説明

α,β−不飽和カルボニルまたはスルホニル化合物にチオレート類を添加するための改善された方法

アルカンカルボン酸及び水の存在下、α,β−不飽和カルボニル及びスルホニル化合物とナトリウムまたはカリウムチオレートとを反応させることにより、アルキルチオ置換アルデヒド類、ケトン類、エステル類及びスルホン類を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本出願は、2008年8月19日に出願された米国仮出願番号61/090,045に対する権利を主張する。本発明は、α,β−不飽和カルボニルまたはスルホニル化合物にナトリウムまたはカリウムチオレートを添加するための改善された方法に関する。
【0002】
ある種の新しい殺虫剤を調製するにあたり、2−トリフルオロメチル−5−(1−アルキルチオ)アルキルピリジンは有用な中間体である。例えば、米国特許出願公開第2005/0228027号及び2007/0203191号明細書を参照されたい。2−トリフルオロメチル−5−(1−アルキルチオ)アルキル−ピリジンを調製するにあたり、アルキルチオエナミン類(alkylthioenamines)は有用な中間体である。例えば、米国特許出願公開第2008/0033180 A1号明細書を参照されたい。また、アルキルチオエナミン類は、アルキルチオ置換アルデヒドと無水二置換アミンを反応させることにより調製できる。アルキルチオ置換アルデヒドの出発原料は、高純度のものを得ることが難しく、チオアセタール及びアルドールが濃縮した不純物で不純になっていることが多い。アルキルチオ置換アルデヒドを高収率及び高純度で調製する方法の提供が望まれる。
【0003】
(発明の要旨)
本発明は、式Iのアルキルチオ置換アルデヒド類、ケトン類、エステル類及びスルホン類を調製するための改善された方法であって:



ここで、
EはCOまたはSOを表し、
は、EがCOの場合はH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシまたはアリールを表し、EがSOの場合はC−Cアルキルまたはアリールを表し、
、R、R及びRはそれぞれ独立してH、C−Cアルキルまたはアリールを表し、
該方法は、C−Cアルカンカルボン酸及び水の存在下、式IIのα,β−不飽和カルボニルまたはスルホニル化合物と:



(ここで、E、R、R、R及びRは前述の通り)
式IIIのナトリウムまたはカリウムチオレートと:
S− Na+ または K+ (III)
(ここで、Rは前述の通り)
を反応させる工程を含む方法に関する。好ましくは、EはCO、RはH、RはH、CHまたはCHCH、RはCHまたはCHCH、RはH、そしてRはCHである。該方法は、共溶媒を用いて、または用いずに行って良い。
【発明の概要】
【0004】
(発明の詳細な説明)
他に特に限定が無ければ、本明細書に記載の用語「アルキル」(「アルカン」及び「アルコキシ」等の派生語を含む)は、直鎖、分岐鎖及び環状基を含む。よって、典型的なC−Cアルキル基は、メチル、エチル、1−メチルエチル、プロピル、1,1−ジメチルエチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、シクルプロピル及びシクロブチルである。C−Cアルキル基は更に、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−メチルヘキシル、2−エチルヘキシル及び1−メチルヘプチルを含むがこれらに限定されない。
【0005】
用語「アリール」は、フェニル、インダニルまたはナフチル基を意味するが、フェニルが好ましい。置換基が立体的に互換性を有し、化学結合及び歪みエネルギーの法則が満たされるのであれば、アリール置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アリールオキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロゲン化C−Cアルキル及びハロゲン化C−Cアルコキシから選択される1つ以上の置換基で置換されてもされなくても良い。
【0006】
やはり置換基が立体的に互換性を有し、化学結合及び歪みエネルギーの法則が満たされるのであれば、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、上述のアルキル及びアリール置換基から選択され得る。
【0007】
本発明において、アルキルチオ置換アルデヒド類、ケトン類、エステル類及びスルホン類は、アルカンカルボン酸及び水の存在下、α,β−不飽和カルボニルまたはスルホニル化合物とナトリウムまたはカリウムチオレートとを反応させることにより調製される。
【0008】
一般的に、本方法では、約等モル量のα,β−不飽和カルボニルまたはスルホニル化合物及びナトリウムまたはカリウムチオレートが使用されるが、過剰量のいずれかを使用しても良い。実際には、1〜50パーセント、より好ましくは2〜30パーセント、そして最も好ましくは3〜20パーセント化学量論的過剰のナトリウムまたはカリウムチオレートが好ましい。アルカンカルボン酸は、α,β−不飽和カルボニルまたはスルホニル化合物、あるいはナトリウムまたはカリウムチオレートのいずれかであって良い限定試薬に対して約1〜10当量と同等の量で存在する。典型的には、1.0〜1.7倍、より好ましくは1.1〜1.6倍過剰なアルカンカルボン酸が好ましい。
【0009】
反応は、水単独において、または有機共溶媒の存在下で行われる。好ましい共溶媒は炭化水素溶媒であり、最も好ましいのは芳香族炭化水素類、例えばトルエンである。高極性溶媒、例えばアセトニトリル等も使用できる。
【0010】
反応は、約0℃から約70℃の温度で行われる。通常は、約5℃から約60℃の温度が好ましい。
【0011】
好ましくは、反応は実質的な無酸素雰囲気下で行われる。より好ましくは、反応は窒素下で行われる。
【0012】
典型的な反応において、α,β−不飽和カルボニルまたはスルホニル化合物及びアルカンカルボン酸並びに任意の共溶媒は、混合され、約0℃から約5℃まで冷やされる。ナトリウムまたはカリウムチオレートの水溶液が添加され、反応液は、室温まで温度が上げられ、反応が終了するまで攪拌される。ルーチンな手順、例えば抽出や蒸留によって、アルキルチオ置換カルボニルまたはスルホニル化合物を含有する粗反応混合物を単離および精製することができる。
【0013】
以下、本発明について、実施例に基づき説明する。
【実施例】
【0014】
[実施例1]3−チオメチルブチルアルデヒドの調製



【0015】
磁気攪拌棒、K熱電対を有するサーモウェル、均圧添加漏斗、窒素油バブラー及び隔壁を備えた500mLの三つ口丸底フラスコ内で、クロトンアルデヒド(21.06グラム(g)、0.30モル)、トルエン(170ミリリットル(mL))及び氷酢酸(34.4mL、0.60モル(mol)、2.0当量(eq))を混合した。反応装置系はブリーチスクラバーへ通気されていた。透明無色の溶液を、氷浴にて5℃未満まで冷やした。15重量%ナトリウムチオメトキシド水溶液(168.53gの溶液、25.28g、0.361mol、1.2eq)を、添加漏斗を通じて44分間(min)滴下した。開始温度は1.4℃であった。最終温度は3.7℃であった。添加中に得られた最高温度は4.3℃であった。5℃未満で1時間26分間、攪拌を続けた。氷浴を排出し、反応混合物の温度を室温まで上げて、一晩(17時間)攪拌した。工程内(In-process)ガスクロマトグラフィー(GC)において、4面積%のチオメタン、5面積%の未反応クロトンアルデヒド、及び88面積%の3−チオメチルブチルアルデヒドが示された。室温で更に5時間17分、攪拌を続けた。攪拌を止め、各相を落ち着かせた。どちらの相も透明無色であった。下の方の水相(174.64g、ピーハイドリオン(pHydrion)紙によるpH:約6)を除去した。上の方のトルエン相を脱イオン(DI)水(30mL)で洗浄し、相を分離した。磁気攪拌棒並びに短経路蒸留ヘッド及びレシーバーを備えた250mLの丸底フラスコに、トルエン相を移した。圧力を約50mm Hgまで下げ、加熱マントルを55〜74℃まで加熱した。25〜35℃/40〜60mm Hgにおいて、総量68.20gの蒸留物を除去した。GCの分析は、98.7面積%のトルエンと0.71面積%の3−チオメチルブチルアルデヒドを示した。底層(底部)をGCにて分析したところ、83.3面積%のトルエンと15.8面積%の3−チオメチルブチルアルデヒドが示された。底部を一晩冷蔵庫に入れておいた。次に、底部を真空下(18〜20mm Hg)に配置し、加熱マントルを50〜60℃まで加熱した。オーバーヘッドの蒸気を液化するために、いくらかのドライアイスでレシーバーを冷やす必要があった。ドライアイストラップにおいて、更なる揮発性物質が回収された。50mLのオーバーヘッドレシーバーが一杯になった時に、真空が破壊された。オーバーヘッドの最高温度は16.7℃であった。レシーバーの内容物(33.56g)を除去した。GCの分析は、98.1面積%のトルエンと1.54面積%の3−チオメチルブチルアルデヒドを示した。100mLの丸底フラスコに、底部(46.13g)を移した。圧力を18〜20mm Hgまで下げ、加熱マントルを70〜75℃まで加熱した。21〜28℃で沸騰する留分(2.54g)を回収した。GCの分析は、81.4面積%のトルエンと17.5面積%の3−チオメチルブチルアルデヒドを示した。53〜64℃/18〜20mm Hg及び105〜118℃のマントル温度において、3−チオメチルブチルアルデヒドを回収した。総量で26.78g(最大収率75.4%)を回収した。GCの分析は、7.7面積%のトルエンと89.6面積%の3−チオメチルブチルアルデヒドを示した。
【0016】
[実施例2]3−チオメチルブチルアルデヒドの調製

【0017】
温度プローブ、磁気攪拌棒及びブリーチスクラバーを備えた25mLの二口丸底フラスコに、1.45g(24.17ミリモル(mmol))の氷酢酸、1.44g(20.55mmol)のクロトンアルデヒド及び4.0mLのアセトニトリルを、この順番で加え、次に混合物を氷水浴で冷やした。この混合物に対し、10g(21.40mmol)の15重量%ナトリウムチオメトキシド水溶液を、13分間にわたり継続して添加した。ナトリウムチオメトキシドの添加中、内部反応温度は2℃から11℃に上昇した。氷水浴を除去し、反応混合物の温度を周囲温度まで上げ、更に32分間攪拌した。次に、反応混合物を50〜60℃で3時間加熱したところ、GCの分析は、反応が終了したことを示した。周囲温度まで冷却後、有機層を分離した。2mLの未使用のアセトニトリルを使用して、水層を抽出した。混合された有機層の重さは5.55gであった。この混合物のGC測定(内部標準としてフタル酸ジプロピルを使用)は、3−チオメチルブチルアルデヒドの容器内(in-pot)の収率が89%であることを示した。
【0018】
[実施例3]3−チオメチルブチルアルデヒドの調製

【0019】
温度プローブ、磁気攪拌棒及びブリーチスクラバーを備えた100mLの三口丸底フラスコに、3.71g(61.78mmol)の氷酢酸、3.62g(51.65mmol)のクロトンアルデヒド及び10mLのトルエンを、この順番で加え、次に混合物を氷水浴で冷やした。この混合物に対し、25g(53.50mmol)の15重量%ナトリウムチオメトキシド水溶液を、21分間にわたり継続して添加した。ナトリウムチオメトキシドの添加中、内部反応温度は2℃から10℃に上昇した。氷水浴を除去し、反応混合物の温度を周囲温度まで上げ、更に23分間攪拌した。次に、反応混合物を50〜60℃で4.5時間加熱したところ、GCの分析は、反応が終了したことを示した。周囲温度まで冷却後、有機層を分離した。2.5mLの未使用のトルエンを使用して、水層を抽出した。混合された有機層の重さは16.95gであった。この混合物のGC測定(内部標準としてフタル酸ジプロピルを使用)は、3−チオメチルブチルアルデヒドの容器内の収率(in-pot yield)が92%であることを示した。
【0020】
[実施例4]3−チオメチルブチルアルデヒドの調製



【0021】
温度プローブ、磁気攪拌棒及びブリーチスクラバーを備えた100mLの三口丸底フラスコに、4.67g(63.04mmol)のプロピオン酸、3.60g(51.36mmol)のクロトンアルデヒド及び10mLのトルエンを、この順番で加え、次に混合物を氷水浴で冷やした。この混合物に対し、25g(53.50mmol)の15重量%ナトリウムチオメトキシド水溶液を、31分間にわたり継続して添加した。ナトリウムチオメトキシドの添加中、内部反応温度は2℃から8℃に上昇した。氷水浴を除去し、反応混合物の温度を周囲温度まで上げ、更に14分間攪拌した。次に、反応混合物を50〜70℃で4時間加熱したところ、GCの分析は、反応が終了したことを示した。周囲温度まで冷却後、有機層を分離した。2.5mLの未使用のトルエンを使用して、水層を抽出した。混合された有機層の重さは16.68gであった。この混合物のGC測定(内部標準としてフタル酸ジプロピルを使用)は、3−チオメチルブチルアルデヒドの容器内の収率が95%であることを示した。
【0022】
[実施例5]メチル2−フェニルスルホニルエチルスルフィドの調製


【0023】
温度プローブ、磁気攪拌棒及びブリーチスクラバーを備えた50mLの三口丸底フラスコに、3.43g(20.39mmol)のフェニルビニルスルホン及び5mLのアセトニトリルを、この順番で加え、次に混合物を氷水浴で冷やした。次に、この混合物に対し、2.53g(42.13mmol)の氷酢酸を一度に加えた。この混合物に対し、10g(21.40mmol)の15重量%ナトリウムチオメトキシド水溶液を、17分間にわたり継続して添加した。ナトリウムチオメトキシドの添加中、内部反応温度は14℃から17℃に上昇した。氷水浴を除去し、反応混合物を50〜60℃で3.5時間加熱したところ、液体クロマトグラフィー(LC)の分析は、反応混合物内の出発フェニルビニルスルホンが約42%(相対的面積)であることを示した。更に4.76g(10.19mmol)の15重量%ナトリウムチオメトキシド水溶液を、9分間にわたって添加した。次に、反応混合物を更に6.5時間、50〜60℃で攪拌し、周囲温度まで冷却し、一晩攪拌した。この時、LCの分析は、反応混合物内の出発フェニルビニルスルホンが約7%(相対的面積)であることを示した。反応混合物に対し、1.37g(23.44mmol)の塩化ナトリウムを加え、反応相を分離させた。ロータリーエバポレーターにより有機層を濃縮し、3.96gのメチル2−フェニルスルホニルエチルスルフィドを黄色油として得た(理論的収率に基づいた収率:約90%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 2.1 (s, 3H), 2.78 (m, 2H), 3.35 (m 2H), 7.1 (m, 2H), 7.7 (m, 1H), 7.9 (m, 2H). 13C NMR (75.5 MHz, CDCl3) δ 15.5, 26.4, 56.0, 127.9, 129.4, 134.1, 138.6.
【0024】
[実施例6]3−(メチルチオ)シクロペンタノンの調製


【0025】
温度プローブ、磁気攪拌棒及びブリーチスクラバーを備えた50mLの三口丸底フラスコに、1.41g(23.48mmol)の氷酢酸、1.73g(21.07mmol)の2−シクロペンテン−1−オン及び4.0mLのアセトニトリルを、この順番で加え、次に混合物を氷水浴で冷やした。この混合物に対し、10g(21.40mmol)の15重量%ナトリウムチオメトキシド水溶液を、9分間にわたり継続して添加した。ナトリウムチオメトキシドの添加中、内部反応温度は5℃から8℃に上昇した。氷水浴を除去し、反応混合物の温度を周囲温度まで上げ、更に1.5時間攪拌した。次に、反応混合物を50〜60℃で30分加熱したところ、GCの分析は、反応が終了したことを示した。周囲温度まで冷却後、有機層を分離し、ロータリーエバポレーターにより濃縮して、2.52gの3−(メチルチオ)シクロペンタノンを黄色油として得た(理論的収率に基づいた収率:約92%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.00 (m, 1H), 2.15 (s, 3H), 2.20 (m, 2H), 2.4 (m, 2H), 2.6 (m, 1H), 3.4 (m, 1H). 13C NMR (75.5 MHz, CDCl3) δ14.4, 29.3, 37.0, 42.0, 45.2, 216.8. GC/EIMS (相対的ピーク強度) m/z 130 (56), 83 (37), 74(27), 55 (100).
【0026】
[実施例7]3−メチル−3−(メチルチオ)シクロペンタノンの調製


【0027】
温度プローブ、磁気攪拌棒及びブリーチスクラバーを備えた50mLの三口丸底フラスコに、1.46g(24.31mmol)の氷酢酸、1.98g(20.59mmol)の3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン及び4.0mLのアセトニトリルを、この順番で加え、次に混合物を氷水浴で冷やした。この混合物に対し、10g(21.40mmol)の15重量%ナトリウムチオメトキシド水溶液を、14分間にわたり継続して添加した。ナトリウムチオメトキシドの添加中、内部反応温度は3℃から5℃に上昇した。氷水浴を除去し、反応混合物の温度を周囲温度まで上げ、更に22分間攪拌した。次に、反応混合物を50〜60℃で15.5時間加熱したところ、GCの分析は、反応における3−メチル−2−シクロペンテン−1−オンの3−メチル−3−(メチルチオ)シクロペンタノンに対するピーク比(peak ratio)が3.7〜1であることを示した。50℃のこの混合物に対し、更に1.28g(21.32mmol)の氷酢酸、次いで10g(21.40mmol)の15重量%ナトリウムチオメトキシド水溶液を、30分間にわたり継続して添加した。反応混合物を更に6.5時間攪拌したところ、GCの分析は、反応における3−メチル−2−シクロペンテン−1−オンの3−メチル−3−(メチルチオ)シクロペンタノンに対するピーク比が1.2〜1であることを示した。50℃のこの混合物に対し、更に2.79g(46.46mmol)の氷酢酸、次いで10g(21.40mmol)の15重量%ナトリウムチオメトキシド水溶液を、26分間にわたり継続して添加した。反応混合物を更に15時間攪拌したところ、GCの分析は、反応における3−メチル−2−シクロペンテン−1−オンの3−メチル−3−(メチルチオ)シクロペンタノンに対するピーク比が1.1〜1であることを示した。周囲温度まで冷却後、有機層を分離し、ロータリーエバポレーターにより濃縮して、1.0gの3−メチル−3−(メチルチオ)シクロペンタノンと出発原料を黄色油として得た。3−メチル−3−(メチルチオ)シクロペンタノンのGC/EIMS (相対的ピーク強度) m/z144 (53), 97 (65), 69 (100), 55 (55).
【0028】
[実施例8]4−(メチルチオ)ペンタン−2−オンの調製

【0029】
温度プローブ、磁気攪拌棒及びブリーチスクラバーを備えた50mLの三口丸底フラスコに、1.46g(24.31mmol)の氷酢酸、1.73g(21.57mmol)の65%の3−ペンテン−2−オン(約30%のメシチルオキシドを含有)及び4.0mLのアセトニトリルを、この順番で加え、次に混合物を氷水浴で冷やした。この混合物に対し、10g(21.40mmol)の15重量%ナトリウムチオメトキシド水溶液を、23分間にわたり継続して添加した。ナトリウムチオメトキシドの添加中、内部反応温度は2℃から4℃に上昇した。氷水浴を除去し、反応混合物の温度を周囲温度まで上げ、更に1時間攪拌した。次に、反応混合物を50〜60℃で30分間加熱したところ、GCのピーク面積は、3−ペンテン−2−オン:メシチルオキシド:4−(メチルチオ)ペンタン−2−オンの割合が4:16:80であることを示した。周囲温度まで冷却後、有機層を分離し、ロータリーエバポレーターにより濃縮して、2.10gの4−(メチルチオ)ペンタン−2−オンを黄色油として得た(理論的収率に基づいた収率:約77%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ1.3 (d, J = 7 Hz, 3H), 2.1 (s, 3H), 2.2 (s, 3H), 2.6 (dd, J = 17, 8 Hz, 1H), 2.8 (dd, J = 17, 8 Hz, 1 H), 3.2 (m, 1H). 13C NMR (75.5 MHz, CDCl3) δ13.4, 20.9, 30.5, 36.2, 50.4, 206.7. GC/EIMS (相対的ピーク強度) m/z.132 (100), 89 (93), 75 (99).
【0030】
[実施例9]3−(メチルチオ)−3−フェニルプロパン酸エチルの調製



【0031】
温度プローブ、磁気攪拌棒及びブリーチスクラバーを備えた100mLの三口丸底フラスコに、3.46g(57.62mmol)の氷酢酸、467ミリグラム(mg)(2.65mmol)のケイ皮酸エチル及び20mLのアセトニトリルを、この順番で加えた。周囲温度であるこの混合物に対し、20g(42.80mmol)の15重量%ナトリウムチオメトキシド水溶液を、24分間にわたり継続して添加した。ナトリウムチオメトキシドの添加中、内部反応温度は18℃から22℃に上昇した。次に、反応混合物を50〜60℃で22時間加熱したところ、GCのピーク面積は、ケイ皮酸エチルと3−(メチルチオ)−3−フェニルプロパン酸エチルとの比が1.3:1であることを示した。周囲温度まで冷却後、有機層を分離し、ロータリーエバポレーターにより濃縮して、870mgの、そのほとんどが3−(メチルチオ)−3−フェニルプロパン酸エチルである混合物を含水(wet)黄色油として得た(GCの相対的面積に基づく純度:約42%)。GC/EIMS (相対的ピーク強度) m/z. 224 (6) 176 (47) 151 (58) 91 (100) 77 (37).
【0032】
[実施例10]3−(メチルチオ)シクロヘキサノンの調製

【0033】
磁気攪拌棒、ブリーチスクラバーへ通気した窒素油バブラーを有する還流冷却器、サーム−オー−ウオッチ(Therm-o-watch)コントローラーを有する温度計及び隔壁を備えた50mLの三つ口丸底フラスコ内で、シクロヘキサ−2−エノン(3.80g、95% Aldrich、39.5mmol 未修正(uncorrected))、トルエン(15.31g、HPLCグレード)及び氷酢酸(2.85g、47.4mmoles、1.20eq、99.7+% Aldrich)を混合した。攪拌した溶液に対し、15重量%のナトリウムチオメトキシド(19.4gの溶液、2.91g、41.5mmol、1.05eqのNaSCH)をシリンジによって19分にわたって何度かに分けて添加した。添加の間、反応温度が28.0℃から36.4℃まで上昇した。二相の混合物を周囲温度で一晩攪拌した。反応混合物を約50℃まで加熱し、7.5時間攪拌した。次に、混合物を一晩攪拌しながら室温まで冷ました。30分かけて相を落ち着かせた。下の方の水相を除去した。上の方の有機相を水(2×10mL)で洗浄し、円錐状の(cone of)無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、ロータリーエバポレーター(29in.Hg真空/48℃)により濃縮して、4.91gの3−(メチルチオ)シクロヘキサノンを透明な淡黄色油として得た。GCによる面積%変換:95%。原面積(raw area)%:91.1%。質量回収86%。
【0034】
[実施例11]3−メチル−3−(メチルチオ)シクロヘキサノンの調製

【0035】
ブリーチスクラバーへ通気した窒素油バブラーを有する還流冷却器、磁気攪拌棒、K熱電対を有するサーモウェル、隔壁及び加熱マントルを備えた25mLの三つ口丸底フラスコ内で、3−メチルシクロヘキサ−2−エノン(1.23g、11.2mmol)及び氷酢酸(9.48g、158mmol)を混合した。攪拌した溶液に対し、15重量%のナトリウムチオメトキシド(7.87gの溶液、1.18g、16.8mmol、1.50eqのNaSCH)をシリンジによって8分にわたって何度かに分けて添加すると同時に、温度を16〜18℃の間で維持した。得られた反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を約50℃まで加熱し、5時間攪拌した。更に15重量%のナトリウムチオメトキシド(5.25gの溶液、0.79g、11.3mmolのNaSCH)をシリンジによって12分にわたって何度かに分けて添加した。攪拌を約50℃で一晩継続して行った。GCの分析は、3−メチル−3−(メチルチオ)シクロヘキサノンに対する面積%変換が27面積%であることを示した。GCによる原面積%は20.4%であった。
【0036】
[実施例12]2−メチル−3−(メチルチオメチル)ブタナールの調製

【0037】
磁気攪拌棒、ブリーチスクラバーへの通気孔をつけた窒素油バブラーを有する還流冷却器、サーム−オー−ウオッチ(Therm-o-watch)コントローラーを有する温度計及び隔壁を備えた50mLの三つ口丸底フラスコ内で、チグリン酸アルデヒド(2.44g、29.0mmol)、氷酢酸(3.48g、58.0mmol)及びアセトニトリル(9.76g)を混合した。攪拌した溶液に対し、15重量%のナトリウムチオメトキシド(20.3gの溶液、3.05g、43.5mmol、1.5eqのNaSCH)をシリンジによって20分にわたって何度かに分けて添加した。添加の間、反応温度が21.0℃から26.8℃まで上昇した。反応混合物を約50℃まで加熱し、更に18時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷やした。更なる氷酢酸(1.74g、29.0mmol、1.0eq)を添加した。攪拌した混合物に対し、更なる15重量%のナトリウムチオメトキシド(10.2gの溶液、1.53g、21.8mmol、0.75eqのNaSCH)をシリンジによって10分にわたって何度かに分けて添加した。内部温度は23.1℃から28.0℃まで上昇した。反応混合物を約50℃まで加熱し、5.75時間攪拌し、室温まで冷やし、一晩かけて相を分離させた。下の方の水相を分液漏斗に移し、塩化メチレン(4×15mL)で抽出した。反応装置からの上の方の有機相と、塩化メチレンの抽出物を混合し、飽和含水重炭酸ナトリウム(25mL)、水(25mL)で洗浄し、円錐状の無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、ロータリーエバポレーターにより濃縮して、3.56g(93%)の粗2−メチル−3−(チオメチル)ブタナールを淡黄色油として得た。GCによる粗面積(crude area)%は95%であった。
【0038】
[実施例13]2−エチル−3−チオメチルプロパナールの調製

【0039】
磁気攪拌棒、K熱電対を有するサーモウェル、窒素油バブラーを有する還流冷却器及び隔壁を備えた25mLの三つ口丸底フラスコ内で、2−エチルアクロレイン(2.38g、90%技術グレード(tech. grade)、Alfa Aesar、2.14g、25.4mmol)、トルエン(10mL)及び氷酢酸(3.05g、2.91mL、50.8mmol、2.0eq)を混合した。反応装置系は、ブリーチスクラバーへ通気されていた。透明無色の溶液を、攪拌しながら氷浴にて冷やした。よく攪拌され冷えた溶液に対し、15重量%のナトリウムチオメトキシド水溶液(17.8gの溶液、2.67g、38.1mmol、1.5eq)をシリンジによって15分にわたって何度かに分けて添加した。開始温度は3.7℃であった。最終温度は4.4℃であった。添加中に得られた最高温度は5.9℃であった。攪拌を継続し、反応混合物の温度をゆっくりと室温まで上昇させた。週末に室温で攪拌を継続した。下の方の水相を除去した。トルエン相を飽和重炭酸ナトリウム溶液(3mL)で洗浄し、円錐状の無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。反応装置をトルエン(2×3mL)ですすぎ、各すすぎ液を円錐状の硫酸マグネシウムを通してろ過した。ろ液を合わせた量は12.84gであった。GCの分析は、2−エチルアクロレインが消費されて新しい化合物が形成されたことを示し、その化合物は、所望の2−エチル−3−チオメチルプロパナールであることがGC−MSにより確認された。磁気攪拌棒を備え、短経路蒸留ヘッド及びレシーバーが取り付けられた25mLの丸底フラスコに、ろ液を移した。加熱マントルを約42℃まで暖め、圧力を約50mm Hgまでゆっくりと下げた。オーバーヘッドの温度が26〜30℃、マントルの最高温度が60℃にて、トルエンを除去した。システムを冷まし、レシーバーを交換した。圧力を約22mm Hgまで下げた。77〜83℃/22mm Hg、マントルの温度99〜132℃にて、2−エチル−3−チオメチルプロパナールを回収した。総量2.41g(72%)の2−エチル−3−チオメチルプロパナールを透明無色の液体として単離した。GCの分析によれば、86%の面積純度(86 area% purity)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのアルキルチオ置換アルデヒド類、ケトン類、エステル類及びスルホン類を調製する方法であって:



ここで、
EはCOまたはSOを表し、
は、EがCOの場合はH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシまたはアリールを表し、EがSOの場合はC−Cアルキルまたはアリールを表し、
、R、R及びRはそれぞれ独立してH、C−Cアルキルまたはアリールを表し、
該方法は、C−Cアルカンカルボン酸及び水の存在下、式IIのα,β−不飽和カルボニルまたはスルホニル化合物と:



(ここで、E、R、R、R及びRは前述の通り)
式IIIのナトリウムまたはカリウムチオレートと:
S− Na+ または K+ (III)
(ここで、Rは前述の通り)
を反応させる工程を含む、方法。

【公表番号】特表2012−500265(P2012−500265A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523859(P2011−523859)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/053061
【国際公開番号】WO2010/021855
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】