β−1,3−グルカン/色素分子複合体とその製造方法
【課題】 色素化合物を水中に安定に分散させ且つ会合体の構造を制御する新しい技術を開発して有用材料を提供する。
【解決手段】 色素分子をβ-1,3-グルカン(シゾフィランなど)と複合体化することによって会合体を形成させる。その複合体化に際して、色素分子とβ-1,3-グルカンとをアルカリ水溶液に溶解した後に中和するか、またはDMSOのような非プロトン性極性溶媒に溶解した後に水を添加するかにより、H型またはJ型の会合体へ制御することができる。
【解決手段】 色素分子をβ-1,3-グルカン(シゾフィランなど)と複合体化することによって会合体を形成させる。その複合体化に際して、色素分子とβ-1,3-グルカンとをアルカリ水溶液に溶解した後に中和するか、またはDMSOのような非プロトン性極性溶媒に溶解した後に水を添加するかにより、H型またはJ型の会合体へ制御することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素化合物由来の複合体とその製造方法に関し、特に、各種電子材料および光記録媒体等の分野で有用な分子配向の制御技術とそれに適した物質を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光磁気情報の記録表示材料分野における進展は著しく、その中で有機色素分子(有機色素化合物)が各種デバイスの材料として注目をされている。
【0003】
有機色素分子は一般に、会合体を形成することにより本来の電子スペクトルに変化が生じ、会合の形態に応じて、より短波長側あるいはより長波長側に吸収極大を持つスペクトルを与え、色調を変化させることが知られている。色素の会合体形成により吸収波長が変化する材料に関する報告として、例えば、(a)有機系ポリマーである液晶ポリマー(λmax =410nmへシフト)が、Macromolecules 33. 6815-6823(2000)に報告されている。(b)メロシアニン色素(λmax=503nmへシフト)を酸化チタン等へドープしたものが、J. Am. Chem. Soc. 118,
5420-5431(1996)に報告されている。(c)ゾルゲル法による薄膜材料として、ローダミン色素(λmax=525nmへシフト)を用いたものが、Chem. Phys. Lett. 233, 424-429(1995)や、J. Phys. Chem. B 101 3680-3687(1997)に報告されている。(d)アゾベンゼン誘導体を色素として用いたものでは、Chem. Phys. Lett. 245, 36-40(1995)、Opt. Mater. 15, 279-284(2001)、Opt. commun. 198, 207-215(2001)等に報告がある。
【0004】
有機色素の会合体の中で、青紫色半導体レーザーの波長である400nm付近に極大吸収を示すH型会合体に関しては、光磁気記録用材料の高密度化への応用などが追及されている。また、600nm付近に極大吸収を示すビスアゾメチン色素のJ型会合体は、大きな非線形光学応答や高い光電変換効率を有する光応答の増感色素として知られている(特許文献1)。J会合性を有するシアニン色素がハロゲン化銀写真感光材料に適すること(特許文献2)、同様にJ会合性を有する擬イソシアニンを使った分子配向型ナノフォトニック結晶デバイスの製造法も報告されている(特許文献3)。
【0005】
しかしながらこれまで、H型会合体に関しては吸収係数が低いという問題が指摘されており、J型会合体についても安定な薄膜を作ることの困難さなどが言われている。
【0006】
色素分子には各種のタイプがあり、それぞれについて性能向上の試みがなされつつある。近年、DVD等の光記録材料に多用されるようになったアゾ色素の場合、例えば、珪素アルコキシドと有機アゾ色素との二元系材料とすることでH型会合の吸収係数を向上させる(特許文献4)、ピリジル基とカルボキシル基をもつ両性アゾ化合物として分子間水素結合により自己組織化をはかリJ型会合を安定化させる(非特許文献1および2、特許文献5)などの試みが報告されている。
【特許文献1】特開2005−243866
【特許文献2】特開2005−099088
【特許文献3】特開2005−345741
【特許文献4】特開2003−277642
【非特許文献1】Ken’ichi Aoki, Masaru Nakagawa, and Kunihiro Ichimura; J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 10997-11004
【非特許文献2】MasaruNakagawa, Daisuke Ishii, Ken’ichi Aoki,Takahiro Seiki, and Tomokazu Iyoda; Ad. Mater., 2005, 17, No.2 200-205
【特許文献5】特開2004−83414
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、色素化合物を水中に安定に分散させ且つ会合体の構造を制御する新しい技術を開発して有用材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従えば、色素化合物を多糖類の一種であるβ-1,3-グルカンと複合体化させる条件を選定することにより、H型もしくはJ型会合体への配向を制御することが可能である。適切な色素化合物として、例えば、ピリジル基とカルボキシル基を有する両親媒性のアゾ化合物が用いられる。新規に合成した4−[4−ピリジルアゾ−N−メチルアニリノ−N'−メチル]−安息香酸は好適に使用される例として挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
色素化合物をβ-1,3-グルカンと複合体化させる条件を選定するのみで、H型もしくはJ型の会合体を形成させることが可能である。また、生成する複合体は水中に安定に分散し、薄膜形成等に有利に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
色素化合物には、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素など多数の種類があり、それらが、本特許の適用対象となりうる。
【0011】
如上の色素化合物(色素分子)のうち本発明で用いられる色素分子は、分子が配列・会合するのに好適な形状および官能基によって特徴づけられる。すなわち、本発明において用いられる色素分子は、分子内に双極子および/または分子間に水素結合能を有するものである。例えば、分子中にピリジル基とカルボキシル基が存在すると、分子間に水素結合を形成させ、一次元的に色素分子が配列・会合する目的にとって一般に有効である。また、分子内に電子を供与する部分と電子を吸引する部分の存在に起因する双極能がある分子についても、静電的な相互作用を受けた場合などに配列化、会合化が起こりやすい。
【0012】
かくして、本発明で用いられるのに好ましい色素分子として、例えば、ピリジル基とカルボキシル基を有するアゾ化合物が挙げられ、特に好適な色素の一例として、本発明者により新規に合成された下記の式(1)で表わされる4−[4−ピリジルアゾ−N−メチルアニリノ−N'−メチル]−安息香酸(1)を挙げることができる。本新規化合物は、図1に示すスキームで合成し、その配列化・制御を確認したもので、ピリジン環のNによる電子吸引とアミノ基による電子供与に基づく双極子を有し、かつ両端のピリジル基とカルボキシル基による分子間水素結合性を示す化合物である。
【0013】
【化1】
【0014】
本発明において色素化合物と複合体化させるのに用いられるβ-1,3-グルカンは、多糖の一種であり、天然の状態では3重螺旋構造をとっているが、強アルカリ性の溶液中やジメチルスルホキシド(DMSO)などの非プロトン性極性溶媒中では、1本鎖に解離している。その状態のものを中性の水中に移すと、3重螺旋状態に戻ることが知られている。また、その際、1本鎖のDNAやRNAを共存させると、多糖2本と核酸1本が水素結合および疎水性相互作用の働きによって3重螺状の複合体となることが本発明者らによって見出されている。多糖単独で3重螺旋状に戻るか、または核酸やカーボンナノチューブのような他の物質と複合体化するかの選択は、接触・混合の方法やDMSO水溶液の組成などの要因によっても影響を受ける。
【非特許文献3】櫻井、新海;J. Am.Chem. Soc., 2000, 122, 4520
【非特許文献4】木村、甲元、櫻井、新海;Chem.Lett., 2000, 1242
【特許文献6】PCT/JP00/07875
【特許文献7】PCT/JP02/02228
【0015】
β-1,3-グルカン以外にもアミロース、プルランなどのα-1,4-グルカン、ならびにα-1,4-グルカンとα-1,3-グルカンの混合系であるデキストランなどがあり、それらの多糖類も色素分子と若干ながら複合体化する能力を有しているが、好ましいのはβ-1,3-グルカンである。この多糖は、主鎖がβ1→3グルコシド結合により結合された多糖であり、側鎖に糖残基(グルコース残基)の存在する割合(側鎖の糖残基置換率)の異なる各種のものが知られている。側鎖がないカードランおよび側鎖の糖残基による置換率が数百分の1程度と小さいパーキマンとラミナランなど側鎖置換率が低いβ-1,3-グルカンは、水溶性に乏しく、使いづらいところがあるが、致命的なものではない。一方、シゾフィラン、スクレログルカンおよびレンチナンは側鎖の糖置換率が33-40%と比較的高く、水溶性で、一般に利用し易い。本発明において使用する場合も、側鎖の糖置換率が約30%以上の後者のものが好適である。なお、平均分子量は広範囲のものが使用可能であるが、1本鎖の状態で、約25000程度以上のものが好適である。
【0016】
なお、天然のβ-1,3-グルカンの一つであるシゾフィラン(SPG)は筋肉内注射製剤の臨床薬として実際に使用されており、婦人科癌に対する免疫増強法の筋肉内注射薬として20年以上の使用実績がある。さらに、免疫系の抗原提示細胞への親和性が知られており、生体内での安全性が確認されている。それらの特性は、色素分子を水溶化して、例えば、バイオテクノロジーにおけるデバイスとしての応用などを考慮する場合には重要な特性であると考えられる。複合体溶液で所定部位に色素分子を送達した後に、用いた多糖を除く必要がある場合、酸処理や分解酵素処理などの方法で目的を達成することも可能である。
【非特許文献6】McIntire, T.M., Brant, D. A.;J. Am. Chem.Soc., 1998, 120, 6909
【非特許文献7】清水、陳、荷見、増淵;Biotherapy, 1990, 4, 1390
【非特許文献8】長谷川;Oncology and Chemotherapy, 1992,8, 22
【0017】
色素化合物と多糖とを複合体化させるためには、まず天然の状態の多重らせん構造を解離させ、一本のランダムコイル状にする必要がある。解離の条件に2種類あり、その一つは苛性ソーダ水溶液のようなアルカリ水溶液に溶解させるもので、もう一つはジメチルスルホキシド(DMSO)のような非プロトン性極性溶剤に溶解することである。
【0018】
ランダムコイル状の多糖と色素化合物を混合した後、次いで、非プロトン性極性溶媒を用いた場合は水と接触させ、そして、アルカリ水溶液を用いた場合には系内を中性に保持すれば多糖は多重らせんに戻る。その際に共存する色素化合物を巻き込み、ラッピングすることによって、多糖が形成する筒状の疎水性空間の内部に包接された色素化合物が一次元状に配列・会合されるものと考えられる。
【0019】
一般に色素分子配合・会合の仕方にはH型会合体とJ型会合体の二通りが知られている(図8)。H型会合体は、各分子が互いに向きを反対にして並列的に重なることで形成される会合体であり、一方、J型会合体は、各分子の向きは同じであるが、斜めにずれて重なることにより形成される会合体である。単一分散している場合に比べてH型会合が起これば紫外-可視(UV-vis)領域の吸収スペクトルが低波長側にシフトし、J型会合が起これば逆に長波長側へシフトすることで評価される。
【非特許文献9】Kristen C.Hannah and Bruce A. Armitage;Acc. Chem. Res.2004, 37, 845-853
【0020】
色素化合物を多糖で複合化した場合に起こる色素分子の会合はどちらになるのか、またそれを制御できるか、ということが本発明の大きな課題であった。ところが、驚くべきことに、本発明者は、複合体化の前段階として行う3本鎖のβ-1,3-グルカンのランダムコイル状への解離条件の違いによって、正反対のスペクトルシフトが観測され、いずれの会合体へも容易に制御できることを見出した。すなわち、本発明に従えば、アルカリ水溶液で解離する方法(以下、この方法をアルカリ法ということがある)を採ればH型会合へ、DMSOのような非プロトン性極性溶媒で解離する方法(以下、DMSOを用いる方法をDMSO法ということがある)だとJ型会合へ進行する。このように容易に入手可能で、生体に安全な多糖類を使い、かつ簡単な操作で色素の会合状態を変えることによって、微妙な色合いを制御する方法は従来知られていない新規な技術である。
【0021】
本発明に従い、複合体化を行う際は、色素化合物に対してβ-1,3-グルカンを多めに使用する。例えば、既述のアゾ化合物(1)と1本鎖あたり150,000の平均分子量をもつシゾフィラン(SPG)の場合、SPGを10mg/mlに固定し、(1)を0.05mg/ml〜1.0mg/ml程度までの範囲で変動させても、十分に複合体を形成できる。この適正比率はアルカリ法およびDMSO法のどちらでも変わらない。
以下、実施例にて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0022】
アゾ色素の合成 図1に示すスキームで合成した。合成反応の参考にした文献は非特許文献1および2である。
【0023】
化合物2の合成 ジムロート冷却管を取り付けたガラス栓付きの300mL三口丸底フラスコにメチル(4−ブロモメチル)ベンゾエイド(4.7g、20.5mmol)、炭酸ナトリウム(7.9g、74.6mmol)、ヨウ化カリウム(0.77g、4.76mmol)を加え、脱気窒素置換を行った。乾燥DMF(50mL)、メチルアニリン(2.0mL、18.7mmol)を加え、65℃にて24時間加熱攪拌した。TLC(シリカ、クロロホルム/ヘキサン=3/1(v/v))にて、原料の消失と新たなスポットの出現を確認したため、反応を停止した。精製はカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン)で行った。同定はMALDI TOF Massスペクトルおよび、1H NMRスペクトルにて行った(表1:なお、スペクトルの帰属の位置を式(A)に示す)。収量 3.7g、収率 51.8%、MALDI TOF Mass(dithranol positive) [M+H]+=256.1,calcd.[M+H]+=256.13。
【0024】
【表1】
【0025】
【化2】
【0026】
化合物3の合成 85%リン酸(2.0mL)に溶かした4-アミノピリジン(0.37g、1eq.)に亜硝酸ナトリウム(0.25g、1.4eq.)、濃硝酸(1mL)を加えた溶液を調製し、数分間氷浴で静置した。この溶液と化合物3(1.0g、4.71mmol)を30%リン酸水溶液(2.4mL)に溶解させた溶液をよく混合した。300mL丸底フラスコ中でこれら2つの溶液を混合し、氷浴中で3時間磁気攪拌した。TLC(シリカ、クロロホルム/メタノール=50/1(v/v))にて新たなスポットの出現を確認した後、炭酸ナトリウムを加え中和した。吸引ろ過にて沈殿物をろ取し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノール=50/1(v/ v))にて精製を行った。同定はMALDI−TOF−Massスペクトル、1H NMRスペクトルにて行った(表2:なお、スペクトルの帰属の位置を式(B)に示す)。収量123.3mg、収率7.1%、MALDI−TOF−Mass(dithranol
positive) [M+H]+=361.16, calcd.[M+H]+=361.2。
【0027】
【表2】
【0028】
【化3】
【0029】
アゾ色素(1):4−[4−ピリジルアゾ−N−メチルアニリノ−N'−メチル]−安息香酸
の合成 300mL丸底フラスコ中で化合物3(76mg、0.2mmol)をTHF(17mL)に溶解させ、メタノール/2N水酸化カリウム水溶液(4/1(v/v)) (20mL)を加え、2時間還流した。TLC(シリカ、メタノール/クロロホルム=1/10(v/ v))にて原料の消失と新たなスポットの出現を確認した後、反応溶液を水で希釈し、クロロホルムで抽出を行った。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。吸引ろ過によって無水硫酸ナトリウムを除去し、溶媒を減圧留去して赤色固体を得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、メタノール/クロロホルム=1/10(v/v))にて精製を行った。同定はMALDI-TOF-Massスペクトル、1H
NMRスペクトルにより行った(表3:なお、スペクトルの帰属の位置を式(C)に示す)。収量29mg、収率41.2%、MALDI-TOF- Mass (dithranol positive) [M+H]+=347.07、calcd.[M+H]+=347.1。
【0030】
【表3】
【0031】
【化4】
【実施例2】
【0032】
アルカリ法によるアゾ色素とSPGの複合化 アゾ色素(1)のアルカリ溶液と多糖のアルカリ溶液をよく混合した。これに酢酸水溶液を加え一気に中和したサンプルを作成した。多糖はβ-1,3-グルカンに属するSPG(1本鎖に解離した状態のもので、s-SPGと記述する場合あり)の他に、多糖無し、β-1,3-グルカン以外のアミロース以下3種、ならびに天然の状態;3本鎖のSPG(中性の水中で存在、t-SPGと記述)のサンプルも同様に調製した。それぞれの溶液を4日間静置した。各サンプルの成分表を表4に示す。
【0033】
【表4】
【実施例3】
【0034】
アルカリ法にて調製したアゾ色素/多糖溶液のUV-vis、CDスペクトル測定 測定条件として、[Azo-Dye]=5.78×10-5M、[SPG]=0.00147M、Vw=80 %、Optical path
length:10mmにて行った。SPG存在、非存在の溶液に対してUV-vis、CDスペクトル測定を行った。結果を図2((A):UV-vis、(B):CD)に示した。単一分子分散しているDMSOに溶解したアゾ色素のUV-visスペクトルと比較するとアゾ色素はアルカリ法にて調製を行った場合、446nmから417nmへとブルーシフトしていた。この結果は、アルカリ法で調製した場合、アゾ色素同士の水素結合が機能しにくいことからもπ−πスタッキングによってH会合していると考えられる。
【0035】
多糖の種類を変えて得られた溶液のUV-visおよびCDスペクトルの結果は図3(A)および(B)に示した。各溶液のUV-visスペクトルの極大吸収波長に変化はなかったが、吸収強度はSPGの存在している溶液が他の多糖の溶液に比べて大きくなっていた。このことからアゾ色素はSPGが存在することによって水への溶解性が高まったことがわかる。また、CDスペクトルにはSPG有りの溶液にのみ誘起CDが見られた。このことからアゾ色素とSPGが相互作用していることが認められた。
【実施例4】
【0036】
DMSO法によるアゾ色素とSPGの複合化 アゾ色素DMSO溶液と多糖DMSO溶液をよく混合した。これに水1800μLを加えたサンプル(Vw=80%)を調製した。また多糖無しの溶液も同様に調製した。各溶液を4日間静置した。各サンプルの成分表を表5に示した。
【0037】
【表5】
【実施例5】
【0038】
DMSO法にて調製したアゾ色素/多糖溶液のUV-visスペクトル測定 実施例3と同じ条件で測定したUV-visスペクトルの結果を図4(A)に示した。各溶液の極大吸収波長に変化はなくSPGの存在の有無に関わらず吸光度の違いは見られなかった。しかし、CDスペクトル図4(B)にはSPG有りの溶液のみに誘起CDが確認された。このことからSPGとアゾ色素が何らかの相互作用をしていると考えられる。
【0039】
SPGと他の多糖を用いた溶液の間にUV-visスペクトルの極大吸収波長、吸光度の大きさに違いは確認されなかった(図5(A))。しかし、CDスペクトルの測定結果(図5(B))からはSPGの存在下で調製を行った溶液のみに誘起CDが確認されたことからSPGとアゾ色素はDMSO法にて調製した場合にも、SPGと特異的に何らかの相互作用をしているようであった。
【実施例6】
【0040】
アルカリ法とDMSO法の各溶液のスペクトル比較 アルカリ法とDMSO法それぞれの調製法で調製した溶液から得られたUV-visスペクトルと単一分子分散しているDMSO中でのアゾ色素のUV-visスペクトルの比較を行った結果を図6に、両溶液のモノクロ写真を図7に示した。
【0041】
図6よりアルカリ法ではH会合に由来する極大吸収波長のブルーシフト(低波長側にシフト)、DMSO法ではJ会合に由来するレッドシフト(長波長側にシフト)という対照的な結果が得られた(図8:両会合のイメージ参照)。また、それぞれに対しSPGと相互作用を示す誘起CDが現れている。なお、H会合体においては、放置しておくと凝集・沈殿しやすいが、SPGが存在することによってきれいに溶解するという効果が確認された。
【0042】
異なる会合形態をとるDMSO法とアルカリ法にて調製されたアゾ色素について、どちらも限外ろ過(3000G, 30 min.×2)を行い、溶媒を水に置換した。その後、UV-visスペクトルを測定し、図9の結果を得た。溶媒を水に置換してもそれぞれの手段にて調製した会合体は各会合形態を保持していた。
【実施例7】
【0043】
TEM及びAFM観察 モルフォロジーの面からSPG会合体形状への影響を見るためにTEMおよびAFM観察を行った。TEM、AFM観察の溶液には実験4にて用いたSPGの存在下において調製したJ会合体(DMSO法)、H会合(アルカリ法)の色素を限外ろ過にて溶媒を水に置換したものを用いた。また、リファレンスとして、SPGの非存在下において調製したJ会合体、H会合体の色素を同様に水へ置換したものも調製した。それぞれをマイカ基盤、またカーボン支持膜TEMグリッドにキャストし、AFM、TEM観察を行った。図10〜13に示した像を見ると、DMSO法、アルカリ法共にSPG無しの溶液には大きなダマ状になった色素(高さ30〜40 nm程度)ばかりが見られた。特にアルカリ法においてはSPG非存在下では会合が大きくなりすぎ沈殿してくるためAFMの検出限界を超えていた。しかし、SPG存在下にて調製を行った溶液にはほとんどダマ状の色素は見られずAFMではSPGのものであると思われる高さ1.2 nm程度のファイバーが観察された。また、TEMでは同様のファイバー状化合物がSPG単独のものと比較するとはるかに濃いコントラストにて確認された。このことからこのファイバーにはアゾ色素が含まれていることが判明した。このような結果から、モルフォロジーの観点からは色素は会合体を形成しているものの過剰の会合が抑えられ、会合体がSPGの構造を反映したモルフォロジーをとるという、SPGの効果が確認された。
【実施例8】
【0044】
IR測定による比較 これまでに示してきたDMSO法によるJ会合体とアルカリ法によるH会合体についてより詳しい知見を得るために、IRスペクトルを測定した。SPGの存在下において調製したJ会合(DMSO)、H会合(アルカリ)の色素を限外ろ過にて溶媒を水に置換した。その後、これらの溶液を凍結乾燥することで、それぞれの粉末を得て、粉末のATP−FTIR測定を行った。結果は図14〜18に示した。
【0045】
SPG+アゾ色素の溶液のC-C環状の振動ピークとC-N環状の振動ピーク(1580cm-1付近と、1370cm-1付近)がアゾ色素のみのときと比べてアルカリ法ではブルーシフト、DMSO法ではレッドシフトしていることがわかった。1590→1600cm-1のピリジン部位に由来するピークのシフトというのはカルボン酸部位とピリジン部位の水素結合を示している。これらのことから図8のイメージに示すようにアゾ色素はピリジンとカルボン酸が水素結合し、J会合していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によって得られる複合体は、規則的な色素の配列が存在している環境と異なる環境下に置かれた場合、その配列・会合形態が変化し、色の濃さや色調の変化が生じるため、これを利用したセンシングの開発や有機ディスプレイの開発が期待される。さらに、本発明に従うアゾ色素は分子内に永久双極子を有し、SHG材料(ある吸収波長の2倍の波長の光を放出するというもの)としての可能性も有し、アゾ色素の吸収光と放出光を利用した情報伝達のシステムの構築が可能となるためこれによって現在のネットワーク社会を支える新たなインフォメーションナノデバイスとしての応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】アゾ色素の合成スキームを示す。
【図2】アルカリ法によるアゾ色素溶液のUV-visスペクトル(A)およびCDスペクトル(B)におけるSPG有無の比較(実施例3)を示す。
【図3】アルカリ法によるアゾ色素溶液のUV-visスペクトル(A)およびCDスペクトル(B)における多糖の種類の比較(実施例3)を示す。
【図4】DMSO法によるアゾ色素溶液のUV-visスペクトル(A)およびCDスペクトル(B)におけるSPG有無の比較(実施例5)を示す。
【図5】DMSO法によるアゾ色素溶液のUV-visスペクトル(A)およびCDスペクトル(B)における多糖の種類の比較(実施例5)を示す。
【図6】複合体調製におけるアルカリ法とDMSO法のUV-visスペクトルの比較(実施例6)を示す。
【図7】アゾ色素溶液のモノクロ写真((A):DMSO法、(B):アルカリ法)(実施例6)を示す。
【図8】アゾ色素のH会合とJ会合のイメージ(実施例6)を示す。
【図9】アルカリ法によるアゾ色素溶液の限外ろ過後のUV-visスペクトル(実施例6)を示す。
【図10】DMSO法によるアゾ色素/SPG溶液のTEM像(A)とAFM像(B)(実施例7)を示す。
【図11】DMSO法によるアゾ色素溶液のAFM像(A:SPG有り、B:SPG無し)(実施例7)を示す。
【図12】アルカリ法によるアゾ色素/SPG溶液のTEM像(A)とAFM像(B)(実施例7)を示す。
【図13】アルカリ法によるアゾ色素溶液(SPG無し)のTEM像(A)とAFM像(B)(実施例7)を示す。
【図14】アゾ色素+SPGのIRスペクトル(アルカリ法)(実施例8)を示す。
【図15】アゾ色素+SPGのIRスペクトル(DMSO法)(実施例8)を示す。
【図16】比較のためのSPGのみのIRスペクトル(実施例8)を示す。
【図17】比較のためのアゾ色素のみのIRスペクトル(実施例8)を示す。
【図18】各調製法溶液のC-C環状、C-N環状の振動ピークの比較(実施例8)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素化合物由来の複合体とその製造方法に関し、特に、各種電子材料および光記録媒体等の分野で有用な分子配向の制御技術とそれに適した物質を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光磁気情報の記録表示材料分野における進展は著しく、その中で有機色素分子(有機色素化合物)が各種デバイスの材料として注目をされている。
【0003】
有機色素分子は一般に、会合体を形成することにより本来の電子スペクトルに変化が生じ、会合の形態に応じて、より短波長側あるいはより長波長側に吸収極大を持つスペクトルを与え、色調を変化させることが知られている。色素の会合体形成により吸収波長が変化する材料に関する報告として、例えば、(a)有機系ポリマーである液晶ポリマー(λmax =410nmへシフト)が、Macromolecules 33. 6815-6823(2000)に報告されている。(b)メロシアニン色素(λmax=503nmへシフト)を酸化チタン等へドープしたものが、J. Am. Chem. Soc. 118,
5420-5431(1996)に報告されている。(c)ゾルゲル法による薄膜材料として、ローダミン色素(λmax=525nmへシフト)を用いたものが、Chem. Phys. Lett. 233, 424-429(1995)や、J. Phys. Chem. B 101 3680-3687(1997)に報告されている。(d)アゾベンゼン誘導体を色素として用いたものでは、Chem. Phys. Lett. 245, 36-40(1995)、Opt. Mater. 15, 279-284(2001)、Opt. commun. 198, 207-215(2001)等に報告がある。
【0004】
有機色素の会合体の中で、青紫色半導体レーザーの波長である400nm付近に極大吸収を示すH型会合体に関しては、光磁気記録用材料の高密度化への応用などが追及されている。また、600nm付近に極大吸収を示すビスアゾメチン色素のJ型会合体は、大きな非線形光学応答や高い光電変換効率を有する光応答の増感色素として知られている(特許文献1)。J会合性を有するシアニン色素がハロゲン化銀写真感光材料に適すること(特許文献2)、同様にJ会合性を有する擬イソシアニンを使った分子配向型ナノフォトニック結晶デバイスの製造法も報告されている(特許文献3)。
【0005】
しかしながらこれまで、H型会合体に関しては吸収係数が低いという問題が指摘されており、J型会合体についても安定な薄膜を作ることの困難さなどが言われている。
【0006】
色素分子には各種のタイプがあり、それぞれについて性能向上の試みがなされつつある。近年、DVD等の光記録材料に多用されるようになったアゾ色素の場合、例えば、珪素アルコキシドと有機アゾ色素との二元系材料とすることでH型会合の吸収係数を向上させる(特許文献4)、ピリジル基とカルボキシル基をもつ両性アゾ化合物として分子間水素結合により自己組織化をはかリJ型会合を安定化させる(非特許文献1および2、特許文献5)などの試みが報告されている。
【特許文献1】特開2005−243866
【特許文献2】特開2005−099088
【特許文献3】特開2005−345741
【特許文献4】特開2003−277642
【非特許文献1】Ken’ichi Aoki, Masaru Nakagawa, and Kunihiro Ichimura; J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 10997-11004
【非特許文献2】MasaruNakagawa, Daisuke Ishii, Ken’ichi Aoki,Takahiro Seiki, and Tomokazu Iyoda; Ad. Mater., 2005, 17, No.2 200-205
【特許文献5】特開2004−83414
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、色素化合物を水中に安定に分散させ且つ会合体の構造を制御する新しい技術を開発して有用材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従えば、色素化合物を多糖類の一種であるβ-1,3-グルカンと複合体化させる条件を選定することにより、H型もしくはJ型会合体への配向を制御することが可能である。適切な色素化合物として、例えば、ピリジル基とカルボキシル基を有する両親媒性のアゾ化合物が用いられる。新規に合成した4−[4−ピリジルアゾ−N−メチルアニリノ−N'−メチル]−安息香酸は好適に使用される例として挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
色素化合物をβ-1,3-グルカンと複合体化させる条件を選定するのみで、H型もしくはJ型の会合体を形成させることが可能である。また、生成する複合体は水中に安定に分散し、薄膜形成等に有利に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
色素化合物には、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素など多数の種類があり、それらが、本特許の適用対象となりうる。
【0011】
如上の色素化合物(色素分子)のうち本発明で用いられる色素分子は、分子が配列・会合するのに好適な形状および官能基によって特徴づけられる。すなわち、本発明において用いられる色素分子は、分子内に双極子および/または分子間に水素結合能を有するものである。例えば、分子中にピリジル基とカルボキシル基が存在すると、分子間に水素結合を形成させ、一次元的に色素分子が配列・会合する目的にとって一般に有効である。また、分子内に電子を供与する部分と電子を吸引する部分の存在に起因する双極能がある分子についても、静電的な相互作用を受けた場合などに配列化、会合化が起こりやすい。
【0012】
かくして、本発明で用いられるのに好ましい色素分子として、例えば、ピリジル基とカルボキシル基を有するアゾ化合物が挙げられ、特に好適な色素の一例として、本発明者により新規に合成された下記の式(1)で表わされる4−[4−ピリジルアゾ−N−メチルアニリノ−N'−メチル]−安息香酸(1)を挙げることができる。本新規化合物は、図1に示すスキームで合成し、その配列化・制御を確認したもので、ピリジン環のNによる電子吸引とアミノ基による電子供与に基づく双極子を有し、かつ両端のピリジル基とカルボキシル基による分子間水素結合性を示す化合物である。
【0013】
【化1】
【0014】
本発明において色素化合物と複合体化させるのに用いられるβ-1,3-グルカンは、多糖の一種であり、天然の状態では3重螺旋構造をとっているが、強アルカリ性の溶液中やジメチルスルホキシド(DMSO)などの非プロトン性極性溶媒中では、1本鎖に解離している。その状態のものを中性の水中に移すと、3重螺旋状態に戻ることが知られている。また、その際、1本鎖のDNAやRNAを共存させると、多糖2本と核酸1本が水素結合および疎水性相互作用の働きによって3重螺状の複合体となることが本発明者らによって見出されている。多糖単独で3重螺旋状に戻るか、または核酸やカーボンナノチューブのような他の物質と複合体化するかの選択は、接触・混合の方法やDMSO水溶液の組成などの要因によっても影響を受ける。
【非特許文献3】櫻井、新海;J. Am.Chem. Soc., 2000, 122, 4520
【非特許文献4】木村、甲元、櫻井、新海;Chem.Lett., 2000, 1242
【特許文献6】PCT/JP00/07875
【特許文献7】PCT/JP02/02228
【0015】
β-1,3-グルカン以外にもアミロース、プルランなどのα-1,4-グルカン、ならびにα-1,4-グルカンとα-1,3-グルカンの混合系であるデキストランなどがあり、それらの多糖類も色素分子と若干ながら複合体化する能力を有しているが、好ましいのはβ-1,3-グルカンである。この多糖は、主鎖がβ1→3グルコシド結合により結合された多糖であり、側鎖に糖残基(グルコース残基)の存在する割合(側鎖の糖残基置換率)の異なる各種のものが知られている。側鎖がないカードランおよび側鎖の糖残基による置換率が数百分の1程度と小さいパーキマンとラミナランなど側鎖置換率が低いβ-1,3-グルカンは、水溶性に乏しく、使いづらいところがあるが、致命的なものではない。一方、シゾフィラン、スクレログルカンおよびレンチナンは側鎖の糖置換率が33-40%と比較的高く、水溶性で、一般に利用し易い。本発明において使用する場合も、側鎖の糖置換率が約30%以上の後者のものが好適である。なお、平均分子量は広範囲のものが使用可能であるが、1本鎖の状態で、約25000程度以上のものが好適である。
【0016】
なお、天然のβ-1,3-グルカンの一つであるシゾフィラン(SPG)は筋肉内注射製剤の臨床薬として実際に使用されており、婦人科癌に対する免疫増強法の筋肉内注射薬として20年以上の使用実績がある。さらに、免疫系の抗原提示細胞への親和性が知られており、生体内での安全性が確認されている。それらの特性は、色素分子を水溶化して、例えば、バイオテクノロジーにおけるデバイスとしての応用などを考慮する場合には重要な特性であると考えられる。複合体溶液で所定部位に色素分子を送達した後に、用いた多糖を除く必要がある場合、酸処理や分解酵素処理などの方法で目的を達成することも可能である。
【非特許文献6】McIntire, T.M., Brant, D. A.;J. Am. Chem.Soc., 1998, 120, 6909
【非特許文献7】清水、陳、荷見、増淵;Biotherapy, 1990, 4, 1390
【非特許文献8】長谷川;Oncology and Chemotherapy, 1992,8, 22
【0017】
色素化合物と多糖とを複合体化させるためには、まず天然の状態の多重らせん構造を解離させ、一本のランダムコイル状にする必要がある。解離の条件に2種類あり、その一つは苛性ソーダ水溶液のようなアルカリ水溶液に溶解させるもので、もう一つはジメチルスルホキシド(DMSO)のような非プロトン性極性溶剤に溶解することである。
【0018】
ランダムコイル状の多糖と色素化合物を混合した後、次いで、非プロトン性極性溶媒を用いた場合は水と接触させ、そして、アルカリ水溶液を用いた場合には系内を中性に保持すれば多糖は多重らせんに戻る。その際に共存する色素化合物を巻き込み、ラッピングすることによって、多糖が形成する筒状の疎水性空間の内部に包接された色素化合物が一次元状に配列・会合されるものと考えられる。
【0019】
一般に色素分子配合・会合の仕方にはH型会合体とJ型会合体の二通りが知られている(図8)。H型会合体は、各分子が互いに向きを反対にして並列的に重なることで形成される会合体であり、一方、J型会合体は、各分子の向きは同じであるが、斜めにずれて重なることにより形成される会合体である。単一分散している場合に比べてH型会合が起これば紫外-可視(UV-vis)領域の吸収スペクトルが低波長側にシフトし、J型会合が起これば逆に長波長側へシフトすることで評価される。
【非特許文献9】Kristen C.Hannah and Bruce A. Armitage;Acc. Chem. Res.2004, 37, 845-853
【0020】
色素化合物を多糖で複合化した場合に起こる色素分子の会合はどちらになるのか、またそれを制御できるか、ということが本発明の大きな課題であった。ところが、驚くべきことに、本発明者は、複合体化の前段階として行う3本鎖のβ-1,3-グルカンのランダムコイル状への解離条件の違いによって、正反対のスペクトルシフトが観測され、いずれの会合体へも容易に制御できることを見出した。すなわち、本発明に従えば、アルカリ水溶液で解離する方法(以下、この方法をアルカリ法ということがある)を採ればH型会合へ、DMSOのような非プロトン性極性溶媒で解離する方法(以下、DMSOを用いる方法をDMSO法ということがある)だとJ型会合へ進行する。このように容易に入手可能で、生体に安全な多糖類を使い、かつ簡単な操作で色素の会合状態を変えることによって、微妙な色合いを制御する方法は従来知られていない新規な技術である。
【0021】
本発明に従い、複合体化を行う際は、色素化合物に対してβ-1,3-グルカンを多めに使用する。例えば、既述のアゾ化合物(1)と1本鎖あたり150,000の平均分子量をもつシゾフィラン(SPG)の場合、SPGを10mg/mlに固定し、(1)を0.05mg/ml〜1.0mg/ml程度までの範囲で変動させても、十分に複合体を形成できる。この適正比率はアルカリ法およびDMSO法のどちらでも変わらない。
以下、実施例にて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0022】
アゾ色素の合成 図1に示すスキームで合成した。合成反応の参考にした文献は非特許文献1および2である。
【0023】
化合物2の合成 ジムロート冷却管を取り付けたガラス栓付きの300mL三口丸底フラスコにメチル(4−ブロモメチル)ベンゾエイド(4.7g、20.5mmol)、炭酸ナトリウム(7.9g、74.6mmol)、ヨウ化カリウム(0.77g、4.76mmol)を加え、脱気窒素置換を行った。乾燥DMF(50mL)、メチルアニリン(2.0mL、18.7mmol)を加え、65℃にて24時間加熱攪拌した。TLC(シリカ、クロロホルム/ヘキサン=3/1(v/v))にて、原料の消失と新たなスポットの出現を確認したため、反応を停止した。精製はカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン)で行った。同定はMALDI TOF Massスペクトルおよび、1H NMRスペクトルにて行った(表1:なお、スペクトルの帰属の位置を式(A)に示す)。収量 3.7g、収率 51.8%、MALDI TOF Mass(dithranol positive) [M+H]+=256.1,calcd.[M+H]+=256.13。
【0024】
【表1】
【0025】
【化2】
【0026】
化合物3の合成 85%リン酸(2.0mL)に溶かした4-アミノピリジン(0.37g、1eq.)に亜硝酸ナトリウム(0.25g、1.4eq.)、濃硝酸(1mL)を加えた溶液を調製し、数分間氷浴で静置した。この溶液と化合物3(1.0g、4.71mmol)を30%リン酸水溶液(2.4mL)に溶解させた溶液をよく混合した。300mL丸底フラスコ中でこれら2つの溶液を混合し、氷浴中で3時間磁気攪拌した。TLC(シリカ、クロロホルム/メタノール=50/1(v/v))にて新たなスポットの出現を確認した後、炭酸ナトリウムを加え中和した。吸引ろ過にて沈殿物をろ取し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノール=50/1(v/ v))にて精製を行った。同定はMALDI−TOF−Massスペクトル、1H NMRスペクトルにて行った(表2:なお、スペクトルの帰属の位置を式(B)に示す)。収量123.3mg、収率7.1%、MALDI−TOF−Mass(dithranol
positive) [M+H]+=361.16, calcd.[M+H]+=361.2。
【0027】
【表2】
【0028】
【化3】
【0029】
アゾ色素(1):4−[4−ピリジルアゾ−N−メチルアニリノ−N'−メチル]−安息香酸
の合成 300mL丸底フラスコ中で化合物3(76mg、0.2mmol)をTHF(17mL)に溶解させ、メタノール/2N水酸化カリウム水溶液(4/1(v/v)) (20mL)を加え、2時間還流した。TLC(シリカ、メタノール/クロロホルム=1/10(v/ v))にて原料の消失と新たなスポットの出現を確認した後、反応溶液を水で希釈し、クロロホルムで抽出を行った。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。吸引ろ過によって無水硫酸ナトリウムを除去し、溶媒を減圧留去して赤色固体を得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、メタノール/クロロホルム=1/10(v/v))にて精製を行った。同定はMALDI-TOF-Massスペクトル、1H
NMRスペクトルにより行った(表3:なお、スペクトルの帰属の位置を式(C)に示す)。収量29mg、収率41.2%、MALDI-TOF- Mass (dithranol positive) [M+H]+=347.07、calcd.[M+H]+=347.1。
【0030】
【表3】
【0031】
【化4】
【実施例2】
【0032】
アルカリ法によるアゾ色素とSPGの複合化 アゾ色素(1)のアルカリ溶液と多糖のアルカリ溶液をよく混合した。これに酢酸水溶液を加え一気に中和したサンプルを作成した。多糖はβ-1,3-グルカンに属するSPG(1本鎖に解離した状態のもので、s-SPGと記述する場合あり)の他に、多糖無し、β-1,3-グルカン以外のアミロース以下3種、ならびに天然の状態;3本鎖のSPG(中性の水中で存在、t-SPGと記述)のサンプルも同様に調製した。それぞれの溶液を4日間静置した。各サンプルの成分表を表4に示す。
【0033】
【表4】
【実施例3】
【0034】
アルカリ法にて調製したアゾ色素/多糖溶液のUV-vis、CDスペクトル測定 測定条件として、[Azo-Dye]=5.78×10-5M、[SPG]=0.00147M、Vw=80 %、Optical path
length:10mmにて行った。SPG存在、非存在の溶液に対してUV-vis、CDスペクトル測定を行った。結果を図2((A):UV-vis、(B):CD)に示した。単一分子分散しているDMSOに溶解したアゾ色素のUV-visスペクトルと比較するとアゾ色素はアルカリ法にて調製を行った場合、446nmから417nmへとブルーシフトしていた。この結果は、アルカリ法で調製した場合、アゾ色素同士の水素結合が機能しにくいことからもπ−πスタッキングによってH会合していると考えられる。
【0035】
多糖の種類を変えて得られた溶液のUV-visおよびCDスペクトルの結果は図3(A)および(B)に示した。各溶液のUV-visスペクトルの極大吸収波長に変化はなかったが、吸収強度はSPGの存在している溶液が他の多糖の溶液に比べて大きくなっていた。このことからアゾ色素はSPGが存在することによって水への溶解性が高まったことがわかる。また、CDスペクトルにはSPG有りの溶液にのみ誘起CDが見られた。このことからアゾ色素とSPGが相互作用していることが認められた。
【実施例4】
【0036】
DMSO法によるアゾ色素とSPGの複合化 アゾ色素DMSO溶液と多糖DMSO溶液をよく混合した。これに水1800μLを加えたサンプル(Vw=80%)を調製した。また多糖無しの溶液も同様に調製した。各溶液を4日間静置した。各サンプルの成分表を表5に示した。
【0037】
【表5】
【実施例5】
【0038】
DMSO法にて調製したアゾ色素/多糖溶液のUV-visスペクトル測定 実施例3と同じ条件で測定したUV-visスペクトルの結果を図4(A)に示した。各溶液の極大吸収波長に変化はなくSPGの存在の有無に関わらず吸光度の違いは見られなかった。しかし、CDスペクトル図4(B)にはSPG有りの溶液のみに誘起CDが確認された。このことからSPGとアゾ色素が何らかの相互作用をしていると考えられる。
【0039】
SPGと他の多糖を用いた溶液の間にUV-visスペクトルの極大吸収波長、吸光度の大きさに違いは確認されなかった(図5(A))。しかし、CDスペクトルの測定結果(図5(B))からはSPGの存在下で調製を行った溶液のみに誘起CDが確認されたことからSPGとアゾ色素はDMSO法にて調製した場合にも、SPGと特異的に何らかの相互作用をしているようであった。
【実施例6】
【0040】
アルカリ法とDMSO法の各溶液のスペクトル比較 アルカリ法とDMSO法それぞれの調製法で調製した溶液から得られたUV-visスペクトルと単一分子分散しているDMSO中でのアゾ色素のUV-visスペクトルの比較を行った結果を図6に、両溶液のモノクロ写真を図7に示した。
【0041】
図6よりアルカリ法ではH会合に由来する極大吸収波長のブルーシフト(低波長側にシフト)、DMSO法ではJ会合に由来するレッドシフト(長波長側にシフト)という対照的な結果が得られた(図8:両会合のイメージ参照)。また、それぞれに対しSPGと相互作用を示す誘起CDが現れている。なお、H会合体においては、放置しておくと凝集・沈殿しやすいが、SPGが存在することによってきれいに溶解するという効果が確認された。
【0042】
異なる会合形態をとるDMSO法とアルカリ法にて調製されたアゾ色素について、どちらも限外ろ過(3000G, 30 min.×2)を行い、溶媒を水に置換した。その後、UV-visスペクトルを測定し、図9の結果を得た。溶媒を水に置換してもそれぞれの手段にて調製した会合体は各会合形態を保持していた。
【実施例7】
【0043】
TEM及びAFM観察 モルフォロジーの面からSPG会合体形状への影響を見るためにTEMおよびAFM観察を行った。TEM、AFM観察の溶液には実験4にて用いたSPGの存在下において調製したJ会合体(DMSO法)、H会合(アルカリ法)の色素を限外ろ過にて溶媒を水に置換したものを用いた。また、リファレンスとして、SPGの非存在下において調製したJ会合体、H会合体の色素を同様に水へ置換したものも調製した。それぞれをマイカ基盤、またカーボン支持膜TEMグリッドにキャストし、AFM、TEM観察を行った。図10〜13に示した像を見ると、DMSO法、アルカリ法共にSPG無しの溶液には大きなダマ状になった色素(高さ30〜40 nm程度)ばかりが見られた。特にアルカリ法においてはSPG非存在下では会合が大きくなりすぎ沈殿してくるためAFMの検出限界を超えていた。しかし、SPG存在下にて調製を行った溶液にはほとんどダマ状の色素は見られずAFMではSPGのものであると思われる高さ1.2 nm程度のファイバーが観察された。また、TEMでは同様のファイバー状化合物がSPG単独のものと比較するとはるかに濃いコントラストにて確認された。このことからこのファイバーにはアゾ色素が含まれていることが判明した。このような結果から、モルフォロジーの観点からは色素は会合体を形成しているものの過剰の会合が抑えられ、会合体がSPGの構造を反映したモルフォロジーをとるという、SPGの効果が確認された。
【実施例8】
【0044】
IR測定による比較 これまでに示してきたDMSO法によるJ会合体とアルカリ法によるH会合体についてより詳しい知見を得るために、IRスペクトルを測定した。SPGの存在下において調製したJ会合(DMSO)、H会合(アルカリ)の色素を限外ろ過にて溶媒を水に置換した。その後、これらの溶液を凍結乾燥することで、それぞれの粉末を得て、粉末のATP−FTIR測定を行った。結果は図14〜18に示した。
【0045】
SPG+アゾ色素の溶液のC-C環状の振動ピークとC-N環状の振動ピーク(1580cm-1付近と、1370cm-1付近)がアゾ色素のみのときと比べてアルカリ法ではブルーシフト、DMSO法ではレッドシフトしていることがわかった。1590→1600cm-1のピリジン部位に由来するピークのシフトというのはカルボン酸部位とピリジン部位の水素結合を示している。これらのことから図8のイメージに示すようにアゾ色素はピリジンとカルボン酸が水素結合し、J会合していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によって得られる複合体は、規則的な色素の配列が存在している環境と異なる環境下に置かれた場合、その配列・会合形態が変化し、色の濃さや色調の変化が生じるため、これを利用したセンシングの開発や有機ディスプレイの開発が期待される。さらに、本発明に従うアゾ色素は分子内に永久双極子を有し、SHG材料(ある吸収波長の2倍の波長の光を放出するというもの)としての可能性も有し、アゾ色素の吸収光と放出光を利用した情報伝達のシステムの構築が可能となるためこれによって現在のネットワーク社会を支える新たなインフォメーションナノデバイスとしての応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】アゾ色素の合成スキームを示す。
【図2】アルカリ法によるアゾ色素溶液のUV-visスペクトル(A)およびCDスペクトル(B)におけるSPG有無の比較(実施例3)を示す。
【図3】アルカリ法によるアゾ色素溶液のUV-visスペクトル(A)およびCDスペクトル(B)における多糖の種類の比較(実施例3)を示す。
【図4】DMSO法によるアゾ色素溶液のUV-visスペクトル(A)およびCDスペクトル(B)におけるSPG有無の比較(実施例5)を示す。
【図5】DMSO法によるアゾ色素溶液のUV-visスペクトル(A)およびCDスペクトル(B)における多糖の種類の比較(実施例5)を示す。
【図6】複合体調製におけるアルカリ法とDMSO法のUV-visスペクトルの比較(実施例6)を示す。
【図7】アゾ色素溶液のモノクロ写真((A):DMSO法、(B):アルカリ法)(実施例6)を示す。
【図8】アゾ色素のH会合とJ会合のイメージ(実施例6)を示す。
【図9】アルカリ法によるアゾ色素溶液の限外ろ過後のUV-visスペクトル(実施例6)を示す。
【図10】DMSO法によるアゾ色素/SPG溶液のTEM像(A)とAFM像(B)(実施例7)を示す。
【図11】DMSO法によるアゾ色素溶液のAFM像(A:SPG有り、B:SPG無し)(実施例7)を示す。
【図12】アルカリ法によるアゾ色素/SPG溶液のTEM像(A)とAFM像(B)(実施例7)を示す。
【図13】アルカリ法によるアゾ色素溶液(SPG無し)のTEM像(A)とAFM像(B)(実施例7)を示す。
【図14】アゾ色素+SPGのIRスペクトル(アルカリ法)(実施例8)を示す。
【図15】アゾ色素+SPGのIRスペクトル(DMSO法)(実施例8)を示す。
【図16】比較のためのSPGのみのIRスペクトル(実施例8)を示す。
【図17】比較のためのアゾ色素のみのIRスペクトル(実施例8)を示す。
【図18】各調製法溶液のC-C環状、C-N環状の振動ピークの比較(実施例8)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に双極子および/または分子間に水素結合能を有する色素分子とβ-1,3-グルカンとから成る複合体。
【請求項2】
色素分子がピリジル基とカルボキシル基を有するアゾ化合物であることを特徴とする請求項1の複合体。
【請求項3】
アゾ化合物として、4−[4−ピリジルアゾ−N−メチルアニリノ−N'−メチル]−安息香酸を用いることを特徴とする請求項2記載の複合体。
【請求項4】
β-1,3-グルカンがシゾフィラン、スクレログルカンおよびレンチナンから選ばれたものであることを特徴とする請求項1の複合体。
【請求項5】
請求項1の複合体を製造する方法であって、アルカリ水溶液に溶解した色素分子とβ-1,3-グルカンとを混合した後に中和する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1の複合体を製造する方法であって、非プロトン性極性溶媒に溶解した色素分子とβ-1,3-グルカンとを混合した後に水を添加する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
非プロトン性極性溶媒がジメチルスルホキシドであることを特徴とする請求項6の方法。
【請求項1】
分子内に双極子および/または分子間に水素結合能を有する色素分子とβ-1,3-グルカンとから成る複合体。
【請求項2】
色素分子がピリジル基とカルボキシル基を有するアゾ化合物であることを特徴とする請求項1の複合体。
【請求項3】
アゾ化合物として、4−[4−ピリジルアゾ−N−メチルアニリノ−N'−メチル]−安息香酸を用いることを特徴とする請求項2記載の複合体。
【請求項4】
β-1,3-グルカンがシゾフィラン、スクレログルカンおよびレンチナンから選ばれたものであることを特徴とする請求項1の複合体。
【請求項5】
請求項1の複合体を製造する方法であって、アルカリ水溶液に溶解した色素分子とβ-1,3-グルカンとを混合した後に中和する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1の複合体を製造する方法であって、非プロトン性極性溶媒に溶解した色素分子とβ-1,3-グルカンとを混合した後に水を添加する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
非プロトン性極性溶媒がジメチルスルホキシドであることを特徴とする請求項6の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−238734(P2007−238734A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62048(P2006−62048)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(501190941)三井製糖株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(501190941)三井製糖株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
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