説明

α2δサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子を使用する無痛性膀胱障害を処置するための方法

無痛性膀胱疾患(特に、尿失禁を伴わない無痛性過活動膀胱)を処置する組成物および方法を提供する。本発明の組成物は、ガバペンチン、プレガバリン、GABAアナログ、ガバペンチンの縮合二環式または縮合三環式のアミノ酸アナログ、およびαδカルシウム・チャンネル・サブユニットと相互作用する他の化合物と、それらの医薬的に許容され、薬学的に活性のある塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、および他の誘導体を含むαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無痛性膀胱障害、特に尿失禁を伴わない無痛性過活動膀胱を治療するためのαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子(例えばガバペンチン、プレガバリン、GABAアナログ、ガバペンチンの縮合二環式または縮合三環式のアミノ酸アナログ、およびαδカルシウム・チャンネル・サブユニットと相互作用する他の化合物が挙げられる)を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下部尿路疾患は、毎年、米国で何百万もの男性および女性のクオリティーオブライフ(生活の質)に影響を及ぼしている。下部尿路の疾患として、過活動膀胱、前立腺炎、プロスタジニア、間質性膀胱炎、良性前立腺肥大、および脊髄損傷患者の痙性膀胱が挙げられる。
【0003】
過活動膀胱は、米国で1700万〜2000万人の男女に影響を及ぼしていることが推定される治療可能な医学的状態である。過活動膀胱の症状として、頻尿、尿意促迫、夜間多尿症(排尿する必要を理由とする夜間睡眠の妨害)、さらに突然生じて止められない排尿要求による偶発的な尿失禁(切迫性尿失禁)が挙げられる。切迫性尿失禁は、通常過敏性排尿筋(収縮して空にする膀胱の平滑筋収縮)を伴う。過活動膀胱の病因は単一のものではない。神経原性過活動膀胱は、疾患(例えば脳卒中、パーキンソン病、糖尿病、多発性硬化症、末梢神経疾患、または脊髄傷害)による神経病学的損傷の結果として起こる。これらの場合、排尿筋の過敏性は、排尿筋反射亢進と称される。対照的に、非神経原性過活動膀胱は、膀胱結石、筋肉疾患、尿路感染症、または薬物副作用を含む非神経病学的異常から生じることがありえる。
【0004】
排尿(放尿の行為)がかなり複雑であることから、過活動膀胱を引き起こしている正確な機構は、知られていない。過活動膀胱は、膀胱の感覚ニューロンの過敏性から生じると考えられ、炎症の状態、ホルモンのアンバランス、および前立腺肥大を含む種々の因子に起因する。脊髄の仙骨部に対する圧挫損傷または背根繊維に対する損傷のいずれかによる知覚性神経線維の破壊もまた、それらの繊維が脊椎に入ることから、結果として過活動膀胱に至る。加えて、伝達されたシグナルを遮る脊髄または脳幹に対する損傷が、結果として排尿の異常を導くと考えられる。したがって、末梢および中枢の機構が過活動膀胱の活動の変化に関与していると考えられる。
【0005】
中枢もしくは末梢の機構あるいは両方が過活動膀胱に関係しているかどうかが不確かであるにもかかわらず、多くの提案された機構が、無痛性内臓感覚の媒介となる神経および経路に関係していることが示されている。疼痛は嫌悪または違和感の認識であって、種々の提案された機構によって起こると考えられる。これらの機構として、組織損傷(侵害受容疼痛)に関する情報を提供するか、糖尿病、外傷、または薬物の中毒量(神経因性疼痛)等の疾患による神経損傷を通した、特化した感覚受容器の活性化を含む(例えば、A.I.Basbaum and T.M.Jessell(2000)The perception of pain.In Principles of Neural Science,4th.ed.;Benevento et al.(2002)Physical Therapy Journal 82:601−12を参照せよ)。
【0006】
痛覚によって疼痛が生じることもあるが、侵害受容器を活性化させる全ての刺激が疼痛として経験されるわけではない(A.I.Basbaum and T.M.Jessell(2000)The perception of pain.Principles of Neural Science,4th.ed.)。膀胱からの体性感覚情報は、第2または第3次ニューロンを経て脳幹および視床に延び、かつ後根神経節を介して脊髄に入る侵害受容AδおよびC繊維によって中継される(Andersson(2002)Urology 59:18−24;Andersson(2002)Urology 59:43−50;Morrison,J.,Steers,W.D.,Brading,A.,Blok,B.,Fry,C.,de Groat,W.C.,Kakizaki,H.,Levin,R.,and Thor,K.B.,”Basic Urological Sciences” Incontinence(vol.2)Abrams,P.Khoury,S.,and Wein,A.(Eds.)Health Publications,Ltd.,Plymbridge Distributors,Ltd.,Plymouth,UK.,(2002)。膀胱からの体性感覚情報は、第2次ニューロンまたは第3次ニューロンを経て脳幹および視床に延び、かつ後根神経節を介して脊髄に入る侵害受容AδおよびC繊維によって中継される後根神経節への侵害受容入力はいくつかの上行路に沿って脳に伝達されると考えられ、上述の上行路として、脊髄視床、脊柱網様、脊柱中脳、脊柱頸部、場合によっては背柱/背内側毛帯路が挙げられる(A.I.Basbaum and T.M.Jessell(2000)The perception of pain.In Principles of Neural Science,4th.ed.)。 中枢の機構(それは完全には理解されない)は、いくつかの(全てではない)侵害受容情報を痛みを伴う知覚認知に変換すると考えられる(A.I.Basbaum and T.M.Jessell(2000)The perception of pain.In Principles of Neural Science,4th.ed.)。
【0007】
膀胱または他の骨盤内臓器官の疼痛に関与する疾患の処置薬として多くの化合物が開発されているが、過活動膀胱のような膀胱疾患に伴う無痛性感覚性症状の処置に関連した研究は比較的少なかった。過活動膀胱に対して現在行われている処置としては、薬物、食餌改善、排尿訓練のプログラム、電気刺激、および手術が挙げられる。現在では、抗ムスカリン類(それは、大別された抗コリン作用剤の亜型である)が過活動膀胱を処置するために使用される主要な薬物である。この処置は、有効性が限られており、また副作用(例えば口渇、乾燥性角結膜炎、乾燥膣、動悸、眠気、および便秘)を生ずることから、一部の個体にとっては耐えうるのが困難であった。
【0008】
近年、当業者の間で、OABの主症状がいかなる明白な尿失禁を顧慮せずに尿意切迫であると認められた。例えば、最近の研究では、米国人口集団の地域に密着したサンプルのクオリティーオブライフ(生活の質)に対する全OAB症状の影響を検討した(Liberman et al.(2001)Urology 57:1044−1050)。本研究は、対照(コントロール)と比較した場合、明らかな尿失禁が認められなくてもOABに罹患した個体のクオリティーオブライフ(生活の質)が損なわれていることを証明した。さらに、尿意切迫のみを呈する個体は、対照と比較するとクオリティーオブライフが損なわれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
膀胱疾患に対する既存の治療および処置が、先に述べたような限界に関係しているので、新しい治療および処置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
無痛性膀胱疾患(特に、尿失禁を伴わない無痛性過活動膀胱)を処置する組成物および方法を提供する。本発明の組成物は、ガバペンチン、プレガバリン、GABAアナログ、ガバペンチンの縮合二環式または縮合三環式のアミノ酸アナログ、およびαδカルシウム・チャンネル・サブユニットと相互作用する他の化合物と、それらの医薬的に許容され、薬学的に活性のある塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、および他の誘導体を含むαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子とを含む。
【0011】
通常の患者および脊髄損傷患者において、無痛性膀胱疾患を処置するために、上記組成物が、それを必要としている患者に対して治療有効量で投与される。この組成物を、膀胱疾患に関連した非無痛性症状の処置にとって有効量である限り、任意の投与手段によって投与することが可能であることが認められる。それらの組成物を、例えば、持続性、連続的、または必要に応じた投与をおこなうために、処方してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
(概観および定義)
本発明は、無痛過活動膀胱ならびに頻尿、尿意切迫、および夜間多尿症等の疾患を含む無痛性膀胱疾患を処置するための組成物および方法を提供する。それらの組成物は、通常の患者および脊椎損傷患者において無痛性膀胱疾患を処置するために、治療有効量のαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子を含む。この方法は、例えば、ガバペンチン、プレガバリン、GABAアナログ、ガバペンチンの縮合二環式または縮合三環式のアミノ酸アナログ、アミノ酸化合物、およびαδカルシウム・チャンネル・サブユニットと相互作用する他の化合物を含む多量のαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子を含む種々の組成物と処方物とを投与することによって達成される。
【0013】
本発明を詳しく説明する前に、この発明が特定の活性因子、剤形、投薬療法等によって限定されるものではなく、それなりに変化可能であると理解される。本明細書中に使用される用語が特定の実施形態だけを記載するためにあって、制限することを目的としないことも理解される。
【0014】
ここで、留意すべきことは、この明細書および記された実施形態で使用されるように、「1つの(”a”、”an”)」および「その(該、上記、前記)(the)」を含む単数形的表現は、文脈のなかで特にはっきりと指示されていない限り、複数形も語の対象となる。したがって、「活性因子」または「薬学的活性因子」が対象とするものは、例えば、単一の活性因子のみならず、組み合わさった2種類以上の異なる因子のことも包含し、また「キャリア」が対象とするものは、単一のキャリアのみならず2種類以上のキャリアの組み合わせをいう。
【0015】
「無痛性」は、痛みを生じたり、痛みをもたらすものではないと患者が主観的にいう、軽度または一般的な不快感を含む感覚または症状を意味する。
【0016】
「有痛性」は、痛みを生じたり、痛みをもたらすと患者が主観的にいう感覚または症状を意味する。
【0017】
「下部尿路」は、腎臓以外の尿路系の各部を意味する。「下部尿路疾患」は下部尿路にかかわる任意の疾患を意味するもので、限定されるものではないが、上記疾患としては、過活動膀胱、前立腺炎、間質性膀胱炎、良性前立腺肥大、ならびに痙攣性膀胱および弛緩性膀胱が挙げられる。「無痛性下部尿路疾患」は、痛みを生じたり、痛みをもたらすものではないと患者が主観的にいう、軽度または一般的な不快感を含む感覚または症状をともなういずれかの下部尿路疾患を意味する。「有痛性下部尿路疾患」は、痛みを生じたり、痛みをもたらすと患者が主観的にいう、感覚または症状を伴ういずれかの下部尿路疾患を意味する。
【0018】
「膀胱疾患」は、膀胱にかかわるいずれかの状態を意味する。「無痛性膀胱疾患」は、痛みを生じたり、痛みをもたらすものではないと患者が主観的にいう、軽度または一般的な不快感を含む感覚または症状をともなう膀胱にかかわるいずれかの状態を意味する。
【0019】
「過活動膀胱(OAB)」は、完全であるにしろ、もしくは偶発的であるにしろ(ここで、随意調節の喪失は、部分的なものから完全なものまで及び)、そして、尿漏れ(尿失禁)があるにしても、もしくはないにしても、排尿の頻度および排尿欲求が増大することによって特徴付けられる失禁の形態のいずれかを意図される。「無痛過活動膀胱」は、上記したように、痛みを生じたり、痛みをもたらすものではないと患者が主観的にいう、軽度または一般的な不快感を含む感覚または症状軽度または一般的な不快感を含む感覚または症状をともなう過活動膀胱のいずれかの形態を意味する。無痛性症状として、限定されるものではないが,尿意切迫、切迫性尿失禁、頻尿、および夜間多尿症が挙げられる。
【0020】
「OABウエット」は、失禁する患者の過活動膀胱を説明するために本明細書で用いられ、他方、「OABドライ」は失禁しない患者の過活動膀胱を説明するために本明細書で用いられる。
【0021】
「尿意切迫」は、排尿を延期するチャンスもほとんど、またはまったくなく突然尿意が切迫することを意味する。「失禁」は、排出機能を制御することができないことを意味し、排便(便失禁)および放尿(尿失禁)が含まれる。「切迫性尿失禁」は、無効にする突然で強い要求と関連する非自発的な尿失禁を意味する。「尿ストレス性失禁」は人が咳をするとき、くしゃみをしたり、笑ったり、運動したり、重い物体を持ち上げたりあるいはなんらかの圧力が膀胱にかかったりした際に、尿が漏れる医学状態を意味する。「頻尿」は、患者の要求よりも頻繁な排尿を意味する。個人が排尿するのを通常予想する1日あたりの回数が個人間で相当なバリエーションがあることから「患者の要求よりも頻繁な」は、患者の履歴的ベースラインよりも1日あたりの回数が多いものとして、さらに定義される。「履歴的ベースライン」は、通常または所望の期間中に1日あたり患者が排尿した数の中央値として、さらに定義される。「夜間多尿症」は、睡眠から呼びさまされて、患者の要求よりも多く排尿することを意味する。
【0022】
本明細書中にさらに述べられるように、「神経因性膀胱」または「神経因性過活動膀胱」は、過活動膀胱を意味し、限定されるものではないが、脳卒中、パーキンソン病、糖尿病、多発性硬化症、末梢神経疾患、または脊髄傷害を含む疾患による神経障害の結果として起こる。
【0023】
「排尿筋反射亢進」は、患者がある種の神経性機能障害を呈する拘束されない排尿筋によって特徴づけられる状態を意味する。「不安定膀胱」または「不安定な排尿筋」は、神経性異常がない状態を意味する。
【0024】
「前立腺炎」は、慢性細菌性前立腺炎および慢性非細菌性前立腺炎を含む前立腺の炎症に伴う疾患のいずれかの形態を意味する。「無痛性前立腺炎」は、痛みを生じたり、痛みをもたらすものではないと患者が主観的にいう、軽度または一般的な不快感を含む感覚または症状をともなう前立腺炎を意味する。「有痛性前立腺炎」は、痛みを生じたり、痛みをもたらすと患者が主観的にいう、感覚または症状をともなう前立腺炎を意味する。
【0025】
「慢性細菌性前立腺炎」は、症状に関連する疾患について言及するために、その従来の意味で使われ、そのような症状として、前立腺の炎症、ならびに尿および前立腺分泌物の陽性尿細菌培養を含む。「慢性非細菌性前立腺炎」が、症状に伴う疾患に言及するために、その従来の意味で使われ、その症状として、前立腺の炎症、ならびに尿および前立腺分泌物の陽性尿細菌培養を含む。「慢性前立腺炎様症候群」は、前立腺の炎症なしで、すでに定義されたように、一般に慢性細菌性前立腺炎の有痛性症状を伴う疾患に言及するために、その従来の意味で使われる。「間質性膀胱炎」は、刺激性排尿症状、頻尿、尿意切迫、夜間多尿症、および排尿に関連あるいは排尿によって和らげられる恥骨上の痛みまたは骨盤痛に言及するために、その従来の意味で使われる。
【0026】
「良性前立腺肥大」は、前立腺の良性の腫張に伴う疾患に言及するために、その従来の意味で使われる。
【0027】
「痙攣性膀胱」または「反射性膀胱」は、排尿が予測不可能になった、脊髄損傷後の状態を言及するために、その従来の意味で使われる。
【0028】
「弛緩性膀胱」または「非反射性膀胱」は、膀胱筋反射がない、または遅くなった、脊髄損傷後の状態を言及するためにその従来の意味で使われる。
【0029】
「共同運動障害」は、膀胱が収縮する際に、尿路括約筋が弛緩できないことに特徴づけられる患者の脊髄損傷後の状態を言及するために、その従来の意味で使われる。
【0030】
「活性因子」および「薬学的活性因子」という用語は、化学化合物に言及するために、本明細書中で同義的に使われ、上記化学化合物は所望の効果(すなわち、この場合は、通常の患者および脊椎損傷患者における無痛過活動膀胱等の無痛性膀胱疾患の処置)を誘導する。本明細書において一次活性因子は、αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子が一種類以上の追加の活性因子で投与される併用療法が本発明の範囲内でもあるにもかかわらず、αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子である。そのような併用療法は、一つの組成物で異なる活性因子を投与することによって、異なる組成物の異なる活性因子を同時投与することによって、または異なる活性因子の経時的な投与によって、おこなわれる。それらの化合物の誘導体およびアナログまたは特に言及される化合物の種類が含まれ、それらの所望の効果も誘導される。
【0031】
本明細書で用いられるように用語「αδサブユニット・カルシウム・チャンネル・モジュレーター」は、結合イベントを含むカルシウム・チャンネルのαδサブユニットと相互作用することができる薬剤を意味するもので、Klugbauer et al.(1999)J.Neurosci.19:684−691に開示されたようなαδカルシウム・チャンネル・サブユニットが含まれ、生理学的作用、例えば、チャンネルの開閉、抑制、上方制御機能発現、下方制御機能発現、または脱感作を生ずる。特に明記しない限り、用語「αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子」は、ガバペンチン、プレガバリン、GABAアナログ、ガバペンチンの縮合二環式または縮合三環式のアミノ酸アナログ、アミノ酸化合物、ペプチド、非ペプチド、ペプチド模倣薬、さらにαδカルシウム・チャンネル・サブユニットと相互作用する他の化合物、本明細書中にさらに開示されているように、同様にそれらの塩類、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物、および誘導体を包含することを意味する。さらに、いずれの塩類、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物、または他の誘導体も薬理学的に活性があり、また薬学的に許容されるものであると理解される。
【0032】
用語「ペプチド模倣物」は、ペプチドの生物学的活性度を模倣する分子について言及するために、その従来の意味で使われるが、化学的性質の点ではもはやペプチドではなく、例として、アミノ酸(同様にシュード・ペプチド、セミ・ペプチド、およびペプトイド)の間でアミド結合がない分子が挙げられる。この発明にもとづくペプチド模倣物は、反応性のある化学部分の空間配置を提供するもので、上記反応性化学部分は、ペプチド模倣物がベースとするペプチド内の活性基の三次元配置にかなり類似している。この相似活性部位の幾何学的配置の結果として、ペプチド模倣物はペプチドの生物学的活性度と類似している生物系に、影響を及ぼす。
【0033】
本明細書で用いられるように、用語「処置する(こと)」および「処置」とは、膀胱疾患(特に無痛過活動膀胱)に伴う無痛性症状を軽減することを意味する。
【0034】
薬物または薬学的活性因子の「有効」量または「治療有効量」は、無毒性ではあるが、所望の効果、すなわち膀胱疾患にともなう無痛性症状、特に、上記したように、尿失禁を伴わない無痛性過活動膀胱の軽減を得る上で十分な量の薬物または薬剤であることを意味している。薬物または薬学的活性因子の有効量は、投与経路、選択化合物、および薬物または薬学的活性因子が投与される種に応じて、変化することが認められる。代謝、バイオアベイラビリティー、ならびに、異なる投与経路のために本明細書中にさらに開示される単位服用量範囲内で投与後の薬物または薬学的活性因子の血漿レベルに影響を及ぼす他の要素のような因子を考慮することによって、当業者が適当な有効量を決定することも認められる。
【0035】
「薬学的に受容可能である」とは、例えば、「薬学的に受容可能であるキャリア」または「薬学的に受容可能である酸添加塩」の反応において、材料が生物学的に有害であるわけではなく、また望ましくないものではないことを意味する。すなわち、このような材料は、なんらかの望ましくない生物学的影響を引き起こすこともなく、またはそれが含まれる組成物の他の成分のいずれかと有害なかたちで相互作用するわけでもない材料であり、患者に投与される薬学的組成物に組み込こむことができる。「薬学的に活性である」誘導体または代謝産物の場合のように、「薬学的に活性である」(または単に「活性である」)は、親化合物と同じ型の薬学的活性を持っている誘導体または代謝産物のことについて言及している。用語「薬学的に受容可能である」が、活性因子の誘導体(例えば塩またはアナログ)について言及する場合、化合物が、薬学的に活性、すなわち通常の患者および脊椎損傷患者で無痛性膀胱疾患(例えば無痛過活動膀胱)を処置するために治療上有効であることも理解される。
【0036】
「持続的(連続的)な」投薬は、選択された活性因子の長期(慢性)投与を意味する。
【0037】
「必要に応じた(as−needed)」投薬(「臨機応変に」(pro re nata)」投薬すること(prn))および「オン・デマンド」投薬または投与は、活性の開始に先立つある時期に、活性因子の単一用量を投与することを意味するものであって、通常の患者および脊椎損傷患者の膀胱疾患(例えば、過活動膀胱)の無痛性症状の抑制が望ましい。そのような活性の直前に投与をおこなうことができ、例えば、処方物に応じて、そのような活性の約0分、約10分、約20分、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、または約10時間前に投与することができる。
【0038】
「短期」は、薬物投与後の約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分後、までの任意の時間を意味する。
【0039】
「急速オフセット」は、薬物投与後の約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分後までの任意の時間を意味する。
【0040】
用語「制御放出」は、いかなる薬物を含有する処方物にでも言及することを意図しており、本薬物の発散が即時性ではなく、すなわち、「制御放出」処方物によって、経口投与が吸収プールへの薬物の即時放出に終わらない。この用語は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed.(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995)に定義されたように、「非即時型放出」と同義的に使われる。
【0041】
「吸収プール」は、特定の吸収部位で投与された薬物溶液を表し、k、k、およびkはそれぞれ(1)処方物からの薬物の放出、(2)吸収、および(3)除去に関する一次反応速度定数である。即時放出型剤形に関しては、薬物放出速度定数kは、吸収速度定数kよりもはるかに大きい。制御放出処方物関しては、その正反対が真実であり、すなわち、k<<kであり、剤形からの薬物放出速度が標的領域への薬物送達において速度律速段階にある。本明細書で用いられるように、用語「制御放出」は、限定されるものではないが徐放性、遅延放出、および拍動性放出処方物等のいずれの非即時放出型処方物を包含する。
【0042】
用語「徐放性」が、連続した期間にわたって薬物の段階的な放出を規定する薬物処方物に言及するために、その従来の意味で使われる。しかも、必然的ではないが、連続した期間、例えば、投与後約72時間、約66時間、約60時間、約54時間、約48時間、約42時間、約36時間、約30時間、約24時間、約18時間、約12時間、約10時間、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、または約1時間まで、血中の薬物濃度が実質的に一定に保たれる。
【0043】
用語「遅延放出」は、薬物処方物に言及するために、その従来の意味で使われるもので、それは薬剤投与後の若干の遅延、必然的ではないが、好ましくは最大で約10分、約20分、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、または約12時間後に、薬物の最初の放出が規定される。
【0044】
用語「拍動性放出」は、薬物投与後にパルス化した血漿の性質(プロフィール)が生ずるように薬物が放出される薬物処方物について言及するために、その従来の意味で使われる。
【0045】
用語「即時放出型」は、薬剤投与の直後に薬物の放出を規定する薬物処方物を言及するために、その従来の意味で使われる。
【0046】
用語「経皮」薬物送達は、薬物の皮膚または粘膜組織を薬物が通過することによる血流への送達を意味する。
【0047】
用語「局所投与」は、皮膚または粘膜に対する局所用の薬物または薬学的活性因子の送達を意味するために、その従来の意味で使われる。
【0048】
用語「経口投与」は、口を介しての薬物の送達ならびに胃および消化管を介しての摂取を意味するために、その従来の意味で使われる。
【0049】
用語「吸入投与」は、吸入の過程で鼻部または口を通した通過ならびに肺の壁部を介した薬物の通過によって薬物のエアロゾル形状の送達がおこなわれることを意味するために、その従来の意味で使われる。
【0050】
「非経口」という用語による薬物送達は、最初に胃腸管または消化管を貫通する必要のない血流量への薬物の通過による送達を意味する。非経口薬物送達は「皮下」であってもよく、皮膚の下に投与することによる薬物の送達に言及する。非経口薬物送達の別の形態は、「筋肉内」であり、筋組織への投与による薬物の送達に言及する。非経口薬物送達の別の形態は、「皮内」であり、皮膚内への投与による薬物の送達に言及する。非経口薬物送達の付加的な形態は、「静脈内」であり、静脈への投与による薬物の送達に言及する。非経口薬物送達の付加的な形態は、「動脈内」であり、動脈への投与による薬物の送達に言及する。非経口薬物送達の別の形態は、「経皮性」であり、皮膚を通って血流に入ることによる薬物の送達に言及する。
【0051】
非経口薬物送達の別の形態は、「経粘膜」であってもよく、粘膜組織を通って個体の血流に入ることによる薬物の送達に言及する。本明細書中で経粘膜薬物送達の他の形態は「頬内(buccal)」、または経頬内(transbuccal)薬物送達である。個体の頬粘膜を通過して血流に入る薬物送達について言及する。本明細書での経粘膜薬物送達の別の形態は、「舌」薬物送達であり、個体の舌粘膜を通して、血流に入る薬物送達について言及する。本明細書での経粘膜薬物送達の別の形態は、「舌下」薬物送達であり、個体の舌下粘膜を通して、血流に入る薬物送達について言及する。経粘膜薬物送達の別の形態は「鼻」または「鼻腔内」薬物送達であり、個体の鼻粘膜を通して血流に入る薬物送達について言及する。経粘膜薬物送達の付加的な形状は本明細書中に「直腸」または「経直腸的」薬物送達である。さらに、個人の直腸粘膜を通して血流に入ることによる薬物送達について言及する。経粘膜薬物送達の別の形態は、「尿道」または「経尿道」送達であり、薬物を尿道の壁部を接触させて通過するようにする尿道への薬物送達について言及する。経粘膜薬物送達の付加的な形態は、「膣」または「経膣」送達であり、個体の膣粘膜を通して血流に入ることで薬物送達について言及する。経粘膜薬物送達の付加的な形状は、「周囲」送達であり、膣陰唇組織を通して血流に薬物送達がなされることについて言及する。
【0052】
発明の方法を実行するために、選択されたαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子は、通常の患者および脊椎損傷患者で無痛性膀胱疾患(例えば無痛過活動膀胱)で苦しんでいる患者に投与される。活性因子の治療有効量を、経口、経粘膜(例えば、頬側、舌下、経尿道、および直腸が挙げられる)、局所的、経皮的に、吸引または投与の別の経路のいずれかを用いて、投与することが可能である。
【0053】
(下部尿路疾患)
下部尿路疾患は、毎年、数百万にも及ぶ米国の男女のクオリティーオブライフ(生活の質)に影響を及ぼしている。腎臓が血液を濾過して尿を生成する一方で、下部尿路はこの廃液の貯蔵および排出に関与しており、腎臓を除く尿路の別の部分の全てが含まれる。一般に、下部尿路として、尿管、膀胱、および尿道が挙げられる。下部尿路の疾患として、有痛性および無痛過活動膀胱、前立腺炎および慢性前立腺炎様症候群、間質性膀胱炎、良性前立腺肥大、ならびに脊髄損傷患者での痙攣性膀胱および弛緩性膀胱が挙げられる。
【0054】
過活動膀胱は、米国では1700万〜2000万の人々が発症していると推定される治療可能な医学状態である。過活動膀胱の症状は、頻尿、尿意切迫、夜間多尿症(排尿する必要とすることから夜間睡眠の妨害)、さらに、尿意が突然生じて排尿が我慢できないことによる、切迫性尿失禁(偶発的な尿失禁)が挙げられる。尿失禁が、せき、くしゃみ、運動、またはその種の他のもののような物理作用を伴うストレス性失禁とは対照的に、切迫性尿失禁は、通常、排尿筋(縮んで、それが空になる原因になる膀胱の平滑筋)の過活動に関連する。
【0055】
過活動膀胱については、その病因は1つだけではない。神経因性過活動膀胱(または神経因性膀胱)は、疾患(例えば脳卒中、パーキンソン病、糖尿病、多発性硬化症、末梢神経疾患、または脊髄傷害)による神経障害の結果として起こる。これらの場合、排尿筋の過敏性は、排尿筋反射亢進と称される。対照的に、非神経因性過活動膀胱は、膀胱結石、筋肉疾患、尿路感染症、または薬物副作用を含む非神経病学的異常から生じる。
【0056】
排尿(放尿の行為)がとてつもなく複雑であるために、過活動膀胱を引き起こしている正確な機構は知られていない。過活動膀胱は、膀胱の感覚性神経の過敏性から生じ、炎症状態、ホルモンのアンバランス、および前立腺肥大を含む種々の因子に起因する。知覚性神経線維の破壊(脊髄の仙骨部に対する圧挫損傷、または背根繊維が脊髄に入ることから背根繊維に損害を与える疾患のいずれかによる)は、過活動膀胱を導くこともある。また、脊髄に対する損傷または透過シグナルの中断を引き起こしている脳幹は、排尿異常を導く可能性がある。したがって、末梢および中枢の機構は、過活動膀胱で変えられた活性の媒介となることに関係していると思われる。
【0057】
中枢または末梢の機構あるいはその両方が過活動膀胱に関係しているかどうかに関する不確定さにもかかわらず、多くの提案された機構は、無痛性内臓感覚の媒介となる神経および経路が関係している。疼痛は、有害または違和感の認識であって、種々の提案された機構によって起こるものと考えられる。これらの機構は、組織損傷(侵害受容疼痛)に関する、あるいは疾患(例えば中毒量の薬剤(神経因性疼痛)、糖尿病、または外傷)からの神経損傷を介して、情報を提供する特化した感覚受容器の活性化を含む(例えば、A.I.Basbaum and T.M.Jessell(2000)The perception of pain.In Principles of Neural Science,4th.ed.;Benevento et al.(2002)Physical Therapy Journal 82:601−12を参照せよ)。痛覚は、疼痛を生じる場合があり、侵害受容器を活性化させる全ての刺激が疼痛として経験されるわけではない(A.I.Basbaum and T.M.Jessell(2000)The perception of pain.Principles of Neural Science,4th.ed.)。膀胱からの体性感覚情報は、2次または3次ニューロンを経て脳幹および視床に向けて突出した後根神経節(DRG)を介して脊髄に入る侵害受容AδおよびC繊維によって、中継される(Andersson(2002)Urology 59:18−24;Andersson(2002)Urology 59:43−50;Morrison,J.,Steers,W.D.,Brading,A.,Blok,B.,Fry,C.,de Groat,W.C.,Kakizaki,H.,Levin,R.,and Thor,K.B.,”Basic Urological Sciences” Incontinence(vol.2)Abrams,P.Khoury,S.,and Wein,A.(Eds.)Health Publications,Ltd.,Plymbridge Distributors,Ltd.,Plymouth,UK.,(2002)。感覚求心性神経の多数の異なる亜型は、下部尿路から神経刺激伝達に関係していると思われる。これらは、限定されるものではないが、小径、中径、大径、有髄、無髄、仙椎、腰動脈、ペプチド作用、非ペプチド作用、IB4陽性、IB4陰性、C繊維、Aδ繊維、高閾値、または低閾値の神経単位として分類することが可能である。DRGへの侵害受容入力は脊髄視床、脊柱網様、脊柱中脳、脊柱頸部、場合によっては背面のカラム/内側毛帯の路を含むいくつかの上行路に沿って脳に伝えられると思われる(A.I.Basbaum and T.M.Jessell(2000)The perception of pain.Principles of Neural Science,4th.ed.)。中枢機構(それは完全にはよく理解されていない)は、侵害受容情報の全てでなく、いくつかを有痛性知覚認知に変えると考えられる(A.I.Basbaum and T.M.Jessell(2000)The perception of pain.Principles of Neural Science,4th.ed.)。
【0058】
過活動膀胱のための現在の処置は、薬物、食生活の改善、排尿訓練のプログラム、電気刺激、および手術を含む。現在では、抗ムスカリン(それは、抗コリン作用剤の一般の種類の亜型である)は、過活動膀胱の処置に使用される主要な薬物である。この処置は、有効性が限られており、また副作用(例えば口渇、乾燥性角結膜炎、乾燥膣、動悸、眠気、および便秘)をこうむり、一部の個体では許容するのが困難であることが判明した。
【0059】
多くの化合物が膀胱または他の骨盤内臓器官の疼痛を含む疾患の処置として探査されたにもかかわらず、過活動膀胱のような膀胱疾患に伴う無痛性感覚性症状の処置に対する研究は相対的にわずかでしかない。過活動膀胱のための現在の処置として、薬物、食生活の改善、膀胱訓練のプログラム、電気刺激、および手術が挙げられる。現在では、抗ムスカリン(それは、抗コリン作用剤の一般の種類の亜型である)は、過活動膀胱の処置のために使用される主要な薬物である。この処置は、有効性が限られており、副作用(例えば口渇、乾燥性角結膜炎、乾燥膣、動悸、眠気、および便秘)をもたらす。また、一部の個体では許容するのが困難であることが判明した。
【0060】
ガバペンチン、プレガバリン、およびGABAアナログの使用が失禁(WO00/061135参照)のために有力な処置として提案される一方で、過活動膀胱(またはOAB)は失禁の有無にかかわらず起こり得る。近年、当業者の間で、OABの主症状がいっさいの明白な尿失禁も無視して尿意切迫であると認められていた。例えば、最近の研究は、全てのOAB症状の米国人口集団の地域密着サンプルのクオリティーオブライフ(生活の質)への影響を検討している(Liberman et al.(2001)Urology 57:1044−1050)。この研究は、対照と比較してとき、明白な尿失禁がいっさい無くてもOABを患っている個体のクオリティーオブライフ(生活の質)が低下していることを証明した。その上、尿意切迫のみもつ個体は、対照と比較して生活の質が低下している。
【0061】
尿意切迫が、現在OABの一次性症状であると考えられているにもかかわらず、今日まで、それは治験で定量化されたかたちでは評価されていなかった。しかし、OABに対するこのような新たな理解に対応して、OABウエット(失禁をなし)およびOABドライ(失禁をあり)という用語が、これらの異なる患者集団(WO03/051354参照)を説明するために提唱された。OABウエットおよびOABドライの有病率は男性と女性とで同程度であることが報告される、1アメリカ合衆国での有病率は16.6%である((Stewart et al.,”Prevalence of Overactive Bladder in the United States:Results from the NOBLE Program,” Abstract Presented at the Second International Consultation on Incontinence,July 2001,Paris,France)。
【0062】
前立腺炎および慢性前立腺炎様症候群は、成人男子人口集団の約2〜9%で発症すると示唆された他の下部尿路疾患である(Collins M M,et al.,(1998)”How common is prostatitis? A national survey of physician visits,”Journal of Urology,159:1224−1228)。前立腺炎を、前立腺の炎症に関連して、慢性細菌性前立腺炎と慢性細菌性前立腺炎とに細分化することが可能である。慢性細菌性前立腺炎は、細菌性感染に起因すると考えられて、通常、前立腺の炎症、前立腺液中での白血球の存在、および/または疼痛のような症状を伴う。慢性細菌性前立腺炎は、尿路感染症が無く、尿および前立腺分泌物での細菌培養検査では陰性であるにもかかわらず、前立腺分泌物で過剰な炎症細胞によって特徴づけられる未知の病因学の炎症性および有痛性の状態である。慢性前立腺炎様症候群(慢性骨盤疼痛症候群)は、前立腺の炎症のない慢性細菌性前立腺炎の有痛性症状を伴う状態である
現在のところ、前立腺炎および慢性前立腺炎様症候群に対して確立された処置が存在しない。抗生物質はしばしば処方されるが、その有効性についての証拠はほとんどない。COX−2選択的阻害剤およびαアドレナリン作動性の遮断剤が処置として提案されているが、それらの有効性は確立されていない。熱い座浴槽および抗コリン剤も、若干ではあるが対症法的な軽減を得るために用いられてきた。
【0063】
下部尿路疾患は、脊髄損傷を患っている個体にとって特に問題である。脊髄損傷の後、膀胱と平滑筋との共同運動に障害がある状態を除いては、不随的な神経および筋制御の対象であるので、腎臓は尿を作り続けて尿が尿管および尿道の中を流れ続けることができる。対照的に、膀胱と括約筋は髄的な神経および筋制御に対する対象でもあるので、脊髄を通しての脳からの下行入力が膀胱および括約筋を駆動して完全に膀胱を空にさせることを意味する。脊髄損傷の後で、個体がそれらの膀胱および括約筋の随意調節をもはや持つことができないように、そのような下行入力が中断される場合もある。脊髄損傷は脳に伝わる感覚シグナルを途絶させることもでき、それらの膀胱が満たされた場合に個体が排尿したいという衝動を感じることが可能となるのを妨げる。
【0064】
脊髄損傷の後で、膀胱は通常、二通りある方法のうち、1つの方法の影響を受ける。第一は、「痙攣性」または「反射性」膀胱と呼ばれている状態であり、膀胱が尿で満たされて反射が自動的に膀胱を動かして空にさせる。損傷がT12レベルより高い場合、このようなことが通常起こる。痙攣性膀胱を持つ個体は、膀胱がいつ空になるか、あるいは空になることを判断することができない。第2は「弛緩性」または「非反射性」膀胱であり、膀胱筋反射が皆無または減速している。このことは、損傷がT12/L1レベル以下である場合に通常起こる。弛緩性膀胱を持つ個体は、過度に膨張されたか伸びきった膀胱および尿管を通しての腎臓への尿の「還流」を経験すると思われる。これらの疾患のための処置オプションとして、通常、間欠導尿法、留置のカテーテル処置、またはコンドーム・カテーテル処置が挙げられるが、これらの方法は侵襲性で、しばしば不都合な場合がある。
【0065】
尿路括約筋は、脊髄損傷によって影響を受ける場合もあり、「共同運動障害」として知られている状態に陥る。共同運動障害は、膀胱が収縮する際に、尿路括約筋が弛緩できないことが必然的に伴い、膀胱収縮に反応した能動的収縮が含まれ、それによって尿が尿道の中を流れるのを妨げられるとともに、膀胱が不完全な空状態になり、腎臓への尿の「還流」が生ずる。共同運動障害に対する従来型の処置として、有効性に疑問のある投薬または手術が挙げられる。
【0066】
(末梢効果 対 中枢効果)
哺乳類の神経系は、中枢神経系(CNS、脳と脊髄を含む)と末梢神経系(PNS、脳および脊髄の外側に、交感、副交感、感覚、運動、および内臓神経を含む)から構成される。本発明による活性因子が中枢に作用することを意図している場合(すなわち、CNS内の神経に及ぼす作用を介してその効果を及ぼす)、活性因子はCNSに直接投与されなければならないか、血液脳関門を迂回または横切ることができなければならない。血液脳関門は、血液に存在する物質のうち選択されたカテゴリーのもの以外は効果的に排除する毛細血管壁構造であり、CNSへの通過を防ぐ。血液脳関門を作る脳毛細管のユニークな形態学的な特徴は、(1)CNSの血液脳関門領域内で文字通り脳毛細管の全ての内皮を一緒に結合する上皮性様高度耐性化密着結合;および(2)わずかな飲細胞作用または経内皮チャネル(これらは末梢器官の内皮に豊富)である。血液脳関門のユニークな特徴のために、容易に体の他の組織に接近する親水性薬剤およびペプチドは脳へのエントリーから除外されるか、それらがエントリーする率は非常に低い。
【0067】
脳に活性因子を直接注入することによって、あるいは嗅覚の神経単位による活性因子の取り込みおよび逆行性輸送にとって適当な処方物の鼻腔内投与または吸入によって、血液脳関門を効果的に迂回することができる。
【0068】
CNSへの直接投与の最も一般的な手法は、脳室系またはくも膜下の空間へカテーテルを移植することである。あるいは、活性因子を修飾して血液脳関門を通り抜ける輸送を高めることである。このことは、通常、脂質への溶解性を薬物が少しでも持つこと、あるいは当業者に周知の他の修飾が求められる。例えば、活性因子を、切り詰めたり、誘導体化したり、潜性化(親水性薬物から脂溶性の薬物に変わる)したり、親油性部分もしくは血液脳関門をまたいで能動的に輸送される物質と結合させたり、あるいは頭語湯者に周知の標準的手段を用いて修飾したりすることが可能である。例えば、Pardridge,Endocrine Reviews 7:314−330(1986)、および米国特許第4,801,575号を参照せよ)。
【0069】
本発明による活性因子が末梢のみに作用する(すなわち、PNSの神経のまたは直接標的組織の作用を経て、その効果を及ぼしなさい)ことを意図している場合、それが血液脳関門を通過しないように、本発明の化合物を修飾することが望まれる場合がある。したがって、血液脳関門透過性の原則を、末梢の標的に対する選択的効力で活性因子を設計する際に用いることができる。通常、脂質不溶性薬物は、血液脳関門を越えてCNSに作用することはない。神経系に作用する基本的薬物を、上記薬物の四級化によって選択的な末梢効果を生産するために、変えられることも可能であり、その脂溶性を減少させることで実質的にそれをCNSへの移動に利用できなくする。例えば、無電荷の抗コリン作動性薬スコポラミンが中枢に作用する一方で、電荷を帯びた抗コリン作動性薬臭化メトスコポラミンには末梢効果がある。当業者は、血液脳関門をまたがる輸送を防ぐために、脂質不透過性官能基(第四級アミン、硫酸塩、カルボキシル酸塩、リン酸塩またはスルホニウム)を加える周知の標準的化学合成法を使用して、本発明の活性因子を選択かつ修飾することができる。そのような修飾は、決して本発明の活性因子が血液脳関門を通さない唯一の方法ではない。他の周知の医薬的技術が存在し、本発明の範囲内であると考慮される。
【0070】
(カルシウム・チャンネル)
電位開口型カルシウム・チャンネル(別名 電位依存性カルシウム・チャンネル)は、制御されたカルシウム流入が細胞外の環境から細胞の内部に対して行われるようにするマルチ・サブユニット膜貫通タンパク質である。電位開口型カルシウム・チャンネルの開閉(ゲート開閉)は、電界の中に移動する荷電アミノ酸を含んでいるタンパク質の電圧感度が高い領域によって制御される。これらの帯電した基の移動は、チェンネルの構造が立体配置的変化をもたらし、伝導(開口/活性化)状態または非伝導(閉口/不活性化)状態を生ずる。
【0071】
電位開口型カルシウム・チャンネルは種々の組織に存在し、動物ではいくつかの不可欠な過程に関係する。これらのカルシウムチャネルを媒介とした細胞へのカルシウム流入の変化は、種々のヒト疾患に関係しており、上記疾患として、例えば癲癇、脳卒中、脳外傷、アルツハイマー病、多発脳梗塞性痴呆、痴呆の他の種類、コルサコフ病、脳または脊髄のウィルス感染(例えばヒト免疫不全症ウイルス)に起因する神経病変、筋萎縮性側索硬化症、痙攣、発作、ハンチントン舞踏病、健忘症、あるいは酸素供給量減少、毒、または他の毒性物質から生ずる神経系の損傷が挙げられる(米国特許第5,312,928号参照)。
【0072】
電位開口型カルシウム・チャンネルは、T、L、N、P、およびQタイプとして、電気生理学的および薬理学的性質によって分類された(例えば、総説として、McCleskey et al.(1991)Curr.Topics Membr.39:295−326;and Dunlap et al.(1995)Trends.Neurosci.18:89−98を参照せよ)。若干の重なりが高電圧活性チャネルの生物物理性質にあるので、薬理学的プロファイルはさらにそれらを区別するために有用である。L形チャネルは、ジヒドロピリジン・アゴニストとアンタゴニストとに影響される。N形チャネルは、ペプチドω−コノトキシンGVIA(イモガイ類軟体動物Conus geographus由来のペプチド毒素)によってブロックされる。P形チャネルは、棚網クモAgelenopsis aperta毒由来のペプチドω−アガトキシンIVAによってブロックされる。第4のタイプの高電圧活性カルシウムチャネル(Q−タイプ)が記述されてきたが、Q形チャンネルとP形チャンネルが異なった分子上の実体を持つものかどうかは議論の余地がある(Sather et al.(1995)Neuron 11:291−303;Stea et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10576−10580;Bourinet et al.(1999)Nature Neuroscience 2:407−415)。
【0073】
電位開口型カルシウム・チャンネルは、主に異なるサブユニット(α、α、β、γ、およびδ)の組合せによって定義される(Caterall(2000)Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.16:521−55を参照せよ)。αサブユニットが10種類、αδ複合体が4種類、βサブユニットが4種類、さらにγサブユニットが2種類、知られている(Caterall,Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.,上掲を参照せよ。同様に、Klugbauer et al.(1999)J.Neurosci.19:684−691も参照せよ)。
【0074】
異なるサブユニットの組み合わせにもとづいて、カルシウム・チャンネルを構造的および機能的に関連した3種類のファミリー、すなわちCa1、Ca2、およびCa3に分けることが可能である(総説として、Caterall,Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.,上掲;Ertel et al.(2000)Neuron 25:533−55を参照せよ)。L形電流は、αサブユニットのCa1ファミリーによって媒介される(Caterall,Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.,上掲を参照せよ)。Ca2チャネルは、Ca1αサブユニットと40%未満のアミノ酸配列同一性を持つ異なったファミリーを形成する(Caterall,Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.,上掲を参照せよ)。クローン化Ca2.1サブユニットは、ω−アガトキシンIVAによって阻害されるP−またはQ−タイプ電流を伝導する(Caterall,Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.,上掲;Sather et al.(1993)Neuron 11:291−303;Stea et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10576−80;Bourinet et al.(1999)Nat.Neurosci.2:407−15を参照せよ)。Ca2.2サブユニットはN型カルシウム電流を伝導して、ω−コノトキシンGVIA、ω−コノトキシンMVIIA、ジルコノチド(Ziconotide)、およびこれらのペプチドの合成バージョンに対して高親和性を持つ(Caterall,Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.,上掲;Dubel et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5058−62;Williams et al.(1992)Science 257:389−95を参照せよ).クローン化Ca2.3サブユニットは、R形として知られているカルシウム電流を伝導して、N形またはP/Q−タイプ電流に特有のL形カルシウム電流とペプチド毒素のために特異的な有機アンタゴニストに対して、耐性を示す(Caterall,Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.,上掲;Randall et al.(1995)J.Neurosci.15:2995−3012;Soong et al.(1994)Science 260:1133−36;Zhang et al.(1993)Neuropharmacology 32:1075−88を参照せよ)。
【0075】
(薬剤)
γアミノ酪酸(GABA)アナログは、GABA由来、またはGABA型の化合物である。GABAアナログは、容易に入手可能、または当業者に既知の方法論を用いて、容易に合成される。代表的なGABAアナログとそれらの塩類として、米国特許第4,024,175号、米国特許第5,563,175号、米国特許第6,316,638号、PCT公開番号WO 93/23383、Bryans et al.(1998)J.Med.Chem.41:1838−1845、およびBryans et al.(1999)Med.Res.Rev.19:149−177(これらの文献を本明細書で援用)に記載されているように、ガバペンチンおよびプレガバリン、さらに他のGABAアナログが挙げられる。本発明を実施する上で有用な薬剤として、米国特許出願第20020111338号に開示されているもの、PCT公開番号WO99/08670に開示された環状アミノ酸化合物、PCT公開番号WO99/08670,米国特許第6,342,529号に開示された組成物、米国特許出願第20020119197号および米国特許第5,955,103号に開示されたような制御放出処方物、さらにPCT公開番号WO02/28411号、PCT公開番号WO02/28881、PCT公開番号WO02/28883、PCT公開番号WO02/32376、PCT公開番号WO02/42414、米国特許出願第20020107208号、米国特許出願第20020151529号、および米国特許出願第20020098999号に開示されたような徐放性化合物および処方物が挙げられる。
【0076】
ガバペンチン(ニューロンティン(Neurontin)、または1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)は、いくつかのカルシウムチャネル・サブユニット対する高い結合親和性を持つ抗けいれん薬であって、以下の構造:
【0077】
【化1】

【0078】
によって表される。
【0079】
ガバペンチンは、以下の式:
【0080】
【化2】

【0081】
からなる一連の化合物の1つである。
式中、Rは、水素または低級アルキル・ラジカルであり、nは4、5、または6である。ガバペンチンは、当初は、痙縮性を処置するためのガンマアミノ酪酸模倣物化合物として開発されたが、ガバペンチンは、直接的なGABA作動性作用を持たず、ガンマアミノ酪酸取り込みまたは代謝をブロックしない(例えば、総説として、Rose et al.(2002)Analgesia 57:451−462 を参照せよ)。しかし、ガバペンチンが他の抗痙攣薬に不応性である患者の部分発作の予防のための効果的処置であることがわかった(Chadwick(1991)Gabapentin,In Pedley T A,Meldrum B S(eds.),Recent Advances in Epilepsy,Churchill Livingstone,New York,pp.211−222)。ガバペンチンおよびその類似構造薬プレガバリンは、カルシウムチャネルのαδサブユニットと相互作用する(Gee et al.(1996)J.Biol.Chem.271:5768−5776)。
【0082】
その既知の抗痙攣効果に加えて、ガバペンチンはホルマリンとカラギーナンによって誘発される痛覚の強直期を遮断し、機械的な痛覚過敏と機械的/熱的異痛症の神経因性疼痛モデルで、抑制作用を及ぼすことが示された(Rose et al.(2002)Analgesia 57:451−462)。二重盲検プラセボ対照臨床試験は、ガバペンチンが糖尿病性末梢神経疾患、ヘルペス後神経痛、および神経因性疼痛に伴う有痛性症状のための効果的処置であることを示した(例えば、Backonja et al.(1998)JAMA 280:1831−1836;Mellegers et al.(2001)Clin.J Pain 17:284−95を参照せよ).
プレガバリン(S)−(3−アミノメチル)−5−メチルヘキサノン酸または(S)−イソブチルGABAは、抗痙攣薬としての用途が調べられた別のガンマアミノ酪酸アナログである(Bryans et al.(1998)J.Med.Chem.41:1838−1845)。プレガバリンは、カルシウム・チャンネルのαδサブユニットに対してガバペンチンよりも高い結合親和性さえ有することが示された(Bryans et al.(1999)Med.Res.Rev.19:149−177)。
【0083】
カルシウム・チャンネルのαδサブユニットに対する結合親和性を示す他のGABAアナログとしては、cis−(1S,3R)−(1−(アミノメチル)−3−メチルシクロヘキサン)酢酸、cis−(1R,3S)−(1−(アミノメチル)−3−メチルシクロヘキサン)酢酸、1α,3α,5α−(1−アミノメチル)−(3,5−ジメチルシクロヘキサン)酢酸、(9−(アミノメチル)ビシクロ[3.3.1]ノン−9−イル)酢酸、および(7−(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−7−イル)酢酸が挙げられるが、これらに限定されない(Bryans et al.(1998)J.Med.Chem.41:1838−1845;Bryans et al.(1999)Med.Res.Rev.19:149−177)。
【0084】
ガバペンチンの縮合二環式または縮合三環式のアミノ酸アナログも、本発明で有用であると同定された。そのような化合物として、例えば以下のものが挙げられる。
【0085】
1.PCT公開番号WO99/21824に開示されたような環状アミノ酸(下記に示す)およびその誘導体およびアナログ;
【0086】
【化3】

【0087】
2.公開された米国特許出願第60/160725号に開示されたような二環状アミノ酸(下記に示す)であって、[3H]ガバペンチンとブタ脳組織由来のαδサブユニットとを用いた放射性リガンド結合アッセイで測定されるような高い活性を持つものとして開示されたものが挙げられる;
【0088】
【化4】

【0089】
ならびに
3.公開された英国特許出願GB 2 374 595に開示されたような二環状アミノ酸(下記に示す)とその誘導体およびアナログ
【0090】
【化5−1】

【0091】
【化6】

【0092】

【0093】
本発明で有用な他の薬剤として、カルシウム・チャンネルのαδサブユニットと結合するいずれかの化合物が挙げられる。カルシウム・チャンネルのモジュレーターとして同定された化合物として、米国特許第6,316,638号、米国特許第6,492,375号、米国特許第6,294,533号、米国特許第6,011,035号、米国特許第6,387,897号、米国特許第6,310,059号、米国特許第6,294,533号、米国特許第6,267,945号、PCT公開番号WO 1/49670、PCT公開番号WO01/46166、およびPCT公開番号WO01/45709に開示されたものが挙げられる。これらの化合物のうちのどれがカルシウム・チャンネルのαδサブユニットに対する結合親和性を持つかという同定を、Gee et al.(Gee et al.(1996)J.Biol.Chem.271:5768−5776)によって記載されているように、αδ結合親和性研究を実行することによって決定さすることができる。他のGABAアナログを含むさらなる化合物が、カルシウム・チャンネルのαδサブユニットに対する結合親和性を持つかという同定を、Gee et al.(Gee et al.(1996)J.Biol.Chem.271:5768−5776)によって記載されているように、αδ結合親和性研究を実行することによって決定さすることができる。
【0094】
(処方物)
本発明の処方物としては、必要に応じて、短期、急速オフセット、制御放出、徐放性、遅延放出、および拍動性放出の処方物を挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0095】
一種類以上の追加の活性因子を、同時または逐次、αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子とともに投与する。追加の活性因子は、通常、しかし必然的ではないが、通常の患者および脊椎損傷患者の無痛性膀胱疾患および/またはαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子の効果を増強する薬剤を処置することに効果的であるものである。適当な副次的な薬剤として、限定されるものではないが、三環系抗うつ薬、デュロキセチン、ベンラファクシン、モノアミン再取込み阻害剤(選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRIのもの)とセロトニン/ノルエピネフリン再取込み阻害剤(SNRIのもの)を含む)、ガバペンチン、プレガバリン、5−HTアンタゴニスト、5−HTアンタゴニスト、および/またはαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子の作用を阻害しないいずれかの薬剤が挙げられる。
【0096】
5−HTアンタゴニストは、本発明では追加の活性因子として用いられ、限定されるものではないが、
a.オンダンセトロン[1,2,3,9−テトラヒドロ−9−メチル−3−[(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル]メチル−4H−カルバゾール−4−オン(以下を参照のこと:Merck Index、12版、項目6979);
b.グラニセトロン[エンド−1−メチル−N−(9−メチル−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イル)−1H−イミダゾール−3−カルボキシアミド(以下を参照のこと:Merck Index、12版、項目4557);
c.ドラセトロン[1H−インドール−3−カルボン酸(2α,6α,8α,9αβ)−オクタヒドロ−3−オクソ−2,6メタノ−2H−キノリジン−8−イル−エステル](以下を参照のこと:Merck Index、12版、項目3471);
d.インドール−3−イル−カルボン酸−エンド−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3,2,1]−オクト−3−イル−エステル,トロピセトロンとも知られている(以下を参照のこと:Merck Index、12版、項目9914);
e.4,5,6,7−テトラヒドロ−5−[(1−メチル−インドール−3イル)カルボニル]ベンズイミダゾール(ラモセトロン、米国特許第5,344,927号も参照せよ);
f.(+)−10−メチル−7−(5−メチル−1H−イミダゾール−4−イルメチル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−6−オン(ファベセトロン、欧州特許第0361317号);
g.[N−(1−エチル−2−イミダゾリン−2−イル−メチル)−2−メトキシ−4−アミノ−5−クロロベンズアミド(リントプリド,Chem.Abstr.No.107429−63−0も参照せよ);および
h.2,3,4,5−テトラヒドロ−5−メチル−2−[(5−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)メチル−]−1H−ピリド[4,3−b]インドール−1−オン
が挙げられる(アロセトロン、欧州特許第0 306 323号も参照せよ)。
【0097】
本発明の追加の活性因子として用いることが可能な5HTアンタゴニストとして、限定されるものではないが、米国特許第6,127,379号に開示されるように、ベンゾピラン、ベンゾチオピラン、およびベンゾフラン誘導体が挙げられる。
【0098】
いずれの活性因子も、酸、エステル、アミド、プロドラッグ、または誘導体が適当に医学的(すなわち、本発明で有効)であるという条件で、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、誘導体、またはその他の形態で投与することが可能である。上記活性剤の塩、エステル、アミド、プロドラッグ、および他の誘導体は、合成有機化学に関する当業者に公知の標準的手法を用いて、または、例えば、J.March,Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms and Structure,4th Ed.(New York:Wiley−Interscience,1992)に記載されているようにして、合成することが可能である。例えば、酸付加塩は、従来の方法論を用いて遊離塩基から合成され、適当な酸との反応を伴う。酸付加塩を合成するための適当な酸として、酸性追加塩類を調製するための適当な酸として、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ニッケイ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、およびサリチル酸)と、無機酸(例えば、塩化水素、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およりリン酸)とが挙げられる。酸付加塩を、適当な塩によって処置することで、遊離の塩基に戻すことが可能である。酸性追加塩は、適当な塩基で処置によって遊離塩基に復帰することができる。特に、本明細書内の活性因子の好ましい酸付加塩は、有機酸で調製される塩類である。逆に、活性因子上に存在することが可能な酸性部分の塩基性塩の調製は、薬学的に受容可能である塩基(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、またはトリメチルアミン)を使用して、同様の方法で調製される。
【0099】
エステルの調製は、薬物の分子構造の中であることができるヒドロキシルおよび/またはカルボキシル基の機能付与を含む。エステルは遊離アルコール性基(すなわちRがアルキル、好ましくは低級アルキルである式RCOOHのカルボン酸に由来する部分)の典型的アシルが置換された誘導体である。エステルは、従来の水素化分解または加水分解手順を用いて遊離酸に、必要に応じて、復帰することができる。アミドおよびプロドラッグは、当業者に知られているか、関連する文献で記述される技術を使用して調製されることもできる。例えば、アミドを、適当なアミン反応物を用いてエステルから調製することが可能であり、あるいはアンモニアまたは下部のアルキルアミンとの反応によって無水塩または酸クロリドから調製することができる。プロドラッグは、一部分の共有結合によって通常は調製され、個体の代謝系によって修飾され、治療的不活性である化合物が得られる。
【0100】
ガバペンチン用の処方物の一セットが、Neurontin(登録商標)という商品名で市販されている。Neurontin(登録商標)カプセル、Neurontin(登録商標)錠剤、およびNeurontin(登録商標)経口液剤が、100mg、300mg、および400mgのガバペンチンを含むインプリントされたハード・シェル・カプセルとして、600mgおよび800mgのガバペンチンを含んでいる楕円形フィルム・コーティング錠、または250mg/5mLのガバペンチンを含む経口溶液として供給される。カプセルのための不活性成分は、ラクトース、コーンスターチとタルクである。100mgの小型のシェルはゼラチンと二酸化チタンとを含有する。300mgの小型のシェルはゼラチン、二酸化チタン、および鉄黄を含有する。400mgの小型のシェルはゼラチン、赤色酸化鉄、二酸化チタン、および鉄黄を含有する。錠剤の不活性成分は、ポロキサマー407、コポリビドナム(copolyvidonum)、コーンスターチ、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、タルク、カンデリラ蝋、および精製水である。経口溶液のための不活性成分は、グリセリン、キシリトール、精製水、および人工冷イチゴ・アニス・フレーバーである。これらの処方物に加えて、ガバペンチンおよび処方物は、概ね以下の特許で記載される。すなわち、米国特許第6,645,528号、米国特許第6,627,211号、米国特許第6,569,463号、米国特許第6,544,998号、米国特許 6,531,509号、米国特許第6,495,669号、米国特許第6,465,012号、米国特許第6,346,270号、米国特許第6,294,198号、米国特許第6,294,192号、米国特許第6,207,685号、米国特許第6,127,418号、米国特許第6,024,977号、米国特許第6,020,370号、米国特許第5,906,832号、米国特許第5,876,750号、および米国特許第4,960,931号である。
【0101】
活性因子の他の誘導体およびアナログは、有機合成化学の当業者に知られている標準的技術を使用して調製することができ、または関連する文献への言及によって推測することが可能である。加えて、キラル活性因子が異性体的に純粋な形状であってもよく、または異性体のラセミ混合物として投与することも可能である。
【0102】
(薬学的組成物および剤形)
適当な薬学的組成物および剤形は、錠剤、カプセル、カプレット、ピル、ゲル・キャップ、トローチ、分散系、懸濁液、溶液、シロップ剤、経皮性のパッチ、ゲル類、散剤(薬)、マグマ剤、ロゼンジ、クリーム、ペースト、硬膏剤、ローション剤、ディスク、坐薬、経鼻または経口投与のための液体スプレー、吸入剤のための乾燥粉末またはエアロゾルかした処方物、その他が挙げられる。さらに、当業者はこれらの薬学的組成物および剤形を含んでいる適当な処方物を容易に推測することができ、本明細書中で他に記載された処方物も包含される。
【0103】
(経口用の剤形)
経口用の剤形として、錠剤、カプセル、カプレット、溶液、懸濁液および/またはシロップ剤が挙げられ、さらにカプセル化された、またはカプセル化されていない複数の顆粒、ビード、散剤(薬)、またはペレットも挙げることができる。そのような剤形は、薬学的処方物の分野でそれらに知られていて、関連するテキストで記述される通常法を使用して調製される。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Gennaro,A.R.,Ed.(Lippincott,Williams and Wilkins,2000)。錠剤およびカプセルは最も便利な経口用の剤形であり、固相の薬学的キャリアは使用が使用される。
【0104】
錠剤は、標準の錠剤処理と器材とを使用して製造することが可能である。単独で、または1種類以上のキャリア、添加物、またはその種の他のものと組み合わせて活性因子を含む、粉末、血漿、または顆粒組成物の直接圧縮によって、錠剤が形作られる。直接の圧縮に代わるものとして、錠剤を湿式造粒法または乾式造粒法プロセスを用いて調製することができる。錠剤を圧縮するよりはむしろ、型に入れて成形することも可能であり、湿性またはそれ以外の取り扱いやすい材料から始める。しかし、圧縮および顆粒形成技術が、好ましい。
【0105】
活性因子に加えて、発明の方法を使用して経口投与用に調製される錠剤は、通常、バインダー、希釈剤、滑沢剤、崩壊剤、充填材、安定剤、界面活性剤、防腐剤、色素、香料等のような他の材料を含む。バインダーは、粘着特性を錠剤に与える際に用いられるので、錠剤が圧縮の後、完全なままであることが確実になる。適当なバインダー材料としては、澱粉(トウモロコシ澱粉およびアルファ化でんぷんを含む)、ゼラチン、糖(スクロース、ブドウ糖、ブドウ糖、およびラクトースを含む)、ポリエチレングリコール、ポリプロイレングリコール、ワックス、および天然もしくは合成のガム(例えばアカシア・アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロースのポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、メチルセルロース、エチル・セルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を含む)、ならびにビーガム(Veegum)が挙げられるが、これらに限定されない。実用的なサイズの錠剤が最終的に提供されるように、代表的には、希釈剤がバルクを増加させるのに必要である。適当な希釈剤としては、燐酸カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、白土、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥澱粉、および粉糖が挙げられる。滑沢剤は、錠剤製造を容易にする際に用いられ、例えば、植物油(例えば、ステアリン酸の落花生油、綿実油、ごま油、オリーブ油、とうもろこし油、さらにカカオ、グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、もしくはステアリン酸カルシウムの油)を含む。存在する場合、ステアリン酸は、薬物含有コアの約2%未満を示す。崩壊剤は、錠剤の崩壊を容易にするのに用いられ、通常、澱粉、粘土、セルロース、アルギン、ガムまたは架橋重合体である。充填材は、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、白土、粉末セルロースと微結晶性セルロース(マンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、ブドウ糖、塩化ナトリウムとソルビトールのような可溶性材料と同様に)のような材料を含む。安定剤は、例として、酸化的反応を含む薬物分解反応を阻害するか、遅延させる際に用いられる。界面活性剤は陰イオン性、陽イオン、両性、または非イオン性であってもよい。
【0106】
剤形は、カプセルであってもよく、その場合、活性因子を含有する組成物を、液体または固体の形(顆粒、ビード、散剤(薬)またはペレットのような粒子を含む)でカプセル化してもよい。適当なカプセルは、ハードまたはソフトのいずれかであり、一般にゼラチン、澱粉またはセルロース系材料でできている。ツーピース形の硬ゼラチン・カプセルは、望ましくはゼラチン・バンド等で密閉され(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,上掲を参照せよ)、カプセル化された医薬品を調製するための材料および方法が記載されている。もし、活性因子含有材料が、活性因子を含有する組成物が液体状態でカプセル内にある場合、液体キャリアは活性因子を溶かすのに必要である。キャリアは、小型の材料と互換性を持たなければならならず、薬学的組成物の全ての構成要素、そして、摂取のために適当でなければならない。
【0107】
固体の剤形は、錠剤、カプセル、カプレット、または粒子にかかわらず、必要に応じて、遅延放出がおこなえるようにコーティングされたものであってもよい。遅延放出コーティングがなされた剤形は、標準のコーティング手順および器材を使用して製造可能である。そのような手順は、当業者に知られており、関連するテキスト(例えば、Remington,上掲)に記述される。通常、固体の剤形の調製の後、塗料槽、エアレススプレー・テクニック、流動床塗布装置、またはその他のものを使用して遅延放出コーティング組成物が塗布される。遅延放出コーティング組成物は、高分子物質、例えば酪酸フタル酸セルロース、水素フタル酸セルロース、プロプリオネート・フタル酸セルロース、ポリビニル酢酸塩フタル酸、酢酸フタル酸セルロース、トリメリット酸塩セルロース、ヒドロキシプロピル・フタル酸メチルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース酢酸塩、ジオキシプロピル・メチルセルロース琥珀酸エステル、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース酢酸塩琥珀酸エステル、アクリル酸から形成したコポリマー、メタアクリル酸、および/またはそれらのエステルを含む。
【0108】
徐放性剤形は、長時間にわたる薬物放出を規定し、遅延放出であってもなくてもよい。通常、当業者によって認められるように、徐放性剤形は不溶性プラスチック、親水性ポリマーまたは脂肪族化合物のような段階的に生体分解性(加水分解性)材料のマトリックス内に薬物を分散させることによって、または固形の、薬物を含有する剤形をそのような材料で被覆することによって処方される。例えば、不溶性プラスチック・マトリックスを、ポリ塩化ビニルまたはポリエチレンから構成してもよい。持続性剥離剤塗布またはマトリックス・セルロース誘導体ポリマーを規定するために有用な親水性ポリマーは、限定されるものではないが:セルロースのポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチル・セルロース、ヒドロキシプロピルメチル・セルロース、メチルセルロース、エチル・セルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸・セルロース(酢酸セルロース・トリメリット酸塩)、フタル酸ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース・ナトリウム;アクリル酸ポリマー、およびコポリマーが挙げられる。好ましくは、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、および好ましくはトリメチル・アンモニオエチル・メタクリル酸(商標EudragitRSとして市販されている)のターポリマーとともに、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル等から作られ、例として、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレートおよび/またはメタクリル酸エチルから作られるもの;ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、ポリビニル酢酸フタル酸、ビニル酢酸クロトン酸コポリマー、およびエチレンビニル酢酸塩コポリマー;ゼイン;さらに、セラック、アンモニアと化合したセラック、セラック・アセチル・アルコール、およびセラックn−ブチル・ステアリン酸である。徐放性マトリックス物質として使われる脂肪族化合物として、限定されるものではないが、一般にワックス(例えばカルナバ蝋)およびステアリンが挙げられる。
【0109】
(経粘膜薬学的組成物および剤形)
本組成物を経口投与してもよいが、他の投与形態が同様に適当である。例えば、経粘膜投与を有利に使用されることができる。経粘膜投与は、処方物または投薬量単位の任意の型を粘膜組織の適用のために適当に扱って実施される。例えば、選択された活性因子を、接着性錠剤またはパッチで頬側粘膜に投与、舌下的に、舌の下に固形剤形を配置することによって投与、舌側で、固形剤形を舌に配置することによって投与、液滴または鼻噴霧として経鼻投与、エアゾール処方物、フロンガスを使用していない液剤または乾燥粉末の吸入によって投与、直腸(「経直腸」処方物)の範囲内でまたはその近くに配置、または坐薬、軟膏、またはその種の他のものとして尿道に投与される。
【0110】
好ましい頬側剤形は、概して、頬粘膜に付着するのに役立つこともできる選択された活性因子と生体分解性(加水分解性)高分子のキャリアとを治療有効量を含む。頬側投薬量単位は、薬物送達が基本的に全体に規定される所定の時間にわたって減退するようにして製造される。時間は、概して、約1時間から約72時間までの範囲内にある。好ましい頬側薬物送達は、約2時間から約24時間までの期間わたって、好ましくは起こる。短期間使用の際の頬側薬物送達は、好ましくは約2時間から約8時間までの期間にわたって、より好ましくは約3時間から約4時間までの期間にわたって、起こらなければならない。必要に応じて頬側薬物送達は、約1時間から約12時間までの期間、より好ましくは約2時間から約8時間までの期間、最も好ましくは約3時間から約6時間までの期間、おこらなければならない。持続性頬側薬物送達は、好ましくは約6時間から約72時間までの期間、より好ましくは約12時間から約48時間までの期間、最も好ましくは約24時間から約48時間までの期間にわたって生ずる。頬側の薬物送達(そのことは当業者によって認められる)は、経口薬剤投与(例えば遅い吸収、胃腸管にある体液による活性因子の分解および/または肝臓の初回通過失活)で遭遇される不利を回避する。
【0111】
頬側投薬量単位での活性因子の「治療有効量」は、当然、薬剤と意図された投薬量の効力に依存し、次に、処置を受けている特定の個体、特異適応等に依存している。頬側の投薬量単位は、通常、約1.0重量%から約60重量%の活性因子、望ましくは約1重量%から約30重量%の活性因子を含む。生体分解性(加水分解性)高分子のキャリアに関して、実質的に、所望の薬物放出プロフィールが損なわれない限り、任意のキャリアを使用することができると理解され、キャリアは投与されるαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子と頬側の投薬量単位の他の構成要素とに対して互換性を持つ。通常、高分子キャリアは頬粘膜の湿表面に付着する親水性(水溶性かつ水膨潤性)高分子を含む。
【0112】
本明細書で有用な高分子キャリアの例として、アクリル酸ポリマーおよびコポリマーが挙げられ、それらは、例えば「カルボマー」(B.F.Goodrichから入手可能なCarbopol(登録商標)はそのようなポリマーの1つである)として知られている。他の適当なポリマーとして、限定されるものではないが、加水分解ポリビニルアルコール;ポリエチエレン酸化物(例えば、Sentry Polyox(登録商標)、水溶性樹脂、Union Carbideから入手可能);ポリアクリレート(例えば、Gantrez(登録商標)、GAFから入手可能);ビニルポリマーおよびコポリマー;ポリビニルピロリドン;デキストラン;ガーゴム;ペクチン;澱粉;ならびにセルロース・ポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Methocel(登録商標)、Dow Chemical Companyから入手可能)、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、Klucel(登録商標)、同様にDowから入手可能)、ヒドロキシプロピル・セルロースエーテル(Aldermanの米国特許第4,704,285号を参照)、ヒドロキシエチル・セルロース、カルボキシメチル・セルロース、ナトリウム・カルボキシメチル・セルロース、メチル・セルロース、エチル・セルロース、酢酸フタル酸セルロース、および酢酸酪酸セルロースが挙げられる。
【0113】
他の成分も、本明細書に記載した頬側投与剤形に取り込むことが可能である。追加の成分として、限定されるものではないが、例えば、崩壊剤、希釈剤、バインダー、滑沢剤、調味料、着色材、および防腐剤が挙げられる。崩壊剤の例として、限定されるものではないが、架橋ポリビニルピロリドン、例えばクロスポビドン(例えば、Polyplasdone(登録商標)XL、GAFから入手可能)、架橋カルボン酸メチルセルロース、例えばクロスカルメロース(例えば、Ac−di−sol(登録商標)、FMCから入手可能)、アルギン酸、およびナトリウム・カルボキシメチル・スターチ(例えば、Explotab(登録商標)、Edward Medell Co.,Inc.から入手可能)、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、ならびにアルギン酸が挙げられる。適当な希釈剤は、圧縮技術を用いて調製される薬学的処方物で一般に有用である希釈剤であって、例えば二水和リン酸二カルシウム(例えば、Di−Tab(登録商標)、Staufferから入手可能)、デキストリン(例えば、共晶化スクロースとDi−Pak(登録商標)等のデキストリン、Amstarから入手可能)と共晶化によって処理された糖、リン酸カルシウム、セルロース、白土、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥澱粉、粉糖等が挙げられる。バインダーは、使用する場合、粘着を強化するものである。そのようなバインダーの例として、限定あれるものではないが、澱粉、ゼラチン、および糖(例えばスクロース、ブドウ糖、糖蜜、およびラクトース)が挙げられる。特に好ましい滑沢剤は、ステアリン酸およびステアリン酸であり、最適滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0114】
下舌適用および舌側適用の剤形として、錠剤、クリーム、軟膏、ロゼンジ、ペースト、および他の固形剤形(活性成分は、錠剤分解性マトリックスに混合される)が挙げられる。下舌または舌側送達のための錠剤、クリーム、軟膏またはペーストは、舌下または舌側薬剤投与のために選択された活性因子の治療有効量と適当な1種類以上の従来の非毒性キャリアとを含む。本発明の舌下および舌側剤形は、従来のプロセスを使用して製造可能である。舌下および舌側投薬量単位は、急速に崩壊するように作られる。投薬量単位が完全に崩壊する時間は、概して約10秒〜約30分までの範囲内であり、最適なのは5分未満である。
【0115】
他の構成要素は、本明細書中に記載される舌下および舌側剤形に組み込まれることも可能である。付加的な構成要素として、限定されるものではないが、バインダー、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤等が挙げられる。使用可能なバインダー例として、水、エタノール、およびポリビニルピロリドン;およびデンプン溶液ゼラチン溶液が挙げられる。適当な崩壊剤として、例えば、乾燥澱粉、炭酸カルシウム、ポリオキシエチエレン・ソルビタン脂肪酸エステル、ナトリウム・ラウリル硫酸塩、ステアリン・モノグリセリド、およびラクトースが挙げられる。使用する場合、湿潤剤はグリセリン、澱粉等を含む。特に好ましい滑沢剤は、ステアリン酸およびポリエチレングリコールである。舌下および舌側剤形に取り込むことが可能なる付加的な構成要素が当業者に周知または理解されよう(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,上掲を参照せよ)。
【0116】
経尿道投与を目的として、処方物は活性因子を有する尿道剤形と、一種類以上の選択されたキャリアまたは賦形剤(例えば水、シリコーン、ワックス、ワセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロイレングリコール(PG)、リポソーム、糖(例えばマンニトールとラクトース)および/または種々の他材料)とを、ポリエチレングリコールおよび特に好ましいその誘導体とともに、含む。
【0117】
投与する特定の活性因子に依存して、経尿道浸透エンハンサーを尿道剤形に取り入れることが必要と思われる。適当な経尿道浸透エンハンサーの例として、上記のようにジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチル・ホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、デシルメチルスルホキシド(C10MSO)、ポリエチレングリコールモノラウリン酸(PEGML)、グリセロールモノラウレート、レシチン、1置換アザシクロヘプタン−2−オン、特に1−n−ドデシルシクラザスクロヘプタン−2−オン(Azone(登録商標)、Nelson Research & Development Co.,Irvine,Calf.から入手可能)、SEPA(登録商標)(Macrochem Co.,Lexington,Mass.から入手可能)、上記したような界面活性剤(例えば、例えば、Tergitol(登録商標)、Nonoxynol−9(登録商標)およびTWEEN−80(登録商標))、さらにエタノール等の低級アルカノールが挙げられる。
【0118】
米国特許第5,242,391号、第5,474,535号、第5,686,093号、および第5,773,020号で説明されたような経尿道薬物投与は、種々の尿道剤形を用いて、おこなうことができる。例えば、薬物を、フレキシブルチューブ、スクィーズボトル、ポンプまたはエアゾール・スプレーから尿道に導入することができる。薬物を、吸収されるか、溶解するか、尿道で生体分解されるコーティング、ペレットまたは坐薬に含ませることもできる。ある実施態様においては、上記薬剤を陰茎インサートの外表面のコーティング剤に含有させる。必須でないにもかかわらず、薬物が尿道内に少なくとも約3cm、望ましくは尿道内に少なくとも約7cm入ったところから送達されることが好ましい。通常、から尿道内の少なくとも約3cm〜約8cmへの送達は、本方法に関連して効果的な結果をもたらす。
【0119】
PEGまたはPEG誘導体を含む尿道坐薬処方物は、当業者に理解されるように、また関連する文献および医薬テキストに記述されているように、従来の技術(例えば圧縮成形、または加熱成形その他)を使用して簡便に処方物化することが可能である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,上掲を参照せよ。この文献は、尿道坐薬の形で薬学的組成物を調製する典型的方法を開示している)。PEGまたはPEG誘導体は、好ましくは、分子量が約200〜約2,500g/mol、より好ましくは約1,000〜約2,000g/molの範囲内である。適当なポリエチレングリコール誘導体として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、例えばポリエチレングリコール、モノステアリン酸、ポリエチレングリコール・ソルビタン・エステル、例えばポリソルベート、その他がある。特定の活性因子に従い、尿道用坐薬(urethral suppository)がPEGまたは他の経尿道ビヒクルで活性因子の溶解性を増加させるために効果的な1種類以上の溶解剤を含むことも、好ましいと考えられる。
【0120】
薬剤の制御放出または徐放性を規定する尿道剤形に含まれる活性因子を送達することが望ましいと考えられる。そのような場合、その剤形は生体適合性、生物分解可能な材料(概して、生分解性ポリマー)を含む。そのようなポリマーの実施例として、ポリエステル、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリオルトエステル、ポリ無水塩、アルブミン、ゼラチン、および澱粉が挙げられる。説明したように、例えば、PCT公開番号WO 96/40054で、これらと他のポリマーは制御されて持続性薬物放出を可能にする生物分解可能な微小粒子を規定するのに用いることができ、必須の投薬頻度が最小化される。
【0121】
尿道剤形は、好ましくは、長さが約2〜約20mm、好ましくは約5〜約10mm、幅が約5mm未満、好ましくは幅が約2mm未満のオーダーにある坐薬を含む。坐薬の重さは、一般に、約1mg〜約100mg、好ましくは約1mg〜約50mgである。しかし、当業者に理解されるように、坐薬の大きさは、薬物の効力、処方物の性質、その他のファクターに依存して、変動可能または変動する。
【0122】
経尿道薬物送達は、「活発な」送達機構(例えばイオン注入、電気穿孔法または音波泳動法)を含むことができる。このように薬剤を送達する装置および方法は、周知である。イオン泳動的補助がなされた薬物送達は、例えば、PCT公開番号WO 96/40054(前述)に記載されている。手短に言うと、活性因子は、尿道プローブ内またはそれに固定された第2電極に対して、外部電極から送られた電流を手段として尿道壁を介して、駆動される。
【0123】
好ましい経直腸剤形として、肛門坐剤、クリーム、軟膏、および液剤(浣腸)が挙げられる。経直腸送達のための坐薬、クリーム、軟膏または液剤は、経直腸薬剤投与のために選択されたホスホジエステラーゼ阻害剤の治療有効量と適当な1種類以上の従来の非毒性キャリアとを含む。本発明の経直腸剤形を、従来のプロセスを使用して製造することができる。経直腸投薬量単位を、急速に、または数時間かけて崩壊するように製造することができる。完全な崩壊のための時間は、好ましくは、約10分〜約6時間までの範囲にあって、最適時間は約3時間未満である。
【0124】
他の構成要素は、本明細書中に記載される経直腸剤形に組み込み可能である。付加的な構成要素として、限定されるものではないが、剛化剤、抗酸化剤、防腐剤等がある。使用可能な硬化剤の例として、パラフィン、白ろう、および蜜蝋が挙げられる。使用する場合、好ましい抗酸化剤として重亜硫酸ナトリウムおよびメタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0125】
好ましい膣および膣周囲適用の剤形として、膣坐剤、クリーム、軟膏、液剤、膣座薬、タンポン、ゲル類、ペースト、フォームまたはスプレーが挙げられる。
膣または膣周囲送達のための坐薬、クリーム、軟膏、液剤、膣座薬、タンポン、ゲル、ペースト、泡またはスプレーは、膣または膣周囲薬剤投与のために、選択された活性因子の治療有効量と適当な1種類以上の従来の非毒性キャリアとを含む。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,上掲(また、処方物については米国特許第6,515,198号、第6,500,822号、第6,417,186号、第6,416,779号、第6,376,500号、第6,355,641号、第6,258,819号、第6,172,062号、および第6,086,909号を参照せよ)に記載されているように、本発明の膣または膣周囲形態は従来のプロセスを使用して製造可能である。膣または膣周囲投薬量単位は、急速または数時間にわたって崩壊するように製造可能である。完全な崩壊のための時間は、好ましくは約10分から約6時間の範囲にあって、最適時間は約3時間未満である。
【0126】
他の構成要素を、本明細書中に記載される膣または膣周囲剤形に組み込むことも可能である。付加的な構成要素は、限定されるものではないが、硬化剤、抗酸化剤、防腐剤、などを含む。使用可能な硬化剤の例として、例えば、パラフィン、白ろう、および蜜蝋が挙げられる。使用する場合、好ましい抗酸化剤として重亜硫酸ナトリウムおよびメタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0127】
活性因子の投与は、鼻腔内にまたは吸入によって、おこなうことが可能である。鼻腔内投与(例えば、吹送)のための散剤(薬)処方物も知られているにもかかわらず、経鼻投与のための組成物は、通常、スプレーとしての投与または水滴形状の液剤である。
【0128】
吸入のための処方物は、エアゾール(活性因子がキャリア(例えば推進体)で可溶化される溶液エアゾールとして、または活性因子がキャリアおよび任意の溶媒の全体を通じて分散または懸濁される分散エアゾールのいずれか)として調製可能である。水溶液が同様に使われることができるにもかかわらず、吸入のためのフロンガスを使用していない処方物は液体(概して水性懸濁液)の形をとることができる。そのような場合、キャリアは概して、処方物が正常な体液と関連して等張力性であるような濃度を持つ塩化ナトリウム溶液である。キャリアに加えて、液剤として、抗菌防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、アセトンクロロホルム、フェニルエチル・アルコール、チメロサール、およびそれらの組合せ)、緩衝剤(例えば、クエン酸、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸曹達、クエン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせ)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタン1パルミチン酸、およびそれらの組み合わせ)および/または懸濁剤(例えば、寒天、ベントナイト、微結晶性セルロース、ナトリウム・カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、トラガカンタ、ビーガム、およびそれらの組み合わせ)が挙げられ、水および/または賦形剤を含むことができる。吸入のための非エアゾール形の処方物もまた、乾燥粉末処方物を含むことが可能であり、特に吸入剤は、粉末の平均粒度が約0.1μm〜約50μm、好ましくは約1μm〜約25μmである。
【0129】
(局所処方物)
局所処方物は、体表への適用に適した任意の形状を有するものであり、例えば、軟膏、クリーム、ゲル、ローション剤、溶液、ペースト、またはその他を含むことが可能であり、また/あるいはリポソーム、ミセルおよび/またはミクロスフェアを含むように調製されることも可能である。本明細書中で好ましい局所処方物は、軟膏、クリーム、およびゲルである。
【0130】
薬学的処方物の技術分野で周知であるように、軟膏は、石油から採られる半固体のパラフィン炭化水素または他の石油誘導体に典型的に基づく半固形処方物である。当業者によって認められるように、使用される特異的な軟膏基剤は最適薬物送達を規定するものであって、望ましくは、他の所望の特徴(例えば、皮膚軟化性(emolliency)等)も規定する。他のキャリアまたはビヒクルと同様に、軟膏基剤は不活性、安定、非刺激性、および非感作性でなければならない。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,pages 1399−1404(上掲)で説明されているように、軟膏基剤は油脂性基剤;乳化性基剤;乳剤性基剤;および水溶性基剤の4つのクラスに分類することが可能である。油性軟膏基剤として、例えば、植物油、動物から得られる脂肪、および石油から得られる半流動性の炭化水素が挙げられる。乳化性の軟膏基剤(別名、吸収性軟膏基剤)は、ほとんど水を含まなくて、例えば、ヒドロキシ・ステアリン硫酸塩、脱水ラノリン、および親水性ワセリンを含む。乳剤性軟膏基剤は、油中水型(W/O)エマルジョン類か水中油型(O/W)エマルジョン類であって、例えば、セチルアルコール、グルセリルモノステアリン酸、ラノリン、およびステアリン酸を含む。好ましい水溶性軟膏基剤は、分子量が異なるポリエチレングリコールから調製される(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,上掲を参照せよ)。
【0131】
周知のように、クリームは粘性液または半流動性のエマルジョン(水の中の油か油中水型)である。クリーム基剤は水洗い可能で、油相、乳化剤、および水相を含む。油相(また、「内部」相とも呼ばれる)は、通常、石油から採れる半固体のパラフィン炭化水素と脂肪族アルコール(例えばセチルまたはステアリルアルコール)とを含む。必然的ではないが、水相は通常、体積の点で油相にまさっており、一般に湿潤薬を含む。クリーム処方物の乳化剤は、通常、非イオン性、陰イオン性、陽イオン、または両性の界面活性剤である。
【0132】
薬学的処方物の分野で働いている人々によって認められるように、ゲルは半流動性の懸濁系である。単相のゲルは、典型的に水性ではあるが、好ましくはアルコール、任意に油を含むキャリア液体の全体を通じて実質的に一様に分散した有機高分子を含む。好ましい「有機高分子」(すなわちゼラチン化剤)は、ポリマー(例えばCarbopol(登録商標)商標の下で市販されているカルボキシ・ポリアルキレン)の「カルボマー」ファミリーのような架橋アクリル酸ポリマーである。また、好ましいものは、親水性ポリマー(例えばポリエチエレン酸化物、ポリエチエレン−ポリ・オキシプロピレン・コポリマーおよびポリビニルアルコール);セルロース・ポリマー(例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチル・セルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース・フタル酸、およびメチルセルロース);ガム(例えばトラガカンタおよびキサンタンガム);アルギン酸ナトリウム;ならびにゼラチンである。均一のゲルを調製するために、アルコールまたはグリセリンのような分散剤を加えることができ、あるいはゼラチン化剤を摩砕、機械混合および/または撹拌することによって分散させることができる。
【0133】
当業者に周知の種々の添加物を、局所処方物に含有させることが可能である。例えば、溶解剤は特定の活性因子を可溶化するのに用いられる。皮膚または粘膜組織を通して浸透する率が異常に低いそれらの薬剤のために、浸透エンハンサーを処方物に含有させることが望ましいと考えられる。適当なエンハンサーは、本明細書中のどこかに記載されている。
【0134】
(経皮投与)
本発明の化合物を、従来の経皮薬物送達系を使用して皮膚または粘膜組織を通して投与することも可能であり、薬剤は、皮膚に固定される薬物送達装置として用いられる積層構造(概して、経皮性の「パッチ」という)に含まれる。経皮性の薬物送達は受動拡散を伴うものであってもよい。あるいは、エレクトロ輸送(例えばイオン注入)を使用して促進させることも可能である。代表的な経皮用「パッチ」では、薬物組成物が層または「容器」に含まれる。そして、上側裏打ち層をなす。積層構造は1つの容器を含むことができる、または、複数の容器を含むことができる。1種類のパッチ(「画一的な」系という)では、容器は薬物送達の間、系を皮膚に付けるのに役立つ薬学的に受容可能である接触接着材の高分子基質が含まれる。適当な皮膚接触接着材の例として、限定されるものではないが、ポリエチエレン、ポリシロキサン、ポリブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン等が挙げられる。あるいは、薬物を含有する容器と皮膚触圧接着材とが、別々の異なった層である。この場合、先に述べたように高分子基質であることもできる容器の基礎をなしている接着剤は、液体またはヒドロゲル容器であってもよく、あるいはいくつかの他の形をとることも可能である。
【0135】
装置の上面となるこれらの積層体の裏打ち層は、上記積層構造の一次構造要素として機能し、装置の柔軟性を高める。裏打ち層用に選択される材料は、実質的に活性因子および存在する他の材料のいずれに対しても不透過性であり、好ましくは柔軟なエラストマー材料のシートまたはフィルムから作られる。裏打ち層に適当なポリマーの例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が挙げられる。
【0136】
保存中および使用前に、積層構造ははく離牲ライナーを含む。使用直前では、この層が装置からはがされて、薬物容器または別々の接着用接着剤層のいずれかで、基底面が露出し、系が皮膚に固定される。はく離性ライナーは、薬物/ビヒクル不透過性材料から作られなければならない。
【0137】
経皮薬物送達系は、経皮透過エンハンサーを含むこともできる。
すなわち、いくつかの薬剤に対する皮膚の固有の透過性は、完全な皮膚の適度な大きさに設定された領域を貫通する薬物の治療レベルを可能にするにはあまりにも低くなる場合があることから、そのような薬剤と経皮透過エンハンサーとを同時投与することが必要である。適当なエンハンサーは周知であって、例えば、経粘膜組成物に上のようにリストされたそれらのエンハンサーが含まれる。
【0138】
(非経口投与)
使用する場合、非経口投与は、一般的に、筋肉内、腹膜内、静脈内(IV)、および皮下注射を含む注射によって特徴づけられる。注射可能な処方物は、従来の形態で(溶液もしくは懸濁液;注射前の液体中における溶液もしくは懸濁液に適当な固体形態、またはエマルジョンのいずれかとして)調製可能である。好ましくは、無菌の注射可能懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤あるいは懸濁剤を用いて、当技術分野で公知の技術にもとづいて、処方される。無菌の注射可能処方物は、無毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の、無菌の注射可能溶液または懸濁液であってもよい。水、リンゲル液、および等張食塩溶液は、使用され得る許容可能なビヒクルおよび溶媒の一つである。加えて、無菌の不揮発油も溶媒または懸濁媒体として慣習的に用いられる。非経口投与のためのより最近修正されたアプローチは、徐放(slow release)系または徐放(sustained release)系の使用を含む(米国特許第3,710,795号参照)。
【0139】
(くも膜下投与)
使用する場合、くも膜下投与は、一般的に、くも膜下の空間(体液が脊髄周辺に流れる所)に直接投与することで特徴づけられる。
【0140】
くも膜下投与のために利用される1つの一般的なシステムは、Medtronic,Inc.から入手可能なAPT Intrathecal処置システムである。APT Intrathecalは、くも膜下の空間に直接医薬を送達するために腹部の皮膚の下に外科的に配置される小型ポンプを使用する。医薬は、外科的に配置されるカテーテルと呼ばれている小さい管によって送達される。医薬は、それから、消化管障害に関する感覚性および運動性シグナルを伝達することに関係する脊髄の細胞に、直接投与される。
【0141】
くも膜下投与のために一般に利用されるMedtronicから入手可能なもう一つのシステムは、完全に移植可能かつプログラム可能なSynchroMed(登録商標)Infusion Systemである。SynchroMed(登録商標)Infusion Systemは、外科的手技の間、体に置かれる2つの部品、すなわちカテーテルおよびポンプを有する。カテーテルは、小さくて柔らかい管である。一端はポンプのカテーテル・ポートに接続され、他端はくも膜下の空間に置かれる。ポンプは、厚さが約1インチ(2.5cm)、直径が3インチ(8.5cm)、重量が約6オンス(205g)であり、所定量の医薬を直接くも膜下の空間に保存および放出する丸い金属製器具である。それは、チタン、軽量医療グレード金属でできている。貯槽は、医薬を保持するポンプの内側の空間である。フィル・ポートは、ポンプの上寄りの中心部であり、そこを通じてポンプが再充填される。医師または看護師は、患者の皮膚を通して、およびフィル・ポートを通して針を挿入し、ポンプを満たす。いくつかのポンプはサイド・カテーテルのアクセス・ポートを持ち、医師は、ポンプを迂回して、直接このカテーテルに他の医薬または無菌液を注射することができる。
【0142】
SynchroMed(登録商標)ポンプは、最も効果的である脊髄周辺のくも膜下空間に、カテーテルを通じて制御された量の医薬を自動的に送達する。医師によって規定される正確な投薬量、率、およびタイミングは、ポンプのメモリーを制御する外部のコンピュータのような装置であるプログラマーを用いて、ポンプに投入される。患者の規定に関する情報は、ポンプのメモリーに格納される。医師は、プログラマーを用いてこの情報を容易に概観することができる。プログラマーは、無線信号によって、ポンプと通信し、医師は、ポンプが所定の時間にどのように作動しているかについて判断することができる。医師も、医薬投薬量を変えるために、プログラマーを使用することができる。
【0143】
くも膜下投与の方法は、Medtronicから入手可能な上記の方法、および当業者に知られている他の方法を包含し得る。
【0144】
(付加的な投薬処方および薬物送達系)
伝統的な薬物送達アプローチを比較すると、いくつかの制御放出技術は、高分子および合成低分子を修飾して、それらを身体に受動的に吸収させる代わりに、能動的に吸収させることに依存する。例えば、XenoPort Inc.は既存の分子を取り出し、それらを再操作して、(1)薬物の短い半減期を長くすること;(2)乏しい吸収を克服すること;および/または(3)標的組織に対する乏しい薬物分布に対処すること、のどれかに薬理学性質を改良した新しい化学実体(固有分子)を作る技術を利用する。薬物の短い半減期を長くする技術は、長期にわたり薬物を放出する遅い分解速度のプロドラッグの使用、または小腸および大腸で輸送体と係合して経口徐放性送達系の使用を可能にするプロドラッグの使用、ならびに能動輸送系を係合する薬物の使用が含まれる。このような制御された放出処方物、錠剤、剤形、および薬物送達系、ならびに本発明による使用に適したものの例は、以下の公開された米国特許出願およびPCT特許出願(Xenoport Inc.に譲渡)に開示されている:US20030158254、US20030158089、US20030017964、US2003130246、WO02100172;WO02100392;WO02100347;WO02100344;WO0242414;WO0228881;WO0228882;WO0244324;WO0232376;WO0228883;およびWO0228411が挙げられる。いくつかの他の制御放出技術は、胃貯留を促進または強化する方法に依存し、例えば、Depomed Inc.によって開発されたものがある。多くの薬物は胃および小腸の上部に最も吸収されることから、Depomedは食後または食事モードの間、胃でふくらみ、そのためそれらが消化不良の食物のように処理される錠剤を開発した。これらの錠剤は、したがって、6時間、8時間またはより多くの時間安全に、かつ中和されて胃に位置して、上部胃腸管系部位に対して所望の率および時間に薬物を送達する。この領域の特異的な技術としては、(1)ほとんど定速度で薬剤を送達するために胃液でゆっくり侵食する錠剤(特に非常に不溶性薬剤のために有用);(2)異なる性質の薬物を組み合わせて単一の錠剤にした二層錠剤(例えば、両方の徐放性のための、侵食層における高度に不溶性の薬物および拡散層における可溶性の薬物)、ならびに(3)所望の期間にわたって、同時にか、または順次にかのいずれかで薬剤を送達することができる組合せ錠剤(即時作用性薬物の初期バーストと、それに続く、別の薬物の遅い、徐放性の送達を含む)が挙げられる。本発明での使用に適し、および食後または食事モードの過程での胃貯留に依存するような制御放出処方物の例としては、Depomed Inc.に譲渡された以下の米国特許における錠剤、剤形、および薬物送達系が挙げられる:米国特許第6,488,962号、同第6,451,808号、同第6,340,475号、同第5,972,389号、同第5,582,837号、および同第5,007,790号。本発明での使用に適し、および食後または食事モードの過程での胃貯留に依存するような制御放出処方物の例としては、Depomed Inc.に譲渡された以下の公開された米国特許出願およびPCT特許出願における錠剤、剤形、および薬物送達系が挙げられる:US20030147952;US20030104062;US20030104053;US20030104052;US20030091630;US20030044466;US20030039688;US20020051820;WO0335040;WO0335039;WO0156544;WO0132217;WO9855107;WO9747285;およびWO9318755。
【0145】
他の制御放出系は、ALZA Corporationによって開発されたもので、1)経口の送達のための浸透圧技術;2)パッチによる経皮送達;3)静脈注射を経たリポソームの送達;4)インプラントによる長期の送達のための浸透圧技術;および5)数日から1ヵ月に及ぶ薬剤送達のために設計された蓄積(depot)技術を基本としている。ALZA経口送達系は、浸透圧を利用するものが含まれ、可溶性が低い薬物および可溶性が高い薬物の両方のための、および薬物負荷に対する高い要求に合う高い薬物用量を送達する、正確に制御された薬物送達を最高24時間まで提供する。ALZA制御経皮送達系は、薬物吸収を改良して、長期にわたり血流に恒常的な量の薬物を送達するために、単回投与で1週の間、インタクトな皮膚を通して、薬物送達を提供する。ALZAリポソーム送達系は、それら独自のポリエチレングリコール(PEG)コーティングのため、免疫系による認識を回避する脂質ナノ粒子を含むもので、体の疾患特異的な領域への薬剤の正確な送達を可能にする。ALZAはまた、全身または組織特異的治療のために最高1年間、低分子薬物、ペプチド、タンパク質、DNAおよび他の生物活性高分子の継続的な送達を可能にする浸透圧駆動系を開発した。最後に、ALZA蓄積注射治療は、高分子の安定化のための非水溶性高分子溶液と独自の送達プロフィールとを使用して、数日から1ヵ月までのあいだ、生物医薬と小分子とが送達されるように設計される。
【0146】
本発明による使用に適した制御放出処方物、錠剤、剤形、および薬物送達系の例は、ALZA Corporationに譲渡された以下の米国特許出願に記載されている:米国特許第4,367,741号、米国特許第4,402,695号、米国特許第4,418,038号、米国特許第4,434,153号、米国特許第4,439,199号、米国特許第4,450,198号、米国特許第4,455,142号、米国特許第4,455,144号、米国特許第4,484,923号、米国特許第4,486,193号、米国特許第4,489,197号、米国特許第4,511,353号、米国特許第4,519,801号、米国特許第4,526,578号、米国特許第4,526,933号、米国特許第4,534,757号、米国特許第4,553,973号、米国特許第4,559,222号、米国特許第4,564,364号、米国特許第4,578,075号、米国特許第4,588,580号、米国特許第4,610,686号、米国特許第4,618,487号、米国特許第4,627,851号、米国特許第4,629,449号、米国特許第4,642,233号、米国特許第4,649,043号、米国特許第4,650,484号、米国特許第4,659,558号、米国特許第4,661,105号、米国特許第4,662,880号、米国特許第4,675,174号、米国特許第4,681,583号、米国特許第4,684,524号、米国特許第4,692,336号、米国特許第4,693,895号、米国特許第4,704,119号、米国特許第4,705,515号、米国特許第4,717,566号、米国特許第4,721,613号、米国特許第4,723,957号、米国特許第4,725,272号、米国特許第4,728,498号、米国特許第4,743,248号、米国特許第4,747,847号、米国特許第4,751,071号、米国特許第4,753,802号、米国特許第4,755,180号、米国特許第4,756,314号、米国特許第4,764,380号、米国特許第4,773,907号、米国特許第4,777,049号、米国特許第4,781,924号、米国特許第4,786,503号、米国特許第4,788,062号、米国特許第4,810,502号、米国特許第4,812,313号、米国特許第4,816,258号、米国特許第4,824,675号、米国特許第4,834,979号、米国特許第4,837,027号、米国特許第4,842,867号、米国特許第4,846,826号、米国特許第4,847,093号、米国特許第4,849,226号、米国特許第4,851,229号、米国特許第4,851,231号、米国特許第4,851,232号、米国特許第4,853,229号、米国特許第4,857,330号、米国特許第4,859,470号、米国特許第4,863,456号、米国特許第4,863,744号、米国特許第4,865,598号、米国特許第4,867,969号、米国特許第4,871,548号、米国特許第4,872,873号、米国特許第4,874,388号、米国特許第4,876,093号、米国特許第4,892,778号、米国特許第4,902,514号、米国特許第4,904,474号、米国特許第4,913,903号、米国特許第4,915,949号、米国特許第4,915,952号、米国特許第4,917,895号、米国特許第4,931,285号、米国特許第4,946,685号、米国特許第4,948,592号、米国特許第4,954,344号、米国特許第4,957,494号、米国特許第4,960,416号、米国特許第4,961,931号、米国特許第4,961,932号、米国特許第4,963,141号、米国特許第4,966,769号、米国特許第4,971,790号、米国特許第4,976,966号、米国特許第4,986,987号、米国特許第5,006,346号、米国特許第5,017,381号、米国特許第5,019,397号、米国特許第5,023,076号、米国特許第5,023,088号、米国特許第5,024,842号、米国特許第5,028,434号、米国特許第5,030,454号、米国特許第5,071,656号、米国特許第5,077,054号、米国特許第5,082,668号、米国特許第5,104,390号、米国特許第5,110,597号、米国特許第5,122,128号、米国特許第5,125,894号、米国特許第5,141,750号、米国特許第5,141,752号、米国特許第5,156,850号、米国特許第5,160,743号、米国特許第5,160,744号、米国特許第5,169,382号、米国特許第5,171,576号、米国特許第5,176,665号、米国特許第5,185,158号、米国特許第5,190,765号、米国特許第5,198,223号、米国特許第5,198,229号、米国特許第5,200,195、米国特許5,200,196号、米国特許第5,204,116号、米国特許第5,208,037号、米国特許第5,209,746号、米国特許第5,221,254号、米国特許第5,221,278号、米国特許第5,229,133号、米国特許第5,232,438号、米国特許第5,232,705号、米国特許第5,236,689号、米国特許第5,236,714号、米国特許第5,240,713号、米国特許第5,246,710号、米国特許第5,246,711号、米国特許第5,252,338号、米国特許第5,254,349号、米国特許第5,266,332号、米国特許第5,273,752号、米国特許第5,284,660号、米国特許第5,286,491号、米国特許第5,308,348号、米国特許第5,318,558号、米国特許第5,320,850号、米国特許第5,322,502号、米国特許第5,326,571号、米国特許第5,330,762号、米国特許第5,338,550号、米国特許第5,340,590号、米国特許第5,342,623号、米国特許第5,344,656号、米国特許第5,348,746号、米国特許第5,358,721号、米国特許第5,364,630号、米国特許第5,376,377号、米国特許第5,391,381号、米国特許第5,402,777号、米国特許第5,403,275号、米国特許第5,411,740号、米国特許第5,417,675号、米国特許第5,417,676号、米国特許第5,417,682号、米国特許第5,423,739号、米国特許第5,424,289号、米国特許第5,431,919号、米国特許第5,443,442号、米国特許第5,443,459号、米国特許第5,443,461号、米国特許第5,456,679号、米国特許第5,460,826号、米国特許第5,462,741号、米国特許第5,462,745号、米国特許第5,489,281号、米国特許第5,499,979号、米国特許第5,500,222号、米国特許第5,512,293号、米国特許第5,512,299号、米国特許第5,529,787号、米国特許第5,531,736号、米国特許第5,532,003号、米国特許第5,533,971号、米国特許第5,534,263号、米国特許第5,540,912号、米国特許第5,543,156号、米国特許第5,571,525号、米国特許第5,573,503号、米国特許第5,591,124号、米国特許第5,593,695号、米国特許第5,595,759号、米国特許第5,603,954号、米国特許第5,607,696号、米国特許第5,609,885号、米国特許第5,614,211号、米国特許第5,614,578号、米国特許第5,620,705号、米国特許第5,620,708号、米国特許第5,622,530号、米国特許第5,622,944号、米国特許第5,633,011号、米国特許第5,639,477号、米国特許第5,660,861号、米国特許第5,667,804号、米国特許第5,667,805号、米国特許第5,674,895号、米国特許第5,688,518号、米国特許第5,698,224号、米国特許第5,702,725号、米国特許第5,702,727号、米国特許第5,707,663号、米国特許第5,713,852号、米国特許第5,718,700号、米国特許第5,736,580号、米国特許第5,770,227号、米国特許第5,780,058号、米国特許第5,783,213号、米国特許第5,785,994号、米国特許第5,795,591号、米国特許第5,811,465号、米国特許第5,817,624号、米国特許第5,824,340号、米国特許第5,830,501号、米国特許第5,830,502号、米国特許第5,840,754号、米国特許第5,858,407号、米国特許第5,861,439号、米国特許第5,863,558号、米国特許第5,876,750号、米国特許第5,883,135号、米国特許第5,897,878号、米国特許第5,904,934号、米国特許第5,904,935号、米国特許第5,906,832号、米国特許第5,912,268号、米国特許第5,914,131号、米国特許第5,916,582号、米国特許第5,932,547号、米国特許第5,938,654号、米国特許第5,941,844号、米国特許第5,955,103号、米国特許第5,972,369号、米国特許第5,972,370号、米国特許第5,972,379号、米国特許第5,980,943号、米国特許第5,981,489号、米国特許第5,983,130号、米国特許第5,989,590号、米国特許第5,995,869号、米国特許第5,997,902号、米国特許第6,001,390号、米国特許第6,004,309号、米国特許第6,004,578号、米国特許第6,008,187号、米国特許第6,020,000号、米国特許第6,034,101号、米国特許第6,036,973号、米国特許第6,039,977号、米国特許第6,057,374号、米国特許第6,066,619号、米国特許第6,068,850号、米国特許第6,077,538号、米国特許第6,083,190号、米国特許第6,096,339号、米国特許第6,106,845号、米国特許第6,110,499号、米国特許第6,120,798号、米国特許第6,120,803号、米国特許第6,124,261号、米国特許第6,130,200号、米国特許第6,146,662号、米国特許第6,153,678号、米国特許第6,174,547号、米国特許第6,183,466号、米国特許第6,203,817号、米国特許第6,210,712号、米国特許第6,210,713号、米国特許第6,224,907号、米国特許第6,235,712号、米国特許第6,245,357号、米国特許第6,262,115号、米国特許第6,264,990号、米国特許第6,267,984号、米国特許第6,287,598号、米国特許第6,289,241号、米国特許第6,331,311号、米国特許第6,333,050号、米国特許第6,342,249号、米国特許第6,346,270号、米国特許第6,365,183号、米国特許第6,368,626号、米国特許第6,387,403号、米国特許第6,419,952号、米国特許第6,440,457号、米国特許第6,468,961号、米国特許第6,491,683号、米国特許第6,512,010号、米国特許第6,514,530号、米国特許第6,534,089号、米国特許第6,544,252号、米国特許第6,548,083号、米国特許第6,551,613号、米国特許第6,572,879号、および米国特許第6,596,314号。
【0147】
本発明による使用に適した制御放出処方物、錠剤、剤形、および薬物送達系の別の例は、以下のALZA Corporationに譲渡された米国特許出願およびPCT出願に記載されている:US20010051183;WO0004886;WO0013663;WO0013674;WO0025753;WO0025790;WO0035419;WO0038650;WO0040218;WO0045790;WO0066126;WO0074650;WO0119337;WO0119352;WO0121211;WO0137815;WO0141742;WO0143721;WO0156543;WO3041684;WO03041685;WO03041757;WO03045352;WO03051341;WO03053400;WO03053401;WO9000416;WO9004965;WO9113613;WO9116884;WO9204011;WO9211843;WO9212692;WO9213521;WO9217239;WO9218102;WO9300071;WO9305843;WO9306819;WO9314813;WO9319739;WO9320127;WO9320134;WO9407562;WO9408572;WO9416699;WO9421262;WO9427587;WO9427589;WO9503823;WO9519174;WO9529665;WO9600065;WO9613248;WO9625922;WO9637202;WO9640049;WO9640050;WO9640139;WO9640364;WO9640365;WO9703634;WO9800158;WO9802169;WO9814168;WO9816250;WO9817315;WO9827962;WO9827963;WO9843611;WO9907342;WO9912526;WO9912527;WO9918159;WO9929297;WO9929348;WO9932096;WO9932153;WO9948494;WO9956730;WO9958115;およびWO9962496。
【0148】
Andrx Corporationもまた、本発明での使用に適した薬物送達技術を開発し、これらの技術としては:1)ペレット化された拍動性の送達系(「PPDS」);2)単一組成物浸透圧型錠剤系(「SCOT」);3)溶解性調節性ヒドロゲル系(「SMHS」);4)遅延性拍動性ヒドロゲル系(「DPHS」);5)安定化ペレット送達系(「SPDS」);6)粒状化調節性ヒドロゲル系(「GMHS);7)ペレット化された錠剤系(「PELTAB」);8)多孔質錠剤系(「PORTAB」);および9)安定化錠剤送達系(「STDS」)が挙げられる。PPDSはマイクロカプセルに入れられた薬物の放出率を制御するために特異的なポリマーと薬剤でおおわれているペレットを使用して、拍動性放出を必要とする薬剤とともに使用するために設計される。SCOTは、ゼロ次薬物放出を提供するために、高分子コーティングおよび種々の浸透圧調節剤を利用する。SMHSは、他の徐放性ヒドロゲル処方物で一般に観察される「イニシアルバースト効果」を回避し、そして製造コストを増すような特別なコーティングまたは構造を使用する必要なく徐放性を提供する、ヒドロゲル・ベースの投薬システムを利用する。DPHSは、遅発性パルスを成し遂げるための選択されたヒドロゲル・ポリマーの配合によって成し遂げられる、迅速な放出が続く最初のゼロ次薬物放出により特徴づけられる、ヒドロゲルマトリクス製品とともに使用するために設計される。GMHSがヒドロゲルと結合ポリマーとを薬物に組み込んで、錠剤の形態に圧縮される顆粒を形成する一方、SPDSは薬物のペレット核と保護高分子外層とを組み込み、特に不安定な薬物のために設計される。PELTABはそれらが胃腸管で流体の作用に抵抗することを可能にするため、別個の薬物結晶またはペレットを被覆するために非水溶性ポリマーを用い、次いでこれらの被覆ペレットが錠剤に圧縮されることによって、制御放出を提供する。PORTABは、連続的なポリマー・コーティングを持つ浸透圧性のコアと、このコアを拡張して薬物が放出される微孔性のチャネルを作る水溶性成分とを取り込むことによって制御放出を提供する。最後に、STDSは、腸溶コーティングの層をオメプラゾール核から切り離すためにコーティング層を使用する必要を回避する、二重層コーティング技術を含む。
【0149】
本発明での使用に適した制御放出処方物、錠剤、剤形、および薬物送達系の例は、Andrx Corporationに譲渡された以下の米国特許に記載されている:米国特許第5,397,574号、米国特許第5,419,917号、米国特許第5,458,887号、米国特許第5,458,888号、米国特許第5,472,708号、米国特許第5,508,040号、米国特許第5,558,879号、米国特許第5,567,441号、米国特許第5,654,005号、米国特許第5,728,402号、米国特許第5,736,159号、米国特許第5,830,503号、米国特許第5,834,023号、米国特許第5,837,379号、米国特許第5,916,595号、米国特許第5,922,352号、米国特許第6,099,859号、米国特許第6,099,862号、米国特許第6,103,263号、米国特許第6,106,862号、米国特許第6,156,342号、米国特許第6,177,102号、米国特許第6,197,347号、米国特許第6,210,716号、米国特許第6,238,703号、米国特許第6,270,805号、米国特許第6,284,275号、米国特許第6,485,748号、米国特許第6,495,162号、米国特許第6,524,620号、米国特許第6,544,556号、米国特許第6,589,553号、米国特許第6,602,522;および米国特許第6,610,326号。
【0150】
本発明での使用に適した制御放出処方物、錠剤、剤形、および薬物送達系の例は、Andrx Corporationに譲渡された以下の公開された米国特許出願およびPCT特許出願に記載されている:US20010024659、US20020115718、US20020156066;WO0004883;WO0009091;WO0012097;WO0027370;WO0050010;WO0132161;WO0134123;WO0236077;WO0236100;WO02062299;WO02062824;WO02065991;WO02069888;WO02074285;WO03000177;WO9521607;WO9629992;WO9633700;WO9640080;WO9748386;WO9833488;WO9833489;WO9930692;WO9947125;およびWO9961005。
【0151】
薬物送達アプローチのいくつかの他の例は、非経口薬物送達に焦点を合わせて、タンパク質、ペプチド、および低分子の非経口、経粘膜、および局所送達を提供する。例えば、Atrix Laboratories Inc.によって市販されているAtrigel(登録商標)薬物送達系は、生物分解性縫合糸で使用されるものと同様に生体適合性キャリアで分解される、生分解性高分子を含む。これらの医薬は製造時に液体薬物送達系に混合され得るか、製品によっては、使用時に医師によって加えられ得る。皮下または筋肉内への小ゲージ針による液体製品の注入またはカニューレを通じた近づきやすい組織場所への配置は、組織液に含まれる水によるキャリアの置換、およびポリマーから固体フィルムまたはインプラントを形成するその後の沈殿を生ずる。高分子マトリックスが数日から数ヶ月にわたって生分解するにつれて、インプラント内に被包された薬物は、制御された様式で放出される。そのような薬物送達系の例としては、AtrixのEligard(登録商標)、Atridox(登録商標)/Doxirobe(登録商標)、Atrisorb(登録商標) FreeFlowTM/Atrisorb(登録商標)−D FreeFlow,骨成長生成物、およびAtrix Laboratories Inc.に譲渡された以下の公開された米国特許出願およびPCT特許出願が記載されるような他のものが挙げられる:US RE37950、米国特許第6,630,155号、同第6,566,144号、同第6,610,252号、同第6,565,874号、同第6,528,080号、同第6,461,631号、同第6,395,293号、同第6,261,583号、同第6,143,314号、同第6,120,789号、同第6,071,530号、同第5,990,194号、同第5,945,115号、同第5,888,533号、同第5,792,469号、同第5,780,044号、同第5,759,563号、同第5,744,153号、同第5,739,176号、同第5,736,152号、同第5,733,950号、同第5,702,716号、同第5,681,873号、同第5,660,849号、同第5,599,552号、同第5,487,897号、同第5,368,859号、同第5,340,849号、同第5,324,519号、同第5,278,202号、同第5,278,201号;US20020114737,US20030195489;US20030133964;US20010042317;US20020090398;US20020001608;およびUS2001042317。
【0152】
Atrix Laboratories Inc.も、数分から数時間におよぶ薬剤の非経口経粘膜送達のための技術を販売する。例えば、AtrixのBEMATM(Bioerodible Muco−Adhesive Disc)薬物送達系は、局所または全身送達のために、予め作られた生体侵食性ディスクを備える。そのような薬物送達系の例としては、米国特許第6,245,345号に記載されるようなものが挙げられる。
【0153】
Atrix Laboratories Inc.によって市販されている別の薬物送達システムは、局所薬物送達に焦点を合わせている。例えば、SMPTM(Solvent Particle Sysyem)は、非水溶性が高い薬物の局所投与を可能にする。
この製品は、溶解薬物を薬物の微粒子懸濁液と混合されることで、溶解薬物の制御された量が皮膚の表皮層に浸透するのを許す。SMPTMシステムは、段階的に作動し、これによって:1)製品は皮膚面に適用される;2)濾胞近くの製品は、皮膚孔に集結する;3)薬物は容易に皮脂中に仕切られる;そして、4)薬物は領域全体に拡散する。対照的に、MCA(登録商標)(Mucocutaneous Absorption System)は、持続的な薬物送達を提供する耐水性の代表的な局所ゲルである。MCA(登録商標)は、湿潤表面または乾燥した表面のために頑強なフィルムを形成し、ここで:1)製品は皮膚または粘膜面に適用される;2)製品は、頑強な防湿のフィルムを形成する;そして、3)付着フィルムは、数時間から数日にわたる薬物の徐放を提供する。さらにもう一つの製品BCPTM(Biocompatible Polymer System)は、癒傷の保護膜として適用される非細胞毒性のゲルまたは液体を提供する。このような系の例としては、Orajel(登録商標)−Ultra Mouth Sore Medicine、およびAtrix Laboratories Inc.に譲渡された以下の公開された米国特許および特許出願が挙げられる:米国特許第6,537,565号、同第6,432,415号、同第6,355,657号、同第5,962,006号、同第5,725,491号、同第5,722,950号、同第5,717,030号、同第5,707,647号、同第5,632,727号;およびUS20010033853。
【0154】
(投薬量および投与)
上記した剤形および組成物のいずれかにおける活性因子の濃度は、かなり変動し得、そして種々の因子(例えば、組成物または剤形の種類、対応する投与様式、特定の活性因子の性質および活性、ならびに意図される薬物放出プロフィール)に依存する。
【0155】
好ましい剤形は、活性因子の単位用量(すなわち単回治療有効用量)を含む。クリーム、軟膏等に関しては、「単位用量」は、適用される特定量の処方物中において単位用量を提供する活性因子濃度を必要とする。いずれの特定の活性因子の単位用量は、もちろん、活性因子に依存し、そして投与様式に依存する。αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子(ガバペンチン、プレガバリン、GABAアナログ、ガバペンチンの縮合二環式または縮合三環式アミノ酸アナログ、およびαδカルシウム・チャンネル・サブユニットと相互作用する他の化合物が挙げられる)については、経口投与のための単位用量は、約1mg〜約10,000mg、代表的に、約100mg〜約5,000mgの範囲内にある。局所投与に関しては、適当な単位用量は、より低くあり得る。あるいは、αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子(ガバペンチン、プレガバリン、GABAアナログ、ガバペンチンの縮合二環式または縮合三環式アミノ酸アナログ、およびαδカルシウム・チャンネル・サブユニットと相互作用する他の化合物が挙げられる)については、経口投与のための用量は、以下より大きい:約1mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約625mg、約650mg、約675mg、約700mg、約725mg、約750mg、約775mg、約800mg、約825mg、約850mg、約875mg、約900mg、約925mg、約950mg、約975mg、約1000mg、約1025mg、約1050mg、約1075mg、約1100mg、約1125mg、約1150mg、約1175mg、約1200mg、約1225mg、約1250mg、約1275mg、約1300mg、約1325mg、約1350mg、約1375mg、約1400mg、約1425mg、約1450mg、約1475mg、約1500mg、約1525mg、約1550mg、約1575mg、約1600mg、約1625mg、約1650mg、約1675mg、約1700mg、約1725mg、約1750mg、約1775mg、約1800mg、約1825mg、約1850mg、約1875mg、約1900mg、約1925mg、約1950mg、約1975mg、約2000mg、約2025mg、約2050mg、約2075mg、約2100mg、約2125mg、約2150mg、約2175mg、約2200mg、約2225mg、約2250mg、約2275mg、約2300mg、約2325mg、約2350mg、約2375mg、約2400mg、約2425mg、約2450mg、約2475mg、約2500mg、約2525mg、約2550mg、約2575mg、約2600mg、約3,000mg、約3,500mg、約4,000mg、約4,500mg、約5,000mg、約5,500mg、約6,000mg、約6,500mg、約7,000mg、約7,500mg、約8,000mg、約8,500mg、約9,000mg,または約9,500mg。薬学的処方分野の当業者は、他のαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子のための適当な単位用量、および本発明の剤形に組み込み可能な活性因子の他の型のための適当な単位用量を、容易に推定することができる。
【0156】
αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子(ガバペンチン、プレガバリン、GABAアナログ、ガバペンチンの縮合二環式または縮合三環式アミノ酸アナログ、およびαδカルシウム・チャンネル・サブユニットと相互作用する他の化合物が挙げられる)についての経粘膜、局所、経皮、および非経口投与のための単位用量は、約1ng〜約10,000mgまで、代表的に、約100ng〜約5,000mgの範囲内である。あるいは、αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子(ガバペンチン、プレガバリン、GABAアナログ、ガバペンチンの縮合二環式または縮合三環式アミノ酸アナログ、およびαδカルシウム・チャンネル・サブユニットと相互作用する他の化合物が挙げられる)についての経粘膜、局所、膀胱内、および非経口投与のための単位用量は、以下より大きい:約1ng、約5ng、約10ng、約20ng、約30ng、約40ng、約50ng、約100ng、約200ng、約300ng、約400ng、約500ng、約1μg、約5μg、約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約100μg、約200μg、約300μg、約400μg、約500μg、約1mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約625mg、約650mg、約675mg、約700mg、約725mg、約750mg、約775mg、約800mg、約825mg、約850mg、約875mg、約900mg、約925mg、約950mg、約975mg、約1000mg、約1025mg、約1050mg、約1075mg、約1100mg、約1125mg、約1150mg、約1175mg、約1200mg、約1225mg、約1250mg、約1275mg、約1300mg、約1325mg、約1350mg、約1375mg、約1400mg、約1425mg、約1450mg、約1475mg、約1500mg、約1525mg、約1550mg、約1575mg、約1600mg、約1625mg、約1650mg、約1675mg、約1700mg、約1725mg、約1750mg、約1775mg、約1800mg、約1825mg、約1850mg、約1875mg、約1900mg、約1925mg、約1950mg、約1975mg、約2000mg、約2025mg、約2050mg、約2075mg、約2100mg、約2125mg、約2150mg、約2175mg、約2200mg、約2225mg、約2250mg、約2275mg、約2300mg、約2325mg、約2350mg、約2375mg、約2400mg、約2425mg、約2450mg、約2475mg、約2500mg、約2525mg、約2550mg、約2575mg、約2600mg、約3,000mg、約3,500mg、約4,000mg、約4,500mg、約5,000mg、約5,500mg、約6,000mg、約6,500mg、約7,000mg、約7,500mg、約8,000mg、約8,500mg、約9,000mg,約9,500mg。薬学的処方分野の当業者は、αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子のための適当な単位用量、および本発明の剤形に組み込み可能な他の型の薬剤のための適当な単位用量を、容易に推定することができる。
【0157】
αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子(ガバペンチン、プレガバリン、GABAアナログ、ガバペンチンの縮合二環式または縮合三環式アミノ酸アナログ、およびαδカルシウム・チャンネル・サブユニットと相互作用する他の化合物が挙げられる)について、くも膜下投与のための単位用量は、約1fgから約1mgまで、代表的に約100fgから約1ngまでの範囲内である。あるいは、αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子(ガバペンチン、プレガバリン、GABAアナログ、ガバペンチンの縮合二環式または縮合三環式アミノ酸アナログ、およびαδカルシウム・チャンネル・サブユニットと相互作用する他の化合物が挙げられる)について、くも膜下投与のための単位用量は、以下よりも大きい:約1fg、約5fg、約10fg、約20fg、約30fg、約40fg、約50fg、約100fg、約200fg、約300fg、約400fg、約500fg、約1pg、約5pg、約10pg、約20pg、約30pg、約40pg、約50pg、約100pg、約200pg、約300pg、約400pg、約500pg、約1ng、約5ng、約10ng、約20ng、約30ng、約40ng、約50ng、約100ng、約200ng、約300ng、約400ng、約500ng、約1μg、約5μg、約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約100μg、約200μg、約300μg、約400μg、または約500μg。薬学的処方分野の当業者は、αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子のための適当な単位用量、および本発明の剤形に組み込み可能な他の型の薬剤のための適当な単位用量を、容易に推定することができる。
【0158】
所定の個体に投与される特定の活性因子の治療有効量は、もちろん、特異的な活性因子、組成物または剤形の濃度、選択される投与様式、処置されている個体の年齢および一般的な状態、個体の状態の重症度、ならびに処方する医師に知られている他の因子を含む多数の因子に依存している。
【0159】
好ましい実施形態において、薬剤投与は必要に応じたものであり、慢性的な薬剤投与に関与しない。即時放出型剤形による必要に応じた投与は、活性の開始直前の薬物投与(過活動膀胱の症状の抑制が求められる)を含み得るが、一般にはそのような活動前の約0分〜約10時間の範囲内、好ましくはそのような活動前の約0分から約5時間の範囲内、最も好ましくはそのような活動前の約0分〜約3時間の範囲内である。徐放性剤形を用いて、単回用量は、約1時間〜約72時間の拡張された時間範囲で、処方物に依存して、代表的に約8時間〜約48時間の範囲で、治療効力を提供することができる。すなわち、放出期間は、特定の徐放性ポリマーの選択と相対的な量とによって変動し得る。しかし、必要に応じて、薬物投与は、進行中の投与レジメンの前後関係の範囲内で、すなわち、1週間ベース、週2回、毎日、などで行うことができる。
【0160】
(パッケージ化キット)
もう一つの実施形態において、投与される薬学的処方物(すなわち、通常の患者および脊椎損傷患者における無痛性膀胱障害(例えば無痛過活動膀胱)の処置のための治療有効量の選択された活性因子を含む薬学的処方物)、保存中および使用前に処方物を収納するための、好ましくは密閉された容器、および通常の患者および脊椎損傷患者における無痛性膀胱障害(例えば無痛過活動膀胱)を処置するために効果的な様式で薬剤投与を行うための説明書を含むパッケージ化キットが提供される。この説明書は、代表的には、パッケージ挿入物上および/またはラベル上に書かれる。処方物の型と意図された投与様式に依存して、キットは処方物を投与する装置を含むこともできる。処方物は、本明細書に記載されているような、任意の適当な処方物であってよい。例えば、処方物は単位投薬量の選択された活性薬物を含む経口の剤形とすることができる。キットは、同じ薬剤の、投薬量が異なる複数の処方物を含むことができる。キットは、異なる活性因子の複数の処方物を含むこともできる。
【0161】
本明細書中に述べられる本発明の多くの改変および他の実施形態は、当業者によって想到され、これらに対して、本発明は、前述の説明と関連図面とに提示される教示の利点を有することに属する。したがって、本発明が、開示される特定の実施形態に限定されず、その改変と他の実施形態が添付の実施形態の範囲内に含まれることが意図されることが、理解される。また、特定の用語が本明細書中に使用されるが、それらは一般的および記述的な意味のみに使用され、そして限定の目的のために使用されない。
【0162】
本明細書中に言及される全ての特許、特許出願、および刊行物は、その全体が、参照として援用される。
【実施例】
【0163】
(αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子の投与による無痛性尿路障害の処置方法)
刺激された膀胱モデルでの膀胱容量に対するαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子の投与の効果が記載される。これらの結果が、本明細書に記載されているように、通常の患者および脊椎損傷患者における無痛性下部尿路障害の処置に対するαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子の有効性を示すことが、予期される。
【0164】
これらの方法は、Chuangら(2003)Urology 61:664−70に記載されるように、膀胱内投与された硫酸プロタミンを使用する、膀胱に関する尿路障害についてよく認められたモデルの使用を含む。これらの方法はまた、Sasakiら(2002)J.Urol.168:1259−64に記載されるように、膀胱内投与された酢酸を用いる、膀胱に関する尿路障害のためによく認められたモデルの使用を含む。脊髄損患者の処置に対する効力は、Yoshiyamaら(1999)Urology 54:929−33に記載されたような方法を用いて試験され得る。さらに、ガバペンチンは、αδカルシウム・チャンネル・サブユニットとの結合を介してニューロンの活性を減少し、これらのニューロンに由来する神経興奮性の減少と神経伝達物質放出の減少とをもたらすカルシウムチャネルの機能阻害をもたらす(Sarantopoulosら、Reg Anesth Pain Med 27:47,2002)ので、これらの方法はまた、Yoshimuraおよびde Groat(1999)J.Neurosci.19:4644−4653で述べられるような、膀胱感覚性神経から記録される高閾値の活性カルシウム電流に対するガバペンチンの効果の検査を含む、尿路機能の感覚性表現のよく認められたモデルの使用を包含する。
【0165】
(実施例1−尿路上皮性の浸透/生理的カリウム・モデル)
(方法)
雌ラット(250〜275g BW)をウレタン(1.2g/kg)で麻酔し、静脈内薬物投与のために、生理食塩水が満たされた頸静脈カテーテル(PE−50)を挿入する。正中腹部切開を経て、膀胱充満および圧力の記録のため、PE50カテーテルを膀胱穹窿部に挿入する。腹腔内を生理食塩水で湿らせ、充填した膀胱内圧測定を空にする目的のために膀胱へのアクセスを維持するために、細いプラスチックシートでカバーすることによって閉じる。純銀またはステンレス鋼線電極を、筋電図法(EMG)のために、経皮的に外部尿道括約筋(EUS)に挿入する。
【0166】
生理食塩水および全てのそれに続く輸液剤を、膀胱充填カテーテルを介して、0.055ml/分の速度で持続的に30〜60分にわたり輸液して、下部尿路活動の基線を得た(持続的な膀胱内圧測定;CMG)。膀胱圧探索は膀胱および尿道の排出活動の直接計測として作用する。また、EUS−EMG位相性発火(firing)と排尿とは持続的な経膀胱的膀胱内圧測定法の間、下部尿路活性の間接的な計測として作用する。コントロール期間の後で、生理食塩水溶液中の10mg/ml硫酸プロタミン(PS)が、尿路上皮の拡散障壁を透過させるために、30分間輸液される。PS処置後、輸液剤は膀胱刺激を誘発するために、生理食塩水中の300mMのKClに切り替えられる。一旦下部尿路活動亢進の安定したレベルが確立されると(20〜30分)、ビヒクルとそれに続く選択された活性因子の用量増加は、累積的な用量反応関係を構築するために静脈内投与され、LUT機能に対するそれらの効果は、20分間にわたってモニタリングされる。例えば、別の一連の実験が30〜300mg/kgの用量のガバペンチンで調べられる一方、本実験は一連の実験を0、100、300、1000、3000、10000、30000μg/kgの用量のガバペンチンで調査した。コントロール生理食塩水膀胱内圧測定法の終了時、および各治療期間後(膀胱内圧測定法輸液剤の切り替えまたは静脈内薬物投与の切り替えのいずれか)において、薬物注入ポンプを止めて膀胱を注入カテーテルによって流体回収によって空にする。さらに、一回の充填膀胱内圧測定図を、刺激プロトコルと以降の薬物投与に起因する膀胱容量の変化を決定するために同じ流速で実行する。
【0167】
(結果および結論)
静脈内ガバペンチンは、硫酸プロタミン/KCl技術を使用した持続的な膀胱刺激の間、ラット(n=6)における充填膀胱内圧測定法で測定されたように、膀胱容量の用量依存性増加をもたらした。図1は、生理食塩水の膀胱腔内注入(SAL;コントロール輸液剤)およびその後の硫酸プロタミン/KClの膀胱腔内注入による膀胱刺激(KCl)の間の、正常動物における膀胱容量の平均値(±SEM)を表す。一旦刺激が確立された場合、生理食塩水(ビヒクル)と30、100、および300mg/kgのガバペンチンとを30分間隔で静脈内に経時的に投与した。ビヒクルは刺激から生じる膀胱容量減少に有意な影響を及ぼさなかったが、ガバペンチンの全身投与は、刺激物の膀胱内連続送達にもかかわらず用量依存性様式で刺激効果を逆転(膀胱容量減少)させた(フリードマン試験により、p=0.0108)点に注意すべきである。血圧の薬物性変化は、検査したいかなる用量でも記録されなかった。
【0168】
膀胱容量の刺激によって誘発された減少を逆転させるガバペンチンの能力は、膀胱C線維活性の対するこの化合物の直接効果を示す。
【0169】
(実施例2−希酢酸モデル)
(方法)
(動物の調製:)
雌ラット(250〜275g BW)をウレタン(1.2g/kg)で麻酔した、次に、生理食塩水を充填したカテーテル(PE−50)を静脈内薬物投与のために頸静脈に挿入した。正中腹部切開を経て、先端が広がった(flared−tipped)PE50カテーテルを、膀胱の充満と圧力とを記録するため膀胱穹窿部に挿入し、連結によって固定した。腹腔内を生理食塩水で湿らせて、空にすることを目的のための膀胱へのアクセスを維持するために細いプラスチックシートでカバーすることによって閉じた。筋電図法(EMG)のため、純銀またはステンレス鋼線電極を経皮的に外部尿道括約筋(EUS)に挿入した。
【0170】
(実験計画:)
下部尿路活動の基線を得るために、生理食塩水を、60分間、膀胱充填カテーテルを経て0.055ml/分の速度で持続的に注入した(持続的膀胱内圧測定法;CMG)。コントロール期間の後、0.25%酢酸性含有生理食塩水溶液を、膀胱刺激を誘発するために、同じ流速で膀胱に注入した。AA注入の30分間後、3回のビヒクル注射を20分間隔で行い、もしあるならばビヒクル効果を決定した。半ログ増分(half log increment)で増加する選択された活性因子ガバペンチン(30、100、および300mg/kg;n=11)またはプレガバリン(10、30、および100mg/kg;n=7)の用量を30分間隔で静脈内投与し、累積的な用量反応関係を構築した。第3のビヒクルでの、コントロール生理食塩水膀胱内圧測定期間法終了時、および各々の後処理後の20分後、薬物注入ポンプを停止し、膀胱を注入カテーテルによって空にし、一回の充填膀胱内圧測定を、刺激プロトコルと以降の膀胱内薬剤投与とに起因する膀胱容量の変化を決定するために、同じ流速で行った。体温は、ヒートパッドで37℃に維持した。
【0171】
(データ分析)
膀胱用量を単回充填膀胱内圧測定によって評価した。データを、累積的な用量反応研究およびダン(Dunn)の多重比較試験事後検定とのための繰り返し測定のために、ノンパラメトリックANOVAによって分析した(フリードマン・テスト)。場合によっては、比較は、最後のビヒクル測定(AA/Veh 3)からなされた。P<0.050を有意であるとみなした。
【0172】
(結果および考察)
静脈内ガバペンチンは、持続的な刺激の間、ラット(n=5)における充填膀胱内圧測定法で測定されたように、希酢酸モデルで膀胱容量の用量依存性増加をもたらした。図2は、希酢酸の膀胱内連続注入による膀胱活動亢進前(Sal)および後(残留群)の膀胱容量を示す。ガバペンチンを、用量を増加させながら静脈内投与した。ガバペンチンが、用量依存的に、酢酸に起因する膀胱容量の減少を部分的に逆転させることができたことに注意。この効果は、30〜300mg/kgの用量範囲で統計学的に有意であり(フリードマン試験によるp=0.0031)、そして300mg/kgの反応はAA/Veh 3よりも有意に高かった(ダンの多重比較試験により、p<0.05)。
【0173】
ラット(n=11)が追加して上記実験群に加えられ、データが刺激前生理食塩水コントロール値に対して正規化され、平均値±SEMとして表される場合、ガバペンチンは刺激前コントロール値の約50%(P<0.01)への、酢酸によって誘導された膀胱容量の減少の容量依存的逆転(P<0.0001)をもたらした。図3は、酢酸によって誘導された膀胱容量の減少に対する、静脈内ガバペンチンの効果を表す(データを刺激前生理食塩水コントロール値に対して正規化し、平均値(±SEM)として表した)。ガバペンチンが、刺激前コントロール値の約50%(P<0.01)への、酢酸によって誘導された膀胱容量の減少の容量依存的逆転(P<0.0001)をもたらした点に注意。
【0174】
プレガバリンは、ガバペンチンに類似した効果を示し(P=0.0061)、試験した用量範囲で、刺激前コントロールの値42%(P<0.05)への復帰をもたらした。図4は、酢酸によって誘導された膀胱容量の減少に対する静脈内プレガバリンの効果を示す。データを刺激前生理食塩水コントロール値に対して正規化し、平均値±SEMとして表した。プレガバリンは、ガバペンチンに類似した効果を示し(P=0.0061)、試験した用量範囲で、刺激前コントロールの値42%(P<0.05)への復帰をもたらした。
【0175】
ガバペンチンおよびプレガバリンの両方は、膀胱過活動の希酢酸モデルで有効性を示し、過活動膀胱の哺乳動物形態で強く有効性を示す。
【0176】
(実施例3−膀胱感覚性ニューロンカルシウム電流モデル)
(方法)
(膀胱求心性ニューロンの標識:)
成熟メスSprague−Dawleyラット(150〜300g)を、イソフルランで深麻酔した。腹側正中切開を腹部皮膚と筋系を通しておこない、膀胱を露出した。蛍光色素Fast Blue(4%)の注射を5回おこない、膀胱平滑筋壁に入れて、膀胱を神経支配している標識一次求心性線維を標識した。この領域を滅菌生理食塩水で洗浄して、色素の非特異的な広がりを除去し、切開部を閉じた。ラットは、12〜14日間で回復し、後根神経節(DRG)ニューロンの遠位末端から細胞体までのFast Blueの輸送を可能にする。標識ニューロンは、蛍光光学を使用して、生体外で同定した。ラットを含む全ての実験手順は、Institutional Animal Care and Use Committeeにより承認されたプロトコルの下で行われた。
【0177】
(ニューロンの培養:)
Fast Blue注入ラットを安楽死させ、腰椎(L)+仙椎(S)DRGを脊柱から解剖した。このDRGを、37℃で40分間、0.3%のコラゲナーゼBを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に静置した。つぎに、細胞溶液をカルシウム/マグネシウムを含まないダルベッコリン酸で緩衝された生理食塩水溶液中の0.25%トリプシンと交換し、37℃で15分、さらに消化した。新鮮DMEMで洗浄した後、神経節を、火で磨いたパスツールピペットを使用して一連の摩砕によって分離させた。DRG細胞を、ポリL−リシン処理ガラス・カバーグラス上で平板培養した。細胞を、10%FBS、NGF、および100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを補充した1mlのDMEM中で、カバーグラスあたり0.5のDRG密度で平板培養した。ラットを含む全ての実験手順は、Institutional Animal Care and Use Committeeにより承認されたプロトコルの下で行われた。試薬濃度、インキュベーション期間などの僅かな変化が起こり得、類似の結果をもたらすと予想される。
【0178】
ニューロンは、FITC標識されたレクチンBSI−B4(IB4、10mg/ml)を含む培地中で、記録前に37℃で5分間インキュベートした。カバーグラスは、蛍光光学を備える倒立顕微鏡のステージ上にマウントした記録チャンバーに置かれる前に、細胞外記録溶液で1分間洗浄した。ニューロンの画像は、ディジタル・カメラ・システムを使用して撮像した。
【0179】
(電気生理学:)
ニューロンの電気生理学的評価を、平板培養1日以内に行った。ホールセルパッチクランプ記録を、色素標識DRGニューロンから得た。記録を、細胞外記録溶液(pH7.4、340mOsM)中で得た。細胞外記録溶液は、(mMで)155のTEA Cl、5のBaCl、5の4−AP 10のHEPES、および10グルコースからなる。パッチクランプ電極はホウケイ酸ガラスを引き延ばして先端を熱で研磨することにより、2〜4MOhmの先端抵抗を得た。ピペット内記録溶液(pH7.4、310mOsM)を、(mMで)140のKCl、9のEGTA、2のMaCl、1のCaCl、4のMg−ATP、0.3のTris−GTP、および10のHEPESから構成した。溶液に用いた試薬の濃度および型の変化が起こることも考えられ、また類似の結果が得られる。
【0180】
カルシウム電流は、標準的な電気生理学的なプロトコルを使用して、DRGニューロンから記録した。電流とは、本明細書においてはカルシウム電流をいうが、しかし、これらのカルシウムチャネルを通しての電流は、実はバリウムイオンによって運ばれる。ニューロンは、−80mVで電圧を固定した。電流は、パッチクランプ増幅器を使用して記録して、収集のために3〜10kHzでデジタル化した。ニューロンの入力抵抗と膜電気容量は、−50mVの保持電位からの、電圧パルスに対する電流応答の振幅と反応速度(kinetics)から決定された。直列抵抗を、全ての記録について50〜70%補償した。リーク電流を、標準のP/4プロトコルを使用して、オンラインでキャンセルした。−80mVから0mVへの脱分極工程を、カルシウム電流に対する薬物の効果を決定するために、コントロール期間および薬物適用の間、15秒ごとに送達した。基線応答を、定常状態のピーク振幅を得るまで記録し、応答の反応速度が確実に安定であるようにした。実験の間に反応速度の持続的変化または不可逆的変化を示す応答を、不安定であり、分析には使用できないとみなした。全てのデータ収集および分析を、標準的な細胞電気生理学用ソフトウェアを使用して実行した。電気生理学的プロトコルの詳細における変化が生じ得、類似の結果を与えると予測される。
【0181】
細胞を、記録チャンバー内において、細胞外溶液で、約0.5ml/分の速度で継続的に潅流した。アンタゴニストを、槽(bath)を介して個々の細胞に適用した。定常的な薬効が達成されるまで(代表的に、1〜5分)、アンタゴニストを適用した。全ての試薬を、他に断らない限り、定評のある販売元から購入した。全てのデータを、平均値±SEMとして表す。
【0182】
(結果および考察)
膀胱求心性ニューロンは、生体外DRG培養でFast Blue陽性ニューロンと同定された。全ての電流を、CdC1により完全にブロックした(0.1mM、データは示されない)ので、カルシウム電流のみを、膀胱求心性ニューロンから記録した。図5Aは、30μMガバペンチンの槽適用前(コントロール)および適用中に記録した代表的な内向きカルシウム電流を示す。ガバペンチンは、6つの膀胱求心性ニューロンで、ピーク・カルシウム電流を85+1%まで減少させ(図5B)、これは、膀胱感覚性ニューロン上のαδカルシウム・チャンネル・サブユニットの調節が、ニューロンの興奮性の減少をもたらし得ることを示す。
【0183】
膀胱求心性ニューロンのピーク・カルシウム電流を減少するガバペンチンの能力は、膀胱感覚性ニューロン上のαδカルシウム・チャンネル・サブユニットの調節が、ニューロンの興奮性の減少をもたらし得ることを示し、このことは、過活動膀胱の哺乳動物の形態における有効性を強く示す。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】グラフは、生理食塩水(SAL;対照輸液剤)の膀胱腔内注入中、および硫酸プロタミン/KCl(KCl)の膀胱腔内注入による膀胱刺激後の、正常動物での膀胱容量の平均値(±SEM)を表す。刺激が確立されると直ちに、生理食塩水(ビヒクル)と30、100、および300mg/kgのガバペンチンとを30分間隔で経時的に静脈内投与した。特記すべきことは、刺激による膀胱容量の減少に対してビヒクルは著しい影響を及ぼさなかったが、ガバペンチンの全身投与は、刺激物の膀胱内連続送達にもかかわらず用量依存的(フリードマン試験によるp=0.0108)で、刺激効果(膀胱容量の減少)を逆転させたことである。
【図2】グラフは、希酢酸の膀胱内連続注入によって引き起こされる膀胱機能亢進の前(Sal)および後(残留群)の膀胱容量を示す。ガバペンチンを、用量を増加させながら静脈内投与した。特記すべきことは、ガバペンチンが部分的に用量依存的に酢酸に起因する膀胱容量の減少を逆転させることができたことである。
【図3】酢酸によって誘導された膀胱容量の減少に対する静脈内ガバペンチンの効果(データが刺激前生理食塩水対照値に対して正規化され、平均値(±SEM)として発現)。特記すべきことは、ガバペンチンが約50%の刺激前対照値(P<0.01)に対して、酢酸によって誘導された膀胱容量の減少の容量依存的逆転(P<0.0001)に帰着したことである。
【図4】酢酸によって誘導された膀胱容量の減少に対する静脈内プレガバリンの効果(データが刺激前生理食塩水対照値に対して正規化され、平均値(±SEM)として発現)。プレガバリンは、ガバペンチンに類似した効果を示し(P=0.0061)、試験した用量範囲で42%の刺激前対照値(P<0.05)に戻った。
【図5】図5Aは、30μM ガバペンチンの浴処理適用前および適用中に記録された代表的な内向きカルシウム電流を示す。ガバペンチンが、6つの膀胱求心性神経でピーク・カルシウム電流を85+1%まで減少させることから(図5B)、膀胱感覚性神経上のαδカルシウム・チャンネル・サブユニットの修飾が神経興奮性の減少をもたらすことが示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不随意性尿失禁を伴わない過活動膀胱(OAB)または良性前立腺肥大の症状を処置する方法であって、該方法は、以下:
治療有効量のαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子を投与する工程であって、該調節因子は、ガバペンチンおよびプレガバリンからなる群より選択される工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子が、薬学的処方物に含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子が、必要に応じて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子は、前記症状の抑制が所望される、活性の開始の約0〜約3時間前に投与される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子は、経口的に、経粘膜的に、舌下的に、頬内に、鼻腔内に、経尿道的に、直腸的に、吸入で、局所的に、経皮的に、非経口的に、くも膜下内に、膣内に、または膣周辺に、投与される、方法。
【請求項6】
不随意性尿失禁を伴わない過活動膀胱(OAB)または良性前立腺肥大の前記症状が、頻尿である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
不随意性尿失禁を伴わない過活動膀胱(OAB)または良性前立腺肥大の前記症状が、尿切迫である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
不随意性尿失禁を伴わない過活動膀胱(OAB)または良性前立腺肥大の前記症状が、夜間多尿症である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ガバペンチンが、約600mg/日〜約2400mg/日の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記薬学的処方物が、さらなる活性因子をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、ここで、前記さらなる活性因子は、以下:
三環系抗うつ薬、デュロキセチン、ベンラファクシン、モノアミン再取込み阻害剤、ガバペンチン、プレガバリン、5−HTアンタゴニスト、および5−HTアンタゴニストからなる群より選択される、方法。
【請求項12】
夜間多尿症を処置する方法であって、該方法は、以下:
治療有効量のαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子を投与する工程であって、該調節因子は、ガバペンチンおよびプレガバリンからなる群より選択される工程
を包含する、方法。
【請求項13】
夜間多尿症を処置する方法であって、該方法は、以下:
治療有効量のαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子を投与する工程であって、該調節因子は、ガバペンチンおよびプレガバリンからなる群より選択される工程
を包含する、方法。
【請求項14】
尿意切迫を処置する方法であって、該方法は、以下:
治療有効量のαδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子を投与する工程であって、該調節因子は、ガバペンチンおよびプレガバリンからなる群より選択される工程
を包含する、方法。
【請求項15】
αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子を含む薬学的組成物であって、該調節因子は、ガバペンチンおよびプレガバリンからなる群より選択され、不随意性尿失禁を伴わない過活動膀胱(OAB)または良性前立腺肥大の症状を処置するのに十分な治療有効量である、薬学的組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子が、約50mg〜約2400mgの量で存在する、薬学的組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子が、約200mgの量である、薬学的組成物。
【請求項18】
請求項15に記載の薬学的組成物であって、ここで、前記αδサブユニット・カルシウム・チャンネル調節因子が、経口投与、経粘膜投与、舌下投与、頬内投与、鼻腔内投与、経尿道投与、直腸投与、吸入、局所的投与、経皮的投与、非経口的投与、くも膜下内投与、膣内投与、または膣周辺投与のために処方されている、薬学的組成物。
【請求項19】
前記症状が、頻尿である、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記症状が、尿意切迫である、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記症状が、夜間多症である、請求項15に記載の薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−511624(P2006−511624A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510027(P2005−510027)
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/040730
【国際公開番号】WO2004/058168
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505228707)ダイノジェン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】