説明

プレス機構及び接合装置

【課題】熱盤表面の加圧力の分布を一定の範囲内に収めることができるとともに、加熱・冷却に要する時間を短縮することができるプレス機構及び接合装置を提供する。
【解決手段】熱盤部40には、加熱手段44を導くために使用する加熱用穴部48と、冷却手段46を導くために使用する冷却用穴部50と、を含む複数の穴部が形成され、複数の穴部を構成する全ての穴部が熱盤部40の厚み方向に沿った同じ位置で、かつ熱盤部40の厚み方向に対して直交する方向に並んで設けられており、前記熱盤部を厚み方向に切断したときの穴部の断面積が全て同じ面積であり、かつ熱盤部40の厚み方向に対して直交する方向に隣接する穴部同士の中心間距離が同じ距離である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、貼り合せ用基材同士を熱圧着させるためのプレス機構及びこれを備えた接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱盤の間で被成形物を加熱・加圧するホットプレスの熱盤の加熱冷却方法において、熱盤を直接加熱する加熱手段により熱盤の加熱を行なった後、加熱手段とは別の冷却手段としてのヒートパイプによって熱盤の冷却を行なうことを特徴とするホットプレスの熱盤の加熱冷却方法が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−152913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、加圧を均一にするために熱盤の厚みが厚くなる。このため、熱盤の熱容量が大きくなり、加熱・冷却するために多大な時間が必要になる。また、加熱・冷却用に使用できる穴の数が少ないので、加熱・冷却するために多くの時間が必要になる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、熱盤表面の加圧力の分布を一定の範囲内に収めることができるとともに、加熱・冷却に要する時間を短縮することができるプレス機構及びこれを備えた接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、加圧機構により所定の荷重が付与される台座部と、加熱手段及び冷却手段を備え、前記台座部に付与された荷重が加圧力として作用する熱盤部と、を有するプレス機構であって、前記熱盤部には、前記加熱手段を導くために使用する加熱用穴部と、前記冷却手段を導くために使用する冷却用穴部と、を含む複数の穴部が形成され、前記複数の穴部を構成する全ての前記穴部が前記熱盤部の厚み方向に沿った同じ位置で、かつ前記熱盤部の厚み方向に対して直交する方向に並んで設けられており、前記熱盤部を厚み方向に切断したときの前記穴部の断面積が全て同じ面積であり、かつ前記熱盤部の厚み方向に対して直交する方向に隣接する前記穴部同士の中心間距離が同じ距離であることを特徴とする。
【0007】
この場合、複数の穴部は、加熱用穴部および冷却用穴部の他に、ダミーとなる空洞の穴部を有することが好ましい。
【0008】
この場合、前記複数の穴部は、全て円穴であり、前記熱盤部の厚み方向に対して直交する方向に隣接する前記穴部同士の中心間距離をX、前記熱盤部の厚みをT、前記複数の穴部の直径をDとした場合に、
(T−2×D)≧X ………(式1)
を具備することが好ましい。
【0009】
この場合、前記加熱手段は、ヒータであり、前記冷却手段は、冷却水であり、前記加熱用穴部は、前記ヒータを通すための穴部であり、前記冷却用穴部は、前記冷却水を流すための穴部であることが好ましい。
【0010】
本発明は、上記プレス機構のいずれかを備え、前記プレス機構による熱圧着により貼り合せ用基材同士を接合する接合装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱盤表面の加圧力の分布を一定の範囲内に収めることができるとともに、加熱・冷却に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の各実施形態に係る接合装置の各熱盤部が初期状態(非重ね合わせ状態)となるときの構成図である。
【図2】本発明の各実施形態に係る接合装置の各熱盤部が重ね合わされたときの構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る接合装置の各熱盤部の正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る接合装置の各熱盤部に作用する加圧力の伝達のメカニズムを示した説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る接合装置の各熱盤部の正面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る接合装置の各熱盤部に作用する加圧力の伝達のメカニズムを示した説明図である。
【図7】比較例1の応力状態を示す説明図である。
【図8】比較例2の応力状態を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施例の応力状態を示す説明図である。
【図10】比較例1、比較例2及び本発明の一実施例の応力状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
先ず、本発明の第1実施形態にプレス機構及びこれを備えた接合装置について、図面を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明のプレス機構を備えた接合装置として説明する。
【0014】
本実施形態の接合装置は、貼り合せ用基材同士を熱圧着により接合させる装置であり、本発明のプレス機構が用いられている。なお、貼り合せ用基材は、貼り合せ前の基板であり、ウエハや集合基板の他に、個片化された子基板も含まれる。本実施形態の接合装置にて複数の貼り合せ用基材を貼り合せ、複合基板を作製する。複合基板を作製するための貼り合せ用基材は、異種でも同種でもよい。作製された複合基板は電子機器の部品として用いられる。
【0015】
図1及び図2に示すように、接合装置20は、筐体22を備えている。筐体22の内部には、上下方向に沿って複数の熱盤部40が並んで配置されている。各熱盤部40の間には接合対象物である複数の貼り合せ用基材が配置されている。筐体22の底部には、加圧機構24が配置されている。加圧機構24は、一例として、上下方向に伸縮可能な油圧式のピストンロッド24Aが適用される。なお、加圧機構24は、図示しない制御部により駆動制御される。
【0016】
加圧機構24には、下側台座部26が接続されている。下側台座部26の上面には、複数の支持部28が設けられている。このため、加圧機構24であるピストンロッド24Aが上下方向に伸縮すると、下側台座部26及び複数の支持部28が上下方向に移動する。
【0017】
また、筐体22の上部には、上側台座部30が固定されている。上側台座部30の下面には、複数の支持部32が設けられている。なお、下側台座部26の支持部28と上側台座部30の支持部32との間で、上下方向に積まれた複数(例えば、5段)の熱盤部40A、40B、40C、40D、40Eが所定の加圧力で挟持される構造になっている。以下、熱盤部40A、40B、40C、40D、40Eを総称して熱盤部40という。
【0018】
筐体22の内部には、上下方向に沿って複数の熱盤部40が並んで配置されている。本実施形態の接合装置10は、5つの熱盤部40が筐体22の内部に設けられており、多段積層貼合装置として機能する。
【0019】
図2に示すように、本実施形態の接合装置20では、5段の熱盤部40が全て圧接した状態になることにより、4つの真空チャンバ62A、62B、62C、62Dが形成され、各真空チャンバ62A、62B、62C、62Dにおいて貼り合せ用基材の接合処理が実行される。なお、真空チャンバ62A、62B、62C、62Dを総称して真空チャンバ62という。
【0020】
図3に示すように、熱盤部40Bには、熱源部44と、冷却部46と、が設けられている。これにより、熱源部44によって熱盤部40Bを加熱し、あるいは冷却部46によって熱盤部40Bを冷却することができる。
【0021】
熱源部44としては、例えば、ヒータが適用される。また、冷却部46としては、冷却水路を流れる冷却水が適用される。
【0022】
熱盤部40Bには、熱源部44を導くために使用する複数の加熱用穴部48と、冷却部46を導くために使用する冷却用穴部50と、を含む複数の穴部52が設けられている。加熱用穴部48及び冷却用穴部50は、熱盤部40全体に埋設されている。
【0023】
加熱用穴部48としては、ヒータを通すための円形断面の穴部52(円穴)である。また、冷却用穴部50としては、冷却水を流すための円形断面の穴部52(円穴)である。
【0024】
複数の穴部52を構成する全ての穴部52が熱盤部40の厚み方向(図3中矢印Y方向と定義する)に沿った同じ位置で、かつ熱盤部40の厚み方向に対して直交する方向(図3中矢印X方向と定義する)に並んで設けられている。
【0025】
なお、「熱盤部40の厚み方向に沿った同じ位置」としては、例えば、全ての穴部52が熱盤部40の肉厚方向の中心部が該当する。
【0026】
また、複数の穴部を構成する全ての穴部の熱盤部40の厚み方向に切断した断面積が全て同じ面積であり、かつ熱盤部40の厚み方向に対して直交する方向に隣接する穴部同士の中心間距離(ピッチと定義する)が同じ距離になるように設定されている。穴部同士の中心間距離が同じ距離に設定される領域は、熱盤部40の全領域である必要はなく、貼り合せ用基材に加圧力を作用させる領域であればよい。
【0027】
複数の穴部の全てが円穴である場合には、全ての円穴の直径が同じ寸法になる。
【0028】
なお、第1実施形態では、熱盤部40に設けられた複数の穴部の全てが加熱用穴部あるいは冷却用穴部として使用される構成である。これにより、熱盤部40の加熱力及び冷却力そのものを増加させることができる。
【0029】
次に、本実施形態の接合装置20の動作について説明する。
【0030】
(各熱盤部の重ね合わせ)
図1及び図2に示すように、制御部により加圧機構24が駆動制御されて、ピストンロッド24Aが上方向に向って伸びる。これにより、下側台座部26と下側台座部26に設けられた複数の支持部28がピストンロッド24Aに押されるようにして上方向に向って移動する。
【0031】
ピストンロッド24Aが所定の距離だけ上方向に伸びていくと、下側台座部26に設けられた支持部28の先端部が第1段目の熱盤部40Aに接触し第1段目の熱盤部40Aは、複数の支持部28により上方向に押され、上方向に移動する。
【0032】
第1段目の熱盤部40Aが下側台座部26及び支持部28と共に上方向に移動すると、第1段目の熱盤部40Aは、第2段目の熱盤部40Bに接近する。
【0033】
そして、下側台座部26及び支持部28が上方向にさらに移動すると、第1段目の熱盤部40A及び第2段目の熱盤部40Bが一体となって上方向に移動し、やがて第2段目の熱盤部40Bは、第3段目の熱盤部40Cに接近する。
【0034】
下側台座部26及び支持部28が上方向にさらに移動すると、第1段目の熱盤部40A、第2段目の熱盤部40B及び第3段目の熱盤部40Cが一体となって上方向に移動し、やがて第3段目の熱盤部40Cは、第4段目の熱盤部40Dに接近する。
【0035】
下側台座部26及び支持部28が上方向にさらに移動すると、第1段目の熱盤部40A、第2段目の熱盤部40B、第3段目の熱盤部40C及び第4段目の熱盤部40Dが一体となって上方向に移動し、やがて第4段目の熱盤部40Dは、第5段目の熱盤部40Eに接近する。
【0036】
下側台座部26及び支持部28が上方向にさらに移動すると、第1段目の熱盤部40A、第2段目の熱盤部40B、第3段目の熱盤部40C、第4段目の熱盤部40D及び第5段目の熱盤部40Eが一体となって上方向に移動し、やがて第5段目の熱盤部40Eは、上側台座部30に設けられた複数の支持部32の先端部に接近する。これにより、第5段目の熱盤部40Eから支持部32に付与された加圧力は、上側台座部30に伝達される。
【0037】
以上のようにして、5段の熱盤部40が上下方向に所定の加圧力で積層され、5段の熱盤部40が上側台座部30の複数の支持部32と下側台座部26の複数の支持部28との間に挟持された構造になる。
【0038】
ここで、図2に示すように、上下方向に隣接する熱盤部同士が所定の加圧力で圧接すると、熱盤部同士の間に真空チャンバ62が形成される。すなわち、第1段目の熱盤部40Aと第2段目の熱盤部40Bとの間には、第1の真空チャンバ62Aが形成される。また、第2段目の熱盤部40Bと第3段目の熱盤部40Cとの間には、第2の真空チャンバ62Bが形成される。第3段目の熱盤部40Cと第4段目の熱盤部40Dとの間には、第3の真空チャンバ62Cが形成される。第4段目の熱盤部40Dと第5段目の熱盤部40Eとの間には、第4の真空チャンバ62Dが形成される。
【0039】
なお、積層処理の完了段階では、真空チャンバ62は密閉空間となっているだけであり、真空引きされていない。このため、真空チャンバ62は、真空状態になっていない。
【0040】
(真空引き)
次に、制御部により真空ポンプが駆動制御され、各真空チャンバ62が真空状態になる。これにより、全ての真空チャンバ62の真空引きが実行される。
【0041】
(加熱・加圧処理)
次に、各熱盤部40により加熱処理が実行される。各熱盤部40には、ヒータなどの熱源部44が内蔵されているため、制御部で熱源部44を駆動することにより、加熱処理が可能になる。熱盤部40の加熱処理は、略同時に実行される。なお、熱盤部26は温度調節器により280℃〜300℃に温度設定される。
【0042】
また同時に、上下方向に隣接する熱盤部40が加圧力を受けることで、熱盤部40の間に配置された貼り合せ用基材同士が所定の加圧力で圧接される。また、貼り合せ用基材の圧接処理は、真空チャンバの内部で実行されるため、ゴミや粉塵が浸入しないクリーンな環境で実行できる。この結果、貼り合せ用基材により作製された複合基板の電気的特性を高品質に維持することができる。
【0043】
なお、貼り合せ用基材の接合処理は、4つの真空チャンバ62で略同時に実行される。これにより、4つの真空チャンバ62において、貼り合せ用基材の接合処理が略同時に実行される。
【0044】
(真空チャンバの冷却)
貼り合せ用基材同士の圧接が終了した後、貼り合せ用基材を冷却する。このとき、真空チャンバ62の真空度を所定値に維持した状態で冷却する。貼り合せ用基材の冷却は、各熱盤部40の内部に配置された冷却部46である冷却水路に冷却水を流すことにより、実行される。
【0045】
(真空解除)
次に、真空チャンバ62の真空状態を解除するために大気を入れ、全ての真空チャンバ62が大気開放される。
【0046】
(各熱盤部の下降)
次に、各熱盤部40が下降する。この下降処理では、制御部により制御された加圧機構が下方向に移動する。これにより、第1段目の熱盤部40Aが下方向に移動するため、他の熱盤部40B、40C、40D、40Eも下方向に移動する。
【0047】
具体的には、先ず、第1段目から第5段目までの熱盤部40が一体として下方向に移動する。そして、第5段目の熱盤部40Eの保持位置に到達すれば、第5段目の熱盤部40Eは、その保持位置で停止する。次に、第1段目から第4段目までの熱盤部40A、40B、40C、40Dが一体として下方向に移動する。そして、第4段目の熱盤部40Dの保持位置に到達すれば、第4段目の熱盤部40Dは、その保持位置で停止する。次に、第1段目から第3段目までの熱盤部40A、40B、40Cが一体として下方向に移動する。そして、第3段目の熱盤部40Cの保持位置に到達すれば、第3段目の熱盤部40Cは、その保持位置で停止する。次に、第1段目と第2段目の熱盤部40A、40Bが一体として下方向に移動する。そして、第2段目の熱盤部40Bの保持位置に到達すれば、第2段目の熱盤部40Bは、その保持位置で停止する。最後に、第1段目の熱盤部40Aが下方向に移動する。そして、第1段目の熱盤部40Aの保持位置に到達すれば、第1段目の熱盤部40Aは、その保持位置で停止する。なお、加圧機構24のピストンロッド24Aは、初期位置に戻る。
【0048】
第1実施形態の接合装置20によれば、例えば、各熱盤部40の積層処理などにおいては、各熱盤部40には、他の熱盤部40から所定の加圧力を受ける。図3に示すように、本実施形態の熱盤部40には、複数の穴部を構成する全ての穴部52の断面積が全て同じ面積であり、かつ熱盤部40の厚み方向に対して直交する方向に隣接する穴部同士の中心間距離が同じ距離である。すなわち、全ての穴部52の直径が同じ寸法であり、隣接する穴部同士のピッチが全て同じ距離に設定されている。
【0049】
このため、熱盤部40に加圧力が作用したときに、その加圧力は熱盤部40をその厚み方向に伝達して熱盤部表面に到達する。熱盤部表面に到達した合力が、熱盤部40の厚み方向に対して直交する方向にわたって、所定の範囲内に収まる。換言すれば、熱盤部表面に到達した合力には、熱盤部40の厚み方向に対して直交する方向にわたって、大きなばらつきが生じない。これにより、熱盤部表面における加圧力分布が一定の範囲内に収まる。この結果、熱盤部表面における加圧力分布のばらつきを一定の範囲内に収めるために、敢えて、熱盤部40の厚みを厚くする必要が無くなり、熱盤部40の加熱・冷却に要する時間の増大を防止することができる。
【0050】
図4は、第1実施形態に係る接合装置の各熱盤部に作用する加圧力の伝達のメカニズムを示した説明図である。図4に示すように、熱盤部40の下側表面から所定の加圧力Fが作用した場合、この加圧力は熱盤部40の内部を上側に向って伝達する。加圧力Fが熱盤部40の内部を上側に向って伝達していくと、加圧力Fの一部は穴部52に突き当たる。穴部52は中空であるため、加圧力Fは穴部52を避けるように、穴部52の周囲を迂回しながら、熱盤部40の肉の部分を伝達する。このとき、加圧力Fが1つの穴部52に突き当たると、大きく分けて、分力F1、F2に分解される。これらの分力F1、F2は、穴部52の周囲を迂回しながら、やがて1つの合力F3になる。そして、熱盤部40の上側表面に至る。また、穴部52に突き当たらない加圧力Fは、分力にならず、そのまま加圧力Fとして、熱盤部40の上側表面に至る。これらの加圧力F3、Fは、上方に位置する熱盤部40に対して作用する。以後、これが繰り返される。
【0051】
第1実施形態では、加圧力Fが分力になって各穴部52の周囲を迂回して合力になるが、これらの加圧力F及び合力F3(<F)のばらつきが熱盤部40の厚み方向に対して直交する方向において一定の範囲に収まることになる。つまり、熱盤部40の上側表面における合力分布(換言すれば、加圧力分布)が一定の範囲内に収まる。これにより、第1実施形態では、上記した作用効果を奏することができる。
【0052】
なお、熱盤部40に上側表面に作用した加圧力が熱盤部40の内部を下側に伝達して熱盤部40の下側表面に抜ける場合でも、同様の作用効果がいえ、下側表面における合力分布が一定の範囲内に収まる。
【0053】
次に、本発明の第2実施形態にプレス機構及びこれを備えた接合装置について、図面を参照して説明する。第2実施形態において、第1実施形態の構成と重複する構成には同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0054】
図5に示すように、第2実施形態は、熱盤部40に設けられた複数の穴部52の中に、加熱用穴部48あるいは冷却用穴部50のいずれの用途にも利用しないダミー穴部54が混在している態様である。ダミー穴部54は、単なる空洞の穴部になっている。
【0055】
第2実施形態のように穴部52同士のピッチを狭くすれば、加熱・冷却用途に使用できる穴が増えるので、熱盤部40の加熱時間及び冷却時間を短縮することができる。ところが、急速な加熱力あるいは冷却力が求められないような環境では、全ての穴部を加熱用穴部48あるいは冷却用穴部50として使用することは、却って電気代などのコストが高くなる。また、冷却は一般的に穴同志を管で繋げて数経路にまとめるが、狭いピッチではそれが困難な場合がある。
【0056】
そこで、複数の穴部の少なくとも一部を上記ダミー穴部54とすることにより、必要最小限のヒータ・冷却経路を持ち、かつ熱盤部40の上側表面及び下側表面における加圧力分布のばらつきを一定の範囲内に収めることができるため、熱盤部40の厚みを厚くする必要がない。この結果、熱盤部40の熱容量を小さくすることができ、ダミー穴部54を混在させた構成でも、熱盤部40の加熱・冷却に要する時間を短縮することができる。
【0057】
次に、本発明の第3実施形態にプレス機構及びこれを備えた接合装置について、図面を参照して説明する。第3実施形態において、第1実施形態の構成と重複する構成には同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0058】
図6に示すように、第3実施形態は、熱盤部40に設けられた穴部52のピッチが第1実施形態の穴部52のピッチよりも狭く設定した構成である。
【0059】
具体的には、熱盤部40の厚み方向に対して直交する方向に隣接する穴部同士の中心間距離(ピッチ)をX、熱盤部40の厚みをT、複数の穴部の直径をDとした場合に、
(T−2×D)≧X ………(式1)
を具備するように設定されている。
【0060】
第3実施形態によれば、図6に示すように、熱盤部40に設けられた穴部52のピッチ狭くなるように設定した構成であるため、熱盤部40の上側表面及び下側表面における加圧力分布を均等なものにすることができる。これにより、熱盤部40の厚みをさらに薄くすることができるとともに、他の熱盤部40に対して均等になる加圧力を作用させることができる。
【0061】
(実験例)
次に、上記した各実施形態の作用効果の根拠なるための実験例を説明する。
【0062】
本実験では、2つの比較例と、本発明の一実施例と、を3つの態様を比較検討した。比較例1として、熱盤部40に全く穴部が形成されていない構成のものを用意した。比較例2として、穴部(直径10mm)が形成されているものの、隣接する穴部のピッチが30mmとなる広めのピッチのものを用意した。本発明の一実施例として、穴部(直径10mm)が形成されているものの、隣接する穴部のピッチが15mmとなる狭いピッチのものを採用した。
【0063】
例えば、比較例2が本発明の第1実施形態に対応する。また、本発明の一実施例が本発明の第3実施形態に対応する。
【0064】
先ず、比較例1によれば、図7に示すように、下側に位置する熱盤部40A(図3参照)から順番に上方に持ち上げられて複数の熱盤部40B、40C、40D、40Eが次々に積み重ねられていく構成では、下側の熱盤部40Aが最も応力が高くなる傾向がある。なお、図7の斜線部分が最も高い応力を示す。
【0065】
次に、比較例2によれば、隣接する穴部のピッチが30mmとなる広めのピッチのものであり、図8に示すように、穴部52と穴部52との間の部位の応力が最も高くなる。そして、隣接する穴部のピッチが広いため、熱盤部40の上側表面における加圧力分布のばらつきが大きくなっていた。具体的には、穴部と穴部との間に位置する加圧力が大きくなり、穴部の中心上に位置する加圧力が小さくなる。なお、図8の斜線部分が最も高い応力を示す。
【0066】
次に、本発明の一実施例によれば、比較例2と比較して、熱盤部40の上側表面における加圧力分布のばらつきが小さくなり、略均等になった。なお、図9の斜線部分が最も高い応力を示す。
【0067】
図7乃至図9の応力分布状況をグラフに表すと、図10になる。図10に示すように、比較例1では、加圧力のばらつきが小さいが、熱盤部に加熱手段及び冷却手段が存在しないため、熱盤部を加熱・冷却することができない不都合がある。
【0068】
比較例2では、図10に示すように、熱盤表面の応力ハ゛ラツキが大きいため、この穴配置のままだと熱盤の厚みを増やして応力の均等化を図る必要がある。
【0069】
本発明の一実施例では、図10に示すように、加圧力のばらつきが均等になるため、熱盤部40の厚みをさらに薄くすることができる。これにより、熱盤部40の熱容量が小さくなる。この結果、熱盤部40の加熱時間及び冷却時間を大幅に短縮することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 プレス機構
12 台座部
14 支持部
16 熱盤部
20 接合装置
24 加圧機構
26 下側台座部(台座部)
28 支持部
30 上側台座部(台座部)
32 支持部
40A 第1段目の熱盤部(熱盤部)
40B 第2段目の熱盤部(熱盤部)
40C 第3段目の熱盤部(熱盤部)
40D 第4段目の熱盤部(熱盤部)
40E 第5段目の熱盤部(熱盤部)
44 熱源部
46 冷却部
48 加熱用穴部(穴部)
50 冷却用穴部(穴部)
52 穴部
54 ダミー穴部(穴部)
62A 真空チャンバ
62B 真空チャンバ
62C 真空チャンバ
62D 真空チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧機構により所定の荷重が付与される台座部と、
加熱手段及び冷却手段を備え、前記台座部に付与された荷重が加圧力として作用する熱盤部と、
を有するプレス機構であって、
前記熱盤部には、前記加熱手段を導くために使用する加熱用穴部と、前記冷却手段を導くために使用する冷却用穴部と、を含む複数の穴部が形成され、
前記複数の穴部を構成する全ての前記穴部が前記熱盤部の厚み方向に沿った同じ位置で、かつ前記熱盤部の厚み方向に対して直交する方向に並んで設けられており、
前記熱盤部を厚み方向に切断したときの前記穴部の断面積が全て同じ面積であり、かつ前記熱盤部の厚み方向に対して直交する方向に隣接する前記穴部同士の中心間距離が同じ距離であることを特徴とするプレス機構。
【請求項2】
複数の穴部は、前記加熱用穴部および前記冷却用穴部の他に、ダミーとなる空洞の穴部を有することを特徴とする請求項1に記載のプレス機構。
【請求項3】
前記複数の穴部は、全て円穴であり、
前記熱盤部の厚み方向に対して直交する方向に隣接する前記穴部同士の中心間距離をX、前記熱盤部の厚みをT、前記複数の穴部の直径をDとした場合に、
(T−2×D)≧X ………(式1)
を具備することを特徴とする請求項1に記載のプレス機構。
【請求項4】
前記加熱手段は、ヒータであり、
前記冷却手段は、冷却水であり、
前記加熱用穴部は、前記ヒータを通すための穴部であり、
前記冷却用穴部は、前記冷却水を流すための穴部であることを特徴とする請求項1に記載のプレス機構。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のプレス機構を備え、
前記プレス機構による熱圧着により貼り合せ用基材同士を接合することを特徴とする接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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