説明

非穿孔性漏出手術

【課題】眼球に衝撃波ダメージも熱ダメージもほとんど与えることなく非穿孔性漏出処置を行うことを目的とする。
【解決手段】100μmより大きなスポットサイズおよび2.5−50J/cmのエネルギー密度を有するレーザビームを生成するレーザ光源、および該ビームを、眼球の外側から、眼球の部分をスキャンさせるよう構成された眼球有効位置コントローラと、を有する眼球に非穿孔性漏出処置を行うための装置であって、上記スキャンは、100μsを越える滞留時間で部分の各点をスキャンし、レーザ光源の波長、滞留時間、およびエネルギー密度は、レーザビームが眼球に衝撃波ダメージも熱ダメージもほとんど与えることなく、強膜組織と熱的に相互作用して、滞留時間内に強膜組織を厚さ5−30μmで気化させるように選択されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2000年5月8日にイスラエル国受領官庁に米国を指定して提出されたPCT出願「PCT/IL00/00263」(この開示内容は参照によりここに導入される)に対する継続出願である。本出願はまた、2001年11月15日に提出された60/331,402に対して119(e)に基づく権益を請求するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、レーザアブレーション(laser ablation)による緑内障治療の分野に関連している。
【背景技術】
【0003】
緑内障は、眼圧増大による視神経疾患である。この疾病のメカニズムは、完全には理解されていない。しかしながら、もっとも効果的な治療法は、例えば薬やインプラントを用いた眼圧低下であろう。これにより、視神経の損傷の進行は防止又は低減される。
【0004】
提案されている処置の一つに非穿孔性トラベクレクトミーがある。この処置では、シュレム管(Schlemm's canal)上に重なっている強膜を一部除去することで、目からの房水の流出を可能にする。目の中まで穿孔しないよう、強膜の厚みの一部のみを除去することが望ましい。しかし、このような処置をナイフで行うのは難しい。典型的には、眼圧は処置の完了後のみに計測されるので、この処置の効果はある程度の時間が経過した後に判断される。ナイフからの圧力によって眼球に外傷が発生すると、眼球がある程度回復するまで(例えば翌日)は、通常圧力は計測されない。SLTやALTといった、レーザを用いた処置の場合は、圧力は処置終了後に時々計測され、眼圧の突然の上昇は確実に起こらない。
【0005】
オ・ドネルの米国特許5,370,641号(この開示内容は参照によりここに導入される)には、エキシマ・レーザまたはエルビウム・レーザを用いてシュレム管および強角膜繊維柱帯上に重なっている強膜を融除し、それによって多孔性の膜を形成することが記載されている。レーザのスポットサイズ及び治療領域は記載されていない。この特許は、強角膜ベッド(corneoscleral bed)が十分な量だけ除去されれば、残った非常に薄いシュレム管および強角膜繊維柱帯から房水が出てきて、レーザのエネルギが流出する体液により吸収され、終点の自己調整が行われる、と主張している。
【0006】
この特許が発行されてから何年も経つが、この特許で示されている方法は、完全に満足できる処置が存在しない疾病である緑内障の処置に対する大きなニーズがあるにも拘わらず、広く利用されてはいない。可能な理由の一つは、641号特許はレーザを利用して、材料の極めて薄い(マイクロメートル単位)層を除去することである。さらに、浸出が始まると、それが微弱なものであっても、レーザは浸出の除去にのみ有効であり他の組織に対しては有効ではないが、同時に下層の組織に熱によるダメージを与える可能性がある。この熱ダメージは、後の傷の原因となる
【発明の概要】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態の一側面は、中間程度の厚さの組織の層(例えば5−30μm)を除去するアブレーション源を用いて、非穿孔性の漏出処置に影響を与え、またこれを制御する装置に関する。本発明の例示的な実施形態では、アブレーション源及びパラメータは、除去深さは所望の最終膜厚さよりも小さいが、所望の膜厚さが達成される前に起こることが予想されうる浸出時の厚さよりも大きくなるように選択される。本発明の実施形態では、アブレーション源は、浸出によって吸収される。選択的には、アブレーションのパラメータは、浸出が充分に速くアブレーション深さの厚さを有する層を生成する時は、アブレーション処置時間が自動的に短縮されるように選択される。本発明の例示的な実施形態では、アブレーション源は、一つ以上の有意なアブレーション深さを提供するだけの順応性を有するように選択される。
【0008】
本発明の例示的な実施形態では、レーザが、1.8μmで作動するダイオードレーザ、1316同位体レーザ又はエルビウム:YSGGレーザである。エルビウム:YAGレーザとは対照的に、例えば、上記のレーザは、エルビウム:YAGレーザの1−3μmという小さなアブレーション深さよりも大きなアブレーション深さを達成できる。また、これは予想される浸出の厚さが、多くの場合、膜が充分に薄くなる前に大きくなる。浸出厚さはパルス間隔によって決まるが、レーザパルスレート、熱ダメージ及びレーザパルスの創出によって潜在的に発生する衝撃波ダメージといった実用上の理由によって、実際はアブレーション処理にエキシマ及びエルビウム:YAGといったアブレーション深さの小さい(例えばμm単位)のレーザは使用できない。再度皮膚に覆われるフィールドでは、通常の(非同位体の)1216レーザが最も優れている、という点は留意されるべきである。このレーザは、最小のアブレーション深さ(炭化の程度が最低限となる)が約30−50μmと、ある程度変動し、これは幾つかの患者及び/またはプロトコルについては充分に正確であるとは言えない。加えて、皮膚に対しての適用とは異なり、膜及び/または他の眼球組織に対する熱ダメージは、例えば下層の回復組織の欠乏によって、すぐには回復せず、また傷状になりやすい、という点は留意されるべきである。
【0009】
本発明の実施形態では、装置はレーザスポットを用いて自動的に眼球のエリアをスキャナを備え、それによって全エリアにわたって融除を行う。選択的には、全期間にわたってレーザビームを使用して連続的に走査が行われる。スキャナを用いることの潜在的な長所は、比較的低価格のレーザを用いまたエリア全体をビームで走査して眼球の広いエリアに大量のエネルギを供給することが出来る点である。選択的には、例えば検流計スキャナのようなスキャナを伴うウルトラパルスレーザといったパルス状の1316レーザが使用される。
【0010】
スキャナを使用する他の潜在的な利点は、一様な浸出輪郭(又は他の所望の輪郭)が得られることである。アブレーションにより、組織の厚みを最終的に一様に形成してもよい。あるいは、一様な浸出が得られるように、異なる種類の組織又は領域が異なる厚みを有してもよい。いくつかのケースでは、融除された強膜又は角膜の厚みは、その下にある組織の種類に応じて変化するであろう。本発明のいくつかの実施形態では、所望の浸出レートは、処置及び/またはアブレーションのパラメータを制御する要因である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、浸出する房水を集めるために強膜および/または角膜でリザーバが融除される。
【0012】
本発明の一実施形態では、処置の監視を可能にするために、光学的コンバイナを使用して、レーザビームがビジュアルシステム(visual system)と光学的に結合される。処置を行っている医師がアブレーションを行っている領域を観察するために、ビジュアルシステムは、眼顕微鏡であってもよい。代替的又は追加的には、ビジュアルシステムは、自動ビジョンシステム(vision system)である。選択的には、光学的コンバイナは、医師がレーザ照準位置および/または走査領域を変更できるマイクロマニピュレータを備える。標準的なマイクロマニピュレータおよびビームコンバイナは、空間的に走査されたレーザビームからの入力をサポートしていない、という点は留意されるべきである。
【0013】
人による又は自動的なビジュアルシステムを使用してモニタリングを行うことの利点は、レーザビームの自動制限的挙動の発現をさらに要求することなく、房水が浸出するとすぐに眼球の特定の場所におけるアブレーションを止めることができることにある。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態は、センサ、例えば非穿孔性漏出処置をモニタリングするための自動ビジョンシステムの使用に関する。本発明の一実施形態では、ビジョンシステムは、融除された強膜または角膜からの体液の浸出を検出し、これにより、浸出点でのアブレーションを止めるべきであることを確認する。これにより安全性が非常に高くなる。代替的又は追加的には、ビジョンシステムは、眼球のいくつかの点でレーザの走査が低減される又はなくなり、一方、他の点では走査が続くようにスキャナ(またはレーザ)を制御する。
【0015】
本発明の代替の実施形態では、処置中及び/またはその後に圧力センサが眼圧の計測に使用される。この計測は、例えば連続的又は間欠的に行われてもよい。この計測は、処置を一時的に停止して実施する及び/または処置の遂行中に実施してもよい。幾つかのケースでは、圧力の低下は浸出の成功を示す。圧力が充分に低下しないことは、より広いエリアが融除されるべきであることを示している。圧力が過度に低下したことは、処置をすぐに停止すべきであることを示している。このセンサは、自動操作システムと連結されていてもよい。例えば、センサからの入力は、自動停止又はアブレーションのパラメータの変更に使用可能である。代替的には、センサは、アブレーションシステムを通じて又はそれ自身に対する(例えば、アラームを鳴らす圧力値をセットしておくことによって)アラームの生成に使用される。代替的または追加的には、センサは、例えば外科医が圧力の読み取りに基づいて新しいアブレーションパラメータを(例えば、適切な入力機器を使用して)アブレーションシステムに入力する、及び/または圧力値を入力してこれをアブレーションシステムに解釈させてパラメータを変更させる等の、手動操作に使用される。
【0016】
圧力センサの使用に対する代替又は追加として、アブレーションを続けるべきかどうかを決定するため、及び/またはどの様なパラメータ下で実施するのかを決定するために、アブレーション厚さセンサまたは強膜厚さセンサが使用される。
【0017】
本発明の例示的な実施形態では、圧力センサは非穿孔性のセンサであり、選択的には、眼球の外側と接触する。代替的には、例えば眼球を穿孔して体液の供給又は除去を必要に応じて行って眼圧をコントロールするシステムの一部として、穿孔性の圧力センサが使用される。
【0018】
本発明の幾つかの実施形態の一側面は、眼球プロテクタに関する。例示的な実施形態では、眼球プロテクタは、例えば物理的にレーザ光をブロックすることによって、レーザが所定のエリアからはずれてアブレーションが起こるのを防止する。選択的には、眼球プロテクタは、眼球に接着される。代替的又は追加的には、眼球プロテクタは、処置中は開状態を維持し、眼球内に一つ以上のフラップが形成される。代替的又は追加的には、眼球プロテクタは使い捨てである。
【0019】
それ故に、本発明の例示的な実施形態によれば、100μmより大きなスポットサイズおよび2.5−50J/cmのエネルギー密度を有するレーザビームを生成するレーザ光源、および該ビームを、眼球の外側から、眼球の部分をスキャンさせるよう構成された眼球有効位置コントローラと、を有する眼球に非穿孔性漏出処置を行うための装置が提供される。また、上記スキャンは、100μsを越える滞留時間で部分の各点をスキャンし、レーザ光源の波長、滞留時間、およびエネルギー密度は、レーザビームが眼球に衝撃波ダメージも熱ダメージもほとんど与えることなく、強膜組織と熱的に相互作用して、滞留時間内に強膜組織を厚さ5−30μmで気化させるように(すなわち最小アブレーション厚さが5−30μmとなるように)選択されていることを特徴とする。選択的には、装置は、レーザビームを使用して眼科処置中に眼球を観察する眼球用顕微鏡を有する。選択的には、装置は、前記顕微鏡によって観察される、除去される前記組織を表示するモニタを有する。代替的又は追加的には、装置は、前記レーザのサイトラインと顕微鏡のそれを混合するビームコンバイナを有する。
【0020】
本発明の例示的な実施形態では、前記位置コントローラは、前記レーザ光源と患者の眼球との相対位置及び角度を固定する眼球フレームを有する。代替的又は追加的には、前記位置コントローラは、前記レーザビームの入口と空間的に走査するレーザビームの出口を備えたスキャナを有する。選択的には、装置は、眼球上で所望のパターンで組織を除去するために前記スキャナを駆動する、制御回路を有する。選択的には、装置は、眼球上で前記手術の進行を監視し、進行信号を生成するセンサを有する。選択的には、装置は、
除去される組織の画像を取得するカメラと、
前記画像を処理するイメージプロセッサと、
を有する。代替的又は追加的には、装置は、前記進行信号を使用して前記組織除去状態の指標を生成する。選択的には、前記回路は、前記組織除去の制御ループを閉じるために前記指標を使用する。代替的又は追加的には、前記組織除去状態の指標は、組織除去エリアに残された組織の厚さを含む。代替的又は追加的には、前記組織除去状態の指標は、組織除去エリアに残された組織を通る浸出レートを含む。
【0021】
本発明の例示的な実施形態では、前記センサは眼圧を計測する。代替的又は追加的には、前記センサは非穿孔性のセンサである。代替的又は追加的には、前記センサは接触型のセンサである。
【0022】
本発明の例示的な実施形態では、前記制御回路は、前記センサから信号を受信する。
【0023】
本発明の例示的な実施形態では、装置はユーザ入力機器を有し、前記制御回路は、前記センサからの信号に相当する前記入力機器への入力内容を受信及び解釈する。
【0024】
本発明の例示的な実施形態では、装置は、前記コンバイナと一体となったフレームを有し、このフレームは前記レーザビームを前記眼球の少なくとも一部に対してブロックする。
【0025】
本発明の例示的な実施形態では、前記レーザ光源はCOレーザ光源である。
【0026】
本発明の例示的な実施形態では、前記レーザ光源は同位体1316レーザ光源である。
【0027】
本発明の例示的な実施形態では、前記レーザ光源はエルビウム:YSGGレーザ光源である。
【0028】
本発明の例示的な実施形態では、前記レーザ光源は波長が1.8μm近辺であるダイオードレーザ光源である。
【0029】
本発明の例示的な実施形態では、前記レーザ光源は、第2の可視波長の照準光を生成し、これは前記レーザビームと整列している。
【0030】
また、本発明の例示的な実施形態によれば、
眼球にフラップを、前記眼球のシュレム管に重なるように開け、
ショット毎に5−30μmの厚さの組織を融除するレーザを用いたアブレーションによって前記シュレム管に近接して浸出領域を形成し、
前記眼球の強膜内に且つ前記浸出領域と体液を介して繋がるようにリザーバを形成し、
フラップをクローズする、
非穿孔性の漏出処置を行う方法が提供される。選択的には、浸出領域の形成は、炭化した組織を前記浸出領域から除去することを含む。代替的又は追加的には、方法は、自動的にレーザで走査して形成することを含む。選択的には、自動的にレーザで走査することは、レーザが組織に与える効果に関する、走査の少なくとも一つのパラメータを自動的に制御することを含む。
【0031】
本発明の例示的な実施形態によれば、前記レーザはCOレーザである。代替的には、前記レーザは1316レーザである。代替的には、前記レーザはエルビウム:YSGGレーザである。代替的には、前記レーザは波長が1.8μm近辺であるダイオードレーザである。
【0032】
本発明の例示的な実施形態では、方法は、前記浸出領域の形成前に保護スティッカを前記眼球上に配置することを含み、前記保護スティッカは前記レーザの波長を許容する空間窓と融除されるエリア以外の部分に対して前記波長をブロックするボディを備えている。
【0033】
また、本発明の例示的な実施形態によれば、
眼球のシュレム管に近接して浸出領域を形成し、
前記浸出領域の形成に応答して前記眼球の眼圧を計測し、
前記計測に応答して前記形成のパラメータを変更する、
非穿孔性の漏出処置を行う方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の例示的な実施形態による非穿孔性漏出処置中の例示的な眼のアブレーション・システムの模式図である。
【図2A】レーザエネルギの強膜組織への吸収を図示したものである。
【図2B】レーザエネルギの強膜組織への異なる吸収を図示したものである。
【図2C】レーザエネルギの強膜組織への異なる吸収を図示したものである。
【図2D】本発明の例示的な一実施形態による、強膜手術におけるレーザエネルギの相対的な効率を示したものである。
【図3A】図1のシステムに適した例示的なスキャナの模式図である。
【図3B】本発明の例示的な実施形態による、図1のシステムのための例示的なマイクロマニピュレータの模式図である。
【図4】本発明の例示的な実施形態による非穿孔性漏出法のフローチャートである。
【図5】本発明の例示的な実施形態における露出されたアブレーション領域を見せている目の斜視図である。
【図6A】本発明の例示的な実施形態による、完成した浸出及びリザーバシステムの側面図および上面図である。
【図6B】本発明の例示的な実施形態による、完成した浸出及びリザーバシステムの側面図および上面図である。
【図7】本発明の一実施形態による、例示的な保護用フレームを図示している。
【図8A】本発明にいくつかの実施形態による、例示的な代替の眼球プロテクタを図示したものである。
【図8B】本発明にいくつかの実施形態による、例示的な代替の眼球プロテクタを図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、例示的で、非制限的な本発明の実施形態を説明する。図面において、異なる図面での同じ要素は同じ参照符号を付けられている。
【0036】
図1は、本発明の例示的な実施形態による非穿孔性漏出処置における例示的な眼用アブレーションシステム50の模式図である。
【0037】
はじめに眼球40を参照すると、システム50を用いた例示的な漏出処置は、強膜41のエリア31および/またはエリア30における角膜42の融除部分を含む。アブレーションのいくらかは、シュレム管34および/又は強角膜繊維柱帯32上に重なるエリアに対して行われる。図1において、エリア30のサイズは誇張されている。多くの処置において、エリア30はエリア31より非常に小さく、実質的には、シュレム管上に重なっている強膜41および角膜42の間の境界領域のみからなるであろう。しかし、いくつかの処置では、角膜から大きな部分が除去されるかもしれない。選択的には、スキャナは強膜エリアに渡ってレーザスポットを操作するために使用され、このエリアはこのスポットよりも大きい。例示的な漏出処置及び例示的なスキャナの詳細な説明は後述する。また、選択的なセンサ35、37及び/または39も示されている(後述)。
【0038】
アブレーション前のエリア30における強膜の厚さは、例えば1mmである。アブレーション後に望まれる強膜の厚さは、例えば10μmから50μmの間である。強膜組織の膜が完全な状態で維持されて、眼球自身に入ることによって生じる合併症の危険性を減少することが望まれる、という点は留意されるべきである。
【0039】
レーザによるアブレーションは、薄い層(例えば1−50μmの厚さ)内の組織に吸収される光によって作動し、光によって組織は加熱され、その結果、吸収した組織は爆発する。また、この爆発が起こると、爆発によって生じた衝撃波という手段によって、又は下層及び/または隣接する組織が吸収した熱によって、(一般には望まれない)ダメージが発生する。膜が充分に薄い場合は、膜を通って体液の浸出が起こり、それを覆う。この体液は、特に光の吸収及び熱の散逸特性について、一般に強膜の組織と極めて類似している。このように、体液は、強膜の組織と同じ方法及びパラメータで融除される。各種のレーザの波長に応じて、強膜の組織に対する異なる相互作用パラメータがあり、また、例えば商業用電源の変化するパワーレベルやパルスレートといった、レーザの物理的な制限によって生じる更なる機能的な制限が起こる。
【0040】
さて、異なるタイプのレーザは、強膜のアブレーション及び非穿孔漏出に使用されると、異なる効用が発生する、ということが分かっている。特に、レーザの2つの特性が興味深い。第1のものはアブレーション深さであり、これによって一度に融除される厚さが決まり、また第2のものは体液のアブレーションと強膜のアブレーションとの間のマッチングである。
【0041】
いくつかのケースにおいては、これら2つの特性に関して、アブレーションの自動制限が達成されるという、興味深い結果が得られている。例えば、レーザのアブレーションの深さが設定され、また体液と強膜のアブレーション特性が等しく、体液がアブレーション厚さに浸出するようにレーザの局所的なパルスレートが充分に低くなっている場合は、レーザパルスの繰り返しによって(自動的に増加する)体液の除去のみが起こり、強膜がさらに融除されることは無いだろう。いくつかのケースにおいては、しかしながら、自動制限的挙動は無効となるか、又は無意味なものとなる。様々なタイプのレーザが強膜の組織に照射された時の効果を図2A−2Cに示す。
【0042】
図2Aは、エルビウム:YAGといった吸収性の高いレーザが使用された状態を示したものである。符号43は、レーザパルス後に膜48を通過して浸出した体液を示したものである。符号44は、単一のエルビウム:YAGレーザパルスによって融除可能なエリアを示したものである。図示されているように、体液43の浸出速度がパルスレートを上回っていると膜48のアブレーションは継続しない。レーザの衝撃波及びパルスレートが制限されたレーザ自身によって生じるダメージによって、有効なパルスレートはさらに制限される。操作を行うことが望まれるのであれば、レーザの有効なパルスレートは、隣接したエリアからの浸出もまた融除されたエリアを覆うので、さらに制限される。
【0043】
図2Bは、例えば1216レーザといった、吸収性の低いレーザが使用された状態を示したものである。このレーザはアブレーション深さ44が大きく(例えば、エルビウム:YAGレーザの1−3μmに対して30−50μm)、また熱ダメージ深さ46が大きいという点で特徴づけられる。これによって、浸出の量は低く抑えられ、これは強膜を大きくアブレーションすることを防止しない。しかしながら、残存する強膜には熱によるダメージが生じるだろう。また、アブレーション深さが大きくなりすぎると、膜48の厚さを正確に調整することは困難となる。故に、膜48の厚さに応じて決まる浸出レートを正確に設定することはより困難である。実際には、レーザが不用意に強膜を通過して融除することによって、自動制限位置はスキップされる。しかしながら、多くのケースでは、例えば異なる厚さの膜を眼球の異なる部分で融除出来る程度に、大まかな概算は充分に良好であり、全体的な有効(例えば平均の)浸出レートは所望のものとなり、その時は強膜を過度に融除したり眼球を穿孔しないようになる。代替的又は追加的には、局所的なパルスレートが充分に低くなるように(例えばパルスレートや走査パターンを調整することによって)選択され、充分に厚い体液43の層が浸出して、これは融除される強膜組織の実際の量を制御するように機能する。
【0044】
図2Cは、例えば同位体1316レーザ、エルビウム:YSGG又は波長1.8μmのダイオードレーザといった、吸収性が中間程度のレーザが使用された状態を示したものである。アブレーション厚さ及び熱によるダメージは、特に所望の最終的な膜厚さと比較して相対的に小さいが、膜厚が目標に達していない時に起こる浸出よりは大きい。患者及び/または眼圧の違いによる浸出レートの違いが起こり、同一の膜厚及び/または浸出特性が望まれる場合であっても、処置中の体液の浸出レートが異なっていることが観察される、という点は留意すべきである。
【0045】
図2Dは、本発明の例示的な実施形態による、強膜手術におけるレーザの相対的な効率を示すグラフである。レーザによる最小のアブレーション厚さに対する膜48の厚さを示す単位Nを用いて、異なるレーザの比較が行われる。膜48の厚さは100μmに設定され、これにより、N=(100μm/アブレーション厚さ)となる。異なる厚さが選択された場合は、異なるN値が生成されるだろう。N及び(有効なアブレーションを得るための最小又は典型的な穿孔深さに基づく)アブレーション深さのより正確な表示は、以下の表に示される。片側のみのエラーバーは、予想される熱ダメージの深さを示す。2つのバンドが図に示されている。網かけされたバンドは、明確に制御可能且つ所望のアブレーションが可能なN値の範囲を示している。破線で囲われたより広いバンドは、かろうじて制御可能であるが、様々な応用が可能なものである。一般には、Nが大きくなると、より正確な制御が可能となるが、処置時間はより長くなり、最終の浸出が無いことによって制限を受けるという危険を伴う。Nが小さくなると、制御は困難となるが、より確実なアブレーションが達成できる。いくつかのレーザにおいては、パルス継続時間及び/またはパルスのエネルギを調整することによって、穿孔深さを制御することが出来る。しかしながら、多くのレーザはその物理特性によって制限され、及び/または、制御の程度は有用でないレーザを有用にするには不十分である。
【0046】
理解できるように、これらの指標は絶対的なものではない。例えば、所望の膜の厚さがより大きい場合は、一般にN値の小さいレーザがより有用である。N値の大きいレーザは、しかしながら、浸出が起きている時に自動制限を起こす可能性があり、従って、有効にするため、下記の浸出が最終効果には必要とされないものであるならば、浸出がその期間中にアブレーション深さの厚さに渡って起こるように、レーザは複数種類のパルスを提供可能でなければならない。また、衝撃波によるダメージまたは他の副次的な効果を防ぐいくつかの方法が要求されうる。従って、N値の他の有用な値(100μmの厚さに対応したもの)は、50、20、10及び6を下回る及び/または2、3、4、5、7及び10を上回る。一般には、あらゆる厚さに対して有用なN値は、厚さの設定時に望まれる精度によって決まり、前述の可能かつ有用なN値は異なる膜厚を用いて計算されたN値が採用される。
【0047】
前述のように、エルビウム:YAG及びエキシマレーザはそのアブレーション厚さが極端に小さく、また、1216は境界値を取り、ホルミウム:YAGのアブレーション厚さは極端に大きい。波長が1.8μmのダイオードレーザ、エルビウム:YAGG及び波長11.2μmの同位体1316は、(例えばエネルギを増大させることによる)厚さの調整を考慮した中間のアブレーション厚さを取り、また部分的に浸出が起こる状態であっても、最終の膜厚さのより正確な推定が行われる。他のレーザも同様に使用可能であり、それらは図2Dの領域及び線に示されるスペクトル特性(及び/または吸収特性)を有する。
【0048】
【表1】

【0049】
代替的には、浸出する体液に対して低い吸収性を、また強膜組織に対しては中間又は高い吸収性を有するレーザを選択してもよい。しかしながら、このレーザは所望の自動制限効果を有していない可能性もある。代替的には、複数のレーザ波長を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
レーザ光源は、図1にレーザ光源52として示されている。
【0051】
レーザ(又は他の光)と眼球との相互作用は、典型的にはそのアブレーションであり、特に低特性のアブレーションである。しかしながら、他の組織除去の相互作用、例えば気化及び凝結(また、その後にダメージを受けた組織が除去される)も同様に使用可能である。
【0052】
レーザ光源52は、低出力および/または視認可能な照準用レーザビーム(不図示)をさらに生成することであってもよい。照準用ビームは、アブレーション用ビームと同軸であってもよい。この照準用ビームは、ビーム54と位置合わせが行われている(boresighted)独立したレーザからなることであってもよい。
【0053】
本発明の一実施形態において、レーザビーム54は、実際に融除されるエリア30よりも寸法が小さいスポットサイズを有する。ビーム54は、さらに、スキャナ、例えば機械的、電気光学的、又は音響光学的スキャナを用いてエリア30上を走査されることであってもよい。例示的なスキャナの詳細については後述する。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、眼用顕微鏡58又は他の適当な光学機器を介して処置が監視される。本発明の一実施形態では、観察者62が顕微鏡58の接眼レンズ60を介してエリア30を覗く。代替的又は追加的には、処置は、CCDカメラのようなイメージャ(imager)64を用いて撮影される。
【0055】
本発明の典型的な実施形態では、ビーム54(及び/又はオプションである照準用ビーム)が、ビームコンバイナ70を用いて、イメージャ64及び/又は顕微鏡58の視線と光学的に結合されている。コンバイナ70は、ビーム54と顕微鏡58の視線の相対的な位置の変更を可能にするマイクロマニピュレータをさらに備えていてもよい。種々のタイプのマイクロマニピュレータを用いることができ、特定の一つについては後述する。例示的な実施形態において、相対的に視線を制御するためにジョイスティック72がビームコンバイナ70に備えられている。
【0056】
標準的な眼用ビームコンバイナと違い、コンバイナ70は、点光源ではなく、走査されているビームを受けることを予想されている。このため、コンバイナ70の光学系は選択的に、マイクロマニピュレータの入力軸の中心から±2、±4、又は±5mmのように、相当な範囲のビーム位置にわたってビームの照準を正確に合わせられるように設計される。
【0057】
イメージャ64により取得された画像(又は連続画像)は、種々に利用することができる。本発明の一つの実施形態では、取得されたイメージは、例えばディスプレイ66を用いて表示できる。代替的又は追加的には、取得された画像は記録される。代替的又は追加的には、取得されたイメージは、イメージプロセッサ68を用いて解析される。いくつかの実施形態では、画像および/または制御パラメータがインターネット又は他の通信ネットワークを用いて遠隔地に送信される。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態において、画像解析は、房水の浸出を検出するのに利用される。代替的又は追加的には、アブレーション用ビーム54(又は照準用ビーム)が指定された安全領域内にあることが画像解析により確認される。代替的又は追加的には、画像解析によりアブレーションの深さを、例えば立体画像、シャドー解析(shadow analysis)および/又は薄い組織はより透明であるということを利用して、検出する。次に、例えば、眼内に強い光を照射し、融除された組織からの相対的又は絶対出光量を計測することにより、組織の厚みを測定してもよい。さらに、例えばイオン泳動を用いて染料を眼内に入れ、浸出した房水の色の濃さを観察することにより浸出の程度が判断されてもよい。
【0059】
検出された浸出は、処置を行っている医師に、例えばディスプレイ66又は音響アラーム(不図示)を用いて、フィードバックを与えるのに利用してもよい。代替的又は追加的には、レーザ52を切る又はビーム54を例えばスキャナ56又はコンバイナ70で遮蔽してもよい。代替的又は追加的には、画像処理結果は、例えばスキャナ56の走査パラメータを制御することにより、制御ループを完結させるのに用いてもよい。
【0060】
いくつかのケースにおいて、レーザビームがうっかり眼球内へ穿孔するかもしれない。選択的には、このような穿孔は、目からの房水の流量(これは浸出によるものよりも流量が多い)に基づいて検出される。選択的には、処置は、穿孔性漏出処置として完了してもよい。代替的又は追加的には、少なくとも目の一部において穿孔が計画される。さらに、穿孔領域の又はその近くの組織を凝固させる及び/又は瘢痕化させる(scar)ようにスキャナを制御してもよい。
【0061】
本発明の一実施形態において、コントローラ74は、画像処理結果を受け取り、レーザ光源52、スキャナ56、コンバイナ70の適切な制御を行う。代替的又は追加的には、コントローラ74は、データの処理し表示するのに、及び/又は、処置を行っている医師から処置パラメータのような入力を受けるのに利用される。適当な入力デバイス76が備えられるであろう。
【0062】
図3Aは、システム50に適した例示的なスキャナ56の模式図である。レーザ光源52からのビーム54は、モータ102により駆動されるミラー100により第1軸方向へ走査される。第2のモータ106により駆動される第2のミラー104は、ビームを他の軸方向(直交していてもよい)に走査する。2つのミラーは、走査コントローラ108により制御されるであろう。走査は、ある規定された走査領域上において連続であってもよい。いくつかの実施形態では、同じスキャナを異なるサイズ及び形状の領域を走査するのに用いられるであろう。ビームアッテネータ110がエリア30及び31内の特定の走査場所に対してビーム54を選択的に減衰するようにさらに備えられていてもよい。アッテネータ110は、ワンセルアッテネータ(one cell attenuator)であってもよく、又は、空間変調器であってもよい。なお、ビームを走査するのに多くの異なるデザインのスキャナ、例えば回転プリズムを用いたスキャナや音響光学スキャナ(acousto-optical scanner)、を利用できる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態で実現されるであろうスキャナの他の潜在的な利点には、
(a)レーザ及び/又は近くの領域からの熱によるダメージを制限する;
(b)眼球の異なるエリアでのアブレーション深さを制御できる;
(c)眼球の異なるエリアでの浸出速度を制御できる;
(d)一様なアブレーションが望まれる場合には、一様な深さと組織の一様な厚さとで選択ができる;
(e)組織の種類に基づいて走査速度、強度、パルスレート及び/又は他のパラメータを変更する;及び/又は
(f)局所的なパルスレートを制御して、レーザの実際のパルスレートを、局所的な浸出レートおよび処置が自動的に制限されるべき所望の浸出レートに合わせること、
が含まれる。レーザ52とスキャナ56を同時に制御して種々の所望のレーザ効果を得るようにコントローラ74が使用されるであろう。
【0064】
図3Bは、本発明の一実施形態による、システム50のための例示的なコンバイナ/マイクロマニピュレータ70の模式図である。前述したように、本発明のいくつかの実施形態では、入力ビームが、空間上の単一の場所に固定されるよりもむしろ走査される。このため、コンバイナ70は、顕微鏡58の視線とビームとを、走査ビームの軸外の予期される位置範囲にわたって適切に結合するように設計されてもよい。
【0065】
図3Bに示されるように、ビーム54はコンバイナ70に入り、光学系120により光学的に処理される。光学系120は、ビーム54の焦点を制御し、要求されているように、ビームの焦点をエリア30及び31に合わせる。本発明の一実施形態では、ビーム54が顕微鏡58と同じ焦点面を有するように光学系120が構成および/または制御される。後述するように、これは手動により又は自動的に達成できる。
【0066】
顕微鏡58の光路の範囲は、囲い環124により定められるであろう。
【0067】
ビーム54は、例えば可視光に対して透明又は半透明であり、赤外光(又はレーザの波長)を反射するミラー等のビーム結合素子122を用いて顕微鏡58の光路と結合される。本発明の例示的な実施形態では、レーザビーム54と顕微鏡58の視野との相対的な配置が制御できるように、ジョイスティック72又は他の入力手段がビーム結合素子122を回転させるために備えられている。代替的には、走査エリアは、スキャナ6を用いて規定および/または移動される。この場合、より大きく及び/又はより広角度のビームコンバイナを備える必要があるであろう。代替的又は追加的には、スキャナ56は、コンバイナ70と一体化している単一ユニットとして備えられる。
【0068】
図4は、本発明の例示的な実施形態による非穿孔性漏出法のフローチャート200である。最初に、202において、目の結膜にフラップ26(図1)が形成される。204において、強膜41及び角膜42にフラップが形成される。このようなフラップは、メス、レーザ及び/又は専用の切断ツールを含む当該分野で知られている任意の方法を用いて形成することができる。
【0069】
図5は、本発明の例示的な実施形態における露出されたアブレーションエリア30及び31を示す目の斜視図である。本発明の一実施形態では、巻き戻り方向が異なるようなフラップが開かれている。したがって、フラップが閉じられたとき、一方のフラップの先端は、他方のフラップの底部の下になる。これにより、より強固なシールが可能となるだろう。示されている実施形態では、2つのフラップは、反対方向に開くが、他の角度関係、例えば直交関係であってもよい。代替的又は追加的には、いかなる隆起又は炎症もレンズにあまり影響を与えないように、強膜フラップ27の端部は例えば強膜41上にある。代替的には、フラップ27の端部は角膜42上にある、又は、代替的には、強膜と角膜の間の境界上にある。
【0070】
205において、使用しようとするツールがアブレーション領域用に較正される。いくつかの実施形態において、ツールは処置の開始前に較正され、および/または処置中に定期的に再較正される。典型的な較正には、ビーム強度、スキャナ/コンバイナの位置合わせ、及び/又はレーザ焦点面が含まれる。レーザ焦点面の較正は、顕微鏡焦点面の設定と共に行ってもよい。代替的又は追加的には、焦点距離を変えるためのレンズ及び/又は他の光学素子を含む焦点距離可変型コンバイナが利用される。
【0071】
ターゲット領域は、例えばミラー122(図3B)上のマーキングとして示されてもよい。代替的又は追加的には、目の画像と、レーザビームの推定位置又は想定位置を示すコンピュータ表示が提供されてもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータにより生成され、例えば走査パラメータを示す表示は、顕微鏡58と組み合わせられ、観察者がその表示を顕微鏡を介して観察できるようにしている。
【0072】
個々の実施例によって、顕微鏡58および/またはコンバイナ70(これは顕微鏡58と一体のユニットであってもよい)は、目40および/または融除されたエリア30及び31と接触していてもいなくてもよい。
【0073】
後述するように、本発明の例示的な実施形態では、房水の浸出を可能にする浸出領域220(下記の図6)及び湧き出た体液を吸い取られるまで溜めるリザーバ領域222(下記の図6)の両方が形成されるであろう。これらは、同一の走査の一部として同一の走査設定で、又は別個に形成されてもよい。他の実施形態では、浸出領域のみ形成される。一般的には、これらの領域は、治療が完了したときに組織のフラップで覆われる。
【0074】
206において、浸出領域220は、シュレム管34および強角膜線維柱体34上に重なるエリア30内で融除される。房水が浸出しない場合(208)には、アブレーション・ステップが繰り返される。本発明の一実施形態では、いったん浸出が検出される又は最小限の浸出が検出されると(いずれも手動により又は自動的に検出されうる)、アブレーションが止められる。本発明の他の実施形態では、浸出が検出されたところではアブレーションが止められるかゆっくり行われるが、エリア30および/または31の他の領域では続けられる。エリア30において実際に融除されたエリアよりも小さな最小限の浸出領域が形成されてもよい。このように、アブレーションは閉回路式、すなわち、反復される、又は、少なくともリザーバについて、例えば予め定められたレーザビームの設定に基づいた開回路式のアブレーションを同様に行うこともできる。
【0075】
一般的に、エリア30内の組織は非一様な厚みを有し、浸出がより少ないエリアをより多く融除することにより、一様に薄い漏出エリアを形成することができる。あるいは、一様な(又は他の輪郭の)浸出分布を得ることができる。また、浸出に適合したアブレーション(percolation-adapted ablation)によれば、組織のレーザに対する感度に走査パラメータを合わせることができる。サブレーションを制御するために、以下の走査パラメータの1以上をアブレーション領域に沿って変えてもよい:
(a)スポットサイズ。より大きなスポットサイズは、分解能が低く、単位面積当たりのエネルギが少ない。いくつかの実施形態では、非円形のスポット、例えば楕円形、三角形、六角形および矩形が利用される。代替的又は追加的には、スポットのパターンを与えてもよい。このようなパターンは例えばガウシアン又は一様等の連続的なものでもよく、又は例えば市松模様等の離散的なものであってもよい。典型的な円形スポットサイズは、0.1mmと1mmの間であり、例えば0.8mmである。
(b)滞留時間(dwell time)。走査測度を変化させることにより、未だ浸出がない場所ではより多くのエネルギを加え、これ以上のアブレーションが望まれていない場所ではより少ないエネルギを加えることができる。典型的な滞留時間は、100μsと1000msの間であり、例えば400μsである。
(c)ビーム強度。これは、例えばレーザ光源を変調することにより、又はアッテネータ110若しくは光路上のどこかの他のアッテネータ(一様又は空間変調を行う)を用いて制御することができる。アッテネータは、例えば周波数選択特性を有する又は適切な物理的な場所を有し、アブレーションを行うビームのみを選択的に減衰させる(そして付随的な照準用ビームは減衰させない)こととしてもよい。いくつかのケースでは、走査の一部においてビームを遮断してもよい。典型的なレーザ光源ビーム強度は5Wおよび15Wの間である。眼球に導入されるべき実際の強度は、例えば滞留時間(およびスポットサイズ)、眼球組織の年齢、および望まれる効果の種類(例えばアブレーションか凝固か)等の種々のパラメータによって決まる。特に、ビーム強度の上昇によって、アブレーションの厚さが増大する。
(d)ビーム位置およびスキャンのパターン。いくつかの実施形態では、ビームは、ビームの効果に拘わらずエリア全体を走査する。あるいは、浸出領域および/または要求されるアブレーションに合わせるために、ビームは、特定の場所をスキップする及び/又は走査中に走査エリアの形状を変えてもよい。
(e)走査経路。いくつかの実施形態において、ある場所でアブレーションが繰り返される間にその場所での浸出を検出するのに十分な時間があるように走査経路が選択される。代替的又は追加的には、走査経路は、領域内のいくつかの場所で浸出が始まるのに応じて変えられる。選択的には、走査経路は、自身と、例えば10%、オーバーラップする。典型的な走査経路は、列状である。選択的には、走査は、列の間がより大きく離れるように、互い違いになっている。列の方向は、各列反対でもよい。
(f)走査形状。種々の浸出形状および/またはリザーバ形状を得るために、種々の走査形状を利用してもよい。
(g)パルス長、パルス・エンベロープ、およびパルス繰り返し率のようなレーザ・パルス・パラメータ。いくつかの実施形態では、パルスレーザが利用される。レーザがパルスビームを生成してもよいし、連続パルスビームをさらにテンポラリーに変調してもよい。ある例示的な実施形態では、CWレーザが用いられ、1μsと1msとの間のパルスを出し、繰り返し数が1Hzと1kHzの間となるように変調される。あるいは、連続ビームが目に与えられる。
(h)局所的なパルスレート。これはいくつかのパラメータを合成したものであり、レーザパルスが特定のエリアと接触するような速度を定義するものであり、また結果としてパルスとパルスの間で浸出が起こる時間を定義するものである。局所的なパルスレートを所望の浸出レートに合わせることにより、膜48の厚さは設定されるか、少なくともより近い値に設定される。
【0076】
イメージプロセッサ68を用いて浸出を検出する代替又は追加として、他のフィードバック機構が、アブレーションの制御、アブレーションパラメータの設定及び/またはアラーム信号の提供のために使用可能である。強膜の厚さ及び/またはアブレーションの深さを検出するためにイメージプロセッサ68は選択的に使用される。深さ及び間隔を計測するいくつかの方法、例えば立体鏡イメージング、或いはサイドライト(図示せず)から投射された光による影又はパターンの変化から検出するものは当業者にとって既知である。代替的又は追加的には、例えば光学センサ又は超音波反射を用いたものといった、例えば浸出の検出又は強膜の厚さ又はアブレーションの深さを計測する、選択的な特定センサ37(図1)が使用される。例えばマッピング(例えば全体的な又は局所的なアブレーションのパラメータを設定するために)のために、厚みセンサがまた、処置に先立って使用されてもよい。
【0077】
代替的又は追加的には、光学接触センサ35(図1)は、例えば眼球の房水からの超音波の反射のタイミングを用いたものであり、強膜の厚さの計測に使用される。代替的又は追加的には、センサ35は(例えば流れの検出や湿度によって)浸出を検出し、また、融除されないエリアに配置されている。選択的には、接触センサは手動操作によって、レーザの放射がそこに入射しないように位置決めされる。
【0078】
アブレーション又は浸出を直接モニタリングする代替又は追加として、光学センサ39(図1)を眼球40の圧力測定に使用してもよい。例えば眼球に圧力を加える必要のあるものといった、様々なタイプの圧力センサが利用可能である。このようなセンサは、このような(変形を起こしうる)圧力と処置の困難性または眼球からの流れを強制的に起こすこととの相互作用のおそれがあるため、以前は手術中には使用できなかった。本発明の例示的な実施形態の潜在的な長所は、処置の一部の効果からリアルタイムまたはほぼリアルタイムでフィードバックを受けることができ、その結果、より有効に調整された効果を眼球に与えることが出来るようになる。
【0079】
浸出が起こると、眼圧の低下が予想される。しかしながら、一定の時間が経過すると、この圧力は上昇する、定常状態を維持する、低下する、或いはしばらくの間振動する。圧力が定常状態となるまでの時間は、数週間かかることもあれば数分で済むこともある。しかしながら、いくつかの条件下(例えば初期圧力、アブレーションパターンのタイプ、反応スピード、反応の程度)では、圧力の挙動が推量されることが予想される。選択的には、圧力輪郭の異なる変化量が蓄積され、(例えば輪郭と結果のデータベースに追加することによって)異なるコンディション下での浸出の程度を特定するために使用される。本発明の例示的な実施形態では、急速な圧力減少と長期間に渡る圧力減少という、2タイプの圧力減少が識別される。このため、例えば、浸出が最初に起こると、圧力が低いレベルに低下する事が予想される。この識別は、いくつかのケースでは、圧力の指数的な減少という単純なモデルであってもよい。いくつかのケースでは、例えば、予想される最終の圧力及び所望の圧力が12mmであった場合であっても、圧力が16mmとなった時に処置は停止される。他のケースでは、処置は12mmで停止し、圧力は次いで16mmに上昇し、定常状態の最終の圧力となる。選択的には、眼圧減少の検出は、アブレーションのパラメータの自動調整及びアブレーションの停止に使用される。例えば、圧力の減少が発見されると、アブレーションパターンエリアが減少する。代替的には、圧力の減少が不十分であれば、アブレーションパターンが拡大する及び/またはパルス又は走査パラメータ(例えばここに記載されているようなもの)が変化する。単純なケースでは、圧力の変化は、処置を停止するかどうかを決めるために使用される。
【0080】
センサ(またはイメージングシステム)からの入力が、実施状態に応じて、手動操作で又は自動的に使用される。例えば、コントローラ74は、自動的にこのようなセンサからの入力を分析し、これに応答する。代替的または追加的には、ユーザがセンサ出力を読み取って、例えば入力機器76を使用してコントローラ74に新しいパラメータを入力する。代替的又は追加的には、ユーザがセンサ出力を入力機器に入力し、コントローラ74はこの入力内容を分析して応答内容を決定する。このようなユーザを介した手法の潜在的な長所はセンサとアブレーションシステムを電気的に連結する必要がない事と、あらゆる既存のセンサが使用可能である事である。
【0081】
圧力のプロフィールを蓄積する代替又は追加として、浸出が開始および進行するとアブレーションレートが低下するという知見に基づいて、アブレーションレートのプロフィールが蓄積される。このようなアブレーションのプロフィール(例えば厚さのプロフィール)を、処置の進行を査定する及び/またはアラームの状態を初期化するために使用してもよい。
【0082】
210では、リザーバ222(図6)が随意に作られる。浸出をリザーバの深さの検出に用いる代わりに、レーザエネルギの照射量に基づいて見積ってもよいし、イメージプロセッサ68を用いて判断してもよい。いくつかの実施形態において、リザーバ222は、浸出領域220を作っている間又はその前に作られる。
【0083】
図6Aおよび6Bは、本発明の例示的な実施形態による、完成した浸出(220)及びリザーバ(222)システムの側面図および上面図である。
【0084】
図6Aは、フラップ26及び27が閉じられた後の状態を示している。図6Bは、フラップが破線で示されている上面図である。
【0085】
示されているように、リザーバ222と浸出220とは、異なるジオメトリ(geometry)を有する。このジオメトリには、異なる形状、サイズ及び/又は深さが含まれていてもよい。典型的な実施形態では、浸出領域220は3×3mmであり、リザーバ222は5×3mmである。浸出領域の代わりの例示的なサイズは、2〜5mm×2〜5mmである。リザーバ222の代わりの例示的なサイズは、3〜5mm×3〜5mmである。領域の実際のサイズは固定されてもよい。あるいは、一方又は双方のサイズは、患者の特性、例えば目のサイズ、年齢および眼内圧力に基づいて前もって決定される。代替的又は追加的には、実際のサイズは、処置中、例えば浸出速度に基づいて決定してもよい。代替的又は追加的には、浸出領域220及び/又はリザーバ222のサイズは、後の処置において調整(上げる又は下げる)してもよい。
【0086】
しかし、非矩形形状、例えば円形、楕円形、又は多角形(例えば3から10面の間)を与えてもよい。特に、例えばリザーバ222及び/又は浸出領域220に異なる周囲長−面積比を与えるために、凸面及び凹面のどちらの形状を与えてもよい。代替的又は追加的には、少なくとも一方の領域の一部は、複数の細長い領域として与えられてもよい。
【0087】
連続したリザーバ及び浸出領域に対する代替として、それら2つは、1以上の溝部、例えば強膜を融除して作られた溝部により隔てられていてもよい。
【0088】
いくつかのケースにおいて、アブレーションにより目の炭化や破片の堆積が生じるかもしれない。このような炭化は、流体や拭き取り具を用いて拭き取ることとしてもよい。
【0089】
フラップを閉じる前に、スペーサを挿入し、いくつかのスペーサは生体吸収性材料からなることから、少なくともスペーサが吸収されるまで、リザーバ222及び/又は浸出領域220を開いた状態(212)に維持することとしてもよい。典型的なスペーサは:
(a)スター社のアクアフロー、コラーゲンからなる;
(b)コーネル社のSK−ジェル、網状ヒアルロン酸からなる;
(c)種々のデザインのヒドロゲルインプラント;
(d)眼組織の採取した又は使い残した片から形成された強膜インプラント
である。
【0090】
スペーサに対する代替又は追加として、組織の内方への成長を遅らせるために、融除された領域に抗代謝性(anti-metabolic)の材料を与えてもよい。典型的な材料には、一般的に湿らせたスポンジを2〜3分接触することで与えられるマイトマイシン、及び一般的に処置後の一連の結膜下注射により与えられる5−フルオロ−ウラシル(5FU)、が含まれる。
【0091】
214では、フラップが閉じられ、例えばレーザ、接着剤または縫合によりシールされる。
【0092】
走査に対する代替として、本発明の一実施形態では、アブレーションエリア全体をカバーするような大きなスポットサイズが用いられる。例えば、十分に融除された領域においてのみ浸出した房水によりレーザ光が吸収されるというメカニズムにより、融除されたエリアの浸出が生じている部分でアブレーションが止まるようにしてもよい。
【0093】
走査に代わる他の手段として、処置はフリーハンドで行ってもよい。プローブ内に一体型スキャナをさらに備えてもよい。照準用ビームが、これは走査されてもされなくてもよいが、走査範囲を示すのに用いられてもよい。
【0094】
本発明の例示的な実施形態では、レーザと強膜の相互作用による自動制限的挙動は、レーザ及び確実性の程度によって決まる、制御特性または安全特性として使用される。一例では、自動制限的挙動は、制御特性として使用される。レーザは、所望の膜が形成されたときの浸出レートと等価なアブレーション深さを有するように(例えば、パワーやパルス長さが)セットされる。この浸出レートは、例えば眼圧及び/または患者に対する以前のまたは同一の手術の結果といった他のパラメータによって決まってもよい。他の可能なセッティングとしては、強膜内のアブレーション深さと体液内のそれとの間に適合させるものがある。このセッティングは、例えば強膜又は眼球内の体液が染色されるか或いはそのレーザ波長で明確に異なる吸収を得るかどうかといった、変化を伴う。選択的には、走査のセッティングは、予想される浸出レートと適合する局所的なパルスレートを提供するために調整される。本発明の例示的な実施形態では、パワーのセッティングは3J/cmであり、パルスの継続時間は1msである。パルス継続時間がこの値でパワーが10又は20J/cmといったより高い値を取る場合は、アブレーション深さはより大きくなる。従って、同位体COレーザにおける例示的な継続時間は1−2000μsである。例示的なパワーレベルは2.5−50J/cmである。対照的に、エルビウム:YAGは1.5Jで動作するが、望ましくない自動制限的挙動を示す。正確なパワーのセッティングは無論、正確なレーザのスペクトル波長及び/または強膜の吸収特性によって決まる。また、強膜及び/または浸出している体液(例えば眼球の)は染色されて所望の吸収特性を有するようになる。
【0095】
処置は上記のごとく実施される。浸出が充分に速い場合は、アブレーションは、効果的に停止し、オペレータはレーザを停止することが出来る。代替的には、自動ビジョンシステムが使用されて、強膜への更なるアブレーションを行わないことが決定すると処置が停止する。
【0096】
安全な方法においては、同一のセッティングが成されるが、オペレータはシステムを信用していないか、体液へのアブレーションの繰り返しは熱によるダメージの原因となるのではないかと心配している。或いは、オペレータはアブレーション深さをセットして体液が出るまで融除を行い、ついで(例えばあまり使われない手動操作の「ザップ(zap)」インストラクションを利用して)より少ないレートでアブレーションを行う、及び/または浸出レートが正しい値を示すようになるまでアブレーション厚さが小さくなるようにセットする。オペレータが間違いを起こした場合は、アブレーションによって強膜に穿孔は行われるべきではなく、例えば自己的制限が起こる。
【0097】
異なるパラメータを伴う同一の処置を広範な患者に適用してもよい、という点は留意されるべきである。これらの患者は、例えば異なる浸出レート及び/または異なる目標浸出レートで特徴づけられてもよい。例えば、非穿孔の漏出処理を予防的な計測としてまたは眼圧がわずかに(例えば14mmHg−21mmHgまたは30mmHg以下)上昇した患者に適用してもよい。
【0098】
図7は、本発明の一実施形態による、例示的な保護用フレーム300を図示している。フレーム300は、顕微鏡58に随意に取り付けられ、レーザ光が、アブレーションエリア30及び31の外側、及び/又はそれらの回りに規定されている安全領域に達しないように遮蔽する。代替的又は追加的には、フレーム300は、患者に取り付けられてもよい。示されているように、フレーム300は、フレームを取り付けるための取り付け用延長部302と、本実施形態の場合4つの棒状部から形成されたフレーム304とを備える。これらの棒状部は、示されているよりも幅広であってもよく、及び/又は、例えば使い捨て型の(フレームに)接着可能な幕のようなカーテンがそれらに取り付けられていてもよい。要求される処置の焦点距離は、フレーム300を用いて設定されてもよい。距離調整ネジ306をさらに備えてもよい。代替的又は追加的には、フレーム及び融除可能な領域の形状および/またはサイズを制御するために、フレーム形状調整用のネジ308を備えてもよい。いくつかの実施形態において、フレーム300は、例えば柔軟なワイヤにより形成されており、矩形ではない。代替的又は追加的には、フレーム300は、ビーム54に対して以外は、半透明であってもよい。一例では、フレーム700は、レーザ作用領域を規定する透明なプレート用のホルダー(例えばクリップ)を備える。
【0099】
図8Aおよび8Bは、本発明にいくつかの実施形態による、2つ例示的な代替アイプロテクターを図示している。
【0100】
図8Aは、開口タイプのプロテクタ400を示す。これは、レーザ光を遮蔽するボディ402とレーザ光を通過させる開口404とを有する。本発明の一実施形態では、ボディ402は柔軟で接着性があり、例えばシリコンラバーシートからなる。選択的には、ボディ402は、目40にくっつけられたときに、フラップ26および27を開けた状態に維持する。柔軟である代替として、ボディ402は、硬質であっても、塑性変形可能であってもよい。接着剤に対する代替として、他の取り付け方法、例えば縫合、吸引、及び/又は、眼球の表面および/またはボディ402の機械的特性に基づく眼球表面への自動付着、が代わりに利用されてもよい。プロテクタ400は、使い捨て可能であっても、消毒可能であってもよい。選択的には、開口404(又はウィンドウ410、後述)が、アブレーションエリアの形状、及び/又は、例えばフラップがレーザを用いて切断される場合にはフラップの形状を規定することとしてもよい。
【0101】
図8Bは、ボディ412を有するウィンドウ型プロテクタ410を示す。ボディ412は、ボディ402と同じであってもよい。しかし、開口404の代わりに、レーザ光の選択的透過のためのウィンドウ414が備えられていてもよい。示されているように、ウィンドウ414は、例えば、選択的には光路と接触するために顕微鏡の方へ、及び/又は例えばエリア30及び31に嵌るように眼球の方へ、突出していてもよい。あるいは、平坦なウィンドウが備えられてもよい。本発明の例示的な実施形態では、ウィンドウ414は、レーザ感応材料から形成される。レーザ感応材料は、所定量のエネルギがこれに照射された後に不透明になり、眼球への不慮のダメージを防止する。
【0102】
あるいは、プロテクタ410は、例えば接着剤を用いて、又は顕微鏡に取り付けることができるスライドに形成することにより、顕微鏡に取り付けることとしてもよい。スライドに代えて、レーザビームの眼上にいられる位置を制限するために、可動シャッターを備える。
【0103】
上記した、強膜および角膜組織の選択的アブレーション方法が、ステップの順番や、用いるツールの種類を変えることを含み、種々に変形できることは理解されるべきである。さらに、方法および装置の双方の種々の特徴の多様性が説明された。いくつかの実施形態では主に方法が記載されているが、その方法を行うように適合された装置もまた発明の範囲内に考えられる。異なる特徴が異なる方法で組み合わされてもよいことが理解されるべきである。特に、特定の実施形態について上記に示された全ての特徴が本発明の類似の各実施形態に必要なのではない。さらに、上記特徴の組合せも本発明のいくつかの実施形態の範囲内にあると考えられる。単一の又は少数の漏出処置を行うのに適当な医療用具のセットを含む手術キッドもまた本発明の範囲にある。「備える」、「含む」、「有する」とその類語は、以下のクレームで用いられた場合、「含むがそれに限定しない」という意味である。
【0104】
当業者は、本発明がこれまで記載されたことに限定されないことを理解するであろう。むしろ、本発明の範囲は、以下のクレームによってのみ限定される。
【符号の説明】
【0105】
50 眼用アブレーションシステム
52 レーザ光源
56 スキャナ
58 顕微鏡
64 イメージャ
66 ディスプレイ
68 イメージプロセッサ
70 コンバイナ
72 ジョイスティック
74 コントローラ
76 入力デバイス
300 保護用フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球に非穿孔性漏出処置を行うための装置であって、
100μmより大きなスポットサイズおよび2.5−50J/cmのエネルギー密度を有するレーザビームを生成するレーザ光源;および
前記ビームを、前記眼球の外側から、前記眼球の部分をスキャンさせるよう構成された眼球有効位置コントローラ、を有し、
前記スキャンは、100μsを越える滞留時間で前記部分の各点をスキャンし、
前記レーザ光源の波長、前記滞留時間、および前記エネルギー密度は、前記レーザビームが眼球に衝撃波ダメージも熱ダメージもほとんど与えることなく、前記強膜組織と熱的に相互作用して、前記滞留時間内に強膜組織を厚さ5−30μmで気化させるように選択されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記レーザビームを使用して眼科処置中に眼球を観察するための眼球用顕微鏡を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記顕微鏡によって観察される、前記組織の除去を表示するモニタを有することを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記レーザの視線と顕微鏡とを結合するビームコンバイナを有することを特徴とする、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記位置コントローラは、前記レーザ光源と患者の眼球との相対位置及び角度を固定する眼球フレームを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記位置コントローラは、前記レーザビームの入射部と空間的に走査するレーザビームの射出部を備えたスキャナを有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
眼球上で所望のパターンで組織を除去するために前記スキャナを駆動する、制御回路を有することを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
眼球上での前記手術の進行を示す兆候(indication)を監視し、進行信号を生成するセンサを有することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記センサは、
組織の除去の画像を取得するカメラと、
前記画像を処理するイメージプロセッサと、
を有することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記進行信号を使用して前記組織除去状態の指標を生成することを特徴とする、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記回路は、前記組織除去の制御ループを終了するために前記指標を使用することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記組織除去状態の指標は、組織除去エリアに残された組織の厚さの指標を含むことを特徴とする、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記組織除去状態の指標は、組織除去エリアに残された組織を通る浸出レートを含むことを特徴とする、請求項10または11に記載の装置。
【請求項14】
前記センサは眼圧を計測することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項15】
前記センサは非穿孔性のセンサであることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項16】
前記センサは接触型のセンサであることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項17】
前記制御回路は、前記センサから信号を受信することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項18】
ユーザ入力を有し、前記制御回路は前記入力への入力内容を受信して、前記入力へのエントリを前記センサからの信号を示すものと解釈することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項19】
前記コンバイナに取り付けられたフレームを有し、このフレームは前記眼球の少なくとも一部からの前記レーザビームをブロックすることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記レーザ光源はCOレーザ光源であることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記レーザ光源は同位体1316レーザ光源であることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記レーザ光源はエルビウム:YSGGレーザ光源を有することを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記レーザ光源は波長が1.8μmのダイオードレーザ光源を有することを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記レーザ光源は、前記レーザビームと整列した、可視波長の照準用の第2のビームを生成することを特徴とする、請求項1から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記回路は、非穿孔性トラベクレクトミーに適したリザーバの形状に強膜組織を除去するよう構成されていることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項26】
前記回路は、非穿孔性トラベクレクトミーに適した浸出エリアの形状に強膜組織を除去するよう形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項27】
前記ビームは5ワットより大きいパワーを有することを特徴とする、請求項1から26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記レーザはシングルショットで10−30μmを融除することを特徴とする、請求項1から27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記レーザはシングルショットで16−25μmを融除することを特徴とする、請求項1から28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記レーザはシングルショットで16−20μmを融除することを特徴とする、請求項1から29のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2010−382(P2010−382A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231247(P2009−231247)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【分割の表示】特願2003−543510(P2003−543510)の分割
【原出願日】平成14年11月3日(2002.11.3)
【出願人】(502397864)イオプティマ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】