説明

易カット性積層フィルム

【課題】易カット性、透明性、耐衝撃性、ヒートシール性に優れた包装用フィルムに好適な易カット性積層フィルムを開発することを目的とする。
【解決手段】密度が0.910〜0.940g/cmのエチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)から得られるフィルム基材の片面に、密度が0.916〜0.935g/cmのエチレンと炭素数5以上のα―オレフィンとのエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)95〜75重量%と高圧法低密度ポリエチレン(C)5〜25重量%とからなるエチレン系重合体組成物(C)から得られる熱融着層を有してなることを特徴とする易カット性積層フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は易カット性、透明性、耐衝撃性、ヒートシール性に優れた包装用フィルムに好適な易カット性積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体、所謂線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、高圧法低密度ポリエチレンに比べ、透明性、耐ストレスクラッキング性、低温ヒートシール性、ヒートシール強度、耐衝撃性等に優れておりその特徴を活かして食品包装用のシーラントとして広く用いられている。中でも、シングルサイト触媒で重合されたエチレン・α−オレフィンランダム共重合体は、更に透明性、低温ヒートシール性、夾雑物シール性、ホットタック性にも優れている。
一方、LLDPEは上記特性、即ち引裂き強度等の機械的強度が優れるが故に、包装用フィルムに用いた場合は被包装物を取出す際には易引裂き性(易カット性)に劣るという欠点がある。LLDPEからなるフィルムの易引裂き性を改良する方法として、高密度ポリエチレン層とエチレンと1−ブテンとの共重合による直鎖状低密度ポリエチレン層とを含む積層フィルムが提案されている(特許文献1)が、かかる積層フィルムは易引裂き性は改良されるものの、LLDPEフィルム本来の特徴である耐衝撃性が低下する場合がある。他の方法として、密度が0.890〜0.915g/cmの超低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの組成物からなるヒートシール層を有する易引裂き性を有するシーラントフィルムが提案されている(特許文献2)が、ヒートシール層に用いられる低密度ポリエチレンの密度が低すぎるためか、易カット性は不十分である。
【0003】
【特許文献1】特開平5−229079号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平10−315405公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、本来エチレン・α―オレフィンランダム共重合体からなるフィルムが有する耐衝撃性、ヒートシール性を損なうことなく、易カット性に優れた包装用フィルムに好適な積層フィルムを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、密度が0.910〜0.940g/cmのエチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)から得られるフィルム基材の片面に、密度が0.916〜0.935g/cmのエチレンと炭素数5以上のα―オレフィンとのエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)95〜70重量%と高圧法低密度ポリエチレン(C)5〜30重量%とからなるエチレン系重合体組成物(C)から得られる熱融着層を有してなることを特徴とする易カット性積層フィルムに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の易カット性積層フィルムは、透明性、易カット性、耐衝撃性、ヒートシール性に優れた包装用フィルムに好適な積層フィルムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
エチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)
本発明の易カット性積層フィルムのフィルム基材を構成するエチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)は、密度が0.910〜0.940g/cm、好ましくは0.915〜0.925g/cmの範囲にある。
密度が0.910g/cm未満のエチレン・1−ブテンランダム共重合体をフィルム基材として用いる積層フィルムは、易カット性に劣る虞があり、一方、密度が0.940g/cmを超えるエチレン・1−ブテンランダム共重合体をフィルム基材として用いる積層フィルムは、耐衝撃性に劣る虞がある。とくに、密度が0.915〜0.925g/cmの範囲のエチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)から得られるフィルムをフィルム基材として用いる積層フィルムは、易カット性と耐衝撃性のバランスに優れるので好ましい。
本発明のエチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)は、好ましくは示差走査熱量計(DSC)を用い、昇温速度10℃/分で測定した熱融解曲線から求めた融点(Tm)が110〜130℃、より好ましくは115〜125℃の範囲にある。
本発明のエチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)における1−ブテンの含有量は、密度及び好ましくは融点が上記範囲にある限りとくに限定はされないが、通常、0.5〜6モル%、好ましくは3〜5モル%の範囲にある。
本発明のエチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)のメルトフローレート(MFR:ASTM D1238 荷重2160g、温度190℃)は、フィルム形成能がある限りとくに限定はされないが、通常0.5〜5g/10分、好ましくは1〜3g/10分の範囲にある。MFRが0.5g/10分未満のエチレン・1−ブテンランダム共重合体を積層フィルムのフィルム基材に用いる場合は、製膜時の押出機内負荷による製膜速度の低下、樹脂温度上昇によるゲル化、メルトフラクチャー、層界面の不安定化が起こる虞があり、一方、5g/10分を超えるエチレン・1−ブテンランダム共重合体を積層フィルムのフィルム基材に用いる場合は、得られる包装体(袋)の耐衝撃性(破袋強度)が劣る虞がある。とくにエチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)として、MFRが1〜3g/10分の範囲にある共重合体をフィルム基材に用いてなる積層フィルムは、易カット性と耐衝撃性のバランスに優れている。
【0008】
エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)
本発明の易カット性積層フィルムの熱融着層を構成する成分であるエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)は、密度が0.916〜0.935g/cm、好ましくは0.916〜0.925g/cmの範囲にあるエチレンと炭素数5以上のα―オレフィン、例えば、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン、好ましくは炭素数が6以上のα―オレフィンとのランダム共重合体である。
密度が0.916未満のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体を熱融着層として用いる積層フィルムは、易カット性に劣る虞があり、一方、密度が0.935g/cmを超えるエチレン・α―オレフィンランダム共重合体を熱融着層として用いる積層フィルムは、耐衝撃性に劣る虞がある。
本発明のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)は、好ましくは示差走査熱量計(DSC)を用い、昇温速度10℃/分で測定した熱融解曲線から求めた融点(Tm)が110〜125℃、より好ましくは115〜120℃の範囲にある。
本発明のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)におけるα―オレフィンの含有量は、密度及び好ましくは融点が上記範囲にある限りとくに限定はされないが、通常、1〜5モル%、好ましくは2〜5モル%の範囲にある。
エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)のメルトフローレート(MFR:ASTM D1238 荷重2160g、温度190℃)は、後述の高圧法低密度ポリエチレン(C)とのエチレン系重合体組成物を用いた際に、フィルム形成能がある限りとくに限定はされないが、通常0.5〜20g/10分、好ましくは1〜10g/10分の範囲にある。
又、かかるエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)は、分子量分布(重量平均分子量:Mw、と数平均分子量:Mn、との比:Mw/Mnで表示)が通常1.5〜4.0、好ましくは1.8〜3.5の範囲にある。このMw/Mnはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
【0009】
上記のようなエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)は、チーグラー触媒、シングルサイト触媒等を用いた従来公知の製造法により調整することができるが、シングルサイト触媒(メタロセン触媒)により得られた共重合体がとくに好ましい。このメタロセン化合物を含む触媒は、(a)遷移金属のメタロセン化合物と、(b)有機アルミニウムオキシ化合物と、(c)担体とから形成されることが好ましく、さらに必要に応じて、これらの成分と(d)有機アルミニウム化合物および/または有機ホウ素化合物とから形成さていてもよい。
なお、このようなメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒、および触媒を用いたエチレン・α―オレフィン共重合体(B)の調整方法は、たとえば特開平8−269270号公報に記載されている。
【0010】
高圧法低密度ポリエチレン(C)
本発明の易カット性積層フィルムの熱融着層を構成する他の成分である高圧法低密度ポリエチレン(C)は通常、密度が0.905〜0.930g/cm、好ましくは0.910〜0.925g/cm、MFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度190℃)が通常、0.5〜30g/10分、好ましくは1〜10g/10分の高圧下で重合されるエチレンの単独重合体、若しくは5重量%以下の、他のα−オレフィンあるいは酢酸ビニル等のビニル化合物との共重合体で、通常高圧法低密度ポリエチレンと呼ばれている低密度ポリエチレンの範疇に入るエチレン系重合体である。
本発明の高圧法低密度ポリエチレン(C)は、通常、示差走査熱量計(DSC)を用い、昇温速度10℃/分で測定した熱融解曲線から求めた融点(Tm)が95〜120℃、より好ましくは100〜115℃の範囲にある。
【0011】
エチレン系重合体組成物
本発明の易カット性積層フィルムの熱融着層を構成するエチレン系重合体組成物は、前記エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)95〜70重量%、好ましくは90〜80重量%と高圧法低密度ポリエチレン(C)5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%とからなる組成物である。
高圧法低密度ポリエチレン(C)の量が5重量%未満のエチレン系重合体組成物を熱融着層として用いる積層フィルムは、易カット性に劣る虞があり、一方、30重量%を超えるエチレン系重合体組成物を熱融着層として用いる積層フィルムは、ヒートシール性の低下、耐衝撃性の低下、透明性の低下等が起こる虞がある。
エチレン系重合体組成物のメルトフローレート(MFR:ASTM D1238 荷重2160g、温度190℃)は、フィルム形成能がある限りとくに限定はされないが、通常0.5〜20g/10分、好ましくは1〜10g/10分の範囲にある。
【0012】
本発明に係わるエチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)、高圧法低密度ポリエチレン(C)あるいはエチレン系重合体組成物には本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加剤或いは他の重合体を必要に応じて配合することができる。
中でも、易カット性積層フィルムのフィルム基材を構成するエチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)にはシリカ、タルク、雲母、ゼオライトや更には金属アルコキシドを焼成して得た金属酸化物等の無機化合物粒子、ポリメタクリル酸メチル、メラミンホルマリン樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリエステル樹脂等の有機化合物粒子等、種々公知のブロッキング防止剤を0.01〜1重量%添加しておくと、更に耐ブロッキング性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。これらの中でも、シリカ、ポリメタクリル酸メチルが耐ブロッキング性、透明性の面から特に好ましい。
【0013】
又、易カット性積層フィルムのフィルム基材を構成するエチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)には、炭化水素系、脂肪酸系、高級アルコ−ル系、脂肪族アミド系、金属石鹸系、エステル系等、種々公知の滑剤を0.01〜1重量%添加しておくと、更にスリップ性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。これらの中でも即効性のあるエルカ酸アミドと遅効性のビスオレイン酸アミドあるいはベヘニン酸アミド等の併用系にするとフィルム成形直後とその後の裁断加工時、更には印刷、ラミネ−ト、製袋加工時等の作業性をバランス良く改善することができる。
【0014】
易カット性積層フィルム
本発明の易カット性積層フィルムは、前記エチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)から得られるフィルム基材の片面に、前記エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)と高圧法低密度ポリエチレン(C)とからなるエチレン系重合体組成物から得られる熱融着層を有してなる積層フィルムである。
易カット性積層フィルムの厚さは用途により種々決定され得るが、通常フィルム基材の厚さが16〜120μm、好ましくは24〜80μm、熱融着層の厚さが4〜30μm、好ましくは6〜20μm範囲にあり、多層フィルム全体の厚さが、20〜150μm、好ましくは30〜100μmの範囲にある。
易カット性積層フィルムのフィルム基材は、単層でもよいが、中間層と裏面層の二層あるいは三層以上の多層であってもよい。フィルム基材を中間層と裏面層にする場合は、通常中間層の厚さが12〜90μm、好ましくは18〜60μm、裏面層の厚さが4〜30μm、好ましくは6〜20μm範囲にある。
本発明の易カット性積層フィルムは、好ましくは縦方向(機械方向:MD)の引裂強度が170N/cm以下、より好ましくは120〜160N/cmの範囲にある。引裂強度が170N/cmを超える積層フィルムは易カット性に劣る虞があり、引裂強度が120N/cmを下回ると耐衝撃性が極端に低下する虞がある。
本発明の易カット性積層フィルムは、印刷性あるいは後述の基材層を含め他のフィルムとの接着性を改良するために、フィルム基材の表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0015】
本発明の易カット性積層フィルムは、フィルム基材の片面(熱融着層が形成されていない面)に熱可塑性樹脂からなるシート状またはフィルム状のもの、紙、アルミニウム箔等からなる基材層を積層してもよい。
かかる基材層として熱可塑性樹脂は用いる場合は、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。
又、かかる熱可塑性樹脂フィルムからなる基材層は、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであっても良いし、1種或いは2種以上の共押し出し成形、押出しラミネート、ドライラミネート、サーマルラミネート等で得られる積層体であっても良い。中でも、二軸延伸熱可塑性フィルム、とくにポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドからなる二軸延伸熱可塑性フィルムが好ましい。
又、基材層の片面あるいは両面を、本発明の易カット性フィルムのフィルム基材との接着性を改良するために、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。基材層の厚さは、通常5〜1000μm、好ましくは7〜100μmの範囲にある。
【0016】
本発明の易カット性積層フィルムを製造する方法は種々公知のフィルム成形方法、例えば、多層T−ダイフィルム成形方法、多層インフレーションフィルム成形方法を採用し得る。その際、フィルム成形する前に、熱融着層を構成する上記組成のエチレン系重合体組成物を予め用意しておいてもよいし、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)及び高圧法低密度ポリエチレン(C)を所定量計量して直接フィルム成形機に投入してもよい。かかる積層フィルムは夫々別個にフィルムを成形後貼り合せてもよいが、二台あるいは三台以上の押出機を用い、マルチマニホールドあるいはフィードブロックを備えたT−ダイを用いて共押出し成形による方法、逐次合流タイプ、逐次・同時併用合流タイプあるいは同時合流タイプの多層インフレーションダイを用いて共押出し成形による方法が好ましく、とくにT−ダイを用いる方法が、より透明性に優れた積層フィルムが得られる。
T−ダイを用いて共押出し成形による方法を用いる場合は、通常、190℃〜250℃の押出温度でT−ダイより共押出し、30℃〜70℃のキャスティングロールで急冷した後、ラミネート層をコロナ処理する方法を採用し得る。また、T−ダイより共押出し、30℃〜70℃のキャスティングロールで急冷する前に、共押出しされた溶融状態の積層フィルムを引き伸ばすことにより、より易カット性に優れた積層フィルムが得られる。
【実施例】
【0017】
次に本発明を、実施例を通して説明するが、本発明はそれら実施例によって限定されるものではない。
【0018】
本発明における各種試験法および評価法は次の通りである。
(1)密度(g/cm
JIS K 7210に準拠したMFR測定装置にて作製したストランドを、蒸留水が沸騰してから60分間煮沸後、60分かけて室温まで徐冷した後、JIS K 7112に準拠し、D法(密度勾配管)により測定した。
(2)融点(℃)
測定には、示差走査熱量計(DSC)としてティ・エイ・インスツルメント社製 Q100を用いた。試料約5mgを精秤し,JIS K 7121に準拠し,10℃から加熱速度:10℃/分で180℃迄昇温して試料を一旦融解させた後,180℃に10分間維持し,冷却速度:10℃/分で10℃迄降温して結晶化させた後,10℃に5分間維持した後,再度加熱速度:10℃/分で180℃迄昇温して熱融解曲線を得た時の融解ピークの頂点温度を融点(Tm)とした。
(3)引裂強度(N/cm)
東洋精機製作所製の軽荷重引裂試験機を使用して、引裂強度を測定した。(測定器はJIS P 8116 及び ASTM1922を参考に設計)。積層フィルムから長辺が積層フィルムの機械方向(MD)となるようにして長辺63.5mm、短辺が50mmの長方形に切り出し、短辺の中心に12.7mmの切り込みを入れて引裂強度を測定した。
(4)破袋強度(回)
積層フィルムのコロナ処理したフィルム基材層面にウレタン型接着剤〔武田薬品工業製:商品名 タケラックA968;20%、タケラックA8;20%及び酢酸エチル;60%〕を塗布・乾燥後、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを貼り合わせ(ドライラミネート)して多層フィルムを用意した。得られた多層フィルムの熱融着層面を内側にして縦150mm×横130mmの3方シール袋に加工し、この3方シール袋に水250mlを充填して密封した。その後5℃雰囲気下に24時間以上放置し、同雰囲気下にて重さ1kgの重りを載せて0.7mの高さから水平落下させ、破袋するまでの落袋回数を計測した。
(5)ヘイズ(%)
JIS K 7136に準拠し、積層フィルム1枚のヘイズ(%)を測定した。測定装置はHaze Meter(日本電色工業社製 NDH−2000)を使用した。
【0019】
本発明の実施例及び比較例で用いた重合体及び組成物は次の通りである。
(1) エチレン・1−ブテンランダム共重合体(EB−1)
密度;0.919g/cm、MFR;2.0g/10分、融点;117℃。
(2)エチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(EO−1)
密度;0.918g/cm、MFR;3.8g/10分、融点;115℃。
(3)エチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(EO−2)
密度;0.913g/cm、MFR;3.8g/10分、融点;114℃。
(4)高圧法低密度ポリエチレン(HPL−1)
密度;0.918g/cm、MFR;1.1g/10分、融点;108℃。
(5)高圧法低密度ポリエチレン(HPL−2)
密度;0.923g/cm、MFR;4.2g/10分、融点;111℃。
【0020】
実施例1
フィルム基材用の重合体としてエチレン・1−ブテンランダム共重合体(EB−1)及び熱融着層用の重合体組成物としてエチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(EO−1)85重量%及び高圧法低密度ポリエチレン(HPL−1)15重量%からなるエチレン系重合体組成物を用意し、それぞれ二台の40mmφ押出機を用いて210℃で溶融した後、フィードブロックを備えたダイ幅0.4mのT−ダイより210℃で共押出しし、55℃のキャスティングロールで急冷した後、フィルム基材の表面をコロナ処理して、層比がフィルム基材層:80%及び熱融着層:20%からなる厚さ40μmの積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムを前記方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0021】
実施例2
実施例1で用いたエチレン系重合体組成物に代え、熱融着層用の重合体組成物としてエチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(EO−1)85重量%及び高圧法低密度ポリエチレン(HPL−2)15重量%からなるエチレン系重合体組成物を用い、層比をフィルム基材層:85%及び熱融着層:15%とする以外は、実施例1と同様に行い、厚さ40μmの積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0022】
比較例1
実施例1で用いたエチレン系重合体組成物に代え、熱融着層用の重合体組成物としてエチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(EO−1)65重量%及び高圧法低密度ポリエチレン(HPL−2)35重量%からなるエチレン系重合体組成物を用いる以外は実施例1と同様に行い、厚さ40μmの積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0023】
比較例
実施例1で用いたエチレン系重合体組成物に代え、熱融着層用の重合体組成物としてエチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(EO−2)80重量%及び高圧法低密度ポリエチレン(HPL−2)20重量%からなるエチレン系重合体組成物を用いる以外は実施例1と同様に行い、厚さ40μmの積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0024】
比較例3
実施例1で用いたエチレン系重合体組成物に代え、熱融着層用の共重合体としてエチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(EO−1)を単独で用いる以外は実施例1と同様に行い、厚さ40μmの積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0025】
比較例4
実施例1で用いたエチレン系重合体組成物に代え、熱融着層用の共重合体としてエチレン・1−ブテンランダム共重合体(EB−1)を単独で用いる以外は実施例1と同様に行い、厚さ40μmの積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0026】
比較例5
実施例1で用いたエチレン・1−ブテンランダム共重合体(EB−1)に代えてフィルム基材用共重合体としてエチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(EO−1)及び熱融着層用の共重合体としてエチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(EO−1)を単独で用いる以外は実施例1と同様に行い、厚さ40μmの積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から明らかなように、フィルム基材用の共重合体として密度が0.910〜0.940g/cmの範囲のエチレン・1−ブテンランダム共重合体を、熱融着層として密度が0.916〜0.935g/cmの範囲のエチレン・1―ヘキセンランダム共重合体:95〜70重量%と高圧法低密度ポリエチレン:5〜30重量%とからなるエチレン系重合体組成物を用いることにより、引裂強度が低く(易カット性に優れ)且つ破袋強度に優れた積層フィルム(実施例1及び実施例2)が得られる。
それに比べ、熱融着層として高圧法低密度ポリエチレンの量を35重量%とした積層フィルム(比較例1)は、易カット性は優れるものの、破袋強度及び透明性が劣り、一方、熱融着層として高圧法低密度ポリエチレンを添加しない場合(比較例3)は、破袋強度は優れるものの易カット性に劣り、いずれも易カット性及び破袋強度がともに優れた積層フィルムは得られないことが明らかである。
また、熱融着層を構成するエチレン系重合体組成物の成分として密度が0.913g/cmと0.916g/cm未満のエチレン・1―ヘキセンランダム共重合体を用いた積層フィルム(比較例2)は、破袋強度は優れるものの、易カット性が劣る。
また、全層にエチレン・1−ブテンランダム共重合体を用いた(積層)フィルム(比較例4)は、易カット性は優れるものの破袋強度が劣り、全層にエチレン・1―ヘキセンランダム共重合体を用いた(積層)フィルム(比較例5)は、破袋強度は優れるものの易カット性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の易カット性積層フィルムは、易カット性、透明性、耐衝撃性及びヒートシール性に優れるので、かかる特徴を活かして単独でもあるいは基材層と積層して、易カット性を求められる食品、菓子、スナック、薬品等の包装袋やカット性テープ、スタンディングパウチ、チューブ等として使用される易カット性の包装用フィルムとして用い得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.910〜0.940g/cmのエチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)から得られるフィルム基材の片面に、密度が0.916〜0.935g/cmのエチレンと炭素数5以上のα―オレフィンとのエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(B)95〜70重量%と高圧法低密度ポリエチレン(C)5〜30重量%とからなるエチレン系重合体組成物(C)から得られる熱融着層を有してなることを特徴とする易カット性積層フィルム。
【請求項2】
エチレン・1−ブテンランダム共重合体(A)の密度が0.915〜0.925g/cmである請求項1記載の易カット性積層フィルム。
【請求項3】
フィルム基材の他の片面に、基材層が積層されてなる請求項1または2に記載の易カット性積層フィルム。
【請求項4】
基材層が、二軸延伸熱可塑性フィルムである請求項3記載の易カット性積層フィルム。

【公開番号】特開2006−56129(P2006−56129A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240180(P2004−240180)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】