訳を確実にするために所望のコード配列の読み枠と共に「インフレーム」でなければならないことは周知である。外来性翻訳調節シグナルおよび開始コドンは、天然または合成のいずれであっても良い。発現効率は、適切な転写増強エレメントの包含によって増強されうる。
【0109】
c.多重クローニング部位
ベクターは、多重制限酵素部位を含有する核酸領域であり、任意のそれはベクターを消化するために標準的組換え技術と共に使用されうる多重クローニング部位(MCS)を含みうる(例えば参照により本明細書に組み込まれるCarbonelliら、1999年、Levensonら、1998年およびCocea、1997年を参照されたい)。「制限酵素消化」は、核酸分子中の特定の位置にだけに作用する酵素での核酸分子の触媒的切断を意味する。これらの制限酵素の多くは、商業的に入手できる。そのような酵素の使用は、当業者によって広く理解されている。しばしばベクターは、外来性配列をベクターに連結できるようにするためにMCS内を切断する制限酵素を使用して直線化または断片化される。「連結」は、相互に近接できるまたはできない2つの核酸断片間でのホスホジエステル結合の形成プロセスを意味する。制限酵素および連結反応に関与する技術は組換え技術の当業者に周知である。
【0110】
d.スプライシング部位
転写された真核生物性RNA分子のほとんどは、1次転写物からイントロンを除去するためにRNAスプライシングを受ける。真核生物のゲノム配列を含有するベクターは、タンパク質発現のための転写物の正常なプロセシングを確実にするために供与体および/または受容体スプライシング部位を必要とする場合がある(例えば参照により本明細書に組み込まれるChandlerら、1997年を参照されたい)。
【0111】
e.終結シグナル
本発明のベクターまたは構築物は、少なくとも1つの終結シグナルを含みうる。「終結シグナル」または「ターミネーター」は、RNAポリメラーゼによるRNA転写の特異的終結に関与するDNA配列からなる。したがって特定の実施形態においてRNA転写物の産生を止める終結シグナルが計画される。ターミネーターは、所望のメッセージレベルを達成するためにin vivoにおいて必要な場合がある。
【0112】
真核生物系においてターミネーター領域は、ポリアデニル化部位を露出させるための新たな転写物の部位特異的切断を可能にする特異的DNA配列も含みうる。これは、転写物の3’末端に約200個のA残基の伸長(ポリA)を添加するためのシグナルを特殊化した内在性ポリメラーゼに伝える。このポリAテールで修飾されたRNA分子は、より安定であると考えられ、より効率的に翻訳される。したがって真核生物に関与する他の実施形態において、ターミネーターがRNAの切断のためのシグナルを含むことは好ましく、ターミネーターシグナルがメッセージのポリアデニル化を促進することはより好ましい。ターミネーターおよび/またはポリアデニル化部位エレメントは、メッセージレベルを増強するためおよびカセットから他の配列に読み過ごすことを最小化するために役立ちうる。
【0113】
本発明における使用のために計画されたターミネーターは、これだけに限らないが、例えばウシ成長ホルモンターミネーターなどの遺伝子の終結配列、または例えばSV40ターミネーターなどのウイルス性終結配列が挙げられ、本明細書に記載のまたは当業者に公知の任意の公知の転写のターミネーターを含む。特定の実施形態において終結シグナルは、配列の短縮などによる転写可能なまたは翻訳可能な配列の欠失でありうる。
【0114】
f.ポリアデニル化シグナル
発現、特に真核生物での発現において、転写物の正常なポリアデニル化をもたらすためのポリアデニル化シグナルが典型的には含まれる。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の実施の成功に不可欠ある考えられず、任意のそのような配列が使用されうる。好ましい実施形態は、好都合であり、種々の標的細胞において十分に機能することが公知であるSV40ポリアデニル化シグナルまたはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む。ポリアデニル化は、転写物の安定性を増大させうるか、または細胞質間輸送を促進できる。
【0115】
C.ベクター送達
本発明での再プログラムベクターの体細胞への導入は、本明細書に記載のとおりまたは当業者に公知であるとおり、細胞の形質転換のための核酸送達用の任意の適切な方法を使用できる。そのような方法として、これだけに限らないがex vivoトランスフェクションによる(Wilsonら、1989年、Nabelら、1989年)、マイクロインジェクション(HarlandおよびWeintraub、1985年、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,789,215号)を含むインジェクションによる(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,994,624号、第5,981,274号、第5,945,100号、第5,780,448号、第5,736,524号、第5,702,932号、第5,656,610号、第5,589,466号および第5,580,859号)、電気穿孔法による(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,384,253号、Tur−Kaspaら、1986年;Potterら、1984年)、リン酸カルシウム沈殿法による(GrahamおよびVan Der Eb、1973年;ChenおよびOkayama、1987年;Rippeら、1990年)、DEAEデキストランに続いてポリエチレングリコールを使用することによる(Gopal、1985年)、ダイレクトソニックローディングによる(Fechheimerら、1987年)、リポソーム介在性トランスフェクション(NicolauおよびSene、1982年;Fraleyら、1979年;Nicolauら、1987年;Wongら、1980年;Kanedaら、1989年;Katoら、1991年)および受容体介在性トランスフェクションによる(WuおよびWu、1987年;WuおよびWu、1988年)、微粒子銃による(それぞれ参照により本明細書に組み込まれるPCT出願 WO94/09699および95/06128、米国特許第5,610,042号、第5,322,783号、第5,563,055号、第5,550,318号、第5,538,877号および第5,538,880号)、炭化ケイ素繊維での撹拌による(Kaepplerら、1990年;それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,302,523号および5,464,765号)、アグロバクテリウム介在形質転換による(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,591,616号および第5,563,055号)、プロトプラストのPEG介在形質転換による(Omirullehら、1993年;それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,684,611号および第4,952,500号)、乾燥/阻害介在DNA取り込みによる(Potrykusら、1985年)などのDNAの直接送達およびそのような方法の任意の組合せが挙げられる。これらなどの技術の応用を通じて、(1つもしくは複数の)細胞小器官、(1つもしくは複数の)細胞、(1つもしくは複数の)組織または(1つもしくは複数の)生体は安定的にまたは一過的に形質転換されうる。
【0116】
a.リポソーム介在トランスフェクション
本発明の特定の実施形態において核酸は、例えばリポソームなどの脂質複合体中に捕捉されうる。リポソームは、リン脂質二重膜および内側の水性媒体によって特徴付けられる小胞構造物である。多層状リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水性溶液中に懸濁される場合に自発的に形成する。脂質成分は、閉じた構造の形成前に自己再構成を受け、水を捕捉し、溶質を脂質二重層の間に溶解する(GhoshおよびBachhawat、1991年)。同様に計画されるのは、リポフェクタミン(Gibco BRL)またはスーパーフェクト(Qiagen)と複合体化した核酸である。使用されるリポソームの量は、リポソームの性質および使用される細胞に応じて変動する場合があり、例えば細胞100〜1000万個当たりベクターDNA約5〜約20μgが計画されうる。
【0117】
リポソーム介在核酸送達および外来性DNAのin vitro発現は、良く成功している(NicolauおよびSene、1982年;Fraleyら、1979年;Nicolauら、1987年)。培養ニワトリ胚、HeLa細胞および肝細胞種細胞における外来性DNAのリポソーム介在送達および発現の実現可能性も実証されている(Wongら、1980年)。
【0118】
本発明の特定の実施形態においてリポソームは、血液凝集性ウイルス(HVJ)と複合体形成されうる。このことは、細胞膜との融合を容易にし、リポソームに封入されたDNAの細胞への進入を促進することが示されている(Kanedaら、1989年)。他の実施形態においてリポソームは、核非ヒストン染色体タンパク質(HMG−1)と共に複合体形成されうるまたは使用されうる(Katoら、1991年)。さらなる実施形態においてリポソームは、HVJおよびHMG−1の両方と共に複合体形成されうるまたは使用されうる。他の実施形態において送達ビヒクルは、リガンドおよびリポソームを含みうる。
【0119】
b.電気穿孔法
本発明の特定の実施形態において核酸は、電気穿孔法を介して細胞に導入される。電気穿孔法は、細胞およびDNAの懸濁物の高電圧放電への暴露を含む。レシピエント細胞は、機械的損傷によって形質転換により感受性であるように作製されうる。使用されるベクターの量も使用される細胞の性質に応じて変動する場合があり、例えば細胞100万〜1000万個当たりベクターDNA約5〜約20μgで計画されうる。
【0120】
電気穿孔法を使用する真核生物細胞のトランスフェクションは、非常に良く成功している。この方法でマウスプレBリンパ球は、ヒトカッパ免疫グロブリン遺伝子でトランスフェクトされており(Potterら、1984年)、ラット肝細胞は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子でトランスフェクトされている(Tur−Kaspaら、1986年)。
【0121】
c.リン酸カルシウム法
本発明の他の実施形態において核酸は、リン酸カルシウム沈殿法を使用して細胞に導入される。ヒトKB細胞は、この技術を使用してアデノウイルス5 DNA(GrahamおよびVan Der Eb、1973年)でトランスフェクトされている。同様にこの方法でマウスL(A9)、マウスC127、CHO、CV−1、BHK、NIH3T3およびHeLa細胞は、ネオマイシンマーカー遺伝子でトランスフェクトされ(ChenおよびOkayama、1987年)、ラット肝細胞は種々のマーカー遺伝子でトランスフェクトされた(Rippeら、1990年)。
【0122】
d.DEAE−デキストラン
他の実施形態において核酸は、DEAE−デキストランに続くポリエチレングリコールを使用して細胞に送達される。この方法でレポータープラスミドは、マウス骨髄腫細胞および赤白血病細胞に導入された(Gopal、1985年)。
【0123】
e.ソニケーションローディング
本発明の追加的実施形態は、ダイレクトソニックローディングによる核酸の導入を含む。LTK線維芽細胞は、ソニケーションローディングによってチミジンキナーゼ遺伝子でトランスフェクトされている(Fechheimerら、1987年)。
【0124】
f.受容体介在トランスフェクション
さらに核酸は、受容体介在送達ビヒクルを介して標的細胞へ送達されうる。これらは、標的細胞において生じる受容体介在エンドサイトーシスによる巨大分子の選択的取り込みの有利点を利用する。種々の受容体の細胞型特異的分布を考慮して、この送達方法は別の範囲の特異性を本発明に加える。
【0125】
特定の受容体−介在遺伝子標的化ビヒクルは、細胞受容体−特異的リガンドおよび核酸結合剤を含む。他に核酸が送達される細胞受容体−特異的リガンドが機能的に付着しているものを含む。いくつかのリガンドは、受容体−介在性遺伝子輸送のために使用されており(WuおよびWu、1987年;Wagnerら、1990年;Peralesら、1994年;Myers、EPO 0273085)、技術の実現性を確立している。他の哺乳動物の細胞型との関連における特異的送達は記載されている(参照により本明細書に組み込まれるWuおよびWu、1993年)。本発明の特定の態様において、リガンドは標的細胞集団で特異的に発現される受容体に応じて選択される。
【0126】
他の実施形態において、細胞特異的核酸標的化ビヒクルの核酸送達ビヒクル成分は、リポソームとの組合せで特異的結合リガンドを含みうる。送達される(1つまたは複数の)核酸は、リポソーム中に入れられ、特異的結合リガンドはリポソーム膜中に機能的に組み込まれる。したがってリポソームは、標的細胞の(1つまたは複数の)受容体に特異的に結合し、内容物を細胞に送達する。そのような系は、例えば上皮成長因子(EGF)がEGF受容体の上方制御を示す細胞への核酸の受容体−介在性送達において使用される系を使用して機能的であることが示されている。
【0127】
さらなる実施形態において、標的化された送達ビヒクルの核酸送達ビヒクル成分は、細胞特異的結合を方向付ける1つまたは複数の脂質または糖タンパク質を好ましくは含むリポソームそれ自体であっても良い。例えばラクトシルセラミド、ガラクトース末端アシアロガングリオシド(asialganglioside)は、リポソームに組み込まれ、肝細胞によるインスリン遺伝子の取り込みの増大が観察された(Nicolauら、1987年)。本発明の組織特異的形質転換構築物は、同様の手段で標的細胞へ特異的に送達されうることが予期される。
【0128】
g.微粒子銃
微粒子銃技術は、少なくとも1つの細胞小器官、細胞、組織または生体に核酸を導入するために使用されうる(米国特許第5,550,318号、米国特許第5,538,880号、米国特許第5,610,042号およびPCT出願 WO94/09699それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。この方法は、DNAをコートしたマイクロプロジェクタイルを高速に加速して細胞を殺すことなく細胞膜を貫通し細胞に進入することを可能にする能力に依る(Kleinら、1987年)。当技術分野において公知の多種多様な微粒子銃技術が存在し、その多くは本発明に適用できる。
【0129】
この微粒子銃において1つまたは複数の粒子は、少なくとも1つの核酸でコートされ、推進力によって細胞に送達されうる。小粒子を加速するためのいくつかの装置が開発されている。そのような装置は、次に駆動力をもたらす電流を起こすための高圧放電に依存している(Yangら、1990年)。使用されるマイクロプロジェクタイルは、タングステンまたは金の粒子またはビーズなどの生物学的に不活性な物質からなっている。例示的粒子として、タングステン、プラチナおよび好ましくは金をからなるものが挙げられる。場合により、金属粒子上へのDNA沈殿は、微粒子銃を使用するレシピエント細胞へのDNA送達のために必要ではないことが予期される。しかし、粒子はDNAでコートされるよりむしろDNAを含みうることが予期される。DNAコート粒子は、粒子銃を介するDNA送達のレベルを増大させうるが、それら自体としては必要ではない。
【0130】
照射のために、懸濁物中の細胞はフィルターまたは固形培養培地上に濃縮される。別法として未成熟胚または他の標的細胞は、固形培養培地上に準備される。照射される細胞は、マイクロプロジェクタイル阻止プレート下の適切な距離に置かれる。
【0131】
VI.iPS細胞の選択
本発明の特定の態様において、再プログラムベクターが体細胞に導入された後、これらの細胞は増大のために培養される。細胞は、トランスフェクトされた細胞を濃縮するためにレポーターまたは選択マーカーなどのベクター要素の存在について選択されうる。再プログラムベクターは、これらの細胞において再プログラム要素を発現し、細胞分裂と共に複製および分配する。これらの発現される再プログラム因子は、体細胞ゲノムを自律的多能性状態を確立するために再プログラムし、ベクターの存在についての正の選択が除かれる間または後に、外来性遺伝性要素は、徐々に失われる。導入遺伝子発現のこの抑制は、レポーター遺伝子発現の遮断単独に関してまたは、(それらが多能性胚性幹細胞と実質的に同一であると予測されることから)他の胚性幹細胞特徴についての選択と組み合わせてでの誘導多能性幹細胞の選択を可能にする。
【0132】
A.レポーター遺伝子発現についての選択
本発明の再プログラムベクターを導入された細胞は、レポーターおよび再プログラム因子を同時に発現でき、様々な時点でのレポーター遺伝子発現の存在または不在について選択されうる。例えば細胞は、レポーターの存在について選択されることができ、トランスフェクションはレポーターを使用することによって最適化されうる。誘導多能性幹細胞は、導入遺伝子が再プログラムの際に抑制されることからレポーターの消失について選別されうる。そのような選択または選別は、導入遺伝子発現の指標としてのレポーター遺伝子の発現によって生成される検出可能なシグナルに基づく。
【0133】
検出可能なシグナルは、本発明の方法において使用されるレポーター遺伝子の性質に応じて多数の方法のいずれか1つによって生成されうる。例えば、検出可能なシグナルは、蛍光シグナル例えばGFPなどの発光でありうる。GFPは、基質または補助因子を必要とせずに蛍光シグナルを生じる蛍光ポリペプチドである。GFP発現および検出技術は、当技術分野において周知であり、キットは、例えばClontechから商業的に入手可能である。GFP発現は、無処理細胞においてそれらを溶解する、またはさらなる試薬を添加する必要なくアッセイされうる。別法として検出可能なシグナルは、酵素活性または細胞表面マーカー(例えばLNGFR)の認識の結果として生成されるシグナルでありうる。
【0134】
フローサイトメトリー、例えば蛍光励起細胞分取(FACS)は、レポーター遺伝子発現に基づく検出可能なシグナルについて選択するために慣用される。FACSは、細胞の不均一な混合物を、各細胞に特異的な光散乱および蛍光特徴に基づいて細胞1つずつ2つ以上の容器に選別するための方法を提供する。これは、個々の細胞由来の蛍光シグナルの迅速、客観的かつ定量的な記録および誘導多能性細胞の物理的分離を提供する。
【0135】
ルシフェラーゼも、アッセイの基礎として使用されうる。ルシフェラーゼ発現は、当技術分野において公知であり、ルシフェラーゼ発現および検出のキットは、Clontech(Palo Alto、Calif)から商業的に入手可能である。ルシフェラーゼの存在は、シンチレーション測定によって発光シグナルを測定するよりも、細胞溶解および細胞へのルシフェリン基質の添加によって有利に評価される。
【0136】
酵素に基づくアッセイは、検出が発光を介す必要がないこと以外は、ルシフェラーゼに基づくアッセイと同様のやり方で実施される。検出技術は、酵素に依存し、したがって光学的(β−ガラクトシダーゼの場合など)である場合がある。
【0137】
物理的および生化学的方法も本発明のレポーター遺伝子の発現を同定または定量するために使用されうる。これらの方法として、これだけに限らないが、1)組換えDNA挿入物の構造を検出および決定するためのサザン解析またはPCR増幅、2)遺伝子構築物のRNA転写物を検出および検査するためのノーザンブロット、S−1RNaseプロテクション、プライマー伸長法または逆転写PCR増幅法、3)酵素活性を検出するための酵素アッセイ(そのような遺伝子産物は遺伝子構築物によってコードされている)、4)タンパク質ゲル電気泳動法、ウエスタンブロット技術、免疫沈降または酵素結合免疫測定法(遺伝子構築物産物はタンパク質である)、ならびに5)導入された遺伝子構築物の発現の結果として産生された化合物の生化学的測定が挙げられる。in situハイブリダイゼーション、酵素染色および免疫染色などの追加的技術も特定の細胞におけるレポーター遺伝子の存在または発現を検出するために使用されうる。
【0138】
B.胚性幹細胞特徴についての選択
先行する研究から生成に成功したiPSCは、天然から単離された多能性幹細胞(マウスおよびヒトの胚性幹細胞、それぞれmESCおよびhESCなど)に、以下に関して顕著に類似しており、したがってiPSCの天然から単離された多能性幹細胞との同一性、確実性および多能性を確認した。したがって、本発明において開示される方法から生成される誘導多能性幹細胞は、レポーター遺伝子発現の存在の有無に加えて1つまたは複数の以下の幹細胞特徴に基づいて選別されうる。
【0139】
a.細胞の生物学的特性
形態学:iPSCは、形態学的にESCに類似している。各細胞は、円形、大型の核および乏しい細胞質を有する場合がある。iPSCのコロニーもESCのそれに類似している場合がある。ヒトiPSCはhESCと同様にはっきりした縁の、扁平な、密集したコロニーを形成し、マウスiPSCはmESCと同様にhESCのものよりもあまり扁平でなく、より凝集したコロニーを形成する。
【0140】
増殖特性:幹細胞はそれらの定義の一部として自己再生でなければならないことから、ESCの倍加時間および有糸分裂活性は、礎石となるものである。iPSCは、有糸分裂活性であり、活発に自己再生、増殖し、かつESCと同じ速度で分裂することができる。
【0141】
幹細胞マーカー:iPSCは、ESC上で発現される細胞表面抗原性マーカーを発現できる。ヒトiPSCは、これだけに限らないがSSEA−3、SSEA−4、TRA−1−60、TRA−1−81、TRA−2−49/6EおよびNanogが挙げられるhESCに特異的なマーカーを発現した。マウスiPSCは、mESCと同様にSSEA−1を発現したが、SSEA−3およびSSEA−4は発現しなかった。
【0142】
幹細胞遺伝子:iPSCは、Oct−3/4、Sox2、Nanog、GDF3、REX1、FGF4、ESG1、DPPA2、DPPA4およびhTERTが挙げられる未分化ESCにおいて発現される遺伝子を発現できる。
【0143】
テロメラーゼ活性:テロメラーゼは、細胞分裂約50回でのヘイフリック限界によって制限されない細胞分裂を維持するために必要である。hESCは、自己再生および増殖を維持するために高いテロメラーゼ活性を発現し、iPSCも高いテロメラーゼ活性を示し、テロメラーゼタンパク質複合体において必要な成分、hTERT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)を発現する。
【0144】
多能性:iPSCは、ESCから完全に分化した組織へと同様の様式で分化できる。
【0145】
神経分化:iPSCは、βIII−チューブリン、チロシンヒドロキシラーゼ、AADC、DAT、ChAT、LMX1BおよびMAP2を発現している神経細胞に分化できる。カテコールアミン関連酵素の存在は、iPSCがhESCと同様にドーパミン神経に分化できることを示すことができる。幹細胞関連遺伝子は、分化後に下方制御される。
【0146】
心臓分化:iPSCは、自発的に拍動を開始する心筋細胞に分化できる。心筋細胞は、TnTc、MEF2C、MYL2A、MYHCβおよびNKX2.5を発現した。幹細胞関連遺伝子は、分化後に下方制御される。
【0147】
奇形腫形成:免疫不全マウスに注入されたiPSCは、9週間などの一定時間後に自然発症で奇形腫を形成できる。奇形腫は、3つの胚葉、内胚葉、中胚葉および外胚葉由来の組織を含有する多系統の腫瘍であり、これは、典型的には1つだけの細胞型である他の腫瘍とは違っている。奇形腫形成は多能性についてのランドマーク検査である。
【0148】
胚様体:培養中のhESCは、有糸分裂活性で分化しているhESCのコアおよび3つ全ての胚様由来の完全に分化した周辺の細胞からなる「胚様体」と称される球状の胚様構造を自発的に形成する。iPSCも、胚様体を形成し、周辺の分化した細胞を有しうる。
【0149】
胚盤胞注入:hESCは、胚に分化する胚盤胞の内部細胞塊(胚結節)および胚結節に天然では属し、一方、胚盤胞の殻(栄養膜)は胚体外組織に分化する。中空の栄養膜は、生存している胚を形成できず、したがって胚結節中の胚性幹細胞は分化し、胚を形成する必要がある。雌レシピエントに移される胚盤胞を生成するためにマイクロピペットによって栄養膜に注入されたiPSCは、生存しているキメラマウスの子:それらの身体全体について10%〜90で組み込まれたiPSC誘導体を有するマウスおよびキメラ化を生じうる。
【0150】
b.エピジェニック再プログラム
プロモーター脱メチル化:メチル化は、メチル基のDNA塩基への、典型的にはメチル基のCpG部位の(隣接シトシン/グアニン配列)シトシン分子への転移である。遺伝子の広範なメチル化は、発現タンパク質の活性を抑止し、または発現を妨げる酵素を補充することによって発現を妨げる。したがって遺伝子のメチル化は、転写を阻止することによってそれを効果的に抑制する。Oct−3/4、Rex1およびNanogを含む内在性多能性関連遺伝子のプロモーターは、iPSCにおいて脱メチル化される場合があり、それらのプロモーター活性およびiPSC中の多能性関連遺伝子の活発な促進および発現を示す。
【0151】
ヒストン脱メチル化:ヒストンは、DNA配列に構造的に局在し、種々のクロマチン関連修飾を通じてそれらの活性に影響を与えうる凝縮タンパク質である。Oct−3/4、Sox2およびNanogに付随するH3ヒストンは、Oct−3/4、Sox2およびNanogの発現を活性化するために脱メチル化されうる。
【0152】
VII.iPS細胞の培養
開示の方法を使用して体細胞が再プログラムベクターを導入された後、これらの細胞は多能性を維持するために十分な培地中で培養されうる。本発明において生成される誘導多能性幹(iPS)細胞の培養は、米国特許出願第20070238170号および米国特許出願第20030211603号に記載のとおり霊長類多能性幹細胞、より具体的には胚性幹細胞を培養するために開発された種々の培地および技術を使用できる。
【0153】
例えば、ヒト胚性幹(hES)細胞と同様に、iPS細胞は80%DMEM(Gibco #10829−018または#11965−092)、加熱不活性化していない20%ディファインドウシ胎児血清(FBS)、1%非必須アミノ酸、1mM L−グルタミンおよび0.1mM β−メルカプトエタノール中で維持されうる。別法としてES細胞は、80%Knock−Out DMEM(Gibco #10829−018)、20%血清代替物(Gibco #10828−028)、1%非必須アミノ酸、1mM L−グルタミンおよび0.1mM β−メルカプトエタノールで作製された無血清培地においても維持されうる。使用の直前にヒトbFGFが最終濃度約4ng/mLで添加される(WO99/20741)。
【0154】
ES細胞などのiPS細胞は、SSEA−1、SSEA−3およびSSEA−4(Developmental Studies Hybridoma Bank, National Institute of Child Health and Human Development, Bethesda Md)、ならびにTRA−1−60およびTRA−1−81(Andrewsら、1987年)に対する抗体を使用する免疫組織学的検査またはフローサイトメトリーによって同定されうる特徴的抗原を有する。胚性幹細胞の多能性は、細胞およそ0.5〜10 10 6個を8〜12週齢のオスSCIDマウスの後肢筋肉に注入することによって確認されうる。3つの胚様それぞれの少なくとも1つの細胞型を示す奇形腫が発生する。
【実施例】
【0155】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例において開示される技術が、本発明の実施において十分に機能することが本発明者によって発見された技術を表し、したがってその実施についての好ましい様式を構成すると考えられうることは当業者によって理解されるべきである。しかし当業者は、本開示を考慮して、開示される具体的な実施形態に多数の変更が作製されることができ、なお依然として本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似の結果が得られることを理解すべきである。
【0156】
(実施例1)
レトロウイルスベクターの構築
再プログラム遺伝子および選択マーカーが導入された親レトロウイルスベクターは、Kennedyら(2003年)において既に言及されている。簡潔には、ミニマルベクターは5’および3’MMLV末端反復領域(LTR)を含有し、5’LTRは再プログラムおよび選択のために必要な遺伝子の発現を駆動するために使用されるプロモーターを含有する(図1)。好都合にも、5’LTRのすぐ上流に位置してサイトメガロウイルスプロモーターも存在することからレトロウイルスプラスミドは一過的トランスフェクションのために使用されることができ、プラスミドがウイルス合成のための鋳型として使用される場合には非機能的なままになる。
【0157】
図1に示すとおり、Sox−2、Nanog、Oct4およびLin28は、蛍光タンパク質もコードしているMMLVに基づくレトロウイルス骨格にそれぞれ導入された。Sox−2およびOct4の両方は、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)についての発現をコードしているレトロウイルス骨格中に置かれ、一方NanogおよびLin28は単量体赤色蛍光タンパク質(mRFP)を発現可能である骨格中に置かれた。再プログラムのための遺伝子をコードしている転写物の翻訳は、基準のATG開始コドンで開始し、下流蛍光タンパク質は、脳心筋炎ウイルス由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)を介して翻訳される。
【0158】
(実施例2)
レトロウイルスベクターを使用するウイルスの生成
レトロウイルスベクターをウイルスを生成するために以下の方法において使用した。最初に、Sox−2、Oct4、NanogまたはLin−28をコードする4つのレトロウイルスベクターのそれぞれを別々のトランスフェクション物として調製した。各レトロウイルスベクター10マイクログラムを水疱性口内炎ウイルス偽型糖タンパク質(1μg)、Gagポリメラーゼ(3ug)およびNFkB(1ug)をコードするDNAと別々に混合した。次いでDNAを、500ul OptiMemと混合した。別にポリエチレンイミン(1mg/ml)40マイクロリットルをOptiMem 500μlと混合した。DNA/OptiMem混合物およびPEI/OptiMem混合物は、次いで室温で5分間インキュベートするために置き、次いで合わせて、室温で少なくとも20分間インキュベートされるべきであるおよそ1mlの溶液を得た。
【0159】
本発明者らは、トランスフェクションの日に細胞がおよそ80パーセントコンフルエントとなるような希釈でトランスフェクションの1日前に分割されたSV40 T抗原タンパク質を過発現している293細胞にトランスフェクションする。トランスフェクションの当日に細胞を1×PBSで洗浄し、かつOptiMemまたはDMEM(血清および抗生物質不含有)の4mlを加える。20分間のインキュベーション中に、ひとたび親油性複合体が形成されたら、次いでDNA複合体(1ml)を細胞に滴下で加えた。培地は、37℃でのインキュベーションの4時間後にDMEM、10%ウシ胎児血清もしくは仔ウシ血清および50mM Hepes緩衝塩類溶液で置換した。ウイルスは、トランスフェクションの48時間後にトランスフェクションしたプレートから培地5mlを回収することによって収集した。ウイルス含有培地は、次いで細胞細片を除くために5分間、1000rpmで遠沈し、培地を45umシリンジフィルターを通して濾過する。
【0160】
(実施例3)
細胞の感染およびプレーティング
再プログラムの実行を可能にする感染および環境への移行に関与する手順は、2つの方法のうちの1つに従った。1つの方法は、感染ならびに感染したおよび感染していない細胞の再プログラム用の照射MEF上へのプレーティングを含み、他の方法は、再プログラム化の効率を増強する目的でMEFへの選別法による感染した細胞だけのプレーティングを含んだ。
【0161】
方法1:再プログラム遺伝子を発現しているウイルスで感染させた未選別IMR−90細胞再プログラム
IMR−90細胞は、感染のためのレシピエント宿主として使用され成功しているが、この手順は初代皮膚細胞および造血細胞などの代替えの細胞型の感染に適応可能である。感染の72時間前にIMR−90細胞およそ50000個を6ウエルプレートの各ウエルに接種した。細胞の追加的プレートを各ウイルスについての感染効率の決定における使用のために調製した。例えば1つのウエルの細胞を複数のウイルスよりも単一のウイルスに対するレシピエントにした。感染は、トランスフェクションした293T細胞から新たに収集したウイルスを用いて1〜10の範囲の感染多重度(MOI)で実行した。MOIの範囲は、ウイルス産生のための感染から感染への固有の変動性に依る。
【0162】
感染は、6ウエルプレート内で、最初に培地を除去し、4つのウイルスそれぞれ当容量で最終濃度培地1ml当たり細胞およそ5×10〜1×10個(すなわち最終容量2mlで各ウイルスについて500μl)で置換することにより行った。細胞は、接着したままであり、4℃で2時間ロッキングプラットホーム上に置き、37℃、5%COに置いた。別法として細胞を、感染効率へ顕著な影響なく直ちにインキュベーターに置くことができた。感染当日は、0時点と見なされ、その後の全ての日が感染後と見なされた。次いで感染細胞は、48時間インキュベートされ、その時点で4つ全てのウイルスで感染させた6ウエルプレートの各ウエルからの細胞を0.2〜0.5mlの0.05%トリプシン−EDTAで収集した。細胞は、回収され、プールされ、かつ10%FBSを含む最小基礎培地(M10F)で容量10〜15mlにした。次いでそれらを1000rpm、5分間遠心し、上清を除去し、細胞を抗生物質を含まないM10F 10mlに再懸濁し、照射マウス胎仔線維芽細胞(MEF)の単層の上に蒔いた。
【0163】
MEFを、感染したIMR−90細胞の添加の3日前に0.1%ゼラチンでコートした10cmプレートに1ml当たり細胞およそ7.5×10個の密度で蒔いた。MEFプレーティングの翌日、培地を除去し、FGFを含まないヒトES(hES)培地(80%DMEM−F12、20%Knock−out Serum Replacer、1%非必須アミノ酸、1mM L−グルタミン、0.1mM b−メルカプトエタノール)で置換した。プレーティングの3日後、MEFを1×PBS(CaおよびMg不含有)で1度洗浄し、10ml M10Fに再懸濁した感染IMR−90細胞をMEFに蒔いた。終夜インキュベーションはIMR−90細胞の接着を可能にし、培地をゼブラフィッシュFGF 100ng/mlを含有する馴化培地(CM)10mlで置換した(感染後3日を表す)。CMを、hES培地を高密度照射MEF上で終夜インキュベートし、回収し、100ng/ml zFGFを補充することによって調製した。次いで感染IMR−90細胞は、使用した培地をzFGFを含む新鮮CM 10mlで毎日置換することによって培養した。
【0164】
方法2:再プログラム遺伝子を発現しているウイルスで感染させた選別IMR−90細胞再プログラム
感染は、感染の前に2つの6ウエルプレート全体を1ウエル当たりIMR−90細胞5×10個で接種したことを除いて方法1に示したとおり実施した。感染細胞のより大きなプールは、選別を促進し、選別後の生存率も増強する。選別のための調製においてIMR−90細胞を含有する全てのウエルをトリプシンによって収集し、方法1に示すとおり感染の3日後にプールした。プールした細胞を凝集塊を除くために濾過し、選別まで氷上に保存した。
【0165】
25psiの圧力、チップサイズ測定値10ミクロンでFACs DIVAを、M20F/50mM Hepes緩衝液を含む15mlコニカルチューブに選択された細胞を選別するために使用した。選別は、Oct4およびSox−2発現のレベルに関連する低から中程度のレベルのeGFPならびにNanogおよびLin28のレベルに関連する低から中程度のレベルのmRFPに基づいた。本発明者らは、この実験をLin28の非存在下でも実施し、その場合様々なレベルのNanogを発現している細胞を特異的に選別できた。再プログラムの効率は、Nanogの量の増大と関連し、したがって、mRFP強度によって反映される中程度から高レベルのNanogを発現している細胞を選別した。
【0166】
FACsにより決定したeGFPまたはmRFPについて陽性の細胞の分画によりIMR−90細胞の平均でおよそ85%が各ウイルスに感染しており、細胞約3×10〜2×10個を回収した。細胞を氷上で保存し、それらを蒔くまで選別の間、冷却した。同日、選別した細胞をM10Fの総容量10mlにし、次いで1〜6日前に1ml当たり細胞およそ7.5×10個の密度で蒔いた照射MEFの単層上に置いた。選別後の回復および接着のために細胞をM10F(抗生物質なし)中のMEF上でさらに3日間培養した(MEFは方法1に記載のとおり調製した)。感染の6日後、100ng/mlのゼブラフィッシュFGFを補充した10ml CMをM10Fの代わりに使用し、再プログラムされたコロニーが形成されるまで毎日補充した。
【0167】
(実施例4)
再プログラム細胞の選択
再プログラムされた細胞をまず形態学およびeGFPおよびmRFP発現の消失によって同定した。コロニーは拡大した核および複数の核小体を有する、高度に密集した細胞を含有した。ここで本発明者らは、感染後20〜40日間の範囲の時間枠でコロニーを取った。コロニーは、手作業で取り、照射MEF(1ml当たり細胞7.5×10個)を含有するウエル(48、24から6ウエル)に移した。移した翌日はそれらに補充しないままにし、次いでコロニーが分割および冷凍のために十分な数に増大するまで毎日のCMでの補充を再開した。iPSクローンを、細胞表面マーカー(すなわちSSEA 3、SSEA 4、TRA−1−60、SSEA 1およびOct4)および染色体中の任意の異常を同定するための核型を使用してさらに特徴付けた。
【0168】
本明細書において開示および特許請求される全ての方法は、本開示に照らして過度の実験を行うことなく作製および実行されうる。本発明の組成物および方法は好ましい実施形態の観点から記載されているが、本明細書において記載の方法および方法のステップまたはステップの連続に変更が、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく適応できることは当業者に明らかである。より具体的には化学的および生理学的の両方で関連する特定の薬剤は、本明細書に記載の薬剤を代用でき、同じまたは類似の結果が達成されることは明らかである。当業者に明らかである全てのそのような類似する置換および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義されるとおり、本発明の精神、範囲および概念の範囲内にあると見なされる。
【0169】
参照文献
以下の参照文献は、本明細書において説明するものを捕捉してそれらが例示的手順または他の詳細を提供する範囲において、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0170】
【化1】

【0171】
【化2】

【0172】
【化3】

【0173】
【化4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)転写制御エレメント、ならびに
(b)前記転写制御エレメントに機能的に連結した第1および第2コード配列であって、前記第1コード配列が再プログラム因子をコードし、かつ前記第2コード配列が第2再プログラム因子またはレポーターをコードする、第1および第2コード配列
を含む多シストロン性発現カセットを含む再プログラムベクター。
【請求項2】
前記転写制御エレメントが末端反復配列領域(LTR)を含む、請求項1に記載の再プログラムベクター。
【請求項3】
前記第2コード配列がレポーターをコードする、請求項1に記載の再プログラムベクター。
【請求項4】
前記第2コード配列が第2再プログラム因子をコードする、請求項1に記載の再プログラムベクター。
【請求項5】
前記発現カセットが前記転写制御エレメントに機能的に連結した第3コード配列をさらに含み、前記第3コード配列が再プログラム因子、レポーターまたは選択マーカーをコードする、請求項1に記載の再プログラムベクター。
【請求項6】
前記第3コード配列が選択マーカーをコードする、請求項5に記載の再プログラムベクター。
【請求項7】
前記選択マーカーが抗生物質耐性マーカーである、請求項6に記載の再プログラムベクター。
【請求項8】
前記レポーターが細胞表面マーカー、蛍光タンパク質、エピトープ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼまたはβ−ガラクトシダーゼである、請求項1に記載の再プログラムベクター。
【請求項9】
前記蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)または黄色蛍光タンパク質(YFP)である、請求項8に記載の再プログラムベクター。
【請求項10】
コードされる前記再プログラム因子がSox、Oct、Nanog、Lin28、Klf4またはc−Mycである、請求項1に記載の再プログラムベクター。
【請求項11】
SoxがSox−1、Sox−2、Sox−3、Sox−15またはSox−18である、請求項10に記載の再プログラムベクター。
【請求項12】
OctがOct−4である、請求項10に記載の再プログラムベクター。
【請求項13】
前記再プログラム因子がNanog、Lin28、Klf4またはc−Mycである、請求項10に記載の再プログラムベクター。
【請求項14】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項1に記載の再プログラムベクター。
【請求項15】
前記ベクターがレトロウイルスベクターである、請求項14に記載の再プログラムベクター。
【請求項16】
前記レトロウイルスベクターがマウス白血病ウイルス(MLV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、Akv−MLVまたはSL−3−3−MLVである、請求項15に記載の再プログラムベクター。
【請求項17】
前記ベクターがレンチウイルスベクターである、請求項14に記載の再プログラムベクター。
【請求項18】
前記発現カセットが1つまたは複数のIRESをさらに含む、請求項1に記載の再プログラムベクター。
【請求項19】
前記IRESが、脳心筋炎ウイルスIRES、ピコルナウイルスIRES、口蹄疫ウイルスIRES、A型肝炎ウイルスIRES、C型肝炎ウイルスIRES、ヒトライノウイルスIRES、ポリオウイルスIRES、ブタ水疱病ウイルスIRES、カブモザイクポティウイルスIRES、ヒト線維芽細胞増殖因子2 mRNA IRES、ペスチウイルスIRES、リーシュマニアRNAウイルスIRES、モロニーマウス白血病ウイルスIRES、ヒトライノウイルス14 IRES、アフトウイルスIRES、ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質mRNA IRES、Drosophila Antennapedia mRNA IRES、ヒト線維芽細胞増殖因子2 mRNA IRES、G型肝炎ウイルスIRES、トバモウイルスIRES、血管内皮増殖因子mRNA IRES、コクサッキーB群ウイルスIRES、c−myc癌原遺伝子mRNA IRES、ヒトMYT2 mRNA IRES、ヒトパレコウイルス1型ウイルスIRES、ヒトパレコウイルス2型ウイルスIRES、真核生物開始因子4GI mRNA IRES、Plautia stali腸管ウイルスIRES、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルスIRES、ウシエンテロウイルスIRES、コネキシン43 mRNA IRES、ホメオドメインタンパク質Gtx mRNA IRES、AML1転写因子mRNA IRES、NFカッパB抑制因子mRNA IRES、X連鎖アポトーシス抑制物質mRNA IRES、コオロギ麻痺ウイルスRNA IRES、p58(PITSLRE)プロテインキナーゼmRNA IRES、オルニチンデカルボキシラーゼmRNA IRES、コネキシン−32 mRNA IRES、ウシウイルス性下痢症ウイルスIRES、インスリン様増殖因子I受容体mRNA IRES、ヒト免疫不全ウイルス1型gag遺伝子IRES、ブタコレラウイルスIRES、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスIRES、ランダムオリゴヌクレオチドのライブラリーから選択される短いIRES、ジェンブラナ病ウイルスIRES、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子1 mRNA IRES、Rhopalosiphum padiウイルスIRES、カチオン性アミノ酸輸送体mRNA IRES、ヒトインスリン様増殖因子IIリーダー2 mRNA IRES、ジアルジアウイルスIRES、Smad5 mRNA IRES、ブタテッショウウイルス−1 talfan IRES、Drosophila Hairless mRNA IRES、hSNM1 mRNA IRES、Cbfa1/Runx2 mRNA IRES、エプスタイン−バーウイルスIRES、ハイビスカスクロロティック輪斑ウイルスIRES、ラット下垂体バソプレシンV1b受容体mRNA IRESおよびヒトhsp70 mRNA IRESからなる群から選択される、請求項18に記載の再プログラムベクター。
【請求項20】
前記IRESが脳心筋炎ウイルスIRESである、請求項19に記載の再プログラムベクター。
【請求項21】
誘導多能性幹(iPS)細胞集団を産生するための方法であって、前記方法は、
(a)請求項1から20に記載の1つまたは複数の再プログラムベクターを得るステップ、および
(b)体細胞の集団の細胞に前記再プログラムベクターを導入してiPS細胞集団を提供するステップ
を含む、方法。
【請求項22】
(c)前記集団を増大させるために前記細胞を培養するステップ、および
(d)増大させた前記集団の後代細胞を選択するステップであって、前記後代細胞が胚性幹細胞の1つまたは複数の特徴を有する、ステップ
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップc)が前記体細胞の集団を選択するステップをさらに含み、選択された前記体細胞が前記レポーターを発現する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップc)における前記選択が蛍光励起細胞分取(FACS)、CATアッセイまたは発光アッセイを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
(e)選択された前記後代細胞を培養して、前記iPS細胞集団を提供するステップ
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記1つまたは複数の再プログラムベクターがSoxおよびOctを含む再プログラム因子をコードするコード配列を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記1つまたは複数の再プログラムベクターがリポソームトランスフェクション、電気穿孔法、微粒子銃、リン酸カルシウム、ポリカチオンまたはポリアニオンによって前記細胞に導入される、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記体細胞が哺乳動物体細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記体細胞がヒト体細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記体細胞が線維芽細胞、造血細胞または間葉細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記体細胞が線維芽細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記特徴が前記レポーターの本質的な消失、未分化形態、胚性幹細胞特異的マーカーまたは多能性である、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記特徴が前記レポーターの発現の本質的な消失である、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記特徴が蛍光励起細胞分取(FACS)、CATアッセイまたは発光アッセイによって選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記特徴が未分化形態である、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
前記特徴が、SSEA−3、SSEA−4、Tra−1−60またはTra−1−81、Tra−2−49/6E、GDF3、REX1、FGF4、ESG1、DPPA2、DPPA4およびhTERTからなる群から選択される1つまたは複数の胚性幹細胞特異的マーカーである、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−500005(P2012−500005A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523094(P2011−523094)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/053403
【国際公開番号】WO2010/019569
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(510003830)セルラー ダイナミクス インターナショナル, インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】