説明

β2アドレナリン多型検出

【課題】多型の結果として所期効果をあげないであろう薬剤を処方する前にβ2アドレナリン受容体遺伝子のコドン16における多型を検出する手段の提供。
【解決手段】β2アドレナリン受容体遺伝子のコドン16における多型を有する標的配列を増幅および検出するための組成物であって、標的配列を検出するための分子ビーコンプローブを含み、前記分子ビーコンプローブは特定な配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する核酸及び標識部分を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は核酸多型に関し、特に核酸増幅法を用いる一ヌクレオチド多型の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムの配列を調べるように計画された研究及びヒトゲノム配列を比較するように計画された研究から、ヒトゲノムの多型に関する情報が引き出された。ヒトゲノムにおける各種多型が既に公知である。各種ヒトゲノム多型には、1塩基置換、挿入または欠失;変数のタンデム反復配列;遺伝子の全部または大部分の欠失;遺伝子増幅;及び染色体再構成が含まれる。通常、1個のヌクレオチドが関わる多型は一ヌクレオチド多型(SNP)と呼ばれている。
【0003】
最近、β2アドレナリン受容体遺伝子のコドン16におけるSNPは報告されており、βアゴニスト治療に対する応答の変化に関係している(J.M.Drazenら,Thorzx,51:1168(1996);S.B.Liggett,Am.J.Respir.Crit.Care Med.,156:S156−62(1997);F.D.Martinezら,J.Clin.Invest.,100:3184−8(1997))。アドレナリン受容体は各種細胞の表面上のホルモン受容体である。ホルモンはアドレナリン受容体部位に結合すると一連の細胞事象のカスケードをトリガーし得る。よって、アドレナリン受容体及びそこに結合するホルモンは大部分分子レベルで細胞事象をコントロールする機構を形成する。多くの医薬化合物は、アドレナリン受容体部位に結合し、こうして細胞機能を臨床的に調節する分子を模倣している。例えば、β−アゴニストとして公知の薬物はβ2アドレナリン受容体部位に結合し、喘息に対する薬剤として広く使用されている。しかしながら、β2アドレナリン遺伝子のコドン16にSNPを有する患者は、受容体と薬剤またはホルモン間のアフィニテイーを低下させる受容体のコンフォメーション等が変化するために前記治療に応答しないことがある。
【0004】
従って、多型の結果として所期効果をあげないであろう薬剤を処方する前にβ2アドレナリン受容体遺伝子のコドン16における多型を検出する手段を提供することが有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願公開第92/20702号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,185,444号明細書
【特許文献3】米国特許第5,034,506号明細書
【特許文献4】米国特許第5,142,047号明細書
【特許文献5】米国特許第5,464,746号明細書
【特許文献6】米国特許第5,424,414号明細書
【特許文献7】米国特許第4,948,882号明細書
【特許文献8】米国特許第4,683,195号明細書
【特許文献9】米国特許第4,683,202号明細書
【特許文献10】米国特許第5,310,652号明細書
【特許文献11】米国特許第5,322,770号明細書
【特許文献12】米国特許第5,691,146号明細書
【特許文献13】米国特許第5,876,930号明細書
【特許文献14】米国特許第5,723,591号明細書
【特許文献15】米国特許第5,348,853号明細書
【特許文献16】米国特許第5,119,801号明細書
【特許文献17】米国特許第5,312,728号明細書
【特許文献18】米国特許第5,962,233号明細書
【特許文献19】米国特許第5,942,283号明細書
【特許文献20】米国特許第5,866,336号明細書
【特許文献21】米国特許第5,210,015号明細書
【特許文献22】米国特許第5,925,517号明細書
【特許文献23】米国特許第6,150,097号明細書
【特許文献24】米国特許出願第08/514,704号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.M.Drazenら,Thorzx,51:1168(1996)
【非特許文献2】S.B.Liggett,Am.J.Respir.Crit.Care Med.,156:S156−62(1997)
【非特許文献3】F.D.Martinezら,J.Clin.Invest.,100:3184−8(1997)
【非特許文献4】Tyagiら,Nat.Biotechnol.,14:303−308(1996)
【非特許文献5】Clegg,Methods Enzymology,211:353−388(1992)
【発明の概要】
【0007】
本明細書には、自動化に適した方法で多型核酸配列を分析し得る方法を開示する。本発明は、試験サンプル中のβ2アドレナリン受容体遺伝子のコドン16に多型を有する標的配列を増幅、検出するための試薬、方法及びキットを提供する。特に、本明細書中で配列番号1と称される標的配列を増幅するための増幅プライマーとして配列番号2及び配列番号3を使用することができる。前記プライマーは増幅産物を特異的且つ高感度で産生し、この増幅産物は配列番号4及び5、配列番号6、7、8及び9からなる分子ビーコンプローブを用いて容易に検出できることを知見した。配列番号4は野生型配列に特異的な内部ハイブリダイゼーションプローブであり、配列番号5は変異体(多型)配列に特異的な内部ハイブリダイゼーションプローブである。また、配列番号6及び7は野生型配列に対する分子ビーコンプローブに挿入され得るヌクレオチド配列であり、配列番号8及び9は変異体(多型)配列に対して選択的な分子ビーコンプローブに挿入されるヌクレオチド配列である。
【0008】
本明細書中で配列番号1として示される標的配列は、核酸増幅試薬、標的配列を含む試験サンプル、及び配列番号2及び3のプライマーを含む反応混合物を形成することにより増幅され得る。増幅後、増幅された標的配列が検出され得る。例えば、配列番号4及び5のプローブ、または配列番号6、7、8または9の配列を含む分子ビーコンプローブを増幅された標的配列にハイブリダイズするために使用すると、プローブ/増幅産物ハイブリッドが形成され、このハイブリッドは各種公知方法から選択した適当な方法を用いて検出され得る。すなわち、プローブが配列番号4であるプローブ/増幅産物ハイブリッドが検出されれば、野生型配列の存在が分かる。一方、プローブが配列番号5であるプローブ/増幅産物ハイブリッドが検出されれば、多型配列の存在が分かる。同様に、増幅産物の存在下で配列番号6または配列番号7のヌクレオチド配列を含む分子ビーコンプローブから標的結合状態を示すシグナルが検出されれば、野生型配列の存在が分かる。一方、増幅産物の存在下で配列番号8または配列番号9のヌクレオチド配列を含む分子ビーコンプローブの1つから標的結合状態を示すシグナルが検出されれば、変異体(多型)配列の存在が分かる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、試験サンプル中の標的配列を増幅、検出するための試薬、方法及びキットを提供する。特に、配列番号2及び配列番号3がβ2アドレナリン受容体遺伝子のコドン16に多型を含む可能性のある核酸配列を増幅するために増幅プライマーとして使用され得る。よって、標的配列の野生型及び多型バージョンの両方が配列番号2及び配列番号3を用いて増幅され得る。代表的な標的配列として、配列AACGGCAGCG CCTTCTTGCT GGCACCCAAT AGAAGCCATG CGCCGGACCA CGACGTCACG CAGCAAAGGG ACGAGGTGTG GGTGGTGGGC ATGGGCATCG TCATGT(配列番号1)を提示する。配列番号2及び配列番号3のプライマーにより産生される増幅産物を検出または区別するために配列番号4または配列番号5を有するプローブ配列を使用することができる(例えば、試験サンプル中の野生型または多型配列の存在を示す)。また、配列番号2及び配列番号3のプライマーにより産生される増幅産物を検出及び/または区別するために配列番号6、7、8または9のヌクレオチド配列を含む分子ビーコンプローブを使用することができる(例えば、試験サンプル中の野生型または多型配列の存在を示す)。
【0010】
本発明において有用なヌクレオチド配列には、
【0011】
【化1】

、及び上記した天然ヌクレオチドの1つ以上がヌクレオチドの合成アナログで置換されている人工アナログ配列が含まれる。3つの好ましい実施態様では、配列番号6、7、8及びは9のヌクレオチド配列を含む分子ビーコンはフルオレセイン及びdabcylを連結させた上記ヌクレオチド配列から完全にもしくは本質的に構成される。配列番号6及び配列番号9のヌクレオチド配列を含む分子ビーコンプローブはそれぞれ配列番号7及び配列番号8を含む分子ビーコンプローブよりも好ましい。
【0012】
本明細書に記載されている分子ビーコンのプライマー、プローブ及びヌクレオチド配列はデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、または非帯電核酸アナログや当業界で公知の他の核酸アナログのような核酸アナログから構成され得、前記非帯電核酸アナログには国際特許出願公開第92/20702号パンフレットに記載されているペプチド核酸(PNA)及び米国特許第5,185,444号明細書、同第5,034,506号明細書及び同第5,142,047号明細書に記載されているモルホリノアナログが含まれるが、これらに限定されない。前記文献はいずれも援用により本明細書に含まれるとする。例えば、当業者は、T(すなわち、チミジン)として表されるオリゴヌクレオチドが示されている場合にはDNAよりむしろRNAを使用する実施態様ではこのオリゴヌクレオチドはUも表し、非天然ヌクレオチド残基を本発明の配列に含む核酸アナログを表す。前記配列は通常現在利用可能な各種方法を用いて合成され得る。例えば、DNA配列は、慣用のヌクレオチドホスホラミダイト化学及びApplied Biosystems,Inc.(カリフォルニア州フォスターシティーに所在)、DuPont(デラウェア州ウィルミントンに所在)またはMilligen(マサチューセッツ州ベッドフォードに所在)から市販されている機器を用いて合成され得る。また、所望により、前記配列は、いずれも援用により本明細書に含まれるとする米国特許第5,464,746号明細書、同第5,424,414号明細書及び同第4,948,882号明細書に記載されているような当業界で公知の方法を用いて標識され得る。ある実施態様では、本発明のプローブ及び分子ビーコンプローブが天然RNAヌクレオチド(すなわち、A、G、C及びU)のみを含んでいることが好ましく、より好ましくは天然DNAヌクレオチド(すなわち、A、G、C及びT)のみを含む。プライマーとして使用される配列が配列の3’末端にDNAを有していることが好ましく、より好ましくは完全にDNAから構成される。
【0013】
「標的配列」は、増幅及び検出される核酸配列であるかまたは配列番号1に相補的なヌクレオチド配列からなる。標的配列はときどき一本鎖と称されるが、当業者は認識しているように本発明で使用される標的配列が二本鎖であってもよい。
【0014】
本明細書中、用語「試験サンプル」は標的配列を含んでいると疑われるものを意味する。試験サンプルは、生物学的ソース(例えば、血液、気管支肺胞洗浄液、唾液、咽頭スワブ、眼房水、脳脊髄液、汗、痰、尿、乳、腹水、粘液、滑液、腹膜液、羊水)、組織(例えば、心組織等)、発酵ブロス、細胞培養物、化学反応混合物等に由来するものであり得る。試験サンプルは(i)前記ソースから入手したまま直接、または(ii)サンプルの特性を修飾するための予備処理後使用され得る。よって、使用する前に、試験サンプルを例えば血液から血漿を調製したり、細胞を破壊したり、固体材料から液体を作成したり、粘性流体を希釈したり、液体を濾過したり、液体を蒸留したり、液体を濃縮したり、干渉成分を不活化したり、試薬を添加したり、核酸を精製したりして予備処理され得る。最も一般的にはサンプルは全血液である。
【0015】
配列番号2及び3は、増幅プライマーとして標的配列を増幅するために当業界で公知の増幅手順に従って使用され得る。好ましくは、本発明の配列は、援用により本明細書に含まれるとする米国特許第4,683,195号明細書及び同第4,683,202号明細書に記載されているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の原理に従って使用される。当業者が理解しているように、標的配列がRNAの場合には標的配列を増幅させる際に逆転写段階を加えてもよい。逆転写活性を有する酵素がRNA鋳型からDNA配列を産生し得ることは公知である。逆転写PCR(RT PCR)は当業界で公知であり、援用により本明細書に含まれるとする米国特許第5,310,652号明細書及び同第5,322,770号明細書に記載されている。
【0016】
よって、本発明の増幅方法は、通常核酸増幅試薬、増幅プライマー(すなわち、配列番号2及び配列番号3)及び標的配列を含んでいると疑われる試験サンプルを含む反応混合物を形成する段階を含む。反応混合物を形成した後形成された反応混合物を増幅条件にかけると、試験標的のコピーが少なくとも1個生ずる。当業界で公知のように反応混合物を熱サイクルにかけるように反応混合物を数回増幅条件にかけることは理解されている。
【0017】
上記したように、反応混合物は“核酸増幅試薬”を含み得る。この核酸増幅試薬には公知の試薬が含まれ、その例にはポリメラーゼ活性(及び所要により逆転写活性)を有する酵素;マグネシウムまたはマンガンのような酵素コファクター;塩;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD);及びデオキシアデニントリホスフェート、デオキシグアニントリホスフェート、デオキシシトシントリホスフェートやデオキシチミニントリホスフェートのようなデオキシヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
「増幅条件」は、通常プライマー配列の標的配列へのハイブリダイズまたはアニーリング及びその後のプライマー配列の伸長を促進する条件として定義される。当業界で公知のように、アニーリングは十分予想されるように温度、イオン強度、配列の長さ、相補性及び配列のG:C含量を含めた諸因子に依存する。例えば、相補的核酸配列の環境の温度を低くするとアニーリングが促進される。所与の組の配列について、溶融温度(Tm)は幾つかの公知和方法により推定され得る。典型的には、診断用途では溶融温度に近い(すなわち、10℃以内)ハイブリダイゼーション温度を用いる。小カチオンはホスホジエステル骨格との相互作用により二重鎖の形成を安定化させる傾向にあるので、イオン強度、すなわち“塩”濃度も溶融温度に影響を与える。典型的な塩濃度はカチオンの種類及び価に依存するが、このことは当業者が容易に理解し得る。また、G:C対は3個の水素結合を含むのに対してA:T対は水素結合を2個しか有していないこと及びより長い配列は配列を一緒に保持する水素結合をより多く有していることから、高いG:C含量及びより長い配列も二重鎖の形成を安定化することも公知である。よって、高いG:C含量及びより長い配列は溶融温度を上昇させることによりハイブリダイゼーション条件に影響を与える。
【0019】
所与の診断用途のために配列を選択したら、G:C含量及び長さは分かるであろうし、ハイブリダイゼーション条件を正確に決定する際に考慮され得る。イオン強度は通常酵素活性に対して最適化されるので、残る変更可能なパラメーターは唯一温度である。通常、ハイブリダイゼーション温度はプライマー及びプローブのTmであるかその近くに選択される。特定のプライマー、プローブ、またはプライマー/プローブ組に対する適当なハイブリダイゼーション条件を得ることは当業者の設計事項である。
【0020】
上記したように産生した増幅産物は標的配列の増幅中またはその後に検出され得る。配列番号2及び3で産生された増幅産物を配列番号4及び5を有するプローブ配列または配列番号6、7、8及び/または9を含む分子ビーコンプローブを用いて検出するために使用され得る検出プラットフォームには、当業界で公知の均一または不均一方法が含まれる。均一検出プラットフォームの例は、標的配列の存在下でシグナルを発するプローブに結合させた蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer)(TRET)標識の使用を含み得る。前記標識にはフルオレセイン及びdabcylが含まれるが、これらに限定されない。核酸配列を均一に検出するために使用され得る方法の例は、(援用により本明細書に含まれるとする)米国特許第5,210,015号明細書に記載されている所謂TaqManアッセイ及び(援用により本明細書に含まれるとする)米国特許第5,925,517号明細書に記載されている分子ビーコンプローブ及びアッセイである。更に、前記プラットフォームは増幅産物の産生をリアルタイムに検出するために使用され得る。使用する特定検出プラットフォームに従って使用するのに適するようにプローブを修飾し得ると理解されたい。
【0021】
増幅反応の完了後増幅反応の産物を分子量マーカーを用いて検出するために、例えばゲル電気泳動が使用され得る。しかしながら、増幅産物は標識プローブ及び固体支持体を用いて不均一に検出され得る。増幅された標的配列の検出方法は、(a)標的配列に対して相補的な核酸配列に対して少なくとも1つのハイブリダイゼーションプローブ(例えば、配列番号4及び5)をハイブリダイズして、プローブ及びそのプローブに対して相補的な核酸配列を含むハイブリッドを形成する段階、及び(b)前記ハイブリッドを試験サンプル中の標的配列の存在の指標として検出する段階を含み得る。
【0022】
上記のように形成されたハイブリッドは、該ハイブリッドを分離、検出するために使用され得る微粒子及び標識を用いて検出され得る。好ましくは、検出は市販されているAbbott LCx(商標)装置(イリノイ州アボットパークに所在のAbbott Laboratories)で使用されるプロトコルに従って実施される。
【0023】
また、増幅した標的配列の検出方法は、(a)配列番号6、7、8または9の配列を有する核酸を含む分子ビーコンプローブを適当な条件下で標的配列または増幅産物と接触させる段階、及び(b)標的または増幅産物の存在または量を測定するために分子ビーコンの発光スペクトルを観察する段階を含む。
【0024】
他の実施態様において、配列番号6、7、8及び/または9を含む分子ビーコンプローブは増幅産物の存在または量を検出するためにも使用され得る。例えば、分子ビーコンプローブを増幅反応に添加することにより1つの反応で増幅産物の増幅及び検出を本質的に同時に実施することができる。別の実施態様では、増幅産物を単離した後配列番号6、7、8及び/または9を含む分子ビーコンプローブと接触させてもよい。
【0025】
本明細書中、「標識」は検出され得る性質ないし特徴を有する分子または部分を意味する。標識は、例えば放射性同位体、発蛍光団、化学発光団、酵素、コロイド粒子、蛍光微粒子等のように直接検出され得る。或いは、標識は例えば特異的結合メンバーのように間接的に検出され得る。直接検出可能な標識では、該標識を検出し得るように基質、トリガー試薬、光等のような追加成分が必要な場合がある。間接的に検出可能な標識を使用するときには、該標識は通常“コンジュゲート”と組合せて使用される。通常、コンジュゲートは直接的に検出可能な標識に結合またはカップリングさせた特異的結合メンバーである。コンジュゲートを合成するためのカップリング化学は当業界で公知であり、その例には特異的結合メンバーの特異的結合性または標識の検出可能性を損なわない任意の化学的手段及び/または物理的手段が含まれ得る。本明細書中、「特異的結合メンバー」は、1つの分子が他方の分子に例えば化学的または物理的手段により特異的に結合する2種の分子という結合対のメンバーを意味する。抗原/抗体特異的結合対に加えて、他の特異的結合対にはアビジンとビオチン;ハプテンとこのハプテンに対して特異的な抗体;相補的ヌクレオチド配列;酵素コファクターまたは基質と酵素;等が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明で使用される分子ビーコンプローブは、少なくとも1つの標識を形成するために少なくとも2つの部分を含む。分子ビーコンは第1化学部分を含み、前記第1化学部分は第2化学部分にコンジュゲートした核酸または核酸アナログにコンジュゲートされている。例えば、いずれも援用により本明細書に含まれるとするTyagiら,Nat.Biotechnol.,14:303−308(1996)、米国特許第5,119,801号明細書及び同第5,312,728号明細書を参照されたい。核酸または核酸アナログはそれ自体に結合してステム−ループ構造を形成し得、これにより第1化学部分は第2化学部分により近づく。密接しているときには、第1化学部分、第2化学部分またはこれらの化学部分の組合せは検出可能なシグナルを発生しないか、或いは標的または増幅産物に結合していないときの分子ビーコンの特徴である“非結合シグナル”を発する。第1化学部分及び第2化学部分がそれぞれ核酸配列の対向末端に位置していることが好ましいが、核酸内の内部位置に導入されていてもよい。
【0027】
逆に、分子ビーコンが標的または増幅産物と接触すると、分子ビーコンプローブは標的及び/または増幅産物に結合する。分子ビーコンが標的または増幅産物に結合すると、分子ビーコンは分子ビーコンの第1化学部分及び第2化学部分を分離するコンフォメーションとなる。この分離状態で、分子ビーコンは“結合シグナル”を発し、このシグナルは“非結合シグナル”と区別され得る。結合シグナルは第1化学部分、第2化学部分またはその両方部分より発生し得るか、または非結合シグナルの不在であり得る。
【0028】
第1化学部分及び第2化学部分は検出可能な適当な原子または分子部分であり得る。分子ビーコンプローブの第1化学部分及び第2化学部分の好ましい実施態様は適当な発蛍光団を含む。第1化学部分及び第2化学部分が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を介してまたは衝突消光を介して相互作用し得ることが好ましい。
【0029】
FRETは分子エルネギー移動の形態であり、これによりエネルギーはドナー分子とアクセプター分子間を通過する。FRETはある化合物の特性により生ずる。特定波長の光に暴露することにより励起されると、化合物は異なる波長で光(すなわち、蛍光)を発する。前記化合物は発蛍光団と称される。FRETにおいて、エネルギーはドナー分子(発蛍光団)とアクセプター分子間の長い距離にわたって非放射的に移動する。ドナーは光子を吸収してエネルギーをアクセプターに対して非放射的に移動する(Clegg,Methods Enzymology,211:353−388(1992)において検討)。
【0030】
いずれの発蛍光団分子(すなわち、ドナーまたはアクセプター)をモニターするかに依存して、蛍光はエネルギーの移動により消光または強化される。2つの発蛍光団の励起及び発光スペクトルの共鳴重複によりエネルギーが移動し得る。エネルギー移動は物理的因子、例えば2つの発蛍光団間の方位及び距離にも依存する。共鳴エネルギー移動は当業界で公知であり、当業者は蛍光消光または強化のための適合対、並びに有用な励起及び蛍光検出波長を選択することができる。前記した発蛍光団について記載している米国特許第5,691,146号明細書、同第5,876,930号明細書、同第5,723,591号明細書、同第5,348,853号明細書、同第5,119,801号明細書、同第5,312,728号明細書、同第5,962,233号明細書、同第5,942,283号明細書及び同第5,866,336号明細書は援用により本明細書に含まれるとする。
【0031】
発蛍光団がドナーまたはアクセプターであるかはその励起及び発光スペクトル及び対をなす発蛍光団の励起及び発光スペクトルにより定義される。例えば、FAMは488nmの波長の光により最も効率的に励起され、500〜650nmの光を発し、発光最大値は525nmである。FAMはJOE、TAMRA及びROX(すべて514nmで励起最大値を有する)と使用するのに適したドナー発蛍光団である。
【0032】
FRETで通常使用されている分子には、フルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン(FAM)、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、ローダミン、6−カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N,N−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)及び5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)が含まれる。
【0033】
本発明では非−FRETベースの分子ビーコンプローブが好ましい。その例には衝突消光対が含まれるが、これに限定されない。衝突消光対は援用により本明細書に含まれるとする米国特許第6,150,097号明細書に記載されている。
【0034】
他の適当な標識は当業界で公知であり、標識がFRETで使用されるかどうかに関係なく当業者により容易に選択され得る。
【0035】
「固体支持体」は不溶性であるかまたはその後の反応で不溶性となる物質を指す。よって、固体支持体はラテックス、プラスチック、被覆プラスチック、磁気または非磁気金属、ガラス、シリコーン等であり得る。固体支持体の配置も多く当業者に公知であり、ビーズ、削り屑、粒、粒子、プレートまたはチューブが意図されるが、これらに限定されない。
【0036】
1つの態様によれば、検出を容易とすべくプライマー及び/またはプローブに標識を含有させることによりハイブリッドを検出し得る。よって、ハイブリッドを例えばミクロ粒子に固定化し、ミクロ粒子上のハイブリッドの存在をコンジュゲートを用いて検出するために、プライマー及びプローブに結合させた第1及び第2特異的結合メンバーを使用し得る。
【0037】
別の実施態様によれば、特異的結合メンバー及び直接検出可能な標識の組合せをハイブリッドを検出するために使用され得る。例えば、特異的結合メンバーを該特異的結合メンバーで標識したプライマーを用いてハイブリッドに導入し得る。直接検出可能な標識を、直接検出可能な標識で標識したプローブを用いてハイブリッドに導入し得る。よって、ハイブリッドは特異的結合メンバーを用いてミクロ粒子に固定化し、プローブ上の標識に基づいて直接検出され得る。他の検出構成が当業者の設計事項であると理解されたい。
【0038】
好ましい実施態様によれば、援用により本明細書に含まれるとする1995年8月14日に出願された米国特許出願第08/514,704号明細書に記載されている“オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションPCR”(本明細書では別名“OH PCR”)増幅反応を標的配列を検出するために使用する。簡単に説明すると、好ましい方法で使用される試薬は少なくとも1つの増幅プライマー及び少なくとも1つの内部ハイブリダイゼーションプローブ、及び増幅反応を実施するための増幅試薬を含む。プライマー配列は標的配列(またはその補体)のコピーをプライム伸長するために使用され、捕捉標識または検出標識で標識される。プローブ配列はプライマー配列により作成した配列とハイブリダイズさせるために使用され、通常プライマー配列を含まない配列とハイブリダイズさせる。プライマー配列と同様に、プライマーを捕捉標識で標識したときにはプローブを検出標識で標識するかまたはその逆とするようにプローブ配列も捕捉標識または検出標識で標識する。検出標識は上で定義した“標識”と同じ定義を有し、“捕捉標識”は通常他の増幅反応物から伸長産物及びその産物に関連するプローブを分離するために使用される。(上に定義したように)特異的結合メンバーはこの目的に十分適している。この方法に従って使用されるプローブがハイブリダイゼーション条件下で伸長しないように前記プローブの3’末端はブロックされていることが好ましい。プローブの伸長の防止方法は公知であり、当業者の選択事項である。通常、プローブの3’末端にホスフェート基を付加すればプローブの伸長は十分阻止される。
【0039】
プローブが当初反応混合物の一部である上記した好ましい実施態様によれば、反応混合物を増幅条件下に置いたときに標的配列またはその補体の複数のコピーがプローブのTm以上の温度で生ずるようにプローブ配列がプライマー配列よりも低い融点を有するようなプライマー、プローブ及び増幅条件を選択することが好ましい。前記コピーを合成した後には、そのコピーを変性させ、混合物を冷却するとプローブと標的配列またはその補体のコピーの間でハイブリッドが形成され得る。温度を変性温度からプローブが一本鎖コピーに結合する温度まで下げる速度は非常に迅速(例えば、8〜15分間)であることが好ましく、ポリメラーゼ活性を有する酵素がプライマー伸長のために活性である温度範囲を通過することが特に好ましい。迅速な冷却は、プライマー/コピー配列ハイブリダイゼーション及び伸長よりもむしろコピー配列/プローブハイブリダイゼーションにとって好ましい。
【0040】
以下、本発明を更に説明するために実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0041】
下記実施例では、β−2アドレナリン受容体遺伝子中の一ヌクレオチド多型の本発明のDNAオリゴマープライマー及びプローブを用いる検出を立証する。前記DNAプライマー及びプローブは配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5として、更に配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9を含むFAM及びdabcyl含有分子ビーコンプローブとして同定される。β−2アドレナリン受容体遺伝子からの代表的配列の一部を本明細書中配列番号1として示す。
【0042】
下記実施例では、配列番号2及び配列番号3を野生型及び変異体β−2アドレナリン受容体遺伝子の一部に特異的な増幅プライマーとして使用する。配列番号4は、β−2アドレナリン受容体遺伝子増幅産物の野生型対立遺伝子を検出する内部ハイブリダイゼションプローブである。配列番号5は、β−2アドレナリン受容体増幅産物の変異体(ミュータント)対立遺伝子を検出する内部ハイブリダイゼションプローブである。また、配列番号6及び配列番号7は野生型対立遺伝子に特異的な分子ビーコンプローブとなり、配列番号8及び配列番号9はβ−2アドレナリン受容体遺伝子または遺伝子増幅産物の変異体に特異的な分子ビーコンプローブとなる。
【実施例1】
【0043】
β−2アドレナリン受容体遺伝子プライマー及びプローブの作成
A.β−2アドレナリン受容体プライマー
プライマーは、β−2アドレナリン受容体遺伝子の野生型及び変異体(ミュータント)対立遺伝子を両方含む標的配列をオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションPCRにより結合、増幅させるように設計した。これらのプライマーは配列番号2及び配列番号3であった。プライマー配列を一般的なオリゴヌクレオチド合成法を用いて合成した。更に、配列番号3を、援用により本明細書に含まれるとする米国特許第5,424,414号明細書に記載されている一般的なシアノエチルホスホラミダイトカップリング化学により5’末端でカルバゾールを用いてハプテン処理した。
【0044】
B.野生型及びミュータントβ−2アドレナリン受容体プローブ
プローブは、β−2アドレナリン受容体遺伝子中の野生型または変異体(ミュータント)対立遺伝子の増幅標的配列と、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションにより、ハイブリダイズするように設計した。野生型対立遺伝子に対するプローブは配列番号4であり、変異型(ミュータント)対立遺伝子に対するプローブは配列番号5であった。プローブ配列を一般的なオリゴヌクレオチド合成法を用いて合成した。配列番号4を、5’末端でアダマンタンを用いてハプテン処理した後10チミジンを付加し、3’末端をホスフェートでブロックした。配列番号5を、5’末端でダンシルを用いてハプテン処理した後10チミジンを付加し、3’末端をホスフェートでブロックした。全ての合成は、援用により本明細書に含まれるとする米国特許第5,464,746号明細書に記載されている一般的なシアノエチルホスホラミダイトカップリング化学を用いた。
【0045】
C.野生型及びミュータントβ−2アドレナリン受容体分子ビーコンプローブ
分子ビーコンプローブは、β−2アドレナリン受容体遺伝子中の野生型または変異体(ミュータント)対立遺伝子の増幅標的配列と、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションにより、ハイブリダイズするように設計した。野生型対立遺伝子に対するプローブは配列番号6及び配列番号7のヌクレオチド配列から構成され、変異体対立遺伝子に対するプローブは配列番号8及び配列番号9のヌクレオチド配列から構成した。プローブ配列を3’dabcylを結合させた調整ポアガラス(CPG)の使い捨てプレ充填カラムを用いて一般的なオリゴヌクレオチド合成法により合成し、5’末端をFAMで停止した。全ての合成は、援用により本明細書に含まれるとする米国特許第5,464,746号明細書に記載されている一般的なシアノエチルホスホラミダイトカップリング化学を用いた。
【実施例2】
【0046】
β−2アドレナリン受容体多型の検出
A.一般的手順
DNAを、全血からQIAamp(登録商標)Blood Miniキット(200μl以下のサンプルに対して)またはQIAamp(登録商標)Blood Maxiキット(200μl〜10mlのサンプル容量に対して)(両キットともカリフォルニア州バレンシアに所在のQiagenから市販)を製造業者の指示に従って用いて抽出した。全てのサンプルの遺伝子型を配列決定により確認した。これにより、サンプルは本試験で調べるβ−2アドレナリン受容体遺伝子対立遺伝子でホモ接合性野生型、ホモ接合性ミュータントまたはヘテロ接合性として同定され得た。幾つかの場合では、精製DNAを260nMでの光の吸光度により定量した。
【0047】
上記サンプルからのDNAを、実施例1で作成した配列番号2及び配列番号3プライマー及び配列番号4(野生型)及び配列番号5(ミュータント)プローブを用いてPCR増幅し、検出した。
【0048】
PCRは、50mM N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]グリシン(Bicine)(pH8.1)、150mM 酢酸カリウム、0.1mM エチレンジアミンテトラ酢酸、0.02% ナトリウムアジド、0.001% ウシ血清アルブミン及び8%(w/v) グリセロールを含有する1×PCR緩衝液中で実施した。組換えThermus thermophilus DNAポリメラーゼを5単位/反応の濃度で、それぞれ150μMの最終濃度で存在させたdNTP類(dATP、dGTP、dTTP及びdCTP)と共に使用した。配列番号2及び配列番号3プライマー及び配列番号4野生型プローブはそれぞれ110nMの濃度で使用し、配列番号5ミュータントプローブは50nMの濃度で使用した。最終濃度3.25mMの塩化マンガンも反応混合物中に存在させた。反応物の総容量は0.2mlで、サンプル容量は20μlとした。
【0049】
反応混合物をLCx(登録商標)サーマルサイクラーを用いて増幅した。まず、反応混合物を最初97℃において2分間インキュベートした後、94℃×40秒間、55℃×40秒間及び72℃×40秒間のPCR増幅サイクルを45回実施した。反応混合物を熱サイクルにかけた後、混合物を97℃において5分間維持し、温度を12℃に急速に下げることによりプローブオリゴハイブリダイゼーションを達成した。反応プローブを分析し、検出するまでサンプルを12℃において最低でも10分間保持した。
【0050】
反応産物をAbbott LCx(登録商標)(イリノイ州アボットパークに所在のAbbott Laboratories)を用いて検出した。反応産物を捕捉し、検出するために抗−カルバゾール被覆微粒子、抗−アダマンタン抗体/アルカリホスファーゼコンジュゲート及び抗−ダンシル抗体/β−ガラクトシダーゼコンジュゲート(イリノイ州アボットパークに所在のAbbott Laboratoriesから入手)の懸濁液をLCx(登録商標)と一緒に用いた。使用した酵素基質は4−メチル−ウンベリフェリルホスフェート(MUP)及び7−β−D−ガラクトピラノシルオキシクマリン−4−酢酸−(2−ヒドロキシエチル)アミド(AUG)であり、基質の反応産物への変換速度を測定し、カウント/秒/秒(c/s/s)として報告した。
【0051】
B.標的DNA滴定
配列決定により明らかとなった3遺伝子型(ホモ接合性野生型、ヘテロ接合性及びホモ接合性ミュータント)のそれぞれからのDNAをサンプル中の異なる量のDNA(25〜500ng/反応)を用いて上記した手順により単離し、定量し、試験した。
【0052】
この試験の結果を表1に示す。この結果から、野生型プローブはホモ接合性野生型及びヘテロ接合性β−2アドレナリン受容体遺伝子型の両方を検出したが、ホモ接合性ミュータントβ−2アドレナリン受容体遺伝子型をポジティブとして検出しなかったことが分かる。ミュータントプローブはホモ接合性ミュータント及びヘテロ接合性β−2アドレナリン受容体遺伝子型の両方を検出したが、ホモ接合性野生型β−2アドレナリン受容体遺伝子型をポジティブとして検出しなかったことが分かる。予想したように、いずれのプローブも1つの野生型及び1つの変異体(ミュータント)対立遺伝子を含んでいるので、ヘテロ接合性サンプルを検出した。更に、プローブが適当なホモ接合性サンプル中に存在する2対立遺伝子よりもかなり反応する1つの対立遺伝子しか有していないので、ヘテロ接合性サンプルのLCx反応速度はホモ接合性サンプルのLCx反応速度のほぼ半分であった。よって、全てのプローブが優れた特異性を示した。ポジティブサンプルはすべて少なくとも25ng/反応のDNAまで低濃度でも検出可能であった。
【0053】
【表1】

【0054】
C.未知サンプルの遺伝子型測定
上記Aに記載した手順を用いて、20サンプルのβ−2アドレナリン受容体遺伝子型を測定した。この結果を配列決定により調べた結果と比較した。
【0055】
表2から分かるように、サンプルは野生型プローブ(ホモ接合性野生型)のみ、ミュータントプローブ(ホモ接合性ミュータント)のみ、または両プローブ(ヘテロ接合性)と明らかに反応した。これらの結果は配列決定により立証された。すなわち、LXcフォーマットで上記プライマー及びプローブを用いて、この方法は実施が簡単でありながら、配列決定と同じくらい正確にβ−2アドレナリン受容体の遺伝子型が調べられる。
【0056】
【表2】

【実施例3】
【0057】
分子ビーコンプローブを用いるβ−2アドレナリン受容体多型の検出
全血から単離したDNA(125ng)から正プライマーとして配列番号2(300nM)及び逆プライマーとして配列番号3(300nM)を用いるPCR反応により標準及び未知単位複製配列を作成した。ポリメラーゼ連鎖反応は、50ulの総容量でPerkin−Elmerの0.2mlマイクロAMP(商標)チューブ中で実施した。1×PCR緩衝液は3mM MgCl、dNTP類(200uMの最終濃度)、0.025U/μl(5単位) AT Gold(商標)、60nM ROX及び200nM 配列番号6または配列番号9の核酸成分を有する分子ビーコンプローブを含んでいた(配列番号6及び9を含む分子ビーコンは配列番号7及び8を含む分子ビーコンよりも高性能であることが判明した)。まず、反応混合物を95℃において10分間インキュベートした後熱サイクルに45回かけた。熱サイクルは、94℃で30秒間の溶融、55℃で50秒間のアニーリング及びデーター測定及び72℃で30秒間の伸長とした。PCR産物をアガロースゲル電気泳動によりチェックした。PE Biosystmsの参照染料ROXを用い、7700 ABI配列検出システム(商標)を用いて蛍光を測定した。
【0058】
各サンプルにポリメラーゼ連鎖反応を3回かけた。各反応の第1回は分子ビーコンプローブの代わりに水を用いて実施した。第2回はFAM−配列番号6−dabcylからなる分子ビーコンプローブを用いて実施した。第3回はFAM−配列番号9−dabcylからなる分子ビーコンプローブを用いて実施した。標準サンプル及び未知サンプルの同一性をSangerジデオキシヌクレオチド配列決定法により確認した。野生型配列に対してホモ接合性の各サンプルは配列番号6からなる分子ビーコンプローブの存在下で強い蛍光を示し、配列番号6からなる分子ビーコンプローブの代わりに水または配列番号9からなる分子ビーコンプローブを使用したときには本質的に蛍光を示さなかった。逆に、変異体配列に対してホモ接合性の各サンプルは配列番号9からなる分子ビーコンプローブの存在下で強い蛍光を示し、配列番号9からなる分子ビーコンプローブの代わりに水または配列番号6からなる分子ビーコンプローブを使用したときには本質的に蛍光を示さなかった。同様に、ヘテロ接合性サンプルでは、各分子ビーコンプローブを含む反応において中程度の蛍光が観察された。
【0059】
いずれの場合も、約28または30サイクル後蛍光が検出され、約35サイクルまでベースライン蛍光から容易に区別され得た。
【0060】
特定実施態様を参照して本発明を詳細に説明してきたが、前記実施態様に対して各種変化及び修飾を本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく加え得ることは当業者に自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β2アドレナリン受容体遺伝子のコドン16における多型を有する標的配列を増幅および検出するための組成物であって、標的配列を検出するための分子ビーコンプローブを含み、前記分子ビーコンプローブは配列番号6及び配列番号8からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する核酸及び標識部分を含むことを特徴とする前記組成物。
【請求項2】
更に、配列番号2及び配列番号3からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する核酸を含むことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の組成物。
【請求項3】
(a)核酸増幅試薬、配列番号2のヌクレオチド配列を有する核酸、配列番号3のヌクレオチド配列及び標的配列を含んでいると疑われる試験サンプルを含む反応混合物を形成する段階、
(b)前記混合物を増幅条件にかけて増幅産物を生成する段階、
(c)前記増幅産物を配列番号6及び配列番号8からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する核酸及び標識部分を含む分子ビーコンプローブと接触させて、前記分子ビーコンプローブにより標的配列の存在を示すシグナルを発生させる段階、及び
(d)前記ビーコンプローブにより発生したシグナルを試験サンプル中の標的配列の存在の指標として検出する段階
を含むことを特徴とする試験サンプル中の標的配列の検出方法。
【請求項4】
(a)配列番号2及び配列番号3、(b)増幅試薬、及び(c)配列番号6及び配列番号8からなる群から選択される分子ビーコンプローブを含むことを特徴とするβ2アドレナリン受容体標的配列を増幅および検出するためのキット。

【公開番号】特開2009−261406(P2009−261406A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154614(P2009−154614)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【分割の表示】特願2003−534611(P2003−534611)の分割
【原出願日】平成14年10月3日(2002.10.3)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】