説明

mitoNEET発現のアンチセンス変調

インスリン感作抗糖尿病性チアゾロジンジオン(mitoNEET)を結合するミトコンドリア膜からのポリペプチドの一ファミリーの発現を変調するためのアンチセンス化合物、組成物および方法が提供される。組成物は、mitoNEETをコードする核酸に対して標的化されるアンチセンス化合物、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。mitoNEET発現の変調のための、そしてmitoNEETの発現に関連した疾患の治療のためのこれらの化合物の使用方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許仮出願60/431,529号(2002年12月06日提出)(この記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に対してTitle 35, United States Code, §119下での優先権を主張する。
【0002】
産業上の利用分野
本発明は、インスリン感作抗糖尿病性チアゾロジンジオン(「mitoNEET」と呼ばれる)を結合するミトコンドリア膜からのポリペプチドの一ファミリーの発現を変調するための組成物および方法を提供する。特に本発明は、mitoNEETをコードする核酸と特異的にハイブリダイズ可能なアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドに関する。このようなオリゴヌクレオチドは、mitoNEETの発現を変調することが示された。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)または2型糖尿病は、末梢組織、例えば骨格筋、肝臓および脂肪のインスリン体制により特性化される。その結果生じる高血糖症はしばしば、心臓血管性合併症、例えばアテローム硬化症および高血圧症をもたらし得る脂質代謝不良を伴う。
【0004】
チアゾリジンジオンは、インスリン耐性動物における標的組織(骨格筋、肝臓、脂肪)のインスリン感受性を増大する構造的に関連した抗糖尿病性化合物の一群を含む。高血糖症に及ぼすこれらの作用のほかに、チアゾリジンジオンも、NIDDMの動物モデルにおける脂質およびインスリンレベルを低減する。チアゾリジンジオントログリタゾン、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンは、NIDDMに罹患した患者におけるように、NIDD無の発症に先立つ代謝状態であるグルコース耐性損傷に罹患したヒト患者においてこれらの同一の有益な作用を有することが示された(例えばNolan et al., N. Eng. J. Med. 331, 1188-1193, 1994)。それらの作用メカニズムは依然として不明であるが、しかしチアゾリジンジオンはインスリン分泌における、あるいはインスリン受容体結合部位の数または親和性における増大を引き起こさない、ということが既知であり、このことは、チアゾリジンジオンがインスリンシグナル伝達カスケードにおける受容体後事象を増幅する、ということを示唆する(Cola and Morton, New Antidiabetic Drugs(C.J. Bailey and P.R. Flatt, eds.). Smith-Gordon, New York, 255-261, 1990, Chang et al., Diabetes 32: 839-845, 1983)。
【0005】
チアゾリジンジオンは、培養前脂肪細胞系統における分化の有効な誘導物質であることが判明している(Hiragun et al., J. Cell Physiol. 134: 124-130, 1988; Sparks et al., J. Cell. Physiol. 146: 101-109, 1991; Kletzien et al., Mol. Pharmacol. 41: 393-398, 1992)。チアゾリジンジオンピオグリタゾンによる前脂肪細胞系統の処理は、脂肪細胞特異的遺伝子aP2およびアジプシンならびにグルコース輸送タンパク質GLUT−1およびGLUT−4の発現増大を生じる。これらのデータは、in vivoで観察されるチアゾリジンジオンの低血糖作用が脂肪組織により媒介され得る、ということを示唆する。しかしながら全身グルコース使用量への脂肪組織の寄与の概算は1〜3%の範囲に過ぎないので、チアゾリジンジオンの低血糖作用が脂肪細胞における変化により説明され得るか否かは依然として不明である。さらにチアゾリジンジオンは、食欲調節障害に(PCT特許出願WO 94/25026 A1参照)ならびに骨髄脂肪含量に(Williams, et al, Diabetes 42, Supplement 1, p. 59A 1993)関連づけられてきた。
【0006】
ペルオキシソーム増殖因子−活性化受容体γ(PPARγ)は、リガンド活性化転写因子のステロイド/甲状腺/レチノイド超科のオーファン成員である。PPARγは、個々の遺伝子によりコードされる密接に関連したPPARの亜科のうちの1つである(Dreyer et al., Cell 68: 879-887, 1992; Schmidt et al, J. Cell. Physiol. 146: 101-109, 1992; Zhu et al., J. Biol. Chem. 268: 26817-26820, 1993; Kliewer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 7355-7359, 1994)。3つの哺乳類PPARが同定され、PPARα、γおよびNUC−1と命名された。PPARαおよびγの相同体は、カエル類のアフリカツメガエルXenopus laevisにおいて同定されている。しかしながらPPARβと呼ばれる第三のアフリカツメガエルPPARはNUC−1相同体でなく、いずれかまたは両方の種においてさらなる亜型が存在し得る、という示唆をもたらす。
【0007】
PPARは、高(μmole)濃度の長鎖脂肪酸およびペルオキシソーム増殖因子により種々の程度に活性化される(Isseman and Green, Nature 347, 645-650, 1990; Gottlicher, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 4653-4657, 1992)。ペルオキシソーム増殖因子は、除草剤、フタレート可塑剤、ならびにフィブラート系の抗高脂血症薬を含めた構造的に多様な一群の化合物である。これらのデータは、PPARが真正受容体である、ということを示唆するが、一方、これらの化合物の中でPPARと直接相互作用することを示しているものはないので、それらは依然として「オーファン」である。
【0008】
PPARは、レチノイドX受容体とのヘテロ二量体として、PPAR応答素子(PPRE)と呼ばれるDNA配列素子と結合することにより、標的遺伝子の発現を調節する(Keller and Whali, Trends Endocrin. Met. 4: 291-296, 1993で再検討されている)。今日まで、PPREは、ミトコンドリアβ−酸化における重要な酵素である脂肪酸中鎖アシル−CoAデヒドロゲナーゼ、ならびに脂肪細胞中で専ら発現される脂質結合タンパク質であるaP2のペルオキシソームβ−酸化に必要な3つの酵素を含めた脂質代謝を調節するタンパク質をコードする多数の遺伝子のエンハンサーにおいて同定されてきた。脂肪酸および抗高脂血症薬によるPPARの活性化と結び付けて考えられるPPAR標的遺伝子の性質は、脂質恒常性におけるPPARに関する生理学的役割を示差する(Keller and Whali, Trends Endocrin. Met. 4: 291-296, 1993で再検討されている)。
【0009】
PPARγ2と呼ばれるPPARγの2番目のアイソフォームは、マウス脂肪細胞ライブラリーからクローン化された(Tontonoz et al., Genes & Dev. 8, 1224-1234, 1994)。PPARγ1およびγ2は、受容体の最先端N末端の30アミノ酸のみが異なり、単一遺伝子から生じると思われる。PPARγ2は極端に脂肪特異的様式で発現され、その発現は、いくつかの前脂肪細胞系統の分化の経過中に顕著に誘導される。さらにPPARγ2の強制発現は、非脂肪細胞系統における脂肪細胞特異的aP2エンハンサーを活性化するのに十分であることが示された。これらのデータは、PPARγ2が脂肪細胞分化において重要な役割を演じる、ということを示唆する。
【0010】
チアゾリジンジオンピオグリタゾンは、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼレポーター遺伝子の上流に脂質結合タンパク質aP2のエンハンサー/プロモーターを含有するキメラ遺伝子の発現を刺激することが報告された(Harris and Kletzien, Mol. Pharmacol. 45: 439-445, 1994)。検出分析は、ピオグリタゾン応答性に対して応答性である約30 bp領域の同定を導き出した。興味深いことに、個々の研究において、この30 bp断片はPPREを含有することが示された(Tontonoz et al., Genes & Dev. 8: 1224-1234, 1994)。総合すると、これらの研究は、チアゾリジンジオンがPPARとの相互作用による転写レベルでの遺伝子発現を変調する、という可能性を示唆する。
【0011】
インスリン感作チアゾリジンジオンは、乳癌、結腸癌、膵臓癌および肝臓癌における潜在的抗癌剤としての効能を示した(例えばMueller, E. et al., Molecular Cell (1998), 1(3), 465-470; Tanaka, T. et al., Cancer Research (2001), 61(6), 2424-2428; Itami, A. et al., International Journal of Cancer (2001), 94(3), 370-376; Goeke, R. et al., Digestion (2001), 64(2), 75-80; Okano, H et al., Anti-Cancer Drugs (2002), 13(1), 59-65; およびWO/0243716)。
【0012】
核受容体との単なる直接的相互作用はこれらの有望な薬剤の薬理学を説明し得ない、ということを一般的証拠は示唆する。PPAR核受容体を直接ターゲッティングすることにより薬理学に関して改良するための努力は、未だ首尾よく立証されていない。さらなる作用部位が関連し得ると考えられる。チアゾリジンジオンはまた、ミトコンドリアと直接結合し、そして光親和性プローブを用いて、この相互作用に関して考え得る標的として「mitoNEET」と呼ばれる17-kDaタンパク質を標識する、ということをわれわれは示した。
【0013】
非特性化造血性幹/始原細胞タンパク質(MDS029)として記載されるヒトポリペプチドの相同アミノ酸および核酸配列が開示される(GenBank寄託番号NM_018464)。
【0014】
非特性化ネズミポリペプチドの相同アミノ酸および核酸配列が開示される(GenBank寄託番号NM_134007)。
【0015】
アンチセンス技法は、特定の遺伝子産物の発現を低減するための有効な手段として出現しつつあり、したがってmitoNEET発現の変調のための多数の治療、診断および検索用途に独特に有用であることを立証し得る。
【発明の開示】
【0016】
発明の要約
本発明は、mitoNEETをコードする核酸に対してターゲッティングされる、そしてmitoNEETの発現を変調するアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドに向けられる。本発明のアンチセンス化合物を含む製剤およびその他の組成物も提供される。さらに、細胞または組織中のmitoNEETの発現の変調方法であって、上記の細胞または組織を1つまたは複数の本発明のアンチセンス化合物または組成物と接触させることを包含する方法が提供される。さらに治療的または予防的有効量の1つまたは複数の本発明のアンチセンス化合物または組成物を投与することによるmitoNEETの発現に関連した疾患または症状を有することが疑われるかまたはその傾向がある動物、特にヒトの治療方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の詳細な説明
そのいくつかが近年ヒトに用いるために認可された抗糖尿病性チアゾリジンジオンはインスリン増感剤である、ということが当該技術分野で周知である(Hofmann CA. et al., Diabetes Care. 15(8): 1075-8, 1992; Goldstein BJ., Rosiglitazone. International Journal of Clinical Practice. 54(5):333-7, 2000; Lawrence JM. Et al., Pioglitazone. International Journal of Clinical Practice. 54(9): 614-8, 2000)。さらにこれらの化合物の作用の分子メカニズムは、核受容体PPARγの直接的相互作用/変調を包含する、ということは十分に受諾される(Olefsky JM. Et al., Trends in Endocrinology & Metabolism. 11(9): 362-8, 2000; Lenhard JM. Receptors & Channels. 7(4): 249-58, 2001; Lehmann JM. et al., Journal of Biological Chemistry. 270(22): 12953-6, 1995)。したがって代謝性疾患の治療のためのより良好な治療薬を生成するためのこのおよびその他の類似の核受容体のより良好なモジュレーターである他の化合物を見出すために、当該技術分野の熟練者による多くの試みがなされてきた(Willson TM. Et al., Annals of the New York Academy of Sciences. 804: 276-83, 1996; Henke BR. Et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters. 9(23): 3329-34, 1999; Murakami K. et al., Diabetes. 47(12): 1841-7, 1998; Cesario RM. Et al., Molecular Endocrinology. 15(8): 1360-9, 2001; Elbrecht A. et al., Journal of Biological Chemistry. 274(12): 7913-22, 1999; Brown KK. Et al., Diabetes. 48(7): 1415-24, 1999)。アポトーシスおよび炎症の抑制に及ぼすこれらの抗糖尿病化合物の作用のため、このクラスの化合物は、癌の、ならびに神経変性および炎症に関連した疾患の制御に関連性を有すると予測される(Eibl G. et al., Biochemical & Biophysical Research Communications. 287(2): 522-9, 2001; Takashima T. et al., International Journal of Oncology. 19(3): 465-71, 2001; Goke R. et al., Digestion. 64(2): 75-80, 2001; Rohn TT. Et al., Neuroreport. 12(4): 839-43, 2001; Patel L. et al., Current Biology. 11(10): 764-8, 2001)。これらの作用は全て、核受容体、特にPPARγの直接的変調に派生して起こる、ということが一般に受諾されている。他方、プロトタイプのチアゾリジンジオンがミトコンドリアと結合する、ということをわれわれは発見し、そして<17 kDaミトコンドリアタンパク質との特異的結合の部位を突き止めるためにわれわれが用いる新規の光プローブをわれわれは開発した。われわれは生化学的分離技法によりこのタンパク質を同定し、そして質量スペクトル技法によりそのアミノ酸配列を、そして放射能標識光親和性プローブにより架橋される残基を含有するCnBr断片のN末端配列を得た。この配列は、マウスおよびヒトゲノムの両方からのDNA配列から、ならびにウシ腎臓からのハウスライブラリー中に見出される発現配列タグから予測されるようにパブリックドメイン中にのみ、予め存在する。これら3つの種におけるタンパク質の予測配列は、図1に示されている。ウシ脳ミトコンドリアおよびラット肝臓ミトコンドリアからの精製光プローブ架橋タンパク質のナノスプレー質量分光分析により実験的にわれわれが確定したタンパク質のトリプシン断片の配列は、図2に示されている。これらのペプチド配列は、位置62で見出されたメチオニン(M)で開始するわれわれの架橋ウシ脳ミトコンドリアタンパク質のCnBr断片化のN末端シーケンシングと一致する。われわれの発見の重要な構成成分は、この実際のタンパク質がミトコンドリア中に存在し(2つの種からの2組織)、そしてタンパク質は予期せぬことにインスリン増感剤分子の直接認識に関与する、ということである。われわれの発見は、その発現および素因の調節に関与するこのタンパク質および因子の使用を可能にして、新規の療法および療法的戦略を発見する。
【0018】
本発明は、mitoNEETをコードする核酸分子の機能を変調し、最終的には産生されるmitoNEETの量を変調するのに使用するために、オリゴマーアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドを用いる。これは、mitoNEETをコードする1つまたは複数の核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス化合物を提供することにより成し遂げられる。本明細書中で用いる場合、「標的核酸」および「mitoNEETをコードする核酸」という用語は、mitoNEETをコードするDNA、このようなDNAから転写されるRNA(例えばプレ−mRNAおよびmRNA)を、そしてこのようなRNA由来のcDNAも包含する。その標的核酸とのオリゴマー化合物の特異的ハイブリダイゼーションは、核酸の正常機能を妨害する。それと特異的にハイブリダイズする化合物による標的核酸の機能のこの変調は、一般に「アンチセンス」と呼ばれる。妨害されるDNAの機能としては、複製および転写が挙げられる。妨害されるRNAの機能としては、全ての生命機能、例えばタンパク質翻訳の部位へのRNAの転位、RNAからのタンパク質の翻訳、1つまたは複数のmRNA種を産生するためのRNAのスプライシング、ならびにRNAに関与されるかまたはRNAにより促進され得る触媒活性が挙げられる。標的核酸機能のこのような妨害の全体的作用は、mitoNEETの発現の変調である。本発明の情況では、「変調」とは、遺伝子の発現の増大(刺激)または低減(抑制)を意味する。本発明の情況では、抑制は遺伝子発現の変調の好ましい形態であり、そしてmRNAは好ましい標的である。
【0019】
アンチセンスのために特定の核酸をターゲッティングするのが好ましい。特定の核酸に対してアンチセンス化合物を「ターゲッティング」することは、本発明の情況では、多段階工程である。工程は通常は、その機能が変調されるべきものである核酸配列の同定で開始する。これは、例えば、その発現が特定の障害または疾患と関連する細胞遺伝子(または遺伝子から転写されたmRNA)、あるいは感染作因からの核酸分子であり得る。本発明において、標的はmitoNEETをコードする核酸分子である。ターゲッティング工程は、所望の作用、例えばタンパク質の発現の検出または変調が生じるよう、アンチセンス相互作用が起こるこの遺伝子内の単数または複数の部位の確定も包含する。本発明の情況内では、好ましい遺伝子内部位は、遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始または終止コドンを包含する領域である。当該技術分野で既知であるように、翻訳開始コドンは典型的には5’−AUG(転写mRNA分子において;対応するDNA分子では5’−ATG)であるため、翻訳開始コドンは「AUGコドン」、「開始コドン」または「AUG開始コドン」とも呼ばれる。少数の遺伝子は、RNA配列5’−GUG、5’−UUGまたは5’−CUGを有する翻訳開始コドンを有し、そして5’−AUA、5’−ACGおよび5’−CUGはin vivoで機能することが示されている。したがって「翻訳開始コドン」および「開始コドン」という用語は、各場合におけるイニシエーターアミノ酸が典型的にはメチオニン(真核生物の場合)またはホルミルメチオニン(原核生物の場合)であったとしても、多数のコドン配列を包含し得る。真核生物および原核生物遺伝子は2つまたはそれ以上の代替的開始コドンを有し、そのうちのいずれか1つが好ましくは特定の細胞がたまたは組織中での、あるいは特定組の条件下での翻訳開始のために利用され得る、ということも当該技術分野で既知である。本発明の情況では、「開始コドン」および「翻訳開始コドン」とは、このようなコドンの配列(単数または複数)に関係なく、mitoNEETをコードする遺伝子から転写されたmRNA分子の翻訳をin vivoで開始するために用いられる単数または複数のコドンを指す。
【0020】
遺伝子の翻訳終止コドン(または「停止コドン」)は、3つの配列、即ち5’−UAA、5’−UAGおよび5’−UGA(対応するDNA配列はそれぞれ5’−TAA、5’−TAGおよび5’−TGAである)のうちの1つを有し得る、ということも当該技術分野で既知である。「開始コドン領域」および「翻訳開始コドン領域」という用語は、このようなmRNAの一部、あるいは翻訳開始コドンからいずれかの方向(即ち5’または3’)に約25〜約50連続ヌクレオチドを包含する遺伝子を指す。同様に、「停止コドン領域」および「翻訳終止コドン領域」という用語は、このようなmRNAの一部、あるいは翻訳終止コドンからいずれかの方向(即ち5’または3’)に約25〜約50連続ヌクレオチドを包含する遺伝子を指す。
【0021】
翻訳開始コドンおよび翻訳終止コドン間の領域を指すことが当該技術分野で既知であるオープンリーディングフレーム(ORF)または「コード領域」も、有効にターゲッティングされ得る領域である。他の標的領域としては、翻訳開始コドンから5’方向でのmRNAの一部を指すことが当該技術分野で既知であり、したがってmRNAの5’キャップ部位および翻訳開始コドンまたは遺伝子上の対応するヌクレオチドを含む5’非翻訳化領域(5’UTR)、ならびに翻訳終止コドンから3’方向のmRNAの一部を指すことが当該技術分野で既知であり、したがって翻訳終止コドンおよびmRNAの3’末端間のヌクレオチドまたは遺伝子上の対応するヌクレオチドを含む3’非翻訳化領域(3’UTR)が挙げられる。mRNAの5’キャップは、5’−5’三リン酸結合を介してmRNAの5’−のほとんどの残基に連結されるN7−メチル化グアノシン残基を含む。mRNAの5’キャップ領域は、5’キャップ構造それ自体、ならびにキャップに隣接する最初の50ヌクレオチドを含むと考えられる。5’キャップ領域も、好ましい標的領域であり得る。
【0022】
いくつかの真核生物mRNA転写体は直接的に翻訳されるが、しかし多くは、翻訳される前に転写体から切り取られる「イントロン」として既知である1つまたは複数の領域を含有する。残りの(したがって翻訳された)領域は「エキソン」として既知であり、一緒にスプライスされて、連続mRNA配列を形成する。mRNAスプライス部位、即ちイントロン−エキソン接合部も好ましい標的領域であり、異常スプライシングが疾患に関連する場合、あるいは特定のmRNAスプライス産物の過剰産生が疾患に関連する場合には、特に有用である。再配列または欠失のための異常融合接合部も、好ましい標的である。イントロンはまた、例えばDNAまたはプレmRNAに対して標的化されるアンチセンス化合物のための有効な、したがって好ましい標的領域であり得る、ということも見出されている。
【0023】
一旦1つまたは複数の標的部位が同定されれば、所望の作用を生じるのに十分に標的と相補的であり、即ち十分良好にハイブリダイズし、そして十分な特異性を有するオリゴヌクレオチドが選択される。
【0024】
本発明の情況では、「ハイブリダイゼーション」とは、相補的ヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基間の、ワトソン−クリック、フーグスティンまたは逆フーグスティン水素結合であり得る水素結合を意味する。例えばアデニンおよびチミンは相補的核酸塩基であり、これらは水素結合の形成により対合する。「相補的」とは、本明細書中で用いる場合、2つのヌクレオチド間の的確に対合する能力を指す。例えばオリゴヌクレオチドのある位置でのヌクレオチドがDNAまたはRNA分子の同一位置のヌクレオチドと水素結合し得る場合には、オリゴヌクレオチドおよびDNAまたはRNAはその位置で互いに相補的であるとみなされる。オリゴヌクレオチドおよびDNAまたはRNAは、各分子中の十分数の対応する一が互いと水素結合し得るヌクレオチドにより占められる場合、互いに相補的である。したがって「特異的にハイブリダイズ可能である」および「相補的な」とは、オリゴヌクレオチドおよびDNAまたはRNA標的間に安定且つ特異的な結合が生じるような十分程度の相補性または的確な対合を示すために用いられる用語である。アンチセンス化合物の配列は、特異的にハイブリダイズ可能であるべきその標的核酸の配列と100%相補的である必要はない、と当該技術分野では理解される。化合物と標的DNAまたはRNA分子との結合が標的DNAまたはRNAの正常機能を妨害して、有用性の損失を引き起こす場合、そして特異的結合が所望される条件下で、即ちin vivo検定または療法的処置の場合には生理学的条件下で、そしてin vitro検定の場合には検定が実施される条件下で、アンチセンス化合物と非標的配列との非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性が存在する場合、アンチセンス化合物は特異的にハイブリダイズ可能である。
【0025】
アンチセンス化合物は、研究試薬および診断薬として一般に用いられる。例えば精巧な特異性で遺伝子発現を抑制し得るアンチセンスオリゴヌクレオチドはしばしば、特定の遺伝子の機能を解明するために当業者に用いられる。アンチセンス化合物は、例えば生物学的経路の種々の成員の機能間を識別するためにも用いられる。したがってアンチセンス変調は、研究用途のために利用されてきた。
【0026】
アンチセンスの特異性および感受性は、治療用とのためにも当業者に利用される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、動物およびヒトにおける疾患状態の治療における療法部分として用いられてきた。アンチセンスオリゴヌクレオチドは安全且つ有効にヒトに投与されてきており、そして多数の臨床試験が目下進行中である。したがって、オリゴヌクレオチドは細胞、組織および動物、特にヒトの治療のための治療レジメンにおいて有用であるよう設計され得る有用な療法的様式であり得る、ということが確立される。本発明の情況では、「オリゴヌクレオチド」という用語は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)あるいははそれらの模倣物のオリゴマーまたはポリマーを指す。この用語は、天然核酸塩基、糖および共有ヌクレオシド間(主鎖)結合からなるオリゴヌクレオチド、ならびに同様に機能する非天然部分を有するオリゴヌクレオチドを包含する。このような修飾または置換オリゴヌクレオチドはしばしば、望ましい特性、例えば細胞取り込み増強、核酸標的に対する親和性増強、およびヌクレアーゼの存在下での安定性増大のため、ネイティブ形態を上回って選択される。X症候群(代謝症候群を含む)は、高インスリン血症、肥満、トリグリセリドのレベル上昇、尿酸、20フィブリノーゲン、小型高密度LDL粒子、プラスミノーゲン活性剤阻害剤1(PAI−1)、およびHDLcのレベル低減を含めた異常の収集物として大雑把に定義される。
【0027】
同様の代謝症状としては、異脂肪血症、例えば関連糖尿病性異脂肪血症および混合異脂肪血症、X症候群(本出願において定義される場合、これは代謝性症候群を包含する)、心不全、高コレステロール血症、心臓血管性疾患、例えばアテローム硬化症、動脈硬化症、および高トリグリセリド血症、II型真正糖尿病、I型糖尿病、インスリン耐性、高脂血症、炎症、上皮過増殖性疾患25、例えば湿疹および乾癬、ならびに肺および腸に関連した症状、ならびに肥満、食欲不振、過食症および神経性食欲不振のような障害に罹患した被験者における食欲および食物摂取の調節が挙げられる。特に本発明の化合物は、糖尿病および心臓血管性疾患、ならびにアテローム硬化症、動脈硬化症、高トリグリセリド血症および混合性異脂肪血症を含めた症状の治療および予防に有用である。
【0028】
心臓血管性、新脈管形成性および内皮性検定における活性を有する、および/またはその遺伝子産物が心臓血管系に局在することが判明したmitoNEETまたはそのモジュレーターは、種々の心臓血管性、内皮および新脈管形成性障害、例えば血管に影響を及ぼす全身性障害、例えば真正糖尿病における療法的用途を有すると思われる。その療法的有用性は、動脈、毛管、静脈および/またはリンパ管の疾患を包含する。以下に記載するような治療の例としては、筋肉消耗性疾患の治療、骨粗鬆症の治療、移植片周囲の細胞の増殖を刺激するための、したがってその意図された部位へのその結合を促すための移植片固定の助成、組織中または血清中のIGF安定性の増大、そして適用可能な場合には、IGF受容体への結合増大(IGFはヒト骨髄赤血球および顆粒球始原細胞成長をin vitroで増強することが示されているため)が挙げられる。
【0029】
mitoNEETまたはそのモジュレーターはまた、赤血球生成または顆粒球生成を刺激するため、創傷治癒または組織再生および組織、例えば結合組織、皮膚、骨、軟骨、筋肉、肺または腎臓の再成長に関係する関連療法を刺激するため、内皮細胞の移動を刺激するかまたは抑制するため、そして血管平滑筋の成長および内皮細胞産生を拡大するために用いられ得る。MitoNEETまたはアゴニストにより媒介される新脈管形成の増大は、虚血組織に、および心臓における側副冠動脈発達とその後の冠動脈狭窄に有益である。
【0030】
アンタゴニストを用いて、このようなポリペプチドの作用を抑制し、例えばmitoNEETがこのような産生を促進する場合、創傷治癒または肺繊維症中の過剰結合組織の産生を制限する。これは、急性心筋梗塞および心不全の治療を包含する。
【0031】
さらに本発明は、根元的原因とは関係なく、治療的有効量のmitoNEETあるいはそれに対するアゴニストまたはアンタゴニストを投与することによる心肥大の治療を提供する。
【0032】
目的がヒト患者の治療である場合、mitoNEETは好ましくは組換えヒトmitoNEETポリペプチド(rhmitoNEETポリペプチド)である。心肥大のための治療は、種々の多様な病理学的症状、多と心筋梗塞、高血圧、肥大性心筋症および弁閉鎖不全症に起因し得るその種々の段階のいずれかで実施され得る。治療は、根元的心臓障害とは関係なく、心筋の構造的損傷を伴ってまたは伴わずに、心肥大の進行の全段階に及ぶ。
【0033】
当該分子に対するアンタゴニストと対比して、任意の特定の適応症のために、分子それ自体を用いるかまたはそのアゴニストを使用するかの決定は、本明細書中の分子が心臓血管新生、内皮細胞の発生または新脈管形成を促すか、あるいはこれらの症状を抑制するかに主としてよっている。例えば分子が新脈管形成を促進する場合、そのアンタゴニストは、新脈管形成を制限するかまたは防止するのが望ましい障害の治療のために有用である。このような障害の例としては、血管性腫瘍、例えば血管腫、腫瘍新脈管形成、糖尿病性網膜症または未熟児網膜症に関連した網膜、脈絡膜または角膜における新血管新生、あるいは黄斑変性および増殖性硝子体網膜症、慢性関節リウマチ、クローン病、アテローム硬化症卵巣過刺激、乾癬、新血管新生を伴う子宮内膜症、バルーン血管形成術後の再狭窄、例えば術後に生じるケロイドで観察される干からびた組織の過剰産生、心筋梗塞後の繊維症、または肺繊維症に関連した繊維性病変が挙げられる。
【0034】
しかしながら分子が新脈管形成を抑制する場合、それは上記の症状の治療のために直接用いられる、と予測される。
【0035】
他方、分子が新脈管形成を刺激する場合、それは、新脈管形成が所望される適応症、例えば末梢血管性疾患、高血圧症、炎症性vasculitide、レイノー病およびレイノー現象、動脈瘤、動脈再狭窄、血栓静脈炎、リンパ管炎、リンパ水腫、創傷治癒および組織修復、虚血再還流損傷、アンギナ、心筋梗塞、例えば急性心筋梗塞、慢性心臓症状、心不全、例えばうっ血性心不全、ならびに骨粗鬆症のためにそれ自体(またはそのアゴニスト)用いられる。
【0036】
しかしながら分子が新脈管形成を抑制する場合、そのアンタゴニストは、新脈管形成が望ましい症状の治療のために用いられる。
【0037】
mitoNEETあるいはそのアゴニストまたはアンタゴニストが血管関連薬剤ターゲッティングのために有用であるとして、あるいは障害の治療または予防のための療法的標的として役立ち得る特定の種類の疾患が、いかに記載される。
【0038】
アテローム硬化症は、脂質の蓄積、平滑筋細胞の増殖、ならびに動脈壁内の繊維性組織の形成のため、動脈の内膜肥厚のプラーク蓄積により特性化される疾患である。当該疾患は、任意の器官における大、中および小動脈に影響を及ぼし得る。内皮および血管平滑筋細胞機能における変化は、これらのプラークの蓄積および退行を変調するに際して重要な役割を演じることが既知である。
【0039】
高血圧症は、全身動脈、肺動脈または門脈系における血管圧上昇により特性化される。高圧は、損傷内皮機能および/または血管性疾患に起因するかまたはそれらを生じ得る。
【0040】
炎症性vasculitideとしては、巨大細胞動脈、高安動脈炎、結節性多発性動脈炎(細血管性形態を含む)、川崎病、顕微鏡的polyarightis、ウェーゲナー肉芽腫症、ならびに種々の101の感染関連血管性疾患(例えばヘーノホ・シェーンライン紫斑病)が挙げられる。内皮細胞機能変更は、これらの疾患において重要であることが示されている。レイノー病およびレイノー現象は、寒冷への曝露時の四肢を通る循環の断続的異常障害により特性化される。内皮細胞機能変化は、この疾患において重要であることが示されている。
【0041】
動脈瘤は、内皮細胞および/または血管平滑筋細胞の変化に関連する動脈または静脈樹の嚢状または紡錘状拡張である。
【0042】
動脈再狭窄(動脈壁の再狭窄)は、内皮細胞および血管平滑筋細胞の機能および増殖における変化の結果として血管形成術後に起こり得る。
【0043】
血栓性静脈炎およびリンパ管炎は、内皮細胞機能の変化に起因するかおよび/またはそれを生じ得る、それぞれ静脈およびリンパ管の炎症性障害である。同様にリンパ水腫は、内皮細胞機能に起因するリンパ管損傷を包含する症状である。
【0044】
良性および悪性血管性腫瘍は、血管系の細胞素子の異常増殖および成長により特性化される。例えばリンパ管腫は、通常新生児に起こるリンパ管の先天性の、しばしば嚢胞性の形成異常であるリンパ系の良性腫瘍である。
【0045】
嚢胞性腫瘍は、隣接組織中に成長しがちである。嚢胞性腫瘍は通常は、頚部および腋窩領域に生じる。それらは四肢の銃組織中にも生じ得る。主な症候は、結合組織に取り囲まれたリンパ管およびリンパ球の拡張、時として網状構造化である。
【0046】
リンパ管腫は、不適正に連結された胚性リンパ管またはそれらの欠損により引き起こされると考えられる。結果は、局所的リンパ排液減損である。
【0047】
mitoNEETのアンタゴニストに関する別の用途は、それを増殖させおよび/または転移させる腫瘍の血管新生を包含する腫瘍新脈管形成の防止においてである。この工程は、新しい血管の成長によっている。腫瘍新脈管形成を包含する新生物および関連症状の例としては、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、肝臓癌、卵巣癌、莢膜腫、卵巣男性胚細胞腫、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮内膜過形成、子宮内膜症、繊維肉腫、絨毛膜癌、頭部および頚部癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、肝芽細胞腫、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚癌、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、膵臓癌、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、膠芽細胞腫、シュワン細胞腫、乏突起神経膠腫、髄芽腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、尿路癌、甲状腺癌、ウィルムス腫瘍、腎細胞癌、前立腺癌、母斑症に関連した異常血管増殖、水腫(例えば脳腫瘍に関連するもの)およびメイグス症候群が挙げられる。
【0048】
加齢性黄斑変性(AMD)は、高齢者集団における重症視覚損失の主因である。滲出型のAMDは、脈絡膜血管新生および網膜色素上皮細胞剥離により特性化される。脈絡膜新血管新生は予後の劇的悪化に関連づけられるため、mitoNEETのアゴニストはAMDの重症度低減に有用であると予測される。
【0049】
外傷の治癒、例えば創傷治癒および組織修復も、mitoNEETまたはそのアゴニストのための標的化用途である。新血管の形成および退行は、組織治癒および修復に不可欠である。この範疇は、熱傷、切り傷および潰瘍の治療における骨、軟骨、腱、靭帯および/または神経組織成長または再生、ならびに創傷治癒および組織修復および置換を含む。
【0050】
骨が普通では形成されない状況での軟骨および/または骨成長を誘導するmitoNEETまたはそのモジュレーターは、ヒトおよびその他の動物における骨折および軟骨損傷または欠損の治癒に用途を有する。MitoNEETあるいはそのアゴニストまたはアンタゴニストを用いるこのような製剤は、閉鎖ならびに開放骨折低減において、ならびに人工関節の固定改善においても予防的用途を有し得る。骨原性作用物質により誘導されるde novo骨形成は、先天性、外傷誘導性または腫瘍学的切除誘導性頭蓋顔面欠損の修復に寄与し、そして美容形成外科においても有用である。
【0051】
mitoNEETまたはそのモジュレーターは、非治癒創傷、例えば褥瘡性潰瘍、血管不全、外科的および外傷性創傷に関連した潰瘍等(これらに限定されない)のより良好なまたはより迅速な閉鎖を促進するためにも有用であり得る。
【0052】
mitoNEETモジュレーターは、他の組織、例えば器官(例えば膵臓、肝臓、小腸、腎臓、皮膚または内皮細胞)、筋肉(平滑筋、骨格筋または心筋)、および血管(例えば血管内皮)組織、の生成または再生のための、あるいはこのような組織を含む細胞の成長を促すための活性も示し得る、と予測される。所望の作用の一部は、正常組織を再生させる繊維性瘢痕の抑制または変調によるものであり得る。
【0053】
mitoNEETモジュレーターは、腸の保護または再生、ならびに肺または肝臓繊維症、種々の組織における再還流損傷、および全身性サイトカイン損傷に起因する症状の治療のためにも有用であり得る。さらにまたmitoNEETまたはそのモジュレーターは、前駆体組織または細胞からの上記の組織の分化を促進するかまたは抑制するために、あるいは上記の組織の成長を抑制するために有用であり得る。
【0054】
mitoNEETモジュレーターは、歯周病の治療に、ならびにその他の歯修復工程にも用いられ得る。このような作用物質は、骨形成細胞を引き付け、骨形成細胞の成長を刺激し、または骨形成細胞の始原細胞の分化を誘導するための環境を提供し得る。血管が骨代謝回転および成長の調節に重要な役割を演じるため、MitoNEETあるいはそのアゴニストまたはアンタゴニストは、例えば骨および/または軟骨修復の刺激による、あるいは炎症または炎症過程により媒介される組織崩壊(コラゲナーゼ活性、破骨活性等)の工程を遮断することによる骨粗鬆症または変形性関節炎の治療にも有用である。
【0055】
mitoNEETまたはそのモジュレーターの属性と考えられ得る別の種類の組織再生活性は、腱/靭帯形成である。このような組織が普通では形成されない状況における腱/靭帯様組織または他の組織形成を誘導するタンパク質は、ヒトおよびその他の動物における腱または靭帯の裂傷、変形、ならびにその他の腱または靭帯欠陥の治癒に用途を有する。このような製剤は、腱または靭帯組織への損傷を防止するに際して予防的用途を、ならびに骨または他の組織への腱または靭帯の固定改善に、そして腱または靭帯組織に対する欠損の修復においても用途を有し得る。MitoNEETあるいはそのアゴニストまたはアンタゴニストの組成物により誘導されるde novo腱/靭帯様組織形成は、先天性、外傷誘導性またはその他の起源の他の腱または靭帯欠損の修復に寄与し、そして腱または靭帯の結合または修復のための美容形成外科においても有用である。本明細書中の組成物は、腱−または靭帯形成細胞を引き付け、腱−または靭帯形成細胞の成長を刺激し、腱−または靭帯形成細胞の始原細胞の分化を誘導し、あるいはin vivoでの回復のために組織修復を実行するために腱/靭帯細胞または始原細胞のex vivoでの成長を誘導するための環境を提供し得る。本明細書中の組成物は、腱炎、手根管症候群、およびその他の腱または靭帯欠損の治療にも有用であり得る。組成物は、適切なマトリックスおよび/または封鎖剤も、当該技術分野で周知であるような担体と同様に含み得る。
【0056】
mitoNEETまたはそのモジュレーターは、神経細胞の増殖のため二、そして神経および脳組織の再生のため二、即ち中枢および末梢神経系疾患およびニューロパシー、ならびに神経細胞または神経組織に対する変性、死または外傷を包含する機械的および外傷性障害の治療のためにも有用であり得る。特にmitoNEETまたはそのアゴニストは、末梢神経系の疾患、例えば末梢神経損傷、末梢性ニューロパシーおよび限局性ニューロパシー、ならびに中枢神経系疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症およびシャイ・ドレーガー症候群の治療に用いられ得る。本発明に従って治療され得るさらなる症状としては、機械的および外傷性障害、例えば脊髄障害、頭部外傷、ならびに脳血管性疾患、例えば卒中が挙げられる。化学療法またはその他の医学療法に起因する末梢性ニューロパシーも、mitoNEETのアゴニストまたはアンタゴニストを用いて治療可能であり得る。
【0057】
虚血−再還流損傷は、もう一つの適応症である。内皮細胞機能不全は、虚血−再還流損傷後に起こる事象の続発症の開始の、そして調節の療法において重要であり得る。
【0058】
慢性関節リウマチは、さらなる適応症である。血管成長および血管系による炎症細胞のターゲッティングは、慢性関節リウマチおよび血清陰性形態の関節炎の病因における重要な構成成分である。
【0059】
mitoNEETまたはそのモジュレーターは、症状の進行を防止するために、そして突然死、例えば無症候性患者の死を回避するために、心肥大患者に予防的にも投与され得る。このような予防的療法は、大左心室心肥大(成人で最大壁厚35 mmまたはそれ以上、あるいは小児ではそれに匹敵する値)と診断された患者の場合、あるいは心臓に及ぼす血行動態的荷重が特に大きい場合に、特に保証される。
【0060】
mitoNEETまたはそのモジュレーターは、肥大性心筋症と診断された患者のかなりの部分において発症する心房細動の管理にも有用であり得る。さらなる適応症としては、アンギナ、心筋梗塞、例えば急性心筋梗塞、ならびに心不全、例えばうっ血性心不全が挙げられる。付加的非新生物性症状としては、感染性、糖尿病性およびその他の増殖性網膜症、例えば未熟児網膜症、水晶体後繊維増殖症、血管新生性緑内障、甲状腺過形成(例えばグレーブス病)、角膜およびその他の組織の移植、慢性炎症、肺炎症、ネフローゼ症候群、子癇前症、腹水症、心膜滲出液(例えば心膜炎に関連したもの)、ならびに胸水が挙げられる。
【0061】
上記を考慮して、内皮、上皮または特殊化細胞機能、増殖および/または形態を変更するかまたは影響を及ぼすことが示されている本明細書中に記載されたmitoNEETまたはそのモジュレーターは、上記の障害の多くのまたは全ての病因または病原に重要な役割を演じると思われ、このようなものとして、これらの過程を増大するかまたは抑制するための治療用標的として、あるいはこれらの障害における血管関連薬ターゲッティングのために役立ち得る。
【0062】
糖尿病に関する検定
mitoNEETおよび/またはmitoNEET関連タンパク質と相互作用する化合物に関して試験するために、種々の検定が用いられ得る。例えばmitoNEETとの直接的相互作用の評価のほかに、化合物は、mitoNEETと関連する酵素活性に影響を及ぼす能力に関して評価され得る。この例としては、特にミトコンドリアにおける脂肪酸酸化に関与する酵素が挙げられるが、これらに限定されない。このアプローチの一例は、mitoNEETを含有する単離膜または無傷ミトコンドリアを用いた脂肪アシル−CoAエステルのβ−酸化の速度を測定することである。代謝産物は、HPLCにより、あるいは補因子または基質の還元の速度により査定されるような生成物の出現により測定される(例えば図9)。これらの酵素活性に関してmitoNEET活性の変調時に活性である化合物は次に、無傷細胞(例えば肝細胞、脂肪細胞等)において評価され得るが、この場合、中間産物は、細胞からの抽出後にHPLしにより測定される。これらの検定においてmitoNEET活性を変調する、そして治療薬になるのに適切な特性(例えば生物学的利用能、半減期等)も含有する活性化合物は次に、循環グルコースおよびインスリンレベルの低下ならびにインスリン依存性遺伝子発現の改善といったような糖尿病に動物モデルにおける抗糖尿病作用を生じると予測される(例えばHofmann, C., Lornez, K., and Colca, J.R. (1991) Endocrinology, 129: 1915-1925; Hofmann, C., Lornez, K., and Colca, J.R. (1992) Endocrinology, 130: 735-740)。
【0063】
心臓血管、内皮および血管形成活性に関する検定
種々の検定を用いて、心臓血管、内皮および血管形成活性に関して本明細書中のmitoNEETを試験し得る。このような検定としては、以下の実施例に提示されたものが挙げられる。
【0064】
米国特許第5,773,414号に開示されたような内皮アンタゴニスト活性に関して試験するための検定としては、受容体検定におけるヨウ素化エンドセリン−1結合を抑制するその能力に関してmitoNEETが試験されるラット心室結合検定、ウサギ腎動脈血管平滑筋を用いた放射能標識エンドセリン−1の無傷細胞結合に関して試験するエンドセリン受容体結合検定、二次メッセンジャーの細胞内レベルを測定することによりラット−1細胞中で機能的活性が確定されるリン酸イノシトール蓄積検定、培養血管平滑筋中のエンドセリン刺激性アラキドン酸放出を低減する付加化合物の能力を測定するアラキドン酸放出検定、雄ニュージーランドウサギからの内皮を用いたin vitro(単離血管)試験、ならびに雄Sprague-Dawleyラットを用いたin vivo試験が挙げられる。
【0065】
組織生成活性に関する検定としては、WO 95/16035(骨、軟骨、腱)、WO 95/05846(神経、ニューロン)およびWO 91/07491(皮膚、内皮)に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
創傷治癒活性に関する検定としては、Winter, Epidermal Wound Healing, Maibach, HI and Rovee, DT, Eds. (Year Book Medical Publishers, Inc., Chicago), pp. 71-112に記載され、Eaglstein and Mertz, J. Invest. Dermatol., 71: 382-384 (1978)の論文により修正されたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
いくつかの心肥大検定がある。in vitro検定は、成体ラット心筋細胞の拡散の誘導を包含する。この検定では、心室筋細胞は、特にPiper et al., “Adult ventricular rat heart muscle cells” in Cell Culture Techniques in Heart and Vessel Research, H.M. Piper, ed. (Berlin: Springer-Verlag, 1990), pp. 36-60により詳細に記載された手法の変更後、単一(Sprague-Dawley)ラットから単離される。この手法は、成体心室筋細胞の単離ならびに棒形表現型でのこれらの細胞の長期培養を可能にする。フェニレフリンおよびプロスタグランジンF2(PGF2)は、これらの成体細胞での拡散応答を誘導することが示されている。心肥大の種々の潜在的阻害剤によるPGF2またはPGF2類似体(例えばフルプロステノール)およびフェニレフリンにより誘導される筋細胞拡散の抑制が、次に試験される。
【0068】
抗高血圧作用に関する効力は、インスリン耐性高血圧を実証する動物モデルにおける間接的または直接的手段により測定され得る(例えばHypertension 24(1), 106-10, (1994); Metabolism, Clinical and Experimental 44: 1105-9 (1995))。MitoNEET同定化合物の効力も、in vitroで直接的に測定され得る(例えばJournal of Clinical Investigation 96: 354-60, (1995))。
【0069】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはアンチセンス化合物の好ましい形態であるが、本発明は他のオリゴマーアンチセンス化合物、例えば下記のようなオリゴヌクレオチド模倣物(これらに限定されない)を内包する。本発明によるアンチセンス化合物は、好ましくは約8〜約30核酸塩基(即ち約8〜約30連結ヌクレオシド)を含む。特に好ましいアンチセンス化合物は、アンチセンスヌクレオチド、さらに好ましくは約12〜約25核酸塩基を含むものである。当該技術分野で既知であるように、ヌクレオシドは塩基−糖組合せである。ヌクレオシドの塩基部分は、普通は複素環式塩基である。2つの最も一般的なクラスのこのような複素環式塩基は、プリンおよびピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合されるリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドに関しては、リン酸基は糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分に連結され得る。オリゴヌクレオチドの生成に際しては、リン酸基は隣接ヌクレオシドと互いに共有結合して、線状高分子化合物を形成する。次いでこの線状高分子構造のそれぞれの末端はさらに連結されて環状構造を形成し得るが、しかしながら開環構造が一般に好ましい。オリゴヌクレオチド構造内では、リン酸基は一般にオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間主鎖を形成するとして言及される。RNAおよびDNAの普通の連結または主鎖は、3’〜5’ホスホジエステル結合である。
【0070】
本発明に有用な好ましいアンチセンス化合物の特定の例としては、修飾主鎖または非天然ヌクレオシド間結合を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。本明細書中で定義されるように、修飾主鎖を有するオリゴヌクレオチドとしては、主鎖にリン原子を保有するもの、ならびに主鎖中にリン原子を有さないものが挙げられる。本明細書の目的のために、そして時としては当該技術分野で言及されるように、それらのヌクレオシド間主鎖中にリン原子を有さない修飾オリゴヌクレオチドもオリゴヌクレオシドであると考えられ得る。
【0071】
好ましい修飾オリゴヌクレオチド主鎖としては、例えばホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルおよびその他のあるキルホスホネート、例えば3’アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネート、ホスフィネート、ホスホルアミデート、例えば3’−アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに標準3’−5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’−5’結合類似体、および逆極性を有するもの(この場合、ヌクレオシド単位の隣接対は結合3’−5’〜5’−3’または2’−5’〜5’−2’である)が挙げられる。種々の塩、混合塩および遊離酸形態も含まれる。
【0072】
上記のリン含有結合の調製を教示する代表的米国特許としては、第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号および第5,625,050号が挙げられるが、これらに限定されない(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)。
【0073】
その中にリン原子を含まない好ましい修飾オリゴヌクレオチド主鎖は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合異種原子およびあるキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、あるいは1つまたは複数の短鎖異種原子または複素環式ヌクレオシド間結合により形成される主鎖を有する。これらの例としては、モルホリノ結合(一宇はヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネートおよびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖;ならびに混合N、O、SおよびCH2構成成分部分を有する他のものが挙げられる。
【0074】
上記のオリゴヌクレオシドの調製を教示する代表的米国特許としては、第5,034,506号;第5,166,315号;第5,185,444号;第5,214,134号;第5,216,141号;第5,235,033号;第5,264,562号;第5,264,564号;第5,405,938号;第5,434,257号;第5,466,677号;第5,470,967号;第5,489,677号;第5,541,307号;第5,561,225号;第5,596,086号;第5,602,240号;第5,610,289号;第5,602,240号;第5,608,046号;第5,610,289号;第5,618,704号;第5,623,070号;第5,663,312号;第5,633,360号;第5,677,437号および第5,677,439号が挙げられるが、これらに限定されない(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)。
【0075】
その他の好ましいオリゴヌクレオチド模倣物では、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合の両方は、即ち主鎖は、新規の基に置き換えられる。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために保持される。このような一オリゴマー化合物である優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣物は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖−主鎖は、アミド含有主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖に置き換えられる。核酸塩基は保持され、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子と直接または間接的に結合される。PNA化合物の調製を教示する代表的米国特許としては、第5,539,082号;第5,714,331号および第5,719,262号が挙げられるが、これらに限定されない(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al., Science, 1991, 254, 1497-1500に見出され得る。
【0076】
本発明の最も好ましい実施形態は、ホスホロチオエート主鎖を有するオリゴヌクレオチドおよび異種原子主鎖、そして特に上記参照米国特許第5,489,677号の−CH2−NH−O−CH2−、−CH2−N(CH3)−O−CH2−[メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖として既知である]、−CH2−O−N(CH3)−CH2−、−CH2N(CH3)−N(CH3)−CH2−および−O−N(CH3)−CH2−CH2−[ここで、ネイティブホスホジエステル主鎖は−O−P−O−CH2−として表される]、ならびに上記参照米国特許第5,602,240号のアミド主鎖を有するオリゴヌクレオシドである。上記参照米国特許第5,034,506号のモルホリノ主鎖構造を有するオリゴヌクレオチドも好ましい。
【0077】
修飾オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の置換糖部分も含有し得る。好ましいオリゴヌクレオチドは、2’一に以下のうちの1つを含む:OH;F;O−、S−またはN−アルキル;O−、S−またはN−アルケニル;O−、S−またはN−アルキニル;あるいはO−アルキル−O−アルキル(ここで、あるきる、アルケニルおよびアルキニルは置換または非置換C1〜C10アルキルまたはC2〜C10アルケニルおよびアルキニルであり得る)。特に好ましいのは、O[(CH2nO]mCH3、O(CH2nOCH3、O(CH2nNH2、O(CH2nCH3、O(CH2nONH2およびO(CH2nON[(CH2nCH32(ここでnおよびmは1〜約10である)である。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位置に以下のうちの1つを含む:C1〜C10(低級)アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリルまたはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態を改善するための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善するための基、ならびに同様の特性を有するその他の置換基。好ましい修飾としては、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH2CH2OCH3、2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしても既知である)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504)、即ちアルコキシアルコキシ基が挙げられる。さらに好ましい修飾としては、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、即ちO(CH22ON(CH32基(本明細書中の下記の実施例に記載されるような2’−DMAOEとしても既知である)、および2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(2’−O−ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’−DMAEOEとしても既知である)、即ち本明細書中の下記の実施例にも記載される2’−O−CH2−O−CH2−N(CH22が挙げられる。
【0078】
その他の好ましい修飾としては、2’−メトキシ(2’−OCH3)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCH2CH2CH2NH2)および2’−フルオロ(2’−F)が挙げられる。同様の修飾は、オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上または2’−5’結合オリゴヌクレオチド中の糖の3’位置、ならびに5’末端ヌクレオチドの5’位置でも成され得る。オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりに糖模倣物、例えばシクロブチル部分も有し得る。このような修飾糖構造の調製を教示する代表的米国特許としては、第4,981,957号;第5,118,800号;第5,319,080号;第5,359,044号;第5,393,878号;第5,446,137号;第5,466,786号;第5,514,785号;第5,519,134号;第5,567,811号;第5,576,427号;第5,591,722号;第5,597,909号;第5,610,300号;第5,627,053号;第5,639,873号;第5,646,265号;第5,658,873号;第5,670,633号および第5,700,920号が挙げられるが、これらに限定されない(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)。
【0079】
オリゴヌクレオチドは、核酸塩基(しばしば当該技術分野では単に「塩基」と呼ばれる)修飾または置換も含み得る。本明細書中で用いる場合、「非修飾」または「天然」核酸塩基としては、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。修飾核酸塩基としては、その他の合成および天然核酸塩基、例えば5−メチルシトシン(5−もme−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよびその他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよびその他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニルウラシルおよびシトシン、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよびその他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよびその他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンも挙げられる。さらなる核酸塩基としては、米国特許第3,687,808号に開示されたもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J.I., ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されたもの、English et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613に開示されたもの、ならびにSanghvi, Y.S., Chapter 15, Antisense Research and Applications, pages 289-302, Crooke, S.T. and Lebleu, B. ed., CRC Press, 1993に開示されたものが挙げられる。これらの核酸塩基のうちのいくつかは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性増大のために特に有用である。これらの例としては、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンおよびN−2、N−6およびO−6置換プリン、例えば2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンが挙げられる。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6〜1.2℃増大することが示されており(Sanghvi, Y.S., Crooke, S.T. and Lebleu, B., eds, Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、そして特に2’−O−メトキシエチル糖修飾と組合せた場合、目下好ましい塩基置換である。
【0080】
上記の修飾核酸塩基のうちのいくつか、ならびにその他の修飾核酸塩基の調製を教示する代表的米国特許としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:上記の米国特許第3,687,808号、ならびに米国特許第4,845,205号;第5,130,302号;第5,134,066号;第5,175,273号;第5,367,066号;第5,432,272号;第5,457,187号;第5,459,255号;第5,484,908号;第5,502,177号;第5,525,711号;第5,552,540号;第5,587,469号;第5,594,12’号;第5,596,091号;第5,614,617号;第5,750,692号および第5,681,941号(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)。
【0081】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取り込みを増強する1つまたは複数の部分または共役体をオリゴヌクレオチドに化学的に連結することを包含する。このような部分としては、脂質部分、例えばコレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1994, 4, 1053-1060)、チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306-309; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533-538)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10, 1111-1118; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327-330; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49-54)、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777-3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Mancharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229-237)、あるいはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923-937)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
このようなオリゴヌクレオチド共役体の調製を教示する代表的米国特許としては、米国特許第4,828,979号;第4,948,882号;第5,218,105号;第5,525,465号;第5,541,313号;第5,545,730号;第5,552,538号;第5,578,717号;第5,580,731号;第5,580,731号;第5,591,584号;第5,109,124号;第5,118,802号;第5,138,045号;第5,414,077号;第5,486,603号;第5,512,439号;第5,578,718号;第5,608,046号;第4,587,044号;第4,605,735号;第4,667,025号;第4,762,779号;第4,789,737号;第4,824,941号;第4,835,263号;第4,876,335号;第4,904,582号;第4,958,013号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,245,022号;第5,254,469号;第5,258,506号;第5,262,536号;第5,272,250号;第5,292,873号;第5,317,098号;第5,371,241号;第5,391,723号;第5,416,203号;第5,451,463号;第5,510,475号;第5,512,667号;第5,514,785号;第5,565,552号;第5,567,810号;第5,574,142号;第5,585,481号;第5,587,371号;第5,595,726号;第5,597,696号;第5,599,923号;第5,599,928号および第5,688,941号が挙げられるが、これらに限定されない(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)。
【0083】
所定の化合物中の全ての位置が均一に修飾されることは必要でなく、実際、上記の修飾のうちの1つより多くが単一化合物中に、またはオリゴヌクレオチド内の単一ヌクレオシドにも組入れられ得る。本発明は、キメラ化合物であるアンチセンス化合物も包含する。「キメラ」アンチセンス化合物または「キメラ」とは、本発明の情況では、少なくとも1つのモノマー単位、即ちオリゴヌクレオチド化合物の場合には一ヌクレオチドから作られる2つまたはそれ以上の化学的に別個の領域を含有するアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する耐性増大、細胞取り込み増大および/または標的核酸に対する結合親和性増大をオリゴヌクレオチドに付与するようオリゴヌクレオチドが修飾される少なくとも1つの領域を含有する。オリゴヌクレオチドの付加的領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断し得る酵素のための基質として役立ち得る。例として、RNアーゼHは細胞エンドヌクレアーゼであり、これはRNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する。したがってRNアーゼHの活性化は、RNA標的の切断を生じ、それにより遺伝子発現のオリゴヌクレオチド抑制の効率を大いに増強する。その結果として、キメラオリゴヌクレオチドが用いられる場合、同一標的領域とハイブリダイズするホスホロチオエートでオキシオリゴヌクレオチドと比較して、より短いオリゴヌクレオチドを用いて、しばしば匹敵する結果が得られる。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動により、そして必要な場合には当該技術分野で既知の核酸ハイブリダイゼーション技法の助けを借りて、ルーチンに検出され得る。
【0084】
本発明のキメラアンチセンス化合物は、上記のような2つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドおよび/またはオリゴヌクレオチド模倣物の複合構造物として形成され得る。このような化合物は、当該技術分野では、ハイブリッドまたはギャップマーとも呼ばれている。このようなハイブリッド構造物の調製を教示する代表的米国特許としては、米国特許第5,013,830号;第5,149,797号;第5,220,007号;第5,256,775号;第5,366,878号;第5,403,711号;第5,491,133号;第5,565,350号;第5,623,065号;第5,652,355号;第5,652,356号および第5,700,922号が挙げられるが、これらに限定されない(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)。
【0085】
本発明に従って用いられるアンチセンス化合物は、固相合成の周知の技法により、便利に且つルーチンに製造され得る。このような合成のための設備は、いくつかの売り手、例えばApplied BioSystems(Foster City, CA)により販売されている。当該技術分野で既知のこのような合成のための任意のその他の手段は、付加的にまたは代替的に用いられ得る。同様の技法を用いて、オリゴヌクレオチド、例えばホスホチオエートおよびアルキル化誘導体を調製することは周知である。
【0086】
本発明のアンチセンス化合物は、in vitroで合成され、そして生物学的起源のアンチセンス組成物、またはアンチセンス分子のin vivo合成を指図するよう設計された遺伝子ベクター構築物を含まない。本発明の化合物はさらにまた、他の分子、分子構造物または化合物の混合物と混合され、封入され、接合されるか、そうでなければ関連し、例としては取込み、分布および/または吸収を助長するためのリポソーム、受容体標的化分子、経口、直腸、局所またはその他の処方物が挙げられる。このような取込み、分布および/または吸収補助処方物の調製を教示する代表的米国特許としては、米国特許第5,108,921号;第5,354,844号;第5,416,016号;第5,459,127号;第5,521,291号;第5,543,158号;第5,547,932号;第5,583,020号;第5,591,721号;第4,426,330号;第4,534,899号;第5,013,556号;第5,108,921号;第5,213,804号;第5,227,170号;第5,264,221号;第5,356,633号;第5,395,619号;第5,416,016号;第5,417,978号;第5,462,854号;第5,469,854号;第5,512,295号;第5,527,528号;第5,534,259号;第5,543,152号;第5,556,948号;第5,580,575号および第5,595,756号が挙げられるが、これらに限定されない(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)。
【0087】
本発明のアンチセンス化合物は、任意の製薬上許容可能な塩、エステルまたはこのようなエステルの塩、あるいは動物、例えばヒトへの投与時に、生物学的活性代謝産物またはその残基を(直接または間接的に)提供し得る任意のその他の化合物を包含する。したがって例えば開示は、本発明の化合物のプロドラッグおよび製薬上許容可能な塩、このようなプロドラッグの製薬上許容可能な塩、ならびにその他の生物学的同等物も包含する。
【0088】
「プロドラッグ」という用語は、内因性酵素またはその他の化学物質および/または条件の作用により身体またはその細胞内で活性形態(即ち薬剤)に転化される不活性形態で調製される治療的作用物質を指す。特に本発明のオリゴヌクレオチドのプロドラッグバージョンは、WO 93/24510(Gosselin等、1993年12月9日公開)またはWO 94/26764(Imbach等)に開示された方法に従ってSHTE[(S−アセチル−2−チオエチル)ホスフェート]誘導体として調製される。
【0089】
「製薬上許容可能な塩」という用語は、本発明の化合物の生理学的におよび薬学的に許容可能な塩、即ち親化合物の所望の生物学的活性を保有し、そして望ましくない毒物学的作用をそれに付与しない塩を指す。
【0090】
製薬上許容可能な塩基付加塩は、金属またはアミン、例えばアルカリおよびアルカリ土類金属または有機アミンを用いて生成される。陽イオンとして用いられる金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等である。適切なアミンの例は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミンおよびプロカインである(例えばBerge et al., “Pharmaceutical Salts,” J. of Pharma Sci., 1977, 66, 119参照)。上記の酸性化合物の塩基付加塩は、遊離酸形態を慣用的方法で塩を生成するのに十分な量の所望の塩基と接触させることにより調製される。遊離酸形態は、塩形態を酸と接触させ、そして慣用的方法で遊離酸を単離することにより再生され得る。遊離酸形態は、ある種の物理学的特性、例えば極性溶媒中の溶解度において多少それらのそれぞれの塩形態と異なるが、しかしそうでなければ、塩は本発明の目的のためのそれらのそれぞれの遊離酸と等価である。本明細書中で用いる場合、「薬学的付加塩」は、本発明の組成物の構成成分のうちの1つの酸形態の製薬上許容可能な塩を包含する。これらの例としては、アミンの有機または無機酸塩が挙げられる。好ましい酸塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩およびリン酸塩である。その他の適切な製薬上許容可能な塩は当業者に周知であり、例としては、種々の無機および有機酸の、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸との;有機カルボン酸、スルホン酸、スルホまたはホスホ酸またはN−置換スルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカン酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸またはイソニコチン酸との;ならびにアミノ酸、例えば現実にタンパク質の合成に関与する20α−アミノ酸、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸との、そしてさらにまたフェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、2−または3−ホスホグリセレート、グルコース−6−ホスフェート、N−シクロヘキシルホスファミン酸(シクラメートの生成を伴う)との、あるいはその他の酸有機化合物、例えばアスコルビン酸との塩基性塩が挙げられる。化合物の製薬上許容可能な塩は、製薬上許容可能な陽イオンを用いても調製され得る。適切な製薬上許容可能な陽イオンは当業者に周知であり、例としては、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウムおよび第四級アンモニウム陽イオンが挙げられる。炭酸塩または水素炭酸塩も考えられ得る。
【0091】
オリゴヌクレオチドに関して、製薬上許容可能な塩の好ましい例としては、(a)陽イオン、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ポリアミン、例えばスペルミンおよびスペルミジン等を用いて形成される塩;(b)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等を用いて生成される酸付加塩;(c)有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等を用いて生成される塩;ならびに(d)元素陰イオン、例えば塩素、臭素およびヨウ素から生成される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
本発明のアンチセンス化合物は、診断薬、治療薬、予防薬のために、ならびに研究試薬およびキットとして利用され得る。治療薬に関しては、mitoNEETの発現を変調することにより治療され得る疾患または障害を有する疑いのある動物、好ましくはヒトは、本発明に従ってアンチセンス化合物を投与することにより治療される。本発明の化合物は、適切な製薬上許容可能な希釈剤または担体に有効量のアンチセンス化合物を付加することにより、製剤組成物中に利用され得る。本発明のアンチセンス化合物の使用および方法はまた、例えば感染、炎症または腫瘍形成を防止するかまたは遅延するために、予防的に有用であり得る。
【0093】
本発明のアンチセンス化合物は、これらの化合物がmitoNEETをコードする核酸とハイブリダイズして、サンドイッチおよびその他の検定を容易に構築させてこの事実を利用するため、研究および診断薬のために有用である。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドとmitoNEETをコードする核酸とのハイブリダイゼーションは、当該技術分野で既知の手段により検出され得る。このような手段は、酵素とオリゴヌクレオチドの接合、オリゴヌクレオチドの放射能標識、あるいは任意のその他の適切な検出手段を包含し得る。試料中のmitoNEETのレベルを検出するためのこのような検出手段を用いるキットも調製され得る。
【0094】
本発明は、本発明のアンチセンス化合物を含む製剤組成物および処方物も包含する。本発明の製剤組成物は、局所的治療が所望されるかまたは全身的治療が所望されるかによって、そして治療されるべき領域によって、多数の方法で投与され得る。投与は、局所的(例えば眼に、ならびに粘膜に、例えば膣および直腸送達、肺(例えばネブライザーを用いて、例えば粉末またはエーロゾルの吸入または吹送により)、気管内、鼻内、上皮および経皮的)、経口または非経口的であり得る。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または注入、あるいは頭蓋内、例えばくも膜下または脳室内投与が挙げられる。少なくとも1つの2’−O−メトキシエチル修飾を伴うオリゴヌクレオチドは、経口投与に特に有用であると考えられる。
【0095】
局所投与のための製剤組成物および処方物としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、座薬、噴霧剤、液体および粉末が挙げられ得る。慣用的製剤担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤等は、必要であり得るかまたは所望され得る。被覆コンドーム、手袋等も有用であり得る。
【0096】
経口投与のための組成物および処方物としては、粉末または顆粒、水中または非水性媒質中の懸濁液または溶液、カプセル、サッシェまたは錠剤が挙げられる。増粘剤、風味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が所望され得る。
【0097】
非経口、くも膜下、脳室内投与のための組成物および処方物としては、緩衝剤、希釈剤およびその他の適切な添加剤、例えば浸透強化剤、担体化合物およびその他の製薬上許容可能な担体または賦形剤(これらに限定されない)も含有し得る滅菌水性溶液が挙げられ得る。
【0098】
本発明の製剤組成物としては、溶液、乳濁液およびリポソーム含有処方物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの組成物は、予備生成液体、自己乳化型固体および自己乳化型半固体を含めた(これらに限定されない)種々の構成成分から生成され得る。
【0099】
単位剤形で提示されるのが便利である本発明の製剤処方物は、製薬産業で周知の慣用的技法に従って調製され得る。このような技法としては、活性成分と製剤担体(単数または複数)または賦形剤(単数または複数)との会合を引き起こす過程を包含する。概して、処方物は、活性成分と液体担体または微粉砕固体担体またはその両方を均一に且つ密接に会合させて、次に、必要な場合は、生成物を造形することにより調製される。
【0100】
本発明の組成物は、任意の多数の考え得る形態、例えば錠剤、カプセル、液体シロップ、軟質ゲル、座薬および浣腸(これらに限定されない)に処方され得る。本発明の組成物は、水性、非水性または混合媒質中の懸濁液としても処方され得る。水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増大する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランをさらに含有し得る。懸濁液は、安定剤も含有し得る。
【0101】
本発明の一実施形態では、製剤組成物は、発泡体として処方され、用いられ得る。製剤発泡体としては、乳濁液、微細乳濁液、クリーム、ジェリーおよびリポソームのような処方物が挙げられるが、これらに限定されない。現実に基本的には同様であるが、しかしこれらの処方物は最終生成物の構成成分および粘稠度において変わりがある。このような組成物および処方物の調製は、製薬および処方物業者に一般的に既知であり、本発明の組成物の処方物に適用され得る。
【0102】
本発明の組成物は、乳濁液として調製され、処方され得る。乳濁液は、典型的には、通常は直径が0.1 μmを超える液滴の形態で、ある液体が別の液体中に分散された不均質系である(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199; Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Volume 1, p. 245; Block in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 2, p. 335; Higuchi et al., in Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1985, p. 301)。乳濁液はしばしば、互いに密接に混合されそして分散された2つの不混和性液相からなる二相系である。概して、乳濁液は油中水(w/o)型のまたは水中油(o/w)型の異型であり得る。水性相が大量の油性相中に微粉砕され、微小液滴として分散される場合、その結果生じる組成物は、油中水(w/o)型乳濁液と呼ばれる。あるいは油性相が大量の水性相中に微粉砕され、微小液滴として分散される場合、その結果生じる組成物は水中油(o/w)型乳濁液と呼ばれる。乳濁液は、分散相および活性薬のほかに、付加的構成成分を含有し得るが、これらは水性相、油性相中の溶液として、または分離相としてそれ自体で存在し得る。製剤賦形剤、例えば乳化剤、安定剤、染料および酸化防止剤も、必要な場合には乳濁液中に存在し得る。製剤乳濁液は、2つより多い相からなる、例えば油中水中油(o/w/o)型および水中油中水(w/o/w)型乳濁液の場合のように、多重乳濁液でもあり得る。このような複雑な処方物はしばしば、単純な二重乳濁液にはないある種の利点を提供する。o/w乳濁液の個々の油滴が小型水滴を封入する多重乳濁液が、w/o/w乳濁液を構成する。同様に、油性連続相中で安定化された水の小球中に封入された油滴の系は、o/w/o乳濁液を提供する。
【0103】
乳濁液は、熱力学的安定性によりほとんどまたは全く特性化されない。しばしば、乳濁液の分散または不連続相は、外部または連続相中に良好に分散され、そして乳化剤または処方物の粘性によりこの形態で保持される。乳濁液の相のいずれかは、乳濁液のスタイルの軟膏基剤およびクリームの場合と同様に、半固体または固体であり得る。乳濁液を安定化するその他の手段は、乳濁液のいずれかの相中に組入れられ得る乳化剤の使用を伴う。乳化剤は、大まかに4つの部類に分類され得る:合成か風邪、天然乳化剤、吸収塩基および微細分散固体(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
【0104】
表面活性剤としても既知である合成界面活性剤は、乳濁駅の処方物に広範な適用可能性を見出しており、そして文献中で再検討されている(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。界面活性剤は、典型的には両親媒性であり、親水性および疎水性部分を含む。界面活性剤の親水性対疎水性の比は親水性/親油性平衡(HLB)と呼ばれ、そして処方物の調製において界面活性剤を分類し、選択するに際して有益なツールである。界面活性剤は、親水性基の性質に基づいて異なるクラスに分類され得る:非イオン性、陰イオン性、陽イオン性および両性(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285)。
【0105】
乳濁液処方物中に用いられる天然乳化剤としては、ラノリン、蜜蝋、ホスファチド、レシチンおよびアラビアゴムが挙げられる。吸収基剤は、それらが水を吸い取ってw/o乳濁液を生成し、そして依然としてそれらの半固体粘稠度を保持し得るよう、親水性特性を保有する。微細分割固体は、特に界面活性剤と組合せて、そして粘性調製物中で、良好な乳化剤としても用いられてきた。これらの例としては、極性無機固体、例えば重金属水酸化物、非膨潤性粘土、例えばベントナイト、アタパルジャイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、コロイドケイ酸アルミニウムおよびコロイドケイ酸アルミニウムマグネシウム、顔料および非極性固体、例えば炭素またはグリセリルトリステアレートが挙げられる。
【0106】
多数の種々の非乳化物質も乳濁液処方物中に含まれ、そして乳濁液の特性に寄与する。これらの例としては、脂肪、油、蝋、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、保湿剤、親水性コロイド、防腐剤および酸化防止剤が挙げられる(Block in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 2, p. 335; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
【0107】
親水性コロイドまたは親水コロイドとしては、天然ゴムおよび合成ポリマー、例えば多糖(例えばアラビアゴム、寒天、アルギン酸、カラジーナンゴム、グアーゴム、カラヤゴムおよびトラガカントゴム)、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)、ならびに合成ポリマー(例えばカルボマー、セルロースエーテルおよびカルボキシビニルポリマー)が挙げられる。これらは水中で分散または膨潤して、分散相液滴周囲に強い界面皮膜を形成することにより、そして外部相の粘性を増大することにより、乳濁液を安定化するコロイド溶液を生成する。
【0108】
乳濁液はしばしば、微生物の増殖を容易に支持し得る多数の成分、例えば炭水化物、タンパク質、ステロールおよびホスファチドを含有するため、これらの処方物はしばしば防腐剤を組入れる。乳濁液処方物中に含まれる一般的に用いられる防腐剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、第四級アンモニウム塩、塩化ベンズアルコニウム、p−ヒドロキシ安息香酸およびホウ酸が挙げられる。酸化防止剤も一般的に乳濁液処方物に付加されて、処方物の劣化を防止する。用いられる酸化防止剤は、遊離ラジカルスカベンジャー、例えばトコフェロール、アルキル没食子酸塩、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、あるいは還元剤、例えばアスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウム、ならびに酸化防止剤相乗剤、例えばクエン酸、酒石酸およびレシチンであり得る。
【0109】
皮膚科学的、経口的および非経口的経路による乳濁液処方物の適用ならびにそれらの製造方法は、文献中で再検討されている(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。経口送達のための乳濁液処方物は、処方の容易さ、吸収による効力および生物学的利用能見地という理由のため、非常に広範に用いられてきた(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Volume 1, p. 245; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。鉱油ベースの緩下剤、油溶性ビタミンおよび高脂栄養調製物は、一般的にo/w乳濁液として経口的に投与されてきた物質の1つである。
【0110】
本発明の一実施形態では、オリゴヌクレオチドおよび核酸の組成物は、微細乳濁液として処方される。微細乳濁液は、単一光学的等方性および熱力学的安定性液体溶液である水、油および両性物質の系と定義され得る(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Volume 1, p. 245)。典型的には、微細乳濁液は、先ず水性界面活性剤溶液中に油を分散させ、次に透明系を生成するのに十分な量の四番目の構成成分、一般的には中鎖長アルコールを付加することにより調製される系である。したがって微細乳濁液は、界面活性分子の界面皮膜により安定化される2つの不混和性液体の熱力学的に安定な、等方的透明分散液としても記載されている(Leung and Shah, in: Controlled Release of Drugs: Polymers and Aggregate Systems, Rosoff, M., Ed., 1989, VCH Publishers, New York, pages 1852-5)。微細乳濁液は一般に、油、水、界面活性剤、補助界面活性剤および電解質を含む3〜5つの構成成分の組合せにより調製される。微細乳濁液が油中水(w/o)型か水中油(o/w)型かは、用いられる油および界面活性剤の特性に、ならびに界面活性剤分子の極性頭および炭化水素尾の構造および幾何学的パッキングによっている(Schott, in Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1985, p. 271)。
【0111】
相図を用いた現象学的アプローチは広範に研究されており、そして微細乳濁液の処方方法について、当業者にとって理解の知識を生じた(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Volume 1, p. 245; Block in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 2, p. 335)。慣用的乳濁液と比較して、微細乳濁液は、自発的に生成される熱力学的に安定な液滴の処方物中に水不溶性薬を可溶化するという利点を提供する。
【0112】
微細乳濁液の調製に用いられる界面活性剤としては、単独でのまたは補助界面活性剤と組合せた、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレエート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレエート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレエート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセキオレエート(SO750)、デカグリセロールデカオレエート(DAO750)が挙げられるが、これらに限定されない。補助界面活性剤、通常は短鎖アルコール、例えばエタノール、1−プロパノールおよび1−ブタノールは、界面活性剤分子の間に生成される中空間隙のため、界面活性剤皮膜中に浸透し、その結果として皮膜障害を作製することにより、界面流動度を増大するのに役立つ。しかしながら微細乳濁液は補助界面活性剤を用いずに調製され、そしてアルコール無含有自己乳化型微細乳濁液系が当該技術分野で既知である。水性相は、典型的には、水、薬剤の水性溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、そしてエチレングリコールの誘導体であるが、これらに限定されない。油相としては、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8〜C12)モノ、ジおよびトリグリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C8〜C10グリセリド、植物油およびシリコーン油のような物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
微細乳濁液は、薬剤可溶化および薬剤の吸収増強の見地から特に興味深い。脂質ベースの微細乳濁液(o/wおよびw/oともに)は、ペプチドを含めた薬剤の経口生物学的利用能を増強することが提唱されている(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385-1390; Ritschel, Meth. Find. Exp. Clin. Pharmacol., 1993, 13, 205)。微細乳濁液は、薬剤可溶化改善、酵素的加水分解からの薬剤の保護、膜流動度および浸透度の界面活性剤誘導性変化による薬剤吸収の考え得る増強、調製の容易さ、固体剤形を上回る経口投与の容易さ、臨床的効能改善、ならびに毒性低減といった利点を提供する(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385; Ho et al., J. Pharm. Sci., 1996, 85, 138-143)。しばしば微細乳濁液は、それらの構成成分が周囲温度で一緒にされると、自発的に生じ得る。これは、熱不安定性薬、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドを処方する場合、特に有益であり得る。微細乳濁液は、美容的および薬学的用途の両方において活性構成成分の経皮送達にも有効であった。本発明の微細乳濁液組成物および処方物は、消化管からのオリゴヌクレオチドおよび核酸の全身性吸収増大を促進し、ならびに消化管、膣、頬側口腔およびその他の投与領域内のオリゴヌクレオチドおよび核酸の局所細胞取込みを改善する、と予測される。
【0114】
本発明の微細乳濁液は、本発明のオリゴヌクレオチドおよび核酸の処方物の特性を改善するための、そしてそれらの吸収を増強するための、付加的構成成分および添加剤、例えばソルビタンモノステアレート(Grill 3)、ラブラソールおよび浸透強化剤も含有し得る。本発明の微細乳濁液中に用いられる浸透強化剤は、5つの広範な部類−即ち界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤および非キレート化非界面活性剤のうちの1つに属するとして分類され得る(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p. 92)。これらのクラスの各々は、上記で考察されている。
【0115】
リポソーム
研究されてきた、そして薬剤の処方物のために用いられてきた微細乳濁液のほかに、多数の組織化界面活性剤構造物が存在する。これらの例としては、単一層、ミセル、二分子層および小胞が挙げられる。小胞、例えばリポソームは、薬剤送達の見地からそれらが提供する作用の特異性および持続期間のため、大きな関心を引きつけてきた。本発明で用いる場合、「リポソーム」という用語は、単数または複数の球状二分子層中に配列された両親媒性脂質からなる小胞を意味する。
【0116】
リポソームは、親油性物質から形成される膜および水性内部を有する単層または多重層小胞である。水性部分は、送達されるべき組成物を含有する。陽イオン性リポソームは、細胞壁と融合し得るという利点を保有する。非陽イオン性リポソームは、細胞壁と同様に効率的に融合し得るというわけではないが、しかしin vivoでマクロファージに取り込まれる。
【0117】
無傷哺乳類皮膚を横断するためには、脂質小胞は、適切な経皮勾配の影響下で、各々が50 nm未満の直径を有する一連の微小孔を通過しなければならない。したがって、高度に変形可能であり、そしてこのような微小孔を通過し得るリポソームを用いるのが望ましい。
【0118】
さらにリポソームの利点としては、以下のものが挙げられる:天然リン脂質から得られるリポソームは生体適合性および生分解性である;リポソームは広範囲の水および液体可溶性薬剤を組入れ得る;リポソームはそれらの内部区画内の封入薬剤を代謝および分解から保護し得る(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Volume 1, p. 245)。リポソーム処方物の調製における重要な考察は、リポソームの脂質表面電荷、小胞サイズおよび水性容積である。
【0119】
リポソームは、作用部位への活性成分の移動および送達に有用である。リポソーム膜は構造的に生物学的膜と類似するため、リポソームが組織に適用されると、リポソームは細胞膜と合併し始める。リポソームおよび細胞の合併が進行すると、リポソーム内容物は細胞中に出て行き、底で活性作用物質が作用し得る。
【0120】
リポソーム処方物は、多数の薬剤のための送達の方式として広範な研究の中心となってきた。局所投与に関して、リポソームは他の処方物を上回るいくつかの利点を示す、という証拠が増えつつある。このような利点としては、投与薬剤の高度全身吸収に関連した副作用の低減、所望の標的での投与薬剤の蓄積増大、ならびに皮膚に親水性および疎水性の両方の広範な種々の薬剤を投与する能力が挙げられる。
【0121】
いくつかの報告が、高分子量DNAを含めた作用物質を皮膚に送達するリポソームの能力を詳述している。鎮痛薬、抗体、ホルモンおよび高分子量DNAを含めた化合物は、皮膚に投与されている。用途の大多数が、上部表皮のターゲッティングを生じた。
【0122】
リポソームは、2つの広範なクラスに入る。陽イオン性リポソームは、陰性荷電DNA分子と相互作用して安定複合体を生成する陽性荷電リポソームである。陽性荷電DNA/リポソーム複合体は、陰性荷電細胞表面と結合し、エンドソーム中にインターナライズされる。エンドソームないが酸性pHであるため、リポソームは破裂して、それらの内容物を細胞質中に放出する(Wang et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 1987, 147, 980-985)。
【0123】
pH感受性であるかまたは陰性荷電されるリポソームは、DNAとの複合体というよりむしろDNAを包括する。DNAおよび脂質はともに同様に荷電されるため、複合体形成というよりむしろ反発作用が起こる。それにもかかわらず、いくかのDNAがこれらのリポソームの水性内部内に包括される。培養中の細胞単一層にチミジンキナーゼ遺伝子をコードするDNAを送達するために、pH感受性リポソームが用いられてきた(Zhou et al., Journal of Controlled Release, 1992, 19, 269-274)。
【0124】
リポソーム組成物の主な一型は、天然由来のホスファチジルコリン以外のリン脂質を含む。例えば中性リポソーム組成物は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から生成され得る。陰イオン性リポソーム組成物は一般にジミリストイルホスファチジルグリセロールから生成されるが、一方、陰イオン性膜融合リポソームは主にジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から生成される。別の型のリポソーム組成物は、ホスファチジルコリン(PC)、例えばダイズPCおよび卵PCから生成される。別の型は、リン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から生成される。
【0125】
いくつかの研究は、皮膚へのリポソーム薬処方物の局所送達を査定した。モルモット皮膚へのインターフェロンを含有するリポソームの適用は皮膚疱疹糜爛の低減を生じたが、一方、他の手段(例えば溶液として、または乳濁液として)によるインターフェロンの送達は、有効でなかった(Weiner et al., Journal of Drug Targeting, 1992, 2, 405-410)。さらに付加的研究は、水性系を用いたインターフェロンの投与に対してリポソーム処方物の一部として投与されるインターフェロンの効力を試験し、そしてリポソーム処方物が水性投与より優れている、と結論した(du Plessis et al., Antiviral Research, 1992, 18, 259-265)。
【0126】
非イオン性リポソーム系、特に非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む系も、皮膚への薬剤の送達におけるそれらの有用性を確定するために検査された。NovasomeTMI(グリセリルジラウレート/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)およびNovasomeTMII(グリセリルジステアレート/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム処方物を用いて、マウス皮膚の真皮中にシクロスポリン−Aを送達した。結果は、このような非イオン性リポソーム系が皮膚の異なる層へのシクロスポリン−Aの沈着を促すのに有効である、ということを示した(Hu et al., S.T.P. Pharma. Sci., 1994, 4, 6, 466)。
【0127】
リポソームは、「立体的安定化」リポソームも包含し、この用語は、本明細書中で用いる場合、リポソーム中に組入れられると、このような特殊化資質を欠くリポソームと比較して循環寿命の増強を生じる1つまたは複数の特殊化脂質を含むリポソームを指す。立体的安定化リポソームの例は、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が、(A)1つまたは複数の糖脂質、例えばモノシアロガングリオシドGM1を含むか、あるいは(B)1つまたは複数の親水性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)部分を用いて誘導体化されるものである。任意の特定の理論に縛られずに考えると、当該技術分野では、少なくともガングリオシド、スフィンゴミエリンまたはPEG誘導性脂質を含有する立体安定化リポソームに関しては、これらの立体安定化リポソームの循環半減期増強は、細網内皮系(RES)の細胞中への取込み低減に由来する(Allen et al., FEBS Letters, 1987, 223, 42; Wu et al., Cancer Research, 1993, 53, 3765)。
【0128】
1つまたは複数の糖脂質を含む種々のリポソームが、当該技術分野で既知である。Papahadjopoulos等(Ann. N.Y. Acad. Sci., 1987, 507, 64)は、リポソームの血中半減期を改善するモノシアロガングリオシドGM1、硫酸ガラクトセレブロシドおよびホスファチジルイノシトールの能力を報告した。これらの知見は、Gabizon等(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1988, 85, 6949)により詳述された。米国特許第4,837,028号およびWO 88/04924(ともにAllen等)は、(1)スフィンゴミエリンおよび(2)ガングリオシドGjまたは硫酸ガラクトセレブロシドエステルを含むリポソームを開示する。米国特許第5,543,152号(Webb等)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示する。1,2−sn−ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、WO 97/13499(Lim等)に開示されている。
【0129】
1つまたは複数の親水性ポリマーで誘導体化される脂質を含む多数のリポソームならびにその調製方法は、当該技術分野で既知である。Sunamoto等(Bull. Chem. Soc. Jpn., 1980, 53, 2778)は、PEG部分を含有する非イオン性洗剤2C1215Gを含むリポソームを記載した。Illum等(FEBS Lett., 1984, 167, 79)は、高分子グリコールを用いたポリスチレン粒子の親水性コーティングが血中半減期の有意の増強を生じる、ということに注目した。ポリアルキレングリコール(例えばPEG)のカルボン酸基の結合により修飾される合成リン脂質は、Sesrs等(米国特許第4,426,330号および第4,534,899号)により記載されている。Klibanov等(FEBS Lett., 1990, 268, 235)は、PEGまたはPEGステアレートで誘導体化されるホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリポソームが血中循環半減期の有意の増大を示す、ということを実証する実験を記載した。Blume等(Biochimica et Biophysica Acta, 1990, 1029, 91)は、このような観察を他のPEG誘導体化リン脂質、例えばジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)とPEGの組合せから生成されるDSPE−PEGに拡大した。それらの外表面に共有結合PEG部分を有するリポソームは、欧州特許EP 0445 131 B1号およびWO 90/04384(Fisher)に記載されている。PEGで誘導体化された1〜20 mol%のPEを含有するリポソーム組成物ならびにその使用方法は、Woodle等(米国特許第5,013,556号および第5,356,633号)およびMartin等(米国特許第5,213,804号および欧州特許EP 0 496 813 B1号)により記載されている。多数のその他の脂質−ポリマー共役体を含むリポソームは、WO 91/05545および米国特許第5,225,212号(ともにMartin等)に、ならびにWO 94/20073(Zalipsky等)に開示されている。PEG修飾セラミド脂質を含むリポソームは、WO 96/10391(Choi等)に記載されている。米国特許第5,540,935号(Miyazaki等)および第5,556,948号(Tagawa等)は、それらの表面上野機能性部分でさらに誘導体化され得るPEG含有リポソームを記載する。
【0130】
核酸を含む限定数のリポソームは、当該技術分野で既知である。WO 96/40062(Thierry等)は、リポソーム中に高分子量核酸を封入する方法を開示する。米国特許第5,264,221号(Tagawa等)は、タンパク質結合リポソームを開示し、そしてこのようなリポソームの内容物はアンチセンスRNAを含み得る、と力説する。米国特許第5,665,710号(Rahman等)は、リポソーム中にオリゴでオキシヌクレオチドを封入するある種の方法を記載する。WO 97/04787(Love等)は、raf遺伝子に対して標的化されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むリポソームを開示する。
【0131】
トランスファーソームtransfersomeは、さらに別の型のリポソームであり、そして薬剤送達ビヒクルのための興味をそそる候補である高度変形可能脂質集合体である。トランスファーソームは、脂質小滴より小さい孔をそれらが容易に通り抜けることができるように高度に変形可能である脂質小滴として説明され得る。トランスファーソームは、それらが用いられる環境に適合可能であり、例えばそれらは自己最適化性(皮膚中の孔の形状に適応する)、自己修復性で、断片化を伴わずにそれらの標的に高頻度で到達し、そしてしばしば自己負荷性である。トランスファーソームを作製するためには、標準リポソーム組成物に表面縁活性剤、通常は界面活性剤を付加し得る。トランスファーソームは、皮膚に血清アルブミンを送達するために用いられてきた。血清アルブミンのトランスファーソーム媒介性送達は、血清アルブミンを含有する溶液の皮下注射と同様に有効であることが示されている。
【0132】
界面活性剤は、処方物、例えば乳濁液(例えば、微細乳濁液)およびリポソーム中に広範な用途を見出す。天然および合成の両方の多数の異なる型の界面活性剤の特性を分類し、等級分けする最も一般的な方法は、親水性/親油性平衡(HLB)の使用による。親水性基(「頭」としても既知である)の性質は、処方物中に用いられる異なる界面活性剤を分類するための最も有用な手段を提供する(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, p. 285)。
【0133】
界面活性剤分子がイオン化されない場合、それは非イオン性界面活性剤として分類される。非イオン性界面活性剤は、製剤および化粧品に広範な用途を見出し、そして広範囲のpH値に亘って使用可能である。概してそれらのHLB値は、それらの構造によって2〜約18の範囲である。非イオン性界面活性剤としては、非イオン性エステル、例えばエチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステルおよびエトキシル化エステルが挙げられる。非イオン性アルカノールアミドおよびエステル、例えば脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコールおよびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーもこのクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤クラスの最も一般的な成員である。
【0134】
界面活性剤分子が、水中に溶解されるかまたは分散されると陰性電荷を保有する場合、界面活性剤は陰イオン性と分類される。陰イオン性界面活性剤としては、カルボキシレート、例えば石鹸、アシルラクチレート、アミノ酸のアシルアミド、硫酸のエステル、例えばアルキルスルフェートおよびエトキシル化アルキルスルフェート、スルホネート、例えばアルキルベンゼンスルホネート、アシルイセチオネート、アシルタウレートおよびスルホスクシネート、ならびにホスフェートが挙げられる。陰イオン性界面活性剤クラスの最も重要な成員は、アルキルスルフェートおよび石鹸である。
【0135】
界面活性剤分子が、水中に溶解されるかまたは分散されると陽性電荷を保有する場合、界面活性剤は陽イオン性と分類される。陽イオン性界面活性剤としては、第四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが挙げられる。第四級アンモニウム塩は、このクラスの最も用いられる成員である。
【0136】
界面活性剤分子が陽性または陰性電荷を保有する能力を有する場合、界面活性剤は両性と分類される両性界面活性剤としては、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N−アルキルベタインおよびホスファチドが挙げられる。
【0137】
薬剤製品、処方物中の、および乳濁液中の界面活性剤の使用が再検討されている(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, p. 285)。
【0138】
浸透強化剤
一実施形態では、本発明は、動物の皮膚への、核酸特にオリゴヌクレオチドの効率的送達を実行するために、種々の浸透強化剤を用いる。ほとんどの薬剤は、イオン化および非イオン化形態の両方で、溶液中に存在する。しかしながら通常は、脂質溶解性または親油性薬剤のみが細胞膜を容易に横断する。非親油性薬剤でも、横断される膜が浸透強化剤で処理される場合、細胞膜を横断し得る、ということが発見された。細胞膜を横断する非親油性薬剤の核酸を手助けするほかに、浸透強化剤は親油性薬剤の浸透性も強化する。
【0139】
浸透強化剤は、5つの広範な部類:即ち界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤および非キレート化非界面活性剤のうちの1つに属するとして分類され得る(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p. 92)。浸透強化剤の上記のクラスの各々は、以下でより詳細に記載される。
【0140】
界面活性剤:本発明に関連して、界面活性剤(または「表面活性剤」)は、水性溶液中に溶解されると、溶液の表面張力または水性溶液と別の液体との間の界面張力を低減する化学的存在物であり、粘膜を通してのオリゴヌクレオチドの吸収が増強される、という結果を伴う。胆汁酸塩および脂肪酸のほかに、これらの浸透強化剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン−20−セチルエーテル(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p. 92)、ならびに過フルオロ化学乳濁液、例えばFC−43(Takahashi et al., J. Pharm. Pharmacol., 1988, 40, 252)が挙げられる。
【0141】
脂肪酸:浸透強化剤として作用する種々の脂肪酸およびそれらの誘導体としては、例えばオレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n−デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、トリカプリン酸、モノオレイン(1−モノオレイル−rac−グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール1−モノカプリン酸、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、それらのC1〜10アルキルエステル(例えばメチル、イソプロピルおよびt−ブチル)、ならびにそれらのモノ−およびジ−グリセリド(即ちオレエート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノリエート等)が挙げられる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p. 92; Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7,1-33; El Hariri et al., J. Pharm. Pharmacol., 1992, 44, 651-654)。
【0142】
胆汁酸塩:胆汁の生理学的役割としては、脂質および脂溶性ビタミンの分散および吸収の促進が挙げられる(Brunton, Chapter 38 in: Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Ed., Hardman et al. Eds. McGraw-Hill, New York, 1996, pp. 934-935)。種々の天然胆汁酸塩およびそれらの合成誘導体は、浸透強化剤として作用する。したがって「胆汁酸塩」という用語は、胆汁の天然構成成分、ならびにそれらの合成誘導体のいずれかを包含する。本発明の胆汁酸塩としては、例えばコール酸(またはその製薬上許容可能なナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(グリココール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロでオキシコール酸(タウロでオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、ナトリウムタウロ−24,25−ジヒドロ−フシデート(STDHF)、ナトリウムグリコジヒドロフシデートおよびポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(POE)が挙げられる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, page 92; Swinyard, Chapter 39 in: Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990, pages 782-783; Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7,1-33; Yamamoto et al., J. Pharm. Exp. Ther., 1992, 263, 25; Yamashita et al., J. Pharm. Sci., 1990, 79, 579-583)。
【0143】
キレート化剤
キレート化剤は、本発明に関連して用いられる場合、それとの錯体を生成することにより溶液から金属イオンを除去する化合物と定義され、粘膜を通過するオリゴヌクレオチドの吸収が強化されるという結果を伴う。本発明における浸透強化剤としてのそれらの使用に関しては、ほとんどの特性化DNAヌクレアーゼは触媒作用のために二価金属イオンを要し、したがってキレート化剤により抑制されるので、キレート化剤は、DNAアーゼ阻害剤としても役立つという付加的利点を有する(Jarrett, J. Chromatogr., 1993, 618, 315-339)。本発明のキレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、クエン酸、サリチル酸塩(例えばサリチル酸ナトリウム、5−メトキシサリチレートおよびホモバニレート)、コラーゲンのN−アシル誘導体、ラウレス−9、ならびにβ−ジケトンのN−アミノアシル誘導体(エナミン)が挙げられるが、これらに限定されない(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, page 92; Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7,1-33; Buur et al., J. Control Rel., 1990, 14, 43-51)。
【0144】
非キレート化非界面活性剤:本明細書中で用いる場合、非キレート化非界面活性剤浸透強化化合物は、キレート化剤としてまたは界面活性剤として無意味な活性を実証するが、しかしそれにもかかわらず栄養粘膜を通してのオリゴヌクレオチドの吸収を増強する化合物と定義され得る(Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7,1-33)。このクラスの浸透強化剤としては、例えば、不飽和環状尿素、1−アルキル−および1−アルケニルアザシクロ−アルカノン誘導体(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, page 92);ならびに非ステロイド系抗炎症薬、例えばジクロフェナクナトリウム、インドメタシンおよびフェニルブタゾン(Yamashita et al., J. Pharm. Pharmacol., 1987, 39, 621-626)が挙げられる。
【0145】
細胞レベルでのオリゴヌクレオチドの取込みを増強する作用物質も、本発明の製剤およびその他の組成物に付加され得る。例えば陽イオン性脂質、例えばリポフェクチン(米国特許第5,705,188号(Junichi等))、陽イオン性グリセロール誘導体、ならびにポリ陽イオン性分子、例えばポリリシン(PCT出願WO 97/30731(Lollo等))も、オリゴヌクレオチドの細胞取込みを増強することが知られている。
【0146】
その他の作用物質、例えばグリコール、例えばエチレングリコールおよびプロピレングリコール、ピロール、例えば2−ピロール、アゾンおよびテルペン、例えばリモネンおよびメントンが、投与核酸の浸透を増強するために利用され得る。
【0147】
担体
本発明のある種の組成物は、処方物中に担体化合物も組入れる。本明細書中で用いる場合、「担体化合物」または「担体」とは、不活性である(即ちそれ自体生物学的活性を保有しない)が、しかし例えば生物学的に活性な核酸を分解するかまたは循環からのその除去を促進することにより生物学的活性を有する核酸の生物学的利用能を低減するin vivo過程により核酸として認識される核酸またはその類似体を指す。核酸および担体化合物の同時投与(典型的には過剰の後者)は、おそらくは共通の受容体に関する担体化合物と核酸との間の競合のため、肝臓、腎臓またはその他の循環外レザバー中に回収される核酸の量の実質的低減を生じ得る。例えば肝臓組織中の部分的ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの回収は、それがポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジン酸または4−アセトアミド−4’イソチオシアノ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸と同時投与されると、低減される(Miyao et al., Antisense Res. Dev., 1995, 5, 115-121; Takakura et al., Antisense & Nucl. Acid Drug Dev., 1996, 6, 177-183)。
【0148】
賦形剤
担体化合物と対照して、「製剤担体」または「賦形剤」とは、製薬上許容可能な溶媒、沈殿防止剤または動物に1つまたは複数の核酸を送達するための任意のその他の薬理学的に不活性なビヒクルである。賦形剤は液体または固体であり得るし、そして核酸ならびに所定の製剤組成物の他の構成成分と組合せた場合、所望の嵩、粘稠度等を提供するよう考えた計画的投与方法に伴って選択される。典型的製剤担体としては、結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース等);充填剤(例えばラクトースおよびその他の糖、微晶質セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはリン酸水素カルシウム等);滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属ステアリン酸塩、水素化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等);崩壊剤(例えばデンプン、グリコール酸ナトリウムデンプン等);ならびに湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム等)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
核酸と有害に反応しない非腸管外投与に適した製薬上許容可能な有機または無機賦形剤も、本発明の組成物を処方するために用いられ得る。適切な製薬上許容可能な担体としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
核酸の局所投与のための処方物としては、一般的溶媒中の、例えばアルコール中の滅菌および非滅菌水性溶液、非水性溶液、あるいは液体または固体油基剤中の核酸の溶液が挙げられ得る。溶液は、緩衝剤、希釈剤、ならびにその他の適切な添加剤も含有し得る。核酸と有害に反応しない非腸管外投与に適した製薬上許容可能な有機または無機賦形剤が、用いられ得る。
【0151】
適切な製薬上許容可能な賦形剤としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
その他の構成成分
本発明の組成物は、それらの当該技術分野で確立された使用レベルで、製剤組成物中に慣用的に見出されるその他の補助的構成成分をさらに含有し得る。したがって例えば組成物は、付加的な、相溶性の、薬学的に活性な物質、例えば鎮痒薬、収斂薬、局所麻酔薬または抗炎症薬を含有し得るし、あるいは本発明の組成物の種々の剤形を物理的に処方するのに有用な付加的物質、例えば染料、風味剤、防腐剤、酸化防止剤、不透明剤、増粘剤および安定剤を含有し得る。しかしながらこのような物質は、付加された場合、本発明の組成物の構成成分の生物学的活性を過度に妨害すべきでない。処方物は、滅菌され、そして所望により、処方物の核酸(単数または複数)と有害に反応しない助剤、例えば滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝剤、着色剤、風味剤および/または芳香性物質等と混合され得る。
【0153】
水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増大する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含有し得る。懸濁液は、安定剤も含有し得る。
【0154】
本発明のある種の実施形態は、(a)1つまたは複数のアンチセンス化合物、ならびに(b)非アンチセンスメカニズムにより機能する1つまたは複数のその他の化学療法薬を含有する製剤組成物を提供する。このような化学療法薬の例としては、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ナイトロジェンマスタード、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン(CA)、5−フルオロウラシル(5−FU)、フロキシウリジン(5−FUdR)、メトトレキセート(MTX)、コルヒチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポキシド、テニポシド、シスプラチンおよびジエチルシルベストロール(DES)が挙げられるが、これらに限定されない。一般的には、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 15th Ed., Berkow et al., eds., 1987, Rahway, N.J., pages 1206-1228を参照されたい。抗炎症薬、例えば非ステロイド系抗炎症薬およびコルチコステロイド(これらに限定されない)、ならびに抗ウイルス薬、例えばリビビリン、ビダラビン、アシクロビルおよびガンシクロビル(これらに限定されない)も、本発明の組成物中で組合され得る。一般的には、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 15th Ed., Berkow et al., eds., 1987, Rahway, N.J.のそれぞれpages 2499-2506および46-49を参照されたい。その他の非アンチセンス化学療法薬も、本発明の範囲内である。2つまたはそれ以上の組合せ化合物が、一緒にまたは逐次的に用いられ得る。
【0155】
別の関連実施形態では、本発明の組成物は、一次核酸に対してターゲッティングされる1つまたは複数のアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチド、ならびに二次核酸標的に対してターゲッティングされる1つまたは複数の付加的アンチセンス化合物を含有し得る。アンチセンス化合物の多数の例が当該技術分野で既知である。2つまたはそれ以上の組合せ化合物が、一緒にまたは逐次的に用いられ得る。
【0156】
治療用組成物の処方およびそれらのその後の投与は、当業者の技術の範囲内であると考えられる。投与は、治療されるべき疾患状態の重症度および応答性によっており、継続治療は数日から数ヶ月まで、あるいは治癒が実行されるかまたは疾患状態の減少が達成されるまで継続する。最適投与スケジュールは、患者の身体中の薬剤蓄積の測定から算定され得る。最適投薬量、投与方法、ならびに反復率を、当業者は容易に確定し得る。最適投薬量は個々のオリゴヌクレオチドの相対的効能によって変わり得るし、そして一般的にin vitroおよびin vivo動物モデルにおいて有効であることが判明したEC50に基づいて概算され得る。概して投薬量は0.01 μg〜100 g/体重1 kgであり、そして1日に、1週に、1か月にまたは1年に1回またはそれ以上投与され、あるいは2〜20年毎に1回投与されることさえある。測定された滞留時間および体液または組織中の薬剤の濃度に基づいて、投与の反復率を当業者は容易に概算し得る。治療成功後、疾患状態の再発を防止するための維持療法を患者に受けさせるのが望ましく、この場合、オリゴヌクレオチドは、0.01 μg〜100 g/体重1 kgの範囲の維持用量で、1日に1回またはそれ以上〜20年毎に1回投与される。
【0157】
本発明のある種の好ましい実施形態に従って、特定的に本発明を説明してきたが、以下の実施例は、本発明を例示するだけであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0158】
実施例
実施例1
オリゴヌクレオチド合成のためのヌクレオシドホスホルアミダイトデオキシおよび2’−アルコキシアミダイト
【0159】
2’−デオキシおよび2’−メトキシβ−シアノエチルジイソプロピルホスホルアミダイトは、商業的供給元(例えばChemgenes, Needham MAまたはGlen Research, Inc. Sterling VA)から入手可能である。その他の2’−O−アルコキシ置換ヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,506,351号(この記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製される。2’−アルコキシアミダイトを用いて合成されるオリゴヌクレオチドに関しては、非修飾オリゴヌクレオチドに関する標準サイクルが利用されるが、但し、テトラゾールおよび塩基の送達後の待ち段階は360秒に増大される。
【0160】
市販のホスホルアミダイト(Glen Research, Sterling VAまたはChemGenes, Needham MA)を用いて、発表された方法[Sanghvi, et al., Nucleic Acids Research, 1993, 21, 3197-3203]に従って、5−メチル−2’−デオキシシチジン(5−Me−C)ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドを合成する。
【0161】
2’−フルオロアミダイト
2’−フルオロでオキシアデノシンアミダイト
以前に[Kawasaki, et al., J. Med. Chem., 1993, 36, 831-841]そして米国特許第号に記載されたように、2’−フルオロオリゴヌクレオチドを合成する(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)。要するに、出発物質として市販の9−β−D−アラビノフラノシルアデニンを利用し、そして2’−α−フルオロ原子が2’−β−トリチル基のSN2−置換により導入される文献手法の変更により、保護化ヌクレオシドN6−ベンゾイル−2’−デオキシ−2’−フルオロアデノシンを合成する。したがって3’,5’−ジテトラヒドロピラニル(THP)中間体として中等度の収率で、N6−ベンゾイル−9−β−D−アラビノフラノシルアデニンを選択的に保護化する。THPおよびN6−ベンゾイル基の脱保護化は、標準方法を用いて成し遂げられ、そして標準方法を用いて、5’−ジメトキシトリチル−(DMT)および5’−DMT−3’−ホスホルアミダイト中間体を生成する。
【0162】
2’−フルオロでオキシグアノシン
出発物質としてテトライソプロピルジシロキサニル(TPDS)保護化9−β−D−アラビノフラノシルグアニンを用い、中間体ジイソブチリルアラビノフラノシルグアノシンに変換して、2’−デオキシ−2’−フルオログアノシンの合成を成し遂げる。TPDS基の脱保護化の後に、THPによりヒドロキシル基を保護化して、ジイソブチリルジ−THP保護化アラビノフラノシルグアニンを得る。選択的O−脱アシル化およびトリフレート化の後に、フッ化物で粗生成物を処理し、次にTHP基を脱保護化する。標準方法を用いて、5’−DMT−および5’−DMT−3’−ホスホルアミダイトを生成する。
【0163】
2’−フルオロウリジン
2,2’アンヒドロ−1−β−D−アラビノフラノシルウラシルを70%フッ化水素−ピリジンで処理する文献手法の変法により、2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの合成を成し遂げる。標準手法を用いて、5’−DMTおよび5’−DMT−3’−ホスホルアミダイトを生成する。
【0164】
2’−フルオロでオキシシチジン
2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンのアミノ化と、その後の、N4−ベンゾイル−2’−デオキシ−2’−フルオロシチジンを生成するための選択的保護化により、2’−デオキシ−2’−フルオロシチジンを合成する。標準手法を用いて、5’−DMTおよび5’−DMT−3’ホスホルアミダイトを生成する。
【0165】
2’−O−(2−メトキシエチル)修飾アミダイト
2’−O−メトキシエチル−置換ヌクレオシドアミダイトを以下のように、あるいはMartin, P., Helvetica Chimica Acta, 1995, 78, 486-504の方法によるのと同様に、調製する。
【0166】
2,2’−アンヒドロ[1−(β−D−アラビノフラノシル)−5−メチルウリジン]
5−メチルウリジン(リボシルチミン、Yamasa, Choshi, Japanにより市販)(72.0 g, 0.279 M)、ジフェニルカルボネート(90.0 g, 0.420 M)および重炭酸ナトリウム(2.0 g, 0.024 M)をDMF(300 mL)に付加する。混合物を撹拌しながら加熱、還流して、発生した二酸化炭素ガスを制御方式で放出させる。1時間後、かすかに暗色の溶液を減圧下で濃縮する。その結果生じたシロップを、撹拌しながらジエチルエーテル(2.5 L)中に注ぎ入れる。生成物はゴムを生じた。エーテルをデカントし、残渣を最小量のメタノール(約400 mL)中に溶解する。溶液を新鮮なエーテル(2.5 L)中に注ぎ入れて、硬いゴムを産生する。エーテルをデカントし、ゴムを真空炉(60℃で1 mm Hgで24時間)中で乾燥して、固体を得て、これを淡褐色粉末に粉砕する。その物質をそのままでさらなる反応のために用いて(あるいはそれはさらに、酢酸エチル中のメタノールの勾配(10〜25%)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製され得る)、白色固体を生成する。
【0167】
2’−O−メトキシエチル−5−メチルウリジン
2,2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(195 g, 0.81 M)、トリス(2−メトキシエチル)ボレート(231 g, 0.98 M)および2−メトキシエタノール(1.2 L)を2 Lステンレススチール圧力容器に付加し、160℃の予熱油浴中に入れる。155〜160℃で48時間加熱後、容器を開けて、溶液を蒸発、乾燥させて、MeOH(200 mL)で粉砕する。残渣を熱アセトン(1 L)中に懸濁する。不溶性塩を濾過し、アセトン(150 mL)で洗浄して、濾液を蒸発させる。残渣(280 g)をCH3CN(600 mL)中に溶解し、蒸発させる。シリカゲルカラム(3 kg)に、0.5%Et3NHを含有するCH2Cl2/アセトン/MeOH(20:5:3)を充填する。残渣をCH2Cl2(250 mL)中に溶解し、シリカ(150 g)上に吸着させた後、カラム上に投入する。生成物を充填溶媒で溶離して、表題物質を得る。不純分画を再加工することにより、付加的物質を得ることができる。
【0168】
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン
2’−O−メトキシエチル−5−メチルウリジン(160 g, 0.506 M)をピリジン(250 mL)と同時蒸発させて、乾燥残渣をピリジン(1.3 L)に溶解する。塩化ジメトキシトリチルの一次アリコート(94.3 g, 0.278 M)を付加し、混合物を室温で1時間撹拌する。塩化ジメトキシトリチルの二次アリコート(94.3 g, 0.278 M)を付加し、反応物をさらに1時間撹拌する。次にメタノール(170 mL)を付加して反応を停止させる。溶媒を蒸発させて、CH3CN(200 mL)で粉砕する。残渣をCHCl(1.5 L)中に溶解し、2×500 mLの飽和NaHCO3および2×500 mLの飽和NaClで抽出する。有機相をNa2SO4上で乾燥し、濾過して、蒸発させる。残渣を3.5 kgのシリカゲルカラム上で精製し、0〜5%Et3NHを含有するEtOAc/ヘキサン/アセトン(5:5:1)を充填し、溶離する。精製分画を蒸発させて、表題物質を得る。
【0169】
3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン(106 g, 0.167 M)、DMF/ピリジン(DMF562 mLおよびピリジン188 mLから調製される750 mLの3:1混合物)および無水酢酸(24.38 mL, 0.258 M)を併合し、室温で24時間撹拌する。MeOHの付加により先ずTLC試料をクエンチすることによってTLCにより反応をモニタリングする。TLCにより判定した場合の反応完了時に、MeOH(50 mL)を付加し、混合物を35℃で蒸発させる。残渣をCHCl3(800 mL)中に溶解し、2×200 mLの飽和重炭酸ナトリウムおよび2×200 mLの飽和NaClで抽出する。水層を200 mLのCHCl3で逆抽出する。併合有機物を硫酸ナトリウムで乾燥して、蒸発させて、残渣を得る。残渣を3.5 kgシリカゲルカラム上で精製し、EtOAc/ヘキサン(4:1)を用いて溶離する。精製物質分画を蒸発させて、表題化合物を得る。
【0170】
3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチル−4−トリアゾールウリジン
CH3CN(700 mL)中に3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン(96 g, 0.144 M)を溶解することにより、一次溶液を調製し、取っておく。トリエチルアミン(189 mL, 1.44 M)を、CH3CN(1 L)中のトリアゾール(90 g, 1.3 M)の溶液に付加し、−5℃に冷却して、オーバーヘッド撹拌機を用いて0.5時間撹拌する。POCl3を30分間に亘って0〜10℃に保持した撹拌溶液に滴下し、その結果生じた混合物をさらに2時間撹拌する。一次溶液を45分間に亘って後者溶液に滴下する。その結果生じた反応混合物を寒冷室で一晩保存する。塩を反応混合物から濾し取り、溶液を蒸発させる。残渣をEtOAc(1 L)中に溶解し、不溶性固体を濾過により除去する。濾液を1×300 mLのNaHCO3および2×300 mLの飽和NaClで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥して、蒸発させる。残渣をEtOAcで粉砕して、表題化合物を得る。
【0171】
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン
ジオキサン(500 mL)およびNH4OH(30 mL)中の3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチル−4−トリアゾールウリジン(103 g, 0.141 M)の溶液を、室温で2時間撹拌する。ジオキサン溶液を蒸発させて、残渣をMeOH(2×200 mL)と共沸させる。残渣をMeOH(300 mL)中に溶解して、2リットルステンレススチール圧力容器に移す。NH3ガスを飽和させたMeOH(400 mL)を付加し、容器を100℃に2時間加熱する(TLCは完全転化を示した)。容器内容物を蒸発、乾燥して、残渣をEtOAc(500 mL)中に溶解し、飽和NaCl(200 mL)で1回洗浄する。有機物を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を蒸発させて、表題化合物を得る。
【0172】
N4−ベンゾイル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン(85 g, 0.134 M)をDMF(800 mL)中に溶解し、無水安息香酸(37.2 g, 0.165 M)を撹拌しながら付加する。3時間撹拌後、TLCは、反応が約95%完了したことを示した。溶媒を蒸発させて、残渣をMeOH(200 mL)と共沸させる。残渣をCHCl3(700 mL)中に溶解して、飽和NaHCO3(2×300 mL)および飽和NaCl(2×300 mL)で抽出し、MgSO4上で乾燥し、蒸発させて、残渣を得る。残渣を、溶離溶媒として0〜5%Et3NHを含有するEtOAc/ヘキサン(1:1)を用いて、1.5 kgのシリカゲルカラム上でクロマトグラフィー処理する。精製物質分画を蒸発させて、表題物質を得る。
【0173】
N4−ベンゾイル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン−3’−アミダイト
N4−ベンゾイル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン(74 g, 0.10 M)をCH2Cl2(1 L)中に溶解する。テトラゾールジイソプロピルアミン(7.1 g)および2−シアノエトキシ−テトラ(イソプロピル)ホスファイト(40.5 mL, 0.123 M)を撹拌しながら窒素雰囲気下で付加する。その結果生じた混合物を室温で20時間撹拌する(TLCは、反応が約95%完了したことを示した)。反応混合物を飽和NaHCO3(1×300 mL)および飽和NaCl(3×300 mL)で抽出する。水性洗浄液をCH2Cl2(300 mL)で逆抽出して、抽出物を併合し、MgSO4上で乾燥し、濃縮する。得られた残渣を、溶離溶媒としてEtOAc/ヘキサン(3:1)を用いて、1.5 kgのシリカゲルカラム上でクロマトグラフィー処理する。精製分画を併合して、表題物質を得る。
【0174】
2’−O−(アミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイトおよび2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイト
2’−(ジメチルアミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト
以下の段落に記載されているように、2’−(ジメチルアミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト[2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイトとしても当該技術分野で既知である]を調製する。アデノシン、シチジンおよびグアノシンヌクレオシドアミダイトをチミジン(5−メチルウリジン)と同様に調製するが、但し、アデノシンおよびシチジンの場合はベンゾイル部分で、そしてグアノシンの場合はイソブチリルで、環外アミンを保護する。
【0175】
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−O2−2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン
窒素雰囲気下で、周囲温度で、O2−2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(Pro. Bio. Sint., Varese, Italy, 100.0 g, 0.46 mmol)、ジメチルアミノピリジン(0.66 g, 0.013 eq, 0.0054 mmol)をドライピリジン(500 ml)中に溶解し、機械的に撹拌しながらtert−ブチルジフェニルクロロシラン(125.8 g, 119.0 mL, 1.1 eq, 0.458 mmol)を一部ずつ付加する。反応物を、周囲温度で16時間撹拌する。TLC(Rf 0.22, 酢酸エチル)は、完全反応を示した。溶液を減圧下で濃縮して、濃厚油とする。これをジクロロメタン(1 L)および飽和重炭酸ナトリウム(2×1 L)およびブライン(1 L)間に分配する。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して、濃厚油とする。油を酢酸エチルおよびエチルエーテルの1:1混合物(600 mL)中に溶解し、溶液を−10℃に冷却する。その結果生じた結晶物質を濾過により収集し、エチルエーテル(3×200 mL)で洗浄して、乾燥し(40℃, 1 mmHg, 24時間)、白色固体を得る。
【0176】
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチルウリジン
2 Lステンレススチール非撹拌圧力反応器中に、テトラヒドロフラン中のボラン(1.0 M, 2.0 eq, 622 mL)を付加する。ヒュームフード中で、手動で撹拌しながら、エチレングリコール(350 mL, 過剰量)を、先ず水素ガス発生が鎮まるまで、注意深く付加する。5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−O2−2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(149 g, 0.31 mol)および重炭酸ナトリウム(0.074 g, 0.003 eq)を手動で撹拌しながら付加する。反応器を密封し、内部温度が160℃に達するまで油浴中で加熱して、次に16時間保持する(圧力<100 psig)。反応容器を周囲温度に冷却し、開封する。TLC(所望の生成物に関してはRf 0.67、ara−T副生成物に関してはRf 0.82、酢酸エチル)は、生成物への約70%の転化を示した。付加的副生成物形成を回避するために、反応を停止し、温水浴(40〜100℃)中で減圧下(10から1 mm Hg)で濃縮し、さらに極端な条件を用いて、エチレングリコールを除去する[あるいは、一旦低沸点溶媒が出て行けば、残りの溶液を酢酸エチルおよび水間に分配し得る。生成物は有機相中に存在する]。カラムクロマトグラフィー(2 kgシリカゲル、酢酸エチル−ヘキサン勾配1:1〜4:1)により、残渣を精製する。適切な分画を併合し、取り上げて、乾燥して、白色クリスプ形態、不純出発物質および純粋再利用可能出発物質のような生成物とする。
【0177】
2’−O−[(2−フタルイミドオキシ)エチル]−5’−t−ブチルジフェニルシリル−5−メチルウリジン
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチルウリジン(20 g, 36.98 mmol)をトリフェニルホスフィン(11.63 g, 44.36 mmol)およびN−ヒドロキシフタルイミド(7.24 g, 44.36 mmol)と混合する。次にそれを、高真空下で40℃で2日間、P25上で乾燥する。反応混合物をアルゴンで洗い流し、ドライTHF(369.8 mL, Aldrich、完全密封瓶)を付加して透明溶液を得る。ジエチルアゾジカルボキシレート(6.98 mL, 44.36 mmol)を反応混合物に滴下する。その結果生じる濃赤色が次の小滴の付加の前にちょうど色がなくなるよう、付加速度を保持する。付加完了後、反応物を4時間撹拌する。その時点までに、TLCは反応の完了を示した(酢酸エチル:ヘキサン 60:40)。溶媒を真空中で蒸発させる。得られた残渣をフラッシュカラム上に入れて、酢酸エチル:ヘキサン(60:40)で溶離して、2’−O−[(2−フタルイミドオキシ)エチル]−5’−t−ブチルジフェニルシリル−5−メチルウリジンを白色発泡体として得る。
【0178】
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[(2−ホルムアドキシミノオキシ)エチル]−5−メチルウリジン
2’−O−[(2−フタルイミドオキシ)エチル]−5’−t−ブチルジフェニルシリル−5−メチルウリジン(3.1 g, 4.5 mmol)をドライCH2Cl2(4.5 mL)中に溶解し、メチルヒドラジン(300 mL, 4.64 mmol)を−10〜0℃で滴下する。1時間後、混合物を濾過し、濾液を氷冷CH2Cl2で洗浄し、併合有機相を水、ブラインで洗浄して、無水Na2SO4上で乾燥する。溶液を濃縮して2’−O(アミノオキシエチル)チミジンを得て、これを次にMeOH(67.5 mL)中に溶解する。これにホルムアルデヒド(20%水性溶液、w/w, 1.1 eq.)を付加し、その結果生じた混合物を1時間撹拌する。溶媒を真空下で除去し、残渣をクロマトグラフィー処理して、5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[(2−ホルムアドキシミノオキシ)エチル]−5−メチルウリジンを白色発泡体として得る。
【0179】
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[N,N−ジメチルアミノオキシエチル]−5−メチルウリジン
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[(2−ホルムアドキシミノオキシ)エチル]−5−メチルウリジン(1.77 g, 3.12 mmol)を、ドライMeOH(30.6 mL)中の1 Mピリジニウムp−トルエンスルホネート(PPTS)の溶液中に溶解する。シアノホウ水素化ナトリウム(0.39 g, 6.13 mmol)を、不活性大気下で10℃でこの溶液に付加する。反応混合物を10℃で10分間撹拌する。その後、反応容器を氷浴から取り出し、室温で2時間撹拌して、TLC(CH2Cl2中の5%MeOH)により反応をモニタリングする。水性NaHCO3溶液(5%, 10 mL)を付加し、酢酸エチル(2×20 mL)で抽出する。酢酸エチル相を無水Na2SO4上で乾燥し、蒸発、乾燥する。残渣をMeOH(30.6 mL)中の1 MPPTSの溶液中に溶解する。ホルムアルデヒド(20%w/w, 30 mL, 3.37 mmol)を付加し、反応混合物を室温で10分間撹拌する。反応混合物を氷浴中で10℃に冷却し、シアノホウ水素化ナトリウム(0.39 g, 6.13 mmol)を付加し、反応混合物を10℃で10分間撹拌する。10分後、反応混合物を氷浴から取り出し、室温で2時間撹拌する。反応混合物に、5%NaHCO3(25 mL)溶液を付加し、酢酸エチル(2×25 mL)で抽出する。酢酸エチル層を無水Na2SO4上で乾燥し、蒸発、乾燥する。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、CH2Cl2中の5%MeOHで溶離して、5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[N,N−ジメチルアミノオキシエチル]−5−メチルウリジンを白色発泡体として得る。
【0180】
2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン
トリヒドロフッ化トリエチルアミン(3.91 mL, 24.0 mmol)をドライTHFおよびトリエチルアミン(1.67 mL, 12 mmol、ドライ、KOH上で保持)中に溶解する。トリエチルアミン−2HFのこの混合物を次に5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[N,N−ジメチルアミノオキシエチル]−5−メチルウリジン(1.40 g, 2.4 mmol)に付加し、室温で24時間撹拌する。TLC(CH2Cl2中の5%MeOH)により反応をモニタリングする。溶媒を真空下で除去し、残渣をフラッシュカラム上に載せて、CH2Cl2中の10%MeOHで溶離して、2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジンを得る。
【0181】
5’−O−DMT−2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン
2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン(750 mg, 2.17 mmol)を、高真空下で40℃で一晩、P25上で乾燥する。次にそれを無水ピリジン(20 mL)と同時蒸発させる。得られた残渣をアルゴン雰囲気下でピリジン(11 mL)中に溶解する。4−ジメチルアミノピリジン(26.5 mg, 2.60 mmol)、塩化4,4’−ジメトキシトリチル(880 mg, 2.60 mmol)を混合物に付加し、全ての出発物質が消失するまで反応混合物を室温で撹拌する。ピリジンを真空下で除去し、残渣をクロマトグラフィー処理して、CH2Cl2中の10%MeOH(2〜3滴のピリジンを含有)で溶離して、5’−O−DMT−2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジンを得る。
【0182】
5’−O−DMT−2’−O−(2−N,N−ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]
5’−O−DMT−2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン(.108 g, 1.67 mmol)を、トルエン(20 mL)と同時蒸発させる。残渣に、N,N−ジイソプロピルアミンテトラゾニド(0.29 g, 1.67 mmol)を付加し、高真空下で40℃で一晩、P20上で乾燥する。次に反応混合物を無水アセとニトリル(8.4 mL)中に溶解し、2−シアノエチル−N,N,N1,N1−テトライソプロピルホスホルアミダイト(2.12 mL, 6.08 mmol)を付加する。反応混合物を、不活性大気中で周囲温度で4時間撹拌する。TLC(ヘキサン:酢酸エチル1:1)により、反応の進行をモニタリングする。溶媒を蒸発させ、次に残渣を酢酸エチル(70 mL)中に溶解して、5%水性NaHCO3(40 mL)で洗浄する。酢酸エチル層を無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮する。得られた残渣をクロマトグラフィー処理(溶離液として酢酸エチル)して、5’−O−DMT−2’−O−(2−N,N−ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]を発泡体として得る。
【0183】
2’−(アミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト
以下の段落に記載したようにして、2’−(アミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト[2’−O−(アミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイトとしても既知である]を調製する。アデノシン、シチジンおよびチミジンヌクレオシドアミダイトを同様に調製する。
【0184】
N2−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシン3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]
ジアミノプリンリボシドの選択的2’−O−アルキル化により、2’−O−アミノオキシエチルグアノシン類似体を生成し得る。多グラム量のジアミノプリンリボシドをSchering AG (Berlin)から購入して、2’−O−(2−エチルアセチル)ジアミノプリンリボシドを少量の3’−O−異性体とともに提供する。2’−O−(2−エチルアセチル)ジアミノプリンリボシドを、アデノシンデアミナーゼを用いた処理により、分解し、2’−O−(2−エチルアセチル)グアノシンに転化し得る(McGee, D.P.C., Cook, P.D., Guinosso, C.J., WO 94/02501 A1 940203)。標準保護手法は、2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシンおよび2−N−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシンを提供するはずであり、これらは還元されて、2−N−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシンを提供し得る。前と同様に、ヒドロキシル基はMitsunobu反応によりN−ヒドロキシフタルイミドで置換され、そして保護化ヌクレオシドはいつもの通りにホスフィチル化されて、2−N−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシン3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]を産生する。
【0185】
2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(2’−DMAEOE)ヌクレオシドアミダイト
2’−ジメチルアミノエトキシエトキシヌクレオシドアミダイト(2’−O−ジメチルアミノエトキシエチル、即ち2’O−CH2−O−CH2−N(CH22または2’−DMAEOEヌクレオシドアミダイトとしても当該技術分野で既知である)を、以下のように調製する。その他のヌクレオシドアミダイトを同様に調製する。
【0186】
2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン
2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール(Aldrich, 6.66 g, 50 mmol)を、100 mLの鉛容器中で撹拌しながらテトラヒドロフラン中のボランの溶液(1 M, 10 mL, 10 mmol)に徐々に付加する。固体が溶解すると水素ガスが発生する。O2−,2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(1.2 g, 5mmol)および重炭酸ナトリウム(2.5 mg)を付加し、鉛容器を密封して、油浴中に入れ、155℃に26時間加熱する。鉛容器を室温に冷却して、開封する。粗製溶液を濃縮し、残渣を水(200 mL)およびヘキサン(200 mL)間に分配する。過剰量のフェノールをヘキサン層中に抽出する。水性層を酢酸エチル(3×200 mL)で抽出し、併合有機層を水で1回洗浄して、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮する。残渣を、溶離液としてメタノール/塩化メチレン1:20(2%トリエチルアミンを有する)を用いてシリカゲル上でカラム処理する。カラム分画を濃縮し、無色固体を生じたら、これを収集して、表題化合物を白色固体として得る。
【0187】
5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン
無水ピリジン(8 mL)中の0.5 g(1.3 mmol)の2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジンに、トリエチルアミン(0.36 mL)および塩化ジメトキシトリチル(DMT−Cl、0.87 g, 2 eq.)を付加し、1時間撹拌する。反応混合物を水(200 mL)中に注ぎ入れて、CH2Cl2(2×200 mL)で抽出する。併合CH2Cl2層を飽和NaHCO3溶液で、その後飽和NaCl溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥する。溶媒の蒸発と、その後のMeOH:CH2Cl2:Et3N(20:1, v/v、1%トリエチルアミンを有する)を用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより、表題化合物を得る。
【0188】
5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン−3’−O−(シアノエチル−N,N−ジイソプロピル)ホスホルアミダイト
ジイソプロピルアミノテトラゾリド(0.6 g)および2−シアノエトキシN,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト(1.1 mL, 2 eq.)を、アルゴン雰囲気下で、CH2Cl2(20 mL)中に溶解された5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン(2.17 g, 3 mmol)の溶液に付加する。反応混合物を一晩撹拌し、溶媒を蒸発させる。その結果生じた残渣を、溶離益として酢酸エチルを用いてシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得る。
【0189】
実施例2
オリゴヌクレオチド合成
非置換および置換ホスホジエステル(P=O)オリゴヌクレオチドを,ヨウ素による酸化を伴う標準ホスホルアミダイト化学を用いて、自動DNA合成機(Applied BioSystems、380B型)で合成する。
【0190】
ホスホロチオエート(P=S)をホスホジエステルオリゴヌクレオチドの場合と同様に合成するが、但し、標準酸化瓶を、ホスファイト結合の段階的チオ化のために、アセとニトリル中の3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン1,1−ジオキシドの0.2 M溶液と置き換える。チオ化待ち段階を68秒に増大し、その後、キャッピング過程に進む。CPGカラムからの切断および55℃(18時間)での濃水酸化アンモニウム中での脱ブロッキング後、2.5容積のエタノールで2回、0.5 MNaCl溶液から沈殿させることにより、オリゴヌクレオチドを精製する。米国特許第5,508,270号(この記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように、ホスフィネートオリゴヌクレオチドを調製する。
【0191】
アルキルホスホネートオリゴヌクレオチドを、米国特許第4,469,863号(この記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製する。
【0192】
3’−デオキシ−3’−メチレンホスホネートオリゴヌクレオチドを、米国特許第5,610,289号または第5,625,050号(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製する。
【0193】
ホスホルアミダイトオリゴヌクレオチドを、米国特許第5,256,775号または米国特許第5,366,878号(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製する。
【0194】
アルキルホスホのチオエートオリゴヌクレオチドを、WO 94/17093およびWO 94/02499(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製する。
【0195】
3’−デオキシ−3’−アミノホスホルアミダイトオリゴヌクレオチドを、米国特許第5,476,925号(この記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製する。
【0196】
ホスホトリエステルオリゴヌクレオチドを、米国特許第5,023,243号(この記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製する。
【0197】
ボラノホスフェートオリゴヌクレオチドを、米国特許第5,130,302号および第5,177,198号(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製する。
【0198】
実施例3
オリゴヌクレオシド合成
メチレンメチルイミノ結合オリゴヌクレオシド(MM1結合オリゴヌクレオシドとしても同定される)、メチレンジメチルヒドラゾ結合オリゴヌクレオシド(MDH結合オリゴヌクレオシドとしても同定される)、およびメチレンカルボニルアミノ結合オリゴヌクレオシド(アミド−3結合オリゴヌクレオシドとしても同定される)、およびメチレンアミノカルボニル結合オリゴヌクレオシド(アミド−4結合オリゴヌクレオシドとしても同定される)、ならびに例えば交互MM1およびP=OまたはP=S結合を有する混合主鎖化合物を、米国特許第5,378,825号;第5,386,023号;第5,489,677号;第5,602,240号および第5,610,289号(これらの記載内容はすべて、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製する。
【0199】
ホルムアセタルおよびチオホルムアセタル結合オリゴヌクレオシドを、米国特許第5,264,562号および第5,264,564号(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製する。
【0200】
エチレンオキシド結合オリゴヌクレオシドを、米国特許第5,223,618号(この記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製する。
【0201】
実施例4
PNA合成
Peptide Nucleic Acids (PNA): Synthesis, Properties and Potential Applications, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 1996, 4, 523に言及された種々の手法のいずれかに従って、ペプチド核酸(PNA)を調製する。それらはまた、米国特許第5,539,082号;第5,700,922号および第5,719,262号(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に従って調製され得る。
【0202】
実施例5
キメラオリゴヌクレオチドの合成
本発明のキメラオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドまたは混合オリゴヌクレオチド/オリゴヌクレオシドは、いくつかの異なる型を有し得る。これらの例としては、結合ヌクレオシドの「ギャップ」セグメントが5’および3’間に置かれる第一型、そして「ギャップ」セグメントがオリゴマー化合物の3’または5’末端に位置する第二「オープンエンド」型が挙げられる。第一型のオリゴヌクレオチドは、当該技術分野では「ギャップマー」またはギャップ化オリゴヌクレオチドとしても既知である。第二型のオリゴヌクレオチドは、当該技術分野では「ヘミマー」または「ウイングマー」としても既知である。
【0203】
[2’−O−Me]−−[2’−デオキシ]−−[2’−O−Me]キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチド
上記と同様にApplied BioSystems自動DNA合成機380B型を用いて、2’−O−アルキルホスホロチオエートおよび2’−デオキシホスホロチオエートオリゴヌクレオチドセグメントを有するキメラオリゴヌクレオチドを合成する。自動合成機、ならびにDNA部分のための2’−デオキシ−5’−ジメトキシトリチル−3’−O−ホスホルアミダイト、そして5’および3’ウイングのための5’−ジメトキシトリチル−2’−O−メチル−3’−O−ホスホルアミダイトを用いて、オリゴヌクレオチドを合成する。テトラゾールおよび塩基の送達後の待ち段階を600秒に増大して、RNAに関しては4回、2’−O−メチルに関しては2回反復する。完全保護化オリゴヌクレオチドを支持体から切断し、ホスフェート基を3:1アンモニア/エタノール中で室温で一晩脱保護化し、次に凍結乾燥する。次にメタノールアンモニウム中で室温で24時間の処理を実行して、全ての塩基保護化し、試料を再び凍結乾燥する。ペレットをTHF中の1 MTBAF中に室温で24時間懸濁して、2’一を脱保護化する。次に、1 MTEAAで反応をクエンチして、次に、ロトバックrotovacにより試料を1/2容積に低減した後、G25サイズ排除カラムで脱塩する。回収されたオリゴを次に、収率に関して分光測光法により、そして純度に関しては毛管電気泳動により、そして質量分析により分析する。
【0204】
[2’−O−(2−メトキシエチル)]−−[2’−デオキシ]−−[2’−O−(メトキシエチル)]キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチド
2’−O−メチルキメラオリゴヌクレオチドに関する上記の手法により同様に、[2’−O−(2−メトキシエチル)]−−[2’−デオキシ]−−[2’−O−(メトキシエチル)]キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを調製し、ホロチオエートオリゴヌクレオチドの置換を、2−O−メチルアミダイトの代わりに2’−O(メトキシエチル)アミダイトに関して上記の手法により同様に調製する。
【0205】
[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]−−[2’−デオキシホスホロチオエート]−−[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]キメラオリゴヌクレオチド
2’−O−メチルキメラオリゴヌクレオチドに関する上記の手法により同様に、[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]−−[2’−デオキシホスホロチオエート]−−[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]キメラオリゴヌクレオチドを調製し、2’−O−メチルアミダイトに代えて2’−O−(メトキシエチル)アミダイトで置換し、ヨウ素により酸化して、キメラ構造のウイング部分内にホスホジエステルヌクレオチド間結合を生成し、そして3H−1,2ベンゾジチオール−3−オン1,1ジオキシド(Beaucage Reagent)を利用して硫化して、中心ギャップのためのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を生成する。
【0206】
その他のキメラオリゴヌクレオチド、キメラオリゴヌクレオシドおよび混合キメラオリゴヌクレオチド/オリゴヌクレオシドは、米国特許第5,623,065号(この記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に従って合成する。
【0207】
実施例6
オリゴヌクレオチド単離
制御孔ガラスカラム(Applied BioSystems)から切断し、55℃で18時間、濃水酸化アンモニウム中で脱ブロッキング後、2.5容積のエタノールを用いて0.5 MNaClを2回沈殿させることにより、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオシドを精製する。変性ゲル上でのポリアクリルアミドゲル電気泳動により合成オリゴヌクレオチドを分析し、少なくとも85%全長物質であると判断される。「P核磁気共鳴分光法」により合成で得られたホスホロチオエートおよびホスホジエステル結合の相対量を定期的に検査し,そしていくつかの試験に関しては、Chiang et al., J. Biol. Chem. 1991, 266, 18162-18171により記載されたようにHPLCによりオリゴヌクレオチドを精製する。
【0208】
実施例7
オリゴヌクレオチド合成−96ウエルプレートフォーマット
標準96ウエルフォーマットで同時的に96配列を集合させ得る自動合成機で、固相P(III)ホスホルアミダイト化学により、オリゴヌクレオチドを合成する。水性ヨウ素を用いた酸化により、ホスホジエステルヌクレオチド間結合を得る。無水汗とニトリル中の3H−1,2ベンゾジチオール−3−オン1,1ジオキシド(Beaucage Reagent)を利用して硫化することにより、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を生成する。標準塩基保護化β−シアノエチルジイソプロピルホスホルアミダイトは、商業的売主(例えばPE-Applied BioSystems, Foster City, CAまたはPharmacia, Piscataway, NJ)から購入し得る。非標準ヌクレオシドは、既知の文献または専売特許的方法により合成する。塩基保護化βシアノエチルジイソプロピルホスホルアミダイトとしてそれらを利用する。
【0209】
支持体からオリゴヌクレオチドを切断し、濃NH4OHを用いて、高温(55〜60℃)で12〜16時間、脱保護化し、次に放出物質を真空乾燥する。次に乾燥生成物を滅菌水中に再懸濁して、マスタープレートを得て、これからの全ての分析および試験プレート試料を次に自動操縦ピペットを用いて希釈する。
【0210】
実施例8
オリゴヌクレオチド分析−96ウエルプレートフォーマット
試料の希釈ならびにUV吸収分光法により、各ウエル中のオリゴヌクレオチドの濃度を査定する。個々の生成物の全長一体性を、96ウエルフォーマット(Beckman P/ACETM MDQ)で、または個々に調製された試料に関しては、市販のCE装置(例えばBeckman P/ACETM 5000, ABI270)で、毛管電気泳動(CE)により評価する。エレクトロスプレー−質量分光法を利用した化合物の質量分析により、塩基および主鎖組成を確証する。単一および多チャンネル自動操縦ピペットを用いてマスタープレートから、全ての検定試験プレートを希釈する。プレート上の化合物の少なくとも85%が少なくとも85%全長である場合、プレートは許容可能であると判断される。
【0211】
実施例9
細胞培養およびオリゴヌクレオチド処理
標的核酸が測定可能レベルで存在することが提示された種々の細胞型のいずれかにおいて、標的核酸発現に及ぼすアンチセンス化合物の作用を試験し得る。これは、例えばPCRまたはノーザンブロット分析を用いて、ルーチンに確定され得る。例示目的のために以下の6つの細胞型が提示されるが、しかし標的が選択された細胞型において発現されると提示された他の細胞型が、ルーチンに用いられ得る。これは、当該技術分野で慣例的な方法、例えばノーザンブロット分析、リボヌクレアーゼ保護検定またはRT−PCRにより、容易に確定し得る。
【0212】
T−24細胞:
ヒト移行細胞膀胱癌細胞株T−24は、アメリカ培養細胞コレクション(ATCC)(Manassas, VA)から入手する。10%ウシ胎仔血清(Gibco/Life Technologies, Gaithersburg, MD)、ペニシリン100単位/mLおよびストレプトマイシン100 μg/mL(Gibco/Life Technologies, Gaithersburg, MD)を補足した完全マッコイ基本培地(Gibco/Life Technologies, Gaithersburg, MD)中で、T−24細胞をルーチンに培養する。それらが90%集密に達した場合、トリプシン処理および希釈により、細胞をルーチンに継代する。RT−PCR分析に用いるために、7000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレート(Falcon-Primaria #3872)中に細胞を植え付ける。
【0213】
ノーザンブロッティングまたはその他の分析のために、細胞を100 mmまたはその他の標準組織培養プレート上に植え付けて、適切な容積の培地およびオリゴヌクレオチドを用いて、同様に処理する。
【0214】
A549細胞:
ヒト肺癌細胞株A549は、アメリカ培養細胞コレクション(ATCC)(Manassas, VA)から入手し得る。10%ウシ胎仔血清(Gibco/Life Technologies, Gaithersburg, MD)、ペニシリン100単位/mLおよびストレプトマイシン100 μg/mL(Gibco/Life Technologies, Gaithersburg, MD)を補足したDMEM基本培地(Gibco/Life Technologies, Gaithersburg, MD)中で、A549細胞をルーチンに培養する。それらが90%集密に達した場合、トリプシン処理および希釈により、細胞をルーチンに継代する。
【0215】
NHDF細胞:
ヒト新生児皮膚繊維芽細胞(NHDF)は、Clonetics Corportion (Walkersville MD)から入手し得る。供給元が推奨したように補足した繊維芽細胞増殖培地(Clonetics Corportion, Walkersville MD)中で、NHDFをルーチンに保持する。供給元が推奨したように、10継代までの間、細胞を保持する。
【0216】
HEK細胞:
ヒト胚ケラチノサイト(HEK)は、Clonetics Corportion (Walkersville MD)から入手し得る。供給元が推奨したように処方したケラチノサイト増殖培地(Clonetics Corportion, Walkersville MD)中で、HEKをルーチンに保持する。供給元が推奨したように、10継代までの間、細胞を保持する。
【0217】
MCF−7細胞:
ヒト乳癌細胞株MCF−7は、アメリカ培養細胞コレクション(ATCC)(Manassas, VA)から入手する。10%ウシ胎仔血清(Gibco/Life Technologies, Gaithersburg, MD)を補足したDMEM低グルコース(Gibco/Life Technologies, Gaithersburg, MD)中で、MCF−7細胞をルーチンに培養する。それらが90%集密に達した場合、トリプシン処理および希釈により、細胞をルーチンに継代する。RT−PCR分析に用いるために、7000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレート(Falcon-Primaria #3872)中に細胞を植え付ける。
【0218】
ノーザンブロッティングまたはその他の分析のために、細胞を100 mmまたはその他の標準組織培養プレート上に植え付けて、適切な容積の培地およびオリゴヌクレオチドを用いて、同様に処理する。
【0219】
LA4細胞:
マウス肺上皮細胞株LA4は、アメリカ培養細胞コレクション(ATCC)(Manassas, VA)から入手する。15%ウシ胎仔血清(Gibco/Life Technologies, Gaithersburg, MD)を補足したF12K培地(Gibco/Life Technologies, Gaithersburg, MD)中で、LA4細胞をルーチンに培養する。それらが90%集密に達した場合、トリプシン処理および希釈により、細胞をルーチンに継代する。RT−PCR分析に用いるために、3000〜6000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレート(Falcon-Primaria #3872)中に細胞を植え付ける。
【0220】
ノーザンブロッティングまたはその他の分析のために、細胞を100 mmまたはその他の標準組織培養プレート上に植え付けて、適切な容積の培地およびオリゴヌクレオチドを用いて、同様に処理する。
【0221】
アンチセンス化合物による処理:
細胞が80%集密に達したら、それらをオリゴヌクレオチドで処理する。96ウエルプレート中で増殖された細胞に関して、ウエルを200 μLのOPTI−MEMTM−1低減血清培地(Gibco BRL)で1回洗浄し、次に3.75 μg/mLのLIPOFECTINTM(Gibco BRL)および所望の脳殿オリゴヌクレオチドを含有する130 μLのOPTI−MEMTM−1で処理する。処理の4〜7時間後、培地を新鮮な培地と取り換える。オリゴヌクレオチド処理の16〜24時間後に、細胞を収穫する。
【0222】
用いたオリゴヌクレオチドの濃度は、細胞株毎に異なる。特定細胞株に関する最適オリゴヌクレオチド濃度を確定するために、一連の濃度の陽性対照オリゴヌクレオチドで細胞を処理する。
【0223】
実施例10
mitoNEET発現のオリゴヌクレオチド抑制の分析
当該技術分野で既知の種々の方法で、mitoNEET発現のアンチセンス変調を検定し得る。例えばmitoNEET mRNAレベルは、例えばノーザンブロット分析、競合的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリアルタイムPCR(RT−PCR)により定量し得る。リアルタイム定量的PCRが目下好ましい。RNA分析は、全体細胞RNAまたはポリ(A)+mRNAで実施し得る。RNA単離の方法は、例えばAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Volume 1, pp. 4.1.1-4.2.9 and 4.5.1-4.5.3, John Wiley & Sons, Inc., 1993に教示されている。ノーザンブロット分析は当該技術分野でルーチンであり、例えばAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Volume 1, pp. 4.2.1-4.2.9, John Wiley & Sons, Inc., 1996に教示されている。リアルタイム定量的(PCR)は、市販のABI PRISMTM7700配列検出系(PE-Applied BioSystems, Foster City, CAから入手可能)を用いて成し遂げると便利であり、メーカーの使用説明書に従って用い得る。定量的PCR分析の前に、測定されている標的遺伝子に特異的なプライマー−プローブ組を、GAPDH増幅反応と「複合される」それらの能力に関して評価する。標的遺伝子および内部標準遺伝子の両方を複合するに際しては、GAPDHを単一試料中で同時発生的に増幅する。この分析では、非処理細胞から単離されたmRNAを連続希釈する。GAPDHのみ、標的遺伝子のみ(「単一構成単位性」)またはその両方(複合性)に特異的なプライマー−プローブ組の存在下で各希釈液を増幅する。PCR増幅後、希釈の一関数としてのGAPDHおよび標的mRNAシグナルの標準曲線を、単一構成単位性および複合性試料から生成する。複合試料から生成されたGAPDHおよび標的シグナルの勾配および相関係数の両方が、単一構成単位試料から生成されたそれらの対応する値の10%以内である場合、その標的に特異的なプライマー−プローブ組は、複合可能であると考えられる。PCRのその他の方法も、当該技術分野で既知である。
【0224】
当該技術分野で周知の種々の方法、例えば免疫沈降、ウエスタンブロット分析(イムノブロッティング)、ELISAまたは蛍光活性化細胞分類(FACS)で、mitoNEETのタンパク質レベルを定量し得る。mitoNEETに対して向けられる抗体は、同定されそして種々の供給元,例えばMSRS catalog of antibodies (Aerie Corporation, Birmingham, MI)から入手し得るし,あるいは慣用的抗体生成方法により調製し得る。ポリクローナル抗血清の調製方法は、例えばAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Volume 2, pp. 11.12.1-11.12.9, John Wiley & Sons, Inc., 1997に教示されている。モノクローナル抗体の調製は、例えばAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Volume 2, pp. 11.4.1-11.11.5, John Wiley & Sons, Inc., 1997に教示されている。
【0225】
免疫沈降法は当該技術分野における標準であり、例えばAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Volume 2, pp. 10.16.1-10.16.11, John Wiley & Sons, Inc., 1998に見出され得る。ウエスタンブロット(イムノブロット)分析は、当該技術分野における標準であり、例えばAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Volume 2, pp. 10.8.1-10.8.21, John Wiley & Sons, Inc., 1997に見出され得る。酵素結合イムノソルベント検定(ELISA)は当該技術分野における標準であり、例えばAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Volume 2, pp. 11.2.1-11.2.22, John Wiley & Sons, Inc., 1991に見出され得る。
【0226】
実施例11
ポリ(A)+mRNA単離
Miura et al., Clin. Chem., 1996, 42, 1758-1764に従って、ポリ(A)+mRNAを単離する。ポリ(A)+mRNAのためのその他の方法は、例えばAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Volume 1, pp. 4.5.1-4.5.3, John Wiley & Sons, Inc., 1993に教示されている。要するに、96ウエルプレート上での細胞増殖のために、増殖培地を細胞から除去し、各ウエルを200 μLの冷PBSで洗浄する。60 μLの溶解緩衝液(10 mMトリス−HCl、pH7.6、1 mMEDTA、0.5 mMNaCl、0.5%NP−40、20 mMバナジル−リボヌクレオシド複合体)を各ウエルに付加し、プレートを静かにかき混ぜて、次に室温で5分間インキュベートする。55 μLの溶解物をオリゴd(T)被覆96ウエルプレート(AGCT Inc., Irvine, CA)に移す。プレートを室温で60分間インキュベートし、200 μLの洗浄緩衝液(10 mMトリス−HCl、pH7.6、1 mMEDTA、0.3 MNaCl)で3回洗浄する。最終洗浄後、プレートを紙タオル上で吸い取って、余分な洗浄緩衝液を除去し、次に5分間風乾する。70℃に予熱した60 pLの溶離緩衝液(5 mMトリス−HCl、pH7.6)を各ウエルに付加し、プレートを90℃ホットプレート上で5分間インキュベートして、次に溶離液を新たな96ウエルプレートに移す。
【0227】
100 mmまたはその他の標準プレート上で増殖した細胞を、適切な容積の全溶液を用いて、同様に処理し得る。
【0228】
実施例12
総RNA単離
メーカーの推奨手法に従って、Qiagen Inc. (Valencia, CA)から購入したRNEASY 96TMキットおよび緩衝液を用いて、総mRNAを単離する。要するに、96ウエルプレート上での細胞増殖のために、増殖培地を細胞から除去し、各ウエルを200 μLの冷PBSで洗浄する。100 μL緩衝液RLTを各ウエルに付加し、プレートを20秒間激しくかき混ぜる。次に70%エタノール100 μLを各ウエルに付加し、内容物をピペットで3回上下させて混合する。次に廃物収集トレーを装備したQIAVACTM多岐管に、そして真空供給源に結合されたRNEASY 96TMウエルプレートに試料を移す。真空を15秒間適用する。1 mLの緩衝液RW1をRNEASY 96TMプレートの各ウエルに付加し、真空を再び15秒間適用する。次に1 mLの緩衝液RPEをRNEASY 96TMプレートの各ウエルに付加し、真空を15秒間の間適用する。次に緩衝液RPE洗浄を反復し、真空をさらに10分間適用する。次にプレートをQIAVACTM多岐管から除去し、紙タオル上で吸い取って乾燥する。次に1.2 mL収集管を含有する収集管ラックを装備したQIAVACTM多岐管にプレートを再結合する。次に各ウエル中に60 μLの水をピペット分取することによりRNAを溶離し、1分間インキュベートして、次に真空を30秒間適用する。さらなる60 μLの水を用いて、溶離過程を反復する。
【0229】
反復ピペット分取および溶離過程を、Qiagen Bio-Robot 9604(Qiagen, Inc., Valencia, CA)を用いて自動化し得る。本質的に培養プレート上での細胞の溶解後、プレートをロボットデッキに移して、底でピペット分取、DNアーゼ処理および溶離過程を実行する。
【0230】
実施例13
mitoNEET mRNAレベルのリアルタイム定量的PCR分析
メーカーの使用説明書に従って、ABI PRISMTM7700配列検出系(PE-Applied BioSystems, Foster City, CA)を用いて、リアルタイム定量的PCRにより、mitoNEET mRNAレベルの定量を確定する。これは、閉管、非ゲルベースの蛍光検出系であり、リアルタイムでのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の高処理量定量を可能にする。PCR完了後に増幅生成物を定量する標準PCRとは対照的に,リアルタイム定量的PCRにおける生成物は、それらが蓄積すると定量される。これは、正および逆PCRプライマー間を特異的にアニーリングし、そして2つの蛍光染料を含有するオリゴヌクレオチドプローブをPCR反応中に含むことにより成し遂げられる。レポーター染料(例えばJOE、FAMTMまたはVIC(Operon Technologies Inc., Alameda, CAまたはPE- Applied BioSystems, Foster City, CAから入手))をプローブの5’末端に結合し、そして消光剤染料(例えばTAMRA(Operon Technologies Inc., Alameda, CAまたはPE-Applied BioSystems, Foster City, CAから入手))をプローブの3’末端に結合する。プローブおよび染料が無傷である場合、レポーター染料発光は、3’消光剤染料の接近により消光される。増幅中、プローブと標的配列とのアニーリングは、Taqポリメラーゼの5’−エキソヌクレアーゼ活性により切断され得る基質を作り出す。PCR増幅周期の伸長期中、Taqポリメラーゼによるプローブの切断は、残りのプローブから(およびそれゆえ消光剤部分から)レポーター染料を放出し、配列特異的蛍光シグナルが生成される。各周期に伴って、付加的レポーター染料分子がそれらのそれぞれのプローブから切断され、そしてABI PRISMTM7700配列検出系中に構築されたレーザーオプティクスにより一定間隔で、蛍光強度がモニタリングされる。各検定において、非処理対照試料からのmRNAの連続希釈液を含有する一連の平行反応は標準曲線を生成し、これを用いて、試験試料のアンチセンスオリゴヌクレオチド処理後の抑制%を定量する。
【0231】
PCR試薬は、PE-Applied BioSystems, Foster City, CAから入手し得る。25 μLのポリ(A)mRNA溶液を含入する96ウエルプレートに、25 μLのPCRカクテル(1×TAQMANTM緩衝液A、5.5 MMMgCl2、各々300 μMのdATP、dCTPおよびdGTP、600 μMのdUTP、各々100 nMの正プライマー、逆プライマーおよびプローブ、20 単位のRNAアーゼ、1.25 単位のAMPLITAQ GOLDTM、および12.5 単位のMuLV逆転写酵素)を付加することにより、RT−PCR反応を実行する。48℃で30分間のインキュベーションにより、RT反応を実行する。95℃で10分間インキュベートして、AMPLITAQ GOLDTMを活性化した後、2段階PCRプロトコールを40サイクル実行する:95℃で15秒(変性)、その後、60℃で1.5分(アニーリング/伸長)。
【0232】
公表された配列、情報(GenBank寄託番号NM_018464、図1として本明細書中で援用される)を用いて、ヒトmitoNEET配列とハイブリダイズするよう、ヒトmitoNEETに対するプローブおよびプライマーを設計した。ヒトmitoNEETに関して、PCRプライマーを以下に示す:
正プライマー:TCCTAGTGCACACGCCTTTG配列番号618
逆プライマー:ACTCGTACGCTGGAACTGGAA配列番号619
そしてPCRプローブは:FAMTM−AAGCGACGGCGCCATGAGTCTG配列番号620−TAMRA。ここで、FAMTM(PE-Applied BioSystems, Foster City, CA)は、蛍光レポーター染料であり、TAMRA(PE-Applied BioSystems, Foster City, CA)は消光剤染料である。ヒトシクロフィリンに関しては、PCRプライマーは以下の通りである:
正プライマー:CCCACCGTGTTCTTCGACAT配列番号621
逆プライマー:TTTCTGCTGTCTTTGGGACCTT配列番号622
そしてPCRプローブは:5’ JOE-CGCGTCTCCTTTGAGCTGTTTGCA配列番号623−TAMRA3’。ここで、JOE(PE-Applied BioSystems, Foster City, CA)は、蛍光レポーター染料であり、TAMRA(PE-Applied BioSystems, Foster City, CA)は消光剤染料である。
【0233】
実施例14
2’−MOEウイングおよびデオキシギャップを有するキメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドによるヒトmitoNEET発現のアンチセンス抑制
本発明に従って、公表された配列(GenBank寄託番号NM_018464、図1において配列番号2として本明細書中で援用される)を用いて、ヒトmitoNEETRNAの異なる領域をターゲッティングするよう、一連のオリゴヌクレオチドを設計する。オリゴヌクレオチドを、表1に示す。「位置」は、オリゴヌクレオチドが結合する特定の標的配列上の最初の(最も5’寄りの)ヌクレオチド数を示す。David H. Mathews, Michael ZukerおよびDouglas H. TurnerによるRNA構造3.7を用いて、各オリゴに関する指示パラメーターを予測した。パラメーターは、自由エネルギー(反応が起きた場合に放出されるエネルギー。数値が負であるほど、反応がより多く起こると思われる。自由エネルギー単位は全て、kcal/molである)または融解温度(ポリ核酸の2つのアニール鎖が分離する温度。温度が高いほど、2つの鎖の間の親和性は大きい)として記載される。高親和性で結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(オリゴマー)を設計する場合、標的RNA鎖およびアンチセンスオリゴマーの構造を考慮するのが望ましい。特にしっかり結合するオリゴマーに関しては(表中では、「二重鎖形成」と記載)、ほとんど自己構造を有さない標的RNAのストレッチと相補的であるべきである(表中では、その自由エネルギーは「標的構造」と記載される)。さらにまた、オリゴマーは、分子内(表中では、その自由エネルギーは「分子内オリゴ」と記載される)または二分子(表中、その自由エネルギーは「分子間オリゴ」と記載される)の自己構造をほとんど有さない。任意の自己構造の解体は、結合ペナルティーになる。表1中の化合物は全て、4つのヌクレオチド「ウイング」により両側(5’および3’方向)で側面を接する10個の2’でオキシヌクレオチドからなる中心「ギャップ」領域で構成される20ヌクレオチド長のキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)である。ウイングは、2’−メトキシエチル(2’−MOE)ヌクレオチドからなる。ヌクレオシド間(主鎖)結合は、オリゴヌクレオチド全体を通してホスホロチオエート(P=S)である。2’−MOEウイング中のシチジン残基は、5−メチルシチジンである。シチジン残基は全て、5−メチルシチジンである。
【0234】
【表1】

【0235】
【表2】

【0236】
【表3】

【0237】
【表4】

【0238】
【表5】

【0239】
【表6】

【0240】
【表7】

【0241】
【表8】

【0242】
【表9】

【0243】
【表10】

【0244】
【表11】

【0245】
【表12】

【0246】
【表13】

【0247】
【表14】

【0248】
【表15】

【0249】
【表16】

【0250】
【表17】

【0251】
【表18】

【0252】
【表19】

【0253】
【表20】

【0254】
【表21】

【0255】
実施例15
mitoNEETタンパク質レベルのウエスタンブロット分析
標準方法を用いて、ウエスタンブロット分析(イムノブロット分析)を実行する。オリゴヌクレオチド処理の16〜20時間後に細胞を収穫し、PBSで1回洗浄し、レムリー緩衝液(100 ul/ウエル)中に懸濁し、5分間煮沸して、16%SDS−PAGEゲル上に載せる。150 Vで1.5時間、ゲルを走行し、ウエスタンブロッティングのために膜に移す。mitoNEETに対して向けられる適切な一次抗体を、一次抗体種に対して向けられる放射能標識または蛍光標識二次抗体とともに用いる。PHOSPHORIMAGERTM(Molecular Dynamics, Sunnyvale CA)を用いて、帯域を可視化する。
【図面の簡単な説明】
【0256】
【図1】図1. ヒトmitoNEETのアミノ酸配列、ならびにそれをコードする核酸。
【図2】図2. ウシ、ヒトおよびネズミmitoNEETの配列アラインメント。
【図3】図3. 下線を付したアミノ配列は、精製mitoNEETからのトリプシンペプチドのナノスプレー質量スペクトル分析により実験的に見出された。精製CnBr断片のN末端シーケンシングにより、M62後の配列を確証した。分子のこの部分は、プローブによる架橋の部位を含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
mitoNEETをコードする核酸分子に対して標的化される8〜30核酸塩基長のアンチセンス化合物であって、mitoNEETと特異的にハイブリダイズし、かつ、その発現を抑制する前記アンチセンス化合物。
【請求項2】
アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1記載のアンチセンス化合物。
【請求項3】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが配列番号1〜配列番号617の核酸配列の少なくとも8連続核酸を含む、請求項2記載のアンチセンス化合物。
【請求項4】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが配列番号1〜配列番号617の核酸配列を含む、請求項3記載のアンチセンス化合物。
【請求項5】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが配列番号1〜配列番号617の核酸配列の少なくとも8連続核酸から成る、請求項2記載のアンチセンス化合物。
【請求項6】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが配列番号1〜配列番号617の核酸配列から成る、請求項2記載のアンチセンス化合物。
【請求項7】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合を含む、請求項1、2、3、4、5または6記載のアンチセンス化合物。
【請求項8】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾糖部分を含む、請求項1、2、3、4、5、6または7記載のアンチセンス化合物。
【請求項9】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾核酸塩基を含む、請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のアンチセンス化合物。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載のアンチセンス化合物および製薬上許容可能な担体または希釈剤を含む組成物。
【請求項11】
mitoNEETに関連した疾患または症状を有するヒトの治療方法であって、mitoNEETの発現が抑制されるよう、治療的または予防的有効量の請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載のアンチセンス化合物を前記動物に投与することを包含する方法。
【請求項12】
疾患または症状が糖尿病、免疫学的障害、心臓血管性障害、例えば高血圧症、神経学的障害および虚血/再還流損傷から選択される、請求項12記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
mitoNEETをコードする核酸分子に対して標的化される8〜30核酸塩基長のアンチセンス化合物であって、mitoNEETと特異的にハイブリダイズし、かつ、その発現を抑制する前記アンチセンス化合物。
【請求項2】
アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1記載のアンチセンス化合物。
【請求項3】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが配列番号1〜配列番号617の核酸配列の少なくとも8連続核酸を含む、請求項2記載のアンチセンス化合物。
【請求項4】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが配列番号1〜配列番号617の核酸配列を含む、請求項3記載のアンチセンス化合物。
【請求項5】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが配列番号1〜配列番号617の核酸配列の少なくとも8連続核酸から成る、請求項2記載のアンチセンス化合物。
【請求項6】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが配列番号1〜配列番号617の核酸配列から成る、請求項2記載のアンチセンス化合物。
【請求項7】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合を含む、請求項1、2、3、4、5または6記載のアンチセンス化合物。
【請求項8】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾糖部分を含む、請求項1、2、3、4、5、6または7記載のアンチセンス化合物。
【請求項9】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾核酸塩基を含む、請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のアンチセンス化合物。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載のアンチセンス化合物および製薬上許容可能な担体または希釈剤を含む組成物。
【請求項11】
mitoNEETに関連した疾患または症状を有するヒトの治療用医薬組成物であって、mitoNEETの発現が抑制されるよう、治療的または予防的有効量の請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載のアンチセンス化合物を含む前記医薬組成物
【請求項12】
疾患または症状が糖尿病、免疫学的障害、心臓血管性障害、例えば高血圧症、神経学的障害および虚血/再還流損傷から選択される、請求項11記載の医薬組成物

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−515511(P2006−515511A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559165(P2004−559165)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/037621
【国際公開番号】WO2004/053060
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(303050964)ファルマシア コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】