siRNAの細胞内伝達のためのsiRNAと親水性高分子との間の接合体、及びその製造方法
本発明は、強力な遺伝子治療剤に使用可能なsiRNA(small interfering RNA)の生体内安定性の向上のため、これらsiRNAと親水性高分子を共有結合で連結させたハイブリッド接合体、及び前記接合体とカチオン性化合物からなる高分子電解質複合体ミセルに関するものである。本発明のsiRNAと親水性高分子との間の接合体、及びこれから形成された高分子電解質複合体ミセルは、siRNAの生体内安定性を向上させることにより細胞内に治療用siRNAを効率的に伝達することができ、また比較的低い濃度の投与量でsiRNAの活性を表わすことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌及び他の感染性疾患の遺伝子治療に有用に用いられ得るsiRNA (small interfering RNA)と親水性高分子との間の接合体、及び前記接合体と多様な機能性カチオン性化合物との間のイオン結合を介し形成される高分子電解質複合体ミセル(polyelectrolyte complex micelle)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子の治療において、安全で効率的な遺伝子伝達の技術は長期間研究が続けられ、多様な遺伝子の伝達体と伝達技術が開発されてきた。特に、アデノウイルス、レトロウイルスなどのウイルスを利用した遺伝子伝達技術と、リポソームとカチオン性脂質、そしてカチオン性高分子などを用いた非ウイルス性ベクター(nonviral vector)を利用した遺伝子伝達技術等が開発されてきた。しかし、ウイルス自体を遺伝子治療剤の伝達体に利用する方法は、現在までの技術では伝達された遺伝子が宿主の染色体に移入され、宿主遺伝子の正常機能に異常をもたらすか、発癌遺伝子を活性化させないとは確信することができないという問題点がある。さらに、ウイルス遺伝子が少量でも引き続き発現されている場合自己免疫症を誘発するか、このようなウイルス伝達体から変形された形態のウイルス感染が誘発される場合、効率的な防御免疫を起こすことができないこともある。よって、ウイルス性ベクターを用いる方法の代わりにリポソームに遺伝子を融合させる方法、またはカチオンを有する脂質や高分子を利用した方法などがそれらそれぞれの欠点を改良する方向に研究されている。これら非ウイルス性ベクター等は、ウイルス性ベクターよりはその効率性において遥かに劣るが、生体内安全性と経済性を考慮してみるとき副作用が少なく、生産コストが低廉になり得るという長所がある。
【0003】
さらに、現在薬物伝達及び遺伝子伝達システムで最も重要に台頭している接近法は、標的特異的伝達性(target specific delivery)に関する部分である。薬物を生体内に直接投与することになれば、生体内全ての臓器及び細胞等が同様に薬物の攻撃を受けることにより正常細胞及び正常組織が損傷を被ることになるのは自明な事実である。これにより、現在の薬物伝達システム(DDS: Drug Delivery System)の研究方向は選択的薬物伝達及び遺伝子伝達のための技術の開発にある。即ち、葉酸(folate)、ガラクトース(galactose)、抗体(antibody)などのような代表的な組織/細胞特異的リガンドを薬物に直接取り入れるか、または薬物の伝達体に接合させて伝達することにより、伝達効率を極大化して正常細胞に及ぶ副作用を最小化する努力を傾けている。このような組織/細胞特異的リガンドを遺伝子治療剤の開発のための伝達体の製造に利用することにより、細胞内伝達効率を極大化することができるものと期待される。
【0004】
ミセルとは、親水性と疎水性の性質を有する物質のうち親水性と疎水性が特定の割合で結合されるとき、水溶液上で熱力学的安定性によって自然に自己組立構造が成り立つ物質を意味する。水溶液上で自己組み立ててミセルを形成することができる物質の内部は疎水性性質を有しているので難溶性薬物を容易に捕獲することができ、表面は親水性性質を有するので難溶性製剤の可溶化、薬物伝達担体などに用いられる。このような疎水性の内部と、これを取り囲む親水性表面による水溶液上でのミセルの安定化に対する概念は、疎水性相互作用だけでなく、相違する電荷を有する高分子電解質の間の相互作用まで広げて適用することができる。例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、以下、「PEG」と略称する)を接合させた相違する電荷を有する高分子電解質等は、相互間の相互作用により自発的に形成されるミセル構造を有する複合体を形成し、これを高分子電解質複合体ミセルという(Kataoka K. et al., Macromolecules, 29, 8556-8557, 1996)。これら高分子電解質複合体ミセル等は、薬物伝達運搬体に用いられる他のシステム、すなわち微小球体(microsphere)、ナノ粒子(nanoparticle)などに比べてその大きさが極めて小さいながらも分布が非常に一定であり、自発的に形成される構造であるので、製剤の品質管理及び再現性の確保が容易であるという長所がある。
【0005】
生体内に薬物を伝達するための伝達体に用いられる高分子は、生体適合性を有していなければならず、このような条件を満足させる高分子には代表的にPEGがある。PEGは、米国食品医薬品安全庁(FDA)の承認を受け、長期間タンパク質の特性改善、高分子の表面改質または遺伝子伝達に広範囲に亘って用いられている。PEGは、親水性であり自らの毒性が殆ど表れず、生体内で免疫反応を殆ど起こさない生体適合性ポリマーである。さらに、PEGで表面の性質を改質することによりタンパク質の吸着を大きく低減させることもできる。
【0006】
一方、siRNAは最近動物細胞で特定遺伝子の発現を阻害させるのに卓越な効果を表わすことが明らかになり遺伝子治療剤として脚光を浴びている物質であって、これらの高い活性と精緻な遺伝子の選択性により、去る20年間研究され現在治療剤に活用中のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)を取り替える治療剤として期待されている。siRNAは、19個から23個程度のヌクレオチドで構成された短い二本鎖のRNAストランド(strand)であり、これらと塩基配列が相補的な治療しようとする遺伝子のmRNAを標的に定め遺伝子発現を抑制させる。
【0007】
しかし、siRNAは安定性が低いため生体内で短時間に分解されてしまうので、該治療効率が急激に低下することになり、高価のsiRNAの投与量を高くしなければならず、siRNAが有するアニオン性により同じ負電荷を含む細胞膜を容易に透過するのが困難であるので、結果的に細胞内への伝達性が低下することになるという問題点がある(Celia M. & Henry, Chemical and Engineering News December, 22, 32-36, 2003)。さらに、たとえsiRNAが二本で構成されてはいるものの、RNAを構成するリボース糖の結合はDNAを構成するジオキシリボース糖の結合に比べて化学的に非常に不安定であるため、大部分が生体内で半減期が30分内外で速やかに分解されてしまう。
【0008】
最近は、siRNAに幾多の作用基を取り入れてこれらを分解酵素から保護し安定性を向上させようとする試みをしているが(Frank Czauderna et al., Nucleic Acids Research 31, 2705-2716, 2003参照)、現在までsiRNAの安定性確保及び効率的な細胞膜透過性のための技術は開発段階にあると言える。さらに、siRNAの治療効果を得るため、これらの血液内での不安定性を考慮して単に高濃度のsiRNAだけを継続的に注入する方法を用いているが、その効率が低いものと知られており、経済的な側面でも遺伝子治療剤としてsiRNAを利用するためにはこれらの細胞内伝達が容易な新しい伝達体製造の技術の開発が必然的に求められると言える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような従来の技術上の問題点を解決するため案出されたものであり、本発明の目的は、siRNAの細胞内伝達効率性を向上させるため、siRNAのセンスストランド或いはアンチセンスストランドの末端に生体適合性高分子の親水性高分子を分解性または非分解性結合を利用して接合させた接合体を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記接合体とカチオン性化合物を相互作用させて形成される高分子電解質複合体ミセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0012】
前記の目的を達成するため、本発明はsiRNAと親水性高分子を共有結合で連結させた下記構造のsiRNAと親水性高分子との間の接合体を提供する。
【0013】
P-X-Y
前記で、Pは親水性高分子で、Xはリンカーが媒介されていない共有結合またはリンカーが媒介された共有結合であり、YはsiRNAを表わす。
【0014】
本発明の接合体において、前記siRNAのオリゴストランドは分子量10,000乃至30,000の間で選択されるのが好ましい。siRNAオリゴストランドが前記範囲の分子量を有する場合、19乃至30個、好ましくは19乃至23個のヌクレオチドを含むことになる。このとき、前記siRNAはc-myc、c-myb、c-fos、c-jun、c-raf、c-src、bcl-2またはVEGF(vascular endothelial growth factor)、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、PIGF由来のsiRNAを用いるのが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。
【0015】
さらに、前記親水性高分子は分子量1,000乃至10,000であるノニオン性高分子由来であるのが好ましい。例えば、親水性高分子にはPEG、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrolidone)、ポリオキサゾリン(polyoxazolin)などのノニオン性親水性高分子を用いるのが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。
【0016】
さらに、前記共有結合(即ち、X)は非分解性結合または分解性結合のうち何れでも構わない。このとき、非分解性結合にはアミド結合(amide bond)またはフォスフェート結合(phosphate bond)があり、分解性結合には二硫化結合、酸分解性結合、エステル結合、アンヒドライド(anhydride)結合、生分解性結合、または酵素分解性結合などがあるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0017】
本発明に係る前記接合体は、好ましくは親水性高分子とsiRNAの接合体の末端に細胞選択的リガンドがさらに取り入れられてもよい。前記細胞選択的リガンドには細胞特異的抗体、細胞選択的ペプチド、細胞成長因子、葉酸、ガラクトース、マンノース、アールジーディー(RGD)、トランスフェリンなどが用いられ得るが、必ずこれに限定されるものではない。
【0018】
さらに、本発明は親水性高分子とsiRNAの末端基を共有結合で連結し、P-X-Y形態のsiRNAと親水性高分子との間の接合体を製造する方法を提供する。前記製造方法は、好ましくは所定のsiRNAを選択する段階; 及び前記siRNAと親水性高分子を共有結合させる段階を含む。前記で、Pは親水性高分子で、Xはリンカーが媒介されていない共有結合またはリンカーが媒介された共有結合であり、YはsiRNAを表わす。
【0019】
本発明に係る接合体の製造方法は、好ましくはsiRNAが有する機能基を活性化させる段階をさらに含み、前記共有結合段階は好ましくはsiRNA上の機能基を活性化させる段階と、前記活性化された機能基を親水性高分子と共有結合させる段階を含む。このとき、活性化される機能基にはアミン基、チオール基、またはフォスフェート基であるのが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。siRNAの機能基を活性化させる物質には、好ましくは1-エチル-3,3-ジエチルアミノプロピルカルボジイミド、イミダゾール、N-ヒドロキシルスクシンイミドとジクロロヘキシルカルボジイミド、N-β-マレイミドプロピオン酸、N-β-マレイミドプロピルオキシルスクシンイミドエステル、N-スクシンイミジルピリジルジチオプロピオネートなどがある。
【0020】
siRNAと親水性高分子、例えばPEG間の接合体を形成する過程が概略的に図1に示されている。二本鎖siRNAのセンスストランド3'-末端にある1次アミン基が異質機能性(heterofunctional)結合剤、例えばN-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(以下、SPDPと略称する)の活性型NHS基と反応し2-ピリジルジスルフィドで活性化されたsiRNAが製造される。以後、末端にスルフヒドリル基が取り入れられたメトキシ-PEG(mPEG-SH)を前記2-ピリジルジスルフィドで活性化されたsiRNAに添加すれば、スルフヒドリル交換反応により二硫化結合で連結されたsiRNA-s-s-PEG接合体(siRNA-PEG)が形成される。
【0021】
さらに、本発明はsiRNAと親水性高分子との間の接合体と、カチオン性化合物との間のイオン性相互作用/結合(ionic interaction)により形成される高分子電解質複合体ミセルを提供する。前記カチオン性化合物には、カチオン性ペプチド、カチオン性脂質またはカチオン性高分子などがあるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0022】
前記で、カチオン性ペプチドはKALA(lysine-alanine-leucine-alanine)、ポリリジン(polylysine)またはプロタミン(protamine)などを用いるのが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。前記カチオン性脂質はジオレイルホスファチジルエタノールアミン、またはコレステロールジオレイルホスファチジルコリンなどを用いるのが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。前記カチオン性高分子はポリエチレンイミン(polyethylene imine、以下「PEI」と略称する)、ポリアミン、ポリビニルアミンなどを用いるのが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。
【0023】
さらに、本発明は前記siRNA-親水性高分子接合体を準備する段階と、前記siRNA-親水性高分子接合体とカチオン性化合物を混合する段階とを含む高分子電解質複合体ミセルの製造方法を提供する。
【0024】
本発明に係る高分子電解質複合体ミセルの製造方法は、siRNAを生体適合性親水性高分子に共有結合させた接合体を多価カチオン高分子、脂質またはペプチドなどと混合させたあと、イオン相互作用により形成することができる。このように製造されたsiRNA-親水性高分子接合体と高分子電解質複合体ミセルは、siRNAの細胞内伝達を向上させ、これを疾病モデルの治療の目的に応用することが可能である。より具体的な接合体の合成と高分子電解質複合体ミセルの形成、その特徴、細胞伝達効率及び治療遺伝子の疾病モデルの治療効果は後述する実施例でより詳しく説明する。
【0025】
さらに、本発明は前記高分子電解質複合体ミセルを準備する段階と、前記高分子電解質複合体ミセルを動物の体内に投入する段階とを含むことを特徴とする遺伝子治療方法を提供する。前記動物は特に限定されるものではないが、ヒトに適用されるのが好ましい。しかし、ヒトを除いた他の動物にも同様に適用され得るのは自明である。
【0026】
さらに、本発明は前記siRNA-親水性高分子接合体または高分子電解質複合体ミセルを有効量含む薬剤学的組成物を提供する。
【0027】
本発明に係る組成物は、投与のため前記記載の有効成分以外に追加的に薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含んで製造することができる。薬剤学的に許容可能な担体は、本発明の有効成分と両立可能でなければならず、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれら成分のうち1成分以上を混合して用いることができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。さらに、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形に製剤化することができる。さらには、当分野の適正な方法で、またはRemington's Pharmaceutical Science(最近版)、Mack Publishing Company、Easton PAに開示されている方法を利用し各疾患に応じて、または成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0028】
本発明に係る薬剤学的組成物は、通常の患者症侯と疾病の深刻度に基いて本技術分野の通常の専門家が決定することができる。さらに、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、注射剤、
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、シロップ剤などの多様な形態に製剤化することができ、単位-投与量または多-投与量容器、例えば密封されたアンプル及び瓶などで提供することもできる。
【0029】
本発明に係る薬剤学的組成物は、経口または非経口投与が可能である。本発明に係る薬剤学的組成物の投与経路はこれらに限定されるものではないが、例えば、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、硬皮、皮下、腹腔内、腸管、舌下または局所投与が可能である。
【0030】
このような臨床投与のため、本発明に係る薬剤学的組成物は公知の技術を利用して適した剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与時には不活性希釈剤または食用担体と混合するか、硬質または軟質ゼラチンカプセルに密封されるか、または錠剤に圧形して投与することができる。経口投与用の場合、活性化合物は賦形剤と混合され摂取型錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、ウェハーなどの形態で用いられ得る。さらに、注射用、非経口投与用などの各種の剤形は当該技術分野の公知の技法、または通用される技法に従い製造することができる。本発明の組成物の投与量は患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度などによってその範囲が多様であり、本技術分野の通常の専門家が容易に決定することができる。
【0031】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0032】
本発明に係るsiRNAと親水性高分子との間の接合体は、親水性高分子とsiRNAの末端基を共有結合で連結させた形態であって、下記のような構造を有する。
【0033】
P-X-Y
前記で、Pは親水性高分子で、Xはリンカーが媒介されていない共有結合またはリンカーが媒介された共有結合であり、YはsiRNAを意味する。
【0034】
前記接合体のうち親水性高分子(P)は、好ましくは分子量1,000乃至10,000であるノニオン性高分子から由来される。このようなノニオン性高分子の例にはPEG、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリンなどのノニオン性親水性高分子があるが、必ずこれに限定されるものではない。前記で分子量が1,000乃至10,000の範囲の場合、特にカチオン性高分子とsiRNAによって形成された複合体の血液内安定性を向上させるのに適する。
【0035】
前記親水性高分子の機能基は、必要に応じて他の機能基に置き換えされても構わない。例えば、ヒドロキシ基(-OH)はスルフヒドリル基(-SH)、カルボキシル基(-COOH)またはアミン基(-NH2)などの機能基で適切に置き換えされ得る。前記親水性高分子のうち特にPEGは、多様な分子量と作用基を取り入れることができる末端を有しており、生体内親和性が良く免疫反応を誘導せず、さらに水に対する溶解度を増加させて生体内での遺伝子伝達の効率を増加させるので、本発明の接合体の製造に好適である。親水性高分子の接合時に、例えば、PEGはsiRNAのRNAi効果の減少を最少化するため、siRNAセンスストランドの3'末端に結合させるのが好ましい。
【0036】
前記接合体のうちsiRNAのオリゴストランドは、好ましくは分子量10,000乃至30,000の間で選択される。siRNAの分子量が10,000乃至30,000の範囲の場合、siRNAは固有の遺伝子阻害機能を有する19乃至30個のオリゴヌクレオチドを有する二本のオリゴマーの形態を有することができ、好ましくは19乃至23個のオリゴヌクレオチドを有する。本発明で使用可能なsiRNAは、治療用または研究用に用いられているものである限り特に限定されることはなく、例えばc-myc、c-myb、c-fos、c-jun、c-raf、c-src、bcl-2、またはVEGF、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、PIGFなどのように遺伝子治療または研究のため用いられるか、用いられる可能性のある如何なる遺伝子由来のsiRNAも採用され得る。
【0037】
本発明の好ましい実施例では、血管内皮細胞成長因子(vascular endothelial growth factor)を抑制するためhVEGF siRNAを用いた。VEGFは、血管内皮細胞の表面に存在するVEGF収容体と結合して内皮細胞の成長、移動を促進することにより新しい血管の生成を促進する役目を果たす。特に、癌細胞の成長や転移はこのような血管の新生と密接な関係があるので、血管の新生を抑制して癌細胞の成長を阻害する方法が新しい癌治療方法の一つとして注目されている。
【0038】
前記siRNAのセンスまたはアンチセンス末端基は、他の機能基に置き換えされ得る。例えば、機能基の例として3'のヒドロキシ基はアミン基、スルフヒドリル基、またはフォスフェート基などに置き換えされ得る。
【0039】
前記本発明に係る接合体の構造のうちXは、親水性高分子(P)とsiRNAから由来された残基(Y)を共有結合で連結させるリンカーまたは単純共有結合を表わす。結合を媒介するリンカーは、親水性高分子とsiRNAから由来された残基Yの末端基を共有的に結合させ、必要に応じて所定の環境で分解の可能な結合を提供する限り特に限定されるものではない。よって、前記リンカーXは接合体の製造過程中siRNA及び/または親水性高分子を活性化するため結合させる如何なる化合物も含むことができる。例えば、3'末端基がアミン基に置き換えされたsiRNAに活性化物質のSPDPを結合させ末端のアミン基がピリジルジチオール基に活性化されたsiRNAを原料に用い、前記親水性高分子部Pがスルフヒドリル基に置き換えされたPEG(SH-PEG)を用いる場合、接合体構造内の前記Xは-NH-CO-CH2-CH2-S-S-となる。このように、前記Xは接合体の製造過程で必要に応じて反応物の親水性高分子とsiRNAの活性化過程で取り入れられる反応後の結合内残留部(リンカー)であるか、または活性化過程を要しない場合、親水性高分子とsiRNA機能基との間に形成される特別なリンカーのない単純共有結合であり得る。前記のようなXはsiRNAが伝達される標的によって異なることがあり、非分解性結合または分解性結合のうち何れでも構わない。このとき、非分解性結合にはアミド結合、フォスフェート結合などがあり、分解性結合には二硫化結合、酸分解性結合、エステル結合、アンヒドライド結合、生分解性結合、または酵素分解性結合などがあるが、必ずこれに限定されるものではない。好ましくは、Xは二硫化結合である。
【0040】
siRNAが長い鎖ヌクレオチド、例えば分子量30,000水準では親水性高分子が結合された場合も二本のsiRNAオリゴマーがこれらの遺伝子阻害作用に関与する生体内酵素複合体のRNA-誘導性サイレンシング複合体(RISC)と安定的に結合することができる。普通の19個のヌクレオチドである10,000水準のsiRNAの場合、遺伝子阻害作用を助ける細胞内酵素複合体と結合するとき末端に取り入れられた親水性高分子により構造的安定性が低下することがあるので、生体内でまたは細胞内でこれら接合体が分解できる結合を取り入れるのが好ましい。よって、細胞質内に過量存在するグルタチオン(glutathione)により細胞内で分解される二硫化結合、細胞内に流入されたあと酸性を示す環境で効果的に分解できる酸分解性結合、細胞内に流入されたあと細胞内で効果的に分解可能なエステル結合、アンヒドライド結合と特定の細胞の周辺に存在する酵素等によって細胞内に流入される直前に分解できる酵素分解性結合などを取り入れるのが好ましい。
【0041】
siRNAの構造を化学的に変形させる場合、変形される位置に従いRNAi(RNA interference)活性が10乃至50%程度減少し、さらにある程度の細胞毒性を起こすとのことが知られている(M. Amarzguioui, et al., Nucleic Acids Res.,31, 589-595, 2003)。ここに、親水性高分子、例えばPEGと接合体を形成するに伴い引き起こされ得るRNAi活性の減少を最少化するため、siRNAと親水性高分子との間に分解性二硫化結合を取り入れて細胞内のような還元性環境下で完全な siRNAを放出することができ(図4を参照)、より好ましくは親水性高分子をセンス鎖の3'末端に接合させることができる。細胞内環境ではグルタチオンジスルフィド(GSSG)リダクターゼの存在のため細胞内グルタチオンの98%以上が還元されたチオール形態(GSH)を維持する(W Wang., et al., Pharmacol. Rev., 50, 335-356, 1998)。したがって、siRNAと親水性高分子との間の二硫化結合は、細胞内に存在するGSHによって直ちに分解され完全なsiRNAを生産することができるようになる(図10を参照)。分解されたsiRNA分子は、細胞質内でRNA-誘導性サイレンシング複合体(RISC)タンパク質と相互作用して一連のRNAi過程が起きることになる。このような観点で、完全なsiRNAが細胞内で再生産されればRNAi活性及び特異性を十分維持することができるようになるとの長所がある。siRNAを親水性高分子、例えばPEGに接合させる場合は、構造的な側面で二硫化結合を取り入れるのがより好ましいが、その理由はセンス鎖の3'末端に取り入れられたPEGが細胞内でsiRNAと分離されsiRNAとRISCとの間の複合体の形成を妨げないはずであるためである。
【0042】
一方、本発明者等はアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)とPEGを非分解性結合で接合させアンチセンスODN-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルを製造したことがある(JH Jeong, et al., Bioconjug. Chem., 16, 1034-1037,2005)。このようなアンチセンスODNはsiRNAとは非常に異なる遺伝子抑制メカニズムを有するが、ODNはsiRNAとは別にタンパク質複合体と結合することがなく直接的に標的mRNA配列に結合してこれを分解させるので、ODNが親水性高分子から必ず分離される必要はない(A. Kalota, et al., Cancer Biol. Ther., 3, 4-12, 2004)。一方、siRNAは親水性高分子が接合された場合、siRNAがRISCと複合体を形成するに際し相当の立体障害(steric hindrance)を与えることがあるので、siRNA活性を十分表わすためにはsiRNAが親水性高分子から分離されるのが好ましい。したがって、PEGとアンチセンスODNの共有結合の場合、分解性結合の取入れが絶対的ではない反面、siRNAの場合、PEGの導入時に分解性結合を取り入れる過程が重要に認識される。さらに、siRNAの場合、アンチセンスODNに比べて高い遺伝子選択性を有するので他の遺伝子を非選択的に阻害する副作用が減少し、アンチセンスODNの1/10に該当する少ない投与量だけでも特定の標的遺伝子だけを効果的に阻害することがある(図22を参照)。投与量が少なくなれば、siRNA高分子電解質複合体ミセルを薬学的組成物の形態で実際の臨床に適用するとき体内に及ぶ負担を軽減させることができるだけでなく、費用の側面でも大きい長所がある。併せて、ODN由来の高分子電解質複合体の場合は単一鎖構造のDNAを用いる反面、本発明のsiRNA由来高分子電解質複合体では二本鎖構造のRNA分子を用いたので、その安定性においてもODN-PEG高分子電解質複合体より遥かに優れる。したがって、本発明のsiRNA高分子電解質複合体はDNAに基いた従来のODN高分子電解質複合体に比べて標的遺伝子mRNAに対する選択性、投与量及び安定性の側面で非常に優れた効果を有する。
【0043】
一方、前記構造の本発明に係るsiRNAと親水性高分子との間の接合体は、その末端部に細胞選択的リガンド(cell-specific ligand)がさらに備えられてもよい。前記リガンドには、好ましくは細胞特異的抗体、細胞選択的ペプチド、細胞成長因子、葉酸、ガラクトース、マンノース、アールジーディー(RGD)、トランスフェリンなどが用いられ得る。これらリガンドは二硫化結合、アミド結合、エステル結合などの結合を介し前記接合体の末端、好ましくはPEG末端部のOH基に取り入れられ得る。
【0044】
さらに、本発明は親水性高分子とsiRNAの末端基を共有結合で連結してP-X-Y形態のsiRNAと親水性高分子との間の接合体を製造する方法を提供する。前記で、Pは親水性高分子で、Xはリンカーが媒介されていない共有結合またはリンカーが媒介された共有結合であり、YはsiRNAを意味する。
【0045】
前記接合体の製造方法において、siRNAまたは親水性高分子が有する機能基を活性化する段階をさらに含むのが好ましい。前記で、活性化される機能基は、好ましくはアミン基、チオール基またはフォスフェート基である。前記機能基を活性化させる物質は特に限定されることはないが、好ましくは1-エチル-3,3-ジエチルアミノプロピルカルボジイミド、イミダゾール、N-ヒドロキシルスクシンイミドとジクロロヘキシルカルボジイミド、N-β-マレイミドプロピオン酸、N-β-マレイミドプロピルオキシルスクシンイミドエステル、N-スクシンイミジルピリジルジチオプロピオネートなどがある。
【0046】
親水性高分子とsiRNAとの間の反応は特に限定されるものではなく、通常的には常温での遂行が可能であり、大凡24乃至48時間の間反応させて得られ得る。反応に求められる前記各反応物の添加比は特に限定されることはなく、親水性高分子とsiRNAがモル比(%)で10:90乃至90:10で添加することができ、これを介しsiRNAの親水性高分子の導入率を調節することができる。
【0047】
さらに、本発明に係る前記親水性高分子とsiRNAとの間の接合体は、高分子電解質複合体ミセルの構成成分に用いられ得る。高分子電解質複合体ミセルとは、ノニオン性親水性高分子と結合されたsiRNAと、これと逆のイオンを有する高分子(例えば、カチオン性化合物)との間の相互作用により自己組み立てられて形成される小さい集合体であって、100乃至200nm程度の大きさと構造を有する(図2を参照)。ミセルの中心部にはsiRNAとカチオン性化合物との間のイオン性結合(ionic interaction)を介し形成された核が存在し、これら粒子の外部表面膜には親水性高分子が取り囲んだ構造を形成することになる。
【0048】
本発明において、前記高分子電解質複合体ミセルを形成するため用いられるカチオン性化合物にはKALA、ポリリジンまたはプロタミンなどのカチオン性ペプチド、PEI、ポリアミン、ポリビニルアミンのようなカチオン性高分子、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、またはコレステロールジオレイルホスファチジルコリンなどのカチオン性脂質を挙げることができる。
【0049】
このようなミセルの製造過程は次の通りである。siRNA-親水性高分子接合体をリン酸緩衝溶液などに希釈した後、これにカチオン性化合物を添加して水溶液上で高分子電解質複合体ミセルを形成し、ミセルの安定化のため数十分間常温に放置する。このとき、カチオン性化合物の添加量は、用いられるカチオン性化合物の正電荷とsiRNAの負電荷の電荷比が1:1(+/-=1/1)乃至24:1(+/-=24/1)になるように調節するのが好ましい。
【0050】
本発明の好ましい実施例では、生体内でsiRNA-PEG接合体の細胞内伝達を容易にするための高分子電解質複合体ミセルを形成するため、カチオン性ペプチドのKALAを利用して高分子電解質複合体ミセルを形成した。動的光散乱法(dynamic light scattering (DLS) method)を介しsiRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの水溶液上での大きさを測定した結果、150nm程度の大きさの非常に狭い分散度を有することが分かる(図6を参照)。
【0051】
前記siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの生体内条件での安定性を評価するため、変形されないsiRNAと合成されたsiRNA-PEG接合体の安定性を比較して調査した結果、siRNAにPEGが取り入れられた場合24時間まで安定性を示しており、高分子電解質複合体ミセルの構造を成したときにはその安定性が急激に向上することを確認することができる(図7を参照)。
【0052】
本発明の好ましい実施例では、前立腺癌細胞株のPC-3細胞を利用してVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルがVEGFの発現に及ぶ影響を確認した結果、VEGF siRNA/KALAとVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルを処理した場合、血管内皮細胞成長因子の発現を大きく抑制することを観察することができた(図8を参照)。
【0053】
さらに、本発明の好ましい実施例でVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの生体内での癌細胞株の増殖阻害活性度を調べるため、ヒト由来の癌細胞が移植された実験用マウスにsiRNA伝達体をマウスの血管を通じて投与したあと、移植された癌細胞株の増殖程度を観察した結果、siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの場合、動物モデルに移植された癌細胞株の成長を大きく抑制することを確認した(図9を参照)。
【0054】
本発明の他の実施例によれば、siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルはヌクレアーゼ媒介性siRNA分解に対する強力な抵抗性を示し(図10を参照)、試験管内でヒト前立腺癌細胞株(PC-3)のVEGF遺伝子の発現を効果的に抑制した(図11を参照)。VEGF遺伝子の抑制効果は、N/P割合を増加するかsiRNAの投与量が増加する場合一層確実に表れた。さらに、siRNA-PEG高分子電解質複合体ミセルは血清の存在可否に係わりなく同様にVEGF遺伝子の発現を抑制し(図12を参照)、高分子電解質複合体ミセルによって誘発されるVEGF遺伝子の抑制は非常に配列-特異的な様相で表れた(図13を参照)。
【0055】
本発明のさらに他の実施例では、動物モデルでsiRNAが腫瘍の成長に及ぶ影響を確認した。その結果、VEGF siRNAを処理した場合は全て対照群に比べて多様な程度の腫瘍成長遅延の効果を表わした。この中でも、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルは、VEGF siRNA/PEI複合体に比べて大きい程度に腫瘍の成長を遅延させた(図14及び図15を参照)。
【0056】
さらに、腫瘍内VEGFタンパク質及びmRNAの量を測定した結果、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルはVEGF siRNA/PEI複合体に比べて有意味な程度にVEGFタンパク質の発現をより多く抑制し(図16を参照)、腫瘍内VEGF mRNA濃度はVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの処理により完全に抑制された。完全なsiRNA及びsiRNA/PEI複合体は、VEGF mRNA濃度を僅かに減少させ、配列が一致しないsiRNA高分子電解質複合体ミセルは全く減少させなかった(図17を参照)。このような結果は、高分子電解質複合体ミセルが、広く用いられているsiRNA/PEI複合体に比べて生体内でVEGFの発現を抑制させるのに明らかに利点があることを示す。
【0057】
生体内条件でこのようなsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの遺伝子サイレンシング効果は、次のような高分子電解質複合体ミセルの独特の構造的な特徴から由来され得る: (1) 高分子電解質複合体ミセルの表面に露出されたPEG鎖が細胞内に摂取される前に組織液におけるコロイド安定性を与える。(2) エンドサイトーシスにより細胞内に摂取されたあと細胞質内でsiRNA-s-s-PEG接合体が特異的な部位で切断される。
【0058】
本発明の他の実施例で、免疫組織化学染色を介し腫瘍内微細血管の分布を調査してみた結果、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルで処理された群の場合、対照群に比べて単位面積当たりの腫瘍内微細血管の数が著しく減少した(図18を参照)。このような結果は、腫瘍内血管形成の活性は固形腫瘍部位におけるVEGFの量に主に依存するということを示す。よって、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルにより誘導されたRNAi-媒介性VEGF発現の抑制は、腫瘍内新血管の形成を効果的に減少させることにより、腫瘍の成長を有意味に遅延させるということが分かる。
【0059】
さらに、本発明の他の実施例によれば、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルを全身投与した場合、対照群siRNA剤形と比べるとき腫瘍の成長を効果的に減少させた(図19を参照)。なお、腫瘍内VEGFの量を確認した結果、減少されたVEGFの発現が高分子電解質複合体ミセルが処理された異種移植されたPC-3腫瘍で主に発生した(図20及び図21を参照)。このような結果は、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルがさらに長い期間の間血管を循環しながらEPR(enhanced permeation and retention)効果により腫瘍部位でより効果的に蓄積されるということを示す。ナノメートル大きさの担体または高分子-接合薬剤が腫瘍部位でより緩んだ血管構造を介しより容易に蓄積されるとのことは周知の事実である。したがって、腫瘍に対するVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの受動的な標的化がこのような腫瘍成長の遅延に影響を及ぼすこともある。
【0060】
本発明では、アニオン性オリゴマーのsiRNAと親水性高分子を二硫化結合、或いは多様な形態の生分解性結合或いは非分解性結合を取り入れて接合させたハイブリッド接合体を幾多のカチオン性高分子、脂質、ペプチド等と相互作用させることにより形成される高分子電解質複合体ミセルをsiRNAの新しい細胞伝達用伝達体に用いることができる。さらに、これらsiRNA-PEG接合体に細胞に特異的に結合するリガンドを取り入れて選択的遺伝子治療の効果を増大させることができる。特に、二硫化結合により形成されたsiRNA-親水性高分子接合体とカチオン性高分子、脂質、ペプチドを利用した高分子電解質複合体ミセルを用いた場合、siRNA自体より高いsiRNAの細胞伝達効率を示し、癌細胞の治療のため標的遺伝子に利用される血管内皮細胞成長因子のVEGF siRNAを用いる場合、これら血管内皮細胞成長因子の阻害及び生体内の腫瘍の増殖を低濃度で抑制することができる。このような結果は、hVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルが血管内皮細胞成長因子の発現抑制を介した癌細胞の成長抑制において優れた抑制効果と、急激に向上した生体内安定性を有していることを示唆する。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例に基づき詳しく説明する。
但し、下記の実施例は本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の内容が下記の具現例により限定されるものではない。
実施例1. 細胞質内で自発的に分解される生分解性結合の二硫化結合を有するsiRNA-PEG接合体の合成
【0062】
以下、実施例では血管内皮細胞成長因子を抑制するhVEGF(human vascular endothelial growth factor)siRNAを用いており、hVEGF siRNAの標的配列は配列番号1に記載される塩基配列(hVEGF, 189-207 bp)を有し、hVEGF siRNAのセンス鎖は配列番号2に記載される塩基配列を有し、アンチセンス鎖はこれと相補的な配列番号3に記載される塩基配列を有する。さらに、スクランブルsiRNAのセンス鎖は配列番号4に記載される塩基配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号5に記載される塩基配列を有する。
【0063】
siRNAのセンスストランド(sense strand)の3'末端にアミン基を取り入れたsiRNA(Qiagen社)を異質二重機能(heterobifunctional)製剤であると共に分解性クロスリンカー(cross linker)であるSPDPを利用して末端のアミン基がピリジルジチオール基に活性化された(pyridyldithiol-activated)siRNA中間体を形成した。先ず、800μlの5mM phosphate buffer(pH 7.5) に溶解させたsiRNA 300μg(20nmol)が溶解されている溶液に、20mM濃度でdimethyl sulfoxide(DMSO)に溶解されているSPDP 20μlを加えて常温で30分間反応させた。前記反応物をcut-offが10,000の透析膜を利用して5mM phosphate buffer(pH 7.5)で3時間の間透析させ、反応しないSPDPを取り除いた。合成されたsiRNA-ピリジルジチオール中間体に5mM phosphate buffer(pH 7.5)に20mM濃度で溶解されているPEG-SH(分子量; 3,400、Nektar、USA)100μlを添加し、常温で18時間の間反応させてsiRNAとPEGとの間に二硫化結合を取り入れさせた後、再度cut-offが10,000の透析膜を利用して24時間の間透析し、反応しないPEGを取り除いて生分解性結合の二硫化結合を有するsiRNA-PEG反応物を得た。前記合成されたsiRNA-PEGを逆相HPLC(C-4)を介し分離した。siRNA-PEGは、100mMアンモニウムアセテート(ammonium acetate)と50%アセトニトリル(acetonitrile in 100mM ammonium acetate)の濃度勾配法を利用して分離した(図3)。
【0064】
次に、細胞内と類似する環境でsiRNA-s-s-PEG接合体のジスルフィド結合が切断される程度を評価するため、0.5μgのsiRNA-PEG接合体を10mMのグルタチオン培地で総体積25μlで培養した。切断反応は、37℃で2時間の間行なった。10μlのゲルローディングバッファー(0.25%(w/v)ブロモフェノールブルー及び40%(w/v)スクロース)を添加して反応を終了させた。切断されたsiRNAを電気泳動で確認した。その結果、siRNAはGSHの処理によりsiRNA-PEG接合体から完全な形態で切断された(図4)。これは元来の形態のsiRNAが活性の損失なくRNAi反応に参加することができることを意味する。
実施例2. 癌細胞選択性を有するリガンドの葉酸が取り入れられた非分解性結合を有するsiRNA-PEG接合体の合成
【0065】
癌細胞選択的リガンドの葉酸及び非分解性結合を通じたPEGをsiRNAに取り入れるため、siRNAセンスストランドの3'末端にアミン基(-NH2)を取り入れたsiRNAを用いた。先ず、130mg(0.3mmole)の葉酸をDMSOに溶解させたあと、DCC(dicyclohexyl carbodiimide)60mgとNHS(N-hydroxyl succinimide)34mgを投入し、常温で30分間反応させて葉酸のカルボキシル基(carboxyl group)を活性化させ、シスタミン(cystamine)34mgを投入したあと3時間の間さらに反応させた。このとき、葉酸とシスタミンの反応モル比(reaction molar stoichiometry)は2:1であった。反応物を水で透析して反応しない副産物等を取り除いたあと凍結乾燥した。葉酸-シスタミン-葉酸(cystamine-FOL2)を水とDMSOが50:50で混合された溶液に溶解させたあと、0.1M濃度のメルカプトエタノール(2-mercaptoethanol)上で遊離チオール基(free thiol group、-SH)が生成されるようにして葉酸-SH を得た。次に、300μgのsiRNAと異質機能性PEG(NHS-PEG-MAL(maleimide))200μgを10mM sodium phosphate bufferで1時間30分の間反応させてsiRNAのセンスストランド3'末端の方にPEGが取り入れられたsiRNA-PEG-MALを形成した。前記siRNA-PEG-MALが存在する溶液に準備した葉酸-SHを0.1mg添加して常温で3時間の間反応させた。反応物は、cut-off 5,000の透析膜を利用して水で透析させたあと逆相HPLC(C-4)を介しsiRNA-PEG-FOL接合体を分離した(図5)。
実施例3. siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの形成と特性化
【0066】
前記実施例1で合成、分離したsiRNA-PEG接合体を細胞伝達のための形態である高分子電解質複合体ミセルに形成するため、カチオンペプチドのKALA(Peptrone, Korea)またはプロタミン(Sigma Aldrich, U.S.A.)、カチオン高分子のPEI(Sigma Aldrich, U.S.A.)、カチオン性脂質のジオレイルホスファチジルコリン(DOPC, Nutfield, UK)などを用いた。KALAを利用した場合の例を挙げて詳しく説明すれば、先ずsiRNA-PEG接合体(50pmol)を2xリン酸化バッファー(PBS)と1:1に希釈したあと、やはりPBSに溶解させたKALAを添加して水溶液上で高分子電解質複合体ミセルを形成し、ミセルの安定化のため15分間常温で放置した。このとき、KALAペプチドの正電荷とsiRNAの負電荷の電荷比は1:1(+/-=1/1)であった。
【0067】
前記siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの水溶液上での大きさを測定するため、動的光散乱法(dynamic light scattering (DLS) method)を用いた。DLSを介した測定結果、siRNA-PEG/KALAミセルは150nm程度の大きさに非常に狭い分散度を有することが分かった(図6)。
実施例4. siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの生体内と同一の条件での安定性の評価
【0068】
変形されていない元来の形態のsiRNAに比べてPEGが取り入れられたsiRNA、またはこれらがカチオンペプチドのKALAにより高分子電解質複合体ミセルの形態になったとき、siRNAの安定性をどれほど向上させるのかの可否を確認するため、変形されていないsiRNAと前記実施例1で製造したsiRNA-PEG接合体、及び前記実施例3で製造したsiRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの3種類を、生体内条件を模倣した形態である10%のFBS(fetal bovine serum)が添加された培地でそれぞれ0、1、2、4、8、16、24、48時間の間培養したあと、元来のsiRNAに比べて分解された程度を電気泳動で検討した。
【0069】
その結果、PEGが取り入れられた場合24時間までも安定性を示しており、高分子電解質複合体ミセルの構造を成したときにはその安定性が急激に向上することを確認することができた(図7)。
実施例5. hVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルが前立腺癌細胞株の血管内皮細胞成長因子の生成に及ぶ影響
【0070】
hVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルが前立腺癌細胞株のhVEGFの発現に及ぶ影響を調べるため、ヒト前立腺癌細胞株のPC-3細胞を利用し、これら細胞株が作り出して培養液に分泌したhVEGFの量をELISA(enzyme linked immonosorbent assay)方法を利用して測定した。先ず、前立腺癌細胞株のPC-3細胞を12ウェルプレートに一ウェル当たり1×105個になるように分株して10% FBSが含まれたRPMI1640培地で24時間の間培養した。培養液を取り除いて再度培地を10%のFBSが含まれたRPMI1640に交換した。次に、前記実施例1で合成されたhVEGF siRNA-PEG 10pmolをsiRNAの負電荷と電荷比が1:1(+/-=1:1)になる正電荷のKALAペプチド溶液を混合し、常温で15分以上放置して高分子電解質複合体ミセルを形成したあと、適正濃度(10pmole)の高分子電解質複合体ミセルを予め準備した細胞株に処理して血清が含まれていない1mlのRPMI1640培地で37℃で4時間の間伝達感染させた。10% FBSが含まれたRPMI1640培地に取り替えたあと6時間の間培養した。以後、細胞内で発現が阻害されたhVEGFの量を定量するため、10% FBSが含まれたRPMI1640培地を1ml添加したあと、37℃で18時間の間放出されるhVEGFを集めてELISA方法を介しhVEGFの量を測定した。対照群にはPEGが取り入れられていないhVEGF siRNAと、siRNA-PEG接合体のみを処理したものと、siRNA/KALA複合体と、スクランブルsiRNAが含まれた高分子電解質複合体ミセル、及びGFP(green fluorescent protein)siRNAの高分子電解質複合体ミセルを処理した細胞と何も処理していないPC3細胞を用いた。
【0071】
その結果、siRNA/KALAとsiRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの場合、血管内皮細胞成長因子の発現を著しく抑制することを観察することができた(図8)。
実施例6. 動物モデルでhVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルが癌細胞成長抑制に及ぶ影響
【0072】
hVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの生体内癌細胞株の増殖阻害活性度を調べるため、前記実施例1及び実施例3で製造されたsiRNA伝達体をヒトの癌細胞が移植された実験用マウスの血管を通じて投与したあと、移植された癌細胞株の増殖程度を観察した。先ず、7-8週齢の免疫欠乏マウス(nude mouse)に5×106個の前立腺癌細胞株のPC-3細胞をわき腹側の皮下に投与したあと腫瘍の大きさが0.1cm3になるとき、hVEGF siRNA-PEG/KALA、hVEGF siRNA/KALA、スクランブルsiRNA/KALA、スクランブルsiRNA-PEGを一回に7.5μgずつ血管内に投与した。このとき、1日、10日目にそれぞれ投与し、1、3、5、7、10、12、14、18日にそれぞれ腫瘍の大きさを測定した。
【0073】
その結果、hVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの場合、動物モデルに移植された癌細胞株の成長を大きく抑制することを観察することができた(図9)。
実施例7. 高分子電解質複合体ミセルの製造 (2)
siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルを製造するため、前記実施例1で製造したsiRNA-PEG接合体をPEI(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)と所定のN/P割合で混合したあと、これを室温で放置してsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルを形成した。
実施例8. siRNA-PEG接合体及びこれから形成されたミセルの血清内安定性の分析
未変形siRNA、siRNA-PEG接合体及びsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル(N/Pの割合=16)の血清内安定性を調査した。具体的に、10μgのsiRNAを含むそれぞれの剤形を50% FBS(Gibco BRL, Grand Island, NY)を含む培地で培養した。所定時間(0、1、2、4、8、16、24及び48時間)にサンプルから当量の培養液を取り除き、トリス-アセテート(TAE)バッファーでゲル電気泳動(1.2%アガロースゲル)で分析した。siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルをヘパリンナトリウム塩溶液(50mg/ml)で前処理してカチオン性PEIを取り除くことにより、非複合siRNA-PEG接合体を得た。
【0074】
その結果、未変形siRNAは血清を含む培地で8時間培養すれば、ほぼ完全に分解された(図10の(a))。一方、siRNA-PEG接合体は同一の条件下で16時間の間特別な損失がなかった(図10の(b))。siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの場合は、ヌクレアーゼにより媒介されるsiRNA分解が48時間が経過した後にも全然検出されなかった(図10の(c))。これは、PEG接合だけでもある程度まではsiRNAの構造を血清の存在下でも安定的に維持させることができるとのことを意味する。高分子電解質複合体ミセルの場合で観察されるより持続的な安定化は、外皮層のPEG鎖がヌクレアーゼがsiRNA/PEIの内部中心部に接近することを構造的に遮るので得られるものであると考えられる。
実施例9. 細胞培養及び伝達感染
【0075】
ヒト前立腺癌細胞株(PC-3)を12ウェルプレートに1.5×105細胞/ウェルの濃度で接種したあと、24時間の間付着させた。培養培地を予め暖めた血清除去培地に取り替えたあと、望むsiRNA剤形を細胞に添加して伝達感染させた。4時間経過後、伝達感染培地を血清を含む新鮮な培地に取り替えたあと6時間の間培養した。以後、前記培地を10% FBSとヘパリン(20μg/ml)を含むRPMI1640 培地(Gibco BRL, Grand Island, NY)に取り替えた。16時間後、hVEGFを含む培養培地を収集したあと遠心分離して細胞残渣を取り除いた。細胞から分泌されたVEGFの量をQuantikine(登録商標)hVEGF免疫分析キット(R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いて製造社の指針に従い決定した。
【0076】
その結果、siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルは効率的にPC-3細胞でのhVEGF発現を減少させた。siRNA/PEI複合体と比べるとき、前記siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルは低いN/P割合でhVEGFの発現をより多く抑制するものと表れた(N/P割合2及び4、図11のA)。N/P割合が16の場合、50pmolのsiRNAを含む剤形等は全てPC-3細胞からのhVEGFの分泌をほぼ完全に抑制した。前記hVEGFの発現はやはり濃度-依存的に抑制された(図11のB)。
【0077】
たとえ血清が存在しない場合は、siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル及びsiRNA/PEI複合体の間にhVEGFの発現抑制において有意な違いはなかったが、10% FBSの存在下では非常に異なるhVEGF遺伝子サイレンシング効果を示した(図12)。即ち、siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルは10% FBSの添加時に少し減少したhVEGF分泌サイレンシング効果を示す反面(14.6乃至25.9pg/mg)、前記siRNA/PEI複合体は同一の血清条件下で遥かに低い遺伝子サイレンシング効果を示した(21.2乃至91.3pg/ml)。
実施例10. RT-PCRによる定量分析
【0078】
VEGFの発現抑制が実際に細胞内hVEGF mRNAの量の減少から起因するか否かを確認するため、hVEGF mRNAの細胞内濃度をRT-PCR分析により決定した。hVEGF siRNA/PEI複合体、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル(N/Pの割合=16)、GFP siRNA/PEI複合体、スクランブルsiRNA/PEI複合体、またはスクランブルsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルに伝達感染したPC-3細胞を16時間の間培養したあとトリプシン処理して収穫した。前記で、GFP siRNAのセンス鎖は配列番号6に記載される塩基配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号7に記載される塩基配列を有する。RNA総量をRNeasy(登録商標)ミニキット(Qiagen, Valencia, CA)を利用して製造社の指針に従い分離した。SuperScriptTM III One-Step RT-PCRシステムを利用してPlatinumR Taq DNA Polymerase(Invitrogen, Carlsbad, CA)で前記抽出されたRNA総量(1μg)に対する半-定量RT-PCTを行なった。RT-PCRのための熱サイクリング条件は下記の通りである: cDNA合成、55℃で25分間1回反復; 変性、94℃で2分間1回反復; PCR増幅、94℃で20秒間、60℃で30秒間及び72℃で30秒間26回反復; 最終伸張70℃で5分間1回反復。hVEGF及びヒトβ-アクチンを検出するためのPCRプライマーはバイオニア社(大田、大韓民国)から購入した。hVEGFを検出するためのプライマーは、配列番号8及び配列番号9に記載される塩基配列を有し、ヒトβ-アクチンを検出するためのプライマーは配列番号10及び配列番号11に記載される塩基配列を有する。hVEGF及びβ-アクチンのPCR産物の長さは、それぞれ522bp及び1,126bpであった。前記PCR産物を0.8%アガロースゲル電気泳動で分析し、EtBr(ethidium bromide)で染色して視覚化した。
【0079】
その結果、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルは非常に弱いhVEGF mRNAバンドを示したが(図13、レーン3)、hVEGF mRNAと一致しないか、または無関係な配列を含むsiRNA(即ち、スクランブルsiRNA及びGFP siRNA)の場合は、伝達感染していない細胞の場合と肩を並べる程度の完全なmRNAバンド強度を示した(図13、レーン1)。これは、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルが転写後段階で非常に配列特異的な様相でhVEGFの発現を抑制することができることを意味する。
実施例11. 生体内腫瘍モデルでsiRNAの効能確認
【0080】
7週齢の雌性ヌードマウス(nu/nu)(Charles River, Wilmington, MA)のわき腹部分にヒト前立腺癌細胞株(PC-3)1.5×106細胞を皮下注入した。異種移植されたPC-3腫瘍の体積が50mm3になったとき、500pmolのsiRNAを含むsiRNA剤形(VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル(N/Pの割合=16)、hVEGF siRNA/PEI、未変形hVEGF siRNA、スクランブルRNA-PEG/PEI)をそれぞれ腫瘍内に注入した(第1日目)。モック(Mock)-処理された対照群の場合、PBSを注入した。第10日目にsiRNA剤形を再度追加注入した。このとき、腫瘍の大きさはキャリパー(caliper)を用いて垂直直径を測定することにより観察した。腫瘍の体積は、主軸の長さ×縦軸の長さ2×π/6の式により計算した(McPhillips, et al, Br. J. Cancer, 85, 1753-1758, 2001)。スチューデントt-テストで統計的な分析を行なって腫瘍体積の差を評価した。統計学的有意性はP<0.05と定義された。
【0081】
その結果、3種のhVEGF siRNAを処理した場合は全て対照群(即ち、スクランブルRNA-PEG/PEI及びPBS溶液)に比べて多様な程度の腫瘍成長遅延の効果を示した(図14及び図15)。3種のsiRNA剤形のうちhVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルはhVEGF siRNA/PEI複合体に比べて大きい程度に腫瘍の成長を遅延させた。未変形siRNAも腫瘍内の注射部位領域である程度の遺伝子サイレンシング効果を示した。38日後、PBS処理された対照群の体積を100%にしたときのsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル、siRNA/PEI、未変形siRNAの相対体積比はそれぞれ13.3%、32.8%、及び55.4%であった。
実施例12. 腫瘍内hVEGFタンパク質及びmRNAの量の定量
【0082】
固形腫瘍部位でのhVEGFの量を測定するため、siRNAを10日間処理してから3日後に固形腫瘍を収集した。腫瘍の重さを測ったあと均質器(Kinematica AG, Switzerland)を利用してPBS内で腫瘍を均質化させた。組織均質液を4℃、3,000rpmで5分間遠心分離し、追加分析のため上澄み液を保管した。hVEGFの量をELISA(Quantikine(登録商標)hVEGF免疫分析キット、R&D Systems、Minneapolis、MN)を利用して決定した。
【0083】
その結果、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル(N/Pの割合=16)は、hVEGF siRNA/PEI複合体に比べて有意味な程度にhVEGFの発現をより多く抑制した(図16)。前記高分子電解質ミセル、siRNA/PEI複合体及び未変形siRNAは、対照群のPBS投与群(100%)に比べてhVEGFの量がそれぞれ74.8%、36.3%及び20.0%減少した。これに対して、スクランブルRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルはhVEGFの発現を抑制しなかった。
【0084】
次に、hVEGF mRNAの腫瘍内濃度を決定するため、RNeasy(登録商標)Mini Kit(Qiagen, Valencia, CA)を利用して製造社の指針に従い腫瘍組織からRNA総量を分離した。SuperScriptTMIII One-Step RT-PCRキット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて半-定量RT-PCRを行なった。前記RT-PCRは、下記の熱循環条件で行なった: cDNA合成、55℃で25分間1回反復; 変性、94℃で2分間1回反復; PCR増幅、94℃で20秒間、60℃で30秒間及び72℃で30秒間26回反復; 最終伸張、70℃で5分間1回反復。hVEGF及びヒトβ-アクチンを検出するためのPCRプライマーはバイオニア社(大田、大韓民国)から購入した。前記PCR産物を0.8%アガロースゲル電気泳動で分析し、EtBr(ethidium bromide)で染色して視覚化した。
【0085】
その結果、腫瘍内hVEGF mRNAの濃度はhVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの処理により完全に抑制された(図17)。完全なsiRNA及びsiRNA/PEI複合体はhVEGF mRNAの濃度を僅かに減少させ、配列が一致しないsiRNA高分子電解質複合体ミセルは全く減少させなかった。このような結果は、高分子電解質複合体ミセルが広く用いられているsiRNA/PEI複合体に比べて生体内でhVEGFの発現を抑制させるのに明らかに利点があることを示す。
実施例13. 免疫組織化学染色及び腫瘍内微細血管の密度分析
【0086】
腫瘍を持っているマウスを28日目に犠牲させたあと、免疫組織化学染色を行なった。固形腫瘍部位を収集したあと、10%リン酸塩-緩衝ホルムアルデヒド溶液に固定してパラフィン処理した。パラフィン処理された腫瘍組織を3μm厚さの切片に切断したあと、Von Willebrand因子(Factor VIII)に対する抗体を利用して染色した。前記切片等をキシレンでパラフィン除去したあと、エタノール(100%、95%、70%、及び50%)内で水化させ、最終的にPBS内に浸漬させた。エピトープ回復(epitope retrieval)及び免疫染色のための前処理は、自動化免疫染色器(Ventana ES, Ventana Medical Systems, Tucson, AZ)を利用して行った。以後、水化された切片をプロテアーゼ2(20μg/ml)で4分間処理して酵素-誘導性エピトープ回復を行なった。前記切片をマウス因子VIIIを認識する1:100に希釈させた1次抗体(rabbit monoclonal IgG, Dako Cytomation, Carpinteria, CA)で室温で30分間培養し、以後ビオチン標識された抗-ウサギIgG(1:300希釈、Sigma, St. Louis, MO)で室温で30分間培養した。微細血管の発色検出は、IView DAB検出キット(Ventana Medical Systems)を用いて製造社の指針に従い行なった。前記組織切片をヘマトキシリン(Ventana Medical Systems)を利用してカウンター染色させたあと、50%、70%、95%及び100%のエタノール濃度勾配下で脱水させた。
【0087】
腫瘍内微細血管の密度を決定するため、染色された切片内の独立的な5箇所の部位(顕微鏡領域: 2.3mm×2.3mm、6.9mm2)を無作為に選択し、これら領域のイメージをCCDカメラを取り付けた位相差顕微鏡下で100倍率で確認した。因子VIII-陽性微細血管を選別された領域から計数し、平均腫瘍内微細血管の密度を下記式により計算した: 微細血管の密度(因子VIII-陽性血管の数/mm2)=因子VIII-陽性血管の数×6.9。PC-3腫瘍異種移植部位での微細血管の形成は、内皮細胞に対するマーカーのvon Willebrand factor抗体(因子VIII)で染色して視覚化した。
【0088】
その結果、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル(N/Pの割合=16)で処理された群の場合、対照群に比べて単位面積当たりの腫瘍内微細血管の数が著しく減少した(図18)。このような結果は、腫瘍内血管形成の活性は固形腫瘍部位でのhVEGFの量に主に依存するとのことを示す。したがって、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルにより誘導されたRNAi-媒介性hVEGF発現の抑制は、腫瘍内新血管の形成を効果的に減少させることにより腫瘍の成長を有意味に遅延させるとのことを確認した。
実施例14. 動物モデルでhVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの全身投与による癌細胞成長抑制確認
【0089】
siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの全身投与による抗癌効果を評価するため、PC-3腫瘍が異種移植されたヌードマウスに5回(第1日、第4日、第10日、第18日及び第28日)に亘って尾静脈を通して注射した。このとき、1回投与時ごとに20μgのsiRNAを単一容量で静脈投与した。
【0090】
その結果、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル(N/Pの割合=16)を全身投与した場合、対照群siRNA剤形と比べるとき腫瘍の成長を効果的に減少させた(図19)。さらに、腫瘍内hVEGFの量を確認した結果、減少されたhVEGFの発現が高分子電解質複合体ミセル処理の異種移植されたPC-3腫瘍で主に発生した(図20及び図21)。このような結果は、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルがさらに長い期間の間血管を循環しながらEPR(enhanced permeation and retention)効果により腫瘍部位でさらに効果的に蓄積されるということを示す。
【産業上の利用可能性】
【0091】
前記で検討してみたように、本発明のsiRNAと親水性高分子との間の接合体、及びこれから形成された高分子電解質複合体ミセルは、siRNAの生体内安定性を向上させることにより細胞内に治療用siRNAを効率的に伝達することができ、比較的に低い濃度の投与量でsiRNAの活性を表わすことができるので、癌及び他の感染性疾患のためのsiRNA治療用道具だけでなく、新しい形態のsiRNA伝達システムとして生命工学のための基礎研究と医学産業上で非常に有用に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、細胞内分解性結合の二硫化結合を含むsiRNAと親水性高分子のPEGとの間の接合過程を簡単に示した模式図である。
【図2】図2は、siRNA高分子電解質複合体ミセルの概念を簡略的に示した模式図である。
【図3】図3は、生分解性二硫化結合を含むsiRNAと親水性高分子との間の接合体と、変形されていない形態のsiRNAを逆相(reversed phase)HPLCを用いて分析したクロマトグラムである。
【図4】図4は、細胞内環境と同じ10mM濃度のグルタチオン環境下で生分解性二硫化結合を含むsiRNAと親水性高分子との間の接合体の二硫化結合分解能を示す電気泳動写真である。
【図5】図5は、siRNAと癌細胞選択性リガンド(folate)が取り入れられた親水性高分子のPEGの間の非分解性結合を取り入れた接合体の形成過程を簡単に示した模式図である。
【図6】図6は、siRNA-PEGとカチオンペプチドKALAによる高分子電解質複合体ミセルの粒子の大きさを動的光散乱法を介し測定した結果を示すグラフである。
【図7】図7は、元来の形態のsiRNAと親水性高分子のPEGが取り入れられたsiRNA及びsiRNA-PEG/KALAにより製造された高分子電解質複合体ミセルの3種類の形態の伝達体に対する血液内安定性の評価のため、血清タンパク質が存在する環境下で時間に伴うsiRNAの分解程度を示す電気泳動写真である。
【図8】図8は、生分解性二硫化結合を含むhVEGF siRNA-PEG接合体とカチオン性ペプチドのKALAとの間の相互作用により生成された高分子電解質複合体ミセルが、前立腺癌細胞株であるPC-3細胞の血管内皮細胞成長因子の発現を抑制する程度を示すグラフである。
【図9】図9は、生分解性二硫化結合を含むhVEGF siRNA-PEG接合体とカチオン性ペプチドのKALAとの間の相互作用により生成された高分子電解質複合体ミセルが、前立腺癌細胞株であるPC-3細胞が移植された動物モデルで移植された腫瘍の成長を阻害する程度を示すグラフである。
【図10】図10は、(a) 未変形(naked)siRNA、(b) siRNA-PEG接合体、及び(c) siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの安定性を示す電気泳動写真であって、各サンプル等は50% FBSを含む培地で37℃で培養された。
【図11】図11は、siRNA/PEI複合体及びsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルで処理されたPC-3細胞で、N/P割合(A)及びsiRNA濃度(B)に伴うVEGF遺伝子発現の抑制程度を示すグラフである。
【図12】図12は、siRNA/PEI複合体及びsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルで伝達感染したPC-3細胞で、10% FBSがVEGF遺伝子サイレンシングに及ぶ影響を示すグラフである。
【図13】図13は、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルによりPC-3細胞内でVEGF mRNAの量が減少することを示すRT-PCT電気泳動写真である。レーン1 : 未処理、レーン2 : VEGF siRNA/PEI複合体、レーン3 : VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル、レーン4 : GFP siRNA/PEI複合体、レーン5 : スクランブルsiRNA/PEI複合体レーン6 : スクランブルsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル。ヒトβ-アクチンが対照群に用いられた。伝達感染は10% FBSを含む培地で行なわれた。
【図14】図14は、多様なVEGF siRNA剤形を腫瘍内に注入した後の抗癌効果を示すグラフである。
【図15】図15は、PC-3腫瘍を移植したマウスの腫瘍内に(a) PBS、(b) スクランブルsiRNA-PEG/PEI、(c) VEGF siRNA、(d) VEGF siRNA/PEI、及び(e) VEGF siRNA-PEG/PEIを注入した後の抗癌効果を示す写真である。
【図16】図16は、多様なsiRNA剤形で処理した後の腫瘍内VEGFタンパク質の量を示すグラフである。
【図17】17は、多様なsiRNA剤形で処理した後の腫瘍内VEGF mRNAの量をRT-PCRで分析した結果を示す電気泳動写真であり、ヒトβ-アクチンが対照群に用いられた。レーン1 : 未処理、レーン2 : スクランブルsiRNA-PEG/PEI、レーン3 : 未変形VEGF siRNA 、レーン4 : VEGF siRNA/PEI、レーン5 : VEGF siRNA-PEG/PEI
【図18】図18は、PC-3細胞株に移植されたマウスの免疫組織化学染色写真であり、それぞれ(A) PBS、(B) スクランブルsiRNA-PEG/PEI、(C) 未変形VEGF siRNA、(D) VEGF 。siRNA/PEI、及び(E) VEGF siRNA-PEG/PEIで処理された場合を示し、図18のFは腫瘍内(PC-3 tumor)微細血管の分布を示すグラフである。
【図19】図19は、多様なVEGF siRNA剤形を静脈内に全身投与した後の腫瘍の体積変化を示すグラフである。
【図20】図20は、多様なVEGF siRNA剤形を静脈内に全身投与した後の腫瘍内VEGFタンパク質の量を示すグラフである。
【図21】図21は、多様なVEGF siRNA剤形を静脈内に全身投与した後の腫瘍内VEGF mRNAの量をRT-PCRで分析した結果を示す電気泳動写真であり、ヒトβ-アクチンが対照群に用いられた。レーン1 : PBS処理、レーン2 : スクランブルsiRNA-PEG/PEI、レーン3 : 未変形VEGF siRNA、レーン4 : VEGF siRNA/PEI、レーン5 : VEGF siRNA-PEG/PEI
【図22】図22は、siRNA高分子電解質複合体(A)とオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)高分子電解質複合体(B)の遺伝子阻害効果を比べたグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌及び他の感染性疾患の遺伝子治療に有用に用いられ得るsiRNA (small interfering RNA)と親水性高分子との間の接合体、及び前記接合体と多様な機能性カチオン性化合物との間のイオン結合を介し形成される高分子電解質複合体ミセル(polyelectrolyte complex micelle)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子の治療において、安全で効率的な遺伝子伝達の技術は長期間研究が続けられ、多様な遺伝子の伝達体と伝達技術が開発されてきた。特に、アデノウイルス、レトロウイルスなどのウイルスを利用した遺伝子伝達技術と、リポソームとカチオン性脂質、そしてカチオン性高分子などを用いた非ウイルス性ベクター(nonviral vector)を利用した遺伝子伝達技術等が開発されてきた。しかし、ウイルス自体を遺伝子治療剤の伝達体に利用する方法は、現在までの技術では伝達された遺伝子が宿主の染色体に移入され、宿主遺伝子の正常機能に異常をもたらすか、発癌遺伝子を活性化させないとは確信することができないという問題点がある。さらに、ウイルス遺伝子が少量でも引き続き発現されている場合自己免疫症を誘発するか、このようなウイルス伝達体から変形された形態のウイルス感染が誘発される場合、効率的な防御免疫を起こすことができないこともある。よって、ウイルス性ベクターを用いる方法の代わりにリポソームに遺伝子を融合させる方法、またはカチオンを有する脂質や高分子を利用した方法などがそれらそれぞれの欠点を改良する方向に研究されている。これら非ウイルス性ベクター等は、ウイルス性ベクターよりはその効率性において遥かに劣るが、生体内安全性と経済性を考慮してみるとき副作用が少なく、生産コストが低廉になり得るという長所がある。
【0003】
さらに、現在薬物伝達及び遺伝子伝達システムで最も重要に台頭している接近法は、標的特異的伝達性(target specific delivery)に関する部分である。薬物を生体内に直接投与することになれば、生体内全ての臓器及び細胞等が同様に薬物の攻撃を受けることにより正常細胞及び正常組織が損傷を被ることになるのは自明な事実である。これにより、現在の薬物伝達システム(DDS: Drug Delivery System)の研究方向は選択的薬物伝達及び遺伝子伝達のための技術の開発にある。即ち、葉酸(folate)、ガラクトース(galactose)、抗体(antibody)などのような代表的な組織/細胞特異的リガンドを薬物に直接取り入れるか、または薬物の伝達体に接合させて伝達することにより、伝達効率を極大化して正常細胞に及ぶ副作用を最小化する努力を傾けている。このような組織/細胞特異的リガンドを遺伝子治療剤の開発のための伝達体の製造に利用することにより、細胞内伝達効率を極大化することができるものと期待される。
【0004】
ミセルとは、親水性と疎水性の性質を有する物質のうち親水性と疎水性が特定の割合で結合されるとき、水溶液上で熱力学的安定性によって自然に自己組立構造が成り立つ物質を意味する。水溶液上で自己組み立ててミセルを形成することができる物質の内部は疎水性性質を有しているので難溶性薬物を容易に捕獲することができ、表面は親水性性質を有するので難溶性製剤の可溶化、薬物伝達担体などに用いられる。このような疎水性の内部と、これを取り囲む親水性表面による水溶液上でのミセルの安定化に対する概念は、疎水性相互作用だけでなく、相違する電荷を有する高分子電解質の間の相互作用まで広げて適用することができる。例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、以下、「PEG」と略称する)を接合させた相違する電荷を有する高分子電解質等は、相互間の相互作用により自発的に形成されるミセル構造を有する複合体を形成し、これを高分子電解質複合体ミセルという(Kataoka K. et al., Macromolecules, 29, 8556-8557, 1996)。これら高分子電解質複合体ミセル等は、薬物伝達運搬体に用いられる他のシステム、すなわち微小球体(microsphere)、ナノ粒子(nanoparticle)などに比べてその大きさが極めて小さいながらも分布が非常に一定であり、自発的に形成される構造であるので、製剤の品質管理及び再現性の確保が容易であるという長所がある。
【0005】
生体内に薬物を伝達するための伝達体に用いられる高分子は、生体適合性を有していなければならず、このような条件を満足させる高分子には代表的にPEGがある。PEGは、米国食品医薬品安全庁(FDA)の承認を受け、長期間タンパク質の特性改善、高分子の表面改質または遺伝子伝達に広範囲に亘って用いられている。PEGは、親水性であり自らの毒性が殆ど表れず、生体内で免疫反応を殆ど起こさない生体適合性ポリマーである。さらに、PEGで表面の性質を改質することによりタンパク質の吸着を大きく低減させることもできる。
【0006】
一方、siRNAは最近動物細胞で特定遺伝子の発現を阻害させるのに卓越な効果を表わすことが明らかになり遺伝子治療剤として脚光を浴びている物質であって、これらの高い活性と精緻な遺伝子の選択性により、去る20年間研究され現在治療剤に活用中のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)を取り替える治療剤として期待されている。siRNAは、19個から23個程度のヌクレオチドで構成された短い二本鎖のRNAストランド(strand)であり、これらと塩基配列が相補的な治療しようとする遺伝子のmRNAを標的に定め遺伝子発現を抑制させる。
【0007】
しかし、siRNAは安定性が低いため生体内で短時間に分解されてしまうので、該治療効率が急激に低下することになり、高価のsiRNAの投与量を高くしなければならず、siRNAが有するアニオン性により同じ負電荷を含む細胞膜を容易に透過するのが困難であるので、結果的に細胞内への伝達性が低下することになるという問題点がある(Celia M. & Henry, Chemical and Engineering News December, 22, 32-36, 2003)。さらに、たとえsiRNAが二本で構成されてはいるものの、RNAを構成するリボース糖の結合はDNAを構成するジオキシリボース糖の結合に比べて化学的に非常に不安定であるため、大部分が生体内で半減期が30分内外で速やかに分解されてしまう。
【0008】
最近は、siRNAに幾多の作用基を取り入れてこれらを分解酵素から保護し安定性を向上させようとする試みをしているが(Frank Czauderna et al., Nucleic Acids Research 31, 2705-2716, 2003参照)、現在までsiRNAの安定性確保及び効率的な細胞膜透過性のための技術は開発段階にあると言える。さらに、siRNAの治療効果を得るため、これらの血液内での不安定性を考慮して単に高濃度のsiRNAだけを継続的に注入する方法を用いているが、その効率が低いものと知られており、経済的な側面でも遺伝子治療剤としてsiRNAを利用するためにはこれらの細胞内伝達が容易な新しい伝達体製造の技術の開発が必然的に求められると言える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような従来の技術上の問題点を解決するため案出されたものであり、本発明の目的は、siRNAの細胞内伝達効率性を向上させるため、siRNAのセンスストランド或いはアンチセンスストランドの末端に生体適合性高分子の親水性高分子を分解性または非分解性結合を利用して接合させた接合体を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記接合体とカチオン性化合物を相互作用させて形成される高分子電解質複合体ミセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0012】
前記の目的を達成するため、本発明はsiRNAと親水性高分子を共有結合で連結させた下記構造のsiRNAと親水性高分子との間の接合体を提供する。
【0013】
P-X-Y
前記で、Pは親水性高分子で、Xはリンカーが媒介されていない共有結合またはリンカーが媒介された共有結合であり、YはsiRNAを表わす。
【0014】
本発明の接合体において、前記siRNAのオリゴストランドは分子量10,000乃至30,000の間で選択されるのが好ましい。siRNAオリゴストランドが前記範囲の分子量を有する場合、19乃至30個、好ましくは19乃至23個のヌクレオチドを含むことになる。このとき、前記siRNAはc-myc、c-myb、c-fos、c-jun、c-raf、c-src、bcl-2またはVEGF(vascular endothelial growth factor)、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、PIGF由来のsiRNAを用いるのが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。
【0015】
さらに、前記親水性高分子は分子量1,000乃至10,000であるノニオン性高分子由来であるのが好ましい。例えば、親水性高分子にはPEG、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrolidone)、ポリオキサゾリン(polyoxazolin)などのノニオン性親水性高分子を用いるのが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。
【0016】
さらに、前記共有結合(即ち、X)は非分解性結合または分解性結合のうち何れでも構わない。このとき、非分解性結合にはアミド結合(amide bond)またはフォスフェート結合(phosphate bond)があり、分解性結合には二硫化結合、酸分解性結合、エステル結合、アンヒドライド(anhydride)結合、生分解性結合、または酵素分解性結合などがあるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0017】
本発明に係る前記接合体は、好ましくは親水性高分子とsiRNAの接合体の末端に細胞選択的リガンドがさらに取り入れられてもよい。前記細胞選択的リガンドには細胞特異的抗体、細胞選択的ペプチド、細胞成長因子、葉酸、ガラクトース、マンノース、アールジーディー(RGD)、トランスフェリンなどが用いられ得るが、必ずこれに限定されるものではない。
【0018】
さらに、本発明は親水性高分子とsiRNAの末端基を共有結合で連結し、P-X-Y形態のsiRNAと親水性高分子との間の接合体を製造する方法を提供する。前記製造方法は、好ましくは所定のsiRNAを選択する段階; 及び前記siRNAと親水性高分子を共有結合させる段階を含む。前記で、Pは親水性高分子で、Xはリンカーが媒介されていない共有結合またはリンカーが媒介された共有結合であり、YはsiRNAを表わす。
【0019】
本発明に係る接合体の製造方法は、好ましくはsiRNAが有する機能基を活性化させる段階をさらに含み、前記共有結合段階は好ましくはsiRNA上の機能基を活性化させる段階と、前記活性化された機能基を親水性高分子と共有結合させる段階を含む。このとき、活性化される機能基にはアミン基、チオール基、またはフォスフェート基であるのが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。siRNAの機能基を活性化させる物質には、好ましくは1-エチル-3,3-ジエチルアミノプロピルカルボジイミド、イミダゾール、N-ヒドロキシルスクシンイミドとジクロロヘキシルカルボジイミド、N-β-マレイミドプロピオン酸、N-β-マレイミドプロピルオキシルスクシンイミドエステル、N-スクシンイミジルピリジルジチオプロピオネートなどがある。
【0020】
siRNAと親水性高分子、例えばPEG間の接合体を形成する過程が概略的に図1に示されている。二本鎖siRNAのセンスストランド3'-末端にある1次アミン基が異質機能性(heterofunctional)結合剤、例えばN-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(以下、SPDPと略称する)の活性型NHS基と反応し2-ピリジルジスルフィドで活性化されたsiRNAが製造される。以後、末端にスルフヒドリル基が取り入れられたメトキシ-PEG(mPEG-SH)を前記2-ピリジルジスルフィドで活性化されたsiRNAに添加すれば、スルフヒドリル交換反応により二硫化結合で連結されたsiRNA-s-s-PEG接合体(siRNA-PEG)が形成される。
【0021】
さらに、本発明はsiRNAと親水性高分子との間の接合体と、カチオン性化合物との間のイオン性相互作用/結合(ionic interaction)により形成される高分子電解質複合体ミセルを提供する。前記カチオン性化合物には、カチオン性ペプチド、カチオン性脂質またはカチオン性高分子などがあるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0022】
前記で、カチオン性ペプチドはKALA(lysine-alanine-leucine-alanine)、ポリリジン(polylysine)またはプロタミン(protamine)などを用いるのが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。前記カチオン性脂質はジオレイルホスファチジルエタノールアミン、またはコレステロールジオレイルホスファチジルコリンなどを用いるのが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。前記カチオン性高分子はポリエチレンイミン(polyethylene imine、以下「PEI」と略称する)、ポリアミン、ポリビニルアミンなどを用いるのが好ましいが、必ずこれに限定されるものではない。
【0023】
さらに、本発明は前記siRNA-親水性高分子接合体を準備する段階と、前記siRNA-親水性高分子接合体とカチオン性化合物を混合する段階とを含む高分子電解質複合体ミセルの製造方法を提供する。
【0024】
本発明に係る高分子電解質複合体ミセルの製造方法は、siRNAを生体適合性親水性高分子に共有結合させた接合体を多価カチオン高分子、脂質またはペプチドなどと混合させたあと、イオン相互作用により形成することができる。このように製造されたsiRNA-親水性高分子接合体と高分子電解質複合体ミセルは、siRNAの細胞内伝達を向上させ、これを疾病モデルの治療の目的に応用することが可能である。より具体的な接合体の合成と高分子電解質複合体ミセルの形成、その特徴、細胞伝達効率及び治療遺伝子の疾病モデルの治療効果は後述する実施例でより詳しく説明する。
【0025】
さらに、本発明は前記高分子電解質複合体ミセルを準備する段階と、前記高分子電解質複合体ミセルを動物の体内に投入する段階とを含むことを特徴とする遺伝子治療方法を提供する。前記動物は特に限定されるものではないが、ヒトに適用されるのが好ましい。しかし、ヒトを除いた他の動物にも同様に適用され得るのは自明である。
【0026】
さらに、本発明は前記siRNA-親水性高分子接合体または高分子電解質複合体ミセルを有効量含む薬剤学的組成物を提供する。
【0027】
本発明に係る組成物は、投与のため前記記載の有効成分以外に追加的に薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含んで製造することができる。薬剤学的に許容可能な担体は、本発明の有効成分と両立可能でなければならず、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれら成分のうち1成分以上を混合して用いることができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。さらに、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形に製剤化することができる。さらには、当分野の適正な方法で、またはRemington's Pharmaceutical Science(最近版)、Mack Publishing Company、Easton PAに開示されている方法を利用し各疾患に応じて、または成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0028】
本発明に係る薬剤学的組成物は、通常の患者症侯と疾病の深刻度に基いて本技術分野の通常の専門家が決定することができる。さらに、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、注射剤、
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、シロップ剤などの多様な形態に製剤化することができ、単位-投与量または多-投与量容器、例えば密封されたアンプル及び瓶などで提供することもできる。
【0029】
本発明に係る薬剤学的組成物は、経口または非経口投与が可能である。本発明に係る薬剤学的組成物の投与経路はこれらに限定されるものではないが、例えば、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、硬皮、皮下、腹腔内、腸管、舌下または局所投与が可能である。
【0030】
このような臨床投与のため、本発明に係る薬剤学的組成物は公知の技術を利用して適した剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与時には不活性希釈剤または食用担体と混合するか、硬質または軟質ゼラチンカプセルに密封されるか、または錠剤に圧形して投与することができる。経口投与用の場合、活性化合物は賦形剤と混合され摂取型錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、ウェハーなどの形態で用いられ得る。さらに、注射用、非経口投与用などの各種の剤形は当該技術分野の公知の技法、または通用される技法に従い製造することができる。本発明の組成物の投与量は患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度などによってその範囲が多様であり、本技術分野の通常の専門家が容易に決定することができる。
【0031】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0032】
本発明に係るsiRNAと親水性高分子との間の接合体は、親水性高分子とsiRNAの末端基を共有結合で連結させた形態であって、下記のような構造を有する。
【0033】
P-X-Y
前記で、Pは親水性高分子で、Xはリンカーが媒介されていない共有結合またはリンカーが媒介された共有結合であり、YはsiRNAを意味する。
【0034】
前記接合体のうち親水性高分子(P)は、好ましくは分子量1,000乃至10,000であるノニオン性高分子から由来される。このようなノニオン性高分子の例にはPEG、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリンなどのノニオン性親水性高分子があるが、必ずこれに限定されるものではない。前記で分子量が1,000乃至10,000の範囲の場合、特にカチオン性高分子とsiRNAによって形成された複合体の血液内安定性を向上させるのに適する。
【0035】
前記親水性高分子の機能基は、必要に応じて他の機能基に置き換えされても構わない。例えば、ヒドロキシ基(-OH)はスルフヒドリル基(-SH)、カルボキシル基(-COOH)またはアミン基(-NH2)などの機能基で適切に置き換えされ得る。前記親水性高分子のうち特にPEGは、多様な分子量と作用基を取り入れることができる末端を有しており、生体内親和性が良く免疫反応を誘導せず、さらに水に対する溶解度を増加させて生体内での遺伝子伝達の効率を増加させるので、本発明の接合体の製造に好適である。親水性高分子の接合時に、例えば、PEGはsiRNAのRNAi効果の減少を最少化するため、siRNAセンスストランドの3'末端に結合させるのが好ましい。
【0036】
前記接合体のうちsiRNAのオリゴストランドは、好ましくは分子量10,000乃至30,000の間で選択される。siRNAの分子量が10,000乃至30,000の範囲の場合、siRNAは固有の遺伝子阻害機能を有する19乃至30個のオリゴヌクレオチドを有する二本のオリゴマーの形態を有することができ、好ましくは19乃至23個のオリゴヌクレオチドを有する。本発明で使用可能なsiRNAは、治療用または研究用に用いられているものである限り特に限定されることはなく、例えばc-myc、c-myb、c-fos、c-jun、c-raf、c-src、bcl-2、またはVEGF、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、PIGFなどのように遺伝子治療または研究のため用いられるか、用いられる可能性のある如何なる遺伝子由来のsiRNAも採用され得る。
【0037】
本発明の好ましい実施例では、血管内皮細胞成長因子(vascular endothelial growth factor)を抑制するためhVEGF siRNAを用いた。VEGFは、血管内皮細胞の表面に存在するVEGF収容体と結合して内皮細胞の成長、移動を促進することにより新しい血管の生成を促進する役目を果たす。特に、癌細胞の成長や転移はこのような血管の新生と密接な関係があるので、血管の新生を抑制して癌細胞の成長を阻害する方法が新しい癌治療方法の一つとして注目されている。
【0038】
前記siRNAのセンスまたはアンチセンス末端基は、他の機能基に置き換えされ得る。例えば、機能基の例として3'のヒドロキシ基はアミン基、スルフヒドリル基、またはフォスフェート基などに置き換えされ得る。
【0039】
前記本発明に係る接合体の構造のうちXは、親水性高分子(P)とsiRNAから由来された残基(Y)を共有結合で連結させるリンカーまたは単純共有結合を表わす。結合を媒介するリンカーは、親水性高分子とsiRNAから由来された残基Yの末端基を共有的に結合させ、必要に応じて所定の環境で分解の可能な結合を提供する限り特に限定されるものではない。よって、前記リンカーXは接合体の製造過程中siRNA及び/または親水性高分子を活性化するため結合させる如何なる化合物も含むことができる。例えば、3'末端基がアミン基に置き換えされたsiRNAに活性化物質のSPDPを結合させ末端のアミン基がピリジルジチオール基に活性化されたsiRNAを原料に用い、前記親水性高分子部Pがスルフヒドリル基に置き換えされたPEG(SH-PEG)を用いる場合、接合体構造内の前記Xは-NH-CO-CH2-CH2-S-S-となる。このように、前記Xは接合体の製造過程で必要に応じて反応物の親水性高分子とsiRNAの活性化過程で取り入れられる反応後の結合内残留部(リンカー)であるか、または活性化過程を要しない場合、親水性高分子とsiRNA機能基との間に形成される特別なリンカーのない単純共有結合であり得る。前記のようなXはsiRNAが伝達される標的によって異なることがあり、非分解性結合または分解性結合のうち何れでも構わない。このとき、非分解性結合にはアミド結合、フォスフェート結合などがあり、分解性結合には二硫化結合、酸分解性結合、エステル結合、アンヒドライド結合、生分解性結合、または酵素分解性結合などがあるが、必ずこれに限定されるものではない。好ましくは、Xは二硫化結合である。
【0040】
siRNAが長い鎖ヌクレオチド、例えば分子量30,000水準では親水性高分子が結合された場合も二本のsiRNAオリゴマーがこれらの遺伝子阻害作用に関与する生体内酵素複合体のRNA-誘導性サイレンシング複合体(RISC)と安定的に結合することができる。普通の19個のヌクレオチドである10,000水準のsiRNAの場合、遺伝子阻害作用を助ける細胞内酵素複合体と結合するとき末端に取り入れられた親水性高分子により構造的安定性が低下することがあるので、生体内でまたは細胞内でこれら接合体が分解できる結合を取り入れるのが好ましい。よって、細胞質内に過量存在するグルタチオン(glutathione)により細胞内で分解される二硫化結合、細胞内に流入されたあと酸性を示す環境で効果的に分解できる酸分解性結合、細胞内に流入されたあと細胞内で効果的に分解可能なエステル結合、アンヒドライド結合と特定の細胞の周辺に存在する酵素等によって細胞内に流入される直前に分解できる酵素分解性結合などを取り入れるのが好ましい。
【0041】
siRNAの構造を化学的に変形させる場合、変形される位置に従いRNAi(RNA interference)活性が10乃至50%程度減少し、さらにある程度の細胞毒性を起こすとのことが知られている(M. Amarzguioui, et al., Nucleic Acids Res.,31, 589-595, 2003)。ここに、親水性高分子、例えばPEGと接合体を形成するに伴い引き起こされ得るRNAi活性の減少を最少化するため、siRNAと親水性高分子との間に分解性二硫化結合を取り入れて細胞内のような還元性環境下で完全な siRNAを放出することができ(図4を参照)、より好ましくは親水性高分子をセンス鎖の3'末端に接合させることができる。細胞内環境ではグルタチオンジスルフィド(GSSG)リダクターゼの存在のため細胞内グルタチオンの98%以上が還元されたチオール形態(GSH)を維持する(W Wang., et al., Pharmacol. Rev., 50, 335-356, 1998)。したがって、siRNAと親水性高分子との間の二硫化結合は、細胞内に存在するGSHによって直ちに分解され完全なsiRNAを生産することができるようになる(図10を参照)。分解されたsiRNA分子は、細胞質内でRNA-誘導性サイレンシング複合体(RISC)タンパク質と相互作用して一連のRNAi過程が起きることになる。このような観点で、完全なsiRNAが細胞内で再生産されればRNAi活性及び特異性を十分維持することができるようになるとの長所がある。siRNAを親水性高分子、例えばPEGに接合させる場合は、構造的な側面で二硫化結合を取り入れるのがより好ましいが、その理由はセンス鎖の3'末端に取り入れられたPEGが細胞内でsiRNAと分離されsiRNAとRISCとの間の複合体の形成を妨げないはずであるためである。
【0042】
一方、本発明者等はアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)とPEGを非分解性結合で接合させアンチセンスODN-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルを製造したことがある(JH Jeong, et al., Bioconjug. Chem., 16, 1034-1037,2005)。このようなアンチセンスODNはsiRNAとは非常に異なる遺伝子抑制メカニズムを有するが、ODNはsiRNAとは別にタンパク質複合体と結合することがなく直接的に標的mRNA配列に結合してこれを分解させるので、ODNが親水性高分子から必ず分離される必要はない(A. Kalota, et al., Cancer Biol. Ther., 3, 4-12, 2004)。一方、siRNAは親水性高分子が接合された場合、siRNAがRISCと複合体を形成するに際し相当の立体障害(steric hindrance)を与えることがあるので、siRNA活性を十分表わすためにはsiRNAが親水性高分子から分離されるのが好ましい。したがって、PEGとアンチセンスODNの共有結合の場合、分解性結合の取入れが絶対的ではない反面、siRNAの場合、PEGの導入時に分解性結合を取り入れる過程が重要に認識される。さらに、siRNAの場合、アンチセンスODNに比べて高い遺伝子選択性を有するので他の遺伝子を非選択的に阻害する副作用が減少し、アンチセンスODNの1/10に該当する少ない投与量だけでも特定の標的遺伝子だけを効果的に阻害することがある(図22を参照)。投与量が少なくなれば、siRNA高分子電解質複合体ミセルを薬学的組成物の形態で実際の臨床に適用するとき体内に及ぶ負担を軽減させることができるだけでなく、費用の側面でも大きい長所がある。併せて、ODN由来の高分子電解質複合体の場合は単一鎖構造のDNAを用いる反面、本発明のsiRNA由来高分子電解質複合体では二本鎖構造のRNA分子を用いたので、その安定性においてもODN-PEG高分子電解質複合体より遥かに優れる。したがって、本発明のsiRNA高分子電解質複合体はDNAに基いた従来のODN高分子電解質複合体に比べて標的遺伝子mRNAに対する選択性、投与量及び安定性の側面で非常に優れた効果を有する。
【0043】
一方、前記構造の本発明に係るsiRNAと親水性高分子との間の接合体は、その末端部に細胞選択的リガンド(cell-specific ligand)がさらに備えられてもよい。前記リガンドには、好ましくは細胞特異的抗体、細胞選択的ペプチド、細胞成長因子、葉酸、ガラクトース、マンノース、アールジーディー(RGD)、トランスフェリンなどが用いられ得る。これらリガンドは二硫化結合、アミド結合、エステル結合などの結合を介し前記接合体の末端、好ましくはPEG末端部のOH基に取り入れられ得る。
【0044】
さらに、本発明は親水性高分子とsiRNAの末端基を共有結合で連結してP-X-Y形態のsiRNAと親水性高分子との間の接合体を製造する方法を提供する。前記で、Pは親水性高分子で、Xはリンカーが媒介されていない共有結合またはリンカーが媒介された共有結合であり、YはsiRNAを意味する。
【0045】
前記接合体の製造方法において、siRNAまたは親水性高分子が有する機能基を活性化する段階をさらに含むのが好ましい。前記で、活性化される機能基は、好ましくはアミン基、チオール基またはフォスフェート基である。前記機能基を活性化させる物質は特に限定されることはないが、好ましくは1-エチル-3,3-ジエチルアミノプロピルカルボジイミド、イミダゾール、N-ヒドロキシルスクシンイミドとジクロロヘキシルカルボジイミド、N-β-マレイミドプロピオン酸、N-β-マレイミドプロピルオキシルスクシンイミドエステル、N-スクシンイミジルピリジルジチオプロピオネートなどがある。
【0046】
親水性高分子とsiRNAとの間の反応は特に限定されるものではなく、通常的には常温での遂行が可能であり、大凡24乃至48時間の間反応させて得られ得る。反応に求められる前記各反応物の添加比は特に限定されることはなく、親水性高分子とsiRNAがモル比(%)で10:90乃至90:10で添加することができ、これを介しsiRNAの親水性高分子の導入率を調節することができる。
【0047】
さらに、本発明に係る前記親水性高分子とsiRNAとの間の接合体は、高分子電解質複合体ミセルの構成成分に用いられ得る。高分子電解質複合体ミセルとは、ノニオン性親水性高分子と結合されたsiRNAと、これと逆のイオンを有する高分子(例えば、カチオン性化合物)との間の相互作用により自己組み立てられて形成される小さい集合体であって、100乃至200nm程度の大きさと構造を有する(図2を参照)。ミセルの中心部にはsiRNAとカチオン性化合物との間のイオン性結合(ionic interaction)を介し形成された核が存在し、これら粒子の外部表面膜には親水性高分子が取り囲んだ構造を形成することになる。
【0048】
本発明において、前記高分子電解質複合体ミセルを形成するため用いられるカチオン性化合物にはKALA、ポリリジンまたはプロタミンなどのカチオン性ペプチド、PEI、ポリアミン、ポリビニルアミンのようなカチオン性高分子、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、またはコレステロールジオレイルホスファチジルコリンなどのカチオン性脂質を挙げることができる。
【0049】
このようなミセルの製造過程は次の通りである。siRNA-親水性高分子接合体をリン酸緩衝溶液などに希釈した後、これにカチオン性化合物を添加して水溶液上で高分子電解質複合体ミセルを形成し、ミセルの安定化のため数十分間常温に放置する。このとき、カチオン性化合物の添加量は、用いられるカチオン性化合物の正電荷とsiRNAの負電荷の電荷比が1:1(+/-=1/1)乃至24:1(+/-=24/1)になるように調節するのが好ましい。
【0050】
本発明の好ましい実施例では、生体内でsiRNA-PEG接合体の細胞内伝達を容易にするための高分子電解質複合体ミセルを形成するため、カチオン性ペプチドのKALAを利用して高分子電解質複合体ミセルを形成した。動的光散乱法(dynamic light scattering (DLS) method)を介しsiRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの水溶液上での大きさを測定した結果、150nm程度の大きさの非常に狭い分散度を有することが分かる(図6を参照)。
【0051】
前記siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの生体内条件での安定性を評価するため、変形されないsiRNAと合成されたsiRNA-PEG接合体の安定性を比較して調査した結果、siRNAにPEGが取り入れられた場合24時間まで安定性を示しており、高分子電解質複合体ミセルの構造を成したときにはその安定性が急激に向上することを確認することができる(図7を参照)。
【0052】
本発明の好ましい実施例では、前立腺癌細胞株のPC-3細胞を利用してVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルがVEGFの発現に及ぶ影響を確認した結果、VEGF siRNA/KALAとVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルを処理した場合、血管内皮細胞成長因子の発現を大きく抑制することを観察することができた(図8を参照)。
【0053】
さらに、本発明の好ましい実施例でVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの生体内での癌細胞株の増殖阻害活性度を調べるため、ヒト由来の癌細胞が移植された実験用マウスにsiRNA伝達体をマウスの血管を通じて投与したあと、移植された癌細胞株の増殖程度を観察した結果、siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの場合、動物モデルに移植された癌細胞株の成長を大きく抑制することを確認した(図9を参照)。
【0054】
本発明の他の実施例によれば、siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルはヌクレアーゼ媒介性siRNA分解に対する強力な抵抗性を示し(図10を参照)、試験管内でヒト前立腺癌細胞株(PC-3)のVEGF遺伝子の発現を効果的に抑制した(図11を参照)。VEGF遺伝子の抑制効果は、N/P割合を増加するかsiRNAの投与量が増加する場合一層確実に表れた。さらに、siRNA-PEG高分子電解質複合体ミセルは血清の存在可否に係わりなく同様にVEGF遺伝子の発現を抑制し(図12を参照)、高分子電解質複合体ミセルによって誘発されるVEGF遺伝子の抑制は非常に配列-特異的な様相で表れた(図13を参照)。
【0055】
本発明のさらに他の実施例では、動物モデルでsiRNAが腫瘍の成長に及ぶ影響を確認した。その結果、VEGF siRNAを処理した場合は全て対照群に比べて多様な程度の腫瘍成長遅延の効果を表わした。この中でも、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルは、VEGF siRNA/PEI複合体に比べて大きい程度に腫瘍の成長を遅延させた(図14及び図15を参照)。
【0056】
さらに、腫瘍内VEGFタンパク質及びmRNAの量を測定した結果、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルはVEGF siRNA/PEI複合体に比べて有意味な程度にVEGFタンパク質の発現をより多く抑制し(図16を参照)、腫瘍内VEGF mRNA濃度はVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの処理により完全に抑制された。完全なsiRNA及びsiRNA/PEI複合体は、VEGF mRNA濃度を僅かに減少させ、配列が一致しないsiRNA高分子電解質複合体ミセルは全く減少させなかった(図17を参照)。このような結果は、高分子電解質複合体ミセルが、広く用いられているsiRNA/PEI複合体に比べて生体内でVEGFの発現を抑制させるのに明らかに利点があることを示す。
【0057】
生体内条件でこのようなsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの遺伝子サイレンシング効果は、次のような高分子電解質複合体ミセルの独特の構造的な特徴から由来され得る: (1) 高分子電解質複合体ミセルの表面に露出されたPEG鎖が細胞内に摂取される前に組織液におけるコロイド安定性を与える。(2) エンドサイトーシスにより細胞内に摂取されたあと細胞質内でsiRNA-s-s-PEG接合体が特異的な部位で切断される。
【0058】
本発明の他の実施例で、免疫組織化学染色を介し腫瘍内微細血管の分布を調査してみた結果、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルで処理された群の場合、対照群に比べて単位面積当たりの腫瘍内微細血管の数が著しく減少した(図18を参照)。このような結果は、腫瘍内血管形成の活性は固形腫瘍部位におけるVEGFの量に主に依存するということを示す。よって、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルにより誘導されたRNAi-媒介性VEGF発現の抑制は、腫瘍内新血管の形成を効果的に減少させることにより、腫瘍の成長を有意味に遅延させるということが分かる。
【0059】
さらに、本発明の他の実施例によれば、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルを全身投与した場合、対照群siRNA剤形と比べるとき腫瘍の成長を効果的に減少させた(図19を参照)。なお、腫瘍内VEGFの量を確認した結果、減少されたVEGFの発現が高分子電解質複合体ミセルが処理された異種移植されたPC-3腫瘍で主に発生した(図20及び図21を参照)。このような結果は、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルがさらに長い期間の間血管を循環しながらEPR(enhanced permeation and retention)効果により腫瘍部位でより効果的に蓄積されるということを示す。ナノメートル大きさの担体または高分子-接合薬剤が腫瘍部位でより緩んだ血管構造を介しより容易に蓄積されるとのことは周知の事実である。したがって、腫瘍に対するVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの受動的な標的化がこのような腫瘍成長の遅延に影響を及ぼすこともある。
【0060】
本発明では、アニオン性オリゴマーのsiRNAと親水性高分子を二硫化結合、或いは多様な形態の生分解性結合或いは非分解性結合を取り入れて接合させたハイブリッド接合体を幾多のカチオン性高分子、脂質、ペプチド等と相互作用させることにより形成される高分子電解質複合体ミセルをsiRNAの新しい細胞伝達用伝達体に用いることができる。さらに、これらsiRNA-PEG接合体に細胞に特異的に結合するリガンドを取り入れて選択的遺伝子治療の効果を増大させることができる。特に、二硫化結合により形成されたsiRNA-親水性高分子接合体とカチオン性高分子、脂質、ペプチドを利用した高分子電解質複合体ミセルを用いた場合、siRNA自体より高いsiRNAの細胞伝達効率を示し、癌細胞の治療のため標的遺伝子に利用される血管内皮細胞成長因子のVEGF siRNAを用いる場合、これら血管内皮細胞成長因子の阻害及び生体内の腫瘍の増殖を低濃度で抑制することができる。このような結果は、hVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルが血管内皮細胞成長因子の発現抑制を介した癌細胞の成長抑制において優れた抑制効果と、急激に向上した生体内安定性を有していることを示唆する。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例に基づき詳しく説明する。
但し、下記の実施例は本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の内容が下記の具現例により限定されるものではない。
実施例1. 細胞質内で自発的に分解される生分解性結合の二硫化結合を有するsiRNA-PEG接合体の合成
【0062】
以下、実施例では血管内皮細胞成長因子を抑制するhVEGF(human vascular endothelial growth factor)siRNAを用いており、hVEGF siRNAの標的配列は配列番号1に記載される塩基配列(hVEGF, 189-207 bp)を有し、hVEGF siRNAのセンス鎖は配列番号2に記載される塩基配列を有し、アンチセンス鎖はこれと相補的な配列番号3に記載される塩基配列を有する。さらに、スクランブルsiRNAのセンス鎖は配列番号4に記載される塩基配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号5に記載される塩基配列を有する。
【0063】
siRNAのセンスストランド(sense strand)の3'末端にアミン基を取り入れたsiRNA(Qiagen社)を異質二重機能(heterobifunctional)製剤であると共に分解性クロスリンカー(cross linker)であるSPDPを利用して末端のアミン基がピリジルジチオール基に活性化された(pyridyldithiol-activated)siRNA中間体を形成した。先ず、800μlの5mM phosphate buffer(pH 7.5) に溶解させたsiRNA 300μg(20nmol)が溶解されている溶液に、20mM濃度でdimethyl sulfoxide(DMSO)に溶解されているSPDP 20μlを加えて常温で30分間反応させた。前記反応物をcut-offが10,000の透析膜を利用して5mM phosphate buffer(pH 7.5)で3時間の間透析させ、反応しないSPDPを取り除いた。合成されたsiRNA-ピリジルジチオール中間体に5mM phosphate buffer(pH 7.5)に20mM濃度で溶解されているPEG-SH(分子量; 3,400、Nektar、USA)100μlを添加し、常温で18時間の間反応させてsiRNAとPEGとの間に二硫化結合を取り入れさせた後、再度cut-offが10,000の透析膜を利用して24時間の間透析し、反応しないPEGを取り除いて生分解性結合の二硫化結合を有するsiRNA-PEG反応物を得た。前記合成されたsiRNA-PEGを逆相HPLC(C-4)を介し分離した。siRNA-PEGは、100mMアンモニウムアセテート(ammonium acetate)と50%アセトニトリル(acetonitrile in 100mM ammonium acetate)の濃度勾配法を利用して分離した(図3)。
【0064】
次に、細胞内と類似する環境でsiRNA-s-s-PEG接合体のジスルフィド結合が切断される程度を評価するため、0.5μgのsiRNA-PEG接合体を10mMのグルタチオン培地で総体積25μlで培養した。切断反応は、37℃で2時間の間行なった。10μlのゲルローディングバッファー(0.25%(w/v)ブロモフェノールブルー及び40%(w/v)スクロース)を添加して反応を終了させた。切断されたsiRNAを電気泳動で確認した。その結果、siRNAはGSHの処理によりsiRNA-PEG接合体から完全な形態で切断された(図4)。これは元来の形態のsiRNAが活性の損失なくRNAi反応に参加することができることを意味する。
実施例2. 癌細胞選択性を有するリガンドの葉酸が取り入れられた非分解性結合を有するsiRNA-PEG接合体の合成
【0065】
癌細胞選択的リガンドの葉酸及び非分解性結合を通じたPEGをsiRNAに取り入れるため、siRNAセンスストランドの3'末端にアミン基(-NH2)を取り入れたsiRNAを用いた。先ず、130mg(0.3mmole)の葉酸をDMSOに溶解させたあと、DCC(dicyclohexyl carbodiimide)60mgとNHS(N-hydroxyl succinimide)34mgを投入し、常温で30分間反応させて葉酸のカルボキシル基(carboxyl group)を活性化させ、シスタミン(cystamine)34mgを投入したあと3時間の間さらに反応させた。このとき、葉酸とシスタミンの反応モル比(reaction molar stoichiometry)は2:1であった。反応物を水で透析して反応しない副産物等を取り除いたあと凍結乾燥した。葉酸-シスタミン-葉酸(cystamine-FOL2)を水とDMSOが50:50で混合された溶液に溶解させたあと、0.1M濃度のメルカプトエタノール(2-mercaptoethanol)上で遊離チオール基(free thiol group、-SH)が生成されるようにして葉酸-SH を得た。次に、300μgのsiRNAと異質機能性PEG(NHS-PEG-MAL(maleimide))200μgを10mM sodium phosphate bufferで1時間30分の間反応させてsiRNAのセンスストランド3'末端の方にPEGが取り入れられたsiRNA-PEG-MALを形成した。前記siRNA-PEG-MALが存在する溶液に準備した葉酸-SHを0.1mg添加して常温で3時間の間反応させた。反応物は、cut-off 5,000の透析膜を利用して水で透析させたあと逆相HPLC(C-4)を介しsiRNA-PEG-FOL接合体を分離した(図5)。
実施例3. siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの形成と特性化
【0066】
前記実施例1で合成、分離したsiRNA-PEG接合体を細胞伝達のための形態である高分子電解質複合体ミセルに形成するため、カチオンペプチドのKALA(Peptrone, Korea)またはプロタミン(Sigma Aldrich, U.S.A.)、カチオン高分子のPEI(Sigma Aldrich, U.S.A.)、カチオン性脂質のジオレイルホスファチジルコリン(DOPC, Nutfield, UK)などを用いた。KALAを利用した場合の例を挙げて詳しく説明すれば、先ずsiRNA-PEG接合体(50pmol)を2xリン酸化バッファー(PBS)と1:1に希釈したあと、やはりPBSに溶解させたKALAを添加して水溶液上で高分子電解質複合体ミセルを形成し、ミセルの安定化のため15分間常温で放置した。このとき、KALAペプチドの正電荷とsiRNAの負電荷の電荷比は1:1(+/-=1/1)であった。
【0067】
前記siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの水溶液上での大きさを測定するため、動的光散乱法(dynamic light scattering (DLS) method)を用いた。DLSを介した測定結果、siRNA-PEG/KALAミセルは150nm程度の大きさに非常に狭い分散度を有することが分かった(図6)。
実施例4. siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの生体内と同一の条件での安定性の評価
【0068】
変形されていない元来の形態のsiRNAに比べてPEGが取り入れられたsiRNA、またはこれらがカチオンペプチドのKALAにより高分子電解質複合体ミセルの形態になったとき、siRNAの安定性をどれほど向上させるのかの可否を確認するため、変形されていないsiRNAと前記実施例1で製造したsiRNA-PEG接合体、及び前記実施例3で製造したsiRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの3種類を、生体内条件を模倣した形態である10%のFBS(fetal bovine serum)が添加された培地でそれぞれ0、1、2、4、8、16、24、48時間の間培養したあと、元来のsiRNAに比べて分解された程度を電気泳動で検討した。
【0069】
その結果、PEGが取り入れられた場合24時間までも安定性を示しており、高分子電解質複合体ミセルの構造を成したときにはその安定性が急激に向上することを確認することができた(図7)。
実施例5. hVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルが前立腺癌細胞株の血管内皮細胞成長因子の生成に及ぶ影響
【0070】
hVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルが前立腺癌細胞株のhVEGFの発現に及ぶ影響を調べるため、ヒト前立腺癌細胞株のPC-3細胞を利用し、これら細胞株が作り出して培養液に分泌したhVEGFの量をELISA(enzyme linked immonosorbent assay)方法を利用して測定した。先ず、前立腺癌細胞株のPC-3細胞を12ウェルプレートに一ウェル当たり1×105個になるように分株して10% FBSが含まれたRPMI1640培地で24時間の間培養した。培養液を取り除いて再度培地を10%のFBSが含まれたRPMI1640に交換した。次に、前記実施例1で合成されたhVEGF siRNA-PEG 10pmolをsiRNAの負電荷と電荷比が1:1(+/-=1:1)になる正電荷のKALAペプチド溶液を混合し、常温で15分以上放置して高分子電解質複合体ミセルを形成したあと、適正濃度(10pmole)の高分子電解質複合体ミセルを予め準備した細胞株に処理して血清が含まれていない1mlのRPMI1640培地で37℃で4時間の間伝達感染させた。10% FBSが含まれたRPMI1640培地に取り替えたあと6時間の間培養した。以後、細胞内で発現が阻害されたhVEGFの量を定量するため、10% FBSが含まれたRPMI1640培地を1ml添加したあと、37℃で18時間の間放出されるhVEGFを集めてELISA方法を介しhVEGFの量を測定した。対照群にはPEGが取り入れられていないhVEGF siRNAと、siRNA-PEG接合体のみを処理したものと、siRNA/KALA複合体と、スクランブルsiRNAが含まれた高分子電解質複合体ミセル、及びGFP(green fluorescent protein)siRNAの高分子電解質複合体ミセルを処理した細胞と何も処理していないPC3細胞を用いた。
【0071】
その結果、siRNA/KALAとsiRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの場合、血管内皮細胞成長因子の発現を著しく抑制することを観察することができた(図8)。
実施例6. 動物モデルでhVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルが癌細胞成長抑制に及ぶ影響
【0072】
hVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの生体内癌細胞株の増殖阻害活性度を調べるため、前記実施例1及び実施例3で製造されたsiRNA伝達体をヒトの癌細胞が移植された実験用マウスの血管を通じて投与したあと、移植された癌細胞株の増殖程度を観察した。先ず、7-8週齢の免疫欠乏マウス(nude mouse)に5×106個の前立腺癌細胞株のPC-3細胞をわき腹側の皮下に投与したあと腫瘍の大きさが0.1cm3になるとき、hVEGF siRNA-PEG/KALA、hVEGF siRNA/KALA、スクランブルsiRNA/KALA、スクランブルsiRNA-PEGを一回に7.5μgずつ血管内に投与した。このとき、1日、10日目にそれぞれ投与し、1、3、5、7、10、12、14、18日にそれぞれ腫瘍の大きさを測定した。
【0073】
その結果、hVEGF siRNA-PEG/KALA高分子電解質複合体ミセルの場合、動物モデルに移植された癌細胞株の成長を大きく抑制することを観察することができた(図9)。
実施例7. 高分子電解質複合体ミセルの製造 (2)
siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルを製造するため、前記実施例1で製造したsiRNA-PEG接合体をPEI(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)と所定のN/P割合で混合したあと、これを室温で放置してsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルを形成した。
実施例8. siRNA-PEG接合体及びこれから形成されたミセルの血清内安定性の分析
未変形siRNA、siRNA-PEG接合体及びsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル(N/Pの割合=16)の血清内安定性を調査した。具体的に、10μgのsiRNAを含むそれぞれの剤形を50% FBS(Gibco BRL, Grand Island, NY)を含む培地で培養した。所定時間(0、1、2、4、8、16、24及び48時間)にサンプルから当量の培養液を取り除き、トリス-アセテート(TAE)バッファーでゲル電気泳動(1.2%アガロースゲル)で分析した。siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルをヘパリンナトリウム塩溶液(50mg/ml)で前処理してカチオン性PEIを取り除くことにより、非複合siRNA-PEG接合体を得た。
【0074】
その結果、未変形siRNAは血清を含む培地で8時間培養すれば、ほぼ完全に分解された(図10の(a))。一方、siRNA-PEG接合体は同一の条件下で16時間の間特別な損失がなかった(図10の(b))。siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの場合は、ヌクレアーゼにより媒介されるsiRNA分解が48時間が経過した後にも全然検出されなかった(図10の(c))。これは、PEG接合だけでもある程度まではsiRNAの構造を血清の存在下でも安定的に維持させることができるとのことを意味する。高分子電解質複合体ミセルの場合で観察されるより持続的な安定化は、外皮層のPEG鎖がヌクレアーゼがsiRNA/PEIの内部中心部に接近することを構造的に遮るので得られるものであると考えられる。
実施例9. 細胞培養及び伝達感染
【0075】
ヒト前立腺癌細胞株(PC-3)を12ウェルプレートに1.5×105細胞/ウェルの濃度で接種したあと、24時間の間付着させた。培養培地を予め暖めた血清除去培地に取り替えたあと、望むsiRNA剤形を細胞に添加して伝達感染させた。4時間経過後、伝達感染培地を血清を含む新鮮な培地に取り替えたあと6時間の間培養した。以後、前記培地を10% FBSとヘパリン(20μg/ml)を含むRPMI1640 培地(Gibco BRL, Grand Island, NY)に取り替えた。16時間後、hVEGFを含む培養培地を収集したあと遠心分離して細胞残渣を取り除いた。細胞から分泌されたVEGFの量をQuantikine(登録商標)hVEGF免疫分析キット(R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いて製造社の指針に従い決定した。
【0076】
その結果、siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルは効率的にPC-3細胞でのhVEGF発現を減少させた。siRNA/PEI複合体と比べるとき、前記siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルは低いN/P割合でhVEGFの発現をより多く抑制するものと表れた(N/P割合2及び4、図11のA)。N/P割合が16の場合、50pmolのsiRNAを含む剤形等は全てPC-3細胞からのhVEGFの分泌をほぼ完全に抑制した。前記hVEGFの発現はやはり濃度-依存的に抑制された(図11のB)。
【0077】
たとえ血清が存在しない場合は、siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル及びsiRNA/PEI複合体の間にhVEGFの発現抑制において有意な違いはなかったが、10% FBSの存在下では非常に異なるhVEGF遺伝子サイレンシング効果を示した(図12)。即ち、siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルは10% FBSの添加時に少し減少したhVEGF分泌サイレンシング効果を示す反面(14.6乃至25.9pg/mg)、前記siRNA/PEI複合体は同一の血清条件下で遥かに低い遺伝子サイレンシング効果を示した(21.2乃至91.3pg/ml)。
実施例10. RT-PCRによる定量分析
【0078】
VEGFの発現抑制が実際に細胞内hVEGF mRNAの量の減少から起因するか否かを確認するため、hVEGF mRNAの細胞内濃度をRT-PCR分析により決定した。hVEGF siRNA/PEI複合体、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル(N/Pの割合=16)、GFP siRNA/PEI複合体、スクランブルsiRNA/PEI複合体、またはスクランブルsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルに伝達感染したPC-3細胞を16時間の間培養したあとトリプシン処理して収穫した。前記で、GFP siRNAのセンス鎖は配列番号6に記載される塩基配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号7に記載される塩基配列を有する。RNA総量をRNeasy(登録商標)ミニキット(Qiagen, Valencia, CA)を利用して製造社の指針に従い分離した。SuperScriptTM III One-Step RT-PCRシステムを利用してPlatinumR Taq DNA Polymerase(Invitrogen, Carlsbad, CA)で前記抽出されたRNA総量(1μg)に対する半-定量RT-PCTを行なった。RT-PCRのための熱サイクリング条件は下記の通りである: cDNA合成、55℃で25分間1回反復; 変性、94℃で2分間1回反復; PCR増幅、94℃で20秒間、60℃で30秒間及び72℃で30秒間26回反復; 最終伸張70℃で5分間1回反復。hVEGF及びヒトβ-アクチンを検出するためのPCRプライマーはバイオニア社(大田、大韓民国)から購入した。hVEGFを検出するためのプライマーは、配列番号8及び配列番号9に記載される塩基配列を有し、ヒトβ-アクチンを検出するためのプライマーは配列番号10及び配列番号11に記載される塩基配列を有する。hVEGF及びβ-アクチンのPCR産物の長さは、それぞれ522bp及び1,126bpであった。前記PCR産物を0.8%アガロースゲル電気泳動で分析し、EtBr(ethidium bromide)で染色して視覚化した。
【0079】
その結果、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルは非常に弱いhVEGF mRNAバンドを示したが(図13、レーン3)、hVEGF mRNAと一致しないか、または無関係な配列を含むsiRNA(即ち、スクランブルsiRNA及びGFP siRNA)の場合は、伝達感染していない細胞の場合と肩を並べる程度の完全なmRNAバンド強度を示した(図13、レーン1)。これは、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルが転写後段階で非常に配列特異的な様相でhVEGFの発現を抑制することができることを意味する。
実施例11. 生体内腫瘍モデルでsiRNAの効能確認
【0080】
7週齢の雌性ヌードマウス(nu/nu)(Charles River, Wilmington, MA)のわき腹部分にヒト前立腺癌細胞株(PC-3)1.5×106細胞を皮下注入した。異種移植されたPC-3腫瘍の体積が50mm3になったとき、500pmolのsiRNAを含むsiRNA剤形(VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル(N/Pの割合=16)、hVEGF siRNA/PEI、未変形hVEGF siRNA、スクランブルRNA-PEG/PEI)をそれぞれ腫瘍内に注入した(第1日目)。モック(Mock)-処理された対照群の場合、PBSを注入した。第10日目にsiRNA剤形を再度追加注入した。このとき、腫瘍の大きさはキャリパー(caliper)を用いて垂直直径を測定することにより観察した。腫瘍の体積は、主軸の長さ×縦軸の長さ2×π/6の式により計算した(McPhillips, et al, Br. J. Cancer, 85, 1753-1758, 2001)。スチューデントt-テストで統計的な分析を行なって腫瘍体積の差を評価した。統計学的有意性はP<0.05と定義された。
【0081】
その結果、3種のhVEGF siRNAを処理した場合は全て対照群(即ち、スクランブルRNA-PEG/PEI及びPBS溶液)に比べて多様な程度の腫瘍成長遅延の効果を示した(図14及び図15)。3種のsiRNA剤形のうちhVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルはhVEGF siRNA/PEI複合体に比べて大きい程度に腫瘍の成長を遅延させた。未変形siRNAも腫瘍内の注射部位領域である程度の遺伝子サイレンシング効果を示した。38日後、PBS処理された対照群の体積を100%にしたときのsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル、siRNA/PEI、未変形siRNAの相対体積比はそれぞれ13.3%、32.8%、及び55.4%であった。
実施例12. 腫瘍内hVEGFタンパク質及びmRNAの量の定量
【0082】
固形腫瘍部位でのhVEGFの量を測定するため、siRNAを10日間処理してから3日後に固形腫瘍を収集した。腫瘍の重さを測ったあと均質器(Kinematica AG, Switzerland)を利用してPBS内で腫瘍を均質化させた。組織均質液を4℃、3,000rpmで5分間遠心分離し、追加分析のため上澄み液を保管した。hVEGFの量をELISA(Quantikine(登録商標)hVEGF免疫分析キット、R&D Systems、Minneapolis、MN)を利用して決定した。
【0083】
その結果、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル(N/Pの割合=16)は、hVEGF siRNA/PEI複合体に比べて有意味な程度にhVEGFの発現をより多く抑制した(図16)。前記高分子電解質ミセル、siRNA/PEI複合体及び未変形siRNAは、対照群のPBS投与群(100%)に比べてhVEGFの量がそれぞれ74.8%、36.3%及び20.0%減少した。これに対して、スクランブルRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルはhVEGFの発現を抑制しなかった。
【0084】
次に、hVEGF mRNAの腫瘍内濃度を決定するため、RNeasy(登録商標)Mini Kit(Qiagen, Valencia, CA)を利用して製造社の指針に従い腫瘍組織からRNA総量を分離した。SuperScriptTMIII One-Step RT-PCRキット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて半-定量RT-PCRを行なった。前記RT-PCRは、下記の熱循環条件で行なった: cDNA合成、55℃で25分間1回反復; 変性、94℃で2分間1回反復; PCR増幅、94℃で20秒間、60℃で30秒間及び72℃で30秒間26回反復; 最終伸張、70℃で5分間1回反復。hVEGF及びヒトβ-アクチンを検出するためのPCRプライマーはバイオニア社(大田、大韓民国)から購入した。前記PCR産物を0.8%アガロースゲル電気泳動で分析し、EtBr(ethidium bromide)で染色して視覚化した。
【0085】
その結果、腫瘍内hVEGF mRNAの濃度はhVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの処理により完全に抑制された(図17)。完全なsiRNA及びsiRNA/PEI複合体はhVEGF mRNAの濃度を僅かに減少させ、配列が一致しないsiRNA高分子電解質複合体ミセルは全く減少させなかった。このような結果は、高分子電解質複合体ミセルが広く用いられているsiRNA/PEI複合体に比べて生体内でhVEGFの発現を抑制させるのに明らかに利点があることを示す。
実施例13. 免疫組織化学染色及び腫瘍内微細血管の密度分析
【0086】
腫瘍を持っているマウスを28日目に犠牲させたあと、免疫組織化学染色を行なった。固形腫瘍部位を収集したあと、10%リン酸塩-緩衝ホルムアルデヒド溶液に固定してパラフィン処理した。パラフィン処理された腫瘍組織を3μm厚さの切片に切断したあと、Von Willebrand因子(Factor VIII)に対する抗体を利用して染色した。前記切片等をキシレンでパラフィン除去したあと、エタノール(100%、95%、70%、及び50%)内で水化させ、最終的にPBS内に浸漬させた。エピトープ回復(epitope retrieval)及び免疫染色のための前処理は、自動化免疫染色器(Ventana ES, Ventana Medical Systems, Tucson, AZ)を利用して行った。以後、水化された切片をプロテアーゼ2(20μg/ml)で4分間処理して酵素-誘導性エピトープ回復を行なった。前記切片をマウス因子VIIIを認識する1:100に希釈させた1次抗体(rabbit monoclonal IgG, Dako Cytomation, Carpinteria, CA)で室温で30分間培養し、以後ビオチン標識された抗-ウサギIgG(1:300希釈、Sigma, St. Louis, MO)で室温で30分間培養した。微細血管の発色検出は、IView DAB検出キット(Ventana Medical Systems)を用いて製造社の指針に従い行なった。前記組織切片をヘマトキシリン(Ventana Medical Systems)を利用してカウンター染色させたあと、50%、70%、95%及び100%のエタノール濃度勾配下で脱水させた。
【0087】
腫瘍内微細血管の密度を決定するため、染色された切片内の独立的な5箇所の部位(顕微鏡領域: 2.3mm×2.3mm、6.9mm2)を無作為に選択し、これら領域のイメージをCCDカメラを取り付けた位相差顕微鏡下で100倍率で確認した。因子VIII-陽性微細血管を選別された領域から計数し、平均腫瘍内微細血管の密度を下記式により計算した: 微細血管の密度(因子VIII-陽性血管の数/mm2)=因子VIII-陽性血管の数×6.9。PC-3腫瘍異種移植部位での微細血管の形成は、内皮細胞に対するマーカーのvon Willebrand factor抗体(因子VIII)で染色して視覚化した。
【0088】
その結果、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル(N/Pの割合=16)で処理された群の場合、対照群に比べて単位面積当たりの腫瘍内微細血管の数が著しく減少した(図18)。このような結果は、腫瘍内血管形成の活性は固形腫瘍部位でのhVEGFの量に主に依存するとのことを示す。したがって、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルにより誘導されたRNAi-媒介性hVEGF発現の抑制は、腫瘍内新血管の形成を効果的に減少させることにより腫瘍の成長を有意味に遅延させるとのことを確認した。
実施例14. 動物モデルでhVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの全身投与による癌細胞成長抑制確認
【0089】
siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの全身投与による抗癌効果を評価するため、PC-3腫瘍が異種移植されたヌードマウスに5回(第1日、第4日、第10日、第18日及び第28日)に亘って尾静脈を通して注射した。このとき、1回投与時ごとに20μgのsiRNAを単一容量で静脈投与した。
【0090】
その結果、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル(N/Pの割合=16)を全身投与した場合、対照群siRNA剤形と比べるとき腫瘍の成長を効果的に減少させた(図19)。さらに、腫瘍内hVEGFの量を確認した結果、減少されたhVEGFの発現が高分子電解質複合体ミセル処理の異種移植されたPC-3腫瘍で主に発生した(図20及び図21)。このような結果は、hVEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルがさらに長い期間の間血管を循環しながらEPR(enhanced permeation and retention)効果により腫瘍部位でさらに効果的に蓄積されるということを示す。
【産業上の利用可能性】
【0091】
前記で検討してみたように、本発明のsiRNAと親水性高分子との間の接合体、及びこれから形成された高分子電解質複合体ミセルは、siRNAの生体内安定性を向上させることにより細胞内に治療用siRNAを効率的に伝達することができ、比較的に低い濃度の投与量でsiRNAの活性を表わすことができるので、癌及び他の感染性疾患のためのsiRNA治療用道具だけでなく、新しい形態のsiRNA伝達システムとして生命工学のための基礎研究と医学産業上で非常に有用に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、細胞内分解性結合の二硫化結合を含むsiRNAと親水性高分子のPEGとの間の接合過程を簡単に示した模式図である。
【図2】図2は、siRNA高分子電解質複合体ミセルの概念を簡略的に示した模式図である。
【図3】図3は、生分解性二硫化結合を含むsiRNAと親水性高分子との間の接合体と、変形されていない形態のsiRNAを逆相(reversed phase)HPLCを用いて分析したクロマトグラムである。
【図4】図4は、細胞内環境と同じ10mM濃度のグルタチオン環境下で生分解性二硫化結合を含むsiRNAと親水性高分子との間の接合体の二硫化結合分解能を示す電気泳動写真である。
【図5】図5は、siRNAと癌細胞選択性リガンド(folate)が取り入れられた親水性高分子のPEGの間の非分解性結合を取り入れた接合体の形成過程を簡単に示した模式図である。
【図6】図6は、siRNA-PEGとカチオンペプチドKALAによる高分子電解質複合体ミセルの粒子の大きさを動的光散乱法を介し測定した結果を示すグラフである。
【図7】図7は、元来の形態のsiRNAと親水性高分子のPEGが取り入れられたsiRNA及びsiRNA-PEG/KALAにより製造された高分子電解質複合体ミセルの3種類の形態の伝達体に対する血液内安定性の評価のため、血清タンパク質が存在する環境下で時間に伴うsiRNAの分解程度を示す電気泳動写真である。
【図8】図8は、生分解性二硫化結合を含むhVEGF siRNA-PEG接合体とカチオン性ペプチドのKALAとの間の相互作用により生成された高分子電解質複合体ミセルが、前立腺癌細胞株であるPC-3細胞の血管内皮細胞成長因子の発現を抑制する程度を示すグラフである。
【図9】図9は、生分解性二硫化結合を含むhVEGF siRNA-PEG接合体とカチオン性ペプチドのKALAとの間の相互作用により生成された高分子電解質複合体ミセルが、前立腺癌細胞株であるPC-3細胞が移植された動物モデルで移植された腫瘍の成長を阻害する程度を示すグラフである。
【図10】図10は、(a) 未変形(naked)siRNA、(b) siRNA-PEG接合体、及び(c) siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルの安定性を示す電気泳動写真であって、各サンプル等は50% FBSを含む培地で37℃で培養された。
【図11】図11は、siRNA/PEI複合体及びsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルで処理されたPC-3細胞で、N/P割合(A)及びsiRNA濃度(B)に伴うVEGF遺伝子発現の抑制程度を示すグラフである。
【図12】図12は、siRNA/PEI複合体及びsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルで伝達感染したPC-3細胞で、10% FBSがVEGF遺伝子サイレンシングに及ぶ影響を示すグラフである。
【図13】図13は、VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセルによりPC-3細胞内でVEGF mRNAの量が減少することを示すRT-PCT電気泳動写真である。レーン1 : 未処理、レーン2 : VEGF siRNA/PEI複合体、レーン3 : VEGF siRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル、レーン4 : GFP siRNA/PEI複合体、レーン5 : スクランブルsiRNA/PEI複合体レーン6 : スクランブルsiRNA-PEG/PEI高分子電解質複合体ミセル。ヒトβ-アクチンが対照群に用いられた。伝達感染は10% FBSを含む培地で行なわれた。
【図14】図14は、多様なVEGF siRNA剤形を腫瘍内に注入した後の抗癌効果を示すグラフである。
【図15】図15は、PC-3腫瘍を移植したマウスの腫瘍内に(a) PBS、(b) スクランブルsiRNA-PEG/PEI、(c) VEGF siRNA、(d) VEGF siRNA/PEI、及び(e) VEGF siRNA-PEG/PEIを注入した後の抗癌効果を示す写真である。
【図16】図16は、多様なsiRNA剤形で処理した後の腫瘍内VEGFタンパク質の量を示すグラフである。
【図17】17は、多様なsiRNA剤形で処理した後の腫瘍内VEGF mRNAの量をRT-PCRで分析した結果を示す電気泳動写真であり、ヒトβ-アクチンが対照群に用いられた。レーン1 : 未処理、レーン2 : スクランブルsiRNA-PEG/PEI、レーン3 : 未変形VEGF siRNA 、レーン4 : VEGF siRNA/PEI、レーン5 : VEGF siRNA-PEG/PEI
【図18】図18は、PC-3細胞株に移植されたマウスの免疫組織化学染色写真であり、それぞれ(A) PBS、(B) スクランブルsiRNA-PEG/PEI、(C) 未変形VEGF siRNA、(D) VEGF 。siRNA/PEI、及び(E) VEGF siRNA-PEG/PEIで処理された場合を示し、図18のFは腫瘍内(PC-3 tumor)微細血管の分布を示すグラフである。
【図19】図19は、多様なVEGF siRNA剤形を静脈内に全身投与した後の腫瘍の体積変化を示すグラフである。
【図20】図20は、多様なVEGF siRNA剤形を静脈内に全身投与した後の腫瘍内VEGFタンパク質の量を示すグラフである。
【図21】図21は、多様なVEGF siRNA剤形を静脈内に全身投与した後の腫瘍内VEGF mRNAの量をRT-PCRで分析した結果を示す電気泳動写真であり、ヒトβ-アクチンが対照群に用いられた。レーン1 : PBS処理、レーン2 : スクランブルsiRNA-PEG/PEI、レーン3 : 未変形VEGF siRNA、レーン4 : VEGF siRNA/PEI、レーン5 : VEGF siRNA-PEG/PEI
【図22】図22は、siRNA高分子電解質複合体(A)とオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)高分子電解質複合体(B)の遺伝子阻害効果を比べたグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性高分子(P)とsiRNA(Y)が共有結合(X)で連結された下記構造のsiRNA-親水性高分子接合体:
P-X-Y
前記で、Pは親水性高分子で、Xはリンカーが媒介されていない共有結合またはリンカーが媒介された共有結合であり、YはsiRNAである。
【請求項2】
前記親水性高分子(P)は、分子量1,000乃至10,000のノニオン性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記siRNA(Y)は、19乃至30個のヌクレオチドで構成されることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項4】
前記親水性高分子(P)はポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン及びポリオキサゾリンで構成された群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の接合体。
【請求項5】
前記共有結合は、非分解性結合または分解性結合であることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項6】
前記非分解性結合は、アミド結合またはフォスフェート結合であることを特徴とする請求項5に記載の接合体。
【請求項7】
前記分解性結合は二硫化結合、酸分解性結合、エステル結合、アンヒドライド結合、生分解性結合及び酵素分解性結合で構成された群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の接合体。
【請求項8】
前記分解性結合は、二硫化結合であることを特徴とする請求項7に記載の接合体。
【請求項9】
XがsiRNAセンスストランドの3'末端に連結されることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項10】
前記siRNA(Y)の末端に細胞選択的リガンドがさらに備えられることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項11】
前記細胞特異的リガンドは細胞特異的抗体、細胞選択的ペプチド、細胞成長因子、葉酸、ガラクトース、マンノース、アールジーディー(RGD)及びトランスフェリンで構成された群から選択される1または2以上であることを特徴とする請求項10に記載の接合体。
【請求項12】
前記siRNAはc-myc、c-myb、c-fos、c-jun、c-raf、c-src、bcl-2、VEGF、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D及びPIGFで構成された群から選択される遺伝子由来であることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項13】
所定のsiRNAを選択する段階;
前記siRNAと親水性高分子を共有結合させる段階を含むことを特徴とする請求項1に記載のsiRNA-親水性高分子接合体の製造方法。
【請求項14】
前記共有結合段階は、siRNA上の機能基を活性化させる段階と、前記活性化された機能基を親水性高分子に共有結合させる段階とを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記機能基はアミン基、チオール基及びフォスフェート基で構成された群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記siRNAの機能基を活性化させる物質は1-エチル-3,3-ジエチルアミノプロピルカルボジイミド、イミダゾール、N-ヒドロキシルスクシンイミド、ジクロロヘキシルカルボジイミド、N-β-マレイミドプロピオン酸、N-β-マレイミドプロピルオキシルスクシンイミドエステル及びN-スクシンイミジルピリジルジチオプロピオネートで構成された群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載のsiRNA-親水性高分子接合体とカチオン性化合物との高分子電解質複合体ミセル。
【請求項18】
前記カチオン性化合物はカチオン性ペプチド、カチオン性脂質及びカチオン性高分子で構成された群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の高分子電解質複合体ミセル。
【請求項19】
前記カチオン性ペプチドはKALA、ポリリジン及びプロタミンで構成された群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の高分子電解質複合体ミセル。
【請求項20】
前記カチオン性脂質はジオレイルホスファチジルエタノールアミン、またはコレステロールジオレイルホスファチジルコリンであることを特徴とする請求項18に記載の高分子電解質複合体ミセル。
【請求項21】
前記カチオン性高分子はポリエチレンイミン、ポリアミン及びポリビニルアミンで構成された群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の高分子電解質複合体ミセル。
【請求項22】
請求項1に記載のsiRNA-親水性高分子接合体を準備する段階と、前記siRNA-親水性高分子接合体とカチオン性化合物を混合する段階とを含む請求項17に記載の高分子電解質複合体ミセルの製造方法。
【請求項23】
請求項17に記載の高分子電解質複合体ミセルを準備する段階と、前記高分子電解質複合体ミセルを動物の体内に投入する段階とを含むことを特徴とする遺伝子治療方法。
【請求項24】
前記高分子電解質複合体ミセルは、経口投与または静脈注射の方法で体内に投与されることを特徴とする請求項23に記載の治療方法。
【請求項25】
請求項1に記載のsiRNA-親水性高分子接合体を有効量含む薬剤学的組成物。
【請求項26】
請求項17に記載の高分子電解質複合体ミセルを有効量含む薬剤学的組成物。
【請求項1】
親水性高分子(P)とsiRNA(Y)が共有結合(X)で連結された下記構造のsiRNA-親水性高分子接合体:
P-X-Y
前記で、Pは親水性高分子で、Xはリンカーが媒介されていない共有結合またはリンカーが媒介された共有結合であり、YはsiRNAである。
【請求項2】
前記親水性高分子(P)は、分子量1,000乃至10,000のノニオン性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記siRNA(Y)は、19乃至30個のヌクレオチドで構成されることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項4】
前記親水性高分子(P)はポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン及びポリオキサゾリンで構成された群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の接合体。
【請求項5】
前記共有結合は、非分解性結合または分解性結合であることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項6】
前記非分解性結合は、アミド結合またはフォスフェート結合であることを特徴とする請求項5に記載の接合体。
【請求項7】
前記分解性結合は二硫化結合、酸分解性結合、エステル結合、アンヒドライド結合、生分解性結合及び酵素分解性結合で構成された群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の接合体。
【請求項8】
前記分解性結合は、二硫化結合であることを特徴とする請求項7に記載の接合体。
【請求項9】
XがsiRNAセンスストランドの3'末端に連結されることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項10】
前記siRNA(Y)の末端に細胞選択的リガンドがさらに備えられることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項11】
前記細胞特異的リガンドは細胞特異的抗体、細胞選択的ペプチド、細胞成長因子、葉酸、ガラクトース、マンノース、アールジーディー(RGD)及びトランスフェリンで構成された群から選択される1または2以上であることを特徴とする請求項10に記載の接合体。
【請求項12】
前記siRNAはc-myc、c-myb、c-fos、c-jun、c-raf、c-src、bcl-2、VEGF、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D及びPIGFで構成された群から選択される遺伝子由来であることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項13】
所定のsiRNAを選択する段階;
前記siRNAと親水性高分子を共有結合させる段階を含むことを特徴とする請求項1に記載のsiRNA-親水性高分子接合体の製造方法。
【請求項14】
前記共有結合段階は、siRNA上の機能基を活性化させる段階と、前記活性化された機能基を親水性高分子に共有結合させる段階とを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記機能基はアミン基、チオール基及びフォスフェート基で構成された群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記siRNAの機能基を活性化させる物質は1-エチル-3,3-ジエチルアミノプロピルカルボジイミド、イミダゾール、N-ヒドロキシルスクシンイミド、ジクロロヘキシルカルボジイミド、N-β-マレイミドプロピオン酸、N-β-マレイミドプロピルオキシルスクシンイミドエステル及びN-スクシンイミジルピリジルジチオプロピオネートで構成された群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載のsiRNA-親水性高分子接合体とカチオン性化合物との高分子電解質複合体ミセル。
【請求項18】
前記カチオン性化合物はカチオン性ペプチド、カチオン性脂質及びカチオン性高分子で構成された群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の高分子電解質複合体ミセル。
【請求項19】
前記カチオン性ペプチドはKALA、ポリリジン及びプロタミンで構成された群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の高分子電解質複合体ミセル。
【請求項20】
前記カチオン性脂質はジオレイルホスファチジルエタノールアミン、またはコレステロールジオレイルホスファチジルコリンであることを特徴とする請求項18に記載の高分子電解質複合体ミセル。
【請求項21】
前記カチオン性高分子はポリエチレンイミン、ポリアミン及びポリビニルアミンで構成された群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の高分子電解質複合体ミセル。
【請求項22】
請求項1に記載のsiRNA-親水性高分子接合体を準備する段階と、前記siRNA-親水性高分子接合体とカチオン性化合物を混合する段階とを含む請求項17に記載の高分子電解質複合体ミセルの製造方法。
【請求項23】
請求項17に記載の高分子電解質複合体ミセルを準備する段階と、前記高分子電解質複合体ミセルを動物の体内に投入する段階とを含むことを特徴とする遺伝子治療方法。
【請求項24】
前記高分子電解質複合体ミセルは、経口投与または静脈注射の方法で体内に投与されることを特徴とする請求項23に記載の治療方法。
【請求項25】
請求項1に記載のsiRNA-親水性高分子接合体を有効量含む薬剤学的組成物。
【請求項26】
請求項17に記載の高分子電解質複合体ミセルを有効量含む薬剤学的組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2009−504179(P2009−504179A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526882(P2008−526882)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003229
【国際公開番号】WO2007/021142
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(505140373)バイオニア コーポレイション (5)
【出願人】(508048942)サムヤング コーポレイション (1)
【出願人】(508047668)コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003229
【国際公開番号】WO2007/021142
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(505140373)バイオニア コーポレイション (5)
【出願人】(508048942)サムヤング コーポレイション (1)
【出願人】(508047668)コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (9)
【Fターム(参考)】
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