説明

イブプロフェン含有経口用組成物

【課題】
イブプロフェンを起因とする胃粘膜障害を軽減したイブプロフェン含有経口組成物の提供。
【解決手段】
乳糖及びイブプロフェンを含有し、イブプロフェン1重量部に対し、乳糖を0.25乃至0.5重量部含有することを特徴とするイブプロフェン含有経口用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減するための乳糖の至適添加量に関する。ならびに、キサンチン誘導体を併用することにより、乳糖を含有するイブプロフェン製剤の胃粘膜障害がさらに軽減された、イブプロフェン含有経口用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
イブプロフェン等、非ステロイド解熱消炎鎮痛剤(NSAID)は解熱鎮痛剤として広範囲に使用され、感冒などの症状にも広く処方されている。しかし、NSAIDはシクロオキシゲナーゼを阻害し、胃粘膜保護因子であるプロスタグランジンの生合成を抑制する薬理作用機序を有するため、必然的に胃粘膜障害という副作用を引き起こすことが知られている。最近では、この機構だけではNSAIDによる潰瘍の発症を充分説明できないことから、NSAIDの細胞膜への直接傷害作用説が提唱されてきている(非特許文献1参照)。
【0003】
これまでに、
1)一般的に、NSAIDによる胃粘膜障害は制酸剤及び/又は粘膜被覆剤を併用することにより軽減できること、
2)カフェインが用量依存的にイブプロフェンによる胃粘膜損傷を抑制すること(非特許文献2参照)、
3)イブプロフェンにトラネキサム酸及びカフェインを併用すると、顕著に胃粘膜障害が抑制されること(特許文献1参照)、
4)乳糖が、アスピリンの胃粘膜に対する直接障害作用による病変形成を抑制すること(非特許文献3参照)、
等が知られている。
【0004】
なお、乳糖は安定剤、潤沢剤、甘味剤、矯味剤、結合剤、コーティング剤、糖衣剤、賦形剤、崩壊剤、崩壊補助剤などを用途として配合される医薬添加物であり(非特許文献4参照)、イブプロフェンに乳糖を添加した製剤例も幾つか報告されている(例えば、特許文献2乃至10参照)。しかし、これらは賦形剤やコーティング剤として提示されたものであり、イブプロフェンによる胃粘膜障害については記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−48728号公報、表3
【特許文献2】特開昭63−198620号公報、実施例5
【特許文献3】特開昭63−301817号公報、処方例
【特許文献4】特開平7−173057号公報、実施例1及び6
【特許文献5】特開平7−97325号公報、実施例1及び2
【特許文献6】特開平10−72348号公報、実施例1及び3
【特許文献7】特開平10−59842号公報、比較例4
【特許文献8】特開2001−139495号公報、実施例1
【特許文献9】国際公報第00/54752号パンフレット、表9
【特許文献10】特開2002−284674号公報、表1乃至5
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】生体膜と薬物の相互作用シンポジウム講演要旨集 Vol.25th 2003 p.210
【非特許文献2】J. Pharm. Pharmacol. Vol.51 1999 p.819(Table.1)
【非特許文献3】「炎症」Vol.14 No.6 1994 p.533
【非特許文献4】日本医薬品添加剤協会編、医薬品添加物辞典、2000、薬事日報社、p.194−195
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乳糖を含有するイブプロフェン製剤例は知られているが、乳糖がイブプロフェンの胃粘膜障害にどのような影響を与えるかは不明のままであった。本発明者は、イブプロフェンに乳糖を添加した場合においても、果たして、公知のアスピリンに対する胃粘膜障害軽減作用が同様に発現するのかどうかを調べることにした。
【0008】
その結果、意外にも、乳糖の添加量によっては胃粘膜障害を増悪する場合と、軽減する場合があることを発見した。そこで先ず、イブプロフェンの胃粘膜障害を軽減する乳糖の至適添加量の範囲を見出すことによって、本発明に至った。
【0009】
さらにまた、
1)イブプロフェンの胃粘膜障害を増悪する乳糖添加量の範囲において、いかなる成分を併用すればこの胃粘膜障害増悪作用を防ぐことができるか、
2)イブプロフェンの胃粘膜障害を軽減する乳糖添加量の場合において、いかなる成分を併用すればこの軽減作用をさらに増大することができるか、
を見出す研究も鋭意重ねてきた。
【0010】
その結果、キサンチン誘導体を併用すれば上記1)及び2)の課題達成の可能性があることが判った。しかし、意外にも、イブプロフェンに乳糖及びキサンチン誘導体を併用した場合には、公知のイブプロフェンとカフェイン併用の結果からの類推は不可能であり、特定の乳糖/イブプロフェンの含有比に対し、キサンチン誘導体を特定量含有させることによってのみ上記課題が実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
(1):乳糖及びイブプロフェンを含有し、イブプロフェン1重量部に対し、乳糖を0.25乃至0.5重量部含有することを特徴とするイブプロフェン含有経口用組成物。
(2):乳糖及びイブプロフェンを含有し、乳糖を含有することによりイブプロフェンによる胃粘膜障害が軽減された請求項1に記載のイブプロフェン含有経口用組成物を提供する。
【0012】
さらに本発明は、
イブプロフェンに乳糖及び/又はキサンチン誘導体を併用することを特徴とする解熱方法、鎮痛方法、炎症治療方法又は感冒治療方法も提供する。
【0013】
本発明において、「イブプロフェン」とは、イブプロフェン又はその薬理上許容される塩である。
【0014】
本発明において、「乳糖」とは、乳汁中に含まれる糖分であり、オリゴ糖の形で存在している。
【0015】
本発明において、「キサンチン誘導体」とは、コーヒー、茶、ココアに含まれるプリン塩基であり、カフェイン類、テオフィリン、テオブロミン、ジプロフィリン、プロキシフィリン又はペントキシフィリン等が良く知られている。
【0016】
本発明において、「カフェイン類」としては、カフェイン、無水カフェインの他、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン塩酸塩、クエン酸カフェイン等が挙げられ、このうちカフェイン、無水カフェイン又は安息香酸ナトリウムカフェインが好ましい。
【0017】
本発明において、「胃粘膜障害」とは、急性及び慢性胃炎からくる胃粘膜病変(糜爛、出血、浮腫)及び胃潰瘍、並びに胃部の近接部位である十二指腸を含む上部消化管の障害のことである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のイブプロフェン含有経口用組成物並びに解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤及び感冒治療剤は、乳糖(特に、特定量の乳糖)を含有することによりイブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減できる。
【0019】
また、乳糖とイブプロフェンと共に、キサンチン誘導体を含有することにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害をさらに軽減することができ、特に、特定の乳糖/イブプロフェン含有比に対し、特定量のキサンチン誘導体を含有することにより、乳糖によるイブプロフェンの胃粘膜障害増悪作用を軽減することができ、又は、乳糖によるイブプロフェンの胃粘膜障害軽減作用を増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】:胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対する乳糖の含有比を横軸にとって、プロットしたグラフである。
【図2】:胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対する乳糖の含有比を横軸にとって、イブプロフェンに対する無水カフェインの含有比の違いによる胃潰瘍抑制率をプロットしたグラフである。
【図3】:胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対する乳糖の含有比を横軸にとって、イブプロフェンに対する無水カフェインの含有比の違いによる胃潰瘍抑制率をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
イブプロフェン、カフェイン、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン、テオフィリン及び乳糖は、日本薬局方XIVに収載されている。
【0022】
ジプロフィリン及びプロキシフィリンは、日本薬局方外医薬品規格2002に収載されている。
【0023】
また、テオブロミンは、医薬品試験用標準品として入手できる。
ペントキシフィリンは、公知の方法で製造することができる。
【0024】
イブプロフェンの1回投与量は適応症や年齢により異なるが通常、50乃至250mgであり、好適には、60mg乃至200mgであり、これを1日に2乃至3回投与する。
【0025】
本発明の組成物が固形製剤の場合において含有されるイブプロフェンの含有量は通常、20mg乃至800mgであり、好適には、30mg乃至400mgである。
【0026】
また、乳糖の含有量は上記イブプロフェン1重量部に対し、
1)乳糖0.13重量部乃至0.8重量部;好適には、乳糖0.2重量部乃至0.7重量部;又は、
2)乳糖2.7重量部以上、好適には、乳糖2.9重量部以上;
である。
【0027】
更に、キサンチン誘導体を含有する場合は、上記イブプロフェン1重量部に対し、
3)乳糖0.1重量部以上、かつ、キサンチン誘導体1.0重量部以上;好適には、乳糖0.2重量部以上、かつ、キサンチン誘導体1.0重量部以上;
4)乳糖0.4重量部以上、かつ、キサンチン誘導体0.7重量部以上;好適には、乳糖0.5重量部以上、かつ、キサンチン誘導体0.7重量部以上;
5)乳糖1.4重量部以上、かつ、キサンチン誘導体0.6重量部以上;好適には、乳糖1.6重量部以上、かつ、キサンチン誘導体0.6重量部以上;
6)乳糖3.5重量部以上、かつ、キサンチン誘導体0.3重量部以上;好適には、乳糖4.0重量部以上、かつ、キサンチン誘導体0.3重量部以上;又は、
7)乳糖0.8重量部乃至2.6重量部、かつ、キサンチン誘導体0.05重量部乃至0.1重量部;好適には、乳糖0.9重量部乃至2.5重量部、かつ、キサンチン誘導体0.05重量部乃至0.1重量部;
を含有する。
【0028】
本発明においては、上記有効成分の他、必要に応じて制酸剤、鎮咳薬、去痰薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、交感神経興奮薬、副交感神経遮断薬、消炎酵素類、ビタミン類、生薬類等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0029】
本発明の経口用イブプロフェン含有組成物の具体的な剤形としては、例えば、錠剤、細粒剤(散剤を含む)、カプセル剤、坐剤等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基剤を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。
【0030】
上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される各種添加剤を使用することもできる。
【0031】
例えば、錠剤の場合、結晶セルロース等を賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は酸化マグネシウム等を安定化剤として、ヒドロキシプロピルセルロース等をコーテイング剤として、ステアリン酸マグネシウム等を滑沢剤として、使用することができ、細粒剤及びカプセル剤の場合、精製白糖等を賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は酸化マグネシウム等を安定化剤として、トウモロコシデンプン等を吸着剤として、ヒドロキシプロピルセルロース等を結合剤として、使用することができる。
【0032】
上記各剤形において、必要に応じ、クロスポビドン等の崩壊剤;ポリソルベート等の界面活性剤;ケイ酸カルシウム等の吸着剤;三二酸化鉄、カラメル等の着色剤;安息香酸ナトリウム等の安定剤;pH調節剤;香料等を添加することもできる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例等を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)錠剤
(1)成分
(表1−1)
1錠中 3錠中 (mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン 200 200
乳糖 100 800
ヒドロキシプロピルセルロース 50 90
ステアリン酸マグネシウム 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0035】
(表1−2)
2錠中 2錠中 4錠中 (mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン 200 200 200
乳糖 200 400 800
無水カフェイン 200 − −
安息香酸ナトリウムカフェイン − 25 −
テオフィリン − − 120
ヒドロキシプロピルセルロース 100 100 150
ステアリン酸マグネシウム 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0036】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造した。
【0037】
(実施例2)細粒剤
(1)成分
(表2−1)
1包中 3包中 (mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン 200 200
乳糖 100 800
ヒドロキシプロピルセルロース 100 250
ステアリン酸マグネシウム 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0038】
(表2−2)
2包中 2包中 4包中 (mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン 200 200 200
乳糖 200 400 800
無水カフェイン 200 − −
安息香酸ナトリウムカフェイン − 25 −
テオフィリン − − 120
ヒドロキシプロピルセルロース 100 100 250
ステアリン酸マグネシウム 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0039】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造した。
【0040】
(実施例3)カプセル剤
(1)成分
(表3−1)
1カプセル中 3カプセル中 (mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン 200 200
乳糖 100 800
ステアリン酸マグネシウム 10 25
ポリソルベート80 20 30
トウモロコシデンプン 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0041】
(表3−2)
2カプセル中 2カプセル中 4カプセル中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン 200 200 200
乳糖 200 400 800
無水カフェイン 200 − −
安息香酸ナトリウムカフェイン − 25 −
テオフィリン − − 120
ステアリン酸マグネシウム 10 10 20
ポリソルベート80 20 20 35
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0042】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造した後、カプセルに充てんして硬カプセル剤を製した。
【0043】
(試験例)
イブプロフェンの胃粘膜障害に対する乳糖及びカフェインの抑制効果
(1)被験物質
イブプロフェンはSigma Chemical製のものを、乳糖は日局乳糖である小境製薬製のものを、無水カフェインは和光純薬製のものを使用した。
各被験物質は、試験当日に0.5%トラガント液に懸濁もしくは溶解して調製した。投与液量は、体重1Kgあたり5mLを経口投与し、対照群には同量の0.5%トラガント液を投与した。
【0044】
(2)動物
Wistar−Imamichi雄性ラット(動物繁殖研究所)5週齢を購入し、温度20乃至26℃、湿度30乃至70%、照明時間7時乃至19時に制御された環境制御飼育装置(日本クレア製)内で、ステンレス製ラット飼育ゲージに5又は6匹入れ、飼料(マウス・ラット飼育用F−2、船橋農場製)および水フィルターを通した水道水を自由に摂取させて飼育した。8日間の予備飼育後、試験前日に肉眼的に健康状態を観察し良好な動物を選別後、無作為に1群5匹に群分けして用いた。
【0045】
(3)方法
予め、イブプロフェン単剤における100%胃粘膜障害発現用量(潰瘍が発現しないラットは1匹も存在せずに、確実に潰瘍が発生する用量)を求め、その用量に基づいて以下の試験を行った。
試験前日16時より絶食した動物に被験物質を経口投与して3.5時間後、エーテル麻酔下で頚動脈放血死させて胃を摘出した。胃を大弯沿いに切り開き、生理食塩液で軽く洗浄後、実体顕微鏡(オリンパス製10×10倍)下で出血斑の有無を観察した。
潰瘍指数として、出血斑の長径を0.5mm単位で測定して各動物の合計を求めた。イブプロフェン単独投与群の潰瘍指数と、乳糖及び/又はカフェイン類併用群における潰瘍指数とを基に、潰瘍抑制率を次式より求めた。
(式1)
潰瘍抑制率(%)=[1−B/A]×100
A:イブプロフェン単独投与群の潰瘍指数
B:併用群の潰瘍指数
【0046】
(4)試験結果
得られた結果を表4、表5−1及び表5−2並びに図1、2及び3に示す。なお、各値とも1群5匹の平均値である。
【0047】
(表4)
被験物質(mg/Kg) 含有比 潰瘍抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100) 0 0
イブプロフェン(100)+乳糖(12.5) 0.125 1
イブプロフェン(100)+乳糖(25) 0.25 27
イブプロフェン(100)+乳糖(50) 0.5 26
イブプロフェン(100)+乳糖(75) 0.75 6
イブプロフェン(100)+乳糖(100) 1.0 −36
イブプロフェン(100)+乳糖(200) 2.0 −38
イブプロフェン(100)+乳糖(300) 3.0 18
イブプロフェン(100)+乳糖(400) 4.0 42
イブプロフェン(100)+乳糖(800) 8.0 49
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。
【0048】
図1は、胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対する乳糖の含有比を横軸にとって、プロットしたグラフである。
【0049】
表4及び図1に示すように、イブプロフェンにおいては、乳糖の添加量によって胃粘膜障害を増悪させたり軽減させたりすることが判明した。即ち、イブプロフェン1重量部に対し、乳糖を0.13重量部乃至0.8重量部及び2.7重量部以上(即ち、含有比=乳糖/イブプロフェンが約0.13乃至0.8及び約2.7以上)含有することにより、乳糖の添加はイブプロフェンの胃粘膜障害を軽減する作用が発現することがわかった。
【0050】
(表5−1)
被験物質(mg/Kg) 潰瘍抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(100)+乳糖(12.5) 58
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(100)+乳糖(25) 82
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(100)+乳糖(100) 85
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(100)+乳糖(200) 95
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(100)+乳糖(400) 91
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(100)+乳糖(800) 91
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(70)+乳糖(25) −15
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(70)+乳糖(100) 54
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(70)+乳糖(200) 78
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(60)+乳糖(25) 85
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(60)+乳糖(100) −24
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(60)+乳糖(200) 57
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(60)+乳糖(400) 78
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(60)+乳糖(800) 94
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(30)+乳糖(12.5) −22
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(30)+乳糖(25) −48
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(30)+乳糖(100) 47
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(30)+乳糖(200) −81
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(30)+乳糖(400) 56
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(30)+乳糖(800) 83
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0051】
図2は、胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対する乳糖の含有比を横軸にとって、イブプロフェンに対する無水カフェインの含有比の違いによる胃潰瘍抑制率をプロットしたグラフである。グラフ中、Cafはカフェインを、Ibuはイブプロフェンを示す。Caf/Ibuは、イブプロフェンの含有量[重量部]に対する、カフェインの含有量[重量部]の割合を表す含有比である。図3においても同様である。
【0052】
表5−1及び図2に示すように、イブプロフェンと乳糖の各含有比における胃潰瘍抑制率は、カフェインを含有すると胃潰瘍抑制率がさらに改善する条件のあることが判明した。
【0053】
即ち、イブプロフェン1重量部に対して、乳糖が約0.1重量部以上でカフェインが1.0重量部以上、乳糖が約0.4重量部以上でカフェインが0.7重量部以上、乳糖が約1.4重量部以上でカフェインが0.6重量部以上又は乳糖が約3.5重量部以上でカフェインが0.3重量部以上の場合である。
【0054】
(表5−2)
被験物質(mg/Kg) 潰瘍抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(10)+乳糖(25) 8
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(10)+乳糖(100) 11
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(10)+乳糖(200) 56
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(10)+乳糖(400) 33
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(10)+乳糖(800) 42
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(5)+乳糖(25) −32
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(5)+乳糖(100) 66
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(5)+乳糖(200) 1
イブプロフェン(100)+無水カフェイン(5)+乳糖(400) −5
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。
【0055】
表5−2及び図3に示すように、イブプロフェンの胃粘膜障害を乳糖が増悪させる含有比(イブプロフェン1重量部に対し、乳糖を0.8重量部超、2.6重量部未満含有する場合である。)において、カフェインをイブプロフェン1重量部に対し、0.05重量部乃至0.1重量部で含有させると、この増悪作用を防ぐことができるのみならず胃潰瘍を抑制する効果が発現することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の経口医薬組成物は、イブプロフェンを起因とする胃粘膜障害を軽減したイブプロフェン含有の解熱、鎮痛、炎症治療及び感冒治療用の経口組成物として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳糖及びイブプロフェンを含有し、イブプロフェン1重量部に対し、乳糖を0.25乃至0.5重量部含有することを特徴とするイブプロフェン含有経口用組成物。
【請求項2】
乳糖及びイブプロフェンを含有し、乳糖を含有することによりイブプロフェンによる胃粘膜障害が軽減された請求項1に記載のイブプロフェン含有経口用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−52023(P2011−52023A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280559(P2010−280559)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【分割の表示】特願2004−189064(P2004−189064)の分割
【原出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】