説明

βグルカンの濃度測定方法および濃度測定用キット

【課題】従来のβグルカン測定法では検出できなかったレベルのβグルカンを、専用装置なしに迅速かつ高感度に測定する方法を提供する。
【解決手段】測定対象試料と、βグルカンとの結合により活性化されるG因子を含有する試薬と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質とを反応させることにより発光合成基質から発光基質を遊離させ、遊離した発光基質に発光酵素を作用させて発光量を測定し、得られた測定値に基づいて試料中のβグルカン濃度を定量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれるβグルカンの濃度測定方法および濃度測定用キットに関するものであり、詳しくは、生物発光反応を利用したβグルカンの濃度測定方法および濃度測定用キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
βグルカンは、酵母やカビの細胞壁の骨格構成物、多くの担子菌子実体(キノコ)の主要な多糖成分、血液透析に使用する膜等からの溶出成分等としてその存在が知られている物質である。これを測定することによって重篤な感染症である深在性真菌症の早期診断や真菌による医療用具の汚染の検出を行うことができると考えられている。特に真菌は我々同様に真核生物であり、真菌感染治療薬(抗真菌剤)は人体へもある程度のダメージを与えることから、その副作用は抗細菌用の抗生物質よりもはるかに大きく、慎重な投与が必要である。そのために真菌感染をごく初期の段階で発見することが非常に重要であり、感染が拡大する前に治療することで抗真菌剤の投与量を抑え、これによってダメージを著しく軽減することが可能となる。
【0003】
従来のβグルカンの測定には、カブトガニの血球抽出液(アメボサイトライセート)成分が真菌細胞壁の構成成分であるβグルカンによって活性化されることによるセリンプロテアーゼのカスケード反応を利用した測定法が用いられている。図1にβグルカンによるカブトガニの血球抽出液のゲル化反応の過程を示す。カブトガニの血球抽出液中にはβグルカンと特異的に反応するG因子経路が存在する。「G因子経路」は、以下の反応カスケードによって構成されている。まず、βグルカンは、G因子(Factor G)と強固に結合してG因子を活性化する。次に、βグルカンの結合により活性化されたG因子は前凝固酵素(proclotting enzyme)を活性化させて凝固酵素(clotting enzyme)を生成する。この凝固酵素が、その基質であるコアギュローゲン(coagulogen)を部分水解する。その結果、コアギュローゲンからペプチドC(peptide C)が遊離して凝固タンパク質であるコアギュリン(coagulin)が生成される。このコアギュリンの凝固作用によってゲル化が生じる(非特許文献1参照)。
【0004】
リムルステストによるβグルカン測定法は、カブトガニの血球抽出液がβグルカンによってゲル化するプロセスを応用したものである。リムルステストは、判定または測定方法の違いからゲル化転倒法(ゲル化法)、発色合成基質法(比色法)、そして比濁時間分析法(比濁法)等の方法が知られている。
【0005】
「ゲル化転倒法」は、検査対象試料にG因子関連物質を含む液を試験管内で混合し、一定条件下(例えば37℃で30〜60分間)反応させた後に、その試験管を転倒、あるいは傾けた際に、試料が液状のままか、あるいは固化したかによって判定する方法である。前者の場合はβグルカン陰性、後者の場合はβグルカン陽性とされる。この方法は、特別な装置を必要とせず操作も比較的容易ではあるが、原料や製造のロットにより測定結果が変わりやすい点や、人による判定のため光学的方法に比べて客観性に欠けるという問題があることから通常は簡易的に用いられるに過ぎない。
【0006】
「発色合成基質法」は、凝固酵素の基質に発色合成ペプチド基質を用い、遊離した発色基の量を吸光度により比色定量することでβグルカン量を算出する方法である。発色合成ペプチド基質は、天然基質であるコアギュローゲンを凝固酵素が水解する部位のアミノ酸配列を模したものが使用される。凝固酵素による切断部位にパラニトロアニリン(pNA)等の発色基を結合させ、この発色基が酵素による切断で遊離することによって発色する。発色基がパラニトロアニリンの場合は、パラニトロアニリンの吸収波長である405nmの吸光度を経時的に測定する。また、発色基がパラニトロアニリンをジアゾカップリングした場合は、545nmの吸光度を経時的に測定する。その後、得られた経時的な透過光量の変化を解析してβグルカン濃度を測定する。当該発色合成基質法は、試薬が比較的高価である点や操作が煩雑である等の問題もあるが、定量性、感度、そして客観性に優れている。
【0007】
「比濁時間分析法」は、ゲル化による濁度の増加を透過光量の変化として捉え、反応液の透過光量比が一定の閾値(通常90%前後)まで減少するのに要する時間をゲル化時間とし、ゲル化時間とβグルカン濃度の関係から作成された標準曲線を用いてβグルカン値を算出する方法である。定量性や客観性に非常に優れているが測定には専用装置を必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Tatsushi Muta, Noriaki Seki, Yoshie Takaki, Ryuji Hashimoto, Toshio Oda, Atsufumi Iwanaga, Fuminori Tokunaga, and Sadaaki Iwanaga, J. Biol. Chem., 270: 892-897 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、定量性や客観性に優れた前記発色合成基質法や比濁時間分析法等のリムルステストを用いても、なおβグルカンを測定する場合には種々の問題が指摘されている。例えば5pg/ml以下の高感度測定には2時間程度の反応時間を要し、さらに0.2pg/ml以下のβグルカンの測定は、測定結果が信頼性に乏しく感染初期段階での診断に使用することができない。このように、現状におけるβグルカンのリムルステストによる測定感度には未だ問題点があると考えられる。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、従来のβグルカン測定法では検出できなかったレベルのβグルカンを、専用装置なしに迅速かつ高感度に測定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の発明を包含する。
[1]試料中に含まれるβグルカンの濃度測定方法であって、試料と、βグルカンとの結合により活性化されるG因子を含有する試薬と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質とを反応させ、該発光合成基質から前記発光基質を遊離させる発光基質遊離工程と、前記発光基質遊離工程により遊離した発光基質に発光酵素を作用させ、発光量を測定する発光量測定工程と、前記発光量測定工程により得られた測定値に基づいて前記試料中のβグルカン濃度を定量する濃度定量工程とを包含することを特徴とするβグルカンの濃度測定方法。
[2]前記発光合成基質は、前記G因子が活性化されることにより生成される活性型G因子または凝固酵素の作用により、前記発光基質と前記ペプチドとの結合が切断される構造を有することを特徴とする前記[1]に記載のβグルカンの濃度測定方法。
[3]前記発光基質はアミノルシフェリンであり、前記発光酵素はルシフェラーゼであることを特徴とする前記[2]に記載のβグルカンの濃度測定方法。
[4]前記ルシフェラーゼが、北米ホタル、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ツチボタル、ヒメボタル、マドボタル、オバボタル、光コメツキムシおよび鉄道虫からなる群より選択される甲虫由来であることを特徴とする前記[3]に記載のβグルカンの濃度測定方法。
[5]前記ルシフェラーゼは変異型ルシフェラーゼであり、該変異型ルシフェラーゼは野生型ルシフェラーゼと比較して発光強度が増大するように、野生型ルシフェラーゼのアミノ酸配列が改変されていることを特徴とする前記[3]または[4]に記載のβグルカンの濃度測定方法。
[6]前記変異型ルシフェラーゼが、以下の(i)〜(vi)からなる群より選択された1種であることを特徴とする前記[5]に記載のβグルカンの濃度測定方法。
(i) 配列番号10に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(ii) 配列番号10に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(iii) 配列番号10に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(iv) 配列番号10に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(v) 配列番号10に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、47位のイソロイシンがスレオニンに、50位のアスパラギンがセリンに、59位のメチオニンがスレオニンに、252位のスレオニンがセリンに、423位のイソロイシンがロイシンに、530位のロイシンがアルギニンにそれぞれ置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(vi) 配列番号10に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、50位のアスパラギンがセリンに、423位のイソロイシンがロイシンに、530位のロイシンがアルギニンにそれぞれ置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
[7]前記G因子を含有する試薬がカブトガニ血球抽出成分であり、反応系の全量に対する該カブトガニ血球抽出成分のタンパク質濃度が1.5mg/mL〜3.5mg/mLであることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載のβグルカンの濃度測定方法。
[8]以下の(a)、(b)、(c)を構成成分として含むことを特徴とするβグルカンの濃度測定用キット。
(a)βグルカンと特異的に結合して活性化されるG因子を含有する試薬
(b)ペプチドに発光基質が結合してなり、G因子が活性化されることにより生成される活性型G因子または凝固酵素の作用によって発光基質とペプチドとの結合が切断される構造を有する発光合成基質
(c)発光酵素
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るβグルカンの濃度測定方法によれば、βグルカンの濃度測定に生物発光反応を適用し、生じる発光量に基づいてβグルカン濃度を定量するので、従来のβグルカン測定法では検出できなかったレベルのβグルカンを、専用の測定装置を用いることなく、簡便かつ迅速に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】βグルカンによるカブトガニの血球抽出液のゲル化反応の過程を示す図である。
【図2】本発明に係るβグルカンの濃度測定方法の一例を示す図である。
【図3】実施例1の各試料濃度における発光強度をプロットしたグラフである。
【図4】比較例の各試料濃度における吸光度をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.βグルカンの濃度測定方法
最初に、図1および図2を用いて、本発明に係るβグルカンの濃度測定方法のメカニズムについて説明する。図1は、βグルカンによるカブトガニの血球抽出液(LAL:Limulus Amebocyte Lysate)のゲル化反応の過程を示す図であり、図2は、本発明に係るβグルカンの濃度測定方法の一例を示す図である。図1に示すように、βグルカンは、カブトガニの血球抽出液中のG因子と強固に結合してG因子を活性化し、活性化されたG因子(活性型G因子)は前凝固酵素を活性化し、凝固酵素が生成される。凝固酵素はコアギュローゲンを基質として部分水解し、凝固タンパク質であるコアギュリンを生成する。
【0015】
図2に示すように、βグルカンを含む試料とカブトガニの血球抽出液とを接触させると、試料中のβグルカンによりリムルス反応系が活性化される。そこで、凝固酵素の基質として「ベンゾイル−Leu−Arg−Arg−アミノルシフェリン」をこの反応系に添加すると、リムルス反応系の活性化により生成した凝固酵素によりArgとアミノルシフェリンとの結合が切断され、発光基質であるアミノルシフェリンが遊離する。このアミノルシフェリンにルシフェラーゼ(発光酵素)を作用させることにより、光が発生する。ルシフェリン/ルシフェラーゼの発光反応を、下記反応式(I)に示す。
【0016】
【化1】

【0017】
本発明に係るβグルカンの濃度測定方法は、上述のメカニズムにより発生した光の量を測定し、得られた測定値(発光量)に基づいて、試料中のβグルカン濃度を定量する方法である。
【0018】
次に、本発明に係るβグルカンの濃度測定方法について詳細に説明する。本発明に係るβグルカンの濃度測定方法は、
(1)試料と、βグルカンとの結合により活性化されるG因子を含有する試薬と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質とを反応させ、発光合成基質から発光基質を遊離させる発光基質遊離工程
(2)発光基質遊離工程により遊離した発光基質に発光酵素を作用させ、発光量を測定する発光量測定工程
(3)発光量測定工程により得られた測定値に基づいて試料中のβグルカン濃度を定量する濃度定量工程
を包含するものであればよい。本発明の測定対象であるβグルカンは、カブトガニの血球抽出液中のG因子と結合してG因子を活性化できるβグルカンであればよく、好ましくは(1→3)−β−D−グルカンである。
【0019】
(1)発光基質遊離工程
発光基質遊離工程は、試料と、βグルカンとの結合により活性化されるG因子を含有する試薬(以下、「G因子含有試薬」と記す)と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質とを反応させ、発光合成基質から発光基質を遊離させる工程である。
【0020】
〔試料〕
試料は特に限定されず、βグルカンを含む可能性のあるものはすべて試料として好適に用いることができる。なかでも、血液(血漿)、体液、尿等の臨床試料は、深在性真菌症の診断のための試料として好適である。また、真菌(カビ類等)の汚染が問題となるものも試料として好適に用いることができる。具体的には、例えば、注射剤、輸液、透析液等の医薬品、医療用具や医療機器からの採取物、クリーンルームからの採取物等が挙げられる。なお、臨床試料において、リムルス反応系の干渉因子(阻害因子や亢進因子)の不活化処理が必要な場合は、公知の不活化処理法(例えば過塩素酸処理法(PCA法)やNew PCA法など)による前処理を施しておくことが好ましい。
【0021】
〔G因子含有試薬〕
G因子含有試薬には、従来リムルステストに使用されているカブトガニ血球抽出成分を好適に用いることができる。例えば、リムルス(Limulus)属、タキプレウス(Tachypleus)属、あるいはカルシノスコルピウス(Carcinoscorpius)属に属するカブトガニの血球から得られたもので、βグルカンとの反応により凝固酵素が生成されるものであれば、特に限定されるものではない。したがって、βグルカン測定用のリムルス試薬(LAL試薬)として市販されているものや、βグルカン測定用キットに付属のリムルス試薬(LAL試薬)を好適に用いることができる。
【0022】
また、カブトガニのG因子の遺伝子の一部または全部に基づいて合成された組換え遺伝子由来のリコンビナントG因子を用いることも可能である。リコンビナントG因子は、公知の遺伝子工学的手法に従ってカブトガニG因子の遺伝子が挿入された発現ベクターを作製し、適当な宿主細胞に導入してリコンビナントタンパク質を発現させ、精製することにより取得することができる。
【0023】
G因子含有試薬として、従来リムルステストに使用されているカブトガニ血球抽出成分(例えば、市販のβグルカン測定用リムルス試薬)を使用した場合には、βグルカンを含む試料との反応により、活性型G因子および凝固酵素が生成される。これらはいずれもプロテアーゼ活性を有するタンパク質であることが知られている。したがって、この場合、発光合成基質には活性型G因子の認識配列を有するものおよび凝固酵素の認識配列を有するものが使用可能である。ただし、本発明に係るβグルカンの濃度測定方法は、活性型G因子および凝固酵素のいずれか一方のプロテアーゼ活性を指標とするので、指標とする酵素に対応する1種類の発色合成基質が用いられる。
【0024】
一方、G因子含有試薬として、リコンビナントG因子を用いた場合には、当該試薬中に前凝固酵素は存在しないので、βグルカンを含む試料との反応により生成されるのは活性型のリコンビナントG因子のみである。したがって、この場合、発光合成基質には活性型G因子の認識配列を有するものが用いられる。
【0025】
G因子含有試薬として、従来リムルステストに使用されているカブトガニ血球抽出成分(例えば、βグルカン測定用市販のリムルス試薬)を使用した場合、その使用量は、従来の使用量の約40%〜約80%であることが好ましい。従来の使用量(100%)では発光反応が阻害され、発光強度が低下すること、および、従来の使用量の約40%〜約80%を使用した場合に高い発光強度が得られることが明らかとなったからである。従来の使用量の約40%〜約80%は、測定系の全量に対するカブトガニ血球抽出成分(LAL)のタンパク質濃度に換算した場合、1.5mg/mL〜3.5mg/mLの範囲に相当する。より好ましくは2.0mg/mL〜3.3mg/mLである。従来の使用量より少ない量で高感度測定が可能になることから、本発明に係るβグルカンの濃度測定方法は、産業上非常に有用である。
【0026】
〔発光合成基質〕
発光合成基質はペプチドに発光基質が結合してなるものであり、試料とG因子含有試薬と発光合成基質との反応により、当該発光合成基質から発光基質が遊離するものであればよい。このような発光合成基質としては、G因子が活性化されることにより生成される活性型G因子または凝固酵素の作用により、発光基質とペプチドとの結合が切断される構造を有することが好ましい。本明細書において「発光基質」とは、生物発光で反応の基質となって光を発する物質を意味する。発光基質としてはルシフェリンを好適に用いることができる。なかでも下記式(II)で表されるアミノルシフェリンが好ましい。アミノルシフェリンのアミノ基が、隣接するアミノ酸のカルボキシル基とアミド結合を形成させることができるからである。
【0027】
【化2】

【0028】
アミノルシフェリンと結合するペプチドは、当該ペプチドのC末端におけるアミノルシフェリンとのアミド結合が、活性型G因子または凝固酵素のプロテアーゼ活性により切断されるアミノ酸配列からなるものであればよい。この条件を充足する限りにおいてアミノ酸残基数およびアミノ酸配列は限定されないが、特異性、合成コスト、取扱い易さ等の観点からアミノ酸残基数は2個〜10個が好ましい。
【0029】
具体的には、凝固酵素の認識配列を有するペプチドとしては、Gly−Val−Ile−Gly−Arg−(配列番号1)、Val−Leu−Gly−Arg−(配列番号2)、Leu−Arg−Arg−(配列番号3)、Ile−Glu−Gly−Arg−(配列番号4)、Leu−Gly−Arg−(配列番号5)、Val−Ser−Gly−Arg−(配列番号6)、Val−Gly−Arg−(配列番号7)などが挙げられる。また、活性型G因子の認識配列を有するペプチドとしては、Thr−Leu−Ser−Arg−Gln−Arg−Arg−(配列番号8)、Thr−Thr−Thr−Thr−Arg−(配列番号9)などが挙げられる。
【0030】
ペプチドのN末端は、保護基で保護されていてもよい。保護基としては、通常この分野で用いられるものであれば限定されることなく用いることができる。具体的には、例えば、N−succinyl基、tert−butoxycarbonyl基、benzoyl基、p−toluenesulfonyl基などが挙げられる。
【0031】
本発明に用いられる発光合成基質は、例えば、特表2005−530485(国際公開番号:WO2003/066611)の実施例6および実施例7に記載の方法を参照することにより合成することができる。また、Promega社から市販されている「Proteasome‐GloTM Assay Systems」に付属の発光合成基質(ベンゾイル−Leu−Arg−Arg−アミノルシフェリン)を使用することができる。発光合成基質中に遊離のアミノルシフェリンが含まれる場合は、これを予め除去しておくことが好ましい。発光合成基質から遊離のアミノルシフェリンを除去することにより、バックグラウンド発光を抑制することができる。遊離のアミノルシフェリンを除去する方法としては、例えば、20mM トリシン、8mM Mg2+、0.13mM EDTAの緩衝液(pH7.8)中、0.8mM 補酵素A、1.5mM ATP、250μg/mlホタルルシフェラーゼおよび90mM DTTを含む溶液と混合し、室温(25℃)で1時間〜6時間インキュベートする方法が挙げられる。
【0032】
〔反応手順(方法)〕
試料とG因子含有試薬と発光合成基質との反応手順(方法)は、これら三者が反応することにより発光合成基質から発光基質(例えばアミノルシフェリン)が遊離する条件に適合するものであれば、特に限定されない。例えば、試料とG因子含有試薬とをよく混和して37℃で5分〜60分間程度インキュベートした後、発光合成基質を加えてよく混和し、37℃で1分〜30分間程度インキュベートする方法が挙げられる。
【0033】
(2)発光量測定工程
発光量測定工程は、前段の発光基質遊離工程により遊離した発光基質に発光酵素を作用させ、発光量を測定する工程である。
【0034】
〔発光酵素〕
本発明に用いられる発光酵素は、発光合成基質から遊離した発光基質の生物発光を触媒し、光を発生させるものであればよい。発光基質がルシフェリンである場合、発光酵素にはルシフェラーゼが好適に用いられる。また、発光基質が上記式(II)で表されるアミノルシフェリンである場合は、発光酵素に甲虫由来のルシフェラーゼを用いることが好ましい。甲虫由来のルシフェラーゼとしては、北米ホタル、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ツチボタル、ヒメボタル、マドボタル、オバボタル、光コメツキムシ、鉄道虫などの甲虫由来のルシフェラーゼを好適に用いることができる。これらの甲虫由来のルシフェラーゼのアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子の塩基配列は、表1に記載のアクセッション番号で公知のデータベース(例えば、EMBL Nucleotide Sequence Database(http://www.ebi.ac.uk/embl/))に登録されている。なお、ルシフェラーゼは、天然タンパク質でもよく、組換えタンパク質でもよい。本発明に使用可能なルシフェラーゼは、試薬として各社から市販されている。
【0035】
【表1】

【0036】
また、ルシフェラーゼは野生型のアミノ酸配列を有するものに限定されず、発光基質の生物発光を触媒する機能を有する限りにおいて、野生型のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する変異型ルシフェラーゼであってもよい。野生型のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列としては、例えば、野生型のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。ここで、「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により欠失、挿入、置換もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、最も好ましくは5個以下)のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加されていることが意図される。
【0037】
変異型ルシフェラーゼのなかでも、発光強度が増大するように改変された変異型ルシフェラーゼを用いることが好ましい。超微量のβグルカンを高感度に測定できるからである。発光強度が増大するように改変された変異型ルシフェラーゼとしては、例えば以下の変異型ルシフェラーゼを挙げることができる。
(i) 野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号10)において、423位のイソロイシン(Ile)がロイシン(Leu)に置換され、436位のアスパラギン酸(Asp)がグリシン(Gly)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(ii) 野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号10)において、423位のイソロイシン(Ile)がロイシン(Leu)に置換され、530位のロイシン(Leu)がアルギニン(Arg)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(iii) 野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号10)において、436位のアスパラギン酸(Asp)がグリシン(Gly)に置換され、530位のロイシン(Leu)がアルギニン(Arg)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(iv) 野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号10)において、423位のイソロイシン(Ile)がロイシン(Leu)に置換され、436位のアスパラギン酸(Asp)がグリシン(Gly)に置換され、530位のロイシン(Leu)がアルギニン(Arg)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(v) 野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号10)において、423位のイソロイシン(Ile)がロイシン(Leu)に、530位のロイシン(Leu)がアルギニン(Arg)に置換され、さらに、47位のイソロイシン(Ile)がスレオニン(Thr)に、50位のアスパラギン(Asn)がセリン(Ser)に、59位のメチオニン(Met)がスレオニン(Thr)に、252位のスレオニン(Thr)がセリン(Ser)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(vi) 野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号10)において、50位のアスパラギンがセリンに、423位のイソロイシンがロイシンに、530位のロイシンがアルギニンにそれぞれ置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
【0038】
上記(i)〜(v)の各変異型ホタルルシフェラーゼの発光強度は、それぞれ北米ホタルルシフェラーゼ(野生型)の発光強度と比較して(i)18倍、(ii)18倍、(iii)8倍、(iv)20倍、(v)21倍に増大したことが確認されている(特開2007−97577号公報参照)。なお、発光強度が増大するように改変された変異型ルシフェラーゼは上記(i)〜(vi)に限定されるものではない。適宜変異の位置および置換されるアミノ酸を選択して発光強度が増大するように改変した変異型ルシフェラーゼを見出し、用いることができる。特に、配列番号10のアミノ酸配列において、47位、50位、59位、252位、423位、436位、および530位のアミノ酸置換を組み合わせることにより、発光強度が増大するように改変された変異型シフェラーゼを取得することが可能である。
【0039】
変異型ホタルルシフェラーゼは、野生型ホタルルシフェラーゼの遺伝子を改変して得られた変異型ホタルルシフェラーゼ遺伝子を、公知の方法により発現ベクターに挿入し、適当な宿主細胞に導入して、組換えタンパク質として発現させ、精製することにより得ることができる。遺伝子の改変は、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、有機合成等、当業者に周知の方法により行うことができる。なお、北米ホタルルシフェラーゼ遺伝子(cDNA)の塩基配列は、アクセッション番号:M15077としてデータベース(例えば、EMBL Nucleotide Sequence Database(http://www.ebi.ac.uk/embl/))に登録されている。また、上記(i)〜(v)に記載の変異型ホタルルシフェラーゼは、特開2007−97577号公報の実施例を参照することにより作製することができる。
【0040】
また、当業者は、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタル、マドボタル、光コメツキムシおよび鉄道虫についても、公知のデータベースに登録されたこれらのルシフェラーゼ遺伝子の塩基配列(表1参照)に基づいて、公知の方法により変異型ルシフェラーゼを容易に取得することができる。さらに、上記(i)〜(vi)に記載の北米ホタル由来の変異型ホタルルシフェラーゼの置換アミノ酸を参照すれば、他の甲虫由来のルシフェラーゼにおける同等の位置のアミノ酸を置換することにより、当業者は発光強度が増大した変異型ルシフェラーゼを容易に取得することができる。
【0041】
〔反応および測定手順(方法)〕
前段の発光基質遊離工程により得られる反応液、つまり遊離した発光基質(例えばアミノルシフェリン)を含む反応液に、発光酵素(例えばルシフェラーゼ)を添加する。上記反応式(I)に示したように、ルシフェリン/ルシフェラーゼの発光反応には、ATPおよび2価金属イオンが必要であるので、例えば、ATPおよびマグネシウムイオンを含む緩衝液にルシフェラーゼを溶解し、このルシフェラーゼ溶液を添加することが好ましい。具体的には、例えば、室温(25℃)で反応を行い、ルシフェラーゼ溶液を添加後2秒から10秒の発光値を計測する方法が挙げられる。
【0042】
発光量の測定には、市販のルミノメータ(発光測定装置)を用いることができる。メーカーおよび性能については特に限定されないが、相対光量測定値が0から一千万の範囲で測定可能な装置であることが好ましい。具体的には、キッコーマン社のルミテスターC1000やパーキンエルマー社のARVO Light等の仕様が好適である。測定は、使用する装置の説明書に従って行えばよい。
【0043】
(3)濃度定量工程
濃度定量工程は、発光量測定工程により得られた測定値に基づいて試料中のβグルカン濃度を定量する工程である。濃度既知のβグルカン溶液を使用して、予めβグルカン濃度と当該濃度における発光値との関係を表す検量線を作成し、この検量線に上記発光量測定工程により得られた測定対象試料の測定値を当てはめることにより、試料中のβグルカン濃度を求めることができる。
【0044】
2.βグルカンの濃度測定用キット
本発明に係るβグルカンの濃度測定用キットは、以下の(a)、(b)、(c)を構成成分として含むものであればよい。
(a)βグルカンと特異的に結合して活性化されるG因子を含有する試薬
(b)ペプチドに発光基質が結合してなり、G因子が活性化されることにより生成される活性型G因子または凝固酵素の作用によって発光基質とペプチドとの結合が切断される構造を有する発光合成基質
(c)発光酵素
上記(a)、(b)、(c)の詳細については既に説明したので、ここでは説明を省略する。本発明のキットは、上記(a)、(b)、(c)以外のものを構成成分として含んでいてもよい。これら以外の具体的なキットの構成については特に限定されるものではなく、他に必要な試薬や器具等を適宜選択してキットの構成とすればよい。本発明に係るキットを用いることにより、上記本発明に係るβグルカンの濃度測定方法を簡便かつ迅速に実施することができる。
【0045】
本明細書において「キット」は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図される。好ましくは当該材料を使用するための使用説明書を備える。使用説明書は、紙またはその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはCD−ROMなどのような電子媒体に付されてもよい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の実施例に用いた器具、試薬、水等は、βグルカンフリー、あるいはβグルカン測定結果に影響を及ぼさない極めて微量のβグルカンを含有するものを使用した。
【0047】
〔実施例1:生物発光法によるβグルカンの測定〕
<方法>
リムルス試薬(LAL)、βグルカン標準液、および精製水は、深在性真菌感染症の体外診断薬であるGlucatell(アソシエーツ オブ ケープコッド インク(ACC社)製)に添付のものを使用した。発光合成基質には、Proteasome‐GloTM Assay Systems(Promega)に付属のベンゾイル−Leu−Arg−Arg−アミノルシフェリンを用いた。ルシフェラーゼは、北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号10)において、50位のアスパラギンがセリンに、423位のイソロイシンがロイシンに、530位のロイシンがアルギニンにそれぞれ置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼを使用した。当該変異型ルシフェラーゼは、本発明者らが特開2007−97577号公報の実施例に記載の方法に準じて自製したものである。
【0048】
まず、βグルカン標準液を精製水で希釈することにより、0.1〜40pg/mLの範囲で6段階に調製し、これを試料とした(表1参照)。また、βグルカンを含まない精製水をブランクとした。続いて、各試料およびブランクから50μLずつ取り出し、それぞれ別個に50μLのリムルス試薬が入った反応試験管に移した後、ボルテックスミキサーで数秒間混合した。混合後、37±1.0℃の保温器にて10分間正確に加温した。詳細な取り扱いについてはGlucatellに添付のプロトコルに従った。
【0049】
次に、1mM MgClを含む100mM Tris−Cl(pH8.0)に溶解した150μM発光合成基質(ベンゾイル−Leu−Arg−Arg−アミノルシフェリン)を50μL加えて、37±1.0℃の保温器にて5分間正確に加温した。加温後、反応液を生物発光測定専用試験管(ルミチューブ、キッコーマン株式会社)に移した後、10−5M ATP、1mM MgClを含む100mM Tris−Cl(pH8.0)に溶解したルシフェラーゼ50μLを添加し、ルミテスターC1000(キッコーマン株式会社)にセットして試料の発光量を測定した。なお、本実施例で用いたリムルス試薬の反応液全量に対する濃度は約2.0mg/mLであった。このリムルス試薬量は従来の使用量の約50%の量に相当する。
【0050】
比較例として、同一の試料について、上記発光合成基質の代わりにGlucatellに添付の発色基質を用いてカイネティック比色法により測定した。操作法はGlucatellに添付のプロトコルに従った。
【0051】
<結果>
結果を表1に示した。また、実施例1の各試料濃度における発光強度をプロットしたグラフを図3に示し、比較例の各試料濃度における吸光度をプロットしたグラフを図4に示した。表1、図3および図4から明らかなように、従来の発色基質を用いるカイネティック比色法では5pg/mL未満のβグルカンについては測定値が低すぎて定量的に評価することは不可能であった。一方、発光合成基質を用いて発光強度を測定する方法では0.1pg/mL以下の濃度でも測定可能であることが示された。
【0052】
【表2】

【0053】
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、医療分野、特に臨床検査、医薬品製造などの分野に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に含まれるβグルカンの濃度測定方法であって、
試料と、βグルカンとの結合により活性化されるG因子を含有する試薬と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質とを反応させ、該発光合成基質から前記発光基質を遊離させる発光基質遊離工程と、
前記発光基質遊離工程により遊離した発光基質に発光酵素を作用させ、発光量を測定する発光量測定工程と、
前記発光量測定工程により得られた測定値に基づいて前記試料中のβグルカン濃度を定量する濃度定量工程と
を包含することを特徴とするβグルカンの濃度測定方法。
【請求項2】
前記発光合成基質は、前記G因子が活性化されることにより生成される活性型G因子または凝固酵素の作用により、前記発光基質と前記ペプチドとの結合が切断される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のβグルカンの濃度測定方法。
【請求項3】
前記発光基質はアミノルシフェリンであり、前記発光酵素はルシフェラーゼであることを特徴とする請求項2に記載のβグルカンの濃度測定方法。
【請求項4】
前記ルシフェラーゼが、北米ホタル、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ツチボタル、ヒメボタル、マドボタル、オバボタル、光コメツキムシおよび鉄道虫からなる群より選択される甲虫由来であることを特徴とする請求項3に記載のβグルカンの濃度測定方法。
【請求項5】
前記ルシフェラーゼは変異型ルシフェラーゼであり、該変異型ルシフェラーゼは野生型ルシフェラーゼと比較して発光強度が増大するように、野生型ルシフェラーゼのアミノ酸配列が改変されていることを特徴とする請求項3または4に記載のβグルカンの濃度測定方法。
【請求項6】
前記変異型ルシフェラーゼが、以下の(i)〜(vi)からなる群より選択された1種であることを特徴とする請求項5に記載のβグルカンの濃度測定方法。
(i) 配列番号10に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(ii) 配列番号10に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(iii) 配列番号10に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(iv) 配列番号10に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、423位のイソロイシンがロイシンに置換され、436位のアスパラギン酸がグリシンに置換され、530位のロイシンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(v) 配列番号10に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、47位のイソロイシンがスレオニンに、50位のアスパラギンがセリンに、59位のメチオニンがスレオニンに、252位のスレオニンがセリンに、423位のイソロイシンがロイシンに、530位のロイシンがアルギニンにそれぞれ置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
(vi) 配列番号10に示される野生型北米ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、50位のアスパラギンがセリンに、423位のイソロイシンがロイシンに、530位のロイシンがアルギニンにそれぞれ置換されたアミノ酸配列からなる変異型ホタルルシフェラーゼ
【請求項7】
前記G因子を含有する試薬がカブトガニ血球抽出成分であり、反応系の全量に対する該カブトガニ血球抽出成分のタンパク質濃度が1.5mg/mL〜3.5mg/mLであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のβグルカンの濃度測定方法。
【請求項8】
以下の(a)、(b)、(c)を構成成分として含むことを特徴とするβグルカンの濃度測定用キット。
(a)βグルカンと特異的に結合して活性化されるG因子を含有する試薬
(b)ペプチドに発光基質が結合してなり、G因子が活性化されることにより生成される活性型G因子または凝固酵素の作用によって発光基質とペプチドとの結合が切断される構造を有する発光合成基質
(c)発光酵素

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−187634(P2010−187634A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37910(P2009−37910)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、科学技術振興調整費「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成 半導体・バイオ融合集積化技術の構築」プロジェクトに係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】