説明

β2アドレナリン多型の検出

【課題】全自動化に適した方法で多型核酸配列を分析し得る方法の開発。
【解決手段】β2アドレナリン受容体遺伝子から標的配列を増幅及び検出するための増幅プライマー及びハイブリダイゼーションプローブとして有用な核酸が提供される。これらのプライマー及びプローブは被験サンプル中の標的配列の存在を検出するために増幅に基づく方法で使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は核酸多型性に関する。より特定的には本発明は核酸増幅技術を使用する単一ヌクレオチドの多型の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ヒトゲノムの配列を決定するために設計された試験、及び、ヒトゲノム配列を比較するために設計された試験から、ヒトゲノムの多型性に関する情報が得られた。ヒトゲノムが広範な多型性を有することは以前から報告がある。様々なヒトの遺伝的多型性には、単一塩基の置換;挿入または欠失;可変数のタンデム反復配列;1つの遺伝子全体またはその大部分の欠失;遺伝子増幅;及び、染色体転位;などがある。一般に、単一ヌクレオチドが関与する多型は単一ヌクレオチド多型(“SNP”)と呼ばれている。
【0003】
最近になってβ2アドレナリン受容体遺伝子のコドン16のSNPが報告され、βアゴニスト治療に対する反応が一様でない理由はこのSNPに関係があると考えられている(Drazen,J.M.ら,Thorzx,1996,51:1168;Liggett,S.B.,Am.J.Respir.Crit.Care Med.,1997,156:SI56−62;Martinez,F.D.ら,J.Clin.Invest.,1997,100:3184−8)。アドレナリン受容体は種々の細胞の表面のホルモン受容体である。ホルモンはアドレナリン受容体部位に結合するとカスケード式の細胞イベントを開始させる。従って、アドレナリン受容体及び該受容体に結合するホルモンは細胞イベントを分子レベルで制御するメカニズムの大部分を形成する。多くの薬理学的化合物はアドレナリン受容体部位に結合する分子を模倣し、このようにして細胞機能を臨床的に調節する。例えば、βアゴニストとして知られた薬物のクラスはβ2アドレナリン受容体部位に結合し、喘息薬として広く使用されている。しかしながら、β2アドレナリン遺伝子のコドン16にSNPをもつ個体では、受容体と薬物またはホルモンとの間の親和性を低下させる構造変化またはその他の変化が受容体に生じているので、このような治療方法に反応しない。
【0004】
従って、多型性の結果として有効性を喪失するであろう薬物を処方する前にβ2アドレナリン受容体遺伝子のコドン16の多型を検出する手段を提供することは有益であろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Drazen,J.M.ら,Thorzx,1996,51:1168
【非特許文献2】Liggett,S.B.,Am.J.Respir.Crit.Care Med.,1997,156:SI56−62
【非特許文献3】Martinez,F.D.ら,J.Clin.Invest.,1997,100:3184−8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(発明の概要)
全自動化に適した方法で多型核酸配列を分析し得る方法がここに提供される。本発明は、被験サンプル中のβ2アドレナリン受容体遺伝子のコドン16に多型性を有している標的配列を増幅及び分析するための試薬、方法及びキットを提供する。特に、本文中で配列1として示す標的配列を増幅するための増幅プライマーとして配列2及び配列3を使用し得る。これらのプライマーは配列4及び配列5による検出が可能な増幅産物を特異的にかつ高感度に産生することが知見された。配列4は野生型配列に特異的な内部ハイブリダイゼーションプローブであり、配列5は多型配列に特異的な内部ハイブリダイゼーションプローブである。
【0007】
本文中で配列1として示す標的配列は、核酸増幅試薬と標的配列を含有している被験サンプルと配列2及び配列3で示されるプライマーとから成る反応混合物を形成することによって増幅できる。増幅後、増幅された標的配列を検出できる。例えば、配列4及び配列5で示されるプローブを使用し、増幅された標的配列にハイブリダイズさせてプローブ/増幅産物ハイブリッドを形成させる。ハイブリッドは多様な公知の技術のいずれかを使用して検出できる。従って、配列4をプローブとしたプローブ/増幅産物ハイブリッドの検出は野生型配列の存在を示す。他方、配列5をプローブとしたプローブ/増幅産物ハイブリッドの検出は多型配列の存在を示すであろう。
【0008】
(詳細な説明)
上述のように、本発明は、被験サンプル中の標的配列を増幅及び検出するための試薬、方法及びキットを提供する。特に配列2及び配列3はβ2アドレナリン受容体遺伝子のコドン16に多型性を含む可能性をもつ核酸配列を増幅するための増幅プライマーとして使用できる。従って、野生型標的配列及び多型標的配列の双方を配列2及び配列3を使用して増幅できる。配列1は代表的な標的配列として示したものである。配列2及び配列3で示されるプライマーによって産生された増幅産物を検出または識別するために(例えば、被験サンプル中の野生型配列または多型配列の存在を示すために)配列4及び配列5を有するプローブ配列を使用できる。
【0009】
本文中に開示されたプライマー配列及びプローブ配列は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、または、核酸類似体例えば国際特許出願WO92/20702に開示されているペプチド核酸(PNA)を非限定例とする非電荷核酸類似体、または、米国特許第5,185,444号、第5,034,506号及び第5,142,047号に記載されているモルホリノ類似体から成りうる。これらの特許はいずれも参照によって本発明に含まれるものとする。このような配列は様々な現行の技術を使用して常法で合成できる。例えば、DNA配列は慣用のヌクレオチドホスホラミジット化学及びApplied Biosystems,Inc.(Foster City,CA);DuPont,(Wilmington,DE);またはMilligen,(Bedford,MA)から入手可能な器具を使用して合成できる。また所望の場合には、米国特許出願第5,464,746号;第5,424,414号及び第4,948,882号に記載されているような当業界で公知の方法を使用して配列を標識できる。これらの米国特許出願はいずれも参照によって本発明に含まれるものとする。しかしながら、プライマーとして使用される配列が少なくとも配列の3′端にDNAを含んでいなければならないこと、好ましくは完全にDNAから構成されていなければならないことは理解されよう。
【0010】
本文中で使用された“標的配列”という用語は、検出されるか、増幅されるか、検出及び増幅される核酸配列を意味するかまたは本発明で提供される配列の1つに相補的な核酸配列を意味する。標的配列という用語がときには一本鎖配列に対して使用されるが、標的配列が実際には二重鎖であることは当業者に理解されよう。
【0011】
本文中で使用された“被験サンプル”という用語は、標的配列を含むと推測される任意のサンプルを意味する。被験サンプルはいかなる生物ソースに由来してもよく、例えば、血液、気管支肺胞洗浄液、唾液、咽喉スワブ、眼球水晶体液、脳脊髄液、汗、痰、尿、乳、腹水、粘液、滑液、腹膜液、羊膜液、心組織液のような組織液など、または、発酵ブロス、細胞培養物、化学反応混合物などである。被験サンプルは、(i)ソースから得られたものを直接使用してもよく、または、(ii)サンプルの特性を変性する前処理後に使用してもよい。従って使用に先立って被験サンプルを、例えば、血液から血漿を調製する、細胞を破壊する、固体材料から液体を調製する、粘性流体を希釈する、液体を濾過する、液体を蒸留する、液体を濃縮する、干渉成分を失活させる、試薬を添加する、核酸を精製する、などによって前処理できる。最も典型的な被験サンプルは全血であろう。
【0012】
配列2及び配列3は、標的配列を増幅させるために当業界で公知の増幅手順に従って増幅プライマーとして使用できる。好ましくは、本発明で提供された配列を米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号に記載のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の原理に従って使用する。これらの特許は参照によって本発明に含まれるものとする。標的配列がRNAであるときは標的配列の増幅に逆転写段階が含まれることが当業者には理解されよう。逆転写活性を有している酵素がRNA鋳型からDNA配列を産生する能力を有していることは公知である。逆転写PCR(RT PCR)は当業界で公知であり、米国特許第5,310,652号及び第5,322,770号に記載されている。これらの特許は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0013】
従って本発明の増幅方法は一般に、核酸増幅試薬と増幅プライマー(即ち配列2または配列3)と標的配列を含む疑いのある被験サンプルとから成る反応混合物を形成する段階を含む。反応混合物の形成後、このように形成された反応混合物に増幅条件を作用させて標的配列の少なくとも1つのコピーを産生させる。当業界で公知のように例えば反応混合物を熱サイクル処理することによって反応混合物を数回反復処理し得ることは理解されよう。
【0014】
上述のように、反応混合物は“核酸増幅試薬”を含有する。このような試薬は公知であり、その非限定例は、ポリメラーゼ活性(及び必要ならば逆転写活性)をもつ酵素、マグネシウム及びマンガンのような酵素補因子;塩類;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD);及びデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)例えばデオキシアデニン三リン酸、デオキシグアニン三リン酸、デオキシシトシン三リン酸及びデオキシチミジン三リン酸である。
【0015】
“増幅条件”は一般に、標的配列に対するプライマー配列のハイブリダイズまたはアニーリングとその後のプライマー配列の伸長とを促進する条件であると定義される。このようなアニーリングが温度、イオン強度、配列鎖長、相補性及び配列のG:C含量のような複数のパラメーターにかなり予測可能に依存することは当業界で公知である。例えば、相補的核酸配列の環境の温度低下はアニーリングを促進する。所与の配列セットについて、融解温度即ちTmは複数の公知の方法のいずれかによって推定できる。典型的には、診断用途には融解温度に近い(即ち融解温度から10℃以内の)ハイブリダイゼーション温度を使用する。イオン強度または“塩”濃度もまた、融解温度に影響を与える。その理由は、少量のカチオンはホスホジエステル主鎖の負電荷を消去することによって二重鎖の形成を安定させ易いからである。典型的な塩濃度はカチオンの種類及び原子価に依存するが当業者はこのような塩濃度を容易に推測できるであろう。同様に、高いG:C含量及び長い配列鎖長も二重鎖形成を安定させることが公知である。その理由は、A:T対は2個の水素結合しか有していないのに比べてG:C対合は3個の水素結合を有しており、配列が長いほど配列を相互保持する水素結合の数が多くなるからである。従って、高いG:C含量及び長い配列鎖長は、融解温度を上昇させることによってハイブリダイゼーション条件に影響を与える。
【0016】
所与の診断用途に用いる配列が選択されれば、G:C含量及び鎖長は既知の値となり、これらに基づいて正確なハイブリダイゼーション条件を決定できる。イオン強度は典型的には酵素活性に最適化されるので、残っている唯一の可変パラメーターは温度である。一般に、ハイブリダイゼーション温度はプライマーまたはプローブのTmに近い温度またはTmの温度に選択される。従って、特定のプライマー、プローブ、または、プライマーとプローブのセットに適当なハイブリダイゼーション条件を得ることは、当業者の通常の知識の範囲内である。
【0017】
上述のようにして産生された増幅産物を標的配列の増幅中または増幅後に検出できる。配列4及び配列5を有するプローブ配列を使用して配列2及び配列3で産生される増幅産物を検出するために使用できる検出プラットフォームは、当業界で公知のよく知られた均一技術または不均一技術のいずれかを含む。均一検出プラットフォームの例は、プローブに結合され標的配列の存在下でシグナルを発するFRETラベルの使用を含む。米国特許第5,210,015号(参照によって本発明に含まれるものとする)に記載された所謂TaqManアッセイ及び米国特許第5,925,517号(参照によって本発明に含まれるものとする)に記載されたMolecular Beaconアッセイは、核酸配列を不均一に検出するために使用できる技術の例である。更に、このようなプラットフォームは増幅産物の産生をリアルタイムで検出するために使用できる。使用される特定の検出プラットフォームに応じて使用できるようにプローブを修飾できることは理解されよう。
【0018】
増幅反応の完了後、分子量マーカーを使用して増幅反応産物を検出するために例えばゲル電気泳動を使用できる。しかしながら、標識プローブ及び固体支持体を使用すると増幅産物を不均一に検出できる。従って、増幅された標的配列の検出方法は、(a)標的配列に相補的な核酸配列に少なくとも1つのハイブリダイゼーションプローブ(即ち、配列4及び配列5)をハイブリダイズさせて、プローブとプローブに相補的な核酸配列とから成るハイブリッドを形成する段階と、(b)ハイブリッドを被験サンプル中の標的配列の存在の指標として検出する段階とから成る。
【0019】
上述のように形成されたハイブリッドは、このようなハイブリッドを分離及び検出するために使用できる微粒子及びラベルを使用して検出できる。好ましくは、市販のAbbott LCxRTM器具(Abbott Laboratories;Abbott Park,IL)によって使用されるプロトコルに従って検出を行う。
【0020】
本文中で使用された“ラベル”という用語は、検出可能であるという特性または特徴を有している分子または部分を意味する。ラベルは、例えば放射性同位体、フルオロホア、ケミルミノホア、酵素、コロイド粒子、蛍光微粒子などのような直接に検出可能なラベルでもよい。または、ラベルが例えば特異的結合成分によって間接に検出可能なラベルでもよい。直接検出可能ラベルが例えば基質、トリガ試薬、光などのようなラベルを検出可能にする追加成分を必要とすることは理解されよう。間接検出可能ラベルを使用するとき、これらのラベルは典型的には“コンジュゲート”と組合せて使用される。コンジュゲートは典型的には、直接検出可能ラベルに付着または結合させた特異的結合成分である。コンジュゲートを合成するための結合化学は当業界で公知であり、例えば特異的結合成分の特異的結合特性またはラベルの検出可能特性を破壊しない任意の化学的手段及び/または物理的手段を含む。本文中で使用した“特異的結合成分”という用語は、結合対の一方の成分、即ち、一方の分子が例えば化学的または物理的手段を介して他方の分子に特異的に結合するような異なる2つの分子のうちの1つを意味する。抗原と抗体は特異的結合対を構成するが、それ以外の特異的結合対の非限定例としては、アビジンとビオチン;ハプテンとハプテン特異的抗体;相補的ヌクレオチド配列;酵素の補因子または基質と酵素;などがある。
【0021】
“固体支持体”という用語は、不溶性であるかまたは以後の反応によって不溶性になる任意の物質を意味する。従って、固体支持体は、ラテックス、プラスチック、誘導プラスチック、磁性または非磁性の金属、ガラス、シリコンなどである。また固体支持体の多様な形態が公知であり、その非限定例はビーズ、薄片、粗粒、粒子、薄板または管などである。
【0022】
1つの実施態様によれば、検出を容易にするためにプライマー配列及び/またはプローブ配列にラベルを組込むことによってハイブリッドを検出できる。従って、例えば微粒子にハイブリッドを固定させ微粒子上のハイブリッドの存在をコンジュゲートによって検出するためにプライマーまたはプローブに結合された第一及び第二の特異的結合成分を使用できる。
【0023】
別の実施態様によれば、ハイブリッドを検出するために特異的結合成分と直接検出可能ラベルとの組合せを使用できる。例えば、特異的結合成分で標識したプライマーを使用して特異的結合成分をハイブリッドに導入できる。直接検出可能ラベルは、直接検出可能ラベルで標識しておいたプローブを使用してハイブリッドに組込むことができる。従って、ハイブリッドが特異的結合成分を使用して微粒子に固定されプローブ上のラベルによって直接検出され得る。その他の検出形態が当業者の選択事項であることは理解されよう。
【0024】
好ましい実施態様によれば、標的配列を検出するために、1995年8月14日出願の米国特許出願No.08/514,704に記載の“オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションPCR”(あるいは、本文中で“OHPCR”と呼ぶ)を使用する。該特許出願は参照によって本発明に含まれるものとする。簡単に説明すると、好ましい方法で使用される試薬は少なくとも1つの増幅プライマーと少なくとも1つの内部ハイブリダイゼーションプローブと増幅反応を実行させる増幅試薬とを含む。プライマー配列は、標的配列(またはその相補配列)のコピーの伸長をプライムするために使用され、捕獲ラベルまたは検出ラベルによって標識されている。プローブ配列はプライマー配列によって産生された配列とハイブリダイズするために使用され、典型的にはプライマー配列を含まない配列とハイブリダイズする。プライマー配列と同様に、プローブ配列もまた捕獲ラベルまたは検出ラベルによって標識されているが、プライマーが捕獲ラベルによって標識されているときはプローブが検出ラベルによって標識され、プライマーが検出ラベルによって標識されているときはプローブが捕獲ラベルによって標識されなければならない。検出ラベルは先に定義した“ラベル”と同じ定義を有しており、“捕獲ラベル”は典型的には、伸長産物及びこのような産物に結合したプローブを別の増幅反応体から分離するために使用される。特異的結合成分(先に定義)はこの目的に極めて好適である。また、この方法に従って使用されるプローブは好ましくは、ハイブリダイゼーション条件下で伸長しないように3′端でブロックされている。プローブの伸長を阻止する方法は公知であり、当業者の選択事項である。典型的には、プローブの3′端にリン酸塩基を付加するだけでプローブの伸長をブロックする目的を十分に果たし得る。
【0025】
プローブが最初から反応混合物の一部である上記の好ましい実施態様では、反応混合物を増幅条件下においたときに標的配列またはその相補配列のコピーがプローブのTmよりも高い温度で産生されるように、プライマー、プローブ及び増幅条件はプローブ配列がプライマー配列よりも低い融解温度を有するように選択するのが好ましい。このようなコピーが合成された後、これらのコピーを変性し、混合物を冷却すると、プローブとターゲットまたはその相補配列のコピーとのハイブリッドが形成され得る。温度を変性温度からプローブが一本鎖コピーに結合する温度まで低下させるときの降温速度は極めて速い(例えば8−15分)のが好ましく、特に、ポリメラーゼ活性を有する酵素がプライマー伸長に活性であるような温度範囲を経由する。このような速やかな冷却は、プライマー/コピー配列のハイブリダイゼーション及び伸長よりもコピー配列/プローブのハイブリダイゼーションを促進する。
【0026】
以下の実施例は本発明をより十分に説明するために提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0027】
実施例
以下の実施例は、本文中に提示されたDNAオリゴマーのプライマー及びプローブを使用したβ−2アドレナリン受容体遺伝子中の単一ヌクレオチドの多型の検出を証明する。これらのDNAプライマー及びプローブは配列2、配列3、配列4及び配列5として示される。β−2アドレナリン受容体遺伝子の代表的配列の一部分を本文中で配列1として示す。
【0028】
以下の実施例において、配列2及び配列3は野生型及び突然変異型の双方のβ−2アドレナリン受容体遺伝子の一部分に特異的な増幅プライマーとして使用される。配列4はβ−2アドレナリン受容体遺伝子増幅産物の野生型対立遺伝子を検出する内部ハイブリダイゼーションプローブである。配列5はβ−2アドレナリン受容体遺伝子増幅産物の突然変異対立遺伝子を検出する内部ハイブリダイゼーションプローブである。
【0029】
実施例1
β−2アドレナリン受容体遺伝子のプライマー及びプローブの調製
A.β−2アドレナリン受容体のプライマー
オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションPCRによってβ−2アドレナリン受容体遺伝子の野生型及び突然変異型の双方の対立遺伝子を含有する標的配列に結合し該配列を増幅させ得るプライマーを設計した。これらのプライマーは配列2及び配列3であった。標準オリゴヌクレオチド合成法を使用してプライマー配列を合成した。更に、米国特許第5,424,414号に記載されたような標準シアノエチルホスホラミジット結合化学を使用し、配列3の5′端をカルバゾールでハプテン化した。該特許は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0030】
B.野生型及び突然変異型のβ−2アドレナリン受容体のプローブ
オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによってβ−2アドレナリン受容体遺伝子中の野生型対立遺伝子または突然変異対立遺伝子の増幅標的配列とハイブリダイズするようにプローブを設計した。野生型対立遺伝子に対するプローブは配列4を有しており、突然変異対立遺伝子に対するプローブは配列5を有していた。標準オリゴヌクレオチド合成法を使用してプローブ配列を合成した。配列4の5′端をアダマンタンでハプテン化し、10個のチミジンを結合させ、3′端をリン酸塩でブロックした。配列5の5′端をダンシルでハプテン化し、10個のチミジンを結合させ、3′端をリン酸塩でブロックした。すべての合成には米国特許第5,464,746号に記載された標準シアノエチルホスホラミジット結合化学を使用した(該特許は参照によって本発明に含まれるものとする)。
【0031】
実施例2
β−2アドレナリン受容体の多型の検出
A.全体手順
QIAampRTM Blood Mini Kit(200μl以下のサンプルの場合)またはQIAampRTM Blood Maxi Kit(200μl−10mlのサンプル量の場合)(双方のキットはQiagen,Valencia,CA製)を製造業者の指示通りに使用して全血からDNAを抽出した。全部のサンプルの遺伝子型を配列決定によって確認した。この結果、これらのサンプル中の本発明で試験されるβ−2アドレナリン受容体遺伝子の対立遺伝子がホモ接合野生型、ホモ接合突然変異またはヘテロ接合のいずれであるかを判定した。幾つかの場合には、精製したDNAを分光光度法によって定量した。
【0032】
配列2及び配列3のプライマーを実施例1で調製した配列4(野生型)及び配列5(突然変異)のプローブと共に使用して、上記サンプルに由来のDNAをPCR増幅し検出した。
【0033】
50mMのN,N,−ビス[2−ヒドロキシエチル]グリシン(Bicine),pH8.1、150mMの酢酸カリウム、0.1mMのエチレンジアミン四酢酸、0.02%のナトリウムアジド、0.001%のウシ血清アルブミン及び8%(w/v)のグリセロールを含有する1XOHのバッファ中でPCRを実施した。組換えThermus thermophilusのDNAポリメラーゼを5単位/反応の濃度で、各々が最終濃度150μMで存在するdNTP(dATP、dGTP、dTTP及びdCTP)と共に使用した。配列2及び配列3のプライマーと配列4の野生型プローブとは各々110nMの濃度で使用し、配列5の突然変異プローブは50nMの濃度で使用した。最終濃度3.25mMの塩化マンガンも反応混合物中に存在させた。総反応容量は0.2mlであり、サンプル容量は20μlであった。
【0034】
反応混合物をLCxRTMサーマルサイクラーで増幅した。反応混合物を先ず97℃で2分間インキュベートし、次いで94℃で40秒、55℃で40秒、72℃で40秒のPCR増幅サイクルを45回反復した。反応混合物を熱サイクル処理した後、混合物を97℃で5分間維持し、温度を12℃まで急激に降下させることによってプローブオリゴハイブリダイゼーションを完了した。サンプルを12℃で少なくとも10分間維持し、その後は反応生成物を分析し検出するまでこの温度に維持した。
【0035】
反応生成物をAbbott LCxRTMシステム(Abbott Laboratories,Abbott Park,ILから入手可能)で検出した。反応生成物を捕獲し検出するために抗カルバゾールコーティングした微粒子と抗アダマンタン抗体/アルカリホスファターゼコンジュゲートと抗ダンシル抗体/β−ガラクトシダーゼコンジュゲート(Abbott Laboratories,Abbott Park,ILから入手可能)との懸濁液をLCxRTMと共に使用した。酵素基質として4−メチル−ウンベリフェリルホスフェート(MUP)及び7−β−D−ガラクトピラノシルオキシクマリン−4−酢酸−(2−ヒドロキシエチル)アミド(AUG)を使用し、基質から生成物への変換速度を測定しカウント数/秒/秒(c/s/s)として記録した。
【0036】
B.ターゲットDNA滴定
配列決定によって確認した3つの遺伝子型(ホモ接合野生型、ヘテロ接合及びホモ接合突然変異)の各々に由来のDNAを単離し、定量し、サンプル中で反応あたり25ngから500ngの範囲の種々の量のDNAを使用して上記の手順で試験した。
【0037】
この実験で得られたデータを表1に示す。該データは、野生型プローブがホモ接合野生型及びヘテロ接合のβ−2アドレナリン受容体遺伝子型を検出したが、ホモ接合突然変異β−2アドレナリン受容体遺伝子型を陽性として検出しなかったことを示す。突然変異プローブはホモ接合突然変異及びヘテロ接合の双方のβ−2アドレナリン受容体遺伝子型を検出したが、ホモ接合野生型のβ−2アドレナリン受容体遺伝子型を陽性として検出しなかった。双方のプローブが1つの野生型対立遺伝子と1つの突然変異対立遺伝子とを含むので双方のプローブがヘテロ接合サンプルを検出したことは予想通りであった。更に、ヘテロ接合サンプルのLCx反応速度はホモ接合サンプルのほぼ1/2であったが、その理由は、適正なホモ接合サンプル中に2つの対立遺伝子が存在するのにヘテロ接合サンプル中にはプローブと反応できる対立遺伝子が1つしか存在しないからである。従って、全部のプローブが優れた特異性を示した。全部の陽性サンプルで少なくとも反応当たり25ngという少量までのDNAが検出可能であった。
【0038】
【表1】

【0039】
C.未知サンプルの遺伝子型の決定
上記のA.に記載の手順を使用して20のサンプルのβ−2アドレナリン受容体遺伝子型を決定した。次にこの結果を配列決定によって決定した結果に比較した。
【0040】
表2から明らかなように、サンプルは明らかに、野生型プローブとだけ反応するか(ホモ接合野生型)、突然変異プローブとだけ反応するか(ホモ接合突然変異)、または、双方のプローブと反応した(ヘテロ接合)。これらの結果を配列決定によって確認した。従って、LCxフォーマットでこれらのプライマー及びプローブを使用してβ−2アドレナリン受容体の遺伝子型を決定するこの方法は、配列決定方法と同様に正確であり、しかも配列決定方法よりも容易である。
【0041】
【表2】

【0042】
本発明を特定実施態様に基づいて詳細に説明してきたが、本発明の要旨及び範囲を逸脱することなくこれらの実施態様の変更及び修正が可能であることは当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のヌクレオチド配列からなるプライマー及び配列番号3のヌクレオチド配列からなるプライマーを含む組成物。
【請求項2】
配列番号2のヌクレオチド配列からなるプライマー、配列番号3のヌクレオチド配列からなるプライマー、ならびに配列番号4及び配列番号5から成るグループから選択されたヌクレオチド配列からなるプローブを含む、標的配列を検出するための組成物。
【請求項3】
(a)核酸増幅試薬と、請求項1に記載の組成物と、標的配列を含有する疑いのある被験サンプルとを含む反応混合物を形成する段階と、
(b)混合物を増幅条件に供して標的配列の少なくとも1つのコピーを生じさせる段階と
を含む、β2アドレナリン受容体の標的配列を増幅する方法。
【請求項4】
(a)核酸増幅試薬と、請求項1に記載の物質組成物と、標的配列を含有する疑いのある被験サンプルとを含む反応混合物を形成する段階と、
(b)混合物を増幅条件に供して増幅産物を生じさせる段階と、
(c)配列番号4及び配列番号5から成るグループから選択されたヌクレオチド配列からなるプローブを増幅産物にハイブリダイズさせてハイブリッドを形成する段階と、
(d)被験サンプル中の標的配列の存在の指標としてハイブリッドを検出する段階と
を含む、被験サンプル中の標的配列を検出する方法。
【請求項5】
(a)配列番号2のヌクレオチド配列からなるプライマー及び配列番号3のヌクレオチド配列からなるプライマーと、
(b)増幅試薬と
を含む、β2アドレナリン受容体の標的配列の増幅用キット。
【請求項6】
配列番号4及び配列番号5から成るグループから選択されたヌクレオチド配列からなるプローブを更に含む請求項5に記載のキット。

【公開番号】特開2012−161319(P2012−161319A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−72950(P2012−72950)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【分割の表示】特願2001−573045(P2001−573045)の分割
【原出願日】平成13年4月3日(2001.4.3)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】