説明

洗剤化合物の製造方法

本発明は、コバルト基触媒を用い比較的高圧で行って通常液体及び通常固体の炭化水素を生成するフィッシャー・トロプシュ法の炭化水素質生成物流を、洗剤炭化水素を含有する中間フラクションよりも低沸点の軽質フラクション、洗剤炭化水素を含有する中間沸点のフラクション、及び洗剤炭化水素を含有する該中間沸点フラクションよりも高沸点の重質フラクションに分離した後、該中間沸点フラクション中に存在する洗剤炭化水素を洗剤に転化する、比較的少量のイソパラフィンを含有する洗剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コバルト基触媒を用いて通常液体及び通常固体の炭化水素を生成するフィッシャー・トロプシュ法の炭化水素質生成物流であって、洗剤炭化水素の沸点範囲よりも低い温度から始まって、洗剤炭化水素の沸点範囲よりも高い温度までの沸点範囲の沸点を有する該炭化水素質生成物流を、洗剤炭化水素を含有する中間フラクションよりも低沸点の軽質フラクション、洗剤炭化水素を含有する中間沸点のフラクション、及び洗剤炭化水素を含有する該中間沸点フラクションよりも高沸点の重質フラクションに分離した後、該中間沸点フラクション中に存在する洗剤炭化水素を洗剤に転化することを特徴とする比較的少量のイソパラフィンを含有する洗剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシャー・トロプシュ法は当該技術分野で周知である。合成ガス、即ち、水素と一酸化炭素との混合物は、通常、第VIII族金属又は金属化合物を含む触媒上、高温及び通常高圧で、主としてパラフィン系及び/又はオレフィン系炭化水素及び水に転化する。反応条件(温度、圧力、触媒、H/CO比、GHSV等)により、生成物の特性(例えばC選択性、オレフィン含有量、酸素化物含有量等)は変化し得る。現時点では、180〜270℃の温度でコバルト基触媒を用いて、通常固体の炭化水素を多量に含む主として非常に重質のパラフィンを作るのに関心があるのは明らかである。このようなフィッシャー・トロプシュ法では、相当量の洗剤炭化水素、即ち、好適には炭素原子数9〜18、好ましくは10〜17の化合物が生成する。
【0003】
フィッシャー・トロプシュ法で製造した線状オレフィンから、洗剤、特に生分解性洗剤を製造することは、文献に記載されている。例えば、ACS Symp.Series No.238,18−33(191 ACS Nat.Meeting Div.Pet.Chem.Sym.ニューヨーク,1986年4月13〜18日)には、低温及び高温フィッシャー・トロプシュ法のC〜C15留分は、ベンゼンをアルキル化してアルキルベンゼンとし、次いでスルホン化及び中和によりアルキルベンゼンをアルキルベンゼンスルホネートに転化するのに好適な原料であることが記載されている。鉄基触媒を用いたフィッシャー・トロプシュ法の直接生成物は、むしろ大量のオレフィンを含んでいる。例えば高温法では、オレフィン(60%は直鎖生成物)を約70%生成し、低温法では、オレフィン(93%は直線性)を約25%生成する。またUS 3,674,885には、フィッシャー・トロプシュ法で合成したパラフィン−オレフィン混合物をベンゼンのアルキル化に使用することが記載されている。アルキル化混合物からパラフィンを分離し、塩素化ユニットに再循環し、ユニットのパラフィン−クロロパラフィン流出流混合物を新しいフィッシャー・トロプシュオレフィン−パラフィン混合物と組合わせ、更にこの組合せ原料をベンゼンのアルキル化に使用している。洗剤は、WO 99/59942に記載されるようなパラフィンからも直接、製造できる。
洗剤の製造に、線状炭化水素についての工業的な要求が存在するのは明らかである。一般に、生成物が線状であるほど、ますます要求が高まる。例えばUS 6,392,109の第1欄12〜13行及び28〜31行を参照すると、分岐洗剤炭化水素よりも線状洗剤炭化水素の方が好ましいとしている。したがって、分岐炭化水素含有量が(非常に)少ない洗剤炭化水素について要求があることは明らかである。
【特許文献1】US 3,674,885
【特許文献2】WO 99/59942
【特許文献3】US 6,392,109
【特許文献4】AU 698392
【特許文献5】WO 99/34917
【特許文献6】PCT/EP02/06373
【非特許文献1】ACS Symp.Series No.238,18−33(191 ACS Nat.Meeting Div.Pet.Chem.Sym.ニューヨーク,1986年4月13〜18日)
【非特許文献2】“Detergent Manufacture Including Zeolite Builders and Other New Materials”Ed.Sitig,Noyes Data Corp.,New Jersey,1979
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コバルト基触媒を用いてフィッシャー・トロプシュ反応を行うと、高圧では、分岐炭化水素の量が減少することが今回、見い出された。したがって、同じ反応温度を用いた場合、高圧では、分岐が少なく、低圧では分岐が多くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コバルト基触媒を用い25バラを超える圧力で行って通常液体及び通常固体の炭化水素を生成するフィッシャー・トロプシュ法の炭化水素質生成物流であって、好適には洗剤炭化水素の沸点範囲よりも低い温度から始まって、洗剤炭化水素の沸点範囲よりも高い温度までの沸点範囲の沸点を有する該炭化水素質生成物流を、洗剤炭化水素を含有する中間フラクションよりも低沸点の軽質フラクション、洗剤炭化水素を含有する中間沸点のフラクション、及び洗剤炭化水素を含有する該中間沸点フラクションよりも高沸点の重質フラクションに分離した後、該中間沸点フラクション中に存在する洗剤炭化水素を洗剤に転化することを特徴とする比較的少量のイソパラフィンを含有する洗剤の製造方法に関する。
【0006】
更に本発明は、コバルト基触媒を用い25バラを超える圧力で行って通常液体及び通常固体の炭化水素を生成するフィッシャー・トロプシュ法の炭化水素質生成物流を、洗剤炭化水素を含有する中間フラクションよりも低沸点の軽質フラクション、洗剤炭化水素を含有する中間沸点のフラクション、及び洗剤炭化水素を含有する該中間沸点フラクションよりも高沸点の重質フラクションに分離することにより得られた中間沸点フラクション中に存在する洗剤炭化水素を、洗剤に転化することを特徴とする比較的少量のイソパラフィンを含有する洗剤の製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明方法は、25バラを超えるあらゆる好適な圧力で行うことができる。フィッシャー・トロプシュ法は、好ましくは35バラを超え、更に好ましくは45バラを超え、なお更に好ましくは55バラを超える圧力で行われる。圧力が高いほど、分岐洗剤炭化水素の量は少なくなる。フィッシャー・トロプシュ法での実用的な上限は、200バラであり、この方法は、好ましくは120バラ未満、更に好ましくは100バラ未満の圧力で行われる。フィッシャー・トロプシュ法は、好適には170〜290℃、好ましくは180〜270℃、更に好ましくは200〜250℃の温度で行われる低温法である。高温では、合成ガスの炭化水素への転化率は高いが、分岐(又はイソパラフィンの形成)の程度も高くなる。前記温度では、25バラを超える圧力との組合わせで、十分な合成ガス転化率が得られる一方、分岐はなお受容可能(低い)の水準である。イソパラフィンの量は、C10〜C18炭化水素の全量に対し好適には20重量%未満、特に10重量%未満、好ましくは7重量%未満、更に好ましくは4重量%未満である。比較的少量のイソパラフィンは、25バラ以下の圧力で生成したイソパラフィンと比較した場合の25バラを超える圧力で生成したイソパラフィンの減少量に関係する。好適にはこれは、20バラの圧力と比べた場合、少なくとも5モル%少ないイソパラフィンを意味する。
【0008】
フィッシャー・トロプシュ法では、水素と一酸化炭素との混合物は、炭化水素及び水に接触転化する。フィッシャー・トロプシュ触媒は、当該技術分野で公知である。この方法に使用される触媒は、触媒活性成分として、元素の周期表の第VIII族金属を含むことが多い。特定の触媒活性金属としては、ルテニウム、鉄、コバルト及びニッケルが挙げられる。本発明方法では、コバルトが触媒活性金属である。好ましい炭化水素質原料は、天然ガス又は随伴ガスである。これらの原料からは、通常、H/CO比が約2の合成ガスが得られる。
【0009】
触媒活性金属は、多孔質担体に担持することが好ましい。多孔質担体は、当該技術分野で公知の好適な耐火性金属酸化物又はシリケート又はそれらの組合わせのいずれからも選択できる。好ましい多孔質担体の特定例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、ガリア及びそれらの混合物、特にシリカ、アルミナ及びチタニアが挙げられる。
担体上の触媒活性金属の量は、担体材料100重量部当り、好ましくは3〜300重量部、更に好ましくは10〜80重量部、特に20〜60重量部の範囲である。
【0010】
所望ならば、触媒は、促進剤として1種以上の金属又は金属酸化物も含有してよい。好適な金属酸化物促進剤は、元素の周期表第IIA、IIIB、IVB、VB及びVIB族、或いはアクチニド及びタンタニドから選択できる。特に、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム、ウラン、バナジウム、クロム及びマンガン、の酸化物が、極めて好適な促進剤である。本発明に使用されるワックスの製造用触媒の特に好ましい金属酸化物促進剤は、マンガン及びジルコニウム酸化物である。好適な金属促進剤は、周期表第VIIB又はVIII族から選択してもよい。レニウム及び第VIII族貴金属は、特に好適で、白金及びパラジウムが特に好ましい。触媒に存在する促進剤の量は、好適には、担体100重量部当り0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜40重量部、更に好ましくは1〜20重量部の範囲である。最も好ましい促進剤は、バナジウム、マンガン、レニウム、ジルコニウム及び白金から選択される。
【0011】
触媒活性金属及び存在すれば促進剤は、含浸、混練及び押出のような、いずれの好適な処理によっても担体材料上に沈着させてよい。金属及び適切ならば促進剤を担体材料上に沈着後、通常、この装填担体に対して仮焼を行う。この仮焼処理の効果は、結晶水を除去し、揮発性分解性生成物を分解し、また有機及び無機化合物を酸化物に転化することである。仮焼後、得られた触媒は、水素又は水素含有ガスと、通常、約200〜350℃の温度で接触させることにより、活性化してよい。フィッシャー・トロプシュ触媒の他の製造法は、混練/粉砕(mulling)工程、及び引き続き、多くの場合、押出、乾燥/仮焼及び活性化工程を含む。
【0012】
接触転化法は、当該技術分野で公知の従来の合成条件下で行ってよい。接触転化は、通常、以下に説明する温度で行ってよい。接触転化法では、特にC炭化水素が75重量%より多く、好ましくは85重量%より多く形成される。触媒及び転化条件によっては、重質ワックス(C20)の量は、60重量%以下、時には70重量%以下、時には更に85重量%以下であるかも知れない。高圧力と組合せて、コバルト触媒を使用し、H/CO比が低く(特に1.7又は更にはそれ以下)、かつ、温度が低い(200〜250℃)ことが好ましい。コークスの生成を回避するため、H/CO比は、少なくとも0.6であることが好ましい。炭素原子数が少なくとも20の生成物を得るため、ASF−α値(Anderson−Schulz−Flory連鎖成長ファクター)が少なくとも0.925、好ましくは少なくとも0.935、更に好ましくは少なくとも0.945、なお更に好ましくは少なくとも0.955となるような条件下でフィッシャー・トロプシュ反応を行うのが特に好ましい。
この目的に最も好適な触媒は、コバルト含有フィッシャー・トロプシュ触媒である。このような触媒は、文献(例えばAU 698392及びWO 99/34917参照)に記載されている。
【0013】
フィッシャー・トロプシュ法は、スラリーFT法、沸騰床法又は固定床FT法、特に多管式固定床であってよい。フィッシャー・トロプシュ生成物流は、通常、水流と、未転化合成ガス、二酸化炭素、不活性ガス、及びC〜C、任意にC化合物を含むガス状流とに分離される。完全な炭化水素質生成物は、好適にはC〜C200フラクション、好ましくはC〜C150フラクションを含有する。1種以上の軽質フラクション、洗剤炭化水素含有中間フラクション及び重質フラクションへの分離は、好適には蒸留により行われる。市販の装置が使用できる。蒸留は、大気圧で行ってよいが、減圧も使用してよい。好ましくは、大気圧を使用して、軽質フラクションを除去し、真空蒸留を使用して、重質フラクションを除去することである。
【0014】
本発明で製造すべき洗剤炭化水素は、好適にはC10〜C18炭化水素、好ましくはC10〜C17炭化水素、更に好ましくはC10〜C13炭化水素、又は更に好ましくはC14〜C17炭化水素である。C10〜C17炭化水素、特にC10〜C12又はC14〜C17炭化水素を使用すると、最も好適な洗剤が得られる。
【0015】
本発明の中間沸点フラクションは、洗剤炭化水素の全フラクションに対し、好適には80重量%以上、好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、なお更に好ましくは98重量%以上含有する。洗剤炭化水素は、主として(即ち、95重量%以上)パラフィン(通常、60〜95重量%)、オレフィン(通常、35〜5重量%)及び酸素化物(通常、主としてアルコール0.1〜5重量%)で構成される。これらパラフィン、オレフィン及びアルコールの骨格は同じで、分岐炭素鎖を通常、2〜20重量%、更に通常、4〜14重量%含有する。通常、分岐の少なくとも80%、更に通常、少なくとも90%を形成するメチル基は、存在する分岐の主な形態である。
【0016】
軽質フラクションの沸点範囲は、好適には150℃未満、好ましくは160℃未満、更に好ましくは170℃未満である。炭化水素質フィッシャー・トロプシュ流からは、1つ以上の軽質沸点フラクションが取り出せることが観測される。これらフラクションの全ては、好適には前記温度未満の沸点を有する。軽質フラクションは、前記温度より高い沸点を有するものでもよいが、これは洗剤炭化水素の損失となる。
【0017】
重質フラクションは、好適には315℃を超え、好ましくは305℃を超える温度から始まる沸点範囲を有する。炭化水素質フィッシャー・トロプシュ流からは、1つ以上の重質沸点フラクション、好適には全て前記温度を超える沸点を有するフラクションが取り出せることが観測される。重質フラクションは、前記温度未満の低い沸点を有するものでもよいが、これは洗剤炭化水素の損失となる。本発明の他の実施態様では、重質フラクションの沸点範囲は、250℃を超え、好ましくは240℃を超える。このようにして、主としてC10〜C13洗剤炭化水素が生成する。
【0018】
中間フラクションの沸点範囲は、好適には170〜315℃、好ましくは170〜240℃(主としてC10〜C13洗剤炭化水素を含む)、又は好ましくは250〜315℃(主としてC14〜C17洗剤炭化水素を含む)である。
【0019】
中間フラクションは、極めて好適には、C10〜C18炭化水素、好ましくはC10〜C17炭化水素、更に好ましくはC10〜C13炭化水素又は更に好ましくはC14〜C17炭化水素の範囲の洗剤炭化水素を、フラクションの合計重量に対し、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、更に好ましくは少なくとも96重量%含有する。
【0020】
洗剤炭化水素含有中間フラクションよりも高沸点の重質フラクションに対しては、水素化分解処理を施して、中間蒸留物よりも高沸点のフラクション中に存在するいずれの炭化水素も中間蒸留物の沸点範囲の沸点を有する炭化水素に転化することが好ましい。この水素化分解/水素化異性化工程では、好適な触媒の存在下に1つ以上の重質フィッシャー・トロプシュフラクションの炭化水素生成物を水素で水素化分解及び水素化異性化することにより、炭化水素生成物から炭化水素燃料が製造される。触媒は、通常、触媒活性成分として、元素の周期表第VIB及びVIII族から選ばれた1種以上の金属、特にモリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金及びパラジウムから選ばれた1種以上の金属を含有する。触媒は、好ましくは触媒活性成分としてニッケル、白金及びパラジウムから選ばれた1種以上の金属を含有する。触媒活性成分として白金を含む触媒は、第二水素化転化段階で使用するのに特に好適であることが見い出された。
【0021】
水素化分解用触媒は、通常、担体として耐火性金属酸化物を含有する。この担体材料は、非晶質でも結晶性でもよい。好適な担体材料としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア及びそれらの混合物が挙げられる。担体は、単独でも前記担体材料の組合わせでもよく、また1種以上のゼオライトを含有してもよい。本発明方法で使用される触媒に含まれる好ましい担体材料は、シリカ、アルミナ及びシリカ−アルミナである。特に好ましい触媒は、非晶質シリカ−アルミナ担体上に担持した白金である。
【0022】
この方法の水素化分解/水素化異性化段階では、重質フィッシャー・トロプシュ生成物は、触媒の存在下、高温高圧で水素と接触させる。通常、炭化水素燃料の生成に必要な温度は、200〜400℃、好ましくは275〜375℃の範囲である。通常適用される圧力は、20〜250バール、更に好ましくは40〜200バールの範囲である。水素は、ガスの1時間当り空間速度100〜10000Nl/l/hr、好ましくは500〜5000Nl/l/hrで供給してよい。炭化水素原料は、重量の1時間当り空間速度0.1〜5kg/l/hr、好ましくは0.25〜2kg/l/hrで供給してよい。水素と炭化水素原料との比は、100〜5000Nl/kgの範囲であってよく、好ましくは250〜2500Nl/kgである。
【0023】
水素化分解/水素化異性化工程で行う水素化分解の程度は、沸点370℃を超えるフラクションの転化程度を求めることにより測定できる。通常、水素化分解/水素化異性化段階は、転化率40%以上で操作される。
【0024】
水素化分解段階で生成した炭化水素燃料は、多数の異なる燃料フラクション、例えばナフサ、ケロシン及びガス油フラクションの沸点を有する炭化水素を含有する。これら炭化水素燃料の適切なフラクションへの分離は、当該技術分野に公知の蒸留法を用いて便利に行える。
【0025】
本発明方法では、前記蒸留処理で得られるいずれの不合格流も燃料製造プロセスの追加の原料流として極めて好適に使用できる。
本発明の好ましい実施態様では、フィッシャー・トロプシュ法の炭化水素質生成物流、更に特に洗剤炭化水素含有中間フラクションは、蒸留前に水素化する。このようにして、オレフィン又は酸素化物は全て除去されて、炭素分布範囲の狭い洗剤炭化水素が最適生産量で得られる。更にこのような水素化フラクションは、一層安定かつ低腐蝕性で輸送及び/又は貯蔵が更に容易になる。
【0026】
本発明の他の実施態様では、蒸留後得られた中間フラクションは、洗剤への転化前に水素化する。このような水素化フラクションは、一層安定かつ低腐蝕性で輸送及び/又は貯蔵が更に容易になる。蒸留後の水素化により、多量のフィッシャー・トロプシュ生成物を水素化する必要がなくなる。
【0027】
水素化工程は、好適には、触媒活性金属として、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金又はパラジウム、好ましくはニッケル及び/又はモリブデン、コバルト及び/又はタングステン、白金及びパラジウムの1種以上を含む触媒を使用する。水素化工程は、好適には温度150〜325℃、好ましくは200〜275℃、圧力5〜120バール、好ましくは20〜70バールで行われる。水素は、ガスの1時間当り空間速度100〜10000Nl/l/hr、更に好ましくは250〜5000Nl/l/hrで水素化転化段階に供給してよい。処理される炭化水素生成物は、重量の1時間当り空間速度0.1〜5kg/l/hr、好ましくは0.25〜2.5kg/l/hrで水素化転化段階に供給してよい。水素と炭化水素生成物との比は、100〜5000Nl/kgの範囲であってよく、好ましくは250〜3000Nl/kgである。
【0028】
水素化工程用触媒は、通常、担体として耐火性金属酸化物又はシリケートを含有する。好適な担体材料としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア及びそれらの混合物が挙げられる。本発明方法で使用される触媒に含まれる好ましい担体材料は、シリカ、アルミナ及びシリカ−アルミナである。
【0029】
触媒は、触媒活性成分を担体材料100重量部当り、0.05〜80重量部、好ましくは0.1〜70重量部の量、含有してよい。触媒中に存在する触媒活性金属の量は、関係する特定の金属に従って変化する。第一水素化転化段階用に特に好適な一触媒は、ニッケルを担体材料100重量部当り、5〜70重量部の範囲の量で含有する。第二の特に好適な触媒は、白金を担体材料100重量部当り、0.05〜2.0重量部の範囲の量で含有する。
【0030】
本発明方法の水素化工程用に好適な触媒は、市販品として入手してもよいし、或いは当該技術分野に周知の方法、例えば前述の炭化水素合成触媒の製造に関連して説明した方法により製造してもよい。
【0031】
この水素化工程は、原料の異性化又は水素化分解が実質的に起こらないような条件下で操作する。実質的に水素化分解又は水素化異性化が起こることなく、所望程度の水素化を達成するのに必要な精密操作条件は、水素化転化段階に供給される炭化水素生成物の組成や使用される特定の触媒に従って変化する。水素化転化段階で一般的な条件の厳密性の尺度、したがって水素化分解及び異性化が起こる度合として、原料炭化水素の転化の程度を測定してよい。この点、転化率%は、沸点が220℃を超える原料が、水素化転化中に沸点220℃未満のフラクションに転化する該原料の重量%として定義する。水素化転化段階の転化率は、20%未満、好ましくは10%未満、更に好ましくは5%未満である。水素化異性化及び/又は水素化分解が大きすぎる場合、温度を下げるか或いは酸性触媒機能の低い触媒を使用すると、通常、この問題は解決する。
【0032】
洗剤炭化水素、即ち、正数(right number)の炭素原子を有する分子、特にパラフィン及び/又はオレフィンは、当該技術分野で公知の方法に従って洗剤に転化される。非常に好適な方法は、芳香族化合物をオレフィンで(with)アルキル化した後、スルホン化及び中和する方法である。このオレフィンは、フィッシャー・トロプシュ反応の直接生成物か、或いはパラフィンの脱水素後、えられる。洗剤炭化水素含有中間フラクションがいかなる処理もせずに得られる場合、フラクション中に存在するオレフィンは、洗剤への転化に直接使用してよい。残りのパラフィンは、脱水素してもよく、こうして得られたオレフィンは、洗剤に転化してよい。フィッシャー・トロプシュ法で直接得られたパラフィンは、直接フィッシャー・トロプシュ生成物の水素化後、得られたパラフィンは、洗剤への転化前に、少なくとも部分的にモノオレフィンに接触脱水素することが好ましい。
【0033】
次に、所望の洗剤炭化水素は、好適には脱水素する。脱水素は、当該技術分野で周知の方法を用いて行ってよい。例えばUOPのDEFINE法で任意に補充したUOPのPACOL法(原料中のジエンを全てモノオレフィンに転化する)。
【0034】
本発明方法における洗剤炭化水素の脱水素は、“Detergent Manufacture Including Zeolite Builders and Other New Materials”Ed.Sitig,Noyes Data Corp.,New Jersey,1979に記載の触媒を含む周知の脱水素触媒システム又は“従来の脱水素触媒”や、他の脱水素触媒、例えばUOP Corp.から市販の触媒のいずれかを用いて達成できる。脱水素は、水素ガスの存在下で実施でき、また普通は貴金属触媒が存在するが、或いはゼオライト/空気システムのような、水素なしで、かつ貴金属を含まない脱水素システムが貴金属の存在なく使用できる。
【0035】
周知のように、脱水素は、全部でも或いは部分的でも、更に通常は部分的で可能である。通常、オレフィンが5〜50重量%、好適には5〜20重量%形成される。部分的の場合、脱水素工程は、オレフィンと未反応パラフィンとの混合物を形成する。このような混合物は、例えばベンゼンのアルキル化工程に好適な原料である。アルキル化工程を行った(work up)後、未転化パラフィンは、脱水素法の出発点に再循環してよい。
【0036】
脱水素法は、触媒活性金属として、好適にはモリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金又はパラジウム、好ましくはニッケル及び/又はモリブデン、コバルト及び/又はタングステン、白金又はパラジウムの1種以上、更に好ましくは白金を含む触媒を使用する。水素化工程は、好適には温度300〜600℃、好ましくは400〜500℃、圧力0.1〜20バール、好ましくは1〜4バールで行われる。
【0037】
脱水素に続いて、洗剤炭化水素は、当該技術分野に周知の方法に従って洗剤に転化される。この反応は、好適には下記反応から選択される。
・ベンゼン又はトルエンでアルキル化後、任意にスルホン化及び中和する工程;
・フェノールでアルキル化後、アルコキシル化、スルホン化及び中和、硫酸化及び中和又は酸化と組合せたアルコキシル化、の少なくとも1つを行う工程;
・ヒドロホルミル化後、任意にアルコキシル化、グリコシル化、硫酸化、燐酸化(phosphatation)又はそれらの組合わせの少なくとも1つを行う工程;
・スルホン化工程;
・エポキシ化工程;
・臭化水素処理後、アミン酸化物へのアミノ化及び酸化工程;及び
・ホスホン化工程。
【0038】
特に好ましい選択は、モノ芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、キシレン及びそれらの混合物のアルキル化後、スルホン化することである。アルキル化法は、触媒として塩化アルミニウム、HF、弗化(fluoridated)ゼオライト、非酸性カルシウムモルデナイト等を使用してよい。例えばAlClアルキル化の場合の適切な方法条件としては、バッチ式又は連続式反応器中、洗剤炭化水素に対し5モル%AlCl、100〜300℃で0.5〜1.0時間の反応が挙げられる。他の好適なアルキル化触媒は、形状選択性中程度酸性アルキル化触媒、好ましくはゼオライト系から選択してよい。このようなアルキル化工程用触媒中のゼオライトは、好ましくはモルデナイト、ZSM−4、ZSM−12、ZSM−20、オフレタイト(offretite)、グメリナイト(gmelinite)及び少なくとも部分的に酸性形態のゼオライトβよりなる群から選択される。更に好ましくは、アルキル化工程でのゼオライトは、ほぼ酸形態であり、従来のバインダーを含む触媒ペレット中に含まれる。更に触媒ペレットは、前記ゼオライトを少なくとも約1%、更に好ましくは少なくとも5%、更に通常は50〜約90%含有する。工業的に利用可能な方法は、DETAL法である。
【0039】
更に一般的には、好適なアルキル化触媒は、通常、少なくとも部分的に結晶性、更に好ましくはほぼ結晶性で、触媒ペレット、結合体又は複合体の形成に使用されるバインダー又はその他の材料を含有しないものである。更にこの触媒は、通常、少なくとも部分的に酸性である。H形モルデナイトは好適な触媒である。
好ましい実施態様では、洗剤炭化水素は、PCT/EP02/06373に記載の方法に従って高級線状アルコールに転化される。
【0040】
前記洗剤の製造法以外に、他の周知の方法も使用してよい。例えば洗剤炭化水素、特に、C14〜C17の好ましい範囲の洗剤炭化水素は、水素化C14〜C17流の塩素化又はスルホン化により洗剤に転化してよい。またWO 99/59942に記載されるように、パラフィンから直接、洗剤を製造する方法も使用してよい。
【0041】
他の実施態様では、本発明は、コバルト基触媒を用い25バラを超える圧力で行って通常液体及び通常固体の炭化水素を生成するフィッシャー・トロプシュ法の炭化水素質生成物流であって、洗剤炭化水素と、該洗剤炭化水素の沸点範囲よりも高い沸点及び低い沸点を有する炭化水素とを含む該炭化水素質生成物流を、洗剤炭化水素を含有するフラクションよりも低沸点の軽質フラクション、洗剤炭化水素を含有する中間沸点のフラクション、及び洗剤炭化水素を含有する該中間沸点フラクションよりも高沸点の重質フラクションに分離することを特徴とする洗剤の製造方法に関する。好ましい実施態様では、フィッシャー・トロプシュ法は、35バラを超え、好ましくは45バラを超え、更に好ましくは55バラを超える圧力で行われる。特に洗剤炭化水素は、C10〜C17炭化水素、好ましくはC10〜C14炭化水素である。更に中間沸点フラクションは、洗剤炭化水素の全フラクションに対し、80重量%以上、好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、なお更に好ましくは98重量%以上含有する。この実施態様で好ましいことは、主請求項に記載の方法と同じである。
【0042】
本明細書で、用語“主として”は、特に規定しない限り、少なくとも80重量%を意味する。生成物又は混合物の量を“重量%”で表わす場合、この%は、特に規定しない限り、生成物が存在する全生成物流を基準とする。“通常液体の炭化水素生成物”とは、STP(1バール、0℃)で液体生成物である全ての生成物を意味する。飽和炭化水素の場合、この炭化水素はC炭化水素のことである。“通常固体の炭化水素生成物”とは、STPで固体である全ての生成物を意味する。飽和ノーマル炭化水素の場合、この炭化水素はC15炭化水素のことである。用語Cは、n個以上の炭素原子を含む分子に関する。用語Cは、n個以下の炭素原子を含む分子を言う。ここで使用した用語“中間蒸留物”は、原油の慣用の大気圧蒸留で得られるケロシンフラクション及びディーゼルフラクションの沸点範囲にほぼ相当する沸点範囲の炭化水素混合物を言う。
【実施例1】
【0043】

コバルト含有フィッシャー・トロプシュ触媒(チタニア100重量部に対しCo 12重量部、Mn促進剤)を同じ反応器中、数種の条件でテストし、以下の結果を得た。
【0044】
【表1】

STY(空時収量)、kg/m/h、i−C12、全C12生成物に対する重量%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト基触媒を用い25バラを超える圧力で行って通常液体及び通常固体の炭化水素を生成するフィッシャー・トロプシュ法の炭化水素質生成物流を、洗剤炭化水素を含有する中間フラクションよりも低沸点の軽質フラクション、洗剤炭化水素を含有する中間沸点のフラクション、及び洗剤炭化水素を含有する該中間沸点フラクションよりも高沸点の重質フラクションに分離した後、該中間沸点フラクション中に存在する洗剤炭化水素を洗剤に転化することを特徴とする比較的少量のイソパラフィンを含有する洗剤の製造方法。
【請求項2】
コバルト基触媒を用い25バラを超える圧力で行って通常液体及び通常固体の炭化水素を生成するフィッシャー・トロプシュ法の炭化水素質生成物流を、洗剤炭化水素を含有する中間フラクションよりも低沸点の軽質フラクション、洗剤炭化水素を含有する中間沸点のフラクション、及び洗剤炭化水素を含有する該中間沸点フラクションよりも高沸点の重質フラクションに分離することにより得られた中間沸点フラクション中に存在する洗剤炭化水素を、洗剤に転化することを特徴とする比較的少量のイソパラフィンを含有する洗剤の製造方法。
【請求項3】
前記フィッシャー・トロプシュ法が、35バラを超え、好ましくは45バラを超え、更に好ましくは55バラを超える圧力で行われる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記洗剤炭化水素が、C10〜C17炭化水素、好ましくはC10〜C13炭化水素又は好ましくはC14〜C17炭化水素である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記中間沸点フラクションが、洗剤炭化水素の全フラクションに対し、80重量%以上、好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、なお更に好ましくは98重量%以上含まれる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記軽質フラクションの沸点範囲が、150℃未満、好ましくは160℃未満、更に好ましくは170℃未満であり、及び/又は前記重質フラクションの沸点範囲が、315℃を超え、好ましくは305℃を超え、特に好ましくは250℃を超え、更に特に好ましくは240℃を超える請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記中間フラクションの沸点範囲が、170〜315℃、好ましくは170〜240℃、又は好ましくは250〜315℃である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
中間蒸留物よりも高沸点のフラクション中に存在する全ての炭化水素を該中間蒸留物の沸点範囲の沸点を有する炭化水素に転化するため、前記重質フラクションに対し、水素化分解処理が施される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記フィッシャー・トロプシュ法が、好ましくは180〜270℃、更に好ましくは200〜250℃で行われる低温法である請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記フィッシャー・トロプシュ法の炭化水素質生成物流が、蒸留前に水素化される請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
蒸留後得られた前記中間フラクションが、洗剤への転化前に水素化される請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水素化工程が、触媒活性金属として、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金又はパラジウムを使用し、好ましくはニッケル及び/又はモリブデン、コバルト及び/又はタングステン、白金及びパラジウム、の1種以上を使用すると共に、好ましくは150〜325℃、更に好ましくは200〜275℃の温度、及び好ましくは5〜120バール、更に好ましくは20〜70バールの圧力で行われる請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
洗剤炭化水素を含む前記水素化中間フラクションが、洗剤への転化前に少なくとも部分的に接触脱水素されて、モノオレフィンとなる請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記洗剤炭化水素の洗剤への転化が、任意に脱水素後、下記工程:
・ベンゼン又はトルエンでアルキル化後、任意にスルホン化及び中和する工程;
・フェノールでアルキル化後、アルコキシル化、スルホン化及び中和、硫酸化及び中和又は酸化と組合せたアルコキシル化、の少なくとも1つを行う工程;
・ヒドロホルミル化後、任意にアルコキシル化、グリコシル化、硫酸化、燐酸化又はそれらの組合わせの少なくとも1つを行う工程;
・スルホン化工程;
・エポキシ化工程;
・臭化水素処理後、アミン酸化物へのアミノ化及び酸化工程;及び
・ホスホン化工程;
から選ばれた少なくとも1つの工程を含む請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
コバルト基触媒を用い25バラを超える圧力で行って通常液体及び通常固体の炭化水素を生成するフィッシャー・トロプシュ法の炭化水素質生成物流であって、洗剤炭化水素と、該洗剤炭化水素の沸点範囲よりも高い沸点及び低い沸点を有する炭化水素とを含む該炭化水素質生成物流を、洗剤炭化水素を含有するフラクションよりも低沸点の軽質フラクション、洗剤炭化水素を含有する中間沸点のフラクション、及び洗剤炭化水素を含有する該中間沸点フラクションよりも高沸点の重質フラクションに分離することを特徴とする比較的少量のイソパラフィンを含有する洗剤の製造方法。

【公表番号】特表2006−518404(P2006−518404A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502035(P2006−502035)
【出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050153
【国際公開番号】WO2004/074407
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】