説明

β−グリセロールリン酸を合成するためのプロセス

本発明は、β−グリセロールリン酸およびその塩を調製するための方法を提供する。特に、本発明は、高純度のβ−グリセロールリン酸を合成するための効率的な方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、β−グリセロールリン酸およびその塩(例えば、グリセロール2−リン酸二ナトリウム塩水和物等)を合成するための方法に関する。特に、本プロセスは、生成物のα異性体の混入がほとんどない、高純度のβ−グリセロールリン酸を合成するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
化学物質グリセロールリン酸(グリセロフォスフェートとも称される)は、種々の生理学的および治療的役割を担う、製薬業界にとって貴重な存在である。実際に、グリセロフォスフェート、具体的には、グリセロール2−リン酸二ナトリウム塩水和物(BGP)に対する消費者の需要は、2007年〜2010年の間に3倍になることが予想されており、現在のところ、その需要は、当業界の製品供給能力を超えるものである。
【0003】
生成物が、通常、異性体化合物(αおよびβ異性体を含む)と無機塩不純物(通常、リン酸塩および塩化物)との混合物として形成されることが主因となり、BGPを生成する従来技術の方法では、この生成物に対する高い需要を満たすことができない。購入者が純粋なβ異性体を求める場合、異性体を分離することを余儀なくされ、そのためには精製を繰り返す必要があるため、非常に多くの仕事量を必要とする。精製を繰り返すことにより、最大50%の生成物の損失をもたらす可能性がある。さらに、無機不純物、特にリン酸塩の除去も、同じように困難である。高純度のBGPを得るための生成物の精製は、通常は結晶化を繰り返すことによって達成され、結果として生成物のさらなる損失をもたらし、最終的に購入者にとってコストがより高くなる。現在の限界を考慮すると、高純度のBGPを合成するための高収率の方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、対応するグリセロールまたは保護グリセロール化合物から、高純度のβ−グリセロールリン酸を生成するための方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一態様において、本発明は、式(VI)を含む化合物を調製するためのプロセスを包含する。本プロセスは、以下の反応スキームに従って、
【0006】
【化1】

【0007】
(a)式(I)を含む化合物を、Rを含む保護剤と接触させて、式(II)を含む化合物を形成することと、(b)式(II)を含む化合物を、プロトン受容体の存在下で、Zを含むリン酸化剤と接触させて、式(III)を含む化合物を形成することと、(c)式(III)を含む化合物を、水と接触させて、式(IV)を含む化合物およびHZを形成することと、(d)式(IV)を含む化合物を、少なくとも1個の金属イオン(M)を含むプロトン受容体と接触させて、式(V)を含む化合物を形成することと、(e)式(V)を含む化合物を脱保護して、式(VI)を含む化合物を形成することと、を含み、
式中、
は、保護基であり、
Zは、ハロゲンであり、
Mは、IA族、IIA族、および遷移金属イオンからなる群より選択される。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、式(VI)を含む化合物を調製するためのプロセスを含む。本プロセスは、以下の反応スキームに従って、
【0009】
【化2】

【0010】
(a)式(II)を含む化合物を、プロトン受容体の存在下で、Zを含むリン酸化剤と接触させて、式(III)を含む化合物を形成することと、(b)式(III)を含む化合物を、水と接触させて、式(IV)を含む化合物およびHZを形成することと、(c)式(IV)を含む化合物を、少なくとも1個の金属イオン(M)を含むプロトン受容体と接触させて、式(V)を含む化合物を形成することと、(d)式(V)を含む化合物を脱保護して、式(VI)を含む化合物を形成することと、を含み、
式中、
は保護基であり、
Zはハロゲンであり、
Mは、IA族、IIA族、および遷移金属イオンからなる群より選択される。
【0011】
本発明の他の態様および特徴を、以下に詳述する。
【0012】
本発明は、高純度のβ−グリセロールリン酸およびその塩を生成するための効率的なプロセスを提供する。β−グリセロールリン酸およびその塩(例えば、グリセロール2−リン酸二ナトリウム塩水和物等)の生成物は、一般に、約99重量%を超える化合物のβ異性体を含む。プロセスはまた、プロセスの過程において、不純物の形成を防止し、および/または、不純物を効率的に除去する。
(I) グリセロールからのβ−グリセロールリン酸の合成
【0013】
本発明の一態様は、グリセロールを出発物質として使用して、β−グリセロールリン酸またはその塩[すなわち、式(VI)を含む化合物]を合成するための方法を提供する。例示目的のために、反応スキーム1は、本発明のこの態様に従って、式(I)を含む化合物からの式(VI)を含む化合物の生成を示す。
反応スキーム1
【0014】
【化3】

【0015】
式中、
は、保護基であり、
Zは、ハロゲンであり、
Mは、IA族、IIA族、および遷移金属イオンからなる群より選択される。
(a)ステップA:化合物(I)から化合物(II)への変換
【0016】
一般に、化合物(II)を調製するための基質は、反応スキーム1に示される化合物(I)に対応する。ステップAは、反応スキーム1に従って、式(I)を含む化合物を、Rを含む保護剤と接触させて、式(II)を含む化合物を形成することを含む。式(II)を含む化合物は、分子のαおよびγ位に保護基(R)を含む。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「保護基」という用語は、酸素原子を保護することが可能な基を意味し、保護基は、保護が利用される反応の後に、分子の残りの部分に影響を与えることなく除去することができる。好適な保護基の非限定例として、アシル(例えば、ピバロイル(すなわち、2,2−ジメチルプロパノイル)、アダマンタノイル、メタノイル、エタノイル(すなわち、アセチル)、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル等);ベンジルおよび置換ベンジル(例えば、ベンジルオキシ、メシトイル等);エーテル(例えば、アリル、トリフェニルメチル(トリチルまたはTr)、p−メトキシベンジル(PMB)、p−メトキシフェニル(PMP)等);アセタール(例えば、メトキシメチル(MOM)、βメトキシエトキシメチル(MEM)、テトラヒドロピラニル(THP)、エトキシエチル(EE)、メチルチオメチル(MTM)、2メトキシ−2−プロピル(MOP)、2トリメチルシリル エトキシメチル(SEM)等);エステル(例えば、ベンゾエート(Bz)、炭酸アリル、2,2,2−トリクロロエチルカーボネート(Troc)、2−トリメチルシリルエチルカーボネート等);シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、トリフェニルシリル(TPS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)等)が挙げられる。種々の保護基およびその合成法は、「Protective Groups in Organic Synthesis」 T.W. Greene and P.G.M.Wuts、John Wiley & Sons,1999に見出すことができる。好ましい保護基は、アシル、ベンジル、および置換ベンジルを含む。好ましい実施形態において、保護基は、ピバロイル、ベンジル、ベンジルオキシ、アダマンタノイル、メシトイル、およびアセチルであってもよい。例示的な実施形態において、保護基はピバロイルであってもよい。
【0018】
式(I)を含む化合物の保護剤に対するモル比は異なり得る。一般に、式(I)を含む化合物の保護剤に対するモル比は、約1:0.1〜約1:10の範囲であってもよく、またはより好ましくは、約1:1〜約1:5の範囲であってもよい。例示的な実施形態において、式(I)を含む化合物の保護剤に対するモル比は、約1:2〜約1:3の範囲であってもよい。
【0019】
一般に、ステップAの反応は、約−30℃〜約30℃の範囲の温度で、式(I)を含む化合物の大部分が式(II)を含む化合物に変換するのに十分な期間行うことができる。一実施形態において、温度は約−20℃〜約10℃の範囲であってもよい。好ましい実施形態において、温度は約−10℃〜約5℃の範囲であってもよい。
【0020】
また、ステップAは、一般に、有機溶媒の存在下で行われる。好適な有機溶媒としては、アルカンおよび置換アルカン溶媒(シクロアルカンを含む)、芳香族炭化水素、エステル、エーテル、ケトン、それらの組み合わせ等が挙げられる。利用することができる具体的な有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ベンゼン、酢酸ブチル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルケトン、クロロベンゼン、クロロホルム、クロロメタン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ジエチレングリコール、フルオロベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、イソブチルメチルケトン、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルテトラヒドロフラン、酢酸ペンチル、n−酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、トルエン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、有機溶媒はt−ブチルメチルエーテルである。
【0021】
ステップAはまた、プロトン受容体の存在下で行うことができる。一般に、プロトン受容体は、約7〜約13のpKaを有し、好ましくは約8〜約10のpKaを有する。利用することができる代表的なプロトン受容体としては、ホウ酸塩(例えば、NaBO等)、2塩基および3塩基のリン酸塩(例えば、NaHPOおよびNaPO等)、重炭酸塩(例えば、NaHCO、KHCOそれらの混合物等)、水酸化物塩(例えば、NaOH、KOH、それらの混合物等)、炭酸塩(例えば、NaCO、KCO、それらの混合物等)、有機塩基(例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアミノピリジン、およびそれらの混合物)、有機緩衝液(例えば、N−(2−アセタミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N−(2−アセタミド)−イミノ二酢酸(ADA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(BICINE)、3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸(CAPS)、2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸(HEPES)、2−(4−モルホリニル)エタンスルホン酸(MES)、4−モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、1,4−ピペラジンジエタンスルホン酸(PIPES)、[(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、2−[(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]エタンスルホン酸(TES)、それらの塩および/または混合物等)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、プロトン受容体はピリジンである。
【0022】
所望により、実施例において詳述されるように、ステップAの反応によって形成される反応混合物は、未反応の保護剤および/またはプロトン受容体を除去するための適切な物質を添加することによって反応停止させることができる。
【0023】
また、高純度BGPの生成は、二重保護化合物のα異性体の量を最小限に抑えることに依存する。これは、式(II)を含む化合物の大部分が、α異性体(すなわち、1,2−二重保護化合物)ではなく、β異性体(すなわち、1,3−二重保護化合物)から構成されることを確実にすることにより達成される。一般に、高濃度のβ異性体は、下流の不純物形成を防止するのに役立ち、コストの増加および効率の低下をもたらす追加精製を実施する必要性を削減する。一般に、二重保護化合物のα異性体は、式(II)を含む化合物の約20重量%未満を占める。別の実施形態において、二重保護化合物のα異性体は、式(II)を含む化合物の約15重量%未満を占める。さらに別の実施形態において、二重保護化合物のα異性体は、式(II)を含む化合物の約10重量%未満を占める。好ましい実施形態において、二重保護化合物のα異性体は、式(II)を含む化合物の約5重量%未満を占める。例示的な実施形態において、二重保護化合物のα異性体は、式(II)を含む化合物の約4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、または1重量%未満を占める。一般に、反応が決して0℃を超えないことを確実にすることが、異性化を防止するのに役立つ。
(b)ステップB:化合物(II)から化合物(III)への変換
【0024】
一般に、化合物(III)を調製するための基質は、反応スキーム1に示される化合物(II)に対応する。本発明のステップBは、式(II)を含む化合物を、プロトン受容体の存在下で、ハロゲン部分(Z)を含むリン酸化剤と接触させて、式(III)を含む化合物を形成することを含む。
【0025】
リン酸化剤は、有機化合物へのリン酸塩または置換ホスホリル基の付加をもたらす。一般に、リン酸化剤は、O=P(Z)(X)およびP(Z)からなる群より選択される式を含む化合物であり、式中、Oは酸素であり、Pはリンであり、Zはハロゲンであり、Xは、Zおよび{−}ORからなる群より独立して選択され、変数nは、3〜5の範囲の整数である。さらに、{−}ORは、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル基(R)に結合した酸素(O)を含む。好ましくは、Rは、低級アルキルもしくは置換アルキル基であるか、低級アルケニルもしくは置換アルケニル基であるか、またはアリールもしくは置換アリール基である。リン酸化剤がP(Z)を含む実施形態において、反応は、酸化ステップをさらに含む。当業者は、好適な酸化剤に精通している。
【0026】
好適なリン酸化剤の非限定例として、オキシ塩化リン(POCl)、オキシフッ化リン(POF)、オキシ臭化リン(POBr)、オキシヨウ化リン(POI)、ジメチルクロロホスフェート(POCl(OCH)、ジエチルクロロホスフェート(POCl(OCHCH)、ジプロピルクロロホスフェート(POCl(OCHCHCH)、ジブチルクロロホスフェート(POCl(O(CHCH)、ジペンチルクロロホスフェート(POCl(O(CHCH)、ジヘキシルクロロホスフェート(POCl(O(CHCH)、ジヘプチルクロロホスフェート(POCl(O(CHCH)、三塩化リン(PCl)、三臭化リン(PBr)、三ヨウ化リン(PI)、三フッ化リン(PF)、五塩化リン(PCl)、五フッ化リン(PF)、五臭化リン(PBr)、および五ヨウ化リン(PI)が挙げられる。好ましい実施形態において、リン酸化剤は、オキシ塩化リンである。
【0027】
ステップBは、一般に、プロトン受容体の存在下で行われる。一般に、プロトン受容体は、約7〜約13のpKaを有し、好ましくは約8〜約10のpKaを有する。利用することができる代表的なプロトン受容体は、これらに限定されないが、ホウ酸塩(例えば、NaBO等)、2塩基および3塩基のリン酸塩(例えば、NaHPOおよびNaPO)、重炭酸塩(例えば、NaHCO、KHCO、その混合物等)、水酸化物塩(例えば、NaOH、KOH、その混合物等)、炭酸塩(例えば、NaCO、KCO、その混合物等)、アルキルアミン塩基(例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアミン、およびジイソプロピルエチルアミン等)、有機塩基(例えば、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアミノピリジン、およびその混合物等)、有機緩衝液(例えば、N−(2−アセタミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N−(2−アセタミド)−イミノ二酢酸(ADA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(BICINE)、3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸(CAPS)、2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸(HEPES)、2−(4−モルホリニル)エタンスルホン酸(MES)、4−モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、1,4−ピペラジンジエタンスルホン酸(PIPES)、[(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、2−[(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]エタンスルホン酸(TES)、それらの塩および/混合物等)、ならびにそれらの組み合わせを含む。好ましい実施形態において、プロトン受容体は、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、またはピリジンであってもよい。
【0028】
ステップBは、一般に、有機溶媒の存在下において進行する。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、反応のステップAからキャリーオーバーされてもよい。好適な有機溶媒としては、これらに限定されないが、アルカンおよび置換アルカン溶媒(シクロアルカンを含む)、芳香族炭化水素、エステル、エーテル、ケトン、それらの組み合わせ等が挙げられる。利用することができる具体的な有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ベンゼン、酢酸ブチル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルケトン、クロロベンゼン、クロロホルム、クロロメタン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ジエチレングリコール、フルオロベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、イソブチルメチルケトン、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルテトラヒドロフラン、酢酸ペンチル、n−酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、トルエン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態において、有機溶媒はt−ブチルメチルエーテルである。
【0029】
式(II)を含む化合物のリン酸化剤に対するモル比は異なってもよい。一般に、式(II)を含む化合物のリン酸化剤に対するモル比は、約1:0.1〜約1:10であってもよい。別の実施形態において、式(II)を含む化合物のリン酸化剤に対するモル比は、約1:0.5〜約1:5であってもよい。さらに別の実施形態において、式(II)を含む化合物のリン酸化剤に対するモル比は、約1:0.8〜約1:2であってもよい。例示的な実施形態において、式(II)を含む化合物のリン酸化剤に対するモル比は、約1:1〜約1:1.1であってもよい。
【0030】
一般に、ステップBの反応は、約−30℃〜約30℃の範囲の温度で、式(II)を含む化合物の大部分が式(III)を含む化合物に変換するのに十分な期間行われてもよい。一実施形態において、温度は約−20℃〜約10℃の範囲であってもよい。好ましい実施形態において、温度は約−10℃〜約5℃の範囲であってもよい。一般に、反応が0℃を超えないことを確実にすることにより、副生物の形成を最小限に抑える。
【0031】
上に提示した温度範囲は、一般に、試薬が反応するために十分な期間維持される。ステップBは、最初の撹拌後、ステップCを開始する前に、反応の残りのための加温期間をさらに含むことができる。一般に、反応物は、約5℃〜約35℃の範囲であり得る温度まで加温される。好ましい実施形態において、温度は約15℃〜約30℃の範囲であってもよい。
(c)ステップC:化合物(II)から化合物(III)への変換
【0032】
一般に、化合物(IV)を調製するための基質は、反応スキーム1に示される化合物(III)に対応する。本発明のステップCは、式(III)を含む化合物を水と接触させて、式(IV)を含む化合物を形成することを含む。
【0033】
式(III)を含む化合物を含む溶液に添加される水は、一般に、反応混合物全体の少なくとも約10%〜約80重量%の範囲であると考えられる。好ましい実施形態において、反応混合物中に存在する水は、少なくとも約20%〜約40%の範囲であってもよい。しかしながら、反応混合物の効率的かつ安全な反応停止のために、また不純物の効率的な除去を確実にするために、過量の水が使用されてもよい。ステップCの反応の温度は、約5℃〜約35℃の範囲であってもよい。好ましい実施形態において、温度は約20℃〜約35℃の範囲であってもよい。前のステップと同様に、反応が特定の温度(例えば、このステップでは約35℃)を超えないことを確実にすることが、不純物形成を防止するのに役立つ。
【0034】
また、ステップCは、通常、水の添加によって有機相および水相の形成をもたらす、第1の分配ステップをさらに含む。有機相は、式(IV)を含む化合物を含み、水相は、HZ等の不純物を含む。第1の分配ステップは、混合物の水層を除去することにより、反応混合物から不純物を除去することを含む。反応スキーム1に示すように、水層中に分離される主な不純物の1つは、HZである。上記のように、HZは、ハロゲンまたは式{−}ORを含む基に結合した水素を含む。HZを含む化合物は、これらに限定されないが、塩化水素、フッ化水素、臭化水素、ヨウ化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、または{−}OR基に対する水素の結合によって形成される任意のアルコールを含むことができる。リン酸化剤がオキシ塩化リン(POCl)である好ましい実施形態において、HZは塩化水素である。続いて、当業者に既知である技術を用いて水層が分離される。第1の分配ステップは、反応混合物が約4を超えるpHを有するまで、より好ましくは、約5を超えるpHを有するまで、水をさらに添加することおよび水相を除去することによって繰り返されてもよい。好ましい実施形態において、水層を除去した後、式(IV)を含む化合物を含む有機層は、約5を超えるpHを有する。
【0035】
ステップCは、非極性炭化水素溶媒および水混和性極性炭化水素溶媒を添加することによる、反応混合物の2つの不混和性有機相への第2の分配ステップをさらに含むことができる。分配は、反応混合物を、式(IV)を含む化合物を含む極性炭化水素溶媒相と、反応プロセスの少なくとも1つの有機副生物を含む非極性炭化水素溶媒相とに分離する。非極性炭化水素溶媒相は、例えば、式(I)を含む三重保護化合物等の、ステップAからの反応混合物に存在する有機不純物を含んでもよい。非極性炭化水素は、これらに限定されないが、アルカンおよび置換アルカン溶媒(シクロアルカンを含む)、芳香族炭化水素、エステル、エーテル、ケトン、それらの組み合わせ等を含むことができる。利用することができる具体的な非極性炭化水素溶媒は、例えば、ベンゼン、酢酸ブチル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルケトン、クロロベンゼン、クロロホルム、クロロメタン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ジエチレングリコール、フルオロベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、イソブチルメチルケトン、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルテトラヒドロフラン、酢酸ペンチル、n−酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、トルエン、およびそれらの組み合わせを含む。好ましい実施形態において、非極性炭化水素溶媒は、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、オクタン、またはシクロペンタンであってもよい。例示的な実施形態において、非極性炭化水素はヘプタンである。
【0036】
水混和性極性炭化水素溶媒は、極性非プロトン性溶媒または極性プロトン性溶媒のいずれかを含むことができる。好適な非プロトン性溶媒の非限定例として、アセトン、アセトニトリル、ジエトキシメタン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルプロピオンアミド、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジメトキシメタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、酢酸エチル、ギ酸エチル、エチルメチルケトン、ホルムアミド、ヘキサクロロアセトン、ヘキサメチルホスホルアミド、酢酸メチル、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、塩化メチレン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、プロピオンニトリル、スルホラン、テトラメチル尿素、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、トルエン、トリクロロメタン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。さらに、好適なプロトン性溶媒の例として、これらに限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ギ酸、酢酸、水、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態において、極性炭化水素溶媒は、エタノール、メタノール、プロパノール、またはアセトニトリルであってもよい。例示的な実施形態において、極性炭化水素溶媒はメタノールである。
【0037】
水混和性極性炭化水素溶媒は、通常、水と組み合わされ、極性炭化水素溶媒中の水の濃度が約1%〜約25%を占める溶媒を作製する。好ましい実施形態において、極性炭化水素溶媒中の水の濃度は、約5%〜約15%の範囲であってもよい。
【0038】
HZまたは他の副生物等の不純物は、最終生成物の純度に影響を与えるだけでなく、ステップDおよびEにおいて試薬と反応して、純度およびプロセスの効率をさらに低下させる可能性があるため、不純物の除去は、本発明のプロセスにおける重要なステップである。これらの理由から、ステップDを開始する前の反応混合物中の副生物の濃度は、約10%未満であることが好ましい。好ましい実施形態において、ステップDを開始する前の反応混合物中の副生物の濃度は、約5%であってもよい。
(d)ステップD:化合物(IV)から化合物(V)への変換
【0039】
一般に、化合物(V)を調製するための基質は、反応スキーム1に示される化合物(IV)に対応する。本発明のステップDは、式(IV)を含む化合物を、少なくとも1個の金属イオン(M)を含むプロトン受容体と接触させて、式(V)を含む化合物を形成することを含む。
【0040】
金属イオン(M)は、IA族の金属イオン、IIA族の金属イオン、または遷移金属イオンであってもよい。好ましい金属イオンの非限定例として、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、および亜鉛が挙げられる。例示的な実施形態において、金属イオンはナトリウムである。
【0041】
一般に、少なくとも1個の金属イオンを含むプロトン受容体は、約7〜約13のpKaを有し、好ましくは約8〜約10のpKaを有する。利用することができる代表的なプロトン受容体としては、これらに限定されないが、金属ホウ酸塩(例えば、NaBO等)、2塩基および3塩基の金属リン酸塩(例えば、NaHPOおよびNaPO等)、金属重炭酸塩(例えば、NaHCO、KHCO、それらの混合物等)、金属水酸化物塩(例えば、NaOH、KOH、CaOH、Fe(OH)、Cu(OH)、Zn(OH)、それらの混合物等)、金属炭酸塩(例えば、NaCO、KCO、LiCO、CaCO、MnCO、FeCO、CuCO、ZnCO、それらの混合物等)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態において、プロトン受容体は、金属ホウ酸塩、金属炭酸塩、金属重炭酸塩、または金属水酸化物であってもよい。別の好ましい実施形態において、プロトン受容体は金属水酸化物であってもよい。例示的な実施形態において、プロトン受容体は水酸化ナトリウムであってもよい。
【0042】
ステップDの反応混合物に添加されるプロトン受容体の量は異なってもよい。一般に、プロトン受容体は、反応混合物のpHを上昇させるために反応混合物に添加される。一般に、ステップDにおける混合物のpHは、約9を超えてもよい。好ましい実施形態において、ステップDにおける混合物のpHは、約11を超えてもよい。例示的な実施形態において、反応混合物のpHは、約11〜約12の範囲であってもよい。好ましい実施形態において、プロトン受容体の濃度は、一般に、約20%〜約80%(w/v)の範囲であってもよい。好ましい実施形態において、プロトン受容体の濃度は、約40%〜約60%(w/v)の範囲であってもよい。
【0043】
さらに、ステップDは、通常、反応混合物の温度を約40℃から約100℃に上昇させることを含む。好ましい実施形態において、ステップDにおける反応混合物の温度は、約60℃〜約80℃の範囲であってもよい。
(e)ステップE:化合物(V)から化合物(VI)への変換
【0044】
一般に、化合物(VI)を調製するための基質は、反応スキーム1に示される化合物(V)に対応する。本発明のステップEは、式(V)を含む化合物を脱保護して、式(VI)を含む化合物を形成することを含む。脱保護とは、一般に、式(V)を含む二重保護化合物から保護基を解離させることを指す。脱保護反応は、式(V)を含む化合物から保護基を解離させることが可能な任意の化学プロセスを含むことができ、当業者は、ステップAにおいて選択される保護基に依存して、多くの可能な反応の種類が存在することを理解するであろう。好ましい実施形態において、脱保護反応は、保護基の加水分解または水素化分解を含む。
【0045】
反応が終了してから、生成物の単離を容易にするために、反応混合物が約−20℃〜約40℃の範囲の温度まで冷却されてもよい。好ましい実施形態において、温度は約−10℃〜約10℃の範囲であってもよい。一旦、反応混合物が冷却されると、不純物を除去するために(例えば、1〜3マイクロメートルのポリパッドを使用して)濾過が実施されてもよい。当業者は、式(VI)を含む化合物を単離するために、他の方法が使用されてもよいことを理解するであろう。最終生成物は、当業者に既知である好適な方法によって、洗浄および乾燥、ならびに分析されてもよい。
【0046】
式(VI)を含む化合物の収率は異なってもよい。通常、化合物の収率は、少なくとも約30%であってもよい。好ましい実施形態において、化合物の収率は、少なくとも約40%であってもよい。
【0047】
また、式(VI)を含む化合物のβ異性体は、式(VI)を含む化合物の約85重量%超を占める。別の実施形態において、式(VI)を含む化合物のβ異性体は、式(VI)を含む化合物の約95重量%超を占める。好ましい実施形態において、式(VI)を含む化合物のβ異性体は、式(VI)を含む化合物の約99重量%超を占める。別の好ましい実施形態において、式(VI)を含む化合物のβ異性体は、式(VI)を含む化合物の約99.9%重量%超を占める。
【0048】
反対に、式(VI)を含む化合物のα異性体は、式(VI)を含む化合物の約15重量%未満を占める。別の実施形態において、式(VI)を含む化合物のα異性体は、式(VI)を含む化合物の約5重量%未満を占める。さらに別の実施形態において、式(VI)を含む化合物のα異性体は、式(VI)を含む化合物の約1重量%未満を占める。好ましい実施形態において、式(VI)を含む化合物のα異性体は、式(VI)を含む化合物の約0.1重量%未満を占める。
(II)1,3−二重保護グリセロールからのβ−グリセロールリン酸の合成
【0049】
本発明の別の態様は、1,3−二重保護グリセロールを出発物質として使用して、式(VI)を含む化合物を合成するための方法を包含する。つまり、反応スキーム1に示すステップAは任意的である。したがって、式(II)を含む二重保護化合が出発物質として提供される。好適な保護基の例は、上記(I)(a)に詳述される。いくつかの実施形態において、市販のジアセチン(すなわち、二酢酸グリセロール)である、1,3−ジベンジルグリセロールまたは1,3−ジベンジルオキシグリセロール(すなわち、1,3−ジベンジルオキシ−2−プロパノール)が出発物質として使用されてもよい。したがって、代替プロセスは、上で詳述したステップBから開始される。
定義
【0050】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0051】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として使用されるとき、「アシル」という用語は、有機カルボン酸のCOOH基からヒドロキシ基を除去することによって形成される部分、例えば、RC(O)を意味し、式中、Rは、R、RO−、RN−、またはRS−であり、Rは、ヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビル、または複素環であり、Rは、水素、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルである。
【0052】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として使用されるとき、「アシルオキシ」という用語は、上記のように、水素結合(O)によって結合されるアシル基、例えば、RC(O)O−を意味し、式中、Rは、「アシル」という用語に関連して定義される通りである。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」という用語は、主鎖に1個〜8個の炭素原子を含み、かつ最大20個の炭素原子を含む、好ましくは低級アルキルである基を表す。それらは、直鎖もしくは分岐鎖または環状であってもよく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル等であってもよい。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「アルケニル」という用語は、主鎖に2個〜8個の炭素原子を含み、かつ最大20個の炭素原子を含む、好ましくは低級アルケニルである基を表す。それらは、直鎖または分岐鎖であってもよく、エチニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ヘキセニル等を含んでもよい。
【0055】
本明細書で使用されるとき、「アルキニル」という用語は、主鎖に2個〜8個の炭素原子を含み、かつ最大20個の炭素原子を含む、好ましくは低級アルキニルである基を表す。それらは、直鎖または分岐鎖であってもよく、エチニル、プロペニル、ブチニル、イソブチニル、ヘキシニル等を含んでもよい。
【0056】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として使用される「芳香族」という用語は、任意に置換された同素環式または複素環式の芳香族基を意味する。これらの芳香族基は、好ましくは、環部に6個〜14個の原子を含む、単環式、二環式、または三環式基である。「芳香族」という用語は、以下に定義される「アリール」および「ヘテロアリール」を包含する。
【0057】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として使用される「アリール」または「Ar」という用語は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニル、または置換ナフチル等の、環部に6個〜12個の炭素を含む、任意に置換された単環式芳香族基、好ましくは単環式または二環式基を意味する。フェニルおよび置換フェニルは、より好ましいアリールである。
【0058】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として使用される「ハロゲン」という用語は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素を指す。
【0059】
「ヘテロ原子」という用語は、炭素および水素以外の原子を意味するものとする。
【0060】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として使用される「複素環」または「複素環式」という用語は、少なくとも1個の環に少なくとも1個のヘテロ原子を有し、好ましくは、各環に5個または6個の原子を有する、任意に置換された、完全飽和または不飽和の、単環式または二環式の、芳香族または非芳香族を意味する。複素環基は、好ましくは、1個もしくは2個の酸素原子および/または1個〜4個の窒素原子を環に有し、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合する。例示的な複素環基は、以下に記載するヘテロ芳香族を含む。例示的な置換基は、以下の基のうちの1つ以上を含む:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、シアノ、ケタール、アセタール、エステル、およびエーテル。
【0061】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として使用される「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1個の環に少なくとも1個のヘテロ原子を有し、好ましくは、5個または6個の原子を各環に有する、任意に置換された芳香族基を意味する。ヘテロアリール基は、好ましくは1個または2個の酸素原子および/または1〜4個の窒素原子を環に有し、炭素を介して分子の残りの部分に結合する。
【0062】
本明細書で使用されるとき、「炭化水素」または「ヒドロカルビル」という用語は、元素である炭素および水素のみから構成される有機化合物またはラジカルを表す。これらの部分は、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分を含む。これらの部分はまた、アルカリル、アルケナリール、およびアルキナリール等の、他の脂肪族基または環状炭化水素基で置換された、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分を含む。他に指定のない限り、これらの部分は、好ましくは1個〜20個の炭素原子を含む。
【0063】
本明細書に記載される「置換ヒドロカルビル」部分は、炭素鎖原子が、窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、硫黄、またはハロゲン原子等のヘテロ原子で置換された部分を含む、炭素以外の少なくとも1個の原子で置換されたヒドロカルビル部分である。これらの置換基は、ハロゲン、複素環、アルコキシ、アルケンオキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、ケタール、アセタール、エステル、およびエーテルを含む。
【0064】
本発明またはその好ましい実施形態(複数可)の元素について言及する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、1個以上の元素が存在することを意味することを意図している。「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であることを意図し、列記された元素以外にも追加の元素が存在する可能性があることを意味している。
【0065】
これまで本発明を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、修正および変更を行うことが可能であることは明らかであろう。
実施例
【0066】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を例示するために含まれる。当業者には、以下の実施例において開示される技術は、発明者によって、本発明の実践において良好に機能することが発見された技術を代表するものであり、よって、その実践のための好ましい様式を構成すると見なすことができると理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すると、開示される特定の実施形態において多くの変更が行われてもよく、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、同様のまたは類似する結果が得られることを理解するであろう。
実施例1:β−グリセロールリン酸の実験室規模の生成
【0067】
以下の反応スキームに従って、β−グリセロールリン酸を調製した(式中、Rは保護基である)。
【0068】
【化4】

【0069】
以下の実施例は、反応をテストするために、実験室内での適格性試験として設計した。ピリジン中のグリセロール1kgおよびt−ブチルメチルエーテル(tBME)を、(−5)℃〜0℃の範囲ではあるが、決して0℃を超えない温度で、2.4kgの2,2−ジメチルプロパノイル塩化物と反応させた。ガスクロマトグラフィ(GC)によって確認されるように、反応が終了した後、6N塩酸(HCl)を添加することによってスラリーを反応停止させた。その後、6N HClでスラリーをさらに2回洗浄して、余分なピリジンを確実に除去した。次いで、スラリーをGCによってテストし、1%未満の元のピリジンが残っていることを確認した。次のステップにおいて、tBME溶媒層を水で洗浄し、次いで、1N重炭酸ナトリウム、そして最後にもう1回水で洗浄した。その後、含水率が0.2%未満になるまで有機層を共沸蒸留した。この結果を達成するために、蒸留プロセスでtBMEを3回充填した。
【0070】
次に、0.7kgのトリエチルアミンを、前のプロセスによって得られた冷却した(−5℃)tBME溶液に添加した。次いで、0.84kgの塩化ホスホリル(または、オキシ塩化リンとも称される)をその溶液に添加した。温度は(−5)℃〜0℃の間で変動したが、決して0℃を超えなかった。(−5)℃〜0℃の間の冷却温度でスラリーを2時間撹拌した後、反応を終了させるために約12時間かけて25℃まで温め、薄層クロマトグラフィ(TLC)によって確認した。
【0071】
次のステップにおいて、スラリーが35℃を超えないことを確実にして、30℃〜35℃の範囲に温度を維持しながら、5kgの水でスラリーを反応停止させた。次いで、先に進む前に、さらに5kgの水でスラリーを洗浄した。次に、蒸留によって、溶媒(主にtBME)をヘプタンに交換した。さらに2回ヘプタンを充填した後、GCによって確認したところ、tBMEの濃度は1%未満であった。その後、メタノール中5%の水3Lを添加することによって、生成物(1,3−ジピバロイルグリセリルリン酸)をヘプタン層から除去した。次いで、生成物を含有するメタノール層を、5kgのヘプタンに2回曝露することによって抽出し、生成物にトリピバレート不純物による混入がないことを確実にした。TLCおよび水素核磁気共鳴(H NMR)によって確認したところ、トリピバレート不純物のレベルは5%未満であった。
【0072】
トリピバレートの濃度が5%未満であることを確認してから、水メタノール溶液を50%水酸化ナトリウムで処理して、pHを12〜13のレベルまで上昇させた。pHが約30分間安定した後、pHレベルを12〜13に維持しながら、スラリーの温度を65℃まで上昇させた。追加量の50%水酸化ナトリウムをスラリーに添加し、1位および3位から保護アシル基を除去した。反応が終了したと見なされるまで、H NMRによって反応を監視した。
【0073】
H NMRによって終了が確認されてから、スラリーを0℃まで冷却し、1〜3マイクロメートルのポリパッドを通して吸引濾過した。その後、2℃〜5℃で濾過を実施して濾過率を向上させた。濾液を乾燥および分析し、1.5kgの粗生成物を得た。4.75kgのメタノールおよび0.25Lの水(メタノール中5%の水)の中で、粗生成物を室温で1時間スラリー化した。最後に、スラリー化した生成物を、再度1〜3マイクロメートルのポリパッドを通して吸引濾過し、乾燥し、分析して、1.45kgの生成物を生成した。
【0074】
このように、上記プロセスに従って1kgのグリセロールを反応させ、高純度の、商品として望ましいβ−グリセロールリン酸(グリセロール2−リン酸二ナトリウム塩水和物)1.45kgを生成した。
実施例2:β−グリセロールリン酸の大規模な生成
【0075】
以下の実施例を、大規模なプロセスの効率をテストするために実施した。まず、ピリジン中のグリセロール12.7kgおよびtBMEを、38.1kgの2,2−ジメチルプロパノイル塩化物(塩化ピバロイル)と反応させた。温度が0℃を超えて上昇しないことを確実にして、(−5)℃〜0℃の範囲で温度を維持しながら、反応を行った。GCによって確認されるように、反応が終了した後、6N HClでスラリーを反応停止させ、その後、6N HClでさらに3回洗浄し、ピリジンを除去した。GCによって確認されるように、一旦、ピリジンの濃度が1%未満になってから、残りのtBME溶媒層を水および1N重炭酸ナトリウムで洗浄した。濃度が0.2%未満になるまで、tBMEを3回充填することによって水層を共沸蒸留した。
【0076】
次のステップにおいて、12.9kgのTEAを、前のプロセスによって得られた冷却((−5)℃)tBME溶液に添加した。その後、温度を確実に(−5)℃〜0℃の範囲で維持しながら、18.45kgの塩化ホスホリルを徐々にスラリーに添加した。スラリーを2時間撹拌した後、TLCによって確認しながら、反応の残りのために(約13時間)25℃まで温めた。
【0077】
終了後、30℃〜35℃の範囲の温度で、42kgの水でスラリーを反応停止させた。その後、30〜45kgの水上で、反応スラリーをさらに3サイクル反応停止させた。次のステップにおいて、蒸留により、tBMEをヘプタンに交換した。最初の蒸留およびさらに2回ヘプタンを充填した後、1%未満のtBME残留濃度を達成した。次いで、メタノール中5%の水54Lを使用して生成物をヘプタン層から抽出した。トリピバレート不純物をさらに排除するために、ヘプタンを用いて、生成物を含有する水メタノール層およびトリピバレート不純物をさらに2回抽出した(各抽出サイクルは約26〜28kgのヘプタンから構成される)。トリピバレート不純物が5%未満であることをTLCによって確認してから、溶液を濾過して溶液中の濁りを除去した。
【0078】
次に、pHが12〜13のレベルに上昇するまで、生成物および5%未満のトリピバレート不純物を含有する水メタノール層を50%水酸化ナトリウムで処理した。次に、pHを12〜13の範囲で維持しながら、スラリーを65℃まで加熱した。pHが12未満まで低下した場合、追加の50%水酸化ナトリウムを用いて、溶液を所望のpH範囲まで回復させた。反応の終了については、H NMRによって反応を監視し、終了してから0℃まで冷却した。
【0079】
一旦、スラリーが0℃に達してから、遠心分離によって濾過し、乾燥および分析した。合計28.9kgの粗生成物を単離し、58kgのメタノールおよび8Lの水を用いて、室温で約5時間スラリー化した。処理後の生成物を、Nutsche加圧フィルタを通して濾過し、乾燥し、分析して、20.6kgの生成物を生成した。
【0080】
このように、上記プロセスに従って12.7kgのグリセロールを反応させ、20.6kgのβ−グリセロールリン酸(グリセロール2−リン酸二ナトリウム塩水和物)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(VI)を含む化合物を調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、以下の反応スキームに従って、
【化1】


(a)式(I)を含む化合物を、Rを含む保護剤と接触させて、式(II)を含む化合物を形成するステップと、
(b)前記式(II)を含む化合物を、プロトン受容体の存在下で、Zを含むリン酸化剤と接触させて、式(III)を含む化合物を形成するステップと、
(c)前記式(III)を含む化合物を、水と接触させて、式(IV)を含む化合物およびHZを形成するステップと、
(d)前記式(IV)を含む化合物を、少なくとも1個の金属イオン(M)を含むプロトン受容体と接触させて、式(V)を含む化合物を形成するステップと、
(e)前記式(V)を含む化合物を脱保護して、式(VI)を含む化合物を形成するステップと、を含み、式中、
は、保護基であり、
Zは、ハロゲンであり、
Mは、IA族、IIA族、および遷移金属イオンからなる群より選択される、プロセス。
【請求項2】
は、アシル、ベンジル、および置換ベンジルからなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
化合物(I)の前記保護剤に対するモル比は、約1:2〜約1:3であり、ステップAの前記反応は、約−10℃〜約5℃の温度で、かつ有機溶媒の存在下で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記式(II)を含む化合物のα異性体の量は、前記式(II)を含む化合物の量の約5重量%未満である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記リン酸化剤は、O=P(Z)(X)およびP(Z)からなる群より選択され、式中、Zは、ハロゲンであり、Xは、Zおよび{−}ORからなる群より独立して選択され、Rは、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルからなる群より選択され、変数nは、3〜5の整数である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記リン酸化剤は、オキシ塩化リンであり、ステップBの前記プロトン受容体は、アルキルアミン塩基、置換ピリジン、および無機塩基からなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
化合物(II)の前記リン酸化剤に対するモル比は、約1:1〜約1:1.1であり、ステップBの前記反応は、約0℃を超えない温度で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップBの前記反応混合物は、前記反応が終了した後、かつステップCにおける前記水の添加の前に、約15℃〜約30℃の温度まで加熱される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップCの前記反応混合物中に、水の量が、少なくとも約20重量%含まれ、前記反応は、約20℃〜約35℃の温度で実施される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記水の添加により、第1の分配ステップが行われるように有機相および水相の形成がなされ、前記有機相は、前記式(IV)を含む化合物を含み、前記水相は、HZを含み、続いて、前記反応混合物から前記水相が除去される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1の分配ステップおよび前記水相の前記除去は、前記反応混合物が約5を超えるpHを有するまで繰り返される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
非極性炭化水素溶媒および水混和性極性炭化水素溶媒を添加することによる、ステップCの前記反応混合物の2つの不混和性有機相への第2の分配ステップをさらに含み、前記式(IV)を含む化合物が、前記極性炭化水素溶媒中に存在し、少なくとも1つの有機副生物が、前記非極性炭化水素溶媒中に存在し、続いて、前記反応混合物から前記非極性炭化水素溶媒相が除去される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記有機副生物は、三重保護された式(I)を含む化合物を含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記非極性炭化水素溶媒は、ヘプタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、およびシクロペンタンからなる群より選択され、前記極性炭化水素溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、およびアセトニトリルからなる群より選択される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
ステップDの前記プロトン受容体は、金属水酸化物、金属重炭酸塩、金属炭酸塩からなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
ステップDの前記プロトン受容体は、前記反応混合物の前記pHが約11を超えるような量で前記反応混合物に添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
ステップDの前記プロトン受容体は、約40%〜約60%の濃度で水酸化ナトリウムを含み、前記反応は、約60℃〜約80℃の温度で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記脱保護反応は、加水分解および水素化分解からなる群より選択される方法によって、前記式(V)を含む化合物から前記R基を除去することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記式(VI)を含む化合物は、アルコール中に約5%〜約15%の水を含む溶媒を添加し、続いて、前記反応混合物を濾過することによって、ステップEの前記反応混合物から単離される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
は、アシル、ベンジル、および置換ベンジルからなる群より選択され、化合物(I)の前記保護剤に対するモル比は、約1:2〜約1:3であり、ステップAの前記反応は、約−10℃〜約5℃の温度で実施され;ステップBの前記プロトン受容体は、アルキルアミン塩基、置換ピリジン、および無機塩基からなる群より選択され;化合物(II)のリン酸化剤に対するモル比は、約1:1〜約1:1.1であり、ステップBの前記反応は、約0℃を超えない温度で実施され;ステップBの前記反応混合物は、前記反応が終了した後、かつステップCにおける前記水の添加の前に、約15℃〜約30℃の温度まで加熱され;ステップCの前記反応混合物中に、前記水の量が、少なくとも約20重量%含まれ、前記反応は、約20℃〜約35℃の温度で実施され;ステップDの前記プロトン受容体は、前記反応混合物の前記pHが約11を超えるような量で前記反応混合物に添加され、前記反応は、約60℃〜約80℃の温度で行われ;ステップEは、加水分解および水素化分解からなる群より選択される方法を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
ステップCにおける前記水の添加により、第1の分配ステップが行われるように有機相および水相の形成がなされ、前記有機相は、前記式(IV)を含む化合物を含み、前記水相は、HZを含み、続いて、前記反応混合物から前記水相が除去される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記第1の分配ステップおよび前記水相の前記除去は、前記反応混合物が約5を超えるpHを有するまで繰り返される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
非極性炭化水素溶媒および水混和性極性炭化水素溶媒を添加することによる、ステップCの前記反応混合物の2つの不混和性有機相への第2の分配ステップをさらに含み、前記式(IV)を含む化合物が、前記極性炭化水素溶媒中に存在し、少なくとも1つの有機副生物が、前記非極性炭化水素溶媒中に存在し、続いて、前記反応混合物から前記非極性炭化水素溶媒相が除去される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記有機副生物は、式(I)を含む三重保護化合物を含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記非極性炭化水素溶媒は、ヘプタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、およびシクロペンタンからなる群より選択され、前記極性炭化水素溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、およびアセトニトリルからなる群より選択される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項26】
は、ピバロイル、ベンジル、ベンジルオキシ、アダマンタノイル、メシトイル、およびアセチルからなる群より選択され、ステップBの前記プロトン受容体は、トリエチルアミンであり、前記リン酸化剤は、オキシ塩化リンであり、Zは、塩化物であり、ステップDの前記プロトン受容体は、水酸化ナトリウムである、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
ステップAにおいて添加される前記有機溶媒は、t−ブチルメチルエーテルであり、ステップCの前記第2の分配ステップの前記非極性炭化水素溶媒は、ヘプタンであり、ステップCの前記第2の分配ステップの前記極性炭化水素溶媒は、メタノールである、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
は、ピバロイル、ベンジル、およびベンジルオキシからなる群より選択される、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
は、アシル、ベンジル、および置換ベンジルからなる群より選択され、ステップBの前記プロトン受容体は、トリエチルアミンであり、前記リン酸化剤は、オキシ塩化リンであり、Zは、塩化物であり、ステップDの前記プロトン受容体は、水酸化ナトリウムである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項30】
は、ピバロイル、ベンジル、ベンジルオキシ、アダマンタノイル、メシトイル、およびアセチルからなる群より選択される、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記式(VI)を含む化合物の収率は、少なくとも約40%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項32】
前記式(VI)を含む化合物のβ異性体の量は、式(VI)を含む化合物の量の約99重量%を超える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項33】
前記式(VI)を含む化合物のα異性体の量は、式(VI)を含む化合物の量の約1重量%未満である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項34】
式(VI)を含む化合物を調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、以下の反応スキームに従って、
【化2】


(a)式(II)を含む化合物を、プロトン受容体の存在下で、Zを含むリン酸化剤と接触させて、式(III)を含む化合物を形成するステップと、
(b)前記式(III)を含む化合物を、水と接触させて、式(IV)を含む化合物およびHZを形成するステップと、
(c)前記式(IV)を含む化合物を、少なくとも1個の金属イオン(M)を含むプロトン受容体と接触させて、式(V)を含む化合物を形成するステップと、
(d)前記式(V)を含む化合物を脱保護して、式(VI)を含む化合物を形成するステップと、を含み、式中、
は、保護基であり、
Zは、ハロゲンであり、
Mは、IA族、IIA族、および遷移金属イオンからなる群より選択される、プロセス。
【請求項35】
は、アシル、ベンジル、および置換ベンジルからなる群より選択される、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記リン酸化剤は、O=P(Z)(X)およびP(Z)からなる群より選択され、式中、Zは、ハロゲンであり、Xは、Zおよび{−}ORからなる群より独立して選択され、Rは、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルからなる群より選択され、変数nは、3〜5の整数である、請求項34に記載のプロセス。
【請求項37】
前記リン酸化剤は、オキシ塩化リンであり、ステップBの前記プロトン受容体は、アルキルアミン塩基、置換ピリジン、および無機塩基からなる群より選択される、請求項34に記載のプロセス。
【請求項38】
化合物(II)の前記リン酸化剤に対するモル比は、約1:1〜約1:1.1であり、ステップBの前記反応は、約0℃を超えない温度で、かつ有機溶媒の存在下で実施される、請求項34に記載のプロセス。
【請求項39】
ステップBの前記反応混合物は、前記反応が終了した後、かつステップCにおける前記水の添加の前に、約15℃〜約30℃の温度まで加熱される、請求項34に記載のプロセス。
【請求項40】
ステップCの前記反応混合物中に、水の量が、少なくとも約20重量%含まれ、前記反応は、約20℃〜約35℃の温度で実施される、請求項39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記水の添加により、第1の分配ステップが行われるように有機相および水相の形成がなされ、前記有機相は、前記式(IV)を含む化合物を含み、前記水相は、HZを含み、続いて、前記反応混合物から前記水相が除去される、請求項40に記載のプロセス。
【請求項42】
前記第1の分配ステップおよび前記水相の前記除去は、前記反応混合物が約5を超えるpHを有するまで繰り返される、請求項41に記載のプロセス。
【請求項43】
非極性炭化水素溶媒および水混和性極性炭化水素溶媒を添加することによる、ステップCの前記反応混合物の2つの不混和性有機相への第2の分配ステップをさらに含み、前記式(IV)を含む化合物が、前記極性炭化水素溶媒中に存在し、少なくとも1つの有機副生物が、前記非極性炭化水素溶媒中に存在し、続いて、前記反応混合物から前記非極性炭化水素溶媒相が除去される、請求項42に記載のプロセス。
【請求項44】
前記有機副生物は、式(I)を含む三重保護化合物を含む、請求項43に記載のプロセス。
【請求項45】
前記非極性炭化水素溶媒は、ヘプタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、およびシクロペンタンからなる群より選択され、前記極性炭化水素溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、およびアセトニトリルからなる群より選択される、請求項43に記載のプロセス。
【請求項46】
ステップDの前記プロトン受容体は、金属水酸化物、金属重炭酸塩、金属炭酸塩からなる群より選択される、請求項34に記載のプロセス。
【請求項47】
ステップDの前記プロトン受容体は、前記反応混合物の前記pHが約11を超えるような量で前記反応混合物に添加される、請求項34に記載のプロセス。
【請求項48】
ステップDの前記プロトン受容体は、約40%〜約60%の濃度で水酸化ナトリウムを含み、前記反応は、約60℃〜約80℃の温度で行われる、請求項34に記載のプロセス。
【請求項49】
前記脱保護反応は、加水分解および水素化分解からなる群より選択される方法によって、前記式(V)を含む化合物から前記R基を除去することを含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項50】
は、アシル、ベンジル、および置換ベンジルからなる群より選択され、ステップBの前記プロトン受容体は、アルキルアミン塩基、置換ピリジン、および無機塩基からなる群より選択され;化合物(II)のリン酸化剤に対するモル比は、約1:1〜約1:1.1であり、ステップBの前記反応は、約0℃を超えない温度で実施され;ステップBの前記反応混合物は、前記反応が終了した後、かつステップCにおける前記水の添加の前に、約15℃〜約30℃の温度まで加熱され;ステップCの前記反応混合物中に、前記水の量が、少なくとも約20重量%含まれ、前記反応は、約20℃〜約35℃の温度で実施され;ステップDの前記プロトン受容体は、前記反応混合物の前記pHが約11を超えるような量で前記反応混合物に添加され、前記反応は、約60℃〜約80℃の温度で行われ;ステップEは、加水分解および水素化分解からなる群より選択される方法を含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項51】
有機相および水相を形成するために、前記反応が終了した時に、ステップCの前記反応混合物に有機溶媒を添加することによって、第1の分配ステップ行うことをさらに含み、前記有機相は、前記式(IV)の化合物を含み、前記水相は、HZを含み、続いて、前記反応混合物から前記水相が除去される、請求項50に記載のプロセス。
【請求項52】
前記第1の分配ステップおよび前記水相の前記除去は、前記反応混合物が約5を超えるpHを有するまで繰り返される、請求項51に記載のプロセス。
【請求項53】
非極性炭化水素溶媒および水混和性極性炭化水素溶媒を添加することによる、ステップCの前記反応混合物の2つの不混和性有機相への第2の分配ステップをさらに含み、前記式(IV)を含む化合物が、前記極性炭化水素溶媒中に存在し、少なくとも1つの有機副生物が、前記非極性炭化水素溶媒中に存在し、続いて、前記反応混合物から前記非極性炭化水素溶媒相が除去される、請求項52に記載のプロセス。
【請求項54】
前記非極性炭化水素溶媒は、ヘプタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、およびシクロペンタンからなる群より選択され、前記極性炭化水素溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、およびアセトニトリルからなる群より選択される、請求項53に記載のプロセス。
【請求項55】
は、ピバロイル、ベンジル、ベンジルオキシ、アダマンタノイル、メシトイル、およびアセチルからなる群より選択され、ステップBの前記プロトン受容体は、トリエチルアミンであり、前記リン酸化剤は、オキシ塩化リンであり、Zは、塩化物であり、ステップDの前記プロトン受容体は、水酸化ナトリウムである、請求項54に記載のプロセス。
【請求項56】
ステップBにおいて添加される前記有機溶媒は、t−ブチルメチルエーテルであり、ステップCの前記第2の分配ステップの前記非極性炭化水素溶媒は、ヘプタンであり、ステップCの前記第2の分配ステップの前記極性炭化水素溶媒は、メタノールである、請求項55に記載のプロセス。
【請求項57】
は、アシル、ベンジル、および置換ベンジルからなる群より選択され、ステップBの前記プロトン受容体は、トリエチルアミンであり、前記リン酸化剤は、オキシ塩化リンであり、Zは、塩化物であり、ステップDの前記プロトン受容体は、水酸化ナトリウムである、請求項34に記載のプロセス。
【請求項58】
は、ピバロイル、ベンジル、ベンジルオキシ、アダマンタノイル、メシトイル、およびアセチルからなる群より選択される、請求項57に記載のプロセス。
【請求項59】
前記式(VI)を含む化合物の前記収率は、少なくとも約40%である、請求項34に記載のプロセス。
【請求項60】
前記式(VI)を含む化合物のβ異性体の量は、式(VI)を含む化合物の量を約99重量%超える、請求項34に記載のプロセス。
【請求項61】
前記式(VI)を含む化合物のα異性体の量は、式(VI)を含む化合物の量の約1重量%未満である、請求項34に記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−514647(P2012−514647A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545446(P2011−545446)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/020456
【国際公開番号】WO2010/080969
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(598169572)シグマ−アルドリッチ・カンパニー、エルエルシー (31)
【Fターム(参考)】