説明

かご形ロータ

本発明は、短絡かご、および周囲にわたって分配された永久磁石を有するロータであって、ロータは、コア積層体を有しており、該コア積層体は、全ロータ領域にわたって延在しており、長手方向に連続するロータスロットを有しており、短絡かごは、コア積層体の全長にわたってロータスロット内に延びており、短絡かごは、ロータスロット内に好ましくは入れられて位置するかごバー、およびコア積層体の両端面においてかごバーに接続された端絡リングを有するように設計されており、ロータ領域の半径は、永久磁石の少なくとも半径方向厚み分だけ削減されている、ロータに関する。ロータ(11)の半径は、かごバー(15,29)または該かごバーに接続された、かごウエブ(27)の半径方向高さが減少するように、端絡リング(17)間の全長にわたって削減されている。永久磁石(19)が、ロータ(11)に取り付けられる。本発明は、このようなロータを有す1る電動モータ、およびこのような電動モータを有するラジアルポンプにさらに関する。本発明は、このようなロータを有する電動モータを運転するための方法、およびこのようなロータおよび/または電動モータを製造するための方法にさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご(籠)形の、および周囲にわたって分配された永久磁石を有するロータであって、ロータは、積層コアを有しており、該積層コアは、全ロータ領域にわたって延在しており、長手方向に連続するロータ長孔を有しており、かご(籠)は、積層コアの全長にわたってロータ長孔を貫通しており、かご(籠)は、ロータ長孔内に好ましくは封入されて配置されたかご(籠)バー、および積層コアの両端面においてかご(籠)バーに接続された端絡リングによって形成されており、ロータ領域の半径は、永久磁石の少なくとも半径方向厚み分だけ削減されている、ロータに関する。また、本発明は、この種のロータを有する電動モータおよびこの種の電動モータを備える遠心ポンプに関する。また、本発明は、この種のロータを備える電動モータを操作するための方法、およびこの種のロータおよび/またはこの種の電動モータを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、組合せ同期/非同期機械の形態にある電気機械を開示している。この電気機械は、ステータおよびステータに回転可能に配置されたロータを有している。ロータは、軸方向から見ると分かるように、3つのロータ領域に分割されている。前記ロータ領域の少なくとも1つは、同期ロータにおけるように永久磁石を備えており、少なくとも1つは、非同期ロータにおけるようにロータ長孔内に配置されたかご形巻線を備えている。ロータは、積層コアを有しており、該積層コアは、3つのロータ領域の全てにわたって延在しており、長手方向に連続するロータ長孔を有している。ロータ長孔を有する積層コアの半径は、同期ロータ領域において、永久磁石セグメントの少なくとも半径方向厚み分だけ削減されている。図示されている段ロータは、特殊設計のロータであり、それに応じて、製造が複雑であり、付随的にコストが高くなる。加えて、このロータ設計では、それぞれの運転モード、すなわち、同期運転または非同期運転のいずれに対しても、対応するロータ領域のみが用いられるようになっている。従って、この種の設計は、現在適用されているエネルギー効率の要件の観点から、適切なものとはいえない。
【0003】
特許文献2のロータは、ロータコアの外周の全体に配置された永久磁石を有している。磁石リングが、積層コア上に取り付けられているか、または磁石セグメントがポケット内に配置されている。磁石リングは、高価であり、かつ製造が複雑である。また、ポケット内に圧入される永久磁石は、正確な締め代を有するように作製されねばならない。また、このロータは、製造に多数の複雑な作業工程を必要とする特殊設計を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第3609750A1号明細書
【特許文献2】米国特許第4,454,438号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低経費で簡単に製造することができ、同時に効率的な操作を確実なものとするロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、端絡リング間の全長にわたって、ロータの半径が、かごバーまたは前記かごバーに接続された、かごウエブ(webs)の半径方向高さが減少するように削減され、永久磁石がロータに取り付けられることによって、達成されることになる。本発明は、本文において、以下、旋削または切込旋削、または一般的に材料除去機械加工と呼ばれる、簡単な旋削加工によって、市販の、かご形ロータを一部修正し、その結果、磁石を半径削減プロセスによって得られた隙間内に装着することを可能にするものである。永久磁石は、端絡リング間の全長にわたって半径を削減することによって得られたロータ面上に取り付けられる。かご形ロータは、常に、ダイカストの後かなり旋削されねばならないので、追加的な作業プロセスは、必要ではなく、むしろ、いくらか多い材料が除去されるにすぎない。本発明によれば、旋削された(誘導)始動かごも十分な効果をもたらすことが分かっている。市販の、かご形ロータを旋削することによって得られたロータは、永久磁石が装着されていることによって、非同期始動および同期運転の両方の機能を有することになる。従って、本発明は、2つの異なる形式のモータを経済的に製造することができる。何故なら、標準的な非同期モータを、市販の、かご形ロータ設計を有するものとするか、または旋削された、かご形ロータによって一部修正した永久磁石ロータを有するものとするかは、製造プロセス中に決定されればよいからである。従って、この構造的設計によって、1つの製造ラインが、2つのモータ形態、すなわち、非同期かご形ロータおよび永久磁石直入れモータの両方に対処することが可能になる。
【0007】
本発明の一改良例によれば、永久磁石は、結合材または好ましくは薄い非磁性スリーブによって固定されるようになっている。ここでは、端絡リングが部分的に旋削され、これによって、支持面が、例えば、積層コアの両側に形成されるようになっていると有利である。支持面は、結合材または非磁性ロータスリーブの支持体を固定するのに役立つことになる。部分的に旋削された端絡リングは、結合材または薄い非磁性ロータスリーブの支持体の始端および終端を固定するように機能する。非磁性ロータスリーブが用いられるとき、片側の端絡リングの積層コアに面する内側領域のみを旋削し、これによって、突起を生じさせ、この突起がロータスリーブのストッパとして機能するようになっていると、同様に好適であることが分かっている。ロータ結合材の場合、両側の端絡リングの内側小領域のみを旋削することも可能である。その結果、端絡リングがロータの設計に組み入れられることになる。追加的な固定手段、例えば、端板を設ける必要がない。
【0008】
磁極を形成する磁石面は、有利には、成分磁石、好ましくは、希土類成分磁石、特にNdFeB磁石によって形成されている。希土類磁石を用いることによって、磁石高さを比較的低くすることができる。これは、旋削された始動かごの効果にとって有利である。磁石高さが、かごバー高さの5%から20%の間、好ましくは、略10%であると好適であることが分かっている。検討された出力範囲内において、略2mmの磁石高さが好適であることが分かっている。また、希土類磁石は、対向磁場に対して高安定性を有しており、これによって、前記希土類磁石は、始動電流をもたらす高磁場によって脱磁されないことになる。成分磁石は、軸方向において互いに位置ずれするかまたはジグザグになるように配置可能である。互いに隣接する成分磁石のこのようなジグザグ配置によって、ロータの運転中に、互いに位置ずれした長孔に接触することによって、トルク脈動が低減されることになる。
【0009】
さらに他の改良例によれば、永久磁石のロータ占有率、すなわち、磁極占有率は、65%から90%の間、好ましくは、70%から80%の間である。磁石をロータの周方向において完全に装着させず、むしろ65%から90%、好ましくは、70%から80%の磁極占有率を選択すると好適であることが分かっている。
【0010】
本発明のさらに他の改良例は、最適化されたロータスロットの形状に関する。ここで、かご形ロータの旋削された状態および旋削されていない状態の両方において良好なモータ運転特性をもたらすように、ロータスロット形状を設計すると好適であることが分かっている。旋削されたロータの、かごバーがそれらの元の形状を維持するようになっていると好適であることが分かっている。特に、旋削されたロータの、かごバーは、液滴の形状に形成されている。
【0011】
かご形を有する従来ロータであって、ロータは、積層コアを有しており、該積層コアは、全ロータ領域にわたって延在しており、長手方向に連続するロータスロットを有しており、かご形が積層コアの全長にわたってロータスロットを貫通しており、かご形は、ロータスロット内に好ましくは封入されて配置されたかごバー、および積層コアの両端面においてかごバーに接続された端絡リングによって形成されている、従来ロータにおいて、本発明によれば、該ロータは、半径方向外側領域に、好ましくは同期ロータの場合に取り付けられることになる磁石の少なくとも半径方向厚みと一致する、特にスロット状のかごウエブ(webs)を有しており、前記かごウエブは、ロータの半径方向内側領域に配置された特に液滴状のかごバーに接続されるようになっている。その結果、かごバーに接続されたかごウエブの半径方向高さが減少し、かごバーがそれらの形状を維持するように、端絡リング間の全長にわたって、非同期運転されるロータの半径を、製造される同期ロータに取り付けられる永久磁石の少なくとも半径方向厚み分だけ、削減することができる。旋削されていないロータは、この目的を果たすためのロータスロットを有している。すなわち、前記ロータスロットは、半径方向外側領域に、好ましくは、永久磁石の少なくとも半径方向厚みと一致する特にスロット状の、かごウエブを形成していると共に、半径方向内側領域に、特に液滴状のかごバーを形成している。この場合、かごバーの下側の特に液滴状の設計は、ウエブ外形、特にスロットに対応するようになっている。実験によって、上側領域における特に液滴状のバー外形が、通常よりもいくらか広く、しかし、通常よりも短くなるように設計されていると好適であることが分かっている。
【0012】
本発明は、ロータを含んでいるのみならず、本発明によるロータを備える電動モータも含んでいる。
【0013】
本発明による少なくとも1つの電動モータおよび/またはロータによって特徴付けられている、電動モータを有する遠心ポンプ、および少なくとも1つの遠心ポンプおよび少なくとも1つの電動モータを備える遠心ポンプ装置も、同様に、本発明の範囲内に含まれている。一例を挙げると、本発明による電動モータを備えるキャンドモータポンプおよび水中モータポンプは、本発明によって、高エネルギー効率で運転可能である。
【0014】
本発明によるロータの自己始動特性によって、前記ロータを備える電動モータおよび/またはこの種の電動モータを有する遠心ポンプは、単相または多相の一定電圧供給システムによって給電することができ、すなわち、一定周波数の電圧供給システムによって直入れ運転することができる。
【0015】
さらに他の方法によれば、電動モータは、好ましくは、ロータの位置を検出することなく、周波数コンバータによって給電されるようになっている。電動モータの回転速度は、周波数コンバータによって可変制御可能である。この場合、本発明によれば、電動モータは、従来設計、すなわち、非専用設計の周波数コンバータによって給電可能である。駆動する上で、ロータ位置の検出を排除することができ、これによって、周波数コンバータの設計を著しく簡素化することができる。U/f特性曲線制御による従来のコンバータを用いることができる。非同期運転の場合、永久磁石ロータに亀裂が生じた場合、ロータのかごに電圧が生じ、これによって電流が生じる。ステータの磁束ラインと連携して、力効果がロータに加えられ、これによって、ロータは、再びU/fコンバータによって変更可能な同期回転速度を維持することになる。
【0016】
本発明によるロータまたは電動モータを製造するための本発明による方法によれば、従来方法によって製造されたかご形ロータに対して、積層コアの全長にわたって、直径または半径が、材料除去方法、特に、切込旋削方法によって、従来の空隙を超えて追加的に削減され、該プロセス中に、前記かご形ロータの半径が、前記かご形ロータのかごバーまたは前記かごバーに接続されたかごウエブの半径方向高さが減少するように、端絡リング間の全長にわたって削減され、次いで、永久磁石がロータ面に取り付けられるようになっている。市販のかご形ロータが、単純な旋削加工によって一部修正され、これによって、磁石を取り付けることが可能になる。従来方法によって作製されたかご形ロータは、ステータ内に組み込まれた状態における空隙を得るために、ダイカストの後、過剰に旋削される必要がない。従って、どのような追加的な作業プロセスも本発明には必要とされず、むしろ、いくらか多い材料が除去されるにすぎない。
【0017】
半径を削減することによって生じた隙間、特に、溝内に永久磁石を接着すると好適であることが分かっている。ロータへの磁石の固定に加えて、磁石の接着は、生じた接着膜によって、かごバーを有する積層ロータコアから磁石を電気的に絶縁するのにも役立つことになる。少量の場合、予め磁化されたシェル磁石が、手動によって装着されてもよい。
【0018】
大量の場合には、好ましくはかご形ロータ上に自動的に取り付けられる永久磁石を磁化ヨークによって磁化する方法が適している。
【0019】
永久磁石を固定するために、結合材、または好ましくは薄い非磁性スリーブが、永久磁石に取り付けられてもよい。この場合、端絡リングを同様に旋削し、結合材または非磁性スリーブを端絡リングによって固定または支持するようになっていると有利である。すなわち、旋削された端絡リングは、結合材またはスリーブの始端および/または終端を固定するための支持面または突出面を形成することになる。
【0020】
以下、図面に示されている本発明の例示的な実施形態について、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】先行技術によるかご形ロータ作動部分の略断面図である。
【図2】追加的な磁石が装着された本発明によるロータの略断面図である。
【図3】支持面を形成している端絡リングを有する本発明による他のロータの略断面図である。
【図4】切込旋削されたかごバーを有するロータの他の断面図である。
【図5a】切込旋削前の最適化されたロータスロット形状を有するロータの断面図、および前記ロータから作製された切込旋削後のロータの断面図である。
【図5b】切込旋削前の最適化されたロータスロット形状を有するロータの断面図、および前記ロータから作製された切込旋削後のロータの断面図である。
【図6】軸方向において互いに位置ずれするように配置された磁石を有するロータの平面図である。
【図7】本発明によるロータを備える電動モータを有する遠心ポンプ装置の駆動概念の基本図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、先行技術によるかご形ロータの籠型ロータ作動部分1の略断面図を示している。ロータシャフトは、明瞭にするために、図示されていない。端絡リング7によってロータ作動部分1の両端に接続された、かごバー5が、積層ロータコア3内に配置されている。ここでは、かごバー5は、積層コア3の全長にわたってロータスロットを貫通している。この場合、ロータスロット内に封入されたかごバー5、および積層コア3の両端面においてかごバー5に接続された端絡リング7が、かごを形成している。この種のかご形ロータは、通常、アルミニウムまたは銅の加圧ダイカストによって作製されている。電動モータのステータとロータ1との間の必要な幾何学的空隙は、通常、ロータを旋削することによって得られるようになっている。
【0023】
図2は、先行技術によるかご形ロータ作動部分1から作製された本発明によるロータ11をここでも略断面図で示している。ロータ11は、積層ロータコア13、かごバー15、および端絡リング17を有している。本発明によるロータ11の積層ロータコア13の半径は、かごバー15の半径方向高さが減少するように、材料除去機械加工によって、端絡リング17間の全長にわたって削減されている。永久磁石シェル19が、積層ロータコア−13に取り付けられている。この例示的実施形態では、前記永久磁石は、ロータ結合材21によって固定されている。ロータ11は、先行技術による、かごロータ1に対して、電動モータのステータとロータコアにおけるロータとの間の必要な幾何学的空隙を得るために行われる材料除去機械加工、特に、旋削加工または切込旋削加工に加えて、さらなる加工、すなわち、追加的な材料除去機械加工、特に、旋削加工または切込旋削加工を行うことによって、作製されている。次いで、シェル磁石19が、材料除去機械加工によって生じた隙間、特に、溝内に接着されることになる。シェル磁石19は、予め磁化されていてもよいが、着磁ヨークによって、後で磁化されてもよい。シェル磁石19が装着された後、磁石19を固定するために、結合材21がロータに設けられる。代替例として、磁石は、好ましくは薄い非磁性スリーブによって固定されてもよい。このスリーブは、例えば、磁石シェルに押しこまれてもよい。
【0024】
図3は、かごロータ11の代替的な改良例を示している。この図では、支持面23が積層コア13の両側に形成されるように、端絡リング17が部分的に旋削されている。支持面23は、結合材21を固定するのに役立ち、または非磁性ロータスリーブを支持するのに役立つことになる。非磁性ロータスリーブが用いられるとき、片側の端絡リングの積層コアに面する内側領域のみを旋削することによって、突起を生じさせ、この突起がロータスリーブのストッパとして機能するようになっていると、同様に好適であることが分かっている。ロータ結合材の場合、両側の端絡リングの内側小領域のみを旋削することも可能である。その結果、端絡リング17がロータの設計に組み入れられ、追加的な固定手段、例えば、端板を設ける必要がない。
【0025】
図4は、切込旋削された籠バー15を有するロータ11の他の断面図を示している。この図では、積層ロータコア13内の切込旋削または旋削された籠バー15が明瞭に示されている。磁石シェル19が、ロータ面16に接着されている。接着手段は、絶縁手段として機能している。ここでは、接着フィルムが、旋削されたロータ11のロータ面16から磁石19を電気的に絶縁するように隔離している。磁石シェル19を固定するために、結合材または非磁性のステンレス鋼スリーブ21が設けられている。本発明によれば、ロータ11の半径は、前記ロータの端絡リング17間の全長にわたって、削減されており、これによって、籠バー15の半径方向高さも、同様に、端絡リング17間の全長にわたって、減少している。その結果、永久磁石19を積層コア13上に取り付けることができる。本発明によれば、旋削された誘導始動籠も十分な効果をもたらすことが見出されている。市販の籠型ロータを旋削することによって作製されたロータは、永久磁石が装着されていることによって、非同期始動および同期回転の両方の機能を有している。従って、本発明は、2つの異なる形式のモータを経済的に作製することができる。何故なら、標準的な非同期モータを、市販の籠型ロータ設計を有するものとするか、または旋削された籠型ロータによって一部修正された同期設計の永久磁石ロータを有するものとするかは、製造プロセス中に決定されればよいからである。
【0026】
ロータ11は、周方向の全体に磁石19を備えておらず、むしろ、70%から80%の磁極占有率を有している。この場合、複数の磁石シェル19が、磁極を形成している。磁極を形成する磁石面は、有利には、希土類材料から構成された成分磁石、特にNdFeB磁石から形成されている。希土類磁石が用いられるとき、十分な効果を達成するのに、比較的低い磁石高さしか必要ではない。さらに、この種の磁石は、対向磁場に対して高安定性を有しており、これによって、前記磁石は、始動電流を生じるための高磁場によって脱磁されないことになる。
【0027】
図5aは、最適化されたロータスロット形状を有する旋削されていないロータ10の断面図を示している。この例示的実施形態において用いられたロータスロット形状は、拡大されたウエブ領域(web region)27および深いかごバー29によって、特徴付けられている。従って、ロータ10は、際立ったまたは拡大されたかごウエブ27を有していることになる。この種のロータスロット形状は、ロータ11の旋削されていない状態および旋削された状態の両方において、良好なモータ作動特性を確実なものとする。旋削されていないロータ10は、具体的には、半径方向外側領域28においては、好ましくは永久磁石の半径方向厚みと一致する溝状ウエブの形態にあり、半径方向内側領域30においては、液滴状バーの形態にある、ロータスロットを有している。この形態にあるロータ10は、非同期機械のかごロータに好適である。
【0028】
図5bは、図5aによるロータ10から作製された同期設計のロータ11を示している。積層ロータコア13内に比較的深く配置された液滴状バー29は、旋削後でもそれらの形状を完全に維持している。これによって、良好なモータ運転特性が得られることになる。非同期ロータ10の半径と同期ロータ11の半径との間の旋削深さは、磁石19の高さ、慣習的に設けられる結合材21の厚み、および2つのモータ間の空隙幅の差のみに関して、異なっている。図5aに示されている最適なロータスロット形状における、かごバーは、図5bによる旋削されたロータにおいても、その液滴形状を維持しており、これによって、良好なモータ運転特性が得られることが分かるだろう。本発明は、ビルディングブロックコンセプト(building block concept)に基づくものであり、このコンセプトによって、非同期技術による従来のモータまたは同期技術によるモータのいずれを作製するかは、ロータが作製されるときに、決定されればよいことになる。
【0029】
図6は、シャフト25上に配置されたロータ11の平面図である。前記図は、積層コアの両端面における端絡リング17、旋削されたロータ11に取り付けられた磁石19、および前記ロータのロータ面16を示している。磁石19は、ロータ面16の周方向において、均一にまたは対称的に分配されている。磁極は、複数の成分磁石から形成されている。成分磁石は、軸方向において互いに位置ずれするように、またはジグザグになるように配置されている。互いに隣接する成分磁石のこのジグザグ配置によって、ロータ11の運転中、互いに位置ずれしたスロットに接触することによって、トルク脈動が低減されることになる。
【0030】
図7は、本発明によるロータ11を備える電動モータ33を有する遠心ポンプ装置2を示すと共に、遠心ポンプ装置2の駆動概念の基本図を示している。遠心ポンプ31は、シャフト25を介して、本発明によるロータを備える電動モータ33によって駆動されるようになっている。本発明によるロータの自己始動特性によって、前記ロータを備える電動モータ33および/または遠心ポンプ31は、単相または多相の一定電圧供給システム35によって、給電可能であり、換言すれば、一定周波数の電圧供給システム35によって直入れ運転可能である。この例示的実施形態では、電動モータ33の回転速度nは、周波数コンバータ37によって可変制御されるようになっている。この場合、電動モータ33は、通常設計、すなわち、非専用設計の周波数コンバータ37によって給電されるようになっている。本発明によるロータを備える電動モータを駆動するために、ロータ位置の検出を特に排除することができ、その結果、U/f特性曲線制御を有する従来のコンバータ37を用いることができる。この駆動概念は、可変回転速度の遠心ポンプに適しており、ロータの位置を検出する必要のないコンバータによる運転を可能にする。一定三相電力供給システムにおける緊急運転も可能である。従って、非同期技術によるポンプ駆動に通常用いられている単純なU/fコンバータを用いることができる。ロータの位置を検出するための送信機システムが必要ではなく、これによって、モータとコンバータとの間の信号ラインおよび追加的に必要とされるコンバータ内の評価電子機器も排除することができる。安定した同期運転時には、永久磁石の励磁によって、高エネルギー効率が達成されることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご形および周囲にわたって分配された永久磁石を有するロータであって、前記ロータは、積層コアを有しており、該積層コアは、全ロータ領域にわたって延在しており、長手方向に連続するロータ長孔を有しており、前記かご形は、前記積層コアの全長にわたって前記ロータスロットを貫通しており、前記かご形は、前記ロータスロット内に好ましくは封入されて配置されたかごバー、および前記積層コアの両端面において前記かごバーに接続された端絡リングによって形成されており、前記ロータ領域の半径は、前記永久磁石の少なくとも半径方向厚み分だけ削減されている、ロータにおいて、
前記端絡リング(17)間の全長にわたって、前記ロータ(11)の半径は、前記かごバー(15,29)または前記かごバーに接続されたかごウエブ(27)の半径方向高さが減少するように、削減されており、永久磁石(19)が前記ロータ(11)に取り付けられている、ことを特徴とするロータ。
【請求項2】
前記永久磁石(19)は、結合材(21)または非磁性スリーブによって固定されている、ことを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記端絡リング(17)は、部分的に旋削されている、ことを特徴とする請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
磁極を形成する磁石面は、成分磁石、好ましくは、希土類成分磁石から形成されている、ことを特徴とする請求項1または2,または3に記載のロータ。
【請求項5】
前記成分磁石は、軸方向において互いに位置ずれするようにまたはジグザグになるように、配置されている、ことを特徴とする請求項4に記載のロータ。
【請求項6】
永久磁石(19)による前記磁極の占有率は、70%から80%の間にある、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のロータ。
【請求項7】
前記旋削されたロータ(11)の前記かごバー(29)は、それらの元の形状と一致するように、好ましくは、液滴の形状に形成されている、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のロータ.
【請求項8】
かご形を有するロータであって、前記ロータは、積層コアを有しており、該積層コアは、全ロータ領域にわたって延在しており、長手方向に連続するロータ長孔を有しており、前記リス籠は、前記積層コアの全長にわたって前記ロータスロットを貫通しており、前記かご形は、前記ロータスロット内に好ましくは封入されて配置された、かごバー、および前記積層コアの両端面において前記かごバーに接続された端絡リングから形成されている、ロータにおいて、前記ロータは、半径方向外側領域に特にスロット状のかごウエブ(27)を有しており、前記かごウエブは、前記ロータ(10)の半径方向内側領域に配置された特に液滴状のかごバー(29)に接続されており、前記かごバー(29)に接続された前記かごウエブ(27)の半径方向高さが減少し、前記かごバー(29)がそれらの形状を維持するように、前記ロータ(10)の半径が、取付けられることになる永久磁石の少なくとも半径方向厚み分だけ、前記端絡リング(17)間の全長にわたって削減されることが可能になっている、ことを特徴とするロータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載のロータ(10,11)または請求項13〜17のいずれか1つに記載の方法によって作製されるロータ(11)によって特徴付けられる電動モータ。
【請求項10】
請求項9に記載の電動モータ(33)によって特徴付けられる遠心ポンプ装置。
【請求項11】
請求項9に記載の電動モータおよび/または請求項10に記載の遠心ポンプ装置を運転するための方法において、前記電動モータ(33)は、一定周波数の電圧供給システム(35)によって給電されるようになっている、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9に記載の電動モータおよび/または請求項10に記載の遠心ポンプ装置を運転するための方法において、前記電動モータ(33)は、前記ロータの位置を検出することなく、周波数コンバータ(37)によって給電されるようになっている、ことを特徴とする方法。
【請求項13】
特に請求項1〜8のいずれか1つに記載のロータまたは請求項9に記載の電動モータを製造するための方法において、従来方法によって製造されたかご形ロータ(1,10)に対して、積層コアの全長にわたって、半径が材料除去方法、特に、切込旋削プロセスによって削減され、前記プロセス中に、前記かご形ロータの前記かごバー(15,29)または前記かごバーに接続されたかごウエブ(27)の半径方向高さが減少するように、前記かごロータの前記半径が前記端絡リング(1,7,17)間の全長にわたって削減され、次いで、永久磁石(19)が前記ロータ面(16)上に取り付けられる、ようになっていることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記永久磁石(19)は、前記半径を削減することによって生じた隙間、特に、スロット内に接着されるようになっている、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記永久磁石(19)は、装着される前に磁化されるようになっているか、または装着された後に磁化ヨークによって磁化されるようになっている、ことを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記永久磁石(19)を固定するための結合材(21)または非磁化スリーブが前記永久磁石(19)に取り付けられるようになっている、ことを特徴とする請求項13または14,または15に記載の方法。
【請求項17】
前記端絡リング(17)も同様に旋削され、前記結合材(21)または前記非磁化スリーブが前記端絡リング(17)によって固定されるようになっている、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−515456(P2013−515456A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545288(P2012−545288)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070350
【国際公開番号】WO2011/076777
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(591040649)カーエスベー・アクチエンゲゼルシャフト (16)
【氏名又は名称原語表記】KSB AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】