説明

α−オレフィン低重合体の製造方法

【課題】クロム系触媒を用いてα−オレフィンを低重合する方法、特にエチレンから1−ヘキセンを高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】クロム系触媒として、少なくとも(a)クロム化合物、(b)アミン、アミド及びイミドより成る群から選ばれる含窒素化合物、及び(c)アルキルアルミニウム化合物から形成されたものを用い、かつ反応液中のα−オレフィン低重合体/α−オレフィンのモル比を0.05〜1.00に維持しつつ反応を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はα−オレフィン低重合体の製造方法に関するものであり、特にエチレンから1−ヘキセンを主体としたα−オレフィン低重合体を高収率かつ高選択率で製造することが出来る、工業的に有利なα−オレフィン低重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレン等のα−オレフィンの低重合方法として、クロム化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせから成るクロム系触媒を使用する方法が知られている。例えば、特公昭43−18707号公報には、クロムを含む6族の遷移金属化合物とポリヒドロカルビルアルミニウムオキシドとから成る触媒系により、エチレンから1−ヘキセン及びポリエチレンを得る方法が記載されている。
【0003】
また、特開平3−128904号公報には、クロム−ピロリル結合を有するクロム化合物と金属アルキル又はルイス酸とを予め反応させて得られた触媒を使用して、α−オレフィンを三量化する方法が記載されている。更に、特開平6−239920号公報には、クロム化合物、ピロール類、金属アルキル化合物およびハライド源を共通の溶媒中で混合することにより得られた触媒を使用して、α−オレフィンを低重合する方法が記載されている。
【特許文献1】特公昭43−18707号公報
【特許文献2】特開平3−128904号公報
【特許文献3】特開平6−239920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のいずれの方法によっても相当量のポリマーの副生が避けられない。ポリマーの副生は、装置へのポリマーの付着や反応生成液からのポリマーの除去などの問題を生ずるので、ポリマーの副生量を如何に少なくするかがα−オレフィンの低重合を工業的に実施する場合の重要な課題である。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、α−オレフィン低重合体を連続反応方式で製造する方法においてポリマーの副生を抑制しつつ、1−ヘキセン等のα−オレフィン低重合体を高収率かつ高選択率で製造することができるα−オレフィン低重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明の要旨は、反応帯域中、クロム系触媒を含む反応液中でα−オレフィンを低重合させてα−オレフィン低重合体を製造する方法において、クロム系触媒として、少なくとも、(a)クロム化合物、(b)アミン、アミド及びイミドより成る群から選ばれる1種以上の含窒素化合物、及び(c)アルキルアルミニウム化合物から形成されたものを用い、かつ反応液中のα−オレフィン低重合体/α−オレフィンのモル比を0.05〜1.00に維持しつつ連続反応方式で反応を行なうことを特徴とするα−オレフィン低重合体の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ポリマーの副生を抑制しつつ、α−オレフィン低重合体を高収率かつ高選択率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
本発明においては、クロム系触媒として、少なくとも、(a)クロム化合物、(b)アミン、アミド及びイミドより成る群から選ばれる1種以上の含窒素化合物、及び(c)アルキルアルミニウム化合物から形成された触媒を使用する。
【0008】
本発明で触媒形成に使用するクロム化合物は、一般式CrXnで表される。但し、該一般式中、Xは、任意の有機若しくは無機の基又は陰性原子、nは1〜6の整数を表し、そして、nが2以上の場合、Xは相互に同一または異なっていてもよい。クロムの価数は0〜6価であり、上記の式中のnとしては2以上が好ましい。
上記有機の基としては、炭素数が通常1〜30の各種の基が挙げられる。具体的には、炭化水素基、カルボニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、β−ジケトナート基、β−ケトカルボキシル基、β−ケトエステル基およびアミド基などが例示される。炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、シクロペンタジエニル基などが挙げられる。上記無機の基としては、硝酸基、硫酸基などのクロム塩形成基が挙げられ、上記陰性原子としては、酸素、ハロゲン等が挙げられる。
【0009】
この範疇に属する好ましいクロム化合物は、例えばクロムのアルコキシ塩、カルボキシル塩、β−ジケトナート塩、β−ケトエステルのアニオンとの塩、または、クロムハロゲン化物であり、具体的には、クロム(IV)−t−ブトキシド、クロム(III)アセチルアセトナート、クロム(III)トリフルオロアセチルアセトナート、クロム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、クロム(III)(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、Cr(PhCOCHCOPh)3 (但し、ここでPhはフェニル基を示す。)、クロム(II)アセテート、クロム(III)アセテート、クロム(III)−2−エチルヘキサノエート、クロム(III) ベンゾエート、クロム(III) ナフテネート、Cr(CH3 COCHCOOCH33 、塩化第一クロム、塩化第二クロム、臭化第一クロム、臭化第二クロム、ヨウ化第一クロム、ヨウ化第二クロム、フッ化第一クロム、フッ化第二クロム等が挙げられる。
【0010】
また、上記のクロム化合物と電子供与体とから成る錯体も好適に使用することが出来る。該電子供与体は、窒素、酸素、リン又は硫黄を含有する化合物の中から選択される。
上記窒素を含有する電子供与体としては、ニトリル、アミン、アミド、ニトロ化合物等が挙げられ、具体的には、アセトニトリル、ピリジン、ジメチルピリジン、ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アニリン、ニトロベンゼン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、ヘキサメチルジシラザン、ピロリドン等が挙げられる。
【0011】
上記酸素を含有する電子供与体としては、エステル、エーテル、ケトン、アルコール、アルデヒド等が挙げられ、具体的には、エチルアセテート、メチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、アセトアルデヒド等が挙げられる。
【0012】
上記リンを含有する電子供与体としては、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホラストリアミド、トリエチルホスファイト、トリブチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィン等が例示される。また、上記硫黄を含有する電子供与体としては、二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、チオフェン、ジメチルスルフィド等が例示される。
【0013】
クロム化合物と電子供与体から成る錯体の例としては、ハロゲン化クロムのエーテル錯体、エステル錯体、ケトン錯体、アルデヒド錯体、アルコール錯体、アミン錯体、ニトリル錯体、ホスフィン錯体、チオエーテル錯体などが挙げられる
。具体的には、CrCl3 ・3THF、CrCl3 ・3DOX、CrCl3 ・(CH3 CO2 −n−C49 )、CrCl3 ・(CH3 CO225 )、CrCl3 ・3(i−C37 OH)、CrCl3 ・3〔CH3 (CH23 CH(C2 5 )CH2 OH〕、CrCl3 ・3PRD、CrCl3 ・2(i−C37 NH2 )、〔CrCl3 ・3CH3 CN〕・CH3 CN、CrCl3 ・3PPh3 、CrCl2 ・2THF、CrCl2 ・2PRD、CrCl2 ・2〔(C252 NH〕、CrCl2 ・2CH3 CN、CrCl2 ・2〔P(CH32 Ph〕等が挙げられる。なお、上記において、THFはテトラヒドロフランを、DOXはジオキサンを、PRDはピリジンを、Phはフェニル基を、それぞれ表わす。
【0014】
クロム化合物としては、炭化水素溶媒に可溶な化合物が好ましい。このようなクロム化合物としては、クロムのβ−ジケトナート塩、カルボン酸塩、β−ケトエステルのアニオンとの塩、β−ケトカルボン酸塩、アミド錯体、カルボニル錯体、カルベン錯体、シクロペンタジエニル錯体、アルキル錯体、フェニル錯体などが挙げられる。クロムのカルボニル錯体、カルベン錯体、シクロペンタジエニル錯体、アルキル錯体、フェニル錯体の具体例としては、Cr(CO)6 、(C66 )Cr(CO)3 、(CO)5 Cr(=CCH3 (OCH3 ))、(CO)5 Cr(=CC65 (OCH3 ))、CpCrCl2 、(Cp*CrClCH32 、(CH32 CrCl等が挙げられる。なお、上記においてCpはシクロペンタジエニル基を、Cp*はペンタメチルシクロペンタジエニル基を、そ
れぞれ表わす。
【0015】
クロム化合物は、無機酸化物などの担体に担持して使用することも出来るが、担体に担持させずに、他の触媒成分と組み合わせて使用するのが好ましい。すなわち、本発明において、クロム系触媒は、好ましくは後述する特定の方法で形成されるが、かかる態様によれば、クロム化合物の担体への担持を行わなくとも高い触媒活性が得られる。そして、クロム化合物を担体に担持させずに使用する場合は、複雑な操作を伴う担体への担持を省略でき、しかも、担体の使用による総触媒使用量(担体と触媒成分の合計量)の増大と言う問題をも回避することが出来る。
【0016】
本発明で触媒の形成に際し、(b)含窒素化合物として使用するアミンは、1級または2級アミンである。1級アミンとしては、エチルアミン、イソプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、アニリン、ナフチルアミン等が例示され、2級アミンとしては、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ビス(トリメチルシリル)アミン、モルホリン、イミダゾール、インドリン、インドール、ピロール、2,5−ジメチルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジクロロピロール、2,3,4,5−テトラクロロピロール、2−アセチルピロール、ピラゾール、ピロリジン等が例示される。
【0017】
また、アミドとしては、1級または2級アミンから誘導される金属アミドが挙げられ、例えば、上記の1級または2級アミンと1族、2族、13族および14族から選択される金属との反応により得られるアミドが挙げられる。このような金属アミドの具体例としては、リチウムアミド、ナトリウムエチルアミド、カルシウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムベンジルアミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムインドリド、ナトリウムピロリド、リチウムピロリド、カリウムピロリド、カリウムピロリジド、アルミニウムジエチルピロリド、エチルアルミニウムジピロリド、アルミニウムトリピロリド等が挙げられる。
【0018】
上記のアミン、アミドのうちでは、2級アミン若しくは2級アミンから誘導される金属アミド又はこれらの混合物が好適に使用される。特に、2級アミンとしては、ピロール、2,5−ジメチルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジクロロピロール、2,3,4,5−テトラクロロピロール、2−アセチルピロールが、2級アミンから誘導される金属アミドとしては、アルミニウムピロリド、エチルアルミニウムジピロリド、アルミニウムトリピロリド、ナトリウムピロリド、リチウムピロリド、カリウムピロリドが好適である。そして、ピロール類のうち、ピロール環に炭化水素基を有する誘導体が特に好ましい。
【0019】
本発明において、触媒の形成に際し、(b)含窒素化合物として使用する前記以外のアミド又はイミド化合物としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物などが挙げられる。
【0020】
【化1】

【0021】
一般式(1)中、M1 は、水素原子または周期表の1族、2族、11族若しくは13族から選ばれる金属元素であり、R1 は、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または、ヘテロ元素を含んでいてもよいアリール基を表し、R2 は、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロ元素を含んでいてもよいアリール基、または、アシル基C(=O)R3 (R3 の定義はR1 と同じであり、R1 と異なっていてもよい)を表し、R1 とR2 は環を形成していてもよい。
【0022】
一般式(2)中、M2 及びM3 は、水素原子または周期表の1族、2族、11族若しくは13族から選ばれる金属元素であり、R4 及R5 は、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または、ヘテロ元素を含んでいてもよいアリール基を表し、R4 とR5 は環を形成していてもよく、Aは不飽和結合を含んでいてもよいアルキレン基を表す。
【0023】
一般式(3)中、M4 は、水素原子または周期表の1族、2族、11族若しくは13族から選ばれる金属元素であり、R6 は、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または、ヘテロ元素を含んでいてもよいアリール基を表し、R7 は、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロ元素を含んでいてもよいアリール基、または、SO28 基(R8 の定義はR6 と同じであり、R6 と異なっていてもよい)を表し、R6 とR7 は環を形成していてもよい。
【0024】
一般式(1)又は一般式(2)で表されるアミド類としては、例えば、アセトアミド、N−メチルヘキサンアミド、スクシンアミド、マレアミド、N−メチルベンズアミド、イミダゾール−2−カルボンアミド、ジ−2−テノイルアミン、β−ラクタム、δ−ラクタム、ε−カプロラクタム、および、これらと周期表の1族、2族、11族若しくは13族の金属との塩が挙げられる。また、イミド類としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド、スクシンイミド、フタルイミド、マレイミド、2,4,6−ピペリジントリオン、ペルヒドロアゼシン−2,10−ジオン、および、これらと周期表の1族、2族、11族若しくは13族の金属との塩が挙げられる。
【0025】
一般式(3)で示されるスルホンアミド類およびスルホンイミド類としては、例えば、ベンゼンスルホンアミド、N−メチルメタンスルホンアミド、N−メチルトリフルオロメタンスルホンアミド、および、これらと周期表の1族、2族、11族若しくは13族の金属との塩が挙げられる。
これらの一般式(1)〜(3)で表わされるアミド又はイミド化合物のうちでは、一般式(1)で表わされる化合物が好ましく、特に、一般式(1)中のR2 がアシル基C(=O)R3 を表し、R1 とR2 が環を形成しているイミド化合物が好ましい。
本発明において、触媒の形成に用いる(c)アルキルアルミニウム化合物としては、下記一般式(4)で示されるアルキルアルミニウム化合物が好適に使用される。
【0026】
(化2)
9 m Al(OR10t p q …(4)
【0027】
一般式(4)中、R9 及びR10は、炭素数が通常1〜15、好ましくは1〜8の炭化水素基であって互いに同一であっても異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を表し、m、t、p、qはそれぞれ、0<m≦3、0≦t<3、0≦p<3、0≦q<3、を満たし、かつ、m+t+p+q=3である数を表す。
【0028】
上記のアルキルアルミニウム化合物としては、例えば、下記一般式(5)で示されるトリアルキルアルミニウム化合物、一般式(6)で示されるハロゲン化アルキルアルミニウム化合物、一般式(7)で示されるアルコキシアルキルアルミニウム化合物、一般式(8)で示される水素化アルキルアルミニウム化合物などが挙げられる。なお、各式中のR9 、XおよびR10の定義は前記と同じである。
【0029】
(化3)
9 3 Al …(5)
9 m AlX3-m (mは1.5≦m<3) …(6)
9 m Al(OR103-m …(7)
(mは0<m<3、好ましくは1.5≦m<3)
9 m AlH3-m …(8)
(mは0<m<3、好ましくは1.5≦m<3)
【0030】
上記のアルキルアルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムヒドリド等が挙げられる。これらのうち、ポリマーの副生が少ないと言う点でトリアルキルアルミニウムが特に好ましい。アルキルアルミニウム化合物は、2種以上の混合物であってもよく、例えばトリアルキルアルミニウムとハロゲン化アルキルアルミニウムとの混合物を用いることもできる。
【0031】
本発明において、触媒は上述の3成分から本質的に形成されるが、これら3成分に加えて、(d)ハロゲン含有化合物を触媒形成に用いるのが好ましい。(d)ハロゲン含有化合物としては、ハロゲン原子が含まれる化合物であればよいが、次のハロゲン含有化合物(1)〜(4)が好ましい。 ハロゲン含有化合物(1)は、周期表の3族、4族、5族、6族、13族、14族及び15族から選ばれる元素を含むハロゲン含有化合物である。具体的には、塩化スカンジウム、塩化イットリウム、塩化ランタン、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、四塩化ハフニウム、三塩化バナジウム、五塩化モリブデン、三塩化ホウ素、塩化アルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、塩化ガリウム、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、トリチルクロリド、四塩化シラン、トリメチルクロロシラン、四塩化ゲルマニウム、四塩化スズ、トリブチルスズクロリド、三塩化リン、三塩化アンチモン、トリチルヘキサクロロアンチモネート、五塩化アンチモン、三塩化ビスマス、三臭化ホウ素、三臭化アルミニウム、四臭化炭素、ブロモホルム、ブロモベンゼン、ヨードメタン、四臭化ケイ素、ヘキサフルオロベンゼン、フッ化アルミニウム等が挙げられる。これらの中では、ハロゲン原子の数が多い化合物が好ましく、また、低重合反応を行なう溶媒に可溶の化合物が好ましい。ハロゲン含有化合物(1)のハロゲンとしては、臭素または塩素、中でも活性、目的生成物の選択性等総合的にみて塩素を用いるのが好ましく、特に好ましいハロゲン含有化合物(1)は、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化チタン、四塩化ゲルマニウム、四塩化スズである。これらの2種以上の混合物を用いることも出来る。
【0032】
ハロゲン含有化合物(2)は、3個以上のハロゲン原子で置換された炭素数2以上の直鎖状炭化水素類である。ハロゲン含有化合物(2)における直鎖状炭化水素類としては、直鎖状飽和炭化水素類が好ましい。隣り合った2個の炭素に3個以上のハロゲン原子が置換した直鎖状炭化水素類が好ましく、一般式(9)、(10)、(11)で表わされる直鎖状ハロゲン化炭化水素類が特に好ましい。
【0033】
【化4】

【0034】
一般式(9)中、X1 〜X8 は水素原子またはハロゲン原子を表わし、X1 〜X5 のうち、少なくとも3個はハロゲン原子であり、rは0〜8である。

【0035】
【化5】

【0036】
一般式(10)中、X9 〜X11はハロゲン原子を表わし、X12〜X16はハロゲン原子または水素原子であり、sは0〜8である。
【0037】
【化6】

【0038】
一般式(11)中、X17〜X20はハロゲン原子を表わし、X21〜X24はハロゲン原子または水素原子であり、wは0〜8である。
ハロゲン含有化合物(2)におけるハロゲンとしては、塩素または臭素、中でも活性、目的生成物の選択性等総合的にみて塩素を用いるのが好ましく、そして、一般式(9)〜(11)におけるr、sおよびwとしては、各々0〜3が好ましい。一般式(9)〜(11)で表わされる直鎖状ハロゲン化炭化水素類として、具体的には、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,1,1−トリクロロプロパン、1,1,2,2−テトラクロロプロパン、1,1,1−トリクロロブタン、1,1,2,2−テトラクロロブタン、1,1,1−トリクロロペンタン、1,1,2,2−テトラクロロペンタン、1,1,1−トリブロモエタン、1,1,2,2−テトラブロモエタン等が挙げられる。これらの中では、特に、1,1,1−トリクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンが好適である。
【0039】
ハロゲン含有化合物(2)の使用は、触媒活性および三量化物の選択率が著しく向上するだけでなく触媒の経時劣化を改善できるという利点がある。
ハロゲン含有化合物(3)はハロゲン化環状炭化水素である。環状炭化水素としては、環状飽和炭化水素が好ましく、ハロゲン含有化合物(3)としては3個のハロゲン原子で置換された環状飽和炭化水素が特に好ましい。そして、ハロゲン原子としては塩素または臭素、中でも活性、目的生成物の選択性等、総合的にみて塩素を用いるのが好ましい。
【0040】
ハロゲン含有化合物(3)の具体例としては、1,2,3−トリクロロシクロプロパン、1,1,2−トリクロロシクロプロパン、1,2,3−トリブロモシクロプロパン、1,1,2−トリブロモシクロプロパン等のトリハロゲン化シクロプロパン、1,1,2,3−テトラクロロシクロプロパン、1,1,2,2−テトラクロロシクロプロパン、1,1,2,3−テトラブロモシクロプロパン、1,1,2,2−テトラブロモシクロプロパン等のテトラハロゲン化シクロプロパン、ペンタクロロシクロプロパン、ペンタブロモシクロプロパン等のペンタハロゲン化シクロプロパン、ヘキサクロロシクロプロパン、ヘキサブロモシクロプロパン等のヘキサハロゲン化シクロプロパン、1,2,3−トリクロロシクロブタン、1,1,2−トリクロロシクロブタン、1,2,3−トリブロモシクロブタン、1,1,2−トリブロモシクロブタン等のトリハロゲン化シクロブタン、1,2,3,4−テトラクロロシクロブタン、1,1,2,3−テトラクロロシクロブタン、1,2,3,4−テトラブロモシクロブタン、1,1,2,3−テトラブロモシクロブタン等のテトラハロゲン化シクロブタン、1,1,2,3,4−ペンタクロロシクロブタン、1,1,2,2,3−ペンタクロロシクロブタン、1,1,2,3,4−ペンタブロモシクロブタン、1,1,2,2,3−ペンタブロモシクロブタン等のペンタハロゲン化シクロブタン、1,1,2,2,3,4−ヘキサクロロシクロブタン、1,1,2,2,3,3−ヘキサクロロシクロブタン、1,1,2,2,3,4−ヘキサブロモシクロブタン、1,1,2,2,3,3−ヘキサブロモシクロブタン等のヘキサハロゲン化シクロブタン、ヘプタクロロシクロブタン、ヘプタブロモシクロブタン等のヘプタハロゲン化シクロブタン、オクタクロロシクロブタン、オタクブロモシクロブタン等のオクタハロゲン化シクロブタン等が挙げられる。
【0041】
また、1,2,3−トリクロロシクロペンタン、1,1,2−トリクロロシクロペンタン、1,2,3−トリブロモシクロペンタン、1,1,2−トリブロモシクロペンタン等のトリハロゲン化シクロペンタン、1,2,3,4−テトラクロロシクロペンタン、1,1,2,3−テトラクロロシクロペンタン、1,2,3,4−テトラブロモシクロペンタン、1,1,2,3−テトラブロモシクロペンタン等のテトラハロゲン化シクロペンタン、1,2,3,4,5−ペンタクロロシクロペンタン、1,1,2,3,4−ペンタクロロシクロペンタン、1,1,2,2,3−ペンタクロロシクロペンタン、1,2,3,4,5−ペンタブロモシクロペンタン、1,1,2,3,4−ペンタブロモシクロペンタン、1,1,2,2,3−ペンタブロモシクロペンタン等のペンタハロゲン化シクロペンタン、1,1,2,3,4,5−ヘキサクロロシクロペンタン、1,1,2,3,4,5−ヘキサブロモシクロペンタン等のヘキサハロゲン化シクロペンタン、1,1,2,2,3,4,5−ヘプタクロロシクロペンタン、1,1,2,2,3,4,5−ヘプタブロモシクロペンタン等のヘプタハロゲン化シクロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,5−オクタクロロシクロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,5−オクタブロモシクロペンタン等のオクタハロゲン化シクロペンタン、ノナクロロシクロペンタン等のノナハロゲン化シクロペンタン、デカクロロシクロペンタン等のデカハロゲン化シクロペンタン等が挙げられる。
【0042】
更に、1,2,3−トリクロロシクロヘキサン、1,1,2−トリクロロシクロヘキサン、1,2,3−トリブロモシクロヘキサン、1,1,2−トリブロモシクロヘキサン等のトリハロゲン化シクロヘキサン、1,2,3,4−テトラクロロシクロヘキサン、1,1,2,3−テトラクロロシクロヘキサン、1,2,3,4−テトラブロモシクロヘキサン、1,1,2,3−テトラブロモシクロヘキサン等のテトラハロゲン化シクロヘキサン、1,2,3,4,5−ペンタクロロシクロヘキサン、1,1,2,3,4−ペンタクロロシクロヘキサン、1,1,2,2,3−ペンタクロロシクロヘキサン、1,2,3,4,5−ペンタブロモシクロヘキサン、1,1,2,3,4−ペンタブロモシクロヘキサン、1,1,2,2,3−ペンタブロモシクロヘキサン等のペンタハロゲン化シクロヘキサン、1,2,3,4,5,6−ヘキサクロロシクロヘキサン、1,2,3,4,5,6−ヘキサブロモシクロヘキサン等のヘキサハロゲン化シクロヘキサン、1,1,2,3,4,5,6−ヘプタクロロシクロヘキサン、1,1,2,3,4,5,6−ヘプタブロモシクロヘキサン等のヘプタハロゲン化シクロヘキサン、1,1,2,2,3,4,5,6−オクタクロロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,4,5,6−オクタブロモシクロヘキサン等のオクタハロゲン化シクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,5,6−ノナクロロシクロヘキサン等のノナハロゲン化シクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,4,5,6−デカクロロシクロヘキサン等のデカハロゲン化シクロヘキサン、ウンデカクロロシクロヘキサン等のウンデカハロゲン化シクロヘキサン、ドデカクロロシクロヘキサン等のドデカハロゲン化シクロヘキサン等が挙げられる。
【0043】
上記の中では、特に1,2,3−トリクロロシクロプロパン、ペンタクロロシクロプロパン、1,2,3,4−テトラクロロシクロブタン、1,2,3,4,5−ペンタクロロシクロペンタン、1,2,3,4,5,6−ヘキサクロロシクロヘキサンが好適である。
ハロゲン含有化合物(3)の使用は、触媒活性および三量化物の選択率が著しく向上するだけでなく触媒の経時劣化を改善できるという利点がある。
【0044】
ハロゲン含有化合物(4)は、下記一般式(12)で表わされる。
【0045】
【化7】

【0046】
一般式(12)中、R11〜R14は水素又はアルキル基を表わし、X25は水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表わし、X26はハロゲン原子を表わす。
また、ハロゲンとしては塩素又は臭素、中でも活性、目的生成物の選択性等総合的にみて塩素を用いるのが好ましい。ハロゲン含有化合物(4)としては具体的には、塩化アリル、3,3−ジクロロ−1−プロペン、3−クロロ−1−ブテン、3,3−ジクロロ−1−ブテン、1−クロロ−2−ブテン、1,1−ジクロロ−2−ブテン、3−クロロ−3−メチル−1−ブテン、3−クロロ−1−ペンテン、3,3−ジクロロ−1−ペンテン、4−クロロ−2−ペンテン、4,4−ジクロロ−2−ペンテン、1−クロロ−2−ペンテン、1,1−ジクロロ−2−ペンテン等が挙げられるが、塩化アリルが最も好ましい。
【0047】
ハロゲン含有化合物(4)の使用は、触媒活性、三量化物の選択率が著しく向上するだけでなく、ハロゲン原子当りの活性が高い為、使用するハロゲン含有化合物の量が少量ですみ、また反応工程あるいは蒸留精製時に生成するハロゲン含有分解物が少量である為、得られた三量化物を精製する際、ハロゲン含有不純物を容易に分離でき目的生成物を高純度で回収することができるという利点がある。
【0048】
また、本発明においては、ハロゲン含有化合物として、t−ブチルジメチルシリルトリフラート(t−BuMe2 SiOSO2 CF3 )、トリスペンタフルオロフェニルボロン(B(C653 )、トリフルオロメタンスルホン酸(CF3 SO3 H)、ヘキサフルオロイソプロパノール((CF32 CHOH)等も好適に使用することが出来る。
本発明においては、上記の各触媒成分(a)〜(c)、好ましくは(a)〜(d)から形成されたクロム系触媒を使用して液状反応媒体中でα−オレフィンの低重合を行なう。
【0049】
本発明において低重合反応に供する原料α−オレフィンとしては、炭素数が2〜30の置換または非置換のα−オレフィンが使用される。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。特に、原料α−オレフィンとしてエチレンが好適であり、本発明によればエチレンからその三量体である1−ヘキセンを高収率かつ高選択率で得ることが出来る。
【0050】
本発明において、反応溶媒としては、ブタン、ペンタン、3−メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の炭素数3〜20の鎖状または脂環式の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素などが使用される。これらは、単独で使用する他、混合溶媒として使用することも出来る。また、本発明においては反応原料のα−オレフィン自体や他のオレフィンを溶媒とすることもできる。オレフィンを溶媒とする場合には、常温で液状のものを用いるのが好ましい。
【0051】
溶媒として特に好ましいのは、炭素数が4〜7の鎖状飽和炭化水素または脂環式飽和炭化水素である。これらの溶媒を使用することにより、ポリマーの副生を抑制することが出来、更に、脂環式飽和炭化水素を使用した場合は、高い触媒活性が得られるという利点がある。
本発明で低重合反応に用いる触媒は、(a)クロム化合物、(b)アミン、アミド及びイミドから選ばれる含窒素化合物、(c)アルキルアルミニウム化合物、及び好ましくは(d)ハロゲン含有化合物を20〜200℃、好ましくは50〜150℃で混合することにより形成される。
【0052】
低重合反応を行う前に予めクロム系触媒を調製して、その後調製された触媒を反応帯域に供給してもよく、また、触媒形成に用いる各成分を反応帯域に供給して、クロム系触媒の形成と低重合反応とを同時に行ってもよい。いずれの方法によるときも、(a)クロム化合物と(c)アルキルアルミニウム化合物とが予め接触しない態様をとるのが好ましい。すなわち、(a)クロム化合物及び(c)アルキルアルミニウム化合物のそれぞれは、(b)アミン、アミド及びイミドから選ばれる含窒素化合物や(d)ハロゲン含有化合物と事前に接触させてもかまわないが、両者はα−オレフィンの存在下に初めて接触させるようにするのがよい。
【0053】
上記の接触態様により高性能の触媒が生成する理由は、(a)クロム化合物と(c)アルキルアルミニウム化合物との接触により生成する反応物は極めて不安定であり、そのままでは容易に分解してしまうが、α−オレフィンが存在するとα−オレフィンがこれに配位して反応生成物が適度に安定化することによるものと考えられる。
本発明における各触媒成分の接触法の具体的態様を例示すると次の(1)〜(9)が挙げられる。なお、触媒を予め調製して低重合反応帯域に供給する場合には、溶媒は通常は低重合反応に用いるものと同一であるが、所望ならば他のものを用いることもできる。また、これらの態様において、α−オレフィンは予め溶液中に含有させておいてもよい。
【0054】
(1)(b)含窒素化合物、(c)アルキルアルミニウム化合物及び(d)ハロゲン含有化合物を含む溶液中に、(a)クロム化合物及びα−オレフィンを導入する方法。
(2)(a)クロム化合物、(d)ハロゲン含有化合物及び(b)含窒素化合物を含む溶液中に、(c)アルキルアルミニウム化合物及びα−オレフィンを導入する方法。
(3)(a)クロム化合物及び(d)ハロゲン含有化合物を含む溶液中に、(b)含窒素化合物、(c)アルキルアルミニウム化合物及びα−オレフィンを導入する方法。
【0055】
(4)(c)アルキルアルミニウム化合物及び(d)ハロゲン含有化合物を含む溶液中に、(a)クロム化合物、(b)含窒素化合物及びα−オレフィンを導入する方法。
(5)(a)クロム化合物及び(b)含窒素化合物を含む溶液中に、(c)アルキルアルミニウム化合物、(d)ハロゲン含有化合物及びα−オレフィンを導入する方法。
(6)(b)含窒素化合物及び(c)アルキルアルミニウム化合物を含む溶液中に、(a)クロム化合物、(d)ハロゲン含有化合物及びα−オレフィンを導入する方法。
【0056】
(7)(c)アルキルアルミニウム化合物を含む溶液中に、(a)クロム化合物、(b)含窒素化合物、(d)ハロゲン含有化合物及びα−オレフィンを導入する方法。
(8)(a)クロム化合物を含む溶液中に、(d)ハロゲン含有化合物、(b)含窒素化合物、(c)アルキルアルミニウム化合物及びα−オレフィンを導入する方法。
(9)(a)クロム化合物、(b)含窒素化合物、(c)アルキルアルミニウム化合物、(d)ハロゲン含有化合物及びα−オレフィンをそれぞれ同時に独立に液中に導入する方法。
【0057】
本発明においては前述の如く触媒は予め調製して反応系に供給してもよいが、触媒の形成に用いる(a)〜(c)及び好ましくは(d)の各成分を反応帯域に供給して、低重合反応と同時に反応系中で触媒を形成させるのが好ましい。予め触媒を調製して反応系に供給する場合も含めていずれの方法においても触媒成分の供給量は、反応媒体1リットル当り、(a)クロム化合物は通常1×10-7〜0.5モル、好ましくは5×10-7〜0.2モル、(b)含窒素化合物は通常1×10-7〜0.1モル、好ましくは5×10-7〜5×10-2モル、(c)アルキルアルミニウム化合物は1×10-7〜7×10-2モル、好ましくは5×10-7〜5×10-2モル、(d)ハロゲン含有化合物は通常1×10-7〜0.1モル、好ましくは5×10-7〜5×10-2モルである。最も好ましくは、(a)クロム化合物は1×10-6〜5×10-2モル、(b)含窒素化合物は1×10-6〜1×10-2モル、(c)アルキルアルミニウム化合物は1×10-6〜1×10-2、そして(d)ハロゲン含有化合物は1×10-6〜1×10-2モルである。
【0058】
予め触媒を調製して反応に供する場合も含めて、いずれの触媒形成方法においても、各成分の使用モル比は、通常は(a):(b):(c)=1:0.1〜100:0.1〜500であるが、1:0.1〜10:1〜100が好ましい。特に好ましくは1:1〜5:5〜50である。また、触媒成分に(d)ハロゲン含有化合物を用いる場合には、通常は(a):(b):(c):(d)=1:0.1〜100:0.1〜500:0.1〜100であるが、1:0.1〜10:1〜100:0.1〜20が好ましい。特に好ましいのは1:1〜5:5〜50:1〜10である。このような比率を用いて形成された触媒を用いると、例えばエチレンからヘキセンを90%以上の選択率で生成させ、かつ1−ヘキセンの選択率を99%以上にも高めることができる。
【0059】
本発明の低重合反応は、連続反応方式、即ち、反応帯域に原料のα−オレフィンが連続的に供給され、かつ、生成した低重合体が反応帯域から連続的に排出される方式で行なわれる。
本発明では、上述の触媒を用いてα−オレフィンの低重合体を連続反応方式で製造するに際し、反応液中のα−オレフィン低重合体/α−オレフィンのモル比を0.05〜1.00、好ましくは0.10〜0.80の範囲に維持する。このモル比は、反応器への触媒の供給量や反応時間(滞留時間)を調節することにより制御できる。例えば、触媒の供給量を少なくしたり、反応時間を短くすると、α−オレフィンの反応率が低下し、α−オレフィン低重合体の生成量が減少して、反応液中のα−オレフィン低重合体/α−オレフィンのモル比が小さくなる。また、α−オレフィンの供給量を増加させても、このモル比を小さくすることができる。反応液中のα−オレフィン低重合体/α−オレフィンのモル比を大きくするには、上記の逆の操作を行なえばよい。
【0060】
α−オレフィン低重合体/α−オレフィンのモル比を1.00以下、好ましくは0.80以下に維持しつつ反応を行なわせると、目的とするα−オレフィン低重合体よりも沸点の高い成分の副生が抑制され、目的とするα−オレフィン低重合体を高収率かつ高選択率で得ることができる。
しかし、α−オレフィン低重合体/α−オレフィンのモル比を小さくすることは、α−オレフィンの反応率を低くすることでもあるので、他に特段の理由の無い限り、必要以上にこのモル比を小さくするのは有利ではない。従って本発明においては、α−オレフィン低重合体/α−オレフィンのモル比は、本発明の目的である沸点の高い副生物の抑制と反応操作の効率の双方を考慮して0.05以上とすべきである。このモル比を0.10以上とするのがより好ましい。
【0061】
また、上記α−オレフィンの低重合反応における反応液中のα−オレフィン濃度は、通常0.5mol/l以上、好ましくは1〜7mol/lの範囲とする。
上記α−オレフィン濃度が低すぎると、低重合反応に有効な触媒活性種が十分に形成できず、低重合反応の反応速度が低下してくる。
また、上記α−オレフィン濃度が高過ぎると、反応圧力を必要以上に高くする必要があり、工業的に有利でない。
【0062】
さらに、上記低重合反応の反応液の滞留時間は、通常60分以下、好ましくは1〜50分の範囲内とする。上記滞留時間が長過ぎると触媒が経時劣化しやすくなり、また生成物が1−ヘキセンの場合、1−ヘキセンの内部オレフィンへの異性化が起こりやすくなる。
本発明によるα−オレフィンの低重合反応は、通常20〜200℃、かつ10〜200kg/cm2 の条件下で行なわれる。より好適な反応温度及び反応圧力は、それぞれ50〜150℃、20〜100kg/cm2 である。なお、反応帯域に水素を存在させると、一般に触媒活性及び三量体の選択率が向上し、かつ反応器の器壁等へのポリマーの付着が減少するなどの効果が得られる。水素は、気相中に0.1〜15容量%となるように存在させるのが好ましい。
【0063】
本発明方法によるα−オレフィンの低重合反応は種々の形式の反応器を用いて行なうことができる。通常は撹拌型の流通反応器、特に撹拌槽型の流通反応器を用いるのが好ましい。
反応生成液からのα−オレフィン低重合体の回収は常法により行なうことができる。例えば副生ポリマーが存在するならば先ずこれを分離し、次いで蒸留してα−オレフィン低重合体を分離・回収する。
【実施例】
【0064】
以下に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
2本の触媒供給管と1本の反応液抜出し管とを有する容量2リットルのオートクレーブを、温度150℃の乾燥器内で乾燥して組立て、次いで真空窒素置換した。
【0065】
このオートクレーブに、一方の触媒供給管から2,5−ジメチルピロールを0.031mmol/hr、トリエチルアルミニウムを0.16mmol/hr、及び四塩化炭素を0.021mmol/hrの供給速度で、それぞれn−ヘプタン溶液として連続的に供給した。他方の触媒供給管からは、エチレンと共にクロム(III)−2−エチルヘキサノエートを0.010mmol/hr(5.0mg/hr)の供給速度でn−ヘプタン溶液として連続的に供給した。オートクレーブへのn−ヘプタンの全供給量は1リットル/hrである。オートクレーブを80℃に保ち、エチレンを全圧が35kg/cm2 Gとなるように連続的に供給して、エチレンの低重合反応を行なわせた。オートクレーブからは、内容液が1リットルとなるように、反応液抜出し管を経て反応液を抜出した。抜出した反応液は脱ガス槽に導入し、常圧まで脱ガスしたのち、液成分及びガス成分をガスクロマトグラフで分析した。結果を表−1に示す。
【0066】
実施例2
オートクレーブへの触媒形成成分の供給速度を、
【0067】
(表1)
2,5−ジメチルピロール 0.062mmol/hr
トリエチルアルミニウム 0.31mmol/hr
四塩化炭素 0.042mmol/hr
クロム(III)−2−エチルヘキサノエート 0.021mmol/hr
【0068】
と変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行なった。結果を表−1に示す。
実施例3
オートクレーブの圧力を50kg/cm2 Gとなるようにエチレンを供給した以外は、実施例2と同様にして反応を行なった。結果を表−1に示す。
【0069】
比較例1
オートクレーブへの触媒形成成分の供給速度を、
【0070】
(表2)
2,5−ジメチルピロール 0.37mmol/hr
トリエチルアルミニウム 1.9mmol/hr
四塩化炭素 0.25mmol/hr
クロム(III)−2−エチルヘキサノエート 0.13mmol/hr
【0071】
と変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行なった。結果を表−1に示す。
【0072】
実施例4
2本の触媒供給管と1本の反応液抜出し管とを有する容量2リットルのオートクレーブを、温度150℃の乾燥器内で乾燥して組立て、次いで真空窒素置換した。
このオートクレーブに、一方の触媒供給管から2,5−ジメチルピロールを0.067mmol/hr、トリエチルアルミニウムを0.448mmol/hr、及びヘキサクロロエタンを0.045mmol/hrの供給速度で、それぞれn−ヘプタン溶液として連続的に供給した。他方の触媒供給管からは、エチレンと共にクロム(III)−2−エチルヘキサノエートを0.011mmol/hr(5.4mg/hr)の供給速度でn−ヘプタン溶液として連続的に供給した。オートクレーブへのn−ヘプタンの全供給量は1.8リットル/hrである。オートクレーブを80℃に保ち、エチレンを全圧が35kg/cm2 Gとなるように連続的に供給して、エチレンの低重合反応を行なわせた。オートクレーブからは、内容液が1リットルとなるように、反応液抜出し管を経て反応液を抜出した。抜出した反応液は脱ガス槽に導入し、常圧まで脱ガスしたのち、液成分及びガス成分をガスクロマトグラフで分析した。結果を表−1に示す。
【0073】
実施例5から17及び比較例2〜3
オートクレーブへの触媒形成成分の供給速度、または反応条件を表−1のように変更した以外は実施例4と同様にして反応を行なった。その結果を表−1に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
【表5】

【0077】
【表6】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応帯域中、クロム系触媒を含む反応液中で、α−オレフィンを低重合させてα−オレフィン低重合体を製造する方法において、クロム系触媒として、少なくとも(a)クロム化合物、(b)アミン、アミド及びイミドより成る群から選ばれる含窒素化合物、及び(c)アルキルアルミニウム化合物から形成されたものを用い、かつ反応液中のα−オレフィン低重合体/α−オレフィンのモル比を0.05〜1.00に維持しつつ連続反応方式で反応を行なうことを特徴とするα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項2】
触媒形成に際しての、(a)クロム化合物、(b)アミン、アミド及びイミドより成る群から選ばれる含窒素化合物、及び(c)アルキルアルミニウム化合物の使用比率が、モル比で、(a):(b):(c)=1:0.1〜10:1〜100であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒が、(a)クロム化合物と(c)アルキルアルミニウム化合物とを、α−オレフィンの存在下に初めて接触させる過程を経て形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
反応帯域中、クロム系触媒を含む反応液中でα−オレフィンを低重合させてα−オレフィン低重合体を製造する方法において、反応帯域にα−オレフィン並びに(a)クロム化合物、(b)アミン、アミド及びイミドより成る群から選ばれる含窒素化合物、及び(c)アルキルアルミニウム化合物を、(a)クロム化合物と(c)アルキルアルミニウム化合物とが予め接触しない態様で供給し、かつ反応液中のα−オレフィン低重合体/α−オレフィンのモル比を0.05〜1.00に維持しつつ連続反応方式でα−オレフィンの低重合反応を行なうことを特徴とするα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項5】
反応帯域に供給する(a)クロム化合物、(b)アミン、アミド及びイミドより成る群から選ばれる含窒素化合物、及び(c)アルキルアルミニウム化合物の供給比率が、モル比で、(a):(b):(c)=1:0.1〜10:1〜100であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
α−オレフィンの低重合反応を、撹拌型の流通反応器を用いて行なうことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
α−オレフィンがエチレンであり、α−オレフィン低重合体が主として1−ヘキセンであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
反応帯域の反応液中のα−オレフィン濃度が0.5mol/l以上であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
反応帯域の反応液中の滞留時間が60分以下であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2007−45837(P2007−45837A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273719(P2006−273719)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【分割の表示】特願平9−12235の分割
【原出願日】平成9年1月27日(1997.1.27)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】