説明

作業機用空調機の外気導入装置

【課題】
作業機用空調機が備える外気導入装置の製造公差にかかわらずに、外気中の塵埃が作業機内に侵入するのを防止する。
【解決手段】
作業機用空調機の外気導入装置10は、外気を取り込んで作業機のキャブ内を空調する空調機本体1に接続され、この空調機本体への塵埃等の侵入を防止するフィルタ3を備える。外気導入装置に、フィルタが嵌合し空調機本体に接続される空調機用ダクト2を設ける。空調機用ダクトのフィルタが嵌合する側の端部を、フランジ部とこのフランジ部に連接する傾斜面を有するテーパ部とで構成し、フィルタはフランジ面3bとこのフランジ面に連接し空調機用ダクトのテーパ部とは異なる傾斜角のテーパ面3aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機に搭載された空調機の外気導入装置に係り、特に建設機械等の作業機に搭載された空調機の外気導入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機に搭載される空調機の外気導入装置に関する従来の例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載のキャブにおいては、エアコンユニット用の外気導入ダクトをキャブ内に設置した場合に生じるスペースの減少や環境の劣化を改善するために、キャブ本体に案内ダクトを固着し、この案内ダクトを貫通してエアコンユニットの外気導入接続口部に、外気導入ダクトの一端を接続している。外気導入ダクトの他端部には、フィルタ収納部が形成されており、外気浄化フィルタが内蔵されている。この外気浄化フィルタの外気側には、外気浄化フィルタを外側から押圧する2本の針金状のフィルタ押え体が設けられている。
【0003】
作業機に搭載される空調機の外気導入装置の他の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載の外気導入装置では、キャブの外壁に開口され、かつキャブ内のエアコン装置へ外気を導入する外気導入口に、シールを介して吸入ダクトが取り付けられている。そして、吸入ダクトの先端部は内寸法が基礎部よりも大きくなっていて段差部が形成されており、吸入ダクトの内側に外気フィルタが挿入されて、段差部に当てがわれている。外気フィルタは、ホルダによって外側から挟むように固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−136757号公報
【特許文献2】特開2002−219931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塵埃が舞っているような環境で使用される作業機では、キャブ内へ塵埃が侵入することを防止するために、作業機用の空気調和機においても外気導入部にフィルタを設けて、防塵を図っている。つまり、上記フィルタを設けることによりキャブ内環境を正常環境に維持するとともに、空気調和機への異物の侵入も防止するようにしている。ところで、フィルタを外気導入部に設けても、フィルタの取り付けが不十分であると、フィルタ面での防塵は図れるものの、フィルタの周囲部からの微細な塵埃が侵入することは免れない。フィルタ取り付け部およびフィルタの双方に加工誤差が含まれることは避けがたく、この取り付け部におけるフィルタの取り付け状態が、非常に重要になっている。
【0006】
上記特許文献1に記載のキャブにおいては、複数のフィルタ受け部に外気フィルタが係止されている。そして、フィルタ受け部が形成される外気導入ダクトのフィルタ取り付け面と、フィルター周囲部に形成されるフィルタのシール面とが、平行な面となっている。このため、フィルタ取り付け部の製造公差とフィルタの製造公差のために、フィルタとフィルタ取り付け部にわずかな隙間等が生じるおそれがある。もし、わずかであっても隙間が生じると、微細な塵埃がキャブ内に侵入することは、上述したとおりである。
【0007】
また上記特許文献2でも、フィルタは段差部に載置された状態で、そのフィルタ上面から周囲部の一部をホルダにより押し付けられているだけなので、わずかな隙間を生じやすく、外部にある粉塵が侵入するのを完全にシールすることが困難である。
【0008】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、作業機用空調機が備える外気導入装置の製造公差にかかわらずに、外気中の塵埃が作業機内に侵入するのを防止することにある。本発明の他の目的は、作業機用空調機の外気導入装置におけるフィルタ取り付け部のシール性能を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の特徴は、外気を取り込んで作業機のキャブ内を空調する空調機本体に接続され、この空調機本体への塵埃等の侵入を防止するフィルタ手段を備えた作業機用空調機の外気導入装置において、フィルタ手段が嵌合し空調機本体に接続される空調機用ダクトを設け、空調機用ダクトのフィルタ手段が嵌合する側の端部を、フランジ部とこのフランジ部に連接する傾斜面を有するテーパ部とで構成し、フィルタ手段はフランジ面とこのフランジ面に連接し前記空調機用ダクトのテーパ部とは異なる傾斜角のテーパ面を備えたことにある。
【0010】
そしてこの特徴において、フィルタ手段は樹脂製のフィルタ素材収容部と、このフィルタ素材収容部に連接する樹脂製の前記フランジ部とを有するのがよく、フィルタ手段の前面側に、枠状の固定用プレートを配置し、この固定用プレートをねじで押し込むことによりフィルタ手段をフランジ面とテーパ面で空調機用ダクトに密着させるようにするのがさらに好ましい。また、固定用プレートのさらに前面側に、フィルタ手段への塵埃等の侵入を防止する邪魔板を、キャブ外壁と僅かな間隔を置いて配置するのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業機用空調機が備える外気導入装置において、フィルタとこのフィルタを保持する保持部とに全周シール面を2箇所設け、その2箇所のシール面の角度を互いに異ならせたので、外気導入装置の製造公差にかかわらずに、外気中の塵埃が作業機内に侵入するのを防止できる。また、業機用空調機の外気導入装置におけるフィルタ取り付け部のシール性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る外気導入装置の一実施例の主要部の分解斜視図である。
【図2】図1に示した外気導入装置におけるフィルタ装着を説明する図である。
【図3】本発明に係る作業機の一実施例の側面図である。
【図4】図3に示した作業機の外気導入経路を説明する図である。
【図5】図3に示した作業機が備えるキャブ内の空調空気吹き出し部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る作業機用空調機の外気導入装置10の一実施例を、図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る空調機の一実施例の部分分解斜視図であり、その主要部である外気導入装置10の部分を中心に示した図である。図2は、図1に示した外気導入装置10の取り付け状態を説明するための図であり、外気導入装置10を縦断面図で示している。図3は、作業機20の一種であるホイールローダの側面図であり、図4はこの作業機20への外気の導入経路を、図5は作業機が備えるキャブ内のに配置された空調機本体と空調空気吹き出し部を示す図である。
【0014】
ホイールローダ20では、図3に示すように、作業者が搭乗するキャブ30が前端側に設けられ、後輪(車輪)31Rが下部に設けられた後部車体35と、この後部車体35の前方に左右に揺動可能に連結され下部に前輪(車輪)31Fが設けられた前部車体34とから車体33が構成されている。後部車体35のキャブよりも後方には、エンジン32や図示しない複数の油圧ポンプ等がボンネット内に格納されて配置されている。
【0015】
後部車体35と前部車体34との間には、前部車体を34を後部車体35に対して左右方向に揺動させる、一対の揺動シリンダ(図示せず)が設けられている。これにより、作業者は、車体33を前後方向に四輪走行させながら、前部車輪31F,31Rの揺動により走行方向を操舵できる。
【0016】
この作業機20には、上下方向に俯仰動可能に作業装置29が搭載されている。作業装置29では、基端側が前部車体34に俯仰動可能に取り付けられたアーム25の先端部に、バケット28が取り付けられている。バケット28はリンク24の一端部にも回動可能に接続されており、リンク24の他端部はベルクランク23に回動可能に接続されている。ベルクランク23は、バケットシリンダ22にその端部が回動可能に接続されている。また、アーム25はアームシリンダ21にその中間部が接続されている。
【0017】
このように形成した作業装置29では、アームシリンダ21の伸縮により、アーム25が上下方向に移動し、バケットシリンダ22の伸縮によりバケットがクラウド(上向きの回動)やダンプ(下向きの回動)動作を行う。そして、例えば掘削対象物である土石等を掘削し、トラック等の荷台に積み込むことが可能になる。
【0018】
この作業機20では、キャブ30の内部に、図示しないが、運転席と操作レバー装置と空調機ユニットとが設けられている。空調機ユニットは、運転席の後方に位置しており、内部に冷房用のエバポレータ、暖房用のヒータコア等を収容した空調機本体1と、この空調機本体1に送風する送風機1aと、送風機の吸込み側に接続され詳細を後述する空調機用ダクト2とを有している。
【0019】
また、作業者がキャブ30内に乗り込むためのドア36の後方であってキャブ30の外壁下部に、キャブ30内を空調する空気を空調機ユニットに取り込むための外気導入装置10が設けられている。この外気導入装置10周りの詳細を図4に示す。図4は、図3のA部拡大図(同図(a))およびそのB−B矢視断面図(同図(b))である。
【0020】
図4(a)に示すように、キャブ30の外壁を構成しヒンジ46の周りに開閉可能なカバー41には、水平方向に走るルーバー43が複数個形成されている。このルーバー43を挟んでヒンジ46とは、反対側にはカバー開閉用のノブ45が設けられている。ルーバー43は、図4(b)に示すように、下向きに曲がった形状をしており、雨滴44や塵埃がキャブ30の内部に侵入するのを防止している。
【0021】
カバー41は、キャブ外壁7に形成された開口を覆っており、背面側の外周部近傍に設けたシューストリップ6が、詳細を後述する外気導入装置10の先端部と嵌合して気密部を形成する。なお、カバーの背面側のほぼ全面にわたって、ルーバー43間に形成される外気取り入れ口42から導かれた外気に含まれる塵埃等の空調機本体1に侵入するのを防止するために、邪魔板47がルーバー43面から僅かの隙間をおいて、配置されている。
【0022】
外気導入装置10は、空調機本体1に接続する空調機用ダクト2と、この空調機用ダクト2に取り付けられたフィルタ3とを有している。フィルタ3の前面側である外気取り入れ口42側には固定用プレート4が配置されており、フィルタ3を蝶ねじ5で取り付け部材8に固定する。取り付け部材8の先端側は、上記シューストリップ6に嵌合する。
【0023】
図5に、キャブ30内部の空調配管系を示す。フィルタ3から空調機用ダクト2を経て、外気が空調機本体1に導かれる。空調機本体は、送風機1aを有しており、キャブ30内部の空気を取り入れ口52から取り入れるとともに、空調機用ダクト2から外気を取り入れる。空調機本体で空調された空気は、空調機本体1に隣接する足元吹き出し口53から、その一部がキャブ30内の作業者の足元に吹き出される。
【0024】
また、足元吹き出し口53部に隣り合って設けられたリア吹き出しダクト54にも空調された空気の一部が導かれ、このリア吹き出しダクト54の先端部に設けられたリア吹き出し口55a、55bから作業機20の作業者の背面側に空調空気が吹き出される。さらに、リア吹き出しダクト54から作業者の前方へ空調空気を導くために、作業機20の操作部近辺に前方吹き出し立上ダクト56が設けられており、この立上ダクトの先端部には、前方から作業者へ空調空気を吹き出すための前方吹き出し口57a〜57cが設けられている。
【0025】
このように構成した作業機20の空調システムにおいて、本発明の特徴であるキャブ30内への塵埃や雨滴の侵入を防止するフィルタの詳細を、図1、2を用いて説明する。図1、2は、外気導入装置10の詳細を示す図であり、図1はその分解斜視図、図2はフィルタ3組み立て前後の様子を示す縦断面図である。
【0026】
キャブ30内に空気調和された空気を送風する空調機本体1の吸込み側端部では、空調機用ダクト2が、ほぼ水平に取り付けられている。空調機用ダクト2は、背面側(空調機本体1側)で空調機本体1に嵌合する矩形状の開口2cが形成されており、前面側ではこの空調機本体用開口2cよりも大きな矩形状の開口2dが形成されている。
【0027】
空調機用ダクト2の前面側の開口9dの周囲部はフランジ状シール面2bとなっており、このフランジ状シール面2bの背面部で開口2dの内面側は、背面側に行くにつれ開口部の大きさが減少するテーパ状シール面2aとなっている。一方、この空調機用ダクト2に取り付けられるフィルタ3は、フィルタ素材3cと、このフィルタ素材3cを収容する断面台形状をしたフィルタ素材収納部3dとこのフィルタ素材収納部3dの前面側端部に形成したフランジ部3eとを有している。したがって、フィルタ素材収納部3dを形成する上下の面はテーパ状のシール面3aを形成している。フランジ部3eの背面側も同様にシール面3bとなっている。なお、フィルタ素材収納部3dを形成する左右の側面もテーパ状になっていることが望ましい。フィルタ3の前面側には、枠状に形成された固定用プレート4が配置されており、図示しない蝶ねじ(図4参照)を用いてフィルタ3を空調機用ダクト2に押し込むようになっている。
【0028】
このように形成したフィルタ3を空調機用ダクト2に取り付ける際に、金属製の空調機用ダクト2形状に合わせて、スポンジやウレタン等の樹脂製のフィルタ3を、嵌合時の押し込み力で変形させることにより空調機用ダクト2のテーパ状シール面2aにフィルタのテーパ状シール面3aが密着する。それとともに、空調用ダクト2のフランジ部のシール面2bとフィルタ3のフランジ部3eの背面に形成したシール面3bとを密着させる。
【0029】
なお、空調機用ダクト2のテーパ状シール面2aのテーパ角は、フィルタ3のテーパ状シール面3aのテーパ角と異ならせる。これにより、フィルタ3の弾性変形により空調機用ダクト2及びフィルタ3のテーパ面での密着を可能にし、外気のキャブ30内への漏れ及びキャブ30内の空気の空調機用ダクト2への逆侵入を防止できる。また、フィルタ側のテーパ角は、フィルタに汎用品を使う場合はその汎用品に元来形成されている角度(射出成形時の角度等)をそのまま使用して、空調機用ダクトのテーパ角をフィルタの角度と異ならせるようにすれば、加工工数が少なくて済む。
【0030】
以上の実施例においては、作業機としてホイールローダを取り上げたが、作業機はこれに限るものではなく、ブルドーザや油圧ショベルであってもよい。塵埃の発生しやすい環境で使用されるものであって、外気を取り入れて空調する作業機であれば、塵埃のキャブ内への侵入を大幅に低減できる。
【符号の説明】
【0031】
1…空調機本体、1a…送風機、2…空調機用ダクト、2a、2b…シール面、2c、2d…開口、3…フィルタ(手段)、3a、3b…シール面、4…固定用プレート、5…蝶ねじ、6…シューストリップ、7…キャブ外壁、8…取り付け部材、10…外気導入装置、20…作業機(ホイールローダ)、21…アームシリンダ、22…バケットシリンダ、23…ベルクランク、24…リンク、25…アーム、28…バケット、29…作業装置、30…キャブ、31F、31R…車輪、32…エンジン、33…車体、34…前部車体、35…後部車体、36…ドア、41…カバー、42…外気取り入れ口、43…ルーバー、44…雨滴、45…ドアノブ、46…ヒンジ、47…邪魔板、51…床面、52…内気取り入れ口、53…足元吹き出し口、54…リア吹き出しダクト、55a、55b…リア吹き出し口、56…前方吹き出し立上ダクト、57a、57b、57c…前方吹き出し口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を取り込んで作業機のキャブ内を空調する空調機本体に接続され、この空調機本体への塵埃等の侵入を防止するフィルタ手段を備えた作業機用空調機の外気導入装置において、前記フィルタ手段が嵌合し前記空調機本体に接続される空調機用ダクトを設け、前記空調機用ダクトの前記フィルタ手段が嵌合する側の端部を、フランジ部とこのフランジ部に連接する傾斜面を有するテーパ部とで構成し、前記フィルタ手段はフランジ面とこのフランジ面に連接し前記空調機用ダクトのテーパ部とは異なる傾斜角のテーパ面を備えたことを特徴とする作業機用空調機の外気導入装置。
【請求項2】
前記フィルタ手段は樹脂製のフィルタ素材収容部と、このフィルタ素材収容部に連接する樹脂製の前記フランジ部とを有することを特徴とする請求項1に記載の作業機用空調機の外気導入装置。
【請求項3】
前記フィルタ手段の前面側に、枠状の固定用プレートを配置し、この固定用プレートをねじで押し込むことにより前記フィルタ手段を前記フランジ面と前記テーパ面で前記空調機用ダクトに密着させるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の作業機用空調機の外気導入装置。
【請求項4】
前記固定用プレートのさらに前面側に、前記フィルタ手段への塵埃等の侵入を防止する邪魔板を、キャブ外壁と僅かな間隔を置いて配置したことを特徴とする請求項3に記載の作業機用空調機の外気導入装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−144189(P2012−144189A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5148(P2011−5148)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】