説明

α−アミノジカルボン酸の金属錯体

【課題】 α-アミノジカルボン酸の新規な金属錯体を提供する。
【解決手段】 微量鉱物の中性α-アミノジカルボン酸の錯体であり、動物栄養補給のために使用されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動物飼料サプリメントに係り、特に例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などのα-アミノジカルボン酸の新規な金属錯体の製造および栄養価値に関する。
【背景技術】
【0002】
食餌中の十分量、かつ、生物学的利用可能型の必須金属の存在は家畜動物および家禽類の健康および安楽を維持するために不可欠である。銅、鉄、マンガン、亜鉛などの必須金属は通常の食餌成分において不足していることが多く、これらの栄養素の補充量が家畜の動物および家禽類の食餌にしばしば添加される。多くの市販の食餌添加剤が、生物学的に容易に利用可能な形でこれら必須金属を提供するために開発されている。栄養素の生物学的利用可能の程度は、しばしば“生物学的利用能"として、参照されている。必須金属の生物学的利用能は食餌中に存在する金属の形態の物理的および/又は化学的特性に依存する。これらサプリメント金属の生物学的利用能の増大は有益である。なぜならば、動物の栄養的必要量を満たすための、これら金属の濃度を下げて使用することが可能となり、しかも、これら金属の高レベルによるこれら動物並びに環境への潜在的悪影響を低減させることができるからである。
【0003】
微量元素を、金属の対応する無機源よりも、生物学的利用能をより高めた製品が幾つか市販されている。この生物学的利用能の向上は、金属と有機分子、すなわち一般に配位子として知られているものとの結合に起因するものである。この結合は、動物による金属の利用度、すなわち、生物学的利用能を増大させることになる。これら製品の必須金属の生物学的利用能の向上は、胃腸内の溶解度の増大、安定性の増大、循環系への吸収の向上および/又は代謝利用性の向上の結果によるものである。
【0004】
有機配位子と結合させた微量元素を含む種々のタイプの製品が市販されている。これらは、製品の製造に使用された配位子の性質に基づいて異なるグループに分類されている。製品の1つのクラスにおいては、アミノ酸が配位子として使用され、これは金属と錯体又はキレートを形成する。これら製品の例が、米国特許、3,941,818; 3,950,372; 4,067,994; 4,863,898; 4,900,561; 4,948,594; 4,956,188; 5,061,815; 5,278,329; 5,583,243; 6,166,071に記載されている。飼料添加剤の第2のグループは、プロピオン酸などの短鎖カルボン酸の金属塩を含むものである(米国特許、5,591,878; 5,707,679; 5,795,615; 5,846,581参照)。微量元素添加剤の第3のグループは、American Feed Control Officialsにより金属たんぱく質化合物(Metal Proteinate)として分類され、“可溶性塩のアミノ酸および/又は部分加水分解たんぱく質とのキレート化から得られる製品”として定義されている。この製品の例は米国特許、3,440,054; 3,463,858; 3,775,132; 3,969,540; 4,020,158; 4,076,803; 4,103,003; 4,172,072; 5,698,724に記載されている。
【0005】
本出願人は以前に、必須元素のより優れた生物学的利用源としてアミノ酸の金属錯体を合成し、特許を得ている。その特許の例としては米国特許、3,941,818; 3,950,372; 4,021,569; 4,039,681; 4,067,994が挙げられ、これらにはα-アミノ酸、好ましくはDL-メチオニンと、遷移金属亜鉛、クロム、マンガン、鉄との1:1錯体が開示されている。L-メチオニンとの同様の錯体の形成が米国特許5,278,329に開示されている。米国特許、4,900,561; 4,948,594には、末端アミノ基を有するα-アミノ酸の銅錯体が開示されている。α-ヒドロキシ脂肪族カルボン酸と、銅、マンガン、亜鉛、鉄との錯体が米国特許、4,956,188; 5,583,243に開示されている。米国特許、4,670,269; 4,678,854には、グルコヘプタン酸などのポリヒドロキシカルボン酸と、コバルトとの錯体が開示されている。アミノ酸L-リシンの微量元素との錯体が米国特許5,061,815に開示されている。これら特許に開示されている化合物の有効性がこれら特許の幾つか並びに多くの科学文献および技術報告により提供されたデータから実証されている。
【0006】
上記特許では、純粋な合成又は天然のアミノ酸又はヒドロキシ酸の使用が記述されている。本出願人による米国特許5,698,724には、たんぱく質の加水分解により得られた天然のアミノ酸と、必須元素との錯体の合成が開示されている。この特許が発行されてから、多くの現地調査により、これらの錯体からの金属が無機源からの金属よりも生物学的利用能が大きいことが実証された。
【0007】
上記参照文献に記載されているように、金属-アミノ酸錯体での我々の経験に基づいて、我々は金属Zn, Mn, Cu, Co, Feの1:1錯体が、金属の効果的栄養源であり、1:2錯体よりも有利であるという結論に達した。これらの1:1錯体はイオン対として存在し、この場合、金属-アミノ酸はカチオンを含むものである。対イオン(アニオン)は鉱酸により提供され、カチオン上の電荷を平衡させるために必要である。外部アニオンの必要性は、金属含量が制限される製品をもたらすものである。本発明の目的はアミノ酸が二重の役割を果すような金属アミノ酸錯体を開発することである。つまり、二座配位子として役立ち金属イオンとの錯体を形成し、対イオンとして役立ち、カチオン性錯体上の電荷を平衡させる。それにより、20-30%の金属を含む安定な結晶質錯体の製造が可能になる。アスパラギン酸、グルタミン酸などのα-アミノジカルボン酸は、このような要件を満たす適当な配位子の例である。
【0008】
特許および科学文献の詳細な検討の結果、その幾つかは、金属およびアスパラギン酸又はグルタミン酸を含む化合物について言及している。しかし、どのような錯体について記載しているのか、あるいはこの従来技術と、本発明で考えている栄養物におけるこれら錯体の使用目的との関連が必ずしも明らかではない。2つの科学レポートが1966年になされており、これにはグルタミン酸銅二水化物およびグルタミン酸亜鉛二水化物の結晶構造が記載されている。第1のレポートにおいては、グルタミン酸銅二水化物が、グルタミン酸と硝酸銅との溶液の緩やかな蒸発により得ている(グルタミン酸銅二水化物の結晶構造、Carlo M. Gramaccioli and Richard E. Marsh, Acta Cryst., 21, 594(1966))。青緑色結晶の構造がX-線結晶学により判定されている。他方のレポートには、グルタミン酸中の酸化亜鉛の水性溶液の蒸発で得たグルタミン酸亜鉛二水化物の結晶構造が報告されている(グルタミン酸亜鉛二水化物の結晶構造、Carlo M. Gramaccioli, Acta Cryst., 21, 600(1966))。
【0009】
アスパラギン酸およびグルタミン酸と、アルカリ金属例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムとの塩は市販されている。17-20%のマグネシウムを含むアスパラギン酸マグネシウムおよび20%のカルシウムを含むアスパラギン酸カルシウムが市販されており、これらは1つのマグネシウム又はカルシウムカチオンがアスパラギン酸の1つのニ塩基性アニオンにより中和されたものを含む中性塩であると思われる。アスパラギン酸およびグルタミン酸のカルシウム又は亜鉛酸塩であって1つのニ塩基性カチオンおよびニ塩基性酸の2つの分子を含むものは市販されている。
【0010】
アスパラギン酸マグネシウムは、米国特許6,248,368B1の本文および請求の範囲において、自己免疫疾患の治療又は予防に使用されるマグネシウムの有機塩に含まれることが記載されている。しかし、この発明によれば、ピロ燐酸マグネシウムが好ましいマグネシウム塩として選択されている。マグネシウム塩を使用した頭痛治療のための方法および組成物が米国特許6,218,192B1に記載されている。アスパラギン酸マグネシウムおよびアスパラギン酸マグネシウム塩酸塩が、この文献に挙げられたマグネシウム塩の中に含まれているが、焦点は水溶性マグネシウム塩、特に硫酸マグネシウムおよび塩化マグネシウムの投与に向けられているように思われる。米国特許6,210,690B1には、皮膚および毛髪用化粧品での使用のための油中水型の乳化組成物が記載されている。これらの乳化物はアミノ酸の塩を含む種々の添加剤により安定化が図られている。アスパラギン酸マグネシウムおよびグルタミン酸のマグネシウム又はカルシウムが、この文献に挙げられた使用可能なアミノ酸塩の中に含まれているが、請求の範囲にはグルタミン酸ナトリウムのみが挙げられている。亜鉛化合物の不快な風味をマスキングするための芳香ブレンドが米国特許6,169,118B1に開示されている。この特許の本文中において、発明者は発明の教示から考えられる亜鉛化合物の例の1つとしてアスパラギン酸亜鉛を挙げている。
【0011】
2つの関連する特許の本文には、アスパラギン酸マグネシウム塩酸塩が生体栄養サプリメント中の電解質の1つとして使用し得ることが教示されている(米国特許、5,505,968; 5,728,675)。米国特許5,401,770には抗掻痒剤として天然のα-アミノ酸の亜鉛錯体が開示されている。これらの錯体において、アミノ酸の亜鉛に対するモル比は2:1である。金属塩、アミノ酸および無機酸の等モル量の酸性条件下での組合せにより得られた殺菌剤組成物が米国特許6,242,009B1に記載されている。列挙されている金属塩の中には、銀、亜鉛、銅、水銀、クロム、マンガン、ニッケル、カドミウム、砒素、コバルト、アルミニウム、鉛、セレニウム、プラチナ、金、チタン、錫およびこれらの組合せの塩が含まれている。同様に、列挙されているアミノ酸の中にはグルタミン酸およびアスパラギン酸が含まれている。高イオン化性亜鉛化合物を含む感冒用薬剤が米国特許5,409,905に記載されている。クエン酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛およびアミノ酸亜鉛キレートなどの亜鉛錯体はpH=7.4で余りにも硬く結合されていて有効十分量の亜鉛イオンを解放することができず、発明の範囲外であると発明者は述べている。
【0012】
多くの米国特許が、他の発明との関連でグルタミン酸およびアスパラギン酸の金属塩を参照している。米国特許2,810,754には、グルタミン酸からのグルタミンの製造において、中間物質としてグルタミン酸銅錯体の使用が記載されている。グルタミン酸を含む溶液からグルタミン酸を、グルタミン酸亜鉛の析出により回収することが米国特許2,849,468に記載されている。米国特許4,167,564には、錯体およびそれを囲む媒体のpHを調整する緩衝システムを混合物に添加することにより、金属1モル当り2-16モルのアミノ酸を含むアミノ酸-金属錯体の安定性を改善するための方法が記載されている。1又はそれ以上の配位子に対しキレート化した金属イオンからなるアミノ酸キレートであって、ヒドロキシ以外のアニオンおよび弱有機酸のアニオンを基本的に含まないものが米国特許4,599,152に記載されている。第1鉄塩を水性溶液中にてグルタミン酸物質と反応させることによりモノグルタミン酸第1鉄塩を製造する方法が米国特許3,168,541に記載されている。柔毛を有する動物、例えばミンクのための改善された食餌が米国特許3,911,117に記載されている。この食餌には生の海水魚と、第1鉄の有機酸とのキレートとが含まれている。しかし、第1鉄の有機酸とのキレートの正確な化学的性質については言及されていない。
【0013】
2つの関連する米国特許には、「粒状金属-アミノ酸錯体」を形成することにより毛髪および頭皮に対するアミノ酸の供給を改善するための整髪組成物が記載されており、この特許に記載されている金属には亜鉛が含まれている(米国特許5,911,978および6,228,353)。これらの特許の本文および請求の範囲には、グルタミン酸を含む9つのアミノ酸が列挙されている。しかし、双方の特許の実施例ではシスチン、2つのカルボキシル基および2つのα-アミノ基を含む硫黄アミノ酸を使用している。シスチンで形成された亜鉛錯体は、亜鉛とグルタミン酸との間で形成されたものと著しく異なっている。米国特許5,348,749には、恐怖障害の治療のための物質の中で金属-アミノ酸錯体の使用が記載されている。この特許に記載されている化合物の中には、1個の亜鉛イオン当りアミノ酸を2分子含むグルタミン酸およびアスパラギン酸の亜鉛塩が含まれている。
【0014】
上記文献には、アミノ酸が、微量鉱物金属イオンと錯体を形成する二座配位子として、更にカチオン錯体の電荷を平衡させる対イオンとして作用する二重の役割を果すようなアスパラギン酸、グルタミン酸などのジカルボン酸の中性錯体について具体的に言及したものはない。
【特許文献1】米国特許3,941,818
【特許文献2】米国特許3,950,372
【特許文献3】米国特許4,067,994
【特許文献4】米国特許4,863,898
【特許文献5】米国特許4,900,561
【特許文献6】米国特許4,948,594
【特許文献7】米国特許4,956,188
【特許文献8】米国特許5,061,815
【特許文献9】米国特許5,278,329
【特許文献10】米国特許5,583,243
【特許文献11】米国特許6,166,071
【特許文献12】米国特許5,591,878
【特許文献13】米国特許5,707,679
【特許文献14】米国特許5,795,615
【特許文献15】米国特許5,846,581
【特許文献16】米国特許3,440,054
【特許文献17】米国特許3,463,858
【特許文献18】米国特許3,775,132
【特許文献19】米国特許3,969,540
【特許文献20】米国特許4,020,158
【特許文献21】米国特許4,076,803
【特許文献22】米国特許4,103,003
【特許文献23】米国特許4,172,072
【特許文献24】米国特許5,698,724
【特許文献25】米国特許4,021,569
【特許文献26】米国特許4,039,681
【特許文献27】米国特許4,670,269
【特許文献28】米国特許4,678,854
【特許文献29】米国特許5,061,815
【特許文献30】米国特許6,248,368B1
【特許文献31】米国特許6,218,192B1
【特許文献32】米国特許6,210,690B1
【特許文献33】米国特許6,169,118B1
【特許文献34】米国特許5,505,968
【特許文献35】米国特許5,728,675
【特許文献36】米国特許5,401,770
【特許文献37】米国特許6,242,009B1
【特許文献38】米国特許5,409,905
【特許文献39】米国特許2,810,754
【特許文献40】米国特許2,849,468
【特許文献41】米国特許4,167,564
【特許文献41】米国特許4,599,152
【特許文献43】米国特許3,168,541
【特許文献44】米国特許3,911,117
【特許文献45】米国特許5,911,978
【特許文献46】米国特許6,228,353
【非特許文献1】グルタミン酸銅二水化物の結晶構造、Carlo M. Gramaccioli and Richard E. Marsh, Acta Cryst., 21, 594(1966)
【非特許文献2】グルタミン酸亜鉛二水化物の結晶構造、Carlo M. Gramaccioli, Acta Cryst., 21, 600(1966))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の主たる目的は、20-30重量%の金属を提供することができる安定した形態のそのような中性錯体を提供することである。
本発明の他の目的は、このような中性錯体を含む動物/家禽用食餌のための栄養サプリメントを提供することである。
本発明の更に他の目的は、有意な汚染の危険を伴うことなく、生物学的利用能を有する微量鉱物およびアミノ酸を提供することができる動物および家禽のための栄養補充方法を提供することである。
本発明の更に他の目的は、本発明の錯体を効果的および経済的に製造するための方法を提供することである。
本発明のこれら及び他の目的を達成するための方法および様式は以下の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、現在入手可能な金属源と比較して、動物およびヒトの食事要件を満足するためにより効果的な新規な金属アミノ酸錯体の開発に関連するものである。これら錯体からの金属は生物学的利用能が、無機形態のものより大きい。これらの錯体は安定であり、環境汚染の危険性を生じさせることなく、妥当なコストで実用的方法で得ることができるため、市場性の点でも有利である。
【0017】
本発明の化合物は、銅、マンガンおよび亜鉛などの必須微量元素の1つと、アスパラギン酸、グルタミン酸などのα-アミノジカルボン酸との中性錯体である。このアミノ酸配位子は、金属イオンと錯体を形成する二座配位子として、更に金属およびアミノ-カルボキシル部分からなるカチオン錯体の電荷を平衡させる対イオンとして作用する二重の役割を果すように選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
必須金属は、金属の無機形態からのものと比較して、アミノ酸錯体からのものが生物学的利用能がより大きいことが現在確立されている。必須金属-アミノ酸錯体の多くは、錯体中における金属のアミノ酸に対する割合に基づく2つの主なグループの1つとして分類することができる。第1のグループは必須金属のアミノ酸に対する割合が1:1である錯体である。これらの錯体は通常、イオン対として存在し、この場合、カチオンは金属-アミノ酸錯体からなり、アニオンは硫酸又は塩酸などの鉱酸のものである。これらの錯体は通常、水に容易に可溶であり、高い生物学的利用能を有する。これらの錯体の1つの欠点は、これらが吸湿性であることである。これら錯体のキャリア無し乾燥形態のものは取扱いが困難であり、輸送、貯蔵、他の飼料成分との混合において湿気を吸収してしまう。したがって、これらの錯体は通常、その物理的特性を改善するため適当なキャリアとブレンドさせて市販されている。そのため、その製品は金属含量が限られ、10-15%の範囲のものが多い。金属アミノ酸錯体の第2のグループは、金属のアミノ酸との比が1:2のものである。このグループの錯体は通常、水溶性の点で十分ではない。これらは、しばしば安定な粉体として存在し、他の飼料成分との混合に対し良好な物理的特性を有する。このグループの欠点の幾つかには、コストが含まれる。すなわち、通常高価なアミノ酸がその重量の比較的大きい割合を占めている。他の欠点は、金属含量が小さく、アミノ酸の分子量により制限される。第3およびより有意な欠点は、これら錯体が生物学的利用可能な金属の資源として役立つために、これらは胃腸管路の酸成分中に溶解するものでなければならないことである。吸収部位での酸性条件下では、これら錯体は溶液中で再平衡し、1:1錯体と、遊離アミノ酸とを与える。そのため、1:2金属-アミノ酸錯体は高コストで、通常、1:1錯体のための低効果的前栄養素として役立つものである。
【0019】
本発明において、我々は、従来公知の1:1および1:2錯体の好ましい特性を保持し、その欠点を解消した新規な金属-アミノ酸錯体を提供する。これらの新規な錯体は、現在市販されている金属源と比較して、動物およびヒトの食事要件を満たすのにより効果的なものである。これら錯体からの必須金属は生物学的利用能が、無機資源からのもの、並びに現在市販されている他の有機微量金属錯体からのものより大きい。これらの錯体は安定であり、妥当なコストで実用的方法で得ることができるため、商業的に有望である。
【0020】
本発明の中性錯体は、必須微量元素の1つと、α-アミノジカルボン酸との中性錯体である。アミノ酸配位子は二重の役割を果すものが選択される。つまり、金属イオンと1:1錯体を形成する二座配位子として役立ち、金属とアミノ-カルボキシル部分のカチオン性錯体上の電荷を平衡させる対イオンとして役立つものである。現在公知で、ポピュラーな1:1錯体のように、この新規な錯体は、胃腸管路の吸収部位でのpHにおいて圧倒的な種である1:1錯体として供給される。しかし、他の1:1錯体とは異なり、この新規な錯体は優れた物理的特性を有し、比較的高金属含量を有する無キャリア形態で輸送、貯蔵、並びに飼料に添加することができる。1:2錯体と比較したとき、この新規な錯体はその優れた物理的特性は共通するものがある。しかしこの新規な錯体は、金属の摂取に係わらない付加的アミノ酸分子を必要とすることなく、吸収部位のpHで大多数を占める形態で供給されるという利点を有している。従って、この新規な錯体は対応する1:2錯体よりも高い金属含量で得ることができる。
【0021】
要約すると、本発明で提供されるこの新規な錯体は、現在市販の金属-アミノ酸錯体と比較して以下のような利点を有するものである。
1)この新規な錯体からの必須微量元素は生物学的利用能がより優れている。
2)錯体中の金属含量がより高い。
3)この新規な錯体は、優れた特性を有し、製造、輸送、貯蔵、食餌とのブレンドがより容易である。
4)この新規な錯体は、より安定である。
5)この新規な錯体は、より低コストで実用的方法で得ることができる。
【0022】
適当な微量元素の例として、亜鉛、銅、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、バナジウムおよびモリブデンを挙げることができる。なお、好ましい元素は亜鉛、銅、マンガンである。
有用なアミノジカルボン酸の例として、アスパラギン酸、グルタミン酸、1,6-ジカルボキシル-2-アミノへキサン酸、1,7-ジカルボキシル-2-アミノへプタン酸、および1,8-ジカルボキシル-2-アミノオクタン酸を挙げることができる。なお、好ましい酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸である。
この製品は無キャリア形態で、又はキャリアと共に使用することができる。適当なキャリアの例は、水素燐酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、粉砕トウモロコシ穂軸、粉末糖又はこれらの任意の混合物である。
【0023】
本発明の金属アミノ酸錯体は種々の方法で得ることができる。これらの方法の殆どは、アミノ酸を金属酸化物と直接反応させる方法、あるいは、最初にジナトリウム塩を形成し、ついで金属塩と反応させる間接的方法によるものである。L-グルタミン酸又はL-アスパラギン酸の使用は幾つかの不利を伴う。例えば、コストが比較的高くなり、生物学的利用能が比較的低く、水溶性に欠ける。
【0024】
アミノ酸と金属酸化物との反応による金属錯体の製造が試みられた。アミノ酸の溶解性が乏しいため、水中に酸を懸濁させたものを水不溶性金属酸化物と混合させ金属錯体を得ることができるが、これは水溶性に乏しい。その結果、汚れた製品が生じ、広範な結晶化が必要となる。従って、このアプローチは実用性の乏しさから放棄された。その他の方法として、アミノ酸を水酸化ナトリウム(あるいは水酸化カリウムなどの他の塩基)の溶液に溶解させてアミノ酸のニナトリウム塩を形成させる。この溶液をついで、金属酸化物又は金属塩の溶液で処理して金属-アミノ酸錯体を得る。このアプローチは品質が不確定な製品を生じさせる。金属酸化物を使用したとき、製品の品質が不確定となり、未反応金属酸化物で様々な程度に汚染されたものとなる。金属塩の溶液を使用した場合、金属水酸化物の析出を避けるため、反応条件を注意深く制御する必要がある。
【0025】
これに対し、金属アミノ酸錯体を妥当なコストで大規模に製造する実用的な方法が開発された。この方法は、易水溶性グルタミン酸モノナトリウムの溶液を、水溶性金属塩溶液と混合する工程を含む。この溶液のpHは塩基の等モル量の溶液を注意深く添加することにより調整する。これにより、金属-アミノ酸錯体の結晶が析出される。この結晶の物理的性質は2つのファクターにより制御することができる。つまり、反応混合物中の反応物の濃度、および塩基添加後の反応混合物の冷却速度である。反応物の濃度が高いとき、又は反応混合物を急冷したとき、小さな結晶が形成される。pHの中性への調整は、不溶性金属水酸化物の形成を持続させる高いpHスパイク(spikes)の発生を避けるため、攪拌下で徐々に添加することにより行わなければならない。急冷は氷水バスを使用することにより通常、バスのサイズにもよるが、30分以下の時間をかけて20℃にまで冷却することにより行うことができる。なお、反応物の濃度が低いとき、又は反応混合物を徐冷したとき、大きい結晶が形成される。この方法の利点として以下のことを挙げることができる。
【0026】
1)グルタミン酸モノナトリウムは妥当なコストで容易に市場で入手することができる。このコストは、L-グルタミン酸よりも可なり低い。つまり、L-グルタミン酸はグルタミン酸モノナトリウムと比較して、略2.5倍高い。
2)グルタミン酸モノナトリウムは易水溶性で、その溶液は弱酸性である。グルタミン酸モノナトリウム溶液の金属塩溶液との混合により、不溶性金属水酸化物を生じさせることはない。
3)製品の全体的コストは低い。なぜならば、最終pH調整および所望の製品の形成のために必要とする塩基の量は半分に過ぎないからである。
4)この方法で得られる製品は、出発物質としてL-グルタミンを使用することにより得られるものと比較して、酸高品質で一定である。
【0027】
要約すると、新規な金属アミノ酸錯体を製造するための本発明の実用的、経済的方法は以下の幾つかの利点を有する。
a)低コストである。すなわち、主成分(アミノ酸)の低コストおよび使用する塩基の量が少ないことから、これら錯体を低コストで得ることができる。
b)製品の収率が高い。通常、溶液から90-95%の製品を析出させることができる。更に、上澄液を濃縮することにより、更に結晶を得ることができる。その他、この上澄液を製品の他のバッチの製造のために溶液として使用することもできる。
c)製品の品質が良好である。アミノ酸および金属の双方を中性ないし弱酸性pHの溶液中で混合するという事実により不溶性の金属水酸化物の生成を防止することができる。
d)品質のバラツキが少ない。反応条件を容易に制御することができ、そのため、より一定した製品が得られ、プロセスもより単純化される。
【0028】
以下の実施例はこれらの錯体、その物理的および化学的特性を得るための実用的な方法、並びに動物栄養補給における微量元素の資源としての使用を説明するためのものである。
【実施例1】
【0029】
グルタミン酸からのグルタミン酸亜鉛ニ水化物の製造:
グルタミン酸(148.65g、1.0モル)を、500mLの蒸留水に溶解させた水酸化ナトリウム(81.07g、2.0モル)溶液に添加した。この混合物を全ての固形物が溶解するまで激しい攪拌下で加熱した。得られた透明溶液に対し、塩化亜鉛(149.936g、1.1モル)溶液を加熱および攪拌下で徐々に添加した。その結果、結晶質析出物が形成し始めた。加熱を停止し、混合物が室温に達するまで攪拌を継続させた。この混合物を5℃で18時間、貯蔵した。結晶物質を濾別し、100mLの冷水で2回洗浄した。この析出物を75-80℃で8時間、乾燥させた。
【0030】
実験値 理論値 収率
製品重量 249g 246.55g 101.00%
亜鉛(EDTA滴定) 26.68% 26.52% 100.61%
*グルタミン酸亜鉛ニ水化物について計算した。
【0031】
臭化カリウムペレット中でのRTIR:吸収ピーク@約3309.6(m), 3255.6(m), 3178.5(w), 2962.5(w), 1620.1(vs), 1566.1(vs), 1415.7(s), 1334.6(s), 1284.5(m), 1114.8(m), 609.5(m)cm-1. (wは弱;mは中間、sは強;vsは非常に強)。
【実施例2】
【0032】
グルタミン酸モノナトリウムからのグルタミン酸亜鉛ニ水化物の製造:
グルタミン酸モノナトリウム一水化物(748.545g、4.0モル)を、700mLの蒸留水に添加した。この混合物を全ての固形物が溶解するまで激しい攪拌下で加熱した。得られた透明溶液に対し、塩化亜鉛(556.257g、4.0モル)溶液を加熱および攪拌下で徐々に添加した。更に400mLの蒸留水に溶かした水酸化ナトリウム(162.105g、4.0モル)冷却溶液を撹拌下で徐々に添加した。その結果、結晶質析出物が形成し始めた。加熱を停止し、混合物を氷水バス中に置いた。混合物が室温に達するまで攪拌を継続させた。この混合物を5℃で18時間、貯蔵した。結晶物質を濾別し、100mLの冷水で2回洗浄した。この析出物を75-80℃で8時間、乾燥させた。
【0033】
実験値 理論値 収率
製品重量 946g 986.20g 95.93%
亜鉛(EDTA滴定) 26.71% 26.52% 100.72%
グルタミン酸 58.28% 60.30% 96.65%
(ニンヒドリン検査)
*グルタミン酸亜鉛ニ水化物について計算した。
【0034】
臭化カリウムペレット中でのFTIR:吸収ピーク@約3328.9(m), 3253.7(m), 2923.9(w), 1616.2(vs), 1562.2(vs), 1409.9(s), 1330.8(m), 1271.0(m), 1103.2(m), 572.8(m)cm-1. (wは弱;mは中間、sは強;vsは非常に強)。
【実施例3】
【0035】
グルタミン酸からのグルタミン酸銅ニ水化物の製造:
グルタミン酸(148.641g、1.0モル)を、500mLの蒸留水に溶解させた水酸化ナトリウム(81.079g、2.0モル)溶液に添加した。この混合物を全ての固形物が溶解するまで激しい攪拌下で加熱した。得られた透明溶液に対し、塩化銅(170.498g、1.0モル)溶液を加熱および攪拌下で徐々に添加した。その結果、結晶質析出物が形成し始めた。加熱を停止し、混合物が室温に達するまで攪拌を継続させた。この混合物を5℃で24時間、貯蔵した。結晶物質を濾別し、50mLの冷水で2回洗浄した。この析出物を75-80℃で8時間、乾燥させた。
【0036】
実験値 理論値 収率
製品重量 247g 244.676g 100.94%
銅(ヨウ素滴定) 25.34% 25.97% 97.58%
*グルタミン酸銅ニ水化物について計算した。
【0037】
臭化カリウムペレット中でのFTIR:吸収ピーク@約3317.3(m), 3224.8(m), 2931.6(w), 1627.8(vs), 1573.8(vs), 1407.9(s), 1353.9(w), 1326.9(w), 1265.2(m), 1134.1(m), 759.9(m)cm-1. (wは弱;mは中間、sは強;vsは非常に強)。
【実施例4】
【0038】
グルタミン酸モノナトリウムからのグルタミン酸銅ニ水化物の製造:
グルタミン酸モノナトリウム一水化物(187.140g、1.0モル)を、200mLの蒸留水に添加した。この混合物を全ての固形物が溶解するまで激しい攪拌下で加熱した。得られた透明溶液に対し、200mLの水に溶かした塩化銅ニ水化物(172.283g、1.0モル)溶液を加熱および攪拌下で徐々に添加した。更に100mLの蒸留水に溶かした水酸化ナトリウム(40.509g、1.0モル)冷却溶液を攪拌下で徐々に添加した。混合物を氷水バス中に置き、攪拌を継続させた。その結果、青色の結晶質析出物が形成し始めた。この混合物を5℃で18時間、貯蔵した。結晶物質を濾別し、50mLの冷水で2回洗浄した。この析出物を75-80℃で8時間、乾燥させた。
【0039】
実験値 理論値 収率
製品重量 234g 244.706g 95.63%
銅(ヨウ素滴定) 26.50% 25.97% 102.04%
*グルタミン酸銅ニ水化物について計算した。
【0040】
臭化カリウムペレット中でのFTIR:吸収ピーク@約3313.5(s), 3219.0(s), 1625.9(vs), 1573.8(vs), 1456.2(w), 1406.0(s), 1394.4(s), 1355.9(m), 1267.1(m), 1132.1(m), 758.0(m)cm-1. (wは弱;mは中間、sは強;vsは非常に強)。
【実施例5】
【0041】
グルタミン酸モノナトリウムからのグルタミン酸銅ニ水化物の製造:
グルタミン酸モノナトリウム一水化物(748.522g、4.0モル)を、700mLの蒸留水に添加した。この混合物を全ての固形物が溶解するまで激しい攪拌下で加熱した。得られた透明溶液に対し、900mLの水に溶かした硫酸銅五水化物(1019.135g、4.0モル)溶液を加熱および攪拌下で徐々に添加した。更に400mLの蒸留水に溶かした水酸化ナトリウム(162.101g、4.0モル)冷却溶液を攪拌下で徐々に添加した。その結果、激しい反応が生じ、緑色の結晶質析出物が形成し始めた。混合物を氷水バス中に置き、攪拌を継続させた。この混合物を5℃で18時間、貯蔵した。結晶物質を濾別し、この析出物を75-80℃で8時間、乾燥させた。
【0042】
実験値 理論値 収率
製品重量 992g 978.82g 101.35%
銅(ヨウ素滴定) 25.45% 25.97% 98.00%
*グルタミン酸銅ニ水化物について計算した。
【0043】
この製品を2つの部分に分け、それぞれに400mLの水を添加した。この混合物を攪拌下で加熱し、ついでろ過した。析出物を100mLの水で2回洗浄した。この析出物を75-80℃で8時間、乾燥させた。
【0044】
実験値 理論値 収率
製品重量 992g 978.82g 94.20%
銅(ヨウ素滴定) 27.29% 25.97% 105.09%
*グルタミン酸銅ニ水化物について計算した。
【0045】
この製品はグルタミン酸銅ニ水化物と、無水グルタミン酸銅との混合物であると思われる。精製工程での銅の回収率は99.67%である。
【0046】
臭化カリウムペレット中でのFTIR:吸収ピーク@約3313.5(s), 3228.6(s), 1629.7(vs), 1573.8(vs), 1456.2(w), 1406.0(s), 1388.7(s), 1263.3(m), 1132.1(m), 758.0(m)cm-1. (wは弱;mは中間、sは強;vsは非常に強)。
【実施例6】
【0047】
グルタミン酸からのグルタミン酸マンガンニ水化物の製造:
グルタミン酸(148.672g、1.0モル)を、500mLの蒸留水に溶解させた水酸化ナトリウム(81.049g、2.0モル)溶液に添加した。この混合物を全ての固形物が溶解するまで激しい攪拌下で加熱した。得られた透明溶液に対し、300mLの水に溶かした塩化マンガン(197.932g、1.0モル)溶液を加熱および攪拌下で徐々に添加した。その結果、数分後、結晶質析出物が形成し始めた。加熱を停止し、混合物が室温に達するまで攪拌を継続させた。この混合物を5℃で24時間、貯蔵した。結晶物質を濾別し、50mLの冷水で2回洗浄した。この析出物を75-80℃で8時間、乾燥させた。
【0048】
実験値 理論値 収率
製品重量 221g 236.098g 93.61%
マンガン(EDTA滴定) 23.52% 23.27% 101.08%
*グルタミン酸マンガンニ水化物について計算した。
【0049】
臭化カリウムペレット中でのFTIR:吸収ピーク@約3332.8(m), 3251.8(m),2912.3(w), 1608.5(vs), 1546.8(vs), 1419.5(s), 1361.7(w), 1330.8(w), 1276.8(w), 1087.8(s), 783.0(m)cm-1. (wは弱;mは中間、sは強;vsは非常に強)。
【実施例7】
【0050】
グルタミン酸モノナトリウムからのグルタミン酸マンガンニ水化物の製造:
グルタミン酸モノナトリウム一水化物(748.545g、4.0モル)を、700mLの蒸留水に添加した。この混合物を全ての固形物が溶解するまで激しい攪拌下で加熱した。得られた透明溶液に対し、塩化マンガン四水化物(807.815g、4.0モル)溶液を加熱および攪拌下で徐々に添加した。更に400mLの蒸留水に溶かした水酸化ナトリウム(162.082g、4.0モル)冷却溶液を攪拌下で徐々に添加した。その結果、大量の明褐色結晶質析出物が形成し始めた。混合物を氷水バス中に置き、攪拌を継続した。混合物が室温に達するまで攪拌を継続させた。この混合物を5℃で18時間、貯蔵した。結晶物質を濾別し、析出物を75-80℃で8時間、乾燥させた。
【0051】
実験値 理論値 収率
製品重量 886g 944.39g 93.82%
マンガン(EDTA滴定) 23.42% 23.27% 100.65%
*グルタミン酸マンガンニ水化物について計算した。
【0052】
この製品を2つの部分に分け、それぞれに400mLの水を添加した。この混合物を攪拌下で加熱し、ついでろ過した。析出物を100mLの水で2回洗浄した。この析出物を75-80℃で8時間、乾燥させた。
【0053】
実験値 理論値 収率
製品重量 852g 944.39g 90.22%
マンガン(EDTA滴定) 23.97% 23.27% 103.01%
*グルタミン酸マンガンニ水化物について計算した。
【0054】
この製品はグルタミン酸マンガンニ水化物と、無水グルタミン酸マンガンとの混合物であると思われる。精製工程でのマンガンの回収率は98.43%である。
【0055】
臭化カリウムペレット中でのFTIR:吸収ピーク@約3338.6(s), 3244.0(s), 2906.5(m), 1604.7(vs), 1544.9(vs), 1440.7(s), 1326.9(s), 1274.9(s), 1085.8(s), 765.7(s), 559.3(s)(m)cm-1. (wは弱;mは中間、sは強;vsは非常に強)。
【実施例8】
【0056】
アスパラギン酸からのアスパラギン酸亜鉛の製造:
アスパラギン酸(135.825g、1.0モル)を、300mLの蒸留水に溶解させた水酸化ナトリウム(81.043g、2.0モル)溶液に添加した。この混合物を全ての固形物が溶解するまで激しい攪拌下で加熱した。得られた透明溶液に対し、200mLの水に溶解させた塩化亜鉛(152.967g、1.1モル)溶液を加熱および攪拌下で徐々に添加した。その結果、結晶質析出物が形成し始めた。加熱を停止し、混合物が室温に達するまで攪拌を継続させた。この混合物を5℃で18時間、貯蔵した。結晶物質を濾別し、100mLの冷水で2回洗浄した。この析出物を75-80℃で8時間、乾燥させた。
【0057】
実験値 理論値 収率
製品重量 49.468g 196.38g 25.19%
亜鉛(EDTA滴定) 37.04% 33.29% 111.27%
*無水アスパラギン酸亜鉛について計算した。
【0058】
臭化カリウムペレット中でのFTIR:吸収ピーク@約3423.4(m), 3257.5(m), 2929.7(w), 1602.7(vs), 1577.7(vs), 1438.8(s), 1396.4(m), 1224.7(w), 1184.2(m), 690.5(w)cm-1. (wは弱;mは中間、sは強;vsは非常に強)。
上記から得られたろ液を徐々に蒸発させたところ、製品の数個の結晶群が得られた。
【実施例9】
【0059】
オスブロイラーにおける飼料摂取、1日当りの平均体重増加、飼養効率についての種々の亜鉛の比較:
オスの市販のブロイラーを研究のために使用した。実験は孵化後4日目から開始し、18日目で終了した。288羽を使用し、それぞれ6羽のブロイラーからなるグループの6回の反復構成で、8種の処置を完全な無作為形式で実験を行った。すなわち、これら処置は、基本食餌;基本食餌+硫酸亜鉛からの亜鉛15ppm;基本食餌+硫酸亜鉛からの亜鉛30ppm;基本食餌+硫酸亜鉛からの亜鉛45ppm;基本食餌+アスパラギン酸亜鉛からの亜鉛15ppm;基本食餌+アスパラギン酸亜鉛からの亜鉛30ppm;基本食餌+グルタミン酸亜鉛からの亜鉛15ppm;および基本食餌+グルタミン酸亜鉛からの亜鉛30ppmであった。基本食餌は亜鉛源添加物を含むものではなかったが、分析の結果、42.73ppmの亜鉛を含んでいることが判明した。硫酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛およびグルタミン酸亜鉛を食餌処置に予め1%混合した。
【0060】
飼料摂取、1日当りの平均体重増加は各処置について判定した。成長成果は完全な無作為形式で分析した。ブロイラーの囲い(6羽のブロイラー)は実験ユニットとして使用された。処置手段の差異を判定するために、等しく間隔をあけた処置に相応しい一次および二次対比表が使用された。傾斜比テストを用いた多重線形回帰を使用して、テスト製品の有効性を比較し、硫酸亜鉛との関連でのアスパラギン酸亜鉛およびグルタミン酸亜鉛の生物学的利用能を計算した(RBV)。この計算されたアスパラギン酸亜鉛およびグルタミン酸亜鉛の相対的生物学的利用能が下記表1に要約されている。
【0061】
表 1
(ブロイラーにおけるアスパラギン酸亜鉛およびグルタミン酸亜鉛の相対的生物学的利用能)


【0062】
上記データから、本発明がその列挙した目的を達成し得ることが理解されよう。これらデータは、吸湿性1:1錯体と比較して、錯体の安定性、好ましい加工容易性を実証するものであり、更にブロイラーに与えたときの効能を実証している。
【0063】
本発明で記載した錯体は、現在市販されている金属源と比較して、動物およびヒトの食事要件を満たすのにより効果的である。これは、これらの錯体からの金属のより高い生物学的利用能に起因するものである。オスブロイラーにおいて、硫酸亜鉛との比較での、これら亜鉛錯体のより高い生物学的利用能が実施例9にて実証されている。他の実験でも、同様の応答が認められ、本発明の実用性が確認された。下記表2には、異なる動物種におけるこれらの錯体の好ましい給餌量が挙げられている。これらの給餌量は一般の工業基準に基づくものであり、個々の動物の特別な必要性、食餌組成物、食餌中の他の栄養源からの金属の濃度などに応じて、これらを変更することも可能である。
【0064】
表 2

【0065】
グルタミン酸亜鉛、グルタミン酸マンガンおよびグルタミン酸銅について表2以外の一般的ガイドラインとして、餌給量の一般的範囲は以下のガイドラインが遵守されるべきである。
1)グルタミン酸亜鉛は動物種に応じて、亜鉛30-300ppmに相当する110-1100ppmの割合で供給することができる。なお、好ましいレベルはグルタミン酸亜鉛50-300ppmである。
2)グルタミン酸マンガンは動物種に応じて、マンガン5-180ppmに相当する20-770ppmの割合で供給することができる。なお、好ましいレベルはグルタミン酸マンガン40-210ppmである。
3)グルタミン酸銅は動物種に応じて、銅5-50ppmに相当する20-190ppmの割合で供給することができる。なお、好ましいレベルはグルタミン酸銅40-110ppmである。
【0066】
なお、化合物および栄養処方、特に基本的中性錯体および二重のジカルボン酸の役割を維持するものについて、構造および処方を種々変更、改良することができることは勿論であり、そのようなものも本発明の範囲、趣旨の範疇に包含されるべきものである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
必須微量元素と、α-アミノジカルボン酸とからなることを特徴とする中性錯体。
【請求項2】
該必須微量元素が、亜鉛、銅、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、バナジウムおよびモリブデンからなる群から選択されるものである請求項1記載の中性錯体。
【請求項3】
該α-アミノジカルボン酸が、亜鉛、銅、マンガンからなる群から選択されるものである請求項1記載の中性錯体。
【請求項4】
該α-アミノジカルボン酸が、アスパラギン酸、グルタミン酸、1,6-ジカルボキシル-2-アミノへキサン酸、1,7-ジカルボキシル-2-アミノへプタン酸、および1,8-ジカルボキシル-2-アミノオクタン酸からなる群から選択されるものである請求項1記載の中性錯体。
【請求項5】
該二酸がアスパラギン酸、グルタミン酸からなる群から選択されるものである請求項1記載の中性錯体。
【請求項6】
水素燐酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、粉砕トウモロコシ穂軸、粉末糖又はこれらの任意の混合物からなる群から選択されるものを更に含む請求項1記載の中性錯体。
【請求項7】
亜鉛、銅、マンガンからなる群から選択される必須微量元素と、アスパラギン酸、グルタミン酸からなる群から選択されるα-アミノ酸とからなることを特徴とする中性錯体。
【請求項8】
該微量元素が亜鉛、銅、マンガンからなる群から選択されるものであり、該α-アミノ酸がアスパラギン酸である請求項7記載の中性錯体。
【請求項9】
該微量元素が亜鉛、銅、マンガンからなる群から選択されるものであり、該α-アミノ酸がグルタミン酸である請求項7記載の中性錯体。
【請求項10】
アスパラギン酸、グルタミン酸からなる群から選択される適当な動物飼料キャリアを更に含む請求項8記載の中性錯体。
【請求項11】
亜鉛、銅、マンガンからなる群から選択される動物飼料キャリアを更に含み、α-アミノ酸がグルタミン酸である請求項8記載の中性錯体。
【請求項12】
動物の栄養補給のための方法であって、少量、かつ、栄養補給十分量の必須微量元素と、α-アミノジカルボン酸とからなることを特徴とする中性錯体を動物に供給する方法。
【請求項13】
該動物が家畜又は家禽類である請求項12記載の方法。
【請求項14】
水溶性一塩基性アミノジカルボン酸を微量元素の水溶性金属塩と混合し;pHを中性に調整し、不溶性金属水酸化物の形成を防止し;反応物を急冷し、中性錯体の小結晶を形成させることからなることを特徴とする、必須微量元素とα-アミノジカルボン酸とからなることを特徴とする中性錯体の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微量元素と、α-アミノジカルボン酸とからなる1:1中性錯体であって、該微量元素が、亜鉛、銅、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、バナジウムおよびモリブデンからなる群から選択されることを特徴とする中性錯体。
【請求項2】
該微量元素が、亜鉛、銅、マンガンからなる群から選択されるものである請求項1記載の中性錯体。
【請求項3】
該α-アミノジカルボン酸が、アスパラギン酸、グルタミン酸、1,6-ジカルボキシル-2-アミノへキサン酸、1,7-ジカルボキシル-2-アミノへプタン酸、および1,8-ジカルボキシル-2-アミノオクタン酸からなる群から選択されるものである請求項1記載の中性錯体。
【請求項4】
該二酸がアスパラギン酸、グルタミン酸からなる群から選択されるものである請求項1記載の中性錯体。
【請求項5】
水素燐酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、粉砕トウモロコシ穂軸、粉末糖又はこれらの任意の混合物からなる群から選択される適当な動物飼料キャリアを更に含む請求項1記載の中性錯体。
【請求項6】
亜鉛、銅、マンガンからなる群から選択される微量元素と、アスパラギン酸、グルタミン酸からなる群から選択されるα-アミノ酸とからなることを特徴とする1:1中性錯体。
【請求項7】
該微量元素が亜鉛、銅、マンガンからなる群から選択されるものであり、該α-アミノ酸がアスパラギン酸である請求項6記載の中性錯体。
【請求項8】
該微量元素が亜鉛、銅、マンガンからなる群から選択されるものであり、該α-アミノ酸がグルタミン酸である請求項6記載の中性錯体。
【請求項9】
アスパラギン酸、グルタミン酸からなる群から選択される適当な動物飼料キャリアを更に含む請求項7記載の中性錯体。
【請求項10】
亜鉛、銅、マンガンからなる群から選択される動物飼料キャリアを更に含み、α-アミノ酸がグルタミン酸である請求項7記載の中性錯体。
【請求項11】
動物の栄養補給のための方法であって、少量、かつ、栄養補給十分量の、亜鉛、銅、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、バナジウムおよびモリブデンからなる群から選択される微量元素と、α-アミノジカルボン酸とからなる1:1中性錯体を動物に供給することからなることを特徴とする方法。
【請求項12】
該動物が家畜又は家禽類である請求項11記載の方法。
【請求項13】
水溶性一塩基性アミノジカルボン酸を、亜鉛、銅、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、バナジウムおよびモリブデンからなる群から選択される微量元素の水溶性金属塩と混合し;pHを中性に調整し、不溶性金属水酸化物の形成を防止し;反応物を急冷し、中性錯体の小結晶を形成させることからなることを特徴とする微量元素とα-アミノジカルボン酸とからなる1:1中性錯体の製造方法。



【公表番号】特表2006−503092(P2006−503092A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545248(P2004−545248)
【出願日】平成15年8月25日(2003.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/026672
【国際公開番号】WO2004/035524
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(592144711)ジンプロ コーポレイション (4)
【氏名又は名称原語表記】ZINPRO CORPORATION
【Fターム(参考)】