β溶血性連鎖球菌(BHS)疾患を予防するための多成分免疫原性組成物
多くのβ溶血性連鎖球菌のポリヌクレオチドおよびポリペプチド、特に、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のポリペプチドおよびポリヌクレオチドが記載される。本発明のポリペプチドの2つ以上を、免疫原性組成物として用いるために製剤することができる。また、β溶血性連鎖球菌によって生じる感染に対して免疫化するため、およびその感染を低減させるための方法も開示される。
【図12】
【図12】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、β溶血性連鎖球菌(BHS)のポリペプチドおよびポリヌクレオチド、とりわけ化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のポリペプチドおよびポリヌクレオチド、およびBHS疾患を予防するための多成分免疫原性組成物におけるそれらの使用に関する。より具体的には、本発明は、表面に局在する化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のポリペプチドに関する。本発明はさらに、免疫原性組成物と、2つ以上のポリペプチドの組合せを包含する、β溶血性連鎖球菌感染に対して免疫化するため、およびその感染を低減させるための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
連鎖球菌を分類するための従来の表現型基準には、溶血反応およびランスフィールド血清学的グループ分けの両方が含まれる。しかし、分類学の進歩と共に、β溶血性(寒天プレートにおけるヒツジ赤血球の完全な溶解として定義される)連鎖球菌(BHS)の非近縁種が同一のランスフィールド抗原を産生し得ること、および、種レベルで遺伝的に関連のある株が異種のランスフィールド抗原を有し得ることが、現在では知られている。連鎖球菌の分類学の従来の規則に対するこれらの例外にも関わらず、溶血反応およびランスフィールド血清学的試験は依然として、臨床分離株の同定における第1のステップとして連鎖球菌を大まかなカテゴリーに分けるために、用いることができる。Ruoff,K.L.、R.A.Whiley、およびD.Beighton.1999.Streptococcus.In P.R.Murray、E.J.Baron、M.A.Pfaller、F.C.Tenover、およびR.H.Yolken(編)、Manual of Clinical Microbiology.American Society of Microbiology Press、Washington D.C.
【0003】
ランスフィールドA、C、またはG群の抗原を有するβ溶血性分離株は、大コロニー形成型(直径>0.5mm)および小コロニー形成型(直径<0.5mm)という2つの群にさらに分割することができる。大コロニー形成A群(化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes))、C群、およびG群株は、様々な効果的な病原性メカニズムを十分に備えた「化膿性」連鎖球菌である。ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(B群)は、依然として、そのランスフィールドB群抗原の産生または他の表現型形質によって確実に同定される。
【0004】
BHS種間の類似性には、病原性因子だけではなく、疾患発症も含まれる。疾患発症に含まれるものは、肺炎、関節炎、膿瘍、鼻咽喉炎、子宮炎、産褥敗血症、新生児敗血症、創傷感染、髄膜炎、腹膜炎、蜂巣炎、膿皮症、壊疽性筋膜炎、毒素性ショック症候群、敗血症、感染性心内膜炎、心膜炎、糸球体腎炎、および骨髄炎である。
【0005】
化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)は、ヒトの咽頭および皮膚、すなわち、その後にこの生物にとっての主な病原巣として機能する部位にコロニー形成する、グラム陽性双球菌である。偏性寄生生物であるこの細菌は、呼吸器分泌物の直接的な接触により、または手から口への経路により伝染する。化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)感染の大部分は、咽頭炎または膿痂疹などの、比較的軽度の疾病である。現在、咽頭炎のみで2000万から3500万の事例が米国のいたるところで存在し、受診および他の関連する出費で約20億ドルの費用を要している。さらに、リウマチ熱、猩紅熱、および糸球体腎炎などの、非化膿性の続発症が、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)感染の結果生じる。世界的に、急性リウマチ熱(ARF)が、小児の心疾患の最も多い原因である(1997.Case definitions for Infectious Conditions Under Public Health Surveillance.CDC)。
【0006】
最初の進入路である咽頭、および皮膚から、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)は、血液、深筋組織および脂肪組織、または肺などの、細菌が通常は見出されない、身体の他の部分に広がり得、侵襲性感染を生じさせる可能性がある。侵襲性化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)疾患の、最も深刻であるが極めてまれな形態の2つは、壊疽性筋膜炎および連鎖球菌毒素性ショック症候群(STSS)である。壊疽性筋膜炎(マスメディアでは「人食いバクテリア」と記載される)は、筋肉組織および脂肪組織の破壊性感染である。STSSは、腎臓、肝臓、および肺などの内臓に対するショックおよび損傷を生じさせる、急速に進行する感染である。このダメージのほとんどは、細菌の成長に起因する局所的なダメージよりもむしろ、毒血症に起因する。
【0007】
1995年に、侵襲性化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)感染およびSTSSは、報告義務を伴う疾患となった。咽頭炎および膿痂疹に罹患する数百万人とは対照的に、米国疾病管理予防センター(CDC)が義務付けた事例報告によると、1997年には、米国において15000〜20000例の侵襲性化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)疾患が存在し、その結果、2000人を超える死者をもたらしたことが示されている(1997.Case definitions for Infectious Conditions Under Public Health Surveillance.CDC.)。他の報告は、侵襲性疾患が、1年間で10万人当たり10〜20例にものぼると推定している(Stevens,D.L.1995.Streptococcal toxic−shock syndrome:spectrum of disease,pathogenesis,and new concepts in treatment.Emerg Infect Dis.1:69〜78)。より具体的には、侵襲性疾患の15000〜20000例のうち、1100〜1500例が壊死性筋膜炎の事例であり、1000〜1400例がSTSSの事例であり、それぞれ20%および60%の死亡率を伴う。80%から100%の致死率を有する筋炎の事例もまた重篤な侵襲性疾患に含まれる。さらに10%から15%の人が、他の形態の侵襲性A群連鎖球菌疾患で死亡している。事例報告が1995年に開始されて以来、これらの数は増大しており、過去10年間または20年間にわたり生じた一般的傾向を反映している。さらに、多くの事例が、定義に当てはまる前に早期の診断および治療によってうまく解決されることから、事例の定義の厳密性によって、より少ない数、したがって誤った数がもたらされることが一般に認められている。
【0008】
化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)は、ペニシリンおよびその誘導体に対して感受性であり続けるが、治療はこの生物を必ずしも根絶させるわけではない。抗生物質療法にも関わらず、季節に応じて、ヒト集団のおよそ5%〜20%がキャリアである(Stevens,D.L.1995.Streptococcal toxic−shock syndrome:spectrum of disease,pathogenesis,and new concepts in treatment.Emerg Infect Dis.1:69〜78)。この理由は、完全には明らかではなく、様々なメカニズムを伴う可能性がある。重篤な侵襲性感染の事例において、治療は、積極的な外科的介入を要することが多い。STSSまたは関連する疾患を伴う事例では、組織にうまく侵入し、外毒素の産生を防ぐため、クリンダマイシン(タンパク質合成阻害剤)が好ましい抗生物質である。テトラサイクリン、サルファに対する、また最近ではエリスロマイシンに対する、ある程度の耐性が報告されている。β溶血性感染を予防および治療するための組成物が依然として必要とされていることは明らかである。
【0009】
多くの病原性因子が、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)について特定されており、そのいくつかは分泌型であり、いくつかは表面局在型である。これはカプセル化されているが、カプセルは、ヒアルロン酸で構成されており、また、哺乳動物細胞によって一般に発現され、免疫原性ではないため、免疫原性組成物に含めるための候補抗原としては適していない(Dale,J.B.、R.G.Washburn、M.B.Marques、およびM.R.Wessels.1996.Hyaluronate capsule and surface M protein in resistance to opsonization of group A streptococci.Infect Immun.64:1495〜501)。T抗原および炭水化物群が他の候補であるが、これはまた、心臓組織に対する交差反応性抗体も誘発する可能性がある。リポタイコ酸は、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の表面に存在するが、LPSと類似した安全上の懸念をもたらす。
【0010】
最も多く存在する表面タンパク質は、その構造上の類似性から、Mタンパク質または「M様」タンパク質と呼ばれるタンパク質ファミリーに該当する。このクラスのメンバーは、貪食作用の阻害において類似の生物学的役割を有するが、それらは各々、固有の基質結合特性を有する。このファミリーの最も特徴付けされたタンパク質は、らせん状Mタンパク質である。同種のM株に対する抗体は、オプソニン性および防御性であることが示されている(Dale,J.B.、R.W.Baird、H.S.Courtney、D.L.Hasty、およびM.S.Bronze.1994.Passive protection of mice against group A streptococcal pharyngeal infection by lipoteichoic acid.J Infect Dis.169:319〜23、Dale,J.B.、M.Simmons、E.C.Chiang、およびE.Y.Chiang.1996.Recombinant、Ellen,R.P.、およびR.J.Gibbons.1972.M protein−associated adherence of Streptococcus pyogenes to epithelial surfaces:prerequisite for virulence.Infect Immun.5:826〜830.)。候補抗原としてのMタンパク質の使用を困難にしているのは、同定されているおよそ100個の異なる血清型のMタンパク質が存在しており、いくつかはさらに未分類であるという事実である。典型的には、血清型M1、M3、M6、M12、およびM18で例示される、クラスIのM血清型は、咽頭炎、猩紅熱、およびリウマチ熱に関連し、免疫グロブリン結合タンパク質を発現しない。M2およびM49などの、クラスIIのM血清型は、より一般的な局所的皮膚感染および続発性の糸球体腎炎に関連し、免疫グロブリン結合タンパク質を発現する(Podbielski,A.、A.Flosdorff、およびJ.Weber−Heynemann.1995.The group A streptococcal virR49 gene controls expression of four structural vir regulon genes.Infect Immun.63:9〜20)。M血清型に対する抗体の異種の交差反応性は、もし存在しても、わずかであることに注意することが重要である。これらの抗体がリウマチ熱において果たす役割も、同程度に重要である。Mタンパク質の特異的領域は、宿主の心臓組織と交差反応する抗体を誘発し、細胞のダメージを生じさせるか、または細胞のダメージと少なくとも相関する(Cunningham,M.W.、およびA.Quinn.1997.Immunological crossreactivity between the class I epitope of streptococcal M protein and myosin.Adv Exp Med Biol.418:887〜921、Quinn,A.、K.Ward、V.A.Fischetti、M.Hemric、およびM.W.Cunningham.1998.Immunological relationship between the class I epitope of streptococcal M protein and myosin.Infect Immun.66:4418〜24.)。
【0011】
Mタンパク質およびM様タンパク質は、ソルターゼの標的となるLPXTGモチーフにより規定される表面局在化タンパク質の大きなファミリーに属する(Mazmanian,S.K.、G.Liu、H.Ton−That、およびO.Schneewind.1999.Staphylococcus aureus sortase,an enzyme that anchors surface proteins to the cell wall.Science.285:760〜3、Ton−That,H.、G.Liu、S.K.Mazmanian、K.F.Faull、およびO.Schneewind.1999.Purification and characterization of sortase,the transpeptidase that cleaves surface proteins of Staphylococcus aureus at the LPXTG motif.Proc Natl Acad Sci USA.96:12424〜12429)。タンパク質のカルボキシ末端の近くに位置するこのモチーフは、LPXTGモチーフのスレオニン残基とグリシン残基との間で、ソルターゼによってまず切断される。切断されると、タンパク質は、スレオニンのカルボキシルを介して、ペプチドグリカンにおけるアミノ酸架橋の遊離アミド基に、共有結合によって接着し、その結果、タンパク質は、細菌細胞の表面に永続的に接着される。ソルターゼの標的となるこのタンパク質ファミリーに含まれるものは、C5aペプチダーゼ(Chen,C.C.、およびP.P.Cleary.1989.Cloning and expression of the streptococcal C5a peptidase gene in Escherichia coli:linkage to the type 12 M protein gene.Infect.Immun.57:1740〜1745、Chmouryguina,I.、A.Suvorov、P.Ferrieri、およびP.P.Cleary.1996.Conservation of the C5a peptidase genes in group A and B streptococci.Infect.Immun.64:2387〜2390)、フィブロネクチンへの付着因子(Courtney,H.S.、Y.Li、J.B.Dale、およびD.L.Hasty.1994.Cloning,sequencing,and expression of a fibronectin/fibrinogen−binding protein from group A streptococci.Infect Immun.62:3937〜46、Fogg,G.C.、およびM.G.Caparon.1997.Constitutive expression of fibronectin binding in Streptococcus pyogenes as a result of anaerobic activation of rofA.J Bacteriol.179:6172〜80、Hanski,E.、およびM.Caparon.1992.Protein F,a fibronectin−binding protein,is an adhesion of the group A streptococcus Streptococcus pyogenes.Proc Natl Acad Sci.,USA.89:6172〜76、Hanski,E.、P.A.Horwitz、およびM.G.Caparon.1992.Expression of protein F,the fibronectin−binding protein of Streptococcus pyogenes JRS4,in heterologous streptococcal and enterococcal strains promotes their adherence to respiratory epithelial cells.Infect Immun.60:5119〜5125)、ビトロネクチン、およびIV型コラーゲン、ならびに、プラスミノーゲン、IgA、IgG、およびアルブミンを結合する他のM様タンパク質(Kihlberg,B.M.、M.Collin、A.Olsen、およびL.Bjorck.1999.Protein H,an antiphagocytic surface protein in Streptococcus pyogenes.Infect Immun.67:1708〜14)である。
【0012】
多くの分泌型タンパク質が記載されており、そのうちのいくつかは毒素であると考えられている。重篤な侵襲性疾患および連鎖球菌毒素性ショック症候群(STSS)の事例から得られる、ほとんどの化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)分離株は、化膿連鎖球菌外毒素(SPE)AおよびCを産生する(Cockerill,F.R.,3rd、R.L.Thompson、J.M.Musser、P.M.Schlievert、J.Talbot、K.E.Holley、W.S.Harmsen、D.M.Ilstrup、P.C.Kohner、M.H.Kim、B.Frankfort、J.M.Manahan、J.M.Steckelberg、F.Roberson、およびW.R.Wilson.1998.Molecular,serological,and clinical features of 16 consecutive cases of invasive streptococcal disease.Southeastern Minnesota Streptococcal Working Group.Clin Infect Dis.26:1448〜58)。他の化膿性外毒素もまた、オクラホマ大学で完了した化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のゲノム配列において同定および特徴付けされており、前記配列は、GenBankに提出され、アクセッション番号AE004092を付与されている(Proft,T.、S.Louise Moffatt、C.J.Berkahn、およびJ.D.Fraser.1999.Identification and Characterization of Novel Superantigens from Streptococcus pyogenes.J Exp Med.189:89〜102)。毒素性ショック様症候群毒素、連鎖球菌超抗原(Reda,K.B.、V.Kapur、D.Goela、J.G.Lamphear、J.M.Musser、およびR.R.Rich.1996.Phylogenetic distribution of streptococcal superantigen SSA allelic variants provides evidence for horizontal transfer of ssa within Streptococcus pyogenes.Infect Immun.64:1161〜5)、およびマイトジェン因子(Yutsudo,T.、K.Okumura、M.Iwasaki、A.Hara、S.Kamitani、W.Minamide、H.Igarashi、およびY.Hinuma.1994.The gene encoding a new mitogenic factor in a Streptococcus pyogenes strain is distributed only in group A streptococci.Infection and Immunity.62:4000〜4004)などの他の毒素は、疾患において、それほど明確な役割は果たさない。ストレプトリジンOもまた、IL−βの放出を生じさせるため、可能性のある候補抗原であると考えられ得る。さらに、システインプロテアーゼ(Lukomski,S.、C.A.Montgomery、J.Rurangirwa、R.S.Geske、J.P.Barrish、G.J.Adams、およびJ.M.Musser.1999.Extracellular cysteine protease produced by Streptococcus pyogenes participates in the pathogenesis of invasive skin infection and dissemination in mice.Infect Immun.67:1779〜88、Matsuka,Y.V.、S.Pillai、S.Gubba、J.M.Musser、およびS.B.Olmsted.1999.Fibrinogen cleavage by the Streptococcus pyogenes extracellular cysteine protease and generation of antibodies that inhibit enzyme proteolytic activity.Infect Immun.67:4326〜33)、ストレプトキナーゼ(Huang,T.T.、H.Malke、およびJ.J.Ferretti.1989.The streptokinase gene of group A streptococci:cloning,expression in Escherichia coli,and sequence analysis.Mol Microbiol.3:197〜205、Nordstrand,A.、W.M.McShan、J.J.Ferretti、S.E.Holm、およびM.Norgren.2000.Allele substitution of the streptokinase gene reduces the nephritogenic capacity of group A streptococcal strain NZ131.Infect Immun.68:1019〜25)、およびヒアルロニダーゼ(Hynes,W.L.、A.R.Dixon、S.L.Walton、およびL.J.Aridgides.2000.The extracellular hyaluronidase gene(hylA)of Streptococcus pyogenes.FEMS Microbiol Lett.184:109〜12、Hynes,W.L.、L.Hancock、およびJ.J.Ferretti.1995.Analysis of a second bacteriophage hyaluronidase gene from Streptococcus pyogenes:evidence for a third hyaluronidase involved in extracellular enzymatic activity.Infect Immun.63:3015〜20)を含む、様々な分泌型酵素も同定されている。
【0013】
化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)によって産生される、既知の病原性因子の数を考慮すると、β溶血性連鎖球菌の免疫原性組成物が有効なものとなるために重要な特徴が、感染プロセスの初期にコロニー形成を予防または制限する応答を刺激する能力であることは明らかである。この予防的応答は、付着を妨害し、かつ/またはオプソニン化貪食作用を介する細胞のクリアランスを強化させるであろう。Mタンパク質に対する抗体は、オプソニン性であることが示されており、タンパク質の抗貪食特性を克服するためのメカニズムをもたらし(Jones,K.F.、およびV.A.Fischetti.1988.The importance of the location of antibody binding on the M6 protein for opsonization and phagocytosis of group A M6 streptococci.J Exp Med.167:1114〜23)、これは、抗血清型Bのカプセル抗体が、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)Bにより生じる疾患からの防御を実証しているものと、ほぼ同じ様式である(Madore,D.V.1998.Characterization of immune response as an indicator of Haemophilus influenzae type b vaccine efficacy.Pediatr Infect Dis J.17:S207〜10)。さらに、タンパク質Fに特異的な抗体は、組織培養細胞による付着および内在化を妨害することが示されている(Molinari,G.、S.R.Talay、P.Valentin−Weigand、M.Rohde、およびG.S.Chhatwal.1997.The fibronectin−binding protein of Streptococcus pyogenes,SfbI,is involved in the internalization of group A streptococci by epithelial cells.Infect Immun.65:1357〜63)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
依然として、A、B、C、およびG群を含むβ溶血性連鎖球菌により生じる感染を予防または改善するための免疫原性組成物および方法の開発が必要である。また、広範なBHS細菌に対する免疫性をもたらす免疫原性組成物の提供も依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの必要性および他の必要性を満たすため、かつその目的を考慮して、本発明は、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来のものを含む、A、B、C、および/またはD群の連鎖球菌を含むβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染から感受性哺乳動物を防御するための、免疫原性組成物を提供する。これらの免疫原性組成物は、以下にさらに完全に記載される2つ以上のポリペプチドの混合物を包含する。本発明はまた、有効な量の免疫原性組成物を投与して、免疫原性組成物内に含有される特異的ポリペプチドに対する抗体を生じさせることによって、感受性哺乳動物においてこのようなコロニー形成を予防または改善する方法を提供する。本発明はさらに、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のポリペプチドおよびポリヌクレオチド、組換え材料、ならびにそれらの産生方法も提供する。本発明の別の態様は、このような化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを使用するための方法に関する。ポリペプチドおよびポリヌクレオチドはまた、β溶血性連鎖球菌により生じる感染を予防または改善するための薬剤の製造において使用することができる。
【0016】
本発明の免疫原性組成物において利用されるポリペプチドには、図2、4、6、8、または10のいずれかのアミノ酸配列の少なくとも1つを包含する、単離されたポリペプチドが含まれる。本発明はまた、前述のアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、およびこれらの成熟ポリペプチドを含む。本発明はさらに、これらのポリペプチドの免疫原性断片および生物学的等価物を含む。また、本発明のポリペプチドに免疫特異的に結合する抗体も提供される。
【0017】
本発明のポリヌクレオチドには、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を包含する、単離されたポリヌクレオチドが含まれる。これらのポリヌクレオチドには、図1、3、5、7、または9のいずれかのヌクレオチド配列の少なくとも1つを包含する、単離されたポリヌクレオチドが含まれ、遺伝子コードの縮重の結果として本発明のポリペプチドを同様にコードする、他のヌクレオチド配列もまた含まれる。本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を包含する、単離されたポリヌクレオチド、および、前述のヌクレオチド配列のいずれかに対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を包含する、単離されたポリヌクレオチドを含む。さらに、本発明の単離されたポリヌクレオチドには、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、前述の配列のいずれかのヌクレオチド配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、およびこれらのポリヌクレオチドに完全に相補的なヌクレオチド配列が含まれる。さらに、本発明は、これらのポリヌクレオチドを包含する発現ベクターおよび宿主細胞を含む。
【0018】
本発明はまた、免疫原性となる量の少なくとも2つ以上の成分(SCP(図2(配列番号2)、ならびにORF554によってコードされるペプチド(ペプチジルプロピルイソメラーゼ(図4(配列番号4))、ORF1218によってコードされるペプチド(機能未知タンパク質(図6(配列番号6))、ORF1358によってコードされるペプチド(推定付着タンパク質(図8(配列番号8))、およびORF2459によってコードされるペプチド(表面リポタンパク質(図10(配列番号10))を包含する免疫原性組成物を提供し、前記成分のそれぞれは、本発明のポリペプチドを、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌のコロニー形成または感染を予防または改善するために有効な量で包含する。各成分は、ポリペプチド自体を包含してもよく、または、ポリペプチドとβ溶血性連鎖球菌のコロニー形成または感染の予防および/または改善において用いることができる任意の他の物質(例えば、1つまたは複数の化学物質、タンパク質など)とを包含してもよい。これらの免疫原性組成物は、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に、または多糖に、コンジュゲートまたは結合されていてもよいポリペプチドの少なくとも一部をさらに包含することができる。
【0019】
本発明はまた、β溶血性連鎖球菌のコロニー形成または感染から感受性哺乳動物を防御する方法を含む。一実施形態において、本方法は、免疫原性となる量の本発明のポリペプチドを包含する、有効な量の2つ以上の免疫原性組成物を、哺乳動物に投与することを包含し、この量は、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌のコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である。成分のこのような組合せは、広範な群に対するこのような防御を提供するために有効であり、別々に投与された個別の成分よりも優れた免疫応答を一般にもたらすことが見出されている。本発明の免疫原性組成物は、任意の従来の経路、例えば、皮下注射もしくは筋肉内注射によって、経口摂取によって、または鼻腔内に投与することができる。
【0020】
本発明はさらに、免疫原性組成物を提供する。一実施形態において、免疫原性組成物は、少なくとも1つの本発明のポリペプチドを包含する。別の実施形態において、免疫原性組成物は、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドを包含する。
【0021】
前述の全体的な記載および以下の詳細な記載は本発明の例示的なものであるが、限定的なものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】C5aペプチダーゼをコードする核酸配列を表す図である(「SCP」、配列番号1)。
【図2】SCPのアミノ酸配列を表す図である(配列番号2)。
【図3】ペプチジルプロピルイソメラーゼをコードするORF554の核酸配列を表す図である(配列番号3)。
【図4】ペプチジルプロピルイソメラーゼのアミノ酸配列を表す図である(配列番号4)。
【図5】機能未知タンパク質をコードするORF1218の核酸配列を表す図である(配列番号5)。
【図6】機能未知タンパク質のアミノ酸配列を表す図である(配列番号6)。
【図7】推定付着タンパク質をコードするORF1358の核酸配列を表す図である(配列番号7)。
【図8】推定付着タンパク質のアミノ酸配列を表す図である(配列番号8)。
【図9】表面リポタンパク質をコードするORF2459の核酸配列を表す図である(配列番号9)。
【図10】表面リポタンパク質のアミノ酸配列を表す図である(配列番号10)。
【図11】実施例2において試験された、3成分(「Trivax」=SCP、ペプチジルプロピルイソメラーゼ(ORF554)、および推定付着タンパク質(ORF1358))および1成分(「554」=ペプチジルプロピルイソメラーゼ(ORF554))免疫原性組成物の媒質と比較した、死滅パーセンテージを表すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、β溶血性連鎖球菌(BHS)のポリペプチドおよびポリヌクレオチド、とりわけ化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のポリペプチドおよびポリヌクレオチド、およびBHS疾患を予防するための多成分免疫原性組成物におけるそれらの使用に関する。より具体的には、本発明は、表面に局在する化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のポリペプチドに関する。本発明はさらに、免疫原性組成物と、2つ以上のポリペプチドの組合せを包含する、β溶血性連鎖球菌感染に対して免疫化するため、およびその感染を低減させるための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
連鎖球菌を分類するための従来の表現型基準には、溶血反応およびランスフィールド血清学的グループ分けの両方が含まれる。しかし、分類学の進歩と共に、β溶血性(寒天プレートにおけるヒツジ赤血球の完全な溶解として定義される)連鎖球菌(BHS)の非近縁種が同一のランスフィールド抗原を産生し得ること、および、種レベルで遺伝的に関連のある株が異種のランスフィールド抗原を有し得ることが、現在では知られている。連鎖球菌の分類学の従来の規則に対するこれらの例外にも関わらず、溶血反応およびランスフィールド血清学的試験は依然として、臨床分離株の同定における第1のステップとして連鎖球菌を大まかなカテゴリーに分けるために、用いることができる。Ruoff,K.L.、R.A.Whiley、およびD.Beighton.1999.Streptococcus.In P.R.Murray、E.J.Baron、M.A.Pfaller、F.C.Tenover、およびR.H.Yolken(編)、Manual of Clinical Microbiology.American Society of Microbiology Press、Washington D.C.
【0003】
ランスフィールドA、C、またはG群の抗原を有するβ溶血性分離株は、大コロニー形成型(直径>0.5mm)および小コロニー形成型(直径<0.5mm)という2つの群にさらに分割することができる。大コロニー形成A群(化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes))、C群、およびG群株は、様々な効果的な病原性メカニズムを十分に備えた「化膿性」連鎖球菌である。ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(B群)は、依然として、そのランスフィールドB群抗原の産生または他の表現型形質によって確実に同定される。
【0004】
BHS種間の類似性には、病原性因子だけではなく、疾患発症も含まれる。疾患発症に含まれるものは、肺炎、関節炎、膿瘍、鼻咽喉炎、子宮炎、産褥敗血症、新生児敗血症、創傷感染、髄膜炎、腹膜炎、蜂巣炎、膿皮症、壊疽性筋膜炎、毒素性ショック症候群、敗血症、感染性心内膜炎、心膜炎、糸球体腎炎、および骨髄炎である。
【0005】
化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)は、ヒトの咽頭および皮膚、すなわち、その後にこの生物にとっての主な病原巣として機能する部位にコロニー形成する、グラム陽性双球菌である。偏性寄生生物であるこの細菌は、呼吸器分泌物の直接的な接触により、または手から口への経路により伝染する。化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)感染の大部分は、咽頭炎または膿痂疹などの、比較的軽度の疾病である。現在、咽頭炎のみで2000万から3500万の事例が米国のいたるところで存在し、受診および他の関連する出費で約20億ドルの費用を要している。さらに、リウマチ熱、猩紅熱、および糸球体腎炎などの、非化膿性の続発症が、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)感染の結果生じる。世界的に、急性リウマチ熱(ARF)が、小児の心疾患の最も多い原因である(1997.Case definitions for Infectious Conditions Under Public Health Surveillance.CDC)。
【0006】
最初の進入路である咽頭、および皮膚から、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)は、血液、深筋組織および脂肪組織、または肺などの、細菌が通常は見出されない、身体の他の部分に広がり得、侵襲性感染を生じさせる可能性がある。侵襲性化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)疾患の、最も深刻であるが極めてまれな形態の2つは、壊疽性筋膜炎および連鎖球菌毒素性ショック症候群(STSS)である。壊疽性筋膜炎(マスメディアでは「人食いバクテリア」と記載される)は、筋肉組織および脂肪組織の破壊性感染である。STSSは、腎臓、肝臓、および肺などの内臓に対するショックおよび損傷を生じさせる、急速に進行する感染である。このダメージのほとんどは、細菌の成長に起因する局所的なダメージよりもむしろ、毒血症に起因する。
【0007】
1995年に、侵襲性化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)感染およびSTSSは、報告義務を伴う疾患となった。咽頭炎および膿痂疹に罹患する数百万人とは対照的に、米国疾病管理予防センター(CDC)が義務付けた事例報告によると、1997年には、米国において15000〜20000例の侵襲性化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)疾患が存在し、その結果、2000人を超える死者をもたらしたことが示されている(1997.Case definitions for Infectious Conditions Under Public Health Surveillance.CDC.)。他の報告は、侵襲性疾患が、1年間で10万人当たり10〜20例にものぼると推定している(Stevens,D.L.1995.Streptococcal toxic−shock syndrome:spectrum of disease,pathogenesis,and new concepts in treatment.Emerg Infect Dis.1:69〜78)。より具体的には、侵襲性疾患の15000〜20000例のうち、1100〜1500例が壊死性筋膜炎の事例であり、1000〜1400例がSTSSの事例であり、それぞれ20%および60%の死亡率を伴う。80%から100%の致死率を有する筋炎の事例もまた重篤な侵襲性疾患に含まれる。さらに10%から15%の人が、他の形態の侵襲性A群連鎖球菌疾患で死亡している。事例報告が1995年に開始されて以来、これらの数は増大しており、過去10年間または20年間にわたり生じた一般的傾向を反映している。さらに、多くの事例が、定義に当てはまる前に早期の診断および治療によってうまく解決されることから、事例の定義の厳密性によって、より少ない数、したがって誤った数がもたらされることが一般に認められている。
【0008】
化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)は、ペニシリンおよびその誘導体に対して感受性であり続けるが、治療はこの生物を必ずしも根絶させるわけではない。抗生物質療法にも関わらず、季節に応じて、ヒト集団のおよそ5%〜20%がキャリアである(Stevens,D.L.1995.Streptococcal toxic−shock syndrome:spectrum of disease,pathogenesis,and new concepts in treatment.Emerg Infect Dis.1:69〜78)。この理由は、完全には明らかではなく、様々なメカニズムを伴う可能性がある。重篤な侵襲性感染の事例において、治療は、積極的な外科的介入を要することが多い。STSSまたは関連する疾患を伴う事例では、組織にうまく侵入し、外毒素の産生を防ぐため、クリンダマイシン(タンパク質合成阻害剤)が好ましい抗生物質である。テトラサイクリン、サルファに対する、また最近ではエリスロマイシンに対する、ある程度の耐性が報告されている。β溶血性感染を予防および治療するための組成物が依然として必要とされていることは明らかである。
【0009】
多くの病原性因子が、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)について特定されており、そのいくつかは分泌型であり、いくつかは表面局在型である。これはカプセル化されているが、カプセルは、ヒアルロン酸で構成されており、また、哺乳動物細胞によって一般に発現され、免疫原性ではないため、免疫原性組成物に含めるための候補抗原としては適していない(Dale,J.B.、R.G.Washburn、M.B.Marques、およびM.R.Wessels.1996.Hyaluronate capsule and surface M protein in resistance to opsonization of group A streptococci.Infect Immun.64:1495〜501)。T抗原および炭水化物群が他の候補であるが、これはまた、心臓組織に対する交差反応性抗体も誘発する可能性がある。リポタイコ酸は、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の表面に存在するが、LPSと類似した安全上の懸念をもたらす。
【0010】
最も多く存在する表面タンパク質は、その構造上の類似性から、Mタンパク質または「M様」タンパク質と呼ばれるタンパク質ファミリーに該当する。このクラスのメンバーは、貪食作用の阻害において類似の生物学的役割を有するが、それらは各々、固有の基質結合特性を有する。このファミリーの最も特徴付けされたタンパク質は、らせん状Mタンパク質である。同種のM株に対する抗体は、オプソニン性および防御性であることが示されている(Dale,J.B.、R.W.Baird、H.S.Courtney、D.L.Hasty、およびM.S.Bronze.1994.Passive protection of mice against group A streptococcal pharyngeal infection by lipoteichoic acid.J Infect Dis.169:319〜23、Dale,J.B.、M.Simmons、E.C.Chiang、およびE.Y.Chiang.1996.Recombinant、Ellen,R.P.、およびR.J.Gibbons.1972.M protein−associated adherence of Streptococcus pyogenes to epithelial surfaces:prerequisite for virulence.Infect Immun.5:826〜830.)。候補抗原としてのMタンパク質の使用を困難にしているのは、同定されているおよそ100個の異なる血清型のMタンパク質が存在しており、いくつかはさらに未分類であるという事実である。典型的には、血清型M1、M3、M6、M12、およびM18で例示される、クラスIのM血清型は、咽頭炎、猩紅熱、およびリウマチ熱に関連し、免疫グロブリン結合タンパク質を発現しない。M2およびM49などの、クラスIIのM血清型は、より一般的な局所的皮膚感染および続発性の糸球体腎炎に関連し、免疫グロブリン結合タンパク質を発現する(Podbielski,A.、A.Flosdorff、およびJ.Weber−Heynemann.1995.The group A streptococcal virR49 gene controls expression of four structural vir regulon genes.Infect Immun.63:9〜20)。M血清型に対する抗体の異種の交差反応性は、もし存在しても、わずかであることに注意することが重要である。これらの抗体がリウマチ熱において果たす役割も、同程度に重要である。Mタンパク質の特異的領域は、宿主の心臓組織と交差反応する抗体を誘発し、細胞のダメージを生じさせるか、または細胞のダメージと少なくとも相関する(Cunningham,M.W.、およびA.Quinn.1997.Immunological crossreactivity between the class I epitope of streptococcal M protein and myosin.Adv Exp Med Biol.418:887〜921、Quinn,A.、K.Ward、V.A.Fischetti、M.Hemric、およびM.W.Cunningham.1998.Immunological relationship between the class I epitope of streptococcal M protein and myosin.Infect Immun.66:4418〜24.)。
【0011】
Mタンパク質およびM様タンパク質は、ソルターゼの標的となるLPXTGモチーフにより規定される表面局在化タンパク質の大きなファミリーに属する(Mazmanian,S.K.、G.Liu、H.Ton−That、およびO.Schneewind.1999.Staphylococcus aureus sortase,an enzyme that anchors surface proteins to the cell wall.Science.285:760〜3、Ton−That,H.、G.Liu、S.K.Mazmanian、K.F.Faull、およびO.Schneewind.1999.Purification and characterization of sortase,the transpeptidase that cleaves surface proteins of Staphylococcus aureus at the LPXTG motif.Proc Natl Acad Sci USA.96:12424〜12429)。タンパク質のカルボキシ末端の近くに位置するこのモチーフは、LPXTGモチーフのスレオニン残基とグリシン残基との間で、ソルターゼによってまず切断される。切断されると、タンパク質は、スレオニンのカルボキシルを介して、ペプチドグリカンにおけるアミノ酸架橋の遊離アミド基に、共有結合によって接着し、その結果、タンパク質は、細菌細胞の表面に永続的に接着される。ソルターゼの標的となるこのタンパク質ファミリーに含まれるものは、C5aペプチダーゼ(Chen,C.C.、およびP.P.Cleary.1989.Cloning and expression of the streptococcal C5a peptidase gene in Escherichia coli:linkage to the type 12 M protein gene.Infect.Immun.57:1740〜1745、Chmouryguina,I.、A.Suvorov、P.Ferrieri、およびP.P.Cleary.1996.Conservation of the C5a peptidase genes in group A and B streptococci.Infect.Immun.64:2387〜2390)、フィブロネクチンへの付着因子(Courtney,H.S.、Y.Li、J.B.Dale、およびD.L.Hasty.1994.Cloning,sequencing,and expression of a fibronectin/fibrinogen−binding protein from group A streptococci.Infect Immun.62:3937〜46、Fogg,G.C.、およびM.G.Caparon.1997.Constitutive expression of fibronectin binding in Streptococcus pyogenes as a result of anaerobic activation of rofA.J Bacteriol.179:6172〜80、Hanski,E.、およびM.Caparon.1992.Protein F,a fibronectin−binding protein,is an adhesion of the group A streptococcus Streptococcus pyogenes.Proc Natl Acad Sci.,USA.89:6172〜76、Hanski,E.、P.A.Horwitz、およびM.G.Caparon.1992.Expression of protein F,the fibronectin−binding protein of Streptococcus pyogenes JRS4,in heterologous streptococcal and enterococcal strains promotes their adherence to respiratory epithelial cells.Infect Immun.60:5119〜5125)、ビトロネクチン、およびIV型コラーゲン、ならびに、プラスミノーゲン、IgA、IgG、およびアルブミンを結合する他のM様タンパク質(Kihlberg,B.M.、M.Collin、A.Olsen、およびL.Bjorck.1999.Protein H,an antiphagocytic surface protein in Streptococcus pyogenes.Infect Immun.67:1708〜14)である。
【0012】
多くの分泌型タンパク質が記載されており、そのうちのいくつかは毒素であると考えられている。重篤な侵襲性疾患および連鎖球菌毒素性ショック症候群(STSS)の事例から得られる、ほとんどの化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)分離株は、化膿連鎖球菌外毒素(SPE)AおよびCを産生する(Cockerill,F.R.,3rd、R.L.Thompson、J.M.Musser、P.M.Schlievert、J.Talbot、K.E.Holley、W.S.Harmsen、D.M.Ilstrup、P.C.Kohner、M.H.Kim、B.Frankfort、J.M.Manahan、J.M.Steckelberg、F.Roberson、およびW.R.Wilson.1998.Molecular,serological,and clinical features of 16 consecutive cases of invasive streptococcal disease.Southeastern Minnesota Streptococcal Working Group.Clin Infect Dis.26:1448〜58)。他の化膿性外毒素もまた、オクラホマ大学で完了した化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のゲノム配列において同定および特徴付けされており、前記配列は、GenBankに提出され、アクセッション番号AE004092を付与されている(Proft,T.、S.Louise Moffatt、C.J.Berkahn、およびJ.D.Fraser.1999.Identification and Characterization of Novel Superantigens from Streptococcus pyogenes.J Exp Med.189:89〜102)。毒素性ショック様症候群毒素、連鎖球菌超抗原(Reda,K.B.、V.Kapur、D.Goela、J.G.Lamphear、J.M.Musser、およびR.R.Rich.1996.Phylogenetic distribution of streptococcal superantigen SSA allelic variants provides evidence for horizontal transfer of ssa within Streptococcus pyogenes.Infect Immun.64:1161〜5)、およびマイトジェン因子(Yutsudo,T.、K.Okumura、M.Iwasaki、A.Hara、S.Kamitani、W.Minamide、H.Igarashi、およびY.Hinuma.1994.The gene encoding a new mitogenic factor in a Streptococcus pyogenes strain is distributed only in group A streptococci.Infection and Immunity.62:4000〜4004)などの他の毒素は、疾患において、それほど明確な役割は果たさない。ストレプトリジンOもまた、IL−βの放出を生じさせるため、可能性のある候補抗原であると考えられ得る。さらに、システインプロテアーゼ(Lukomski,S.、C.A.Montgomery、J.Rurangirwa、R.S.Geske、J.P.Barrish、G.J.Adams、およびJ.M.Musser.1999.Extracellular cysteine protease produced by Streptococcus pyogenes participates in the pathogenesis of invasive skin infection and dissemination in mice.Infect Immun.67:1779〜88、Matsuka,Y.V.、S.Pillai、S.Gubba、J.M.Musser、およびS.B.Olmsted.1999.Fibrinogen cleavage by the Streptococcus pyogenes extracellular cysteine protease and generation of antibodies that inhibit enzyme proteolytic activity.Infect Immun.67:4326〜33)、ストレプトキナーゼ(Huang,T.T.、H.Malke、およびJ.J.Ferretti.1989.The streptokinase gene of group A streptococci:cloning,expression in Escherichia coli,and sequence analysis.Mol Microbiol.3:197〜205、Nordstrand,A.、W.M.McShan、J.J.Ferretti、S.E.Holm、およびM.Norgren.2000.Allele substitution of the streptokinase gene reduces the nephritogenic capacity of group A streptococcal strain NZ131.Infect Immun.68:1019〜25)、およびヒアルロニダーゼ(Hynes,W.L.、A.R.Dixon、S.L.Walton、およびL.J.Aridgides.2000.The extracellular hyaluronidase gene(hylA)of Streptococcus pyogenes.FEMS Microbiol Lett.184:109〜12、Hynes,W.L.、L.Hancock、およびJ.J.Ferretti.1995.Analysis of a second bacteriophage hyaluronidase gene from Streptococcus pyogenes:evidence for a third hyaluronidase involved in extracellular enzymatic activity.Infect Immun.63:3015〜20)を含む、様々な分泌型酵素も同定されている。
【0013】
化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)によって産生される、既知の病原性因子の数を考慮すると、β溶血性連鎖球菌の免疫原性組成物が有効なものとなるために重要な特徴が、感染プロセスの初期にコロニー形成を予防または制限する応答を刺激する能力であることは明らかである。この予防的応答は、付着を妨害し、かつ/またはオプソニン化貪食作用を介する細胞のクリアランスを強化させるであろう。Mタンパク質に対する抗体は、オプソニン性であることが示されており、タンパク質の抗貪食特性を克服するためのメカニズムをもたらし(Jones,K.F.、およびV.A.Fischetti.1988.The importance of the location of antibody binding on the M6 protein for opsonization and phagocytosis of group A M6 streptococci.J Exp Med.167:1114〜23)、これは、抗血清型Bのカプセル抗体が、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)Bにより生じる疾患からの防御を実証しているものと、ほぼ同じ様式である(Madore,D.V.1998.Characterization of immune response as an indicator of Haemophilus influenzae type b vaccine efficacy.Pediatr Infect Dis J.17:S207〜10)。さらに、タンパク質Fに特異的な抗体は、組織培養細胞による付着および内在化を妨害することが示されている(Molinari,G.、S.R.Talay、P.Valentin−Weigand、M.Rohde、およびG.S.Chhatwal.1997.The fibronectin−binding protein of Streptococcus pyogenes,SfbI,is involved in the internalization of group A streptococci by epithelial cells.Infect Immun.65:1357〜63)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
依然として、A、B、C、およびG群を含むβ溶血性連鎖球菌により生じる感染を予防または改善するための免疫原性組成物および方法の開発が必要である。また、広範なBHS細菌に対する免疫性をもたらす免疫原性組成物の提供も依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの必要性および他の必要性を満たすため、かつその目的を考慮して、本発明は、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来のものを含む、A、B、C、および/またはD群の連鎖球菌を含むβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染から感受性哺乳動物を防御するための、免疫原性組成物を提供する。これらの免疫原性組成物は、以下にさらに完全に記載される2つ以上のポリペプチドの混合物を包含する。本発明はまた、有効な量の免疫原性組成物を投与して、免疫原性組成物内に含有される特異的ポリペプチドに対する抗体を生じさせることによって、感受性哺乳動物においてこのようなコロニー形成を予防または改善する方法を提供する。本発明はさらに、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のポリペプチドおよびポリヌクレオチド、組換え材料、ならびにそれらの産生方法も提供する。本発明の別の態様は、このような化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを使用するための方法に関する。ポリペプチドおよびポリヌクレオチドはまた、β溶血性連鎖球菌により生じる感染を予防または改善するための薬剤の製造において使用することができる。
【0016】
本発明の免疫原性組成物において利用されるポリペプチドには、図2、4、6、8、または10のいずれかのアミノ酸配列の少なくとも1つを包含する、単離されたポリペプチドが含まれる。本発明はまた、前述のアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、およびこれらの成熟ポリペプチドを含む。本発明はさらに、これらのポリペプチドの免疫原性断片および生物学的等価物を含む。また、本発明のポリペプチドに免疫特異的に結合する抗体も提供される。
【0017】
本発明のポリヌクレオチドには、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を包含する、単離されたポリヌクレオチドが含まれる。これらのポリヌクレオチドには、図1、3、5、7、または9のいずれかのヌクレオチド配列の少なくとも1つを包含する、単離されたポリヌクレオチドが含まれ、遺伝子コードの縮重の結果として本発明のポリペプチドを同様にコードする、他のヌクレオチド配列もまた含まれる。本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を包含する、単離されたポリヌクレオチド、および、前述のヌクレオチド配列のいずれかに対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を包含する、単離されたポリヌクレオチドを含む。さらに、本発明の単離されたポリヌクレオチドには、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、前述の配列のいずれかのヌクレオチド配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、およびこれらのポリヌクレオチドに完全に相補的なヌクレオチド配列が含まれる。さらに、本発明は、これらのポリヌクレオチドを包含する発現ベクターおよび宿主細胞を含む。
【0018】
本発明はまた、免疫原性となる量の少なくとも2つ以上の成分(SCP(図2(配列番号2)、ならびにORF554によってコードされるペプチド(ペプチジルプロピルイソメラーゼ(図4(配列番号4))、ORF1218によってコードされるペプチド(機能未知タンパク質(図6(配列番号6))、ORF1358によってコードされるペプチド(推定付着タンパク質(図8(配列番号8))、およびORF2459によってコードされるペプチド(表面リポタンパク質(図10(配列番号10))を包含する免疫原性組成物を提供し、前記成分のそれぞれは、本発明のポリペプチドを、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌のコロニー形成または感染を予防または改善するために有効な量で包含する。各成分は、ポリペプチド自体を包含してもよく、または、ポリペプチドとβ溶血性連鎖球菌のコロニー形成または感染の予防および/または改善において用いることができる任意の他の物質(例えば、1つまたは複数の化学物質、タンパク質など)とを包含してもよい。これらの免疫原性組成物は、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に、または多糖に、コンジュゲートまたは結合されていてもよいポリペプチドの少なくとも一部をさらに包含することができる。
【0019】
本発明はまた、β溶血性連鎖球菌のコロニー形成または感染から感受性哺乳動物を防御する方法を含む。一実施形態において、本方法は、免疫原性となる量の本発明のポリペプチドを包含する、有効な量の2つ以上の免疫原性組成物を、哺乳動物に投与することを包含し、この量は、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌のコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である。成分のこのような組合せは、広範な群に対するこのような防御を提供するために有効であり、別々に投与された個別の成分よりも優れた免疫応答を一般にもたらすことが見出されている。本発明の免疫原性組成物は、任意の従来の経路、例えば、皮下注射もしくは筋肉内注射によって、経口摂取によって、または鼻腔内に投与することができる。
【0020】
本発明はさらに、免疫原性組成物を提供する。一実施形態において、免疫原性組成物は、少なくとも1つの本発明のポリペプチドを包含する。別の実施形態において、免疫原性組成物は、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドを包含する。
【0021】
前述の全体的な記載および以下の詳細な記載は本発明の例示的なものであるが、限定的なものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】C5aペプチダーゼをコードする核酸配列を表す図である(「SCP」、配列番号1)。
【図2】SCPのアミノ酸配列を表す図である(配列番号2)。
【図3】ペプチジルプロピルイソメラーゼをコードするORF554の核酸配列を表す図である(配列番号3)。
【図4】ペプチジルプロピルイソメラーゼのアミノ酸配列を表す図である(配列番号4)。
【図5】機能未知タンパク質をコードするORF1218の核酸配列を表す図である(配列番号5)。
【図6】機能未知タンパク質のアミノ酸配列を表す図である(配列番号6)。
【図7】推定付着タンパク質をコードするORF1358の核酸配列を表す図である(配列番号7)。
【図8】推定付着タンパク質のアミノ酸配列を表す図である(配列番号8)。
【図9】表面リポタンパク質をコードするORF2459の核酸配列を表す図である(配列番号9)。
【図10】表面リポタンパク質のアミノ酸配列を表す図である(配列番号10)。
【図11】実施例2において試験された、3成分(「Trivax」=SCP、ペプチジルプロピルイソメラーゼ(ORF554)、および推定付着タンパク質(ORF1358))および1成分(「554」=ペプチジルプロピルイソメラーゼ(ORF554))免疫原性組成物の媒質と比較した、死滅パーセンテージを表すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のポリペプチドの混合物を包含する免疫原性組成物であって、各ポリペプチドが、
(a)C5aペプチダーゼ(「SCP」)(図1(配列番号1))、
(b)オープンリーディングフレーム(「ORF」)554(図3(配列番号3))、
(c)ORF1218(図5(配列番号5))、
(d)ORF1358(図7(配列番号7))、および
(e)ORF2459(図9(配列番号9))
からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、免疫原性組成物。
【請求項2】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
各ポリペプチドが、前記ポリペプチドを特異的に認識する抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
2つ以上のポリペプチドの混合物を包含する免疫原性組成物であって、各ポリペプチドが、
(a)SCP(図2(配列番号2))、
(b)ペプチジルプロピルイソメラーゼ(図4(配列番号4))、
(c)機能未知タンパク質(図6(配列番号6))、
(d)推定付着タンパク質(図8(配列番号8))、および
(e)表面リポタンパク質(図10(配列番号10))
からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、免疫原性組成物。
【請求項10】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
各ポリペプチドが、前記ポリペプチドを特異的に認識する抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
β溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染から感受性哺乳動物を防御する方法であって、有効な量の請求項1に記載の免疫原性組成物を前記哺乳動物に投与することを包含し、各ポリペプチドが、前記ポリペプチドに特異的な抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である方法。
【請求項18】
免疫原性組成物が、皮下注射によって、筋肉内注射によって、経口摂取によって、鼻腔内に、またはその組合せで投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物がヒトである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
β溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染から感受性哺乳動物を防御する方法であって、有効な量の請求項9に記載の免疫原性組成物を前記哺乳動物に投与することを包含し、各ポリペプチドが、前記ポリペプチドに特異的な抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である方法。
【請求項23】
免疫原性組成物が、皮下注射によって、筋肉内注射によって、経口摂取によって、鼻腔内に、またはその組合せで投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物がヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
(a)図1の核酸配列(配列番号1)に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、SCPポリペプチド、
(b)図3の核酸配列(配列番号3)に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、ペプチジルプロピルイソメラーゼポリペプチド、ならびに
(c)(i)図5(配列番号5)、(ii)図7(配列番号7)、および(iii)図9(配列番号9)からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、少なくとも1つの他のポリペプチド
の混合物を包含する、免疫原性組成物。
【請求項28】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項27に記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項27に記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
各ポリペプチドが、前記ポリペプチドを特異的に認識する抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である、請求項27に記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項33に記載の免疫原性組成物。
【請求項35】
(a)図2のアミノ酸配列(配列番号2)に対して少なくとも90%の同一性を有する、SCPポリペプチド、
(b)図4のアミノ酸配列(配列番号4)に対して少なくとも90%の同一性を有する、ペプチジルプロピルイソメラーゼポリペプチド、ならびに
(c)(i)図6(配列番号6)、(ii)図8(配列番号8)、および(iii)図10(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、少なくとも1つの他のポリペプチド
の混合物を包含する、免疫原性組成物。
【請求項36】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項35に記載の免疫原性組成物。
【請求項37】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項36に記載の免疫原性組成物。
【請求項38】
各ポリペプチドが、前記ポリペプチドを特異的に認識する抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である、請求項35に記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項38に記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項38に記載の免疫原性組成物。
【請求項41】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項38に記載の免疫原性組成物。
【請求項42】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項41に記載の免疫原性組成物。
【請求項43】
β溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染から感受性哺乳動物を防御する方法であって、有効な量の請求項27に記載の免疫原性組成物を前記哺乳動物に投与することを包含し、各ポリペプチドが、前記ポリペプチドに特異的な抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である方法。
【請求項44】
免疫原性組成物が、皮下注射によって、筋肉内注射によって、経口摂取によって、鼻腔内に、またはその組合せで投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
哺乳動物がヒトである、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
β溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染から感受性哺乳動物を防御する方法であって、有効な量の請求項35に記載の免疫原性組成物を前記哺乳動物に投与することを包含し、各ポリペプチドが、前記ポリペプチドに特異的な抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である方法。
【請求項49】
免疫原性組成物が、皮下注射によって、筋肉内注射によって、経口摂取によって、鼻腔内に、またはその組合せで投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
哺乳動物がヒトである、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
(a)図2のアミノ酸配列(配列番号2)に対して少なくとも90%の同一性を有する、SCPポリペプチド、
(b)図4のアミノ酸配列(配列番号4)に対して少なくとも90%の同一性を有する、ペプチジルプロピルイソメラーゼポリペプチド、ならびに
(c)図8のアミノ酸配列(配列番号8)に対して少なくとも90%の同一性を有する、推定付着ポリペプチド
の混合物を包含する、免疫原性組成物。
【請求項1】
2つ以上のポリペプチドの混合物を包含する免疫原性組成物であって、各ポリペプチドが、
(a)C5aペプチダーゼ(「SCP」)(図1(配列番号1))、
(b)オープンリーディングフレーム(「ORF」)554(図3(配列番号3))、
(c)ORF1218(図5(配列番号5))、
(d)ORF1358(図7(配列番号7))、および
(e)ORF2459(図9(配列番号9))
からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、免疫原性組成物。
【請求項2】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
各ポリペプチドが、前記ポリペプチドを特異的に認識する抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
2つ以上のポリペプチドの混合物を包含する免疫原性組成物であって、各ポリペプチドが、
(a)SCP(図2(配列番号2))、
(b)ペプチジルプロピルイソメラーゼ(図4(配列番号4))、
(c)機能未知タンパク質(図6(配列番号6))、
(d)推定付着タンパク質(図8(配列番号8))、および
(e)表面リポタンパク質(図10(配列番号10))
からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、免疫原性組成物。
【請求項10】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
各ポリペプチドが、前記ポリペプチドを特異的に認識する抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
β溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染から感受性哺乳動物を防御する方法であって、有効な量の請求項1に記載の免疫原性組成物を前記哺乳動物に投与することを包含し、各ポリペプチドが、前記ポリペプチドに特異的な抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である方法。
【請求項18】
免疫原性組成物が、皮下注射によって、筋肉内注射によって、経口摂取によって、鼻腔内に、またはその組合せで投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物がヒトである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
β溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染から感受性哺乳動物を防御する方法であって、有効な量の請求項9に記載の免疫原性組成物を前記哺乳動物に投与することを包含し、各ポリペプチドが、前記ポリペプチドに特異的な抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である方法。
【請求項23】
免疫原性組成物が、皮下注射によって、筋肉内注射によって、経口摂取によって、鼻腔内に、またはその組合せで投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物がヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
(a)図1の核酸配列(配列番号1)に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、SCPポリペプチド、
(b)図3の核酸配列(配列番号3)に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、ペプチジルプロピルイソメラーゼポリペプチド、ならびに
(c)(i)図5(配列番号5)、(ii)図7(配列番号7)、および(iii)図9(配列番号9)からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、少なくとも1つの他のポリペプチド
の混合物を包含する、免疫原性組成物。
【請求項28】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項27に記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項27に記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
各ポリペプチドが、前記ポリペプチドを特異的に認識する抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である、請求項27に記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項33に記載の免疫原性組成物。
【請求項35】
(a)図2のアミノ酸配列(配列番号2)に対して少なくとも90%の同一性を有する、SCPポリペプチド、
(b)図4のアミノ酸配列(配列番号4)に対して少なくとも90%の同一性を有する、ペプチジルプロピルイソメラーゼポリペプチド、ならびに
(c)(i)図6(配列番号6)、(ii)図8(配列番号8)、および(iii)図10(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、少なくとも1つの他のポリペプチド
の混合物を包含する、免疫原性組成物。
【請求項36】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項35に記載の免疫原性組成物。
【請求項37】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項36に記載の免疫原性組成物。
【請求項38】
各ポリペプチドが、前記ポリペプチドを特異的に認識する抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である、請求項35に記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
生理学的に許容できる媒体をさらに包含する、請求項38に記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
有効な量のアジュバントをさらに包含する、請求項38に記載の免疫原性組成物。
【請求項41】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項38に記載の免疫原性組成物。
【請求項42】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項41に記載の免疫原性組成物。
【請求項43】
β溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染から感受性哺乳動物を防御する方法であって、有効な量の請求項27に記載の免疫原性組成物を前記哺乳動物に投与することを包含し、各ポリペプチドが、前記ポリペプチドに特異的な抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である方法。
【請求項44】
免疫原性組成物が、皮下注射によって、筋肉内注射によって、経口摂取によって、鼻腔内に、またはその組合せで投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
哺乳動物がヒトである、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
β溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染から感受性哺乳動物を防御する方法であって、有効な量の請求項35に記載の免疫原性組成物を前記哺乳動物に投与することを包含し、各ポリペプチドが、前記ポリペプチドに特異的な抗体を生成することができ、前記免疫原性組成物の量が、感受性哺乳動物におけるβ溶血性連鎖球菌によるコロニー形成または感染を予防または改善するために有効である方法。
【請求項49】
免疫原性組成物が、皮下注射によって、筋肉内注射によって、経口摂取によって、鼻腔内に、またはその組合せで投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
β溶血性連鎖球菌が、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、またはG群連鎖球菌である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
β溶血性連鎖球菌が化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
哺乳動物がヒトである、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
(a)図2のアミノ酸配列(配列番号2)に対して少なくとも90%の同一性を有する、SCPポリペプチド、
(b)図4のアミノ酸配列(配列番号4)に対して少なくとも90%の同一性を有する、ペプチジルプロピルイソメラーゼポリペプチド、ならびに
(c)図8のアミノ酸配列(配列番号8)に対して少なくとも90%の同一性を有する、推定付着ポリペプチド
の混合物を包含する、免疫原性組成物。
【図12】実施例3の受動免疫移行の結果を示すグラフである。CFU=コロニー形成単位。
【図13】実施例3の受動免疫移行の結果を示すグラフである。CFU=コロニー形成単位。
【図14】実施例3の受動免疫移行の結果を示すグラフである。CFU=コロニー形成単位。
【図15】実施例3の受動免疫移行の結果を示すグラフである。CFU=コロニー形成単位。
【図16】実施例3の受動免疫移行の結果を示すグラフである。CFU=コロニー形成単位。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、A、B、C、およびG群を含む、β溶血性連鎖球菌によって生じる感染を予防または改善するための免疫原性組成物を提供する。本明細書において挙げられるポリペプチドの2つ以上が共に組み合わされて、免疫原性組成物が作製される。
【0024】
具体的には、一実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、2つ以上のポリペプチドの混合物を包含し、各ポリペプチドは、
(a)C5aペプチダーゼ(「SCP」)(図1(配列番号1))、
(b)オープンリーディングフレーム(「ORF」)554(図3(配列番号3))、
(c)ORF1218(図5(配列番号5))、
(d)ORF1358(図7(配列番号7))、および
(e)ORF2459(図9(配列番号9))
からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0025】
別の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、2つ以上のポリペプチドの混合物を包含し、各ポリペプチドは、
(a)SCP(図2(配列番号2))、
(b)ペプチジルプロピルイソメラーゼ(図4(配列番号4))、
(c)機能未知タンパク質(図6(配列番号6))、
(d)推定付着タンパク質(図8(配列番号8))、および
(e)表面リポタンパク質(図10(配列番号10))
からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する。
【0026】
さらに別の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、
(a)図1の核酸配列(配列番号1)に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、SCPポリペプチド、
(b)図3の核酸配列(配列番号3)に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、ペプチジルプロピルイソメラーゼポリペプチド、ならびに
(c)(i)図5(配列番号5)、(ii)図7(配列番号7)、および(iii)図9(配列番号9)からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、少なくとも1つの他のポリペプチド、
の混合物を包含する。
【0027】
さらに別の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、
(a)図2のアミノ酸配列(配列番号2)に対して少なくとも90%の同一性を有する、SCPポリペプチド、
(b)図4のアミノ酸配列(配列番号4)に対して少なくとも90%の同一性を有する、ペプチジルプロピルイソメラーゼポリペプチド、ならびに
(c)(i)図6(配列番号6)、(ii)図8(配列番号8)、および(iii)図10(配列番号10)からなる群のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、少なくとも1つの他のポリペプチド、
の混合物を包含する。
【0028】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、および「核酸断片」という用語は、本明細書において交換可能に用いられる。これらの用語は、ホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオチドを包含する。「ポリヌクレオチド」は、合成の、非天然の、または改変されたヌクレオチド塩基を含有していてもよい一本鎖または二本鎖のリボ核酸(RNA)ポリマーまたはデオキシリボ核酸(DNA)ポリマーであってよい。DNAのポリマーの形態をしたポリヌクレオチドは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAの1つもしくは複数のセグメント、またはその混合物を包含してもよい。ヌクレオチド塩基は、本明細書においては、一文字のコード、すなわち、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、イノシン(I)、およびウラシル(U)によって示される。
【0029】
本明細書において記載される連鎖球菌ポリヌクレオチドは、標準的なクローニング技術およびスクリーニング技術を用いて得ることができる。これらのポリヌクレオチドは、例えば、ゲノムDNAから、mRNAに由来するcDNAライブラリーから、ゲノムDNAライブラリーから得ることができるか、または、例えば、cDNAライブラリーからのPCRによる、もしくはRT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)を介する、周知の市販されている技術を用いて合成することができる。
【0030】
完全長cDNAを得るために、または短いcDNAを伸長するために、例えばcDNA末端の迅速な増幅方法に基づくもの(RACE)などのいくつかの方法が、当業者に利用可能であり、周知である。Frohmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85、8998〜9002、1988を参照されたい。例えばMARATHON(商標)技術(Clontech Laboratories Inc.)によって例示される、技術の最近の変更によって、長いcDNAの探索が大幅に簡略化されている。MARATHON(商標)技術では、cDNAは、選ばれた組織から抽出されたmRNAから調製され、「アダプター」配列が各末端にライゲーションされている。次に、遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドプライマーとアダプター特異的なオリゴヌクレオチドプライマーとの組合せを用いて、核酸増幅(PCR)が行われて、cDNAの「欠落した」5’末端が増幅される。そして、PCR反応は、増幅産物内でアニーリングするように設計されたプライマーである「ネステッド」プライマー(典型的には、アダプター配列においてさらに3’をアニーリングするアダプター特異的プライマー、および、既知の遺伝子配列においてさらに5’をアニーリングする遺伝子特異的プライマー)を用いて反復される。次に、この反応の生成物を、DNA配列決定によって分析することができ、完全長cDNAが、生成物を既存のcDNAに直接繋いで完全な配列を得ることによって、または5’プライマーの設計のための新たな配列情報を用いて個別の完全長PCRを実施することによって構築される。
【0031】
「組換え」という用語は、例えば、ポリヌクレオチドが、別の形で分離された2つ以上のポリヌクレオチドセグメントの人工的な組合せによって、例えば、化学合成によって、または遺伝子工学技術を用いた単離ポリヌクレオチドの操作によって作製されることを意味する。「組換えDNA構築物」は、少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に結合された、本発明の単離されたポリヌクレオチドのいずれかを包含する。
【0032】
連鎖球菌ポリヌクレオチドのオーソログおよび対立遺伝子変異体は、当技術分野において周知の方法を用いて、容易に同定することができる。ポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体およびオーソログは、図1〜9のうち奇数番号のものにおいて示されるヌクレオチド配列(配列番号1〜9のうち奇数番号のもの)の任意の1つまたは複数に、典型的には少なくとも約90〜95%またはそれ以上同一なヌクレオチド配列、またはその断片を包含し得る。これらのポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体およびオーソログは、図2〜10のうち偶数番号のものの任意の1つまたは複数において示されるアミノ酸配列(配列番号2〜10のうち偶数番号のもの)に少なくとも90%同一なアミノ酸配列を包含するポリペプチドをコードし得る。このようなポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、図1〜9において示されるヌクレオチド配列(配列番号1〜9のうち奇数番号のもの)を有するポリヌクレオチドの任意の1つもしくは複数、またはその断片にハイブリダイズすることができるため、容易に同定することができる。
【0033】
多くのレベルの配列同一性が、関連するポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の同定において有用であることが、当業者によってよく理解されよう。配列のアラインメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENE(商標)バイオインフォマティクス計算パッケージソフト(DNASTAR Inc.、Madison、Wis.)のMEGALIGN(商標)プログラムを用いて行うことができる。配列の複数のアラインメントを、Clustalアラインメント法(HigginsおよびSharp、Gene、73(1):237〜44、1988)を用いて行うことができ、そのデフォルトのパラメータは、例えば、GAP PENALTY=10であり、GAP LENGTH PENALTY=10である。Clustal法を用いたペアワイズアラインメントのためのデフォルトのパラメータは、例えば、KTUPLE 1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5、およびDIAGONALS SAVED=5とすることができる。
【0034】
本発明のポリペプチド配列は、列挙されている配列と同一、すなわち100%同一であってもよく、または、前記配列は、同一性%が100%未満であるような、参照配列と比較して特定の整数までのアミノ酸の改変を含んでもよい。このような改変には、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、保存的置換および非保存的置換を含む置換、または挿入が含まれる。改変は、参照アミノ酸配列におけるアミノ酸中で個別に散在している、または参照アミノ酸配列内で1つまたは複数の連続する群として散在している、参照ポリペプチド配列のアミノ末端またはカルボキシ末端の位置で、または、これらの末端位置の間の任意の位置で生じ得る。
【0035】
したがって、本発明はまた、本明細書において言及される配列に含有されるアミノ酸配列に対する配列同一性を有する、単離されたポリペプチドを提供する。特定の配列に応じて、配列同一性の程度は、好ましくは90%を超える(例えば、90%、95%、97%、99%、またはそれ以上)。これらの相同タンパク質には、突然変異体および対立遺伝子変異体が含まれる。
【0036】
「同一性」は、当技術分野において知られているように、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列間または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当技術分野において、「同一性」はまた、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を意味し、これは場合によっては、このような配列の文字列の間の一致によって決定される。「同一性」および「類似性」は、既知の方法によって容易に計算することができ、これには、限定はしないが、(Computational Molecular Biology、Lesk,A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith,D.W.編、Academic Press、New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I、Griffin,A.M.、およびGriffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje,G.、Academic Press、1987;ならびにSequence Analysis Primer、Gribskov,M.およびDevereux,J.編、M Stockton Press、New York、1991;ならびにCarillo,H.、およびLipman,D.、SIAM J.Applied Math.、48:1073(1988)において記載されているものが含まれる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験対象の配列間の最大の一致をもたらすように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公開されているコンピュータプログラムにおいて体系化されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム法には、限定はしないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら、1984)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul,S.F.ら、1990が含まれる。BLASTXプログラムは、NCBIおよび他の情報源から公開されている(BLAST Manual、Altschul,S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda,Md.20894;Altschul,S.ら、1990)。よく知られているスミスウォーターマンアルゴリズムもまた、同一性の決定に用いることができる。
【0037】
例えば、所与の同一性%についてのアミノ酸改変の数は、図2〜10のうち偶数番号のもの(配列番号2、4、6、8、および10)の1つにおけるアミノ酸の総数に、それぞれの同一性パーセントの数値パーセント(100で割ったもの)を乗じて、その後、その積を、図2〜10のうち偶数番号のもの(配列番号2、4、6、8、および10)の1つにおける前記アミノ酸の総数から減じることによって、または、
na≦xa−(xa・y)
(式中、
naは、アミノ酸改変の数であり、xaは、図2〜10のうち偶数番号のもの(配列番号2、4、6、8、および10)の1つにおけるアミノ酸の総数であり、yは、例えば、90%では0.90、95%では0.95、97%では0.97などであり、ここで、xaとyの、整数ではない積は全て、xaから減じる前に切り捨てられて最も近い整数にされる)によって決定することができる。
【0038】
本発明はまた、β溶血性連鎖球菌の株間で実質的に保存されている、単離されたポリペプチドも想定する。さらに、β溶血性連鎖球菌の株間で実質的に保存されている、また、感受性対象におけるβ溶血性連鎖球菌のコロニー形成または感染の予防または改善において有効な、単離されたポリペプチドもまた、本発明によって想定される。本明細書において用いる場合、「保存された」という用語は、例えば、タンパク質におけるアミノ酸の総数に対するパーセンテージとして、挿入、置換、および/または欠失を有さないアミノ酸の数について言う。例えば、タンパク質が90%保存されており、かつ例えば263個のアミノ酸を有する場合、タンパク質における237個のアミノ酸位置のアミノ酸が、置換を有さないことになる。同様に、タンパク質が95%保存されており、かつ例えば約280個のアミノ酸を有する場合、14個のアミノ酸位置のアミノ酸が置換を有し得、266(すなわち、280引く14)個のアミノ酸位置のアミノ酸が、置換を有さないことになる。本発明の実施形態に従うと、単離されたポリペプチドは、限定はしないが、好ましくは、β溶血性連鎖球菌の株間で少なくとも約90%保存されており、より好ましくは、株間で少なくとも約95%保存されており、さらに好ましくは、株間で少なくとも約97%保存されており、最も好ましくは、株間で少なくとも約99%保存されている。
【0039】
修飾および変化が、ポリペプチドの構造においてなされてもよく、その場合もやはり、β溶血性連鎖球菌および/または化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の活性および/または抗原性を有するポリペプチドが得られる。例えば、特定のアミノ酸を、活性および/または抗原性の大幅な損失を伴うことなく、配列内の他のアミノ酸の代わりに置き換えることができる。ポリペプチドの生物学的な機能的活性を規定するものは、ポリペプチドの相互作用の能力および性質であるため、アミノ酸配列の特定の置換はポリペプチド配列(または、当然のことながら、その基になるDNAコード配列)内でなされ得、それでもなお、同様の特性を有するポリペプチドが得られる。
【0040】
本発明は、本明細書において記載される所望の反応性をもたらす生物学的等価物である、任意の単離されたポリペプチドを含む。「所望の反応性」という用語は、本発明の目的のための有用な結果であることが当業者によって認識されるであろう反応性を言う。所望の反応性の例は、本明細書において記載されており、これには、限定はしないが、本発明の目的のために有用であることが当業者によって認識されるような、所望の防御レベル、所望の抗体力価、所望のオプソニン化貪食活性、および/または所望の交差反応性が含まれる。所望のオプソニン化貪食活性は、陰性対照と対比した、OPAにおけるコロニー形成単位(CFU)の減少によって測定される、細菌の死滅パーセントによって示される。限定はしないが、所望のオプソニン化貪食活性は、好ましくは少なくとも約15%であり、より好ましくは少なくとも約20%であり、さらに好ましくは少なくとも約40%であり、さらに好ましくは少なくとも約50%であり、最も好ましくは少なくとも約60%である。
【0041】
本発明は、図2〜10のうち偶数番号のもののアミノ酸配列(配列番号2、4、6、8、および10)を包含するポリペプチドの変異体であるポリペプチドを含む。「変異体」という用語は、本明細書において用いられる場合、参照ポリペプチドとは異なるポリペプチドを含むが、必須の特性は保持している。通常、差異は限定的であるので、参照ポリペプチドと変異体の配列は全体的に非常に類似しており、多くの領域において同一である(すなわち、生物学的に等価である)。変異体ポリペプチドおよび参照ポリペプチドは、任意の組合せの1つまたは複数の置換、付加、または欠失によって、アミノ酸配列が異なり得る。置換された、または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝子コードによってコードされているものであってもなくてもよい。ポリペプチドの変異体は、対立遺伝子変異体のように天然に存在し得るか、または、天然に存在することが知られていない変異体であり得る。ポリペプチドの天然に存在しない変異体は、直接的な合成によって、または突然変異誘発技術によって作製することができる。
【0042】
このような変化を生じさせるに当たり、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮され得る。ポリペプチドへの相互作用の生物学的機能付与における、アミノ酸のハイドロパシー指数の重要性は、当技術分野において一般に理解されている(Kyte & Doolittle、1982)。特定のアミノ酸を、類似のハイドロパシー指数またはハイドロパシースコアを有する他のアミノ酸の代わりに置換することができ、その場合もやはり、類似の生物学的活性を有するポリペプチドが生じることが知られている。各アミノ酸は、その疎水性および電荷特徴に基づいて、ハイドロパシー指数が割り当てられている。これらの指数を、以下の通り、各アミノ酸の後に括弧内に列挙する:イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/システイン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタミン酸(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパラギン酸(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)、およびアルギニン(−4.5)。
【0043】
アミノ酸残基の相対的なハイドロパシー特徴が、結果として得られるポリペプチドの二次構造および三次構造を決定し、これが次に、ポリペプチドと、酵素、基質、受容体、抗体、抗原などの他の分子との相互作用を規定すると考えられている。当技術分野において、アミノ酸を、類似のハイドロパシー指数を有する別のアミノ酸によって置換することができ、その場合もやはり、機能的に等価なポリペプチドが得られることが知られている。このような変化において、ハイドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、ハイドロパシー指数が±1以内であるアミノ酸の置換が特に好ましく、そして、ハイドロパシー指数が±0.5以内であるアミノ酸の置換がさらに特に好ましい。
【0044】
類似のアミノ酸の置換はまた、特に、それにより生じる、生物学的機能が等価なポリペプチドまたはペプチドが免疫学的実施形態における使用を意図したものである場合は、親水性に基づいて行うこともできる。参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第4,554,101号は、ポリペプチドの最大の局所的な平均的親水性が、その隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるため、その免疫原性および抗原性と、すなわち、ポリペプチドの生物学的特性と相関することを記載している。
【0045】
参照することによって本明細書に組み込まれる米国特許第4,554,101号において詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、プロリン(−0.5±1)、スレオニン(−0.4)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸を、類似の親水性値を有する別のアミノ酸の代わりに置換することができ、その場合もやはり、生物学的に等価な、特に免疫学的に等価なポリペプチドが得られることが理解されている。このような変化において、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、親水性値が±1以内であるアミノ酸の置換が特に好ましく、そして、親水性値が±0.5以内であるアミノ酸の置換がさらに特に好ましい。
【0046】
したがって、上記で概説したように、アミノ酸の置換は、通常、アミノ酸側鎖の置換基の相対的な類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。前述の様々な特徴を考慮する例示的な置換は当業者に周知であり、アルギニンとリジン、グルタミン酸とアスパラギン酸、セリンとスレオニン、グルタミンとアスパラギン、および、バリンとロイシンとイソロイシンが含まれる。以下の表Iにおいて示すように、適切なアミノ酸置換には、以下のものが含まれる。
【0047】
【表1】
【0048】
したがって、本発明は、1つまたは複数のアミノ酸の置換を含有する、図2〜10のうち偶数番号のものにおける配列(配列番号2、4、6、8、および10)のポリペプチドの機能的または生物学的等価物を含む。
【0049】
ポリペプチドの生物学的または機能的等価物はまた、部位特異的突然変異誘発を用いて調製することもできる。部位特異的突然変異誘発は、基になるDNAの特異的突然変異誘発を介する、第2世代ポリペプチド、または、その配列に由来する、生物学的、機能的に等価なポリペプチドの調製において有用な技術である。上述したように、このような変化は、アミノ酸の置換が望ましい場合には、望ましいものであり得る。この技術によってさらに、配列変異体の調製および試験が容易にできるようになり、例えば、ヌクレオチド配列の1つまたは複数の変化をDNA内に導入することにより、前述の考慮事項の1つまたは複数を組み込む。部位特異的突然変異誘発により、所望の突然変異のDNA配列をコードする特異的オリゴヌクレオチド配列ならびに十分な数の隣接ヌクレオチドの使用により突然変異体を産生させて、横断される欠失結合部の両側に安定な二本鎖が形成されるために十分なサイズおよび配列複雑性を有するプライマー配列をもたらすことが可能になる。典型的には、約17〜25ヌクレオチドの長さのプライマーが好ましく、配列の結合部の両側の約5〜10個の残基が改変される。
【0050】
通常、部位特異的突然変異誘発の技術は、当技術分野において周知である。理解されるであろうが、この技術は、典型的には、一本鎖形態および二本鎖形態の両方で存在し得るファージベクターを利用する。典型的には、本明細書に従った部位特異的突然変異誘発は、選択された化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)ポリペプチド配列の全てまたは一部をコードするDNA配列を配列内に含む一本鎖ベクターをまず得ることによって行われる。例えば周知の技術によって(例えば、合成によって)、所望の突然変異配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーが調製される。このプライマーは、次に、一本鎖ベクターにアニーリングされ、大腸菌(E.coli)ポリメラーゼIのクレノウ断片などの酵素を用いることによって伸長され、それにより、突然変異を有する鎖の合成が完了する。したがって、一方の鎖が元の突然変異されていない配列をコードし、第2の鎖が所望の突然変異を有する、ヘテロ二本鎖が形成される。次に、このヘテロ二本鎖ベクターを用いて、大腸菌(E.coli)細胞などの適切な細胞を形質転換し、突然変異を有する組換えベクターを含むクローンが選択される。市販されているキットは、必要な試薬を提供する。
【0051】
本発明のポリペプチドおよびポリペプチド抗原は、図2〜10のうち偶数番号のもの(配列番号2、4、6、8、および10)のいずれかのアミノ酸配列を包含するポリペプチドに対する、十分な配列類似性、構造的類似性、および/または機能的類似性を包含する、任意のポリペプチドを含むと理解される。さらに、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド抗原は、特定の由来源に限定されない。したがって、本発明は、様々な由来源からのポリペプチドの全体的な検出および単離を提供する。
【0052】
本発明のポリペプチドは、「成熟」タンパク質の形態であってもよく、または、融合タンパク質などの、より大きなタンパク質の一部であってもよい。例えば、分泌配列もしくはリーダー配列、プロ配列、複数のヒスチジン残基などの、精製において役立つ配列、または、組換え生産の間の安定性のためのさらなる配列を含有する、さらなるアミノ酸配列を含むことが有利であることが多い。
【0053】
本明細書において用いられる「免疫原性組成物」という用語は、免疫原性組成物を接種された対象において免疫応答を刺激し得る、投与可能な形態の、任意のタイプの生物学的作用物質を言う。免疫応答には、抗体の誘導および/またはT細胞応答の誘導が含まれ得る。「防御」という用語は、免疫原性組成物に関して用いられる場合、本明細書においては、問題となる疾患または状態に関連する症状のいずれかの(部分的な、または完全な)改善を言う。したがって、本免疫原性組成物による、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(S.dysgalactiae)(亜種ディスガラクティエ(Dysgalactiae)およびエクイシミリス(Equisimilis)を含む)などの連鎖球菌種による感染からの対象の防御によって、通常、細菌の増殖、ならびに/または、関節炎、心内膜炎、髄膜炎、多漿膜炎、気管支肺炎、髄膜炎、永続的難聴、および敗血性ショックを含む、連鎖球菌感染に関連する臨床症状の1つもしくは複数が減少する。
【0054】
本明細書において開示される方法は、連鎖球菌の種(例えば、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エクイシミリス(S.dysgalactiae sub.Equisimilis)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種ディスガラクティエ(S.dysgalactiae sub.Dysgalactiae)、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノーサス(S.anginosus)、ストレプトコッカス・コンステラータス(S.constellatus)、ストレプトコッカス・エクイシミリス(S.equisimilis)、およびストレプトコッカス・インターメディウス(S.intermedius))を含む、1つまたは複数の病原体に対する、免疫応答の誘導を含み得る。例えば、本方法は、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エクイシミリス(S.dysgalactiae sub.Equisimilis)などの、1つまたは複数の連鎖球菌病原体に対する、ポリクローナル抗体の産生の誘導を含み得る。
【0055】
上述したように、免疫原性組成物は、2つ以上の本発明のポリペプチドを包含する。そうするために、1つまたは複数のポリペプチドは、適切な濃度に調節され、任意の適切なアジュバント、希釈剤、薬学的に許容できる担体、またはその任意の組合せと共に製剤され得る。本明細書において用いる場合、「薬学的に許容できる担体」という表現は、薬学的投与に適合する、任意のおよび全ての溶媒、分散媒質、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、賦形剤などを含むことを意図する。薬学的に活性な物質のためのこのような媒質および作用物質の使用は、当技術分野において周知である。生理学的に許容できる媒体を、担体および/または希釈剤として用いることができる。薬学的に許容できる媒体は、副作用を生じさせず、例えば、活性化合物の投与を容易にすること、体内におけるその寿命および/またはその有効性を増大させること、溶液におけるその溶解度を増大させること、または代替としてその保存を強化することを可能にする、薬学的組成物または免疫原性組成物の構成要素となる、1つの化合物または化合物の組合せを示すことが理解される。これらの薬学的に許容できる媒体は周知であり、選ばれた活性化合物の性質および投与様式に従って、当業者によって適合される。これらには、限定はしないが、水、リンゲル液、適切な等張媒質、グリセロール、エタノール、および他の従来の溶媒、リン酸緩衝溶液などが含まれる。
【0056】
注射用の使用に適した医薬組成物には、無菌の注射可能な溶液または分散液の、処方箋に応じて調製するための、無菌の水性の溶液または分散液、および無菌粉末が含まれる。静脈内投与では、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)、またはリン酸緩衝溶液(PBS)が含まれる。全ての事例において、組成物は無菌でなくてはならず、注射可能性が容易である程度の流体であるべきである。これは、製造および保存の条件下で安定でなくてはならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から守られなくてはならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物を含有する、溶媒または分散媒質とすることができる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤を用いることにより、分散液の事例では所望の粒子サイズを保つことにより、および界面活性剤を用いることにより、維持され得る。微生物作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸などによって、達成することができる。多くの事例において、等張剤、例えば、糖、マンニトールやソルビトールなどのポリアルコール、および/または塩化ナトリウムが組成物に含まれる。注射用組成物の長期の吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの、吸収を遅延させる作用物質を、組成物内に含めることによってもたらされ得る。
【0057】
無菌の注射可能な溶液は、所望の量のポリペプチドを、上記で挙げた成分の1つまたは組合せを有する適切な溶媒中に組み込み、必要であればその後に濾過滅菌することによって、調製することができる。通常、分散液は、活性化合物を、基礎的な分散媒質と上記で挙げたものの所望の他の成分とを含有する滅菌媒体中に組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の事例においては、好ましい調製方法は、既に無菌濾過されたその溶液から、任意のさらなる所望の成分を加えた活性成分の粉末が得られる真空乾燥および凍結乾燥である。
【0058】
本明細書において記載される免疫原性組成物はまた、特定の実施形態において、1つまたは複数のアジュバントを包含する。アジュバントは、免疫原または抗原と共に投与されると免疫応答を強化させる物質である。限定はしないが、インターロイキン1−α、1−β、2、4、5、6、7、8、および10、12(例えば、米国特許第5,723,127号を参照されたい)、13、14、15、16、17、および18(およびその突然変異形態)、インターフェロン−α、β、およびγ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(例えば、米国特許第5,078,996号およびATCCアクセッション番号39900を参照されたい)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ならびに腫瘍壊死因子αおよびβを含む、多くのサイトカインまたはリンホカインが、免疫調節活性を有することが示されており、したがって、アジュバントとして有用である。本明細書において記載される免疫原性組成物と共に有用な、さらなる他のアジュバントには、限定はしないがMCP−1、MIP−1α、MIP−1β、およびRANTESを含むケモカイン;セレクチン、例えばL−セレクチン、P−セレクチン、およびE−セレクチンなどの付着分子;例えばCD34、GlyCAM−1、およびMadCAM−1などのムチン様分子;LFA−1、VLA−1、Mac−1、およびp150.95などのインテグリンファミリーのメンバー;PECAM、ICAM、例えばICAM−1、ICAM−2、およびICAM−3、CD2、およびLFA−3などの免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー;CD40およびCD40Lなどの共刺激性分子;血管成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、B7.2、PDGF、BL−1、および血管内皮成長因子を含む成長因子;Fas、TNF受容体、Flt、Apo−1、p55、WSL−1、DR3、TRAMP、Apo−3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL−R2、TRICK2、およびDR6を含む受容体分子;ならびにカスパーゼ(ICE)が含まれる。
【0059】
免疫応答を強化させるために用いられる適切なアジュバントにはさらに、限定はしないが、米国特許第4,912,094号において記載されている、MPL(商標)(3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A、Corixa、Hamilton、MT)が含まれる。アジュバントとして用いるために同様に適しているものは、合成脂質A類似体もしくはアミノアルキルグルコサミンホスフェート化合物(AGP)、またはその誘導体もしくは類似体であり、これは、Corixa(Hamilton、MT)から入手可能であり、米国特許第6,113,918号において記載されている。1つのこのようなAGPは、2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−b−D−グルコピラノシドであり、これはまた、529としても知られている(以前はRC529として知られていた)。この529アジュバントは、水性形態(AF)として、または安定エマルジョン(SE)として製剤される。
【0060】
さらなる他のアジュバントには、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチルノルムラミル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)エチルアミン(MTP−PE)などのムラミルペプチド;MF59(米国特許第6,299,884号)(モデル110Yマイクロ流体化装置(Microfluidics、Newton、MA)などのマイクロ流体装置を用いてサブミクロン粒子に製剤される、5%のスクアレン、0.5%のTween80、および0.5%のSpan85(様々な量のMTP−PEを含有していてもよい)を含有する)、およびSAF(サブミクロンエマルジョンにマイクロ流体化されるか、またはボルテックスされてより大きな粒子サイズのエマルジョンを生成させる、10%のスクアレン、0.4%のTween80、5%のプルロニック遮断ポリマーL121、およびthr−MDPを含有する)などの水中油型エマルジョン;水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩(ミョウバン);Amphigen;Avridine;L121/スクアレン;D−ラクチド−ポリラクチド/グリコシド;プルロニックポリオール;ボルデテラ死菌;米国特許第5,057,540号において記載されているStimulon(商標)QS−21(Antigenics、Framingham、MA)、米国特許第5,254,339号において記載されているISOCOMATRIX(CSL Limited、Parkville、Australia)、および免疫刺激複合体(ISCOMS)などのサポニン;ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis);細菌リポ多糖;CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,207,646号)などの合成ポリヌクレオチド;欧州特許第1,296,713号および欧州特許第1,326,634号において記載されているIC−31(Intercell AG、Vienna、Austria);百日咳毒素(PT)もしくはその突然変異体、コレラ毒素もしくはその突然変異体(例えば、米国特許第7,285,281号、米国特許第7,332,174号、米国特許第7,361,355号、および米国特許第7,384,640号);または大腸菌(E.coli)易熱性毒素(LT)もしくはその突然変異体、特にLT−K63、LT−R72(例えば、米国特許第6,149,919号、米国特許第7,115,730号、および米国特許第7,291,588号)が含まれる。
【0061】
ポリペプチドにはまた、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に、または多糖にコンジュゲートまたは結合されていてもよいポリペプチドの少なくとも一部が含まれ得る。免疫原性組成物が、多糖などの他の成分を、単独で、または免疫応答を引き起こし得るタンパク質にコンジュゲートした形で含有し得ることも予想される。
【0062】
本発明の免疫原性組成物を包含するポリペプチドのインビトロでの免疫原性を評価するために、様々な試験が用いられる。例えば、インビトロでのオプソニン性のアッセイは、連鎖球菌亜種細胞の混合物と、問題となるポリペプチドに対する特異的抗体を含有する熱不活性化された血清と、外因性の補体源とを、共にインキュベートすることにより実施される。オプソニン化貪食作用は、新たに単離された多形核細胞(PMN)と抗体/補体/連鎖球菌亜種細胞の混合物とのインキュベーションの間に進行する。抗体および補体で被覆された細菌細胞は、オプソニン化貪食作用で死滅する。オプソニン化貪食作用を免れる生存細菌のコロニー形成単位(cfu)は、アッセイ混合物を平板培養することにより決定される。力価は、アッセイ対照との比較によって決定される、50%以上の細菌死滅をもたらす最大希釈の逆数として報告する。試験した最低の血清希釈(1:8)で50%未満の死滅を示す標本を、オプソニン化貪食作用抗体(OPA)力価が4であると報告する。上記の方法は、Grayの方法(Gray、Conjugate Vaccines Supplement、p.694〜697、1990)の変更形態である。
【0063】
試験血清と、さらに細菌細胞および熱不活性化された補体とを含有する試験血清対照が、それぞれの個別の血清に含まれる。この対照は、抗生物質または他の血清成分の存在により細菌株が直接的に死滅し得るかどうか(すなわち、補体またはPMNの非存在下で)を評価するために用いられる。既知のオプソニン力価を有するヒト血清を、陽性ヒト血清対照として用いる。それぞれの未知の血清についてのオプソニン抗体力価は、血清を有さない対照と比較してcfuを50%低減させる血清の最初の希釈の逆数として計算される。
【0064】
全細胞のELISAアッセイもまた、ポリペプチド抗原のインビトロでの免疫原性および表面露出を評価するために用いることができ、このアッセイでは、目的の細菌株を96ウェルプレートなどのプレート上に被覆し、免疫化された動物から得られる試験血清を、細菌細胞と反応させる。試験ポリペプチド抗原に特異的な任意の抗体が、ポリペプチド抗原の表面露出したエピトープと反応性である場合、前記抗体は、当業者に知られている標準的な方法によって検出され得る。類似のアプローチは、フローサイトメトリーおよび抗原特異的抗体を用いて、細胞表面上の抗原をモニタリングすることである。
【0065】
インビトロでの所望の活性を示す任意のポリペプチドを次に、インビボでの動物チャレンジモデルにおいて試験することができる。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、当業者に知られている免疫化の方法および経路(例えば、鼻腔内、非経口、筋肉内、経口、直腸、膣、経皮、腹腔内、静脈内、皮下など)による、動物(例えば、マウス)の免疫化において用いられる。連鎖球菌の免疫原性組成物での動物の免疫化の後、動物を、1つまたは複数の連鎖球菌種でチャレンジし、連鎖球菌種(Streptococcus spp.)感染に対する抵抗性についてアッセイする。
【0066】
組合せ免疫原性組成物は、本発明のポリペプチドの2つ以上を含めることによって、および、本発明のポリペプチドの1つまたは複数を、限定はしないがMタンパク質、付着因子などを含む、1つまたは複数の既知の化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)ポリペプチドと組み合わせることによって提供される。
【0067】
本発明の免疫原性組成物は、製剤されると、対象に直接的に投与することができ、対象由来の細胞にエクスビボで、または組換えタンパク質の発現のためにインビトロで、送達される。対象に直接的に送達するために、投与は、例えば、鼻腔内、非経口、経口、腹腔内、静脈内、皮下などの、任意の従来の形態によるものであってよく、または、エアロゾルスプレーによるものなど、鼻腔内、経口、目、肺、膣、もしくは直腸の表面などの任意の粘膜表面に、局所的に適用されてもよい。
【0068】
投与の容易性および投与量の均一性のために、経口または非経口組成物を単位投与形態で製剤することは有利である。本明細書において用いられる投与単位形態は、治療される対象について単位投与量として適合させた、物理的に分離した単位を言い、各単位は、所望の薬学的担体を伴う、所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の投与単位形態の特定は、活性化合物の固有の特徴、および達成されるべき特定の治療効果、および個体の治療のためにこのような活性化合物を配合する際の当技術分野において特有の制限によって決定され、それに直接的に依存する。
【0069】
注射用製剤、例えば、無菌の注射可能な水性または油性懸濁液が、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、既知の技術に従って製剤される。無菌の注射用製剤はまた、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液などの、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の、無菌の注射可能な溶液または懸濁液とすることができる。
【0070】
非経口投与では、本発明の免疫原性組成物は、水、油、生理食塩水、グリセロール、またはエタノールなどの無菌液体であってもよい、薬学的に許容できる担体を有する、生理学的に許容できる希釈剤中の、注射可能な投与量として投与することができる。さらに、例えば湿潤剤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などの補助物質が、組成物中に存在し得る。他の成分には、石油、動物、植物、または合成由来のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、および鉱油が含まれ得る。通常、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールが、特に注射可能な溶液のために、好ましい液体担体である。
【0071】
典型的には、組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射可能物質として調製され、注射前の、液体媒体中の溶液または懸濁液に適した固体形態もまた調製され得る。製剤はまた、上述したように、アジュバント効果を強化させるために、乳化されてもよく、または、リポソーム内、または、ポリラクチド、ポリグリコリド、もしくはコポリマーなどの微小粒子内にカプセル化されてもよい(Langer、Science 249:1527(1990)、およびHanes、Advanced Drug Delivery Reviews 28:97(1997)を参照されたい)。本発明の免疫原性組成物は、デポー注射または移植製剤の形態で投与することができ、前記製剤は、活性成分の持続放出またはパルス放出を可能にするような様式で製剤され得る。
【0072】
対象は通常、ヒトである。適切な用量数で、免疫学的に有効な量の免疫原性組成物が、免疫応答を引き起こすために対象に投与される。本明細書において用いられる、免疫学的に有効な量は、哺乳動物宿主(好ましくはヒト)に対する、単回用量における、または一連の用量の一部としての、治療される個体の免疫系を少なくとも生じさせて、細菌感染の臨床的影響を低減させる免疫応答を生じさせるために十分な量の投与を意味する。「免疫応答」または「免疫学的応答」という用語には、液性(抗体媒介性)応答および/または細胞性(抗原特異的T細胞またはその分泌産物により媒介される)応答の発現が含まれる。防御は、単回用量の免疫学的組成物によって付与され得るか、または、防御を維持するために、その後の追加用量に加えて、複数回用量の投与を必要とし得る。これは、細菌負荷量の最小限の減少から、感染の予防まで様々であり得る。理想的には、治療された個体は、β溶血性連鎖球菌感染の、それ以上重篤な臨床所見を示さない。投与量は、年齢および体重などの、個体の具体的な条件に応じて変化し得る。この量は、当業者に知られている手段による常法に従う試行において決定され得る。
【0073】
予防的適用において、免疫学的組成物は、β溶血性連鎖球菌感染に感受性がある、またはそうでなければその危険性がある対象に、疾患の危険性を排除もしくは低減するため、重症度を低くするため、または発生を遅らせるために十分な量で投与され、前記疾患には、感染に関連する疾患の生化学的、組織学的、および/または行動的症状、その合併症、ならびに、疾患の発症の間に見られる中間の病理学的表現型が含まれる。治療的適用において、組成物は、このような疾患に感受性があるかまたは既に罹患している患者に、疾患の(生物学的、組織学的、および/または行動的)症状を治癒させるかまたは少なくとも部分的に停止させるために十分な量で投与され、前記疾患には、その合併症、ならびに、疾患の発症における中間の病理学的表現型が含まれる。
【0074】
A、B、C、およびG群を含むBHSの全ての株に対する防御をもたらす単一のペプチド配列は存在しないことが観察された。以下の表II(以下の実施例1において示される)において示すように、各抗原は、これらの群のサブセットに対する免疫応答をもたらす。
【0075】
通常、BHSから得られる2つ以上の表面発現抗原の任意の組合せは、上記の強化された免疫応答をもたらすと予想される。上述のこのような抗原には、BHSの莢膜抗原、Mタンパク質、ABC輸送体、または任意の他の表面露出抗原が含まれ得る。しかし、以下の抗原が、免疫原性組成物の産生にとって特に有利な特性を示すことが明らかにされている。
SCP(C5aペプチダーゼ)
ペプチジルプロピルイソメラーゼ(ORF554によってコードされる)
推定付着タンパク質(ORF1358によってコードされる)
表面リポタンパク質(ORF2459によってコードされる)
機能未知タンパク質(ORF1218によってコードされる)
【0076】
単一の多成分免疫原性組成物内にこれらの抗原の2つ以上を組み合わせると、BHSの1つまたは複数の群に対する防御が強化され、それらに対する免疫応答が強化される。
【実施例】
【0077】
以下の実施例は例示的なものであり、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)
抗体結合
オプソニン化として知られているプロセスである、細菌への抗体の結合により、貪食細胞による細菌の取込みおよび死滅が生じ得る。このような抗体のスクリーニングは、特定の血清型を表面に発現しているかまたはしていない細菌の死滅における、その血清型に対して生じた抗体の有効性を決定するために用いられる。
【0079】
スクリーニングした各血清型について、列挙したORFによってコードされる抗体に対する抗体が、マウスにおいて生じた。抗体を次に、様々なBHS株に対してスクリーニングした。抗体のスクリーニングは、蛍光活性化細胞分類(FACS)によって行った。簡潔に述べると、熱で死滅させた連鎖球菌を、列挙した抗体と共に、氷上で45分間にわたりインキュベートし、その後、2回洗浄した。次に、連鎖球菌を、ヤギ抗マウスAlexa−488抗体(Molecular Probes、Eugene、OR)と共に、氷上で30分間にわたりインキュベートし、その後、2回洗浄した。そのように処理した細胞を、FACS機(例えば、DeMasterら、Infect.Immun.、70(1):350〜359、2002.を参照されたい)にかけた。結果を表2にまとめる。
【0080】
これらの抗β溶血性連鎖球菌抗血清および様々なβ溶血性連鎖球菌(BHS)株に対するモノクローナル抗体のスクリーニングの過程において、いくつかの抗血清および抗体が、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、ならびにC群およびG群の連鎖球菌(連鎖球菌種ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・コンステラータス(Streptococcus constellatus)、ストレプトコッカス・インターメディウス(Streptococcus intermedius)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エクイシミリス(Streptococcus dysgalactiae sub.Equisimilis)、およびストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae sub.Dysgalactiae))のメンバーを含む、多くのBHS株に対して交差反応性であることが確認された。この交差反応性はまた、列挙した、または関連するORFによってコードされるポリペプチドが、A群またはB群の連鎖球菌による、およびC群またはG群の連鎖球菌による感染に対して防御するために有効な免疫応答を誘導するための免疫原性組成物において使用され得ることを意味する。
【0081】
表2において、記号「+」は、抗体が、抗原に対して、バックグラウンドの少なくとも3倍反応することを意味し、記号「±」は、抗体が、抗原に対して、バックグラウンドの2倍〜3倍反応することを意味し、記号「−」は、抗体シグナルの検出がバックグラウンドと等しいかまたはそれより低いことを意味する。
【0082】
【表2−1】
【0083】
【表2−2】
【0084】
【表2−3】
【0085】
(実施例2)
免疫血清を産生するための3成分免疫原性組成物の使用
リン酸アルミニウムをアジュバント添加した、SCP、ORF554によってコードされるポリペプチド、およびORF1358によってコードされるポリペプチドからなる、三価の免疫原性組成物を調製し、その免疫原性組成物を用いて、2〜4週間間隔の3回の皮下接種によって過免疫ウサギ血清を産生させ、その後、瀉血した。ORF554によってコードされる、同様にアジュバント添加したポリペプチドからなる一価の免疫原性組成物を、対照として用いた。血清を、様々な希釈で、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)SF370に対するオプソニン化貪食活性(OPA)についてスクリーニングした。簡潔に述べると、細菌を、10ulの血清と共に、補体(ベビーラビット補体)の存在下で1時間にわたりインキュベートし、次に、1:10で希釈し、血液寒天プレート上で平板培養した。結果を、図11に示す。
【0086】
示されるように、Trivaxは、554免疫原性組成物よりも高いオプソニン化貪食活性を引き起こすことを観察することができ、これは、細菌のはるかに優れた死滅を示している。
【0087】
(実施例3)
受動免疫移行
抗体は、上記の抗原、すなわち、SCP、ならびにORF554、1358、2459、および1218によってコードされるポリペプチドのそれぞれに対して生じた。これらの抗体を次に、完全に機能する免疫系を有さない乳児のラットに注射した。その後、処理されたラットを化膿連鎖球菌(S.pyogenes)でチャレンジし、回収した細菌を、チャレンジの4時間後、計数した。陰性対照はPBSであり、陽性ヒト対照は385血清であった。
【0088】
結果を、図12〜16に示す。簡潔に述べると、結果は、抗原のそれぞれによって引き起こされた抗体が、乳児のラットにおける細菌を有意に低減させたことを示した。
【0089】
具体的な実施形態を参照して上記に例示および記載したが、それにも関わらず、本発明は、示された詳細に限定されるものではない。より正確に言えば、特許請求の範囲の等価物の範囲および領域内で、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な変更が詳細において行われてもよい。
【図1−1】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図13】実施例3の受動免疫移行の結果を示すグラフである。CFU=コロニー形成単位。
【図14】実施例3の受動免疫移行の結果を示すグラフである。CFU=コロニー形成単位。
【図15】実施例3の受動免疫移行の結果を示すグラフである。CFU=コロニー形成単位。
【図16】実施例3の受動免疫移行の結果を示すグラフである。CFU=コロニー形成単位。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、A、B、C、およびG群を含む、β溶血性連鎖球菌によって生じる感染を予防または改善するための免疫原性組成物を提供する。本明細書において挙げられるポリペプチドの2つ以上が共に組み合わされて、免疫原性組成物が作製される。
【0024】
具体的には、一実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、2つ以上のポリペプチドの混合物を包含し、各ポリペプチドは、
(a)C5aペプチダーゼ(「SCP」)(図1(配列番号1))、
(b)オープンリーディングフレーム(「ORF」)554(図3(配列番号3))、
(c)ORF1218(図5(配列番号5))、
(d)ORF1358(図7(配列番号7))、および
(e)ORF2459(図9(配列番号9))
からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0025】
別の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、2つ以上のポリペプチドの混合物を包含し、各ポリペプチドは、
(a)SCP(図2(配列番号2))、
(b)ペプチジルプロピルイソメラーゼ(図4(配列番号4))、
(c)機能未知タンパク質(図6(配列番号6))、
(d)推定付着タンパク質(図8(配列番号8))、および
(e)表面リポタンパク質(図10(配列番号10))
からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する。
【0026】
さらに別の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、
(a)図1の核酸配列(配列番号1)に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、SCPポリペプチド、
(b)図3の核酸配列(配列番号3)に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、ペプチジルプロピルイソメラーゼポリペプチド、ならびに
(c)(i)図5(配列番号5)、(ii)図7(配列番号7)、および(iii)図9(配列番号9)からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列によってコードされる、少なくとも1つの他のポリペプチド、
の混合物を包含する。
【0027】
さらに別の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、
(a)図2のアミノ酸配列(配列番号2)に対して少なくとも90%の同一性を有する、SCPポリペプチド、
(b)図4のアミノ酸配列(配列番号4)に対して少なくとも90%の同一性を有する、ペプチジルプロピルイソメラーゼポリペプチド、ならびに
(c)(i)図6(配列番号6)、(ii)図8(配列番号8)、および(iii)図10(配列番号10)からなる群のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、少なくとも1つの他のポリペプチド、
の混合物を包含する。
【0028】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、および「核酸断片」という用語は、本明細書において交換可能に用いられる。これらの用語は、ホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオチドを包含する。「ポリヌクレオチド」は、合成の、非天然の、または改変されたヌクレオチド塩基を含有していてもよい一本鎖または二本鎖のリボ核酸(RNA)ポリマーまたはデオキシリボ核酸(DNA)ポリマーであってよい。DNAのポリマーの形態をしたポリヌクレオチドは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAの1つもしくは複数のセグメント、またはその混合物を包含してもよい。ヌクレオチド塩基は、本明細書においては、一文字のコード、すなわち、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、イノシン(I)、およびウラシル(U)によって示される。
【0029】
本明細書において記載される連鎖球菌ポリヌクレオチドは、標準的なクローニング技術およびスクリーニング技術を用いて得ることができる。これらのポリヌクレオチドは、例えば、ゲノムDNAから、mRNAに由来するcDNAライブラリーから、ゲノムDNAライブラリーから得ることができるか、または、例えば、cDNAライブラリーからのPCRによる、もしくはRT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)を介する、周知の市販されている技術を用いて合成することができる。
【0030】
完全長cDNAを得るために、または短いcDNAを伸長するために、例えばcDNA末端の迅速な増幅方法に基づくもの(RACE)などのいくつかの方法が、当業者に利用可能であり、周知である。Frohmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85、8998〜9002、1988を参照されたい。例えばMARATHON(商標)技術(Clontech Laboratories Inc.)によって例示される、技術の最近の変更によって、長いcDNAの探索が大幅に簡略化されている。MARATHON(商標)技術では、cDNAは、選ばれた組織から抽出されたmRNAから調製され、「アダプター」配列が各末端にライゲーションされている。次に、遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドプライマーとアダプター特異的なオリゴヌクレオチドプライマーとの組合せを用いて、核酸増幅(PCR)が行われて、cDNAの「欠落した」5’末端が増幅される。そして、PCR反応は、増幅産物内でアニーリングするように設計されたプライマーである「ネステッド」プライマー(典型的には、アダプター配列においてさらに3’をアニーリングするアダプター特異的プライマー、および、既知の遺伝子配列においてさらに5’をアニーリングする遺伝子特異的プライマー)を用いて反復される。次に、この反応の生成物を、DNA配列決定によって分析することができ、完全長cDNAが、生成物を既存のcDNAに直接繋いで完全な配列を得ることによって、または5’プライマーの設計のための新たな配列情報を用いて個別の完全長PCRを実施することによって構築される。
【0031】
「組換え」という用語は、例えば、ポリヌクレオチドが、別の形で分離された2つ以上のポリヌクレオチドセグメントの人工的な組合せによって、例えば、化学合成によって、または遺伝子工学技術を用いた単離ポリヌクレオチドの操作によって作製されることを意味する。「組換えDNA構築物」は、少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に結合された、本発明の単離されたポリヌクレオチドのいずれかを包含する。
【0032】
連鎖球菌ポリヌクレオチドのオーソログおよび対立遺伝子変異体は、当技術分野において周知の方法を用いて、容易に同定することができる。ポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体およびオーソログは、図1〜9のうち奇数番号のものにおいて示されるヌクレオチド配列(配列番号1〜9のうち奇数番号のもの)の任意の1つまたは複数に、典型的には少なくとも約90〜95%またはそれ以上同一なヌクレオチド配列、またはその断片を包含し得る。これらのポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体およびオーソログは、図2〜10のうち偶数番号のものの任意の1つまたは複数において示されるアミノ酸配列(配列番号2〜10のうち偶数番号のもの)に少なくとも90%同一なアミノ酸配列を包含するポリペプチドをコードし得る。このようなポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、図1〜9において示されるヌクレオチド配列(配列番号1〜9のうち奇数番号のもの)を有するポリヌクレオチドの任意の1つもしくは複数、またはその断片にハイブリダイズすることができるため、容易に同定することができる。
【0033】
多くのレベルの配列同一性が、関連するポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の同定において有用であることが、当業者によってよく理解されよう。配列のアラインメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENE(商標)バイオインフォマティクス計算パッケージソフト(DNASTAR Inc.、Madison、Wis.)のMEGALIGN(商標)プログラムを用いて行うことができる。配列の複数のアラインメントを、Clustalアラインメント法(HigginsおよびSharp、Gene、73(1):237〜44、1988)を用いて行うことができ、そのデフォルトのパラメータは、例えば、GAP PENALTY=10であり、GAP LENGTH PENALTY=10である。Clustal法を用いたペアワイズアラインメントのためのデフォルトのパラメータは、例えば、KTUPLE 1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5、およびDIAGONALS SAVED=5とすることができる。
【0034】
本発明のポリペプチド配列は、列挙されている配列と同一、すなわち100%同一であってもよく、または、前記配列は、同一性%が100%未満であるような、参照配列と比較して特定の整数までのアミノ酸の改変を含んでもよい。このような改変には、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、保存的置換および非保存的置換を含む置換、または挿入が含まれる。改変は、参照アミノ酸配列におけるアミノ酸中で個別に散在している、または参照アミノ酸配列内で1つまたは複数の連続する群として散在している、参照ポリペプチド配列のアミノ末端またはカルボキシ末端の位置で、または、これらの末端位置の間の任意の位置で生じ得る。
【0035】
したがって、本発明はまた、本明細書において言及される配列に含有されるアミノ酸配列に対する配列同一性を有する、単離されたポリペプチドを提供する。特定の配列に応じて、配列同一性の程度は、好ましくは90%を超える(例えば、90%、95%、97%、99%、またはそれ以上)。これらの相同タンパク質には、突然変異体および対立遺伝子変異体が含まれる。
【0036】
「同一性」は、当技術分野において知られているように、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列間または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当技術分野において、「同一性」はまた、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を意味し、これは場合によっては、このような配列の文字列の間の一致によって決定される。「同一性」および「類似性」は、既知の方法によって容易に計算することができ、これには、限定はしないが、(Computational Molecular Biology、Lesk,A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith,D.W.編、Academic Press、New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I、Griffin,A.M.、およびGriffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje,G.、Academic Press、1987;ならびにSequence Analysis Primer、Gribskov,M.およびDevereux,J.編、M Stockton Press、New York、1991;ならびにCarillo,H.、およびLipman,D.、SIAM J.Applied Math.、48:1073(1988)において記載されているものが含まれる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験対象の配列間の最大の一致をもたらすように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公開されているコンピュータプログラムにおいて体系化されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム法には、限定はしないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら、1984)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul,S.F.ら、1990が含まれる。BLASTXプログラムは、NCBIおよび他の情報源から公開されている(BLAST Manual、Altschul,S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda,Md.20894;Altschul,S.ら、1990)。よく知られているスミスウォーターマンアルゴリズムもまた、同一性の決定に用いることができる。
【0037】
例えば、所与の同一性%についてのアミノ酸改変の数は、図2〜10のうち偶数番号のもの(配列番号2、4、6、8、および10)の1つにおけるアミノ酸の総数に、それぞれの同一性パーセントの数値パーセント(100で割ったもの)を乗じて、その後、その積を、図2〜10のうち偶数番号のもの(配列番号2、4、6、8、および10)の1つにおける前記アミノ酸の総数から減じることによって、または、
na≦xa−(xa・y)
(式中、
naは、アミノ酸改変の数であり、xaは、図2〜10のうち偶数番号のもの(配列番号2、4、6、8、および10)の1つにおけるアミノ酸の総数であり、yは、例えば、90%では0.90、95%では0.95、97%では0.97などであり、ここで、xaとyの、整数ではない積は全て、xaから減じる前に切り捨てられて最も近い整数にされる)によって決定することができる。
【0038】
本発明はまた、β溶血性連鎖球菌の株間で実質的に保存されている、単離されたポリペプチドも想定する。さらに、β溶血性連鎖球菌の株間で実質的に保存されている、また、感受性対象におけるβ溶血性連鎖球菌のコロニー形成または感染の予防または改善において有効な、単離されたポリペプチドもまた、本発明によって想定される。本明細書において用いる場合、「保存された」という用語は、例えば、タンパク質におけるアミノ酸の総数に対するパーセンテージとして、挿入、置換、および/または欠失を有さないアミノ酸の数について言う。例えば、タンパク質が90%保存されており、かつ例えば263個のアミノ酸を有する場合、タンパク質における237個のアミノ酸位置のアミノ酸が、置換を有さないことになる。同様に、タンパク質が95%保存されており、かつ例えば約280個のアミノ酸を有する場合、14個のアミノ酸位置のアミノ酸が置換を有し得、266(すなわち、280引く14)個のアミノ酸位置のアミノ酸が、置換を有さないことになる。本発明の実施形態に従うと、単離されたポリペプチドは、限定はしないが、好ましくは、β溶血性連鎖球菌の株間で少なくとも約90%保存されており、より好ましくは、株間で少なくとも約95%保存されており、さらに好ましくは、株間で少なくとも約97%保存されており、最も好ましくは、株間で少なくとも約99%保存されている。
【0039】
修飾および変化が、ポリペプチドの構造においてなされてもよく、その場合もやはり、β溶血性連鎖球菌および/または化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の活性および/または抗原性を有するポリペプチドが得られる。例えば、特定のアミノ酸を、活性および/または抗原性の大幅な損失を伴うことなく、配列内の他のアミノ酸の代わりに置き換えることができる。ポリペプチドの生物学的な機能的活性を規定するものは、ポリペプチドの相互作用の能力および性質であるため、アミノ酸配列の特定の置換はポリペプチド配列(または、当然のことながら、その基になるDNAコード配列)内でなされ得、それでもなお、同様の特性を有するポリペプチドが得られる。
【0040】
本発明は、本明細書において記載される所望の反応性をもたらす生物学的等価物である、任意の単離されたポリペプチドを含む。「所望の反応性」という用語は、本発明の目的のための有用な結果であることが当業者によって認識されるであろう反応性を言う。所望の反応性の例は、本明細書において記載されており、これには、限定はしないが、本発明の目的のために有用であることが当業者によって認識されるような、所望の防御レベル、所望の抗体力価、所望のオプソニン化貪食活性、および/または所望の交差反応性が含まれる。所望のオプソニン化貪食活性は、陰性対照と対比した、OPAにおけるコロニー形成単位(CFU)の減少によって測定される、細菌の死滅パーセントによって示される。限定はしないが、所望のオプソニン化貪食活性は、好ましくは少なくとも約15%であり、より好ましくは少なくとも約20%であり、さらに好ましくは少なくとも約40%であり、さらに好ましくは少なくとも約50%であり、最も好ましくは少なくとも約60%である。
【0041】
本発明は、図2〜10のうち偶数番号のもののアミノ酸配列(配列番号2、4、6、8、および10)を包含するポリペプチドの変異体であるポリペプチドを含む。「変異体」という用語は、本明細書において用いられる場合、参照ポリペプチドとは異なるポリペプチドを含むが、必須の特性は保持している。通常、差異は限定的であるので、参照ポリペプチドと変異体の配列は全体的に非常に類似しており、多くの領域において同一である(すなわち、生物学的に等価である)。変異体ポリペプチドおよび参照ポリペプチドは、任意の組合せの1つまたは複数の置換、付加、または欠失によって、アミノ酸配列が異なり得る。置換された、または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝子コードによってコードされているものであってもなくてもよい。ポリペプチドの変異体は、対立遺伝子変異体のように天然に存在し得るか、または、天然に存在することが知られていない変異体であり得る。ポリペプチドの天然に存在しない変異体は、直接的な合成によって、または突然変異誘発技術によって作製することができる。
【0042】
このような変化を生じさせるに当たり、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮され得る。ポリペプチドへの相互作用の生物学的機能付与における、アミノ酸のハイドロパシー指数の重要性は、当技術分野において一般に理解されている(Kyte & Doolittle、1982)。特定のアミノ酸を、類似のハイドロパシー指数またはハイドロパシースコアを有する他のアミノ酸の代わりに置換することができ、その場合もやはり、類似の生物学的活性を有するポリペプチドが生じることが知られている。各アミノ酸は、その疎水性および電荷特徴に基づいて、ハイドロパシー指数が割り当てられている。これらの指数を、以下の通り、各アミノ酸の後に括弧内に列挙する:イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/システイン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタミン酸(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパラギン酸(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)、およびアルギニン(−4.5)。
【0043】
アミノ酸残基の相対的なハイドロパシー特徴が、結果として得られるポリペプチドの二次構造および三次構造を決定し、これが次に、ポリペプチドと、酵素、基質、受容体、抗体、抗原などの他の分子との相互作用を規定すると考えられている。当技術分野において、アミノ酸を、類似のハイドロパシー指数を有する別のアミノ酸によって置換することができ、その場合もやはり、機能的に等価なポリペプチドが得られることが知られている。このような変化において、ハイドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、ハイドロパシー指数が±1以内であるアミノ酸の置換が特に好ましく、そして、ハイドロパシー指数が±0.5以内であるアミノ酸の置換がさらに特に好ましい。
【0044】
類似のアミノ酸の置換はまた、特に、それにより生じる、生物学的機能が等価なポリペプチドまたはペプチドが免疫学的実施形態における使用を意図したものである場合は、親水性に基づいて行うこともできる。参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第4,554,101号は、ポリペプチドの最大の局所的な平均的親水性が、その隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるため、その免疫原性および抗原性と、すなわち、ポリペプチドの生物学的特性と相関することを記載している。
【0045】
参照することによって本明細書に組み込まれる米国特許第4,554,101号において詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、プロリン(−0.5±1)、スレオニン(−0.4)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸を、類似の親水性値を有する別のアミノ酸の代わりに置換することができ、その場合もやはり、生物学的に等価な、特に免疫学的に等価なポリペプチドが得られることが理解されている。このような変化において、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、親水性値が±1以内であるアミノ酸の置換が特に好ましく、そして、親水性値が±0.5以内であるアミノ酸の置換がさらに特に好ましい。
【0046】
したがって、上記で概説したように、アミノ酸の置換は、通常、アミノ酸側鎖の置換基の相対的な類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。前述の様々な特徴を考慮する例示的な置換は当業者に周知であり、アルギニンとリジン、グルタミン酸とアスパラギン酸、セリンとスレオニン、グルタミンとアスパラギン、および、バリンとロイシンとイソロイシンが含まれる。以下の表Iにおいて示すように、適切なアミノ酸置換には、以下のものが含まれる。
【0047】
【表1】
【0048】
したがって、本発明は、1つまたは複数のアミノ酸の置換を含有する、図2〜10のうち偶数番号のものにおける配列(配列番号2、4、6、8、および10)のポリペプチドの機能的または生物学的等価物を含む。
【0049】
ポリペプチドの生物学的または機能的等価物はまた、部位特異的突然変異誘発を用いて調製することもできる。部位特異的突然変異誘発は、基になるDNAの特異的突然変異誘発を介する、第2世代ポリペプチド、または、その配列に由来する、生物学的、機能的に等価なポリペプチドの調製において有用な技術である。上述したように、このような変化は、アミノ酸の置換が望ましい場合には、望ましいものであり得る。この技術によってさらに、配列変異体の調製および試験が容易にできるようになり、例えば、ヌクレオチド配列の1つまたは複数の変化をDNA内に導入することにより、前述の考慮事項の1つまたは複数を組み込む。部位特異的突然変異誘発により、所望の突然変異のDNA配列をコードする特異的オリゴヌクレオチド配列ならびに十分な数の隣接ヌクレオチドの使用により突然変異体を産生させて、横断される欠失結合部の両側に安定な二本鎖が形成されるために十分なサイズおよび配列複雑性を有するプライマー配列をもたらすことが可能になる。典型的には、約17〜25ヌクレオチドの長さのプライマーが好ましく、配列の結合部の両側の約5〜10個の残基が改変される。
【0050】
通常、部位特異的突然変異誘発の技術は、当技術分野において周知である。理解されるであろうが、この技術は、典型的には、一本鎖形態および二本鎖形態の両方で存在し得るファージベクターを利用する。典型的には、本明細書に従った部位特異的突然変異誘発は、選択された化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)ポリペプチド配列の全てまたは一部をコードするDNA配列を配列内に含む一本鎖ベクターをまず得ることによって行われる。例えば周知の技術によって(例えば、合成によって)、所望の突然変異配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーが調製される。このプライマーは、次に、一本鎖ベクターにアニーリングされ、大腸菌(E.coli)ポリメラーゼIのクレノウ断片などの酵素を用いることによって伸長され、それにより、突然変異を有する鎖の合成が完了する。したがって、一方の鎖が元の突然変異されていない配列をコードし、第2の鎖が所望の突然変異を有する、ヘテロ二本鎖が形成される。次に、このヘテロ二本鎖ベクターを用いて、大腸菌(E.coli)細胞などの適切な細胞を形質転換し、突然変異を有する組換えベクターを含むクローンが選択される。市販されているキットは、必要な試薬を提供する。
【0051】
本発明のポリペプチドおよびポリペプチド抗原は、図2〜10のうち偶数番号のもの(配列番号2、4、6、8、および10)のいずれかのアミノ酸配列を包含するポリペプチドに対する、十分な配列類似性、構造的類似性、および/または機能的類似性を包含する、任意のポリペプチドを含むと理解される。さらに、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド抗原は、特定の由来源に限定されない。したがって、本発明は、様々な由来源からのポリペプチドの全体的な検出および単離を提供する。
【0052】
本発明のポリペプチドは、「成熟」タンパク質の形態であってもよく、または、融合タンパク質などの、より大きなタンパク質の一部であってもよい。例えば、分泌配列もしくはリーダー配列、プロ配列、複数のヒスチジン残基などの、精製において役立つ配列、または、組換え生産の間の安定性のためのさらなる配列を含有する、さらなるアミノ酸配列を含むことが有利であることが多い。
【0053】
本明細書において用いられる「免疫原性組成物」という用語は、免疫原性組成物を接種された対象において免疫応答を刺激し得る、投与可能な形態の、任意のタイプの生物学的作用物質を言う。免疫応答には、抗体の誘導および/またはT細胞応答の誘導が含まれ得る。「防御」という用語は、免疫原性組成物に関して用いられる場合、本明細書においては、問題となる疾患または状態に関連する症状のいずれかの(部分的な、または完全な)改善を言う。したがって、本免疫原性組成物による、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(S.dysgalactiae)(亜種ディスガラクティエ(Dysgalactiae)およびエクイシミリス(Equisimilis)を含む)などの連鎖球菌種による感染からの対象の防御によって、通常、細菌の増殖、ならびに/または、関節炎、心内膜炎、髄膜炎、多漿膜炎、気管支肺炎、髄膜炎、永続的難聴、および敗血性ショックを含む、連鎖球菌感染に関連する臨床症状の1つもしくは複数が減少する。
【0054】
本明細書において開示される方法は、連鎖球菌の種(例えば、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エクイシミリス(S.dysgalactiae sub.Equisimilis)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種ディスガラクティエ(S.dysgalactiae sub.Dysgalactiae)、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノーサス(S.anginosus)、ストレプトコッカス・コンステラータス(S.constellatus)、ストレプトコッカス・エクイシミリス(S.equisimilis)、およびストレプトコッカス・インターメディウス(S.intermedius))を含む、1つまたは複数の病原体に対する、免疫応答の誘導を含み得る。例えば、本方法は、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エクイシミリス(S.dysgalactiae sub.Equisimilis)などの、1つまたは複数の連鎖球菌病原体に対する、ポリクローナル抗体の産生の誘導を含み得る。
【0055】
上述したように、免疫原性組成物は、2つ以上の本発明のポリペプチドを包含する。そうするために、1つまたは複数のポリペプチドは、適切な濃度に調節され、任意の適切なアジュバント、希釈剤、薬学的に許容できる担体、またはその任意の組合せと共に製剤され得る。本明細書において用いる場合、「薬学的に許容できる担体」という表現は、薬学的投与に適合する、任意のおよび全ての溶媒、分散媒質、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、賦形剤などを含むことを意図する。薬学的に活性な物質のためのこのような媒質および作用物質の使用は、当技術分野において周知である。生理学的に許容できる媒体を、担体および/または希釈剤として用いることができる。薬学的に許容できる媒体は、副作用を生じさせず、例えば、活性化合物の投与を容易にすること、体内におけるその寿命および/またはその有効性を増大させること、溶液におけるその溶解度を増大させること、または代替としてその保存を強化することを可能にする、薬学的組成物または免疫原性組成物の構成要素となる、1つの化合物または化合物の組合せを示すことが理解される。これらの薬学的に許容できる媒体は周知であり、選ばれた活性化合物の性質および投与様式に従って、当業者によって適合される。これらには、限定はしないが、水、リンゲル液、適切な等張媒質、グリセロール、エタノール、および他の従来の溶媒、リン酸緩衝溶液などが含まれる。
【0056】
注射用の使用に適した医薬組成物には、無菌の注射可能な溶液または分散液の、処方箋に応じて調製するための、無菌の水性の溶液または分散液、および無菌粉末が含まれる。静脈内投与では、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)、またはリン酸緩衝溶液(PBS)が含まれる。全ての事例において、組成物は無菌でなくてはならず、注射可能性が容易である程度の流体であるべきである。これは、製造および保存の条件下で安定でなくてはならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から守られなくてはならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物を含有する、溶媒または分散媒質とすることができる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤を用いることにより、分散液の事例では所望の粒子サイズを保つことにより、および界面活性剤を用いることにより、維持され得る。微生物作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸などによって、達成することができる。多くの事例において、等張剤、例えば、糖、マンニトールやソルビトールなどのポリアルコール、および/または塩化ナトリウムが組成物に含まれる。注射用組成物の長期の吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの、吸収を遅延させる作用物質を、組成物内に含めることによってもたらされ得る。
【0057】
無菌の注射可能な溶液は、所望の量のポリペプチドを、上記で挙げた成分の1つまたは組合せを有する適切な溶媒中に組み込み、必要であればその後に濾過滅菌することによって、調製することができる。通常、分散液は、活性化合物を、基礎的な分散媒質と上記で挙げたものの所望の他の成分とを含有する滅菌媒体中に組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の事例においては、好ましい調製方法は、既に無菌濾過されたその溶液から、任意のさらなる所望の成分を加えた活性成分の粉末が得られる真空乾燥および凍結乾燥である。
【0058】
本明細書において記載される免疫原性組成物はまた、特定の実施形態において、1つまたは複数のアジュバントを包含する。アジュバントは、免疫原または抗原と共に投与されると免疫応答を強化させる物質である。限定はしないが、インターロイキン1−α、1−β、2、4、5、6、7、8、および10、12(例えば、米国特許第5,723,127号を参照されたい)、13、14、15、16、17、および18(およびその突然変異形態)、インターフェロン−α、β、およびγ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(例えば、米国特許第5,078,996号およびATCCアクセッション番号39900を参照されたい)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ならびに腫瘍壊死因子αおよびβを含む、多くのサイトカインまたはリンホカインが、免疫調節活性を有することが示されており、したがって、アジュバントとして有用である。本明細書において記載される免疫原性組成物と共に有用な、さらなる他のアジュバントには、限定はしないがMCP−1、MIP−1α、MIP−1β、およびRANTESを含むケモカイン;セレクチン、例えばL−セレクチン、P−セレクチン、およびE−セレクチンなどの付着分子;例えばCD34、GlyCAM−1、およびMadCAM−1などのムチン様分子;LFA−1、VLA−1、Mac−1、およびp150.95などのインテグリンファミリーのメンバー;PECAM、ICAM、例えばICAM−1、ICAM−2、およびICAM−3、CD2、およびLFA−3などの免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー;CD40およびCD40Lなどの共刺激性分子;血管成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、B7.2、PDGF、BL−1、および血管内皮成長因子を含む成長因子;Fas、TNF受容体、Flt、Apo−1、p55、WSL−1、DR3、TRAMP、Apo−3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL−R2、TRICK2、およびDR6を含む受容体分子;ならびにカスパーゼ(ICE)が含まれる。
【0059】
免疫応答を強化させるために用いられる適切なアジュバントにはさらに、限定はしないが、米国特許第4,912,094号において記載されている、MPL(商標)(3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A、Corixa、Hamilton、MT)が含まれる。アジュバントとして用いるために同様に適しているものは、合成脂質A類似体もしくはアミノアルキルグルコサミンホスフェート化合物(AGP)、またはその誘導体もしくは類似体であり、これは、Corixa(Hamilton、MT)から入手可能であり、米国特許第6,113,918号において記載されている。1つのこのようなAGPは、2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−b−D−グルコピラノシドであり、これはまた、529としても知られている(以前はRC529として知られていた)。この529アジュバントは、水性形態(AF)として、または安定エマルジョン(SE)として製剤される。
【0060】
さらなる他のアジュバントには、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチルノルムラミル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)エチルアミン(MTP−PE)などのムラミルペプチド;MF59(米国特許第6,299,884号)(モデル110Yマイクロ流体化装置(Microfluidics、Newton、MA)などのマイクロ流体装置を用いてサブミクロン粒子に製剤される、5%のスクアレン、0.5%のTween80、および0.5%のSpan85(様々な量のMTP−PEを含有していてもよい)を含有する)、およびSAF(サブミクロンエマルジョンにマイクロ流体化されるか、またはボルテックスされてより大きな粒子サイズのエマルジョンを生成させる、10%のスクアレン、0.4%のTween80、5%のプルロニック遮断ポリマーL121、およびthr−MDPを含有する)などの水中油型エマルジョン;水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩(ミョウバン);Amphigen;Avridine;L121/スクアレン;D−ラクチド−ポリラクチド/グリコシド;プルロニックポリオール;ボルデテラ死菌;米国特許第5,057,540号において記載されているStimulon(商標)QS−21(Antigenics、Framingham、MA)、米国特許第5,254,339号において記載されているISOCOMATRIX(CSL Limited、Parkville、Australia)、および免疫刺激複合体(ISCOMS)などのサポニン;ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis);細菌リポ多糖;CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,207,646号)などの合成ポリヌクレオチド;欧州特許第1,296,713号および欧州特許第1,326,634号において記載されているIC−31(Intercell AG、Vienna、Austria);百日咳毒素(PT)もしくはその突然変異体、コレラ毒素もしくはその突然変異体(例えば、米国特許第7,285,281号、米国特許第7,332,174号、米国特許第7,361,355号、および米国特許第7,384,640号);または大腸菌(E.coli)易熱性毒素(LT)もしくはその突然変異体、特にLT−K63、LT−R72(例えば、米国特許第6,149,919号、米国特許第7,115,730号、および米国特許第7,291,588号)が含まれる。
【0061】
ポリペプチドにはまた、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に、または多糖にコンジュゲートまたは結合されていてもよいポリペプチドの少なくとも一部が含まれ得る。免疫原性組成物が、多糖などの他の成分を、単独で、または免疫応答を引き起こし得るタンパク質にコンジュゲートした形で含有し得ることも予想される。
【0062】
本発明の免疫原性組成物を包含するポリペプチドのインビトロでの免疫原性を評価するために、様々な試験が用いられる。例えば、インビトロでのオプソニン性のアッセイは、連鎖球菌亜種細胞の混合物と、問題となるポリペプチドに対する特異的抗体を含有する熱不活性化された血清と、外因性の補体源とを、共にインキュベートすることにより実施される。オプソニン化貪食作用は、新たに単離された多形核細胞(PMN)と抗体/補体/連鎖球菌亜種細胞の混合物とのインキュベーションの間に進行する。抗体および補体で被覆された細菌細胞は、オプソニン化貪食作用で死滅する。オプソニン化貪食作用を免れる生存細菌のコロニー形成単位(cfu)は、アッセイ混合物を平板培養することにより決定される。力価は、アッセイ対照との比較によって決定される、50%以上の細菌死滅をもたらす最大希釈の逆数として報告する。試験した最低の血清希釈(1:8)で50%未満の死滅を示す標本を、オプソニン化貪食作用抗体(OPA)力価が4であると報告する。上記の方法は、Grayの方法(Gray、Conjugate Vaccines Supplement、p.694〜697、1990)の変更形態である。
【0063】
試験血清と、さらに細菌細胞および熱不活性化された補体とを含有する試験血清対照が、それぞれの個別の血清に含まれる。この対照は、抗生物質または他の血清成分の存在により細菌株が直接的に死滅し得るかどうか(すなわち、補体またはPMNの非存在下で)を評価するために用いられる。既知のオプソニン力価を有するヒト血清を、陽性ヒト血清対照として用いる。それぞれの未知の血清についてのオプソニン抗体力価は、血清を有さない対照と比較してcfuを50%低減させる血清の最初の希釈の逆数として計算される。
【0064】
全細胞のELISAアッセイもまた、ポリペプチド抗原のインビトロでの免疫原性および表面露出を評価するために用いることができ、このアッセイでは、目的の細菌株を96ウェルプレートなどのプレート上に被覆し、免疫化された動物から得られる試験血清を、細菌細胞と反応させる。試験ポリペプチド抗原に特異的な任意の抗体が、ポリペプチド抗原の表面露出したエピトープと反応性である場合、前記抗体は、当業者に知られている標準的な方法によって検出され得る。類似のアプローチは、フローサイトメトリーおよび抗原特異的抗体を用いて、細胞表面上の抗原をモニタリングすることである。
【0065】
インビトロでの所望の活性を示す任意のポリペプチドを次に、インビボでの動物チャレンジモデルにおいて試験することができる。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、当業者に知られている免疫化の方法および経路(例えば、鼻腔内、非経口、筋肉内、経口、直腸、膣、経皮、腹腔内、静脈内、皮下など)による、動物(例えば、マウス)の免疫化において用いられる。連鎖球菌の免疫原性組成物での動物の免疫化の後、動物を、1つまたは複数の連鎖球菌種でチャレンジし、連鎖球菌種(Streptococcus spp.)感染に対する抵抗性についてアッセイする。
【0066】
組合せ免疫原性組成物は、本発明のポリペプチドの2つ以上を含めることによって、および、本発明のポリペプチドの1つまたは複数を、限定はしないがMタンパク質、付着因子などを含む、1つまたは複数の既知の化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)ポリペプチドと組み合わせることによって提供される。
【0067】
本発明の免疫原性組成物は、製剤されると、対象に直接的に投与することができ、対象由来の細胞にエクスビボで、または組換えタンパク質の発現のためにインビトロで、送達される。対象に直接的に送達するために、投与は、例えば、鼻腔内、非経口、経口、腹腔内、静脈内、皮下などの、任意の従来の形態によるものであってよく、または、エアロゾルスプレーによるものなど、鼻腔内、経口、目、肺、膣、もしくは直腸の表面などの任意の粘膜表面に、局所的に適用されてもよい。
【0068】
投与の容易性および投与量の均一性のために、経口または非経口組成物を単位投与形態で製剤することは有利である。本明細書において用いられる投与単位形態は、治療される対象について単位投与量として適合させた、物理的に分離した単位を言い、各単位は、所望の薬学的担体を伴う、所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の投与単位形態の特定は、活性化合物の固有の特徴、および達成されるべき特定の治療効果、および個体の治療のためにこのような活性化合物を配合する際の当技術分野において特有の制限によって決定され、それに直接的に依存する。
【0069】
注射用製剤、例えば、無菌の注射可能な水性または油性懸濁液が、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、既知の技術に従って製剤される。無菌の注射用製剤はまた、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液などの、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の、無菌の注射可能な溶液または懸濁液とすることができる。
【0070】
非経口投与では、本発明の免疫原性組成物は、水、油、生理食塩水、グリセロール、またはエタノールなどの無菌液体であってもよい、薬学的に許容できる担体を有する、生理学的に許容できる希釈剤中の、注射可能な投与量として投与することができる。さらに、例えば湿潤剤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などの補助物質が、組成物中に存在し得る。他の成分には、石油、動物、植物、または合成由来のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、および鉱油が含まれ得る。通常、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールが、特に注射可能な溶液のために、好ましい液体担体である。
【0071】
典型的には、組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射可能物質として調製され、注射前の、液体媒体中の溶液または懸濁液に適した固体形態もまた調製され得る。製剤はまた、上述したように、アジュバント効果を強化させるために、乳化されてもよく、または、リポソーム内、または、ポリラクチド、ポリグリコリド、もしくはコポリマーなどの微小粒子内にカプセル化されてもよい(Langer、Science 249:1527(1990)、およびHanes、Advanced Drug Delivery Reviews 28:97(1997)を参照されたい)。本発明の免疫原性組成物は、デポー注射または移植製剤の形態で投与することができ、前記製剤は、活性成分の持続放出またはパルス放出を可能にするような様式で製剤され得る。
【0072】
対象は通常、ヒトである。適切な用量数で、免疫学的に有効な量の免疫原性組成物が、免疫応答を引き起こすために対象に投与される。本明細書において用いられる、免疫学的に有効な量は、哺乳動物宿主(好ましくはヒト)に対する、単回用量における、または一連の用量の一部としての、治療される個体の免疫系を少なくとも生じさせて、細菌感染の臨床的影響を低減させる免疫応答を生じさせるために十分な量の投与を意味する。「免疫応答」または「免疫学的応答」という用語には、液性(抗体媒介性)応答および/または細胞性(抗原特異的T細胞またはその分泌産物により媒介される)応答の発現が含まれる。防御は、単回用量の免疫学的組成物によって付与され得るか、または、防御を維持するために、その後の追加用量に加えて、複数回用量の投与を必要とし得る。これは、細菌負荷量の最小限の減少から、感染の予防まで様々であり得る。理想的には、治療された個体は、β溶血性連鎖球菌感染の、それ以上重篤な臨床所見を示さない。投与量は、年齢および体重などの、個体の具体的な条件に応じて変化し得る。この量は、当業者に知られている手段による常法に従う試行において決定され得る。
【0073】
予防的適用において、免疫学的組成物は、β溶血性連鎖球菌感染に感受性がある、またはそうでなければその危険性がある対象に、疾患の危険性を排除もしくは低減するため、重症度を低くするため、または発生を遅らせるために十分な量で投与され、前記疾患には、感染に関連する疾患の生化学的、組織学的、および/または行動的症状、その合併症、ならびに、疾患の発症の間に見られる中間の病理学的表現型が含まれる。治療的適用において、組成物は、このような疾患に感受性があるかまたは既に罹患している患者に、疾患の(生物学的、組織学的、および/または行動的)症状を治癒させるかまたは少なくとも部分的に停止させるために十分な量で投与され、前記疾患には、その合併症、ならびに、疾患の発症における中間の病理学的表現型が含まれる。
【0074】
A、B、C、およびG群を含むBHSの全ての株に対する防御をもたらす単一のペプチド配列は存在しないことが観察された。以下の表II(以下の実施例1において示される)において示すように、各抗原は、これらの群のサブセットに対する免疫応答をもたらす。
【0075】
通常、BHSから得られる2つ以上の表面発現抗原の任意の組合せは、上記の強化された免疫応答をもたらすと予想される。上述のこのような抗原には、BHSの莢膜抗原、Mタンパク質、ABC輸送体、または任意の他の表面露出抗原が含まれ得る。しかし、以下の抗原が、免疫原性組成物の産生にとって特に有利な特性を示すことが明らかにされている。
SCP(C5aペプチダーゼ)
ペプチジルプロピルイソメラーゼ(ORF554によってコードされる)
推定付着タンパク質(ORF1358によってコードされる)
表面リポタンパク質(ORF2459によってコードされる)
機能未知タンパク質(ORF1218によってコードされる)
【0076】
単一の多成分免疫原性組成物内にこれらの抗原の2つ以上を組み合わせると、BHSの1つまたは複数の群に対する防御が強化され、それらに対する免疫応答が強化される。
【実施例】
【0077】
以下の実施例は例示的なものであり、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)
抗体結合
オプソニン化として知られているプロセスである、細菌への抗体の結合により、貪食細胞による細菌の取込みおよび死滅が生じ得る。このような抗体のスクリーニングは、特定の血清型を表面に発現しているかまたはしていない細菌の死滅における、その血清型に対して生じた抗体の有効性を決定するために用いられる。
【0079】
スクリーニングした各血清型について、列挙したORFによってコードされる抗体に対する抗体が、マウスにおいて生じた。抗体を次に、様々なBHS株に対してスクリーニングした。抗体のスクリーニングは、蛍光活性化細胞分類(FACS)によって行った。簡潔に述べると、熱で死滅させた連鎖球菌を、列挙した抗体と共に、氷上で45分間にわたりインキュベートし、その後、2回洗浄した。次に、連鎖球菌を、ヤギ抗マウスAlexa−488抗体(Molecular Probes、Eugene、OR)と共に、氷上で30分間にわたりインキュベートし、その後、2回洗浄した。そのように処理した細胞を、FACS機(例えば、DeMasterら、Infect.Immun.、70(1):350〜359、2002.を参照されたい)にかけた。結果を表2にまとめる。
【0080】
これらの抗β溶血性連鎖球菌抗血清および様々なβ溶血性連鎖球菌(BHS)株に対するモノクローナル抗体のスクリーニングの過程において、いくつかの抗血清および抗体が、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、ならびにC群およびG群の連鎖球菌(連鎖球菌種ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・コンステラータス(Streptococcus constellatus)、ストレプトコッカス・インターメディウス(Streptococcus intermedius)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エクイシミリス(Streptococcus dysgalactiae sub.Equisimilis)、およびストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae sub.Dysgalactiae))のメンバーを含む、多くのBHS株に対して交差反応性であることが確認された。この交差反応性はまた、列挙した、または関連するORFによってコードされるポリペプチドが、A群またはB群の連鎖球菌による、およびC群またはG群の連鎖球菌による感染に対して防御するために有効な免疫応答を誘導するための免疫原性組成物において使用され得ることを意味する。
【0081】
表2において、記号「+」は、抗体が、抗原に対して、バックグラウンドの少なくとも3倍反応することを意味し、記号「±」は、抗体が、抗原に対して、バックグラウンドの2倍〜3倍反応することを意味し、記号「−」は、抗体シグナルの検出がバックグラウンドと等しいかまたはそれより低いことを意味する。
【0082】
【表2−1】
【0083】
【表2−2】
【0084】
【表2−3】
【0085】
(実施例2)
免疫血清を産生するための3成分免疫原性組成物の使用
リン酸アルミニウムをアジュバント添加した、SCP、ORF554によってコードされるポリペプチド、およびORF1358によってコードされるポリペプチドからなる、三価の免疫原性組成物を調製し、その免疫原性組成物を用いて、2〜4週間間隔の3回の皮下接種によって過免疫ウサギ血清を産生させ、その後、瀉血した。ORF554によってコードされる、同様にアジュバント添加したポリペプチドからなる一価の免疫原性組成物を、対照として用いた。血清を、様々な希釈で、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)SF370に対するオプソニン化貪食活性(OPA)についてスクリーニングした。簡潔に述べると、細菌を、10ulの血清と共に、補体(ベビーラビット補体)の存在下で1時間にわたりインキュベートし、次に、1:10で希釈し、血液寒天プレート上で平板培養した。結果を、図11に示す。
【0086】
示されるように、Trivaxは、554免疫原性組成物よりも高いオプソニン化貪食活性を引き起こすことを観察することができ、これは、細菌のはるかに優れた死滅を示している。
【0087】
(実施例3)
受動免疫移行
抗体は、上記の抗原、すなわち、SCP、ならびにORF554、1358、2459、および1218によってコードされるポリペプチドのそれぞれに対して生じた。これらの抗体を次に、完全に機能する免疫系を有さない乳児のラットに注射した。その後、処理されたラットを化膿連鎖球菌(S.pyogenes)でチャレンジし、回収した細菌を、チャレンジの4時間後、計数した。陰性対照はPBSであり、陽性ヒト対照は385血清であった。
【0088】
結果を、図12〜16に示す。簡潔に述べると、結果は、抗原のそれぞれによって引き起こされた抗体が、乳児のラットにおける細菌を有意に低減させたことを示した。
【0089】
具体的な実施形態を参照して上記に例示および記載したが、それにも関わらず、本発明は、示された詳細に限定されるものではない。より正確に言えば、特許請求の範囲の等価物の範囲および領域内で、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な変更が詳細において行われてもよい。
【図1−1】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2012−508174(P2012−508174A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534902(P2011−534902)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/063268
【国際公開番号】WO2010/053986
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/063268
【国際公開番号】WO2010/053986
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】
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