説明

siRNA送達のための化学的に修飾されたポリカチオンポリマー

本発明は、インビトロ及びインビボでの核酸送達のためのユニークな非ウイルス性担体及びそれを使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヒト遺伝子治療の実施が増えていることから、遺伝子のための非ウイルス性送達系に対する注目度が高まっている。リポソームに処方された陽イオン性脂質及び可溶性の陽イオン性ポリマーは、核酸に基づく薬剤と容易に複合体を形成し、それらをインビトロで細胞へと効率的に送達することが分かっている。細胞レベルへの主要な障壁はエンドソーム膜であり、これは、フリップ−フロップ機構を介した陽イオン性脂質(Xuら、Biochemistry Vol.35(18)5616頁(1996))により又はいわゆるプロトン−スポンジ機構を介して陽イオン性ポリマーにより(Boussif、PNAS Vol.92(16)7297頁(1995))克服することができる。プロトン−スポンジ仮説は、エンドソームでのpH低下中にポリマーが緩衝液として作用し得ることを述べており、したがって、およそ5の最終pHに到達するためにさらなるプロトンを必要とする。これにより、塩化物対イオンならびに水の流入が増加し、結局は、結果として小胞が破裂し、その内容物が細胞質に放出される。顕著なインビトロならびにインビボ毒性が、陽イオン性ポリマー及び脂質に付随することが多い。細胞レベルにおいて、陽イオン電荷によって、膜が損傷を受け、ベクターが壊死ならびにアポトーシスを引き起こし得る。インビボレベルにおいて、陽イオン電荷によって、赤血球などの細胞性血液成分への結合及び/又は、血清蛋白質ならびに血管内皮との非特異的結合が起こる。RESによる非常に速いクリアランスにより、干渉のための意図する解剖学的位置への薬剤の到達が妨げられる。タンパク質及びステルス分子(PEGなど)による電荷遮蔽、ならびに治療のための意図する細胞への活性ターゲティングリガンドの連結など、これらの好ましくない特性に取り組むためにストラテジーが開発されてきた。
【0002】
最も許容可能であり広く使用されている遺伝子送達ポリマーの1つはポリエチレンイミン(PEI)である。遺伝子送達に対する多くの所望の特性を有する分解性PEI誘導体が記載されており(D.W.Pack、Bioconjugate Chemistry、Vol.14、934頁(2003))、これは非分解性の25,000分子量PEIよりも遺伝子送達活性が16倍大きく、毒性が低い。分枝PEI800を用い、マイケル方式で1,6ヘキサンジオールジアクリレートと1:1のモル比で反応させることにより、これが合成された。得られた分子量は約30,000であり、プロトンNMRによると、この構造は多数の生体分解性エステル連結を有する。pH5において、分解に対する半減期は30時間であった。関連する研究において、無水酢酸によるポリエチレンイミンの部分的アセチル化の結果、ポリマーの細胞毒性を変化させることなく遺伝子送達活性が最大で21倍上昇した(D.W.Pack Pharmaceutical Research Vol.21、365頁(2004))。DNAなどのポリヌクレオチドに基づく薬物の治療的送達のための分解性ポリマーのその他の形態が、様々なジアクリレートへの様々なアミンのマイケル付加を用いて得られてきた(Langerら、JACS Vol.123、8155−8156頁(2001);JACS Vol.122、10761−10768頁(2000))。この場合、最終担体産物はエステル結合を有し、N−アシル化反応に関与し得る第一又は第二アミンはなかった;ポリマー骨格にエステル結合が存在することにより生体分解性が向上する。
【0003】
Kilbanovら(Pharmaceutical Res.Vol.22、373−380頁(2005))による研究では、DNAに対するより分子量の大きい担体に423−Da及び2kDaのPEIの両方を連結するために、2種類の異なる架橋剤、即ち、ジスクシンイミジル基質(DSS)及びエチレングリコールビス[スクシンイミジルスクシネート(EGS)が使用された。架橋剤DSSは、PEIのアミンとの反応後、アミド結合を生じさせ、脂肪族骨格を保持するが、これは、元々、担体の構造の一部として2個のアミン反応基(活性エステル)を連結していた。これは、アミド結合を生じさせ、構造の一部として脂肪族骨格を保持した。PEIとのEGSの使用でもアミド結合が生じるが、その構造ゆえに、担体はエステル結合も有した。Kilbanovらは、EGSにより作製された物質がDSSを用いて作製されたものよりも遺伝子送達の効率が30倍大きかったと主張した。Kilbanovらは、「EGSに基づく共役物の分解性がより高いことによってDNAの放出が促進され(ベクターを開く。)、従ってDNAの転写での利用可能性が促進される」ことを示唆した。
【0004】
理想的には、最適の非ウイルス性担体は、低毒性で遺伝子送達効率が高い、強力なポリマーであるべきである。本発明のポリマーの主要な長所は、多岐にわたる核酸を送達する能力である。PEI 25kDaなどの標準的ポリマーがプラスミドDNA送達において効率的である一方、これらはsiRNAの送達では効率的でなく、より高いポリマー用量でも実質的な遺伝子発現ノックダウンが観察できなかった(Kimら、Bioconjugate Chemistry Vol.17、241−244頁、2006)。線状PEIの場合、文献は幾分矛盾している(Hassaniら、J Gene Medicine、Vol.7、198−207頁、2005;Urban−Kleinら Gene Therapy Vol.12、2005)が、しかし、文献ならびに出願者らにより行われた実験からのデータから、線状PEI 22kDaが一過性に形質移入された遺伝子のノックダウンに適切であることが示されるが、しかし、安定的に形質移入された細胞株でのロブストなノックダウンを生じさせるのには適していない。これらの標準的試薬とは異なり、本発明のポリマーは、一過性ならびに安定的に形質移入された細胞株でノックダウンを達成することができ、プラスミド送達において高い効率を示す。
【0005】
まとめると、市販製品として安定性が向上しており、毒性が低く、形質移入効率が高く、分子量が低いままの場合に腎臓による排出に対する潜在能力があり、アミド結合を通じた生体分解性があり、ターゲティング及びステルスリガンドが化学的に連結され得る多数の第一及び第二アミンという長所を有する、非ウイルス性核酸担体系が必要とされている。
【発明の開示】
【0006】
(発明の概要)
本発明のある態様によると、一般式Iを有する化合物が提供される。
【0007】
【化3】

(式中、ポリカチオンはポリエチレンイミンであり;
Lは非エステルリンカー部分であり;
aは約1から約20の範囲の整数であり;
bは約1から約10の範囲の整数であり;
cは約1から約20の範囲の整数であり;
dは約1から約1000の範囲の整数である。)。
【0008】
好ましくは、PEIはオリオグエチレンイミン(OEI)である。式Iのポリカチオンは、場合によっては、同じポリカチオンの繰り返しを有し得るか又は様々なポリカチオンの繰り返しの組み合わせも有し得る。
【0009】
「L」又は式Iのリンカーは非エステル含有リンカー部分である。適切な非エステル含有リンカーには、以下に限定されないが、アミドリンカー部分、アミノリンカー部分、カルボニルリンカー部分、カルバメートリンカー部分、尿素リンカー部分、エーテルリンカー部分、スクシンアミジルリンカー部分及びそれらの組み合わせが含まれる。リンカー部分は、ポリカチオン内に含有されるアミン基に結合される。好ましい実施形態において、非エステル含有リンカー部分は、−CH−CHR’−CO−N−(式中、R’はH又はアルキル基である。)により表される化学基として定義されるプロピオニル単位である。より好ましい実施形態において、非エステルリンカーはβ−アミノプロピオニルアミドリンカー部分である。
【0010】
別の実施形態において、式Iの化合物は、化合物と複合体を形成する生体分子をさらに含む。生体分子は、1以上の陰イオン性基を有し得、式I又はIaの化合物とイオン結合を形成し得る。1以上の陰イオン性基を有する生体分子の例には、核酸(例えば、DNA、1本鎖RNA、2本鎖RNA、リボザイム、DNA−RNAバイブリダイザー(bybridizer)、siRNA、アンチセンスDNA及びアンチセンスオリゴ)、タンパク質、ペプチド、脂質及び炭水化物が含まれる。
【0011】
またさらなる実施形態は、このような式Iの化合物及び生体分子と細胞を接触させ、それにより細胞に生体分子を送達することを含む、真核細胞に形質移入する方法を提供する。本方法は、遺伝子治療を必要とする哺乳動物を同定し、その哺乳動物にこのような化合物を投与することを含む、哺乳動物を治療することを含み得る。好ましい実施形態において、生体分子はsiRNAであり、このsiRNAは対象の遺伝子の発現を低下させるのに有効である。
【0012】
別の実施形態は、式Iの化合物と生体分子とを含む医薬組成物を提供する。
【0013】
別の実施形態は、一般式Iaを有する化合物をさらに提供する。
【0014】
【化4】

(式中、ポリカチオンはポリエチレンイミンであり;
Lは非エステルリンカー部分であり;
Sはスペーサーであるか又は存在せず;
Aは薬剤であるか又は存在せず;
aは約1から約20の範囲の整数であり;
bは約1から約10の範囲の整数であり;
cは約1から約20の範囲の整数であり;
dは約1から約1000の範囲の整数である。)。
【0015】
L又は式Iのリンカーは非エステル含有リンカー部分である。適切な非エステル含有リンカーには、以下に限定されないが、アミドリンカー部分、アミノリンカー部分、カルボニルリンカー部分、カルバメートリンカー部分、尿素リンカー部分、エーテルリンカー部分、スクシンアミジルリンカー部分及びそれらの組み合わせが含まれる。リンカー部分は、ポリカチオン内に含有されるアミン基に結合される。好ましい実施形態において、非エステル含有リンカー部分は、−CH−CHR’−CO−N−(式中、R’はH又はアルキル基である。)により表される化学基として定義されるプロピオニル単位である。より好ましい実施形態において、非エステルリンカーはβ−アミノプロピオニルアミドリンカー部分である。
【0016】
Sはスペーサーであるか又は存在しない。スペーサーは、例えば、置換されているか又は非置換の飽和又は不飽和炭化水素鎖及び、酸素、窒素及び硫黄などの少なくとも1個のヘテロ原子が割り込んだ、置換されているか又は非置換の飽和又は不飽和炭化水素鎖である。好ましくは、炭化水素鎖は、2−20個の炭素原子、より好ましくは、2−10個の炭素原子、最も好ましくは、2−6個の炭素原子を含む。適切なスペーサーには、以下に限定されないがポリエチレングリコール(PEG)も含まれ得る。
【0017】
Aは、例えば、受容体認識、内在化、細胞エンドソームからの生体分子の逃避、核の局在、生体分子放出及び系の安定化など、真核細胞において1以上の機能を促進し得る薬剤である。治療剤には、以下に限定されないが、細胞毒性薬(パクリタキセルなど)、エンドソーム分解剤、疎水性ポリマー(以下に限定されないが、ベンゾイル及びラウリル基を含む。)、ターゲティング部分及び遮蔽剤が含まれ得る。遮蔽剤には、以下に限定されないが、親水性のもの(以下に限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ラクトース、糖及びポリアクリルアミドを含む。)が含まれ得る。ターゲティングリガンドには、以下に限定されないが、トランスフェリン、上皮増殖因子、葉酸、ペプチド、抗体又はその断片、糖及びインテグリン結合物(RGDペプチドなど)が含まれる。
【0018】
別の実施形態において、式Iaの化合物は、式Iaの化合物と複合体を形成する生体分子をさらに含む。この生体分子は、1以上の陰イオン性基を有し得、式Iaの化合物とイオン結合を形成し得る。1以上の陰イオン性基を有する生体分子の例には、核酸(例えば、DNA、1本鎖RNA、2本鎖RNA、リボザイム、DNA−RNAバイブリダイザー(bybridizer)、siRNA、アンチセンスDNA及びアンチセンスオリゴ)、タンパク質、ペプチド、脂質及び炭水化物が含まれる。
【0019】
別の実施形態において、式Iaの化合物は、式Iaの化合物と複合体を形成する生体分子及び薬剤(即ち、遮蔽、ターゲティング及び/又は送達促進剤)(場合によってはスペーサーを含む。)をさらに含む。
【0020】
またさらなる実施形態は、このような式Iaの化合物及び生体分子(場合によってはそれにより細胞に生体分子を送達するための薬剤をさらに含む。)と細胞を接触させることを含む、真核細胞に形質移入する方法を提供する。本方法は、遺伝子治療を必要とする哺乳動物を同定し、その哺乳動物にこのような化合物を投与することを含む、哺乳動物を治療することを含み得る。好ましい実施形態において、生体分子はsiRNAであり、このsiRNAは対象の遺伝子の発現を低下させるのに有効である。
【0021】
別の実施形態は、式Iaの化合物と生体分子とを含む医薬組成物を提供し、本ポリマーと複合体を形成する薬剤をさらに含み得る。
【0022】
またさらなる実施形態は、遺伝子治療を必要とする哺乳動物を同定し、哺乳動物に生体分子との式Iの化合物の複合体を投与することを含む(前記生体分子は、対象の遺伝子の発現を低下させるのに有効なsiRNAである。)、哺乳動物を治療する方法を提供する。
【0023】
またさらなる実施形態は、遺伝子治療を必要とする哺乳動物を同定し、生体分子との式Iaの化合物の複合体を哺乳動物に投与することを含む(前記生体分子は、対象の遺伝子の発現を低下させるのに有効なsiRNAである。)、哺乳動物を治療する方法を提供する。
【0024】
(発明の詳細)
本発明は、生体分子送達のためのユニークな非ウイルス性担体に関し、この担体は、プロピオニルアミド単位により化学的に連結されたポリカチオンを有するポリマーである。本発明は、さらに、下記の式I及びIaの化合物、該化合物を調製する方法、ならびに式I及びIaの化合物を使用する方法に関する。
【0025】
I.式Iの化合物
実施形態は、式Iで述べられるようなプロピオニルアミド単位により化学的に連結されたポリカチオンを提供する。
【0026】
【化5】

【0027】
式Iにおいて、ポリカチオンは、水溶液中に置かれた場合、2個を超える陽イオン電荷を得ることができる分子として定義される。例えば、ある実施形態において、式Iのポリカチオンは、以下に限定されないが、ポリエチレンイミン 400Da−750kDa、デンドリマー構造(例えば異なる構造及び分子量の、ポリプロピレンイミンデンドリマー又はPAMAMデンドリマー)、スペルミン、スペルミジン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン及びペンタエチレンヘキサアミンを含む。好ましくは、式Iのポリカチオンはポリエチレンイミン(PEI)であり、最も好ましくは、式Iのポリカチオンはオリオグエチレンイミン(OEI)である。式Iのポリカチオンは、場合によっては同じポリカチオンの繰り返しを有し得るか又は様々なポリカチオンの繰り返しの組み合わせも有し得る。
【0028】
「L」又は式Iのリンカーは非エステル含有リンカー部分である。適切な非エステル含有リンカーには、以下に限定されないが、アミドリンカー部分、アミノリンカー部分、カルボニルリンカー部分、カルバメートリンカー部分、尿素リンカー部分、エーテルリンカー部分、スクシンアミジルリンカー部分及びそれらの組み合わせが含まれる。リンカー部分は、ポリカチオン内に含有されるアミン基に結合される。好ましい実施形態において、非エステル含有リンカー部分は、−CH−CHR’−CO−N−(式中、R’はH又はアルキル基である。)により表される化学基として定義されるプロピオニル単位である。より好ましい実施形態において、非エステルリンカーはβ−アミノプロピオニルアミドリンカー部分である。
【0029】
ポリカチオンは、同じポリカチオンの繰り返し単位又は様々なポリカチオンの組み合わせを含有し得、ここで、a及びcは約1から約20の範囲の整数である。さらに、Lは、同じリンカー部分又は様々なリンカー部分の組み合わせの何れかでも繰り返し得、従ってbは約1から約10の範囲の整数である。式Iの化合物全体も繰り返し得、dは約1から約100の範囲の整数であり、好ましくは約30の範囲である。
【0030】
II.式Iaの化合物
さらなる実施形態は、式Iaで述べられるようなプロピオニルアミド単位により化学的に連結されたポリカチオンを提供する。
【0031】
【化6】

(式中、「S」はスペーサーであるか又は存在しない。)。スペーサーは、例えば、置換されているか又は非置換の飽和又は不飽和炭化水素鎖及び、酸素、窒素及び硫黄などの少なくとも1個のヘテロ原子が割り込んだ、置換されているか又は非置換の飽和又は不飽和炭化水素鎖である。好ましくは、炭化水素鎖は、2−20個の炭素原子、より好ましくは2−10個の炭素原子、最も好ましくは2−6個の炭素原子を含む。適切なスペーサーには、限定されないがポリエチレングリコール(PEG)も含まれ得る。
【0032】
式Iaの化合物のさらなる実施形態において、これは、また、薬剤(「A」)も含み得る。「A」は、薬剤であるか又は存在しない。好ましくは、「A」は、例えば、受容体認識、内在化、細胞エンドソームからの生体分子の逃避、核の局在、生体分子放出及び系の安定化など、真核細胞において1以上の機能を促進し得る薬剤である。治療剤には、以下に限定されないが、細胞毒性薬(パクリタキセルなど)、エンドソーム分解剤、疎水性ポリマー(以下に限定されないが、ベンゾイル及びラウリル基を含む。)、ターゲティング部分及び遮蔽剤が含まれ得る。遮蔽剤には、以下に限定されないが、親水性のもの(以下に限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ラクトース、糖及びポリアクリルアミドを含む。)が含まれ得る。ターゲティングリガンドには、以下に限定されないが、トランスフェリン、上皮増殖因子、葉酸、抗体又はその断片、ペプチド、糖及びインテグリン結合物(RGDペプチドなど)が含まれる。
【0033】
S及びAの少なくとも1つが式Ia中に存在しなければならないことを理解されたい。
【0034】
ポリカチオンは、同じポリカチオンの繰り返し単位又は様々なポリカチオンの組み合わせを含有し得、ここで、a及びcは約1から約20の範囲の整数である。さらに、Lは、同じリンカー部分又は様々なリンカー部分の組み合わせの何れかでも繰り返し得、従ってbは約1から約10の範囲の整数である。式Iaの化合物全体も繰り返し得、dは約1から約100の範囲の整数であり、好ましくは約30の範囲である。
【0035】
式Iの化合物の分子量は、約800ダルトンから約1,000,000ダルトンの範囲、好ましくは約20,000ダルトンから約200,000ダルトンの範囲、最も好ましくは約20,000ダルトンから約30,000の範囲であり得る。
【0036】
式Iaの化合物の分子量は、約800ダルトンから約1,000,000ダルトンの範囲、好ましくは約20,000ダルトンから約200,000ダルトンの範囲、最も好ましくは約20,000ダルトンから約30,000の範囲であり得る。
【0037】
Lに対するポリカチオンのモル比は20−50である。薬剤に対するポリカチオンにおける遊離アミンのモル比が薬剤によって変化し得るが、約1000から2であり得る。
【0038】
III.生体分子との複合体中の式I又はIaの化合物
式Iの化合物は、生体分子と複合体を形成し得、従って、生体分子を細胞に送達するための担体として有用である。式Iの化合物と複合体を形成する生体分子の例には、核酸、タンパク質、ペプチド、脂質及び炭水化物が含まれる。核酸の例には、DNA、1本鎖RNA、2本鎖RNA、リボザイム、DNA−RNAハイブリダイザー(hybridizer)及びアンチセンスDNA(例えばアンチセンスオリゴ)が含まれる。好ましい核酸はsiRNAである。ポリマーと複合体を形成する生体分子を含む陽イオン性リポポリマーは、陽イオン性リポポリマー及び生体分子を共溶媒(mutual solvent)中で混合することにより、より好ましくは下記実施例に記載の方法により、形成され得る。
【0039】
IV.生体分子及び場合によっては薬剤との複合体中の式I又はIaの化合物
本発明のポリマーは、特定の治療剤(以下に限定されないが、細胞毒性薬(パクリタキセルなど)、エンドソーム分解剤、疎水性ポリマー及びその他のターゲティング部分を含む。)とイオン結合型錯体又は共有結合を形成することもできる。
【0040】
OEI−HD担体を遮蔽リガンドで修飾することができるが、この遮蔽リガンドは、インビボ投与後に不要な非特異的相互作用が起こるのを減少させ、従って、投与後の循環寿命を向上させる。遮蔽リガンドには、親水性であるものが含まれ、これには、以下に限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ラクトース、糖及びポリアクリルアミドが含まれる。さらに、対象の組織への取り込みを向上させるために、OEI−HD又は遮蔽されたOEI−HDであり得る担体が、これらに共役されたターゲティングリガンドを有し得る。ターゲティングリガンドの例には、以下に限定されないが、トランスフェリン、上皮増殖因子、葉酸、抗体又はその断片、糖及びインテグリン結合物(RGDペプチドなど)が含まれる。
【0041】
V.式I及びIaの化合物の調製
ポリカチオン、好ましくはポリエチレンイミン(PEI)の架橋は、架橋基のビニル基に対するポリマーのアミンの断片のマイケル付加により、及びペンダントエステル基のN−アシル化から起こる。架橋基は、アクリレート又はメタクリレートエステル単量体であり得る。アクリレート及びメタクリレートエステル単量体には、以下に限定されないがジアクリレート、ジアルキルアクリレート、ジメタクリレート、ジアクリレートエステル単量体を含むいくつかの基が含まれることを理解されたい。アシル化は、ヒドロキシル(O−アシル化)又はアミノ(N−アシル化)基を有する有機化合物の分子へのアシル基の導入として定義される。酢酸エチル及び無水物などのエステルの、ポリマーとの反応により、ポリマーのさらなるN−アシル化を行うことができる。化学的修飾は、ポリマー構造の第一及び第二アミンの両方で起こり得、従って、イオン化可能な基の総数が減少する。多官能性反応物を修飾に使用する場合、ポリマーの平均分子量が上昇する。これらの機構及び導入される化学単位を図1で示す。
【0042】
得られるポリマーは、逆の電荷を有する様々なもの(以下に限定されないが、核酸及び治療用ペプチドを含む。)に対して、非ウイルス性合成担体として適用がある。本発明のポリマーの主要な長所は、幅広い核酸の送達能である。PEI 25kDaなどの標準的ポリマーがプラスミドDNA送達において効率的である一方、これらはsiRNA送達には効率的ではなく、より高いポリマー用量でも実質的な遺伝子発現ノックダウンが観察できなかった(Kimら、Bioconjugate Chemistry Vol.17、241−244頁、2006)。線状PEIの場合、文献は幾分矛盾している(Hassaniら、J Gene Medicine、Vol.7、198−207頁、2005;Urban−Kleinら Gene Therapy Vol.12、2005)が、文献ならびに出願者らにより行われた実験からのデータから、線状PEI 22kDaが一過性形質移入遺伝子のノックダウンに適切であることが示されるが、しかし、安定的に形質移入された細胞株でのロブストなノックダウンを生じさせるのには適していない。これらの標準的試薬とは異なり、本発明のポリマーは一過性ならびに安定的に形質移入された細胞株でノックダウンを達成することができ、プラスミド送達において高い効率を示す。従って、低分子干渉RNA(siRNA)などの2本鎖RNA分子は、本発明のポリマー担体での送達に比類なく適している。siRNA送達は、治療目的又は標的確認、即ち、新規治療目的のための潜在的な標的の同定のためであり得る。
【0043】
以下に限定されないが、デンドリマー構造(例えば、異なる構造及び分子量を有する、ポリプロピレンイミンデンドリマー又はPAMAMデンドリマー)、スペルミン、スペルミジン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン及びペンタエチレンヘキサアミンを含む様々なオリゴアミンから、又は400から25,000MWの範囲の分枝型ポリエチレンイミンからなる原料物質から、本発明のポリマー担体を調製することができる。分枝型ポリエチレンイミンは、1−、2−又は多官能性薬剤で化学的に修飾されているか又は架橋されている。ポリエチレンイミンは、過剰の第一、第二及び第三アミンを含有し、これらのアミンはポリマー質量のおよそ30%を構成する。第一及び第二アミンの両者は、架橋剤との反応に対して利用可能である。架橋剤は、少なくとも2個の反応基を有する分子として定義され、少なくとも2個のポリマー分子を化学的に連結するために使用される。架橋剤として使用できる薬剤には、以下に限定されないが、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコール600ジアクリレート及びその他の2−もしくは多アクリレート又は2−もしくは多メタクリレート分子が含まれる。本発明で使用される好ましい薬剤はジアクリレート、即ち1,6ヘキサンジオールジアクリレート(略してHD)である。HDは4個の可能な反応部位、即ち2個のビニル基及び2個のエステル基を有する。ポリエチレンイミンが低分子量なので、発明者らは、これを通例、オリオグエチレンイミン、略してOEIと呼ぶ。OEIをHDと合わせ、数日加熱する場合、反応性アミンはマイケル方式で不飽和の2個の部位を架橋する。
【0044】
通常、使用されるOEIに対するHDの比はモルベースで1:1である。この比が1:1を超える場合、数字表示はモル比を示し、例えば、OEI−HD−1は、HD:OEI比が1:1であることを意味し、OEI−HD−5はHD:OEI比が5:1であることを意味する。反応が完了すると、プロトンNMRから、ビニル基全てが消費され、得られた産物が通常水溶性であることが示される。このように、膨潤性のヒドロゲルが形成される程はOEI鎖の架橋は起こっていない。典型的な試料のサイズ排除クロマトグラフィーから、数及び重量平均分子量が計算できるクロマトグラムが得られ、それによると多分散性であった(数平均分子量で重量平均分子量を割るか又はMw/Mn)。これらの値はそれぞれ3000、16,000及び5.3であった。1という多分散性値は、単分散分子量を示す。2−3という値は幾分狭く、一方4以上の値はより広い分散を示す。
【0045】
このポリマーは、より高分子量のポリエチレンイミン(PEI)25,000(その毒性レベルは遺伝子導入又はsiRNA送達でのインビボ使用には許容できない。)よりも毒性が低くなるように設計された。本発明において出発物質として使用されるOEI 800のような低分子量PEIは比較的無毒性であるが、細胞膜を横断して核酸を送達する際にはあまり効率が良くない。上述の反応からの産物は、細胞に対して比較的無毒性であり、尚且つ、細胞膜を横断してsiRNA及びDNAを送達する効率が非常に良好である。この上述の反応からの産物はまた、細胞質にsiRNA及びDNAを放出するので、これらが細胞において生物学的効果を発揮することができる。上記で示した理想的構造のさらなる特性は、構造の一部であり得るエステル結合によって生物分解性であるはずであることである。理論的には、エステル加水分解において副産物としてヘキサンジオールを、ならびに1−アルキルアミノ−プロピオン酸末端基を含有するOEI 800を得ることができるであろう。
【0046】
合成及び単離後、このような担体において赤外線スペクトルを行ったが、発明者らは、驚くことに、存在するエステルがごく僅かであり強いアミドピークが主要であることを見出した。赤外線スペクトルにおいてカルボン酸もまた示されず、これは、早期のエステル加水分解を妨げると思われる(図2)。蒸留水に対する透析後の産物のプロトンNMRから、HD結合の一部であるべき脂肪族メチレン基が存在しないことが示された。これらの結果を説明できる反応は、OEIにおける残存アミンによるエステル結合のアシル化であり、OEIは、出発物質のモル比に基づき大量であるはずである。このようなアシル化はまた、水溶性であり透析により除去可能な1,6ヘキサンジオールの副産物も与える。OEIにおけるアミンによるエステルアシル化のさらなる証拠は、ポリマーに対する非溶媒である、酢酸エチルでの産物の洗浄により得られた。この場合、分析から、一定限度の量の酢酸エチルのN−アシル化が起こったことが示された。
【0047】
2段階のプロセスによって類似のポリカチオン担体を得ることができる。この代替的な2段階プロセスにおいて、第一段階は、コアポリカチオンを架橋剤で修飾することにあり、第二段階は類似又は異なるタイプのポリカチオン、例えばスペルミン及びペンタエチレンヘキサアミンの付加によるさらなる修飾にある。
【実施例】
【0048】
本発明は、次の実施例によりさらに明らかとなろうが、これは本発明を説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0049】
(実施例1)
担体、OEI−HD−1の合成
ポリエチレンイミン(重量平均分子量800)5.0g(0.0063モル)をDMSO 7.5mL中で溶解した。別個の容器において、DMSO 3.3mL及び1.4mL=1.4g(0.0063モル)1,6ヘキサンジオールジアクリレートを添加した。両溶液を混合した。60℃にサーモスタット調節した油浴に50mL丸底フラスコを浸し、磁気撹拌バーを取り付けた。このフラスコに緩く栓をして、4日間反応させた。次に高速撹拌している酢酸エチルの溶液200mLに反応溶液を滴下添加し、これにより粘性のある物質がフラスコの底部及び側面に形成された。容器を傾けて溶媒を捨て、新鮮な酢酸エチル200mL一定分量を添加し、物質を混合した。再び容器を傾けてこれを捨て、さらに100mL一定分量を添加し、混合し、容器を傾けて粘性物質以外のものを捨てた。この物質をアルミホイルで作ったボートに移し、室温にて一晩、真空オーブン中にこれを置いた。表面積が小さく物質の粘度が高かったため、この排出プロセスで酢酸エチル全てを除去できず、さらなる精製を必要とした。
【0050】
(実施例2)
透析によるOEI−HD−1の精製
OEI−HD−1 0.80gを測り取り、これをシンチレーションバイアルに添加し、次いでダルベッコのPBS緩衝液10mLを添加した。短時間振盪した後これが溶解した。蒸留水のビーカー中で約10分間煮沸することによって、Spectrum3500カットオフ透析膜(0.4mL/cm長の容量)の約1リニアフットを予め調整した。次に、透析チューブの一方の端に結び目を作り、OEI−HD−1溶液を添加し、他端を結んで閉じた。このチューブを蒸留水およそ3ガロン中に置き、この水を穏やかに4日間撹拌した。その後、チューブから物質を取り除き、凍結乾燥して、チューブに添加したポリマー質量の約30%を回収した。プロトン及び炭素13NMRをこの産物に対して行った。
【0051】
(実施例3)
ジオキサンへのOEI−HD−1の沈殿
実施例1を繰り返すが、洗浄に酢酸エチルを用いる代わりにジオキサンを使用した。ジオキサンを使用することにより、酢酸エチルエステルにより遊離アミンがアセチル化する可能性を回避する。
【0052】
(実施例4)
OEI−HD−5の合成
125mLガラスボトルにおいてポリエチレンイミン(重量平均分子量800)5.0g(0.0063モル)をDMSO 7.5mL中で溶解した。別個の容器に、DMSO 17mL及び7.0mL=7.0g(0.0315モル)1,6ヘキサンジオールジアクリレートを添加し、混合した。125mLボトル中で両溶液を合わせ、それに緩く栓をして、60℃にサーモスタット調節したオーブンに入れた。反応に入って約30分後、ゲルが形成されるのが見られた。この反応を全部で3日間続けた。次に、容器を傾けてDMSOをゲルから捨て、スパチュラでこのゲルを塊に分けた。水約10mLが入った20mLシンチレーションバイアルに小塊を入れたところ、ゲルの殆どが溶解したようだった。
【0053】
(実施例5)
OEI−HD-10の合成
125mLガラスボトルにおいてポリエチレンイミン(重量平均分子量800)5.0g(0.0063モル)をDMSO 7.5mL中で溶解した。別個の容器に、DMSO 34mL及び14mL=14g(0.0630モル)1,6ヘキサンジオールジアクリレートを添加し、混合した。125mLボトル中で両溶液を合わせ、それに緩く栓をして、60℃にサーモスタット調節したオーブンに入れた。反応に入って約30分後、ゲルが形成されるのが見られた。この反応を全部で3日間続けた。次に、容器を傾けてDMSOをゲルから捨て、スパチュラでこのゲルを塊に分けた。水約10mLが入った20mLシンチレーションバイアルに小塊を入れ、2日間振盪した。物質は溶解しなかった。
【0054】
(実施例6)
OEI−Sub−1の合成
PEI-800(0.0013モル)1.0gを測り取り、塩化マグネシウム上で静置することにより乾燥させたDMSO 5mLを添加した。PEIは完全に溶解しなかったが、濁った懸濁液が形成された。スベロイルクロリド0.22mL(0.26g、密度1.172、0.0013モル)を乾燥DMSO 5mLにピペットで添加した。全てのガラス容器を炎であぶり、水分を除去した。室温にて手で振盪しながら、スベロイル溶液をPEI溶液/懸濁液に滴下添加した。不溶性ゲル様物質がすぐに形成された。このゲルを過剰な新鮮乾燥DMSOで1回洗浄し、次いで過剰なジオキサンで2回洗浄した。容器を傾けて残存溶媒を捨て、室温にて19時間、ハウスバキューム下にゲルを置いた。この物質は、真空乾燥後でも著しく臭いが強かった。IR(顕微鏡)及びDOでのプロトンNMRに試料を供した。プロトンNMRから、予想される水に加えて、残存DMSO及びジオキサンの存在が示された。50mgをファイル試料用に取り、試料の残りを蒸留水約10mL中で完全に溶解した。試料を透析チューブ(3500分子量カットオフ)に入れ、磁気撹拌バーで穏やかに撹拌しながら5日間、蒸留水約12Lに対して透析した。試料を2本のバイアルに分け、凍結乾燥した。凍結乾燥後、試料およそ100mgを回収した。不純なファイル試料として得られた50mgに対して補正したところ、物質の約90%が失われており、これはおそらく透析膜を通過したことによる。PEI−800−Sub−1の構造案を図3aで示し、産物のIRを図3bで図式により示す。
【0055】
(実施例7)
OEI−HD−1によるSiRNAノックダウン
OEI−HD−1を用いたHUH7/EGFPLuc細胞におけるsiRNA送達の結果を図4でまとめる。血清不含培地(OptiMEM)中ウェルあたり5,000個の細胞を用いて、96ウェルプレートで形質移入を行った。20μL HBS(20mM HEPES、150mM NaCl)中でOEI−HD−1/siRNA処方物を調製し、血清不含培地80μLに添加した(総体積100μL)。送達から4時間後、形質移入培地を増殖培地に交換し、2日後、ルシフェラーゼ活性を測定した。0.10μg siRNA(40nM)及びC/P比8/1(OEI−HD−1/siRNA:w/w)を用い、非特異的Mut siRNAを用いた形質移入と比較して、最大で50%のルシフェラーゼ活性のノックダウンを達成した。明確にするために、C/P比は、担体:プラスミド重量比を意味し、これは、本発明の目的の場合、DNA又はsiRNAであり得る。Mut siRNAを対照として使用したが、これは担体の毒性のよい尺度である。よって、Mut siRNAを用いてシグナル低下が見られる場合(生物学的活性はないはずである。)、同じ濃度の特異的なsiRNAを用いて見られるノックダウンを細胞における担体の毒性的影響に対して補正すべきである。
【0056】
0.25μg siRNA(100nM)及びC/P比4/1を用いて、非特異的Mut siRNAを用いた形質移入と比較して、最大で60%のルシフェラーゼ活性のノックダウンを達成した。0.50μg siRNA(200nM)の場合、最大で80%のノックダウンが観察された。siRNAのより高濃度(最高1.00μg siRNA(400nM)を使用した場合、ルシフェラーゼ活性はさらに低下しなかった。従って、OEI−HD−1(HBS中の複合体、血清不含培地中の形質移入)を用いたHUH7/EGFPLucにおける送達の場合、ルシフェラーゼ発現の最大ノックダウンは、200nM(5,000個の細胞あたり0.50μg siRNA)及びC/P比2/1により達成され得る。
【0057】
(実施例8)
様々な緩衝培地中でのOEI−HD−1を用いたsiRNAノックダウン
様々な血清不含の複合体形成培地(HBS:20mM HEPES、150mM NaCl;HBG:20mM HEPES、5%グルコース;OptiMEM:低塩濃度血清不含培地、Gibco)中でOEI−HD−1がルシフェラーゼ発現をノックダウンする能力を試験した。使用した複合体形成培地とは独立して、OEI−HD−1/siRNA処方物は、複合体形成培地間で顕著な差はなく、ルシフェラーゼ活性を最大で80%ノックダウンすることができた。OptiMEM中の処方物は、100nM(C/P:2/1)で高効率であった。これは、OEI−HD−1/siRNA粒子がより速く凝集することにより起こり得る。結果を図5で示す。
【0058】
(実施例9)
血清含有培地中でのOEI−HD−1によるsiRNAノックダウン
血清存在下(10%FCS)でOEI−HD−1を用いてHUH7/EGFPLucでのsiRNA送達を行った。HBS(20μL)中でOEI−HD−1/siRNA処方物を調製し、細胞において血清含有培地80μLに複合体を添加した。2種類の異なるアプローチを行った;第一に、通常どおりsiRNA送達から4時間後に培地を交換し、第二の培地を2日間交換しなかった。培地交換後、200nM siRNA及びC/P比6/1を用いて、ルシフェラーゼ発現の最大ノックダウンを達成した(これは、血清不含培地で達成した最適移入条件:200nM siRNA、C/P比2/1とは異なっていた。)。
【0059】
培地交換なしでの、OEI−HD−1/siRNA送達に対する最適移入条件は、血清なしの場合と同じであった(200nM siRNA、C/P比2/1)。さらに、培地交換なしで、OEI−HD−1は非常に毒性が高く、C/P比6/1及び200nMで細胞は死んだ。興味深いことに、培地交換なしで、100nM siRNA及びC/P比4/1が既にルシフェラーゼ遺伝子の発現ノックダウンに非常に有効であった。
【0060】
まとめると、OEI−HD−1ビヒクルは血清存在下でもsiRNA送達に対して有効であった。血清不含培地での結果と同様に、10%FCS存在下でもルシフェラーゼ発現の最大で80%のノックダウンが観察された。さらに培地交換なしでは、最大効果を達成するには、より低いsiRNA濃度で既に十分であった。結果を図6a及び6bでまとめる。
【0061】
(実施例10)
OEI−Sub−1によるSiRNAノックダウンの失敗
様々なポリマー/siRNA比を用いて、HUH7/EGFPLuc細胞でのsiRNA送達について、架橋剤としてOEI(800Da)及びスベロイル酸(suberoyl acid)(C12Cl)を用いて合成したOE−Sub−1(実施例6に記載のように)を試験した。Luc siRNA(GL3)及びMut siRNA(IX)(Dharmacon)を用いて、トリプリケートで、96ウェルプレート及びウェルあたり5,000個の細胞で、形質移入を行った。HBS中でOEI−複合体を調製し、血清不含培地中でsiRNA送達を4時間行った。次に、形質移入培地を増殖培地に交換し、siRNA送達から2日後にルシフェラーゼ発現を測定した。siRNAの量を細胞5,000個あたり0.1から0.50μgまで変動させ、OEI−Sub−1/siRNA比を同様に変動させたが;図7で示されるようにルシフェラーゼ遺伝子発現の抑制は観察されなかった。
【0062】
(実施例11)
OEI−HP−1へのK5ペプチド模倣物のカップリング
150mM塩化ナトリウム及び20mM 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、pH7.5を含有する反応緩衝液1mL中でOEI−HD(2.8mg)を溶解する。撹拌しながら、100%エタノール80μL中でこの溶液にN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(80μg)を添加する。90分間反応を続ける。次に、SephadexG−25を用いてゲルろ過によってSPDP−活性化OEI−HDを精製する。第二段階において、N末端にシステインを有するK5ペプチドの3倍モル過剰量を同じ緩衝液中で添加する。室温にて12時間反応を進行させ、次いでSephadexG−25を用いてゲルろ過により精製する。
【0063】
(実施例12)
OEI−HD−1へのRGDC(システイン末端)ペプチドのカップリング
150mM塩化ナトリウム及び20mM 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、pH7.5を含有する反応緩衝液1mL中でOEI−HD(2.8mg)を溶解する。撹拌しながら、100%エタノール80μL中でこの溶液にN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(80μg)を添加する。90分間反応を続ける。次に、SephadexG−25を用いてゲルろ過によってSPDP−活性化OEIを精製する。第二段階において、RGDCペプチドの3倍モル過剰量を同じ緩衝液中で添加する。室温にて12時間反応を進行させ、SephadexG−25を用いてゲルろ過により精製する。
【0064】
(実施例13)
抗体断片(Fab’)のカップリング
Merdanら、Biocomugate Chemistry Vol.14、989頁(2003)からの手順を用いて、150mM塩化ナトリウム及び20mM 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、pH7.5を含有する反応緩衝液1mL中でOEI−HD(2.8mg)を溶解する。撹拌しながら、100%エタノール80μL中でこの溶液にN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(80μg)を添加する。90分間反応を続ける。次に、SephadexG−25を用いてゲルろ過によってSPDP−活性化OEIを精製する。
【0065】
第二段階において、直前に還元したFab’の1.4倍モル過剰量を同じ緩衝液中で添加する。室温にて12時間反応を進行させ、緩衝液Aとして0.9%NaCl、10mM HEPES pH7.4及び緩衝液Bとして3M NaCl、10mM HEPES pH7.4及びMacroPrep HighS(Amersham Pharmaciaより)を用いて勾配イオン交換クロマトグラフィーによって精製を行う。
【0066】
(実施例14)
HMDI活性化を介したOEI−HDへのポリエチレングリコールのカップリング
PEGモノメチルエーテル(0.5−20kDa)をクロロホルム無水物(200g/L)中で溶解し、60℃で24時間、ヘキサメチレンジイソシアネート、HMDIの10倍過剰量で活性化する。軽ガソリンで繰り返し抽出することにより未反応HMDIを慎重に除去する。続いて、イソシアネートが末端にあるPEGとOEI−HDのアミノ基との反応を60℃にて24時間、クロロホルム無水物中で行う。OEI−HDに対する活性化PEGの比を変化させることによりPEG化の度合いを調整することができる。反応溶液をジエチルエーテル又はその他の適切な非溶媒中で沈殿させ、産物を真空中で乾燥させる。
【0067】
(実施例15)
PEG−NHSを介したOEI−HDへのポリエチレングリコールのカップリング
所望の分子量のPEG−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルをDMSO中で溶解し、OEI−HD−1の水溶液に添加する。反応物を24時間撹拌し、PEG化ポリマーを例えばサイズ排除クロマトグラフィーにより単離する。
【0068】
(実施例16)
PEG−遮蔽された目的設定可能な担体を形成するための、PEG−スペーサーを介した環状RGDペプチドのカップリング
Nucleic Acids Research、Vol.32、149頁、2004において公表された手順に従い、RGDをポリエチレングリコールに連結する。RGDとのポリエチレングリコールの化学共役物(H−ACRGDMFGCA−OH)を最初に合成する。ジスルフィド架橋により環状の10マーRGDペプチドを形成する2個のシステイン残基を酸化することにより、これを行う。次に、環状ペプチド60mgを600μLジメチルスルホキシド(DMSO)中で溶解する。テトラヒドロフラン20μL中で予め溶解させたトリエチルアミン(TEA)8.54μLを窒素下でペプチドに添加する。1分間撹拌した後、活性化PEG、即ちNHS−PEG-VS(THF:DMSO;300μL:100μL中212mg)の溶液を一度に添加し、ペプチドのアミノ末端とPEGのn−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を反応させる。反応混合物を室温で4時間撹拌し、TEAに対して当量のトリフルオロ酢酸(TFA)により反応を停止させる。蒸留水に対する透析によってRGD−PEG−VSを精製し、次いで乾燥凍結する。第二段階において、精製したRGD−PEG−VS中間体100mg(21.7μmol)を無水DMSO 1mL中で溶解する。この溶液に、0.5mL THF中で溶解したTEAの6当量を添加し、混合する。ジメチルホルムアミド(0.5mL)中で溶解したOEI−HDの9.4mg(アミンに関して218μmol)一定分量をこの溶液に添加し、室温で12時間撹拌して、PEGのビニルスルホン(VS)との、OEIのアミンのマイケル付加を引き起こす。TFA塩としてHPLCにより産物を精製する。
【0069】
(実施例17)
OEI−HD産物
記載のように(Materials Research Innovations Vol.9、13−14頁、2005)、パクリタキセルをポリエチレングリコール分子の一方の末端に連結する。PEG鎖の他方のヒドロキシル末端をトリクロロ−s−トリアジンと反応させ、活性化PEG末端基を生成させる。pH9.0にて水中で活性化PEGをOEI−HDと組み合わせ、OEI−HD担体にPEG−パクリタキセルを連結する。ターゲティングリガンドならびに対象の細胞に対する特異的siRNAを有する他のOEI−HDポリマーと、このOEI−HD-PEG−パクリタキセル部分を組み合わせ、ポリプレックスを形成させる。このポリプレックスは、細胞での転写を干渉する薬剤を送達する特性(siRNA)ならびに低分子の細胞毒性薬、即ちパクリタキセルを送達する特性を有する。
【0070】
(実施例18)
RAN−siRNA送達のための化学的修飾ポリカチオンのインビボでの使用
RAN siRNAは、RAN GTPaseに対する低分子干渉RNAである。この酵素は殆どの細胞に必須であり、発現のノックダウンによって毒性のある影響が出る。15匹のマウスの背中に100万個のNuero2A腫瘍細胞を皮下注射し、その結果、局所的腫瘍が生じ、皮膚を通してカリパスでこれを測定した際に直径3mmの大きさになるまで成長させた。各群5匹で3群、即ち治療群、対照群及びビヒクル群にマウスを分けた。治療群には、0.6:1の重量比でOEI−HD担体にポリプレックス化されたRAN−siRNAを投与し、この担体は、OEI−HD−PEG−Tf 10重量%を含有していた。対象の腫瘍がトランスフェリン(Tf)に対する受容体を発現することが知られているので、PEGスペーサーを介してOEI−HDにトランスフェリン(Tf)を共有結合させたが、これはターゲティング剤としての役割を果たした。対照群には、0.6:1の重量比でOEI−HDにポリプレックス化されたsiCONTROL(生物学的に不活性の対照siRNA)を投与し、この担体は、OEI−HD−PEG−Tf 10重量%を含有していた。最後の群には、緩衝液ビヒクル、HEPES緩衝グルコースを投与した。各マウスに対して、尾静脈を通じて3日間あけて、3回、200μLの注射を行った。各治療注射はsiRNA 35μgを含有し、各対照注射はsiCONTROL 40μgを含有していた。ビヒクル群には、緩衝液のみ200μLを投与した。全動物に対して、腫瘍サイズ及び動物体重を毎日測定した。
【0071】
最初の注射を行ってから8日間マウスを生存させた。この試験に関与する体重減少は何れの実験群でも見られなかった。siControl及び緩衝液群に対する腫瘍成長曲線は基本的に同じであったが;第3日に、RAN siRNA処置群に対する成長曲線がよい方向に変化し、図8で示されるように速度が遅くなった。
【0072】
(実施例19)
RAF−1−siRNA送達のための化学的修飾ポリカチオンのインビボでの使用
実施例20に記載の実験プロトコールを繰り返すが、腫瘍を生成させるために、SCID−マウス、5百万個のHUH7肝臓腫瘍細胞及び治療群においてRAF−1−siRNAに変更する。RAF−1−siRNA−低分子干渉RNAは、多くの癌細胞に対して重要な生体分子であるRAF−1に対するものである。
【0073】
(実施例20)
PLK−1−SiRNA送達のための化学的修飾ポリカチオンのインビボでの使用
実施例19に記載の実験プロトコールを繰り返すが、PLK−1を発現することが知られており、細胞培養においてPLK−1 siRNAでの形質移入後に細胞死が起こることが分かっている腫瘍細胞に変更する。PLK−1−siRNA−低分子干渉RNAは、細胞周期の進行の重要な制御因子であるpolo−様キナーゼ1に対するものである。発現のノックダウンにより毒性的な影響が生じる。
【0074】
(実施例21)
実施例19からのポリプレックスの形成及び特性解析
Malvern Zetasizer Nano ZSを用いて、ポリプレックスサイズの特性解析を行う。この機器は、従来の手法によりゼータ電位を測定することができ、準弾性レーザ光散乱技術により粒子サイズを測定することができる。OEI−HD、1.1μg及びOEI−PEG−トランスフェリン、0.12μgをHBG(HEPES緩衝グルコース、pH7.3の20mM HEPESを含有する5%グルコース溶液(重量/体積))25μL総体積中で混合する。HBGを用いてsiRNA(2.0μg)の個々の量を別のバイアル中で25μLになるように希釈した。続いて、siRNA溶液にポリマー溶液を添加し、容器を10回転倒撹拌することによって混合した。得られたポリプレックス懸濁液の粒子サイズは200−300nmであり、ゼータ電位は−1.3ミリボルトであった。ゼータ電位は、粒子の固定イオン層と可動イオン拡散層との間の滑り面での電場において運動しているコロイド粒子に関与する電位である。
【0075】
(実施例22)
核酸担体OEI−HD−1への活性化二官能性PEGのカップリングとそれに続く、ペンダント活性化PEG末端基へのトランスフェリンのカップリング
OEI(34K)、300mg(〜9x10−6モル)を100mM HEPES緩衝液、pH8.6 5mL中で溶解した。別個のバイアル中で、75mg(NMRにより純度66%、−1x10−5モル)OPSS−PEG(5K)−SPA(オルト−ピリジルジスルフィド−ポリエチレングリコール−スクシンイミジルプロピオネート)をエタノール4mL中で溶解した。両溶液を合わせ、室温で2時間撹拌した。次に、反応溶液をイオン交換クロマトグラフィーに供し、OPSS−PEG-OEIを含有する分画を回収した。Centricon濃縮装置を用いて精製産物の体積を1mLに減少させた。PD10カラム(OEIで予め飽和)を用いて産物を脱塩した。試料溶液1mLをカラムに添加し、次いで水1.5mLを添加することによってこれを行った。最初のフロースルーを捨て、水2mL中で試料を溶出させた。この溶液を凍結乾燥し、プロトンNMRにより分析し、その結果、714のOEI繰り返し単位あたり1個のピリジルジチオ基が示された。この中間体をOEI−HD−1−ポリエチレングリコール−2−ピリジルジチオ−プロピオンアミド又は略して「OEI−PEG−OPSS」と名づけた。
【0076】
OEI−PEG−SHへのOEI−PEG−OPSSの還元
凍結乾燥OEI−PEG−OPSS 25mgを100mM HEPES緩衝液1.5中で溶解した。続いて、DL−ジチオスレイトール(DTT)40mg(〜2.6x10−4モル)を試料溶液に添加し、これを30分間撹拌した。反応の進行を監視するために、100mM HEPES緩衝液で試料溶液10μLを500μLに希釈し、UV/VIS光度計を用いて吸収スキャンを行った。343nmでの極大値を観察することにより、この反応の進行を確認した。PD10カラムを用いて、反応溶液を精製した。このカラム(OEIで予め飽和させ、HBS緩衝液で平衡化)に反応溶液1.5mLを添加し、次いでHBS緩衝液1mLを添加することにより(HBS緩衝液は使用前にアルゴンで泡立て通気した。)、これを行った。最初のフロースルーを捨て、HBS 2mL中で試料を溶出させた。OEI−PEG−SH試料溶液の濃度は、銅錯化アッセイにより測定した場合、5mg/mLであった。保存のため、封入前に試料溶液にアルゴンを5分間泡立て通気した。
【0077】
N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP)によるトランスフェリンの修飾
トランスフェリン(60mg)をHBS緩衝液3mL中で溶解した。続いて、SPDP 3.5mgをエタノール7mL中で溶解した(完全に溶解するために慎重に溶液を加温)。すぐに、SPDP溶液0.5mLをピペットでトランスフェリン溶液に移し、1時間穏やかに撹拌した。
【0078】
反応溶液をYM−10 Centricon濃縮装置に移し、体積を1mLまで減少させた。さらに4回の1mL緩衝液交換をCentricon濃縮装置で行った。精製トランスフェリン−SPDP溶液にアルゴンガスを5分間泡立て通気した。
【0079】
トランスフェリン−SPDPとのOEI−PEG−SHのカップリング
OEI−PEG−SH 10mgをHBS緩衝液2mL中で溶解し、精製した活性化トランスフェリン溶液2.7mLを新しいシンチレーションバイアルに入れ、室温で一晩穏やかに撹拌した。次に、5mg(4x10−5モル)N−エチル−マレイミドで未反応スルフィドリル基を不活性化し、30分間撹拌した。
【0080】
イオン交換クロマトグラフィーによりOEI−PEG−トランスフェリンを精製した。Centricon濃縮装置を用いて体積を減少させ、前述のように産物を脱塩した。
【0081】
生物学的共役物(bioconjugate)中のポリアミン(OEI)の濃度は、銅錯化アッセイにより測定した場合、1.3mg/mLであり、UV分光法により測定した場合トランスフェリンは2.9mg/mLであった。
【0082】
トランスフェリンへの鉄の取り込み
Kursa M、Walker GF、Roessler V、Ogris M、Roedl W、Kircheis R、Wagner E.、Bioconjugate Chem.2003に記載のように、トランスフェリン含量1mgあたり鉄負荷緩衝液1.25μLを試料に添加することにより、トランスフェリンへの鉄負荷を行う。
【0083】
OEI−PEG 5K−トランスフェリンへのsiRNAの結合親和性を調べるためのシフトアッセイの使用
非特異的siRNA保存溶液から0.01mg/mLのsiRNA溶液を調製した。siRNA溶液20μLをいくつかの小さなプラスチックバイアルに移し、続いて、各バイアル中の総体積を40μLに一定に維持しながら、HBG緩衝溶液中のOEI−PEG 5K−トランスフェリンの量を増加させた。OEI−PEG 5K−トランスフェリン−対−siRNAの重量比は0から10の範囲であった。ピペッティング後、バイアルの内容物をよく混合し、10分間静置した。次いで、各バイアルから20μL一定分量をアガロースゲルプレートのそれらの対応するウェルに移した。75ボルトに設定した電気泳動装置にアガロースゲルプレートを置いた。15分後、プレートを取り出し、写真撮影した。発明者らは、重量比1.5以上のウェルではsiRNAの移動バンドが観察されなかったことを見出した。このことから、全siRNAが1.5以上の重量比でOEI(34K)−PEG(5K)−トランスフェリンと複合体を形成したことが示された。
【0084】
(実施例23)
式I又はIaの化合物とのベンゾイル安息香酸のカップリング
【0085】
【化7】

【0086】
(RLU=相対的発光単位;C:P+担体対プラスミド又はsiRNA比w/w;luc=抗−ルシフェラーゼsiRNA;scr=スクランブラー(scrambler)siRNA対照;及びlip=リポフェクタミン形質移入剤)
ベンゾイル安息香酸−スクシンイミジルエステル(Invitrogen番号1577)を使用し、HBS(HEPES緩衝食塩水、10mM HEPES、150mM NaCl、pH7.3)中で反応を行った。20mg ポリマー(下記)を2mL HBS中で溶解し、pHを7.3に調整した。続いて、ベンゾイル安息香酸−NHSエステルの様々な量を1mL 無水DMSO中で添加した。
【0087】
全ての反応を12時間行い、その後、脱イオン水を用いておよそ6mLに希釈した。続いて透析を行い、その後、共役物を凍結乾燥した。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
再び試料を凍結乾燥し、HBS(HEPES緩衝食塩水、10mM HEPES、150mM NaCl、pH7.3)中で溶解した。これらの溶液から、銅アッセイを用いて、非修飾ポリマーに対して濃度を決定した。
【0091】
ダイナミックレーザー光散乱によるサイズ決定
siRNA 0.5μgを50μLの総体積でOEIの個々の量と複合体形成させた。
【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
【表5】

【0095】
【表6】

【0096】
【表7】

【0097】
【表8】

【0098】
【表9】

【0099】
【表10】

【0100】
(実施例24)
式I又はIaの化合物に対するラウリン酸のカップリング
ラウリン酸N−ヒドロキシ−スクシンイミジルエステル(Sigma−Aldrhich番号OL3900−5g、ロット番号087H5174)を使用し、HBS(HEPES緩衝食塩水、10mM HEPES、150mM NaCl、pH7.3)中で反応を行った。20mgポリマーを2mL HBS中で溶解し、pHを7.3に調整した。続いて、ラウリン酸NHSエステルの様々な量を1mL無水DMSO中で添加した。
【0101】
【表11】

【0102】
【表12】

【0103】
全ての反応を12時間行い、その後、脱イオン水を用いておよそ6mLに希釈した。続いて透析を行い、その後、共役物を凍結乾燥した。
【0104】
【表13】

【0105】
続いて、共役物をD2O中で溶解し、H−NMRに供した。次の実際のカップリング度をNMRにより決定した。
【0106】
NMR計算に基づくカップリング度:
【0107】
【表14】

【0108】
再び試料を凍結乾燥し、HBS(HEPES緩衝食塩水、10mM HEPES、150mM NaCl、pH7.3)中で溶解した。これらの溶液から、銅アッセイを用いて、非修飾ポリマーに対して濃度を決定した。
【0109】
ダイナミックレーザー光散乱によるサイズ決定
siRNA 0.5μgを50μLの総体積でOEIの個々の量と複合体形成させた。HBS中で実験を行った。
【0110】
【表15】

【0111】
【表16】

【0112】
【表17】

【0113】
【表18】

【0114】
ノックダウン効率、H1299細胞、ウェルあたり0.5μg siRNA
PEI 800及びPEI 2k及びその誘導体
【0115】
【表19】

【0116】
【表20】

【0117】
【表21】

【0118】
OEI 5k及びその誘導体
【0119】
【表22】

【0120】
【表23】

【0121】
【表24】

【0122】
OEI 9k誘導体
【0123】
【表25】

【0124】
【表26】

【0125】
OEI 30k誘導体
【0126】
【表27】

【0127】
【表28】

【0128】
(実施例23)
PEI/OEIへのラウリン酸のカップリング及び共役物の物理化学的ならびに生物学的評価
ラウリン酸N−ヒドロキシ−スクシンイミジルエステル(Sigma−Aldrich番号OL3900−5g、ロット番号087H5174)を使用し、HBS(HEPES緩衝食塩水、10mM HEPES、150mM NaCl、pH7.3)中で反応を行った。20mgポリマーを2mL HBS中で溶解し、pHを7.3に調整した。続いて、ラウリン酸NHSエステルの様々な量を1mL無水DMSO中で添加した。
【0129】
PEI 800Da及びPEI 2kDa
【0130】
【表29】

【0131】
OEI 5kDa、9kDa及び30kDa
【0132】
【表30】

【0133】
全ての反応を12時間行い、その後、脱イオン水を用いておよそ6mLに希釈した。続いて透析を行い、その後、共役物を凍結乾燥した。
【0134】
【表31】

【0135】
続いて、共役物をD2O中で溶解し、H−NMRに供した。次の実際のカップリング度をNMRにより決定した。
【0136】
NMR計算に基づくカップリング度:
【0137】
【表32】

【0138】
再び試料を凍結乾燥し、HBS(HEPES緩衝食塩水、10mM HEPES、150mM NaCl、pH7.3)中で溶解した。
【0139】
これらの溶液から、銅アッセイを用いて、非修飾ポリマーに対して濃度を決定した。
【0140】
ダイナミックレーザー光散乱によるサイズ決定
siRNA 0.5μgを50μLの総体積でOEIの個々の量と複合体形成させた。HBS中で実験を行った。
【0141】
【表33】

【0142】
【表34】

【0143】
【表35】

【0144】
【表36】

ノックダウン効率 H1299細胞、0.5μg siRNA/。
【0145】
PEI 800及びPEI2k及びその誘導体
【0146】
【表37】

【0147】
【表38】

【0148】
【表39】

【0149】
OEI 5k及びその誘導体
【0150】
【表40】

【0151】
【表41】

【0152】
【表42】

【0153】
OEI 9k誘導体
【0154】
【表43】

【0155】
【表44】

【0156】
OEI 30k誘導体
【0157】
【表45】

【0158】
【表46】

【0159】
(実施例24)
PEI/OEIへのベンゾイル安息香酸のカップリング及び共役物の物理化学的ならびに生物学的評価
【0160】
【化8】

【0161】
ベンゾイル安息香酸−スクシンイミジルエステル(Invitrogen番号1577)を使用し、HBS(HEPES緩衝食塩水、10mM HEPES、150mM NaCl、pH7.3)中で反応を行った。20mgポリマーを2mL HBS中で溶解し、pHを7.3に調整した。続いて、ベンゾイル安息香酸−NHSエステルの様々な量を1mL無水DMSO中で添加した。全ての反応を12時間行い、その後、脱イオン水を用いておよそ6mLに希釈した。続いて透析を行い、その後、共役物を凍結乾燥した。
【0162】
【表47】

【0163】
使用した透析膜:
【0164】
【表48】

【0165】
合成した共役物に対する実際のカップリング度
【0166】
【表49】

【0167】
再び試料を凍結乾燥し、HBS(HEPES緩衝食塩水、10mM HEPES、150mM NaCl、pH7.3)中で溶解した。これらの溶液から、銅アッセイを用いて、非修飾ポリマーに対して濃度を決定した。
【0168】
ダイナミックレーザー光散乱によるサイズ決定
siRNA 0.5μgを50μLの総体積でOEIの個々の量と複合体形成させた。
【0169】
【表50】

【0170】
【表51】

【0171】
【表52】

【0172】
ノックダウン効率 H1299細胞、ウェルあたり0.5μg siRNA。
【0173】
【表53】

【0174】
【表54】

【0175】
【表55】

【0176】
【表56】

【0177】
【表57】

【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】図1a−1b:ポリカチオン修飾の機構の案。
【図2】OEI−HD産物に対する赤外線スペクトル。
【図3a】図3a−3b:スベリン酸クロリドで修飾したPEI−800に対する構造要素及びIR。
【図3b】図3a−3b:スベリン酸クロリドで修飾したPEI−800に対する構造要素及びIR。
【図4】OEI−HD−1を用いたsiRNA送達 HUH7/EGPLuc細胞。
【図5】様々な培地中でのOEI−HD−1によるsiRNAノックダウン。
【図6a】図6a−6b。血清含有培地中でのOEI−HD−1によるsiRNAノックダウン。
【図6b】図6a−6b。血清含有培地中でのOEI−HD−1によるsiRNAノックダウン。
【図7】OEI−SUB−1でのsiRNAノックダウンの失敗。
【図8】RAN−siRNAに対する化学的修飾ポリカチオンのインビボでの使用の結果。
【図9】図9a−9b。β−アミノプロピオニルアミドリンカーの例。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピオニルアミド単位により化学的に連結されたポリカチオンにより形成されるポリマーであり、核酸送達のための非ウイルス性担体として有用である、前記ポリマー。
【請求項2】
ポリカチオンがポリエチレンイミン(PEI)である、請求項1のポリマー。
【請求項3】
siRNA送達に有用である、請求項1のポリマー。
【請求項4】
遮蔽リガンドをさらに含む、請求項1のポリマー。
【請求項5】
遮蔽リガンドがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項4のポリマー。
【請求項6】
ターゲティングリガンドをさらに含む、請求項5のポリマー。
【請求項7】
ターゲティングリガンドがトランスフェリンである、請求項6のポリマー。
【請求項8】
ポリヌクレオチドと連結することをさらに含む、請求項4のポリマー。
【請求項9】
ポリヌクレオチドと連結することをさらに含む、請求項5のポリマー。
【請求項10】
ポリヌクレオチドと連結することをさらに含む、請求項6のポリマー。
【請求項11】
ポリヌクレオチドと連結することをさらに含む、請求項7のポリマー。
【請求項12】
ポリマーのアミンの一部のマイケル付加によって架橋剤のビニル基にポリマーが架橋され、ペンダントエステル基のN−アシル化によってさらに修飾される、請求項1のポリマーを作製する方法。
【請求項13】
ポリマーが、遊離エステル、無水物又はハロゲン化アシルの付加によってさらに修飾される、請求項12の方法。
【請求項14】
ポリマー構造の第一及び第二アミンの両方で架橋が生じ得る、請求項12の方法。
【請求項15】
架橋剤が、次の物質、アクリレート、メタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート及びポリエチレングリコール600ジアクリレート、のエステル単量体を含む、請求項12の方法。
【請求項16】
架橋剤が1,6ヘキサンジオールジアクリレートである、請求項15の方法。
【請求項17】
請求項1のポリマーを用いてインビボで標的組織に遺伝子を送達する方法。
【請求項18】
請求項1のポリマーを用いて培養中の細胞にsiRNAを送達する方法。
【請求項19】
請求項1のポリマーを用いてインビボで組織にsiRNAを送達する方法。
【請求項20】
siRNAの送達が、治療目的のため又は標的確認のためである、請求項19の方法。
【請求項21】
ポリマーが、逆の電荷のものに結合し、それらを標的組織に送達することができる目標設定可能な錯化剤を形成する、請求項1のポリマーを用いる方法。
【請求項22】
ポリマーが、対象の治療物質とイオン結合型錯体又は共有結合を形成する、請求項1のポリマーを用いて対象の治療物質を患者に送達する方法。
【請求項23】
対象の治療物質が、細胞毒性剤、エンドソーム分解剤及び親水性ポリマーを含む、請求項22の方法。
【請求項24】
【化1】

からなる式Iの化合物(式中、
ポリカチオンはポリエチレンイミン単位であり;
Lは非エステルリンカーであり;
aは約1から約20の範囲の整数であり;
bは約1から約10の範囲の整数であり;
cは約1から約20の範囲の整数であり;及び
dは約1から約1000の範囲の整数である。)。
【請求項25】
ポリカチオンがオリオグエチレンイミンである、請求項24の化合物。
【請求項26】
Lが、アミドリンカー部分、アミノリンカー部分、カルボニルリンカー部分、カルバメートリンカー部分、尿素リンカー部分、エーテルリンカー部分、ジスルフィドリンカー部分及びスクシンアミジルリンカー部分からなる群から選択される、請求項24の化合物。
【請求項27】
Lがβ−アミノプロピオニルアミドリンカー部分である、請求項26に記載の非エステルリンカー。
【請求項28】
生体分子をさらに含む、請求項24の化合物。
【請求項29】
前記生体分子がsiRNAである、請求項28の化合物。
【請求項30】
約800ダルトンから約1,000,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、請求項24の化合物。
【請求項31】
約20,000ダルトンから約200,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、請求項24の化合物。
【請求項32】
約20,000ダルトンから約30,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、請求項24の化合物。
【請求項33】
【化2】

からなる式Iの化合物(式中、
ポリカチオンはポリエチレンイミンであり;
Lは非エステルリンカーであり;
Sはスペーサーであるか又は存在せず;
Aは薬剤であるか又は存在せず;
aは約1から約20の範囲の整数であり;
bは約1から約10の範囲の整数であり;
cは約1から約20の範囲の整数であり;及び
dは約1から約1000の範囲の整数である。)。
【請求項34】
ポリカチオンがオリオグエチレンイミンである、請求項33の化合物。
【請求項35】
Lが、アミドリンカー部分、アミノリンカー部分、カルボニルリンカー部分、カルバメートリンカー部分、尿素リンカー部分、エーテルリンカー部分、ジスルフィドリンカー部分及びスクシンアミジルリンカー部分からなる群から選択される、請求項33の化合物。
【請求項36】
Lがβ−アミノプロピオニルアミドリンカー部分である、請求項33に記載の非エステルリンカー。
【請求項37】
生体分子をさらに含む、請求項33の化合物。
【請求項38】
前記生体分子がsiRNAである、請求項37の化合物。
【請求項39】
薬剤及び場合によってはSをさらに含む、請求項33の化合物。
【請求項40】
前記薬剤が、受容体認識、内在化、細胞エンドソームからの生体分子の逃避、核の局在、生体分子放出及び系の安定化を促進する物質からなる群から選択される、請求項38又は請求項39の化合物。
【請求項41】
前記薬剤が、細胞毒性薬、疎水性基、遮蔽剤及びターゲティングリガンドからなる群から選択される、請求項38又は請求項39の化合物。
【請求項42】
前記薬剤がトランスフェリンである、請求項41の化合物。
【請求項43】
(a)生体分子と;(b)生体分子に連結された化合物と、を含み、化合物−生体分子共役物が、請求項24又は請求項33の化合物を含む、非ウイルス性送達系。
【請求項44】
前記生体分子がsiRNAである、請求項45に記載の非ウイルス性送達系。
【請求項45】
遺伝子治療を必要とする哺乳動物を同定し、請求項28の化合物を哺乳動物に投与することを含み、前記生体分子が、対象の遺伝子の発現を低下させるのに有効なsiRNAである、哺乳動物を処置する方法。
【請求項46】
遺伝子治療を必要とする哺乳動物を同定し、請求項28の化合物を哺乳動物に投与することを含み、前記生体分子が、対象の遺伝子の発現を低下させるのに有効なsiRNAである、哺乳動物を処置する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−523823(P2009−523823A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551484(P2008−551484)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/002024
【国際公開番号】WO2007/084797
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】