説明

n本の複合経路を用いるタイプのDC−DC分割機能を備える電源のための制御装置

n個の複合された変換セルBCを有する電源において、制御装置は、電源によって扱われる電力(PA)または電流に応じて、n本の経路からm本の経路を作動させる(1≦m≦n)。セルは、ブースト、バック、バック/ブースト、CukまたはSEPIC回路構成を有していてもよい。
用途は燃料電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、n本の複合経路を用いるDC−DC分割機能を備える電源、特にこのような電源を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は特に、燃料電池により供給されるエネルギーに基づいて、所定のレベルに調整された直流電圧の供給に利用される。
【0003】
燃料電池は、多くの用途に使用されている。たとえば、電気モータ自動車のエネルギー源として、あるいはバッテリの再充電、たとえば携帯機器(たとえば、電話)のバッテリの再充電のために使用される。
【0004】
DC−DC分割機能、別名コンバータまたはチョッパを備える非絶縁型電源は通常、セルによって供給される直流電圧を、電源の回路構成に応じて、より高い、または低い、同じ極性または反転した極性を有する別の直流電圧に変換するために使用される。電源により扱われる電力は、出力負荷、すなわち出力において供給電圧を使用する用途によって異なる。
【0005】
本発明は、より詳しくは、複合セルタイプの分割電源に焦点を当てている。このような電源により、電源の入力および出力での電流リップルを抑えることが可能となる。入力および出力におけるリップルの抑制は、分割電源の品質を評価するための基準となる。各セルはコンバータである。複合という考え方は、セルが、それらのセルに共通の、あるいは各セルに固有の出力コンデンサに、位相変調方式で電源供給するという事実から生まれたものである。
【0006】
複合されるセルはそれぞれ、DC−DCコンバータである。これらはすべて同じ回路構成を有し、この回路構成は電源の範囲と、所望の用途について求められるゲインに応じて選択される。このような電源に使用される各種の周知の電源回路構成としては、「ブースト」("boost")と呼ばれる昇圧型、「バック」("buck")と呼ばれる降圧型、「バック−ブースト」("buck−boost")もしくは発明者の名前から「Cuk」回路構成とも呼ばれる極性反転昇降圧型、昇降圧型またはSEPIC("Single ended primary inductor converter")がある。
【0007】
上記の各種回路構成のいずれについても同様に、各DC−DC変換セルは、一般に1つの入力端子、1つの出力端子および1つの共通端子を有する3極の電気回路である。この電気回路は、少なくとも1つのスイッチと、1つのダイオードと、一般的にはインダクタである1つのエネルギー蓄積素子を備える。入力電圧は、入力端子と共通端子の間に印加される。出力コンデンサが出力端子と共通端子の間に接続される。エネルギーはエネルギー蓄積素子によって入力から出力に伝送され、このエネルギー蓄積素子は、エネルギーをスイッチの開閉切換えに応じて蓄積し、その後回復する。電圧調整は、分割スイッチの導通時間(閉状態)によって行われる。
【0008】
スイッチSは通常、電界効果トランジスタで製作される。そのために、スイッチの開状態とオフ状態、閉状態とオン状態という表現を区別せずに使用する。一般に、入力および出力電圧の範囲が数ボルトから数千ボルトまで及ぶため、好ましくは、その端子の高電圧に耐えられるIGBT(Isolated Gate Bipolar Transistor)タイプのトランジスタが使用される。このような技術的解決策によれば、コンバータの信頼性を確保しながら、構成要素のコストを安価にすることができる。
【0009】
セルの動作と複合セルを用いた電源の動作を、セルBCの構造と動作を詳細に示した図1aから図1cと、このタイプの3つのセルBC、BC、BCからなる電源を詳細に示した図2、図3a、図3bに関して説明する。
【0010】
変換セルBC(図1a)は星型の3極セルであり、スイッチS、インダクタL、ダイオードDの各々が3極の分枝となる。分枝はすべて共通のノードAから始まり、それらの終端が3極の3つの端子の1つを形成する。
【0011】
図の例において、セルBCの回路構成はBC昇圧(ブースト)コンバータのそれである。スイッチSは、ノードAと共通端子Bの間に接続される。ダイオードは、その陽極がノードAに接続され、その陰極が出力端子Bに接続される。インダクタLは、入力端子BとノードAの間に接続される。
【0012】
分割スイッチSは、通常のパルス幅変調モードで、固定周波数fのパルス信号によって制御され、スイッチは、αtで示される閉時間にわたる閉状態とt−αtの開時間にわたる開状態とに交互に切り換わり、αはスイッチが閉じている時間と完全な1周期(t=1/f)との周期の比である。
【0013】
上記のようなコンバータの2つの動作状態は、スイッチSの開閉という2つの状態に対応し、次のようになる。
−スイッチSが閉状態である。インダクタLは入力電圧源と並列となり、電流がインダクタにおいて増大する。これは、エネルギー蓄積状態である。すると、ダイオードDが無効化される。これに相当する回路図を図1bに示す。
−スイッチSが開状態である。インダクタLは入力電圧源Uと直列となる。電流はインダクタLとダイオードDを流れ、出力コンデンサCが充電される。これは、エネルギー伝送状態である。これに相当する回路図を図1cに示す。出力コンデンサCの端子の電圧は入力電圧より高くなる。
【0014】
出力電圧レベルは、実際において、スイッチの開閉時間の長さによって異なる。分割電源が固定周波数fにより連続導通モード(すなわち、インダクタを通過する電流が打ち消されることがない)で動作すると、出力電圧UsはαUeに等しい。
【0015】
図2は、1つの出力コンデンサCを充電するn個の複合セルを有する分割電源を示す。
【0016】
図の例では、n=3の同一(L、S、D)の並列なセルBC、BC、BCであり、それぞれの端子B同士が接続され、端子B同士が接続され、端子B同士が接続される。この電源は、各セルの出力端子Bと共通端子Bの間に接続される1つの出力コンデンサCを有する。入力電圧Uは、各セルの入力端子Bと共通端子Bの間に印加される。
【0017】
この図において、セルは図1aのセルと同じコンバータ回路構成、すなわち昇圧型(ブースト)である。
【0018】
n=3の分割スイッチSはそれぞれ、図1aから図1cに関して説明したように、同じ分割周波数fで制御されるが、各種のパスは、各セルの間の位相差に対応する固定長さの時間シフト、2π/nfによって相互に関してずらされる。したがって、負荷における電流と電圧の周波数は、1つのセルを使用した場合のn倍大きい。入力リップルと出力コンデンサのリップルが低減される。
【0019】
本発明は、特に、n個の複合セルを有する電源の改良に焦点を当てており、この改良とは、有利な態様として、放熱し、電源の各種要素の間の接続によって発生する配線インダクタンスによる入力と出力の電圧または電流リップルを抑制し、さらには解消することに関して、各種構成要素の配置の簡易化を可能にする改良に関する。これらは特に、電荷転送ループ(スイッチS、ダイオードD、出力コンデンサC)を分離させる、各セルのスイッチSとダイオードDの間の直列の配線インダクタンスLである。電源に1つのセルにつき1つの出力コンデンサが含まれる場合、これらの出力コンデンサ(図2には示されない)の間にも配線インダクタンスがある。この改良例では、各セルの分割スイッチSは、図2において簡単な長方形10によって図式的に示される共振回路として配置され、それぞれにスイッチSが含まれる。
【0020】
この共振回路10により、分割スイッチをゼロ電流にロックして、エネルギー蓄積状態からエネルギー伝送状態に移行させることができる。ロックは、ゼロ電圧でも行われる。損失を出さずにロックすることによって得られる技術的効果は特に、電荷伝送ループ(T、D、C)の配線インダクタンスが給電効率に影響を及ぼさなくなることである。したがって、たとえ配線インダクタンスが高くても、変換には影響を与えない。
【0021】
図3aと図3bはこの共振回路10の1つの実施形態の詳細を示す。図3aは、図2に示される電源回路構成に対応する。図3bは、同様の電源回路構成であるが、1つのセルにつき1つの出力コンデンサがある場合を示している。
【0022】
給電効率は、共振回路を用いない複合構造より改善されている。比較として、共振回路を用いない複合セルを有する電源では、フルパワーで92%〜93%程度の効率が普通である。共振回路を用いると、フルパワーでの効率は96%に達し、3%〜4%程度改善されることになる。
【0023】
通常、フルパワーとは、コンバータにより転送される最大電力を意味し、その限度は使用される構成要素の性質によって決まる。
【0024】
実際において、電源は常にフルパワーで作動するとは限らず、すなわち負荷によって要求される電流は変動しうる。これは用途に依存するのであるが、その理由は、電源は特定の電力範囲で設計され、各種の用途に使用できるようになっているからである。しかし、すべての用途が同じ電力需要であるとは限らない。さらに、ある用途において要求される電力が時間に応じて変化することもある。
【0025】
しかしながら、電源がフルパワーで作動していないとき、共振回路を用いた複合構造で実現される効率改善幅は小さくなり、逆転する場合さえある。これは、定義上、共振素子である共振インダクタと共振コンデンサを含む共振回路が、固有の電力損失源であるという事実によって説明できる。このような損失の重要性は、共振コンデンサを充電する出力電圧レベルにのみ依存する。共振回路により扱われるエネルギーは特に、共振コンデンサを充電する出力電圧によって異なる。この出力電圧により、共振コンデンサに蓄積されるエネルギーが変化し、したがって、セルの共振回路により扱われるエネルギーが変化する。上記の損失は、セルによって扱われる電力とは無関係である。そのため、電源の使用条件に応じて、共振素子の損失が大きな重要性を有するか、それほど重要ではないかか決まると理解できる。
【0026】
この問題を説明するために、下表に、共振回路としてn個の複合セルを用いた(n=3)特定の電源の、この電源により扱われる電力に対する効率ηを示す。
【0027】
電源により扱われる電力Pは一般に、必要な出力レベルVsと出力負荷により要求される電力、すなわち電源供の使用条件に依存する。
【0028】
表は、出力電力と入力電力の比に対応する電源の効率ηを、必要な出力電圧レベルVsと、入力電圧レベルVと、その電源により扱われる電力Pに関して示している。
【0029】
【表1】

【0030】
表中、数値を求めるのに例として用いた電源の最大電力は9kWである。
【0031】
この表から、効率が使用条件によって異なり、効率は扱われる電力が小さいと低下することがわかる。特に、電源で扱われる電力が低い、すなわち表の例では2kWであると、効率は共振回路を用いない電源の場合より低くなる。
【0032】
コンバータのすべての共振回路の損失レベルは、低い直列抵抗の電機子と平面インダクタを用いるポリプロピレン型の効率のよいコンデンサを使用することによって、コンバータの全電力の1%〜2%程度に制限することができるが、電源がフルパワーで作動しない場合には、依然として効率の低下が見られる。一般に、共振素子の損失がフルパワーの効率の1.5%で一定であるとすると、コンバータがそのパワーの3分の1で作動するときには、この一定の損失は4.5%の効率低下に相当する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
そこで、本発明の具体的な目的は、共振回路内の固定電力損失による複合セル方式の電源の効率低下に対処することである。
【0034】
より一般的には、本発明の目的は、電源の構造が一定レベルの電力損失の原因であり、この損失が電源により扱われる電力の低下に伴って増大する場合に、電源により扱われる電力レベルに関係なく、複合セルを用いた電源の効率を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明の基本となるのは、n通りの給電経路の中から、コンバータにより扱われる電力レベルに応じて、実際に作動させる変換経路の数を変調して、扱われる電力の減少に伴う固定損失分を低減させるという考えである。
【0036】
本発明はしたがって、それぞれ入力電圧を出力電圧に変換するための経路を形成するn個のセルを含むDC−DC分割機能を備える電源を複合モードで制御する装置に関し、この装置は、電源における電力または電流レベルに応じて、作動させる経路の数を制御するための回路を備え、作動させる経路の数mに関して、この回路は、作動させる経路の数mを制御するために、n個の利用可能な経路の中でローテーションを行うメカニズムを利用することを特徴とする。
【0037】
本発明はまた、それぞれが入力電圧を出力電圧に変換する経路を形成するn個のセルを含むDC−DC分割機能を備える非絶縁型電源に関し、これらの経路が上記のような制御装置によって作動させ、また無効化することができる。
【0038】
本発明の他の利点や特徴を、非限定的な例として示される本発明の1つの実施形態を描いた図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1a】既述のブーストタイプの昇圧セルを示す。
【図1b】既述のブーストタイプの昇圧セルの動作状態を示す。
【図1c】既述のブーストタイプの昇圧セルの動作状態を示す。
【図2】本発明による制御装置を利用できる、複合セルを用いたDC−DC分割機能を備える非絶縁型電源の一例を示し、好ましくは、各セルが、スイッチの設置された共振回路を含む。
【図3a】図2に対応し、その共振回路の1つの実施形態の詳細な回路図を示す。
【図3b】図3aの電源の変化形であり、1つのセルにつき1つの出力コンデンサを有するものを示す。
【図4】図2または図3aに示される電源で用いられる、共振回路としての2つの対応する変換セルのスイッチSと補助スイッチSauxを制御するための信号のタイミングチャートである。
【図5】セルにおける対応する電流と電圧の波形を示す。
【図6】セルにおける対応する電流と電圧の波形を示す。
【図7】セルにおける対応する電流と電圧の波形を示す。
【図8】図2、図3aまたは図3bの回路構成による、n=5の複合セルを用いた電源の制御装置で、本発明による作動経路数(m)を制御する回路を含む制御装置の一般的概略図である。
【図9】本発明に用いられる、電源により扱われる電力に応じて現用経路の数(m)を決定する機能を示す。
【図10】本発明の改良形により、電源の利用可能なn本の経路の中でm本の現用経路をローテーションする原理を示す。
【図11】本発明による現用経路を制御するための一般的原理を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、n個(nは少なくとも2と等しい整数)の複合セルBCを有するDC−DC分割機能を用いた非絶縁型電源に適用される。有利な態様として、これは図2、図3a、図3bに示されるように、共振回路によるn個の複合セルを用いる電源に適用される。
【0041】
各セルは、変換経路に匹敵する。この変換経路は、電源変換周期の中で、分割スイッチS(図2、図3a、図3b、図4)を閉状態に制御することによって得られる、セル内でエネルギーが蓄積される状態になると作動する。開状態に戻ると、出力エネルギー伝送状態となる。スイッチが決して閉、すなわちオン状態に切り替えられない場合は、エネルギー蓄積状態が存在せず、したがってエネルギーの伝送も行われない。変換経路は作動せず、あるいは無効化される。
【0042】
本発明によれば、図11の概略図に示されるように、電源により扱われる電力、または電源内の電流に応じて、条件的に電源供給経路の全部または一部を作動させることができるように選択されている。一般的な、すなわち電源のn本の経路に印加されるべき制御信号を供給する電源制御回路1に、特に図4に関してすでに説明した動作を実現するために、経路の作動を制御するための回路2が追加され、この回路は、電源により扱われる電力または電流の検出結果に基づいて、上記の制御信号をセルに転送するか、または転送しないようにする。より詳細に言えば、演算回路4が、適当な検出回路3により検出された電力または電流に応じて、作動させるべき経路の数mをリアルタイムで判断し、この数を、経路作動を制御する回路2に供給する。
【0043】
本発明による制御装置をより詳しく説明する前に、電源の構造とその動作およびこれに対応する制御信号について説明することが適切である。
【0044】
本発明は特に、図2に示されるようなn個の複合セルを用いた電源に適用され、この電源では、各セルの分割スイッチSが、図3a、図3bに詳しく示される共振回路のような共振回路10の中に設置されている。
【0045】
セルの分割スイッチSは、導入部で図1aに関連して説明したよう、ノードAとノードBの間に接続される。このスイッチSが閉状態に切り替えられると、これら2つのノードAとBの間の導電経路を閉じ、それによってインダクタLが電圧源Ueのループに戻り、エネルギー蓄積段階(図1b)となる。スイッチSが開(つまりオフ)状態に切り替えられると、AとBの間の導電回路が開き、出力コンデンサCにエネルギーを伝送する状態(図1c)になる。
【0046】
共振回路10の機能は、ゼロ電流でスイッチSを開状態に切り替えることができるようにすることである。閉状態から開状態への遷移は、ゼロ電圧でも起こる。したがって、スイッチSは損失のない状態で開くことができ、その結果、エネルギー伝送ループ(スイッチS、ダイオードD、出力コンデンサC)において配線インダクタンスによる損失が発生しない。
【0047】
共振回路は一般に、共振インダクタおよびコンデンサを含む。また、補助スイッチSauxも含み、これはスイッチSが閉じているとき、エネルギー蓄積状態中に共振状態を生じさせる。
【0048】
共振状態では、スイッチSの中の電流を打ち消すことができる。すると、スイッチSは開状態に切り換わることができ、その結果、電源はエネルギー伝送状態に切り換わる。
【0049】
有利な態様として、補助スイッチSauxの電流を打ち消すことも可能であり、この補助スイッチSauxは、損失を出さずに(ゼロ電流で)オフ状態に切り替えることができる。
【0050】
図3a、3bに示す実施形態において、セルBCの共振回路10は、
−スイッチSとノードAの間に直列に接続されたインダクタLと、そのスイッチに並列に接続され、ノードBに連結された陽極と、スイッチSとインダクタLの間の接続点11に接続された陰極を有するダイオードDpと、
−ノードAとBの間に直列に接続されたダイオードDと共振コンデンサCresと、
−インダクタLresと、共振コンデンサCresと並列な補助スイッチSauxであって、このインダクタは共振コンデンサCresと前記第二のダイオードの間の接続点12に連結されている、インダクタLresと補助スイッチSauxと、
−補助スイッチSauxと並列であり、補助スイッチSauxとインダクタLresの間の接続点13に接続された陰極を有する第二のダイオードDauxと、
を含む。
【0051】
実際において、ダイオードDauxとDpはそれぞれ、関連するIGBTトランジスタに並列、すなわち、それぞれSauxとSに並列に設置された個別構成要素として、あるいはこのトランジスタと同一のパッケージで集積することによって実現できる。
【0052】
共振回路10を含むセルBCの各種の動作状態を、図5から図7で説明する。
−エネルギー蓄積状態ST:スイッチSを閉(オン)状態に制御する。ダイオードDはオフに切り替えられる。セルのインダクタLは、電気エネルギーを電磁的方式により蓄積する。
−共振状態R:スイッチSauxを閉(オン)状態に切り替える。ダイオードDはオフであり、スイッチSは常に閉状態である。
【0053】
スイッチSauxを閉状態に切り替えることにより、コンデンサCresとインダクタLresの間に共振が確立され、コンデンサCresの端子の電圧が低下して反転し、ダイオードD2は、その陰極(ノード12)の電圧がその陽極(ノードA)の電圧より低くなると、導通状態となる。ダイオードD2を通過する電流により、スイッチSの電流を打ち消すことが可能となる。スイッチSを開状態に切り替えることができ、これによって変換セルはエネルギー伝送状態に切り換わる。
【0054】
スイッチSの電流が打ち消されると、並列のダイオードDpによって、反転した電流が流れて、共振段階が終了し、その後、ダイオードDpが導通状態となるため、インダクタLが関わるようになる。スイッチSの端子の電圧もまた、Dpの導通によってゼロになる。したがって、スイッチSの開状態への切換えはソフトスイッチングとすることができ、エネルギー損失が生じない。
【0055】
スイッチSが開状態に切り替えられると、エネルギー伝送状態が始まる。
−エネルギー伝送状態T:
ダイオードDが導通し、スイッチSが開き、スイッチSauxは開く。エネルギーがインダクタLから出力コンデンサCに転送される。コンデンサCresが出力電圧Uで充電される。
【0056】
上記のような電源のセルの各々を制御するには、実際において、スイッチSとSauxの各々について1つずつ、これらの2つのスイッチを閉状態と開状態に適切に切り換えて、所望の動作を起こすようにするための2つの制御信号が必要となる。
【0057】
PwmiとP’wmiは、n個のセルBC(i=1からn)を含む電源のセルBCの分割スイッチSと補助スイッチを制御するための信号である。
【0058】
これらの信号は、実際において、分割周波数fのパルス幅変調回路等および一定長さの時間分割回路等の回路により、周知の方法で生成され、各種の経路は、一定長さの持続時間の時間シフト、有利な態様としては2π/nfで相互に関してずらされる。
【0059】
単純な実施形態において、シミュレーションに基づくプログラマブル回路により、さまざまな持続時間(スイッチSとSauxの閉時間、またはシフト2π/nf)を発生させることができる。
【0060】
上記のような制御信号を、2つの連続する変換セルBCとBCi+1に関して図4に示す。これらの周波数fは同じである。セルBCの信号PwmとP’wmは、同期され、スイッチS、Sauxを同時に開くように制御する。2つの信号の違いは、それぞれのデューティ比、α+α’およびα’である。
【0061】
より詳細に説明すると、このタイミングチャートに示すように、各セルにおいて、
−スイッチSauxは、制御信号P’wmにより、スイッチSauxが一定の持続時間taux=α’tだけ導通(閉じる)するように制御される。
−スイッチSは、信号Pwmにより、スイッチSが、スイッチSauxより前から持続時間αtおよび持続時間taux=α’tだけ導通するように制御される。
−2つのスイッチSとSauxは同期して開(すなわちオフ)状態に切り替えられ、エネルギー蓄積状態が終了し、対応する経路について、エネルギー伝送状態が始まる。
【0062】
ここまでに説明した構造の電源について考える。n=5の変換セル、BCからBCを備えるものと仮定する。
【0063】
これらの5つの変換セルBCからBCのための分割スイッチSと補助スイッチSauxを制御する信号を発生する回路を、例として図8に示す。この例においては、シミュレーションの結果に基づき、デューティ比と一定の時間シフトを、信号が図4に示される形状になるように考慮した。
【0064】
このような信号は通常、主としてパルス変調回路200、200’により、クロック信号CKに基づいて一般にプログラマブル回路100から供給される同期信号SYNC1からSYNC5に基づいて発生される。パルス変調回路は、この例においては、所望のデューティ比、つまり分割スイッチに印加される信号PwmからPwmについてはα、共振回路の補助スイッチに印加される信号P’wmからP’wmについてはα’の各制御信号を供給するように構成される。プログラマブル回路は、同期信号の間に所望の時間シフトが得られるように構成される(2π/nf、ここではn=5)。
【0065】
これらは、それぞれのスイッチSとSauxに、分割スイッチSを駆動するための300−1から300−5と共振補助スイッチSauxのための300’−1から300’−5の電流増幅器、別名ドライバによって印加される。
【0066】
本発明において、この電源の効率を最適化するために、共振回路の一定の損失を考慮して、制御装置に、電源により扱われる電力Pまたは電流に応じて、作動させるべき変換経路の数を制御するための回路20を設けて、電力Pまたは検出された電流の数値に応じて、n本の電源経路からm本の経路を作動させるようにしており、mの数値はnと同じまたはそれ以下である。この例において、n=5である。
【0067】
制御回路は、扱われる電力または電流を測定して、数値Pを供給するための回路20−1と、この数値に応じて作動させるべき変換経路の数を計算するための回路20−2と、変換経路を作動/無効化する信号を発生する回路20−3を備える。
【0068】
扱われる電力を測定する回路20−1は、数値Pを供給する。電力を測定または検出するこの回路は、図11の回路3に対応する。電力の測定値は一般に、電源の出力負荷Z(図2)における電流の測定およびその端子における電圧の測定によって得られる。
【0069】
回路20−2は、検出された電力Pに応じて数値mを計算するための回路である。これは図11の回路4に対応する。これは階段のような関数F(P)を用いる。nが給電経路の数であると、この関数の各階段は、mの数値を1からnまでの整数と2つの閾値によって区切られる電力範囲に関係付ける。
【0070】
関数F(Pa)の階段数は、経路の数nと等しい。
【0071】
この関数F(Pa)を、n=5として図9に示す。
【0072】
したがって、対応する演算回路20−2は単純に、数値Pを閾値v1、v2、v3、v4、v5と比較して、検出された電力が当てはまる電力範囲に応じてmの数値を供給する回路によって実現することができる。
【0073】
閾値は、実際において、ある電源のシミュレーションにより、使用される電力を測定する回路20−1に応じて決定される。
【0074】
一般に、n個の閾値が、第一の最も小さい数値v1からn番目の最も大きい数値vへと昇順で分類される場合を考えると、回路は次のルールを適用する。
−検出されたレベルPが第一の閾値(v)より低い場合、mは1である。
−前記の検出されたレベルがi−1番目の閾値(vi−1)より低く、i番目の閾値(v)より低い場合、mはiであり、iは2からnまでの整数である。
【0075】
数値vは好ましくは、電源の最大電力に対応する。
【0076】
演算回路20−2は、計算された数値mを経路制御回路20−3(図11の回路2)に供給する。この制御回路は、各経路/セルの無効化信号の対応する状態を作動させる。この例において、この回路は5つの信号En1からEn5を供給する。この信号は、実際において、それぞれのセルBCのスイッチSとSauxに関連付けられて入る電流増幅器(300−i,300’ −i)を無効化するための入力に供給される。これら5つの信号のうち、m個の信号が対応する増幅器を作動させ、n−m個の信号は無効化する。
【0077】
実際において、経路の数mの検出と管理はリアルタイムで行われ、変換周期と同期して行われる。言い換えれば、各変換周期に適用されるmの数値が規定される。これより長い期間について検出を実行するようにすることも可能である。すると、ある検出周期について計算されたmの数値は、複数の連続する変換周期に適用される。
【0078】
図10に示す例においていえば、m=5のうちの3となり、この数値m=3は、3つの連続する変換周期、周期1、周期2、周期3に適用される。
【0079】
本発明の基本的な用途において、経路を制御する回路(図8の回路20−3または図11の回路1)は、それがどの経路を作動させるかを判断し、それ以外を無効のままにし、無効の経路のスイッチは、開いたままであり、すなわちオン状態ではない。
【0080】
上記のことから、電源の熱損失が空間内に均一に分散されなくなる。
【0081】
本発明の図10に示す改良例によれば、経路を制御する回路は、mはnと異なるため、電源の利用可能なn本の経路の上で、作動させるべきm本の経路のローテーションを行う。順列の規則は、多少なりとも複雑となりうる。これらは、mとnの差を考慮して、何通りの順列が可能かによって異なる。
【0082】
本発明の別の態様によれば、図3a、図3bに示し、これに関して説明した共振回路10を有する電源の用途に関して、共振回路10の共振コンデンサCresの電荷を保持する素子も提案される。
【0083】
具体的には、1つまたは複数の変換周期について作動されないセルでは、渦電流による共振コンデンサCresの放電を制限することが有益である。このコンデンサを充電状態にしておくと、その経路が再び作動される次の変換周期において、損失を出さずに分割スイッチSを切り替えることが可能となる。
【0084】
このような保持素子Rは、たとえば、図3aと図3bにおいて点線で示されている。図を簡略化するために、1つのセルにのみ描かれているが、実際には各セルにこのような素子を設けるものと理解するべきである。有利な態様として、この保持素子は、各電源セルの共振コンデンサの端子12と出力端子Bの間に接続された抵抗Rである。好ましくは、その数値は数百キロオームとなる。
【0085】
実際において、変換経路の停止、すなわち無効化期間中、電源の入力と出力におけるリップルの増加は、全経路が作動される場合より小さい。しかしながら、これは低い電力、したがって小さい温度上昇という電源の使用条件に対応するため、容認できる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明について、非絶縁型電源に関して説明したが、(変圧器により)絶縁される電源にも同様に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が入力電圧を出力電圧に変換するための経路を形成する、n個のセルを含むDC−DC分割機能を備える電源を複合モードで制御する装置であって、前記装置は前記電源における電力または電流レベル(P)に応じて、作動させるべき経路の数を制御する回路(20)を含み、
nより厳密に小さい数である、作動させるべき経路のmについて、作動させる経路の前記数mを制御するための前記回路は、前記n本の利用可能な経路の中でローテーションするメカニズムを適用することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記制御回路(20)は、前記電源において消費される前記電力または前記電流を検出する手段(20−1)と、前記検出されたレベルを順序付けられた一連のn個の閾値(v1、…、v5)に関して分類し、作動させるべき経路の数mを分類結果と一致させることを可能にする手段(20−2)とを備え、mは整数であり、1≦m≦nであることを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記検出されたレベルを分類する前記手段は、第一の最小の数値からn番目の最大の数値まで、昇順で分類されたn個の閾値を決定し、
−前記検出されたレベルが前記第一の閾値(v)より小さい場合、mは1に等しい、
−前記検出されたレベルがi−1番目の閾値(vi−1)であり、i番目の閾値(v)より低い場合、mはiに等しく、iは1からnの整数である
というルールを適用することを特徴とする、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記n番目の数値(v)は、前記電源内の最大電力または電流に対応することを特徴とする、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
同じ分割周波数fで、相互に一定の時間オフセット分だけずれている、それぞれセル(BC)の分割スイッチ(S)を制御するためのn個のパルス変調作動信号(Pwm1、Pwm2、Pwm3、…、Pwmn)を供給し、
前記制御回路(20)は、前記対応する作動信号の各セルへの伝送を無効化するための回路(300−1)を駆動し、各瞬間において、n個のうちm個の作動信号だけが伝送されるようにすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
各セルの前記分割スイッチ(S)は切換え支援共振回路(10)内に設置され、前記共振回路は、共振状態(R)をトリガするための補助スイッチ(Saux)を備え、前記制御装置は同じ分割周波数fで、相互に一定の時間オフセット分だけずれている、n個の追加のパルス変調作動信号(Pwm1’、Pwm2’、Pwm3’、…、Pwmn’)を供給し、各作動信号は、それぞれ対応するセルの補助トランジスタ(Saux)を制御し、前記共振回路は、前記追加の作動信号の伝送を無効化し、各瞬間において、n個のうちm個の作動信号だけが伝送されるようにする回路(300’−1)を備えることを特徴とする、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
各セルの前記共振回路は共振コンデンサ(Cres)を備え、
これは、前記共振コンデンサの電荷を保持するための素子(R)も備えることを特徴とする、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記保持素子は、前記電源の前記コンデンサと出力端子(B)の間に接続された抵抗(R)であり、前記抵抗の数値は好ましくは、数百キロオームであることを特徴とする、請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
負荷(Z)の電源システムであって、燃料電池(PC)と、それに続く、n個(nは少なくとも2と等しい整数)の複合セルを用いるタイプの、DC−DC分割機能を有する少なくとも1つの非絶縁型電源を備えて、請求項1〜8のいずれか一項に記載の制御装置の制御の下で、前記負荷に調整されたレベルの直流電圧を供給することを特徴とする電源システム。
【請求項10】
前記セルが昇圧型である、請求項9に記載の電源システム。
【請求項11】
前記セルが降圧型である、請求項9に記載の電源システム。
【請求項12】
前記セルが電圧反転および/または昇降圧型である、請求項9に記載の電源システム。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−516015(P2011−516015A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500215(P2011−500215)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053205
【国際公開番号】WO2009/115555
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(510163846)コミシリア ア レネルジ アトミック エ オ エナジーズ オルタネティヴズ (47)
【出願人】(507410733)
【Fターム(参考)】