説明

いわゆるクアンタム・バッテリに電気エネルギーを蓄積する新しい方法

【課題】現時点で使用可能な「スーパー・コンデンサ」は異なる物理原理で動作している。これらのスーパー・コンデンサは低電圧でしか動作せず、機械的な衝撃に敏感であり、ある高い抵抗を示し、数桁低いエネルギー密度及び出力密度を有する。
【解決手段】電気絶縁マトリックス材料又は中間層に埋め込まれ、複合箔又は固定された平らなベースに塗布されたナノメートル・サイズの粒子又は層の形態で化学的に高双極子性の結晶からなる材料から、クアンタム・バッテリ(スーパー・コンデンサ)を製造することができる方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特殊な電気特性を有する材料からなり、「スーパー・コンデンサ(super capacitor)」又は「クアンタム・バッテリ(Quantum Battery)」であるバッテリを形成し、固定及び移動用、並びにエネルギーの急速充填及び放出が必要な用途で使用されるデバイスへの電気エネルギーの高密度蓄積に関する。
【0002】
1.2.技術分野
この蓄電デバイスは固定電源から独立しており、したがって、主として化石燃料の代替エネルギーとなることを目指した移動交通(道路、列車、船及び航空機)用の電気駆動装置に電力を供給する目的に利用される。抵抗損のないこの高密度蓄電技術はさらに、一般家庭に対するエネルギー供給への用途、及び太陽エネルギー利用技術によって得たエネルギーの運搬を可能にする。この特殊な材料はさらに、新しいタイプの電子構成部品の製造を可能にする。電気的に蓄積されたこのエネルギーの極めて速い、損失のない放電は、このデバイスを爆発物として使用することすら可能にする。
【背景技術】
【0003】
1.3.当該技術の現状
従来のバッテリ及びコンデンサに電気エネルギーを蓄積するときの高い比重量は、移動交通に利用するときの主要な欠点の1つである。一方、はるかに有利な化石燃料における化学エネルギーの直接的な蓄積及びその利用のし易さは、取り戻すことができない天然資源の容認できない浪費へとつながった。さらに、例えば鉛蓄電池における電気エネルギーの技術的蓄積及び放電は高い抵抗と結び付いており、この高い抵抗は、充電及び放電速度を強力に制限する高い熱損失をもたらす。現時点で使用可能な「スーパー・コンデンサ」は異なる物理原理で動作している。これらのスーパー・コンデンサは低電圧でしか動作せず、機械的な衝撃に敏感であり、ある高い抵抗を示し、数桁低いエネルギー密度及び出力密度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
1.4.詳細な説明
1.4.1.利点
この新しいデバイスでは、化学エネルギーとして化石燃料に蓄積できるエネルギーと同じ程度の密度で電気エネルギーを直接に蓄積することができる。1MJ/kgから15MJ/kg超の範囲の密度を達成することができる。この新しい蓄電デバイスの特殊な材料はほぼ無限回の充電及び放電サイクルが可能であり、この材料は摩耗しない。動作中、この蓄電デバイスは抵抗による損失を示さない。このデバイスは機械的衝撃、過度の加速及び極端な温度に耐える。さらに、空間内にどのように配置しても動作には影響しない。
【0005】
1.4.2.発明の基礎
本発明は、絶縁マトリックス、例えばSiO又はポリマー樹脂の中に埋め込まれた、強い電界の応力下にあり、かつ臨界電圧条件(充電条件)にあるTiO(強い電気陰性)などの強い双極子結晶材料からなる非常に小さな粒子が、仮想光子共振(新しい量子物理効果)によって導電性(半導体)となり、したがってエネルギーを受け取る物理効果に基づく。このエネルギーは通常の平板コンデンサと同様の方法で蓄えられる。この蓄電デバイスは数ボルトから数千ボルトの電圧に対するものを構築することができる。その蓄電容量は、最大限可能な物理的、機械的に大きさによってのみ制限される。
【0006】
1.4.3.技術設計
粉砕してnmサイズの粒子とした、又はnm厚さの層としたTiO、SrTiOなどの蓄電結晶を、絶縁媒質とともに担体表面に塗布する。結晶のタイプに関しては特定の必要条件があり、大部分が「ルチル」型であることが必須条件である。
【0007】
2つの異なる方法が可能である。
【0008】
a)まず最初に粉砕した結晶粒子とポリマー樹脂の混合物を分散させ、次いでこれを、金属とポリマー箔とからなる複合フィルム上に静電噴霧する。複合フィルムは平らなテーブルの上に連続的に置くか、又はチューブ型のマンドレルに巻きつける。この複合フィルムの離隔した金属箔は対電極である。この絶縁樹脂と複合フィルムのため、湿った樹脂とともに表面に到着した電荷は接地へ流れることができない。これらの電荷は金属箔とともに非常に強い電界を構築しており、この電界は、容量効果によって非常に強い表面力を発揮する。これらの表面力は幾何学的に正確な形状を生じさせ、マンドレルの場合には極めて正確な厚さの正確な円形の層を生じさせる。この強い表面力によってさらに、湿った樹脂に高い水圧が加わり、その結果、層は空気の細孔を持たなくなる。さらに、この強い静電界は双極子を適正に整列させる。次いで熱又は放射によって樹脂を硬化させる。その後、積層されたこのフィルムを切断し、成形して多層コンデンサとする。切断されたフィルムは平らに配置するか、又は巻くことができる。最後に、デバイスの金属部品を交互に電気的に接続して、蓄電デバイスの正極及び負極を形成する。
【0009】
b)下部電極を形成する白金などの導電材料によって覆われた担体表面に、化学蒸着(CVD)又は物理蒸着(PVD)によって、蓄電結晶、例えばTiOの複数の薄層を、絶縁層、例えばSiOと交互に付着させる。約700℃の適当なアニールによって多結晶層を得る。各共振層を付着した後、それぞれの層は、重なり合った絶縁層によってサンドイッチ型に完全に覆われており、この絶縁層はさらに固定も提供する。したがってルチル相とするために続く800℃超のアニール・プロセスの後は、冷却しても大幅に異なる熱膨張係数を有するものですら、共振層は層間はく離を生じない。最後に金属カバー層を配置してデバイスの上部電極を形成する。層をいくつか組み合わせたものを付着させることも可能である。
【0010】
最後に、この蓄電デバイスを離隔材料で覆い、電極を外部クランプに接続し、又はストリップ線路によって制御論理に接続する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振励起しそれによって導電性となった、電気絶縁媒質によって分離された非常に小さな結晶性の化学双極子粒子又は層に電気エネルギーを蓄積することができる1)物理効果に基づく、いわゆるスーパー・コンデンサ又はクアンタム・バッテリを製造するための方法であって流体樹脂、例えばポリマーと予め粉砕したナノメートル結晶との混合物である蓄電材料を、3)対電極の働きをする離隔した金属箔を封入した2)予め形成しておいた複合フィルム上に静電噴霧によって塗布し、それによって強い電界を生み出し、容量効果とともに強い表面力を生じさせ、この強い表面力が、幾何学的に正確かつコンパクトな層の形成、及び双極子結晶の電界整列を可能にし、被覆したこのフィルムを切断し、最終的に4)平板コンデンサ又は5)巻コンデンサとすると、これらの幾何学的に非常に正確で均一なコンパクトな層がクアンタム・バッテリの充電条件を満たし、このようなクアンタム・バッテリを用いて15MJ/kgを超える程度の大きさの6)電気エネルギーを蓄積することができる方法。
【請求項2】
特殊な電気特性を有する材料を化学又は物理7)蒸着によって平らな表面に付着させ、それによって蓄電層と絶縁層を交互に付着させ、これによって、これらの層がサンドイッチのように重なり合って固定され、ルチル相とするために800℃超でアニールし冷却した後も、蓄電層が、異なる熱膨張係数による層間はく離を生じることがなく、最終的に、クアンタム・バッテリの充電条件を満たすことを示す極めて薄く正確な層を有する8)層コンデンサを形成し、このクアンタム・バッテリを用いて、数ボルトから数千ボルトの範囲の電圧の9)電気エネルギーを15MJ/kgを超える密度で極めて速く蓄積することができるようにする、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2010−93306(P2010−93306A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15505(P2010−15505)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【分割の表示】特願2004−516408(P2004−516408)の分割
【原出願日】平成15年6月26日(2003.6.26)
【出願人】(505004684)
【Fターム(参考)】