肌の美しさの目視評価値の推定方法
【課題】肌の美しさの目視評価値を推定する方法及び肌の美しさの目視評価値を算出する装置及びプログラムを提供し、肌の美しさの目視評価値の推定を誰にでも簡便に客観的かつ定量的に行えるようにする。
【解決手段】肌の美しさの目視評価値と肌の画像の表色系信号又は肌の表面の起伏値の分布のフラクタル次元との相関関係を利用して、肌の美しさの目視評価値を推定する。
【解決手段】肌の美しさの目視評価値と肌の画像の表色系信号又は肌の表面の起伏値の分布のフラクタル次元との相関関係を利用して、肌の美しさの目視評価値を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の美しさの目視評価値を推定する技術に関し、さらに詳しくは、肌の性状値のフラクタル次元を指標として、肌の美しさの目視評価値を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第三者によって、美しい肌であると認識されることは、女性のみならず多くの人の大きな願いの一つである。このため、美しい肌に見せるための化粧料や美容法の研究開発が盛んに行われている。しかしながら、肌の状態は個人によって大きく異なり、さらに加齢や生活環境によっても変化するものであるため、化粧料の種類や化粧の方法、肌の手入れ法などを適切に選択するためには、対象となる肌が第三者にどのように見えるのかを客観的に判断することが必要である。例えば、デパートの化粧品売り場や、薬局、化粧品店の店頭においては、被験者の肌の美しさの程度を評価する簡便な方法が求められている。
【0003】
視覚的な肌の美しさを構成する要素についてはさまざまな研究がなされ、その要素の一部について個別に評価を行う方法が開発されている。例えば、肌のコンダクタンス、皮膚水分散逸量、皮脂量、皮膚柔軟性、角層のターンオーバーの速度などの物理量を計測する技術を用いて肌の性状を評価する方法などがある。また、近年では、皮膚表面やそのレプリカを適当な光電変換手段で撮像して得られた画像情報をプログラムにより処理し、皮膚表面形状や光学的性質を定量的に評価する方法なども報告されている。
【0004】
しかしながら、第三者が肌を見たときに、視認される肌の状態、すなわち視覚的な肌の美しさというものは、これらの数々の要素が複合的に関連しあって形成されるものであるため、前記のような個々の要素の判断結果から判断することは容易ではない。実際に、視覚的な肌の美しさを判定するためには、個々の測定データを元に肌の評価の専門家が、専門知識に基づいて測定結果を分析したり、一対比較などにより、視覚的に官能評価を行うことが必要であるが、この場合には、肌の評価の専門家や一定数以上の評価者が必要であり、さらに収集した評価データの分析も必要であった。このように、従来の方法では、視覚的な肌の美しさを的確かつ簡便に評価することは困難であった。
【0005】
このような技術背景において、皮膚の写真やレプリカから得られる肌の特定の性状値を測定、加工することにより、この数値と皮膚の美しさとの相関関係を見出し、肌の美しさを評価しようとする試みがなされている。例えば、皮膚のレプリカに2方向から可視光を当て、皮膚の反射光スペクトルの各波長における反射率を指標として皮膚の美しさを鑑別する方法(特許文献1)、フェースライン近傍の皮下脂肪の厚さと肌の外力による変形に対する復元力の大きさを指標としてフェースラインの美しさを鑑別する方法(特許文献2)、皮膚表面における微細明暗分布が強調された二次元画像の高輝度部分の粒子解析値と皮膚の見た目の美しさの感覚的評価との相関関係を利用して皮膚表面の光学的美しさを数値化する方法(特許文献3)、メークアップされた皮膚に2方向から可視光を照射して得た反射光の分光スペクトルの差を利用して皮膚を鑑別する方法(特許文献4)、偏光照明下で取得した皮膚のデジタル画像に含まれる鏡面反射光成分の高周波成分の分散値と肌の美しさの官能評価との相関関係を利用して皮膚の美しさを評価する方法(特許文献5)等が開示されている。このような技術においては、測定値や加工値と肌の美しさとの関連も一部で認められるものの、その相関性は極めて良いというものではなかった。このように、肌の美しさと高い相関関係を有する肌の性状を示す数値がいかなるものなのかということについての研究及び解明は未だ十分ではなく、肌の美しさを評価する指標としてさらに高い利用価値がある数値が模索されていた。
【0006】
一方、フラクタルという概念は、数学分野の研究において創造された自己相似的な図形に用いられる幾何学的概念である。また、自然界には、フラクタルな形状を有しているものが数多く存在していることが知られている。フラクタルな性質の形状を表現する1つの手段として、フラクタル次元を求めることが知られている。近年では、フラクタル次元を算出することにより、生体における特定の状態を判断する方法が報告されている。例えば、被験者の特性不安レベルの生体信号をフラクタル解析し、統計的データとの相関から不安レベルを評価する方法や(特許文献6)、組織からの反射超音波パルス信号をフラクタル解析して、組織の状態を調査する方法(特許文献7)、フラクタル解析を利用した悪性細胞の自動検出システム(特許文献8)が開示されている。
【0007】
また、メラニン等の色素分布と肌の画像を構成する画素の輝度のフラクタル次元の相関関係から、肌のメラニン色素分布を評価する方法が開示されている(特許文献9)。また、肌の性状値のフラクタル次元を指標とすれば、肌年齢の推定等が行える可能性があることが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、フラクタル次元の具体的な利用方法については明らかにされておらず、フラクタル次元と肌年齢の関係やフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値等との関係は見出されていない。
【0008】
【特許文献1】特開2003−161656号公報
【特許文献2】特開平11−164822号公報
【特許文献3】特開平7−231883号公報
【特許文献4】特開平10−2798号公報
【特許文献5】特開2005−429号公報
【特許文献6】特開2001−299702号公報
【特許文献7】特表平11−507846号公報
【特許文献8】特表2001−512824号公報
【特許文献9】特開2000−135207号公報
【非特許文献1】「肌画像の特徴量を利用した肌年齢推定方式と肌老化予防への対応応用」(春日 正男、首都圏北部四大学発 新技術説明会 平成17年12月2日 説明資料)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、肌の美しさの目視評価値を推定する方法及び肌の美しさの目視評価値を算出する装置及びプログラムを提供し、肌の美しさの目視評価値の推定を誰にでも簡便に客観的かつ定量的に行えるようにすることを課題とする。また、本発明はさらに第三者による肌の美しさの目視評価値と関係する肌の性状値及びその加工手段を見出し、肌の美しさの目視評価値を精度よく得る方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、肌の美しさについて研究を重ねてきた結果、肌の美しさの目視評価値と種々の肌の性状値のフラクタル次元との間に因果関係を見出した。そして、この関係を利用して、被験者のフラクタル次元から肌の美しさの目視評価値を推定すれば、実際の第三者による肌の美しさの目視評価値と極めて近い結果を得ることができることを知見し発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下の通りである。
【0011】
(1)肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する工程と、
該表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する工程と、
予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す
回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を得る工程と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定方法。
(2)前記表色系の画像信号が、RGB値、YUV値又はマンセル(HVC)値であることを特徴とする、(1)に記載の方法。
(3)前記回帰式が、RGB値、YUV値又はマンセル(HVC)値を構成する各成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値を重回帰分析して得られた回帰式であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)肌の起伏値を取得する工程と、
該起伏値の分布のフラクタル次元を算出する工程と、
予め用意した前記起伏値の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を得る工程と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定方法。
(5)前記フラクタル次元が、ボックスカウンティング法により算出されることを特徴とする、(1)〜(4)の何れか一に記載の方法。
(6)前記ボックスカウンティング法におけるボックスサイズの決定が、ボックス内の前記表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分又は前記起伏値の標準偏差に基づいて行われることを特徴とする、(5)に記載の方法。
(7)肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する手段と、
該表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する手段と、
予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段と、
算出した目視評価値を表示する手段と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定装置。
(8)肌の起伏値を取得する手段と、
該起伏値の分布のフラクタル次元を算出する手段と、
予め用意した前記起伏値の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段と、
算出した目視評価値を表示する手段と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定装置。
(9)コンピュータを、
肌の表面の画像の表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する手段、
予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段、
として機能させるための肌の美しさの目視評価値の推定プログラム。
(10)コンピュータを、
肌の起伏値の分布のフラクタル次元を算出する手段、
予め用意した前記起伏値のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段、
として機能させるための肌の美しさの目視評価値の推定プログラム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法及び装置を用いることにより、種々の肌の性状値を用いて、手軽に、客観的かつ定量的に肌の評価を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において肌の美しさの目視評価値とは、人が肌を視認した場合に、どの程度美しく見えるかを表す統計的な評価値であり、具体的には、例えば、ある肌と別の肌とを見比べた場合に、どちらが美しく見えるかの判定を繰り返して得られる統計的な評価値である。ここで、肌の美しさとは、視覚的に認識できる肌の性質を総合したときの肌の状態の好ましさの程度をいうものであって、視覚的に認識できる範囲でのキメの細かさ、キメの方向の均一性、なめらかさ、凹凸感、さらさら感、しっとり感、柔らかさ、しわ、はり、つややかさなどの性質を総合したときの肌の状態の好ましさの程度をいい、目から入力された情報を人間の精神活動により加工、処理して得られるような主観的な美しさは含まない。
【0014】
本発明の肌の美しさの目視評価値を得るために必要な性状値は、肌の表面の画像の表色系の画像信号及び肌の表面の起伏値から選ばれる少なくとも一つである。
【0015】
表色系の画像信号とは、例えば、RGB値、YUV値、マンセル(HVC)値、L*a*b*値、L*C*h*値、Lab値、Yxy値が挙げられる。この中でも、特にRGB値、YUV値、マンセル(HVC)値を用いることが好ましい。RGB値とは、レッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の光の3原色の組合せにより、色を表現するものであり、例えば各々256階調で表す場合には、約1677万色の色調表現が可能である。YUV値とは、輝度(Y)、色差(U=青色−Y)、色差(V=赤色−Y)の組合せで色を表現するものである。マンセル(HVC)値は色相、明度、彩度の3成分で色を表現するJIS表色系である。このような表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分を性状値としてもよいし、複数の成分を性状値としてもよい。
【0016】
起伏値とは、ある対象の表面を覆う点が、基準面からどれぐらいの高さであるかを示す数値である。
【0017】
肌の表面の表色系の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得するためには、まず、被験者の肌の表面を撮像する。画像を取得する肌の部位は肌の美しさの目視評価値を推定したい部分であれば特に制限されず、頬などの顔面皮膚、上腕内側部などが挙げられる。例えば、推定した目視評価値をファンデーションやチークなどの化粧料の選択において利用する場合などには、頬を撮像することが好ましい。また、通常は、被験者の肌を代表する領域を選択し、傷やシミが多い部位は避けることが好ましい。
また、画像を取得する範囲も解析に必要な情報を得られる範囲であれば特に制限されるものではないが、肌表面において1cm*1cm〜3cm*3cmの範囲が好ましい。
【0018】
肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する手段は、特に制限されない。例えば、カラーデジタル式マイクロスコープ、カラーデジタルカメラ、カラービデオカメラ、スキャナー等の機器を用いて行うことができる。このような機器は市販のものであってもよいし、製造したものであってもよい。市販品としては、例えば、株式会社モリテックス製のi−scope及びCCDマイクロスコープ、有限会社フォルテシモのUSBビデオマイクロスコープ、又は株式会社キーエンスのデジタルマイクロスコープ等が好ましく例示できる。
撮像倍率は撮像に用いる機器等によって適した倍率とすればよい。例えば、マクロレンズ装着デジタルカメラを用いる場合は、等倍で、対象から約20cmの距離で近接撮影画像を取得することが好ましく、ビデオマイクロスコープ(例えばモリテックス製i‐scope)を用いる場合には、肌を30〜50倍程度に拡大し、撮像することが好ましい。このようにして、画像を取得する場合の情報量は、2cm*2cmの範囲に換算した場合に、64*64画素(ドット、ピクセル)以上であればよいが、好ましくは128画素以
上、さらに好ましくは300*300画素以上がよい。
【0019】
このようにして取得した表色系の画像信号は、コンピュータに転送した後にメディアンフィルターを用いてノイズを除去したり、平滑化フィルターを用いて、平滑化処理をすることが好ましいが、特に平滑化処理をすることが好ましい。平滑化処理をすることにより、画素ごとの性状値の大きなばらつきを補正することができ、より高い精度でフラクタル次元を算出することができる。
【0020】
画像の取り込みや平滑化処理は市販の画像解析ソフトウェアを用いて行うことができる。例えば、三谷商事株式会社のWinROOF(登録商標)、アドビシステムズ社のAdobePhotoshop(登録商標)、及びナノシステム株式会社のNanoHunter NS2K−Pro(登録商標)等が例示できる。また、インターネット上に公開されている平滑化処理用のソフトウェアを用いることもできる。マスクサイズは、例えば3*3、5*5などを使用することが好ましい。
【0021】
また、特定の画像信号は、常法に従って他の任意の画像信号に変換することができる。例えば、YUV値、L*a*b*値、L*C*h*値、Lab値、Yxy値は、RGB値から変換式を用いて変換することができる。また、マンセル(HVC)値への変換は変換表を用いることができる。例えば、RGB値からYUV値へ変換する場合には、市販のソフトウェアなどを用いて、RGB値のγ補正を行った後、例えば下記式(A)を用いてYUV値に変換することができる。また、RGB値からマンセル値へ変換する場合には、市販又はインターネット上に公開されているソフトウェアなどを用いて、RGB値をXYZ値に変換した後、マンセル表色系のHCVに変換することができる。
【0022】
【数1】
【0023】
このようにして得た表色系の画像信号を構成する成分のうち少なくとも1つの成分の数値について、フラクタル解析を行い、その数値の画像上の分布のフラクタル次元を算出する。フラクタル次元の算出方法については後述する。
【0024】
また、肌の表面の起伏値を取得するための方法として、被験者の肌のレプリカを取得し、レプリカの表面形状を測定して得た起伏値を用いる方法が挙げられる。レプリカを取得する肌の部位は、肌の美しさの目視評価値を推定したい部分であれば特に制限されず、頬などの顔面皮膚、上腕内側部などが挙げられる。評価値を化粧料の選択などに利用する場合には、頬のレプリカを取得することが好ましい。たとえば、頬部の2cm*2cmの測定領域を設定し、これを含む部分のレプリカを取得すればよい。レプリカ剤は、特に制限されないが、例えば、有限会社アサヒバイオメッドのシリコンASB−01−WW等が例示できる。レプリカを採取する方法は、肌の形状などを診断するのに用いられる常法により行うことができる。例えば、洗顔後20℃、50%湿度下で20分程度おいた肌にレプリカ剤を適用し、これを採取すればよい。
【0025】
次にこのようにして作製したレプリカの起伏値を測定する。起伏値の測定方法は特に制限されず、通常の方法を用いることができる。例えば、「シワ評価法ガイダンス」、日本
香粧品科学会誌 別冊 Vol. 28, No.2 (2004)を参照することができる。
具体的には、例えば、市販のレーザータイプの3次元表面粗さ計を利用して、図5に示すような顔の部分に対して水平方向(x)及び垂直方向(y)にレーザースキャンを行って測定することができる。このような3次元粗さ計として、例えば、株式会社サイエンスシステムズ社の高精度3次元画像処理装置LIP(例えばLIP−50)、株式会社東京精密のSURFCOM、レーザーテック株式会社のVLH、PRIMOS(GFM社製)、derma-TOP-blue(Breuckmann社製)等が挙げられる。
これらの機器を用いて起伏値を測定する際のスキャンの間隔は、フラクタル次元を算出するのに十分なデータが得られる範囲であれば特に制限されないが、10μm以下の間隔で行うことが好ましい。
例えば、LIP−50を用いてスキャンする場合には、X*Yが1cm*1cmのレプリカ領域に対して、X又はY方向について10μm間隔で1000本の走査を行うことができる。
【0026】
このようにして得た起伏値を得る際に、x方向とy方向のサンプリング周期が異なる場合には、Sinc関数を用いてサンプリング周期を補正することが好ましい(図8参照)。
【0027】
また、光投射装置などを用いて斜光照明をレプリカに照射し、レプリカ凸部の影部分を抽出し、その面積・幅等から肌の凹部の深さ、面積率等を計測する方法によって、起伏値を得ることもできる。このような斜光照明の照射による起伏値の取得は、簡便である点で好ましい。この方法による起伏値の取得は、例えば反射用3Dレプリカ解析システム(アサヒバイオメッド)等を用いて行うことができる。
【0028】
また、半透明レプリカに光を照射し、透過した光量からレプリカの厚さを求め、レプリカの起伏値を得ることもできる(半透明レプリカ光透過法)。この方法による起伏値の取得は、例えば、3D皮膚解析システムASA−03(アサヒバイオメッド)等を用いて行うことができる。
【0029】
また、肌から直接起伏値を得てもよい。このような方法として例えば、格子状の光を肌に当てその光の屈折率を起伏値に換算する方法が挙げられ、市販されている機器などを用いることができる。PRIMOS(GFM社製)、derma-TOP-blue(Breuckmann社製)などの機器を用いれば、レプリカからだけでなく、肌から直接起伏値を得ることもできる。
【0030】
このようにして取得した肌の表面の起伏値について、フラクタル解析を行い、肌の起伏値の測定領域上の分布、すなわち、その肌の表面の形状のフラクタル次元を算出する。
【0031】
取得した表色系の画像信号や起伏値からフラクタル次元を算出する方法としてはボックスカウンティング法(box‐counting)、相関次元法、fractional
Brownian motion model法などが挙げられる。この中でも、特にボックスカウンティング法を用いることが好ましい。
【0032】
ボックスカウンティング法とは、対象を完全に覆う正方形(立方体)を任意の大きさの正方形(立方体)で分割し、その正方形(立方体)の大きさとその対象の一部を覆う分割正方形(立方体)の数との関係から、フラクタル次元を求める方法であり、フラクタル次元の算出に一般的に用いられている。
ある形状が具体的には、対象を完全に覆う正方形(立方体)を一辺の長さhで分割した場合の対象の一部を覆う正方形(立方体)の数をN(h)とした場合に、rとN(h)の間に、
N(h)=c・h-D(cは定係数) ・・・(1)
という近似式がよい相関で成り立つ場合に、その対象はフラクタルな形状であるといえ、このとき、式(1)におけるDがフラクタル次元となる。
従って、ボックスカウンティング法により、フラクタル次元Dを求めるためには、c・hとN(h)を対数プロットし、得られた直線の傾きを求めればよい。
【0033】
このようなボックスカウンティング法は、非常に簡便であり、計算機での高速処理が可能であるが、対象のフラクタル次元が半整数値から遠いほど、その解析精度が低下する。そこで、一般的なボックスカウンティング法におけるボックスサイズをボックス内の性状値の標準偏差に基づいて決定する方法を用いることが好ましい。すなわち、単に対象の一部がボックス内に入るか否かを判定するのではなく、ボックス内のデータの標準偏差に基づいて有効的なボックスサイズを決定し、対象の一部がボックス内に入るか否かを判定する工程を含む方法を用いることが好ましい。
【0034】
このようなフラクタル次元の算出は、具体的に以下のような方法で行うことができる。
(1)まず図1に示すように、サイズX×Yに存在する2次元離散データf(x,y)をサイズh×h(m個)の領域Si(x,y)に分割する。画像信号を用いる場合には、X×Yに存在する離散データは画素であり、起伏値を用いる場合には基準面からの高さのデータである。hは、任意に決定することができる。
【0035】
(2)領域S1〜Smのそれぞれについて、性状値の標準偏差σ1〜σmを以下の式(2)により求める(図2参照)。
【0036】
【数2】
【0037】
(3)サイズhでのN(h)を以下の式(3)により計算する。
【0038】
【数3】
【0039】
このようにしてN(h)を計算することにより、h×hの領域Siにおける標準
偏差を有効的なボックスサイズとしてボックスの個数をカウントすることができるため、データ計測のノイズ等の突発的なノイズの影響を抑制することが可能となる。また、フラクタル次元の推定に不可欠である、1〜2桁近くの広いスケーリング範囲が得られる。
【0040】
(4)サイズhを大きくしてf(x,y)を再分割し、(1)〜(3)の手順を用いて同様にN(h)を計算する。
(5)h=X、又はh=Yとなるまで(4)を繰り返し、N(h)を計算する。
(6)logN(h)とloghの関係を表すグラフの傾きからフラクタル次元Dを求める(図3参照)。
【0041】
相関次元法とは、式(4)により定義される相関積分C(r)が、式(B)とスケーリングされるとき、logC(r)対log(r)のグラフの傾きを相関次元(フラクタル次元)Dとする方法である。
【0042】
【数4】
【0043】
【数5】
【0044】
このようにして求めた被験者の肌の性状値のフラクタル次元を用いて、肌の美しさの目視評価値を推定するが、このために予め以下のような方法で、肌の性状値のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式を用意しておく。
【0045】
回帰式は、例えば以下の方法で作成することができるが、該方法に限定されない。
1)肌の状態や年齢などが十分に分布した肌(以下、これらをまとめてサンプルともいう。)から表色系の画像信号及び起伏値から選ばれる少なくとも1つの性状値を取得し、取得した性状値について、サンプル上の分布のフラクタル次元を算出する。性状値の取得やフラクタル次元の算出は、上述した方法と同様に行うことができる。このとき用いるサンプルの数は、30以上、好ましくは50以上である。
【0046】
2)次に、第三者を代表するのに適当な評価者を用意し、前記サンプルを提示し、視覚的な肌の美しさを評価してもらう。これらの評価は、得点付けのような絶対的な評価であってもよいが、客観性を担保するために別のサンプルと比較して順位付けを行うなどの相対的な評価であることが好ましい。順位付けにおいては、差がない場合は、同順位とすることもできる。この際、さらに客観性を担保するために評価は視認可能な肌の要素のみに対して行うものであることを説明する。ここで、第三者を代表するのに適当な評価者とは、少なくとも視覚的な肌の美しさの意味を理解できるものであればよく、年齢や性別は問わない。また、評価者の数は、通常4名以上、好ましくは10名以上である。
【0047】
3)2)の作業は、繰り返すことが好ましい。作業の回数は、評価者の数などにより適宜調節すればよい。客観的な評価結果を得るために、通常3回以上、好ましくは4回以上、さらに好ましくは5回以上評価を繰り返すのがよい。
【0048】
4)次に、サンプルごとに肌の美しさの目視評価値を算出する。ここで、目視評価値は、得られた得点そのものを用いてもよいし、順位付けによる相対的な評価を行った場合は、順位そのものを用いても、肌が美しい昇順に高い数値を与えてもよい。またこれらの評価値は、サンプルごとの合計であってもよいし、平均値であってもよい。例えば、n個のサンプルについて順位付けを行った場合に、i番目のスコアをn−i+1として、各サンプルの合計スコアの平均値を求め、評価値とする
ことができる。また、サンプルの平均値と標準偏差から各サンプルの偏差値を求め、評価値としたり、これらの値を任意の段階に分割して評価値とすることもできる。
【0049】
5)1)で求めた少なくとも1つの性状値と4)で求めた評価値の平均を回帰分析し、
回帰式(予測式)を求める。この際、性状値としてRGB値、YUV値、マンセル(HVC)値などの表色系の画像信号を用いる場合には、表色系の画像信号を構成する各成分と前記肌の美しさの目視評価値とを重回帰分析して、重回帰式を得ることが、より高い相関関係が得ることができるため好ましい。このような回帰分析は、常法により行うことができ、例えば、市販されている統計処理用ソフトウェアを用いて行うことができる。
【0050】
前記で算出した被験者の性状値のサンプル上の分布のフラクタル次元を、同一の性状値と肌の美しさの目視評価値との相関関係を表す回帰式に代入し、被験者の肌の美しさの目視評価値を推定することができる。このようにして得られた肌の美しさの目視評価値の推定値は、そのまま数値として表示することもできるが、偏差値や予め規定したランクなどの利用しやすいデータに加工することにより、カウンセリングやアドバイスの場面において使用しやすいものとなるため好ましい。例えば、肌の美しさの目視評価値の推定に用いる回帰式の作成において用いたサンプルの目視評価値の最低値と最大値の間を任意の複数のランクに等分し、それぞれのランクをアルファベットや数字で表示したり、肌の美しさの程度を示す言葉で表示したりすることができる。
【0051】
また、さらに利用した回帰式が描く回帰直線上に、被験者のフラクタル次元を示したり、標本群の中での位置やランクなどを図に示したり、写真様の画像(図6参照)又はステレオグラム(図7参照)として表示することもできる。図の表示方法は特に制限されず、例えば、装置のディスプレイや印刷媒体などに表示することができる。
【0052】
また、本発明の肌の美しさの目視評価値の推定装置は、肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する手段、該表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する手段、予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段及び算出した目視評価値を表示する手段を含む。
【0053】
本発明の目視評価値の推定装置は、例えば、以下のような構成にすることができる。以下の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
図4は、肌の表面から得た表色系画像信号や起伏値のフラクタル次元を用いて、肌の美しさの目視評価値を推定する装置のハードウェアブロック図である。図4に示すように、評価装置1は、入力部1、CPU(Central Processing Unit)2、ROM(Read Only Memory)3、RAM(Random Access Memory)4、磁気ディスク装置5、記録部6、操作部7、表示部8を有している。これらは、相互にバスを介して接続されている。入力部1は、カラーデジタル式マイクロスコープ、カラーデジタルカメラ、カラービデオカメラ、スキャナー等の肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を入力するための装置又は3次元粗さ計などの肌の表面の起伏値を計測する装置である。入力部1は、画像信号を取得する手段と起伏値を取得する装置の何れか一方を有していてもよいし、両方を有していてもよい。CPU2は、ROM3に記憶されているプログラムに従って、上述した平滑化処理などのデータ処理、ボックスカウンティング法などによるフラクタル次元の算出、回帰式を用いた目視評価値の算出などの処理を実行する。ROM3には、本発明の評価装置が機能する上で必要なプログラムや目視評価に必要な各種回帰式などが記憶されている。RAM4は、CPU2に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの一部が一時的に格納される。磁気ディスク装置5は、RAM4の外部記憶として用いられ、記録部6を有している。操作部7は、所定のコマンドや回帰式などの必要なデータを入力するときなどに操作される。表示部8は、評価値の推定値を表示することができるものであればよく、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどによる表示装置やスピーカーなどの音
声出力装置、プリンタなどの出力装置が挙げられる。
【0054】
また、本発明は、コンピュータ、その他の装置、機械等に前記処理の一部又は全部を実行させるためのプログラムであってもよい。また、本発明はこのようなプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録したものでもよい。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例などを参照して詳細に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されることはない。
【0056】
<実施例1>
RGB値及びYUV値と肌の美しさの目視評価値との相関関係
10〜50代の39名の女性の頬部の画像を用いて、RGB値の各成分と肌の美しさの目視評価値との関係を表す重回帰式及びYUV値の各成分と肌の美しさの目視評価値との関係を表す重回帰式を得た。すなわち、前記39名について、洗顔後30分に、図5に示す部位を市販のデジタルカメラ(Nikon D100 60mm Macroレンズ)を利用して撮影し、撮影領域の中心部領域15*15mm(サイズ300*300ピクセル)を抽出して(図6参照)、この部位を3*3マスク(格子の値はすべて1)で平滑化処理した(図7)。YUV値は、RGB値を定法に従って行列変換することにより得た。各サンプルのRGB値の各成分及びYUV値の各成分について上述した式(2)及び(3)を用いてフラクタル次元を算出するボックスカウンティング法をコンピュータに実行させるプログラムを用いて、フラクタル次元を算出した。前記ボックスカウンティング法においてX=300、Y=300、hを2、4、8、16・・・2nと変化させ、各hに対してN(h)を算出した。
この算出結果から、loghに対するlogN(h)をプロットし、各サンプルについてフラクタル次元を求めた。
【0057】
一方、前記39名の女性の頬部写真(図6参照)について、第三者に肌の美しさの目視評価をしてもらった。第三者として、6名のパネラーを選抜し、39名の頬部写真を提示して肌が美しいと視認された順に順位付けを行ってもらった。これらの作業を独立して4回行い、美しいと視認された順に並べたときの、40−(順位)をスコアとした。すなわち、最も美しい写真のスコアが39であり、最も美しくない写真のスコアが1である。次に、それぞれの写真についてスコアの平均値を算出し、肌の美しさの目視評価値とした。
【0058】
前記の39名の頬部写真について、肌画像より得たRGB値の各成分についてフラクタル次元を算出した。RGBの各成分の3軸より構成される3次元座標空間において各成分のフラクタル次元をプロットしたものを図9に示す。これより、RGBの3成分のフラクタル次元は、正の相関を有していることが分かる。
【0059】
次に、前記で得た肌の美しさの目視評価値を目的変数とし、R、G、Bそれぞれを説明変数として回帰分析を行った。その結果、目視評価値とR、G、Bとの偏相関係数は、それぞれ0.835、0.877、0.896であり、高い相関を示した。
【0060】
次に、前記で得た肌の美しさの目視評価値(y)を目的変数とし、RGBの3成分(xR、xG、xB)を説明変数として重回帰分析を行った。得られた重回帰式は、y=88.8*xR−126.4*xG−224.4*xB−469.7、相関係数は0.907(P<0.01)であった。
【0061】
前記の39名の頬部写真について、肌画像より得たRGB値を上述した方法を用いてYUV値に変換し、各成分についてフラクタル次元を算出し、YUVの各成分の3軸より構
成される3次元座標空間において各成分のフラクタル次元をプロットしたものを図10に示す。これより、YUVの3成分のフラクタル次元は、正の相関を有していることが分かる。
【0062】
次に前記で得た肌の美しさの目視評価値を目的変数とし、Y、U、Vそれぞれを説明変数として回帰分析を行った。その結果、目視評価値とY、U、Vとの偏相関係数は、それぞれ0.893、0.864及び0.888であり、高い相関を示した。
【0063】
次に、前記で得た肌の美しさの目視評価値(y)を目的変数とし、YUVの3成分(xY、xU、xV)を説明変数として重回帰分析を行った。得られた重回帰式は、y=95.0*xY+36.2*xU+45.8*xV−441.4、相関係数は0.912(P<0.01)であった。
【0064】
<実施例2>
YUV値を用いた肌の美しさの目視評価値の推定
10〜50代の248名の頬部写真を対象に、前記方法でYUV値のフラクタル次元を算出し、実施例1と同様にして肌の美しさのスコアを求めた後、偏差値を求めて目視評価値とした後、目視評価値(y)とYUVの各成分(xY、xU、xV)を重回帰分析して、重回帰式を得た。得られた重回帰式は、y=70.3*xY+32.0*xU+15.2*xV−256.6、重相関係数は0.909(p<0.01)であった。
【0065】
次に、前記248名に含まれない5名の女性被験者の頬部写真からYUV値を取得し、各成分のフラクタル次元を算出し、算出したフラクタル次元(xY、xU、xV)を前記重回帰式に代入して、肌の美しさの目視評価値(y)を算出した。
5名の女性被験者の頬部写真の目視評価値を前記方法と同様に得て、その結果を比較した。結果を表1に示す。これによると、フラクタル次元を用いた肌の美しさの目視評価値の推定値と肌の美しさの目視評価値は、極めてよく一致していることが分かる。
【0066】
【表1】
【0067】
<実施例3>
起伏値を用いた肌の美しさの目視評価値の推定
実施例1で頬部写真を取得した39名について、図5に示す頬部より市販のシリコンを用いて、中心部の2cm*2cmの肌のレプリカ標本を採取した後、株式会社サイエンスシステムズ社の高精度3次元画像処理装置LIP−50を用いて3次元起伏値のデータを得た。レプリカの中央部の1cm*1cmの領域について、y方向(縦方向)に10μmの間隔で1000本の走査を行った。LIP−50は、x方向とy方向のサンプリング周
期がそれぞれ9.4μm、10μmと異なるため、Sinc関数を用いて、xy方向の間隔が何れも10μmとなるように補完処理をした後、実施例1と同様にしてフラクタル次元を算出した(図3)。
【0068】
実施例1で得た前記の39名の頬部写真の肌の美しさの目視評価値(y)と、前記起伏値から算出したフラクタル次元(x)について回帰分析を行った。両者の相関関係を図11に示す。得られた回帰式は、y=63.2*x−127.2、相関係数は0.912(p<0.01)であり、有意で且つ高い相関関係を示した。
次に、33才の女性被験者の頬部のレプリカ標本から前記と同様にして得た起伏値からフラクタル次元を求め、前記回帰式に代入し、肌の美しさの目視評価値を推定した。この女性被験者のレプリカ標本から得た起伏値のフラクタル次元はD=2.32であり、肌の美しさの目視評価値の推定値は19.4であった。別途、肌の美しさについて目視評価を実施したところ評価値は20であり、良好な一致を見た。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によって、第三者の目に映る肌の見た目の美しさを客観的かつ簡便に鑑別することができるため、誰でも被験者の肌の美しさの目視評価値を推定することができる。本発明の方法や装置を用いることにより、肌のカウンセリング、手入れ方法や化粧料の選択などについてのアドバイスなどの現場で適切な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】ボックスカウンティング法における、分割の概念を示す図である。
【図2】ボックスカウンティング法のカウントの概念を示す図である。
【図3】フラクタル次元を示す図である。
【図4】本発明の肌の美しさの目視評価値の推定装置の一例のハードウェアブロック図である。
【図5】顔の計測対象領域の例を示す図である。
【図6】本発明の評価に用いる頬部写真の例を示す図である(写真)。
【図7】画像データの平滑化処理方法(マスクサイズ3*3)を示す図である。
【図8】レプリカから得た起伏値データをSinc関数により補正したものを示す図である。
【図9】各サンプルについて、R、G、Bの各フラクタル次元をプロットした図である。
【図10】各サンプルについて、Y、U、Vの各フラクタル次元をプロットした図である。
【図11】肌の美しさの目視評価値と肌のレプリカの起伏値のフラクタル次元との関係を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の美しさの目視評価値を推定する技術に関し、さらに詳しくは、肌の性状値のフラクタル次元を指標として、肌の美しさの目視評価値を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第三者によって、美しい肌であると認識されることは、女性のみならず多くの人の大きな願いの一つである。このため、美しい肌に見せるための化粧料や美容法の研究開発が盛んに行われている。しかしながら、肌の状態は個人によって大きく異なり、さらに加齢や生活環境によっても変化するものであるため、化粧料の種類や化粧の方法、肌の手入れ法などを適切に選択するためには、対象となる肌が第三者にどのように見えるのかを客観的に判断することが必要である。例えば、デパートの化粧品売り場や、薬局、化粧品店の店頭においては、被験者の肌の美しさの程度を評価する簡便な方法が求められている。
【0003】
視覚的な肌の美しさを構成する要素についてはさまざまな研究がなされ、その要素の一部について個別に評価を行う方法が開発されている。例えば、肌のコンダクタンス、皮膚水分散逸量、皮脂量、皮膚柔軟性、角層のターンオーバーの速度などの物理量を計測する技術を用いて肌の性状を評価する方法などがある。また、近年では、皮膚表面やそのレプリカを適当な光電変換手段で撮像して得られた画像情報をプログラムにより処理し、皮膚表面形状や光学的性質を定量的に評価する方法なども報告されている。
【0004】
しかしながら、第三者が肌を見たときに、視認される肌の状態、すなわち視覚的な肌の美しさというものは、これらの数々の要素が複合的に関連しあって形成されるものであるため、前記のような個々の要素の判断結果から判断することは容易ではない。実際に、視覚的な肌の美しさを判定するためには、個々の測定データを元に肌の評価の専門家が、専門知識に基づいて測定結果を分析したり、一対比較などにより、視覚的に官能評価を行うことが必要であるが、この場合には、肌の評価の専門家や一定数以上の評価者が必要であり、さらに収集した評価データの分析も必要であった。このように、従来の方法では、視覚的な肌の美しさを的確かつ簡便に評価することは困難であった。
【0005】
このような技術背景において、皮膚の写真やレプリカから得られる肌の特定の性状値を測定、加工することにより、この数値と皮膚の美しさとの相関関係を見出し、肌の美しさを評価しようとする試みがなされている。例えば、皮膚のレプリカに2方向から可視光を当て、皮膚の反射光スペクトルの各波長における反射率を指標として皮膚の美しさを鑑別する方法(特許文献1)、フェースライン近傍の皮下脂肪の厚さと肌の外力による変形に対する復元力の大きさを指標としてフェースラインの美しさを鑑別する方法(特許文献2)、皮膚表面における微細明暗分布が強調された二次元画像の高輝度部分の粒子解析値と皮膚の見た目の美しさの感覚的評価との相関関係を利用して皮膚表面の光学的美しさを数値化する方法(特許文献3)、メークアップされた皮膚に2方向から可視光を照射して得た反射光の分光スペクトルの差を利用して皮膚を鑑別する方法(特許文献4)、偏光照明下で取得した皮膚のデジタル画像に含まれる鏡面反射光成分の高周波成分の分散値と肌の美しさの官能評価との相関関係を利用して皮膚の美しさを評価する方法(特許文献5)等が開示されている。このような技術においては、測定値や加工値と肌の美しさとの関連も一部で認められるものの、その相関性は極めて良いというものではなかった。このように、肌の美しさと高い相関関係を有する肌の性状を示す数値がいかなるものなのかということについての研究及び解明は未だ十分ではなく、肌の美しさを評価する指標としてさらに高い利用価値がある数値が模索されていた。
【0006】
一方、フラクタルという概念は、数学分野の研究において創造された自己相似的な図形に用いられる幾何学的概念である。また、自然界には、フラクタルな形状を有しているものが数多く存在していることが知られている。フラクタルな性質の形状を表現する1つの手段として、フラクタル次元を求めることが知られている。近年では、フラクタル次元を算出することにより、生体における特定の状態を判断する方法が報告されている。例えば、被験者の特性不安レベルの生体信号をフラクタル解析し、統計的データとの相関から不安レベルを評価する方法や(特許文献6)、組織からの反射超音波パルス信号をフラクタル解析して、組織の状態を調査する方法(特許文献7)、フラクタル解析を利用した悪性細胞の自動検出システム(特許文献8)が開示されている。
【0007】
また、メラニン等の色素分布と肌の画像を構成する画素の輝度のフラクタル次元の相関関係から、肌のメラニン色素分布を評価する方法が開示されている(特許文献9)。また、肌の性状値のフラクタル次元を指標とすれば、肌年齢の推定等が行える可能性があることが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、フラクタル次元の具体的な利用方法については明らかにされておらず、フラクタル次元と肌年齢の関係やフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値等との関係は見出されていない。
【0008】
【特許文献1】特開2003−161656号公報
【特許文献2】特開平11−164822号公報
【特許文献3】特開平7−231883号公報
【特許文献4】特開平10−2798号公報
【特許文献5】特開2005−429号公報
【特許文献6】特開2001−299702号公報
【特許文献7】特表平11−507846号公報
【特許文献8】特表2001−512824号公報
【特許文献9】特開2000−135207号公報
【非特許文献1】「肌画像の特徴量を利用した肌年齢推定方式と肌老化予防への対応応用」(春日 正男、首都圏北部四大学発 新技術説明会 平成17年12月2日 説明資料)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、肌の美しさの目視評価値を推定する方法及び肌の美しさの目視評価値を算出する装置及びプログラムを提供し、肌の美しさの目視評価値の推定を誰にでも簡便に客観的かつ定量的に行えるようにすることを課題とする。また、本発明はさらに第三者による肌の美しさの目視評価値と関係する肌の性状値及びその加工手段を見出し、肌の美しさの目視評価値を精度よく得る方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、肌の美しさについて研究を重ねてきた結果、肌の美しさの目視評価値と種々の肌の性状値のフラクタル次元との間に因果関係を見出した。そして、この関係を利用して、被験者のフラクタル次元から肌の美しさの目視評価値を推定すれば、実際の第三者による肌の美しさの目視評価値と極めて近い結果を得ることができることを知見し発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下の通りである。
【0011】
(1)肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する工程と、
該表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する工程と、
予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す
回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を得る工程と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定方法。
(2)前記表色系の画像信号が、RGB値、YUV値又はマンセル(HVC)値であることを特徴とする、(1)に記載の方法。
(3)前記回帰式が、RGB値、YUV値又はマンセル(HVC)値を構成する各成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値を重回帰分析して得られた回帰式であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)肌の起伏値を取得する工程と、
該起伏値の分布のフラクタル次元を算出する工程と、
予め用意した前記起伏値の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を得る工程と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定方法。
(5)前記フラクタル次元が、ボックスカウンティング法により算出されることを特徴とする、(1)〜(4)の何れか一に記載の方法。
(6)前記ボックスカウンティング法におけるボックスサイズの決定が、ボックス内の前記表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分又は前記起伏値の標準偏差に基づいて行われることを特徴とする、(5)に記載の方法。
(7)肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する手段と、
該表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する手段と、
予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段と、
算出した目視評価値を表示する手段と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定装置。
(8)肌の起伏値を取得する手段と、
該起伏値の分布のフラクタル次元を算出する手段と、
予め用意した前記起伏値の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段と、
算出した目視評価値を表示する手段と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定装置。
(9)コンピュータを、
肌の表面の画像の表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する手段、
予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段、
として機能させるための肌の美しさの目視評価値の推定プログラム。
(10)コンピュータを、
肌の起伏値の分布のフラクタル次元を算出する手段、
予め用意した前記起伏値のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段、
として機能させるための肌の美しさの目視評価値の推定プログラム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法及び装置を用いることにより、種々の肌の性状値を用いて、手軽に、客観的かつ定量的に肌の評価を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において肌の美しさの目視評価値とは、人が肌を視認した場合に、どの程度美しく見えるかを表す統計的な評価値であり、具体的には、例えば、ある肌と別の肌とを見比べた場合に、どちらが美しく見えるかの判定を繰り返して得られる統計的な評価値である。ここで、肌の美しさとは、視覚的に認識できる肌の性質を総合したときの肌の状態の好ましさの程度をいうものであって、視覚的に認識できる範囲でのキメの細かさ、キメの方向の均一性、なめらかさ、凹凸感、さらさら感、しっとり感、柔らかさ、しわ、はり、つややかさなどの性質を総合したときの肌の状態の好ましさの程度をいい、目から入力された情報を人間の精神活動により加工、処理して得られるような主観的な美しさは含まない。
【0014】
本発明の肌の美しさの目視評価値を得るために必要な性状値は、肌の表面の画像の表色系の画像信号及び肌の表面の起伏値から選ばれる少なくとも一つである。
【0015】
表色系の画像信号とは、例えば、RGB値、YUV値、マンセル(HVC)値、L*a*b*値、L*C*h*値、Lab値、Yxy値が挙げられる。この中でも、特にRGB値、YUV値、マンセル(HVC)値を用いることが好ましい。RGB値とは、レッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の光の3原色の組合せにより、色を表現するものであり、例えば各々256階調で表す場合には、約1677万色の色調表現が可能である。YUV値とは、輝度(Y)、色差(U=青色−Y)、色差(V=赤色−Y)の組合せで色を表現するものである。マンセル(HVC)値は色相、明度、彩度の3成分で色を表現するJIS表色系である。このような表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分を性状値としてもよいし、複数の成分を性状値としてもよい。
【0016】
起伏値とは、ある対象の表面を覆う点が、基準面からどれぐらいの高さであるかを示す数値である。
【0017】
肌の表面の表色系の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得するためには、まず、被験者の肌の表面を撮像する。画像を取得する肌の部位は肌の美しさの目視評価値を推定したい部分であれば特に制限されず、頬などの顔面皮膚、上腕内側部などが挙げられる。例えば、推定した目視評価値をファンデーションやチークなどの化粧料の選択において利用する場合などには、頬を撮像することが好ましい。また、通常は、被験者の肌を代表する領域を選択し、傷やシミが多い部位は避けることが好ましい。
また、画像を取得する範囲も解析に必要な情報を得られる範囲であれば特に制限されるものではないが、肌表面において1cm*1cm〜3cm*3cmの範囲が好ましい。
【0018】
肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する手段は、特に制限されない。例えば、カラーデジタル式マイクロスコープ、カラーデジタルカメラ、カラービデオカメラ、スキャナー等の機器を用いて行うことができる。このような機器は市販のものであってもよいし、製造したものであってもよい。市販品としては、例えば、株式会社モリテックス製のi−scope及びCCDマイクロスコープ、有限会社フォルテシモのUSBビデオマイクロスコープ、又は株式会社キーエンスのデジタルマイクロスコープ等が好ましく例示できる。
撮像倍率は撮像に用いる機器等によって適した倍率とすればよい。例えば、マクロレンズ装着デジタルカメラを用いる場合は、等倍で、対象から約20cmの距離で近接撮影画像を取得することが好ましく、ビデオマイクロスコープ(例えばモリテックス製i‐scope)を用いる場合には、肌を30〜50倍程度に拡大し、撮像することが好ましい。このようにして、画像を取得する場合の情報量は、2cm*2cmの範囲に換算した場合に、64*64画素(ドット、ピクセル)以上であればよいが、好ましくは128画素以
上、さらに好ましくは300*300画素以上がよい。
【0019】
このようにして取得した表色系の画像信号は、コンピュータに転送した後にメディアンフィルターを用いてノイズを除去したり、平滑化フィルターを用いて、平滑化処理をすることが好ましいが、特に平滑化処理をすることが好ましい。平滑化処理をすることにより、画素ごとの性状値の大きなばらつきを補正することができ、より高い精度でフラクタル次元を算出することができる。
【0020】
画像の取り込みや平滑化処理は市販の画像解析ソフトウェアを用いて行うことができる。例えば、三谷商事株式会社のWinROOF(登録商標)、アドビシステムズ社のAdobePhotoshop(登録商標)、及びナノシステム株式会社のNanoHunter NS2K−Pro(登録商標)等が例示できる。また、インターネット上に公開されている平滑化処理用のソフトウェアを用いることもできる。マスクサイズは、例えば3*3、5*5などを使用することが好ましい。
【0021】
また、特定の画像信号は、常法に従って他の任意の画像信号に変換することができる。例えば、YUV値、L*a*b*値、L*C*h*値、Lab値、Yxy値は、RGB値から変換式を用いて変換することができる。また、マンセル(HVC)値への変換は変換表を用いることができる。例えば、RGB値からYUV値へ変換する場合には、市販のソフトウェアなどを用いて、RGB値のγ補正を行った後、例えば下記式(A)を用いてYUV値に変換することができる。また、RGB値からマンセル値へ変換する場合には、市販又はインターネット上に公開されているソフトウェアなどを用いて、RGB値をXYZ値に変換した後、マンセル表色系のHCVに変換することができる。
【0022】
【数1】
【0023】
このようにして得た表色系の画像信号を構成する成分のうち少なくとも1つの成分の数値について、フラクタル解析を行い、その数値の画像上の分布のフラクタル次元を算出する。フラクタル次元の算出方法については後述する。
【0024】
また、肌の表面の起伏値を取得するための方法として、被験者の肌のレプリカを取得し、レプリカの表面形状を測定して得た起伏値を用いる方法が挙げられる。レプリカを取得する肌の部位は、肌の美しさの目視評価値を推定したい部分であれば特に制限されず、頬などの顔面皮膚、上腕内側部などが挙げられる。評価値を化粧料の選択などに利用する場合には、頬のレプリカを取得することが好ましい。たとえば、頬部の2cm*2cmの測定領域を設定し、これを含む部分のレプリカを取得すればよい。レプリカ剤は、特に制限されないが、例えば、有限会社アサヒバイオメッドのシリコンASB−01−WW等が例示できる。レプリカを採取する方法は、肌の形状などを診断するのに用いられる常法により行うことができる。例えば、洗顔後20℃、50%湿度下で20分程度おいた肌にレプリカ剤を適用し、これを採取すればよい。
【0025】
次にこのようにして作製したレプリカの起伏値を測定する。起伏値の測定方法は特に制限されず、通常の方法を用いることができる。例えば、「シワ評価法ガイダンス」、日本
香粧品科学会誌 別冊 Vol. 28, No.2 (2004)を参照することができる。
具体的には、例えば、市販のレーザータイプの3次元表面粗さ計を利用して、図5に示すような顔の部分に対して水平方向(x)及び垂直方向(y)にレーザースキャンを行って測定することができる。このような3次元粗さ計として、例えば、株式会社サイエンスシステムズ社の高精度3次元画像処理装置LIP(例えばLIP−50)、株式会社東京精密のSURFCOM、レーザーテック株式会社のVLH、PRIMOS(GFM社製)、derma-TOP-blue(Breuckmann社製)等が挙げられる。
これらの機器を用いて起伏値を測定する際のスキャンの間隔は、フラクタル次元を算出するのに十分なデータが得られる範囲であれば特に制限されないが、10μm以下の間隔で行うことが好ましい。
例えば、LIP−50を用いてスキャンする場合には、X*Yが1cm*1cmのレプリカ領域に対して、X又はY方向について10μm間隔で1000本の走査を行うことができる。
【0026】
このようにして得た起伏値を得る際に、x方向とy方向のサンプリング周期が異なる場合には、Sinc関数を用いてサンプリング周期を補正することが好ましい(図8参照)。
【0027】
また、光投射装置などを用いて斜光照明をレプリカに照射し、レプリカ凸部の影部分を抽出し、その面積・幅等から肌の凹部の深さ、面積率等を計測する方法によって、起伏値を得ることもできる。このような斜光照明の照射による起伏値の取得は、簡便である点で好ましい。この方法による起伏値の取得は、例えば反射用3Dレプリカ解析システム(アサヒバイオメッド)等を用いて行うことができる。
【0028】
また、半透明レプリカに光を照射し、透過した光量からレプリカの厚さを求め、レプリカの起伏値を得ることもできる(半透明レプリカ光透過法)。この方法による起伏値の取得は、例えば、3D皮膚解析システムASA−03(アサヒバイオメッド)等を用いて行うことができる。
【0029】
また、肌から直接起伏値を得てもよい。このような方法として例えば、格子状の光を肌に当てその光の屈折率を起伏値に換算する方法が挙げられ、市販されている機器などを用いることができる。PRIMOS(GFM社製)、derma-TOP-blue(Breuckmann社製)などの機器を用いれば、レプリカからだけでなく、肌から直接起伏値を得ることもできる。
【0030】
このようにして取得した肌の表面の起伏値について、フラクタル解析を行い、肌の起伏値の測定領域上の分布、すなわち、その肌の表面の形状のフラクタル次元を算出する。
【0031】
取得した表色系の画像信号や起伏値からフラクタル次元を算出する方法としてはボックスカウンティング法(box‐counting)、相関次元法、fractional
Brownian motion model法などが挙げられる。この中でも、特にボックスカウンティング法を用いることが好ましい。
【0032】
ボックスカウンティング法とは、対象を完全に覆う正方形(立方体)を任意の大きさの正方形(立方体)で分割し、その正方形(立方体)の大きさとその対象の一部を覆う分割正方形(立方体)の数との関係から、フラクタル次元を求める方法であり、フラクタル次元の算出に一般的に用いられている。
ある形状が具体的には、対象を完全に覆う正方形(立方体)を一辺の長さhで分割した場合の対象の一部を覆う正方形(立方体)の数をN(h)とした場合に、rとN(h)の間に、
N(h)=c・h-D(cは定係数) ・・・(1)
という近似式がよい相関で成り立つ場合に、その対象はフラクタルな形状であるといえ、このとき、式(1)におけるDがフラクタル次元となる。
従って、ボックスカウンティング法により、フラクタル次元Dを求めるためには、c・hとN(h)を対数プロットし、得られた直線の傾きを求めればよい。
【0033】
このようなボックスカウンティング法は、非常に簡便であり、計算機での高速処理が可能であるが、対象のフラクタル次元が半整数値から遠いほど、その解析精度が低下する。そこで、一般的なボックスカウンティング法におけるボックスサイズをボックス内の性状値の標準偏差に基づいて決定する方法を用いることが好ましい。すなわち、単に対象の一部がボックス内に入るか否かを判定するのではなく、ボックス内のデータの標準偏差に基づいて有効的なボックスサイズを決定し、対象の一部がボックス内に入るか否かを判定する工程を含む方法を用いることが好ましい。
【0034】
このようなフラクタル次元の算出は、具体的に以下のような方法で行うことができる。
(1)まず図1に示すように、サイズX×Yに存在する2次元離散データf(x,y)をサイズh×h(m個)の領域Si(x,y)に分割する。画像信号を用いる場合には、X×Yに存在する離散データは画素であり、起伏値を用いる場合には基準面からの高さのデータである。hは、任意に決定することができる。
【0035】
(2)領域S1〜Smのそれぞれについて、性状値の標準偏差σ1〜σmを以下の式(2)により求める(図2参照)。
【0036】
【数2】
【0037】
(3)サイズhでのN(h)を以下の式(3)により計算する。
【0038】
【数3】
【0039】
このようにしてN(h)を計算することにより、h×hの領域Siにおける標準
偏差を有効的なボックスサイズとしてボックスの個数をカウントすることができるため、データ計測のノイズ等の突発的なノイズの影響を抑制することが可能となる。また、フラクタル次元の推定に不可欠である、1〜2桁近くの広いスケーリング範囲が得られる。
【0040】
(4)サイズhを大きくしてf(x,y)を再分割し、(1)〜(3)の手順を用いて同様にN(h)を計算する。
(5)h=X、又はh=Yとなるまで(4)を繰り返し、N(h)を計算する。
(6)logN(h)とloghの関係を表すグラフの傾きからフラクタル次元Dを求める(図3参照)。
【0041】
相関次元法とは、式(4)により定義される相関積分C(r)が、式(B)とスケーリングされるとき、logC(r)対log(r)のグラフの傾きを相関次元(フラクタル次元)Dとする方法である。
【0042】
【数4】
【0043】
【数5】
【0044】
このようにして求めた被験者の肌の性状値のフラクタル次元を用いて、肌の美しさの目視評価値を推定するが、このために予め以下のような方法で、肌の性状値のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式を用意しておく。
【0045】
回帰式は、例えば以下の方法で作成することができるが、該方法に限定されない。
1)肌の状態や年齢などが十分に分布した肌(以下、これらをまとめてサンプルともいう。)から表色系の画像信号及び起伏値から選ばれる少なくとも1つの性状値を取得し、取得した性状値について、サンプル上の分布のフラクタル次元を算出する。性状値の取得やフラクタル次元の算出は、上述した方法と同様に行うことができる。このとき用いるサンプルの数は、30以上、好ましくは50以上である。
【0046】
2)次に、第三者を代表するのに適当な評価者を用意し、前記サンプルを提示し、視覚的な肌の美しさを評価してもらう。これらの評価は、得点付けのような絶対的な評価であってもよいが、客観性を担保するために別のサンプルと比較して順位付けを行うなどの相対的な評価であることが好ましい。順位付けにおいては、差がない場合は、同順位とすることもできる。この際、さらに客観性を担保するために評価は視認可能な肌の要素のみに対して行うものであることを説明する。ここで、第三者を代表するのに適当な評価者とは、少なくとも視覚的な肌の美しさの意味を理解できるものであればよく、年齢や性別は問わない。また、評価者の数は、通常4名以上、好ましくは10名以上である。
【0047】
3)2)の作業は、繰り返すことが好ましい。作業の回数は、評価者の数などにより適宜調節すればよい。客観的な評価結果を得るために、通常3回以上、好ましくは4回以上、さらに好ましくは5回以上評価を繰り返すのがよい。
【0048】
4)次に、サンプルごとに肌の美しさの目視評価値を算出する。ここで、目視評価値は、得られた得点そのものを用いてもよいし、順位付けによる相対的な評価を行った場合は、順位そのものを用いても、肌が美しい昇順に高い数値を与えてもよい。またこれらの評価値は、サンプルごとの合計であってもよいし、平均値であってもよい。例えば、n個のサンプルについて順位付けを行った場合に、i番目のスコアをn−i+1として、各サンプルの合計スコアの平均値を求め、評価値とする
ことができる。また、サンプルの平均値と標準偏差から各サンプルの偏差値を求め、評価値としたり、これらの値を任意の段階に分割して評価値とすることもできる。
【0049】
5)1)で求めた少なくとも1つの性状値と4)で求めた評価値の平均を回帰分析し、
回帰式(予測式)を求める。この際、性状値としてRGB値、YUV値、マンセル(HVC)値などの表色系の画像信号を用いる場合には、表色系の画像信号を構成する各成分と前記肌の美しさの目視評価値とを重回帰分析して、重回帰式を得ることが、より高い相関関係が得ることができるため好ましい。このような回帰分析は、常法により行うことができ、例えば、市販されている統計処理用ソフトウェアを用いて行うことができる。
【0050】
前記で算出した被験者の性状値のサンプル上の分布のフラクタル次元を、同一の性状値と肌の美しさの目視評価値との相関関係を表す回帰式に代入し、被験者の肌の美しさの目視評価値を推定することができる。このようにして得られた肌の美しさの目視評価値の推定値は、そのまま数値として表示することもできるが、偏差値や予め規定したランクなどの利用しやすいデータに加工することにより、カウンセリングやアドバイスの場面において使用しやすいものとなるため好ましい。例えば、肌の美しさの目視評価値の推定に用いる回帰式の作成において用いたサンプルの目視評価値の最低値と最大値の間を任意の複数のランクに等分し、それぞれのランクをアルファベットや数字で表示したり、肌の美しさの程度を示す言葉で表示したりすることができる。
【0051】
また、さらに利用した回帰式が描く回帰直線上に、被験者のフラクタル次元を示したり、標本群の中での位置やランクなどを図に示したり、写真様の画像(図6参照)又はステレオグラム(図7参照)として表示することもできる。図の表示方法は特に制限されず、例えば、装置のディスプレイや印刷媒体などに表示することができる。
【0052】
また、本発明の肌の美しさの目視評価値の推定装置は、肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する手段、該表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する手段、予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段及び算出した目視評価値を表示する手段を含む。
【0053】
本発明の目視評価値の推定装置は、例えば、以下のような構成にすることができる。以下の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
図4は、肌の表面から得た表色系画像信号や起伏値のフラクタル次元を用いて、肌の美しさの目視評価値を推定する装置のハードウェアブロック図である。図4に示すように、評価装置1は、入力部1、CPU(Central Processing Unit)2、ROM(Read Only Memory)3、RAM(Random Access Memory)4、磁気ディスク装置5、記録部6、操作部7、表示部8を有している。これらは、相互にバスを介して接続されている。入力部1は、カラーデジタル式マイクロスコープ、カラーデジタルカメラ、カラービデオカメラ、スキャナー等の肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を入力するための装置又は3次元粗さ計などの肌の表面の起伏値を計測する装置である。入力部1は、画像信号を取得する手段と起伏値を取得する装置の何れか一方を有していてもよいし、両方を有していてもよい。CPU2は、ROM3に記憶されているプログラムに従って、上述した平滑化処理などのデータ処理、ボックスカウンティング法などによるフラクタル次元の算出、回帰式を用いた目視評価値の算出などの処理を実行する。ROM3には、本発明の評価装置が機能する上で必要なプログラムや目視評価に必要な各種回帰式などが記憶されている。RAM4は、CPU2に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの一部が一時的に格納される。磁気ディスク装置5は、RAM4の外部記憶として用いられ、記録部6を有している。操作部7は、所定のコマンドや回帰式などの必要なデータを入力するときなどに操作される。表示部8は、評価値の推定値を表示することができるものであればよく、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどによる表示装置やスピーカーなどの音
声出力装置、プリンタなどの出力装置が挙げられる。
【0054】
また、本発明は、コンピュータ、その他の装置、機械等に前記処理の一部又は全部を実行させるためのプログラムであってもよい。また、本発明はこのようなプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録したものでもよい。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例などを参照して詳細に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されることはない。
【0056】
<実施例1>
RGB値及びYUV値と肌の美しさの目視評価値との相関関係
10〜50代の39名の女性の頬部の画像を用いて、RGB値の各成分と肌の美しさの目視評価値との関係を表す重回帰式及びYUV値の各成分と肌の美しさの目視評価値との関係を表す重回帰式を得た。すなわち、前記39名について、洗顔後30分に、図5に示す部位を市販のデジタルカメラ(Nikon D100 60mm Macroレンズ)を利用して撮影し、撮影領域の中心部領域15*15mm(サイズ300*300ピクセル)を抽出して(図6参照)、この部位を3*3マスク(格子の値はすべて1)で平滑化処理した(図7)。YUV値は、RGB値を定法に従って行列変換することにより得た。各サンプルのRGB値の各成分及びYUV値の各成分について上述した式(2)及び(3)を用いてフラクタル次元を算出するボックスカウンティング法をコンピュータに実行させるプログラムを用いて、フラクタル次元を算出した。前記ボックスカウンティング法においてX=300、Y=300、hを2、4、8、16・・・2nと変化させ、各hに対してN(h)を算出した。
この算出結果から、loghに対するlogN(h)をプロットし、各サンプルについてフラクタル次元を求めた。
【0057】
一方、前記39名の女性の頬部写真(図6参照)について、第三者に肌の美しさの目視評価をしてもらった。第三者として、6名のパネラーを選抜し、39名の頬部写真を提示して肌が美しいと視認された順に順位付けを行ってもらった。これらの作業を独立して4回行い、美しいと視認された順に並べたときの、40−(順位)をスコアとした。すなわち、最も美しい写真のスコアが39であり、最も美しくない写真のスコアが1である。次に、それぞれの写真についてスコアの平均値を算出し、肌の美しさの目視評価値とした。
【0058】
前記の39名の頬部写真について、肌画像より得たRGB値の各成分についてフラクタル次元を算出した。RGBの各成分の3軸より構成される3次元座標空間において各成分のフラクタル次元をプロットしたものを図9に示す。これより、RGBの3成分のフラクタル次元は、正の相関を有していることが分かる。
【0059】
次に、前記で得た肌の美しさの目視評価値を目的変数とし、R、G、Bそれぞれを説明変数として回帰分析を行った。その結果、目視評価値とR、G、Bとの偏相関係数は、それぞれ0.835、0.877、0.896であり、高い相関を示した。
【0060】
次に、前記で得た肌の美しさの目視評価値(y)を目的変数とし、RGBの3成分(xR、xG、xB)を説明変数として重回帰分析を行った。得られた重回帰式は、y=88.8*xR−126.4*xG−224.4*xB−469.7、相関係数は0.907(P<0.01)であった。
【0061】
前記の39名の頬部写真について、肌画像より得たRGB値を上述した方法を用いてYUV値に変換し、各成分についてフラクタル次元を算出し、YUVの各成分の3軸より構
成される3次元座標空間において各成分のフラクタル次元をプロットしたものを図10に示す。これより、YUVの3成分のフラクタル次元は、正の相関を有していることが分かる。
【0062】
次に前記で得た肌の美しさの目視評価値を目的変数とし、Y、U、Vそれぞれを説明変数として回帰分析を行った。その結果、目視評価値とY、U、Vとの偏相関係数は、それぞれ0.893、0.864及び0.888であり、高い相関を示した。
【0063】
次に、前記で得た肌の美しさの目視評価値(y)を目的変数とし、YUVの3成分(xY、xU、xV)を説明変数として重回帰分析を行った。得られた重回帰式は、y=95.0*xY+36.2*xU+45.8*xV−441.4、相関係数は0.912(P<0.01)であった。
【0064】
<実施例2>
YUV値を用いた肌の美しさの目視評価値の推定
10〜50代の248名の頬部写真を対象に、前記方法でYUV値のフラクタル次元を算出し、実施例1と同様にして肌の美しさのスコアを求めた後、偏差値を求めて目視評価値とした後、目視評価値(y)とYUVの各成分(xY、xU、xV)を重回帰分析して、重回帰式を得た。得られた重回帰式は、y=70.3*xY+32.0*xU+15.2*xV−256.6、重相関係数は0.909(p<0.01)であった。
【0065】
次に、前記248名に含まれない5名の女性被験者の頬部写真からYUV値を取得し、各成分のフラクタル次元を算出し、算出したフラクタル次元(xY、xU、xV)を前記重回帰式に代入して、肌の美しさの目視評価値(y)を算出した。
5名の女性被験者の頬部写真の目視評価値を前記方法と同様に得て、その結果を比較した。結果を表1に示す。これによると、フラクタル次元を用いた肌の美しさの目視評価値の推定値と肌の美しさの目視評価値は、極めてよく一致していることが分かる。
【0066】
【表1】
【0067】
<実施例3>
起伏値を用いた肌の美しさの目視評価値の推定
実施例1で頬部写真を取得した39名について、図5に示す頬部より市販のシリコンを用いて、中心部の2cm*2cmの肌のレプリカ標本を採取した後、株式会社サイエンスシステムズ社の高精度3次元画像処理装置LIP−50を用いて3次元起伏値のデータを得た。レプリカの中央部の1cm*1cmの領域について、y方向(縦方向)に10μmの間隔で1000本の走査を行った。LIP−50は、x方向とy方向のサンプリング周
期がそれぞれ9.4μm、10μmと異なるため、Sinc関数を用いて、xy方向の間隔が何れも10μmとなるように補完処理をした後、実施例1と同様にしてフラクタル次元を算出した(図3)。
【0068】
実施例1で得た前記の39名の頬部写真の肌の美しさの目視評価値(y)と、前記起伏値から算出したフラクタル次元(x)について回帰分析を行った。両者の相関関係を図11に示す。得られた回帰式は、y=63.2*x−127.2、相関係数は0.912(p<0.01)であり、有意で且つ高い相関関係を示した。
次に、33才の女性被験者の頬部のレプリカ標本から前記と同様にして得た起伏値からフラクタル次元を求め、前記回帰式に代入し、肌の美しさの目視評価値を推定した。この女性被験者のレプリカ標本から得た起伏値のフラクタル次元はD=2.32であり、肌の美しさの目視評価値の推定値は19.4であった。別途、肌の美しさについて目視評価を実施したところ評価値は20であり、良好な一致を見た。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によって、第三者の目に映る肌の見た目の美しさを客観的かつ簡便に鑑別することができるため、誰でも被験者の肌の美しさの目視評価値を推定することができる。本発明の方法や装置を用いることにより、肌のカウンセリング、手入れ方法や化粧料の選択などについてのアドバイスなどの現場で適切な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】ボックスカウンティング法における、分割の概念を示す図である。
【図2】ボックスカウンティング法のカウントの概念を示す図である。
【図3】フラクタル次元を示す図である。
【図4】本発明の肌の美しさの目視評価値の推定装置の一例のハードウェアブロック図である。
【図5】顔の計測対象領域の例を示す図である。
【図6】本発明の評価に用いる頬部写真の例を示す図である(写真)。
【図7】画像データの平滑化処理方法(マスクサイズ3*3)を示す図である。
【図8】レプリカから得た起伏値データをSinc関数により補正したものを示す図である。
【図9】各サンプルについて、R、G、Bの各フラクタル次元をプロットした図である。
【図10】各サンプルについて、Y、U、Vの各フラクタル次元をプロットした図である。
【図11】肌の美しさの目視評価値と肌のレプリカの起伏値のフラクタル次元との関係を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する工程と、
該表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する工程と、
予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を得る工程と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定方法。
【請求項2】
前記表色系の画像信号が、RGB値、YUV値又はマンセル(HVC)値であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記回帰式が、RGB値、YUV値又はマンセル(HVC)値を構成する各成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値を重回帰分析して得られた回帰式であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
肌の起伏値を取得する工程と、
該起伏値の分布のフラクタル次元を算出する工程と、
予め用意した前記起伏値の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を得る工程と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定方法。
【請求項5】
前記フラクタル次元が、ボックスカウンティング法により算出されることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ボックスカウンティング法におけるボックスサイズの決定が、ボックス内の前記表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分又は前記起伏値の標準偏差に基づいて行われることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する手段と、
該表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する手段と、
予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段と、
算出した目視評価値を表示する手段と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定装置。
【請求項8】
肌の起伏値を取得する手段と、
該起伏値の分布のフラクタル次元を算出する手段と、
予め用意した前記起伏値の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段と、
算出した目視評価値を表示する手段と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定装置。
【請求項9】
コンピュータを、
肌の表面の画像の表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上
の分布のフラクタル次元を算出する手段、
予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段、
として機能させるための肌の美しさの目視評価値の推定プログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
肌の起伏値の分布のフラクタル次元を算出する手段、
予め用意した前記起伏値のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段、
として機能させるための肌の美しさの目視評価値の推定プログラム。
【請求項1】
肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する工程と、
該表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する工程と、
予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を得る工程と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定方法。
【請求項2】
前記表色系の画像信号が、RGB値、YUV値又はマンセル(HVC)値であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記回帰式が、RGB値、YUV値又はマンセル(HVC)値を構成する各成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値を重回帰分析して得られた回帰式であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
肌の起伏値を取得する工程と、
該起伏値の分布のフラクタル次元を算出する工程と、
予め用意した前記起伏値の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を得る工程と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定方法。
【請求項5】
前記フラクタル次元が、ボックスカウンティング法により算出されることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ボックスカウンティング法におけるボックスサイズの決定が、ボックス内の前記表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分又は前記起伏値の標準偏差に基づいて行われることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
肌の表面の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する手段と、
該表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上の分布のフラクタル次元を算出する手段と、
予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段と、
算出した目視評価値を表示する手段と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定装置。
【請求項8】
肌の起伏値を取得する手段と、
該起伏値の分布のフラクタル次元を算出する手段と、
予め用意した前記起伏値の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段と、
算出した目視評価値を表示する手段と、
を含む肌の美しさの目視評価値の推定装置。
【請求項9】
コンピュータを、
肌の表面の画像の表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分について、画像上
の分布のフラクタル次元を算出する手段、
予め用意した前記成分の分布のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段、
として機能させるための肌の美しさの目視評価値の推定プログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
肌の起伏値の分布のフラクタル次元を算出する手段、
予め用意した前記起伏値のフラクタル次元と肌の美しさの目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、肌の美しさの目視評価値を算出する手段、
として機能させるための肌の美しさの目視評価値の推定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−252891(P2007−252891A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39696(P2007−39696)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(592155762)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(592155762)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】
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