説明

衣料製品特に下着用の生地半加工品

【課題】
異なる表面部分に異なる弾性特性を有しているにもかかわらず製造が簡潔で安く、好ましい装着快適性を有する、衣料製品用の材料半加工品を創造することである。
【解決手段】
補強領域(3)において上側材料(2)と下側材料(4)が接合されており、当該接合が前記二つの材料間に置かれた接着層(5a,5b,5c)によって形成された衣料製品用材料半加工品において、当該補強領域において異なるヤング率を備えた少なくとも二つの二次元部分(6a,6b,6c)を設けるために、低いヤング率を有する二次元部分よりも高いヤング率を有する二次元部分において接着層の単位面積辺り重量を高くすることによって解決している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブル部(おいて部)に係る衣料製品、及び、請求項18に係る衣料製品用の生地半加工品、特にそのような生地半加工品を備えた下着に関連している。
【背景技術】
【0002】
衣料製品は、通常幾つかの個々の部品を縫い合わせて作られる。衣類製造産業において、これら個々の部品は、予め作られた裁断パターンにしたがい、プログラム制御した裁断装置によって層材料又はストリップ材料(帯状材料)から切り抜かれる。
【0003】
以下に於いて生地半加工品と呼ばれるこれら個々の部品又は切り抜いた部品は、必要ならば補強を組み込むことが可能であり、切り抜かれるべき材料層には既にそのような補強帯が存在するか、又は、切り抜いた個々の部品に引き続き補強要素が設けられる。そのような補強要素の作用は、生地半加工品の様々な領域において、したがってそれから作られた衣料製品の様々な領域において、様々な理由から衣類製造者によって所望とされる、衣類材料の異なる縮度及び変形抵抗が創り出される。
【0004】
このための最も重要な理由の一つが、体の部分を、衣料製品の補助によって有利には形を整え、長所を強調し、短所を隠すことである。装着中のこの整形機能を成し遂げるために、「危機に瀕した」体の部分領域において、衣料製品を低い縮度で形成し、これによってこれら体の部分の丸みに対し抵抗をもたらし視覚的に魅力的な形をもたらすより高い剛性をもって製造される。一方で、それら形状支持効果にもかかわらずそのような衣料製品は装着快適性を制限してはならず、したがって常に純粋な布による解決策が好ましく、このためブラジャー分野から既に公知のワイヤ挿入物のような非布挿入物は用いない。
【0005】
整形機能と装着快適性という相反する要求を最も好ましくするために、今日、被服技術者及びデザイナーは、作成した生地半加工品の、ヤング率の値によって表現される縮度品質(弾性)を、生地半加工品の領域内ですら何段階にも渡って変更可能にすることを望んでいる。これによって例えば、高い剛性を備えた整形帯と低縮度の生地半加工品に、中程度の縮度を有する移行帯が続くことが可能で、次には、単にドレープ形成特性を有する柔軟でしなやかな端部帯に通じている、つまり、この端部帯は体をある形に維持することなく柔らかく包むべきである。
【0006】
生地半加工品の弾性特性を変化するための衣類産業での慣習は、多数の織物生地が利用可能であり、弾性のモデュライを含むその物理的−機械的特性を正確にもたらすという事実によってなされる。被服技術者は、適切に選択されたライニング材料と、装着者に面していて見えない内側の上側材料との、一つ以上の層を取り付けて所望の領域内に生地半加工品の弾性特性を適応させる際に、この公知の生地材料の広い範囲から選択することが可能である。
【0007】
しかしそのような材料組み合わせの一つの大きな利点は、補強されていない上側材料に比べて、補足的なライニング材料で補強された生地半加工品の表面部の内側に、補強していない被覆材料よりも高い一定のヤング率だけが備えられるということである。しかしながら、生地半加工品に沿って何段階にも渡って弾性を変化させることを望む場合には、所望の弾性に従い上側材料表面に選択した一層以上のライニング材料を取り付けることか、又は、様々な補強領域内の裏地として変化する弾性のモデュライを備えた様々な織物材料を用いること以外に選択肢は無い。
【0008】
ライニング材料を取り付けた縁領域における厚みの増加(第一の態様)と不均一な下側表面(第二の態様)の結果として、第一の態様は、装着快適性を実質的に制限し、さらに薄い上側層の場合にはライニング層が外側にかけて押し付けられてしまうという視覚的な不利益も有している。第二の態様は、衣類残業分野の既に高い競争市場において製造費用の上昇を招く、というのは、一方では様々な織物材料の組み合わせは材料保管費と材料購入費を増加させ、他方では所望の弾性段階の数によって幾つかのライニング材料を上側材料に、一般的には縫ってつけなければならず、結果としてより高い製造費用という結果になるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の課題は、異なる表面部分に異なる弾性特性を有し、それにもかかわらず製造が簡潔で安く、好ましい装着快適性を有する、衣料品用の生地半加工品を創造することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明に係る生地半加工品の場合、補強領域内において平坦となるように取り付けられた上側材料とライニング材料から構成され、上側材料とライニング材料との間の接合を生み出す接着剤の単位面積辺りの重量は、少なくとも二つの、補強領域の二次元部分において変化する。より高い単位面積辺りの重量を有する接着層の二次元部分では、上側材料と下側材料の複合材料の弾性は、単位面積辺りの重量がより低い二次元部分よりも低くなっている。
【0011】
ここで生地複合物の弾性というのはヤング率(弾性率)で表され、このヤング率は弾性に対して反比例する、つまり、弾性が高ければ高いほど生地複合物はより延びることが可能であり、ヤング率はより低くなる。したがってその補強領域内の材料複合物のヤング率はより高くなり、他の表面部分と比べてより多くの接着剤がつけられて、単位面積辺りの接着(剤)重量はより高くなる。
【0012】
補強材料半加工品の上側材料と下側材料は、それぞれ好ましくは伸縮性生地(ストレッチ生地)で構成され、これによって生地は弾性繊維を織って作られる。そのような伸縮性生地は、特にパンティーガードル、ガードル、ブリーフ、パンティー、ブラジャー等に加工される材料半加工品用に用いられる、というのは、その高い固有弾性(低いヤング率)の結果としてこれら材料は、いかなる体形にも完全に適応し、それにもかかわらず装着が容易で楽であるからである。伸縮性生地と比較して接着層のより低い固有弾性のために、本発明が初めに認識した、生地半加工品の補強領域内で接着層の使用量を、隣り合う生地内の弾性繊維の伸び率が様々な程度に変化するように変化させるという可能性が存在し、その結果、異なる「剛性」のサブ領域への補強領域の細分が次に成し遂げられる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態は、様々なデザインを可能とする、単位面積辺り重量を部分的に変化する接着層から特に構成される。製造技術の観点から特に簡潔な実施形態は、接着層の厚み関数として単位面積辺り重量を調節することを提案する。別の実施形態は、補強領域の様々な二次元部分に対して異なる接着剤を使用することを提案しており、これら接着剤は特に密度が異なっている。そのような解決手段の結果として、用いられる技術、及び接着剤の塗布及び硬化のために予め設定するパラメータを一定に保つことが可能となり、用いる接着剤を変化しさえすればよい。
【0014】
しかし本発明の特に好ましい実施形態は、接着剤を用いる際に二次元部分に渡る接着剤塗布パターンを変化することによって、接着層内における単位面積辺り重量の所望の段階的変化が与えられることを教示している。「塗布パターン」という用語は、以降接着層が上側材料と下側材料の間に配置される二次元的な構成を意味し、この構成は塗布パラメータを変化することによって容易に変えることが可能であり、例えば、噴霧処理中に噴霧ノズルから出る接着剤流が基材(ここでは上側材料と下側材料)に異なって塗布されるのである。この解決手段におけるヤング率の水準に対し、次に設定した塗布パターンの被覆面積率によって決定される、接着層の単位面積辺り重量も解決を与える。この被覆面積率が低ければ低いほど、つまり接着層内により多くの被覆していないフリーの隙間が存在すればするほど、接着層の単位面積辺り重量は減少し、これによって材料半加工品の補強領域内の接着剤被覆した表面部分のヤング率も低下する。例えば接着剤を全領域に渡って密着した接着フィルムとして塗布する場合には、この二次元部分における弾性と伸び率も、接着剤を点の形でのみ塗布した場合よりも明らかに低くなる。補強領域の個々の二次元部分における弾性損失を完全に回避するためには、そこに接着性中間層を完全に省くことが可能であり、その結果、そのような二次元部分の上側材料と下側材料とは互いに密接しないで重なり、且つ、装着した状態ではこれら二つの材料層は、接着層の低い伸び率によってそれらの弾性を制限することなく自由に伸びることが可能である。
【0015】
本発明の別の有利な実施形態では、異なる単位面積辺り重量の接着剤で覆われた補強領域の二次元部分におけるヤング率は、それぞれにおいて一様ではなく、力が縦方向に加わるか又は横方向に加わるかによって異なる値を有している。この方向別弾性は容易に実現することが可能であり、上側材料又は下側材料のストレッチ(伸縮)領域内の弾性繊維を好ましくは縦方向又は横方向に配向させる。これは体と接触する下着製品の場合に特に有利である、というのは、そのような場合には様々な体形に適応するためには縦方向よりも横方向に高い弾性が主に要求されるからである。本発明のさらに好ましい実施形態では、材料半加工品の横方向と縦方向における弾性の差は、接着層の塗布面積の調節にしたがい、特に個々に塗布する接着剤流の主な伸展方向に依存して、補強領域内で増加又は減少させることが可能である。
【0016】
技術水準から公知の実施例、及び、本発明に係る様々な実施形態を添付の図面に基づいてさらに説明する。この記載は例示に過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものではないことが理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】技術水準から公知の、様々に補強された二次元部分を備えたパンティーガードル用の材料半加工品の図である。
【図2】材料半加工品の補強領域を通る、図1の線II−IIに沿った断面図である。
【図3】本発明に係る、様々に補強された二次元部分を備えたパンティーガードル用の材料半加工品の図である。
【図4】本発明第一実施形態における、材料半加工品の補強領域を通る、図3の線IV−IVに沿った断面図である。
【図5】本発明第二実施形態における、材料半加工品の補強領域を通る、図3の線IV−IVに沿った断面図である。
【図6】本発明の、接着層を見えるようにするためにカバーライニングを取り除いた第三実施形態に係るパンティーガードル用の材料半加工品の図である。
【図7】材料半加工品の補強領域を通る、図6の線VII−VIIに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は技術水準から公知の、上側材料2から構成される材料半加工品1を表しており、粘着性のある二次元の補強領域3内において幾つかの下側層4a、4b、4cで覆われている。図1に示した実施例に係る生地半加工品1は、鏡面のカットアウト及び補強した材料半加工品を縫い合わせ、さらに二つの材料半加工品の中央接合領域に装飾性材料部品を縫い付けてパンティーガードルを形成することができ、上側材料2は装着者に面していないパンティーガードルの外側を形成し、一方で下側層4a、4b、4cを取り付けた補強領域3は内側にあって装着者の皮膚にあたって存在するため見えない。
【0019】
上側材料2と下側材料層4a、4b、4cは、好ましくは各々弾性繊維部分を備えた伸縮性生地で作られ、その結果、上着を通り抜けて外側まで押し付ける下着無しでパンティーガードルは装着者の体に密着して装着する。しかしながらパンティーガードルは、その固有弾性によって、決して体の各輪郭に当たって「受動的に」装着するのではなく、整形衣料製品として、特に腹、臀部及び尻のような「危機に瀕した」体部分を「能動的に」押して平坦にすると考えられる、つまり、パンティーガードルは対応する体部分のための整形器として作用すると考えられ、これによってより細く均一なシルエットを与えるのです。
【0020】
このため、そのようなパンティーガードルを製造するための材料半加工品1は、より高い整形力又は強度を補強領域3内に必要とする、つまり、上側材料2として機能する伸縮性生地の弾性は、この補強領域3内では減じられなければならないのである。図1に表した実施例のようなこの弾性の減少は、幾つかの層内で可能な限り生じると考えられており、その結果、補強領域3は次に低い、中程度の、及び高い弾性を有する二次元部分6a、6b、6cに分かれる。この有利な段階的弾性により、装着者の体に作用する整形力をより良く制御すること及び整形力をより系統的に利用することが可能となり、その結果、より高い装着快適性と共により良い整形結果を成し遂げることが可能となる。
【0021】
図2は図1の線II-IIに沿って横から見た図であり、補強領域3内においてこれら異なる弾性を技術水準から既に公知の材料半加工品1内においてどのように実施しているのかを表している。材料半加工品1内で補強領域3を作り出すために、異なる弾性を有し互いに境を定められた三つの二次元部分6a、6b、6cを順に有する上側材料2が、同じ数の、つまり三つの下側材料層4a、4b、4c上を覆って縫い付けられる。これら三つの下側材料層4a、4b、4cは二次元(部分)の面積について異なる寸法で作られている。上側材料2に直接接している第一の下側生地(材料)層4cは、三つの下側層4a、4b、4cのうち最も大きな二次元寸法を有している。この第一の下側材料層4cは、その上部縁において通し縫いによって上側材料2と接合され、その位置と寸法によって、生地半加工品1内の補強領域3の位置と寸法を決定する。
【0022】
第一の下側材料層4c内において、再度さらなる部分的補強を実施するために、第二の下側材料層4bが縫い付けられる。前記下側材料層4bは、その上部縁が第一の下側材料層4cの上部縁上にできるだけ厳密にそろうように、その形状と寸法を、第一の下側材料層4cの形状と寸法とに合わせられる。第一の材料層4cと比べて第二の下側材料4bが小さいためにその下に存在する下側材料層4bの上部縁に係る領域において、第二の下側材料層4bの上部縁10だけが一致する必要がない。この上部縁10は、第一の下側材料層4cによって形成された補強領域3の表面の内側に入り、上側層2上表面に下側層4cだけが縫い付けられている補強領域3の二次元部分6cと、上側層2上表面に二つの下側材料層4b、4cが縫い付けられている二次元部分6bとの間の境界を形成する。第二の下側材料層4bも同様に、その上側縁上で縫製によって第一の下側材料層4c及び上側材料と接合される。
【0023】
第二の下側材料層4b上において、補強領域3内に異なる弾性特性を備えた追加の二次元部分6aを創り出すために、再度第三の下側材料層4aが縫い付けられて、その(複数の)上側縁は、第一及び第二の下側材料層4c、4bの上部縁と大いに重なっており、この第三の下側材料層4aは、図2の断面図にしたがうと第二下側材料層4bの左側縁領域と同一面に、したがって第一の下側材料層4cとも同一面に縫い合わされている。この続く三番目の下側材料層4aが三つの下側材料層4a、4b、4cのうちで最も小さな二次元面積を有しているので、再度ではあるが、その下に存在する下側材料層4b、4cの上部縁と一致する必要はなく、第二の下側材料層4bによって覆われた領域内へ移動して配置され、この上部縁11は、上側材料2が二つの下側材料層4b、4cで覆われているところの補強領域3の二次元部分6bと、上側材料2が三つの下側材料層4a、4b、4cで覆われているところの二次元領域6aとの間の境界を形成する。
【0024】
上述したような幾つかの材料層4a、4b、4cの重ね合わせの結果、補強領域3を三つの二次元部分6a、6b、6cに分割することが可能となり、上側材料2上に存在する下側材料層4a、4b、4cの数は異なっている。これら二次元部分6a、6b、6cは、図2の断面図中において特に認識可能である。ここで右から左に、下側材料層4cを備えた二次元部分6c上に、二つの下側材料層4b、4cを備えた二次元部分6b、及び、三つの下側材料層4a、4b、4cを備えた二次元部分6aが続いて、その境界決定は、図1の上面図において、三つの下側材料層4a、4b、4cの縫製接合9、10、11の不一致配置によっても依然として認識可能である。
【0025】
重なり合った材料層の数の増加は、対応する複合材料のヤング率における増加に伴って生じる、つまり、複合材料がよりかたい又はより柔らかければ、より多くの材料層を有することになる。図2中の右側に配位した二次元部分6cでは、したがって材料半加工品1の補強領域3は最も高い弾性を有している、というのは、ここではたった一つの下側材料層4cが取り付けられているからであり、一方で図2の左側に配置した二次元部分6aにおける材料半加工品の補強領域3は最も低い弾性を有している、というのは、三つの下側材料層4a、4b、4cが既に上側材料2に取り付けられているからである。生地部品に対して上側材料2を様々な段階で補強するためのそのような技術が長い間公知であって広く用いられてきたが、図2の断面図から既に明らかな欠点が存在する。材料半加工品1は、いくつかの重なり合った材料層2、4a、4b、4cから成る高く補強された二次元部分6a、6bの寸法において比較的厚く、且つ嵩張らなければならない。これら高い材料厚みと、材料層2、4a、4b、4cを接合するために用いられる縫い目9、10、11と同様に下側材料層4a、4b、4cの縁領域において生じる厚み方向の急激な上昇は、装着快適性において不利な影響をもたらす、というのは、特に下着の場合、材料層4a、4b、4c並びに縫い目9、10、11は、装着者の皮膚と接触し、その結果、喜ばしくない圧力点を形成し得るからである。
【0026】
以下に図3〜7と関連して、本発明に係る材料半加工品8の実施形態を詳細に説明するが、当該実施形態は、図1及び図2の実施態様に示したような公知の材料半加工品1の先に述べた欠点を、驚くほど簡潔な手法で解決することができるものである。図1及び図2に記載の技術水準のより良い比較のために、図3中に示した本発明に係る材料半加工品も同様にパンティーガードル用の材料半加工品8に関しており、図1の材料半加工品1と同じ外寸を有しており、同様に補足的な材料半加工品と組み合わされて最終的にはパンティーガードルを形成することができるものである。
【0027】
この材料半加工品8は、図1のような技術水準に係る材料半加工品1と同様に、装着者の体について整形機能を実施するために同一の寸法で同一の位置の領域3において補強される。同様に図1と同調し、この補強領域3は、異なる弾性特性を有する三つの表面部分6a、6b、6cに分割され、装着者の隣り合った体部分を系統的に整形するのが有利である、というのは例えば、臀部及び尻に隣接するパンティーガードルの上側領域6a,6bは、大腿に隣接するパンティーガードルの下側領域6cよりも、より形状安定性を有するべきだからである。
【0028】
しかしながら、図3中の全体図から簡単に、図1及び図2に係る技術水準との機能の違いは明らかとなる。補強領域3の材料層2、4を通って圧迫する縫製接合がもはや存在しない。図1中のこれら縫製接合9、10、11は依然として、異なる弾性特性を有する三つの二次元部分6a、6b、6cの境界を明らかに視覚的に表し示しているが、図3の上面図からはこれら三つの二次元部分6a、6b、6cの境界の範囲は認められず、点線の補助線によって示されているだけである。
【0029】
図4、5及び7に係る補強領域3を通る断面図、ならびに図6に係るライニングカバー4を取り除いた図からのみ、異なる弾性を有する領域6a、6b、6c間の移行境界を見ることができる。異なる弾性を有する二次元部分6a、6b、6cが外側からはもはや直接認識できない理由は、一つの均等(均一)に構成された下側材料4だけが、補強領域3内の上側材料2に取り付けられているからである。この下側材料4は上側材料2と同様に、単層又は多層生地のいずれであっても良く、好ましくは伸縮性生地であって、補強領域3内において段階的な弾性特性のための補助機能を発揮するのみである。
【0030】
下側材料4が補強領域3の二次元部分6a+6b+6c全体に渡って均等であるので、その構造変化、例えば図1及び2に係る多層の実施によって、又は異なる材料の組み合わせによるその構造の変化は、所望とする弾性の段階化を実現するためにもはや用いることはない。下側材料4a、4b、4cの不均一な多層構造(図2に係る技術水準参照)と比べた利点は、単一の均一な下側材料4を使用する場合には、製造が容易で、材料半加工品8の材料挿入費用を安価にできるという点に在る。
【0031】
図4〜7から明らかなように、均一な下側材料4は、本発明にしたがって材料半加工品8の補強領域3内において上側材料2に接着される。洗濯可能でアイロン耐性のある繊維接着剤の急速な開発のお陰で、接着技術の利用分野がますます開かれてきている。衣類産業においてそのような接着剤結合が、公知のラミネート技術、例えば超音波ラミネーションと組み合わせられて、迅速、容易且つ安く製造可能であることもここでは有利である。
【0032】
しかし、本発明の核は、上側材料2と下側材料4との間に配置された接着層5a、5b、5cを接合手段として用いるだけでなく、補強領域3内における弾性特性を制御するための手段としても用いることから成る。ここでは、取り付けられた接着層5a、5b、5cの単位面積辺りの重量と、この接着層5a、5b、5cを含む複合材料のヤング率との間の相関関係が利用される。特に、同一の上側及び下側材料2、3に対する接着層5a、5b、5cの単位面積辺りの重量が高ければ高いほど、本発明に係る材料半加工品8の補強領域3内において上側材料2、接着層5a、5b、5c及び下側材料4から構成される複合材料のヤング率も高くなる。単位面積辺りの重量は、単位面積辺りに塗布された接着剤の量を表し、一般的にはg/mで与えられる。以下に於いて、異なる弾性特性を備えた二次元部分6a、6b、6cが単位面積辺り異なる接着剤重量を有しているが、これら二次元部分6a、6b、6c内の単位面積辺りの接着剤重量はそれぞれ一定である、これによって接着層5a、5b、5cは、これら二次元部分6a、6b、6c内で均一に分散する。
【0033】
装着中に、パンティーガードルの生地半加工品8は横方向Qと縦方向Lの伸び力を受ける。これら伸び力に対抗する効力は材料半加工品8の局所的ヤング率に依存し、ヤング率の値が大きくなるほど、材料半加工品8の対応する領域はその伸び力に抗するより大きな抗力を生じる。補強領域3において、三つの材料層、つまり上側材料2、接着層5a、5b、5cと下側材料4は上下に配置され、したがって平行接合と同様に、生じる伸び力は、これら個々の材料層の弾性に対応する多層の複合材料に渡って分散する。補強領域3内の多層の複合材料が、作用している伸び力が負荷された単層材料よりも実質的に変形が少ないので、したがって補強領域3内のヤング率は周辺の補強していない上側材料2のヤング率よりも大きくなり、その結果、単に下側材料4と結合することによって所望の補強効果が既に実現されるのである。
【0034】
しかし、単一の、均一に補強された領域3が所望とされるだけでなく、先に述べた理由により、異なる弾性を有する帯6a、6b、6cも補強領域3内に作り出されるべきである。技術水準では、この弾性の段階化は、異なる弾性を備えたライナー材料を用いるか、図1及び2にしたがってライニング層4a、4b、4cの数を増加又は減少することによって実現されたが、両者共に細密な製造技術を必要とし、したがって高価となる。
【0035】
図4〜7に係る本発明の材料半加工品8の様々な実施形態において、各々均一な構成の下側材料4が上側材料2に取り付けられ、弾性の段階化は上側材料2と下側材料4との間に配置した接着層5a、5b、5cの単位面積辺りの重量を単純に変えることによって成し遂げている。接着層5a、5b、5cの単位面積辺りの重量を増加した場合には、上側の弾性力は一定に維持しながら、対応する領域6a、6b、6c内の材料半加工品8の下側変形が成し遂げられる、というのは、接着層5a、5b、5cが、単位面積辺りの重量を増したことによって伸び力に対してより大きな抗力を与えるからである、つまり、接着層5a、5b、5cのヤング率はその面積辺りの重量と共に増加する。平行接合の場合の、複合材料の全ヤング率は、ここでは全材料層に対する均一な変形のために存在するのだが、各材料層のヤング率の数学的平均として生じるので、接着層5a、5b、5cのヤング率の増加は全ヤング率の増加を結果としてもたらす、つまり、材料半加工品8は接着層5a、5b、5cの単位面積辺りの重量を増加することによって全体的により硬くなる。このことは、材料半加工品8の補強領域3における弾性特性が、接着層5a、5b、5cの単位面積辺りの重量を選択することによって広い範囲に変更可能であることを意味している。
【0036】
図4〜7は、接着層5a、5b、5cの単位面積辺り重量のそのような変化が、補強領域3内での弾性の段階化を目的としてどのようにして実施され得るのかを例示している。
【0037】
図4の断面図にしたがうと、補強領域3の三つの二次元部分6a、6b、6c内において、接着層5a、5b、5cは各々異なる層厚みHa、Hb、Hcで塗布され得る。図4中左側に位置する補強領域3の二次元領域6a内において、接着層5aは最も高い層厚みHaを融資、一方で右側に位置する二次元部分6c内の接着層5cは最も低い層厚みHcを有している。これら二つの二次元部分6a、6cの間に位置する中間の二次元部分6b内では、接着層5bは、上記二つの領域部分6a、6cの層厚みHa、Hcの間の層厚みHbを有する。このように、図4から、三つの二次元部分6a、6b、6c内の接着層5a、5b、5cの単位面積辺りの重量はこの三つの段階において左から右へ減少し、左の二次元部分6aでヤング率は最も高い、つまり複合材料は最も硬く、一方で右の二次元部分6cでヤング率は最も低い、つまり複合材料は最も柔軟である又は弾性を有する。
【0038】
補強領域3の三つの二次元部分6a、6b、6cに渡る同様の弾性の段階化が、図5の断面図に概略的に示した別の実施形態にしたがい、異なる密度を有する接着剤5a、5b、5cを塗布することによって成し遂げられ得る。補強領域3の左縁に隣接する最も硬い二次元部分6aにおいて、上側材料2と下側材料4との間の接着層5aは高密度接着剤で構成される、ところが図5の補強領域3の右側縁に隣接する二次元部分6cでは、接着層は低密度接着剤で構成される。中間の二次元部分6bでは、接着層5bを形成している接着剤は、隣り合う二次元部分6a、6cの接着剤密度の中間密度である。したがってここでは、図4と同様、補強領域3は左の二次元部分6aにおいて最も硬く、右側の二次元部分6cにおいて最も柔軟である、ところが中央の二次元部分では材料半加工品8の硬度は二つの隣り合う二次元部分6a、6cのものの間にあり、その結果、材料半加工品8の補強領域3内において概ね連続した弾性の移行がもたらされる。
【0039】
接着層5a、5b、5cの単位面積辺り重量を調節するための特に簡潔な手法を図6及び図7で示している。図6は、図3と同様、本発明に係るパンティーガードル用材料半加工品8の全体図を、内側の上面図、つまり、装着した状態で実際に装着者の皮膚に隣接している側の上面図で表している。しかしながら接着層5a、5b、5cを見えるようにするために、下側材料被覆物4を除去した。しかしながら図6の線VII−VIIに沿った同一の図7に係る断面図においては、下側材料4も再度表している。よりよい比較のために、異なる弾性特性を備えた二次元部分6a、6b、6cは図1〜5と同一寸法にしており、ここでは接着層5a、5b、5cの単位面積辺りの重量変更が実施され、上側材料2上に接着剤が各々異なる塗布パターン7a、7b、7cでつけられている。図6において、材料半加工品8の上部縁に隣接する補強領域3の二次元部分6aでは、接着剤5aは網状の塗布パターン、つまり、縦方向L及び横方向Qにおいて互いに等距離で垂直に交差する接着剤線の塗布パターン7aで塗布された。したがってここでは接着層5aの単位面積辺りの重量はより高く、より厳密に言うと、接着剤5bが単に縞模様に塗布された、つまり横方向Qに等距離の接着剤線を専ら備えた縞模様に塗布された、底面に隣接する中央の二次元領域6bの、二倍の高さである。単位面積辺り接着剤重量の別の減少手法は、中央の二次元部分6bに隣接した、補強領域3の右の、弧の形をした二次元部分6cにおいて成し遂げられ、ここで接着剤5cは均一な点格子7cとしてのみ塗布され、これによって接着剤点間の距離は、補強領域3における他の二つの二次元部分6a、6b内の接着剤線間の距離よりも大きくなるように選択された。
【0040】
図6の線VII−VIIに沿って弧の形状に切ることによって、単位面積辺り異なる接着剤重量を備えた上記三つの二次元部分6a、6b、6cを、図7中に左から右に互いに隣接して配置して表示している。接着層5a、5b、5cの単位面積辺りの重量変化が、切断された接着線及び点の数及び距離によってここで明らかに見ることができる。網状の接着剤塗布パターン7aを有する二次元部分6aにおいて、中央及び右の二次元部分6b、6cにおけるものよりもより多くの接着剤線が切断されている。ここでは、接着層5aの単位面積辺り重量と、したがって材料半加工品8の剛性は最も高くなっている。右側の二次元部分6cにおいて、図6の線VII-VIIに沿った切断線にしたがって孤立した接着剤点5cだけが現れている。しかしながら上側材料2と下側材料4間の接合箇所の圧倒的に広い部分には接着剤が付いておらず、したがって、上側材料2と下側材料4との複合物の弾性は、接着層5cによって殆んど減じられず、これによって他の二つの二次元部分6a、6b内よりも明らかに高い。
【0041】
図に示してはいないが、当然ながら本発明の保護範囲に含まれている実施形態は、個々の二次元部分内、好ましくは中央における、つまり接着剤を備えた二次元部分6a、6b、6cによって囲まれた部分内において、接着層5a、5b、5cを全く省くことであり、それによってここでは下側材料4が上側材料2上にゆるく存在する。通常、下側材料4は上側材料2よりも高いヤング率を有しており、その結果、上側材料2の補強はそのようなゆるく隣接する配置によって既に成し遂げられ、単位面積辺り重量を先に述べたように変更した接着層5a、5b、5cによって、さらに段階的に増すことが可能となる。
【0042】
装着者のシルエットをより系統的に整形するためには、生地半加工品8の補強領域3内の弾性が縦方向L及び横方向Qに異なるレベルに設定されると有利であり、例えば上側材料2及び/又は下側材料4が伸縮性生地で構成され、したがってその弾性繊維が縦方向L及び/又は横方向Qに渡って好ましくは織られることによって成し遂げられ得る。
【0043】
しかしながら、縦方向L又は横方向Qにおける弾性の変化(シフト)も、接着層5a、5b、5cの塗布パターンによって成し遂げられ得る又は強化され得る。図6の中間の二次元部分6bにおける、例えば縞模様のような接着剤塗布7bでは、接着層5bは、接着剤が横方向Qに対して平行な線状に指向されるように塗布される。上側材料2と下側材料4とが縦方向L及び横方向Qにおいて同一の弾性を有すると仮定する場合、生地半加工品8の弾性は、横方向Qよりも縦方向Lにおいてより高くなるだろう、というのは、接着剤線5bが、縦方向Lの弾性伸びに対して殆んど抗力を与えないからである、というのは、その主な伸び方向がこれに垂直な方向、つまり横方向Qだからである。
【0044】
接着剤として、各生地に様々な塗布技術、例えばローラー塗布、噴霧塗布等を用いて全面に渡って又は図6で述べたような部分的表面に渡って塗布され、次に硬化され得る熱可塑性樹脂接着剤を用いることが好ましい。上側材料2と下側材料4との生地−生地接合の製造も、超音波接着技術によって実施することが可能であり、そのような場合には、接着剤は縞形状に塗布され、且つ、接合点において超音波ローラー発振器を用いることによって使用可能にされる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣料製品用材料半加工品(8)であって、
その補強領域(3)において下側材料(4)と接合される上側材料(2)を備えて構成され、
前記接合が接着層(5a,5b,5c)によって形成され、且つ、
この補強領域(3)内に少なくとも二つの、異なるヤング率を有する二次元部分(6a,6b,6c)を備えた前記材料半加工品(8)において、
接着層(5a,5b,5c)の単位面積辺り重量が、より低いヤング率を備えた二次元部分(6a,6b,6c)内よりも、より高いヤング率を備えた二次元部分内においてより大きいことを特徴とする、材料半加工品。
【請求項2】
上側材料(2)及び/又は下側材料(4)が弾性繊維部分を備えた伸縮性生地で作られることを特徴とする、請求項1に記載の材料半加工品。
【請求項3】
接着層(5a,5b,5c)の単位面積辺り重量を変化させるために、異なる層厚み(Ha,Hb,Hc)の接着層が用いられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の材料半加工品。
【請求項4】
接着層(5a,5b,5c)の単位面積辺り重量を変化させるために、接着層が異なる密度の接着剤で構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の材料半加工品。
【請求項5】
接着層(5a,5b,5c)の単位面積辺り重量を変化させるために、異なる塗布パターン(7a,7b,7c)の接着層が用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の材料半加工品。
【請求項6】
補強領域(3)の少なくとも一つの二次元領域(6a,6b,6c)内において、全面塗布パターンを有する接着層(5a,5b,5c)が用いられることを特徴とする、請求項5に記載の材料半加工品。
【請求項7】
補強領域(3)の少なくとも一つの二次元領域(6a)内において、格子様塗布パターン(7a)を有する接着層(5a)が用いられることを特徴とする、請求項5又は6に記載の材料半加工品。
【請求項8】
補強領域(3)の少なくとも一つの二次元領域(6b)内において、縞様塗布パターン(7b)を有する接着層(5b)が用いられることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の材料半加工品。
【請求項9】
補強領域(3)の少なくとも一つの二次元領域(6c)内において、点状塗布パターン(7a)を有する接着層(5c)が用いられることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の材料半加工品。
【請求項10】
補強領域(3)内の少なくとも一つの二次元領域(6a,6b,6c)が、接着層(5a,5b,5c)を含んでおらず、この場合下側材料(4)が上側材料(2)にゆるく当たって存在することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の材料半加工品。
【請求項11】
補強領域(3)の少なくとも一つの二次元領域(6a,6b,6c)において、ヤング率が、縦方向及び横方向(L,Q)で異なっていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の材料半加工品。
【請求項12】
縦方向及び横方向(L,Q)で異なっているヤング率の差が、接着層(5a,5b,5c)の塗布パターン(7a,7b,7c)によって少なくとも部分的に決定されることを特徴とする、請求項11に記載の材料半加工品。
【請求項13】
接着層(5a,5b,5c)が熱可塑性樹脂接着剤で構成されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の材料半加工品。
【請求項14】
接着層(5a,5b,5c)が超音波硬化性接着剤で構成されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の材料半加工品。
【請求項15】
上側材料(2)と下側材料(4)が、縫製によって補足的に接合されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の材料半加工品。
【請求項16】
下側材料(4)が、上側材料(2)よりも高いヤング率を有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の材料半加工品。
【請求項17】
上側材料(2)及び/又は下側材料(4)が、互いに接合された幾つかの材料層で構成されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の材料半加工品。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の材料半加工品(8)を備えて構成される、衣料製品、特にパンティーガードル、ガードル、ブリーフ、パンティー、ブラジャー等の下着製品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−42918(P2011−42918A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−184927(P2010−184927)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(508123319)トリンフ インタートレード アーゲー (16)
【Fターム(参考)】