説明

結腸直腸癌を診断する方法

結腸直腸癌(CRC)を検出および診断するための客観的方法を本明細書に記載する。1つの態様において、診断法は、CRCと正常細胞を識別するFGF18の発現レベルを決定する段階を含む。本発明はさらに、CRCの治療において有用な治療薬剤をスクリーニングする方法、CRCを治療する方法、および対象にCRCのワクチン接種を行う方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結腸直腸癌を診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結腸直腸癌(CRC)は、世界的に最も多く見られる固形腫瘍の一つである。2000年には、約940,000人の人が結腸癌であると診断され、およそ579,000の人が結腸癌で死亡した(1, 2)。近年、診断および治療に関して大きな進展がなされたが、進行結腸癌を患う患者の予後は依然として不良のままである。そのため、早期癌を検出するための感度が良くかつ特異的な診断バイオマーカーの発見、およびより効果的でありより害の少ない治療薬剤の開発が緊急課題である。さらに、効果的な予防戦略により、多くの人々がこの生死にかかわる疾患の不安から解放されると考えられる。これらの目的を実現するためには、まず結腸直腸癌の発癌現象の詳細な分子機構を十分に理解しなければならない。
【0003】
近年の分子的研究により、結腸直腸癌の発癌現象には細胞系譜内の遺伝子変化の集積が関与しており、これには癌抑制遺伝子を不活化する変異および癌原遺伝子を活性化する変異ばかりでなく、特定の染色体領域におけるDNAの増幅および/またはDNAの欠失も含まれることがことが明らかにされた。そのような種類の変化に加えて、メチル化、刷り込み欠損、および/または遺伝子変化もしくは未知の機構に起因する発現の異常調節等の後生的事象が結腸直腸腫瘍の発症の基礎をなす
【0004】
Wnt/winglessシグナル伝達経路における遺伝子は、胚発生の過程における分化および形態形成において重要な役割を果たす。この経路の調節障害は、結腸、肝臓、前立腺、胃、脳、子宮内膜、または他所において生じる腫瘍の特徴である場合が多い(3)。この経路の重要なメディエーターの1つはβ-カテニンであり、これは細胞-細胞接着およびシグナル伝達において中心的な役割を果たす。Wntシグナルが存在しない場合、β-カテニンは、β-カテニン、APCタンパク質、Axin1、Axil/conductin(AXIN2)、およびグリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3β)から構成される多分子複合体によってリン酸化される。β-カテニンは通常はユビキチン化およびその後のプロテオソームにおける分解を介して下方制御されるが、wntシグナルにより、GSK3βの阻害に起因してβ-カテニンが細胞質および/または核内に集積される。APC、AXIN1、AXIN2、またはβ-カテニン(CTNNB1)における遺伝子変化の結果としてのβ-カテニンの異常な細胞内集積が、結腸直腸癌および肝細胞癌を含む種々のヒトの癌において認められた(4)。集積されたβ-カテニンはTcf/LEF転写因子と共に複合体を形成し、c-myc(5)およびサイクリンD1(6, 7)等の下流の標的遺伝子を上方制御する。これらの遺伝子の1つまたは複数の活性化は、結腸癌細胞に悪性特性を与える過程に寄与し得る。
【0005】
線維芽細胞増殖因子(FGF)のファミリーは、5種類の同族受容体の1つまたは2つとの結合に際してシグナルを媒介する23の分泌ポリペプチドの群を含む。FGFは、胚発生、細胞増殖、形態形成、組織修復、炎症、および血管新生において重要な役割を果たす(8)。例えば、FGF4、FGF8、FGF10、FGF18、およびFGF20は四肢発生に関与し(9, 10);FGF8は中脳-後脳の器官形成におけるシグナル伝達カスケードに関与し(11);かつFGF10は肺発生に必須であると考えられる。Wntシグナルは、四肢の形成開始および歯の器官形成に関与するFGFのいくつかを調節する(12, 13)。器官形成における重要な役割のほかに、FGF2は成体における組織修復を刺激する(14, 15)。しかしながら、膀胱癌、子宮頸癌、および胃癌を含む広範なヒト腫瘍において、FGFおよび/またはそれらの受容体の不適切な発現が生じる(16, 17)。FGF18はFGFファミリーのメンバーの中でFGF8と最もよく似ており、FGF2と同様に、NIH3T3細胞(18)、骨芽細胞(19)、軟骨細胞(19)、およびグリア細胞(20)の増殖を刺激し、PC12ラット褐色細胞腫細胞の神経突起伸長を誘導する(21)。
【0006】
cDNAマイクロアレイ技術により、科学者が正常細胞および悪性細胞における遺伝子発現の包括的プロファイルを得て、悪性細胞とそれに対応する正常細胞における遺伝子発現を比較することが可能になった(Okabe et al., Cancer Res 61:2129-37 (2001);Kitahara et al., Cancer Res 61: 3544-9 (2001);Lin et al., Oncogene 21:4120-8 (2002);Hasegawa et al., Cancer Res 62:7012-7 (2002))。このアプローチにより癌細胞の複雑な性質を明らかにすることが可能となり、かつ発癌現象の機構の理解が促進される。腫瘍において調節が解除される遺伝子の同定は、個人の癌のより正確かつ厳密な診断、および新規治療標的の開発が可能になる(Bienz and Clevers, Cell 103:311-20 (2000))。ゲノム全体にわたる観点から腫瘍の基礎をなす機構を明らかにし、診断および新規治療薬剤の開発のための標的分子を見出すため、本発明者らは遺伝子23040個のcDNAマイクロアレイを用いて腫瘍細胞の発現プロファイルを解析している(Okabe et al., Cancer Res 61:2129-37 (2001);Kitahara et al., Cancer Res 61:3544-9 (2001);Lin et al., Oncogene 21:4120-8 (2002);Hasegawa et al., Cancer Res 62:7012-7 (2002))。
【0007】
発癌の機構を明らかにするように計画された研究により、抗腫瘍剤の分子標的の同定が既に促進されている。例えば、その活性化が翻訳後ファルネシル化に依存するRasに関連した増殖シグナル伝達経路を阻害するように本来開発されたファルネシルトランスフェラーゼ(FTI)の阻害剤は、動物モデルにおいてRas依存性腫瘍の治療に有効であることが判明している(Sun J et al., Oncogene 16:1467-73 (1998))。癌原遺伝子受容体HER2/neuを拮抗するために、抗癌剤と抗HER2モノクローナル抗体、トラスツズマブとの組み合わせを用いたヒトの臨床試験が行われ、乳癌患者の臨床反応および全生存率の改善が達成されている(Molina MA et al., Cancer Res 16:4744-9 (2001))。bcr-abl融合タンパク質を選択的に不活化するチロシンキナーゼ阻害剤、STI-571は、bcr-ablチロシンキナーゼの構成的活性化が白血球の形質転換において重要な役割を果たす慢性骨髄性白血病を治療するために開発された。これらの種類の薬剤は、特定の遺伝子産物の発癌活性を抑制するために設計されている(O'Dwyer ME et al., Curr Opin Oncol 12:594-7 (2000))。したがって、癌細胞において一般に上方制御される遺伝子産物は、新規抗癌剤を開発するための有力な標的となり得る。
【0008】
CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が、MHCクラスI分子上に提示された腫瘍関連抗原(TAA)に由来するエピトープペプチドを認識し、腫瘍細胞を溶解させることが実証された。TAAの最初の例としてMAGEファミリーが発見されて以来、免疫学的アプローチを用いて多くの他のTAAが発見されている(Boon, Int J Cancer 54: 177-80 (1993);Boon and van der Bruggen, J Exp Med 183: 725-9 (1996);van der Bruggen et al., Science 254: 1643-7 (1991);Brichard et al., J Exp Med 178: 489-95 (1993);Kawakami et al., J Exp Med 180:347-52 (1994))。発見されたTAAのいくつかについては、現在、免疫療法の標的として臨床開発が行われている。これまでに発見されたTAAには:MAGE(van der Bruggen et al., Science 254: 1643-7 (1991))、gp 100(Kawakami et al., J Exp Med 180:347-52 (1994));SART(Shichijo et al., J Exp Med 187: 277-88 (1998));およびNY-ESO-1(Chen et al., Proc Natl Acad Sci USA 94: 1914-8 (1997))が含まれる。他方では、腫瘍細胞において特異的に過剰発現されることが実証された遺伝子産物が、細胞性免疫反応を誘導する標的として認識されることが示された。そのような遺伝子産物には、p53(Umano et al., Brit J Cancer 84: 1052-7 (2001));HER2/neu(Tanaka et al., Brit J Cancer 84: 94-9 (2001));CEA(Nukaya et al., Int J Cancer 80: 92-7 (1999))等が含まれる。
【0009】
TAAに関する基礎的および臨床的研究における著しい進展にもかかわらず(Rosenbeg et al., Nature Med 4: 321-7 (1988);Mukherji et al., Proc Natl Acad Sci USA 92: 8078-82 (1995);Hu et al., Cancer Res 56: 2479-83 (1996))、結腸直腸癌を含む腺癌の治療に関して、限られた数の候補TAAしか現段階では得られていない。癌細胞において大量に発現され、その発現が癌細胞に限られているTAAは、免疫療法標的としての有望な候補の代表例である。さらに、強力でありかつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導する新規TAAの同定により、様々な種類の癌においてペプチドワクチン戦略の臨床的使用が促進されると考えられる。(Boon and can der Bruggen, J Exp Med 183: 725-9 (1996); van der Bruggen et al., Science 254: 1643-7 (1991); Brichard et al., J Exp Med 178: 489-95 (1993); Kawakami et al.,J Exp Med 180: 347-52 (1994); Shichijo et al., J Exp Med 187: 277-88 (1998); Chen et al., Proc Natl Acad Sci USA 94: 1914-8 (1997); Harris, J Natl Cancer Inst 88: 1442-5 (1996); Butterfield et al., Cancer Res 59: 3134-42 (1999); Vissers et al., Cancer Res 59: 5554-9 (1999); van der Burg et al., J Immunol 156: 3308-14 (1996); Tanaka et al., Cancer Res 57: 4465-8 (1997); Fujie et al., Int J Cancer 80: 169-72 (1999); Kikuchi et al., Int J Cancer 81: 459-66 (1999); Oiso et al., Int J Cancer 81: 387-94 (1999))。
【0010】
ある健常ドナー由来のペプチド刺激した末梢血単核細胞(PBMC)は、ペプチドに応答して有意なレベルのIFN-γを産生するが、51Cr放出アッセイ法においてHLA-A24またはHLA-A0201制限様式で腫瘍細胞に対する細胞傷害性をほとんど起こさないことが繰り返し報告されている(Kawano et al., Cance Res 60: 3550-8 (2000);Nishizaka et al., Cancer Res 60: 4830-7 (2000);Tamura et al., Jpn J Cancer Res 92: 762-7 (2001))。しかしながら、HLA-A24およびHLA-A0201はいずれも日本人集団および白人集団において一般的なHLA対立遺伝子である(Date et al., Tissue Antigens 47: 93-101 (1996);Kondo et al., J Immunol 155: 4307-12 (1995);Kubo et al., J Immunol 152: 3913-24 (1994);Imanishi et al., Proceeding of the eleventh International Hictocompatibility Workshop and Conference Oxford University Press, Oxford, 1065 (1992);Williams et al., Tissue Antigen 49: 129 (1997))。したがって、これらのHLAによって提示される癌腫の抗原ペプチドは、日本人および白人の癌腫の治療に特に有用である可能性がある。さらに、インビトロでの低親和性CTLの誘導は通常は高濃度でのペプチドの使用に起因することが知られており、これにより抗原提示細胞(APC)上で高レベルの特異的ペプチド/MHC複合体が生じ、これらのCTLが効果的に活性化されることになる(Alexander-Miller et al., Proc Natl Acad Sci USA 93: 4102-7 (1996))。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
新規抗癌剤を開発するための有力な分子標的を探索する上で、本発明者らはゲノム全体にわたるcDNAマイクロアレイを用いて、癌患者由来の臨床試料の発現プロファイルを解析した。結腸癌細胞に関する実験において、線維芽細胞増殖因子18(FGF18)をコードする遺伝子が発現上昇を示したものの1つであった。この遺伝子のプロモーター領域は、推定上のTcf4結合モチーフを含むことが見出された;さらに、マーカーとしてルシフェラーゼ活性を用いるレポーター遺伝子アッセイ法および電気泳動移動度シフトアッセイ法により、FGF18がβ-カテニン/Tcf4経路における下流の転写標的であることが示された。本発明者らは、外因性のFGF18がNIH3T3細胞の増殖を自己分泌様式で促進すること、およびFGF18 siRNAをトランスフェクションンすることにより、培養において結腸癌細胞の増殖が抑制されることを実証した。これらの結果から、FGF18がWntシグナル伝達経路の直接の下流標的として結腸癌において活性化され、したがって、CRCを治療するための早期診断のマーカーおよび分子標的となることが示される。
【0012】
本発明は、結腸直腸癌(CRC)と相関するFGF18の遺伝子発現のパターンの発見に基づく。
【0013】
したがって、本発明は、組織試料等の患者由来生体試料におけるFGF18の発現レベルを決定する段階を含む、対象におけるCRCの診断または素因を決定する方法を扱う。正常細胞は結腸直腸組織から得られる細胞である。FGF18遺伝子の正常対照レベルと比較した場合のFGF18の発現レベルの増加により、対象がCRCを発症しているかまたは発症する危険性があることが示される。
【0014】
正常対照レベルとは、正常健常個体またはCRCを患っていない個体の集団において検出される遺伝子発現のレベルを意味する。対照レベルとは、単一の参照集団または複数の発現パターンに由来する単一の発現パターンである。例えば、対照レベルは、以前に試験した細胞による発現パターンのデータベースであってよい。正常個体とは、CRCの臨床症状がなく、かつCRCの家族歴のない個体である。
【0015】
正常対照レベルと比較した場合の被験試料中に検出されるFGF18の発現レベルの増加により、(試料を採取した)対象がCRCを発症しているかまたは発症する危険性があることが示される。
【0016】
遺伝子発現は、好ましくは対照レベルと比較して10%、25%、50%増加している。または、遺伝子発現は、対照レベルと比較して、0.1、0.2、1、2、5、10倍、またはそれ以上増加する可能性がある。発現は、ハイブリダイゼーション、例えば患者由来組織試料の遺伝子転写産物に対するFGF18遺伝子プローブの結合を検出することにより決定される。
【0017】
患者由来組織試料は、被験対象、例えばCRCを有することが公知であるかまたはその疑いがある患者由来の任意の組織であってよい。例えば、組織は結腸直腸癌細胞を含み得る。例えば、組織は好ましくは結腸由来の細胞である。
【0018】
本発明はさらに、FGF18を発現する被験細胞を被験物質と接触させる段階、およびFGF18の発現レベルまたは活性を決定する段階を含む、FGF18の発現または活性を阻害する物質を同定する方法を提供する。被験細胞は、好ましくは、結腸直腸癌由来の結腸細胞等の結腸細胞である。FGF18遺伝子の正常対照レベルと比較した場合のFGF18の発現レベルまたは活性の減少により、被験物質がFGF18の阻害剤であり、CRCの症状を軽減することが示される。
【0019】
本発明はまた、FGF18核酸配列に結合する、またはそのような核酸配列によってコードされる遺伝子産物に結合する検出試薬を伴うキットを提供する。
【0020】
本発明の治療法は、特定の標的遺伝子の発現を減少させるアンチセンス組成物、例えば、FGF18の核酸配列に相補的なヌクレオチドを含むアンチセンス組成物を対象に投与することにより、対象におけるCRCを治療または予防する方法を含む。別の方法は、低分子干渉RNA(siRNA)組成物を対象に投与する段階を含む。siRNA組成物により、FGF18の核酸の発現が減少する。さらに別の方法では、対象におけるCRCの治療または予防は、リボザイム組成物を対象に投与することによって行われる。核酸特異的リボザイム組成物により、FGF18の核酸の発現が減少する。関心対象の遺伝子のインビボ発現に適した機構は、当技術分野において公知である。
【0021】
本発明はまた、ワクチンおよびワクチン接種法を含む。例えば、対象におけるCRCを治療または予防する方法は、FGF18の核酸によってコードされるポリペプチド、またはそのようなポリペプチドの免疫学的活性断片を含むワクチンを対象に投与することによって行われ得る。免疫学的活性断片とは、天然タンパク質の全長よりも長さが短く、かつ免疫応答を誘導するポリペプチドである。例えば、免疫学的活性断片は、好ましくは少なくとも8残基長であり、T細胞またはB細胞等の免疫細胞を刺激する。免疫細胞刺激は、細胞増殖、サイトカイン(例えばIL-2)の生成、または抗体の産生を決定することにより測定し得る。
【0022】
他に定義しない限り、本明細書で使用する専門用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験においては、本明細書に記載するものと類似または同等の方法および材料を用いることができるが、適した方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及する刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はすべて、全体が参照により組み入れられる。抵触する場合には、本明細書が定義も含め調整することになる。さらに、材料、方法、および実施例は説明するためのみのものであり、制限する意図はない。
【0023】
本明細書に記載する方法の1つの利点は、明白な臨床症状が検出される前に疾患が同定される点である。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、および特許請求の範囲から明らかになると考えられる。
【0024】
発明の開示
本発明は、一つには、CRCを有する患者の結腸細胞におけるFGF18の発現上昇の発見に基づく。遺伝子発現の上昇は、包括的なcDNAマイクロアレイシステムを用いて同定された。
【0025】
遺伝子23,040個を含むcDNAマイクロアレイを用いて、20名の患者の包括的な遺伝子発現プロファイルが以前に構成された。FGF18は、CRC患者において高レベルで発現されることが見出された。その過程において、患者の血清において癌関連タンパク質を検出する可能性を有する候補分子マーカーが選択され、ヒト結腸直腸癌におけるシグナル抑制戦略を開発するためのいくつかの有力な標的が見出された。
【0026】
本明細書で同定されたFGF18は、CRCのマーカーとして診断目的で、およびCRCの症状を治療または軽減するためにその発現が変更され得る遺伝子標的として治療目的で使用される。
【0027】
細胞試料中のFGF18の発現を測定することにより、CRCが診断される。同様に、種々の物質に応答したFGF18の発現を測定することにより、CRCを治療するための物質が同定され得る。
【0028】
本発明は、FGF18の発現を決定する(例えば測定する)段階を含む。GeneBank(商標)データベースエントリーによりFGF18配列に関して提供される配列情報を用いて、当業者に周知の技法によりFGF18が検出および測定される。例えば、配列データベースエントリー内のFGF18に相当する配列を用いて、例えばノーザンブロットハイブリダイゼーション解析においてFGF18 RNA配列を検出するためのプローブを構築することができる。別の例として、この配列を用いて、例えば逆転写に基づくポリメラーゼ連鎖反応法等の増幅に基づく検出法においてFGF18を特異的に増幅するためのプライマーを構築することができる。
【0029】
次いで、被験細胞集団、例えば患者由来組織試料におけるFGF18の発現レベルを、参照細胞集団におけるFGF18の発現レベルと比較する。参照細胞集団は、比較するパラメータが公知である1つまたは複数の細胞、すなわちCRC細胞または非CRC細胞を含む。
【0030】
参照細胞集団と比較した被験細胞集団における遺伝子発現のパターンがCRCまたはその素因を示すか否かは、参照細胞集団の組成に依存する。例えば、参照細胞集団が非CRC細胞から構成される場合、被験細胞集団と参照細胞集団の類似した遺伝子発現パターンにより、被験細胞集団が非CRCであることが示される。逆に、参照細胞集団がCRC細胞から構成される場合、被験細胞集団と参照細胞集団の類似した遺伝子発現プロファイルにより、被験細胞集団がCRC細胞を含むことが示される。
【0031】
被験細胞集団におけるCRCマーカー遺伝子の発現レベルは、その発現レベルが参照細胞集団における対応するマーカー遺伝子、例えばFGF18の発現レベルと1.0、1.5、2.0、5.0、10.0倍、またはそれ以上の倍率を超えて異なる場合に、参照細胞集団の発現レベルとは変化したと見なされる。
【0032】
被験細胞集団と参照細胞集団との差次的な遺伝子発現は、対照核酸、例えばハウスキーピング遺伝子に対して標準化される。例えば、対照核酸は、細胞のCRC状態または非CRC状態に依存して異ならないことが公知である核酸である。被験核酸および参照核酸における対照核酸の発現レベルを用いて、比較する集団のシグナルレベルを標準化することができる。対照遺伝子には、β-アクチン、グリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素、またはリボソームタンパク質P1が含まれる。
【0033】
被験細胞集団は、複数の参照細胞集団と比較することが好ましい。複数の参照集団はそれぞれ、公知のパラメータにおいて異なってよい。したがって、被験細胞集団を、例えばCRC細胞を含むことが分かっている第二の参照細胞集団と、また同様に例えば非CRC細胞(正常細胞)を含むことが分かっている第二の参照集団と比較してもよい。被験細胞は、CRC細胞を含むことが分かっているかまたは含むと疑われる対象由来の組織種または細胞試料中に含まれる。
【0034】
被験細胞は、身体組織または例えば生体液(血液または尿等)といった体液から得られる。例えば、被験細胞は組織から精製され得る。被験細胞集団は、好ましくは上皮細胞、より好ましくはCRCであることが分かっているかまたはその疑いのある組織由来の上皮細胞を含む。
【0035】
参照細胞集団の細胞は、被験細胞に類似した組織種に由来する。任意で、参照細胞集団は細胞株、例えばCRC細胞株(陽性対照)または正常非CRC細胞株(陰性対照)である。または、対照細胞集団は、アッセイしたパラメータまたは条件が公知である細胞由来の分子情報のデータベースに由来する。
【0036】
対象は好ましくは哺乳動物である。哺乳動物は、例えばヒト、非ヒト霊長動物、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであってよい。
【0037】
本明細書において開示するFGF18の発現は、当技術分野において公知の方法を用いて、タンパク質または核酸レベルで決定される。例えば、FGF18ヌクレオチド配列を特異的に認識するプローブを用いたノーザンハイブリダイゼーション解析を用いて、遺伝子発現を決定することができる。または、例えばFGF18に特異的なプライマーを用いて、逆転写に基づいたPCRアッセイ法を用いて発現を測定してもよい。発現はまた、タンパク質レベルで、すなわち本明細書に記載の遺伝子産物によってコードされるポリペプチドまたはその生物活性のレベルを測定することにより決定してもよい。そのような方法は当技術分野において周知であり、これには例えば、FGF18によってコードされるタンパク質に対する抗体に基づいた免疫測定法が含まれる。この遺伝子によってコードされるタンパク質の生物活性もまた周知である。組み換えラットFGF18がPC12細胞の神経突起伸長を誘導すること(21)、および肝臓でFGF18を過剰発現するトランスジェニックマウスが肝重量の増加および肝細胞の増殖を示すこと(18)が公知である。FGF18は、マウス骨芽細胞および軟骨細胞のすべての培養物において増殖を促進し、分化および基質合成を阻害する(19)。FGF18はまた、RANKLおよびシクロオキシゲナーゼ-2を介して破骨細胞の形成を誘導し、破骨細胞が培養したマウス象牙質切片上に吸収窩を形成するのを促進する(19)。これらの効果はFGF2の効果と類似していることが注目されており、かつFGF18とFGF2が骨および軟骨に及ぼす効果において重複している可能性があることが提言される。また、胎児の発生過程における肺上皮細胞でのFGF18の条件的過剰発現により、肺の分岐形態形成が破壊されることが公知である(29)。
【0038】
CRCの診断
本発明においては、細胞の被験集団(すなわち、患者由来生体試料)中のFGF18の発現レベルを測定することによりCRCが診断される。好ましくは、被験細胞集団は上皮細胞、例えば結腸組織から得られる細胞を含む。遺伝子発現はまた、血液または尿等の他の生体液において測定してもよい。タンパク質レベルを測定するために、他の生体試料を使用することもできる。例えば、診断する対象に由来する血液または血清中のタンパク質レベルを、免疫測定法または生物学的アッセイ法により測定することができる。
【0039】
FGF18の発現を被験細胞または生体試料において決定し、次いで正常対照の発現レベルと比較する。正常対照レベルとは、CRCを患っていないことが公知の集団において典型的に見出されるFGF18の発現プロファイルである。FGF18の患者由来組織試料における発現レベルの増加により、対象がCRCを発症しているかまたは発症する危険性があることが示される。
【0040】
正常対照と比較した場合の被験集団におけるFGF18の変化により、対象がCRCを発症しているかまたは発症する危険性があることが示される。
【0041】
FGF18発現または活性を阻害する物質の同定
FGF18の発現または活性を阻害する物質は、FGF18を発現する被験細胞集団を被験物質と接触させ、FGF18の発現レベルまたは活性を決定することによって同定される。正常対照レベルと比較した場合の(または被験物質の非存在下でのレベルと比較した場合の)物質の存在下での発現または活性の減少により、その物質がFGF18の阻害剤であり、CRCの抑制に有用である可能性があることが示される。
【0042】
被験細胞集団は、FGF18を発現する任意の細胞であってよい。例えば、被験細胞集団は好ましくは、細胞が結腸であるかまたは結腸に由来するような上皮細胞を含む。例えば、被験細胞は、結腸直腸癌に由来する不死化細胞株であってよい。または、被験細胞は、FGF18をトランスフェクションした細胞、またはレポーター遺伝子に機能的に連結したFGF18由来の制御配列(例えば、プロモーター配列)をトランスフェクションした細胞であってもよい。さらに、β-カテニン/Tcf4結合モチーフとβ-カテニン/Tcf4複合体との結合を妨げる候補化合物が、FGF18の阻害物質として同定され得る。
【0043】
対象におけるCRCの治療効果の評価
本明細書において同定されたFGF18の差次的発現により、CRCの治療過程をモニターすることも可能になる。本方法では、CRCの治療を受けている対象から被験細胞集団が提供される。必要に応じて、被験細胞集団は、治療前、治療中、または治療後の様々な時点で対象から採取される。次いで、その細胞集団においてFGF18の発現レベルを決定し、CRC状態が公知である細胞を含む参照細胞集団の発現レベルと比較する。参照細胞は治療に暴露されていない。
【0044】
参照細胞集団がCRC細胞を含まない場合、被験細胞集団と参照細胞集団におけるFGF18の発現の類似性により、治療が有効であることが示される。一方、被験集団と正常対照参照細胞集団におけるFGF18の発現の相違により、臨床結果または予後が良好でないことが示される。
【0045】
「有効である」とは、その治療により、病理的に上方制御された遺伝子の発現の減少、病理的に下方制御された遺伝子の発現の上昇、または対象の結腸直腸腫瘍の大きさ、蔓延度、もしくは転移能の減少がもたらされることを意味する。予防的に処置を施す場合には、「有効である」とは、その処置によりCRCの形成が遅延されるかもしくは妨げられる、または臨床的CRCの症状が遅延される、妨げられる、もしくは軽減されることを意味する。結腸直腸腫瘍の評価は、標準的な臨床手順により行われる。
【0046】
有効性は、CRCの診断または治療に関して公知である任意の方法と関連して決定される。CRCは、例えば症状の異常を同定することによって診断される。
【0047】
特定の個体に適したCRCを治療するための治療薬剤の選択
個体の遺伝子構成の相違により、種々の薬剤を代謝する相対的能力に差が生じ得る。対象において代謝されて抗CRC薬剤として作用する物質は、CRC状態に特有の遺伝子発現パターンから非CRC状態に特有の遺伝子発現パターンへと、対象の細胞における遺伝子発現パターンの変化を誘導することにより顕在化し得る。したがって、本明細書において開示するFGF18の差次的発現により、選択された対象において物質がCRCの適した阻害剤であるかどうかを決定するために、CRCの推定上の治療的または予防的阻害剤をその対象由来の被験細胞集団で試験することが可能になる。
【0048】
特定の対象に適したCRCの阻害剤を同定するため、対象由来の被験細胞集団を治療薬剤に曝露し、FGF18の発現を決定する。
【0049】
被験細胞集団は、FGF18を発現するCRC細胞を含む。好ましくは、被験細胞は上皮細胞である。例えば、被験細胞集団を候補物質の存在下でインキュベートしてもよく、被験試料の遺伝子発現のパターンを測定し、それを1つまたは複数の参照プロファイル、例えばCRC参照発現プロファイルまたは非CRC参照発現プロファイルと比較し得る。
【0050】
CRCを含む参照細胞集団と比較した場合の被験細胞集団におけるFGF18の発現の減少により、その物質に治療効果があることが示される。
【0051】
被験物質は任意の化合物または組成物であり得る。例えば、被験物質は免疫調節薬剤を含み得る。
【0052】
治療薬剤を同定するためのスクリーニングアッセイ法
本明細書において開示するFGF18を用いて、CRCを治療するための候補治療薬剤を同定することもできる。本方法は、候補治療薬剤がCRC状態に特徴的なFGF18の発現プロファイルを非CRC状態を示すパターンに変化させるかどうかを決定する、候補治療薬剤のスクリーニングに基づく。
【0053】
本方法においては、細胞を被験物質または被験物質の組み合わせ(連続的にまたは結果として)に曝露し、細胞におけるFGF18の発現を測定する。被験集団におけるFGF18の発現レベルを、その1つまたは複数の被験物質に曝露していない参照細胞集団におけるFGF18の発現レベルと比較する。
【0054】
過剰発現された遺伝子の発現の抑制に効果的な物質は、臨床上有用であると見なされる。そのような化合物を、CRCの増殖を妨げる能力に関してさらに試験し得る。
【0055】
さらなる態様において、本発明は、CRCの治療における有力な標的である候補物質をスクリーニングする方法を提供する。上記で詳述したように、マーカー遺伝子の発現レベルまたは活性を調節することにより、CRCの発症および進行を調節することができる。したがって、指標としてマーカー遺伝子の発現レベルおよび活性を用いるスクリーニングにより、CRCの治療における有力な標的である候補物質を同定することができる。本発明の文脈において、そのようなスクリーニングは例えば以下の段階を含み得る:
a) 被験化合物をFGF18の核酸によってコードされるポリペプチドと接触させる段階;
b) ポリペプチドと被験化合物との結合活性を決定する段階;および
c) ポリペプチドに結合する化合物を選択する段階。
【0056】
または、本発明のスクリーニング法は以下の段階を含み得る:
a) 候補化合物をFGF18を発現する細胞と接触させる段階;および
b) FGF18の発現レベルを低減させる化合物を選択する段階。
【0057】
マーカー遺伝子を発現する細胞には、例えばCRCから樹立された細胞株が含まれる;そのような細胞を、本発明の上記のスクリーニング法において用いることができる。
【0058】
または、本発明のスクリーニング法は以下の段階を含み得る:
a) 被験化合物をFGF18の核酸によってコードされるポリペプチドと接触させる段階;
b) 段階(a)のポリペプチドの生物活性を検出する段階;および
c) 被験化合物の非存在下で検出される生物活性と比較して、FGF18の核酸によってコードされるポリペプチドの生物活性を抑制する化合物を選択する段階。
【0059】
スクリーニングに必要なタンパク質は、マーカー遺伝子のヌクレオチド配列を用いて組み換えタンパク質として得ることができる。当業者は、マーカー遺伝子の情報に基づき、スクリーニングの指標としてのタンパク質の任意の生物活性、および選択された生物活性に基づいた測定法を選択し得る。好ましくは、FGF18の細胞増殖活性は、生物活性として選択してもよい。FGF18の細胞増殖活性は、NIH3T3等の細胞株の増殖により検出してもよい。
【0060】
または、本発明のスクリーニング法は以下の段階を含み得る:
a) 候補化合物を、FGF18の転写制御領域およびその転写制御領域の調節下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターを導入した細胞と接触させる段階;
b) レポーター遺伝子の活性または発現を測定する段階;および
c) 対照と比較して、レポーター遺伝子の活性または発現レベルを低減させる化合物を選択する段階。
【0061】
適したレポーター遺伝子および宿主細胞は、当技術分野において周知である。スクリーニングに必要なレポーター構築物は、マーカー遺伝子の転写制御領域を用いて調製し得る。マーカー遺伝子の転写制御領域が当業者に公知である場合には、以前の配列情報を用いてレポーター構築物を調製することができる。本発明の転写制御領域には、β-カテニン/Tcf4結合モチーフを含むDNAを用いることができる。SEQ ID NO:24に記載のヌクレオチド配列を含むDNAが、転写制御領域として好ましい。マーカー遺伝子の転写制御領域が未知である場合には、マーカー遺伝子のヌクレオチド配列情報に基づいて、転写制御領域を含むヌクレオチド部分をゲノムライブラリーから単離することができる。
【0062】
さらに、本発明のスクリーニング法は以下の段階を含み得る:
a) FGF18遺伝子の転写制御領域内のβ-カテニン/Tcf4結合モチーフを含むDNAを、候補化合物の存在下または非存在下において、β-カテニン/Tcf4複合体と接触させる段階;
b) DNAとβ-カテニン/Tcf4複合体の結合を検出する段階;および
c) 対照と比較して、β-カテニン/Tcf4複合体とDNAとの結合を阻害する化合物を選択する段階。
【0063】
本発明において、DNAとβ-カテニン/Tcf4複合体との結合は移動度シフトアッセイ法(EMSA)により検出し得る。
【0064】
スクリーニングによって単離される化合物は、マーカー遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を阻害する薬剤の候補であり、したがってCRCの治療または予防に適用することができる。
【0065】
さらに、マーカー遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を阻害する化合物の構造の一部が、付加、欠失、および/または置換により改変された化合物もまた、本発明のスクリーニング法によって得られ得る化合物に含まれる。
【0066】
本発明の方法によって単離された化合物を、ヒトおよび他の哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ、およびチンパンジー等に対する薬剤として投与する場合には、単離された化合物を直接投与することもでき、または公知の製剤法により剤形へと製剤化することもできる。例えば、必要に応じて、薬剤を糖衣錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、およびマイクロカプセルとして経口服用することもでき、または水もしくは任意の他の薬学的に許容される液体を伴う無菌液もしくは懸濁液の注射剤形態として非経口的に服用することもできる。例えば、化合物を、一般的に認められる薬剤の実現のために必要な単位用量剤形として、薬学的に許容される担体または媒体、例えば滅菌水、生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、溶剤、保存剤、結合剤等と混合することができる。これらの製剤中の活性成分の量により、指示範囲内にある適した投与量が得られる。
【0067】
錠剤およびカプセル剤に混合し得る添加物の例には、ゼラチン、コーンスターチ、トラガカントゴム、およびアラビアゴム等の結合剤;結晶セルロース等の賦形剤;コーンスターチ、ゼラチン、およびアルギン酸等の膨張剤;ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;スクロース、ラクトース、またはサッカリン等の甘味料;ならびにペパーミント、アカモノ(Gaultheria adenothrix)油、およびチェリー等の香味剤がある。単位用量剤形がカプセル剤である場合には、油等の液体担体も上記の成分にさらに含めることができる。注射用の滅菌組成物は、通常の薬剤の実現に従って、注射用蒸留水等の溶剤を用いて製剤化することができる。
【0068】
生理食塩水、グルコース、ならびにD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、および塩化ナトリウム等のアジュバントを含むその他の等張液を、注射用の水溶液として用いることができる。これらは、アルコール、特にエタノール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール等の多価アルコール、ポリソルベート80(商標)およびHCO-50等の非イオン性界面活性剤のような適した可溶化剤と組み合わせて用いることができる。
【0069】
ゴマ油またはダイズ油を油性液体として用いることができ、これらを可溶化剤としての安息香酸ベンジルまたはベンジルアルコールと組み合わせて用いてもよい。これらを、リン酸緩衝液および酢酸ナトリウム緩衝液等の緩衝液;塩酸プロカイン等の鎮痛薬;ベンジルアルコールおよびフェノール等の安定剤;ならびに/または抗酸化剤と共に製剤化してもよい。調製された注射剤は適したアンプルに充填することができる。
【0070】
本発明の薬学的組成物を、例えば動脈内注射、静脈内注射、もしくは皮下注射として、または鼻腔内投与、経気管支投与、筋肉内投与、もしくは経口投与として患者に投与するために、当業者に周知の方法を用いてもよい。投与量および投与方法は、患者の体重および年齢ならびに選択した投与方法に応じて異なる;しかしながら、当業者は慣行的に適した投与量および投与方法を選択することができる。前記化合物がDNAによってコードされ得る場合には、DNAを遺伝子治療用のベクターに挿入し、そのベクターを患者に投与し治療を行うことができる。投与量および投与方法は患者の体重、年齢、および症状に応じて異なるが、当業者はそれらを適切に選択することができる。
【0071】
例えば、本発明のタンパク質と結合してその活性を調節する化合物の用量は症状に依存するが、その用量は、標準的な成人(体重60 kg)に経口投与する場合、約0.1 mg〜約100 mg/日、好ましくは約1.0 mg〜約50 mg/日、およびより好ましくは約1.0 mg〜約20 mg/日である。
【0072】
標準的な成人(体重60 kg)に注射剤の形態として非経口投与する場合には、患者、標的臓器、症状、および投与方法に応じて若干の違いはあるが、約0.01 mg〜約30 mg/日、好ましくは約0.1〜約20 mg/日、およびより好ましくは約0.1〜約10 mg/日の用量を静脈内注射することが簡便である。同様に、他の動物の場合においても、体重60 kgに換算した量を投与することが可能である。
【0073】
CRCを有する対象の予後評価
本明細書では、一連の病期にわたり、被験細胞集団におけるFGF18の発現を、患者由来の参照細胞集団におけるその遺伝子の発現と比較することにより、CRCを有する対象の予後を評価する方法もまた提供する。被験細胞集団と参照細胞集団におけるFGF18の遺伝子発現を比較することにより、または対象由来の被験細胞集団において長期にわたり遺伝子発現のパターンを比較することにより、対象の予後を評価することができる。
【0074】
正常対照と比較した場合のFGF18発現の増加により、予後が良好でないことが示される。FGF18の発現の減少により、対象の予後がより良好であることが示される。
【0075】
キット
本発明はまた、CRC検出試薬、例えば、FGF18核酸の一部に相補的なオリゴヌクレオチド配列のような、FGF18核酸に特異的に結合するかもしくはこれを同定する核酸、またはFGF18核酸によってコードされるタンパク質に結合する抗体を含む。試薬はキットの形態で共に包装される。試薬は、例えば核酸もしくは抗体(固体マトリックスに結合されているか、またはそれらをマトリックスに結合させるための試薬と共に個別に包装されている)、対照試薬(陽性および/または陰性)、および/または検出可能な標識といった個別の容器内に包装される。アッセイを行うための説明書(例えば、書面、テープ、VCR、CD-ROM等)がキットに含まれる。キットのアッセイ形式は、当技術分野において公知であるノーザンハイブリダイゼーションまたはサンドイッチELISAである。
【0076】
例えば、CRC検出試薬を多孔性条片等の固体マトリックス上に固定化して、少なくとも1つのCRC検出部位を形成する。多孔性条片の測定または検出領域は、核酸を含む複数の部位を含み得る。試験条片はまた、陰性対照および/または陽性対照のための部位も含み得る。または、対照部位は試験条片とは別の条片上に位置してもよい。任意で、異なる検出部位は異なる量の固定化核酸を含んでもよく、すなわち、第一検出部位はより多い量、次の部位ではより少ない量を含んでもよい。被験試料を添加した場合に、検出可能なシグナルを示す部位の数により、試料中に存在するCRCの量が定量的に示される。検出部位は任意の適した検出可能な形状で構成され得り、典型的には試験条片の幅に及ぶバーまたはドットの形状である。
【0077】
CRCを抑制する方法
本発明は、FGF18の発現または活性を減少させることにより、対象におけるCRCの症状を治療または軽減する方法を提供する。CRCを発症している(または発症しやすい)対象に、治療化合物を予防的または治療的に投与する。投与は全身投与または局所投与であり得る。そのような対象は、標準的な臨床的方法を用いて、またはFGF18の発現もしくは活性の異常なレベルを検出することによって同定され得る。治療薬剤には細胞増殖の阻害剤が含まれる。
【0078】
本発明の方法は、FGF18の遺伝子産物の発現もしくは機能またはその両方を減少させる段階を含む。発現は、当技術分野において周知であるいくつかの方法のいずれかによって抑制される。例えば、発現は、過剰発現される遺伝子の発現を抑制または拮抗する核酸、例えば過剰発現される遺伝子の発現を阻止するアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは低分子干渉RNA(siRNA)を対象に投与することによって抑制し得る。
【0079】
上記のように、FGF18のヌクレオチド配列に相当するアンチセンス核酸を用いて、FGF18の発現レベルを減少させることができる。CRCにおいて上方制御されるFGF18のヌクレオチド配列に相当するアンチセンス核酸は、CRCの治療に有用である。具体的には、本発明のアンチセンス核酸は、FGF18のヌクレオチド配列またはそれに相当するmRNAに結合し、それによって遺伝子の転写もしくは翻訳を抑制し、mRNAの分解を促進し、および/またはFGF18の核酸によってコードされるタンパク質の発現を抑制し、最終的にタンパク質の機能を阻害することによって作用し得る。本明細書で使用する「アンチセンス核酸」という用語は、標的配列に完全に相補的なヌクレオチド、およびアンチセンス核酸が標的配列に特異的に結合し得る限り、1つまたは複数のヌクレオチドミスマッチを有するヌクレオチドの両方を含む。例えば、本発明のアンチセンス核酸には、少なくとも15個の連続したヌクレオチドにわたって、少なくとも70%またはそれ以上、好ましくは少なくとも80%またはそれ以上、より好ましくは少なくとも90%またはそれ以上、さらにより好ましくは少なくとも95%またはそれ以上の相同性を有するポリヌクレオチドが含まれる。当技術分野において公知であるアルゴリズムを用いて、相同性を決定することができる。
【0080】
本発明のアンチセンス核酸誘導体は、タンパク質をコードするDNAまたはmRNAに結合し、それらの転写または翻訳を抑制し、mRNAの分解を促進し、かつタンパク質の発現を抑制し、その結果としてタンパク質機能の阻害を生じることにより、マーカー遺伝子によってコードされるタンパク質を産生する細胞に作用する。
【0081】
本発明のアンチセンス核酸誘導体は、誘導体に対して不活性である適した基剤と混合することにより、塗布剤または湿布等の外用剤にすることができる。
【0082】
同様に、賦形剤、等張剤、可溶化剤、安定剤、保存剤、鎮痛剤等を加えることにより、誘導体を必要に応じて錠剤、散剤、粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル、注射剤、液剤、点鼻剤、および凍結乾燥剤に製剤化することができる。これらは以下の公知の方法に従って調製し得る。
【0083】
アンチセンス核酸誘導体は、患部に直接適用することにより、または患部に到達できるように血管に注入することによって患者に供することが好ましい。アンチセンス封入剤を用いて、耐久性および膜透過性を増すことも可能である。例としては、リポソーム、ポリ-L-リジン、脂質、コレステロール、リポフェクチン、またはそれらの誘導体が挙げられる。
【0084】
本発明のアンチセンス核酸誘導体の投与量は患者の状態に応じて適切に調節し、所望の量で使用することができる。例えば、0.1〜100 mg/kg、好ましくは0.1〜50 mg/kgの用量範囲で投与し得る。
【0085】
本発明のアンチセンス核酸には、修飾オリゴヌクレオチドが含まれる。例えば、チオエート化ヌクレオチドを用いて、オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ耐性を付与することができる。
【0086】
同様に、マーカー遺伝子に対するsiRNAを用いて、マーカー遺伝子の発現レベルを減少させることができる。「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を妨げる二本鎖RNA分子を意味する。標的mRNAにハイブリダイズするFGF18のsiRNAは、通常一本鎖であるmRNA転写産物と会合し、それによって翻訳、ひいてはタンパク質の発現を阻止することにより、FGF18遺伝子によってコードされるFGF18ポリペプチド産物の産生を減少させるかまたは抑制する。siRNAは、好ましくは500、200、100、50、または25ヌクレオチド長未満である。より好ましくは、siRNAは19〜25ヌクレオチド長である。FGF18 siRNAを産生するための例示的な核酸配列には、標的配列としてSEQ ID NO:21のヌクレオチドを利用する配列が含まれる。さらに、siRNAの阻害活性を増強するため、標的配列のアンチセンス鎖の3'末端にヌクレオチド「u」を付加することができる。付加すべき「u」の数は少なくとも2個、通常は2〜10個、好ましくは2〜5個である。付加した「u」はsiRNAのアンチセンス鎖の3'末端において一本鎖を形成する。
【0087】
本発明の文脈において、siRNAは、FGF18等の上方制御されるマーカー遺伝子に対するセンス核酸配列およびアンチセンス核酸配列を含む。siRNAは、例えばヘアピンのように、単一の転写産物が標的遺伝子のセンス配列と相補的なアンチセンス配列の両方を有するように構築される。ヘアピンループ構造を形成するために、任意のヌクレオチド配列からなるループ配列をセンス配列とアンチセンス配列の間に位置づけることができる。したがって、本発明はまた、一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'(式中、[A]はSEQ ID NO:21のヌクレオチド配列に相当するリボヌクレオチド配列であり、[B]は3〜23ヌクレオチドからなるリボヌクレオチド配列であり、[A']は[A]の相補配列からなるリボヌクレオチド配列である)を有するsiRNAを提供する。領域[A]は[A']にハイブリダイズし、そのため領域[B]からなるループが形成される。ループ配列は好ましくは3〜23ヌクレオチド長であり得る。ループ配列は、例えば以下の配列からなる群より選択され得る(http://www.ambion.com/techlib/tb/tb. 506.html)。さらに、23ヌクレオチドからなるループ配列もまた活性のあるsiRNAを提供する(Jacque, J.-M., Triques, K., and Stevenson, M. (2002) Modulation of HIV-1 replication by RNA interference. Nature 418 : 435-438.):
1、CCC, CCACC または CCACACC: Jacque, J. M, Triques, K., and Stevenson, M (2002) Modulation of HIV-1 replication by RNA interference. Nature, Vol. 418: 435-438 ;
2、UUCG: Lee, N.S., Dohjima, T., Bauer, G., Li, H., Li, M.-J., Ehsani, A., Salvaterra, P., and Rossi, J. (2002) Expression of small interfering RNAs targeted against HIV-1 rev transcripts in human cells. Nature Biotechnology 20 : 500-505. Fruscoloni, P., Zamboni, M., and Tocchini-Valentini, G. P. (2003) Exonucleolytic degradation of double-stranded RNA by an activity in Xenopus laevis germinal vesicles. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(4): 1639-1644 ; および
3、UUCAAGAGA: Dykxhoorn, D. M., Novina, C. D., and Sharp, P. A. (2002) Killing the messenger: Short RNAs that silence gene expression. Nature Reviews Molecular Cell Biology 4: 457-467.
【0088】
ヘアピンループ構造を有する本発明の例示的なsiRNAは:(SEQ ID NO:21の標的配列のための)gguucuggagaacaacuacu-[b]-aguaguuguucuccagaacc を含む。この構造において、ループ配列はCCC、UUCG、CCACC、CCACACC、およびUUCAAGAGAからなる群より選択され得る。好ましいループ構造はUUCAAGAGA(DNAでは「ttcaagaga」)である。
【0089】
FGF18配列に隣接する制御配列は、それらの発現が独立して調節され得るか、または時間的もしくは位置的に調節され得るように、同一であるかまたは異なる。siRNAは、例えばRNA pol III転写単位を含むベクターにFGF18遺伝子鋳型をクローニングすることによって、細胞内で低分子核内RNA(snRNA)U6またはヒトH1 RNAプロモーターから転写される。細胞にベクターを導入するために、トランスフェクション増強剤を用いることができる。FuGENE(Rochediagnostices)、Lipofectamine 2000(Invitrogen)、Oligofectamine(Invitrogen)、およびNucleofactor(Wako pure Chemical)がトランスフェクション増強剤として有用である。
【0090】
細胞にsiRNAを導入する標準的な技法を用い得るが、これにはDNAがRNAの転写の鋳型である技法が含まれる。例えば、FGF18のsiRNAは、mRNA転写産物に結合し得る形態で細胞に直接導入することができる。または、FGF18のsiRNAをコードするDNAをベクターに挿入してもよい。
【0091】
ベクターは、例えば、(DNA分子の転写により)両鎖の発現を可能にする様式で、FGF18配列に隣接する制御配列に機能的に連結された発現ベクターに、FGF18標的配列をクローニングすることによって作製することができる(Lee, N.S., Dohjima, T., Bauer, G., Li, H., Li, M.-J., Ehsani, A.,Salvaterra, P., and Rossi, J. (2002) Expression of small interfering RNAs targeted against HIV-1 rev transcripts in human cells. Nature Biotechnology 20 : 500-505)。FGF18 mRNAに対してアンチセンスであるRNA分子は第1のプロモーター(例えば、クローニングしたDNAの3'側のプロモーター配列)から転写され、FGF18 mRNAのセンス鎖であるRNA分子は第2のプロモーター(例えば、クローニングしたDNAの5'側のプロモーター配列)から転写される。センス鎖およびアンチセンス鎖はインビボでハイブリダイズし、FGF 18遺伝子をサイレンシングするためのsiRNA構築物を生じる。または、2つの構築物を利用して、siRNA構築物のセンス鎖およびアンチセンス鎖を作製する。クローニングするFGF18は、例えば、単一の転写産物が標的遺伝子のセンス配列と相補的アンチセンス配列の両方を有するヘアピンといった、二次構造を有する構築物をコードすることも可能である。
【0092】
CRCを抑制する本発明の方法を用いて、例えば細胞の悪性形質転換の結果として上方制御される遺伝子のような、上方制御されるマーカー遺伝子の細胞での発現を変化させることができる。標的細胞においてFGF18に相当する転写産物にsiRNAが結合することにより、細胞によるFGF18タンパク質の産生が減少する。オリゴヌクレオチドの長さは少なくとも10ヌクレオチドであり、天然の転写産物と同程度の長さであってもよい。好ましくは、オリゴヌクレオチドは19〜25ヌクレオチド長である。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドは75、50、25ヌクレオチド長未満である。哺乳動物細胞において発現を抑制するFGF18 siRNAオリゴヌクレオチドの例には、SEQ ID NO:21を含む標的配列が含まれる。
【0093】
本明細書で利用するsiRNAのヌクレオチド配列は、Ambionウェブサイト(http://www.ambion.com/techlib/ misc/siRNA_finder.html)から利用できるsiRNA設計コンピュータプログラムを用いて設計した。このコンピュータプログラムは、以下の手順に基づいてsiRNA合成のためのヌクレオチド配列を選択する。
【0094】
siRNA標定部位の選択:
1. 目的の転写産物のAUG開始コドンから始めて、AAジヌクレオチド配列について下流方向にスキャンする。潜在的siRNA標的部位として、各AAおよび3'隣接19ヌクレオチドの存在を記録する。Tuschlらは、5'および3'非翻訳領域(UTR)ならびに開始コドン近傍の領域(75塩基内)には制御タンパク質結合部位がより豊富である可能性があるため、これらに対してsiRNAを設計しないことを推奨している。UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨げる可能性がある。
2. 有力な標的部位をヒトゲノムデータベースと比較し、他のコード配列に対して有意な相同性を有するいかなる標的配列も検討から除外する。相同性検索はBLASTを用いて行うことができ、これはwww.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/のNCBIサーバー上で見ることができる。
3. 合成のための適格な標的配列を選択する。Ambionでは、評価するために、好ましくは遺伝子の長さに沿っていくつかの標的配列を選択することができる。
【0095】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAは、本発明のポリペプチドの発現を阻害し、そのため本発明のポリペプチドの生物活性を抑制するのに有用である。同様に、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAを含む発現阻害剤は、本発明のポリペプチドの生物活性を阻害し得るという点で有用である。したがって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAを含む組成物は、CRCの治療に有用である。
【0096】
または、過剰発現される遺伝子の遺伝子産物の機能は、遺伝子産物に結合するかまたはさもなければその機能を阻害する化合物を投与することによって阻害することができる。例えば、化合物は過剰発現される遺伝子産物に結合する抗体であってよい。
【0097】
本発明は、抗体、特に上方制御されるマーカー遺伝子によってコードされるタンパク質に対する抗体、およびそのような抗体の断片の使用を含む。本明細書で用いる「抗体」という用語は、抗体を合成するために用いられた抗原(すなわち、上方制御されるマーカー遺伝子産物)またはそれと極めて近縁の抗原とのみ相互作用する(すなわち結合する)特定の構造を有する免疫グロブリン分子を指す。さらに、抗体は、マーカー遺伝子によってコードされるタンパク質に結合する限り、抗体の断片または改変抗体であってもよい。例えば、抗体断片は、Fab、F(ab')2、Fv、またはH鎖およびL鎖によるFv断片が適切なリンカーにより連結された一本鎖Fv(scFv)であってよい(Huston J. S. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5879-5883 (1988))。より具体的には、抗体断片は、抗体をパパインまたはペプシン等の酵素で処理することによって作製し得る。または、抗体断片をコードする遺伝子を構築し、発現ベクターに挿入し、適切な宿主細胞において発現させてもよい(例えば、Co M. S. et al. J. Immunol. 152:2968-2976 (1994); Better M. and Horwitz A. H. Methods Enzymol. 178:476-496 (1989); Pluckthun A. and Skerra A. Methods Enzymol. 178:497-515 (1989); Lamoyi E. Methods Enzymol. 121:652-663 (1986); Rousseaux J. et al. Methods Enzymol. 121:663-669 (1986); Bird R. E. and Walker B. W. Trends Biotechnol. 9:132-137 (1991)を参照されたい)。
【0098】
抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)等の種々の分子との結合により修飾してもよい。本発明はそのような修飾抗体を提供する。修飾抗体は抗体を化学的に修飾することによって得ることができる。これらの修飾法は本分野において慣習的である。
【0099】
または、抗体は、非ヒト抗体由来の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とのキメラ抗体として、または非ヒト抗体由来の相補性決定領域(CDR)、ヒト抗体由来のフレームワーク(FR)領域および定常領域を含むヒト化抗体として得ることも可能である。そのような抗体は公知の技術を用いて調製することができる。
【0100】
癌細胞において起こる特定の分子変化を対象にした癌治療は、進行性乳癌治療用のトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、慢性骨髄性白血病用のメシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標))、非小細胞肺癌(NSCLC)用のゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、B細胞リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫用のリツキシマブ(抗CD20 mAb)等の抗癌剤の臨床開発ならびに規制認可により有効となっている(Ciardiello F, Tortora G. A novel approach in the treatment of cancer: targeting the epidermal growth factor receptor. Clin Cancer Res. 2001 Oct;7(10):2958-70. Review.; Slamon DJ, Leyland-Jones B, Shak S, Fuchs H, Paton V, Bajamonde A, Fleming T, Eiermann W, Wolter J, Pegram M, Baselga J, Norton L. Use of chemotherapy plus a monoclonal antibody against HER2 for metastatic breast cancer that overexpresses HER2. N Engl J Med. 2001 Mar 15;344(11):783-92.; Rehwald U, Schulz H, Reiser M, Sieber M, Staak JO, Morschhauser F, Driessen C, Rudiger T, Muller-Hermelink K, Diehl V, Engert A. Treatment of relapsed CD20+ Hodgkin lymphoma with the monoclonal antibody rituximab is effective and well tolerated: results of a phase 2 trial of the German Hodgkin Lymphoma Study Group. Blood. 2003 Jan 15;101(2):420-424.; Fang G, Kim CN, Perkins CL, Ramadevi N, Winton E, Wittmann S and Bhalla KN. (2000). Blood, 96, 2246-2253)。これらの薬剤は形質転換細胞のみを標的とするため、これまでの抗癌剤よりも臨床的に有効でありかつ許容性がよい。したがって、そのような薬剤は癌患者の生存期間および生活の質を改善するばかりでなく、分子標的癌治療の概念を確証する。さらに、標的薬剤は、標準的な化学療法と併用した場合にその有効性を亢進し得る(Gianni L. (2002). Oncology, 63 Suppl 1, 47-56.;Klejman A, Rushen L, Morrione A, Slupianek A and Skorski T. (2002). Oncogene, 21, 5868-5876.)。したがって、今後の癌治療はおそらく、従来の薬剤と、血管新生および侵襲性等の腫瘍細胞の差次的特徴を目標とした標的特異的な薬剤との併用を含むことになるであろう。
【0101】
これらの調節法は、エクスビボもしくはインビトロで(例えば、細胞を薬剤と培養することにより)、またはインビボで(例えば、対象に薬剤を投与することにより)行われる。本方法は、差次的に発現される遺伝子の異常な発現または活性を妨げる治療として、タンパク質もしくはタンパク質の組み合わせまたは核酸分子もしくは核酸分子の組み合わせを投与する段階を含む。
【0102】
遺伝子の生物活性レベルの増加(疾患または障害に罹患していない対象と比較して)を特徴とする疾患および障害は、過剰発現される1つまたは複数の遺伝子の活性を拮抗する(すなわち、低減または阻害する)治療薬剤で処置することができる。活性を拮抗する治療薬剤は治療的または予防的に投与される。
【0103】
利用し得る治療薬剤には、(i) 過剰発現される配列のポリペプチド、またはその類似体、誘導体、断片、もしくは相同体;(ii) 過剰発現される配列に対する抗体;(iii) 過剰発現される配列をコードする核酸;(iv) アンチセンス核酸または「非機能的」である核酸(すなわち、過剰発現される配列のコード配列内への異種挿入による);(v) 低分子干渉RNA(siRNA);あるいは(vi) 調節因子(例えば、過剰発現されるポリペプチドとその結合パートナーとの相互作用を変化させる阻害剤、アゴニスト、およびアンタゴニスト)が含まれ得る。非機能的なアンチセンス分子は、相同的組換えによりポリペプチドの内因的機能を「ノックアウトする」ために利用される(例えば、Capecchi, Science 244: 1288-1292 1989を参照されたい)。
【0104】
レベルの増加は、患者の組織試料を(例えば生検組織から)得て、その試料を、発現したペプチド(または発現が変化する遺伝子のmRNA)のRNAもしくはペプチドレベル、構造、および/または活性についてインビトロでアッセイし、ペプチドおよび/またはRNAを定量することによって容易に検出することができる。当技術分野において周知である方法には、免疫測定法(例えば、ウェスタンブロット解析、免疫沈降法およびその後のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫細胞化学法等による)および/またはmRNAの発現を検出するためのハイブリダイゼーションアッセイ法(例えば、ノーザンアッセイ法、ドットブロット、インサイチューハイブリダイゼーション)が含まれるが、これらに限定されない。
【0105】
疾患の明白な臨床症状が現れる前に、疾患または障害を予防するかまたはその進行を遅らせるように予防的投与を行う。
【0106】
本発明の治療法は、差次的に発現される遺伝子の遺伝子産物の1つまたは複数の活性を調節する物質と細胞を接触させる段階を含む。タンパク質活性を調節する物質には、核酸またはタンパク質、これらのタンパク質の天然に存在する同族リガンド、ペプチド、ペプチド模倣体、または他の低分子が含まれる。
【0107】
本発明はまた、FGF18の核酸によってコードされるポリペプチド、そのポリペプチドの免疫学的活性断片、またはポリペプチドもしくはその断片をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを対象に投与する段階を含む、対象においてCRCを治療または予防する方法に関する。ポリペプチドの投与により、対象において抗腫瘍免疫が誘導される。抗腫瘍免疫を誘導するため、FGF18の核酸によってコードされるポリペプチド、そのようなポリペプチドの免疫学的活性断片、またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与する。ポリペプチドまたはその免疫学的活性断片は、CRCに対するワクチンとして有用である、場合によっては、タンパク質またはその断片を、T細胞受容体(TCR)に結合した形態、またはマクロファージ、樹状細胞(DC)、もしくはB細胞等の抗原提示細胞(APC)によって提示された形態で投与してもよい。DCは抗原提示能が強いため、APCの中でもDCを用いることが最も好ましい。
【0108】
本発明において、CRCに対するワクチンとは、動物に接種した場合に抗腫瘍免疫を誘導する機能を有する物質を指す。本発明により、FGF18の核酸によってコードされるポリペプチドまたはその断片は、FGF18を発現しているCRC細胞に対して強力かつ特異的な免疫応答を誘導し得るHLA-A24またはHLA-A*0201拘束性エピトープペプチドであることが示唆された。したがって本発明はまた、このポリペプチドを用いて抗腫瘍免疫を誘導する方法も含む。一般に、抗腫瘍免疫には以下のような免疫応答が含まれる:
− 腫瘍に対する細胞傷害性リンパ球の誘導、
− 腫瘍を認識する抗体の誘導、および
− 抗腫瘍サイトカイン産生の誘導。
【0109】
したがって、特定のタンパク質が動物への接種に際してこれらの免疫応答のいずれか1つを誘導する場合、そのタンパク質は抗腫瘍免疫誘導作用を有すると判定される。タンパク質による抗腫瘍免疫の誘導は、インビボまたはインビトロでタンパク質に対する宿主の免疫系の反応を観察することによって検出することができる。
【0110】
例えば、細胞傷害性Tリンパ球の誘導を検出する方法は周知である。生体に侵入する外来物質は、抗原提示細胞(APC)の作用によりT細胞およびB細胞に対して提示される。APCによって提示された抗原に対して抗原特異的に反応するT細胞は、抗原による刺激により細胞傷害性T細胞(または細胞傷害性Tリンパ球;CTL)に分化し、次いで増殖する(これはT細胞の活性化と称される)。したがって、特定のペプチドによるCTLの誘導は、APCによりT細胞に対してペプチドを提示し、CTLの誘導を検出することによって評価することができる。さらに、APCは、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、マクロファージ、好酸球、およびNK細胞を活性化する作用を有する。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞は抗腫瘍免疫においても重要であることから、ペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用は、これらの細胞の活性化作用を指標として用いて評価することができる。
【0111】
APCとして樹状細胞(DC)を用いるCTLの誘導作用を評価する方法は、当技術分野において周知である。DCは、APCの中で最も強いCTL誘導作用を有する代表的なAPCである。この方法において、被験ポリペプチドをまずDCと接触させ、次いでこのDCをT細胞と接触させる。DCとの接触後に関心対象の細胞に対して細胞傷害作用を有するT細胞が検出されることで、被験ポリペプチドが細胞傷害性T細胞の誘導活性を有することが示される。腫瘍に対するCTLの活性は、例えば指標として51Cr標識腫瘍細胞の溶解を用いて検出することができる。または、3H-チミジン取り込み活性またはLDH(乳酸脱水素酵素)放出を指標として用いて、腫瘍細胞の損傷の程度を評価する方法もまた周知である。
【0112】
DCとは別に、末梢血単核細胞(PBMC)をAPCとして用いてもよい。CTLの誘導は、GM-CSFおよびIL-4の存在下でPBMCを培養することによって増強され得ることが報告されている。同様に、CTLは、PBMCをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびIL-7の存在下で培養することによって誘導されることも示されている。
【0113】
これらの方法によりCTL誘導活性を有することが確認された被験ポリペプチドは、DC活性化作用およびその後のCTL誘導活性を有するポリペプチドである。したがって、腫瘍細胞に対するCTLを誘導するポリペプチドは、腫瘍に対するワクチンとして有用である。さらに、ポリペプチドとの接触によって腫瘍に対するCTL誘導能を獲得したAPCは、腫瘍に対するワクチンとして有用である。さらに、APCによるポリペプチド抗原の提示により腫瘍に対する細胞傷害性を獲得したCTLも、腫瘍に対するワクチンとして用いることができる。APCおよびCTLによる抗腫瘍免疫を用いたそのような腫瘍の治療法は、細胞免疫療法と称される。
【0114】
一般に、細胞免疫療法にポリペプチドを用いる場合、異なる構造を有する複数のポリペプチドを組み合わせ、それらをDCと接触させることにより、CTL誘導の効率が増加することが知られている。したがって、タンパク質断片でDCを刺激する場合、多くの種類の断片の混合物を用いることが有利である。
【0115】
または、ポリペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導は、腫瘍に対する抗体産生の誘導を観察することによって確認することができる。例えば、ポリペプチドを免疫した実験動物においてポリペプチドに対する抗体を誘導し、腫瘍細胞の増殖がそれらの抗体によって抑制される場合、そのポリペプチドは抗腫瘍免疫を誘導する能力を有すると判定され得る。
【0116】
抗腫瘍免疫は、本発明のワクチンを投与することによって誘導される;抗腫瘍免疫の誘導によりCRCの治療および予防が可能になる。癌に対する治療および癌の発症の予防は、癌細胞の増殖の抑制、癌の退縮、および癌の発症の抑制等の段階のいずれかを含む。癌を有する個体の死亡率の減少、血液中の腫瘍マーカーの減少、癌に伴う検出可能な症状の軽減等もまた、癌の治療または予防に含まれる。そのような治療および予防効果は好ましくは統計的に有意であり、例えば、細胞増殖性疾患に対するワクチンの治療または予防効果をワクチンを投与していない対照と比較した場合に、有意水準5%またはそれ以下で観察される。スチューデントのt検定、マン・ホイットニーのU検定、ANOVAを統計解析に用いることができる。
【0117】
免疫学的活性を有する上記のタンパク質またはタンパク質をコードするベクターをアジュバントと組み合わせてもよい。アジュバントとは、免疫学的活性を有するタンパク質と共に(または連続して)投与した場合に、そのタンパク質に対する免疫応答を増強する化合物を指す。アジュバントの例には、コレラ毒素、サルモネラ毒素、ミョウバン等が含まれるが、これらに限定されない。さらに、本発明のワクチンを薬学的に許容される適切な担体と組み合わせてもよい。そのような担体の例には、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、培養液等が含まれる。さらに、ワクチンは必要に応じて、安定剤、懸濁剤、保存剤、界面活性剤等を含み得る。ワクチンは全身投与または局所投与される。ワクチン投与は単回投与で行っても、または複数回の投与により強化してもよい。
【0118】
本発明のワクチンとしてAPCまたはCTLを用いる場合、腫瘍は例えばエクスビボ法によって治療または予防することができる。より具体的には、治療または予防を受ける対象のPBMCを採取し、細胞をエクスビボでポリペプチドと接触させ、APCまたはCTLを誘導した後に細胞を対象に投与することができる。APCはまた、ポリペプチドをコードするベクターをエクスビボでPBMCに導入することによって誘導することもできる。インビトロで誘導されたAPCまたはCTLは、投与前にクローニングすることができる。標的細胞を損傷する高い活性を有する細胞をクローニングし増殖させることにより、細胞免疫療法をより効率的に行うことができる。さらに、このようにして単離されたAPCおよびCTLは、細胞が由来する個体に対してのみならず、類似した種類の腫瘍を有する他の個体に対する細胞免疫療法にも用いることができる。
【0119】
さらに、本発明のポリペプチドの薬学的有効量を含む、癌等の細胞増殖性疾患を治療または予防するための薬学的組成物を提供する。抗腫瘍免疫をもたらすために薬学的組成物を用いることができる。
【0120】
CRCを抑制するための薬学的組成物
薬学的製剤には、経口、直腸、経鼻、局所(口腔および舌下を含む)、膣、もしくは非経口(筋肉内、皮下、および静脈内を含む)投与に適した製剤、または吸入もしくは通気による投与に適した製剤が含まれる。投与は静脈内投与であることが好ましい。製剤は任意で個別の投与単位で包装される。
【0121】
経口投与に適した薬学的製剤には、それぞれが所定量の有効成分を含むカプセル剤、カシェ剤、または錠剤が含まれる。製剤にはまた、散剤、粒剤、または液剤、懸濁剤、もしくは乳剤が含まれる。有効成分は、任意で巨丸剤、舐剤、またはペースト剤として投与される。経口投与用の錠剤およびカプセル剤には、結合剤、増量剤、潤滑剤、崩壊剤、または湿潤剤等の従来の賦形剤を含めてもよい。錠剤は、任意で1つまたは複数の製剤成分と共に、圧縮または成形により作製され得る。圧縮錠剤は、粉末または顆粒のような自由流動形態の有効成分を任意で結合剤、潤滑剤(lubricant)、不活性希釈剤、潤滑剤(lubricating)、界面活性剤、または分散剤と混合して、適した機械において圧縮することにより調製され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤した粉末化合物の混合物を適した機械において成形することによって作製され得る。錠剤は、当技術分野において公知の方法に従ってコーティングしてもよい。経口液体製剤は、例えば、水性もしくは油性懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の形態であってもよく、または使用前に水もしくはその他の適した溶剤を用いて構成するための乾燥製品として提供してもよい。そのような液体製剤には、懸濁剤、乳化剤、非水性溶剤(食用油を含み得る)、または保存剤等の従来の添加剤を含めてもよい。錠剤は、任意で、中に含まれる有効成分の持続放出または制御放出を提供するように製剤化され得る。錠剤のパッケージは、その月の各日に服用すべき錠剤1個を含み得る。
【0122】
非経口投与用の製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水性および非水性無菌注射液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性無菌懸濁剤が含まれる。製剤は、例えば密封したアンプルおよびバイアルといった単位用量または多用量容器で提供され得り、使用する直前に例えば生理食塩水、注射用蒸留水といった無菌液体担体の添加のみを必要とする凍結乾燥(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilized))状態で保存され得る。または、製剤は持続注入用に提供してもよい。先に記載した種類の無菌散剤、粒剤、および錠剤から、即時注射溶液および懸濁液を調製することも可能である。
【0123】
直腸投与用の製剤には、カカオ脂またはポリエチレングリコール等の標準的な担体を伴う坐剤が含まれる。例えば口腔または舌下への口内局所投与用の製剤には、スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントゴム等の香味基剤中に有効成分を含む口内錠、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴム等の基剤中に有効成分を含む香剤が含まれる。鼻腔内投与には、本発明の化合物を液体スプレーもしくは分散粉末として、または滴剤の形態で用いてもよい。滴剤は、1つもしくは複数の分散剤、可溶化剤、または懸濁剤もまた含む水性または非水性基剤と共に製剤化され得る。
【0124】
吸入による投与のために、化合物は注入器、噴霧器、加圧パック、またはエアロゾルスプレーを送達する他の簡便な手段から簡便に送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、炭酸ガス、または他の適したガス等の適した噴霧剤を含み得る。加圧エアロゾルの場合には、バルブを備えることにより投与単位を決定して定量を送達してもよい。
【0125】
または、吸入もしくは通気による投与には、化合物は乾燥粉末組成物、例えば、化合物とラクトースまたはデンプン等の適した粉末基剤との粉末混合物の形態をとってもよい。粉末組成物は、例えば、カプセル、薬包、ゼラチン、またはブリスター包装での単位用量形態として提供することができ、そこから吸入器または注入器を用いて粉末が投与され得る。
【0126】
他の製剤には、治療薬剤を放出する埋め込み型装置および粘着パッチが含まれる。
【0127】
所望する場合には、有効成分の持続放出をもたらすように適合化した上記の製剤を用いてもよい。薬学的組成物は、抗菌剤、免疫抑制剤、または保存剤等の他の活性成分もまた含まれ得る。
【0128】
本発明の製剤は、先に詳述した成分に加えて、当該の製剤の種類を考慮して当技術分野において従来的な他の物質を含み得ることが理解されるべきであり、例えば経口投与に適した製剤は香味剤を含み得る。
【0129】
好ましい単位用量製剤は、以下に挙げるような有効成分の有効用量を含む製剤、または有効成分のそれらの適切な一部を含む製剤である。
【0130】
前述の状態のそれぞれに関して、組成物、例えばポリペプチドおよび有機化合物を、約0.1〜約250 mg/kg/日の用量で経口的にまたは注射により投与することができる。成人の用量範囲は一般に、約5 mg〜約17.5 g/日、好ましくは約5 mg〜約10 g/日、および最も好ましくは約100 mg〜約3 g/日である。個別の単位で提供される提示の錠剤または他の単位用量形態は、簡便に、そのような用量で効果的な量を含むか、または例えば約5 mg〜約500 mg、通常は約100 mg〜約500 mgを含む単位でそれを複数として含み得る。
【0131】
用いる用量は、対象の年齢および性別、処置する障害の詳細、ならびにその重症度を含む多くの要因に依存することになる。同様に、投与経路も状態およびその重症度に依存して変動し得る。
【0132】
本発明を以下の実施例においてさらに説明するが、これらの実施例は特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0133】
本発明を実施するための最良の形態
1.材料および方法
細胞株および臨床材料
ヒト結腸癌細胞株SW480、HCT116、およびDLD1、ならびにマウス線維芽細胞NIH3T3は、American Type Culture Collection(ATCC、メリーランド州、ロックビル)から入手した。ヒト結腸癌細胞株SNUC4およびSNUC5は、韓国細胞株バンク(KCLB、韓国、ソウル)から入手した。細胞はすべて以下のような適した培地中で単層として培養した:SW480にはLeibovitz L-15(Invitrogen、カリフォルニア州、カールズバッド)、HCT116にはマッコイ5A(Invitrogen)、DLD1、SNUC4、およびSNUC5にはRPMI1640(Sigma-Aldrich Corporation、ミズーリ州、セントルイス)、およびNIH3T3にはDMEM(Sigma-Aldrich);それぞれに0.5または10%ウシ胎児血清(Cansera International Inc.、カナダ、オンタリオ州)および1%抗菌/抗真菌溶液(Sigma-Aldrich)を添加した。細胞は、5% CO2を含む(HCT116、DLD1、SNUC4、SNUC5、およびNIH3T3)またはCO2を含まない(SW480)湿潤大気中で37℃で維持した。インフォームドコンセントを得た患者12名から、手術の過程で癌組織およびそれに対応する非癌粘膜を採取した。
【0134】
半定量的RT-PCR
TRIZOL試薬(Invitrogen)を用いて製造業者の手順に従い、培養細胞および臨床組織から全RNAを抽出した。抽出したRNAをDNaseI(Roche Diagnostics、ドイツ、マンハイム)で処理し、オリゴ(dt)12-18プライマーおよびSuperscript II逆転写酵素(Invitrogen)用いて一本鎖cDNAに逆転写した。定量対照としてのグリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素遺伝子(GAPDH)遺伝子をモニターすることにより、各一本鎖cDNAの適当な希釈物をその後のPCR増幅のために調製した。プライマー配列は、GAPDH用の5'-ACAACAGCCTCAAGATCATCAG-3'(SEQ ID NO: 1)および5'-GGTCCACCACTGACACGTTG-3'(SEQ ID NO: 2)、ならびにFGF18用の5'-GGACATGTGCAGGCTGGGCTA-3'(SEQ ID NO: 3)および5'-GTAGAATTCCGTCTCCTTGCCCTT-3'(SEQ ID NO: 4)であった。反応はすべて、GeneAmp PCRシステム9700(PE Applied Biosystems、カリフォルニア州、フォスター)において、94℃で2分間の最初の変性、その後の94℃で30秒、60℃で30秒、および72℃で60秒の18サイクル(GAPDHの場合)または33サイクル(FGF18の場合)を含んだ。
【0135】
ノーザンブロッティング
ヒト多組織ブロット(BD Bioscience、カリフォルニア州、パロアルト)を、Mega Labelキット(Amershan Biosciences、英国、バッキンガムシャー州)を用いたランダムオリゴヌクレオチドプライミングにより標識したFGF18の32P標識PCR産物とハイブリダイズさせた。産物は、プライマー5’-GGACATGTGCAGGCTGGGCTA-3’(SEQ ID NO: 3)および5’-GTGTTGGTTTCCTCATTCAAGTC-3’(SEQ ID NO: 5)を用いてRT-PCRにより調製した。プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、および洗浄は、供給元の推奨に従って実施した。ブロットは、増感スクリーンを用いて-80℃で240時間かけてオートラジオグラフ検出した。
【0136】
FGF18に対するポリクローナル抗体の調製
His標識化カルボキシル末端FGF18タンパク質(167〜207のコドン)を発現するプラスミドを、pET28ベクター(Novagen、ウィスコンシン州、マディソン)を用いて調製した。大腸菌(E. coli)BL21 codon-plus株(Stratagene、カリフォルニア州、ラ・ホーヤ)で組み換えタンパク質を発現させ、供給元の手順に従ってTALON樹脂(BD Bioscicence)を用いてこれを精製した。このタンパク質をウサギに接種し、標準的な方法に従ってアフィニティーカラムにより免疫血清を精製した。
【0137】
免疫組織化学法
ヒトFGF18に対するアフィニティー精製した抗FGF18抗体を用いて、免疫組織化学的染色を行った。製造業者の推奨する方法に従って、凍結組織切片をSAB-POペルオキシダーゼ免疫染色システム(Nichirei、日本、東京)に供した。
【0138】
インビトロにおける細胞生存に及ぼすFGF18の効果
プライマー5’-CCTCAAGCTTAGCGATGTATTCA-3’(SEQ ID NO: 6)および5’-CGGTCTAGACTAGGCAGGGTGT-3’(SEQ ID NO: 7)または5’-CCTCTCTCGAGGGCAGGGTGTGT-3’(SEQ ID NO: 8)のいずれかを用いてRT-PCRすることによりヒトFGF18の全コード領域を増幅し、発現ベクターpcDNA3.1(+)(Invitrogen)またはpFlagCMV5(Sigma-Aldrich)の適当なクローニング部位にクローニングした。フォーカス形成アッセイ法のため、FGF18を発現するプラスミド(pcDNA-FGF18またはpFlag-FGF18)または空ベクター(pcDNAまたはpFlagCMV5)を、マウス線維芽細胞NIH3T3細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションから1週間後、細胞を100%メタノールで固定し、ギムザ液で染色した。pFlag-FGF18または空ベクターをトランスフェクションしたNIH3T3細胞を支持する培地は、0.5% FBSで調整した;これらの細胞の増殖をMTTアッセイ法により解析した。
【0139】
psiHIBXの構築
RNAポリメラーゼIIIによるH1RNA遺伝子の転写により、3'末端にウリジンを有する短い転写産物が生じる。プライマー5’-TGGTAGCCAAGTGCAGGTTATA-3’ (SEQ ID NO: 9)、および5’- CCAAAGGGTTTCTGCAGTTTCA-3’(SEQ ID NO: 10)ならびに鋳型としてのヒト胎盤DNAを用いてPCRすることにより、H1RNAのプロモーター領域を含むゲノム断片を増幅した。この産物を精製し、供給元の手順(Invitrogen)に従ってTAクローニングキットを使用しpCR2.1プラスミドベクターにクローニングした。H1RNAを含むBamHI、XhoI断片を精製し、pcDNA3.1(+)のヌクレオチド1257と56の間にクローニングし、プライマー5’-TGCGGATCCAGAGCAGATTGTACTGAGAGT-3’(SEQ ID NO: 11)および5’- CTCTATCTCGAGTGAGGCGGAAAGAACCA-3’(SEQ ID NO: 12)を用いてPCRすることにより断片を増幅した。連結したDNAを、プライマー5’- TTTAAGCTTGAAGACCATTTTTGGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAACA-3’(SEQ ID NO: 13)および5’-TTTAAGCTTGAAGACATGGGAAAGAGTGGTCTCA-3’(SEQ ID NO: 14)を用いるPCR増幅の鋳型とした。産物をHindIIIで消化し、次いで自己連結してpsiH1BXベクタープラスミドを作製した。
【0140】
二本鎖オリゴヌクレオチド5’- TCCCGGTTCTGGAGAACAACTACTTCAAGAGAGTAGTTGTTCTCCAGAACC-3’(SEQ ID NO: 15)および5’- AAAAGGTTCTGGAGAACAACTACTCTCTTGAAGTAGTTGTTCTCCAGAACC-3’(SEQ ID NO: 16)をpsiH1BXベクターのBbsI部位にクローニングして、FGF18に対するsiRNA発現ベクター(psiH1BX-FGF18)を調製した。対照プラスミド、psiH1BX-EGFPは、二本鎖オリゴヌクレオチド5’- CACCGAAGCAGCACGACTTCTTCTTCAAGAGAGAAGAAGTCGTGCTGCTTC-3’(SEQ ID NO: 17)および5’- AAAAGAAGCAGCACGACTTCTTCTCTCTTGAAGAAGAAGTCGTGCTGCTTC-3’(SEQ ID NO: 18)をpsiH1BXベクターのBbsI部位にクローニングして調製した。
【0141】
siRNAによるFGF18発現の抑制
10-cmディッシュにプレーティングした(4 x 105細胞/ディッシュ)SW480、HCT116、DLD1、およびSNUC4細胞に、FuGene6試薬(Roche diagnostics)を用いてFGF18 siRNA発現プラスミドをトランスフェクションし、適切な濃度のGeneticinを添加した10%ウシ胎児血清を含む培地中で維持した。次いで、細胞を100%メタノールで固定し、ギムザ液で染色した。cell-counting kit(DOJINDO、日本、熊本)を用いて生存細胞を測定した。トランスフェクションから24時間後に、処理した細胞におけるFGF18の発現を半定量的RT-PCRにより調べた。
【0142】
MTTアッセイ法
供給元の手順に従ってFuGene6(Roche diagnostics)を使用し、6ウェルプレート上の細胞(1 x 105個)に発現ベクターまたは対照ベクターをトランスフェクションした。トランスフェクションから7日後に、MTTアッセイ法により細胞生存率を評価した。1/10量の濃度で各ディッシュにcell-counting kit-8(DOJINDO)を添加し、プレートを37℃でさらに4時間インキュベートした;次いで、マイクロプレートリーダー550(Bio-Rad Laboratories、カリフォルニア州、ハーキュリーズ)により490 nmおよび参照としての630 nmで吸光度を測定した。
【0143】
レポーターアッセイ法
ヒトゲノム配列(GenBankアクセッション番号AC093246)とFGF18のcDNA配列(GenBankアクセッション番号NM_003862)を比較することにより、FGF18の転写の開始部位(TIS)を決定した。FGF18プロモーターの活性を調べるため、それぞれFGF18の5'側に隣接する領域の一部に相当する4つの断片をPCRにより増幅し、各産物をpGL3-Basicベクター(Promega、ウィスコンシン州、マディソン)の適切な酵素部位にクローニングした。活性型β-カテニン(mutβ-カテニン)ならびに野生型およびドミナントネガティブ型のTcf4(wtTcf4およびdnTcf4)を発現するプラスミドを、以前に記載された通りに調製した(22)。FuGENE6を用いて、各レポータープラスミド1μgおよび各発現構築物1μgをpRL-TKプラスミド(Promega)0.2μgと共にSW480細胞にトランスフェクションし、トランスフェクション効率を標準化した。供給元の推奨に従ってデュアル−ルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(Promega)を用いて、レポーターアッセイ法を行った。
【0144】
電気泳動移動度シフトアッセイ法(EMSA)
SW480細胞由来の核抽出物を用いて、以前に記載された通りに(23)EMSAを行った。FGF18F (5'-CGCCTTTGATGTGGGC-3'(SEQ ID NO: 19))とFGF18R (5'-GCCCACATCAAAGGCG-3'(SEQ ID NO: 20))をアニーリングして二本鎖16ヌクレオチドDNAプローブを調製し、32P-ATPおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼにより標識した。
【0145】
統計解析
統計的有意性は、市販のソフトウェア(Statview、SAS Institute、ノースカロライナ州、カリー)を用いて、シェフェのF検定によるANOVAにより解析した。
【0146】
2. 結果
CRCにおけるFGF18の上方制御
以前に、遺伝子23,040個に相当するcDNAマイクロアレイの手段により、結腸腺腫9例および結腸腺癌11例の発現プロファイルを解析した(24)。癌細胞において発現レベルが共通して上方制御された遺伝子のうち、FGF18に相当するスポットが、試験した症例の大部分において高い腫瘍/正常強度比を示した。推定される全長cDNAは、207アミノ酸タンパク質(SEQ ID NO:23)をコードする624ヌクレオチドのオープンリーディングフレーム(SEQ ID NO:22)を含む1546ヌクレオチドからなった(GenBankアクセッション番号:AF075292)。その後の半定量的RT-PCRにより、試験したさらなる12例の結腸癌組織のうち10例においてこの遺伝子の発現上昇が実証された(図1A)。健常成人ヒト組織におけるFGF18の発現を調べるため、ノーザンブロット解析を行った。その結果、心臓において大量に発現された約1.8 kbの転写産物が同定されたが、調べたその他28の組織ではいずれにおいても同定されなかった(データは示さず)。
【0147】
腫瘍細胞におけるFGF18の集積
FGF18の機能を解析するため、細胞内の内因性FGF18タンパク質を認識する抗FGF18抗体を調製し、免疫組織化学的染色により4つの結腸直腸癌組織におけるこのタンパク質の発現を調べた。4例すべてにおいて、FGF18は癌細胞の細胞質において染色された(図1B);対応する粘膜由来の非癌性上皮細胞の細胞質における染色は顕著に低く、主に陰窩の下部に局在した。
【0148】
結腸癌細胞におけるFGF18プロモーターのアッセイ法
β-カテニン/Tcf4複合体のトランス活性化は結腸癌細胞の比較的一般的な特徴であるため、ドミナントネガティブ型Tcf4(dnTcf4)または対照遺伝子(LacZ)を発現するアデノウイルスをSW480細胞に感染させることにより、この複合体がFGF18の発現を制御するかどうかについて試験した。FGF18の発現は対照と比較してdnTcf4に応答して有意に減少し、これによりTcf4の媒介する転写活性がFGF18の発現と関連があることが示唆された(データは示さず)。したがって、FGF18に隣接する5'領域の2-kbゲノム断片内で共通のTcf4結合モチーフ、5'-CTTTGWW-3'または5'-WWCAAAG-3'を検索したところ、3つの潜在的候補部位;すなわち、-1631〜-1625(TBM1)、-1348〜-1342(TBM2)、および-190〜-184(TBM3)が同定された(図2A)。これらの結合部位のいずれがFGF18のプロモーター活性に関与するのかについて検討するため、5'隣接領域からの様々な長さの断片をルシフェラーゼ遺伝子の上流にクローニングし、SW480細胞を用いてレポーターアッセイ法を行った(図2B)。(-1644〜+26のヌクレオチドを含む)pGL3-P1、(-1354〜+26のヌクレオチドを含む)pGL3-P2、および(-195〜+26のヌクレオチドを含む)pGL3-P3は、(-181〜+26のヌクレオチドを含む)pGL3-P4と比較してルシフェラーゼ活性の約5倍の増加を示し、-195〜-182の領域が転写活性に関与することが示唆された。TMB-3の役割をさらに明らかにするため、TMB3部位に2塩基変異(CTTTGAT(SEQ ID NO:24)からCTTTGGC)を導入した後に(pGL3-P3mt)、ルシフェラーゼ活性についてアッセイした。予測通り、TMB3部位における変異(P3mt)によりルシフェラーゼ活性が75%より多く減少した。これらの結果から、TBM3が実際にFGF18のプロモーター配列を含むことが示された。
【0149】
推定上のTcf4結合部位とβ-カテニン/Tcf複合体との会合
β-カテニン/Tcf4複合体がFGF18のプロモーター領域内のTBM-3部位と会合するかどうかを調べるため、TBM-3配列に相当するオリゴヌクレオチドを用いて電気泳動移動度シフトアッセイ法(EMSA)を行った。抗β-カテニン抗体を添加することにより一本のバンドがシフトしたが、非関連(対照)抗体ではシフトしなかった。この結合は野生型非標識オリゴヌクレオチドを添加することによって抑止されたが、変異型の非標識オリゴヌクレオチドの添加では抑止されず、よって結合配列とβ-カテニン/Tcf4複合体との直接的な相互作用が示された(図3)。
【0150】
NIH3T3細胞におけるFGF18の過剰発現によって付与される増殖効果
FGF18の過剰発現が線維芽細胞および骨芽細胞の増殖を促進することが公知であるため、本発明者らはFGF18が自己分泌様式で発癌作用をもたらし得ると仮定した。この仮説と一致して、本発明者らの免疫ブロット実験において、pFlagCMV-FGF18をトランスフェクションしたマウス線維芽細胞の培地中にFlag標識化FGF18タンパク質が検出された(図4A)。予想される通り、NIH3T3細胞は、FGF18を含まない順化培地中の細胞よりもFGF18を含む馴化培地中で有意に速い速度で増殖した(図4B)。
【0151】
癌細胞の増殖に及ぼすFGF18 siRNAの効果
FGF18の発癌に及ぼす潜在的役割を評価するため、FGF18のsiRNAを発現するプラスミドを調製し、多量のFGF18を発現する結腸直腸癌細胞5株にこれをトランスフェクションした。構築したプラスミドのうち、psiH1BX-FGF18は対照プラスミド(psiH1BX-EGFP)と比較して有意にFGF18の発現を低減させ、psiH1BX-EGFPと比較して生存細胞数を顕著に減少させた(図4C、D、E)。
【0152】
本明細書で実証されたように、FGF18はβ-カテニン/Tcf4複合体の直接の標的として結腸直腸癌において上方制御される場合が多い。FGF18は分泌タンパク質であるため、結腸直腸腫瘍の初期検出の新規マーカーとなり得る。さらに、FGF18タンパク質は自己分泌様式でNIH3T3細胞の増殖を促進し、その下方制御により結腸癌細胞の増殖または生存が抑制されたことから、FGF18はまた新規抗癌剤の有望な分子標的となる可能性がある。
【0153】
FGF18は、最初はFGF8およびFGF17とのアミノ酸類似度を基に同定された(それぞれ60%および58%同一性)(18)。FGF18は他のFGFと同様に、おそらくは骨芽細胞、軟骨細胞、および破骨細胞の調節を介して四肢発生において(12、25)、および中脳の器官形成において(26)重要な役割を有する。マウスでは、FGF18の発現は胚期E15.5において、発生過程の肺、周囲の発生過程の骨、および発生過程の脳の大脳皮質において観察された(18)。組み換えFGF18タンパク質を腹腔内注射すると、マウスの肝臓および腸の重量の顕著な増加が誘導された(18)。さらに、FGF18によりヘパラン硫酸依存様式でNIH3T3細胞の増殖が刺激された(18)。これらの知見は、FGF18の発現上昇により自己分泌様式で上皮細胞および間葉細胞の増殖が刺激され、および/またはそれらの死滅が妨げられるという本明細書の結論と良好に一致する。
【0154】
FGFはFGF受容体(FGFR)との結合により機能する;5つのFGFR遺伝子およびそれらのスプライシング変種がこれまでに同定されている。BIAcoreアッセイ法により、FGFR-3cおよびFGFR-2cがFGF18に対する親和性を有すが、FGFR1cはその親和性を有さないことが実証された(20)。これらのデータから、FGF18はいくつかの受容体と相互作用することにより増殖促進効果を発揮することが示唆される。しかしながら、骨形成の遅延および骨形成マーカーの発現低下を示すFGF18欠損マウスの表現型は、FGFR-3を欠くマウスの表現型と完全には一致しない(27)。したがって、FGFR-3cおよび/またはFGF-2c等の他のFGFRを拮抗することは、FGF18媒介性細胞増殖を抑制するための効果的戦略である可能性がある。
【0155】
本明細書での実験により、FGF18が、Tcf/LEFの直接の標的であることが判明したFGFファミリーの第2のメンバーであることも明らかにされた。これまでに、FGF4がLEF1の直接の標的であることが報告された;組み換えFGF4により、マウスの歯の発生に関してLef-/-表現型が完全にレスキューされた(13)。Wntシグナルもまた、FGF8およびFGF10を介してFGF依存的な四肢の形成開始を調節する(12、25)。FGF18はFGF8の発現が起こる前にヘンゼン結節の右側で発現し、また同様にFGF18の発現は発生過程の脳の峡部においてFGF8に先行するため、Wntシグナルは四肢および脳の器官形成の最初のメディエーターとしてFGF18を動員する可能性がある。形質転換能を有するFGF4と同様に(17)、FGF18はおそらく不適切に過剰発現された場合に発癌性となり得る。
【0156】
ヒト結腸癌組織およびそれに相当する非癌性粘膜におけるFGF18の免疫組織化学的染色は、β-カテニンならびにENC1、CD44、およびEPHB2等の他のβカテニン/Tcf下流タンパク質のパターンと類似したパターンを示した(28)。この証拠から、結腸腫瘍において活性化されたβ-カテニン/Tcf4複合体が、通常は結腸陰窩の下方1/3に位置する前駆細胞に制限されている増殖シグナルのスイッチを作動させたという考えが支持される。したがって、非腫瘍性陰窩で発現するFGF18は、Tcf4ノックアウトマウスには存在しない前駆細胞の維持において何らかの役割を果たす可能性がある。しかしながら、発表されている実験において、FGF18ノックアウトマウスは腸構造に異常を全く示さかったことから、他の因子が粘膜の発生に重複して影響している可能性がある(27)。さらに、FGF18は他の組織、具体的には骨および脳において別の機能を発揮し得ると考えられる。β-カテニン/Tcf4転写複合体の下流の遺伝子の機能に関するさらなる研究は、どの因子が結腸上皮の前駆細胞の維持に必要であるかを明らかにするために役立つであろう。
【0157】
結論として、本明細書のデータにより、結腸直腸腫瘍形成におけるFGF18の発現上昇の重要性が強調される。FGF18は、自己分泌様式のみとは言えないが少なくともこの様式でその受容体と結合することにより増殖因子として機能するため、本明細書のデータにより、FGF18は腫瘍マーカーとして、および結腸直腸腫瘍を有する患者を治療するための、特異的中和抗体または受容体に対するアンタゴニスト等の試薬を開発するための分子標的としての優れた候補であろうことが明らかに示される。
【0158】
産業上の利用可能性
以前に行ったゲノム全体にわたるcDNAマイクロアレイの遺伝子発現解析により、特異的に上方制御される遺伝子FGF18が同定された。本発明により、FGF18が癌の予防および治療の標的となることが明らかにされる。本発明は、FGF18の発現に基づき、CRCを同定または検出するための分子診断マーカーを提供する。
【0159】
本明細書に記載の方法はまた、CRCの予防、診断、および治療のためのさらなる分子標的の同定においても有用である。本明細書に報告したデータはCRCの包括的理解の一助となり、新規診断戦略の開発を容易にし、治療薬剤および予防薬剤の分子標的を同定する手がかりを提供する。そのような情報は結腸直腸腫瘍形成のより深い理解に寄与し、CRCの診断、治療、および最終的な予防のための新規戦略を開発するための指標を提供する。
【0160】
本明細書において引用した特許、特許出願、および刊行物は全て、その全文が参照により組み入れられる。さらに、本発明は詳細にかつその特定の態様に関連して記述してきたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく様々な改変および変更が行われ得ることは当業者に明らかであると考えられる。
【0161】
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【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】CRCにおけるFGF18の発現上昇を示す。図1Aは、12の結腸癌性組織(T)およびそれらに対応する正常粘膜(N)におけるFGF18の半定量的RT-PCR解析の結果を示す。GAPDHの発現を内部対照とした。図1Bは、癌性結腸組織(a、c)および対応する非癌性粘膜(b、d)におけるFGF18の免疫組織化学的染色の結果を示す。(バー、0.1 mm)。
【図2】FGF18のレポータープラスミドの略図(A)およびレポーターアッセイ法の結果(B)を示す。図2Aは、FGF18の種々のレポータープラスミドの略図を示す。推定上のTcf4結合モチーフは、転写開始部位(TIS)の-1631 bp〜-1625 bp(TBM1)、-1348 bp〜-1342 bp(TBM2)、および-190 bp〜-184 bp(TBM3)に位置する。構築物P1、P2、およびP3は野生型結合エレメントを含む;P2mtまたはP3mtは、それぞれTBM2またはTBM3内に2-bpの置換を有する。図2Bは、SW480細胞におけるデュアル-ルシフェラーゼレポーターアッセイ法の結果を示す(Tバー、SD;星印、シェフェのF検定、p<0.0001)。
【図3】TBM3オリゴヌクレオチドをプローブとして用いたβ-カテニン/Tcf4複合体のEMSAの結果を示す。抗β-カテニン抗体を添加した後にスーパーシフトしたバンドが認められたが(レーン2および7)、抗P53抗体ではスーパーシフトは誘発されなかった(レーン3)。DNA-タンパク質複合体に相当するバンドは、非標識野生型プローブの添加により減少したが(レーン4、5)、非標識変異型プローブでは減少しなかった(レーン6、7)。
【図4】FGF18の増殖促進効果(AおよびB)またはFGF18-siRNAの増殖抑制効果(C、D、およびE)を示す。図4Aは、培養液中に分泌されたFlag標識化FGF18タンパク質の免疫ブロッティングを示す。培地または細胞溶解液中のタンパク質を抗Flag抗体を用いて免疫ブロットした。NIH3T3細胞にpFlagCMVまたはpFlagCMV-FGF18のいずれかをトランスフェクションした。黒三角および白三角はそれぞれ、標識化FGF18タンパク質の細胞型または分泌型を示す。図4Bは、0.5% FBSを含むDMEM(左)、pFlagCMV-FGF18をトランスフェクションした後の馴化培地(中央)、およびpFlagCMVをトランスフェクションした後の馴化培地(右)中でインキュベートした後のNIH3T3細胞の顕微鏡像を示す。図4Cは、FGF18の発現に及ぼすFGF18 siRNAの効果を示す。siRNA発現プラスミドまたは対照プラスミドをトランスフェクションした細胞由来のRNAを用いて、半定量的RT-PCRを行った。EGFP-siRNAまたはFGF18-siRNAに応答したHCT116生存細胞におけるギムザ染色(図4D)またはMTTアッセイ法(図4E)。MTTアッセイ法は三つ組で行った(Tバー、SD;星印、シェフェのF検定、p=0.02)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるCRCまたはCRCを発症する素因を診断する方法であって、患者由来生体試料におけるFGF18の発現レベルを決定する段階を含み、該遺伝子の正常対照レベルと比較した場合の該レベルの増加により、対象がCRCを発症しているかまたは発症する危険性があることが示される、方法。
【請求項2】
決定された発現レベルが正常対照レベルよりも少なくとも10%高い、請求項1記載の方法。
【請求項3】
以下からなる群より選択されるいずれか1つの方法によって発現レベルが決定される、請求項1記載の方法:
(a) FGF18のmRNAの検出;
(b) FGF18によってコードされるタンパク質の検出;および
(c) FGF18によってコードされるタンパク質の生物活性の検出。
【請求項4】
発現レベルが患者由来生体試料の遺伝子転写産物に対するFGF18遺伝子プローブのハイブリダイゼーションを検出することによって決定される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ハイブリダイゼーション段階がDNAアレイで行われる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
生体試料が上皮細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
生体試料がCRC細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
生体試料がCRCに由来する上皮細胞を含む、請求項4記載の方法。
【請求項9】
以下の段階を含む、CRCを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a) 被験化合物をFGF18の核酸によってコードされるポリペプチドと接触させる段階;
b) ポリペプチドと被験化合物との結合活性を決定する段階;および
c) ポリペプチドに結合する化合物を選択する段階。
【請求項10】
以下の段階を含む、CRCを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a) 候補化合物をFGF18を発現する細胞と接触させる段階;および
b) FGF18の発現レベルを低減させる化合物を選択する段階。
【請求項11】
細胞が結腸直腸癌細胞を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
以下の段階を含む、CRCを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a) 被験化合物をFGF18の核酸によってコードされるポリペプチドと接触させる段階;
b) 段階(a)のポリペプチドの生物活性を検出する段階;および
c) 被験化合物の非存在下で検出される生物活性と比較して、FGF18の核酸によってコードされるポリペプチドの生物活性を抑制する化合物を選択する段階。
【請求項13】
ポリペプチドの生物活性が細胞増殖活性である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
以下の段階を含む、CRCを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a) 候補化合物を、FGF18の転写制御領域およびその転写制御領域の調節下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターを導入した細胞と接触させる段階;
b) 該レポーター遺伝子の活性または発現を測定する段階;および
c) 対照と比較して、該レポーター遺伝子の活性または発現レベルを低減させる化合物を選択する段階。
【請求項15】
転写制御領域がFGF18の転写制御領域内のβ-カテニン/Tcf4結合モチーフを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
結合モチーフがSEQ ID NO:24に記載のヌクレオチド配列からなる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
以下の段階を含む、CRCを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a) FGF18の転写制御領域内のβ-カテニン/Tcf4結合モチーフを含むDNAを、候補化合物の存在下または非存在下において、β-カテニン/Tcf4複合体と接触させる段階;
b) DNAとβ-カテニン/Tcf4複合体の結合を検出する段階;および
c) 対照と比較して、β-カテニン/Tcf4複合体とDNAとの結合を阻害する化合物を選択する段階。
【請求項18】
結合モチーフがSEQ ID NO:24からなる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
FGF18の核酸配列またはポリペプチドに結合する検出試薬を含むキット。
【請求項20】
FGF18のコード配列に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス組成物を対象に投与する段階を含む、対象におけるCRCを治療または予防する方法。
【請求項21】
対象におけるCRCを治療または予防する方法であって、siRNA組成物を対象に投与する段階を含み、該組成物によりFGF18の核酸配列の発現を減少させる方法。
【請求項22】
siRNA組成物がSEQ ID NO:21のヌクレオチド配列を含むセンス鎖を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
FGF18の核酸によってコードされるタンパク質に結合する抗体またはその断片の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるCRCを治療または予防する方法。
【請求項24】
FGF18の核酸によってコードされるポリペプチドもしくは該ポリペプチドの免疫学的活性断片、またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを対象に投与する段階を含む、対象におけるCRCを治療または予防する方法。
【請求項25】
請求項9〜18のいずれか一項記載の方法によって得られる化合物を投与する段階を含む、対象におけるCRCを治療または予防する方法。
【請求項26】
FGF18のポリヌクレオチドに対するアンチセンスポリヌクレオチドまたは低分子干渉RNAの薬学的有効量を含む、CRCを治療または予防するための組成物。
【請求項27】
siRNAがSEQ ID NO:21のヌクレオチド配列を含むセンス鎖を含む、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
FGF18の核酸によってコードされるタンパク質に結合する抗体またはその断片の薬学的有効量を含む、CRCを治療または予防するための組成物。
【請求項29】
請求項9〜18のいずれか一項記載の方法によって選択される有効成分としての化合物の薬学的有効量、および薬学的に許容される担体を含む、CRCを治療または予防するための組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−528717(P2007−528717A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519231(P2006−519231)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010442
【国際公開番号】WO2005/007889
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】