説明

siRNAおよび脂質性4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環アミノグリコシド誘導体を含む組成物ならびにその用途

本発明は、siRNAと、4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環の種類のアミノグリコシドが、スペーサー分子を介して、一般式:−(R1)R2(式中、R1およびR2は互いに独立して、水素原子もしくは脂肪性脂肪族鎖を意味するか、またはR1もしくはR2の一方は存在せず、ただしR1とR2の少なくとも一方は脂肪性脂肪族鎖を意味する)または一般式:−OR3もしくは−NR3(式中、R3はステロイド誘導体を意味する)で示される脂質部分に結合されてなるトランスフェクション用化合物とを含む組成物に関する。本発明はまた、これらの組成物のin vitroおよびin vivo用途にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、siRNAとトランスフェクション用化合物(transfecting compound)とを含む組成物に関する。このトランスフェクション用化合物は、4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環の種類のアミノグリコシド(アミノ配糖体)が、スペーサー分子を介して、一般式:−(R1)R2(式中、R1およびR2は互いに独立して、水素原子もしくは脂肪性脂肪族鎖を意味するか、またはR1もしくはR2の一方は存在せず、ただしR1とR2の少なくとも一方は脂肪性脂肪族鎖を意味する)または一般式:−OR3もしくは−NR3(式中、R3はステロイド誘導体を意味する)で示される脂質部分に結合されてなる。本発明はまた、これらの組成物のin vitroおよびin vivo用途にも関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉(RNAi、RNA interference)は、転写後遺伝子サイレンシングプロセスとその後の細胞内での遺伝子機能の表現型分析による標的遺伝子発現のノックダウンのための強力で汎用されるツールとなってきた。RNA干渉の機序を包含する治療手法も活発に研究されている。効率的な標的遺伝子ノックダウンを達成するには、特定の21−25二本鎖小分子干渉性RNA(small interfering RNA)(siRNA)を細胞の細胞質区画(cytoplasmic compartment)内に導入しなければならない。
【0003】
siRNAの細胞内への導入にはいろいろな方法が使われてきた。その中でも、最も広く使用されているのは、90年代にDNAトランスフェクション用に既に開発されていた普通のカチオン性(陽イオン性)脂質の使用に基づく方法である。このカチオン性脂質は、ジオクタデシルジアンモニウムブロミド(DODAB)、もしくはジオレイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)のような第四級アンモニウム、またはジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)のようなポリカチオン、またはビス(グアニジニウム)−トレン−コレステロール(BGTC,トレン=トリス(2−アミノエチル)アミン)のようなグアニジニウム残基を包含するカチオン性先端基(headgroup)に疎水性部分が連結した構造を有する。
【0004】
他の種類のカチオン性脂質もDNAトランスフェクション用に合成された。特に、一般式:A−Y−L(式中、Aはアミノグリコシド、Yはスペーサー分子、そしてLは脂質部分を意味する)で示される化合物がUS2003−0054556A1(ここに参考として援用、特許文献1)として公開された米国特許出願第10/228959号に記載されている。これらのDNAトランスフェクション用化合物の利点は、Sainlos et al, 2005 (非特許文献1)、Sainlos et al, 2004 (非特許文献2)、およびBelmont et al, 2002 (非特許文献3)においてもさらに確認されている。
【0005】
通常はカチオン性脂質にジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)のようなコリピド(co-lipid)を会合させてリポソームを形成する。プラスミドDNAとカチオン性先端基との間の静電的相互作用により粒子の生成を生ずるが、その粒子の構造は使用したコリピドおよびカチオン性リポソーム中のその割合に依存して、ラメラまたは六角形(ヘキサゴナル)になることが示された。
【0006】
それにもかかわらず、siRNAにより形成された複合体の構造上の特徴はなお未知であり、プラスミドDNAにより観察された構造の妥当性は、siRNAについては未だ解明されていない。また、DNAトランスフェクション用に開発されたカチオン性ベクターのすべてがsiRNA分子のような低分子量で特異的な化学構造の核酸の供給については必ずしも最適化されていない。
【0007】
実際、siRNA分子は、DNAトランスフェクションに一般に使用されているDNAとは非常に異なる非常に特異的な構造を示す。siRNAは、両末端とも数個(通常は2個)のヌクレオチドの3'オーバーハング(張出し)を持つ短い(通常は21〜25ヌクレオチド)の二本鎖のRNA(dsRNA)である。各鎖(ストランド)は5'リン酸基および3'ヒドロキシル(−OH)基を有する。天然siRNAのこの非常に特異的な構造は、長いdsRNAまたはヘアピンRNAをsiRNAに変換する酵素であるダイサーによる処理を受ける結果である。この特定の構造は、合成siRNAについては保存されてきた。これに対して、トランスフェクションされたDNA分子は通常は特定の遺伝子を発現させるために使用される。これは、トランスフェクションされたDNA分子が、該遺伝子をコードする配列の他に、トランスフェクションされた細胞内への該遺伝子の発現を指令するための調節配列も含んでいることを意味する。トランスフェクションされたDNA分子は従って、21〜25ヌクレオチドの非常に短いsiRNAとは異なり、一般に長い鎖長のDNA分子である。この非常に著しい構造上の差異によって、ある特定のトランスフェクション用化合物について、上記一方または他方の核酸カテゴリーとのトランスフェクション効率には著しい変化を生ずることがある。
【0008】
また、DNA発現ベクターとsiRNAの活性は、標的細胞内にトランスフェクションされてしまうと、互いに完全に異なり、それぞれ別個の機序により媒介される。DNA発現ベクターは遺伝子発現を生ずるように転写されなければならないのに対して、siRNAは、本プロセスにおいて巻き戻しを行う、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれるエンドリボヌクレアーゼ含有複合体中に組み込まれ、その後、siRNA鎖がガイドとなってRISCを相補的RNA分子に導き、そこでsiRNAは該同族RNA(cognate RNA)を開裂して破壊し(エフェクター工程)、こうして特定の遺伝子発現を阻害する。同族RNAの開裂はsiRNA鎖が結合した領域の中央付近で起こる。siRNAの作用機序は従って極めて複雑であり、siRNAのための効率的なトランスフェクション用化合物は従って標的細胞へのsiRNAの導入と効率的な干渉を可能にするための細胞内での機能性siRNAの放出の両方を可能にすべきである。
【0009】
構造および作用機序に関するsiRNAの特殊性のため、DNAトランスフェクション用に最適化されたカチオン性脂質は、それらの一部はsiRNAのトランスフェクションにいくらかの効率性を有するかもしれないが、すべてがsiRNAトランスフェクションに適応させることはできないかもしれない。やはり、現在知られているトランスフェクション用化合物の大部分はDNAトランスフェクション用に最適化されたものであり、siRNAトランスフェクション用の最適化トランスフェクション用化合物を意図した研究は今なお多くはない。従って、高効率でsiRNAをトランスフェクションするのに特化されたトランスフェクション用化合物が求められている。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、脂質性アミノグリコシド誘導体が示す哺乳動物細胞におけるsiRNA分子の導入と遺伝子発現のノックダウンの効力を調査した。我々は、スクシニル・スペーサーを介してジオレイル鎖に結合させたカチオン性先端基としてのアミノグリコシドの使用に基づいた新規なカチオン性脂質の合成に成功した。アミノグリコシド(アミノ配糖体)は6個までのアミノ基と多くのヒドロキシル基とにより修飾されたオリゴ糖からなり、従って多方面のポリカチオン性の基本作用を達成する。アミノグリコシドのグリコシド結合が持つ固有の融通性のために、RNA分子と相互作用するように自身を再構築することができる。この群の化合物は、カナマイシン、トブラマイシン、ネオマイシンまたはパロモマイシンのように、二本鎖RNAの主溝、より一般的にはA型核酸と相互作用することが知られている種々のアミノグリコシドを用いてそのカチオン性先端基を修飾することができるという有利な可能性を提供する。
【0011】
本発明者らは、脂質性アミノグリコシド誘導体とのsiRNA分子の複合体化は、プラスミドDNAについて既に提案されているコロイド安定性の3段階モデルを支持するが、siRNAの複合体は、グアニジニウム−コレステロール試薬と複合体化させたsiRNAでみられたものより平均径がより小さく、かつより低い脂質性アミノグリコシド誘導体/siRNA電荷比に対する全siRNA捕捉を示すことを見出した。
【0012】
我々はまた、脂質性アミノグリコシド誘導体/siRNA複合体が、極性先端基として使用したアミノグリコシドに応じて各種のモフォロジーを持った、自己集合型RNA集中(self-assembled RNA-concentrated)粒子からなる特異的な構造を形成することも見出した。実際、4,6−二置換2−デオキシストレプタミン環の種類の脂質性アミノグリコシド誘導体は、脂質二重層とsiRNA分子との規則的な重ね合わせからなる通常の「タマネギ様」の構造を形成したが、4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環の種類の脂質性アミノグリコシド誘導体は、予想外にも、小さな集中構造のブドウ様の異なる構造を形成した。
【0013】
また、DNAトランスフェクション用に計画された脂質性アミノグリコシド誘導体およびカチオン性脂質によるin vitro遺伝子発現阻害の比較分析は、4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環の種類の脂質性アミノグリコシド誘導体が標的細胞内への干渉機序を誘導するのに最も高い効率を有することを示した。実際、すべての脂質性アミノグリコシド誘導体およびDNAトランスフェクション試薬BGTCがいずれも高いsiRNA内部移行(内在化、internalization)を可能にしたが、標的遺伝子の高いsiRNA媒介RNAiノックダウンが可能であったのは、予想外にも4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環の種類のアミノグリコシド誘導体だけであった。この現象の理由はまだ解明されていないが、この種の脂質性アミノグリコシド誘導体/siRNA複合体の独特の構造がこれらの特定の化合物の著しく高い効率に関与しているのではないかと考えられる。
【0014】
最後に、脂質性アミノグリコシド誘導体と市販のsiRNA導入用試薬によるin vitro遺伝子発現阻害の比較分析はまた、4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環の種類の脂質性アミノグリコシド誘導体がsiRNA導入用に現在市販されている試薬に比べてsiRNA媒介RNAiノックダウンについてより高い効率を示すことを実証した。
【0015】
よって、効率的なDNAトランスフェクションを媒介することが知られている脂質性アミノグリコシド誘導体の広い種類の中でも、本発明者らは、哺乳動物細胞内への効率的かつ機能的なsiRNAの導入に特によく適している4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環型の脂質性アミノグリコシド誘導体という新規な下位種類のものを同定した。
【0016】
かくして、本発明は、siRNAと、一般式(I):
A−Y−L (I)
で示されるトランスフェクション用化合物またはその塩、異性体もしくは混合物、とを含む組成物に関する。一般式(I)において、
・Aは4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環の種類のアミノグリコシドを意味し、
・Yはスペーサーを意味し、そして
・Lは下記のいずれかの基を意味する:
−(R1)R2基(式中、R1およびR2は互いに独立して、水素原子もしくは脂肪性脂肪族鎖を意味するか、またはR1もしくはR2の一方は存在せず、ただしR1とR2の少なくとも一方は脂肪性脂肪族鎖を意味する)、または
−N−R3もしくは−O−R3基(式中、R3はステロイド誘導体を意味する)。
【0017】
本発明の目的にとって、用語「アミノグリコシド」(または「アミノシド」)とは、アミノシクリトール基のゲニンを一般には複数個の糖分子(その少なくとも1つはアミノ糖(オサミン)である)と化合させることにより形成される天然のヘテロシド(heteroside)を意味するものである。アミノグリコシド類はストレプタミンまたは2−デオキシストレプタミンをとりうる分子核と、この核に結合しているアミノヘキソースの両方において異なる構造をとりうる。現在使用されている大部分のアミノグリコシドは分子核として2−デオキシストレプタミンをとり、他方の環が結合する2−デオキシストレプタミン環IIの位置に応じて、さらに次の2種類の下位種類に分けることができる:
・2−デオキシストレプタミン核が4位と5位において置換されている、4,5−二置換2−デオキシストレプタミン型アミノグリコシド、および
・2−デオキシストレプタミン核が4位と6位において置換されている、4,6−二置換2−デオキシストレプタミン型アミノグリコシド。
【0018】
4,5−二置換型のものとしてはネオマイシン、パラモマイシン、およびリボスタマイシンが挙げられ、一方、4,6−二置換型のものとしてはトブラマイシン、カナマイシン、アミカシンおよびゲンタマイシンが挙げられる。
【0019】
本発明に係る組成物のトランスフェクション用化合物は、上に定義したような4,5−二置換2−デオキシストレプタミン型アミノグリコシドである。それは、有利にはパラモマイシン、ネオマイシンおよびリボスタマイシンから選ばれ、好ましくはパラモマイシンおよびネオマイシンから選ばれる。或いは、代わりに任意の合成または半合成の上に定義されたような4,5−二置換2−デオキシストレプタミン型アミノグリコシドを使用してもよい。
【0020】
本発明によると、用語「スペーサー」とは、アミノグリコシドもしくはそのポリグアニジル化誘導体と分子の脂質成分との間で結合を形成することができると共に、これら2成分の間の望ましくない相互作用を低減させるためにそれらを離間させることができる任意の化学基を意味する。従って、スペーサーは2官能性の化学基であり、それは、例えば、炭素数1〜6のアルキル、ケトン、エステル、エーテル、アミン、アミド、アミジン、カルバメートもしくはチオカルバメートの各官能基、グリセロール、尿素、チオ尿素または芳香環から選ばれた1または2以上の化学官能基から構成されうる。
【0021】
例えば、スペーサーは次式で示される基から選ぶことができる:
−C(O)−;
−NH−C(O)−CH2−CH2−;
−W−(CH2−)k−W'−;および
−(CH2−)i−W−(CH2−)j−。
【0022】
上記式中、i,jおよびkは1〜6(両端を含む)から選ばれた整数であり、WおよびW'は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれケトン官能基、エステル官能基、エーテル官能基、アミノ官能基、アミド官能基、アミジン官能基、カルバメート官能基、チオカルバメート官能基、グリセロール、尿素、チオ尿素ならびに芳香環から選ばれた基である。
【0023】
本発明の目的にとって、用語「脂肪性脂肪族鎖」とは、10〜22の炭素原子を含有し、場合により該脂肪性脂肪族鎖が脂質特性を有している限り1または2以上のヘテロ原子を含有していてもよい飽和または不飽和のアルキル基を意味するものである。好ましくは、これは1、2または3個の不飽和結合を有する炭素数10〜22の直鎖または分岐鎖アルキル基である。好ましくは、このアルキル基は炭素数が10、12、14、16、18、20または22、より好ましくは18、20または22のものである。より具体的には、−(CH2)11CH3、−(CH2)13CH3、−(CH2)15CH3、−(CH2)17CH3、ミリストイル、オレイルおよびステアリルから選ばれた脂肪族基を挙げることができる。
【0024】
好ましい態様において、Lが−(R1)R2を表す場合、Lはジミリストイル、ジオレイルおよびジステアリルから選択される。
本発明の目的にとって、用語「ステロイド誘導体」とは、コレスタン型の多環式化合物を意味するものである。これらの化合物は天然でもそうでなくてもよく、好ましくはコレステロール、コレスタノール、3−α−シクロ−5−α−コレスタン−6−β−オール、コール酸、ギ酸コレステリル、ギ酸コレスタニル、3−α−5−シクロ−5−α−コレスタン−6−β−イル・フォルミエート(ギ酸エステル)、コレステリルアミン、6−(1,5−ジメチルヘキシル)−3a,5a−ジメチルヘキサデカヒドロシクロペンタ[a]シクロプロパ[2,3]シクロペンタ[1,2−f]ナフタレン−10−イルアミン、およびコレスタニルアミンから選ばれる。
【0025】
本発明に係る組成物において使用される好ましいトランスフェクション用化合物を次に示す。
【0026】
【化1−1】

【0027】
【化1−2】

【0028】
【化1−3】

【0029】
本発明は、異性体が存在すれば、一般式(I)で示されるトランスフェクション用化合物の異性体、ならびにそれらの混合物、あるいはそれらの塩を含む組成物にも関することは理解されよう。
【0030】
具体的には、本発明の化合物は無毒で薬学的に許容される塩の形態であってもよい。これらの無毒な塩は、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、フマル酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、またはシュウ酸)との塩を包含する。
【0031】
本発明に係る一般式(I)で示される化合物は、US2003−0054556A1、ならびにSainlos et al, 2005 (非特許文献1)、Sainlos et al, 2004 (非特許文献2)、およびBelmont et al, 2002 (非特許文献3)に既に記載されているようにして調製される。
【0032】
本発明に係る組成物はまた、トランスフェクション用化合物/siRNA複合体と組み合わせることができ、そのトランスフェクション力を向上させることができる1種または2種以上のアジュバントをさらに含んでいてもよい。従って、別の態様では、本発明は、siRNA、上述したようなトランスフェクション用化合物、ならびにトランスフェクション用化合物/siRNA複合体と組み合わせて、そのトランスフェクション力を向上させることができる少なくとも1種のアジュバントを含む組成物に関する。
【0033】
本発明に係る化合物のトランスフェクション力を強めることができるこれらのアジュバントは、有利には脂質(例えば、中性脂質、特にリン脂質)、ペプチド(例えば、WO96/25508に記載されているもののような、ヒストン、ヌクレオリンもしくはプロタミン誘導体)、タンパク質(例えば、WO97/12051に記載されているもののようなHNG型のタンパク質)、ならびに/またはポリマー(例えば、トランスフェクション用化合物/siRNA処方組成物を「ステルス」型処方組成物にすることができるポリマー、例示として、トランスフェクション用化合物/siRNA処方組成物をコロイド的に安定化させるために単独で、もしくは脂質に結合させた形態で処方組成物に導入されたポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG−コレステロール)から選ばれる。
【0034】
この観点から、本発明の組成物は、アジュバントとして、特に脂質集合体を形成する特性を有する1種または2種以上の中性脂質を含有していてもよい。用語「脂質集合体」とは、あらゆる種類のリポソーム(単層膜と多重膜の両方)ならびにミセルもしくはより不定形の集合体をも包含する包括的用語(総称)である。
【0035】
より好ましくは、本発明に関して使用される中性脂質は、2つの脂肪鎖を含む脂質である。特に有利には、生理条件下でイオン性電荷を失うか、または両性イオン性である天然または合成脂質が使用される。より具体的には、それらはジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、オレイルパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジステアロイル−、ジパルミトイル−およびジミリストイルホスファチジルエタノールアミン類、ならびに1〜3回N−メチル化されたそれらの誘導体、さらにはホスファチジルグリセロール類、ジアシルグリセロール類、グリコシルジアシルグリセロール類、セレブロシド類(特に、ガラクトセレブロシド類など)、スフィンゴ脂質類(特にスフィンゴミエリンなど)、またはアシアロガングリオシド類(特に、アシアロGM1およびアシアロGM2など)から選択しうる。特に好ましい変更例によると、本発明に関して使用される脂質アジュバントは、DOPE、DOPO、コレステロール、またはPEG−コレステロールのような非イオン性界面活性剤の脂質誘導体から選択される。
【0036】
これらの多様な脂質は、当業者に周知の慣用技術を用いて、合成により、又は臓器(例えば、脳)もしくは卵からの抽出により得ることができる。具体的には、天然脂質の抽出は有機溶媒を用いて実施することができる。
【0037】
好ましくは、本発明の組成物は、0.01〜20、好ましくは0.5〜5の範囲内からなる電荷比(正電荷のモル数/負電荷のモル数)に対応して、mol/molでsiRNA1当量あたり0.01〜20当量、より好ましくは0.5〜5当量のアジュバントを含む。
【0038】
別の態様によると、上述したアジュバントは、本発明に係る組成物のトランスフェクション力を向上させることができる;具体的には、ペプチド類、タンパク質類、またはポリエチレングリコールのようなある種のポリマー類は、本発明に係るトランスフェクション化合物と、単に混合されるのではなく、複合化(コンジュゲート)されうる。特に、PEGは、本発明に係るアミノグリコシドの脂質誘導体に、アミノグリコシドの残留アミンまたはアミノグリコシドのヒドロキシル基の部位のいずれかで共有結合することができる。
【0039】
特に有利な1態様によると、本発明に係る組成物は、siRNAの移動を指令することができる標的化エレメントをさらに含む。この標的化エレメントは、ある種の望ましい細胞型または組織(腫瘍細胞、肝細胞、造血細胞など)に向かうsiRNAの移動を指令することができる細胞外標的エレメントでよい。それはまた、ある種の好ましい細胞区画(ミトコンドリア、核など)に向かうsiRNAの移動を指令することができる細胞内標的化エレメントであってもよい。標的化エレメントは、本発明に係るトランスフェクション用化合物およびsiRNAと混合してもよく、この場合は、標的化エレメントは好適には、脂肪性脂肪族鎖(少なくとも炭素数10)またはポリエチレングリコールに共有結合される。別の変更例によると、標的エレメントは本発明に係るトランスフェクション用化合物に共有結合されるが、その結合は、スペーサーYを構成する化学官能基の1つで、または脂質成分の末端で(例えば、Rの末端で、および/もしくはそれらが脂肪性脂肪族鎖を意味する場合にはRで)で、または直接アミノグリコシド上の残留アミンのいずれかもしくはヒドロキシル基の位置で起こる。最後に、標的化エレメントは既に明記したようにsiRNAに結合させてもよい。
【0040】
本発明に関して使用されうる標的化エレメントとしては、糖、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、脂質、神経メディエータ(neuromediators)、ホルモン、ビタミン、またはそれらの誘導体を挙げることができる。好適には、、それらは糖、ペプチド、ビタミンまたはタンパク質、例えば、抗体もしくはその断片、細胞受容体リガンドもしくはその断片、受容体もしくは受容体断片など、である。
【0041】
例えば、それらは、成長因子受容体、サイトカイン受容体、細胞レクチン型の受容体もしくは葉酸受容体に対するリガンド、またはインテグリンのような接着タンパク質受容体に対して親和性を持つRGD配列を含んだリガンドでよい。トランスフェリン受容体、HDL受容体およびLDL受容体、または葉酸輸送体もまた挙げることができる。標的化エレメントはまた、アシアロ糖タンパク質もしくはシアリルルイス酸Xのようなシアリル化(sialidized)種に対する、またはFab抗体断片もしくは単鎖抗体(ScFv)に対する受容体のようなレクチン類を標的にすることができる糖であってもよい。
【0042】
本発明はまた、核酸をin vitro、in vivoまたはex vivoで細胞内に移入するための本発明に係る組成物の使用にも関する。
より正確には、本発明の1目的は、疾患、特に遺伝子産物の過剰発現から生ずる疾患の治療を意図した医薬品の製造のために本発明に係る組成物を使用することである。この医薬品中に含まれているsiRNAは該遺伝子産物のmRNAを特異的に標的とし、それにより該疾患をin vivoまたはex vivoで治療する。
【0043】
本発明はまた、被験者に請求項1に係る組成物を投与することを含む、該被験者における標的遺伝子発現を阻害する方法にも関する。ここで、該組成物中に含まれるsiRNAは該標的遺伝子に特異的に向けられる。
【0044】
例えば、治療において、または遺伝子調節の研究もしくは病的状態の動物モデルの創出のためにin vivoで使用するには、本発明に係る組成物を、局所、皮膚、経口、直腸、膣、腸管外、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、眼内、経皮、気管内、腹腔内などの投与の観点で処方することができる。
【0045】
好ましくは、本発明の組成物は、特に所望器官への直接注射のための注射用処方組成物、または局所投与(皮膚および/もしくは粘膜への)に対して薬剤に許容される賦形剤を含有する。
【0046】
それらは、具体的には、滅菌等張溶液、あるいは乾燥組成物、特に凍結乾燥組成物であってもよく、乾燥組成物は適宜滅菌水または生理食塩水を添加することにより注射用溶液を作製することができる。注射に用いるsiRNAの用量および投与回数は、さまざまなパラメータに応じて、特に使用する投与方法、患者の病理学的状態、発現させる遺伝子、または所望の治療持続期間に応じて調整されうる。投与方法のより詳細に関して、組織、例えば、腫瘍への直接注射でも、または循環系への注射のいずれでもよく、あるいは培養中の細胞を処置した後、それらを注射または移植によりin vivo再移植することを含む方法でもよい。本発明に関係する関連の組織は、例えば、筋肉、皮膚、脳、肺、気管、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨、軟骨、膵臓、腎臓、膀胱、胃、腸、精巣、卵巣、直腸、神経系、眼、腺、結合組織などである。
【0047】
In vitro応用に関しては、本発明はさらに、下記工程を含む、siRNAを細胞内に移入する方法に関する:
(1)請求項1に係る組成物を用意し、そして
(2)該細胞を該組成物と接触させる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】RNA干渉によるd2−GFP細胞のin vitroGFP阻害。GFPを標的とするsiRNAを、0〜8の範囲内の各種の+/−電荷比でBGTC−DOPE(●)、DCChol−DOPE(▼)およびPEI(〇)と複合体化させてトランスフェクションを行った。In vitroトランスフェクションは、無血清培地500μl中でウェルあたり0.39μgのsiRNAを用いて2時間実施した。その後、20%FCS含有培地500μlを各ウェルに加えた。トランスフェクションから24時間後にGFP蛍光測定を行った。各ポイントは、6個の別個の値の平均値およびSEM(標準誤差)を示す。
【図2】脂質性アミノグリコシド誘導体の構造。(A) ジオレイルアミン−A−スクシニル−トブラマイシン(DOST)、(B) ジオレイルアミン−A−スクシニル−カナマイシン(DOSK)、(C) ジオレイルアミン−A−スクシニル−パロモマイシン(DOSP)、および(D) ジオレイルアミン−A−スクシニル−ネオマイシン(DOSN)。
【図3A】各種カチオン性脂質とプラスミドDNAまたはsiRNAの会合から生じた複合体の物理化学的特性。カチオン性リポソームを異なる濃度でプラスミドDNA(〇)またはsiRNA(▲)と混合することにより、核酸をBGTC−DOPEと複合体化させた。複合体のコロイド安定性および核酸複合体化を評価するため、それぞれ複合体化から1時間後に動的光散乱(実線)およびBET蛍光(点線)の測定を行った。コロイド安定性ではなかった複合体には700nmの任意数値を付与した。
【図3B】核酸をDOST−DOPEと複合体化させた場合の図3Aと同様の図。
【図3C】核酸をDOSK−DOPEと複合体化させた場合の図3Aと同様の図。
【図3D】核酸をDOSP−DOPEと複合体化させた場合の図3Aと同様の図。
【図3E】核酸をDOSN−DOPEと複合体化させた場合の図3Aと同様の図。
【図4】低温電子顕微鏡により観察されたカチオン性脂質/siRNA複合体のギャラリー。(A)単層膜(一枚膜)BGTC−DOPEリポソーム。(B)BGTC−DOPE/siRNA複合体の視野。(C)高倍率でのBGTC−DOPE/siRNA複合体の構造。(D)DOST−DOPE/siRNA複合体の視野。(E)高倍率でのDOST−DOPE/siRNA複合体の構造。縁部にみられる通常の構成のRNA分子に留意。(F)DOSK−DOPE/siRNA複合体の視野。(G)高倍率での2つのDOSK−DOPE/siRNA複合体の構造。(H)DOSP−DOPE/siRNA複合体の視野。(I)高倍率での2つのDOSP−DOPE/siRNA複合体の構造。(J)DOSN−DOPE/siRNA複合体の視野。(K)高倍率での2つのDOSN−DOPE/siRNA複合体の構造。スケールバー:高倍率の画像では50nm、低倍率の画像では1μm。
【図5A】図5Aおよび5Bは、d2GFP細胞中のsiRNA導入によるGFP発現阻害。カチオン性リポソーム/siRNA複合体のin vitroトランスフェクション効率と、電荷比(A)およびsiRNA量(B)との関係。In vitroGFP測定は、下記各種カチオン性リポソームによりトランスフェクションされた細胞内で実施した:BGTC−DOPE(●)、DOSK−DOPE(▼)、DOST−DOPE(〇)、DOSP−DOPE(■)およびDOSN−DOPE(▽)。トランスフェクションされた細胞と非活性siRNAでトランスフェクションされた細胞との間のGFP蛍光の比率として表された残留GFP発現を、カチオン性脂質/siRNA電荷比(+/−)との関係として示す。細胞は1ウェルあたり400ngのsiRNAでトランスフェクションした。
【図5B】各種ベクターについて残留GFP発現をsiRNA量との関係として示す、図5Aと同様の図。カチオン性脂質は、BGTC−DOPE(●)、DOSK−DOPE(▼)、DOST−DOPE(〇)、DOSP−DOPE(■)およびDOSN−DOPE(▽)についてそれぞれ4、12、4、10および10の電荷比で使用した。
【図5C】GFP阻害およびsiRNA内部移行の視覚化画像。細胞は対照siRNA(A〜D)または3'−ローダミン標識抗GFP−siRNA(E〜L)によりトランスフェクションされた。siRNA(500ng/ウェル)はカチオン性脂質:BGTC−DOPE、DOSP−DOPEまたはDOSK−DOPEの不存在下(Naked siRNA)または存在下で処方された。細胞は、GFP蛍光を見るためにFITCフィルター下で(A〜H)またはsiRNA内部移行を見るためにローダミンフィルター下で観察された。
【図5D】各種ヒト細胞系(HEK,HeLaおよびd2GFP細胞)のDOSP/siRNAリポプレックス(lipoplex)によるトランスフェクション後のヒト・ラミンA/C mRNAのリアルタイム定量的RT−PCR分析結果(HPRT1に対して正規化)。値は対照siRNAを用いて同じ実験条件下でトランスフェクションした細胞に対する相対値である。
【図6A】図6A〜6Cは中性脂質アジュバントを使用しない場合のアミノグリコシド誘導体DOSPのトランスフェクション効率を示す。GFPサイレンシングおよびsiRNA内部移行の蛍光顕微鏡視覚化画像。GFP発現性ヒト肺がん細胞H1299を対照siRNA(SiRNA control, パネルA、B)または3'−ローダミン標識抗GFP−siRNA(パネルC〜F)でトランスフェクションした。siRNA分子はDOSPの不存在下で(パネルA、C、EのNaked siRNA)または存在下で(パネルB,D,F)処方された。トランスフェクションされたH1299細胞は、GFP蛍光を見るためにFITCフィルター下で(パネルA,B、白/薄灰色部分を参照)またはsiRNA内部移行を見るためにローダミンフィルター下(パネルE,F、白/薄灰色部分を参照)で観察された。
【図6B】DOSP試薬を用いたラミンA/Cサイレンシング効率とsiRNA量との関係。3.75〜200ng/ウェルの範囲内の抗ラミンA/C siRNA量をDOSPと共に処方した。HeLa細胞トランスフェクション後のヒト・ラミンA/C mRNAのリアルタイム定量的RT−PCR分析の結果は、DOSP試薬が非常に少ない量のsiRNAで効率的であることを示した(HPRT1に対して正規化)。値は対照siRNAを用いて同じ実験条件下でトランスフェクションした細胞に対する相対値である。
【図6C】DOSP試薬または競合試薬を用いたラミンA/Cサイレンシング効率。18.75および37.5ng/ウェルで抗ラミンA/C siRNAをDOSPまたは市販試薬のHiPerFectと共に処方した。HeLa細胞トランスフェクション後のヒト・ラミンA/C mRNAのリアルタイム定量的RT−PCR分析の結果は、DOSP試薬がHiPerFectより効率性が高いことを示した(HPRT1に対して正規化)。値は対照siRNAを用いて同じ実験条件下でトランスフェクションした細胞に対する相対値である。
【図7】d2GFP細胞中でのsiRNA媒介GFP遺伝子ノックダウン効率に対するsiRNA導入用の市販試薬とDOSP−DOPE誘導体との比較。200ngの抗GFP siRNAを適当な試薬と製造業者の記載通りに処方し、1ウェルあたり65000細胞の細胞数で24ウェル培養プレート上においてトランスフェクションした。*印は、市販試薬でトランスフェクションされた細胞とDOSP−DOPEでの細胞との間の有意差(p<)を意味する。
【図8】d2−GFP中でのin vitro抗GFP siRNA導入後のGFP発現の経時変化。抗GFP siRNAは次の異なるベクターと共に処方した:DOSK−DOPE(▼)、DOST−DOPE(〇)、DOSP−DOPE(■)およびDOSN−DOPE(▽)。これらのベクターはそれぞれ4、12、4、10および10の+/−電荷比で使用した。トランスフェクションは、無血清培地500μl中でウェルあたり0.39μgのsiRNAを用いて2時間実施した。その後、20%FCS含有培地500μlを各ウェルに加えた。種々の時点でGFP蛍光測定を行った。各ポイントは、6個の別個の値の平均値およびSEM(標準誤差)を示す。
【図9A】図9A〜9Dはアミノグリコシド誘導体によるin vitroプラスミド導入に関する。In vitroトランスフェクションは、無血清培地500μl中で2時間行い、その後に10%FCSを含有する培地1mlで置換した。トランスフェクションから24時間後にタンパク質およびmRNA測定を行った。各ポイントは、6個の別個の値の平均値およびSEM(標準誤差)を示す。本図はd2−GFP細胞中でのルシフェラーゼ発現と+/−電荷比との関係を示す。トランスフェクションは下記のカチオン性脂質と複合体化したルシフェラーゼプラスミド1μgで実施した:BGTC−DOPE(●)、DOSK−DOPE(▼)、DOST−DOPE(〇)、DOSP−DOPE(■)およびDOSN−DOPE(▽)。
【図9B】pTERプラスミドによりコードされるsiRNAヘアピンの発現を示す。トランスフェクションは、下記の各種の+/−電荷比でカチオン性脂質と複合体化されたpTERプラスミド1μgにより実施した:0(白い棒)、2(灰色棒)、4(横線)、6(斜線)、8(交差斜線)、10(黒い棒)。
【図9C】図9Cおよび9Dは、COS−7細胞におけるKCNE1プラスミドとKCNE1標的siRNAとの共導入に関する。KCNE1プラスミド0.8μgと0.8μg(C)または所望量(D)のKCNE1標的siRNAとを混合し、次いで適当なアミノグリコシド誘導体(C)またはDOSP−DOPEカチオン性脂質のみ(D)と複合体化させた。結果は、各種条件下で得られたKCNE1 mRNA量とsiRNAスクランブル(競争)により得られたKCNE1 mRNA量の%として表した。
【図9D】図9Cに関して説明した通りである。
【実施例】
【0049】
実施例1:カチオン性部分を持つカチオン性脂質のsiRNAトランスフェクションのための使用
1.1:材料および方法
1.1.1:核酸、カチオン性脂質および複合体の調製
3'−ローダミン標識抗GFP siRNAおよび5'−ローダミン標識対照siRNAはQiagen社(米国カリフォルニア州チャツワース)により供給された。ストック。非標識の抗GFP siRNAはEurogentec社(ベルギー、スラン)により供給された。抗GFP siRNAはセンス鎖について下記配列を有していた:GCAAGCUGACCCUGAAGUUCAU(配列番号1)。GAPDH mRNAを標的とするサイレンサーTMGAPDH siRNA(ヒト、マウス、ラット)はAmbion社(英国、ケンブリッジ州)により供給された。ヒト抗ラミンA/C siRNAは、Santa Cruz Biotechnology社(米国カリフォルニア州サンタクルーズ)により供給された。抗GFP siRNAヘアピンをコードするプラスミドpTERは、pCDNA4TO(Invtrogen Life Technologies、米国カリフォルニア州カールスバッド)のBglIIとHindIIとの間に修飾Hlプロモーターを挿入することにより得たものであり、A. Polesskaya氏(フランス、ビルジュイフ)の好意により供給された。プラスミド類は、EndoFreeプラスミド精製カラム(Qiagen、米国カリフォルニア州チャツワース)を用いて組換え大腸菌(Escherichia coli)から精製した。脂質アミノグリコシド誘導体およびBGTCは既に述べたようにして(非特許文献1〜3)合成した。
【0050】
3−β−(N−(N',N'−ジメチルエタン)カルバモイル)コレステロール(DC−Chol)およびジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)はAventi Polar Lipids, Inc. (米国アラバマ州アラバスター)から入手した。ポリエチレンイミン(PEI)25kDAはシグマ社(米国ミズーリ州セントルイス)から入手した。RNAiFect、X-treme-GENEおよびLipofectamine 2000は、それぞれQiagen社、Roche Diasnostics社およびInvitrogen社から入手した。脂質性アミノグリコシド誘導体/DOPEおよびBGTC/DOPEのカチオン性リポソームは先行技術文献に記載のようにして調製した。分散液を10分間超音波処理し、4℃で保存するという小さな変化を加えた。脂質性アミノグリコシド誘導体/核酸複合体およびBGTC/核酸リポプレックスは、各種濃度のカチオン性リポソームを300mM NaCl中の所望濃度のプラスミドDNAまたはsiRNAと同量ずつ混合することにより調製した。
【0051】
1.1.2:in vitroトランスフェクション
d2GFP(ヒト肺がん)細胞を、フラスコ内で1%ストレプトマイシン/ペニシリン、ゲネチシン0.8mg/ml(GIBCO、Invitrogen Life Technologies社、米国カリフォルニア州カールスバッド)および10%ウシ胎仔血清(Eurobio、フランス、クールブフ)を加えた、グルコース、l−グルタミンおよびピルビン酸(ピルベート)を含有するD−MEM中で、5%CO2/加湿雰囲気において37℃で培養した。トランスフェクションの1日前に、細胞を65000の細胞数で24ウェルの培養プレートに移した。それにより24時間後に約70〜80%コンフルエンス(集密)の状態になった。各ウェルにおいて、500μlの血清およびゲネシチン不含有D−MEM中の複合体5050μlを添加することによりトランスフェクションを行った。2時間後、トランスフェクション培地を、10%ウシ胎仔血清および1%ストレプトマイシン/ペニシリンを含有する1mlのD−MEMで置換した。トランスフェクション実験を3回実施し、残留GFP発現をトランスフェクションの24時間後に定量した。経時的実験のために、トランスフェクションを下記の変更点を除いて上記と同様に実施した。トランスフェクションした細胞を3日目ごとに、GFP定量測定の日のコンフルエンスが90%となるように適当な細胞数で新たな24ウェル培養プレートに移した。トランスフェクション実験は3回実施し、残留GFP発現をトランスフェクションから1、2、3、5、6および9日後に測定した。
【0052】
RNA分離のために、細胞を1ウェルあたり250000細胞の細胞数で6ウェル皿に入れた。各ウェル内で、無血清かつ無ゲネチシンのD−MEM 1ml中の複合体処方組成物100μl を加えることによりトランスフェクションを行った。37℃で2時間後、トランスフェクション培地を、10%ウシ胎仔血清および1%ストレプトマイシン/ペニシリンを含有する1mlのD−MEMで置換した。24時間後、RNAを単離した。
【0053】
1.1.3:遺伝子発現および阻害
24時間後、トランスフェクションした細胞を500μlのPBSで2回洗浄し、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Diagnostics、ドイツ、マンハイム)を加えたレポーター溶解緩衝液(Promega、ウイスコンシン州マディソン)で溶解させた。1回の凍結−解凍(−80℃/20℃)により完全な溶解を確保した。その後、サンプルを10000gで5分間遠心した。GFP蛍光測定を、180μl量の上清でのアッセイにより、それぞれ485nmおよび535nmの励起波長および発光波長のVictor2(Perkin Elmer、フランス、レジュリ)を用いて実施した。蛍光は、BCAアッセイキット(Pierce、米国イリノイ州ロックフォード)を用いて得られた、サンプルの全タンパク質濃度に対して正規化された。残留GFP発光は、対照サンプルの蛍光の%として表された。
【0054】
ラミンA/C免疫染色は、PBSで洗浄し、PAF2%溶液で5分間固定し、次いでPBS−Triton0.2%溶液中で5分間インキュベーションした細胞について実施した。まず、細胞を、ヒト由来のラミンAの内部領域内での231−340マッピングに対するラビット・ポリクローナル抗体である抗ラミン一次抗体(1/50)(ラミンA/C(H−110))(Santa Cruz Biotechnology、米国カリフォルニア州)とともに1時間インキュベーションした。次に、細胞を、ビオチン化ラビットIgG(Sigma、米国ミズーリ州セントルイス)(1/800)と共に1時間、そしてStreptavidine-Rhod(1/200)(Molecular Probes)と共に30分間インキュベーションした。細胞を、Dako蛍光マウンティング・メディウム(Dako Cytomacion、デンマーク)を用いてローダミン励起で観察した。
【0055】
1.1.4:蛍光顕微鏡
トランスフェクションされた細胞の蛍光顕微鏡検査は、倒立型蛍光顕微鏡Axiovert 200M (CarlZeiss、ドイツ、ゲッティンゲン)を用いて実施した。
【0056】
1.1.5:臭化エチジウム蛍光測定
臭化エチジウム蛍光測定を励起波長および発光波長がそれぞれ260nmおよび590nmのKontron SFM25蛍光分光光度計で行った。蛍光は10μg/mlの核酸(siRNAまたはDNA)で調製されたサンプルに臭化エチジウム(最終濃度5μM)を添加した直後から監視した。
【0057】
1.1.6:動的光散乱
動的光散乱測定は、Zetasizer 300HSA(英国、ウースター州モルバン)を用いて20℃で行った。さまざまな量のカチオン性脂質を含有する核酸10μg/mlで調製されたサンプルについて測定値を監視した。
【0058】
1.1.7:低温TEM(cryo-TEM)顕微鏡
10μgのsiRNA/mlと適当量のカチオン性脂質とを用いてsiRNA/カチオン性脂質複合体を調製した。5μl量のサンプルを、多孔質炭素被覆銅グリッド上に付着させ、過剰分を濾紙で吸い取った後、グリッドを液体窒素で冷却された液体エタン浴(Leica EM CPC)中に投入した。この標本をクライオホルダー(Gatan)を用いて−170℃の温度に保持し、200kVおよび低線量条件下では50000Xの標準倍率で動作するFEI Tecnai F20電子顕微鏡で観察した。画像は2K×2K Gatant低速スキャンCCDカメラで記録した。
【0059】
1.1.8:RNAレベルでの遺伝子発現阻害
TRIzol試薬(Invitrogen、フランス、セルジ・ポントワ)とRnesyTMミニキット (Qiagen、米国カリフォルニア州チャツワース)とを用いて全RNAを抽出した。mRNAの精製を、OligotexTM mRNAミディキット (Qiagen、米国カリフォルニア州チャツワース) を用いて行った。SuperScriptTM III (Invitrogen Life Technologies社、米国カリフォルニア州カールスバッド) を用いて、逆転写を供給業者の記載通りに実施した。ABI PrismTM7900HT配列検出システム (Applied Biosystems) を用いてリアルタイム定量PCRを実施し、得られたデータを、Applied Biosystems SDS 2.1ソフトウェアによる機器スペクトル補償後に取得した。GFPリバースプライマーの配列は、CGGGCATGGCGGACTT(配列番号2)、FAMプローブの配列はCAGCACGACTTCTTC(配列番号3)、そしてGFPフォワードプライマーの配列はGCTACCCCGACCACATGAAG(配列番号4)であった。各実験に対して対照の無DNAサンプルについても実施した。サイクリング条件は、95℃で10分間の高温開始後に、95℃で15秒と60℃で1分の40サイクルを含んでいた。ゲル電気泳動を用いて、適当なサイズの単一アンプリコンを検出した。データの正規化のためにHPRT遺伝子を用いた。値は、対照siRNAで得られた量に対する、抗GFPもしくはGAPDHもしくはラミンA/C mRNAがトランスフェクションされた細胞内で得られた正規化されたGFPもしくはGAPDHもしくはラミンA/C mRNA量の%に対応していた。
【0060】
1.2:結果
1.2.1:カチオン性ベクター/siRNA複合体の遺伝子発現阻害活性
まず、我々は、細胞質GFPを発現する形質転換細胞株(d2GFP)内での抗GFP siRNA分子の導入を通してGFP発現を阻害するために、プラスミドDNAトランスフェクションに現在使用されているカチオン性ベクターの能力を評価した。抗GFP siRNA分子は、BGTC/DOPEまたはDC−Chol/DOPEまたはPEIとの複合体であった。トランスフェクションから1日後に、GFP発現の阻害を蛍光GFP測定により監視した。図1は、正電荷モル数/負電荷モル数として表されるカチオン性ベクター/siRNA電荷比が増大するにつれて、残留GFP発現が低下したことを示している。BGTC、DC−CholおよびPEIのカチオン性リポソームと複合体化されたsiRNAで得られた残留GFP発現は、それぞれ約32%、52%および55%であった。これらの結果は、siRNAにより媒介される遺伝子発現の阻害効率が向上した新規ベクター開発の必要性を浮かび上がらせるものであった。その後の実験における遺伝子発現阻害の比較のための標準的カチオン性ベクターとしてBGTC−DOPEリポソームを選択した。
【0061】
1.2.2:脂質性アミノグリコシド誘導体の化学構造
脂質性アミノグリコシド誘導体は、アミノグリコシド先端基に自己凝集性の炭化水素系後端部(テイル部)が結合してなる両親媒性物質である。図2は、本試験で使用された種々の脂質性アミノグリコシド誘導体を示す。それらは、カチオン性先端基としてのトブラマイシン、カナマイシン、パロモマイシンまたはネオマイシンが、スクシニル・スペーサーを介して、ジオレイル鎖に結合したものからなる。トブラマイシンおよびカナマイシンは4,6−二置換2−デオキシストレプタミン環の種類に属し、パロモマイシンおよびネオマイシンは4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環の種類に属する。
【0062】
1.2.3:カチオン性リポソーム/核酸複合体のコロイド安定性
我々は、DNAまたはsiRNAとBGTCのカチオンリポソームまたは脂質性アミノグリコシド誘導体との会合から生ずる複合体の物理化学的性質を、カチオン性脂質/核酸電荷比との関係として検討した(図3)。電荷比を算出するために、1μgのsiRNAは3ナノモルの荷電リン酸分であり、BGTC、DOST、DOSK、DOSPおよびDOSNはそれぞれ2、4、3、4および6個の正電荷をもつと仮定した。
【0063】
siRNAと複合体化させたカチオン性リポソームの動的光散乱分析は、DNAで得られ、リポポリアミンについて既に報告されているのと同様に(非特許文献4)、コロイド安定性の3ゾーン・モデルの存在を明らかに示した。A、BおよびCと命名されたこれらの3つの異なるゾーンは、カチオン性脂質/核酸電荷比により決まる。カチオン性脂質/核酸電荷比が低いゾーンAでは、核酸が部分的に集中した負電荷のコロイドとして安定な複合体が生ずる。ゾーンBは、中性電荷の大きくてコロイドとして不安定な粒子を含有する。ゾーンCは、正電荷の小さくてコロイドとして安定な複合体を意味する。
【0064】
最も重要な点は、BGTC−DOPE/siRNA複合体(図3A)は、BGTC/siRNA電荷比が2〜8の範囲に及ぶ大きなゾーンBを示し、そこでは複合体は凝集するため、700nmに達するような平均径(直径)を有していた。これに対して、脂質性アミノグリコシド誘導体のカチオン性リポソームをsiRNAと複合体化させたものは(図3B〜3E)は、BGTCで得られたものより短いゾーンBを示し、複合体の平均径は約400nmであった。
【0065】
ゾーンCでは、BGTC−DOPE/siRNA複合体は平均径が225nmであったのに対し、ジオレイルアミン−A−スクシニル−トブラマイシン−DOPE(DOST−DOPE)、ジオレイルアミン−A−スクシニル−カナマイシン−DOPE(DOSK−DOPE)、ジオレイルアミン−A−スクシニル−パロモマイシン−DOPE(DOSP−DOPE)、およびジオレイルアミン−A−スクシニル−ネオマイシン−DOPE(DOSN−DOPE)リポソームと複合体化させたsiRNAでは、平均径がそれぞれ81、105、58および57nmであった。従って、脂質性アミノグリコシド誘導体のカチオン性リポソームは、siRNA分子と複合体化した場合に小さい粒子を形成することができた。留意すべきは、プラスミドDNAと共に処方した場合には、BGTCのカチオン性リポソームと脂質性アミノグリコシド誘導体のそれとの間に粒子サイズの著しい差がなかったことである(図3)。
【0066】
次に、我々は、同じサンプルについて、臭化エチジウム蛍光測定によりsiRNAおよびDNA複合体形成を調査した。全般的傾向として、カチオン性脂質/核酸電荷比が増大するにつれて蛍光強度は低下した。蛍光強度は、ゾーンAでは100%から0に近い値まで低下し、ゾーンBおよびCではこの最小値にとどまった。DNAをBGTCまたは各種脂質性アミノグリコシド誘導体のいずれかのリポソームと複合体化した場合には、蛍光強度は同様の低下を生じたが、siRNA分子を複合体化した場合には差異が認められた。脂質性アミノグリコシド誘導体の間でも著しく変動した、蛍光強度の電荷比に対する減少曲線の勾配は、DOSKおよびDOSTで認められたものに比べて、DOSNおよびDOSPではより急勾配であった。対比すると、BGTCとのsiRNA複合体では蛍光強度が低下するまでの遅延が観察された。DNAおよびsiRNAと混合したカチオン性脂質のアガロースゲル電気泳動は、蛍光実験で得られた結果を確認した(データを示さず)。
【0067】
1.2.4:カチオン性リポソーム/siRNA複合体の低温透過電子顕微鏡写真
BGTC/DOPE小胞標本を、30〜70nmの範囲内からなる直径の単層膜ラメラリポソームから作製した(図4A)。BGTC−DOPEリポソームをsiRNA溶液と混合すると、サイズが200〜500nmの範囲内の小さな密集した丸みを帯びた構造物の生成を生じた(図4B)。これらの構造物は恐らくsiRNA分子に対応する電子密度の高い電子緻密層により離間された数層の脂質層のスタック(積み重ね)からなるものであった。7.0nmの測定距離は、脂質二重層(二分子層)の厚さおよび二本鎖siRNA分子の直径に対応していた。よく配向した集中構造では、間隔が3.0nmの微細なスジ模様が見えた。これは恐らく2層の脂質膜間の規則的配置を示していよう(図4C)。
【0068】
DOST−DOPEおよびDOSK−DOPEリポソームでは、サイズ100〜300nmの範囲内の小さな複合体が、siRNA分子の存在下で誘導された(図4D〜4G)。それらは、脂質二重層とsiRNA分子との規則的な重なりからなるタマネギ様の構造を形成していて、BGTC−DOPEリポソームで形成されたものにとても似ていた。典型的なリポプレックス(図4Dおよび詳細図は図4E)は、繰り返し2層間の間隔が6.7nmであり、電子緻密層はsiRNA分子の層に対応していた。BGTC−DOPE複合体について測定されたのと同じ間隔のリポプレックスの縁部(上右)に示されるように、siRNA分子は脂質膜上でよく配向していることは留意に値する。
【0069】
DOSP−DOPEおよびDOSN−DOPEリポソームでは、サイズ50〜300nmの範囲内の複合体が、siRNA分子の添加後に形成された(図4H〜4K)。また、DOSN−DOPEリポソームで形成された複合体は、ブドウ状の小さな密集した構造を形成する傾向を示した。先の3種類のカチオン性脂質で形成された複合体とは異なり、DOSP−DOPEおよびDOSN−DOPEリポソームで作製された複合体は、より不規則な構造を有していた。それらは脂質二重層とsiRNA分子の重なりから構成されていたが、この配置は長い距離にわたっては広がっていなかった。この差の1つの説明は、リポソームのサイズ(直径範囲30〜50nm)に帰することができよう。それらは他の3種類のカチオン性脂質で作製されたもの(データは示さず)よりサイズが小さく、タマネギ様の構造の形成を誘導することができなかった。
【0070】
上記5種類の異なる脂質組成物で作製されたリポソームを300mM NaClに曝すと、小さなリポソームは単層膜小胞のまま残るが、大きなものは浸透作用によって二倍の脂質二重層リポソームになったことを述べるのは重要である(データ示さず)。
【0071】
1.2.5:脂質性アミノグリコシド誘導体/siRNA複合体の遺伝子発現阻害活性
図5Aは、BGTC/siRNA電荷比が増大するにつれて、BGTC−DOPE/siRNA複合体によるd2−GFPトランスフェクション細胞のGFP蛍光レベルが次第に低下したことを示している。これに対し、DOST−DOPE/siRNA複合体は、DOST/siRNA電荷比が4の場合でGFP蛍光の11%への急激な低下を生じ、より高い電荷比でもこの最小値にとどまった。意外にも、DOSK−DOPE/siRNA複合体ではGFP蛍光は漸減を示し、DOSK/siRNA電荷比12で41%の最小蛍光レベルに到達した。4,5−二置換型のDOSP−DOPEおよびDOSN−DOPEから得られたアミノグリコシド誘導体は両方とも、カチオン性脂質/siRNA電荷比の増加に伴ってGFP発現の漸減を示し、カチオン性脂質/siRNA電荷比8で10%の最小残留蛍光レベルに到達した。各種カチオン性脂質による同じ条件での対照siRNAのトランスフェクションは、非トランスフェクション細胞(データを示さず)に比べて、GFP発現に影響しなかった。その後の実験に関して、カチオン性脂質/siRNA電荷比を、BGTCおよびDOSTにより複合体化したsiRNAでは4、DOSPによるものでは10、そしてDOSNおよびDOSKによるものでは12に設定した。
【0072】
図5Bは、トランスフェクションされたsiRNAの量との関係としてGFP発現に対するカチオン性脂質の影響を示す。BGTC−DOPEおよびDOSK−DOPEリポソームについては、GFP発現は次第に低下し、500ngのsiRNA量で50%の最小GFP発現が得られた。これに対し、DOSN−DOPE、DOST−DOPEおよびDOSP−DOPEのカチオン性リポソームは、1ウェルあたり300ngのsiRNA量で20%の最小GFP発現に至った。
【0073】
図5Cは、同じ実験について、高いsiRNA内部移行分子に恐らく関係してGFP蛍光レベルの強い低下を生じたDOSP−DOPEカチオン性リポソームによるGFP発現阻害のローダミン蛍光により視覚化された視覚化画像を示す(図5C)。ただし、DOSK−DOPEカチオン性リポソームもsiRNA細胞内部移行を生じたが、GFP蛍光はsiRNA対照で得られたものに比べて若干低下しただけであった(図5C)。対照として、裸のsiRNA(naked siRNA)をGFP阻害について評価したが、GFP蛍光レベルを低下させることはできなかった(図5C)。BGTC−DOPEカチオン性リポソームはDOSKで得られたものとDOSPで得られたものとの間の中間のGFP発現阻害を生じた。
【0074】
次に、内因性ラミンA/C発現を標的とするsiRNAによるRNAi実験を行った。この場合、RT−PCR結果は、DOSP/siRNA複合体でトランスフェクションされたd2−GFP細胞は、対照siRNAでトランスフェクションされた細胞に比べて、残留ラミンA/C mRNAが非常にわずかであったことを示した(図5D)。DOSP/siRNA複合体がd2GFP細胞内で内因性遺伝子の発現の効率的なノックダウンを可能することもできることを実証する知見である。我々の結論を拡張するため、DOSP/抗ラミンA/C siRNA複合体がHEK293細胞(ヒト胚腎細胞)およびHeLa細胞(ヒト類上皮子宮頸がん由来)のような他のヒト細胞株中でのラミンA/C発現のサイレンシングにも非常に効果的であって、非常に低レベルの残留ラミンA/C mRNAがやはり観察されたことを見出した(図5D)。
【0075】
DOPEのような中性脂質アジュバントを使用せずに、siRNAのトランスフェクションのために本発明にかかるアミノグリコシド誘導体を使用した実験も行った。
GFP発現性ヒト肺がんH1299細胞を対照siRNAまたは3'−ローダミン標識抗GFP siRNAでトランスフェクションした。siRNA分子はDOSPの不存在下(「裸(naked)」siRNA)または存在下で処方したが、いずれの場合もDOPEは使用しなかった。トランスフェクションしたH1299細胞を、GFP蛍光を視覚化するためにFITCフィルターを用いて、またはsiRNA内部移行(内在化)を視覚化するためにローダミンフィルターを用いて観察した。
【0076】
図6Aに示した結果は、DOPEのような中性脂質アジュバントを使用しない、DOSP/siRNA複合体によるH1299細胞中への抗GFP siRNA分子の導入は、GFP陽性細胞(白/薄灰色領域により表される)の数の強力な減少を生じたことを示している(パネルD)。このことは、siRNA分子の高い細胞取込み(パネルFにおいて、ローダミン標識抗GFP siRNAに起因する蛍光により視覚化されているように、灰色領域を参照)と相関していた。裸の「未反応」のsiRNAを、siRNA導入に対するICAFectin DOSPの効率の対照として使用した。パネルA、CおよびEは、裸の(naked)「未反応」siRNAを用いた場合にはGFP発現の抑制とsiRNA取込みのいずれもなかったことを示している。siRNA導入に対するDOSP試薬の役割を確認する知見である。
【0077】
また、中性脂質アジュバントを使用せずに抗ラミンA/C siRNAと複合体化させたDOSP試薬を用いたラミンA/Cサイレンシング効率は、RT−PCRによっても試験した。3.75〜200ng/ウェルの範囲内の抗ラミンA/C siRNA料をDOSPと共に処方した。
【0078】
図6Bに示したHeLa細胞のトランスフェクション後のヒト・ラミンA/C mRNAのリアルタイム定量RT−PCR分析の結果は、DOSP試薬が非常に少量のsiRNA(HPRT1に対して正規化)で効率的であることを示している。
【0079】
最後に、DOSP試薬の効率を、抗ラミンA/C siRNAのトランスフェクションについて、市販試薬のHiPerFectのそれと比較した。18.75および37.5ng/ウェルで抗ラミンA/C siRNAをDOSPまたは市販試薬HiPerFectと共に処方した。
【0080】
図6Cに示したHeLa細胞のトランスフェクション後のヒト・ラミンA/C mRNAのリアルタイム定量RT−PCR分析の結果は、DOSP試薬がHiPerFectより効率的(HPRT1に対して正規化)で効率的であったことを示している。
【0081】
1.2.6:市販試薬と比較した脂質性パラモマイシン誘導体/siRNA複合体の遺伝子発現阻害活性
図7は、DOSP−DOPEが、X-tremeGeneおよびリポフェクタミン(Lipofectamine)TM2000で観察されたものに比べて、d2GFPでトランスフェクションされた細胞中のGFP蛍光レベルのより大きな減少を生じたことを示している。結果は、DOSP−DOPE/siRNA複合体で得られた残留GFP発現により正規化された。DOSP−DOPEとRNAiFectTM試薬との間には有意差は認められなかった。
【0082】
1.2.7:GFP発現阻害の動態特性
次に、カチオン性リポソーム/siRNA複合体のGFP発現に及ぼす影響を時間との関係として検討した(図8)。DOSN−DOPEまたはDOSP−DOPEと複合体化されたsiRNAでトランスフェクションされた細胞については、残留GFP発現は5日間は約10%であり、次いで次第に増大して9日目に100%に戻った。DOST−DOPE/siRNA複合体でトランスフェクションされた細胞は同様のGFP発現の経時変化を示したが、残留GFP発現は約20%であった。図8はまた、DOSK−DOPEリポソームは2日目でGFP蛍光減少の最大値に至ったことを示している。
【0083】
1.2.8:アミノグリコシド誘導体およびBGTC−DOPEリポソームによるプラスミドのin vitroトランスフェクション
我々は、アミノグリコシド誘導体が、d2GFP細胞中に、siRNAだけでなく、GFPに抗して小ヘアピンRNAをコードするプラスミドDNAもまた導入する可能性についても評価した(図9)。結果は、カチオン性脂質/DNA電荷比が増大するにつれてGFP発現が減少し、カチオン性脂質に依存した最小蛍光値に到達することを示した。例外はDOSN−DOPE/DNA複合体で、カチオン性脂質/DNA電荷比の増大によるGFP発現の増大を生じた。これらの結果は、ルシフェラーゼをコードするプラスミドのトランスフェクションで得られたものとよく一致しており、GFP発現阻害がトランスフェクション効率と相関していることを示した。
【0084】
また、KCNE1をコードするプラスミドと、KCNE1 mRNAに対して標的化されるsiRNAとの共導入に対するアミノグリコシド類の可能性についても評価した。図9Bは、DOSP−DOPEおよびDOSN−DOPEがKCNE1 mRNAの最小レベルを生じたことを示している。図9Dは、siRNAによる共注入されたプラスミドの阻害がトランスフェクションされたsiRNA量に依存することを示している。
【0085】
1.3:結論
脂質性アミノグリコシド誘導体/siRNA複合体のコロイド(としての)安定性は、電荷比に依存し、それぞれ負荷電、中性または正荷電の複合体に対応する、主要なゾーンA、BおよびCを決定した。このコロイド安定性挙動は、DNA分子とのリポポリアミンミセル(非特許文献4)、ビスグアニジニウムリポソーム(非特許文献6および本研究)またはDOTAPリポソームの会合から得られた複合体で既に認められていたものであった。しかし、ゾーンBは、DNAを新たに合成された脂質性アミノグリコシド誘導体と複合体化させたものと似ていたが、siRNAとの複合体化では縮小していた。
【0086】
また、これら3ゾーンでの脂質性アミノグリコシド誘導体/siRNA複合体の平均径は、脂質性アミノグリコシド/DNA複合体で測定された径より小さかった。ゾーンCでは、DOST、DOSK、DOSPおよびDOSNとのsiRNAの会合から生成した複合体の平均径は、それぞれ約81、105、58および57nmであった。
【0087】
脂質性アミノグリコシド誘導体の中でも、siRNAを4,6−二置換2−デオキシストレプタミン環型アミノグリコシドまたはBGTCと複合体化した場合に比べて、4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環型アミノグリコシドと複合体化した場合には、ゾーンAとBとの間の境界が低電荷比の方向にシフトした。
【0088】
また、いずれの場合も約6.7nmの規則的な(層間)間隔が観察されたが、2つの異なる種類のアミノグリコシドでは複合体のモフォロジー(形態)が異なっていた。4,6−二置換2−デオキシストレプタミン環型アミノグリコシドおよびBGTCとの複合体は、脂質二重層とsiRNAの分子が規則的に重層化して作られた典型的な「タマネギ様」の構造を示したが、4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環型アミノグリコシドとの複合体は、予想外にも、小さな密集構造からなるブドウ型の別の構造体を形成した。
【0089】
この2種類のアミノグリコシドとの複合体のモフォロジーの違いは、現時点では完全には説明できない。しかし、2−デオキシストレプタミン4,6−二置換と2−デオキシストレプタミン4,5−二置換がそれぞれ円筒および円錐形状をとりうると仮定すると、脂質性誘導体の幾何学形状に関連している可能性がある。このことはカチオン性リポソームの生成およびサイズに影響を及ぼすかもしれない。長い距離にわたる同心の多重膜ラメラの構成は、崩壊してDNA分子をサンドイッチするように再集合することができる大きな初期リポソームでより容易に形成されたことが示されている。他方、小さなリポソームはミセルに似て層状のラメラ微小ドメインを生じる。
【0090】
いずれにせよ、ゾーンAとBとの間の境界のシフトおよび4,6−二置換2−デオキシストレプタミン環型アミノグリコシドと4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環型アミノグリコシドとの間の複合体構造の違いは、4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環型アミノグリコシドとの複合体が示す、哺乳動物細胞における機能干渉のより高い誘導効率と関係していた。実際、遺伝子サイレンシング用の非常に効果的な複合体が、小直径(57nm)および高いコロイド安定性を特徴とするパロモマイシン先端基ではゾーンCにおいて得られた。
【0091】
カチオン性脂質/核酸複合体は、正電荷の複合体と細胞膜との間の静電相互作用により媒介されるエンドサイトーシス過程を経て細胞内に内部移行することが知られている。エンドソーム・エスケープは、現在のカチオン性試薬の主要な制限的ステップの1つとして認められている。本発明の複合体の特に高い効率に対する確実な説明は利用できないが、脂質性4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環型アミノグリコシド誘導体/siRNAの複合体は、アミノグリコシド/siRNAの小サイズでの自己集合ならびに小葉状の膜の負電荷密度と適合することができるアミノグリコシドの融通性に起因する構造上の特徴およびフリップフロップ機序の増大という特異的な物理化学的特性のために、細胞の細胞質内でのRNA放出を改善することができるということは考えられる。4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環で得られた特定のモフォロジーは、4,6−二置換2−デオキシストレプタミン環で得られたものに比べてより不安定な超分子構造を生じて、この状態では、RISC複合体(RNA誘導サイレンシング複合体)へのその取り込みとその後の遺伝子発現阻害にとって重要なステップであるsiRNAのより促進された放出を付与するのであろう。
【0092】
得られた結果はまた、4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環型アミノグリコシドを有するトランスフェクション用化合物は、市販のトランスフェクション系よりさらに一層効率が高いことを示している。
【0093】
総括すると、本発明者らは、かくしてsiRNAトランスフェクションに特に適合したトランスフェクション用化合物を形成し、その特性を決定した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【特許文献1】US2003−0054556A1
【非特許文献】
【0095】
【非特許文献1】Sainlos M., Hauchecorne M., Oudrhiri N., Zertal-Zidani S., Aissaoui A., Vigeron JP., Lehn JM., Lehn P. 遺伝子トランスフェクション用ベクターとしてのカナマイシンA由来カチオン性脂質, Chembiochem. 2005年6月; 6(6):1023-33
【非特許文献2】Sainlos M., 生理活性物質による遺伝子導入, パリ第6大学博士論文、2004年7月6日
【非特許文献3】Belmont P., Aissaoui A., Hauchecorne M., Oudrhiri N., Petit L., Vigneron JP., Lehn JM., Lehn P., in vitroおよびin vivo遺伝子トランスフェクション用の効率的ベクターとしてのアミノグリコシド由来カチオン性脂質、 J. Gene Med. 2002 Sep-Oct; 4(5):517-26
【非特許文献4】Pitard, B., Aguerre, O., Airiau, M., Lachages, A.M., Boukhnikachivili, T., Byk, G., Dubertret, C., Herviou, C., Scherman, D., Mayaux, J.F., Crouzet, J., プラスミドDNAとカチオン性ミセルとの間のウイルスサイズド自己集成ラメラ複合体は遺伝子導入を促進する, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) 94, 14412-14417
【非特許文献5】Pitard, B., Oudrhiri, N., Lambert, O., Vivien, E., Masson, C., Wetzer, B.,Hauchecorne, M., Scherman, D., Rigaud,nJ.L., Vigneron JP., Lehn JM., Lehn P., 立体安定化BGTC系リポプレックス:構造の特徴およびin vivoマウス気道内への遺伝子トランスフェクション, J. Gene Medicine (2001) 3, 478-487
【非特許文献6】Pitard, B., Oudrhiri, N., Vigneron JP., Hauchecorne, M., Aguerre, O., Toury,R., Airiau, M., Ramasawmy, R., Scherman, D., Crouzet, J., Lehn JM., Lehn P., 遺伝子トランスフェクション用グアニジニウム−コレステロール試薬により形成された超分子集合体の構造上の特性, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999) 92, 26211-2626

【特許請求の範囲】
【請求項1】
siRNAと、一般式(I):
A−Y−L (I)
で示されるトランスフェクション用化合物またはその塩、異性体もしくはそれらの混合物、とを含む組成物。
上記式中、
・Aは4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環の種類のアミノグリコシドを意味し、
・Yはスペーサーを意味し、そして
・Lは下記のいずれかの基を意味する:
−(R1)R2基(式中、R1およびR2は互いに独立して、水素原子もしくは脂肪性脂肪族鎖を意味するか、またはR1もしくはR2の一方は存在せず、ただしR1とR2の少なくとも一方は脂肪性脂肪族鎖を意味する)、または
−N−R3もしくは−O−R3基(式中、R3はステロイド誘導体を意味する)。
【請求項2】
前記4,5−二置換2−デオキシストレプタミン環の種類のアミノグリコシドAが、パラモマイシン、ネオマイシン、およびリボスタマイシンから選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
スペーサーYが、炭素数1〜6のアルキル官能基、ケトン官能基、エステル官能基、エーテル官能基、アミノ官能基、アミド官能基、アミジン官能基、カルバメート官能基、チオカルバメート官能基、グリセロール、尿素、チオ尿素、および芳香環から選ばれた少なくとも1種の化学官能基から構成される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
スペーサーYが次式で示される基から選ばれる、請求項3に記載の組成物:
−C(O)−;
−NH−C(O)−CH2−CH2−;
−W−(CH2−)k−W'−;および
−(CH2−)i−W−(CH2−)j−。
上記式中、i,jおよびkは1〜6(両端を含む)から選ばれた整数であり、WおよびW'は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれケトン官能基、エステル官能基、エーテル官能基、アミノ官能基、アミド官能基、アミジン官能基、カルバメート官能基、チオカルバメート官能基、グリセロール、尿素、チオ尿素、および芳香環から選ばれた基である。
【請求項5】
Lが−(R1)R2基を意味し、少なくとも1種の脂肪性脂肪族鎖が炭素数10〜22の飽和または不飽和アルキル基から選ばれる、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
Lがジミリストイル、ジオレイルおよびジステアリルから選ばれる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記トランスフェクション用化合物が下記から選ばれる、請求項1に記載の組成物:
【化2−1】

【化2−2】

【化2−3】

【請求項8】
少なくとも1種のアジュバントをさらに含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のアジュバントが、脂質、ペプチド、タンパク質およびポリマーの少なくとも1種である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種のアジュバントが中性脂質から選ばれる請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記中性脂質が、両性イオン性または生理条件下でイオン性電荷を失う天然および合成脂質から選ばれる、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記中性脂質がジオレイルホスファチジルエタノールアミン、オレイルパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイル−、ジパルミトイル−およびジミリストイル−ホスファチジルエタノールアミン類、ならびに1〜3回N−メチル化されたそれらの誘導体、さらにはホスファチジルグリセロール類、ジアシルグリセロール類、グリコシルジアシルグリセロール類、セレブロシド類、スフィンゴ脂質類、アシアロガングリオシド類、ジオレイルホスファチジルコリン、ならびにコレステロールから選ばれる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
細胞外または細胞内標的化エレメントをさらに含む、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記標的化エレメントが、糖、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、脂質、神経メディエータ、ホルモン、ビタミン、およびそれらの誘導体から選ばれる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記標的化エレメントが、請求項1に記載のトランスフェクション用化合物またはsiRNAのいずれかに共有結合している、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
注射用処方組成物に対して薬学的に許容される賦形剤をさらに含有する請求項1〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
皮膚および/または粘膜への投与に対して薬学的に許容される賦形剤をさらに含有する請求項1〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
被験者に請求項1〜17のいずれかに記載の組成物を投与することを含む、該被験者における標的遺伝子発現を阻害する方法であり、ここで、該組成物中に含まれるsiRNAは該標的遺伝子に特異的に向けられる、前記方法。
【請求項19】
下記工程を含む、siRNAを細胞内に移入する方法:
(1)請求項1〜18のいずれかに記載の組成物を用意し、そして
(2)該細胞を前記組成物と接触させる。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【公表番号】特表2010−505406(P2010−505406A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530894(P2009−530894)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060571
【国際公開番号】WO2008/040792
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(505179971)サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィーク(セーエヌエールエス) (18)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【出願人】(508092967)アンスティテュ・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル(イ・エヌ・エス・エ・エール・エム) (5)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE(INSERM)
【Fターム(参考)】